説明

絶縁電源装置

【課題】直流−交流用の電圧変換部のトランス一次巻線の矩形波電圧のGNDを基準とし
た振幅を1/2に圧縮できるようにすると共に、その二次巻線より後段に与えるコモンモ
ードノイズを従来方式に比べて低減できるようにする。
【解決手段】正極及び負極を有した直流電圧発生部21から出力される直流電圧を変換し
て交流電圧発生用の直流電圧を出力するDC電圧変換部20と、一次巻線に中点タップが
設けられ、一次巻線と二次巻線との間に所定の巻数比が設けられたトランスT11を有し
、DC電圧変換部20から入力した直流電圧を交流電圧に変換して二次巻線に誘導する交
流電圧発生部30とを備え、トランスT11の一次巻線の中点タップが直流電圧発生部2
1の負極に接続されて接地電位に固定されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流電圧源から供給される直流電圧を交流電圧に変換し、変換後の交流電
圧を各々の測定モジュール毎に分配し、各測定モジュールで交流電圧を所望の直流電圧に
変換して負荷回路に供給する絶縁電源供給システムに適用して好適な絶縁電源装置に関す
るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気や、機械、化学工場等のプラントにおいて、本体側から測定モジュール
に電気的に絶縁して電力を供給する絶縁電源装置が使用される場合が多い。このような絶
縁電源装置を用いる機器の例としては、測定モジュールに設けられる信号入力端子に、本
体側にて使用される電圧よりも高い電圧の信号が入力される機器等が挙げられる。
【0003】
さらに具体的な機器の例としては、本体側と本体側から電気的に絶縁されている測定モ
ジュールが分離可能な測定器(オシロスコープや電力計等)が挙げられる。本体側には、
ハードディスクやメモリ等の測定波形を記憶する記憶部、信号処理や演算、制御を行うC
PU、演算結果や測定結果を表示する表示部、測定結果を印刷するプリンタ等が設けられ
る。また、測定モジュールには、被測定物に電気的に接触するプローブ、被測定信号を処
理する信号処理部などが設けられる。
【0004】
測定モジュールに入力される被測定信号には、設計を超える過大な信号電圧または電流
が入力される場合がある。このため、本体側と測定モジュールが電気的に絶縁されていな
いと、この過大入力により本体側の回路が破壊されてしまう場合がある。また、測定モジ
ュールの回路を駆動するためには、本体側から電力の供給を受けられるようにするか、測
定モジュールごとに電源が必要となる。このような絶縁電源装置の構成例について説明す
る。
【0005】
図6は、従来例に係る絶縁電源装置10の内部構成例を示す回路図である。図6に示す
絶縁電源装置10によれば、直流電圧源(E)から所望の交流電圧を発生する場合に、降
圧型のDC電圧変換部2、交流電圧発生部3及び制御信号生成部4を備えて構成される。
DC電圧変換部2は、スイッチ素子Q1、ダイオードD1、チョークコイルL1及び静電
容量C1を有している。
【0006】
スイッチ素子Q1はそのドレインが直流電圧発生部21の正極(+)に接続され、その
ソースがチョークコイルL1の一端に接続される。そのゲートはコントロールドライバ8
に接続される。スイッチ素子Q1とチョークコイルL1との接続点にはダイオードD1の
カソードが接続される。静電容量C1の正極はチョークコイルL1の他端に接続されると
共に、トランスT13の中点タップa”に接続される。スイッチ素子Q1,Q2,Q3に
はn型の電界効果トランジスタが使用される。
【0007】
スイッチ素子Q2のドレインは、トランスT1の一次巻線W1の一端(以下c”点いう
)に接続され、スイッチ素子Q3のドレインは、トランスT1の一次巻線W1の他端(以
下b”点いう)に接続される。上述のダイオードD1のアノード、静電容量C1の負極及
び、スイッチ素子Q2,Q3の両ソースは直流電圧発生部21の負極(−:GND)に接
続される。スイッチ素子Q2,Q3の各々のゲートはコントロールドライバ8に接続され
る。
【0008】
トランスT1の二次巻線W2には制御信号生成部4が接続される。制御信号生成部4は
、交流振幅検出部5、誤差増幅部6、光電結合部7及び基準電圧発生部9を有している。
交流振幅検出部5は、トランスT13の二次巻線W2に接続される。交流振幅検出部5は
誤差増幅部6が接続される。誤差増幅部には光電結合部7及び基準電圧発生部9が接続さ
れる。光電結合部7はコントロールドライバ8及びGNDに接続される。これらにより絶
縁電源装置10を構成する。
【0009】
このように構成された絶縁電源装置10の動作例について説明する。図7は絶縁電源装
置10の動作例を示す波形図である。図6に示した絶縁電源装置10によれば、降圧型の
DC電圧変換部2から交流電圧発生部3に交流電圧発生用の直流電圧が出力される。DC
電圧変換部2では、スイッチ素子Q1がコントロールドライバ8によってオン・オフ制御
され、トランスT13の中点タップa”には、静電容量C1から直流電圧(正極)が入力
される。
【0010】
まず、DC電圧変換部2では、コントロールドライバ8がフィードバック制御信号S6
’に応じたデューティ比により、スイッチ素子Q1をゲート制御する。このゲート制御に
より、スイッチ素子Q1がオン・オフ(開閉)動作し、直流電圧発生部21からの直流電
圧を断続したパルス電圧をチョークコイルL1へ入力する。入力されたパルス電圧は、チ
ョークコイルL1とダイオードD1及び静電容量C1により構成される平滑回路により、
所望の直流電圧へ平滑される。トランスT13の一次巻線W1には、DC電圧変換部2か
ら出力される直流電圧がスイッチ素子Q1,Q2がオン・オフして得られるパルス電圧が
入力される。
【0011】
次に、交流電圧発生部3では、スイッチ素子Q2及びQ3がそれぞれ排他的なタイミン
グでオン・オフ動作することにより、直流電圧を交流電圧に変換するようになる。このス
イッチ素子Q2及びQ3のオン・オフ動作によって、トランスT13の一次巻線W1で各
々相補する巻線を交互に通電し、トランスT13の巻数比(N2×2)/N1で規定され
る交流電圧を二次巻線W2の側に誘導する。
【0012】
このとき、トランスT13の中点タップa”には、DC電圧変換部2から供給される正
極の直流電圧が入力される。図7に示す中点タップa”(以下a”点という)を中心に、
b”点とc”点とが、図7に示す接地電位0V(→FG:Frame Grand)〜a”点電位×
2倍の間で、振幅動作を繰り返すようになる。すなわち、交流電圧は、絶縁電源装置10
としての安定電位であるFGを基準に本来必要な電圧の2倍のスケールで振幅動作する。
【0013】
また、制御信号生成部4では、発生した交流電圧の振幅が検出され、交流振幅検出信号
S5に基づく電圧レベルと基準電圧VREFとの偏差を増幅し、絶縁したフィードバック制
御信号S6’をDC電圧変換部2へ伝達し、フィードバックループを構成する。このとき
、交流振幅検出部5では、トランスT13の二次巻線W2に誘導された交流電圧の振幅が
検出され、交流振幅検出信号S5が誤差増幅部6に出力される。
【0014】
誤差増幅部6では、交流振幅検出信号S5に基づく電圧レベルと、予め設定された基準
電圧VREFとの差分が検出されて、当該差分の電圧が制御信号S6に変換される。制御信
号S6は光電結合部7を介して二次巻線W2に対し絶縁されたフィードバック制御信号S
6’に変換される。コントロールドライバ8は、フィードバック制御信号S6’に基づい
てスイッチ素子Q1,Q2及びQ3をオン・オフするので、直流電圧発生部21から供給
される直流電圧を所望の交流電圧に変換できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003−102173号公報(第4頁 図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、従来例に係る絶縁電源装置10によれば、次のような問題がある。
i.特許文献1に見られるような絶縁電源装置10によれば、高精度の電圧調整能力、
高速レスポンス(負荷要求対応)、及び、低ノイズ性が電源品位として問われる場合が多
い。電源ノイズに関しては、絶縁電源装置10が測定モジュールの絶縁電源装置として使
用される場合は、測定確度に影響し、また、外部へ漏出するノイズの対策も別途必要とな
る。
【0017】
ii.特に、絶縁電源供給システムにおいて、二重絶縁を実現する手段として、送電側の
トランスで交流電圧を出力し、受電側のトランスにて直流電圧に戻す構成とする場合、矩
形波の交流電圧を電送する電源線が長く引き回される傾向にある。
【0018】
この電源線の引き回しによって、測定モジュール各部へのコモンモードノイズの影響が
発生する。このコモンモードノイズを低減するために、電源線に機械的・電気的なシール
ドを施したり、カップリングコンデンサや、ノイズフィルタ等を追加したり等の対策を採
らなくてはならない。これにより、装置全体のサイズアップやコストアップ、漏洩電流の
増加等の弊害を伴うという問題がある。
【0019】
そこで、この発明は上述した課題を解決したものであって、直流−交流用の電圧変換部
のトランス一次巻線の矩形波電圧の接地電位を基準にした振幅をほぼ1/2に圧縮すると
共に、その二次巻線より後段に与えるコモンモードノイズを従来方式に比べて低減できる
ようにした絶縁電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明に係る絶縁電源装置は、直流電圧から複数の所望の
直流電圧を発生する絶縁電源装置において、正極及び負極を有した直流電圧源から出力さ
れる電圧を変換して交流電圧発生用の直流電圧を出力する直流−直流用の電圧変換部と、
一次巻線に中点タップが設けられ、一次巻線と二次巻線との間に所定の巻数比が設けられ
たトランスを有し、前記電圧変換部から入力した直流電圧を交流電圧に変換して前記二次
巻線に誘導する直流−交流用の電圧変換部とを備え、前記トランスの一次巻線の中点タッ
プが前記直流電圧源の負極に接続されて接地電位に固定されることを特徴とするものであ
る。
【0021】
本発明に係る絶縁電源装置によれば、直流−直流用の電圧変換部は、正極及び負極を有
した直流電圧源から出力される電圧を変換して交流電圧発生用の直流電圧を出力する。例
えば、直流−直流用の電圧変換部は、直流電圧源から出力される電圧を変換して当該直流
電圧の極性を反転した交流電圧発生用の直流電圧を出力する。直流−交流用の電圧変換部
は、一次巻線に中点タップが設けられ、一次巻線と二次巻線との間に所定の巻数比が設け
られたトランスを有している。直流−交流用の電圧変換部は、直流−直流用の電圧変換部
から入力した直流電圧を交流電圧に変換して二次巻線に誘導する。これを前提にして、ト
ランスの一次巻線の中点タップが直流電圧源の負極に接続されて接地電位に固定されるの
で、トランスの一次巻線の矩形波電圧の振幅を接地電位=0Vを基準にして正・負極側に
ほぼ1/2に圧縮できるようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る絶縁電源装置によれば、直流−交流用の電圧変換部のトランスの一次巻線
の矩形波電圧の振幅が、接地電位=0Vを基準にして正・負極側に1/2に圧縮されるの
で、その二次巻線より後段に与えるコモンモードノイズを従来方式に比べて低減できるよ
うになる。しかも、絶縁電源装置のFG電位(接地電位=0V)を基準としたので、絶縁
電源供給システムにおいて、各種測定器等に直流電圧を安定して供給できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る実施形態としての絶縁電源供給システム1の構成例を示すブロック図である。
【図2】第1の実施例に係る絶縁電源装置101の内部構成例を示す回路図である。
【図3】絶縁電源装置101の動作例を示す波形図である。
【図4】第2の実施例に係る絶縁電源装置102の内部構成例を示す回路図である。
【図5】絶縁電源装置102の動作例を示す波形図である。
【図6】従来例に係る絶縁電源装置10の内部構成例を示す回路図である。
【図7】絶縁電源装置10の動作例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態に係る絶縁電源装置について説明を
する。図1に示す絶縁電源供給システム1は、本発明に係る絶縁電源装置101を備え、
直流電圧を交流電圧に変換し、当該交流電圧を負荷回路毎に分配し、分配された交流電圧
を所望の直流電圧に変換して当該負荷回路毎に供給するものである。絶縁電源供給システ
ム1は、例えば、3つの測定モジュールM1〜M3に電力を共有する場合に、絶縁電源装
置101及び複数の基礎絶縁電源41,51,61を有して構成される。
【0025】
絶縁電源装置101は、直流電圧源から供給される直流電圧を交流電圧に変換するため
に、制御信号生成部4、直流−直流用の電圧変換部(以下DC電圧変換部20という)及
び直流−交流用の電圧変換部(以下交流電圧発生部30という)を有して構成される。
【0026】
DC電圧変換部20は、コントロールドライバ8、直流電圧発生部21及びDC/DC
コンバータ22を有して構成される。直流電圧発生部21はDC/DCコンバータ22の
入力に接続され、当該DC/DCコンバータ22の出力は、DC/ACインバータ31の
入力に接続される。コントロールドライバ8の信号は、DC/DCコンバータ22に接続
される。
【0027】
交流電圧発生部30は、DC/ACインバータ31及びトランスT11を有して構成さ
れる。DC/ACインバータ31の出力は、トランスT11の一次巻線W1に接続される
。トランスT11の二次巻線W2は制御信号生成部4及び3つの測定モジュールM1〜M
3に接続される。制御信号生成部4は、例えば、交流振幅検出部5、誤差増幅部6、光電
結合部7及び基準電圧発生部9を有して構成される。
【0028】
交流振幅検出部5は入力が二次巻線W2に接続され、出力が誤差増幅部6に接続される
。誤差増幅部6の出力は光電結合部7に接続される。光電結合部7は発光素子及び受光素
子を有して構成される。光電結合部7の受光素子はコントロールドライバ8に接続される

【0029】
上述のトランスT11の二次巻線W2には制御信号生成部4の他に、複数の測定モジュ
ールM1〜M3が接続される。この例で、各々の測定モジュールM1〜M3に対応して基
礎絶縁電源41,51,61が設けられる。基礎絶縁電源41,51,61は交流−直流
用の電圧変換部の一例を構成する。例えば、基礎絶縁電源41は、トランスT1及び整流
平滑回路42を有して測定モジュールM1に設けられる。
【0030】
トランスT1の一次巻線w1は絶縁電源装置101のトランスT11の二次巻線W2に
接続される。トランスT1の二次巻線w2は整流平滑回路42に接続され、この整流平滑
回路42には、負荷回路43が接続される。基礎絶縁電源51及び61についても、基礎
絶縁電源41と同様な構成と機能を成すのでその説明を省略する。図中の(1)、(2)
は、それぞれ基礎絶縁構造を有し、システム全体で、それぞれの測定モジュールM1〜M
3間及び直流電圧発生部との間に二重絶縁構造を成している。
【0031】
このように絶縁電源供給システム1が構成され、絶縁電源装置101から分配される交
流電圧を所望の直流電圧に変換して負荷回路43,53,63毎に直流電圧を供給する。
例えば、測定モジュールM1において、整流平滑回路42は、トランスT1の二次巻線w
2に誘導された交流電圧を整流して直流電圧を負荷回路43に供給する。
【実施例1】
【0032】
次に、図2を参照して、第1の実施例に係る絶縁電源装置101のDC電圧変換部20
及び交流電圧発生部30の内部構成例について説明する。この例では、交流電圧発生部3
0が、FG電位=0Vに対して、従来方式のような正電圧に替わり、負電圧で動作する点
に最大の特徴を有している。
【0033】
図2に示すDC電圧変換部20は、直流電圧発生部21、第1のスイッチ素子Q11、
チョークコイルL11、ダイオードD11、静電容量C11及びコントロールドライバ8
を有して構成される。
【0034】
直流電圧発生部21はスイッチ素子Q11に接続される。この例では、スイッチ素子Q
11には、n型の電界効果トランジスタが使用される。スイッチ素子Q11のドレインは
直流電圧発生部21の正極に接続され、そのソースはチョークコイルL11の一端に接続
され、そのゲートはコントロールドライバ8に接続される。
【0035】
チョークコイルL11の他端は、直流電圧発生部21の負極に接続される。直流電圧発
生部21の負極は接地電位0Vに固定され、FG電位を基準とするようになされる。チョ
ークコイルL11の一端にはスイッチ素子Q11の他にダイオードD11が接続される。
ダイオードD11のカソードはスイッチ素子Q11とチョークコイルとの接続点に接続さ
れる。ダイオードD11のアノードは静電容量C11の負極に接続される。静電容量C1
1の正極は直流電圧発生部21の負極に接続される。
【0036】
上述のスイッチ素子Q11のゲートはコントロールドライバ8に接続される。静電容量
C11及びダイオードD11を接続した接続点pは交流電圧発生部30に接続される。交
流電圧発生部30は、第2のスイッチ素子Q21、第3のスイッチ素子Q31及びトラン
スT11を有して構成される。
【0037】
この例では、スイッチ素子Q21,Q31には、n型の電界効果トランジスタが使用さ
れる。トランスT11には、一次巻線W1に中点タップa(以下a点ともいう)が設けら
れる。一次巻線W1は中点タップaのFG電位を中心に相補するように動作する。トラン
スT11には、二次巻線W2にも中点タップdが設けられ、一次巻線W1と二次巻線W2
との間には相補する巻線毎に巻数比N1:N2が設定されている。
【0038】
スイッチ素子Q21,Q31のソースは接続点pに接続され、スイッチ素子Q21のド
レインがトランスT11の一次巻線W1のc点に接続され、そのゲートは、コントロール
ドライバ8に接続される。スイッチ素子Q31のドレインは、トランスT11の一次巻線
W1の他端(以下b点という)に接続され、そのゲートもコントロールドライバ8に接続
される。
【0039】
トランスT11の二次巻線W2の中点タップdは制御信号生成部4に接続される。中点
タップdは例えば、誤差増幅部6、光電結合部7及び基準電圧発生部9のコモンライン(
中性線:COM)に接続される。誤差増幅部6の出力は光電結合部7の発光素子の一端に
接続され、その他端がコモンラインCOMに接続される。光電結合部7の受光素子の一端
は、接続点pに接続され、その他端がコントロールドライバ8に接続される。
【0040】
このように絶縁電源装置101が構成され、コントロールドライバ8は、フィードバッ
ク制御信号S6’に基づいてスイッチ素子Q11をオン・オフし、DC電圧変換部20の
出力電圧を制御する。この制御によって、トランスT11の二次巻線W2の一端e及びそ
の他端fに誘導される交流電圧(AC出力)が複数の測定モジュールM1〜M3等に配分
される。
【0041】
続いて、図3を参照して、第1の実施例としての絶縁電源装置101の動作例について
、絶縁電源装置101の動作例を説明する。図3に示す横軸は時間tであり、縦軸は、一
次巻線W1の交流電圧の振幅(AC電圧)である。この例でコントロールドライバ8は、
スイッチ素子Q21及びQ31を所定の周期で交互にオン・オフするように制御する。
【0042】
この絶縁電源装置101によれば、DC/DCコンバータ22は、コントロールドライ
バ8のスイッチ制御を受けて、直流電圧発生部21から出力される直流電圧を交流電圧発
生用の直流電圧に変換し、変換後の直流電圧を交流電圧発生部30へ出力するように動作
する。交流電圧発生部30は、DC電圧変換部20から入力した直流電圧を交流電圧に変
換し、当該交流電圧をトランスT11の二次巻線W2に誘導するように動作する。
【0043】
制御信号生成部4は、二次巻線W2から絶縁されたフィードバック制御信号S6’を生
成する。この信号は、DC電圧変換部20へ伝達され、所望の交流電圧へ調整するために
コントロールドライバ8がDC/DCコンバータ22を制御する際に必要となる。このフ
ィードバック制御信号S6’を生成するために、交流振幅検出部5は交流電圧発生部30
から出力される交流電圧の振幅を検出して交流振幅検出信号S5を発生する。交流振幅検
出信号S5は、トランスT11の二次巻線に誘導される交流電圧の振幅情報である。
【0044】
誤差増幅部6は、例えば、交流振幅検出信号S5に基づく電圧レベルと、予め設定され
た基準電圧VREFとの差分を検出して、当該差分の電圧を制御信号S6に変換する。制御
信号S6は光電結合部7によって一次巻線W1の側に対して絶縁される。
【0045】
光電結合部7では、発光素子によって制御信号S6が光に変換される。受光素子は光に
変換された制御信号S6を受光して電気信号(絶縁されたフィードバック制御信号S6’
)に変換する。コントロールドライバ8は、当該フィードバック制御信号S6’に基づい
てDC電圧変換部20の出力を制御するようになる。
【0046】
図2に示したDC電圧変換部20では、コントロールドライバ8がフィードバック制御
信号S6’に応じたデューティ比により、スイッチ素子Q11をゲート制御する。このゲ
ート制御により、スイッチ素子Q11がオン・オフ(開閉)動作し、直流電圧発生部21
からの直流電圧を断続したパルス電圧をチョークコイルL11へ入力する。この動作にお
いては、従来方式が絶縁電源装置10を有する降圧型コンバータであったが、本発明では
、これを極性反転型としたことを特徴としている。
【0047】
図3に示すb点電位はa点電位=0V(→FG:Frame Grand)を基準にして、スイッ
チ素子Q31がオンし、スイッチ素子Q21がオフすることで、正電位から負電位に反転
すると共に、c点電位は負電位から正電位に反転する。次に、スイッチ素子Q31がオフ
し、スイッチ素子Q21がオンすることで、b点電位は負電位から正電位に反転すると共
に、c点電位は正電位から負電位に反転する。このようにa点電位=0Vを基準にして、
交互にb点電位及びc点電位が正電位から負電位へ変化する交流電圧であって、トランス
T11の一次巻線W1から巻数比(N2×2)/N1で規定される交流電圧が二次巻線W
2の側に誘導される。
【0048】
図3に示したトランスT11の一次巻線W1の電圧波形例からも明らかなように、FG
電位を基準に、DC電圧変換部20の出力電圧のスケールで正極側/負極側に振幅動作し
ており、改善前の電圧波形例と比較して1/2の電位変動に抑制されていることがわかる
。即ち、コモンモードノイズに対して最大1/2の改善効果が得られることになる。
【0049】
従って、本発明に係る絶縁電源装置101を備えた絶縁電源供給システム1において、
交流電圧発生部30のトランスT11の二次巻線W2より後段、すなわち、測定モジュー
ルM1〜M3等に与えるコモンモードノイズを従来方式に比べて低減できるようになる。
【0050】
なお、初段のDC電圧変換部20については、ダイオードD11を用いたダイオード整
流方式の場合について説明したが、これに限られることはなく、このダイオード整流方式
に代えて、スイッチ素子を備えた同期整流方式としても良い。
【実施例2】
【0051】
続いて、図4を参照して、第2の実施例に係る絶縁電源装置102を説明する。この例
では、従来方式の降圧型のコンバータのようにDC電圧変換部23を構成し、交流電圧発
生部32の第2のスイッチ素子Q22及び第3のスイッチ素子Q32をトランスT12の
一次巻線W1の高電位側に置き換えたものである。トランスT12の一次巻線W1におけ
る中点タップa’は、第1の実施例と同様にして当該絶縁電源供給システム1の安定電位
であるFG電位に接続される。
【0052】
図4に示す絶縁電源装置102は降圧型のコンバータを構成し、制御信号生成部4、D
C電圧変換部23及び交流電圧発生部32を有して構成される。DC電圧変換部23は、
直流電圧発生部21、第1のスイッチ素子Q12、チョークコイルL12、ダイオードD
12、静電容量C12及びコントロールドライバ8を有して構成される。
【0053】
スイッチ素子Q12はそのドレインが直流電圧発生部21の正極に接続され、そのソー
スがチョークコイルL12の一端に接続される。そのゲートはコントロールドライバ8に
接続されてオン・オフ制御される。スイッチ素子Q12とチョークコイルL12との接続
点には、ダイオードD12のカソードが接続される。
【0054】
静電容量C12の正極はチョークコイルL12の他端に接続される。ダイオードD12
のアノード、静電容量C12の負極及びトランスT12の中点タップa’は直流電圧発生
部21の負極に接続される。チョークコイルL12の他端は、交流電圧発生部32に接続
される。ここで、チョークコイルL12と静電容量C12と接続した点を接続点qとする

【0055】
交流電圧発生部32は、スイッチ素子Q22、スイッチ素子Q32及びトランスT12
を有して構成される。トランスT12の一次巻線W1は中点タップa’のFG電位を中心
に相補する。スイッチ素子Q22は、トランスT12の一次巻線W1の一端(以下c’点
いう)に、スイッチ素子Q32は一次巻線W1の他端(以下b’点いう)に接続される。
スイッチ素子Q22,Q32のドレインは接続点qに接続され、そのゲートがコントロー
ルドライバ8に接続される。
【0056】
この例でも、トランスT12の二次巻線W2の中点タップd’は制御信号生成部4の誤
差増幅部6、光電結合部7及び基準電圧発生部9のコモンラインに接続される。誤差増幅
部6の出力は光電結合部7の発光素子の一端に接続され、その他端がコモンラインに接続
される。光電結合部7の受光素子の一端は、接続点pに接続され、その他端は、第1の実
施例と同様にして、コントロールドライバ8に接続される。
【0057】
このように絶縁電源装置102が構成され、コントロールドライバ8は、フィードバッ
ク制御信号S6’に基づいてスイッチ素子Q12をオン・オフし、DC電圧変換部23の
出力電圧を制御する。この制御によって、トランスT12の二次巻線W2の一端e’及び
その他端f’に誘導される交流電圧(AC出力)が複数の測定モジュールM1〜M3等に
配分される。
【0058】
続いて、図5を参照して、絶縁電源装置102の動作例を説明する。図5に示す横軸は
時間tであり、縦軸は、トランスT12の一次巻線W1の交流電圧の振幅である。この例
でコントロールドライバ8は、スイッチ素子Q22及びQ32を交互にオン・オフするよ
うに制御する。
【0059】
b’点電位はa’点電位=0V(FG)を基準にして、スイッチ素子Q32がオンし、
スイッチ素子Q22がオフすることで、負電位から正電位に反転すると共に、c’点電位
は正電位から負電位に反転する。次に、スイッチ素子Q32がオフし、スイッチ素子Q2
2がオンすることで、b’点電位は正電位から負電位に反転すると共に、c’点電位は負
電位から正電位に反転する。
【0060】
このようにa’点電位=0Vを基準にして、交互にb’点電位及びc’点電位が変化す
る交流電圧であって、トランスT12の一次巻線W1から巻数比(N2×2)/N1で規
定される交流電圧が二次巻線W2に誘導される。二次巻線W2に誘導された交流電圧は、
第1の実施例と同様にして複数の測定モジュールM1〜M3等に配分される。
【0061】
このように、第2に実施例に係る絶縁電源装置102によれば、トランスT12の一次
巻線W1の中点タップa’が直流電圧発生部21の負極に接続されて接地電位0Vに固定
されるので、トランスT12の一次巻線W1の矩形波電圧の振幅を接地電位=0Vを基準
にして正・負極側に1/2に圧縮できるようになる。
【0062】
従って、本発明に係る絶縁電源装置102を備えた絶縁電源供給システム1において、
交流電圧発生部32のトランスT12の二次巻線W2より後段に与えるコモンモードノイ
ズを従来方式に比べて低減できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明は、直流電圧源から供給される直流電圧を交流電圧に変換し、変換後の交流電
圧を各々の測定モジュール毎に分配し、各測定モジュールで交流電圧を所望の直流電圧に
変換して負荷回路に供給する絶縁電源供給システムに適用して極めて好適である。
【符号の説明】
【0064】
1 絶縁電源供給システム
4 制御信号生成部
5 交流振幅検出部
6 誤差増幅部
7 光電結合部
8 コントロールドライバ(スイッチ制御部)
9 基準電圧発生部
20 DC電圧変換部(直流−直流用の電圧変換部)
21,23 直流電圧発生部
22 DC/DCコンバータ
30,32 交流電圧発生部(直流−交流用の電圧変換部)
31 DC/ACインバータ
41,51,61 基礎絶縁電源
42,52,62 整流平滑回路
101,102 絶縁電源装置
T11,T12 トランス
L11,L12 チョークコイル
D11,D12 ダイオード
C11,C12 静電容量
Q11,Q21,Q31,Q12,Q22,Q32 スイッチ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧から複数の所望の直流電圧を発生する絶縁電源装置において、
正極及び負極を有した直流電圧源から出力される電圧を変換して交流電圧発生用の電圧
を出力する直流−直流用の電圧変換部と、
一次巻線に中点タップが設けられ、一次巻線と二次巻線との間に所定の巻数比が設けら
れたトランスを有し、前記電圧変換部から入力した電圧を交流電圧に変換して前記二次巻
線に誘導する直流−交流用の電圧変換部とを備え、
前記トランスの一次巻線の中点タップが前記直流電圧源の負極に接続されて接地電位に
固定されることを特徴とする絶縁電源装置。
【請求項2】
前記直流−直流用の電圧変換部は、
前記直流電圧源から出力される電圧を変換して当該直流電圧の極性を反転した交流電圧
発生用の直流電圧を出力することを特徴とする請求項1に記載の絶縁電源装置。
【請求項3】
前記直流−直流用の電圧変換部は、
一端が前記直流電圧源の正極に接続された第1のスイッチ素子と、
一端が前記第1のスイッチ素子の他端に接続され、他端が前記直流電圧源の負極に接続
されたチョークコイルと、
前記第1のスイッチ素子とチョークコイルとの接続点にカソードが接続されたダイオー
ドと、
前記ダイオードのアノードに負極が接続され、正極が前記直流電圧源の負極に接続され
た静電容量と、
前記第1のスイッチ素子をオン・オフ制御するスイッチ制御部とを有し、
前記直流−交流用の電圧変換部は、
前記トランスの一次巻線の一端と、前記ダイオード及び静電容量の接続点との間に接続
された第2のスイッチ素子と、
前記トランスの一次巻線の他端と、前記ダイオード及び静電容量の接続点との間に接続
された第3のスイッチ素子とを有することを特徴とする請求項2に記載の絶縁電源装置。
【請求項4】
前記直流−交流用の電圧変換部から出力される交流電圧を検出し、
検出された前記交流電圧と、設定された基準電圧との差分を検出して、当該差分の電圧
を制御信号に変換し、当該制御信号に基づいて前記直流−直流用の電圧変換部の出力を制
御する信号発生部を備えることを特徴とする請求項1に記載の絶縁電源装置。
【請求項5】
前記直流−直流用の電圧変換部は、
一端が前記直流電圧源の正極に接続された第1のスイッチ素子と、
一端が前記スイッチ素子の他端に接続され、他端が前記直流−交流用の電圧変換部に接
続されたチョークコイルと、
前記第1のスイッチ素子とチョークコイルとの接続点にカソードが接続されたダイオー
ドと、
前記ダイオードのアノードに負極が接続され、正極が前記チョークコイルの他端に接続
された静電容量と、
前記第1のスイッチ素子をオン・オフ制御するスイッチ制御部とを有し、
前記直流−交流用の電圧変換部は、
前記トランスの一次巻線の一端と、前記チョークコイル及び静電容量の接続点との間に
接続された第2のスイッチ素子と、
前記トランスの一次巻線の他端と、前記チョークコイル及び静電容量の接続点との間に
接続された第3のスイッチ素子とを有し、
前記ダイオードのアノード及び静電容量の負極とが前記直流電圧源の負極に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−5224(P2012−5224A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137146(P2010−137146)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】