説明

絶縁体表面又は半導体表面を修飾する方法、及びこうして得られた生成物

本発明は、絶縁体、半導体、二元化合物若しくは三元化合物、又は複合材料表面上に芳香族基をグラフトするための芳香族基Rを保有するジアゾニウム塩R−Nの使用に関し、上記ジアゾニウム塩は、その溶解限度に近い濃度で、特に0.05Mよりも高い濃度で、好ましくは約0.5M〜約4Mの間の様々な濃度で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは芳香族基を保有するジアゾニウム塩から誘導される芳香族基のグラフトによる、絶縁体表面、半導体表面又は二元化合物若しくは三元化合物の修飾方法、及びこうして得られた生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトログラフトは、電気を伝導する表面の官能基化を可能にする。エレクトログラフトの重要な有益性の1つは、界面結合の形成及びフィルムの成長の両方を可能にするエネルギーが表面にもたらされることであり、したがって表面自体が、それ自身の目的を生成する。この特性の結果は、例えば、エレクトログラフトされた層は、ナノメートルスケールでさえもそれらが大変正確に創出される表面のトポロジーに習うことである。また、マクロスケールでは、この結果は、エレクトログラフトが全体にわたって同じ品質で随意の形態の複雑性を有する部品上でのコーティングを可能にすることであり、部品の表面がエレクトログラフト溶液と接触している場所はどこでも、エレクトログラフトされたフィルムが形成される。
【0003】
絶縁体が電気的手段により活性化され得ないことを考慮すると、少なくともその習慣的形態で絶縁体の表面上でエレクトログラフトを実施することは明らかに不可能である。
【0004】
任意の型の表面上で類似した品質の官能性を提唱する目的で、分子前駆体又は表面活性化技法のいずれかにおいて、エレクトログラフトに関して観察される要素が保存されることを可能にする特異性:界面結合(共有結合又は非共有結合)、適合性、均質性等を探索することにより、絶縁体上でのグラフト方法が更新されなくてはならない。
【0005】
炭素上で実施されるジアゾニウム塩のエレクトログラフト(eG(登録商標))(Pinson J., Podvorica F., Chem Soc. Rev, 2005, 34, 429;Allongue P., Delamar M., Desbat B., Fagebaume O., Hitmi R., Pinson J., Saveant J. M., J. Am. Chem. Soc., 1997, 119, 201;Liu Y.C., McCreery R.L., J. Am. Chem. Soc., 1995, 117, 11254;Saby C., Ortiz B., Champagne G. Y., Belanger D., Langmuir, 1997, 13, 6803)、金属上で(Adenier A., Bernard M.-C., Chehimi M.M., Deliry E., Desbat B., Fagebaume O., Pinson J., Podvorica F., J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 4541;Bernard M.C., Chausse A., Cabet-Deliry E., Chehimi M.M., Pinson J., Podvorica F., Vautrin-UI C., Chem. Mat. 2003, 15, 3450;Marwan J., Addou T., Belanger D., Chem. Mater., 2005; 17; 2395)及び半導体上で(Henry de Villeneuve C., Pinson J., Allongue P., J. Phys Chem., 1997, 101, 2415)は、導体表面又は半導体表面にのみ適用可能である。炭素の表面上でのアリール基の自発的グラフト又は熱的グラフト(電気化学的誘導又は光化学的誘導でない)は、すでに実証されている(国際特許出願公開番号:WO96/18688、WO96/18690、WO96/18674、WO96/18695、WO97/47692、WO97/47698、WO98/34960、WO99/07794、WO99/23174、WO00/53681、及び米国特許公報:US5672198、US5713988、US5698016、US5851280、US5885355、US6110994)。
【0006】
ジアゾニウム塩溶液へのカーボンブラックの簡素な導入により、炭素の表面を、ジアゾニウム塩から誘導されるアリール基の結合により修飾することができる。この自発的グラフト反応は、金属及び半導体、特にシリコンに拡張されている(Bahr J. L. and Tour J. M., Chem. Mater., 2001, 13, 3823;Bahr J. L., Yang J., Kosynkin D.V., Bronikowski M. J., Smalley R.E., Tour J. M., J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 6536;Dyke C. A., Tour J.M., J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 1156;Dyke C. A., Tour J. M., Nano Letters, 2003, 3, 1215;Strano M. C., Dyke C. A., Ursa M. L., Barone P. W., Allen M. J., Shan H., Kittrell C., Hauge R. H., Tour J. M., Smalley R.E., Science, 2003, 301, 1519;Fan F.-R., Yang J., Lintao C., Price D.W., Dirk S. M., Kosynkin D. V., Yao Y., Rawlett A. M., Tour J. M., Bard A. J., J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 5550;2004年2月5日に公開された米国特許出願:公開番号2004/0023479A1;Adenier A., Cabet-Deliry E., Chausse A., Griveau S., Mercier F., Pinson J., Vautrin-UI C., Chem. Mat., 2005, 17, 491;Hurley B. L., McCreery R. L., J. Electrochem. Soc., 2004, 15, B252-B259)。
【0007】
しかしながら、物体、導体又は半導体が、その開路電位(ジアゾニウム塩溶液に浸される場合にそれが自発的に採択する電位)では、電気化学的還元中に観察されるのと同じメカニズムに従って、ジアゾニウム塩を自発的に還元するのに十分還元性であるために、この自発的グラフトが起きることが観察されている。したがって、表面上でのジアゾニウム塩の自発的グラフトは、電気化学的グラフトの特殊な場合であり、したがってジアゾニウム塩の浴中で十分に陰極の開路電位を有する或る特定の材料に関してのみ行われる。これらの材料に関して、自発的手段だけでなく電気化学的手段によるグラフトは、電気化学的な請求を伴わずにいずれにしても生じるグラフト反応を加速する。
【0008】
さらに、この観点から、それらの開路電位に対する表面上でのジアゾニウム塩の自発的グラフトの反応速度は遅く、表面上での最大被覆率を達成することが可能であるには1時間又は1時間以上であることが観察される。
【0009】
それにもかかわらず、有機ポリマー又は酸化物の表面のような絶縁体を同じ方法で修飾することが可能であることは実に興味深く、これは、それらの表面を、材料の機械的特性及び電気的特性を依然として保持しながら、特異的特性をそれらに付与することにより修飾することが可能である。
【0010】
米国特許第6555175号は、ジアゾニウム塩の使用を含むポリマー化合物の処理方法に関する。より正確には、この方法は、芳香族ポリマー上に両親媒性アミンに基づいて原位置で形成されるジアゾニウム塩の濃縮溶液の熱分解に関する。この方法は、還元剤の使用を含んでおらず、試薬を70℃に加熱する段階を必要とする。さらに、反応時間は約8時間であり、ジアゾニウム塩の分解が短期間で行われる限りは問題を引き起こす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ジアゾニウム塩から誘導されたアリール基により絶縁体をグラフトする方法を提供することである。
【0012】
本発明の目的は、アリール基のグラフト反応の使用を含む絶縁体表面若しくは半導体表面又は二元化合物若しくは三元化合物の修飾方法を提供することであり、その反応速度は、現在の方法のものよりも有意に速い。
【0013】
また、本発明の目的は、電気化学的請求により得られるものような、しかし例えば抵抗降下の影響に関連した不都合を伴わないような、非常に高い抵抗の基、特に非常に高い抵抗の半導体又は非常に高い抵抗の二元化合物若しくは三元化合物の修飾方法を提供することである。
【0014】
また、本発明の目的は、絶縁体表面、半導体表面及び二元化合物若しくは三元化合物の中から選択される少なくとも2つ物質を有する複合材料の表面を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、絶縁体表面、半導体表面、又は二元化合物若しくは三元化合物又は複合材料上に芳香族基をグラフトするための上記芳香族基Rを保有するジアゾニウム塩R−Nの使用に関し、上記表面は、10−5Ω・m以上、好ましくは10−3Ω・m以上の比抵抗を有し、上記ジアゾニウム塩は、0.05Mを超える濃度で存在し、好ましくはおよそ0.5M〜およそ4Mで変化し、特に実験条件(溶媒及び温度)においてその溶解限度に近い濃度で存在する。
【0016】
有利な生産方法によれば、ジアゾニウム塩は、0.1Mより高い濃度で存在する。
【0017】
「芳香族基R」により意味されるものは、1つ又は複数の独立ベンゼン核或いは縮合ベンゼン核、及び/又はベンゼンから誘導された1つ又は複数の複合核を含む環式化合物から誘導される基であると明記されている。当然のことながら、このラジカルはまた、複素環式核及び/又は様々な置換基、並びに場合によってはN、O及びSのようなヘテロ原子を含む炭化水素鎖を含むこともできる。
【0018】
「絶縁体表面」という用語は、電子又は正孔の通過を許さず、その抵抗率が少なくとも1010Ω・mのオーダーである物質の表面を意味する。例えば、1013〜1015Ω・m程度の抵抗率を有する絶縁体であるポリマー、したがって本明細書で使用されるポリエチレンに関しては、抵抗率は1013Ω・m程度であり、ポリプロピレンの抵抗率は1014Ω・m程度である。
【0019】
「半導体表面」という用語は、半導体材料の表面を意味し、即ち、ここでは電流は電子及び正孔により運搬される材料であり、その導電率は、それが非常に純粋である場合、温度とともに指数関数的に増加し、そして、電気的に活性な不純物をドーピングすることによりその固有値から数桁数増加され得る。半導体は、価電子帯(バンド)を伝導帯(バンド)から分離するバンドギャップのサイズにより特徴付けられる(L. I. Berger, B.R. Pamplin, Handbook of Chemistry and Physics, 84th edition, CRC Press; Boca Raton, p. 12-97)。
【0020】
例えば、真性シリコンの理論的上の抵抗率は3Ω・m程度であり、その純度に依存する。マイクロエレクトロニクスで現在使用される物質に関して、ドーピングは、10〜1019原子/cmの間に位置して、続いて抵抗率は、ドーピングの型(pドーピング用のホウ素、nドーピング用のヒ素、リン又はアンチモン)に依存する。したがって、ヒ素によるnドーピング(1015原子/cm)を有するシリコンは抵抗率3×10−2Ω・mを有し、ヒ素によるnドーピング(1019原子/cm)を有するシリコンは、抵抗率4.4×10−5Ω・mを有し、ホウ素によるpドーピング(1015原子/cm)を有するシリコンは抵抗率9×10−2Ω・mを有し、ホウ素によるpドーピング(1019原子/cm)を有するシリコンは抵抗率9×10−5Ω・mを有する。
【0021】
「二元化合物若しくは三元化合物」という用語は、種々の相を有する二元化合物若しくは三元化合物、例えばTa、TaN、TaSi、TiN、TaSi、WN、WC及びWSiを意味する。これらの化合物は、マイクロエレクトロニクス産業で、特に、例えばChang, C.Y. and Sze, S. M., 1996, 「ULSI Technology」 Mc Graw-Hill, New Yorkに記載されるダマシン(Damascene)法という名で知られる方法で広範に使用されている。これらの化合物は、PVD(物理蒸着)、CVD(化学蒸着)又はALD(原子層堆積)等のいくつかの方法により薄層上に堆積される。これらの化合物は、例えば以下の参考文献に記載されている:Kim, S-H., Suk S., Kim, H-M; Kang, D-H; Kim, K-B., Li, W-M; Suvi, H., Tuominen, M. J. Electrochem Soc., 2004, 151, C272-C282、及びH.B., Niel, S.Y.Xu, S.J. Wang, L.P. Youl, Z. Yang, C.K.Ong, J.Li, T.Y.F. Liew, Appl. Phys. A, 2001, 73, 229-236。
【0022】
上述の薄層は、特に銅の拡散若しくは銅マイグレーションに対するバリアとして、又はデータ保存の磁気層用の電極として又はCMOSトランジスタ(相補型金属酸化膜半導体)用のグリッド材料として機能を果たす。これらの薄層の電気抵抗率は、堆積条件に非常に高く依存しており、2×10−3〜2×10−1Ω・mの範囲に広がる。これらの薄層の抵抗率の最高レベルでは、電気化学的グラフト方法は、その材料における抵抗降下により非効率になる。例えば、ダマシン法で使用されるこれらの材料のバリア層は、あまりに高い抵抗率を有するため、プラケットスケールで均質な銅の電気化学的堆積ができない。
【0023】
「複合材料」という用語は、上記複合材料が表面複合材であると考えて、上記で定義されるような絶縁体表面、半導体表面及び二元化合物若しくは三元化合物の中から選択される少なくとも2つの材料を有する複合材料を意味する。言及され得る化合物材料は、例えば、銅を充填したスライスを含むシリコン表面(マイクロエレクトロニクスにおける用途)、シリコンのような誘電材料又はTiN若しくはTaNのような二元化合物を幾分含む物質、或る特定の金属部品を含む有機ポリマー表面又は人工股関節置換物を含み、それらの表面は、チタン又はセラミックで構成される。同じカテゴリーの2つの材料を含む複合材料、例えば2つの異なる絶縁体を含む材料、又は2つの異なる半導体を含む材料もまた想定され得る。
【0024】
「その溶解限度に近いジアゾニウム塩の濃度」という用語は、所定の温度で及び所定の溶媒中でジアゾニウム塩が析出することが始まる濃度を意味する。
【0025】
したがって、ジアゾニウム塩の最大濃度を得ることが求められており、還元剤が添加されるか、又はジアゾニウム塩が超音波にさらされる場合に、最大数のアリールラジカルが生産され、その大部分は、溶液中での反応で失われるが、その小量の部分が、表面を攻撃する。本発明の方法の範囲内では、溶解限度は超過され得る。
【0026】
ジアゾニウム塩の濃度が、ラジカルの反応性を考慮すると非常に弱く、したがって上記塩の溶解限度とはとてもかけ離れている場合、グラフト反応は十分効率的ではなく、その反応の収率は非常に低い。
【0027】
ポリマー上で形成される結合は、C(脂肪族又は芳香族)−C(芳香族)結合であり、そのエネルギーは1モル当たり400kJ程度である。
【0028】
電気化学的グラフトは、ジアゾニウム塩への電子の移動に続くアリールラジカルの形成に起因すると考えられている。本発明は、還元剤を用いること、又は電荷移動錯体の光化学若しくは超音波による活性化のいずれかによって、均質な溶液中でのアリールラジカルの均質な形成に基づく。後者の場合では、アリールラジカルは、電気化学的還元で見られるように修飾することが望まれる電極の表面上では形成されず、それらは溶液内で生産されて、それらの大部分は溶液中で化合物と反応する。これらのラジカルのほんの小数が表面と反応して、そのグラフトを導く。したがって、本出願で述べられるように、表面へのグラフトに適切な十分な濃度のアリールラジカルを得るために高濃度のジアゾニウム塩を使用することが必要である。
【0029】
本発明はまた、上記で定義されるような使用に関し、ここでグラフトされる芳香族基は、好ましくは、
ジアゾニウム塩の還元剤を用いることによる、
ジアゾニウム塩から形成される電荷移動錯体の光化学的照射による、又は
超音波によるジアゾニウム塩の処理による、
ジアゾニウム塩の還元から誘導される。
【0030】
絶縁体表面若しくは半導体表面又は二元化合物若しくは三元化合物の表面或いは複合材料の表面上への芳香族基のグラフトは、修飾された絶縁体表面若しくは修飾された半導体表面又は二元化合物若しくは三元化合物の修飾された表面又は複合材料の表面を可能にし、即ち、上記芳香族がグラフトされた表面が得られる。
【0031】
「ジアゾニウム塩の還元」という用語は本明細書では、電子のフォーマルな移動によるアリールラジカル及びジアゾ化合物を導く反応を意味する。
【化1】

【0032】
「電荷移動錯体」又は「供与体−受容体錯体」という用語は、複合体、すなわち2つの化学種、好ましくは2つの分子の会合を意味し、ここではこれらの2つの種は、少なくとも部分的に電子対を交換しており、供与体分子は、電子が不足した受容体分子(この場合、ジアゾニウム塩)に非結合電子(n)対又はπ電子のいずれかを提供する。これらの電荷移動錯体は、それらのUV−可視スペクトルが、供与体分子及び受容体分子のスペクトルの合計と異なることを特徴とする(J. March, Advanced Organic Chemistry, 4° edition, John Wiley, New York, p. 79)。
【0033】
「ジアゾニウム塩から形成される移動電荷錯体の光化学的照射」という用語は、電荷移動錯体を形成する傾向にある受容体分子、ジアゾニウム塩及び供与体分子を含有する溶液の可視光又は紫外光(好ましくは紫外線)による照射を意味する。
【0034】
「超音波によるジアゾニウム塩の処理」という用語は、ジアゾニウム塩溶液を超音波に付すことからなる方法を意味する。
【0035】
ジアゾニウム塩と同じ相、ジアゾニウム塩が十分に濃縮された溶液中に溶解される還元剤である均質な還元剤を使用して還元することにより、大量のフリーラジカルが創出される。溶液中で均質に生産されるラジカルの一部は、溶液中に浸されている表面と反応する。したがって、これにより、有機ポリマー、より一般的には絶縁体の表面を、アリールラジカルにより、特に水素原子を切り落としてラジカルとのカップリングにより、芳香族化合物上へのS付加(Kochi, J.K. Free Radicals Vol. 1 and 2: New York, 1973)により、或いは二重結合上へのMerweein型付加(Dombrovski Russian Chem. Rev. 1984, 53, 943;Rondestvedt Org.React. 1976, 24, 225)により、修飾することが可能となる。
また、SiOなどのマイクロエレクトロニクス基と反応するラジカルを有することも可能である。
【0036】
同様に、電荷移動錯体を照射することにより、この錯体への電子の移動及びアリールラジカルの形成が支持される。
【0037】
同様に、ジアゾニウム塩溶液に超音波を付すことにより、ジアゾニウム塩の還元及び対応するアリールラジカルの形成が支持される。
【0038】
本発明は、絶縁体材料、半導体材料、二元化合物若しくは三元化合物又は複合材料を得るための絶縁体材料、半導体材料の表面、二元化合物若しくは三元化合物又は複合材料を修飾する方法に関し、前記表面は、該表面上への芳香族基のグラフトにより修飾され、場合によっては官能基により置換され、ここで、表面と表面を修飾するグラフトされる芳香族基との間の結合の種類は、共有結合型結合であり、特に結合が超音波による洗浄に耐えるようなものであり、上記方法は、上記表面上にグラフトした上記芳香族基を得るように、該表面をジアゾニウム塩と接触させて配置させること、及び、特にその溶解限度に近い濃度で、0.05Mよりも高い濃度で、好ましくはおよそ0.5〜4Mに及ぶ濃度で上記芳香族基を保有する上記ジアゾニウム塩の、特に還元剤を用いることによる、ジアゾニウム塩から形成される電荷移動錯体の光化学的照射による、又は超音波による上記ジアゾニウム塩の処理による還元を含む。
【0039】
有利な生産方法によれば、ジアゾニウム塩は、0.1Mよりも高い濃度で存在する。
【0040】
「官能基」という用語は、分子と反応する傾向にあり、且つ特定の特性を提示することが可能なグラフトされるアリール基の置換基を意味する。
【0041】
本発明の方法によれば、表面は、上記方法が、表面とグラフトされる芳香族基との間の、上記芳香族基の炭素原子と上記表面の原子との間の共有結合に相当する結合の形成を導くように修飾される。
【0042】
好ましい実施の形態によれば、本発明の方法は、表面とジアゾニウム塩との接触期間がおよそ60分よりも短く、特におよそ1〜60分、好ましくはおよそ1〜10分持続することを特徴とする。
【0043】
好ましい実施の形態によれば、本発明の方法は、表面と、還元剤又は電荷移動錯体の光化学的照射を用いて還元されるジアゾニウム塩との接触期間が、およそ1〜10分持続することを特徴とする。
【0044】
好ましい実施の形態によれば、本発明の方法は、表面と、超音波を用いて還元されるジアゾニウム塩との接触期間が、およそ1〜60分、好ましくはおよそ20分持続することを特徴とする。
【0045】
有利な実施の形態によれば、本発明の方法は、ジアゾニウム塩が、式ArNX(式中、Arは芳香族基であり、Xはハロゲン、硫酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、カルボン酸塩及びヘキサフルオロリン酸塩から有益に選択される有利なアニオンである)に合致することを特徴とする。
【0046】
アニオンは、アリール基の置換基、例えばスルホネート基であってもよく、続いてジアゾニウム塩を保有する両親媒性分子が得られる。
【0047】
本発明はまた、上記に特定されるような方法に関し、芳香族基が、C〜C14での芳香族残基であり、場合によっては1つ又は複数の官能性置換基で置換されたC〜C14の芳香族残基、又は又は場合によっては酸素、水素、硫黄及びリンから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含む1つ又は複数の官能性置換基で置換された4〜14個の原子の複素環式芳香族残基であることを特徴とする。
【0048】
本発明はまた、上記に特定されるような方法に関し、芳香族基が、下記で構成される群から選択される1つ又は複数の置換基を含むことを特徴とする:
場合によってはカルボキシルラジカル、NO、二置換保護アミノ、一置換保護アミノ、シアノ、ジアゾニウム、炭素数1〜20のアルコキシ、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル、炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ、ビニル(場合によってはフッ素化される)又はアリル、水素原子で置換される、場合によっては1つ又は複数の二重結合又は三重結合(複数可)を含む炭素数1〜20の直鎖又は分岐状の脂肪族ラジカル、
場合によってはカルボキシルラジカル、NO、二置換保護アミノ、一置換保護アミノ、シアノ、ジアゾニウム、炭素数1〜20のアルコキシ、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル、炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ、ビニル(場合によってはフッ素化される)又はアリル、ハロゲン原子で置換されるアリールラジカル、
カルボキシルラジカル、NO、二置換保護アミノ、一置換保護アミノ、シアノ、ジアゾニウム、スルホ、ホスホノ、炭素数1〜20のアルコキシ、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル、炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ、ビニル(場合によってはフッ素化される)、ハロゲン原子。
【0049】
有利な実施の形態によれば、本発明の方法は、芳香族基が、有機樹脂、生物学的分子、化学的分子又は錯化剤と直接反応する傾向にある1つ又は複数の置換基、又は変換後に有機樹脂、生物学的分子、化学的分子又は錯化剤と反応する傾向にある1つ又は複数の前駆体置換基を含むことを特徴とする。
【0050】
「ポリマー、化学的分子又は生物学的分子と直接反応する傾向にある置換基」という用語は、表面上に固定され、且つ他の分子により保有される化学的官能性と反応する傾向にある反応性官能性を有する芳香族基の置換基を意味する。芳香族基によりもたらされる反応性官能性の例は、アリル又はビニル又はアセチレン官能性、ハロゲン、例えば−(CH−CH−OHタイプのアルコール、例えば−(CH−COOHタイプのカルボン酸、酸無水物又はハライド、ニトリル、イソシアネート、例えば−(CH−NHタイプのアミン(nは0〜10の範囲の整数である)、スルホン酸、スルホネート、ホスホン酸又はホスホネートである。
【0051】
「変換後にポリマー、化学学的分子又は生物学的分子と反応する傾向にある前駆体置換基」という用語は、1回又は複数の変換後にポリマー、生物学的分子及び化学的分子と反応する傾向にある置換基を意味する。変換後に反応する傾向にある前駆体置換基は、NO、N、(CH−CN、(CH−CHO、(CH−COOP(Pは保護基である)、−(CH−NHP’、(CH−N(P’、(CH−N=P”(P’、P”は保護基であり、nは1〜10の整数である)である。塩化フェナシル、塩化スルホニル又は塩化アセチルは、アミド保護基の例である。
【0052】
「有機樹脂」という用語は、コンビナトリアル合成で使用される反応性官能性を有するポリマー、例えば官能基化されたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体(アミノメチルポリスチレン、ブロモポリスチレン、ヒドロキシメチルポリスチレン)、ペプチド合成で使用されるポリマー(例えば、Wang樹脂:アルコキシベンジルアルコール官能性を有するポリスチレン)を意味する。
【0053】
「生物学的分子」という用語は、酵素又は抗原のような生物系中に介在する分子を意味する。
【0054】
「化学的分子」という用語は、官能基化されたアリール基と反応する傾向にある官能基を含む分子全てを意味するより構成される:アリル基又はビニル基又はアセチレン基、ハロゲン、例えば−(CH−CH−OHタイプのアルコール、例えば−(CH−COOHタイプのカルボン酸、酸無水物又はハライド、ニトリル、イソシアネート、例えば−(CH−NH(nは0〜10の範囲の整数である)タイプのアミン、スルホン酸若しくはスルホネート、ホスホン酸若しくはホスホネート、又は変換後に有機樹脂と反応する傾向にあり、且つNO、N(CH−CN、(CH−CHO、(CH−COOP(Pは保護基である)、−(CH−NHP’、(CH−N(P’、(CH−N=P”(式中、P’、P”は保護基である)(nは1〜10の範囲の整数である)により構成される群から選択される官能基。塩化フェナシル、塩化スルホニル又は塩化アセチルは、アミド保護基の例である。
【0055】
「錯化剤」という用語は、例えば金属イオンと錯体を形成する傾向にある分子を意味する。EDTA(エチレンジアミノ四酢酸)、アミノ−8キノレイン、クラウンエーテル、クリプテート及びフェニルアラニンが、具体的に挙げられる。
【0056】
本発明はまた、上記に特定されるような方法に関し、芳香族基が、有機樹脂と直接反応する傾向にあり、且つ以下により構成される群で選択される1つ又は複数の置換基:アリル又はビニル又はアセチレン基、ハロゲン、例えば−(CH−CH−OHタイプのアルコール、例えば−(CH−COOHタイプのカルボン酸、酸無水物又はハライド、ニトリル、イソシアネート、例えば−(CH−NHタイプのアミン、スルホン酸若しくはスルホネート、ホスホン酸若しくはホスホネート(nは0〜10の範囲の整数である);又は、変換後に有機樹脂と反応する傾向にあり、且つ以下により構成される群内で選択される1つ又は複数の前駆体置換基:NO、N、(CH−CN、(CH−CHO、(CH−COOP(Pは保護基である)、−(CH−NHP’、(CH−N(P’、(CH−N=P”(式中、P’、P”は保護基であり、nは1〜10の範囲の整数である)を含むことを特徴とする。塩化フェナシル、塩化スルホニル又は塩化アセチルは、アミド保護基の例である。
【0057】
本発明の好ましい方法は、上記に特定されるような方法であり、芳香族が、生物学的分子と直接反応する傾向にあり、且つ下記により構成される群で選択される1つ又は複数の置換基:アリル基又はビニル基又はアセチレン基、ハロゲン、例えば−(CH−CH−OHタイプのアルコール、例えば−(CH−COOHタイプのカルボン酸、酸無水物又はハライド、ニトリル、イソシアネート、例えば−(CH−NHタイプのアミン(nは0〜10の範囲の整数である)、スルホン酸若しくはスルホネート、ホスホン酸若しくはホスホネートを含み;又は変換後に有機樹脂と反応する傾向にあり、且つ以下により構成される群内で選択される1つ又は複数の前駆体置換基:NO、N、(CH−CN、(CH−CHO、(CH−COOP(Pは保護基である)、−(CH−NHP’、(CH−N(P’、(CH−N=P”(式中、P’、P”は保護基であり、nは1〜10の範囲の整数である)を含むことを特徴とする。塩化フェナシル、塩化スルホニル又は塩化アセチルは、アミド保護基の例である。
【0058】
有利な製造方法によれば、本発明の方法は、芳香族が、官能性有機分子と直接反応する傾向にあり、且つ下記により構成される群で選択される1つ又は複数の置換基:アリル基又はビニル基又はアセチレン基、ハロゲン、例えば−(CH−CH−OHタイプのアルコール、例えば−(CH−COOHタイプのカルボン酸、酸無水物若しくはハライド、ニトリル、イソシアネート、例えば−(CH−NHタイプのアミン(nは0〜10の範囲の整数である)、スルホン酸若しくはスルホネート、ホスホン酸若しくはホスホネート;又は、変換後に有機樹脂と反応する傾向にあり、且つ下記により構成される群内で選択される1つ又は複数の前駆体置換基:NO、N、(CH−CN、(CH−CHO、(CH−COOP(Pは保護基である)、−(CH−NHP’、(CH−N(P’、(CH−N=P”(式中、P’、P”は保護基であり、nは1〜10の範囲の整数である)を含むことを特徴とする。塩化フェナシル、塩化スルホニル又は塩化アセチルは、アミド保護基の例である。
【0059】
また、本発明は、上記に特定されるような方法に関し、ジアゾニウム塩が下記から選択されることを特徴とする:
【0060】
【化2】

式中、R’’は以下の基から選択される:
−CH、n−C、n−C1225、−OC1225、−OC1633、Cl、−Br、−I、−CHBr、−CH(CH)Br、−CH−O−C(=O)CH(CH)Br、−CH−O−C(=O)C(CHBr、−OH、−CHOH、−SH、−CHCHSH、−CHO、−COCH、COOH及び3,4−(COOH)、3−COOH−4−NO、3,4−(C(=O)F)、−CHCOOH、−CHCHCOOH、−COOC、−NHC(=O)Ot−Bu、−NHC(=O)CH、−NHC(=O)CF、CHCHNH、−CN及び3,4−(CN)、3−NO及び4−NO、ピロリル、o−ヒドロキシベンゾイル、2−(2−チオフェン−3−イル−アセチル)−アミノエチル、4−ベンゾイルベンゼン、4−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−ピロール−1−イル)、3−イソニトリル、3−ジオキソ−1H−イソクロメン−5−ジアゾニウム−3H−ベンゾ[デ]クロメン−5−ジアゾニウム、3−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−ピロール−1−イル)及び4−[1−(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−1−イロキシ)]−エチル。
【0061】
本発明はまた、上記に特定されるような方法に関し、ジアゾニウム塩がジアゾレジンであることを特徴とする。
【0062】
「ジアゾレジン」という用語は、ホルムアルデヒドと、ジアゾニウム塩との、好ましくは置換ジフェニルアミン又は無置換ジフェニルアミンのジアゾニウム塩との縮合により得られるポリマーを指す。
これらのジアゾレジンは、印刷用の板の製造において感光層として産業上使用される化合物である(Zhao C., Chen J.Y., Cao, W.X., Angewandte Makromolekulare Chemie, 1998, 259, 77-82;米国特許第6,165,689号)。
【0063】
本発明は、上記に特定されるような方法に関し、絶縁材料が本質的に有機物であり、以下の芳香族ポリマー及び脂肪族ポリマーから選択されることを特徴とする:
芳香族ポリマー:ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、芳香族ポリアミド(PPA)、ビスフェノールポリテレフタレート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミド−イミド(PAI、トーロン(登録商標))、ポリピロメリチド(カプトン(登録商標))、ポリスチレン(PS)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(4−ビニルピリジン)(4VP)又はポリ(2−ビニルピリジン)(2VP)、ポリビニルカルバゾール、及び
脂肪族ポリマー:ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソブチレン(P−IB)、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルホルマール(PVFM)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、様々なポリアミド、ポリオキソメタレート(POM)、セルロース誘導体及びポリアクリロニトリル(PAN)。
【0064】
本発明はまた、上記に特定されるような方法に関し、絶縁体材料又は二元化合物若しくは三元化合物が、以下から選択されることを特徴とする:AsGa、SiO、SiC、TiN、TaN、TaN/Ta及びWCN(ドープされている、いないにかかわらず)。
【0065】
本発明はまた、上記に特定されるような方法に関し、還元剤の使用を含むことを特徴とする。
【0066】
「還元剤」という用語は、酸化体に電子を供給する傾向にある化合物を意味する。
【0067】
本発明の製造方法の有利な手段によれば、還元剤は、以下から選択される:
0 V/SCE又はマイナスに近い酸化電位を有する還元剤、次亜リン酸、ハライド塩、特にヨウ化ナトリウム、フェロセン及びその誘導体、特にフェロセン−メタノール又はフェロセンカルボン酸、アスコルビン酸、ジメチルアミノボラン、水素化ホウ素ナトリウム、ビオロゲン塩、特にメチルビオロゲン又はベンゾビオロゲン、及びフェノラート、特にビスフェノラート。
【0068】
有利な実施の形態によれば、本発明の方法が還元剤の使用を含む場合、上記方法は、表面をジアゾニウム塩及び還元剤と接触させて配置することを含み、該還元剤は、該ジアゾニウム塩に対して化学量論量で又は化学量論よりも多い量で存在することを特徴とする。
【0069】
有利な実施の形態によれば、本発明の方法が還元剤の使用を含む場合、該方法は、水溶液中で、或いは以下から選択される非プロトン性溶媒中で実施されることを特徴とする:アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びアセトアミド。
【0070】
本発明はまた、上記に特定されるような方法に関し、ジアゾニウム塩から形成される電荷移動錯体の光化学的照射を含むことを特徴とする。
【0071】
好適な実施の形態によれば、本発明の方法は、ジアゾニウム塩の還元と表面に結合するアリールラジカルの形成を達成するための、ジアゾニウム塩と電子供与体芳香族化合物とを反応させることによる電荷移動錯体の形成、及び上記電荷移動錯体の照射を含む。
【0072】
好適な実施の形態では、本発明の方法は、ジアゾニウム塩から形成される電荷移動錯体の光化学的照射を含み、次の工程を含むことを特徴とする:
表面をジアゾニウム塩と電子供与体芳香族化合物とを接触させて配置し、電荷移動錯体を得ること、及び
電荷移動錯体の照射、特に光化学による照射をし、ジアゾニウム塩の還元及び上記表面に結合するアリールラジカルの形成を得ること。
【0073】
好適な実施の形態によれば、ジアゾニウム塩から形成される電荷移動錯体の光化学的放射を含む、上記に特定されるような本発明の方法は、電子供与体芳香族化合物が修飾される表面から誘導され、該表面が以下から選択される芳香族ポリマーであることを特徴とする:
ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、芳香族ポリアミド(PPA)、ビスフェノールポリテレフタレート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミド−イミド(PAI、トーロン(登録商標))、ポリピロメリチド(カプトン(登録商標))、ポリスチレン(PS)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(4−ビニルピリジン)(4VP)又はポリ(2−ビニルピリジン)(2VP)、ポリビニルカルバゾール。
【0074】
好ましい実施の形態によれば、ジアゾニウム塩から形成される電荷移動錯体の光化学的照射を含む、上記に特定されるような本発明の方法は、以下から選択される非プロトン性溶媒中で実施されることを特徴とする:
アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びアセトアミド。
【0075】
好ましい実施の形態によれば、ジアゾニウム塩から形成される電荷移動錯体の光化学的照射を含む、上記に特定されるような本発明の方法は、電子供与体芳香族化合物が、以下から選択されることと特徴とする:
1,4−ジメトキシベンゼン、トルエン、p−キシレン、メシチレン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、p−ジメトキシベンゼン及びp−ジエトキシベンゼン。
【0076】
有利な実施の形態によれば、ジアゾニウム塩から形成される電荷移動錯体の光化学的照射を含む、上記に特定されるような本発明の方法は、ジアゾニウム塩が、から選択されることを特徴とする:
4−ブロモベンゼンジアゾニウム、4−ヨードベンゼンジアゾニウム及び4−ジアゾニウム安息香酸。
【0077】
本発明はまた、上記に特定されるような方法に関し、超音波の使用を含むことを特徴とする。
【0078】
別の好適な実施の形態によれば、上記に特定されるような本発明の方法は、表面を上記ジアゾニウム塩と接触させて配置させて超音波による処理の段階を含むことを特徴とする。
【0079】
別の好ましい実施の形態によれば、上記に特定されるような本発明の方法は、その間に材料が、超音波を照射したジアゾニウム塩溶液に浸される単一段階を含むことを特徴とする。
【0080】
有利な実施の形態によれば、超音波の使用を含む、上記に特定されるような本発明の方法は、水性酸性媒質中で、エチルアルコール中で、並びに以下から選択される非プロトン性溶媒中で実施されることを特徴とする:
アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びアセトアミド。
【0081】
本発明はまた、上記で定義されるような方法の利用により得られる、有機絶縁体材料若しくは無機絶縁体材料又は無機半導体材料又は二元化合物若しくは三元化合物又は複合材料の修飾された表面に関する。
【0082】
本発明の方法は、ポリマー又は無機化合物の修飾された表面の調製を可能にし、それらの構造及び内部組成は、表面の構造及び組成に無関係である。その結果、特異的特性を表面に付与することができる。例えば、ポリマーを調製することができ、それらの機械的特性は、脂肪族鎖又は芳香族鎖の化学的性質、及び用途の使用目的(生物医学、支持薬等)に依存する調節可能な官能基を有する表面により提供される。
本発明の方法はまた、有機官能基を有し、且つマイクロエレクトロニクスにおけるセンサ又は特異層としての使用に適している
無機材料を調製することを可能にする。
【0083】
特に有利な実施の形態によれば、本発明により修飾された表面は、グラフトされる芳香族基が、さらなる官能基化反応を受ける傾向にあることを特徴とする。
【0084】
「さらなる官能基化反応」という用語は、例えば、最初にグラフトされた層上に、例えば抗炎症剤、抗生物質、細胞分裂抑制剤、酵素、錯化剤、ポリマー又は色素の薬理作用を有する分子のみならず、(無機基の場合)センサの製造で使用することができる錯化分子もカップリングする反応を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
本出願では、芳香族基は、均質な還元剤による、光化学による又は超音波での活性化による還元を使用してポリマー上にグラフトされる。
【0086】
活性化なしのグラフト試験(反応ブランク)を予め実施して、ジアゾニウム塩がポリマー又は誘電体上で反応することができるために活性化が不可欠であることを明らかに示した。
【0087】
【表1】

【0088】
他方で、反応は、本出願で使用される濃度よりも低い濃度で実施された:表2に示すその結果は、グラフトを検出することが可能であるには高濃度が使用されなくてはならないことを有効に示している。
【0089】
【表2】

【0090】
ジアゾニウム塩からのラジカルの形成は、脱ジアゾ化(de-diazotisation)反応に基づく。それは、不均一に(Arの形成)又は均一に(Arの形成)成され得る。好適に求められているのはこの後者の反応である(Galli, C. Chem. Rev. 1988, 88, 765)。
【0091】
還元剤による及び電荷移動錯体からの光化学によるラジカルの生産は、J. K. Kochiによる刊行物(D. Kosynkin, T.M. Bockman, J.K. Kochi, J. Am. Chem. Soc., 119, 4846, (1997))に基づいており、これは、ジアゾニウム塩の均質な還元により得られるラジカルが、S均一芳香族置換反応に従って、溶媒として使用される芳香族化合物と結合することを示した。
【化3】

【0092】
溶媒として使用される芳香族化合物の非存在下では、同じラジカルは、それら自体を芳香族基若しくは二重結合に付加するか、又はポリマーから水素原子を取り除いてアリールラジカルと結合しやすいラジカルを形成するかのいずれかにより一部は溶媒と、一部は(表面)ポリマーと反応する。
【0093】
第1の反応の図式を以下に示す:
【化4】

【0094】
均一芳香族置換に続いて、ジアゾニウム塩による中間体シクロヘキサジエニルラジカルの再酸化が行われる。同じ反応であり、炭素又は金属上へのジアゾニウム塩のグラフト中のポリフェニレン層の成長を確実にする(Combellas, C.; Kanoufi, F.; Pinson, J.; Podvorica, F. Langmuir 2005, 21, 280)。
【0095】
二重結合への芳香族ラジカルの付加は、当該技術分野で既知の反応であり、それは、Merweein反応である(Dombrovski、Rondestvedt、上記で引用)。
【化5】

【0096】
ポリマーから水素原子を取り除き、続いて起こる2つのラジカルのカップリングは下記の通りに描くことができる:
【化6】

【0097】
超音波によるラジカル形成のメカニズムは、様々な概説に記載されている(Cravotto, G.; Cintas, P. Chem. Soc. Rev. 2006, 35, 180及び引用される参照文献)。ジアゾニウム塩からのラジカルの形成は、重合を誘発するのに使用されてきた(Cheng, M.H.; Gaddam, K.J. Appl. Polym. Sci. 2000, 76, 101;Vivekanandam, T.S.; Gopalan, A.; Vasudevan, T.; Umapathy, S. Polymer 1999, 40, 807.)。
【0098】
使用表面 PP:ポリプロピレン箔(供給業者Goodfellow)
PET:ポリメチルテレフタレート箔(供給業者DSM)
PEEK:ポリエーテルエーテルケトン箔(供給業者Goodfellow)
PE:超高分子量ポリエチレン(供給業者Goodfellow)
テフロン:ポリテトラフルオロエチレン(供給業者Goodfellow)
ABS:アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(供給業者Goodfellow)
*スチレン−アクリロニトリル(SAN)共重合体相にグラフトしたエラストマー相(ブタジエン)を分散させることによって得られる
カプトン(登録商標)ポリイミド(供給業者Dupont)
ポリアミド(バルーンステント)
TiN、SiC、SiOC、SiO
ジアゾニウム塩:4−ブロモベンゼンジアゾニウムのテトラフルオロボレート(Aldrich)
【0099】
I.均質な還元剤による還元
J.K. Kochi(Kosynkin D., Bockman T,M., Kochi J.K., J. Am. Chem. Soc., 1997, 119, 4846)により記載される2つの還元剤を使用した:NaI及びフェロセンメタノール(FcCHOH)。より一般的には、他の還元剤、例えば次亜リン酸塩(Panduragappa, M., N., S. Lawrence, R., G. Compton, Analyst, 2002, 1568-1571)又はアスコルビン酸(Costas-Costas, U.; Bravo-Diaz, C.; Gonzalez-Romero, E. Langmuir 2004, 20, 1631)、より一般的には、その酸化還元電位がジアゾニウム塩の酸化還元電位(それは、全てのジアゾニウム塩を還元するために0.5V/SCEよりも低い)よりもプラスである化合物全てが考えられ得る。
[実施例]
【実施例1】
【0100】
還元剤としてのNaIの使用
修飾されるべき表面のサンプルを試験管中に配置する。さらに、2つの溶液を調製する。
1.アセトニトリル(ACN)14ml+4−ブロモベンゼンジアゾニウム1.12g(1.47M)
2.アセトニトリル(ACN)14ml+NaI0.609g(1.47M)
【0101】
この実験は、4−ブロモベンゼンジアゾニウムの溶解限度に非常に近い濃度で行われる。
【0102】
溶液1を2ml、続いて溶液2を2ml各試験管に加える。これらの2つの溶液の混合物は、その試験管を超音波容器に1秒間入れることにより均質化される。窒素の激しい放出が観察され、混合物は発泡する。混合物は褐色に変化する(I)。それを1時間静置する。サンプルを超音波下に水ですすぎ(10分)、アセトン(分析用)で2度すすいで(10分間)、真空中で18時間乾燥する。
【0103】
【表3】

【0104】
ポリマーの表面上への臭素、及びさらにはポリマーPETの臭素化されたフラグメントの存在は、ジアゾニウムがポリマー及び誘電体の表面と反応することを明らかに示している。さらに、ヨウ素の存在を表面上で確認することができ、これは、NaI還元剤から誘導されたヨウ素原子が表面上で反応したことを示す。
【実施例2】
【0105】
還元剤としてのフェロセンメタノール(FcCHOH)の使用
修飾されるべき表面のサンプルを試験管中に配置する。次に、溶液を調製する。
1.アセトニトリル(ACN)14ml+4−ブロモベンゼンジアゾニウム0.39g(0.1M)
2.アセトニトリル(ACN)14ml+FcCHOH0.30g(0.1M)
【0106】
溶液1を2ml、続いて溶液2を2ml各試験管に加える(最終濃度0.05M)。これらの2つの溶液の混合物は、その試験管を超音波容器に5分間入れることにより均質化される。窒素の放出が観察される。混合物はオレンジ色から濃緑色に変化する。それを1時間静置する。サンプルをアセトン(分析用)で2度すすいで(10分間)、真空中で18時間乾燥する。
【0107】
【表4】

【0108】
ポリマーの表面上への臭素、及びさらにはポリマーPETの臭素化されたフラグメントの存在は、ジアゾニウムがポリマー及び誘電体の表面と反応することを明らかに示している。
【実施例3】
【0109】
−CCOOH基は、以下の操作方法に従って、フェロセンメタノールによる相当するジアゾニウムテトラフルオロボレートの還元によってグラフトされている。
【0110】
次の溶液を調製する:
a)ACN7.5mlにBF COOH175mgを溶解した溶液(c=0.1M)、及び
b)ACN7.5mlにフェロセンメタノール(FcCHOH)162mgを溶解した溶液(c=0.1M)。
【0111】
まず、溶液a)2.5mlを、ポリマーのサンプルを含有する溶血チューブに加え(表3参照)、続いて溶液b)2.5mlを加える(最終濃度COOH50mM及びFcCHOH50mM):これらの2つの溶液の混合物は暗緑色に変わり、窒素の気泡を放出する。次に、混合物を超音波中に10分間配置する。サンプルを超音波下アセトンですすぎ(10分間)、水(10分)及び分析用ACN(10分)ですすぐ。
【0112】
【表5】

【0113】
水の接触角も、還元剤による処理前及び処理後に測定した。
【0114】
【表6】

【0115】
表面のより親水性の性質に加えてC=O基及び芳香環に相当するIRバンドの存在は、表面へのフェニルカルボン酸基のグラフトを証明する。
【実施例4】
【0116】
還元剤としての次亜リン酸の使用
次亜リン酸は、ジアゾニウム塩を還元するのに使用されてきた(Pandurangappa他, 2002, 上記で引用; Miklukhin, G. P.; Rekasheva, A. F.; Pisarzhevskii, L.V. Doklady Akad. Nauk., 1952, 85, 82;Kornblum, N.; Kelley, A.E.; Cooper, G.D. J. Am. Chem. Soc., 1952, 74, 3074)、及び好ましくはカーボンブラックの存在下で使用されてきた。カーボンブラックは、カーボンブラックの表面がジアゾニウムから誘導されたアリール基により修飾されるのを可能にする。
【0117】
それぞれポリマー(PP、PET、PEEK箔)のサンプルを含有する3つの溶血チューブに、4−ヨードベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートを190mg(最終濃度0.15M)入れて、続いて50%次亜リン酸の水溶液4ml(最終濃度0.15M)を加える。チューブを超音波容器中に10分間配置して、混合物を均質化させ、ジアゾニウム塩は徐々に溶解する。反応の終了時に、析出物が形成されて、油状表面が浮遊する液体及び強力な芳香族臭が観察され、おそらくヨードベンゼンの形成を示す(Miklukhin他, 1952- 上記で引用)。サンプルを水道水ですすぎ、続いて蒸留水で2度(超音波下で10分)すすぎ、最終的に分析用のアセトニトリルで(超音波下で10分)すすぐ。サンプルを真空中40℃で乾燥する。
【0118】
【表7】

【0119】
【表8】

【0120】
芳香族基に相当するIRバンドの存在及びヨウ素化された有機フラグメントは、ヨードフェニル基のグラフトを明らかに実証する。
【実施例5】
【0121】
同じ還元剤を使用して、PE、テフロン及びABSの存在下で4−ブロモベンゼンジアゾニウムを還元する。それぞれポリマーのサンプルを含有する3つの試験管に、4−ブロモベンゼンテトラフルオロボレートを272mg入れて、次亜リン酸(50%水溶液)を5ml加える。最終ジアゾニウム濃度は0.2Mである。チューブを超音波容器中に10分間配置させて、混合物を均質化する。最終溶液は濁っており、強烈な芳香臭を有している。サンプルは、蛇口から出る熱湯で十分すすぎ、次に蒸留水で超音波下に2度10分間すすぎ、続いてアセトン(PP、テフロン)で又はイソプロパノール(ABS)で10分間超音波下によくすすぐ。次に、それらを真空中40℃で乾燥する。
【0122】
【表9】

【0123】
【表10】

【0124】
赤外スペクトル及びToF−SIMSスペクトルは、グラフト、特にブロモフェニル基を含むフラグメントの存在を示す。
【実施例6】
【0125】
この同じ方法を使用して、二元化合物又は三元化合物((TiN:20nm厚)、TaN、TaN/Ta(TaN15nm上に10nm層で堆積されたタンタル))及びマイクロエレクトロニクスで使用される誘電体(SiC、SiOC、SiO)の表面を修飾した。それぞれTiN、TaN、SiC、SiOC、SiOのサンプルを含有する5つの試験管に、トリフルオロメチルベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート270mgを加える(これは、最終濃度0.2Mに相当する)。各管に、HPO(50%水溶液)を5ml加えて、それを超音波容器中に5分間振とうし、最後には油が水溶液の表面上に浮遊する。サンプルを熱い水道水で、蒸留水で超音波下に2度10分間、及びアセトンで超音波下に1度洗浄して、最終的に真空中40℃にて乾燥する。
【0126】
【表11】

【0127】
ToF−SIMSスペクトルにより、誘電体の表面上にトリフルオロメチルフェニルのグラフトが確認される(トリフルオロメチルフェニルフラグメントの存在に特に留意すべきである)が、スペクトル上での明らかに目に見えるリン酸残基の存在に留意すべきである。
【0128】
II.光化学的照射による電荷移動錯体の還元
Kosynkin他(1997年)(既に引用した)による論文において、J.K. Kochiは、ジアゾニウム塩(ペンタフルオロベンゼンジアゾニウム及び2,4,6−トリクロロ−3,5−ジフルオロベンゼンジアゾニウム、即ち、それらをより簡単に還元可能にする電子求引性化学基を保有するジアゾニウム塩)が、可視波長における吸収を特徴とするナフタレン又は1,4−ジメトキシベンゼンのような電子が豊富な芳香族化合物と電荷移動錯体を形成することを示している。これらの錯体の照射は励起状態をもたらし、そこで芳香族化合物からジアゾニウム塩への電子移動が起こり、これがアリールラジカルの形成を導き、アリールラジカルが、引用した刊行物の場合では、芳香族溶媒と反応して、ビフェニルへと導く。この反応は、アリールラジカルと本発明者等の基の表面との反応を得るように置き換えられている。
【実施例7】
【0129】
4−ブロモベンゼンジアゾニウムと1,4−ジメトキシベンゼンとの間の電荷移動錯体の形成及び照射
次の2つの溶液を調製する:
1.ACN14ml中に、4−ブロモベンゼンジアゾニウム1.12g(0.30M)
2.ACN14ml中に、1,4−ジメトキシベンゼン0.57g(0.30M)
【0130】
サンプルを試験管中に入れて、各溶液2mlを添加する:電荷移動錯体の形成に相当する黄金色が観察される。
【0131】
次に、溶液をサンプル上に堆積し、蒸発して、Fisons照射トンネル(Hランプ)に導入する。5回の通過を行う(ベルト速度:2cm/s、又はおよそ40秒の照射)。堆積及び照射を2度繰り返して、トンネル中を10回通過させて終了する。サンプルをアセトンで2回、次に分析用アセトニトリルで2回(依然、超音波下で)慎重にすすいで、続いて真空中40℃で16時間乾燥する。
【0132】
【表12】

【0133】
ToF−SIMSスペクトル上での臭素の存在は、表面への4−ブロモフェニル基のグラフトと完全に適合する。
【実施例8】
【0134】
4−アミノ安息香酸のジアゾニウム塩と1,4−ジメトキシベンゼンとの間の電荷移動錯体の形成及び照射
ポリマーの3つのサンプルをガラス板にテープで貼り、そしてアセトニトリル(ACN)中に0.4Mの4−アミノ安息香酸のジアゾニウム塩と0.4Mの1,4−ジメトキシベンゼンとを含有する溶液(したがって、最終濃度は0.2Mである)を、ピペットを使用してこれらのサンプル上に堆積する。溶液は、PEEKを良好に湿らせ、PETを平均的に湿らせ、PPを非常に不完全に湿らせる(溶液は、絶えず広がって、ACNを蒸発させなくてはならない)。照射トンネル(Fisons、H水銀ランプ)中を5回の通過後、又はおよそ20秒の照射後に、溶液をランプの熱の下で完全に蒸発する。アセトンで、及びACN(分析用)で2回超音波下に10分間リンスし、真空中40℃にてで乾燥する。
【0135】
【表13】

【0136】
水の接触角もまた、電荷移動錯体による処理前及び処理後に測定した。
【0137】
【表14】

【0138】
カルボキシフェニル基のC=Oバンドの存在及び表面のより親水性の性質は、カルボキシフェニル化学基のグラフトを良好に実証している。
【実施例9】
【0139】
ジアゾニウム塩の存在下における表面照射によるブロモフェニル基及びトリフルオロフェニル基のグラフト
前述の実施例において、電子が豊富な芳香族化合物を、照射した溶液に添加して、電荷移動錯体を形成した。この実施例では、電荷移動錯体を形成するためにポリマー自体(PEEK、PET、ABS、電子が豊富な)を使用できるように芳香族化合物を除外している。
【0140】
これらのPEEK、PET、ABSポリマーのそれぞれ2つのサンプル上に、HSO(0.1N)中の4−ブロモベンゼンジアゾニウムの飽和溶液を堆積し、及びもう一方の上にHSO(0.1N)中の4−トリフルオロメチルベンゼンジアゾニウムの飽和溶液を堆積する。これらのサンプルを、トンネル中で水銀蒸気ランプ(H−ランプ)下でおよそ100秒間照射する。サンプルを熱湯で、次に蒸留水で2回超音波下で10分間、続いてアセトンで超音波下で10分間よくすすいで、そして真空中で乾燥する。
【0141】
【表15】

【0142】
臭素及びトリフルオロメチルフェニル基の存在は、ポリマーの表面上へのブロモフェニル基及びトリフルオロメチルフェニル基のグラフトの特徴を示している。
【0143】
III.超音波の使用
使用表面 PP:ポリプロピレン箔(供給業者Goodfellow)
PET:ポリエチルテレフタレート箔(供給業者DSM)
PEEK:ポリエーテルエーテルケトン箔(供給業者Goodfellow)
TiN、SiC、SiOC、SiO
ジアゾニウム塩 4−ブロモベンゼンジアゾニウムのテトラフルオロボレート(Aldrich)
4−ブロモベンゼンジアゾニウムのテトラフルオロボレート(Aldrich)
4−アミノ安息香酸ジアゾニウムテトラフルオロボレート(Alchimer)
4−ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート(Alchimer)
【0144】
使用する超音波容器は、半分の電力で使用される2×320W電力のSonorex Super RK 103H容器であり、その周波数は35kHzである。
【0145】
パワー超音波(Power Ultrasound(100KHzで20))の使用は、化学反応を活性化又は誘発することができ、この方法は、最近の論文の主題となっている(Cravotto, G.; Cintas, P. Chem. Soc. Rev 2006, 35, 180)。超音波の化学的な効果は、局所的に高温及び高圧を生じるキャビテーションの現象と関連付けられる。この現象の結果の1つは、ラジカルの形成である。したがって、アゾビスイソブチロニトリルとペルオキシ二硫酸塩から得られるラジカルは、アクリルアミドの重合を誘発するのに使用されている(Cheung, M.H.; Gaddam, K.J. Appl. Polym. Sci. 2000, 76, 101)。ジアゾニウム塩の分解は、スピントラッピング実験により観察されている(Rehorek, D.; Janzen, E.G.J. Prakt. Chem. 1984, 326, 935)。ジアゾニウム塩及び過酸化物の分解から誘導されるラジカルは、ポリマー及び誘電体の表面を修飾するのに使用されている。
【実施例10】
【0146】
ニトロフェニル基によるポリプロピレンのグラフト
ポリプロピレン(PP)のサンプルを含有する試験管に、ACN25mLと4−ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート1g(c=0.16M)を導入して、超音波下に1時間10分放置する。サンプルをアセトンで超音波下10分間、続いてメタノール(分析用)で慎重にすすぐ。サンプルのXPS解析により、402eVでN1sピークの存在が示され、これはおそらく、頻繁に観察されているようにX線ビーム下でアミンに還元されているニトロ基(−NO)の窒素に相当する(P. Mendes, M. Belloni; Ashworth; C. Hardy; K. Nikitin; D. Fitzmaurice; K. Critchley; S. Evans; J. Preece Chem. Phys. Chem. 2003, 4, 884)。
【実施例11】
【0147】
ブロモフェニル基によるポリマー及びマイクロエレクトロニクス基材のグラフト−アセトニトリル中の溶液
上記と同じ条件下で、ポリマー表面、二元化合物又は三元化合物表面及びマイクロエレクトロニクスにおける絶縁体表面(SiC、SiO、SiOC)は、4−ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート塩を使用して一度に全部処理する。
【0148】
【表16】

【0149】
臭素の存在は、表面へのブロモフェニル基のグラフトを証明している。
【実施例12】
【0150】
ブロモフェニル基によるポリマーの表面のグラフト。水溶液中の反応
SO(0.1M)中への4−ブロモベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートの0.2M溶液(実質的に飽和溶液)を、ポリマー(PP、PET、PEEK、PE、テフロン、ABS)のサンプルを含有する5個の試験管に分配する。管を超音波容器中に1時間配置する。サンプルを熱い水道水ですすぎ、蒸留水で超音波下2回すすぎ(10分)、そしてアセトン又はイソプロパノール(ABS)ですすいで、最終的に真空中で乾燥する。
【0151】
【表17】

【0152】
【表18】

【0153】
IRスペクトル及びToF−SIMSスペクトルは、表面にグラフトされたブロモフェニル基の存在を非常に明確に証明している。
【実施例13】
【0154】
カルボキシフェニル基によるポリマーのグラフト。アセトニトリル中の溶液
ポリマー(PP、PET又はPEEK)のサンプルを、4−アミノ安息香酸ジアゾニウムテトラフルオロボレート溶液(1.4g;溶解限度−アセトニトリル(15mL)中0.4M)に浸して、超音波下に1時間放置して、照射の最後で、温度は45℃に達する。サンプルをアセトンで超音波下10分間すすぎ、蒸留水で超音波下ですすぎ(10分)、最後に分析用のアセトニトリルで超音波下で(10分)すすぐ。次に、サンプルをIRにより解析する。
【0155】
【表19】

【0156】
水の接触角を処理前及び処理後に測定した。
【0157】
【表20】

【0158】
表面のより親水性の性質に加えてIRにおけるC=Oバンド及び芳香族バンドの存在は、4−カルボキシフェニル基のグラフトを証明する。
【実施例14】
【0159】
アントラキノン基によるポリマーのグラフト。アセトニトリル中の溶液
3つのポリマーサンプル(PP、PET、PEEK)を、Fast Red AL塩(この化学式を以下に示す)のアセトニトリルの飽和溶液(0.1M未満)中に導入する。超音波照射1時間後、サンプルを水、アセトンで、次に蒸留水で超音波下10分間すすぎ、続いてアセトン、続いて分析用のアセトニリルですすぐ。
次に、サンプルをIRにより検査する。
【化7】

【0160】
【表21】

【0161】
弱いけれども、3つのケースで、Fast Red Al塩のC=Oバンドを確認することが可能であり、そのグラフトを良好に証明している。
【実施例15】
【0162】
トリフルオロメチルフェニル基によるポリマーのグラフト。反応時間に依存するグラフト変動
それぞれPPのサンプルを含有する5個のチューブを調製し、同じことをPET及びPEEKサンプルに関して行う。アセトニトリル中の4−トリフルオロメチルフェニルベンゼンジアゾニウムの0.15M溶液45mlを調製して、これをチューブ1個当たり3mlの割合で15個のチューブ間に分配する、チューブを即座に超音波容器中に配置する。3つのサンプル(PP、PET、PEEK)を5分後、10分後、20分後、40分後及び60分後に取って、経時的なグラフトの割合における変動を検査する。サンプルをアセトンで2回洗浄し(超音波下で10分)、次にアセトニトリルで洗浄して(超音波下で10分)、真空中40℃で乾燥する。
【0163】
次に、サンプルをIR分光法により検査する。
【0164】
【表22】

【0165】
スペクトルは、トリフルオロメチルフェニル基のグラフトと一致する。グラフト速度論を追跡するために、経時的な−CFバンドの強度を図1、図2及び図3に描いている。
【0166】
種々のCFバンドの強度の変動における類似性は、観察される変動が人為的な結果に起因するものではないことを示す。これらの強度の変動の平均値は、20分後に限界値に達する。したがって、超音波による照射のこの期間は、最大グラフトを得るのに十分である。
【実施例16】
【0167】
トリフルオロメチルフェニル基による二元化合物又は三元化合物及び無機誘電体の水溶液中でのグラフト
それぞれTiN、TaN、SiC、SiOC、SiOのサンプルを含有する5つの試験管に、4−トリフルオロメチルベンゼンジアゾニウムを260mg(最終濃度0.2M;飽和溶液)添加し、次に0.1NのHSOを5ml添加する。それを超音波下で1時間放置する。サンプルを熱湯で洗浄し、蒸留水で10分間超音波下に2回、アセトンで10分間超音波下に1回洗浄して、真空中40℃で乾燥する。
【0168】
【表23】

【0169】
全てのケースで、化学基CF及びCCFが観察され、これは表面の修飾を示す。
【実施例17】
【0170】
アルコール溶液又は非緩衝水溶液中における4−ニトロベンゼンジアゾニウムの存在下でのカプトン(登録商標)及びPETのグラフト
Bravo-Diaz 等(Costas-Costas, U.; Bravo-Diaz, C.; Gonzalez-Romero, E. Langmuir 2004, 20, 1631)は、脱ジアゾ化反応(即ち、化学官能基ジアゾニウム−N≡Nを失うこと)が、2つの異なる方法で:アリールカチオン(Ar)の形成を伴って不均一に、又はラジカル(Ar)の形成を伴って均一にのいずれかで達成できるこをと示している(Pazo-Llorente, R.; Bravo-Diaz, C.; Gonzalez-Romero, E. Eur. J. Org. Chem. 2004, 3221)。彼らは、加エタノール分解が、ジアゾエーテル(Ar−N=N−OR)の中間体を経てアリールラジカルを形成するのに効率的な方法であることを示した。したがって、均一脱ジアゾ化反応は、超音波下での活性化によりエタノール中で実施された。
【0171】
カプトン(登録商標)又はPETのサンプルを含有する溶血チューブに、エチルアルコール6ml中の4−ニトロベンゼンジアゾニウム213mg溶液(c=0.1M)を導入して、超音波容器中に60分間配置する。次に、サンプルを蒸留水で(2回、10分間)超音波下ですすいで乾燥し、再び10分間アセトンで超音波下にすすぐ。−NO化学基の特徴的なピークの強度は、反応がアセトニトリル中で実施される場合と同程度である。グラフト−CNOの特徴的なピーク(NO、CNO及び基自体のピークの強度の減少)が、Tof−SIMSにより良好に同定される。
【0172】
同様に、Bunnett(Bunnett, J.F.; Yjima, C.J. Org. Chem. 1977, 42, 639)は、塩基性メタノール中で脱ジアゾ化反応を実施することが可能であることを示した。カプトン(登録商標)のサンプルを塩基性メタノール(メタノール中4%水酸化テトラメチルアンモニウム)0.1M中に入れて、これを上記のように処理した。アセトニリル中で実施されるグラフトと有意な差は見られず、反対にポリマーの表面は、塩基性条件により修飾されるように見える。
【0173】
同じ反応を、非緩衝蒸留水中で同じジアゾニウム濃度で実施した。−NO化学基のピークは、反応がアセトニトリル中で実施される場合と同程度である。
【実施例18】
【0174】
バルーンへのステントの接着を改善するための動脈ステントの設置に使用されるバルーンのグラフト
ステントは、狭窄(特に遮断されている)を患う動脈の内側に設置されるデバイスである。金属格子の円筒で作製されるこれらのデバイスに、長いカテーテルの先端にそれ自体が固定された一般的にポリアミドの小さなバルーン(しぼんでいて、折りたたまれている)を挿入する。ステントが配置された時点で、心臓専門医は、カテーテルの先端にあるバルーン上に捲縮させたステントを導入する。心臓専門医は、狭窄の位置にそのデバイスを押し進め、それ自体がステントを拡張するバルーンをふくらませる。いったんステントが適所に配置されると、バルーンをしぼませて、カテーテルにより動脈から除去する。ステントは、バルーンに十分に付着されなくてはならず、したがって適所に設置される前にはカテーテルが自由であるべきではなく、同時に結合は、バルーンをしぼませるとバルーンがステントと分離するのに十分弱くなくてはならない。バルーンとステントの間の接着は、超音波下でジアゾニウム塩によりバルーンの表面を処理することにより改善された。
【0175】
カテーテルの先端に固定されるバルーンが開くのを防ぐために、バルーンは、カテーテルの他端に固定されるシリンジによる吸引により押さえ込まれる。次に、バルーンはエタノール中で10分間浄化された後、滅菌器中で40℃にて2時間乾燥する。続いて、バルーンを、上述の容器中で超音波下に1時間、4−アミノ安息香酸ジアゾニウム塩の溶液(HSO10mM)(0.15M)中に入れる。次に、バルーンを蒸留水ですすぎ(5分)、次にアセトンで(1分)超音波下にすすいで、最終的に真空中40℃で乾燥する。
【0176】
グラフトされたバルーンの解析を以下の表に取り纏める。
【0177】
【表24】

【0178】
ToF−SIMSにより、バルーン表面に付着したCCOOH基の形跡を観察することは困難である。したがって、酸官能基を、2,4,6−トリフルオロ−1,3,5−トリアジン(シアヌリックフルオリド[675−14−9])による処理により酸フッ化物に変換した。2つのバルーンをアセトニトリル10ml中に入れて、シアヌリックフルオリド200μl及びピリジン300μlを添加して、それらを大気温度で24時間放置して、アセトンで超音波下に2回すすいで、真空中で乾燥する。IRスペクトルは、酸フッ化物の特徴的なバンドを示し(表24)、表25に記載するToF−SIMSスペクトルは、CCOF基の存在及びバルーンの表面へのそのグラフトの両方を示す(m/z=151及び221)。酸フッ化物は、非常に反応性の種であり、エステル又はアミンを(アルコール又はアミンとの反応により)形成でき、表面をさらに官能基化することができる。
【0179】
【表25】

【0180】
ステントバルーンへの超音波下でのジアゾニウム塩のグラフトの別の検証は、CCF基をグラフトすることにより実施され、CCF基の形跡は、ToF−SIMSにより上記と同じ条件下で容易に同定される。
【0181】
【表26】

【0182】
続いてこれらのバルーンについて実施された試験は、バルーンの表面は−CCOOH基で修飾され、ステントへのバルーンの接着において顕著な改善を示す。
【実施例19】
【0183】
ポリアミドへのベンゾイルフェニル基のグラフト
ベンゾイルフェニル基(−C(C=O)C)のグラフトは、UV照射下でのカルボニル基が、他の分子及び特にポリマーと反応する傾向にあるビラジカルを招くため興味深い(Adenier, A.; Cabet-Deliry, E.; Lalot, T.; Pinson, J.; Podvorica, F. Chem Mat 2002, 14, 4576)。したがって、本発明者等は、CHCOOH基と同じ条件下で、ステントバルーン上に4−アミノベンゾフェノンジアゾニウム塩(CC(=O)C)で始めるベンゾイルフェニル基をグラフトした。
【0184】
グラフトされた表面上では、ベンゾフェノンの赤外分光法下でのC=Oバンド(1628cm−1に位置する)は、ポリアミドのC=Oバンド(1636cm−1)と非常に近すぎて識別することができない。反対に、芳香環の振動(1568cm−1)及びC−H芳香族化合物の平面の外側の振動(703cm−1)が観察される。バルーン表面のToF−SIMSスペクトルによりグラフトが確認される。
【0185】
【表27】

【実施例20】
【0186】
4−ニトロベンゼンジアゾニウムの存在下でのカプトン(登録商標)の酸性水溶液中でのグラフト。PCTシステム超音波容器の使用。
使用する装置は、直径およそ350mmのサーキュラー・プレーントランスデューサに連結させた3つの発電機を使用したMegasonics PCTシステムである。水循環システムにより、トランスデューサの表面での液体層の補充が可能となり、中心ノズルにより注入される。以下のパラメータが音響レベルに使用された:
【0187】
1)励起方法
a.従来の「Megasonic」発電機(平行単一周波数)
b.「Liquid Plasma(登録商標)(伝達されるエネルギーの多方向伝播を伴う多周波数)
2)電力:低、中、高(10W/cm未満)
3)処理時間:10分
4)トランスデューサ上のセラミック環の存在;これは、トランスデューサ自体の表面上での液体水の容積を増大させる。これは、ビーカーの壁上への音響エネルギーの伝達を増大するはずである(以下を参照)。
【0188】
サンプルを、トランスデューサ上に配置された石英ビーカー中でペアー(SiO+カプトン(登録商標))で処理した。4−ニトロベンゼンジアゾニウムを含有する0.2M硫酸水溶液(0.15M)150mlを使用して、各サンプルペアーを更新した。すすいだ後、サンプルをIR及びToF−SIMSにより解析した。スペクトルは、化学官能基−NOの存在を明らかに示している(赤外では、−NOの非対称振動及び対称振動に関して1363cm−1及び1502cm−1、並びにNOフラグメントに相当するToF−SIMSにおけるm/z=46)。これらの定性的スペクトルは、超音波を生じる方法又は機械の動力によって、大きな差が観察されない。
【0189】
結論
ジアゾニウム塩から誘導されたアリール基との反応によりポリマー及び誘電体の表面を官能基化することが可能であることが示されている。上記の結果は、様々な置換フェニル基(−CNO、−CBr、−CCOOH、−CCF、アントラキノン)をグラフトすることが可能であることを示す。このグラフトの実現性は、IR、ToF−SIMS及び接触角により証明されている。
【0190】
均質溶液中でのジアゾニウムの還元は、アリールラジカルを導き、それはそれら自体を表面にグラフトし、検討される表面上でのそれらの存在が観察される。
【0191】
NaIによる還元
検討される表面上でのBrの存在が全てのケースで観察される。検討される表面上へのそのヨウ素固定自体もまた観察することができる。
【0192】
フェロセンメタノールによる還元
ポリマー上及び無機誘電体上の両方にブロモフェニル基をグラフトすることが可能である。表面上の臭素もまた、検討される全てのケースで観察される。表面を親水性にするカルボキシフェニル基もまたグラフトされる。
【0193】
次亜リン酸による還元
水溶液中で作用し、且つフェロセンメタノールよりも手に入れやすいコストのこの反応性作用物質は、ヨウ素、臭素及びトリフルオロフェニル基が有機ポリマー上及び無機誘電体上の両方にグラフトされるのを可能にした。
【0194】
電荷移動錯体の光化学
励起状態で電子供与体として1,4−ジメトキシベンゼンを使用することによるか、又はPET、PEEK又はABSのような電子が豊富なポリマー自体を使用することによるかのいずれかによりグラフトを実施することが可能であった。したがって、ブロモフェニル基又はトリフルオロフェニル基又はカルボキシフェニル基をグラフトすることが可能であった。反応は、有機溶媒中又は水溶液中のいずれかで可能である。反応時間は短く、これはこの反応の実用的な関心を増大させる。
【0195】
超音波の使用
この反応は、ニトロ基、ブロモ基、カルボキシル基、アントラキノン基及びトリフルオロメチル基のグラフトを可能にすることが示された。グラフトされるサンプルは、有機ポリマー及び無機誘電体の両方が挙げられる。反応は、アセトニトリルのような非プロトン性溶媒中で又は水中のいずれかで実施することができる。グラフトは、照射のおよそ20分後にその最大に達する。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】4−トリフルオロベンゼンジアゾニウムによる超音波下でのポリプロピレン(PP)のグラフトに関する図である。図1は、CFバンドの強度の経時変動を表す。シリーズ1(黒ひし形)、2(白四角)、3(黒三角)及び4(黒十字)は、それぞれ1340cm−1、1160cm−1、1070cm−1及び997cm−1での基CCFによりグラフトされたPPのバンドの変動に相当する。シリーズ5(白丸)は、他のシリーズの平均値に相当する。
【図2】4−トリフルオロベンゼンジアゾニウムによる超音波下でのポリエチレン(PET)のグラフトに関する図である。図2は、CFバンドの強度の経時変動を表す。シリーズ1(黒ひし形)、2(白四角)は、それぞれ1337cm−1及び1102cm−1での基CCFによりグラフトされたPETのバンドの変動に相当し、シリーズ3(黒三角)は、シリーズ1及びシリーズ2の平均値に相当する。
【図3】4−トリフルオロベンゼンジアゾニウムによる超音波下でのポリエーテルエーテル(PEEK)のグラフトに関する図である。図3は、CFバンドの強度の経時変動を表す。シリーズ1(黒ひし形)、2(白四角)及び3(黒三角)は、それぞれ1309cm−1、1160cm−1及び1099cm−1での基CCFによりグラフトされたPEEKのバンドの変動に相当する。シリーズ4(黒十字)は、シリーズ1〜3の平均値に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体表面、半導体表面、二元化合物若しくは三元化合物又は複合材料表面上にR−Nジアゾニウム塩の芳香族基Rをグラフトするための方法。
但し、前記表面は、10−5Ω・m以上、好ましくは10−3Ω・m以上の抵抗率を有し、前記ジアゾニウム塩は、その溶解限度に近い濃度で存在し、特には0.05Mよりも高い濃度で存在し、より好ましくは0.5〜4Mの濃度で存在する。
【請求項2】
前記グラフトされる芳香族基は、
前記ジアゾニウム塩の還元剤を用いることによる、
前記ジアゾニウム塩から形成される電荷移動錯体の光化学的照射による、又は
超音波による前記ジアゾニウム塩の処理による、
前記ジアゾニウム塩の還元により誘導される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
絶縁体材料、半導体材料、二元化合物若しくは三元化合物又は複合材料を得るための絶縁体材料、半導体材料、二元化合物若しくは三元化合物又は複合材料の表面を修飾する方法。
但し、該表面は、当該表面上に芳香族基をグラフトすることにより修飾され、場合によっては官能基により置換され、前記表面と該表面を修飾するグラフトされた芳香族基との間の結合の種類は、共有結合型結合であり、特に結合が超音波による洗浄に耐えるようなものであり、
前記方法は、前記表面上への前記芳香族基のグラフトを達成するように、前記表面をジアゾニウム塩と接触させて配置させることを含み、さらに、その溶解限度に近い濃度で、特に0.05Mよりも高い濃度で、好ましくは0.5〜4Mに及ぶ濃度で前記芳香族基を保有する前記ジアゾニウム塩の還元、特に還元剤を用いることによる、前記ジアゾニウム塩から形成される電荷移動錯体の光化学的照射による、又は超音波による前記ジアゾニウム塩の処理による還元を含む。
【請求項4】
還元されたジアゾニウム塩の存在下で表面を配置する期間は、60分未満であり、特には1〜60分、好ましくは1〜10分持続する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ジアゾニウム塩は、式ArNX(式中、Arは芳香族基であり、Xは、アニオンであり、好適には、ハロゲン、硫酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、カルボン酸塩及びヘキサフルオロリン酸塩の中から選択される)に対応する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ジアゾニウム塩が、ジアゾ樹脂、又は下記の式から選択されるジアゾニウム塩のいずれかである、請求項3に記載の方法。
【化1】


(式中、R’’は、−CH、n−C、n−C1225、−OC1225、−OC1633、Cl、−Br、−I、−CHBr、−CH(CH)Br、−CH−O−C(=O)CH(CH)Br、−CH−O−C(=O)C(CHBr、−OH、−CHOH、−SH、−CHCHSH、−CHO、−COCH、COOH及び3,4−(COOH)、3−COOH−4−NO、3,4−(C(=O)F)、−CHCOOH、−CHCHCOOH、−COOC、−NHC(=O)Ot−Bu、−NHC(=O)CH、−NHC(=O)CF、CHCHNH、−CN及び3,4−(CN)、3−NO及び4−NO、ピロリル、o−ヒドロキシベンゾイル、2−(2−チオフェン−3−イル−アセチル)−アミノエチル、4−ベンゾイルベンゼン、4−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−ピロール−1−イル)、3−イソニトリル、3−ジオキソ−1H−イソクロメン−5−ジアゾニウム−3H−ベンゾ[デ]クロメン−5−ジアゾニウム、3−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−ピロール−1−イル)及び4−[1−(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−1−イロキシ)]−エチルの基の中から選択される)。
【請求項7】
還元剤の使用を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
還元剤が、下記の中から選択される、請求項7に記載の方法:
0V/SCEに近いか又はマイナスの酸化電位を有する還元剤、次亜リン酸、ヨウ化ナトリウム等のハライド塩、フェロセン及びフェロセン−メタノール又はフェロセンカルボン酸等のその誘導体、アスコルビン酸、ジメチルアミノボラン、水素化ホウ素ナトリウム、及びメチルビオロゲン又はベンゾビオロゲン及びビスフェノラート等のフェノラートなどのビオロゲン塩。
【請求項9】
表面をジアゾニウム塩及び還元剤と接触させて配置することを含み、前記還元剤は、前記ジアゾニウム塩に対して化学量論量で又は化学量論量よりも多い量で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ジアゾニウム塩から形成される電荷移動錯体の光化学的照射を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
ジアゾニウム塩と電子供与体芳香族化合物とを反応させることによる電荷移動錯体の形成、及び、前記電荷移動錯体の照射を含み、前記ジアゾニウム塩の還元及び表面に結合するアリールラジカルの形成を達成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
下記段階を含む、請求項11に記載の方法:
電荷移動錯体を得るための、ジアゾニウム塩及び電子供与体芳香族化合物と接触させる表面の配置、及び
前記ジアゾニウム塩の還元及び前記表面に結合するアリールラジカルの形成を得るための、特に光化学による前記電荷移動錯体の照射。
【請求項13】
超音波の使用を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
表面をジアゾニウム塩と接触させて配置させる段階、及び超音波による処理を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項3〜14のいずれか1項に記載の方法の利用により得られた有機又は無機の絶縁体材料又は無機半導体材料、又は二元化合物若しくは三元化合物又は複合材料の修飾された表面。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−518459(P2009−518459A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537128(P2008−537128)
【出願日】平成18年10月9日(2006.10.9)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002260
【国際公開番号】WO2007/048894
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508111316)
【氏名又は名称原語表記】ALCHIMER
【Fターム(参考)】