説明

緊急事態通報方法、および緊急事態通報システム

車両の緊急事態を緊急時対応要員に通報する方法および装置。車両内に設けられたセルラーテレフォンとの通信が確立される。通信リンクが監視され、リンクの切断が乗員に通知される。装置は緊急状態を検出するために車両安全システムを監視する。検出されると、乗員は緊急通報電話がなされようとしていることを通知される。キャンセルが受信されなかった場合には、車両の位置情報が全地球測位システムから取得され、音声信号に合成され、緊急時対応要員にセルラーテレフォンを用いて通知される。複数の乗員および車両緊急事態の情報も、供給されてもよい。緊急時応答要員は、利用可能な情報からの選択のためのタッチトーンメニューが提供されてもよい。車両および乗員の情報は、セルラーテレフォン接続を介したウェブサーバデータベース、またはリムーバブルメモリなどの外部の情報源から通知されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概して、自動車事故またはその他の緊急時に、緊急時対応要員(emergency responders)への通報をする方法、およびシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オンスター(ONSTAR)は、人間の「アドバイザー」が、オンスターを備えた車両からの緊急通報電話を処理する無事(SAFE & SOUND)プログラムを提供する。通報は、車室内(例えばリアビューミラーの下)に設けられたエマージェンシーボタンを押すことによって人為的に開始され、または衝突時のエアバッグの展開によって自動的に開始される。衝突は、よく知られた従来技術のように、車両内に備えられた1つ以上の加速度計、または他の衝撃検出装置によって検出され得る。
【0003】
オンスターを備えた車両からアドバイザースイッチボードへの緊急通報電話は、車両の地理的位置を表示し、アドバイザーに車室との音声通話を申し込む(places)。アドバイザーは、車両の乗員との通話を試みて、緊急通報電話を引き起こした事故の激しさや状況を判断する。もし、アドバイザーが、乗員の応答によって、または乗員が投げ出されおよび/または重傷かも知れないことが示される無応答によって、救急治療が必要と判断した場合には、アドバイザーは通知された車両の場所に最も近い緊急時対応要員を派遣する。
【0004】
米国特許第7119669号明細書:発明の名称「車両衝突検出方法および装置」は、車両衝突検出技術が用いられたセルラーテレフォンについて述べている。このシステムは、衝突検出用の加速度計、または車両の速度および位置を検出する全地球測位システムなどの車両に組み込まれたサブシステムを必要とせず、携帯可能で、独立して動作する。これらのサブシステムは、’669号特許に述べられたセルラーテレフォンに組み込まれている。この’699号特許は、衝突が検出された場合に、衝突の程度、時刻、および場所などの電子データを関係当局に通報することを述べている。この’699特許は、また、医療情報を含む、装置の所有者についての予め録音されたメッセージを再生することについて述べている。また、’699特許は、セルラーテレフォンが不用意に落とされた場合のように緊急事態でない場合に、不必要に緊急時対応要員への通報がなされるのを抑制すべく「肯定的誤検出(false positives)」または「衝突誤検出」を除外するための様々なソフトウェアの「フィルタ」について述べている。
【0005】
米国特許第5918180号明細書:発明の名称「電話が適用可能な(Telephone Operable)車両用全地球追跡システム」は、セルラーテレフォンと、車両に設けられた全地球測位システムとを用いて車両を追跡するシステムについて述べている。このシステムは、また、ディジタル的にエンコードされた座標を、セルラーテレフォンを通じて車両の場所を発音する音声に変換する音声合成回路を含んでいる。車両の所有者は、離れた場所からセルラーテレフォンに電話をかけることによって、場所を決定することができる。’180号特許は、また、警察に電話をかけるシステムを用いることについて述べている。
【0006】
米国特許第5555286号明細書:発明の名称「セルラーフォンを基にした自動緊急時船舶/車両位置システム」は、GPSデータを受信し、エアバッグの展開などの起動事象を受け取った場合に、緊急時対応要員にダイヤルするDTMFトーンをセルラーテレフォンに生成させるナビゲーションユニットについて述べている。地理的位置情報、および車両の特定が音声合成され、セルラーテレフォン接続を用いて緊急時対応要員に通報される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つ以上の実施例の目的は、自動車事故または他の緊急事態時に、即座に、緊急時対応要員に緊急情報を通報できる改良された緊急事態通報システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施例は、緊急時に対応要員に提供される情報をユーザがカスタマイズできるようにする。例えば、ユーザは、本発明に関係するデータベースまたは他のデータ記憶装置にアクセスして、緊急通報電話されたときに緊急時対応要員に提供される情報、例えば名前、住所、血液型、医療上のアレルギー、医師、連絡先情報、親族などの情報を定義し、またはカスタマイズし得る。
【0009】
本発明の実施例は、緊急時対応要員が緊急通報電話を受け取って、緊急事態への対応に有用かも知れない種々の利用可能な情報を選択することを可能にする。対応要員は、繰り返しおよび/または利用可能な情報の選択をするためにDTMFトーンを用いた音声合成されたメニューが供給され得る。このようにして、最も急を要する情報、例えば車両の位置、乗員数などは最初に通知/受信され得るが、他の重要な情報は、続いて、対応要員の指示があったときに取得され得る。発明の他の実施例は、対応要員に運転者/乗員の緊急情報へのオンラインでのアクセスを提供する。
【0010】
本発明の1つ以上の実施例の他の目的は、緊急事態でない場合に緊急時対応要員への不必要な通報を防止することにある。エアバッグの展開など、車両内の緊急事態が検出された場合に、乗員に、緊急通報電話がキャンセルされるべきであればキャンセルボタンを押すように求める音声による1つ以上のメッセージが再生される。所定の時間内に上記ボタンが押されなければ、緊急通報電話が開始される。
【0011】
本発明の1つ以上の実施例の他の目的は、車両緊急応答モジュールと少なくとも1つの車両内のセルラーテレフォンとの連続的な接続を維持することである。適切な通知および状態の表示は、接続が確立され、または切断されたことを乗員に知らせるために提供され得る。
【0012】
本発明の実施例は、緊急時対応要員に車両の緊急事態を通報するプロセスおよび装置を含む。ブルートゥースなどの第1の通信リンクは、車両内の第1のセルラーテレフォンによって確立される。上記第1の通信リンクはモニタされ、上記第1の通信リンクが切断された場合には、乗員への提示がなされる。プロセスは、車両に関する緊急状態を示す緊急事態信号の受信をモニタする。緊急事態信号が受信されると、車両の位置が全地球測位システムから取得される。緊急事態と車両の位置を通知するために緊急時対応要員へのセルラーテレフォンによる電話がなされようとしていることが、車両の乗員に示される。乗員の応答があればモニタされる。キャンセルが受信されなければ、セルラーテレフォンは、起動されて緊急時対応要員の電話番号をダイヤルする。緊急事態および車両の位置を示すデータが、音声信号へ処理され、第1の通信リンクを介して緊急時対応要員に通知される。
【0013】
本発明の他の実施例は、複数の乗員または車両の情報をデータ記憶装置に記憶し、緊急時対応要員に上記複数の乗員または車両の情報の1つ以上の項目を選択する音声メニューオプションを提供することを含む。
【0014】
本発明の他の実施例は、乗員または車両の情報の1つ以上の項目をインターネットを介してウェブサーバへ、そして上記関連するデータ記憶装置に、車両内のセルラーテレフォンを用いて伝達することを可能にする。乗員または車両の情報の項目は、また、関連するデータ記憶装置にダウンロードされ、またはデータプロセッサとインタフェースするリムーバブルメモリ装置に記憶される。
【0015】
本発明の他の実施例は、緊急時対応要員は、複数の乗員および車両の情報を選択するためにタッチトーンメニューが提供される。
【0016】
本発明の他の実施例は、第1のセルラーテレフォンとの第1の通信リンクが切断された場合に、車両内の第2のセルラーテレフォンとの第2の通信リンクを確立する。
【0017】
本発明のさらに他の実施例は、セルラーテレフォンを起動して、予め定義された、緊急時対応要員以外の連絡先の電話番号をダイヤルし、上記予め定義された連絡先に音声信号を伝達する。
【0018】
これらの目的および本発明の実施例は、排他的なものではない。他の目的および本発明の実施例は以下の好ましい実施例の詳細な説明で、図面および特許請求の範囲と伴に詳細に述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の物理的な実施例の一側面を示すシステムダイアグラムである。
【図2】図2は、本発明の一側面および実施例をサポートするために実施され得るブルートゥースコントローラのブロックダイアグラムである。
【図3】図3は、本発明の実施例を実施するためのプロセスを示すフローダイアグラムである。
【0020】
これらの図は、特許請求の範囲に記載された発明を実現するために実施され得るシステムおよびプロセスの排他的な提示ではない。当業者は、図示されたシステムおよびプロセスの実施例は、本発明のクレームされた実施、またはこれに等価なものに対応するように、変形されるか、または適合させられ得ることを理解するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の1つ以上の側面を実践するために実施され得る物理的システム構成を示す。ブロック10は、概して、車両サブシステムを含み、そのうちのいくつかは、コントローラ・エリア・ネットワーク、または他の適当なコミュニケーションネットワークなどの車載ネットワーク12によって相互に接続され得る。
【0022】
データプロセッサ16は、適切なネットワークインタフェース、またはバスアダプタ24を介した車載ネットワーク12を通じて、情報を受信、および送信し得る。データプロセッサ16は、汎用揮発性メモリ26、および磁気的またはフラッシュメモリなど、当業者に周知の汎用不揮発性または永続性の記憶装置22とバスコミュニケーションする伝統的なRISCまたはCISCプロセッサであってもよい。また、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)インタフェース(不図示)を有するコンパクトフラッシュカードまたはフラッシュメモリモジュールなどのリムーバブルメモリ40も設けられていてもよい。
【0023】
全地球測位信号受信/処理部14は、ナビゲーション・シグナル・タイミング・アンド・レインジング(NAVSTAR)・グローバル・ポジショニング・システムの複数の衛生からの無線信号(例えば、UHFバンドの1575.42MHzのL1周波数)を受信するように構成され得る。これらの信号は、送信している衛生を特定する疑似乱数コード、エフェメリス・データ、およびアルマナック・データを含み得る。全地球測位信号受信/処理部14は、このデータを処理して、車両の2次元の位置(例えば緯度および経度)、3次元の位置(例えば緯度、経度、および標高)、速度、および/または方向を決定し得る。全地球測位信号受信/処理部14で計算される位置、速度、および/または方向の情報は、車載ネットワーク12を介して、および/またはリンク18経由で直接、データプロセッサ16と通信され得る。
【0024】
変形例としては、全地球測位信号受信/処理部53は、セルラーテレフォン50のサブシステムであってもよい。地球上のセルラーテレフォンの位置、すなわちそのセルラーテレフォンが存在する車両の位置を示す情報は、データプロセッサ16によって、トランシーバ38およびコミュニケーションリンク46を介して取得され得る。
【0025】
車両サブシステムは、マップデータベース20を含んでいてもよい。汎用記憶装置22のようなデータベース20は、特に限定されず、磁気的記憶装置(例えばハードドライブ)、光学的記憶装置(例えばCD−ROM、DVD)、フラッシュメモリなどを含む種々の形態を採り得る。データプロセッサ16は、当業者に周知のように、GPS受信/処理部から受け取られた緯度、経度、および方向データと、データベース20から取得されたマップデータとに基づいて、現時点のストリートロケーション、および車両の進行方向を決定し得る。
【0026】
複数の緊急状態センサ28は、車載ネットワーク28とインタフェースし得る。それらのセンサは、特に限定されず、エアバッグ展開センサ、車体衝撃センサ、ダッシュボード衝撃センサ、座席/乗員衝撃センサ、転覆センサ、火災/高温センサ、ガソリンセンサ、および乗員によって操作されるパニックボタンを含み得る。これらのセンサは、それぞれ、複数の互いに異なる緊急状態を示す信号を送信するために、車載ネットワーク12に対して別個のインタフェース(不図示)を備え、独立した処理モジュール(不図示)中で動作し得る。
【0027】
データプロセッサ16と通信する他のサブシステムは、データプロセッサ16から受け取ったディジタル情報を音声会話信号、すなわちアナログ音声信号に変換するボイスシンセサイザまたはデコーダ28を含む。上記アナログ音声信号は、後により詳しく述べるように、スピーカ32を介してコミュニケーションされ、またはピコネット46を介したセルラーテレフォン50のトランシーバ(不図示)との通信のためにトランシーバ38で処理され得る。自動電話メニューシステムの分野で周知のように、アナログDTMF周波数を受け取って、それをデータプロセッサ16に対するコマンド信号として処理するために、デュアルトーンマルチ周波数(DTMF)インタフェース30が設けられてもよい。
【0028】
トランシーバ38は、セルラーテレフォン50または他の利用可能な装置との間にピコネット46を確立し得る。セルラーテレフォン50は、車両に恒久的に備えられるのではない一時的なセルラーコミュニケーション装置の例である。他の一時的なセルラーコミュニケーション装置の例としては、セルラーコミュニケーションおよびピコネットコミュニケーションが可能なラップトップコンピュータでもよい。
【0029】
一例として、トランシーバ38は、ブルートゥースコントローラを備えていてもよい。当業者は、異なるコミュニケーション特性および能力を有する他のトランシーバを使用してもよいことを理解するであろう。
【0030】
図2に示すように、ブルートゥースコントローラは、リンクマネージャレイヤ82、ベースバンドレイヤ84、および無線レイヤ86を含み得る。無線レイヤ86は、2値周波数変調を用いて2.4GHzで動作する無線周波数モジュールを備え得る。
【0031】
ベースバンドレイヤ84は、照会の実行、接続の確立、または発見可能にするための無線媒体の使用と伴に、論理リンクおよび論理トランスポートを介した接続装置間でのデータ交換を管理するベースバンドリソースマネージャ92を含み得る。
【0032】
ベースバンドレイヤ84は、また、データペイロードからのブルートゥースパケットのエンコードおよびデコード、並びに物理チャネル、論理トランスポート、および論理リンクに関するパラメータを取り扱うリンクコントローラ90を含み得る。リンクコントローラ90は、通信フロー・コントロールおよび肯定応答および再送要求信号に用いられるリンクコントロールプロトコルの信号伝達を行う。
【0033】
デバイスマネージャ94は、ブルートゥースが使用可能な装置の一般的な動作を制御する。これは、他の近傍の装置の存在の照会、他の装置への接続、またはローカル装置を他の装置によって発見可能もしくは接続可能にするなど、データ転送には直接関係しない、ブルートゥースシステムの動作のための役割(responsible)である。
【0034】
リンクマネージャレイヤ82は、装置間の物理リンクに関連したパラメータをアップデートするとともに、論理リンクおよび/または論理トランスポートの生成、変更、および解放の管理をするリンクマネージャ96を含み得る。リンクマネージャは、これをリモートのブルートゥースデバイス中のリンクマネージャとリンクマネジメントプロトコル(LMP)を用いて通信することにより行い得る。LMPは、論理トランスポート上の暗号化の可能化、物理リンクの送信パワーの適応、または論理リンクのQoS設定の調整などのリンクおよびトランスポート属性の一般的な管理をするとともに、要求に応じて装置間の新たな論理リンクおよび論理トランスポートの生成を許可する。
【0035】
他の車両サブシステム10は、トランシーバ38とセルラーテレフォン50との間のコミュニケーションリンクの状態を乗員に知らせるリンクステータスインジケータ36を含む。状態は、特に限定されず、利用可能な装置であること、ペアになっていること、ペアになっていないこと、接続されていること、接続されていないことなどを含む。一実施例では、コミュニケーションリンクの状態は、液晶表示装置(LCD)に表示される。他の実施例では、1つ以上の発光ダイオード(LEDs)または他の画像表示が用いられる。さらに他の実施例では、車両の音響システムおよび/またはスピーカ32による音声状態報知が用いられる。リンク状態は、トランシーバ38に接続されたデータプロセッサ16によってモニタされ得る。
【0036】
セレクト/キャンセルスイッチ34も、また、後により詳しく述べるように、マイクロプロセッサ/システムの機能に対するプッシュボタンコントロールのためにデータプロセッサ16とインタフェースし得る。セレクト/キャンセルスイッチ34は、LCD表示装置に連結されて動作するソフトスイッチであってもよいし、マイクロフォン32で受け取られてボイスシンセサイザ28および/またはマイクロプロセッサ16で処理された音声コマンドによって動作するソフトウェアスイッチであってもよい。
【0037】
サブシステム10と外部コミュニケーションネットワークとの広く種々の異なる相互接続は、本発明の範囲で図1に示すものを越えて実現され得る。例えば、セルラーテレフォン50と、データプロセッサ16、ボイスシンセサイザ28、および/またはDTMFインタフェース30との間には、ハードワイヤコネクションが確立されてもよい。他の例では、データプロセッサ16は、直接的または間接的に緊急事態センサモジュール28に接続されてもよく、そして、車載ネットワーク12に代えて緊急センサモジュールが接続されたポートをモニタしてもよい。
【0038】
本発明の一実施例では、セルラーテレフォン50は、地上タワー52との間でワイヤレスコミュニケーション48を確立する。一方、地上タワー52は、電話交換ネットワーク54を介して、緊急時対応要員56との間でコミュニケーションを確立する。緊急時対応要員は、後により詳しく述べるように、警察、救急車、911番公共安全アクセスポイント(PSAP:public safety access point)、その他を含み得る。地上タワー52は、また、後により詳しく述べるように、電話交換ネットワーク54を介して、他の連絡先58との間でコミュニケーションを確立してもよい。
【0039】
本発明の他の実施例では、地上タワー52は、電話交換ネットワーク54を介して、ウェブサーバ60におけるデータインタフェース(不図示)との間でコミュニケーションを確立してもよい。後により詳しく述べるように、データは、破線70で図示されるように、関連するデータベース68から通信されて、マイクロプロセッサ16に接続された記憶装置22との間でアップロードおよびダウンロードされてもよい。
【0040】
記憶装置68を連結したウェブサーバ60は、特に限定されず緊急時対応要員66、セルラーテレフォン所有者64、健康管理提供者などを含む複数のブラウザによるインターネットアクセス62のための複数のウェブページのホストとなり得る。後により詳しく述べるように、セルラーテレフォン所有者64などのいくつかのブラウザは、インターネット62を介して記憶装置68にデータをアップロードしてもよく、緊急時対応要員66などの他のブラウザは、データをダウンロードしてもよい。
【0041】
図3は、本発明の実施例を実現するためのアルゴリズム例100を示す。当業者は、本発明の範囲が図3に示された特定のアルゴリズムに限定されないことを理解するであろう。図示されたプロセスは、特定の本発明の実施に合致するように変更され得る。図3に示されたプロセスは、図1に示されたデータプロセッサ16などの1つまたはより多くのプロセッサによって実現され得る。特定のタイプのプロセッサ、または構成は必要とされない。
【0042】
ステップ102では、乗員室内または近傍の利用可能なセルラーテレフォンとのローカルコミュニケーションリンクが確立され得る。リンクは、ブルートゥースのピコネット、または他の適切な近距離ネットワークでもよいし、有線、または無線でもよい。ステップ104および106では、コミュニケーションリンクの状態が連続的に、または一定の間隔でモニタされてもよい。リンクの状態は、組にされたセルラーテレフォンの接続性、信号強度、利用可能な装置の識別などを含んでもよい。図1に関連して説明したように、リンクの状態は、LCD表示装置、LED、または音声によって通知されてもよい。好ましくは、リンクが切断されたとき、または利用可能なリンクがないときには、車室内の乗員に警告または他の通知がなされる。
【0043】
ステップ108では、緊急事態通報信号が車両緊急事態センサ110から受け取られる。車両緊急事態センサ110は、特に限定されず、エアバッグ展開センサ、車体衝撃センサ、ダッシュボード衝撃センサ、座席衝撃センサ、転覆センサ、火災センサ、ガソリンセンサなどを含み得る。これらのセンサからの緊急事態信号は、データプロセッサ16によって、直接、有線で、無線で、または車載ネットワーク12を介して受信され得る。
【0044】
緊急事態通報信号が受信されると、システムは、ステップ112で車両の乗員に1以上の緊急時対応要員56または他の連絡先58への緊急通報電話がセルラーテレフォン50でなされようとしていることを通知し得る。乗員への通知は、好ましくは車両音響システムの構成要素であるか、または構成要素でないボイスシンセサイザ28およびスピーカ32を用いて音声でなされる。以下は通知の例である。
【0045】
“警告。この車の安全センサが車両衝突を検出しました。車両安全システムは10秒以内に自動的に緊急時対応要員に連絡します。この電話を中止したい場合には、キャンセルボタンを押すか「キャンセル」と発音してください。
【0046】
もちろん、制限のない数の異なる通報がなされてもよい。これらは、予め記録され、予め定義され、または検出された特定の緊急事態、および/または車両内の特定の乗員に基づいて動的に生成され得る。好ましくは、通報は繰り返し行われる。ステップ114では、車両の乗員は、セレクト/キャンセルスイッチ22またはマイクロフォン32およびボイスシンセサイザ28に受け取られた音声コマンドを用いて緊急通報電話をキャンセルする機会が与えられる。キャンセル信号が受信されると、処理は停止し、ブロック104でのリンク状態のモニタに戻る。
【0047】
114で緊急通報電話が停止されなかった場合には、ステップ118で緊急事態情報が収集される。緊急事態情報は、車両情報116と乗員情報120とを含み得る。車両情報116は、GPS受信/処理部14からの緯度、経度、方向、最終速度など、また、車両にマップデータ20が備えられている場合にはストリートロケーション、車両のタイプ/色、車両の緊急時の状態(例えば、衝撃、出火、転覆、出火、ガソリン漏れなど)、乗員数、シートベルトの状態等を含み得る。乗員情報120は、名前、年齢、住所、血液型、医療上のアレルギー、医療上のコンディション、保険情報、医師情報、緊急連絡先などを含み得る。緊急事態情報は、メモリ26、記憶装置22、リムーバブルメモリ40、またはセルラーテレフォン50に連結された記憶装置51を含む複数の記憶場所に記憶され得る。
【0048】
乗員の身元確認は、トランシーバ38と組にされたセルラーテレフォン50の所有者、マイクロフォン32への音声入力、車両のコンソールディスプレイ(不図示)へのユーザ入力、またはキー識別子、メモリキー識別子などを含む他の手段によって判断され得る。
【0049】
緊急事態情報がステップ118で収集された後に、上記ステップ112および114について説明したように、緊急通報電話がされようとしていることを乗員に警告して乗員に電話をキャンセルする機会を与える別の乗員への通知がなされるようにしてもよい。このステップは、破線128で表されている。
【0050】
緊急通報電話がキャンセルされなかった場合には、ブルートゥースコントローラなどのトランシーバ38は、ステップ121で、セルラーテレフォン50によって1以上の緊急時対応要員56、または他の連絡先58への電話を開始し得る。電話できなかった場合には、システムは、ブロック122に示すように、車内または近傍の他のセルラーテレフォンによって接続の確立を試み、ブロック121に示すように緊急事態情報を通知する。
【0051】
ステップ124では、車両情報116および/または乗員情報120の要素が、ボイスシンセサイザ28で音声信号に合成され、ブロック126に示すように、末端関係者56または58に対して読み上げられ得る。本発明の一実施例では、データプロセッサ16およびボイスシンセサイザ28は、車両情報116および/または乗員情報120の種々の要素を繰り返すため、および検索するために、タッチトーンDTMFメニューオプションを末端関係者56または58に提供する。この処理は破線130および132で示されている。
【0052】
もし乗員が緊急事態情報を通知する追加の連絡先58を特定した場合には、ステップ134に示すように、それらにも連絡がとられ、緊急事態情報が通知される。
【0053】
図1に示すように、緊急時対応要員66、およびセルラーテレフォン/車両所有者64は、記憶装置68に連結されたウェブサーバ60へのインターネットアクセスが提供される。セルラーテレフォン/車両所有者64は、緊急時対応要員56および66に提供されるべき緊急事態情報、および/またはその情報がどのように提供されるかを定義するために、サーバ60で提供される1以上のウェブページにアクセスし得る。例えば、セルラーテレフォン/車両所有者64は、その名前、年齢(誕生日)、住所、血液型、医療上のアレルギー、医療上のコンディション、医師、緊急連絡先などを明示し得る。セルラーテレフォン/車両所有者64は、緊急時にこれらのどの情報が緊急時対応要員56および/または66に開示されるかを明示し得る。緊急事態情報は、緊急時にボイスシンセサイザ28を介して緊急時対応要員56および他の連絡先58にレポートされるために、セルラーリンク48を介してセルラーテレフォン記憶装置51に、および/または車載記憶装置22にアップロードされてもよい。
【0054】
緊急事態情報は、また、緊急時に緊急時対応要員66によるインターネットアクセスのために、ウェブサーバ68に連結されたデータベース68に保存されてもよい。一例としては、緊急時対応要員56への音声送信は、インターネット62を介してサーバ60で乗員の緊急事態情報にアクセスするための指示を含む。このようにして、緊急時対応要員56および/または66は、乗員の全ての緊急事態情報に容易にアクセスすることができる。
【0055】
発明を実現するためのベストモードが詳細に述べられたが、本発明が関連する技術に精通する者は、以下のクレームで規定される発明を実施するための様々な変形設計および実施例を理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急時対応要員に車両の緊急事態を通報する方法であって、
車両内で、第1のセルラーテレフォンとの第1の通信リンクを確立し、
上記第1の通信リンクの接続状態を監視して、上記第1の通信リンクが切断された場合に乗員に指摘し、
車両に関する緊急状態を示す緊急事態信号の受信を監視し、
緊急事態信号が受信された場合に、
(a)全地球測位システムから車両の位置を取得し、
(b)緊急事態および車両の位置を通報するために、緊急時対応要員へのセルラーテレフォンによる電話がなされようとしていることを車両の乗員に示し、
(c)乗員が上記緊急通報電話をキャンセルしたかどうかを決定するために入力装置を監視し、
(d)乗員が上記緊急通報電話をキャンセルしなければ、セルラーテレフォンを起動して緊急時対応要員の電話番号をダイヤルし、
(e)上記緊急事態および車両の位置を示すデータを音声信号にする処理をし、
(f)上記音声信号を上記第1の通信リンクを介して上記緊急時対応要員に伝達する
ことを含む緊急事態通報方法。
【請求項2】
さらに、
複数の乗員または車両の情報をデータ記憶装置に記憶し、
上記複数の乗員または車両の情報のうちの1つ以上の項目を選択するための音声メニューオプションを上記緊急時対応要員に提供し、
選択された項目を音声信号にする処理をし、
上記音声信号を上記緊急時対応要員に上記第1の通信リンクを介して伝達する
ことを含む請求項1の方法。
【請求項3】
乗員または車両の情報のうちの1つ以上の項目は、
(a)ウェブブラウザに通知され、
(b)上記ウェブブラウザから、インターネットを介してウェブサーバに通知され、
(c)上記ウェブサーバから、セルラーテレフォンに通知され、
(d)上記セルラーテレフォンから、車両内でデータプロセッサに通知され、
(e)上記データ記憶装置内に記憶される、
請求項2の方法。
【請求項4】
乗員または車両の情報のうちの1つ以上の項目は、上記データ記憶装置にダウンロードされる、請求項2の方法。
【請求項5】
上記データ記憶装置は、リムーバブルメモリを含む、請求項2の方法。
【請求項6】
上記選択は、電話のタッチトーンを用いて行われる、請求項2の方法。
【請求項7】
さらに、上記第1の通信リンクが切断された場合に、第2のセルラーテレフォンとの第2の通信リンクを車両内で確立することを含む、請求項1の方法。
【請求項8】
さらに、
セルラーテレフォンを起動して、予め定められた、緊急時対応要員以外の連絡先の電話番号をダイヤルし、
上記予め定められた緊急連絡先に上記音声信号を伝達する
ことを含む、請求項1の方法。
【請求項9】
上記通信リンクは、ブルートゥースリンクである、請求項1の方法。
【請求項10】
緊急時対応要員に車両の緊急事態を通報する装置であって、
データプロセッサを含み、上記データプロセッサは、
(a)上記データプロセッサに車両の位置を示すデータの電気信号を与える全地球測位システム、
(b)車両の緊急事態を検出し、緊急状態を示す電気信号を上記データプロセッサに与える緊急事態センサ、
(c)車両の位置、および緊急通報電話されることの通知を示す電気信号を音声信号に変換する音声シンセサイザ、
(d)上記緊急通報電話されることの通知を乗員に聞こえるように中継するスピーカ、
(e)上記緊急通報電話されることの通知に応じて、上記緊急通報電話が乗員によってキャンセルされることを監視する入力装置、および
(f)第1のセルラーテレフォンとの第1の通信リンクを車両内で確立し、緊急通報電話が乗員によってキャンセルされなかった場合に、上記セルラーテレフォンで緊急時対応要員への電話を開始し、緊急時対応要員への電話連絡のために、車両の位置を示す音声信号を上記セルラーテレフォンに伝達する通信モジュール
と通信する緊急事態通報装置。
【請求項11】
さらに、上記データプロセッサと通信して複数の乗員または車両の情報を記憶する記憶装置を備え、上記複数の乗員または車両の情報のうちの1つ以上の項目が、上記緊急時対応要員への通知のために、音声シンセサイザで音声信号にする処理をされる、請求項10の装置。
【請求項12】
上記通信モジュールは、複数の乗員または車両の情報を分類する音声メニューを提供し、何れの項目が提供されるかを選択する1つ以上のタッチトーン信号を受信するように構成されている、請求項11の装置。
【請求項13】
上記通信モジュールは、上記第1のセルラーテレフォンとの上記第1の通信リンクの状態を監視し、上記通信リンクが切断された場合に、乗員に示すように構成されている、請求項10の装置。
【請求項14】
上記通信モジュールは、上記第1のセルラーテレフォンとの上記第1の通信リンクが切断された場合に、第2のセルラーテレフォンとの第2の通信リンクを確立するように構成されている、請求項13の装置。
【請求項15】
上記通信モジュールは、予め定められた、緊急時対応要員以外の連絡先の電話番号をダイヤルし、上記予め定められた緊急連絡先に音声信号を伝達するように構成されている、請求項10の装置。
【請求項16】
上記通信モジュールは、ブルートゥースコントローラである、請求項10の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−533904(P2010−533904A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514958(P2010−514958)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/066878
【国際公開番号】WO2009/002729
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.コンパクトフラッシュ
【出願人】(500493207)フォード モーター カンパニー (22)
【Fターム(参考)】