説明

緑内障及び他の変性眼疾患を持つヒトにおける視力の喪失を治療するための物質の使用

アミノ酸配列X-Y又はY-X(式中、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外の1種以上の追加アミノ酸である)を含み、少なくとも2個のアミノ酸残基及び15個未満のアミノ酸残基を有するペプチドを使用して、ベータ-アミロイド(Aベータ)誘導体の毒性効果を遮断することにより、眼障害、特に緑内障を予防及び治療する方法。さらにまた、その上記予防及び治療を達成するための医薬組成物が特許請求される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β-アミロイド(Aβ)誘導体の毒性効果を遮断することによって眼障害、特に緑内障を予防及び治療するための方法、並びにその前記予防及び治療を達成するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は米国では二番目に多い失明の原因であることが研究によって示されている[Leske MC "The epidemiology of open-angle glaucoma: a review" Am J Epidemiology 1983; 118: 166-191]。緑内障と病理学的に相関関係にあるのは、視神経を形成する網膜神経節細胞及びそれらの軸索の進行性変性である。
【0003】
緑内障の分類には次の異なるタイプが含まれる:原発性閉塞隅角緑内障、続発性開放隅角緑内障、ステロイド誘発性緑内障、外傷性緑内障、色素散乱症候群、偽落屑症候群、続発性閉塞隅角緑内障、血管新生緑内障、ぶどう膜炎及び緑内障、並びに他の非特定(non further specified)眼病。さらにまた、加齢性黄斑変性症は、緑内障の特徴を示し、最終的には失明に至る進行性視力喪失につながる状態である。
【0004】
以前は、緑内障の定義に、正常域を上回る眼内圧(IOP)の上昇が含まれていた。しかし、明確に上昇したIOPを持つ多くの個体が緑内障を発生させず、緑内障を持つ患者の50%までが増加したIOPを持たない。
【0005】
緑内障の治療に現在利用できる医薬は、β-アドレナリン遮断薬、コリンアゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、アルファアゴニストを含むいくつかの薬理学的クラスに属する。これらは全て、IOPを低下させる機序のもとに作動する。これら既存の治療薬は、典型的には、点眼剤として投与される。緊急治療には高浸透圧剤を静脈内投与することができる。さらにまた、特殊な症例では、レーザ治療及び外科的アプローチも適用される。
【0006】
治療法とは無関係に、緑内障患者を対象とする20年間の経過観察後には、緑内障関連失明が少なくとも片眼で27%、両眼では9%に達しているだろう[Hattenhauer MG, Johnson DH, Ing HHら "The probability of blindness from open-angle glaucoma" Ophthalmology 1998;105: 2099-2104]。したがって、代替的治療戦略に関して、未だ満たされていない大きな医療ニーズがある。特に、正常化されたIOP下で進行性緑内障性損傷を持つ患者には、変性しつつある網膜神経節細胞の救出に焦点を絞った治療法が必要である。
【0007】
網膜神経節細胞の変性の原因については、機械的機序、血管機序及び興奮毒性機序など、異なる理論が存在する。ごく最近になって、β-アミロイド(Aβ)は死につつある網膜神経細胞と共局在することが見出された[McKinnon SJ."Glaucoma: Ocular Alzheimer's disease?" Front Biosci. 2003; 8: 1140-1156;Yoneda S, Hara H, Hirata A, Fukushima M, Inomata Y, Tanihara H. "Vitreous fluid levels of beta-amyloid((1-42)) and tau in patients with retinal diseases" Jpn J Ophthalmol. 2005; 49(2): 106-108]。動物研究により、特に可溶性Aβ1-42ペプチドオリゴマーは網膜神経節細胞にとって極めて強力な毒素であることが示される[Dahlgren KN, Manelli AM, Stine WB Jr, Baker LK, Krafft GA, LaDu MJ. "Oligomeric and fibrillar species of amyloid-beta peptides differentially affect neuronal viability" J Biol Chem. 2002; 277(35): 32046-32053;Guo L, Salt TE, Luong V, Wood N, Cheung W, Maass A, Ferrari G, Russo-Marie F, Sillito AM, Cheetham ME, Moss SE, Fitzke FW, Cordeiro F. "Targeting amyloid-β in glaucoma treatment" PNAS 2007; 104 (33): 13444-13449]。
【0008】
最近公表されたGuoらの研究(2007)は、Aβ凝集の阻害が網膜神経節細胞の緑内障性変性を減少させることを証明した。これらの動物実験で使用された阻害剤はコンゴレッド及びAβ抗体だった。これらの薬剤は薬理学的研究ツールに過ぎず、様々な理由から、ヒトの治療には適当でない。
【0009】
コンゴレッド(ベンジジンジアゾ-ビス-1-ナフチルアミン-4-スルホン酸のナトリウム塩)はジアゾ染料である。これは元々、繊維産業で使用されていたが、その毒性ゆえに使われなくなっている。コンゴレッドはアミロイド線維に中等度の特異性で結合し、組織病理学的染色に使用される。この物質は、その毒性ゆえに、ヒトに全身性に投与することができない。動物実験ではこの染料が眼に直接注射された。その手法の重い負担に加えて、その溶液の強烈な色が、ヒトにおける眼内適用経路の妨げになる。結果として、ヒトにおける緑内障を治療するための医薬としては、コンゴレッド調製物を提供することができない。
【0010】
Aβ抗体は比較的特異的にAβ凝集を阻止することが知られている[Bard F, Cannon C, Barbour R, Burke RL, Games D, Grajeda H, Guido T, Hu K, Huang J, Johnson-Wood K, Khan K, Kholodenko D, Lee M, Lieberburg I, Motter R, Nguyen M, Soriano F, Vasquez N, Weiss K, Welch B, Seubert P, Schenk D, Yednock T. "Peripherally administered antibodies against amyloid beta-peptide enter the central nervous system and reduce pathology in a mouse model of Alzheimer's disease" Nat Med. 2000; 6(8): 916-919]。しかし、ヒトにおける緑内障の治療に関する抗Aβ抗体の有用性は、反復投与後の効力の喪失につながる中和抗体を誘導するという、これらの生物学的製剤が持つ既知の副作用によって制限される。その他の副作用は免疫原性炎症反応の惹起及び標的器官における抗体誘発性微小出血の出現である[Vasilevko V, Cribbs DH. "Novel approaches for immunotherapeutic intervention in Alzheimer's disease" Neurochem Int. 2006; 49(2): 113-126]。そのうえ、抗体は経口利用することができず、(反復)注射を必要とする(これはしばしば皮膚刺激につながる)。最後に、工業レベルでの抗体生産はかなり複雑であり、費用がかかる。
【0011】
理論的には、β-セクレターゼ阻害剤はAβ関連神経毒性に対して有益な効果も持ちうる。しかし、ラット網膜神経節細胞で観察された効果は有意ではなく、このアプローチが緑内障においてさらに発展する見込みがあるとは思われない[Guoら 2007]。
【0012】
眼障害、特に緑内障を予防及び治療するための新規方法、並びにその前記予防及び治療を達成するための医薬組成物を提供することは、利益になるだろう。本発明が対処する当分野における他のニーズは下記において明白になるだろうし、他のさらなるニーズも当業者には明白になるだろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Leske MC 著「The epidemiology of open-angle glaucoma: a review」 Am J Epidemiology 1983; 118: 166-191
【非特許文献2】Hattenhauer MG, Johnson DH, Ing HHら「The probability of blindness from open-angle glaucoma」 Ophthalmology 1998;105: 2099-2104
【非特許文献3】McKinnon SJ.著「Glaucoma: Ocular Alzheimer's disease?」 Front Biosci. 2003; 8: 1140-1156
【非特許文献4】Yoneda S, Hara H, Hirata A, Fukushima M, Inomata Y, Tanihara H.著「Vitreous fluid levels of beta-amyloid((1-42)) and tau in patients with retinal diseases」Jpn J Ophthalmol. 2005; 49(2): 106-108
【非特許文献5】Dahlgren KN, Manelli AM, Stine WB Jr, Baker LK, Krafft GA, LaDu MJ.著「Oligomeric and fibrillar species of amyloid-beta peptides differentially affect neuronal viability」 J Biol Chem. 2002; 277(35): 32046-32053
【非特許文献6】Guo L, Salt TE, Luong V, Wood N, Cheung W, Maass A, Ferrari G, Russo-Marie F, Sillito AM, Cheetham ME, Moss SE, Fitzke FW, Cordeiro F.著「Targeting amyloid-β in glaucoma treatment」PNAS 2007; 104 (33): 13444-13449
【非特許文献7】Bard F, Cannon C, Barbour R, Burke RL, Games D, Grajeda H, Guido T, Hu K, Huang J, Johnson-Wood K, Khan K, Kholodenko D, Lee M, Lieberburg I, Motter R, Nguyen M, Soriano F, Vasquez N, Weiss K, Welch B, Seubert P, Schenk D, Yednock T.著「Peripherally administered antibodies against amyloid beta-peptide enter the central nervous system and reduce pathology in a mouse model of Alzheimer's disease」Nat Med. 2000; 6(8): 916-919
【非特許文献8】Vasilevko V, Cribbs DH.著「Novel approaches for immunotherapeutic intervention in Alzheimer's disease」Neurochem Int. 2006; 49(2): 113-126
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明者らの発明によって包含されると我々が考えるものは、なかんずく、下記の文言で要約することができる。
【0015】
β-アミロイド(Aβ)毒性に関連する視覚状態を予防及び治療するための、ヒトを含む生きている動物の治療方法であって、アミノ酸配列X-Y又はY-X(式中、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外の1種以上の追加アミノ酸である)を含み、少なくとも2個のアミノ酸残基及び15個未満のアミノ酸残基を持つペプチドの治療有効量を、前記生きている動物に投与することによって、Aβ形成及び/又は前記Aβの出現を阻害するステップを含み、それが前記状態の軽減に有効である方法。
【0016】
前記状態が原発性閉塞隅角緑内障、続発性開放隅角緑内障、広隅角緑内障、ステロイド誘発性緑内障、外傷性緑内障、色素散乱症候群、偽落屑症候群、続発性閉塞隅角緑内障、血管新生緑内障、ぶどう膜炎及び緑内障、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、変性視神経症並びに最終的には失明に至る進行性視力喪失を特徴とする眼病からなる群より選択される、上記の方法。
【0017】
前記視覚状態を治療するのに有効である少なくとも一つの追加薬剤と組み合わされた上述のペプチドの治療有効量を、前記生きている動物に同時投与するステップを含み、前記ペプチド及び前記少なくとも一つの薬剤の組合せが前記状態を治療するのに有効である、上記の方法。
【0018】
前記少なくとも一つの追加薬剤が、抗緑内障薬、抗生物質、抗炎症薬、ステロイド、抗アレルギー薬及び人工涙液を含有する、眼疾患を治療するために投与される薬物から選択される、上記の方法。
【0019】
前記少なくとも一つの追加薬剤がアセタゾラミド、ジクロフェナミド、カルテオロール、チモロール、メチプラノロール、ベタキソロール、ピンドロール、レボブノロール、ブリモニジン、クロニジン、ピロカルピン、カルバコール、ジピベフリン、アプラクロニジン、ブリンゾラミド、ドルゾラミド(dorzolaminde)、ビマトプロスト、トラバプロスト(travaprost)、ラタノプロスト、クロルテトラサイクリン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、フジシン酸(fusidinic acid)、ゲンタマイシン、カナマイシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、オキシテトラサイクリン、ナタマイシン、アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、トブラマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシン-B、アシクロビル(acaclovir)、トリフルリジン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、リメキソロン、クロモグリケート、アゼラスチン、ロドキサミド、エメダスチン、ネドクロミル、レボカバスチン、オロパタジン(olopatadinea)、ケトチフェン、ヒプロメロース、カルボマ、ヒアルロネート、カルメロース、ヒプロメロース、ポビドン、ヒエテロース(hyetellose)、ポリビニルアルコール、デクスパンテノール、テトリゾリン、トロキセルチン、トラマゾリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、フェニレフリン及びアンタゾリンから選択される、上記の方法。
【0020】
ペプチドが1日1回、1日2回又は1日3回投与される、上記の方法。
【0021】
ペプチドが慢性的に投与される、上記の方法。
【0022】
ペプチドが点眼剤、アイクリーム(eye cream)、及び眼内デポ製剤の形で投与される、上記の方法。
【0023】
ペプチドが即効型製剤又は放出調節製剤として投与される、上記の方法。
【0024】
前記ペプチド及び前記少なくとも一つの追加薬剤がコンジョイント(conjointly)に投与される、上記の方法。
【0025】
前記ペプチド及び前記少なくとも一つの追加薬剤が単一製剤として投与される、上記の方法。
【0026】
本発明のさらなる一態様は、上述のペプチド又は薬学的に許容し得るその付加塩を単独で又は1種以上の薬学的に許容し得る担体及び/若しくは賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物に関する。
【0027】
さらに、前記視覚状態を治療するのに有効である少なくとも一つの追加薬剤(この場合、前記ペプチドと前記少なくとも一つの追加薬剤との組合せは、前記状態を治療するのに有効である)又は薬学的に許容し得るその付加塩を、単独で又は1種以上の薬学的に許容し得る担体及び/若しくは賦形剤と組み合わせて含む、上記の医薬組成物。
【0028】
本発明のさらなる一態様は、β-アミロイド(Aβ)毒性に関連する視覚状態の予防及び治療を目的とする医薬を製造するための、アミノ酸配列X-Y又はY-X(式中、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外の1種以上の追加アミノ酸である)を含み、少なくとも2個のアミノ酸残基及び15個未満のアミノ酸残基を持つペプチドの使用に関する。
【0029】
前記状態が原発性閉塞隅角緑内障、続発性開放隅角緑内障、広隅角緑内障、ステロイド誘発性緑内障、外傷性緑内障、色素散乱症候群、偽落屑症候群、続発性閉塞隅角緑内障、血管新生緑内障、ぶどう膜炎及び緑内障、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、変性視神経症並びに最終的には失明に至る進行性視力喪失を特徴とする眼病からなる群より選択されることを特徴とする、上記の使用。
【0030】
前記医薬が上記視覚状態を治療するのに有効である少なくとも一つの追加薬剤と組み合わされた上記のペプチドを含むことを特徴とし、さらに、前記追加薬剤が抗緑内障薬、抗生物質、抗炎症薬、ステロイド、抗アレルギー薬及び人工涙液から選択されることも特徴とする、上記の使用。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、視覚障害に対する従来の治療法の限界に対処し、緑内障及び他の変性眼障害を持つヒトにおける視力喪失を効果的に治療するための薬学的に許容し得る治療法を提供する。基礎をなす機序は、Aβ化学種の毒性効果を遮断することによる網膜神経節細胞の喪失の予防又は逆転である。
【0032】
本治療法に関して記述する代表的物質は、最初は、アミロイド原線維の形成を特徴とする疾患、例えばII型糖尿病及びプリオン病[Porat Y, Mazor Y, Efrat S, Gazit E. "Inhibition of islet amyloid polypeptide fibril formation: A potential role for heteroaromatic interactions" Biochemistry 2004; 43:14454-14462]、並びにアルツハイマー認知症を含む脳の変性疾患[GAZIT, E., 米国出願公開番号US2006/0234947 A1]を治療するために設計された。より具体的に述べると、Gazitは、短鎖ペプチド(おそらくはアミノイソ酪酸などの修飾アミノ酸を含むもの)が、分子認識プロセス及びアミロイド原線維自己集合と相互作用することによる毒性Aβ化学種形成の破壊に利用できることを開示している[Gazit, 2006]。本発明で、我々は、これらの物質が脳とは異なるもう一つの器官、すなわち眼において治療効果を示すことを決定した。本発明による使用に関して記述する物質は、緑内障の動物モデルにおける網膜神経節細胞喪失の予防及び治療に治療効果を示す。既知薬剤であるコンゴレッド及びAβ抗体と比較して、本発明の物質は次に挙げる利点を持つ:
・これらは、高い費用効果で大規模に生産することができる小分子である。
・これらは、患者に、容易に経口投与(例えば錠剤又はカプセル剤として)又は局所投与(例えば点眼剤、アイクリーム、眼内デポ)することができる。
・注射は必要ない。
・これらは、継続的長期適用下でさえ、認容性が高い。
・これらは、1日1〜3回の摂取レジメンを可能にする単純な薬物動態特性を持つ。
・これらは、網膜中のAβ化学種に対して高いアフィニティ及び特異性を示す。
・これらは二重の作用機序を持ちうる。すなわちこれらは、βシート破壊剤及びオリゴマー化阻害剤として作用して、顕著な治療効果をもたらす。これらは他の治療、例えば今までに使われたIOP降下性緑内障薬などと組み合わせることができ、他の潜在的なAβ指向的及び保護的治療とも組み合わせることができる。
【0033】
これらの物質の投与を含む方法は、あらゆるタイプの眼障害、例えば上述のような全ての形態の緑内障、及び色素散乱症候群、偽落屑症候群、続発性閉塞隅角緑内障、血管新生緑内障、ぶどう膜炎、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、変性視神経症、及び最終的には失明に至る進行性視力喪失を特徴とする当業者に知られる他の眼病を持つ患者の治療に応用される。上記の状態では、共通して、網膜又は視神経の変性プロセスに関係する進行性の視力低下が起こる。治療は、予防方法としての極初期段階を含めて、疾患進行の全ての段階で可能である。臨床効果は二重、すなわち第1に、既に緑内障性変性を患っている患者における視力の急性改善、第2に、進行性視力悪化の減速又は停止でありうる。緑内障に関係する片眼又は両眼の失明を経験した患者でさえ、ある程度は視力を取り戻しうる。
【0034】
本方法は、場合によっては、最善の治療成果を得るために、これらの物質を含有する調製物を継続的に投与することを含む。基礎疾患治療のタイプ及び段階に応じて、数日〜数ヶ月の周期が考えられる。一定の条件下では継続的長期治療も考えられる。
【0035】
本方法は、場合によっては、眼障害の治療に有効であることが当分野において知られている少なくとも一つの追加薬剤を投与することを含む。これらの追加薬剤は、上述したものを含む抗緑内障薬、抗生物質、ウイルス抑制剤(virostatics)、ステロイド、抗アレルギー薬、人工涙、並びに局所的及び全身的眼治療に使用される他の薬という一般クラスから選択することができる。代表的な抗緑内障薬には、アセタゾラミド、ジクロフェナミド、カルテオロール、チモロール、メチプラノロール、ベタキソロール、ピンドロール、レボブノロール、ブリモニジン、クロニジン、ピロカルピン、カルバコール、ジピベフリン、アプラクロニジン、ブリンゾラミド、ドルゾラミド、ビマトプロスト、トラバプロスト、及びラタノプロストが含まれる。眼感染症に使用される代表的な抗生物質は、クロルテトラサイクリン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、フジシン酸、ゲンタマイシン、カナマイシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、オキシテトラサイクリン、ナタマイシン、アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、トブラマイシン、エリスロマイシン、及びポリミキシン-Bである。代表的なウイルス抑制剤には、アシクロビル及びトリフルリジンが含まれる。代表的なステロイドには、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、及びリメキソロンが含まれる。代表的な抗アレルギー薬には、クロモグリケート、アゼラスチン、ロドキサミド、エメダスチン、ネドクロミル、レボカバスチン、オロパタジン及びケトチフェンが含まれる。代表的な人工涙には、ヒプロメロース、カルボマ、ヒアルロネート、カルメロース、ヒプロメロース、ポビドン、ヒエテロース、ポリビニルアルコール、及びデクスパンテノールが含まれる。他の代表的な、よく使用される眼治療薬は、テトリゾリン、トロキセルチン、トラマゾリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、フェニレフリン、アンタゾリンである。
【0036】
米国出願公開番号US2006/0234947 A1に記載されている下記のペプチドは本発明の方法において活性な物質の代表例である。D-Phe-D-Phe-D-Pro(配列番号1)、Aib-D-Phe-D-Asn-Aib(配列番号2)、D-Phe-D-Asn-D-Pro(配列番号3)、Aib-Asn-Phe-Aib(配列番号4)、Gln-Lys-Leu-Val-Phe-Phe(配列番号5)、Tyr-Tyr(配列番号6)、D-Phe-D-Phe-D-Pro(配列番号7)、Aib-D-Phe-D-Asn-Aib(配列番号8)、Aib-Asn-Phe-Aib(配列番号9)、Tyr-Tyr(配列番号10)、Tyr-Tyr-NH2(配列番号11)、Aib-Phe-Phe(配列番号12)、Asn-Tyr-Aib(配列番号13)、Asn-Tyr-Pro(配列番号14)、β-アミノイソ酪酸(Aib)-D-Pro-D-Tyr-D-Asn(配列番号15)、D-Tyr-Aib(配列番号16)、D-Pro-D-Tyr(配列番号17)、D-Tyr-D-Pro(配列番号18)、Asn-Tyr-Tyr-Pro(配列番号19)、Tyr-Tyr-Aib(配列番号20)、Aib-Tyr-Tyr(配列番号21)、Aib-Tyr-Tyr-Aib(配列番号22)、D-Asn-Tyr-Tyr-D-Pro(配列番号23)、Pro-Tyr-Tyr(配列番号24)、Tyr-Tyr-Pro(配列番号25)、Pro-Tyr-Tyr-Pro(配列番号26)、D-Tyr-D-Tyr(配列番号27)、D-Pro-Aib(配列番号28)、D-Phe-D-Pro(配列番号29)、D-Trp-Aib(配列番号30)、D-Trp-D-Pro(配列番号31)、D-Phe-Pro(配列番号32)、及びPro-D-Phe(配列番号33)。別段の注記がない限り、残基Aibはαアミノイソ酪酸を意味すると解される。
【0037】
記載の物質が本質的に単なる代表例に過ぎないこと、及び代替物質が薬学分野の当業者に知られていることは、当業者には明白になるだろう。
【0038】
「類似体」又は「誘導体」という用語は、本明細書においては、従来の薬学的意味で、本方法の活性物質(例えばD-Trp-Aib)に構造上似ているが、基準分子の1種以上の特定置換基を代替置換基で置き換えることによって基準分子に構造的に類似する分子が生じるように、標的を絞った制御された方法で修飾されている分子を指すために用いられる。改良された特質又は偏った特質(例えば、特定の標的受容体タイプにおける、より高い力価及び/又は選択性、哺乳動物の血液脳関門を通り抜ける、より高い能力、より少ない副作用など)を持ちうる、既知化合物のわずかに修飾された異形を同定するために行われる、類似体の合成及びスクリーニング(例えば構造解析及び/又は生化学的解析を使用するもの)は、薬化学において周知のドラッグデザインアプローチである。
【0039】
さらにまた、当業者に知られている方法を使って、β-アミロイド(Aβ)毒性の制御に改良された治療効力(すなわち、特定の標的受容体タイプにおける、より高い力価及び/又は選択性、哺乳動物の血液脳関門を通り抜ける、より高い又はより低い能力(例えばより高い又はより低い血液脳関門透過率)、より少ない副作用など)を持つ本発明の物質の類似体及び誘導体を作り出すこともできる。
【0040】
本発明の物質は、その高度な活性及びその低い毒性(これらが相まって最も好ましい治療係数を提示する)ゆえに、それを必要とする対象、例えば生きている動物(ヒトを含む)の体に、その動物が陥りやすい適応症若しくは状態の、又は代表例として本願のどこかに記載する適応症又は状態の、治療、軽減、又は改善、一時的緩和、若しくは除去を目的として、好ましくは1種以上の薬学的に許容し得る賦形剤、担体、又は希釈剤と並行して、同時に、又は一緒に、特に、そして好ましくは、その医薬組成物の形態で、経口経路、直腸経路、若しくは非経口経路(静脈内、眼内、及び皮下を含む)、さらには場合により局所外用経路(点眼剤、アイクリーム、及び眼内デポ製剤を含む)のいずれであろうと、有効量で、投与することができる。適切な投薬量範囲としては、通常どおり、厳密な投与様式、投与時の剤形、その投与も目的である適応症、関与する対象及び関与する対象の体重、並びに担当する医師又は獣医師の好み及び経験に応じて、1日あたり1〜1000ミリグラム、或いは1日あたり10〜500ミリグラム、場合によっては1日あたり50〜500ミリグラムが挙げられる。
【0041】
用量又は量に適用される「治療(的に)有効」という用語は、それを必要とする生きている動物体(人体を含む)への投与後に所望の活性をもたらすのに十分な、物質又は医薬組成物の分量を指す。本明細書で使用する用語「治療する」は、対象における疾患の少なくとも一つの症状を緩和又は軽減することを意味するものとする。本発明に関して、用語「治療する」は、発症を抑え、遅らせ(すなわち疾患の臨床症状発現前の期間)、及び/又は疾患を発生若しくは悪化させるリスクを低減することも表す。
【0042】
本発明の組成物との関連で使用される「薬学的に許容し得る」という表現は、哺乳動物(例えばヒト)に投与された場合に生理学的に認容でき、不都合な反応を典型的には生じない、それら組成物の分子的実体及び他の成分を指す。「薬学的に許容し得る」という用語は、哺乳動物(より具体的にはヒト)における使用に関して、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって承認されていること、又は米国薬局方若しくは他の広く認識されている薬局方に記載されていることも意味しうる。
【0043】
本発明の物質は薬学的に許容し得る塩の形態をとりうる。「薬学的に許容し得る塩」とは、親化合物の生物学的な有効性及び特性を有し、生物学的にもその他の面でも望ましくない点がない塩を指す。塩又は異性体の性質は、それが無毒性であり、所望の薬理学的活性を実質的に妨害しない限り、決定的な問題ではない。
【0044】
本発明の医薬組成物に適用される「担体」という用語は、活性物質(例えばD-Trp-Aib)と一緒に投与される希釈剤、賦形剤、又は溶剤を指す。そのような医薬担体は滅菌された液体、例えば水、食塩溶液、デキストロース水溶液、グリセロール水溶液、及び油(石油、動物、植物又は合成由来のもの、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などを含む)であることができる。適切な医薬担体はA.R. Gennaro「Remington's Pharmaceutical Sciences」(第20版)に記載されている。
【0045】
「約」又は「およそ」という用語は、通常、与えられた値又は範囲の20%以内、或いは10%以内(5%以内を含む)を意味する。或いは、とりわけ生物系においては、「約」という用語は、与えられた値の約1log(すなわち一桁)以内(2分の1から2倍までを含む)を意味する。
【0046】
本発明の方法と併せて、治療有効量の活性物質を含む医薬組成物も提供される。本発明の組成物は担体又は賦形剤(全て薬学的に許容し得るもの)をさらに含みうる。本組成物は1日1回投与用、1日2回投与用、又は1日3回投与用に製剤することができる。さらにまた、3〜12ヶ月という適用間隔を可能にする眼内植込み用のデポ製剤も考えられる。
【0047】
本発明によれば、活性物質の剤形は、下記の固形、半固形、又は液状製剤であることができる。
【0048】
本発明の活性物質は、従来の薬学的に許容し得る無毒性の担体を含有する投薬単位製剤として、経口、局所外用、非経口、又は粘膜(例えば口腔粘膜、吸引、又は直腸)投与することができる。小児対象に投与するためのもう一つの実施形態では、活性物質をフレーバ付の液体(例えばペパーミントフレーバ)として製剤することができる。活性物質は、カプセル剤、錠剤などの形態、又は半固形製剤、若しくは液状製剤として、経口投与することができる(A.R. Gennaro「Remington's Pharmaceutical Sciences」(第20版)参照)。
【0049】
錠剤又はカプセル剤の形態で経口投与するには、活性物質を、無毒性の薬学的に許容し得る賦形剤、例えば結合剤(例:アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えばラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール並びに他の還元糖及び非還元糖、微結晶セルロース、硫酸カルシウム、又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、又はシリカ、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸カルシウムなど);崩壊剤(例えばバレイショデンプン又はグリコール酸デンプンナトリウム);又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、着色及び着香剤、ゼラチン、甘味剤、天然及び合成ゴム(例えばアラビアゴム、トラガカント又はアルギナート)、緩衝塩、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウなどと混合することができる。
【0050】
錠剤は、例えばアラビアゴム、ゼラチン、滑石、二酸化チタンなどを含有しうる濃縮糖溶液でコーティングすることができる。或いは、易揮発性の有機溶媒又は有機溶媒混合物に溶解するポリマーで錠剤をコーティングすることができる。特定の実施形態では、活性物質が即効型(IR)又は放出調節(MR)錠剤に製剤される。即効型固形剤形は、短期間、例えば60分以下での、活性成分の大半又は全ての放出を許し、薬の迅速な吸収を可能にする。放出調節固形経口剤形は、長期間にわたって治療有効血漿レベルを維持し、及び/又は活性成分の他の薬物動態特性を修飾するために、同じように長期間にわたる活性成分の徐放を可能にする。
【0051】
軟ゼラチンカプセル剤を製剤するには、活性物質を、例えば植物油又はポリエチレングリコールと混合することができる。硬ゼラチンカプセル剤は、上述した錠剤用の賦形剤、例えばラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン(例えばバレイショデンプン、トウモロコシデンプン又はアミロペクチン)、セルロース誘導体又はゼラチンのいずれかを使った活性物質の顆粒を含有しうる。液状又は半固形の薬も硬ゼラチンカプセルに充填することができる。
【0052】
本発明の組成物は、ミクロスフェア又はマイクロカプセル(例えばポリグリコール酸/乳酸(PGLA)から製作されるもの)に導入することもできる(例えば米国特許第5,814,344号、同第5,100,669号及び同第4,849,222号、PCT公開番号WO 95/11010及びWO 93/07861を参照されたい)。活性物質の放出制御を達成するには生体適合性ポリマーを使用することができ、これには、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマーが含まれる。
【0053】
半固形又は液状の活性物質の製剤も使用することができる。物質は、製剤の0.1〜99重量%、より具体的に述べると、注射用の製剤の場合は0.5〜20重量%、経口投与に適した製剤の場合は0.2〜50重量%を構成しうる。
【0054】
本発明のある実施形態では、活性物質が放出調節製剤として投与される。放出調節剤形は、服薬遵守を改善する手段になり、薬の有害反応の発生を減少させることによって効果的及び安全な治療を保証する手段になる。即効型剤形と比較して、放出調節剤形は、投与後の薬理作用を引き延ばすために使用することができると共に、投薬間隔全体にわたる血漿中濃度の変動性を低減することによって、急激なピークを排除又は低減するために使用することができる。
【0055】
放出調節剤形は活性物質でコーティングされたコア又は活性物質を含有するコアを含みうる。次に、コア部は放出調節ポリマーでコーティングされ、そのポリマー中に薬が分散される。放出調節ポリマーは徐々に崩壊して、時間の経過と共に活性物質を放出する。このようにして、組成物が水性環境、すなわち消化管にばく露された時の、コーティング層を横切る活性物質の拡散を、組成物の最外層が効果的に減速し、その結果として調節する。活性物質の正味の拡散速度は、主として、コーティング層又はコーティングマトリックスを通り抜ける胃液の能力及び活性物質自体の溶解性に依存する。
【0056】
本発明のもう一つの実施形態では、活性物質が、経口液状製剤に製剤される。経口投与用の液状調製物は、例えば溶液剤、シロップ剤、乳剤又は懸濁剤の形態をとるか、又は使用前に水若しくは他の適切な溶剤で再構成するための乾燥品として提示することができる。経口投与用の調製物は、活性化合物の放出制御又は放出延期が起こるように、適切に製剤することができる。
【0057】
液状での経口投与には、活性物質を、無毒性の薬学的に許容し得る不活性担体(例えばエタノール、グリセロール、水)、懸濁剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化食用脂)、乳化剤(例えばレシチン又はアラビアゴム)、非水性溶剤(例えばアーモンド油、油状エステル、エチルアルコール又は分画植物油)、保存剤(例えばメチル若しくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)などと混合することができる。剤形を安定化するために、酸化防止剤(BHA、BHT、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸)などの安定剤を加えてもよい。例えば、溶液剤は約0.2重量%〜約20重量%の活性物質を含有し、残りは糖並びにエタノール、水、グリセロール及びプロピレングリコールの混合物とすることができる。場合によっては、そのような液状製剤が、着色剤、着香剤、サッカリン、及び増粘剤としてのカルボキシメチル-セルロース、又は他の賦形剤を含有してもよい。
【0058】
もう一つの実施形態では、治療有効量の活性物質が、保存剤、甘味剤、可溶化剤、及び溶媒を含有する経口溶液剤として投与される。経口溶液剤は、1種以上の緩衝剤、着香剤、又は追加の賦形剤を含みうる。さらなる一実施形態では、ペパーミント又は他の香料が、活性物質の経口液状製剤に加えられる。
【0059】
吸入による投与には、活性物質を、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切な気体を使って、加圧容器又は噴霧器からのエアロゾル散布提示の形態で、便利に送達することができる。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計測された量を送達するためのバルブを設けることによって決定することができる。化合物とラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有する、吸入器用又はインサフレータ用の、例えばゼラチン製のカプセル及びカートリッジを製剤することができる。
【0060】
注射による非経口適用のための溶液剤は、活性物質の薬学的に許容し得る水溶性塩の水溶液(好ましくは濃度が約0.5重量%〜約10重量%であるもの)の形で製造することができる。これらの溶液剤は、安定剤及び/又は緩衝剤を含有してもよく、さまざまな投薬単位アンプルに入れて、便利に提供することができる。
【0061】
本発明の製剤は、非経口的に、すなわち眼内、静脈内(i.v.)、脳室内(i.c.v.)、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、真皮下(s.d.)、又は皮内(i.d.)投与により、例えばボーラス注射又は持続注入による直接注射で、送達することができる。注射用製剤は、保存剤を添加して、単位剤形で、例えばアンプル又は多用量容器に入れて、提示することができる。或いは、活性成分は、使用前に適切な溶剤、例えば滅菌パイロジェンフリー水で再構成するための粉末状であってもよい。
【0062】
本発明は、活性物質と、場合によっては、その他の製剤成分とを含有する1種以上の容器を含む、医薬パック又は医薬キットも提供する。ある特定の実施形態では、活性物質が、2ティスプーン容量(teaspoon capacity)のシリンジ(dosage KORC(登録商標))を使って投与するための経口溶液剤(2mg/ml)として提供される。各経口シリンジは計量用のハッチマークを持ち、シリンジの右側(先端を下にした場合)にtsp単位を表す線、左側にml単位を表す線が引かれている。
【0063】
至適治療有効量は、薬を投与する際の厳密な投与様式、その投与の目的である適応症、関与する対象(例えば体重、健康状態、年齢、性別など)、並びに担当する医師又は獣医師の好み及び経験を考慮して、実験的に決定することができる。
【0064】
直腸適用のための投薬単位は溶液剤又は懸濁剤であるか、中性脂肪基剤と混合された本発明の物質を含む坐剤若しくは停留浣腸剤、又は植物油若しくはパラフィン油と混合された活性物質を含むゼラチン直腸カプセル剤であることができる。
【0065】
本発明の組成物の毒性及び治療効力は、実験動物における標準的な薬学的手法で、例えばLD50(集団の50%にとって致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定することなどによって、決定することができる。治療効果と毒性効果の間の用量比が治療係数であり、これはLD50/ED50比として表すことができる。大きい治療係数を示す組成物は好ましい。
【0066】
ヒトの治療的治療における本発明の活性物質の適切な1日量は、経口投与では約0.01〜10mg/kg体重、非経口投与では0.001〜10mg/kg体重である。
【0067】
治療の継続期間は、さらなる投与はもはや必要ないと担当医がみなすまで、短期間、例えば数週間(例えば8〜14週間)であってもよいし、長期間であってもよい。
【0068】
本発明の活性物質は、単剤療法として投与するか、β-アミロイド(Aβ)毒性に関連する視覚状態の治療、より具体的に述べると緑内障の治療に処方されるもう一つの物質と組み合わせて投与することができる。
【0069】
活性物質に適用される「組合せ」という用語は、本明細書においては、二つの活性物質を含む単一の医薬組成物(製剤)(例えば活性物質と、β-アミロイド(Aβ)毒性に関連する視覚状態の治療、より具体的に述べると緑内障の治療に処方されるもう一つの物質とを含む医薬組成物)を定義するか、それぞれが一つの活性物質を含む二つの別個の医薬組成物(例えば本発明の活性物質又はβ-アミロイド(Aβ)毒性に関連する視覚状態の治療、より具体的に述べると緑内障の治療に処方されるもう一つの物質を含む医薬組成物)であって、コンジョイントに投与されるものを定義するために用いられる。
【0070】
本発明に関して、「コンジョイント投与(conjoint administration)」という用語は、本明細書に記載する活性物質と、第2の活性物質(例えばβ-アミロイド(Aβ)毒性に関連する視覚状態の治療、より具体的に述べると緑内障の治療に処方されるもう一つの物質)とを、一つの組成物として同時に投与すること、又は異なる組成物として同時に投与すること、又は逐次的に投与することを指すために用いられる。ただし、逐次的投与が「コンジョイント」であるとみなされるには、本明細書の記載する活性物質と、第2の活性物質とが、哺乳動物におけるβ-アミロイド(Aβ)毒性に関連する視覚状態の治療にとって有益な効果がまだ生じうるような時間間隔で投与されなければならない。
【0071】
本発明の対象物質(Experimental substance)は緑内障の治療に役立ちうるだけでなく、加齢性及び/又はアルツハイマー病性のRGC機能障害の治療にも役立ちうる。というのは、後者の状態についても、Aβの役割が示唆されているからである。そのうえ、緑内障に現在使用されている眼内圧降下剤並びに提案されている将来の治療薬、例えば酸化防止剤、カルシウムチャネル遮断薬、NOシンターゼ阻害剤、ニューロトロフィン類及び抗アポトーシス剤などとの併用治療には、かなりの可能性で相乗的治療効果を期待することができる。
【0072】
本発明は、本発明の方法における物質に関して、新規で、価値のある、驚くべき応用及び使用、並びにその新規医薬組成物(これらは、本明細書に記載する特徴及び/又は利点の少なくとも一つを有する)を提供する。
【0073】
生きている動物体を、その動物体における選択された疾病の進行を阻害し又は軽減するために、本発明の物質で治療する方法は、先に述べたように、通常許容される任意の薬学的経路により、軽減することが望まれるその疾病の軽減に有効である選択された投薬量を使って行われる。
【0074】
選択された疾病又は状態、特にβ-アミロイド(Aβ)毒性に関連する視覚状態などの疾病又は状態の進行阻害又は軽減を目的とする、生きている動物を治療するための医薬の製造における、本発明の物質の使用は、有効量の本発明の化合物を薬学的に許容し得る希釈剤、賦形剤、又は担体と混合するステップ、並びに治療方法、医薬組成物、及び医薬の製造における本発明の化合物の使用を含む、通常の方法で行われる。
【0075】
活性物質を適切な薬学的に許容し得る賦形剤、希釈剤、又は担体と混合することによって製造される代表的医薬組成物には、錠剤、カプセル剤、注射用溶液剤、液状経口製剤、エアロゾル製剤、TDS製剤、及びナノ粒子製剤などがあり、こうして、同様に上記に従って経口使用、注射使用、又は局所外用するための医薬が製造される。
【0076】
薬理学-要約
本発明の活性物質を使用する方法、及びその医薬組成物は、ユニークで有利かつ予測不可能な特性を特徴とし、それらの特性が、特許請求の範囲に記載する「発明を全体として(subject matter as a whole)」非自明にしている。それゆえに、これらの方法及び医薬組成物は、標準的な、一般に認められている、信頼できる試験手法で、下記の価値ある特性及び特徴を示した。
【0077】
方法
緑内障の実験モデルでは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の発現量の増加が起こり、おそらくそれに関係すると思われるアポトーシスが網膜神経節細胞(RGC)で起こる[McKinnon, S.J.;Lehman, D.M.;Kerrigan-Baumrind, L.A.;Merges, C.A.;Pease, M.E.;Kerrigan, D.F.;Ransom, N.L.;Tahzib, N.G.;Reitsamer, H.A.;Levkovitch-Verbin, H.;Quigley, H.A.及びZack, D.J. "Caspase activation and amyloid precursor protein cleavage in rat ocular hypetension" Invest Ophthalmol Vis Sci. 2002 Apr; 43(4):1077-87]。さらにまた、Aβ1-42の注射はRGCにおけるアポトーシスを誘発する。例えば抗体の眼適用、β-セクレターゼ活性の阻害又はオリゴマー化阻害などといったAPP-Aβ経路の妨害は、眼圧の上昇に起因する緑内障におけるRGCアポトーシスを、少なくとも一時的には防止する(Guoら, 2007)。したがって、二重の作用機序、すなわちβシート破壊活性及びオリゴマー化阻害を示す本発明の物質は(特に、眼圧上昇の誘発時だけでなく、その後も投与されるのであれば)より一層効果的であるだろうと思われる。
【0078】
実験手法
例えば、雄Dark Agutiラットモデルにおいて、片眼の強膜上静脈中に高張食塩水を注射して眼圧上昇(慢性高眼圧:OHT)を誘発することによって緑内障を生じさせ、反対眼を対照として使用する[Morrison J.C., Moore C.G., Deppmeier L.M., Gold B.G., Meshul C.K., Johnson E.C. "A rat model of chronic pressure-induced optic nerve damage" Exp Eye Res. 1997; 64(1):85-96]。治療群(1群あたりN=4〜8)では、さまざまな用量の本発明の物質を、緑内障誘発の時点で硝子体内注射(液量5μl)し、いくつかの群では、以後7日間、投与を継続して、そのような延長治療が効力の増大をもたらすかどうかを見る。慢性高眼圧(OHT)誘発の3週間後及び6週間後におけるRGCアポトーシスの程度を、動的共焦点走査型レーザ検眼鏡検査及び蛍光標識アネキシンVにより、各動物において査定する。3週間後及び6週間後に動物を屠殺し、それらの眼を摘出し、4%パラホルムアルデヒド中で終夜固定する。その後、網膜を分離して、アポトーシスに関係する変化、例えばFITCアネキシンVキット(BD Biosciences、米国フランクリンレイクス)[Cordeiro, M.F., Guo, L., Luong, V., Harding, G., Wang, W., Jones, H.E., Moss, S.E., Sillito, A.M.及びFitzke, F.W. 2004 "Real-time imaging of single nerve cell apoptosis in retinal neurodegeneration" Proc Natl Acad Sci USA, 101, 13352-6;Kietselaer, B.L., Hofstra, L., Dumont, E.A., Reutelingsperger, C.P.及びHeidendal, G.A. 2003 "The role of labeled Annexin A5 in imaging of programmed cell death. From animal to clinical imaging" Q J Nucl Med, 47, 349-61]又はTUNEL(dUTPニック末端標識法)[Roche、インサイチュー細胞死検出キット、フルオレセイン標識][Szydlowska K., Kaminska B., Baude A., Parsons C.G., Danysz W. 2007 "Neuroprotective activity of selective mGlu1 and mGlu5 antagonists in vitro and in vivo" Eur. J. Pharmacol. 554, 18-29]で可視化されるものを査定する。本発明の実験物質で治療された動物では、査定を行った時点の少なくとも一方において、RGCアポトーシスの減少が起こる。
【0079】
さらにもう一つの実験では、ラットを全身的に(p.o.又はi.p.)治療し、上記のように実験を繰り返す。この研究の目的は、全身性投与が眼内で十分に高い濃度をもたらしたかどうかを確認することである。したがって、上記に加えて、眼の硝子体腔における本発明の物質の濃度を分析する。実験物質で全身性に治療された動物では、査定を行った時点の少なくとも一方で、RGCアポトーシスの減少が起こり、有意な濃度の実験物質が眼の硝子体腔に検出される。
【0080】
さらにまた、RGC細胞の毒性に対する実験物質の効果をインビトロで確認する。β-アミロイド1-42を、実験物質(300、100、30、10、3、1、0.3μM)又は対照と共に、7日間、プレ凝集させた後、その溶液の一部を初代RGC培養に48時間加えて、最終濃度を15μMにする。このインキュベーション中は、細胞を37℃、湿度95%及び5%CO2の培養器中に維持する。その後、FITCアネキシンVキット(BD Biosciences、米国フランクリンレイクス)[Vermes, I., Haanen, C., Steffens-Nakken, H.及びReutelingsperger, C. (1995) "A novel assay for apoptosis. Flow cytometric detection of phosphatidylserine expression on early apoptotic cells using fluorescein labelled Annexin V" J Immunol Methods, 184, 39-51]及び場合によってはヨウ化プロピジウム[Szydlowskaら, 2007]を使って、アポトーシス/壊死を確認する。
【0081】
統計解析は一元配置ANOVAに続いて事後検定を使用することによって行う(SigmaStat、Systat Software、米国ポイントリッチモンド)。
【0082】
これらのデータは、本発明の実験物質が緑内障の治療に役立ちうると共に、加齢性及び/又はアルツハイマー病性のRGC機能障害の治療にも役立ちうることを強く示唆する。というのは、後者の状態についても、Aβの役割が示唆されているからである[Guoら, 2007;Parisi, V., Restuccia, R., Fattapposta, F., Mina, C., Bucci, M.G.及びPierelli, F. (2001) "Morphological and functional retinal impairment in Alzheimer's disease patients" Clin Neurophysiol, 112, 1860-7;Iseri, P.K., Altinas, O., Tokay, T.及びYuksel, N. (2006) "Relationship between cognitive impairment and retinal morphological and visual functional abnormalities in Alzheimer's disease" J Neuroophthalmol, 26, 18-24]。そのうえ、緑内障に現在使用されている眼内圧降下剤並びに提案されている将来の治療薬、例えば酸化防止剤、カルシウムチャネル遮断薬、NOシンターゼ阻害剤、ニューロトロフィン類及び抗アポトーシス剤などとの併用治療には、かなりの可能性で相乗的治療効果を期待することができる[Hartwick A.T. 2001. "Beyond intraocular pressure: neuroprotective strategies for future glaucoma therapy" Optom Vis Sci 78, 85-94.]。
【0083】
結論
結論として、本発明が、本発明の方法における物質に関して、新規で、価値のある、驚くべき応用及び使用、並びにその新規医薬組成物(これらは全て、上に具体的に列挙した特徴及び/又は利点を有する)を提供することは、上記から明らかである。
【0084】
報告した試験によって証明される、本発明の活性物質及びその組成物を使用するための上記方法の、高水準な活性は、有用性を指し示している。ただし、ヒトでの臨床評価はまだ完了していない。ヒトでの使用を目的とする、本発明の範囲に包含される任意の物質又は組成物の流通及びマーケティングは、もちろん、そのような問題を担当しそのような問題に関する判定を下す権限が与えられた米国連邦食品医薬局などの政府機関による事前承認に基づく必要があるだろう。
【0085】
選択された疾病の進行阻害又は軽減を目的とする、本発明の物質による生きている動物体の治療方法は、先に述べたように、通常許容される任意の薬学的経路により、軽減することが望まれるその疾病の軽減に有効である選択された投薬量を使って行われる。
【0086】
選択された疾病又は状態、特にβ-アミロイド(Aβ)毒性に関連する視覚状態などの疾病又は状態の進行阻害又は軽減を目的とする、生きている動物を治療するための医薬の製造における、本発明の物質の使用は、有効量の本発明の化合物を薬学的に許容し得る希釈剤、賦形剤、又は担体と混合するステップ、並びに治療方法、医薬組成物、及び医薬の製造における本発明の化合物の使用を含む、通常の方法で行われる。
【0087】
活性物質を適切な薬学的に許容し得る賦形剤、希釈剤、又は担体と混合することによって製造される代表的医薬組成物には、錠剤、カプセル剤、注射用溶液剤、液状経口製剤、エアロゾル製剤、TDS製剤、及びナノ粒子製剤などがあり、こうして、同様に上記に従って経口使用、注射使用、又は局所外用するための医薬が製造される。
【0088】
本発明は、本明細書に記載する特定の実施形態によってその範囲を限定されるものではない。実際、上述の説明から当業者には、本明細書に記載する実施形態の他に、本発明のさまざまな変更実施形態が明白になるだろう。
【0089】
本明細書で言及する特許、特許出願、刊行物、検査方法、文献、及び他の材料は全て、参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-アミロイド(Aβ)毒性に関連する視覚状態の予防及び治療(ここではAβ形成及び/又は前記Aβの出現が阻害される)を目的とする医薬を製造するための、アミノ酸配列X-Y又はY-X(式中、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外の1種以上の追加アミノ酸である)を含み、少なくとも2個のアミノ酸残基及び15個未満のアミノ酸残基を持つペプチドの使用。
【請求項2】
前記状態が原発性閉塞隅角緑内障、続発性開放隅角緑内障、広隅角緑内障、ステロイド誘発性緑内障、外傷性緑内障、色素散乱症候群、偽落屑症候群、続発性閉塞隅角緑内障、血管新生緑内障、ぶどう膜炎及び緑内障、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、変性視神経症並びに最終的には失明に至る進行性視力喪失を特徴とする眼病からなる群より選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記視覚状態を治療するのに有効である少なくとも一つの追加薬剤と組み合わされた請求項1のペプチド(請求項1のペプチドと前記少なくとも一つの追加薬剤との組合せは前記状態を治療するのに有効である)の使用。
【請求項4】
前記少なくとも一つの追加薬剤が眼疾患を治療するために投与される薬物であり、抗緑内障薬、抗生物質、抗炎症薬、ステロイド、抗アレルギー薬及び人工涙液から選択される少なくとも一つの薬剤を含有する、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記少なくとも一つの追加薬剤がアセタゾラミド、ジクロフェナミド、カルテオロール、チモロール、メチプラノロール、ベタキソロール、ピンドロール、レボブノロール、ブリモニジン、クロニジン、ピロカルピン、カルバコール、ジピベフリン、アプラクロニジン、ブリンゾラミド、ドルゾラミド(dorzolaminde)、ビマトプロスト、トラバプロスト(travaprost)、ラタノプロスト、クロルテトラサイクリン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、フジシン酸(fusidinic acid)、ゲンタマイシン、カナマイシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、オキシテトラサイクリン、ナタマイシン、アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、トブラマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシン-B、アシクロビル(acaclovir)、トリフルリジン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、リメキソロン、クロモグリケート、アゼラスチン、ロドキサミド、エメダスチン、ネドクロミル、レボカバスチン、オロパタジン(olopatadinea)、ケトチフェン、ヒプロメロース、カルボマ、ヒアルロネート、カルメロース、ヒプロメロース、ポビドン、ヒエテロース(hyetellose)、ポリビニルアルコール、デクスパンテノール、テトリゾリン、トロキセルチン、トラマゾリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、フェニレフリン及びアンタゾリンから選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
前記ペプチドが1日1回、1日2回又は1日3回の投与のために適当に包装される、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記ペプチドが慢性的投与のために適当に包装される、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
医薬が前記ペプチドを点眼剤、アイクリーム(eye cream)、又は眼内デポ製剤の形で提供するために製造される、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
医薬が即効型製剤中又は放出調節製剤中の前記ペプチドを提供するために製造される、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記ペプチド及び前記少なくとも一つの追加薬剤がコンジョイント投与のために適当に包装される、請求項3に記載の使用。
【請求項11】
前記ペプチド及び前記少なくとも一つの追加薬剤が単一の製剤に含まれる、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
β-アミロイド(Aβ)毒性に関連する視覚状態の予防及び治療(ここではAβ形成及び/又は前記Aβの出現が阻害される)のための医薬組成物であって、請求項1に記載のペプチド又は薬学的に許容し得るその付加塩を単独で又は1種以上の薬学的に許容し得る担体及び/若しくは賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項13】
β-アミロイド(Aβ)毒性に関連する視覚状態の予防及び治療(ここではAβ形成及び/又は前記Aβの出現が阻害される)のための医薬組成物であって、請求項1に記載のペプチド又は薬学的に許容し得るその付加塩、及び少なくとも一つの追加薬剤を、単独で又は1種以上の薬学的に許容し得る担体及び/若しくは賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項14】
β-アミロイド(Aβ)毒性に関連する視覚状態の予防及び/又は治療(ここではAβ形成及び/又は前記Aβの出現が阻害される)のための、アミノ酸配列X-Y又はY-X(式中、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外の1種以上の追加アミノ酸である)を含み、少なくとも2個のアミノ酸残基及び15個未満のアミノ酸残基を持つペプチド。
【請求項15】
β-アミロイド(Aβ)毒性に関連する視覚状態を予防及び治療するための、ヒトを含む生きている動物の治療方法であって、アミノ酸配列X-Y又はY-X(式中、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外の1種以上の追加アミノ酸である)を含み、少なくとも2個のアミノ酸残基及び15個未満のアミノ酸残基を持つペプチドの治療有効量を、前記生きている動物に投与することによって、Aβ形成及び/又は前記Aβの出現を阻害するステップを含み、それが前記状態の軽減に有効である方法。
【請求項16】
前記状態が原発性閉塞隅角緑内障、続発性開放隅角緑内障、広隅角緑内障、ステロイド誘発性緑内障、外傷性緑内障、色素散乱症候群、偽落屑症候群、続発性閉塞隅角緑内障、血管新生緑内障、ぶどう膜炎及び緑内障、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、変性視神経症並びに最終的には失明に至る進行性視力喪失を特徴とする眼病からなる群より選択される、請求項15の方法。
【請求項17】
β-アミロイド(Aβ)毒性に関連する視覚状態を予防及び/又は治療するための、ヒトを含む生きている動物の治療方法であって、前記視覚状態を治療するのに有効である少なくとも一つの追加薬剤と組み合わされた請求項15に記載のペプチドの治療有効量を、前記生きている動物に同時投与するステップを含み、請求項15に記載のペプチド及び前記少なくとも一つの薬剤の組合せが前記状態を治療又は予防するのに有効である方法。
【請求項18】
前記少なくとも一つの追加薬剤が眼疾患を治療するために投与される薬物であり、抗緑内障薬、抗生物質、抗炎症薬、ステロイド、抗アレルギー薬及び人工涙液から選択される少なくとも一つの薬剤を含有する、請求項17の方法。
【請求項19】
前記少なくとも一つの追加薬剤がアセタゾラミド、ジクロフェナミド、カルテオロール、チモロール、メチプラノロール、ベタキソロール、ピンドロール、レボブノロール、ブリモニジン、クロニジン、ピロカルピン、カルバコール、ジピベフリン、アプラクロニジン、ブリンゾラミド、ドルゾラミド、ビマトプロスト、トラバプロスト、ラタノプロスト、クロルテトラサイクリン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、フジシン酸、ゲンタマイシン、カナマイシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、オキシテトラサイクリン、ナタマイシン、アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、トブラマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシン-B、アシクロビル、トリフルリジン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、リメキソロン、クロモグリケート、アゼラスチン、ロドキサミド、エメダスチン、ネドクロミル、レボカバスチン、オロパタジン、ケトチフェン、ヒプロメロース、カルボマ、ヒアルロネート、カルメロース、ヒプロメロース、ポビドン、ヒエテロース、ポリビニルアルコール、デクスパンテノール、テトリゾリン、トロキセルチン、トラマゾリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、フェニレフリン及びアンタゾリンから選択される、請求項17の方法。

【公表番号】特表2010−535728(P2010−535728A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519389(P2010−519389)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006888
【国際公開番号】WO2009/024346
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(397045220)メルツ・ファルマ・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト・アウフ・アクティーン (31)
【Fターム(参考)】