説明

緑化装置およびそれを用いた建造物

【課題】 建造物の壁面を移動可能な緑化装置を提供する。
【解決手段】 建造物2の壁面を緑化するための緑化装置1において、緑化パネルと、ガイド部材とを構成部材とし、前記ガイド部材を、前記建造物の壁面に配置し、前記緑化パネルを前記ガイド部材に結合し、前記緑化パネルを前記ガイド部材のガイドに沿って前記建造物の壁面上を移動可能とする。このような構成であれば、季節や天気、デザインに応じて、ビル等の建造物の壁面の緑化部分を簡単に変えることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化装置およびそれを用いた建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境の保全や建造物のデザイン性を考慮して、建造物の緑化が進んでいる。特に、都市部では、ヒートアイランド現象の緩和のために、ビルの屋上の緑化や壁面の緑化が推奨されている。また、緑化は、ビル壁面の断熱性を高め、冷暖房コストの低減にもつながる。ビルの屋上の緑化は、造園やビオトープ等により実施されており、ビルの屋上という特殊な場所ではあるものの、造園技術の延長で実施されている。一方、ビルの壁面の緑化は、植物を植生させる環境としては極めて厳しいため、専用の部材や装置を用いた緑化装置が開発されている。例えば、2本のパイプ状支柱の間に、複数の羽根板が階段状に取り付けられたルーバーにおいて、前記羽根板に苔を配置し、前記パイプを通じて給排水を行う植栽ルーバーが提案されている(特許文献1参照)。また、緑化パネルが開閉可能な緑化装置も提案されている(特許文献2参照)。このような従来の緑化装置では、その部材(例えば、ルーバーの羽根板)を動かすことにより、それが位置する建造物壁面において、太陽光照射、風通し等の調節が可能である。
【特許文献1】特開2002−34347号公報
【特許文献2】特開2004−92157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の緑化装置は、一度建造物壁面に設置すると、他の場所に移動させることができず、移動するためには、一旦外して、目的の場所に設置し直す必要があった。このため、季節や天気によって、建造物壁面の緑化部分を変えたいときや、デザインに応じて緑化部分を変えたいときに、対応することが困難であった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、建造物の壁面において、緑化部分を容易に変更することが可能な緑化装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の緑化装置は、建造物の壁面を緑化するための緑化装置であって、緑化パネルと、ガイド部材とを有し、前記ガイド部材は、前記建造物の壁面に配置されるものであり、前記緑化パネルが前記ガイド部材に結合し、前記緑化パネルが前記ガイド部材のガイドに沿って前記建造物の壁面上を移動可能であるという構成をとる。
【発明の効果】
【0006】
このように、本発明の緑化装置は、前記緑化パネルが前記ガイド部材のガイドに沿って前記建造物の壁面を移動することができるから、建造物の壁面の緑化部分を簡単に変更することができ、その施工および管理も簡単であり、多様な色調の緑化面を短期間で実現できる。したがって、本発明の緑化装置によれば、例えば、季節や天気、デザインに応じて建造物壁面の緑化部分を簡単に変更できる。例えば、夏場や晴天時には、本発明の緑化装置で建造物の窓部分を緑化することで遮光、遮熱し、冬場や曇天時には、緑化装置を建造物の窓と窓の間の壁面に移動させることで窓から採光、採熱することができる。これに加え、本発明の緑化装置は、つぎのような効果も奏する。すなわち、本発明の緑化装置によれば、遮光、蒸散作用、遮熱作用により、建造物の熱負荷が低減される。また、本発明の緑化装置によれば、建造物の壁面に対し、新しいデザイン性を付与でき、いろいろな景観に合せた建造物のナチュラルなデザインが可能となり、景観の向上、アメニティ効果が得られる。そして、本発明の緑化装置によれば、粉塵の飛来による建造物の汚染を防止でき、騒音に対する遮音効果も有し、さらには、二酸化炭素の吸収により地球温暖化の防止に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、前記緑化パネルの移動方向は、特に制限されず、例えば、前記建造物の壁面の上下方向、左右方向のいずれであってもよい。
【0008】
本発明において、前記ガイド部材のガイドは、特に制限されないが、例えば、ガイド溝、レール等がある。また、本発明において、例えば、前記ガイド部材が、建造物のカーテンウォールの構成部材であってもよい。
【0009】
本発明の緑化装置は、さらに、前記緑化パネルの移動手段を含むことが好ましい。前記移動手段は、特に制限されず、例えば、手動式電動ウインチ方式、電動ギヤー方式等がある。この中でも、普及性、施工性等の点で、手動式電動ウインチ方式が好ましい。
【0010】
本発明の緑化装置は、さらに、前記緑化パネルに対する給排水手段を有することが好ましい。前記緑化パネルは、特に制限するものではないが、フレキシブル配管を具備したものが好ましい。
【0011】
前記緑化パネルの種類は、特に制限されないが、例えば、緑化ルーバーパネル等がある。前記緑化ルーバーパネルとしては、例えば、一対の支柱の間に、複数の羽根板が階段状に配置され、前記羽根板のそれぞれに植物が配置され、前記羽根板相互の間隔が調整可能なものがあげられる。このような前記緑化ルーパーパネルは、例えば、建造物の窓部分の緑化に用いる際に、窓全面を覆うのではなく、かつ個々の緑化ルーバーパネルは自由に移動できるので、窓からの採光、採熱の調節が可能である。例えば、夏場の曇天時のように、光は採り入れたいが熱は遮断したいときや、冬場の晴天時のように、光は遮断したいが熱は採り入れたいときなどに、前記緑化ルーバーパネルを用いることで、容易に適度な採光、採熱を実現することができる。なお、緑化ルーバーパネルの各羽根板が、それを支持する支柱に従い移動可能であるときは、各羽根板が緑化パネルであり、前記支柱がガイド部材といえるので、このような緑化ルーバーパネルは、本発明の緑化装置自身ということもできるし、前記緑化ルーバーパネル全体を別のガイド部材に結合して、本発明の緑化装置を構成してもよい。
【0012】
前記緑化パネルの植物は、特に制限されないが、例えば、低木類、羊歯類、笹類、草本類、蔓植物、花物およびコケ類、セダム類等がある。前記低木類としては、例えば、アセビ、センリョウ、ヤブコウジ、ヒメクチナシ、クサツゲ、オタフクナンテン、ロニセラニティダ、フィリフェラオーレア、ブルースター、ラインゴールド、ウィルトニー、ブルーカーペット、ヒメウツギ、ヒペリカムカリシナム、アベリア類等がある。前記羊歯類、笹類としては、例えば、オオザサ、コグマザサ、ベニシダ、タマシダ等がある、前記草本類としては、オオバジャノヒゲ、ツワブキ、フィリヤブラン、ヤブラン、タイム、リュウノヒゲ、リシマキア、コクリュウ、アジュガ、ユキノシタ等がある。前記蔓植物としては、例えば、オオイタビ、スイカズラ、テイカカズラ、ニシキテイカ、ハツユキカズラ、ビンカマジョール、ビンカミノール、ラミューム、ツルマサキ類、ヘデラ類等がある。花物としては、宿根バーベナ、サフィニア、ミンティア、ブルーデージー等がある。前記コケ類としては、スナゴケ、ハイゴケ、シノブゴケ等がある。前記セダム類としては、メキシコマンネン、ツルマンネン、キリンソウ、タイトゴメ等がある。これらのなかで、肥料、水等の散布の観点から、セダム類が好ましい。
【0013】
つぎに、本発明の建造物は、緑化壁面を有する建造物であって、前記緑化壁面が、前記本発明の緑化装置によって緑化された建造物である。本発明の建造物において、前記緑化装置のガイド部材が、前記壁面に固定されているのが一般的である。また、前述のように、建造物のカーテンウォールの構成部材が、前記ガイド部材を兼ねていてもよい。
【0014】
本発明の建造物の種類は、特に制限されず、例えば、ビルディング、道路建造物、橋、堤防、塀、タワーなどである。
【0015】
つぎに、本発明の緑化装置の例について説明する。
【0016】
図1に本発明の緑化装置を用いて、ビル壁面を緑化した一例を示す。図1(A)に示すように、この例では、5階建てビル2の4階部分の窓側壁面の全面が、緑化装置1で緑化されている。この緑化装置では、その緑化パネルが、ビル壁面の上下方向に固定されたガイド部材(図示せず)に移動可能な状態で結合し、かつ屋上から吊り下げられているワイヤー(図示せず)で吊るされて支持されている。そして、図1(B)に示すように、例えば、季節により太陽光の照射部分が変わる等した場合、手動若しくは電動モータ等により、前記ワイヤーを巻き上げて、前記緑化装置1を前記ビル2の5階部分に移動させる。この移動は、ガイド部材のガイドに沿って行われる。なお、図3に示すように、緑化装置1を前記ビル2の4階部分と5階部分の間に移動させ、4階部分と5階部分の両方で採光、採熱できるようにすることも可能である。
【0017】
図2に本発明の緑化装置を用いて、ビル壁面を緑化したその他の例を示す。この緑化装置は、いわゆる引き戸タイプの緑化装置である。図2(A)に示すように、この例では、5階建てビル2の5階窓壁面の左部分が、緑化装置1で緑化されている。この緑化装置では、その緑化パネルが、ビル壁面の左右方向に固定されたガイド部材のレール(図示せず)に移動可能な状態で結合している。そして、図2(B)に示すように、例えば、季節により太陽光の照射部分が変わる等した場合、手動若しくは電動モータ等により、前記緑化パネルを前記ガイド部材のレールに沿って右側に移動させる。
【0018】
つぎに、緑化パネルについて例をあげて説明する。
【0019】
図4に本発明の緑化パネルの一例の構成を示す。この緑化パネルは、図示のように、ボックス式の緑化パネルであり、人工軽量土壌9および箱状の長繊維不織布7からなるユニット6に植物8が植え込まれているという構成である。
【0020】
図5の断面図に、本発明の緑化ルーバーパネルの羽根板の一例を示す。この緑化ルーバーパネルの羽根板23は、図示のように、凹状に加工され、この凹部の底面に断熱材24が配置され、この上に土22を入れ、ここに植物25が植栽されている。土22としては、例えば、市販の人工軽量土壌等を用いることができ、羽根板23としては、例えば、アルミ折曲げ成形物、アルミ押出成形物等を用いることができ、断熱材24としては、例えば、断熱塗料、スチレンボード、グラスウール等を用いることができる。
【0021】
図6に本発明の緑化ルーバーパネルを用いて、建造物の壁面を緑化した一例を示す。図6(A)および図6(C)に示すように、例えば、夏場の晴天時には、緑化ルーバーパネル3により窓5の一部を緑化し、適度に遮光、遮熱する。一方、例えば、冬場の曇天時には、図6(B)および図6(D)に示すように、緑化ルーバーパネル3を窓5の下方に移動させ、窓5から採光、採熱することができる。なお、図6において、4はガイド部材を示す。
【0022】
つぎに、図7に、給排水手段(自動潅水システム)を設けた緑化パネルの一例の構成を示す。この緑化パネル14では、緑化基板15に取り付けられたマット16の上部に潅水パイプ11を設け、前記潅水パイプ11の底面に設けられた点滴孔12から給水を行う。なお、同図において、13は植物を示す。
【0023】
図8に、緑化パネルの移動手段を設けた本発明の緑化装置の一例を示す。同図(A)は、建造物(ビル)壁面の正面から見た図であり、同図(B)は、建造物(ビル)の屋上から見た図であり、同一部分には同一符号を付している。図示のように、この装置では、緑化パネル17に支持部材20が取り付けられており、緑化パネル17は、ワイヤーロープ18で吊り下げられた状態で、建造物壁面に配置されている。なお、図8において、19は窓を示す。そして、この装置では、ビルの窓拭き清掃用のゴンドラのガイド溝をガイド部材として使用しており、このガイド溝に、前記支持部材20がはめ込まれ、かつ一対のガイドローラ21で挟まれている。そして、前記ワイヤーロープ18は、図9に示すように、建造物の屋上に設置した移動手段に連結している。この移動手段は、ワイヤーロープの巻き取り装置であり、フレームに2台のローラー26が、建造物の屋上にウインチ27が配置され、これらにワイヤーロープ18が連結している。このウインチ27によって、ワイヤーロープ18を巻き上げたり、若しくは送り出したりすることで、緑化パネル17が、前記ガイド溝に沿って、建造物壁面の上下方向を移動する。なお、図8および9には、ワイヤーロープ18に緑化パネル17が1枚だけ吊り下げられた場合を示したが、ワイヤーロープ18には、複数枚の緑化パネルを吊り下げてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、本発明の緑化装置によれば、ビル等の建造物の壁面を簡単に緑化することができ、しかも壁面上を簡単に移動させることができるので、季節や天気、デザイン等に応じ、壁面の緑化部分を変えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の緑化装置により建造物を緑化した一例を示す図である。
【図2】本発明の緑化装置により建造物を緑化したその他の例を示す図である。
【図3】本発明の緑化装置により建造物を緑化したさらにその他の例を示す図である。
【図4】本発明の緑化パネルの一例の構成を示す図である。
【図5】本発明の緑化ルーバーパネルの羽根板の一例の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の緑化ルーバーパネルにより建造物を緑化した一例を示す図である。
【図7】本発明の緑化装置のさらに他の一例の構成を示す図である。
【図8】本発明の緑化装置のさらにその他の例の構成を示す図である。
【図9】前記緑化装置の移動手段の一例の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 緑化装置
2 建造物(ビル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の壁面を緑化するための緑化装置であって、緑化パネルと、ガイド部材とを有し、前記ガイド部材は、前記建造物の壁面に配置されるものであり、前記緑化パネルが前記ガイド部材に結合し、前記緑化パネルが前記ガイド部材のガイドに沿って前記建造物の壁面上を移動可能である緑化装置。
【請求項2】
前記緑化パネルの移動方向は、前記建造物の壁面の上下方向および左右方向の少なくとも一方向である請求項1記載の緑化装置。
【請求項3】
前記ガイド部材のガイドが、ガイド溝およびレールの少なくとも一つである請求項1または2記載の緑化装置。
【請求項4】
前記ガイド部材が、建造物のカーテンウォールの構成部材である請求項1から3のいずれかに記載の緑化装置。
【請求項5】
さらに、前記緑化パネルの移動手段を含む請求項1から4のいずれかに記載の緑化装置。
【請求項6】
さらに、前記緑化パネルに対する給排水手段を有する請求項1から5のいずれかに記載の緑化装置。
【請求項7】
前記緑化パネルが、緑化ルーバーパネルである請求項1から6のいずれかに記載の緑化装置。
【請求項8】
前記緑化ルーバーパネルは、一対の支柱の間に、複数の羽根板が階段状に配置され、前記羽根板のそれぞれに植物が配置され、前記羽根板相互の間隔が調整可能である請求項7記載の緑化装置。
【請求項9】
前記緑化パネルの植物が、低木類、羊歯類、笹類、草本類、蔓植物、花物、コケ類およびセダム類からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から8のいずれかに記載の緑化装置。
【請求項10】
緑化壁面を有する建造物であって、前記緑化壁面が、請求項1から9のいずれかに記載の緑化装置によって緑化された建造物。
【請求項11】
前記緑化装置のガイド部材が、前記壁面に固定されている請求項10記載の建造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−22573(P2006−22573A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202309(P2004−202309)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】