説明

継手部材

【課題】接続状態ではないにもかかわらず継手部材がプラグに保持される状態の発生を抑制することができる継手部材を提供する。
【解決手段】非接続状態にあり、且つ、プラグ50の先端が第2シール部材65の先端に当接する半接続状態において、第1シール部材61の内径部位が、ロック用凹部53よりプラグ先端側に位置する接続部外周面である当接面に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグの接続部に対して径方向外側から当接するシール部材を備えた継手部材に関する。
【背景技術】
【0002】
本願の対象となる継手部材は、プラグに対して着脱自在にホース等(例えば、ガスホース)を接続する際に、当該ホース等に接続されて使用されるものである。このような継手部材の従来例として、例えば下記の特許文献1に開示された技術がある。特許文献1に記載の構成では、継手部材8は、筒状本体30と、作動部材32と、摺動部材34と、ロック用ボール36と、カバー部材38と、を備えている(段落〔0020〕、図2)。そして、継手部材8をプラグ6に装着する際には、操作者は、継手部材8のカバー部材38を持ってプラグ6に押し込む。この操作により、プラグ6の接続部4が継手先端側から筒状本体30の内部に受入れられる。そして、接続部4の筒状本体30内への進入に伴い作動部材32が継手基端側に移動し、作動部材32が接続用の所定位置に到達すると、ロック用ボール36が接続部4に形成されたロック溝部16に嵌り込み、継手部材8とプラグ6とが接続状態となる(段落〔0029〕、図3)。なお、継手部材8とプラグ6との接続状態を維持すべく、ロック用ボール36がロック溝部16に嵌り込むと、摺動部材34が継手先端側に移動し、ロック用ボール36のロック溝部16からの離脱が規制される。
【0003】
そして、上記の接続状態では、作動部材32に装着されたシール部材66が接続部4の先端部に当接するとともに、筒状本体30に装着されたシール部材58が接続部4の外周面に当接する。これにより、プラグ6と継手部材8との間がシール部材66,58により二重にシールされ、ガス漏れのより確実な防止が図られている。
【0004】
なお、解除操作では、プラグ6に接続固定された状態の継手部材8において、摺動部材34をプラグ6から離間する側に操作することで、プラグ6との接続が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−9906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の結果、上記特許文献1のような二重シール構造を備える継手部材8をプラグ6に接続する際、又は、プラグ6から離脱させる際に、継手部材8とプラグ6とが接続状態ではないにもかかわらず、継手部材8がプラグ6に保持される状態となる場合があることを知見した。この保持状態は、後述するように、プラグ6から継手部材8を離脱させる際に特に問題となる。そして、このような状態が生じると、操作者は、接続状態ではないのに接続状態であると誤認識してしまうおそれがある。しかし、接続状態ではないにもかかわらず継手部材8がプラグ6に保持される状態が、どのような条件下で発生するかはこれまで知られておらず、当然ながらこの課題を解決するための手段も判明していない。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラグの接続部に対して径方向外側から当接するシール部材を備えた継手部材において、接続状態ではないにもかかわらず継手部材がプラグに保持される状態の発生を抑制することができる継手部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る継手部材の特徴構成は、プラグの接続部を継手先端側から軸方向に受入れる略円筒状の本体部と、前記本体部の内周部位で軸方向に移動自在に構成され、付勢機構により継手先端側に付勢されている略円筒状の作動部と、を備え、前記本体部が前記プラグを受入れた受入れ状態において、内径側に移動して前記プラグに対する前記本体部の軸方向移動を規制し、前記プラグが前記本体部から離脱した離脱状態において、前記作動部により内径側への移動を規制される径方向移動部材を有するプラグロック機構を備え、前記本体部が前記接続部を受入れて、前記作動部が継手基端側に移動されるとともに、前記径方向移動部材が内径側へ移動して前記接続部に設けられるロック用凹部に落ち込み、前記プラグと前記本体部との軸方向における相対移動が阻止される接続状態と、前記プラグが前記本体部から離脱して、前記作動部が継手先端側に移動されるとともに、前記径方向移動部材が内径側への移動を阻止される非接続状態とに選択可能に構成され、前記本体部は、軸方向における前記径方向移動部材の位置より継手先端側の内径面に、前記接続部の外周面に径方向外側から当接する第1シール部材を備えるとともに、前記作動部は、前記接続部の先端に当接する第2シール部材を備え、前記非接続状態にあり、且つ、前記プラグの先端が前記第2シール部材の先端に当接する半接続状態において、前記第1シール部材の内径部位が、前記ロック用凹部よりプラグ先端側に位置する接続部外周面である当接面に当接する点にある。
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、接続状態ではないにもかかわらず継手部材がプラグに保持される状態は、非接続状態にあり、且つ、プラグの先端が第2シール部材の先端に当接する半接続状態において、第1シール部材の内径部位がロック用凹部に入り込むような状況下で発生することを見出した。このような状況下では、第1シール部材の内径部位がロック用凹部に入り込んでいるため、継手部材(本体部)とプラグ(接続部)との相対移動に要する力が大きくなる。また、付勢機構の継手先端側への付勢力に抗した力を加えなければ、プラグの先端に第2シール部材を介して当接する作動部は、本体部に対して継手基端側へ移動しない。よって、上記のような状況下では、継手部材は第1シール部材及び第2シール部材を介してプラグに保持される状態となる。
本発明は、上記の新規な技術的知見に基づきなされたものであり、上記の特徴構成によれば、半接続状態において、第1シール部材の内径部位が、ロック用凹部よりプラグ先端側に位置する接続部外周面である当接面に当接するため、第1シール部材の内径部位がロック用凹部に入り込んでいる場合に比べ、継手部材(本体部)とプラグ(接続部)との相対移動に要する力は小さくなる。よって、継手部材に対して特に大きな力が加えられなくても、重力等により継手部材は容易にプラグから離脱する。従って、この構成によれば、接続状態ではないにもかかわらず継手部材がプラグに保持される状態の発生を抑制することができる。
なお、上記の特徴構成によれば、接続状態から半接続状態への移行過程、又は、半接続状態から接続状態への移行過程において、第1シール部材の内径部位がロック用凹部に入り込むことがあり得るが、仮に第1シール部材の内径部位がロック用凹部に入り込んだとしても、その状態が維持されることはなく、継手部材がプラグに保持される状態は生じない。なぜなら、これらの移行過程においては、作動部は、非接続状態における位置と接続状態における位置との間に位置するため、接続部には付勢機構による継手先端側への付勢力が作動部を介して作用しているからである。すなわち、仮に上記の移行過程において第1シール部材の内径部位がロック用凹部に入り込んだとしても、接続部はその位置にとどまらず上記付勢力により本体部に対して継手先端側へ移動するため、第1シール部材はロック用凹部から抜け出し、第1シール部材の内径部位がロック用凹部に入り込んだ状態は維持されない。
【0010】
ここで、前記接続状態から前記非接続状態への移行である接続解除操作を経て到達する、前記プラグの先端が前記第2シール部材の先端に当接する前記半接続状態において、前記第1シール部材の内径部位が、前記ロック用凹部よりプラグ先端側に位置する接続部外周面である当接面に当接すると好適である。
【0011】
本願の対象とする継手部材には、プラグに対する接続操作の完了を知らせる接続音の発生機構が設けられることが多い。そのため、プラグに対する接続操作の過程において接続状態となる前にたとえ継手部材がプラグに保持されたとしても、操作者は当該接続音が発生していないことから接続状態には至っていないことを認識することができる。よって、本願の課題は、プラグから継手部材を取り外す際に特に問題となる。
この構成によれば、接続状態から非接続状態への移行である接続解除操作を経て到達する半接続状態において、第1シール部材の内径部位が、ロック用凹部よりプラグ先端側に位置する接続部外周面である当接面に当接するため、プラグから継手部材を取り外す際に、接続状態ではないにもかかわらず継手部材がプラグに保持される状態の発生を確実に抑制することができる。
ところで、第1シール部材が可撓性の材料で形成されていない場合、非接続状態から接続状態への移行である接続操作の過程で到達する半接続状態における第1シール部材の内径部位は、接続解除操作を経て到達する半接続状態における第1シール部材の内径部位と略同一の位置に位置する。また、第1シール部材が可撓性の材料で形成されている場合、接続操作の過程で到達する半接続状態では、第1シール部材の内径部位は継手基端側に向かって撓み、接続解除操作を経て到達する半接続状態では、第1シール部材の内径部位は継手先端側に向かって撓むことになる。よって、接続解除操作を経て到達する半接続状態において、第1シール部材の内径部位がロック用凹部よりプラグ先端側に位置する当接面に当接するのであれば、接続操作の過程で到達する半接続状態においても、第1シール部材の内径部位はロック用凹部よりプラグ先端側に位置する接続部外周面、又は、接続部のプラグ先端部に当接する。よって、上記の構成によれば、継手部材をプラグへ接続する際にも、接続状態ではないにもかかわらず継手部材がプラグに保持される状態の発生が抑制される。
【0012】
また、前記第1シール部材は、前記本体部に固定される略円環状のシール本体部と、当該シール本体部から径方向内側に突出形成された略円環状の径方向突出部とを備え、前記径方向突出部の前記シール本体部とは反対側の端部が前記第1シール部材の内径部位としてのシール先端部を構成し、前記径方向突出部は可撓性材料からなり、前記第1シール部材が変形を受けていない自然状態において、前記シール先端部の軸方向幅が、前記ロック用凹部の開口部の軸方向幅より小さく形成されていると好適である。
【0013】
この構成では、接続状態から半接続状態への移行過程や半接続状態から接続状態への移行過程において、第1シール部材のシール先端部がロック用凹部に入り込む状態が発生する。しかし、上記のように、第1シール部材の内径部位がロック用凹部に入り込んだ状態は維持されず、継手部材がプラグに保持される状態は生じない。本発明は、このような構成の継手部材に特に適している。
【0014】
また、前記第1シール部材が、前記シール本体部と前記径方向突出部とを備え、前記第1シール部材が変形を受けていない自然状態において、前記シール先端部の軸方向幅が前記ロック用凹部の開口部の軸方向幅より小さく形成されている構成において、前記接続状態において、前記本体部内で、前記接続部の外周面が位置する径方向位置を第1径方向位置とするとともに、前記ロック用凹部の底部が位置する径方向位置を第2径方向位置とし、更に、前記第1径方向位置及び前記第2径方向位置の双方から略均等に離間した径方向位置を第3径方向位置とし、前記第1シール部材が変形を受けていない自然状態において、前記シール先端部の径方向位置が、前記第2径方向位置よりも外径側であって、前記第3径方向位置よりも内径側であると好適である。
【0015】
この構成によれば、接続状態から半接続状態への移行過程や半接続状態から接続状態への移行過程において、第1シール部材のシール先端部がロック用凹部の底部近くにまで入り込む状態が発生するため、この状態では継手部材(本体部)とプラグ(接続部)との相対移動に要する力が大きくなり得る。しかし、上記のように、第1シール部材の内径部位がロック用凹部に入り込んだ状態は維持されないため、継手部材がプラグに保持される状態は生じない。本発明は、このような構成の継手部材に特に適している。
【0016】
また、前記プラグロック機構は、前記本体部における周方向の所定位置に形成された当該本体部の外周面と内周面とを連通する貫通孔と、前記貫通孔に径方向移動自在に装着される前記径方向移動部材としてのロック用ボールとを備え、前記ロック用凹部は、前記接続状態において前記ロック用ボールの一部を挿入するための凹部であると好適である。
【0017】
この構成によれば、径方向移動部材を含むプラグロック機構の構成を簡素なものとすることができ、本発明を簡素な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る継手部材の非接続状態を説明するための継手部材及びプラグの軸方向断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る継手部材の非接続状態から接続状態に至る過程を示すための説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る継手部材の接続状態を説明するための継手部材及びプラグの軸方向断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る継手部材の半接続状態を説明するための継手部材及びプラグの軸方向断面図である。
【図5】図4の一部拡大図である。
【図6】継手部材がプラグに保持される様子を説明するための比較例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る第1シール部材の構成を示すための継手部材及びプラグの一部軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る継手部材の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されるものではなく、同様の作用効果を奏する構成であれば種々の改変が可能である。
ここでは、本発明を、ガス供給源からのガス(例えば、都市ガス等)が供給されるプラグに着脱自在に接続される継手部材に適用した場合を例として説明する。図5に示すように、本実施形態に係る継手部材1は、半接続状態において、第1シール部材61の内径部位(シール先端部64)が、ロック用凹部53よりプラグ先端側に位置する接続部外周面である当接面に当接するように構成されていることに特徴を有している。以下、本実施形態に係る継手部材1について、「継手部材の構成」、「継手部材保持状態の抑制機構」の順に説明する。
【0020】
なお、以下の説明において、継手部材1及びそれを構成する構成要素に関して、プラグ50が接続される側を「先端側」とし、そのプラグ接続側とは反対側のホース2が接続される側を「基端側」とする。すなわち、図1において、左側が継手部材1及びそれを構成する構成要素に関して先端側(以下、継手先端側という場合がある。)となり、右側が継手部材1及びそれを構成する構成要素に関して基端側(以下、継手基端側という場合がある。)となる。一方、プラグ50に関して、継手部材1に接続される側を「先端側」とし、その継手部材接続側とは反対側を「基端側」とする。すなわち、図1において、右側がプラグ50に関して先端側(以下、プラグ先端側という場合がある。)となり、左側がプラグ50に関して基端側(以下、プラグ基端側という場合がある。)となる。
【0021】
また、以下の説明では、特に断らない限り、「軸方向」、「径方向」及び「周方向」の各方向は、略円筒状の本体部20を基準として定めている。すなわち、「軸方向」は本体部20の中心軸線に沿った方向(図1における左右方向)を、「径方向」は当該軸方向に対して直交する方向を、「周方向」は本体部20の中心軸線回りの周回方向(又はその接線方向)を表すものとする。
【0022】
なお、本実施形態では、ロック用ボール24が、本発明における「径方向移動部材」に相当し、第1コイルバネ81が、本発明における「付勢機構」に相当する。
【0023】
1.継手部材の構成
本実施形態に係る継手部材1は、内部に軸方向に延びるガス流路が形成されており、図1に示すように、本体部20と、作動部80と、カバー部40と、スリーブ部30と、コネクタ3と、を備えている。本体部20、作動部80、カバー部40、及びスリーブ部30は何れも略円筒状の部材であり、同軸状に配置されている。なお、本体部20、作動部80、カバー部40、及びスリーブ部30の構成については、後に詳細に説明する。コネクタ3は本体部20に連結されており、ガス消費機器等のガス供給先側に一端が接続されたホース2の他端を接続するための部位である。ホース2は、例えば、ゴムホース等の可撓性の材料で形成されたものが用いられる。
【0024】
ここで、本実施形態に係る継手部材1が接続されるプラグ50の構成について簡単に説明する。なお、このようなプラグ50については公知であるためここでは詳細な説明は省く。図1に示すように、プラグ50は、プラグ本体と、継手部材1が接続される接続部51と、を備えて構成されている。このようなプラグ50は、例えば、ガス供給元である壁内配管からガスが供給されるガス栓等に備えられている。そして、接続部51は、基端側から先端側に向けて、第1環状部55、ロック用凹部53、及び第2環状部56を備えている。なお、本例では、第1環状部55と第2環状部56とは同径に構成されている。また、ロック用凹部53は、接続部51の外周の周方向に沿って形成されており、本例では、周方向に直交する断面の形状が略台形状の溝状部とされている。
【0025】
プラグ50の内部には、基端側から先端側に渡る軸方向に沿った流体流路と、弁体58と、弁座59とが備えられている。そして、弁座59に対する弁体58の位置により、上記流体流路におけるガスの流通を許容する開放状態と、当該流体流路におけるガスの流通を阻止する閉止状態とが切り替わるように構成されている。このような開放状態と閉止状態との切替を可能にすべく、継手部材1には押圧部材26が設けられている。
【0026】
そして、このようなプラグ50に着脱自在に接続される継手部材1は、以下に述べる「接続状態」と、「非接続状態」と、「中間状態」とが選択的に実現可能(切替可能)に構成されている。ここで、接続状態(「受入れ状態」ともいう。)は、プラグ50の接続部51が本体部20の内部に進入しているとともに、ロック用ボール24がロック用凹部53に嵌まり込み、プラグ50に対する本体部20の軸方向移動が規制されている状態である。言い換えれば、接続状態(受入れ状態)は、本体部20が接続部51を受入れて、作動部80が継手基端側に移動されるとともに、ロック用ボール24が内径側へ移動して接続部51に設けられるロック用凹部53に落ち込み、プラグ50と本体部20との軸方向における相対移動が阻止される状態である。また、非接続状態は、作動部80が第1コイルバネ81の付勢力に抗して継手基端側に押し込まれていない状態である。具体的には、非接続状態は、プラグ50が本体部20から離脱して、作動部80が継手先端側に移動されるとともに、ロック用ボール24が内径側への移動を阻止される「離脱状態」と、作動部80とプラグ50とが当接(本例では、第2シール部材65を介して当接)しているが、作動部80が離脱状態における位置から継手基端側に移動していない「半接続状態」とを含む。さらに、中間状態は、接続状態及び非接続状態以外の状態であり、具体的には、作動部80とプラグ50とが当接しているとともに、作動部80が第1コイルバネ81の付勢力に抗して継手基端側に押し込まれているが、ロック用ボール24がロック用凹部53に嵌まり込んでいない状態である。よって、図1は離脱状態を示す図であり、図2(a)は半接続状態に切り替わる直前の状態を示す図であり、図2(b)は中間状態を示す図であり、図2(c)及び図3は、接続状態を示す図である。また、図4は、半接続状態を示す図である。
【0027】
1−1.本体部の構成
本体部20は、図1に示すように、プラグ50の接続部51を継手先端側から軸方向に受入れる略円筒状の部材である。この本体部20の内部に形成される空間は、プラグ50の接続部51を収容するための空間であるとともに、接続状態において、プラグ50から供給されるガスを流通させる流路として機能する。図3に示すように、本体部20の筒状部の内径は、接続部51の第1環状部55及び第2環状部56の外径より僅かに大きく形成されており、接続部51の本体部20内への進入を許容するように構成されている。そして、プラグ50から供給されたガスは、軸方向に沿って継手基端側に流れ、コネクタ3を介してホース2に供給される。
【0028】
本体部20は、プラグロック機構22と、プラグ50の弁体58に作用し当該弁体58をプラグ50の基端側に押圧する押圧部材26とを備えている。プラグロック機構22は、本体部20がプラグ50を受入れた受入れ状態(接続状態)において、プラグ50に対する本体部20の軸方向移動を規制し、プラグ50が本体部20から離脱した離脱状態において、本体部20に対するスリーブ部30の継手先端側への移動を規制する機構である。本実施形態では、プラグロック機構22は、本体部20における周方向の所定位置(本例では、周方向における3箇所)に形成された本体部20の外周面と内周面とを連通する貫通孔25と、貫通孔25のそれぞれに径方向移動自在に装着されるロック用ボール24とを備えて構成されている。図3に示すように、貫通孔25の軸方向位置は、接続状態における接続部51のロック用凹部53の軸方向位置と略一致するように構成されている。また、ロック用ボール24は、例えば、鋼球で構成され、本例では、鋼球の直径は、貫通孔25の内径より僅かに小さく設定されている。
【0029】
図1に示すように、離脱状態では、ロック用ボール24は本体部20の外周面に対して径方向外側に突出した状態で、本体部20に対するスリーブ部30の継手先端側への移動を規制する。この際、ロック用ボール24の径方向内側には作動部80の先端側端部の外周面が位置し、ロック用ボール24の径方向内側(内径側)への移動を規制している。半接続状態においても同様である。
【0030】
また、図2(b)に示すように、中間状態でも、ロック用ボール24は本体部20の外周面に対して径方向外側に突出した状態で、本体部20に対するスリーブ部30の継手先端側への移動を規制する。一方、中間状態におけるロック用ボール24の径方向内側(内径側)への移動は、作動部80により規制される状態と、接続部51(第2環状部56の外周面)により規制される状態と、作動部80と接続部51の双方により規制される状態とがあり、本体部20に対する接続部51の軸方向における位置関係により何れかの状態をとる。図2(b)は、ロック用ボール24の径方向内側への移動が、接続部51(第2環状部56の外周面)により規制される状態を示している。
【0031】
一方、図2(c)及び図3に示すように、接続状態(受入れ状態)では、ロック用ボール24は、径方向内側(内径側)に移動し、ロック用凹部53に嵌まり込んだ状態、すなわち、本体部20の内周面に対して径方向内側に突出した状態で、プラグ50に対する本体部20の軸方向移動を規制する。この状態では、ロック用ボール24の径方向外側への移動は、スリーブ部30の内周面により規制される。よって、一度接続状態になると、スリーブ部30が継手基端側に移動しない限り、ロック用ボール24はロック用凹部53から離脱せず、接続状態が維持される。このように、ロック用凹部53は、接続状態においてロック用ボール24の一部を挿入するための凹部である。
【0032】
押圧部材26は、プラグ50の弁体58に作用し、プラグ50の状態を開放状態と閉止状態との間で切り替えるための部材である。具体的には、押圧部材26は、接続部51の本体部20内への進入に伴い接続部51の内部に進入する。そして、接続部51の本体部20内への進入深さに応じて押圧部材26と弁体58との距離が定まり、図3に示す接続状態では、押圧部材26の継手先端側の端部が弁体58をプラグ基端側に押圧し、弁体58を弁座59から離間させる。これにより、接続状態ではプラグ50が開放状態となり、プラグ50から継手部材1を介してホース2にガスが供給される。
【0033】
ところで、本体部20は、継手先端側にスリーブ突出阻止部21を備えている。具体的には、図1に示すように、スリーブ突出阻止部21は、本体部20の外周面における貫通孔25より継手先端側に形成されている。このスリーブ突出阻止部21は、周方向の全域に亘って一様に形成されており、スリーブ部30に周方向の全域に亘って一様に形成された傾斜面32と径方向位置が重複するように、すなわち、軸方向視にて重複するように構成されている。これにより、スリーブ突出阻止部21は、当該スリーブ突出阻止部21と傾斜面32とが当接する位置より継手先端側へスリーブ部30が移動するのを阻止することが可能となっている。
【0034】
本実施形態では、スリーブ突出阻止部21は、法線方向が軸方向に交差する傾斜面とされている。具体的には、スリーブ突出阻止部21は、その法線方向が傾斜面32の法線方向と略同一になるように構成されている。なお、図3に示すように、本例では、接続状態においてもスリーブ突出阻止部21は、傾斜面32と当接せず、傾斜面32と僅かに離間した状態で対向するように構成されている。すなわち、スリーブ突出阻止部21はスリーブ部30の継手先端側への移動を阻止可能であるが、本例では、通常の使用状態では、スリーブ部30の継手先端側への移動を阻止しない構成となっている。但し、何らかの理由により、カバー部40の突状部41によるスリーブ部30の継手先端側への移動の阻止が不完全であった場合には、スリーブ突出阻止部21は傾斜面32に当接し、スリーブ部30の継手先端側への移動を阻止する。
【0035】
そして、本体部20は、内周面に第1シール部材61を備えているとともに、外周面に第3シール部材66を備えている。第1シール部材61は、本体部20の内周面に周方向に沿って形成された溝部に配設される略円環状の部材である。具体的には、第1シール部材61は、本体部20の内径面におけるロック用ボール24の位置より軸方向における継手先端側に配設されている。そして、図2(c)及び図3に示すように、接続状態では、第1シール部材61は接続部51の外周面(第1環状部55の外周面)に対して径方向外側から当接し、本体部20の内周面と接続部51の外周面との間に形成される空間について、第1シール部材61の配設位置より継手基端側の空間と、当該位置より継手先端側の空間との連通を気密的にシールする。なお、第1シール部材61の構成についての詳細は、後述する「継手部材保持状態の抑制機構」の説明の際に述べる。
【0036】
一方、第3シール部材66は、図1に示すように、本体部20の外周面に周方向に沿って形成された溝部に配設される略円環状の部材である。そして、第3シール部材66は、スリーブ部30の内周面に対して径方向内側から当接し、本体部20の外周面とスリーブ部30の内周面との間に形成される空間について、第3シール部材66の配設位置より継手基端側の空間と、当該位置より継手先端側の空間との連通を気密的にシールする。
【0037】
このような第1シール部材61や第3シール部材66は、例えばゴム材等から構成される。本実施形態では、図1に示すように、第1シール部材61は、周方向に直交する断面における形状が略T字状のゴム部材(ゴム製リング、ゴム製パッキン等)とされており、図3に示すように、屈曲した状態で接続部51の外周面に当接する。一方、第3シール部材66は、周方向に直交する断面における形状が略U字状のゴム部材(ゴム製リング、ゴム製パッキン等)とされている。
【0038】
1−2.作動部の構成
作動部80は、図1に示すように、本体部20の内周部位で、当該本体部20に対して軸方向に移動自在に構成されているとともに、本体部20に対して継手先端側に付勢されている略円筒状の部材である。図1に示すように、作動部80は、第1コイルバネ81により本体部20に対して継手先端側に付勢されているとともに、接続部51の先端に当接する略円環状の第2シール部材65を継手先端側の端部に備えている。この作動部80の第1コイルバネ81の付勢力による継手先端側への突出は、後述するように、本体部20に設けられた突状部27により阻止される。そして、第2シール部材65は、図2(c)及び図3に示すように、接続状態において接続部51のプラグ先端側端部に当接し、接続部51と作動部80との間の空間について、第2シール部材65の配設位置より径方向内側の空間と、当該位置より径方向外側の空間との連通を気密的にシールする。第2シール部材65は、例えばゴム材等から構成される。本実施形態では、図1に示すように、第2シール部材65は、周方向に直交する断面における形状が略U字状のゴム部材(ゴム製リング、ゴム製パッキン等)とされている。
【0039】
作動部80の本体部20に対する軸方向位置は、プラグ50に対する継手部材1の接続に関する状態に応じて定まる。すなわち、図1に示すように、非接続状態では、作動部80は継手先端側に位置する。以下、この状態における作動部80の軸方向の位置を「非接続位置」という。作動部80は、非接続位置において、その先端部の外周面がロック用ボール24に対して径方向内側から当接する。これにより、ロック用ボール24は本体部20の外周面から径方向外側に突出した状態となり、本体部20に対するスリーブ部30の継手先端側への移動が規制される。なお、作動部80は、本体部20の内周面に形成された突状部27に当接する当接部82を有している。これにより、第1コイルバネ81の付勢力により継手先端側に付勢されている作動部80は、当接部82が突状部27に当接すると、すなわち、上記非接続位置に位置すると、それ以上の継手先端側への移動が規制されるように構成されている。
【0040】
一方、図2(c)及び図3に示すように、接続状態では、作動部80は継手基端側に位置する。以下、この状態における作動部80の軸方向位置を「接続位置」という。接続位置に位置する作動部80に対しては、第1コイルバネ81の付勢力が作用するため、作動部80は、第1コイルバネ81の付勢力により接続部51を継手先端側に押圧する。なお、この接続状態では、接続部51はプラグロック機構22により本体部20に対する軸方向移動が規制されている。これにより、第2シール部材65は、本体部20に対して固定された接続部51に対して継手先端側に押し付けられた状態となり、第2シール部材65による接続部51と作動部80との間の空間におけるシールを良好なものとすることが可能となっている。よって、プラグ50から供給されたガスが外部空間に漏洩することを抑制することができ、プラグ50から供給されたガスを良好に本体部20の基端側に導くことができる。なお、本実施形態では、第2シール部材65に加え、第1シール部材61、第3シール部材66、及び後述する第4シール部材67を備えることで、接続部51と作動部80との間に形成される空間における第2シール部材65のシール性能が、異物混入や経年劣化等により低下した場合でも、ガスが継手部材1の外部空間へ漏洩することが抑制されている。
【0041】
また、図2(b)に示すように、中間状態では、作動部80は非接続位置と接続位置との間の位置であって、接続部51の本体部20に対する進入の程度に応じて定まる位置に位置する。この中間状態では、接続状態と同様、第2シール部材65は接続部51のプラグ先端側端部に当接するため、作動部80は、第1コイルバネ81の付勢力により接続部51を継手先端側に押圧する。そして、接続部51が本体部20の奥深くに進入すればするほど、作動部80の軸方向位置が接続位置側に移動することになる。
【0042】
1−3.カバー部の構成
カバー部40は、図1に示すように、本体部20の径方向外側に固定される略円筒状の部材である。カバー部40は、継手部材1をプラグ50に接続する際に、継手部材1を保持するのに使用されるものであるが、本発明では、このカバー部40を利用して接続音を発生させる発音当接部4を構成している。本実施形態では、カバー部40は本体部20の基端側において固定されており、本体部20と一体化されている。
【0043】
本実施形態では、カバー部40は、図1に示すように、基端側から先端側に向かって全体として僅かに拡径するように形成されている。このような形状に合わせて、カバー部40の内周面には、先端側に向かって次第に拡径する拡径部が形成されており、当該拡径部と本体部20の外周面との間に形成される空間に、第2コイルバネ35が配設されている。第2コイルバネ35は、後述するように、スリーブ部30を本体部20の継手基端側から継手先端側に付勢するためのものである。
【0044】
また、カバー部40は、スリーブ部30の少なくとも一部を径方向外側から覆う被覆部42を備えている。これにより、接続操作時に操作者に保持されるカバー部40の大きさが小さく制限されることが抑制されている。本実施形態では、被覆部42は、スリーブ部30の基端側の一部を覆うように構成されている。被覆部42は、内周面の径が軸方向に略一様に形成されているとともに、継手先端側の所定の軸方向位置に、当該内周面から径方向内側に突出して形成された突状部41を備えている。
【0045】
本例では、突状部41は、カバー部40の内周面における周方向全域に亘って一様に形成されている。そして、突状部41は、図1に示すように、周方向に直交する断面の形状が、軸方向幅が径方向外側から径方向内側に向かって全体として縮小するように構成されており、当該突状部41の径方向内側端部より継手基端側の端面がカバー側発音当接部43とされている。すなわち、本実施形態では、カバー側発音当接部43は、突状部41により形成されている。詳細は後述するが、このカバー側発音当接部43と後述するスリーブ側発音当接部33とにより、プラグ50に対する継手部材1の接続操作の完了を知らせる接続音を発生させるための発音当接部4が、スリーブ部30とカバー部40との間に形成されている。このように発音当接部4をカバー部40に覆われた部分に形成することで、発音当接部4がカバー部40により保護され、発音当接部4が損傷を受けるのが抑制される構成となっている。
【0046】
1−4.スリーブ部の構成
スリーブ部30は、本体部20の外周部位で軸方向に移動自在な略円筒状の部材であり、本実施形態では、傾斜面32と、引退部34と、を備えている。スリーブ部30は、継手部材1に備えられた第2コイルバネ35により、本体部20の継手基端側から継手先端側に付勢されている。
【0047】
上記のように、非接続状態(図1及び図2(a)参照)及び中間状態(図2(b)参照)では、ロック用ボール24は本体部20の外周面に対して径方向外側に突出した状態で、本体部20に対するスリーブ部30の継手先端側への移動を規制するように構成されている。このような構成を実現するため、スリーブ部30には傾斜面32が備えられている。非接続状態及び中間状態では、この傾斜面32がロック用ボール24に当接することで、スリーブ部30の継手先端側への移動が規制される。すなわち、非接続状態及び中間状態では、第2コイルバネ35により継手先端側へ付勢されているスリーブ部30は、図1及び図2(a)に示すように、傾斜面32とロック用ボール24とが当接する位置に位置決めされる。この位置は、接続状態におけるスリーブ部30の位置より継手基端側に引退した位置である。すなわち、プラグ50と本体部20との軸方向における相対移動が許容され、プラグロック機構22により本体部20に対するスリーブ部30の継手先端側への移動が規制される非接続状態において、スリーブ部30は継手基端側に引退するように構成されている。なお、この状態では、図1及び図2(a)に示すように、スリーブ部30は本体部20に対して、その継手先端側端面をほぼ同じくする位置に位置される。
【0048】
一方、接続状態(図2(c)及び図3参照)では、ロック用ボール24はロック用凹部53に嵌まり込み、本体部20の内周面に対して径方向内側に突出する。そのため、スリーブ部30の継手先端側への移動はプラグロック機構22により規制されない。また、スリーブ部30には、上記の突状部41に当接するスリーブ側発音当接部33が形成されている。接続状態では、第2コイルバネ35により継手先端側へ付勢されているスリーブ部30は、図2(c)及び図3に示すように、スリーブ側発音当接部33とカバー側発音当接部43とが当接する位置に位置決めされる。詳細な説明は省略するが、中間状態から接続状態に切り替わった際には、スリーブ側発音当接部33は、第2コイルバネ35の付勢力により定まる所定の速度を有した状態でカバー側発音当接部43に当接(衝突)する。この当接に伴い発生する音が、本体部20が接続部51を受入れる接続操作時、より正確には、当該接続操作の完了時に発生する接続音である。なお、接続状態におけるスリーブ部30の位置は、上記の非接続状態や中間状態におけるスリーブ部30の位置より継手先端側に突出した位置である。すなわち、スリーブ部30は、プラグロック機構22によりプラグ50と本体部20との軸方向における相対移動が阻止される接続状態において継手先端側に突出するように構成されている。そして、この突出した状態では、スリーブ部30の継手先端側への移動はカバー部40の突状部41により規制される。なお、図2(c)及び図3に示すように、スリーブ部30は、本体部20から継手先端側に突出した状態で、プラグ50の小径部57を外嵌する。
【0049】
また、接続状態では、上記のように、スリーブ部30の内周面がロック用ボール24の径方向外側への移動を規制し、接続状態が維持される。そのため、継手部材1をプラグ50から取り外す際には、スリーブ部30を本体部20に対して継手基端側に移動させることでロック用ボール24の径方向外側に傾斜面32を位置させ、ロック用ボール24をロック用凹部53から離脱させる。これにより、プラグ50に対する本体部20の軸方向移動が許容され、継手部材1をプラグ50から分離することができる。
【0050】
ところで、図1に示すように、スリーブ部30が備える引退部34は、スリーブ部30に対する突状部41の相対移動範囲に対応した軸方向における一部の領域に、当該スリーブ部30の外周面から径方向内側に引退して形成されている。本実施形態では、突状部41がカバー部40の内周面における周方向全域に亘って一様に形成されているのに合わせて、引退部34もスリーブ部30の外周面において周方向全域に亘って一様に形成されている。そして、この引退部34の継手基端側端部により、スリーブ側発音当接部33が形成されている。本例では、引退部34の継手基端側端部における継手先端側を向く面が、スリーブ側発音当接部33とされている。
【0051】
引退部34の軸方向における端部は、以下のように設定されている。すなわち、引退部34の継手先端側端部の軸方向位置は、非接続状態において、カバー部40の継手先端側の端部と同じ軸方向位置、或いは、カバー部40の継手先端側の端部より継手先端側の軸方向位置となるように設定される。本実施形態では、図1に示すように、引退部34の継手先端側端部の軸方向位置が、非接続状態において、カバー部40の継手先端側の端部より継手先端側の軸方向位置となる場合を例として示している。
【0052】
一方、引退部34の継手基端側端部の軸方向位置は、接続状態において、スリーブ側発音当接部33がカバー側発音当接部43に当接可能なように設定される。すなわち、スリーブ側発音当接部33とカバー側発音当接部43が当接した状態で、傾斜面32がスリーブ突出阻止部21に当接するか、或いは、傾斜面32がスリーブ突出阻止部21より継手基端側に位置するように設定される。本実施形態では、図2(c)及び図3に示すように、スリーブ側発音当接部33とカバー側発音当接部43が当接した状態で、傾斜面32がスリーブ突出阻止部21より継手基端側に位置し、当該スリーブ突出阻止部21に当接しないように構成されている。
【0053】
また、本実施形態では、スリーブ部30は、第4シール部材67を備えている。第4シール部材67は、スリーブ部30の内周面に周方向に沿って形成された溝部に配設される略円環状の部材である。そして、第4シール部材67は、本体部20の外周面に対して径方向外側から当接し、本体部20の外周面とスリーブ部30の内周面との間に形成される空間について、第4シール部材67の配設位置より継手基端側の空間と、当該位置より継手先端側の空間との連通を気密的にシールする。このような第4シール部材67は、ゴム材等から構成される。本実施形態では、図1に示すように、第4シール部材67は、周方向に直交する断面における形状が略U字状のゴム部材(ゴム製リング、ゴム製パッキン等)とされている。
【0054】
2.継手部材保持状態の抑制機構
次に、接続状態ではないにもかかわらず継手部材1がプラグ50に保持される状態(以下、単に「継手部材保持状態」という。)の抑制機構について説明する。図4及び図5は、非接続状態にあり、且つ、プラグ50の先端が第2シール部材65の先端に当接する半接続状態を示す図である。具体的には、接続状態から非接続状態への移行である接続解除操作を経て到達する、プラグ50の先端が第2シール部材65の先端に当接する半接続状態を示す図である。なお、接続解除操作は、スリーブ部30を本体部20に対して継手基端側に移動させることでロック用ボール24をロック用凹部53から離脱させ、継手部材1をプラグ50から分離させるための操作である。図5に示すように、本実施形態では、第1シール部材61は、本体部20に固定される略円環状のシール本体部62と、当該シール本体部62から径方向内側に突出形成された略円環状の径方向突出部63とを備えて構成されおり、変形を受けていない自然状態において、周方向に直交する断面の形状が略T字状になるように構成されている。本実施形態では、径方向突出部63を含む第1シール部材61の全体が可撓性の材料からなる。そして、径方向突出部63のシール本体部62とは反対側の端部が、第1シール部材61の内径部位としてのシール先端部64を構成している。
【0055】
図7に示すように、本実施形態では、第1シール部材61は、変形を受けていない自然状態において、シール先端部64の軸方向幅W2が、ロック用凹部53の開口部の軸方向幅W1より小さく形成されているとともに、シール先端部64の径方向位置が、第2径方向位置R2よりも外径側であって、第3径方向位置R3よりも内径側であるように構成されている。ここで、第2径方向位置R2は、接続状態において本体部20内でロック用凹部53の底部が位置する径方向位置である。また、第3径方向位置R3は、接続状態において本体部20内で接続部51の外周面が位置する径方向位置である第1径方向位置R1と、第2径方向位置R2と、の双方から略均等に離間した径方向位置である。よって、本実施形態では、接続状態から半接続状態への移行時や半接続状態から接続状態への移行時に、第1シール部材61のシール先端部64がロック用凹部53の底部近くにまで入り込む。
【0056】
そして、図5に示すように、半接続状態において、第1シール部材61のシール先端部64が第2環状部56の外周面に当接するように構成されている。すなわち、接続状態から非接続状態への移行である接続解除操作を経て到達する、プラグ50の先端が未だ第2シール部材65の先端に当接する半接続状態において、第1シール部材61の内径部位(本例では、シール先端部64)が、ロック用凹部53よりプラグ先端側に位置する接続部外周面(本例では、第2環状部56の外周面)である当接面に当接するように構成されている。これにより、接続状態ではないにもかかわらず継手部材1がプラグ50に保持される状態(継手部材保持状態)の発生を抑制することが可能となっている。
【0057】
以下、継手部材保持状態の発生が抑制される理由について、図6の比較例を参照しながら補足説明する。なお、図6は、本願の課題である継手部材1がプラグ50に保持される様子を説明するための比較例を示す図である。本発明者らは、鋭意研究の結果、図6に示すように、半接続状態において、第1シール部材61の内径部位(本例では、シール先端部64)がロック用凹部53に入り込むような状況下で、継手部材保持状態が発生することを見出した。このような状況下では、第1シール部材61のシール先端部64が全周に亘ってロック用凹部53に入り込んで当該ロック用凹部53の内面に接触しているため、継手部材1(本体部20)とプラグ50(接続部51)との相対移動に要する力が大きくなる。また、第1コイルバネ81の継手先端側への付勢力に抗した力を加えなければ、プラグ50の先端に第2シール部材65を介して当接する作動部80は、本体部20に対して継手基端側へ移動しない。よって、上記のような状況下では、継手部材1は第1シール部材61及び第2シール部材65を介してプラグ50に保持される状態となる。
【0058】
これに対し、本実施形態では、図5に示すように、半接続状態において、第1シール部材61の内径部位(本例では、シール先端部64)がロック用凹部53よりプラグ先端側に位置する接続部外周面(本例では、第2環状部56の外周面)に当接するように構成することで、継手部材保持状態の発生が抑制されている。なぜなら、図6に示すように第1シール部材61のシール先端部64がロック用凹部53に入り込んでいる場合に比べ、図5に示す構成では継手部材1(本体部20)とプラグ50(接続部51)との相対移動に要する力は小さくなり、継手部材1に対して特に大きな力が加えられなくても、重力等により継手部材1は容易にプラグ50から離脱するからである。
【0059】
なお、図5に示すような構成では、接続状態から半接続状態への移行過程、又は、半接続状態から接続状態への移行過程において、第1シール部材61のシール先端部64がロック用凹部53に入り込んだ状態となるが、その状態は維持されない。なぜなら、これらの移行過程(中間状態)においては、作動部80は、非接続位置と接続位置との間に位置するからである。すなわち、この状態では、接続部50には第1コイルバネ81による継手先端側への付勢力が作動部80を介して作用しているため、接続部50はその位置にとどまらず上記付勢力により本体部20に対して継手先端側へ移動し、第1シール部材61はロック用凹部53から抜け出すからである。
【0060】
また、図示は省略するが、上記のように、接続状態から非接続状態への移行である接続解除操作を経て到達する、プラグ50の先端が第2シール部材65の先端に当接する半接続状態において、第1シール部材61のシール先端部64が、ロック用凹部53よりプラグ先端側に位置する第2環状部56の外周面である当接面に当接するように構成することで、非接続状態から接続状態への移行である接続操作の過程で到達する半接続状態においても、継手部材保持状態の発生を抑制することが可能となっている。なお、接続操作は、本体部20の内部にプラグ50の接続部51を継手先端側から軸方向に受入れることで、作動部80を継手基端側に押し込み、ロック用ボール24をロック用凹部53に嵌め込むための操作である。接続操作の過程で到達する半接続状態では、図2(b)に示すように、シール先端部64は継手基端側に向かって撓むのに対し、接続解除操作を経て到達する半接続状態では、図5に示すように、シール先端部64は継手先端側に向かって撓むため、接続解除操作を経て到達する半接続状態において、シール先端部64がロック用凹部53よりプラグ先端側に位置する第2環状部56の外周面に当接するのであれば、接続操作の過程で到達する半接続状態においても、シール先端部64はロック用凹部よりプラグ先端側に位置する第2環状部56の外周面や、接続部51のプラグ先端部に当接するからである。
【0061】
3.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、第1シール部材61が変形を受けていない自然状態において、第1シール部材61のシール先端部64の軸方向幅W2が、ロック用凹部53の開口部の軸方向幅W1より小さく形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、例えば、第1シール部材61が変形を受けていない自然状態において、シール先端部64の軸方向幅W2が、ロック用凹部53の開口部の軸方向幅W1と略同一である構成とすることや、当該軸方向幅W1より大きく形成されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0062】
(2)上記の実施形態では、第1シール部材61が、本体部20に固定される略円環状のシール本体部62と、当該シール本体部62から径方向内側に突出形成された略円環状の径方向突出部63とを備えて構成され、径方向突出部63を含む第1シール部材61の全体が可撓性の材料からなる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、例えば、径方向突出部63のみが可撓性の材料からなる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、第1シール部材61は、シール本体部62と径方向突出部63とを備え、変形を受けていない自然状態において、周方向に直交する断面の形状が略T字状になるように構成されているものに限られない。従って、例えば、第1シール部材61の周方向に直交する断面の形状は、丸状(例えば、Oリング等)、四角状、X字状、D字状、U字状、V字状、L字状、Y字状等のあらゆる形状を採用することができる。
【0063】
(3)上記の実施形態では、第1シール部材61、第2シール部材65、第3シール部材66、及び第4シール部材67の全てが、略円環状に成形されたゴム部材である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、これらのシール部材の材質としてゴム以外のものを採用しても好適である。
【0064】
(4)上記の実施形態における第2シール部材65、第3シール部材66、及び第4シール部材67の周方向に直交する断面における形状はあくまで一例であり、第2シール部材65、第3シール部材66、及び第4シール部材67の周方向に直交する断面の形状として、丸状(例えば、Oリング等)、四角状、X字状、D字状、T字状、U字状、V字状、L字状、Y字状等のあらゆる形状を採用することができる。
【0065】
(5)上記の実施形態では、第1シール部材61が変形を受けていない自然状態において、第1シール部材61のシール先端部64の径方向位置が、第2径方向位置R2よりも外径側であって、第3径方向位置R3よりも内径側であるように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、例えば、第1シール部材61のシール先端部64の径方向位置が、第1シール部材61が変形を受けていない自然状態において、第3径方向位置R3よりも外径側であって、第1径方向位置R1より内径側である構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、第1シール部材61が変形を受けていない自然状態において、第1シール部材61のシール先端部64の径方向位置が第2径方向位置R2と略同一である構成としたり、第2径方向位置R2よりも内径側である構成としても好適である。
【0066】
(6)上記の実施形態では、カバー部40が突状部41を備え、スリーブ部30が引退部34を備えている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、例えば、カバー部40が突状部41を備えず、スリーブ部30が引退部34を備えず、カバー部40とスリーブ部30の間に発音当接部4が形成されていない構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、接続状態においてスリーブ部30の継手先端側への移動は本体部20のスリーブ突出阻止部21により規制され、接続音は、傾斜面32とスリーブ突出阻止部21との当接により発生することになる。
【0067】
(7)上記の実施形態では、スリーブ側発音当接部33とカバー側発音当接部43とが当接した状態で、傾斜面32がスリーブ突出阻止部21より継手基端側に位置し、当該スリーブ突出阻止部21に当接しないように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、例えば、スリーブ側発音当接部33とカバー側発音当接部43とが当接した状態で、傾斜面32がスリーブ突出阻止部21に当接するように構成することも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、接続音は、発音当接部4だけでなく、傾斜面32とスリーブ突出阻止部21との当接部位においても発生することになる。また、スリーブ突出阻止部21を、法線方向が軸方向に交差する傾斜面ではなく、法線方向が軸方向に平行な面により構成しても好適である。
【0068】
(8)上記の実施形態では、プラグロック機構22が、本体部20における周方向の所定位置に形成された当該本体部20の外周面と内周面とを連通する貫通孔25と、貫通孔25に径方向移動自在に装着される径方向移動部材としてのロック用ボール24とを備える場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、異なる構成のプラグロック機構や径方向移動部材を採用することもできる。
【0069】
(9)上記の実施形態では、ロック用凹部53が、接続状態においてロック用ボール24の一部を挿入するための凹部であるとともに、周方向に直交する断面の形状が略台形状の溝状部である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ロック用凹部53の周方向に直交する断面の形状を略三角形状にするなど、ロック用凹部53の構成は、径方向移動部材の形状やプラグロック機構22の構成に応じて適宜変更可能である。
【0070】
(10)上記の実施形態では、第2シール部材65が作動部80の継手先端側の端部に配設されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第2シール部材65が接続部51のプラグ先端側の端部に配設されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0071】
(11)上記の実施形態では、第3シール部材66が本体部20の外周面に形成された周方向に沿う溝部に配設され、第4シール部材67がスリーブ部30の内周面に形成された周方向に沿う溝部に配設されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、例えば、第3シール部材66がスリーブ部30の内周面に形成された周方向に沿う溝部に配設されている構成としたり、第4シール部材67が本体部20の外周面に形成された周方向に沿う溝部に配設されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、第3シール部材66及び第4シール部材67の何れか一方のみを備える構成としたり、第3シール部材66及び第4シール部材67の双方を備えない構成としても好適である。
【0072】
(12)上記の実施形態では、第1コイルバネ81が、作動部を継手先端側に付勢する付勢機構である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、付勢機構としてコイルバネ以外のものを採用することも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0073】
(13)上記の実施形態では、プラグ50から継手部材1にガスが供給される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、継手部材1からプラグ50にガスが供給される構成とすることも、本発明の好適な実施形態な一つである。この場合、継手部材1の本体部20が押圧部材26を備えない構成としたり、継手部材1におけるガスの流通の状態が、作動部80の本体部20に対する軸方向位置により開放状態と閉止状態との間で切り替わる構成とすると好適である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、プラグの接続部に対して径方向外側から当接するシール部材を備えた継手部材に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1:継手部材
20:本体部
22:プラグロック機構
24:ロック用ボール(径方向移動部材)
25:貫通孔
50:プラグ
51:接続部
53:ロック用凹部
61:第1シール部材
62:シール本体部
63:径方向突出部
64:シール先端部
65:第2シール部材
80:作動部
81:第1コイルバネ(付勢機構)
R1:第1径方向位置
R2:第2径方向位置
R3:第3径方向位置
W1:シール先端部の軸方向幅
W2:ロック用凹部の開口部の軸方向幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグの接続部を継手先端側から軸方向に受入れる略円筒状の本体部と、前記本体部の内周部位で軸方向に移動自在に構成され、付勢機構により継手先端側に付勢されている略円筒状の作動部と、を備え、
前記本体部が前記プラグを受入れた受入れ状態において、内径側に移動して前記プラグに対する前記本体部の軸方向移動を規制し、前記プラグが前記本体部から離脱した離脱状態において、前記作動部により内径側への移動を規制される径方向移動部材を有するプラグロック機構を備え、
前記本体部が前記接続部を受入れて、前記作動部が継手基端側に移動されるとともに、前記径方向移動部材が内径側へ移動して前記接続部に設けられるロック用凹部に落ち込み、前記プラグと前記本体部との軸方向における相対移動が阻止される接続状態と、
前記プラグが前記本体部から離脱して、前記作動部が継手先端側に移動されるとともに、前記径方向移動部材が内径側への移動を阻止される非接続状態とに選択可能に構成され、
前記本体部は、軸方向における前記径方向移動部材の位置より継手先端側の内径面に、前記接続部の外周面に径方向外側から当接する第1シール部材を備えるとともに、前記作動部は、前記接続部の先端に当接する第2シール部材を備え、
前記非接続状態にあり、且つ、前記プラグの先端が前記第2シール部材の先端に当接する半接続状態において、
前記第1シール部材の内径部位が、前記ロック用凹部よりプラグ先端側に位置する接続部外周面である当接面に当接する継手部材。
【請求項2】
前記接続状態から前記非接続状態への移行である接続解除操作を経て到達する、前記プラグの先端が前記第2シール部材の先端に当接する前記半接続状態において、
前記第1シール部材の内径部位が、前記ロック用凹部よりプラグ先端側に位置する接続部外周面である当接面に当接する請求項1記載の継手部材。
【請求項3】
前記第1シール部材は、前記本体部に固定される略円環状のシール本体部と、当該シール本体部から径方向内側に突出形成された略円環状の径方向突出部とを備え、前記径方向突出部の前記シール本体部とは反対側の端部が前記第1シール部材の内径部位としてのシール先端部を構成し、
前記径方向突出部は可撓性材料からなり、
前記第1シール部材が変形を受けていない自然状態において、前記シール先端部の軸方向幅が、前記ロック用凹部の開口部の軸方向幅より小さく形成されている請求項1又は2記載の継手部材。
【請求項4】
前記接続状態において、前記本体部内で、前記接続部の外周面が位置する径方向位置を第1径方向位置とするとともに、前記ロック用凹部の底部が位置する径方向位置を第2径方向位置とし、更に、前記第1径方向位置及び前記第2径方向位置の双方から略均等に離間した径方向位置を第3径方向位置とし、
前記第1シール部材が変形を受けていない自然状態において、前記シール先端部の径方向位置が、前記第2径方向位置よりも外径側であって、前記第3径方向位置よりも内径側である請求項3記載の継手部材。
【請求項5】
前記プラグロック機構は、前記本体部における周方向の所定位置に形成された当該本体部の外周面と内周面とを連通する貫通孔と、前記貫通孔に径方向移動自在に装着される前記径方向移動部材としてのロック用ボールとを備え、
前記ロック用凹部は、前記接続状態において前記ロック用ボールの一部を挿入するための凹部である請求項1から4の何れか一項記載の継手部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−117582(P2011−117582A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277954(P2009−277954)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】