説明

絶縁化超微粉末および高誘電率樹脂複合材料

【課題】 樹脂材料本来の特長である加工性や成形性を維持できるようにフィラーの添加率を抑制した、高誘電率樹脂複合材料を提供する。
【解決手段】 本発明は、粒子直径が1nm以上500nm以下の球状、断面直径が1nm以上500nm以下の繊維状、または厚さが1nm以上500nm以下の板状の炭素材料からなる導電性超微粉末に、絶縁性金属酸化物又はその水和物からなる絶縁皮膜を設けてなる絶縁化超微粉末、及びこれを用いた高誘電率樹脂複合材料である。
樹脂材料本来の優れた成形性や加工性および軽量性を維持したまま高誘電率、さらには電波吸収能を発現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高誘電率を特長とする樹脂複合材料に関する。この材料は、IC(集積回路)パッケージ、モジュール基板、電子部品に一体化した高誘電率層を形成するのに好適である。特に、多層型配線基板の内層キャパシタ層を形成するのに好適である。また、高誘電率による波長短縮効果を利用することで、無線LANや非接触ICカード/タグなどの内蔵アンテナの小型化、感度改善や、高周波電子機器内部の電波干渉を防止する電波吸収体の薄型化にも有用である。また、マイクロ波領域における不要電波吸収にも有用である。
【背景技術】
【0002】
ICのデータエラーの原因の一つとして、高周波雑音の影響がある。これを抑制するために、配線基板に容量の大きなキャパシタを設けて、高周波雑音を取り除く方法が知られている。このような容量の大きなキャパシタは、配線基板に高誘電率層を形成することで実現される。また、内臓アンテナのサイズや電波吸収体の厚さが誘電率の平方根にほぼ反比例するため、高誘電率材料はこれら部材の小型化、薄型化に有用である。特に加工性や成形性に優れた樹脂材料にこのような特性を付与することが求められている。
【0003】
ところで、無線データ通信にはアンテナが必須である。特に電源を内蔵しない非接触ICカード/タグは、リーダ・ライタが発信する電磁波エネルギーを内臓ICチップの駆動電源に変換するため、アンテナの性能向上かつ小型化が求められている。
アンテナ配線基板のこのような高性能化の方法は、無線通信に用いる周波数帯に依存するが、コイルの役割をするループ状のパターンとコンデンサーの電極に相当する電極を配線基板上に設け、通信周波数に適合した同調回路を形成する方法がよく知られている。この時に用いられる容量の大きなコンデンサーは、配線基板に高誘電率層を形成することで実現される。また通信周波数帯が300MHz以上の場合には、アンテナのサイズが誘電率の平方根にほぼ反比例する効果(波長短縮効果)を利用する方法が知られている。
【0004】
また、近年、電子機器の高密度化が進み、さらに携帯電話などの無線データ通信機器の普及により不要電波の吸収に対する要求が高くなっている。
これまでフェライトや軟磁性合金の粉末を高充填した樹脂複合材料が用いられてきたが(例えば、特許文献1参照)、使用電波がマイクロ波領域に高周波化するにつれ、透磁率が低下し、吸収特性を発現するのに必要な厚さが増加してしまうという問題が生じている。また比重が大きい粉末を高充填することになるため、樹脂複合材料の比重が大きくなり、特に携帯通信機器の軽量化に適さないという課題もある。
【0005】
一方、代表的な導電性フィラーである、黒鉛やカーボンブラックなどの炭素材料系粒子や、いわゆる導電性酸化チタンすなわちアンチモンドープ酸化スズで被覆した酸化チタンを絶縁媒体中に分散させる方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。これらの方法は、以下の式で表される発信源から十分離れた場合の無反射条件から考えると、使用する電波の波長に対する、電波吸収体の厚さを1/20以下にするために、すなわち誘電率を大きくするために導電性フィラーの充填量を増やすと、無反射条件からかけ離れてしまうという問題がある。特に誘電率を20以上にしようとすると、乖離が著しくなり、電波吸収シートを厚くするか、薄くした場合、1cm以下の短波長、30GHz以上の電波のみにしか利用できないなどの制約があった。
【0006】
【数1】

【0007】
(但し、ε:複素比誘電率、d:電波吸収体の厚さ、λ:電波の波長、i:虚数単位)
【0008】
高誘電率樹脂複合材料の従来の技術としては、チタン酸バリウムなどに代表される強誘電体を高誘電率フィラーとして65vol%以上、つまり80wt%以上充填した樹脂複合材料が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
一方、導電性粉末に、熱硬化樹脂で絶縁皮膜する高誘電率組成物が提案されているが(例えば、特許文献4参照)、安定な性能が得られないため、商業的に製造されず、実際には先に述べたフィラーを大量添加する方法が用いられているのが現状である。このため、高誘電率化と引き換えに樹脂材料本来の特長である加工性、成形性、軽量性が損なわれることになる。
【0009】
特に非接触ICカードのアンテナ基板に無機フィラーを高充填した高誘電率材料が商業的に使われることはなかった。
例えば、13.56MHzを用いる非接触ICカードの場合、コイルの役割をするループ状の配線パターンを通常の比誘電率5以下の樹脂基板上に形成し、コンデンサーを内蔵しない方式が用いられる。この場合、ループ状配線パターンは非同調型磁気ピックアップコイルとしての役割を果たし、理想的な場合でも通信距離が10cm、実際の利用では1cm以下にまで低下してしまう。
【0010】
基板を構成する樹脂の誘電率が通常5以下と小さいため、同調用コンデンサーを形成するために必要な電極面積が大きくなってしまう。このため、所定の電極面積を確保するために、複数の電極パターンを基板に形成後に折り畳み、更にスルーホール配線で接続する方法(例えば特許文献5参照)や、アンテナコイルを大きくして、同調用コンデンサーに必要な面積を減らす方法(例えば特許文献6参照)が提案されている。これらの技術のうち、前者はアンテナ基板の構造が複雑化するのみならず、アンテナコイルの中央部に形成されたコンデンサー用の電極で発生する電磁誘導のためアンテナコイル内の磁束が著しく減少し、これに伴い感度も低下してしまう。また後者はアンテナ基板そのものが大きくなってしまう。このため、実際には磁気ピックアップコイルを用いたものが商業的に多く用いられている。
【0011】
【特許文献1】特開2003−327831号公報
【特許文献2】特開2002−57485号公報
【特許文献3】特開2001−237507号公報
【特許文献4】特開昭54−11580号公報
【特許文献5】特開2002−358479号公報
【特許文献6】特開2002−183689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題を解決し、樹脂材料本来の特長である加工性や成形性を維持できるようにフィラーの添加率を抑制した、高誘電率樹脂複合材料の実現手段を提供するものである。また、この高誘電率樹脂複合材料を用い、非接触ICカード/タグ等の無線データ通信用アンテナの小型化、高性能化の実現手段を提供するものである。さらには、この高誘電率樹脂複合材料を用い、薄くて軽い電波吸収シートの実現手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、樹脂材料中でのフィラーの連続層形成およびフィラー自身の高誘電率化について鋭意検討した結果、導電性超微粉末の表面を絶縁性金属酸化物またはその水和物、特に分子分極の大きな絶縁性金属酸化物またはその水和物で被覆した絶縁化超微粉末は、5〜50vol%といった少ない添加量でも、樹脂複合材料の誘電率を高くできることを見出し本発明に至った。
特に、この絶縁化超微粉末の高誘電率効果は絶縁皮膜の誘電率ではなく分子分極に依存する。このことは、絶縁皮膜の誘電率を高くするための、すなわち非晶質構造の少ない高密度の結晶状態にするための焼成が不要になることを意味する。通常、焼成温度は500℃以上になることが多く、芯となる導電性超微粉末の変質を起こすことがある。このため、焼成が不要となることは製造に要するエネルギー以外にも、重要な意味を持つ。
また、この高誘電率樹脂複合材料を用いて、非接触ICカード/タグ等の無線データ通信用アンテナ基板を容易に作製でき、また、高誘電率樹脂複合材料からなる電波吸収材を用いて、電波吸収シートを作製できることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1)導電性超微粉末に絶縁皮膜を設けてなる絶縁化超微粉末であって、導電性超微粉末が、粒子直径1nm以上500nm以下の球状、断面直径1nm以上500nm以下の繊維状、または厚さ1nm以上500nm以下の板状の炭素材料からなり、絶縁皮膜が絶縁性金属酸化物又はその水和物からなり、絶縁皮膜の厚さが、0.3nm以上で、かつ導電性超微粉末が球状の場合にはその粒子直径以下、繊維状の場合にはその断面直径以下、板状の場合にはその厚さ以下であることを特徴とする絶縁化超微粉末、
(2)前記絶縁皮膜が、組成式MTi1−xZr(Mは2価の金属元素、xは0以上1未満)で表される絶縁性複合金属酸化物からなる上記(1)記載の絶縁化超微粉末、
(3)絶縁性金属酸化物が、分子分極が5cm以上である絶縁性金属酸化物又はその水和物である上記(1)記載の絶縁化超微粉末、
(4)絶縁性複合金属酸化物が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、またはこれらのうち少なくとも一種を組成に含む絶縁性固溶体である上記(2)記載の絶縁化超微粉末、
(5)炭素材料の表面に酸化処理を施した上記(1)記載の絶縁化超微粉末、
(6)炭素材料が、カーボンナノファイバー、天然黒鉛、ファーネスカーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンナノチューブ、又は人造黒鉛である上記(1)記載の絶縁化超微粉末、
(7)絶縁性金属酸化物又はその水和物が、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、五酸化二タンタル、二酸化ジルコニウムと二酸化シリコンとの固溶体、二酸化シリコン、三酸化二アルミニウム、又はこれら金属酸化物の水和物である上記(3)記載の絶縁化超微粉末、
(8)上記(1)に記載の絶縁化超微粉末と樹脂とを、体積比(絶縁化超微粉末/樹脂)5/95〜50/50の範囲で配合して得られる高誘電率樹脂複合材料、
(9)比重が2以下である上記(8)記載の高誘電率樹脂複合材料、
(10)さらに充填剤を含有する上記(8)記載の高誘電率樹脂複合材料、
(11)比誘電率が20以上である上記(8)記載の高誘電率樹脂複合材料、
(12)上記(8)記載の高誘電率樹脂複合材料を用いたアンテナ基板、
(13)高誘電率樹脂複合材料からなり、かつ厚さが1μm以上3mm以下である層を少なくとも一層含む上記(12)記載のアンテナ基板、
(14)上記(12)記載のアンテナ基板を用いることを特徴とする非接触ICカード/タグ、
(15)上記(8)記載の高誘電率樹脂複合材料を用いた電波吸収材、
(16)吸収する電波の波長に対する厚さが1/20以下である上記(15)記載の電波吸収材を用いた電波吸収材シート、
(17)上記(15)記載の電波吸収材を筐体内部に用いた電子機器、
(18)上記(8)記載の高誘電率樹脂複合材料を用いて形成される高誘電率フィルム又はシート、
(19)上記(18)記載の高誘電率フィルム又はシートを用いることを特徴とする電子部品、
(20)上記(8)記載の高誘電率樹脂複合材料を用いて形成される電子部品、
(21)導電性超微粉末を分散し、かつ少なくとも一種類の金属アルコキシドの溶解した有機溶媒中において、該金属アルコキシドをゾルゲル反応により導電性超微粉末の表面に金属酸化物又はその水和物を析出させる工程を含む上記(1)記載の絶縁化超微粉末の製造方法、
(22)導電性超微粉末の表面に金属酸化物又はその水和物を析出させる工程に次いで、非酸化性雰囲気下で焼成する工程を含む上記(21)記載の絶縁化超微粉末の製造方法、
(23)導電性超微粉末の表面に金属酸化物又はその水和物を析出させる工程に次いで、皮膜反応液を加熱し液相中で金属酸化物又はその水和物を脱水する工程を含む上記(21)記載の絶縁化超微粉末の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導電性超微粉末を絶縁被膜した絶縁化超微粉末、特には分子分極の大きな絶縁性金属酸化物またはその水和物で絶縁被膜した絶縁化超微粉末を少量添加した樹脂複合材料は、樹脂材料本来の優れた成形性や加工性および軽量性を維持したまま高誘電率、さらには電波吸収能を発現する。
また、本発明のアンテナ基板は、上記樹脂複合材料を用いることで、非接触ICカード/タグなどの無線データ通信のアンテナの小型化、高性能化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明で用いる導電性超微粉末は、単独で樹脂材料に添加した場合、樹脂複合材料の体積抵抗を低下させる、すなわち、導電性を付与する効果を有するものである。本発明においては、このような導電性超微粉末を構成する材質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、ファーネスカーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどの導電性炭素材料が用いられる。
導電性炭素材料に対し、代表的な導電体である金属は、一部の貴金属を除いて、超微粉末は酸化され易く、導電性が低下しやすいのみでなく、粉塵爆発の可能性もある。また、金属原子が超微粉末から絶縁体媒質中に拡散し、複合材料の絶縁性を低下させる。
導電性炭素材料はこうした問題点がなく、さらに、炭素材料が比重2.2と小さく、他の導電性物質や従来の高誘電率フィラーにはない特長を有し、高誘電率複合材料の軽量化という効果もある。
【0017】
炭素材料からなる導電性超微粉末には、次に述べる絶縁性金属酸化物の皮膜を施すために、予め表面に酸化処理を施しておくことが望ましい。酸化処理としては、酸素含有雰囲気下での酸化処理、硝酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素などの水溶液による酸化処理、三塩化ルテニウムと次亜塩素酸ナトリウムからなる酸化触媒等を用いた酸化処理が挙げられる。
【0018】
本発明で用いる導電性超微粉末としては、粒子直径が1nm以上500nm以下、望ましくは5nm以上300nm以下、より望ましくは10nm以上100nm以下の球状の炭素材料が挙げられる。このような球状の炭素材料、例えばカーボンブラックは、炭化水素原料を気相で熱分解することによって得られる。また黒鉛化カーボンブラックは、He、CO、またはこれら混合ガスの雰囲気系により内圧2〜19Torrに保持された減圧容器内において、炭素材料をアーク放電によって気化させ、気化した炭素蒸気を冷却凝固することによって得られる。具体的には、東海カーボン(株)製のシーストSや導電性カーボンブラック#5500、#4500、#4400、#4300や黒鉛化カーボンブラック#3855、#3845、#3800、あるいは、三菱化学(株)製の#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、MA7、MA8、MA11、あるいは、ライオン(株)製のケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC600JDなどが例示できる。なお、ここで球状とは必ずしも厳密な球状である必要はなく、等方的な形状であればよい。例えば角が発生した多面体状であってもよい。
【0019】
また、本発明で用いる導電性超微粉末としては、断面直径が1nm以上500nm以下、望ましくは5nm以上300nm以下、より望ましくは10nm以上200nm以下の繊維状の炭素材料が挙げられる。その長さは断面直径の3倍以上300倍以下であることが好ましい。このような繊維状の炭素材料、例えばカーボンナノファイバーや、カーボンナノチューブは触媒となるコバルトや鉄の有機金属化合物と炭化水素原料を気相で混合し、加熱することによって得られる。また、カーボンナノファイバーはフェノール系樹脂を溶融紡糸し、非活性雰囲気下で加熱することによって得られるものもある。具体的には、昭和電工(株)製のVGCFおよびVGNFや、(株)GSIクレオス製のカルベール、群栄化学工業(株)製のカーボンナノファイバーなどが例示できる。なお、ここで繊維状とは一方向に伸びた形状を意味し、例えば角材状、丸棒状や長球状であってもよい。
【0020】
さらに、本発明で用いる導電性超微粉末としては、厚さが1nm以上500nm以下、望ましくは5nm以上300nm以下、より望ましくは10nm以上200nm以下の板状の炭素材料が挙げられる。その長さおよび幅は、厚さの3倍以上300倍以下であることが好ましい。このような板状の炭素材料は、例えば天然黒鉛や人造黒鉛を精製・粉砕・分級することによって得られる。例えば、(株)エスイーシー製のSNEシリーズ、SNOシリーズ等や日本黒鉛製、鱗状黒鉛粉末、薄片化黒鉛粉末等が挙げられる。また、これらをさらに粉砕し、精密分級してもよい。なお、ここで板状とは、一方向が縮んだ形状を意味し、例えば扁平球状や鱗片状であってもよい。
【0021】
該粒子直径、断面直径または厚さが上記範囲より小さいと量子サイズ効果により導電性が低下する。また、製造が難しく工業的に用いることができないばかりでなく、凝集などにより取り扱いも難しい。一方、該粒子直径、断面直径または厚さが上記範囲より大きいと、連続層の形成が50vol%以下、すなわち樹脂特性を悪化させない添加率の範囲では連続層が形成されなくなってしまう。また、導電性超微粉末の形状が繊維状もしくは板状の場合、アスペクト比は3〜300が望ましい。本発明で用いる導電性超微粉末は、この中でも繊維状の方が球状や板状よりも望ましい。これは繊維状のほうが、比誘電率が20以上である樹脂複合材料として連続層を形成するために必要な添加量が例えば30vol%以下と少なくてすむためである。
【0022】
次に、本発明に用いる絶縁皮膜は、樹脂複合材料の全体的な絶縁性の確保を目的の一つとしている。また、導電性超微粉末の表面上に被覆することで、絶縁化超微粉末自体の誘電率は、絶縁皮膜構成材質の誘電率を倍加したものになる。このため、絶縁皮膜の厚さは、被覆する導電性超微粉末が球状の場合にはその粒子直径以下、繊維状の場合にはその断面直径以下、板状の場合にはその厚さ以下である。更に望ましくは、絶縁皮膜の厚さは0.3nm以上で、かつ被覆する導電性超微粉末の粒子直径、断面直径、または厚さとの比率が、0.01以上0.9以下である。最も望ましくは、絶縁皮膜の厚さは0.3nm以上で、かつ被覆する導電性超微粉末の粒子直径、断面直径、または厚さとの比率が、0.01以上0.5以下である。上記範囲よりも薄いと絶縁効果が低減し、導通を防げず誘電体として機能しない場合がある。一方、これより厚い場合には、芯である導電性超微粉末の誘電率倍加効果が低減し、樹脂複合材料の比誘電率が低下する場合がある。
【0023】
本発明における絶縁皮膜の材質は、絶縁性金属酸化物またはその水和物である。例としては二酸化シリコン、三酸化二アルミニウム、二酸化ジルコニウムなどの絶縁性酸化物が挙げられる。またはこれらの水和物として、四水酸化シリコン、三水酸化アルミニウム、四水酸化ジルコニウムが挙げられる。水和物の場合、その一部が脱水縮合した構造のものも含まれる。望ましくは比誘電率20以上の五酸化二タンタル等の絶縁性金属酸化物、アナタース型、およびブルカイト型の二酸化チタン、チタン酸ジルコニウムが挙げられる。また、これらの固溶体も用いることができる。
これらのうち、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、五酸化二タンタル、二酸化ジルコニウムと二酸化シリコンとの固溶体、二酸化シリコン、三酸化二アルミニウム、又はこれらの水和物が好ましい。
さらに望ましくは比誘電率100以上の金属酸化物が挙げられる。この例としては、ルチル型の二酸化チタン(TiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi0.5Zr0.5)、チタン酸ジルコン酸鉛(PbTi0.5Zr0.5)などの組成式MTi1−xZr(Mは2価の金属元素、xは0以上1未満)で表される絶縁性金属酸化物、またはこれらの水和物、さらにはこれらのうち少なくとも一種類を組成に含む絶縁性固溶体が挙げられる。これらの誘電率が大きい材料を用いると、厚く絶縁被膜しても複合材料の誘電率が低下しないため好ましい。
【0024】
また、絶縁皮膜の材質としては、分子分極が5cm以上の絶縁性金属酸化物またはその水和物が望ましい。常誘電体の多くの金属酸化物の分子分極は、つぎのClausius−Mossottiの式にあるとおり金属酸化物の誘電率、比重、式量から計算される。
【0025】
【数2】

(但し、α:分子分極、ε:比誘電率、M:式量、ρ:比重)
なお、本発明では、式量は1金属原子あたりに換算したものを意味する。例えば、三酸化二アルミニウムの場合、AlO1.5として、五酸化二タンタルの場合にはTaO2.5として計算した式量から分子分極を計算する。尚、二酸化シリコンや二酸化チタンなどでは、通常の式量となる。
特に分子分極が大きい材質を用いた場合、同じ皮膜の厚さにおいて、樹脂複合材料における誘電率が大きくなる。例としては分子分極が9cm以上の二酸化シリコン、三酸化二アルミニウムなどの絶縁性金属酸化物が挙げられる。その水和物として四水酸化シリコン、三水酸化アルミニウムが挙げられる。水和物の場合、その一部が脱水縮合した構造のものも含まれる。望ましくは分子分極15cm以上のいわゆるジルコンすなわち二酸化ジルコニウムと二酸化シリコンとの固溶体、またはその水和物として四水酸化ジルコニウムと四水酸化シリコンとの固溶体が挙げられる。水和物の場合、その一部が脱水縮合した構造のものも含まれる。さらに望ましくは分子分極が17cm以上の二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、五酸化二タンタルまたはその水和物として四水酸化チタン、四水酸化ジルコニウム、五水酸化タンタルが挙げられる。水和物の場合、その一部が脱水縮合した構造のものも含まれる。
【0026】
絶縁皮膜の形成は、公知の方法を利用することができる。例えば導電性超微粉末が分散した水溶液中で金属塩とアルカリを反応させ、導電性超微粉末を核として金属水酸化物を析出させ、濾別・乾燥することにより脱水縮合させ、導電性超微粉末表面に絶縁性金属酸化物が付着した状態を形成できる。この場合、予め金属塩水溶液に導電性超微粉末を分散させてアルカリを滴下しても、導電性超微粒子の水分散液に金属塩水溶液とアルカリ水溶液を同時もしくは逐次滴下してもよい。またはアルコールなどの有機溶媒に導電性超微粉末を分散し、金属アルコキシドを添加してゾルゲル反応により導電性超微粉末を核とした金属水酸化物の析出、さらに有機溶媒中で脱水縮合反応により導電性超微粉末表面に絶縁性金属酸化物が付着した状態を形成できる。この中でも望ましいのは、ゾルゲル反応による絶縁皮膜形成である。金属塩とアルカリの反応を用いた場合、副生成物である塩の除去に大量の水が必要となるばかりでなく、塩による凝析がおこり、絶縁化超微粉末が固まってしまうため望ましくない。
【0027】
ゾルゲル反応により絶縁皮膜形成を行なった後は、さらに脱水処理を施すことが望ましい。脱水方法としては、反応液から絶縁化超微粉末を濾別したのちに乾燥により脱水できる。または反応液を加熱しつつ、加熱温度より沸点が高い溶媒を添加して溶媒を置換する方法もある。この方法は、ゾルゲル反応時の有機溶媒の蒸発に伴って、液相中で絶縁皮膜の脱水処理を行うものである。絶縁化超微粉末の製造法としては、液相中で絶縁皮膜の脱水縮合を行なうことが望ましい。液相中での脱水処理を行なわずにろ過・乾燥した場合、ろ過時に形成される絶縁化超微粉末のケーキが固まってしまうため望ましくない。
また、これらの反応後に焼成処理を行ってもよい。通常、焼成処理は200〜1500℃の温度範囲で、30分〜24時間保持することにより行う。但し、導電性超微粉末が炭素材料である場合、焼成雰囲気を非酸化性とする必要がある。すなわち窒素置換やアルゴン置換を施し、酸素を遮断する必要がある。
【0028】
本発明で用いる絶縁化超微粉末は、粒子直径が1nm以上500nm以下の球状、断面直径が1nm以上500nm以下の繊維状、または厚さが1nm以上500nm以下の板状の導電性炭素材料が金属酸化物またはその水和物により絶縁化された超微粉末である。本発明の絶縁化超微粉末は、樹脂に50vol%以下の量を配合することにより比誘電率が20以上である高誘電率樹脂複合材料が得られる。比誘電率20以上の高誘電率樹脂複合材料を実現するには、従来の高誘電率フィラーを使用した場合は該フィラーを50vol%程度以上配合する必要があるが、本発明の絶縁化超微粉末を使用した場合は該絶縁化超微粉末を50vol%以下、例えば、5〜50vol%配合すればよい。したがって、本発明の絶縁化超微粉末を配合した樹脂複合材料は、樹脂材料本来の特長である成型加工性や軽量性が損なわれることなく、高い誘電率を発現する。
【0029】
また本発明において、上記絶縁化超微粉末を添加する樹脂成分としては、PVC樹脂、フェノキシ樹脂、フッ化炭素系樹脂、PPS樹脂、PPE樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂、あるいはこれらの混合系樹脂を挙げることができる。特に望ましくは、絶縁性に優れ、銅などの金属層との密着性に優れたポリイミド樹脂である。
【0030】
また、絶縁化超微粉末と配合する際の樹脂成分は、重合体の形態としてのみならず重合性化合物の形態として、すなわち、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂のモノマーやオリゴマーなどの重合性化合物として配合しておいて、後で重合させてもよい。
特に望ましくはエポキシ樹脂を含む樹脂組成物である。これは配線基板などに用いる場合、銅等の金属層と密着強度が大きいためである。
【0031】
前記高誘電率樹脂複合材料は、高誘電率以外の目的で、必要に応じて充填剤をさらに添加して用いることができる。充填剤としては、弾性率改善のためのガラス繊維、成形収縮率を低下させるための炭酸カルシウム、表面平滑性や耐摩耗性の改善に用いられるタルク、寸法安定性を改善するために用いられるマイカが挙げられる。また、難燃性を付与する充填剤すなわち難燃剤としてハロゲン系またはリン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが挙げられる。
また、電波吸収材として用いる場合には、電波吸収特性の調整に従来技術で用いられているフェライト粉末や鉄を主成分とした磁性金属体粉末、あるいはカーボン系や酸化スズ系の導電性粉末や難燃剤としての効果も有する導電性粉末である膨張黒鉛粉末などを充填剤として、さらに添加して用いることができる。
【0032】
本発明において、絶縁化超微粉末の樹脂組成物に対する添加量としては5〜50vol%、望ましくは5〜30vol%である。これより少ないと、樹脂組成物中で連続層が形成されず充分な比誘電率が得られない。一方、これより多いと、樹脂組成物本来の加工性などが損なわれてしまう。
なお、本発明の高誘電率樹脂複合材料は、絶縁化超微粉末の原料に炭素材料を用いるので、その比重を2以下に軽量化できる。
【0033】
本発明の高誘電率樹脂複合材料を特にアンテナ基板に用いる場合、該高誘電率樹脂複合材料は比誘電率が20以上であることが望ましい。そして、このような高誘電率樹脂複合材料を1μm以上3mm以下である層として、より具体的には、1μm〜100μmの厚さに成形したフィルムまたは100μm〜3mmの厚さに成形したシートの少なくとも一方の表面に配線パターンを設けることで、アンテナ基板を形成することができる。また、必要に応じて、高誘電率樹脂複合材料のフィルムまたはシートにスルーホールを設けることも可能である。非接触ICカード/タグとする場合、これらのアンテナ基板の配線パターンにICを直接配線してもよいし、ICを内蔵したカード/タグとアンテナ基板を接触させ、ブースターアンテナとして利用してもよい。また、高誘電率樹脂複合材料のフィルムまたはシートをアンテナ基板や非接触ICカードとして用いる場合、必要に応じて保護フィルムなどを貼り付けてもよい。
【0034】
本発明の絶縁化超微粉末を、樹脂に5vol%以上50vol%以下の量配合することにより比誘電率が20以上である電波吸収材が得られる。比誘電率20以上の電波吸収材を実現するには、従来の高誘電率フィラーを使用した場合は該フィラーを50vol%程度以上配合する必要があるが、本発明の絶縁化超微粉末を使用した場合は該絶縁化超微粉末を50vol%以下、例えば、5〜50vol%配合すればよい。したがって、本発明の絶縁化超微粉末を配合した樹脂複合材料は、樹脂材料本来の特長である成型加工性や軽量性が損なわれることなく、高い誘電率を発揮し、マイクロ波領域で電波吸収能を発揮する。
このような本発明の高誘電率樹脂複合材料を用いた電波吸収材は、高い誘電率を有するため、シート化した場合に、吸収する電波の波長に対する厚さを1/20以下とすることができる。
また、本発明の電波吸収材は、筐体内部に用いることができ、電子機器として優れた性能を示す。
なお、絶縁化超微粉末の原料に炭素材料を用いるため、電波吸収材の比重を2以下に下げることができ、一層の軽量化を図ることができる。
【実施例】
【0035】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
イソプロパノール150g中にカーボンナノファイバー(昭和電工(株)製VGCF−H、断面直径150nm、長さ5〜6μmの繊維状)5gとテトラプロピルオキシチタネート11gを添加し、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液77gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、濾過した。12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、30〜70nm厚、平均50nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。
得られた絶縁化超微粉末2gとビスフェノールA型エポシキモノマー(旭電化工業(株)製EP−4100G)8g、イミダゾール系硬化触媒(四国化学(株)製キュアゾール2E4MZ)0.16g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末(フィラー)を10vol%添加したことになる。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥した後に120℃で3時間加熱し硬化物の板を得た。
これを用いてAgilent社製4294A型インピーダンス・アナライザで10MHzの誘電率を測定したところ、比誘電率は92.1であった。また硬化物の比重は1.3であった。
【0036】
実施例2
絶縁化超微粉末を合成するに当たり、カーボンナノファイバー5gを60wt%硝酸水溶液中で100℃加熱し、酸化処理を施した以外は、実施例1と同様にした。実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は86.3であった。硬化物の比重は1.3であった。
【0037】
実施例3
イソプロパノール25g中に、天然黒鉛((株)エスイーシー製SNO−2:厚さ100〜200nm、平均厚さ150nm、1〜3μm角、平均2μm角の板状)5gとテトラプロピルオキシチタネート1.8gを加え、1時間攪拌した後、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液13gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、濾過した。12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、30〜70nm厚、平均50nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。
得られた絶縁化超微粉末3.5gとビスフェノールA型エポシキモノマー(旭電化工業(株)製EP−4100G)6.5g、イミダゾール系硬化触媒(四国化学(株)製キュアゾール2E4MZ)0.13g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末(フィラー)を20vol%添加したことになる。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥したペーストを120℃で3時間加熱し硬化物の板を得た。
実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は70.1であった。比重は1.5であった。
【0038】
実施例4
イソプロパノール25g中に、導電性カーボンブラック (東海カーボン(株)製、粒子直径10〜30nm、平均直径25nmの球状)5gとテトラプロピルオキシチタネート1.8gを加え、1時間攪拌した後、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液13gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、濾過した。12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、3〜7nm厚、平均5nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。
得られた絶縁化超微粉末2.5gとビスフェノールA型エポシキモノマー(旭電化工業(株)製EP−4100G)7.5g、イミダゾール系硬化触媒(四国化学(株)製キュアゾール2E4MZ)0.15g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末を13vol%添加したことになる。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥したペーストを120℃で3時間加熱し硬化物の板を得た。
実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は71.6であり、比重は1.4であった。
【0039】
比較例1
実施例1において、絶縁化超微粉末の代わりにカーボンナノファイバーを1.5gとして他は同様にして硬化物の板を得た。これは体積組成では7vol%添加したことになる。誘電率測定を試みたが、この板は体積抵抗率17.2Ωmの導電体であり誘電率は測定できなかった。すなわち、この硬化物の板は誘電体ではなかった。
【0040】
比較例2
硬化物を得るに当たり、絶縁化超微粉末の代わりに、直径2μmのチタン酸バリウムを5g、ビスフェノールA型エポキシモノマーの量を5g、硬化剤を0.1gとした以外は実施例1と同様にして、硬化物の板を得た。これはチタン酸バリウム粉末(フィラー)を16vol%添加したことになる。
実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は6.8であった。比重は1.7であった。
【0041】
比較例3
硬化物を得るに当たり、絶縁化超微粉末の代わりに、直径2μmのチタン酸バリウムを8g、ビスフェノールA型エポキシモノマーの量を2g、硬化剤を20mgとした以外は実施例1と同様にして、硬化物の板を得た。これはチタン酸バリウム粉末(フィラー)を50vol%添加したことになる。
実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は21.8であった。比重は2.9であった。
【0042】
これらの結果を表1にまとめた。
【表1】

実施例1および比較例1より、導電性超微粉末に絶縁皮膜を設けていない場合は導通により誘電体として機能せず、絶縁皮膜により誘電体として性質が備わったことがわかる。また、実施例1〜4、特に球状導電性超微粉末であるカーボンブラックを金属酸化物で絶縁被覆した絶縁化超微粉末を用いた実施例4と、従来技術の代表的なフィラーであるチタン酸バリウム微粉末を用いた比較例2、3からもわかるように、本発明の絶縁化超微粉末を用いた高誘電率複合材料は、従来技術で必要とされていたよりもはるかに少ない添加率で、高誘電率が実現しかつ軽量であることがわかる。
【0043】
実施例5
イソプロパノール160g中に金属ストロンチウムを2.9gとテトラプロピルオキシチタネート9.3gを加え、1時間沸点還流し、無色透明ゾル液を得た。ここに、カーボンナノファイバー(昭和電工(株)製VGCF−H、断面直径150nm、長さ5〜6μm)10gを加え、14時間室温で撹拌した。これに、蒸留水15gとイソプロパノール120gの混合液を30分掛けて滴下し、2時間撹拌した後、吸引濾過した。12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。
得られた絶縁化超微粉末2gとビスフェノールA型エポシキモノマー(旭電化工業(株)製EP−4100G)8g、イミダゾール系硬化触媒(四国化学(株)製キュアゾール2E4MZ)0.16g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末を10vol%添加したことになる。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥した後に120℃で3時間加熱し硬化物の板を得た。
実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は122.2であった。また硬化物の比重は1.4であった。
【0044】
実施例6
絶縁化超微粉末を合成するに当たり、カーボンナノファイバー5gを60wt%硝酸水溶液中で100℃加熱し、酸化処理を施した以外は、実施例5と同様にした。実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は116.1であった。硬化物の比重は1.4であった。
【0045】
実施例7
イソプロパノール80g中に、金属ストロンチウムを0.5gとテトラプロピルオキシチタネート1.6gを加え、1時間沸点還流し、無色透明ゾル液を得た。ここに、天然黒鉛((株)エスイーシー製SNO−2:厚さ100〜200nm、平均厚さ150nm、1〜3μm角、平均2μm角の板状)を10g加え、14時間室温で撹拌した。これに、蒸留水2.5gとイソプロパノール20gの混合液を30分掛けて滴下し、2時間撹拌した後、吸引濾過した。12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。
得られた絶縁化超微粉末3.5gとビスフェノールA型エポシキモノマー(旭電化工業(株)製EP−4100G)6.5g、イミダゾール系硬化触媒(四国化学(株)製キュアゾール2E4MZ)0.13g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末(フィラー)を20vol%添加したことになる。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥したペーストを120℃で3時間加熱し硬化物の板を得た。
実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は110.1であった。比重は1.6であった。
【0046】
実施例8
イソプロパノール80g中に、金属ストロンチウムを1.5gとテトラプロピルオキシチタネート4.8gを加え、1時間沸点還流し、無色透明ゾル液をえた。ここに、導電性カーボンブラック(東海カーボン(株)製、粒子直径10〜30nm、平均直径25nmの球状)10gを加え、 14時間室温で撹拌した。これに、蒸留水7.5gとイソプロパノール60gの混合液を30分掛けて滴下し、2時間撹拌した後、吸引濾過した。12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。
得られた絶縁化超微粉末2.5gとビスフェノールA型エポシキモノマー(旭電化工業(株)製EP−4100G)7.5g、イミダゾール系硬化触媒(四国化学(株)製キュアゾール2E4MZ)0.15g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末(フィラー)を13vol%添加したことになる。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥したペーストを120℃で3時間加熱し硬化物の板を得た。
実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は102.6であり、比重は1.4であった。
【0047】
実施例9
イソプロパノール25g中に、導電性カーボンブラック(東海カーボン(株)製、粒子直径10〜30nm、平均直径25nm)5gとテトラプロピルオキシチタネート1.8gを加え、1時間攪拌した後、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液13gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、濾過し12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。
実施例8と同様に得られた絶縁化超微粉末とエポキシモノマーを混合・硬化し、実施例1と同様に誘電率を測定した。比誘電率71.2、比重1.4であった。
【0048】
これらの結果を表2にまとめた。
【表2】

【0049】
実施例5および比較例1より導電性超微粉末に絶縁被覆していない場合は導通により誘電体として機能せず、絶縁皮膜により誘電体として性質が備わったことがわかる。また、実施例8と実施例9との比較により、絶縁皮膜に二酸化チタンを用いるより複合酸化物であるチタン酸ストロンチウムを用いた方が、より誘電率が大きくなり、好ましいことがわかる。実施例5〜8、特に球状導電性超微粉末であるカーボンブラックを金属酸化物で絶縁被覆した絶縁化超微粉末を用いた実施例8と、従来技術の代表的なフィラーであるチタン酸バリウム微粉末を用いた比較例2、3からもわかるように、本発明の絶縁化超微粉末を用いた樹脂複合材料は、従来技術で必要とされていたよりもはるかに少ないフィラー添加率で、高誘電率が実現しかつ軽量であることがわかる。
【0050】
実施例10
イソプロパノール150g中に気相成長法で合成したカーボンナノファイバー(断面直径150nm、長さ5〜6μmの繊維状)5gとテトラプロピルオキシチタネート11gを添加し、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液77gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、N,N−ジメチルアセトアミドを200g添加しつつ150℃に加熱し、溶媒置換した。得られた懸濁液を濾別、乾燥し、9gの絶縁化超微粉末を得た。
走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、40〜60nm厚、平均50nm厚の二酸化チタン水和物の皮膜が形成されていた。尚、二酸化チタンであり、アナターゼ型結晶の場合、比誘電率31、比重4.1であるため、分子分極は19cmある。ルチル型結晶やブルッカイト型結晶も分子分極は18〜19cmである。
得られた絶縁化超微粉末2gとビスフェノールA型エポキシモノマー8g、イミダゾール系硬化触媒0.16g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで1分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末を10vol%添加したことになる(絶縁化超微粉末とビスフェノールA型エポキシモノマーとの配合割合(体積比):10/90)。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥した後に120℃で3時間加熱し硬化物の板として高誘電率エポキシ複合材料を得た。
実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は92.1であった。また硬化物の比重は1.3であった。
【0051】
実施例11
絶縁化超微粉末を合成するに当たり、テトラプロピルオキシチタネートに替えて、テトラブチルオキシジルコネートを用いた以外は実施例10と同様にした。走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、30〜70nm厚、平均50nm厚の二酸化ジルコニウム水和物の皮膜が形成されていた。尚、二酸化ジルコニウムの結晶状態の比誘電率は18であり比重は5.5である。したがって分子分極は19cmとなる。実施例1と同様に高誘電率エポキシ複合材料の誘電率を測定したところ、比誘電率は90.7であった。また硬化物の比重は1.3であった。
【0052】
実施例12
絶縁化超微粉末を合成するに当たり、カーボンナノファイバー5gを60wt%硝酸水溶液中で100℃加熱し、酸化処理を施した以外は、実施例11と同様にした。実施例1と同様に、高誘電率エポキシ複合材料の誘電率を測定したところ、比誘電率は102であった。硬化物の比重は1.3であった。
【0053】
実施例13
イソプロパノール25g中に、天然黒鉛(厚さ100〜200nm、平均厚さ150nm、1〜3μm角、平均2μm角の板状)5gとテトラエトキシシリケート1.8gを加え、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液13gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に24時間攪拌を継続した後、N,N−ジメチルアセトアミドを30g添加しつつ150℃に加熱し、溶媒置換した。得られた懸濁液を濾別、乾燥し、5.6gの絶縁化超微粉末を得た。
走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、30〜50nm厚、平均40nm厚の二酸化シリコン水和物の皮膜が形成されていた。尚、二酸化シリコンは、結晶状態において、比誘電率3.8、比重2.1である。したがっては分子分極は13cmである。
得られた絶縁化超微粉末3.5gとビスフェノールA型エポキシモノマー6.5g、イミダゾール系硬化触媒0.13g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで1分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末を20vol%添加したことになる。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥したペーストを120℃で3時間加熱し硬化物の板を得た。
実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は69.1であった。比重は1.2であった。
【0054】
実施例14
イソプロパノール25g中に、カーボンブラック (粒子直径10〜30nm、平均直径25nmの球状)5gとトリプロピルオキシアルミナート1.8gを加え、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液13gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に12時間攪拌を継続した後は、実施例1と同様にN,N−ジメチルアセトアミドに溶媒置換した後、濾別、乾燥し、5.5gの絶縁化超微粉末を得た。
走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、5〜10nm厚、平均7nm厚の三酸化二アルミニウム水和物の皮膜が形成されていた。尚、三酸化二アルミニウムは結晶状態において比誘電率9.6比重3.8である。したがって分子分極は10cmである。
得られた絶縁化超微粉末2.5gとビスフェノールA型エポキシモノマー7.5g、イミダゾール系硬化触媒0.15g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末を13vol%添加したことになる。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥したペーストを120℃で3時間加熱し硬化物の板を得た。
実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は70.7であり、比重は1.3であった。
【0055】
実施例15
イソプロパノール中2.5g中に気相成長法にて合成したカーボンナノチューブ(断面直径:5〜11nm、平均断面直径:8nm、長さ:50〜200nm、繊維状)を5gとテトラプロピルオキシチタネート1.8gを加え、1時間攪拌した後、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液1.3gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、濾過し12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥し、5.6gの粉末を得た。
走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、2〜4nm厚、平均3nm厚の二酸化チタン水和物の皮膜が形成されていた。
得られた絶縁化超微粉末2gとビスフェノールA型エポキシモノマー8g、イミダゾール系硬化触媒0.16g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥した後に120℃で3時間加熱し厚さ1mmの硬化物シートを得た。これは絶縁化超微粉末を10vol%添加したことになる。これを、実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は189であった。また板の比重は1.3であった。
【0056】
実施例16
イソプロパノール中25g中に溶融紡糸法により合成したカーボンナノファイバー(断面直径:300〜500nm、平均断面直径:400nm、長さ:50μm、繊維状)を5gとテトラブチルオキシジルコネート18gを加え、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液1.3gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、実施例10と同様にN,N−ジメチルアセトアミドに溶媒置換した後、濾別、乾燥し、9gの粉末を得た。
走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、90〜130nm厚、平均110nm厚の二酸化ジルコニウム水和物の皮膜が形成されていた。実施例10と同様に高誘電率エポキシ複合材料の硬化物の板を作製し、実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は58.4であった。
【0057】
実施例17
実施例10で得られた絶縁化超微粉末1gとビスフェノールA型エポキシモノマー9g、イミダゾール系硬化触媒0.16g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで1分間粉砕混合した以外は全て実施例10と同様にして硬化物のシートを得た。これは絶縁化超微粉末を5vol%添加したことになる。実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は57.8であった。またフィルムの比重は1.3であった。
【0058】
実施例18
実施例11におけるテトラプロピルオキシジルコネートの添加量を0.5gとした以外は、全て同様にした。なお得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、2〜7nm厚、平均5nm厚の二酸化ジルコニウム水和物の皮膜が形成されていた。この絶縁化超微粉末を実施例10と同様にエポキシ樹脂と混合し得られた硬化物の誘電率は178、比重は1.3であった。
【0059】
実施例19
実施例10におけるテトラプロピルオキシチタネートの添加量を22gとした以外は、全て実施例10同様にした。なお得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、70〜130nm厚、平均100nm厚の二酸化チタン水和物の皮膜が形成されていた。得られた硬化物の誘電率は74.3、比重は1.3であった。
【0060】
比較例4
実施例10における絶縁化超微粉末を7gとビスフェノールA型エポキシモノマーを3g混合した以外は、実施例10と同様にした。これは60vol%添加したことになる。この場合、非常に脆い硬化物しか得られなかった。誘電率の測定が出来なかった。
【0061】
比較例5
実施例10においてテトラプロピルオキシチタネートの添加量を66gとした以外は、実施例10と同様にした。尚、得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、200〜400nm厚、平均300nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。得られた硬化物の誘電率は16.3、比重は1.3であった。
【0062】
比較例6
実施例10においてカーボンナノファイバーではなく、ボールミルで粉砕した炭素繊維(断面直径:800nm〜1.2μm、平均断面直径:1μm、長さ:50μm、繊維状)を用いたほかは、実施例10と同様にした。尚、得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、200〜500nm厚、平均300nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。得られた硬化物の誘電率は9.2であった。
【0063】
実施例10および比較例1より、導電性超微粉末に絶縁皮膜を設けていない場合は導通により誘電体として機能せず、絶縁皮膜により誘電体として性質が備わったことがわかる。実施例10と実施例11より、結晶状態の誘電率が大幅に異なるが、分子分極が同等である二酸化チタン水和物および二酸化ジルコニウム水和物でそれぞれ皮膜した絶縁化超微粉末を用いた場合、ほぼ同等の高誘電率樹脂複合材料が得られることから、分子分極の影響が大きいことがわかる。また、実施例10〜14、特に球状導電性超微粉末であるカーボンブラックを三酸化二アルミニウム水和物で絶縁被覆した絶縁化超微粉末を用いた実施例14と、従来技術の代表的なフィラーであるチタン酸バリウム微粉末を用いた比較例2、3からもわかるように、本発明の絶縁化超微粉末を用いた高誘電率複合材料は、従来技術で必要とされていたよりもはるかに少ない添加率で、高誘電率が実現しかつ軽量であることがわかる。
【0064】
実施例20
実施例1で得られた絶縁化超微粉末を0.2gとポリイミドワニス5.3g(固形分15wt%)ホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末を10vol%添加したことになる。ワニスをガラス板に塗布し200℃1時間で焼成しフィルムを得た。これを用いて実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は92.1であった。またフィルムの比重は1.3であった。
フィルム両面に12μm厚の銅箔をドライラミネートし、それぞれに図1および2の配線パターンを塩化第2鉄水溶液によるエッチングにて、形成し、アンテナフィルム基板を得た。非接触ICカード内臓の定期券と接触した状態で13.56MHzに同調するように、フィルム裏面の配線パターンに切込みを入れた。このアンテナフィルム基板と非接触IC内臓の定期券を接触させると、13.56MHzを利用する市販の非接触ICリーダ(ソニー(株)製RC−S310)から32cm離れた状態で、定期券に内蔵されたICのデータ読み取りが可能であった。
【0065】
実施例21
実施例3で得られた絶縁化超微粉末を0.35gとポリイミドワニス5.3g(固形分15wt%)ホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末を20vol%添加したことになる。ワニスをガラス板に塗布し200℃1時間で焼成した。これを用いて実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は70.1であった。またフィルムの比重は1.3であった。実施例20と同様にアンテナフィルム基板に、実施例20と同様に配線パターンを設け、市販の非接触ICリーダから27cm離れた状態で、定期券に内蔵されたICのデータ読み取りが可能であった。
【0066】
実施例22
実施例4で得られた絶縁化超微粉末0.25gとポリイミドワニス5g(固形分15wt%)を、ホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末を13vol%添加したことになる。ワニスをガラス板に塗布し200℃1時間で焼成した。これを用いて実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は72.1であった。またフィルムの比重は1.3であった。実施例20と同様にアンテナフィルム基板に、実施例20と同様に配線パターンを設け、市販の非接触ICリーダから20cm離れた状態で、定期券に内蔵されたICのデータ読み取りが可能であった。
【0067】
実施例23
イソプロパノール2.5g中に気相成長法にて合成したカーボンナノチューブ(断面直径:5〜11nm、平均断面直径:8nm、長さ:50〜200nm、繊維状)を0.5gとテトラプロピルオキシチタネート1.8gを加え、1時間攪拌した後、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液1.3gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、濾過し12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、2〜4nm厚、平均3nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。
得られた絶縁化超微粉末0.25gとポリイミドワニス5g(固形分15wt%)ホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末を13vol%添加したことになる。ワニスをガラス板に塗布し200℃1時間で焼成した。これを用いて実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は189であった。またフィルムの比重は1.3であった。実施例20と同様にアンテナフィルム基板に、実施例20と同様に配線パターンを設け、市販の非接触ICリーダから36cm離れた状態で、定期券に内蔵されたICのデータ読み取りが可能であった。
【0068】
実施例24
イソプロパノール中25g中に溶融紡糸法により合成したカーボンナノナノファイバー(断面直径:300〜500nm、平均断面直径:400nm、長さ:50μm、繊維状)を5gとテトラプロピルオキシチタネート18gを加え、1時間攪拌した後、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液1.3gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、濾過し12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、90〜130nm厚、平均110nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。得られた絶縁化超微粉末0.25gとポリイミドワニス5g(固形分15wt%)ホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末を13vol%添加したことになる。ワニスをガラス板に塗布し200℃1時間で焼成した。これを用いて実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は56.3であった。またフィルムの比重は1.3であった。実施例20と同様にアンテナフィルム基板に、実施例20と同様に配線パターンを設け、市販の非接触ICリーダから36cm離れた状態で、定期券に内蔵されたICのデータ読み取りが可能であった。
【0069】
実施例25
実施例1で得られた絶縁化超微粉末0.2gとポリイミドワニス16g(固形分15wt%)ホモジナイザーで30分間粉砕混合した以外は全て実施例1と同様にした。これは絶縁化超微粉末を5vol%添加したことになる。ワニスをガラス板に塗布し200℃1時間で焼成した。これを用いて実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は256であった。またフィルムの比重は1.3であった。実施例20と同様にアンテナフィルム基板に、実施例20と同様に配線パターンを設けた。市販の非接触ICリーダから47cm離れた状態で、定期券に内蔵されたICのデータ読み取りが可能であった。
【0070】
実施例26
実施例1で得られた絶縁化超微粉末0.2gとポリイミドワニス1.1g(固形分15wt%)ホモジナイザーで30分間粉砕混合した以外は全て実施例20と同様にした。これは絶縁化超微粉末を40vol%添加したことになる。ワニスをガラス板に塗布し200℃1時間で焼成した。これを用いて実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は256であった。またフィルムの比重は1.6であった。実施例20と同様にアンテナフィルム基板に、実施例20と同様にして13.56MHzに配線パターンを設けた。市販の非接触ICリーダから28cm離れた状態で、定期券に内蔵されたICのデータ読み取りが可能であった。
【0071】
実施例27
テトラプロピルオキシチタネートの添加量を0.5gとした以外は、全て実施例20と同様にした。なお得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、2〜7nm厚、平均5nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。
得られたフィルムの誘電率は178、比重は1.3であった。実施例20と同様にして13.56MHzに同調するパターンを設けた。市販の非接触ICリーダから46cm離れた状態で、定期券に内蔵されたICのデータ読み取りが可能であった。
【0072】
実施例28
テトラプロピルオキシチタネートの添加量を0.5gとした以外は、全て実施例20と同様にした。なお得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、70〜130nm厚、平均100nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。得られたフィルムの誘電率は47.3、比重は1.3であった。実施例20と同様にして13.56MHzに同調するパターンを設けた。市販の非接触ICリーダから18cm離れた状態で、定期券に内蔵されたICのデータ読み取りが可能であった。
【0073】
比較例7
非接触ICカード内臓の定期券単独では、市販の非接触ICリーダから1cm以上離すとデータの読み取り不良となった。
【0074】
比較例8
絶縁化超微粉末を添加しないこと以外は、実施例20と同様に焼成したポリイミドフィルムに配線パターンを設けたアンテナフィルム基板を用いたところ、市販の非接触ICカードリーダ/ライタから1cm以上離すとICのデータ読み取りができなくなった。すなわちこのポリイミドフィルム基板にはアンテナ基板としての効果がなかった。
【0075】
比較例9
絶縁化処理を施さないカーボンナノファイバーを添加した以外は実施例20と同様に焼成したポリイミドフィルムに配線パターンを設けたアンテナフィルム基板を用いたところ、市販の非接触ICカードリーダ/ライタから1cm以上離すとICのデータ読み取りができなくなった。すなわちこのポリイミドフィルム基板にはアンテナ基板としての効果がなかった。
【0076】
比較例10
実施例1における絶縁化超微粉末を0.2gとポリイミドワニスを0.44g混合した以外は、実施例20と同様にした。これは絶縁化超微粉末を60vol%添加したことになる。この場合、柔軟性のあるフィルムが得られず。誘電率等の測定や、アンテナ基板にすることが出来なかった。
【0077】
比較例11
実施例20においてテトラプロピルオキシチタネートの添加量を66gとした以外は、実施例20と同様にした。なお得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、200〜400nm厚、平均300nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。
得られたフィルムの誘電率は16.3、比重は1.3であった。実施例20と同様にこのフィルムに配線パターンを設けたアンテナフィルム基板を用いたところ、市販の非接触ICカードリーダ/ライタから1cm以上離すとICのデータ読み取りができなくなった。すなわちこのポリイミドフィルム基板にはアンテナ基板としての効果がなかった。
【0078】
比較例12
実施例20においてカーボンナノファイバーではなく、ボールミルで粉砕した炭素繊維(断面直径:800nm〜1.2μm、平均断面直径1μm、長さ:50μm、繊維状)を用いたほかは、実施例20と同様にした。なお得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、200〜500nm厚、平均300nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。
得られたフィルムの誘電率は、9.2であった。実施例20と同様にこのフィルムに配線パターンを設けたアンテナフィルム基板を用いたところ、市販の非接触ICカードリーダ/ライタから1cm以上離すとICのデータ読み取りができなくなった。すなわちこのポリイミドフィルム基板にはアンテナ基板としての効果がなかった。
【0079】
実施例29
イソプロパノール150g中にカーボンナノファイバー(断面直径:150nm、長さ:5〜6μm)5gとテトラプロピルオキシチタネート4.5gを添加し、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液77gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、濾過した。12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。
得られた絶縁化超微粉末2gとビスフェノールA型エポシキモノマー(旭電化工業製EP−4100G)8g、イミダゾール系硬化触媒(四国化学製キュアゾール2E4MZ)0.16g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末を10vol%添加したことになる。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥した後に120℃で3時間加熱し硬化物厚さ1mmのシートを得た。これを用いて実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は96.1であった。また硬化物の比重は1.3であった。
次に、図3に示した通り、50mm×40mm×20mmの真鍮製の空洞共振器を作製し対向する側面にそれぞれ入力端子1と出力端子2を設け、5GHz〜15GHzの入力−出力間のSパラメータを、Agilent社製8722ES型ネットワークアナライザーを用いて測定し空洞共振器の共鳴スペクトルピークを確認した。10.3GHz(波長30mm)のピークが−3dBの強度で発生していた。このピークが筐体内での不要電波に対応するものである。つぎに、1mm厚の硬化物のシートを敷き、同様に測定したところ、ピークが消滅していた。これは、硬化物1mm厚のシートが電波吸収の効果が大きいことを意味する。
【0080】
実施例30
イソプロパノール25g中に、天然黒鉛(厚さ:100〜200nm、平均厚さ:150nm、1〜3μm角、平均2μm角の平板状)5gとテトラプロピルオキシチタネート0.6gを加え、1時間攪拌した後、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液4gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、濾過した。12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。
得られた絶縁化超微粉末3.5gとビスフェノールA型エポシキモノマー(旭電化工業(株)製EP−4100G)6.5g、イミダゾール系硬化触媒(四国化学(株)製キュアゾール2E4MZ)0.13g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末を20vol%添加したことになる。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥したペーストを120℃で3時間加熱し厚さ1mmの硬化物のシートを得た。実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は70.1であった。比重は1.3であった。
実施例29と同様に空洞共振器に入れて測定したところ、10.3GHz(波長30mm)のピークが消滅していた。これは、硬化物1mm厚のシートが電波吸収の効果が大きいことを意味する。
【0081】
実施例31
イソプロパノール25g中に、導電性カーボンブラック (粒子直径:10〜30nm、平均粒子直径:25nm) 5gとテトラプロピルオキシチタネート1.8gを加え、1時間攪拌した後、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液13gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、濾過し12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。
得られた絶縁化超微粉末2.5gとビスフェノールA型エポシキモノマー(旭電化工業(株)製EP−4100G)7.5g、イミダゾール系硬化触媒(四国化学(株)製キュアゾール2E4MZ)0.15g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した。これは絶縁化超微粉末を15vol%添加したことになる。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥したペーストを120℃で3時間加熱し厚さ1mm硬化物のシートを得た。実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は71.6であり、比重は1.3であった。
実施例29と同様に空洞共振器に入れて、10.3GHz(波長30mm)のピークが消滅していた。これは、硬化物1mm厚のシートが電波吸収の効果が大きいことを意味する。
【0082】
実施例32
イソプロパノール中2.5g中に気相成長法にて合成したカーボンナノチューブ(断面直径:5〜11nm、平均断面直径:8nm、長さ:50〜200nm、繊維状)を0.5gとテトラプロピルオキシチタネート1.8gを加え、1時間攪拌した後、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液1.3gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、濾過した。12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、2〜4nm厚、平均3nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。
得られた絶縁化超微粉末2gとビスフェノールA型エポシキモノマー(旭電化工業(株)製EP−4100G)8g、イミダゾール系硬化触媒(四国化学(株)製キュアゾール2E4MZ)0.16g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥した後に120℃で3時間加熱し厚さ1mmの硬化物シートを得た。これは絶縁化超微粉末を10vol%添加したことになる。これを用いて実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は189であった。またフィルムの比重は1.3であった。
実施例29と同様に空洞共振器に入れて測定したところ、10.3GHz(波長30mm)のピークが消滅していた。これは、硬化物1mm厚のシートが電波吸収の効果が大きいことを意味する。
【0083】
実施例33
イソプロパノール中25g中に溶融紡糸法により合成したカーボンナノファイバー(断面直径:300〜500nm、平均断面直径:400nm、長さ:50μm、繊維状)を5gとテトラプロピルオキシチタネート18gを加え、1時間攪拌した後、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールで1:6混合液1.3gを5分かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、濾過し12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥した。走査型電子顕微鏡で得られた粉末の表面を確認したところ、90〜130nm厚、平均110nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。
得られた絶縁化超微粉末2gとビスフェノールA型エポシキモノマー(旭電化工業製EP−4100G)8g、イミダゾール系硬化触媒(四国化学製キュアゾール2E4MZ)0.16g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した。得られた溶液をテフロン(登録商標)シャーレに入れ12時間自然乾燥した後に120℃で3時間加熱し厚さ1mmの硬化物シートを得た。これは絶縁化超微粉末を10vol%添加したことになる。
実施例29と同様に空洞共振器に入れて測定したところ、10.3GHz(波長30mm)のピークが消滅していた。これは、硬化物1mm厚のシートが電波吸収の効果が大きいことを意味する。
【0084】
実施例34
実施例29で得られた絶縁化超微粉末1gとビスフェノールA型エポシキモノマー(旭電化工業(株)製EP−4100G)9g、イミダゾール系硬化触媒(四国化学(株)製キュアゾール2E4MZ)0.16g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した以外は全て実施例29と同様にして硬化物のシートを得た。これは絶縁化超微粉末を5vol%添加したことになる。これを用いて実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は256であった。またフィルムの比重は1.3であった。
実施例29と同様に空洞共振器に入れて測定したところ、10.3GHz(波長30mm)のピークが消滅していた。これは、硬化物1mm厚のシートが電波吸収の効果が大きいことを意味する。
【0085】
実施例35
実施例29で得られた絶縁化超微粉末4gとビスフェノールA型エポシキモノマー(旭電化工業(株)製EP−4100G)4g、イミダゾール系硬化触媒(四国化学(株)製キュアゾール2E4MZ)0.08g、および溶媒としてメチルエチルケトン10gをホモジナイザーで30分間粉砕混合した以外は全て実施例1にして硬化物のシートを得た。これは絶縁化超微粉末を40vol%添加したことになる。これを用いて実施例1と同様に誘電率を測定したところ、比誘電率は256であった。またフィルムの比重は1.6であった。
実施例29と同様に空洞共振器に入れて測定したところ、10.3GHz(波長30mm)のピークが消滅していた。これは、硬化物1mm厚のシートが電波吸収の効果が大きいことを意味する。
【0086】
実施例36
実施例29におけるテトラプロピルオキシチタネートの添加量を0.5gとした以外は、全て同様にした。なお得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、2〜7nm厚、平均5nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。この絶縁化超微粉末を実施例29と同様にエポシキ樹脂と混合し得られた硬化物の誘電率は178、比重は1.3であった。実施例1と同様に空洞共振器に入れて測定したところ、10.3GHz(波長30mm)のピークが消滅していた。これは、硬化物1mm厚のシートが電波吸収の効果が大きいことを意味する。
【0087】
実施例37
実施例29におけるテトラプロピルオキシチタネートの添加量を22gとした以外は、全て実施例29と同様にした。なお得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、70〜130nm厚、平均100nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。
得られた硬化物の誘電率は47.3、比重は1.3であった。実施例29と同様に空洞共振器に入れて測定したところ、10.3GHz(波長30mm)のピークが消滅していた。これは、硬化物1mm厚のシートが電波吸収の効果が大きいことを意味する。
【0088】
比較例13
絶縁化超微粉末を添加しないこと以外は、実施例29と同様にした。硬化物の誘電率は4.8であった。10.6GHzおよび10.8GHzの共鳴ピークの分裂が認められた。すなわち抑制の効果はほとんどなかった。
【0089】
比較例14
絶縁化処理を施さないカーボンナノファイバーをエポキシ樹脂に添加した以外は、実施例29と同様にした。10.6GHzのピークが発生していた。
すなわち、電波吸収の効果はなかった。
【0090】
比較例15
実施例29における絶縁化超微粉末を7gとビスフェノールA型エポシキモノマーを3g混合した以外は、実施例29と同様にした。これは絶縁化超微粉末を60vol%添加したことになる。この場合、非常に脆い硬化物しか得られなかった。誘電率等の測定や、電波吸収特性を評価することが出来なかった。
【0091】
比較例16
実施例29においてテトラプロピルオキシチタネートの添加量を66gとした以外は、実施例29と同様にした。なお得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、200〜400nm厚、平均300nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。
得られた硬化物の誘電率は16.3、比重は1.3であった。実施例29と同様に空洞共振器の内部においたところ、10.7GHzのピークが発生していた。すなわち、電波吸収の効果はなかった。
【0092】
比較例17
実施例29においてカーボンナノファイバーではなく、ボールミルで粉砕した炭素繊維(断面直径:800nm〜1.2μm、平均断面直径:1μm、長さ:50μm、繊維状)を用いたほかは、実施例29と同様にした。なお得られた絶縁化超微粉末の表面を走査型電子顕微鏡で確認したところ、200〜500nm厚、平均300nm厚の二酸化チタンの皮膜が形成されていた。得られた硬化物の誘電率は、9.2であった。実施例29と同様に空洞共振器の内部においたところ、10.7GHzのピークが発生していた。すなわち、電波吸収の効果はなかった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の絶縁化超微粉末を少量添加した樹脂複合材料は、樹脂材料本来の優れた成形性や加工性および軽量性を維持したまま高誘電率、さらには電波吸収能を発現する。また、この樹脂複合材料を用いた本発明のアンテナ基板は、非接触ICカード/タグなどの無線データ通信のアンテナの小型化、高性能化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施例20において、アンテナフィルム基板表面に形成した配線パターンである。
【図2】実施例20において、アンテナフィルム基板裏面に形成した配線パターンである。
【図3】電波吸収の効果を確認するために用いた真鍮製の空洞共振器の外観図
【符号の説明】
【0095】
1 入力端子
2 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性超微粉末に絶縁皮膜を設けてなる絶縁化超微粉末であって、導電性超微粉末が、粒子直径1nm以上500nm以下の球状、断面直径1nm以上500nm以下の繊維状、または厚さ1nm以上500nm以下の板状の炭素材料からなり、絶縁皮膜が絶縁性金属酸化物又はその水和物からなり、絶縁皮膜の厚さが、0.3nm以上で、かつ導電性超微粉末が球状の場合にはその粒子直径以下、繊維状の場合にはその断面直径以下、板状の場合にはその厚さ以下であることを特徴とする絶縁化超微粉末。
【請求項2】
前記絶縁皮膜が、組成式MTi1−xZr(Mは2価の金属元素、xは0以上1未満)で表される絶縁性複合金属酸化物からなる請求項1記載の絶縁化超微粉末。
【請求項3】
絶縁性金属酸化物が、分子分極が5cm以上である絶縁性金属酸化物又はその水和物である請求項1記載の絶縁化超微粉末。
【請求項4】
絶縁性複合金属酸化物が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、またはこれらのうち少なくとも一種を組成に含む絶縁性固溶体である請求項2記載の絶縁化超微粉末。
【請求項5】
炭素材料の表面に酸化処理を施した請求項1記載の絶縁化超微粉末。
【請求項6】
炭素材料が、カーボンナノファイバー、天然黒鉛、ファーネスカーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンナノチューブ、又は人造黒鉛である請求項1記載の絶縁化超微粉末。
【請求項7】
絶縁性金属酸化物又はその水和物が、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、五酸化二タンタル、二酸化ジルコニウムと二酸化シリコンとの固溶体、二酸化シリコン、三酸化二アルミニウム、又はこれら金属酸化物の水和物である請求項3記載の絶縁化超微粉末。
【請求項8】
請求項1記載の絶縁化超微粉末と樹脂とを、体積比(絶縁化超微粉末/樹脂)5/95〜50/50の範囲で配合して得られる高誘電率樹脂複合材料。
【請求項9】
比重が2以下である請求項8記載の高誘電率樹脂複合材料。
【請求項10】
さらに充填剤を含有する請求項8記載の高誘電率樹脂複合材料。
【請求項11】
比誘電率が20以上である請求項8記載の高誘電率樹脂複合材料。
【請求項12】
請求項8記載の高誘電率樹脂複合材料を用いたアンテナ基板。
【請求項13】
高誘電率樹脂複合材料からなり、かつ厚さが1μm以上3mm以下である層を少なくとも一層含む請求項12記載のアンテナ基板。
【請求項14】
請求項12記載のアンテナ基板を用いることを特徴とする非接触ICカード/タグ。
【請求項15】
請求項8記載の高誘電率樹脂複合材料を用いた電波吸収材。
【請求項16】
吸収する電波の波長に対する厚さが1/20以下である請求項15記載の電波吸収材を用いた電波吸収材シート。
【請求項17】
請求項15記載の電波吸収材を筐体内部に用いた電子機器。
【請求項18】
請求項8記載の高誘電率樹脂複合材料を用いて形成される高誘電率フィルム又はシート。
【請求項19】
請求項18記載の高誘電率フィルム又はシートを用いることを特徴とする電子部品。
【請求項20】
請求項8記載の高誘電率樹脂複合材料を用いて形成される電子部品。
【請求項21】
導電性超微粉末を分散し、かつ少なくとも一種類の金属アルコキシドの溶解した有機溶媒中において、該金属アルコキシドをゾルゲル反応により導電性超微粉末の表面に金属酸化物又はその水和物を析出させる工程を含む請求項1記載の絶縁化超微粉末の製造方法。
【請求項22】
導電性超微粉末の表面に金属酸化物又はその水和物を析出させる工程に次いで、非酸化性雰囲気下で焼成する工程を含む請求項21記載の絶縁化超微粉末の製造方法。
【請求項23】
導電性超微粉末の表面に金属酸化物又はその水和物を析出させる工程に次いで、皮膜反応液を加熱し液相中で金属酸化物又はその水和物を脱水する工程を含む請求項21記載の絶縁化超微粉末の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−344570(P2006−344570A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227793(P2005−227793)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】