説明

給電接続構造および電解処理装置

【課題】本発明は、電極と饋電配線との接続部における発熱を効果的に抑止できる給電接続構造、および前記給電接続構造によって電極に饋電配線が接続された電解処理装置の提供。
【解決手段】少なくとも一方の端部が端面に向かって縮径する棒状電極10と、導体から形成され、饋電配線4が接続されるとともに、側壁面が底面に向かって縮小するように形成された凹陥部である内腔3を有し、棒状電極10の縮径部10Aが内腔3に挿入される給電部材2と、棒状電極10の縮径部10Aに装着された給電部材2を縮径部10Aに向かって押圧するコイルバネ13と、を有し、給電部材2は、棒状電極10の縮径部10Aに装着された状態において、内腔3の側壁面3Aが縮径部10Aの外周面に密着し、内腔3の底面3Bと縮径部10Aの端面10Bとの間に隙間が生じるように形成されている電極の給電接続構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電接続構造および電解処理装置に係り、特に、電極に電流を供給する饋電配線が前記電極に接続される接続部における発熱を効果的に抑止できる給電接続構造および電解処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部分円筒状に形成された黒鉛製の発熱体を黒鉛製のコネクタで結合して円筒状とした発熱体組立体がある(特許文献1)。前記発熱体組立体においては、コネクタに穿設された孔に端子が堅く取り付けられ、この端子に電力供給線が接続される。
【0003】
また、金属帯材を環形に回曲して形成された電極保持部と、電極保持部の両側から外方に向けて対向状に延出された一対の脚片と、両脚片の間に装着されるボルトとを備え、前記ボルトの締め付けにより前記一対の脚片を互いに接近する方向に変形させることで前記電極保持部を縮径変形させ、電極保持部内に嵌合したバッテリーの電極に押し付けて接続するようにしたバッテリーターミナルがある(特許文献2)。
【特許文献1】特開昭58−089790号公報
【特許文献2】特開平11−054183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルミニウムウェブなどの金属ウェブを電解処理する電解処理槽においては、黒鉛などの材料から形成された電極が使用される。
【0005】
前記電極には、交流電流または直流電流を供給する饋電配線を接続するために接続部が設けられる。
【0006】
ここで、電解処理槽においては、1つの電極に通常500アンペアまたはそれ以上の電流が供給されるから、接続部における接触抵抗が1mΩ程度であっても接触部において100℃以上の発熱を起す。
【0007】
例えば、電解処理槽の一種であってアルミニウムウェブを電解粗面化して平版印刷版用の支持体ウェブとする電解粗面化槽においては、酸性電解液が使用されるが、酸性電解液は腐食性が高いので、電解粗面化槽においては、耐食性と絶縁性を両立させる観点から、硬質塩化ビニル樹脂が使用されることが多い。
【0008】
しかしながら、硬質塩化ビニル樹脂は、耐熱グレードであっても100℃程度の耐熱性があるに過ぎない。したがって、電極における接続部で100℃以上の発熱が生じると、接続部からの熱影響で電解粗面化槽の各部材が軟化、変形するから、アルミニウムウェブと電極との距離が変化して得られる支持体ウェブの品質に異常が生じたり、電解粗面化槽から酸性電解液が漏れたりするなどの問題が生じる可能性がある。
【0009】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、電極に大電流を供給する場合においても、電極と饋電配線との接続部における発熱を効果的に抑止できる給電接続構造、および前記給電接続構造によって電極に饋電配線が接続された電解処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、少なくとも一方の端部が棒状部とされているとともに、前記棒状部の端面近傍には、前記端面に向かって縮径する縮径部が形成された電極と、導体から形成され、前記電極に電流を供給する饋電配線が接続されるとともに、側壁面が底面に向かって縮小するように形成された凹陥部である内腔を有し、前記電極の縮径部が前記内腔に挿入されることにより、前記電極の縮径部に装着される給電部材と、前記電極の縮径部に装着された給電部材を縮径部に向かって押圧する付勢手段と、を有し、前記給電部材は、電極の縮径部に装着された状態において、前記内腔の側壁面が電極の縮径部の外周面に密着し、内腔の底面と前記電極の縮径部における端面との間に隙間が生じるように形成されている電極の給電接続構造に関する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の給電接続構造において、前記付勢手段が、前記給電部材を前記電極の縮径部に向かって付勢するバネ手段を有するものに関する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の給電接続構造において、前記給電部材の内腔における縁部近傍に、内腔と電極の縮径部との間に外気および液体が侵入するのを防止する密封手段が設けられているものに関する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の給電接続構造において、前記給電部材に、内腔と外界とを連通する連通路が設けられているものに関する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の給電接続構造において、前記給電部材の連通路を介して前記給電部材の内腔と前記電極の縮径部との間に清浄空気を供給する清浄空気供給手段を有するものに関する。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の給電接続構造において、前記給電部材の連通路を介して前記給電部材の内腔と前記電極の縮径部との間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を有するものに関する。
【0016】
請求項7に記載の発明は、内部に電解処理液が貯留される電解槽と、電解処理しようとするウェブを、所定の搬送経路に沿って前記電解槽内部を搬送するウェブ搬送手段と、前記電解槽内部に、前記ウェブの搬送経路に沿って配設されているとともに、請求項1〜6の何れか1項に記載の給電接続構造によって饋電配線が接続されている電極と、を備え、前記饋電配線を通じて前記電極に交流電流または直流電流を供給することにより、前記ウェブを電解処理する電解処理装置に関する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の給電接続構造においては、給電部材が電極の縮径部に装着された状態において、給電部材の内腔の側壁面が電極の縮径部の外周面に密着するから、給電部材と電極との間の接触抵抗は小さい。
【0018】
この状態で電極に大電流を流すと、給電部材は、電気抵抗によって加熱されて熱膨張するが、付勢手段によって電極の縮径部に向かって付勢されているために、加熱部材の熱膨張後も、給電部材の内腔と電極の縮径部との密着状態が保持される。したがって、電極に大電流を流しても、給電部材と電極との間に隙間が生じて接触抵抗が増大することがないから、電極における給電部材が装着された部分での発熱が効果的に抑止される。
【0019】
請求項2に記載の給電接続構造においては、前記給電部材は、前記付勢手段の有するバネ手段によって前記電極の縮径部に押圧される。したがって、給電部材を電極の縮径部に押圧するための油圧、空気圧、またはボール螺子機構によるアクチュエータが不要になる。
【0020】
請求項3に記載の給電接続構造においては、前記給電部材の内腔における縁部近傍に、外気および電解液などの液体の進入を防止する密封手段が設けられているから、給電部材を電極の縮径部に装着して付勢手段で押圧した状態においては、給電部材の内腔と電極の縮径部とで形成される空間は前記密封手段で密閉され、電解液などの液体や外気が前記空間に侵入することはない。したがって、腐食性環境においても、周囲の腐食性ガスが給電部材と電極との間に進入して給電部材の内腔表面が酸化し、給電部材と電極間との接触抵抗が増大することが効果的に防止される。
【0021】
請求項4に記載の給電接続構造においては、給電部材に、内腔と外界とを連通する連通路が設けられているから、給電部材と電極の縮径部との間に存在する空気によって付勢手段の動作が阻害されることがない。
【0022】
請求項5に記載の給電接続構造においては、前記連通路に清浄空気供給手段が接続されているから、腐食性環境で使用した場合においても、周囲の腐食性ガスが連通路から給電部材と電極の縮径部との間に進入することが無く、腐食性ガスによる給電部材の内腔表面の酸化、およびそれに起因する給電部材と電極間との接触抵抗の増大が効果的に防止される。
【0023】
請求項6に記載の給電接続構造においては、前記連通路に不活性ガス供給手段が接続されているから、腐食性環境で使用した場合においても、周囲の腐食性ガスが連通路から給電部材と電極の縮径部との間に進入することが無く、腐食性ガスによる給電部材の内腔表面の酸化、およびそれに起因する給電部材と電極間との接触抵抗の増大が効果的に防止される。
【0024】
請求項7に記載の電解処理装置においては、電極には、請求項1〜6の何れか1項に記載の給電接続構造によって饋電配線が接続されているから、電解処理液として塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、スルホン酸のような強酸の水溶液のような酸性電解液を用いた場合においても、電極と饋電配線との接続部における発熱を効果的に抑止でき、前記発熱に起因する電解槽の変形や破損を効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
1.実施形態1
【0026】
以下、本発明に係る給電接続構造の一例であって饋電配線を棒状電極に接続する給電接続部について説明する。
【0027】
図1に示すように、実施形態1に係る給電接続部100は、一方の端部が、前記端部における端面10Bに向かって円錐状に縮径する縮径部10Aとされた丸棒状の棒状電極10と、棒状電極10の縮径部10Aに被せられる給電部材2と、端子6を介して給電部材2に電気的に接続される饋電配線4とを備える。なお、縮径部10Aは、端面10Bに向かって外径が縮小する形態であれば、外周面の形状は特に限定されず、図1に示すような円錐面状の他、図3に示すような内側に凹陥した回転面である凹陥面状や、また図4に示すような外側に膨出した回転面である膨出面状も可能である。
【0028】
棒状電極10には、縮径部10Aに隣接して外側に向かってフランジ状に膨出するフランジ部10Cが形成されている。
【0029】
給電部材2は全体として銅などの良導体で形成されているとともに、中央部には、縮径部10Aが挿入される内腔3が形成されている。
【0030】
内腔3は、縮径部10Aに対応して円錐状に縮径する側壁面3Aと、底面3Bとを有する。内腔3の表面は、酸化を防ぐ意図から金鍍金されている。内腔3は、棒状電極10の縮径部10Aを挿入したときに、側壁面3Aが縮径部10Aの側面に密着するが、底面3Bと棒状電極10の端面10Bとの間には間隙が形成されるように形成されている。なお、図3に示すように縮径部10Aの外周面が凹陥面の場合には、内腔3の側壁面3Aは内側に膨出する膨出面とされ、図4に示すように縮径部10Aの外周面が膨出面の場合は、側壁面3Aは外側に凹陥する凹陥面とされている。
【0031】
給電部材2における内腔3の入口側の端部には、外側に向かってフランジ状に膨出するフランジ部5が形成されている。
【0032】
内腔3の入口には、円周方向に沿って溝3Cが設けられ、溝3Cには、本発明の密封手段の一例であるOリング8が装着されている。なお、溝3Cには、密封手段としてOリング8に代えてオイルシールやUパッキンなどのリップシールや、グランドパッキンなどが装着されていてもよい。
【0033】
給電部材2には、内腔3と外界とを連通する連通路9が穿設されている。連通路9は、給電部材2の側壁内において連通路9Aと連通路9Bとに分岐する。連通路9Aは、内腔3の側壁面3Aに、連通路9Bは内腔3の底面3Bに開口している。連通路9の外側の開口部には、腐食性ガスを除去するフィルタを内蔵したエアブリーザ11が接続されている。但し、連通路9の外側の開口部には、エアブリーザ11に代えて乾燥空気を供給する乾燥空気供給ラインや除湿フィルタのような乾燥空気供給手段や、アルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段としての不活性ガス供給ガスラインを接続してもよい。
【0034】
棒状電極10のフランジ部10Cを挟んで給電部材2のフランジ部5の反対側には、ドーナツ状に形成された円環プレート12が配設されている。したがって、棒状電極10のフランジ部10Cは、給電部材2のフランジ部5と円環プレート12とによって両面から挟まれている。
【0035】
フランジ部5には、ボルト7が等間隔で4本螺合しているとともに、円環プレート12にはボルト7が挿通される開口部が4個形成されている。
【0036】
夫々のボルト7の頭部7Aと円環プレート12との間には本発明におけるバネ手段であるコイルバネ13が挿入され、円環プレート12を介して棒状電極10のフランジ部10Cを給電部材2に向かって押圧している。これにより、棒状電極10の縮径部10Aは、給電部材2の内腔3に向かって押圧される。なお、円環プレート12、フランジ部5、ボルト7、およびコイルバネ13によって本発明の付勢手段が構成される。但し、本発明のバネ手段はコイルバネ13には限定されず、例えばスプリングワッシャやディスクワッシャのようにスプリング作用のあるワッシャもコイルばね13に代えて使用できる。また、本発明の付勢手段は、円環プレート12、フランジ部5、ボルト7、およびコイルバネ13によって構成されるものには限定されず、例えば、円環プレート12を介して、または直接に棒状電極10のフランジ部10Cを給電部材2に向かって押圧する空気アクチュエータや油圧アクチュエータ、ボール螺子機構も付勢手段として使用できる。
【0037】
以下、実施形態1に係る給電接続部100の作用について、以下、図2を用いて説明する。
【0038】
給電部材2を棒状電極10に装着した状態においては、図2において(A)に示すように、給電部材2は、コイルバネ13によって棒状電極10の縮径部10Aに向かって押圧される。これにより、棒状電極10は、縮径部10Aの外周面が内腔3の側壁面3Aに密着するとともに、端面10Bと内腔3の底面3Bとの間に間隙が形成されるように保持される。
【0039】
ここで、饋電配線4から給電部材2を介して棒状電極10に電流を供給すると、給電部材2を流れる電流によって給電部材2が加熱され、図2において(B)に示すように熱膨張する。これにより、内腔3の側壁面3Aと棒状電極10の縮径部10Aの外周面との間に隙間が生ずる。
【0040】
しかし、コイルバネ13の付勢作用により、図2において(C)に示すように、給電部材2は棒状電極10に向かって引き寄せられ、内腔3の側壁面3Aと棒状電極10の縮径部10Aの外周面とは再び密着する。
【0041】
このように、実施形態1に係る給電接続部100においては、通電により、給電部材2が熱膨張しても内腔3の側壁面3Aと棒状電極10の縮径部10Aの外周面とは密着状態に保持されるから、接触抵抗は小さい。したがって、内腔3の側壁面3Aと棒状電極10の縮径部10Aの外周面との間の接触抵抗が増大して著しい発熱が生じることが効果的に抑止される。
【0042】
以上、電極として丸棒状の棒状電極10を用いた給電接続構造の例について説明してきたが、本発明においては、電極の一方または両方の端部が棒状とされていれば、電極のそれ以外の部分の形態については特に丸棒状には限定されず、角棒状、またはブロック状など種々の形態が可能である。
【実施例】
【0043】
1.実施例1
【0044】
電極として丸棒状であって黒鉛からなる棒状電極10を用い、実施形態1の給電接続部100を構成した。棒状電極10の接続部の寸法は、外径80mm、長さ100mmとした。また、縮径部10Aは、テーパ比1/5のテーパ状(円錐台状)とした。有効圧力面積は圧力測定フィルム(富士フイルム株式会社製プレスケール(商品名))を用いて測定した。結果を表1に示す。なお、表Iおよび後述する図5および図6において「テーパばね接触式」とあるのは、実施形態1の給電接続部100の意である。
【0045】
【表1】

表1に示すように、実施形態1の給電接続構造においては、理論上接触面積に対する有効接触面積の比率は90%と高く、したがって接触抵抗率は0.04mΩと低い値を示した。
【0046】
次に、電気炉内で、給電接続部100を30℃から150℃まで加熱してその後30℃まで放冷するヒートサイクルを5回繰り返し、加熱前(30℃)、加熱時において接続部の温度が60℃に達した時点、加熱時において接続部の温度が100℃に達した時点、および加熱時において接続部の150℃に達した時点における給電接続部100における接触抵抗を測定した。結果を図5に示す。
【0047】
図5に示すように、給電接続部100の接触抵抗は0.04〜0.06mΩと5回のヒートサイクルにおいて殆ど変化を示さなかった。
【0048】
最後に、給電接続部100を酸性電解液(1%硝酸水溶液)に浸漬した後、常温の空気中に放置し、抵抗の変化を調べた。結果を図6に示す。
【0049】
図6に示すように、給電接続部100においては、60日経過後も接触抵抗の初期値である0.04mΩを保持していた。
【0050】
2.比較例1
【0051】
図7に示すように、実施例1で使用したのと同一の棒状電極10の末端部をテーパ状に加工することなく、割りクランプ20で挟持してボルト21Aおよびナット21Bで割りクランプ20を締め付けて棒状電極10を固定した。次いで、饋電配線4の末端に端子6を接続し、端子6をボルト22によって割りクランプ20に固定して給電接続部200を構成した。表I、図5、および図6において「割りクランプ式」とあるのは、比較例1に係る給電接続部200の意である。
【0052】
このようにして構成した給電接続部200について、実施例1と同様に有効圧力面積および初期の接触抵抗を測定した。結果を表1に示す。表1に示すように、給電接続部200においては有効圧力面積は56%と小さかったが、接触抵抗は0.05mΩと小さかった。
【0053】
次に、実施例1と同様のヒートサイクルを5回繰り返し、加熱前(30℃)、加熱時において接続部の温度が60℃に達した時点、加熱時において接続部の温度が100℃に達した時点、および加熱時において接続部の150℃に達した時点における給電接続部100における接触抵抗を測定した。結果を図5に示す。
【0054】
図5に示すように、給電接続部200においては、温度が30℃、60℃、100℃、150℃と上昇するにつれて接触抵抗が増大するとともに、ヒートサイクルを繰り返すに従って接触抵抗の山全体が顕著に上方に移動するという結果を示した。
【0055】
最後に、給電接続部200を酸性電解液に浸漬した後、常温の空気中に放置し、抵抗の変化を調べた。結果を図6に示す。
【0056】
図6に示すように、給電接続部200においては、日数が経過するに連れて接触抵抗も上昇し、初期値である0.05mΩが60日経過後には0.23mΩまで上昇していた。
【0057】
3.比較例2
【0058】
図8に示すように、実施例1で使用したのと同一の棒状電極10の末端部に1対の平行面を形成し、前記平行面の一方から他方に向かって貫通する貫通孔を穿設すると共に、前記平行面の一方に饋電配線4の端子6を、前記貫通孔を貫通するボルト30で固定して給電接続部210を構成した。表I、図5、および図6において「端子式」とあるのは、比較例2に係る給電接続部210の意である。
【0059】
このようにして構成した給電接続部200について、実施例1と同様に有効圧力面積および初期の接触抵抗を測定した。結果を表1に示す。表1に示すように、給電接続部200においては有効圧力面積は92%と実施例1よりも高かったが、接触抵抗は0.13mΩと大きかった。
【0060】
次に、実施例1と同様のヒートサイクルを5回繰り返し、加熱前(30℃)、加熱時において接続部の温度が60℃に達した時点、加熱時において接続部の温度が100℃に達した時点、および加熱時において接続部の150℃に達した時点における給電接続部100における接触抵抗を測定した。結果を図5に示す。
【0061】
図5に示すように、給電接続部210においては、温度が30℃、60℃、100℃、150℃と上昇するにつれて実施例1よりも顕著に接触抵抗が増大するとともに、ヒートサイクルを繰り返すに従って接触抵抗の山の上方への移動が明瞭に認められた。
【0062】
最後に、給電接続部210を酸性電解液に浸漬した後、常温の空気中に放置し、抵抗の変化を調べた。結果を図6に示す。
【0063】
図6に示すように、給電接続部210においては、日数が経過するに連れて接触抵抗も上昇し、初期値である0.13mΩが60日経過後には0.24mΩまで上昇していた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、実施形態1に係る給電接続部の構成を示す軸線方向に沿って切断した部分断面図である。
【図2】図2は、図1に示す給電接続部の作用を示す説明図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る給電接続部の別の例について構成を示す軸線方向に沿って切断した部分断面図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る給電接続部の更に別の例について構成を示す軸線方向に沿って切断した部分断面図である。
【図5】図5は、実施例1、比較例1、比較例2についてヒートサイクルによる接触抵抗の変化を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例1、比較例1、比較例2について耐食テストの結果を示すグラフである。
【図7】図7は、比較例1で使用された給電接続部の構造を示す部分断面図である。
【図8】図8は、比較例2で使用された給電接続部の構造を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0065】
2 給電部材
3 内腔
3A 側壁面
3B 底面
3C 溝
4 饋電配線
5 フランジ部
6 端子
7 ボルト
7A 頭部
8 リング
9 連通路
9A 連通路
9B 連通路
10 棒状電極
10A 縮径部
10B 端面
10C フランジ部
11 エアブリーザ
12 円環プレート
13 コイルバネ
20 クランプ
21B ナット
21A ボルト
22 ボルト
30 ボルト
100 給電接続部
200 給電接続部
210 給電接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の端部が棒状部とされているとともに、前記棒状部の端面近傍には、前記端面に向かって縮径する縮径部が形成された電極と、
導体から形成され、前記電極に電流を供給する饋電配線が接続されるとともに、側壁面が底面に向かって縮小するように形成された凹陥部である内腔を有し、前記電極の縮径部が前記内腔に挿入されることにより、前記電極の縮径部に装着される給電部材と、
前記電極の縮径部に装着された給電部材を縮径部に向かって押圧する付勢手段と、
を有し、
前記給電部材は、電極の縮径部に装着された状態において、前記内腔の側壁面が電極の縮径部の外周面に密着し、内腔の底面と前記電極の縮径部における端面との間に隙間が生じるように形成されている電極の給電接続構造。
【請求項2】
前記付勢手段は、前記給電部材を前記電極の縮径部に向かって付勢するバネ手段を有する請求項1に記載の給電接続構造。
【請求項3】
前記給電部材の内腔における縁部近傍には、内腔と電極の縮径部との間に外気および液体が侵入するのを防止する密封手段が設けられている請求項1または2に記載の給電接続構造。
【請求項4】
前記給電部材には、内腔と外界とを連通する連通路が設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載の給電接続構造。
【請求項5】
前記給電部材の連通路を介して前記給電部材の内腔と前記電極の縮径部との間に乾燥空気を供給する乾燥空気供給手段を有する請求項4に記載の給電接続構造。
【請求項6】
前記給電部材の連通路を介して前記給電部材の内腔と前記電極の縮径部との間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を有する請求項4に記載の給電接続構造。
【請求項7】
内部に電解処理液が貯留される電解槽と、
電解処理しようとするウェブを、所定の搬送経路に沿って前記電解槽内部を搬送するウェブ搬送手段と、
前記電解槽内部に、前記ウェブの搬送経路に沿って配設されているとともに、請求項1〜6の何れか1項に記載の給電接続構造によって饋電配線が接続されている電極と、
を備え、前記饋電配線を通じて前記電極に交流電流または直流電流を供給することにより、前記ウェブを電解処理する電解処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−157406(P2010−157406A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334496(P2008−334496)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】