緑化装置
【課題】カーポート又はサイクルポートの既製品の骨組みを有効利用することで、低コストかつ簡易に製作可能な緑化装置及びその緑化方法を提供する。
【解決手段】緑化装置10は、カーポートの骨組み16と、カーポートの骨組み16の最上部に取り付けられて植物を生育させる培地14と、液肥を培地14に供給するための給水管22及び滴下ノズル15と、培地内の液肥18を排水するための排水管20と、これら給水管22へ給水する液肥と排水管20から排出される液肥18とを循環する循環システム20とから構成される。
【解決手段】緑化装置10は、カーポートの骨組み16と、カーポートの骨組み16の最上部に取り付けられて植物を生育させる培地14と、液肥を培地14に供給するための給水管22及び滴下ノズル15と、培地内の液肥18を排水するための排水管20と、これら給水管22へ給水する液肥と排水管20から排出される液肥18とを循環する循環システム20とから構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緑化装置に係り、特にカーポート又はサイクルポートの骨組みを利用した緑化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒートアイランド化の抑制や大気浄化などの環境対策のために、都心部における緑化量の増加の必要性は高まっており、これら要求に対する緑化技術の一つとして、従来より本発明者は建物の屋上の緑化方法及び装置の提案を行っている。
【0003】
例えば、特許文献1には、建物の屋上に複数の支柱を立て、これらの支柱間に複数の骨組みを架け渡し、これらの骨組みを支持部材として植生を繁茂させるようにした緑化方法が開示されている。
【0004】
これは、屋上に設置された設備などに制限されたり、屋上スペースを狭めたりすることなく設置でき、また、植生への潅水や施肥などの管理が容易であるとともに、潅水などによる屋内への漏水の危険性がなく建物の屋上を緑化するためのものである。
【特許文献1】特開2006−20542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される緑化技術は、実際に植生を繁茂させる構造として複数の支柱及び骨組みを構築する上で、部材の設計から、調達、形成、そして組み上げまで多くの手間と時間を要し、これに伴い製作費及び施工費が多大になってしまうことから緑化導入への足かせになるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、カーポート又はサイクルポートの既製品の骨組みを利用することで、低コストかつ簡易に製作可能な緑化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は植物の培地となる管体を、前記カーポート又はサイクルポートの骨組みにとりつけてなることを特徴とする(第1の発明)。
本発明の緑化装置によれば、植物を繁茂させる骨組みに市販のカーポート又はサイクルポートの骨組みを利用することにより、施工時間を短縮できるとともに施工コストも低減できる。
【0008】
また、カーポート又はサイクルポートの下方には人の歩行に支障のないスペースが確保でき、例えば、休憩場所や憩いの場として有効利用できる。
また、市販されるカーポート又はサイクルポートは、脚立等を使用することにより一般に人が手の届く程度の屋根の高さで設計されており、培地及び繁茂する植物のメンテナンスを行う際に屋根自体に載って作業することなく、カーポート又はサイクルポートの骨組みの下方から容易かつ安全に作業することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記管体は前記植物が植え込まれる部分に開口部が形成され、前記管体の開口部内に液肥を供給する手段を備えることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第1又は2の発明において、給水管を備え、前記給水管には前記開口部の上方から前記開口部内へ液肥を滴下する滴下装置が接続されてなることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明において、前記カーポート又はサイクルポートの骨組み間に網材を設けたことを特徴とする。
本発明の緑化装置によれば、管体から繁茂させる植物の緑化範囲を、骨組み上にだけでなく骨組み間にも広げることができ、緑化面積を増加させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カーポート又はサイクルポートの既製品の骨組みを有効利用することで、低コストかつ簡易に製作可能な緑化装置及びその緑化方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、市販される既製品の骨組みを利用した緑化装置及び緑化方法であり、以下にその好ましい一実施形態について図面に基づき詳細に説明する。なお、本実施形態はかかる緑化装置をビル等の屋上緑化に適用したものである。
【0014】
図1は、本実施形態に係るカーポートの骨組みを利用した緑化装置10の外観を示す斜視図である。
図1に示すように、緑化装置10は、カーポートの骨組み16と、カーポートの骨組み16の最上部に取り付けられて植物を生育させる培地14と、液肥を培地14に供給するための給水管22及び滴下ノズル15と、培地内の液肥を排水するための排水管24と、これら給水管22へ給水する液肥18と排水管24から排出される液肥18とを自動的に循環する循環システム20とから構成される。
なお、緑化装置10に植生させる植物には、例えば、つる性植物であるヘデラ・ヘリックス19(以下、ヘデラ19という)を用いる。
【0015】
骨組み16として用いるカーポートは、市販されているものであればどのようなものでも利用できる。また、自転車置き場用のサイクルポートを利用してもよい。ただし、本実施形態では、ビル等の積雪や強風などによる荷重にその構造が十分耐久しうることと骨組みの下部から手入れを行うことのために、カーポートの部材のうち屋根は用いない。
【0016】
カーポートの骨組み16は、例えば、Cチャンネル、或いは中空角型材に長手方向に沿って上面全域に亘って切り欠かきが形成された部材であって、C型又は切り欠きの開口面が上方に向いていることが好ましい。この際には骨組み16の内側に、例えば、スポンジ、ジュート、藁や籾殻のような吸湿性と保水性を有する吸湿保水材38を骨組み16内から脱落しないように充填することで、伸延したヘデラ19が吸湿保水材38に適宜根を下ろして、自力で自らの体を骨組み16に保持させることができる。
【0017】
また、カーポートの骨組み16は軽量であるので、例えば、骨組み16の支柱底部に十分な面積の板材46を設け、ビルの屋上の屋上に敷設されるコンクリート等の面に、アンカーボルト44でしっかり固定したり、この板材46を接着剤で強固に貼り付けたりして強風による浮き上がりを防止する。なお、板材46の代わりに、骨組み16の各支柱をアングル材やチャンネル材などで繋ぎ合わせ、これらをコンクリート等の面にアンカーボルト44や接着剤を用いて固定してもよい(図示しない)。また、骨組み16を屋上に設けられている外柵などに支線等を用いて固定してもよい(図示しない)。この場合、支線の設置場所は、人が引っかかることないように人の通行・出入りのない場所とし、支線には保護カバー等を設置する。
【0018】
骨組み16間には、屋根全体にヘデラ19の伸延を補助し、繁茂させる面積を増やすための金網やネットなどの網材17を設けている。
なお、骨組み16又は網材17に伸延するヘデラ19が固定されていない場合には、ワイヤーや縄等でヘデラ19の茎などを適宜骨組み又は網材17に留めておくことが好ましい。
【0019】
図2は、図1の緑化装置10のうち培地14の部分を抜粋した図である。
図2に示すように、培地14は、例えば、円筒形の硬質塩化ビニル製の管(以下、塩ビ管30という)の上側にヘデラ19を植え込むための開口部28を形成したものであり、その開口部28近傍には、ヘデラ19が強風や自重などで培地14から脱落しないように、茎部又は根部を保持できるような留め具32が取り付けられている。また、その開口部28へ液肥18が滴下されるように給水管22及び滴下ノズル15が設置され、塩ビ管30の端部には排水するための排水管24が設けられている。
【0020】
塩ビ管30は、培地14に日光が照射することによって発生するアオコ等の発生を防止するために、例えば、遮光性を有するものが用いられる。なお、塩ビ管30は、ヘデラ19に十分な容量を有するような形状を有するものであれば、円筒形に限らず、例えば、角型でもよい。
【0021】
開口部28は、雨水の流入による液肥濃度の希釈や日光照射によるアオコ等の発生を防止するために、ヘデラ19を植え込むのに必要最小限の大きさであることが好ましい。また、開口部28は、ヘデラ19が成長するにあたり、その茎部を骨組みに留めながら伸延させることができるように、塩ビ管30のうち、カーポートの屋根の傾斜方向の骨組みの延長する位置に形成されている(図1参照)。
【0022】
留め具32は、茎部を保持する径を、ヘデラ19の生育に追随して変形できるような、例えば、軟らかい針金を一巻きに曲げたものが用いられている。
【0023】
給水管22は、例えば、塩ビ管30の長手方向に沿うように設置されており、その給水管22からは開口部28へ液肥を滴下するための滴下ノズル15が接続されている。
【0024】
排水管24は、塩ビ管30の長手方向端部の下方に設けられ、塩ビ管30内の下部に集水した液肥を排水するようになっている。
【0025】
なお、本実施形態では、培地14への給水方式が開口部から滴下する構成としているが、これに限らず、給水管22を塩ビ管30の長手方向端部より塩ビ管30内に挿通させ、挿通された部分に流出可能な流出穴を複数形成させて液肥18を供給してもよい。この場合、排水管24は、ヘデラ19の根を生育するための適正な水位レベルになるように、給水管の挿通される位置よりも上方に設けられる。
【0026】
塩ビ管30内には通気性と通水性のよい、例えば、ゼオライトやカキ殻等の充填物36が充填されている。これら充填物36はヘデラ19の栽培に適した十分に中和処理がなされているものを使用する。
【0027】
図3は、循環システム20の液肥18の流れ及び機器の詳細を示す系統図である。
図3に示すように、循環システム20は、液肥18を貯めるための液肥タンク26と、液肥タンク26から培地14へ液肥18を供給するための給水管22及びポンプP1と、培地14内の液肥18を液肥タンク26へ排水するための排水管24と、液肥タンク26内の液肥18の温度を調節するヒータ60及びクーラ62と、液肥タンク26もしくは培地14の液肥18を監視する各種センサ(S1〜S3)と、それらセンサによる測定値の表示、記録、もしくは異常を警告するデータロガー64とから構成される。
【0028】
液肥タンク26は、培地14に十分な液肥を供給できる程度の容量を有し、例えば、金属製やプラスチック製のもので遮光性を有するものが好ましい。また、ビルの屋上に設置するので、屋上スペースを有効利用するために液肥タンク26を、例えば、屋上に休憩所や憩いの場として設置するベンチの下部に配置したり、液肥タンク26を補強してそれ自体をベンチや作業台として活用したりしてもよい。
【0029】
また、給水管22及び排水管24にも遮光性を有する材質である、例えば、汎用の水道管や硬質塩ビ管を用いることが好ましい。なお、これに限らず、配管等の取り回しの容易性を考慮して、容易に屈曲可能な軟質の塩化ビニルパイプを用いてもよい。
【0030】
ポンプP1は、液肥タンク26に貯水された液肥18を、給水管22を通じて屋根の頂上部に設けられた培地14に十分給水できる性能を備えている。
【0031】
液肥18の温度調節には、冬場の凍結を防止するとともに、液肥18の温度を適正に保つ(例えば、マイナス5℃以上)ためのヒータ60と、夏場、培地14内の液肥18が異常に上昇しないように(例えば、30℃以下)、液肥18を冷却するクーラ62とが、液肥タンク26内に設けられている。
【0032】
液肥タンク26には、液肥18の温度、液肥18の濃度及び水位を監視するための温度センサS1、濃度センサS2及び水位センサS3が設けられており、これら各センサによる測定値はデータロガー64で監視及び記録され、異常値を示す場合に警報で知らせるようになっている。
【0033】
なお、温度センサS1で測定する温度に応じて、ヒータ60及びクーラ62の制御を行う制御装置70を設けてもよい。
また、排水管24の管路に、ヘデラ19の根の呼吸作用を促進させて良好に生育させるために、液肥18に空気を混合する空気混合器56を設けてもよい。
【0034】
図4は、空気混合器56の内部構造を示す断面図である。
図4に示すように、空気混合器56は、一方向の流れに対して互いに逆方向の回転するような二枚のプロペラ66が、排水管24の管路内に、排水管24の管軸と同軸に設置され、これらプロペラ66の設置位置近傍に、排水管24の内外を貫通する空気穴68が形成されたものである。この構造により、例えば、上方から液体が流れてきた場合には、排水管24内を水と空気の流れが生じ、排水管24内の空気圧が管外の外圧と比べて負圧になって、空気穴68から排水管24内に空気が流入し、さらに流れによって互いに逆回転する2枚のプロペラ66により、排水管24内の水と空気とが攪拌されて混合することによって液肥18中に空気が取り入れられる。なお、空気混合器56内には、円筒状のフレームからなるランナー収納ケース67が設けられ、プロペラ66の回転軸69は、このランナー収納ケース67に備えられる軸受71により支持されている。
また、節水に努めるために、液肥タンク26で用いる水源に雨水を有効利用してもよい。
【0035】
図5は、ビルの屋上から雨水を集めて液肥タンク26に導入する方法を説明するための概念図である。
図5に示すように、ビルの屋上の排水口90に、例えば、止水堤92を設けて降雨によって集水される雨水を堰きとめ、溜まった雨水を雨水ポンプP2で液肥タンク26へと移送する。
雨水ポンプP2には、液肥タンク26内の水位を感知して起動し、所定の水位に達すると自動的に停止する機能を備えるものを用いることが好ましい。
【0036】
なお、本実施形態の緑化装置10を可動させる電源を電気代の節約及び省エネルギーのために太陽光発電を用いることが好ましい。
また、本実施形態に係るカーポートの骨組みを設置する場所に、例えば、ビルの屋上に設置されるチラー等のファンの風が直接あたる所を選定してしまうとヘデラ19の成長に影響を与えてしまうので、チラー等のファンの設置位置より離して設置することが好ましい。ただし、ファンの風が直接あたる所に設置せざるを得ない場合には、風除け等を設置してヘデラ19に直接風が当らないようにする。
【0037】
以上説明したように、本実施形態による緑化装置10によれば、ヘデラ19を繁茂させる骨組みに市販のカーポートの骨組み16を利用することにより、施工時間を短縮できるとともに施工コストも低減できる。
【0038】
また、本実施形態による緑化装置10によれば、カーポートの屋根部材を用いず、骨組み16のみを用いることにより、骨組み16に培地14となる塩ビ管30が設けられ、さらにヘデラ19が繁茂することにより積載荷重が増加したとしても、それ以上積雪や風圧などによって加重されることはないので、構造物として安定的に維持できる。
【0039】
また、カーポートの下方には人の歩行に支障のないスペースが確保でき、例えば、休憩場所や憩いの場として有効利用できる。
【0040】
また、本実施形態による緑化装置10によれば、一般の市販されるカーポートの骨組み16は、脚立等を使用することにより一般に人が手の届く程度の屋根の高さで設計されていることにより、培地14及び繁茂するヘデラ19のメンテナンスを行う際に屋根自体に載って作業することなく、カーポートの骨組み16の下方から容易且つ安全に作業することができる。
【0041】
また、本実施形態による緑化装置10によれば、骨組み16間に網材17をかけることにより、培地14から繁茂させるヘデラ19の緑化範囲を、骨組み16上にだけでなく骨組み16間にも広げることができ、緑化面積を増加させることができる。
【0042】
なお、本実施形態による緑化装置10の培地14によれば、一屋根に対し一つ設置する例を示したが、これに限らず、屋根の傾斜方向の長さに応じて複数設置してもよい(図示しない)。この場合、追加する培地14は屋根上に水平方向に設置する。
【0043】
また、本実施形態による緑化装置10は、ビル屋上に設置する適用例について説明したが、これに限らず、カーポートが設置可能な場所であればどこでも設置可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態に係るカーポートの骨組みを利用した緑化装置10の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の緑化装置のうち培地の部分を抜粋した図である。
【図3】循環システムの液肥の流れ及び機器の詳細を示す系統図である。
【図4】空気混合器の内部構造を示す断面図である。
【図5】ビルの屋上から雨水を集めて液肥タンクに導入する方法を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0045】
10 緑化装置
15 滴下ノズル
14 培地
16 骨組み
17 網材
18 液肥
19 ヘデラ
20 循環システム
22 給水管
24 排水管
26 液肥タンク
28 開口部
30 塩ビ管
【技術分野】
【0001】
本発明は緑化装置に係り、特にカーポート又はサイクルポートの骨組みを利用した緑化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒートアイランド化の抑制や大気浄化などの環境対策のために、都心部における緑化量の増加の必要性は高まっており、これら要求に対する緑化技術の一つとして、従来より本発明者は建物の屋上の緑化方法及び装置の提案を行っている。
【0003】
例えば、特許文献1には、建物の屋上に複数の支柱を立て、これらの支柱間に複数の骨組みを架け渡し、これらの骨組みを支持部材として植生を繁茂させるようにした緑化方法が開示されている。
【0004】
これは、屋上に設置された設備などに制限されたり、屋上スペースを狭めたりすることなく設置でき、また、植生への潅水や施肥などの管理が容易であるとともに、潅水などによる屋内への漏水の危険性がなく建物の屋上を緑化するためのものである。
【特許文献1】特開2006−20542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される緑化技術は、実際に植生を繁茂させる構造として複数の支柱及び骨組みを構築する上で、部材の設計から、調達、形成、そして組み上げまで多くの手間と時間を要し、これに伴い製作費及び施工費が多大になってしまうことから緑化導入への足かせになるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、カーポート又はサイクルポートの既製品の骨組みを利用することで、低コストかつ簡易に製作可能な緑化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は植物の培地となる管体を、前記カーポート又はサイクルポートの骨組みにとりつけてなることを特徴とする(第1の発明)。
本発明の緑化装置によれば、植物を繁茂させる骨組みに市販のカーポート又はサイクルポートの骨組みを利用することにより、施工時間を短縮できるとともに施工コストも低減できる。
【0008】
また、カーポート又はサイクルポートの下方には人の歩行に支障のないスペースが確保でき、例えば、休憩場所や憩いの場として有効利用できる。
また、市販されるカーポート又はサイクルポートは、脚立等を使用することにより一般に人が手の届く程度の屋根の高さで設計されており、培地及び繁茂する植物のメンテナンスを行う際に屋根自体に載って作業することなく、カーポート又はサイクルポートの骨組みの下方から容易かつ安全に作業することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記管体は前記植物が植え込まれる部分に開口部が形成され、前記管体の開口部内に液肥を供給する手段を備えることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第1又は2の発明において、給水管を備え、前記給水管には前記開口部の上方から前記開口部内へ液肥を滴下する滴下装置が接続されてなることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明において、前記カーポート又はサイクルポートの骨組み間に網材を設けたことを特徴とする。
本発明の緑化装置によれば、管体から繁茂させる植物の緑化範囲を、骨組み上にだけでなく骨組み間にも広げることができ、緑化面積を増加させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カーポート又はサイクルポートの既製品の骨組みを有効利用することで、低コストかつ簡易に製作可能な緑化装置及びその緑化方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、市販される既製品の骨組みを利用した緑化装置及び緑化方法であり、以下にその好ましい一実施形態について図面に基づき詳細に説明する。なお、本実施形態はかかる緑化装置をビル等の屋上緑化に適用したものである。
【0014】
図1は、本実施形態に係るカーポートの骨組みを利用した緑化装置10の外観を示す斜視図である。
図1に示すように、緑化装置10は、カーポートの骨組み16と、カーポートの骨組み16の最上部に取り付けられて植物を生育させる培地14と、液肥を培地14に供給するための給水管22及び滴下ノズル15と、培地内の液肥を排水するための排水管24と、これら給水管22へ給水する液肥18と排水管24から排出される液肥18とを自動的に循環する循環システム20とから構成される。
なお、緑化装置10に植生させる植物には、例えば、つる性植物であるヘデラ・ヘリックス19(以下、ヘデラ19という)を用いる。
【0015】
骨組み16として用いるカーポートは、市販されているものであればどのようなものでも利用できる。また、自転車置き場用のサイクルポートを利用してもよい。ただし、本実施形態では、ビル等の積雪や強風などによる荷重にその構造が十分耐久しうることと骨組みの下部から手入れを行うことのために、カーポートの部材のうち屋根は用いない。
【0016】
カーポートの骨組み16は、例えば、Cチャンネル、或いは中空角型材に長手方向に沿って上面全域に亘って切り欠かきが形成された部材であって、C型又は切り欠きの開口面が上方に向いていることが好ましい。この際には骨組み16の内側に、例えば、スポンジ、ジュート、藁や籾殻のような吸湿性と保水性を有する吸湿保水材38を骨組み16内から脱落しないように充填することで、伸延したヘデラ19が吸湿保水材38に適宜根を下ろして、自力で自らの体を骨組み16に保持させることができる。
【0017】
また、カーポートの骨組み16は軽量であるので、例えば、骨組み16の支柱底部に十分な面積の板材46を設け、ビルの屋上の屋上に敷設されるコンクリート等の面に、アンカーボルト44でしっかり固定したり、この板材46を接着剤で強固に貼り付けたりして強風による浮き上がりを防止する。なお、板材46の代わりに、骨組み16の各支柱をアングル材やチャンネル材などで繋ぎ合わせ、これらをコンクリート等の面にアンカーボルト44や接着剤を用いて固定してもよい(図示しない)。また、骨組み16を屋上に設けられている外柵などに支線等を用いて固定してもよい(図示しない)。この場合、支線の設置場所は、人が引っかかることないように人の通行・出入りのない場所とし、支線には保護カバー等を設置する。
【0018】
骨組み16間には、屋根全体にヘデラ19の伸延を補助し、繁茂させる面積を増やすための金網やネットなどの網材17を設けている。
なお、骨組み16又は網材17に伸延するヘデラ19が固定されていない場合には、ワイヤーや縄等でヘデラ19の茎などを適宜骨組み又は網材17に留めておくことが好ましい。
【0019】
図2は、図1の緑化装置10のうち培地14の部分を抜粋した図である。
図2に示すように、培地14は、例えば、円筒形の硬質塩化ビニル製の管(以下、塩ビ管30という)の上側にヘデラ19を植え込むための開口部28を形成したものであり、その開口部28近傍には、ヘデラ19が強風や自重などで培地14から脱落しないように、茎部又は根部を保持できるような留め具32が取り付けられている。また、その開口部28へ液肥18が滴下されるように給水管22及び滴下ノズル15が設置され、塩ビ管30の端部には排水するための排水管24が設けられている。
【0020】
塩ビ管30は、培地14に日光が照射することによって発生するアオコ等の発生を防止するために、例えば、遮光性を有するものが用いられる。なお、塩ビ管30は、ヘデラ19に十分な容量を有するような形状を有するものであれば、円筒形に限らず、例えば、角型でもよい。
【0021】
開口部28は、雨水の流入による液肥濃度の希釈や日光照射によるアオコ等の発生を防止するために、ヘデラ19を植え込むのに必要最小限の大きさであることが好ましい。また、開口部28は、ヘデラ19が成長するにあたり、その茎部を骨組みに留めながら伸延させることができるように、塩ビ管30のうち、カーポートの屋根の傾斜方向の骨組みの延長する位置に形成されている(図1参照)。
【0022】
留め具32は、茎部を保持する径を、ヘデラ19の生育に追随して変形できるような、例えば、軟らかい針金を一巻きに曲げたものが用いられている。
【0023】
給水管22は、例えば、塩ビ管30の長手方向に沿うように設置されており、その給水管22からは開口部28へ液肥を滴下するための滴下ノズル15が接続されている。
【0024】
排水管24は、塩ビ管30の長手方向端部の下方に設けられ、塩ビ管30内の下部に集水した液肥を排水するようになっている。
【0025】
なお、本実施形態では、培地14への給水方式が開口部から滴下する構成としているが、これに限らず、給水管22を塩ビ管30の長手方向端部より塩ビ管30内に挿通させ、挿通された部分に流出可能な流出穴を複数形成させて液肥18を供給してもよい。この場合、排水管24は、ヘデラ19の根を生育するための適正な水位レベルになるように、給水管の挿通される位置よりも上方に設けられる。
【0026】
塩ビ管30内には通気性と通水性のよい、例えば、ゼオライトやカキ殻等の充填物36が充填されている。これら充填物36はヘデラ19の栽培に適した十分に中和処理がなされているものを使用する。
【0027】
図3は、循環システム20の液肥18の流れ及び機器の詳細を示す系統図である。
図3に示すように、循環システム20は、液肥18を貯めるための液肥タンク26と、液肥タンク26から培地14へ液肥18を供給するための給水管22及びポンプP1と、培地14内の液肥18を液肥タンク26へ排水するための排水管24と、液肥タンク26内の液肥18の温度を調節するヒータ60及びクーラ62と、液肥タンク26もしくは培地14の液肥18を監視する各種センサ(S1〜S3)と、それらセンサによる測定値の表示、記録、もしくは異常を警告するデータロガー64とから構成される。
【0028】
液肥タンク26は、培地14に十分な液肥を供給できる程度の容量を有し、例えば、金属製やプラスチック製のもので遮光性を有するものが好ましい。また、ビルの屋上に設置するので、屋上スペースを有効利用するために液肥タンク26を、例えば、屋上に休憩所や憩いの場として設置するベンチの下部に配置したり、液肥タンク26を補強してそれ自体をベンチや作業台として活用したりしてもよい。
【0029】
また、給水管22及び排水管24にも遮光性を有する材質である、例えば、汎用の水道管や硬質塩ビ管を用いることが好ましい。なお、これに限らず、配管等の取り回しの容易性を考慮して、容易に屈曲可能な軟質の塩化ビニルパイプを用いてもよい。
【0030】
ポンプP1は、液肥タンク26に貯水された液肥18を、給水管22を通じて屋根の頂上部に設けられた培地14に十分給水できる性能を備えている。
【0031】
液肥18の温度調節には、冬場の凍結を防止するとともに、液肥18の温度を適正に保つ(例えば、マイナス5℃以上)ためのヒータ60と、夏場、培地14内の液肥18が異常に上昇しないように(例えば、30℃以下)、液肥18を冷却するクーラ62とが、液肥タンク26内に設けられている。
【0032】
液肥タンク26には、液肥18の温度、液肥18の濃度及び水位を監視するための温度センサS1、濃度センサS2及び水位センサS3が設けられており、これら各センサによる測定値はデータロガー64で監視及び記録され、異常値を示す場合に警報で知らせるようになっている。
【0033】
なお、温度センサS1で測定する温度に応じて、ヒータ60及びクーラ62の制御を行う制御装置70を設けてもよい。
また、排水管24の管路に、ヘデラ19の根の呼吸作用を促進させて良好に生育させるために、液肥18に空気を混合する空気混合器56を設けてもよい。
【0034】
図4は、空気混合器56の内部構造を示す断面図である。
図4に示すように、空気混合器56は、一方向の流れに対して互いに逆方向の回転するような二枚のプロペラ66が、排水管24の管路内に、排水管24の管軸と同軸に設置され、これらプロペラ66の設置位置近傍に、排水管24の内外を貫通する空気穴68が形成されたものである。この構造により、例えば、上方から液体が流れてきた場合には、排水管24内を水と空気の流れが生じ、排水管24内の空気圧が管外の外圧と比べて負圧になって、空気穴68から排水管24内に空気が流入し、さらに流れによって互いに逆回転する2枚のプロペラ66により、排水管24内の水と空気とが攪拌されて混合することによって液肥18中に空気が取り入れられる。なお、空気混合器56内には、円筒状のフレームからなるランナー収納ケース67が設けられ、プロペラ66の回転軸69は、このランナー収納ケース67に備えられる軸受71により支持されている。
また、節水に努めるために、液肥タンク26で用いる水源に雨水を有効利用してもよい。
【0035】
図5は、ビルの屋上から雨水を集めて液肥タンク26に導入する方法を説明するための概念図である。
図5に示すように、ビルの屋上の排水口90に、例えば、止水堤92を設けて降雨によって集水される雨水を堰きとめ、溜まった雨水を雨水ポンプP2で液肥タンク26へと移送する。
雨水ポンプP2には、液肥タンク26内の水位を感知して起動し、所定の水位に達すると自動的に停止する機能を備えるものを用いることが好ましい。
【0036】
なお、本実施形態の緑化装置10を可動させる電源を電気代の節約及び省エネルギーのために太陽光発電を用いることが好ましい。
また、本実施形態に係るカーポートの骨組みを設置する場所に、例えば、ビルの屋上に設置されるチラー等のファンの風が直接あたる所を選定してしまうとヘデラ19の成長に影響を与えてしまうので、チラー等のファンの設置位置より離して設置することが好ましい。ただし、ファンの風が直接あたる所に設置せざるを得ない場合には、風除け等を設置してヘデラ19に直接風が当らないようにする。
【0037】
以上説明したように、本実施形態による緑化装置10によれば、ヘデラ19を繁茂させる骨組みに市販のカーポートの骨組み16を利用することにより、施工時間を短縮できるとともに施工コストも低減できる。
【0038】
また、本実施形態による緑化装置10によれば、カーポートの屋根部材を用いず、骨組み16のみを用いることにより、骨組み16に培地14となる塩ビ管30が設けられ、さらにヘデラ19が繁茂することにより積載荷重が増加したとしても、それ以上積雪や風圧などによって加重されることはないので、構造物として安定的に維持できる。
【0039】
また、カーポートの下方には人の歩行に支障のないスペースが確保でき、例えば、休憩場所や憩いの場として有効利用できる。
【0040】
また、本実施形態による緑化装置10によれば、一般の市販されるカーポートの骨組み16は、脚立等を使用することにより一般に人が手の届く程度の屋根の高さで設計されていることにより、培地14及び繁茂するヘデラ19のメンテナンスを行う際に屋根自体に載って作業することなく、カーポートの骨組み16の下方から容易且つ安全に作業することができる。
【0041】
また、本実施形態による緑化装置10によれば、骨組み16間に網材17をかけることにより、培地14から繁茂させるヘデラ19の緑化範囲を、骨組み16上にだけでなく骨組み16間にも広げることができ、緑化面積を増加させることができる。
【0042】
なお、本実施形態による緑化装置10の培地14によれば、一屋根に対し一つ設置する例を示したが、これに限らず、屋根の傾斜方向の長さに応じて複数設置してもよい(図示しない)。この場合、追加する培地14は屋根上に水平方向に設置する。
【0043】
また、本実施形態による緑化装置10は、ビル屋上に設置する適用例について説明したが、これに限らず、カーポートが設置可能な場所であればどこでも設置可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態に係るカーポートの骨組みを利用した緑化装置10の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の緑化装置のうち培地の部分を抜粋した図である。
【図3】循環システムの液肥の流れ及び機器の詳細を示す系統図である。
【図4】空気混合器の内部構造を示す断面図である。
【図5】ビルの屋上から雨水を集めて液肥タンクに導入する方法を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0045】
10 緑化装置
15 滴下ノズル
14 培地
16 骨組み
17 網材
18 液肥
19 ヘデラ
20 循環システム
22 給水管
24 排水管
26 液肥タンク
28 開口部
30 塩ビ管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーポート又はサイクルポートの骨組みを利用した緑化装置であって、
植物の培地となる管体を、前記カーポート又はサイクルポートの骨組みにとりつけてなることを特徴とする緑化装置。
【請求項2】
前記管体は前記植物が植え込まれる部分に開口部が形成され、前記管体の開口部内に液肥を供給する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の緑化装置。
【請求項3】
給水管を備え、前記給水管には前記開口部の上方から前記開口部内へ液肥を滴下する滴下装置が接続されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の緑化装置
【請求項4】
前記カーポート又はサイクルポートの骨組み間に網材を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緑化装置。
【請求項1】
カーポート又はサイクルポートの骨組みを利用した緑化装置であって、
植物の培地となる管体を、前記カーポート又はサイクルポートの骨組みにとりつけてなることを特徴とする緑化装置。
【請求項2】
前記管体は前記植物が植え込まれる部分に開口部が形成され、前記管体の開口部内に液肥を供給する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の緑化装置。
【請求項3】
給水管を備え、前記給水管には前記開口部の上方から前記開口部内へ液肥を滴下する滴下装置が接続されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の緑化装置
【請求項4】
前記カーポート又はサイクルポートの骨組み間に網材を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の緑化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2008−173094(P2008−173094A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11988(P2007−11988)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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