説明

緊急警報放送フラグ復調装置およびOFDM受信装置

【課題】ワンセグ対応のOFDM受信装置において、消費電力を低減させながら、1セグメント内にある4本のTMCC信号を検出する技術を提供することを課題とする。
【解決手段】チューナー12により受信されたOFDM信号は、キャリアデロテーター26において周波数ずれが補正された後、TMCC復調器30に入力される。時間領域のOFDM信号101は、4方向に分配され、それぞれ第1位相信号111〜第4位相信号114が乗算される。第1位相〜第4位相は、TMCC信号が挿入されるサブキャリアの位相である。OFDM信号101と第1位相信号111〜第4位相信号114との乗算値は、1シンボルにわたって積算され、4個のTMCC信号が出力される。タイミングカウント回路34は、TMCC信号の26ビット目を参照し、EWSフラグを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OFDM方式の地上波デジタルテレビ放送の受信装置に関する。詳しくは、OFDM受信信号から緊急警報放送フラグを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の地上波デジタルテレビ放送では、伝送方式としてOFDM(直交周波数分割多重;Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式が採用されている。
【0003】
日本規格のOFDM方式では、6MHzの帯域幅をもOFDM信号のスペクトラムを複数のセグメントに分割して伝送する「階層伝送」が可能である。OFDM受信装置においては、これら複数の階層の中から一部の階層のみを部分的に抽出して受信する「部分受信」という受信形態が可能となっている。そして、移動通信端末や携帯通信端末においては、これら複数の階層の中で1セグメントのみからなる階層を受信する「1セグメント方式(ワンセグ受信)」の受信形態も行われている。
【0004】
地上波デジタルテレビ放送においても、地震や津波などの災害の発生予告を緊急で行うための緊急警報放送(EWS:Emergency Warning System)が発信されている。EWSは、待機状態にあるテレビやラジオの受信機のスイッチを自動的にONすることで行われる放送である。
【0005】
OFDM受信装置は、テレビのスイッチが切られている状態で、定期的にOFDM信号を受信し、OFDM受信信号に含まれているTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration and Control)信号中のEWSフラグを検出する。そして、OFDM受信装置は、EWSフラグを検出したときには、テレビのスイッチをONにし、自動的にEWSを再生するのである。
【0006】
【特許文献1】特開2005−295053号公報
【特許文献2】特開2005−333512号公報
【特許文献3】特開2006−319771号公報
【特許文献4】特開2007−104221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、地上波デジタルテレビにおいてEWSを受信するためには、テレビのスイッチがOFFされて待機状態になっている場合であっても、OFDM受信装置に電力が供給されている必要がある。つまり、テレビスイッチはOFFにされているが、主電源がONされていることにより、待機電力によってOFDM受信装置が動作可能となっていることが条件となる。
【0008】
OFDM受信装置は、定期的に、OFDM信号を受信し、FFT(Fast Fourier Transform)演算を含む受信信号の復調処理を実行し、TMCC信号内に含まれているEWSフラグを検出するのである。
【0009】
据え置きテレビであれば、待機状態においてもOFDM受信装置が駆動し、演算処理を実行することには大きな問題にはならない。据え置きテレビであれば、コンセントを介して常時電源が供給されているからである。また、FFT演算を実行するときに消費電力が大きくなるが、これも据え置きテレビであれば大きな問題にはならない。
【0010】
しかし、ワンセグ受信を行う携帯電話端末を含め携帯通信端末においては、バッテリを使用しているため、消費電力を極力小さくする必要がある。もし、待機状態において、携帯電話端末に搭載されたOFDM受信装置が定期的にOFDM信号を受信し、FFT演算処理を実行すれば、バッテリの消費が多大となり、実用に耐えない。
【0011】
そこで、上記特許文献1〜特許文献4では、FFT演算を行うことなく、OFDM受信信号からEWSフラグを検出する試みがなされている。特許文献1、特許文献2では、フィルタによりTMCC信号が挿入されるキャリア信号を取得するようにしている。特許文献3、特許文献4では、特別な配置にある2本のTMCC信号を検出する方法を開示している。
【0012】
しかし、OFDM信号は、もともとサブキャリア間の間隔が狭く、密に配置されているのが特徴であり、特許文献1、特許文献2のようにフィルタを用いてTMCC信号を取得する方法は非常に高い精度のフィルタを準備する必要が生じる。また、フィルタのタップ数が非常に大きくなるため、消費電力の削減効果があまり得られないという問題もある。また、特許文献3、特許文献4の方法であれば、1セグメントにある4本のTMCC信号のうち2本しか検出できないという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、消費電力を低減させながら、1セグメント内にある4本のTMCC信号を検出する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、OFDM方式の受信信号からTMCC信号に含まれる緊急警報放送フラグを検出する緊急警報放送フラグ復調装置であって、TMCC信号が格納されるキャリアの位相情報を記憶するTMCC情報記憶部と、時間領域のOFDM受信信号に、TMCC信号が格納されるキャリアの位相信号を乗算する乗算器と、前記乗算器における乗算値を1シンボル期間にわたって積算し、TMCC信号を出力する積算回路と、前記積算回路から出力されたTMCC信号から緊急警報放送フラグを検出する検出回路と、を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の緊急警報放送フラグ復調装置において、前記TMCC情報記憶部には、N本のTMCC信号に対応したN個のキャリア位相情報が格納されており、前記緊急警報放送フラグ復調装置は、さらに、時間領域のOFDM信号を第1から第Nの系統に分配する分配回路、を備え、前記乗算器は、第1から第Nの系統に分配されたOFDM信号に、それぞれ第1から第Nのキャリアの位相信号を乗算するN個のキャリア別乗算器、を含み、前記積算回路は、N個のキャリア別乗算器の乗算値をそれぞれ1シンボル期間にわたって積算するN個のキャリア別積算回路、を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の緊急警報放送フラグ復調装置において、前記キャリア別乗算器および前記キャリア別積算回路のセットが、1セグメントのOFDM信号に含まれる4本のTMCC信号に対応して4セット用意されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の緊急警報放送フラグ復調装置において、さらに、前記検出回路により緊急警告放送フラグが検出された場合、FFT演算回路を含むデジタルテレビ放送復調回路への電力供給を指示する信号を送出する指示回路、を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項5記載の発明は、OFDM方式の受信信号を復調するOFDM受信装置であって、OFDM信号を受信するチューナーと、FFT演算回路を含む処理ブロックによりOFDM受信信号を復調するデジタルテレビ放送復調回路と、OFDM受信信号からTMCC信号に含まれる緊急警報放送フラグを検出する緊急警報放送フラグ復調回路と、を備え、前記緊急警報放送フラグ復調回路は、TMCC信号が格納されるキャリアの位相情報を記憶するTMCC情報記憶部と、時間領域のOFDM受信信号に、TMCC信号が格納されるキャリアの位相信号を乗算する乗算器と、前記乗算器における乗算値を1シンボル期間にわたって積算し、TMCC信号を出力する積算回路と、前記積算回路から出力されたTMCC信号から緊急警告放送フラグを検出する検出回路と、前記検出回路により緊急警告放送フラグが検出された場合、前記デジタルテレビ放送復調回路への電力供給を指示する信号を送出する指示回路と、を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項5に記載のOFDM受信装置において、前記チューナーおよび前記緊急警報放送フラグ復調回路には、所定フレーム間隔で電力が供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の緊急警報放送フラグの復調装置は、時間領域のOFDM受信信号に、TMCC信号の挿入されるサブキャリアの位相信号を乗算する。そして、乗算値を1シンボル期間にわたって積算することでTMCC信号を取得する。
【0021】
これにより、FFT演算を実行することなく、少ない消費電力でTMCC信号を取得することができる。
【0022】
本発明においては、少ない数の乗算器、積算回路を用いてTMCC信号を取得することができるので、EWSフラグの検出回路の回路規模を小さくすることができ、低消費電力化を図ることができる。
【0023】
また、緊急警報放送フラグの検出装置は、TMCC信号が挿入される4個のサブキャリアの位相信号を乗算することで、1セグメント内に挿入されている4本のTMCC信号を全て取得することができる。これにより、受信信号の品質が低下している状態であっても、EWSフラグの誤検出の発生頻度を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の実施の形態にかかる携帯電話端末10のブロック図である。携帯電話端末10は、ワンセグの地上波デジタルテレビ放送の受信機能を備えた携帯電話端末である。本実施の形態においては、ワンセグ放送受信機能を備えた携帯端末として携帯電話端末を例に説明するが、他にも携帯情報端末(PDA)や、携帯ゲーム機などに適用させることができる。
【0025】
携帯電話端末10は、OFDM方式の地上波デジタルテレビ放送を受信するアンテナ11およびチューナー12を備えている。チューナー12から出力されたアナログのOFDM受信信号はA/D変換回路13においてデジタル変換される。
【0026】
A/D変換回路13においてデジタル変換されたOFDM受信信号は、2系統に分配されて、一方は、地上波デジタルテレビ復調器14に入力される。
【0027】
地上波デジタルテレビ復調器14は、周波数補正回路、FFT演算回路、等化回路、誤り訂正回路、MPEG復号回路などを備え、受信したOFDM信号から、ワンセグの地上波デジタルテレビ放送信号を復調する。そして、復調された放送信号は、モニタ15およびスピーカ16から出力される。このようにして、ユーザは、携帯電話端末10を利用して、ワンセグの地上波デジタルテレビ放送を視聴することができる。
【0028】
A/D変換回路13においてデジタル変換されたOFDM受信信号は、また、緊急警報放送フラグを復調するためのEWSフラグ復調器20に入力される。EWSフラグ復調器20は、受信したOFDM信号からTMCC信号を復調し、TMCC信号に含まれるEWSフラグを検出する。
【0029】
携帯電話端末10は、電源スイッチ19を備え、電源スイッチ19のON/OFF操作により、電源18から本体部への電力の供給、停止が行われる。本体部とは、モニタ15やスピーカ16などの入出力部であり、携帯電話端末10の基本機能を実行するための処理部である。ユーザは、電源スイッチ19がONにされている状態で、図示せぬ操作ボタンを操作してダイヤル操作や入力操作を行うことで通話機能やメール機能など携帯電話端末10が備える基本機能を利用することができる。
【0030】
しかし、電源スイッチ19がON操作されただけでは、チューナー12、A/D変換回路13、地上波デジタルテレビ復調器14、EWSフラグ復調器20への電力供給は行われない。ユーザが、図示せぬ操作ボタンを操作して、地上波デジタルテレビ放送の視聴機能をONにしたとき、はじめてチューナー12、A/D変換回路13、地上波デジタルテレビ復調器14への電力が供給され、地上波デジタルテレビの放送の視聴が可能となる。これは、ユーザが、能動的に地上波デジタルテレビ放送の視聴機能をONにした場合である。
【0031】
これに対して、本実施の形態の携帯電話端末10は、ユーザ操作に無関係に、自動的に、緊急警報放送の視聴が可能となる機能を備えている。図2は、携帯電話端末10の各構成部の起動・停止のタイミングを示す図である。
【0032】
電源スイッチ19がON操作されると、通話機能、メール機能など携帯電話端末10の基本的な機能が使用可能となる。また、電源スイッチ19がON操作されると、後述するタイミングカウント回路34への電力が供給される。電源スイッチ19がON操作されると、EWSフラグ復調器20全体には電力は供給されないが、EWSフラグ復調器20内のタイミングカウント回路34だけに電力が供給される。
【0033】
タイミングカウント回路34は、タイマーを備え、OFDM受信信号の受信タイミングをカウントし、定期的に、電力供給信号RS1を出力する。この電力供給信号RS1に応答して、チューナー12、A/D変換回路13、EWSフラグ復調器20への電力供給が行われる。たとえば、タイミングカウント回路34は、5フレームや10フレームに一度のタイミングで電力供給信号RS1を生成する。
【0034】
また、タイミングカウント回路34は、EWSフラグ復調器20がEWSフラグを検出すると、電力供給信号RS2を出力する。この電力供給信号RS2に応答して、チューナー12、A/D変換回路13、地上波デジタルテレビ復調器14への電力供給が行われる。
【0035】
図3は、EWSフラグ復調器20の機能ブロック図である。EWSフラグ復調器20は、AGC(Automatic Gain Control)回路21、乗算器22、乗算器23、LPF(Low Pass Filter)24、リサンプラー25、キャリアデロテーター26を備えている。
【0036】
まず、上述したように、タイミングカウント回路34から電力供給信号RS1が出力されることにより、電源18からの電力が、チューナー12、A/D変換回路13、EWSフラグ復調器20へ供給される。そして、アンテナ11、チューナー12を介して受信したOFDM信号が、A/D変換回路13においてデジタル変換される。
【0037】
A/D変換回路13から出力されたデジタルのOFDM受信信号は、AGC回路21においてゲインが調整される。ゲインが調整されたOFDM受信信号は、乗算器22においてcos波が乗算された後、LPF24を通すことによって、同相成分(I成分)が抽出される。また、ゲインが調整されたOFDM受信信号は、乗算器23においてsin波が乗算された後、LPF24を通すことによって直交成分(Q成分)が抽出される。
【0038】
I成分、Q成分に分離されたOFDM信号は、リサンプラー25において、サンプリングレートが調整され、キャリアデロテーター26において、位相信号が乗算されて周波数ずれの補正が行われる。
【0039】
EWSフラグ復調器20は、さらに、時間領域相関回路27、シンボル同期回路28、狭帯域周波数同期回路29、TMCC復調器30、DBPSKデコード回路31、TMCC同期回路32、広帯域周波数同期回路33、タイミングカウント回路34を備えている。
【0040】
キャリアデロテーター26から出力されたOFDM受信信号は、時間領域相関回路27に入力される。時間領域相関回路27は、ガードインターバル信号の相関を演算することで、時間領域の相関値を演算する。
【0041】
シンボル同期回路28は、時間領域相関回路27における相関値の演算結果に基づいてシンボル同期信号を生成し、TMCC復調器30に出力する。TMCC復調器30は、入力したシンボル同期信号に基づいてシンボル単位での処理を実行する。
【0042】
また、狭帯域周波数同期回路29は、時間領域相関回路27における相関値の演算結果に基づいて狭帯域の周波数ずれを検出する。そして、狭帯域周波数同期回路29は、周波数ずれの位相情報をキャリアデロテーター26に出力する。狭帯域の周波数ずれとは、サブキャリア間隔を越えない周波数ずれである。キャリアデロテーター26は、周波数ずれの位相情報に基づいて、OFDM受信信号の狭帯域の周波数ずれを補正する。
【0043】
また、広帯域周波数同期回路33は、サブキャリア間隔を越える周波数ずれを検出し、周波数ずれの位相情報をキャリアデロテーター26に出力する。キャリアデロテーター26は、周波数ずれの位相情報に基づいて、OFDM受信信号の広帯域の周波数ずれを補正する。
【0044】
キャリアデロテーター26において周波数ずれが補正されたOFDM信号は、TMCC復調器30に入力される。TMCC復調器30は、TMCC情報記憶回路310、4個の乗算器311,312,313,314と、4個の加算器321,322,323,324と、4個の遅延回路331,332,333,334等から構成される。
【0045】
TMCC情報記憶回路310には、TMCC信号が挿入されるサブキャリアの位相情報が記憶されている。モード3の規格では、1セグメントに4本のTMCC信号が挿入される。本実施の形態においては、モード3に対応して、TMCC情報記憶回路310には、4本のTMCC信号に対応した第1位相から第4位相までの4つのサブキャリア位相情報(ψ〜ψ)が記憶されている。
【0046】
キャリアデロテーター26から出力されTMCC復調器30に入力される時間領域のOFDM受信信号101は、4系統に分配され、それぞれ乗算器311,312,313,314に入力される。なお、OFDM受信信号101は、キャリアデロテーター26から出力されたI成分、Q成分の2つの信号からなる複素信号である。
【0047】
乗算器311に入力された時間領域のOFDM受信信号101には、TMCC情報記憶回路310から出力された第1位相信号111が乗算される。図中、ψは、第1番目のTMCC信号が挿入されるサブキャリアの位相(第1位相)を示している。
【0048】
任意のポイントのOFDM信号101と第1位相信号111との乗算値は、加算器321において、遅延回路331からの出力信号と加算される。さらに、次のポイントのOFDM信号101と第1位相信号111とが乗算され、加算器321において、遅延回路331からの出力信号と加算される。このような処理を繰り返し、乗算値が1シンボルにわたって積算される。つまり、1シンボルに含まれる各サンプリング点のOFDM信号101が、順次乗算器311において第1位相信号111と乗算され、その乗算値が1シンボル期間にわたって積算されるのである。TMCC復調器30は、シンボル同期回路28から入力する同期信号に基づいて1シンボル単位の積算値を出力する。
【0049】
ここで、第1位相信号111は、ワンセグのOFDM信号に含まれる4本のTMCC信号の中で、第1番目のTMCC信号が挿入されるサブキャリアの位相(第1位相ψ)に対応した搬送波信号(ejψ1)である。したがって、OFDM受信信号の直交性により、乗算値を1シンボルにわたって積算した積算結果は、第1番目のTMCC信号となる。このようにして加算器321より第1番目のTMCC信号が出力される。
【0050】
乗算器312,313,314には、第2、第3、第4番目のTMCC信号が挿入されるサブキャリアの位相に対応した第2、第3、第4位相信号112,113,114が入力される。図中、ψ、ψ、ψ、は、第2、第3、第4番目のTMCC信号が挿入されるサブキャリアの位相(第1、第2、第3位相)を示している。第2、第3、第4位相信号112,113,114は、4本のTMCC信号の中で、第2、第3、第4番目のTMCC信号が挿入されるサブキャリアの位相に対応した搬送波信号(ejψ2,ejψ3,ejψ4)である。そして、乗算器312,313,314において、OFDM受信信号101には、それぞれ第2、第3、第4位相信号112,113,114が乗算される。
【0051】
加算器322,323,333においては、それぞれ、OFDM信号101と、第2、第3、第4位相信号112、113、114との乗算値が1シンボル期間にわたって積算される。これにより、加算器322からは、第2番目のTMCC信号が出力され、加算器323からは、第3番目のTMCC信号が出力され、加算器324からは、第4番目のTMCC信号が出力される。
【0052】
TMCC復調器30から出力された第1番目から第4番目のTMCC信号は、DBPSKデコード回路31に入力される。TMCC信号は、差動位相変調された信号であり、DBPSKデコードすることにより、TMCC信号が復調される。なお、1セグメント内に挿入される4本のTMCC信号は、同じ情報が埋め込まれている。したがって、復調した4本のTMCC信号をダイバーシティ合成するなどして、TMCC信号の復調精度を向上させることができる。
【0053】
復調されたTMCC信号は、TMCC同期回路32に入力される。TMCC同期回路32は、TMCC信号からフレーム同期信号を生成し、広帯域周波数同期回路33に出力する。広帯域周波数同期回路33は、フレーム同期信号に基づいて広帯域の周波数ずれを検出する。
【0054】
図4は、TMCC信号のパケット構成を示す図である。TMCC信号は、1シンボルに対して1ビットの情報として埋め込まれるため、1フレーム(204シンボル)で、204ビットのパケットとして構成される。
【0055】
図に示すように、TMCCパケットの第0ビットは差動復調基準ビットである。第1ビットから第16ビットは、同期信号が挿入される。TMCC同期回路32は、この同期信号を利用してフレーム同期信号を生成する。
【0056】
第17ビットから第19ビットには、セグメント形式識別情報が挿入される。そして、第20ビットから第121ビットまでにTMCC情報が挿入される。最後の第122ビットから第203ビットはパリティが挿入される。EWSフラグは、図にも示すように、第26ビットに挿入される。緊急警報放送の放送が開始すると、第26ビットにEWSフラグとして「1」が記録される。
【0057】
TMCC同期回路32は、復調されたTMCC信号をタイミングカウント回路34に出力する。タイミングカウント回路34は、TMCC信号からEWSフラグを検出する。タイミングカウント回路34は、TMCC信号からEWSフラグを検出した場合には、電源制御回路17に対して電力供給信号RS2を出力する。
【0058】
電源制御回路17は、タイミングカウント回路34から電力供給信号RS2を入力すると、電源18を制御し、チューナー12、A/D変換回路13、地上波デジタルテレビ復調器14に対して電力を供給する。
【0059】
これにより、アンテナ11、チューナー12を介して受信されたOFDM受信信号は、A/D変換回路13を介して地上波デジタルテレビ復調器14に入力される。そして、地上波デジタルテレビ復調器14において、FFT演算、等化処理、誤り符号訂正、MPEG復号などが行われ、緊急警報放送が復調される。そして、緊急警報放送が、モニタ15、スピーカ16から出力される。このようにして、本実施の形態の携帯電話端末10は、地上波デジタルテレビの受信機能がOFFされている状態であっても、EWSフラグを検出し、地上波デジタルテレビ受信機能を自動的にONして緊急警報放送を開始することができる。
【0060】
一方、タイミングカウント回路34は、TMCC信号からEWSフラグが検出されなかった場合には、電力供給信号RS2を出力しない。これにより、次の電力供給信号RS1の発生タイミングまで、チューナー12、A/D変換回路13、EWSフラグ復調器20への電力供給が停止される。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態においては、FFT演算を行うことなく低消費電力化を実現しつつ、4本全てのTMCC信号を復調することができる。携帯電話端末10の電源スイッチ19がONとなっている場合には、電源18からの電力は常にタイミングカウント回路34に供給されている。タイミングカウント回路34は、EWSフラグの検出タイミングをカウントし、定期的に、電力供給信号RS1を生成する。たとえば、5フレーム間隔、10フレーム間隔などをあけて電力供給信号RS1を生成し、電源制御回路17に出力する。
【0062】
電力供給信号RS1を入力した場合、EWSフラグ復調器20が受信する必要のあるOFDM信号は1フレーム以下である。上述したように、EWSフラグは、TMCCパケットの第26ビットに挿入されている。フレームの先頭から数えて26シンボル目のOFDM信号を受信することで、EWSフラグを検出することができる。したがって、電源制御回路17は、先頭から26シンボル目の信号を受信するまで電力を供給すればよいことになる。
【0063】
電源制御回路17は、電力供給信号RS1を入力すると、チューナー12、A/D変換回路13、EWSフラグ復調器20へ電力を供給する。これにより、アンテナ11、チューナー12を介して受信されたOFDM信号が、A/D変換回路13を介してEWSフラグ復調器20に入力され、EWSフラグ復調器20においてEWSフラグの検出処理が行われる。そして、EWSフラグが検出された場合には、上述したように、タイミングカウント回路34から電力供給信号RS2が生成され、地上波デジタルテレビの受信が行われるのである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施の形態に係る携帯電話端末のブロック図である。
【図2】携帯電話端末の各構成部の起動・停止タイミングを示す図である。
【図3】EWSフラグ復調器の回路ブロック図である。
【図4】TMCCパケットのパケット構成図である。
【符号の説明】
【0065】
10 携帯電話端末
12 チューナー
14 地上波デジタルテレビ復調器
17 電源制御回路
18 電源
19 スイッチ
20 EWSフラグ復調器
30 TMCC復調器
34 タイミングカウント回路
310 TMCC情報記憶部
311〜314 乗算器
321〜324 加算器
331〜334 遅延回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OFDM方式の受信信号からTMCC信号に含まれる緊急警報放送フラグを検出する緊急警報放送フラグ復調装置であって、
TMCC信号が格納されるキャリアの位相情報を記憶するTMCC情報記憶部と、
時間領域のOFDM受信信号に、TMCC信号が格納されるキャリアの位相信号を乗算する乗算器と、
前記乗算器における乗算値を1シンボル期間にわたって積算し、TMCC信号を出力する積算回路と、
前記積算回路から出力されたTMCC信号から緊急警報放送フラグを検出する検出回路と、
を備えることを特徴とする緊急警報放送フラグ復調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の緊急警報放送フラグ復調装置において、
前記TMCC情報記憶部には、N本のTMCC信号に対応したN個のキャリア位相情報が格納されており、
前記緊急警報放送フラグ復調装置は、さらに、
時間領域のOFDM信号を第1から第Nの系統に分配する分配回路、
を備え、
前記乗算器は、
第1から第Nの系統に分配されたOFDM信号に、それぞれ第1から第Nのキャリアの位相信号を乗算するN個のキャリア別乗算器、
を含み、
前記積算回路は、
N個のキャリア別乗算器の乗算値をそれぞれ1シンボル期間にわたって積算するN個のキャリア別積算回路、
を含むことを特徴とする緊急警報放送フラグ復調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の緊急警報放送フラグ復調装置において、
前記キャリア別乗算器および前記キャリア別積算回路のセットが、1セグメントのOFDM信号に含まれる4本のTMCC信号に対応して4セット用意されていることを特徴とする緊急警報放送フラグ復調装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の緊急警報放送フラグ復調装置において、さらに、
前記検出回路により緊急警告放送フラグが検出された場合、FFT演算回路を含むデジタルテレビ放送復調回路への電力供給を指示する信号を送出する指示回路、
を備えることを特徴とする緊急警報放送フラグ復調装置。
【請求項5】
OFDM方式の受信信号を復調するOFDM受信装置であって、
OFDM信号を受信するチューナーと、
FFT演算回路を含む処理ブロックによりOFDM受信信号を復調するデジタルテレビ放送復調回路と、
OFDM受信信号からTMCC信号に含まれる緊急警報放送フラグを検出する緊急警報放送フラグ復調回路と、
を備え、
前記緊急警報放送フラグ復調回路は、
TMCC信号が格納されるキャリアの位相情報を記憶するTMCC情報記憶部と、
時間領域のOFDM受信信号に、TMCC信号が格納されるキャリアの位相信号を乗算する乗算器と、
前記乗算器における乗算値を1シンボル期間にわたって積算し、TMCC信号を出力する積算回路と、
前記積算回路から出力されたTMCC信号から緊急警告放送フラグを検出する検出回路と、
前記検出回路により緊急警告放送フラグが検出された場合、前記デジタルテレビ放送復調回路への電力供給を指示する信号を送出する指示回路と、
を備えることを特徴とするOFDM受信装置。
【請求項6】
請求項5に記載のOFDM受信装置において、
前記チューナーおよび前記緊急警報放送フラグ復調回路には、所定フレーム間隔で電力が供給されることを特徴とするOFDM受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−136088(P2010−136088A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309842(P2008−309842)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】