線材繰り出し装置およびカートリッジ
【課題】線材を簡単に装置本体外に導出できるようにする。
【解決手段】カートリッジに巻回された軟質な材質からなる線材を一対のローラで挟持し、一方の繰り出しローラ42を操作して線材をガイド部材60側に繰り出す。線材はガイド部材本体内および導出用パイプを通って外部に導出される(引き出される)。ガイド部材は装置本体に対して着脱自在であるので、線材をガイド部材内を通すときは、ガイド部材を装置本体より外した状態で行う。ガイド部材を外して線材の挿通作業をするので、線材の先端部側を曲げることなく、簡単に通すことができるから、作業効率を改善できる。
【解決手段】カートリッジに巻回された軟質な材質からなる線材を一対のローラで挟持し、一方の繰り出しローラ42を操作して線材をガイド部材60側に繰り出す。線材はガイド部材本体内および導出用パイプを通って外部に導出される(引き出される)。ガイド部材は装置本体に対して着脱自在であるので、線材をガイド部材内を通すときは、ガイド部材を装置本体より外した状態で行う。ガイド部材を外して線材の挿通作業をするので、線材の先端部側を曲げることなく、簡単に通すことができるから、作業効率を改善できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軟質な材質からなる糸はんだなどの線材を繰り出すことができる線材繰り出し装置およびその線材繰り出し装置に使用できる線材巻回用のカートリッジに関する。
【0002】
詳しくは、線材の繰り出し方向にこの線材を挿通させた状態で案内するガイド部材を装置本体(ケース)に対して着脱自在となるようにすることで、ガイド部材に対する線材の挿通を簡単に行えるようにしたものである。またそのような軟質線材を容易に巻回できるようにしたものである。
【背景技術】
【0003】
ICチップや抵抗、コンデンサなどの各種電子部品をプリント基板などの回路基板に実装した上ではんだ付けする場合には、一般にフローソルダリングやリフローソルダリングなどの手法が用いられる。
【0004】
この他に実装密度が高密度化するに伴ってフローソルダリングやリフローソルダリングの手法によっては、はんだ付けすることが困難な場合が生ずる。さらに、これらフローソルダリングやリフローソルダリングによっては確実にはんだ付けできないことも発生する。そのような場合に再はんだ付け処理のための修理を行ったり、手動ではんだ付けする場合には、はんだごてを使用したマニュアルソルダリングによってはんだ付けされる。
【0005】
最近では、面実装密度が高密度化するに伴い、回路基板に形成される配線パターンが狭ピッチ化する傾向にあり、そのため電子部品をはんだ付けするランド面積も非常に狭い。その結果、マニュアルソルダリングに使用するはんだの線径も非常に小さくなり、最近では線径が0.1〜0.5mmのように極細の糸はんだが使用されている。糸はんだは、通常松脂などのフラックスを有したいわゆるヤニ入りはんだが多用されている。
【0006】
このように極細の糸はんだは、軟質な材質からなる線材であるためにボビンに巻回されたままの糸はんだを引き出しただけでは使用することができない。腰が折れてしまうからである。そのため、このような極細の糸はんだを用いてはんだ付けする場合には、線材繰り出し装置のような治具を用いてはんだを供給してはんだ付けする場合が多い。
【0007】
このような目的で使用される線材繰り出し装置として従来から特許文献1のような装置が使用されている。この線材繰り出し装置は、極細の糸はんだを巻き付けたボビンを装置本体(ケース)内に収納し、ガイド部材を介して所定量(所定長)の糸はんだを外部に引き出して使用するものである。
【0008】
【特許文献1】特開2006−182514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に開示された線材繰り出し装置にあって、線材を挿通するガイド部材は、多少その角度は調整し得るものの、装置本体に固定された状態にあるため、ガイド部材の挿通孔が装置本体からは僅かしか浮いた状態になく、ガイド部材に穿設された挿通孔まで線材である糸はんだを導きにくい。そのため、糸はんだをこの挿通孔内に挿通してガイド部材に設けられたパイプの先端まで引き出すことが非常に難しくなる。
【0010】
これは、糸はんだが極細であり、しかも非常に軟質であるために腰が弱く、曲がりやすいからである。挿通孔の入り口付近の孔径が小さく、しかも糸はんだの先端が少しでも挿通孔の入り口付近に当たってしまうと、直ぐに糸はんだの先端が折れ曲がってしまう。
【0011】
先端部付近が一旦折れ曲がると、折れ曲がったままでは糸はんだの先端を挿通孔内に導くことができなくなるので、折れ曲がった部分を切り取ってからでないと、挿通作業を再開できない。
【0012】
また、糸はんだの先端ではなく、その後端側が折れ曲がっても同じような理由で挿通孔内に糸はんだを差し込むことができなくなってしまう。
【0013】
このように、ガイド部材が装置本体内に固定されているため、作業空間が狭く、0.1〜0.5mm程度の線材を、これよりも若干広い内径を有する挿通孔内に手差しする作業であるために、非常に作業しづらい環境で糸はんだを挿通しなければならない。
【0014】
また、この特許文献1に記載された技術では、線材である糸はんだを外部に繰り出せるように装置本体に装着するには、例えば一方のローラを軸から外して他方のローラの周面を開放し、その状態でガイド部材内に糸はんだを通し、糸はんだを通した状態で、他方のローラの周面に糸はんだを這わせ、その後で一方のローラを軸に嵌め込む。こうすることで、糸はんだは一対のローラに挟持された状態になるので、一方のローラを回動させれば、糸はんだをボビンからガイド部材側に繰り出すことができる。
【0015】
このように、糸はんだを装置本体に収納させてからガイド部材より糸はんだを取り出すまでの交換作業などが非常に面倒である。使用する糸はんだの線径が0.3mm程度の太さであるときは、ガイド部材に穿設された挿通孔の内径は0.4mm程度であって、線材入口付近がロート状に拡幅されていたとしてもその外径は数mm程度に過ぎないから、ガイド部材を装置本体内に取り付けた状態でその挿入作業を行うには相当な困難を伴うことは容易に理解できる。糸はんだの線径がさらに細くなれば、一層困難な作業になる。
【0016】
そこで、この発明はこのような従来の課題を解決したものであって、特に軟質の材質からなる線材を比較的簡単に装置本体に装着してガイド部材を介して外部に取り出すことができるようにした線材繰り出し装置およびこの線材繰り出し装置に使用される線材巻回用のカートリッジを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載したこの発明に係る線材繰り出し装置は、軟質な材質からなる線材を少なくとも一対のローラで挟持すると共に、線材の繰り出し方向に上記線材をガイド部材で案内して繰り出すようにした線材繰り出し装置であって、
上記ガイド部材は装置本体に対して着脱自在になされたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項4に記載したこの発明に係るカートリッジは、軟質な材質からなる線材を少なくとも一対のローラで挟持すると共に、線材の繰り出し方向に上記線材をガイド部材で案内して繰り出すようにした線材繰り出し装置に対して着脱自在になされたことを特徴とする。
【0019】
線材繰り出し装置の本体は扁平で、円盤状をなす収納ケースとなされ、その内部に線材例えば糸はんだを巻回したカートリッジが収納される。
【0020】
装置本体の一部は膨出部となされ、膨出部に近接して線材取り出し用のガイド部材が取り付け固定される。膨出部には繰り出し手段が配される。繰り出し手段は、一対のローラで構成され、外部より操作できるローラが繰り出しローラとなる。線材はこの繰り出しローラとこれに転接した従動ローラに挟持された状態でクリック音を発してガイド部材側に繰り出される。
【0021】
ガイド部材は、装置本体内の線材を外部に導出するためのガイド手段である。線材が軟質な材質からなるものであるから、このガイド部材がないと線材を所定長だけ正しく引き出すことが困難となる。
【0022】
したがってガイド部材を構成する本体にはパイプが取り付けられ、このパイプと係止部内に穿設された挿通孔とが連通するようになされている。挿通孔およびパイプの内径は、使用する線材の線径によって相違する。
【0023】
ガイド部材は、装置本体に対して着脱自在である。繰り出しローラは、装置本体に垂設された軸筒に回動自在に軸支されるが、繰り出しローラは軸筒に対して遊嵌できるように選定されている。そのため、繰り出しローラの内径は軸筒の外径よりも僅かに大きく選定されると共に、繰り出しローラに対しては常時外方への付勢力が働くようになっている。
【0024】
線材は、ボビン状をなすカートリッジに巻回されたものが使用される。装置本体に取着したカートリッジより線材を引き出して装置本体外まで導出するには、まず装置本体をなす一対のケースの係合状態を解く。そして装置本体よりガイド部材を外す。
【0025】
カートリッジより引き出された線材の先端部を係止部に設けられた挿通孔に通す。このときガイド部材は装置本体より外されているため、ガイド部材に対する線材挿通作業は比較的簡単であり、軟質な線材を曲げることなく係止部からパイプ先端まで挿通させることができる。
【0026】
このパイプより引き出した線材は一旦仮止めするなどして線材がガイド部材から抜け出さないようにする。その後、繰り出しローラと従動ローラとの転接領域内に線材を引き込む。
【0027】
常時は繰り出しローラには外方に、すなわち従動ローラから離間する方向に向かう付勢力が作用しているため、極めて僅かではあるが、従動ローラに対して繰り出しローラが離間した状態となっている。
【0028】
その結果、繰り出しローラは従動ローラの周面に軽く接触した状態となっているから、この接触面に線材を這わせれば、比較的簡単に線材を一対のローラによって挟持させることができる。一対のローラに線材を挟持させた後は、ガイド部材を装置本体の係止凹部内に装着することで、外部を装置本体に固定でき、これで一連の線材導出作業が終了する。
【発明の効果】
【0029】
この発明では、軟質な材質からなる線材を少なくとも一対のローラで挟持し、線材の繰り出し方向に線材をガイド部材で案内して繰り出す線材繰り出し装置であって、ガイド部材を装置本体に対して着脱自在となるように構成したものである。
【0030】
これによれば、装置本体からガイド部材を外した状態で線材を挿通させることができるため、糸はんだのように線材が軟質な材質から構成され、曲がり易く、線径が極細であったとしても、ガイド部材への線材挿通を比較的簡単に行うことができる。そのため、線材取着作業およびその交換作業をスムーズに行える特徴を有する。
【0031】
また、この発明に係るカートリッジは、本装置に対して着脱式であって、ボビン内に線材が巻回されているため、線材の保管および取り扱いが容易になるし、本装置への挿脱を簡単に行うことができるなどの特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
続いて、この発明に係る線材繰り出し装置およびこれに使用されるカートリッジの好ましい実施例を図面を参照して詳細に説明する。以下説明する軟質な材質からなる線材としては、マニュアルソルダリング時に使用する糸はんだを例示する。また、線径が0.1〜0.5mm程度のヤニ入りはんだを例示する。
【実施例1】
【0033】
図1以下を参照して線材として糸はんだを使用したときの線材繰り出し装置10について説明する。
【0034】
図1に示すように、本装置10は、収納ケースとしての右ハーフ12Aと左ハーフ12Bで構成され、これらが合体された状態で使用される。両ハーフ12A,12Bは何れも扁平で、ほぼ円形をなす樹脂製の半ケースである。本装置10には線材収納部10Aが設けられ、ここに線材が巻回されたカートリッジ80(図13参照)が回動自在に収納される。
【0035】
線材収納部10Aの一部、この例では上部前方が膨出部30となされ、この膨出部30内に線材を装置外に繰り出す(送り出す)繰り出し手段40が設けられる。
【0036】
膨出部30の連なる前方側は、膨出部30よりもさらに少しばかり突出した取り付け部58となされ、ここに線材をガイドしながら外部に導出するためのガイド部材60が着脱自在に取り付けられる。
【0037】
左ハーフ12Bには、図2に示すようにそのほぼ中央部に窓孔110が設けられ、収納されたカートリッジ80を外部から回転させられるようになされている。線材の弛みを吸収できるようにするためである。
【0038】
図3は右ハーフ12Aの外側の形状例を示すもので、一部は相違するものの図2に示す左ハーフ12Bとほぼ対をなす形状となっている。
【0039】
図4は右ハーフ12Aの内側の構成例を示す。図5〜図7に示すようにこの右ハーフ12Aはほぼ円形で、所定の深みを有する連結用の枠辺14を有し、枠辺14の内部中央部には、図5などに示すように後述するカートリッジ80を軸支するための軸筒20が垂設され、この軸筒20を囲繞するように筒状リブ22が配設される。
【0040】
筒状リブ22は軸支されたカートリッジ80のフランジ(後述する)がハーフ内面に直接摺接しないようにするためであって、その外径はフランジの外径よりも小さい。
【0041】
膨出部30にはその所定位置に軸筒46が垂設される。この軸筒46は繰り出し手段40を構成する繰り出しローラ42(図25参照)を回動自在に軸支するためのものである。
【0042】
膨出部30に対応した枠辺14には所定の範囲に亘って窓孔として機能する切り欠き部34が設けられる。繰り出しローラ42を軸支したとき、繰り出しローラ42の周面の一部がこの切り欠き部34を通して外部に露出するように、繰り出しローラ42の外径と軸筒46の垂設位置が選定される。繰り出しローラ42の周面の一部を外部に露出させるのは、繰り出しローラ42を外部より回動操作できるようにするためである。
【0043】
軸筒46に近接してこの軸筒46よりも小径な軸筒48が垂設される。この軸筒48は繰り出しローラ42に転接する従動ローラ44(図25参照)が軸支される。転接するこれら繰り出しローラ42と従動ローラ44とで後述する線材が挟持される。
【0044】
2つの軸筒46,48は、図5に示すように一対のハーフ12A,12Bを連結したとき他方のハーフ(この例では左ハーフ12B)の内面にほぼ接する高さに選定され、左ハーフ12Bによっても軸筒46,48が支えられるようになっている。
【0045】
膨出部30の前方に、これと連なるように設けられた取り付け部58は、膨出部30よりもさらに少しばかり外部に突出しており、この取り付け部58の先端部側には係合凹部59a(図7参照)が設けられ、ここに後述するガイド部材60が着脱自在に取り付け固定される。
【0046】
枠辺14の所定位置には、ほぼ180°の間隔を保持して係合孔108aを有する一対の係合部108が設けられているが(図4〜図6参照)、その詳細については後述する。
【0047】
膨出部30内に垂設された軸筒46,48と係合凹部59aとの間であって、係合凹部59aに接近したケース内部には、図4に示すように、ほぼハの字状をなしてケース開放面側に向かって開口された第1の衝合ガイド片70(70A)が一体形成されている。第1の衝合ガイド片70Aはほぼ枠辺14の高さと同じである。
【0048】
これに対して係合凹部59aとは反対側の筒状リブ22側であって、多少軸筒48側寄りに、第1の当接ガイド片72(72A)が垂設されている。
【0049】
この第1の当接ガイド片72Aは細長い板体であって、図5に示すようにその上端側には、その上端側が開放されたU字状ガイド76a(図32参照)が設けられている。第1の当接ガイド片72Aの高さは図5および図7に示すように、枠辺14よりも僅かに高い。その理由は後述する。
【0050】
図8〜図12は左ハーフ12Bの構成例を示す。まず図8において、上述の係合部108に対向した枠辺16には係合手段100の一部を構成する操作片104,104がそれぞれ設けられる。この例では左右に切り込み102を設けることによって着脱操作時(押圧操作)に操作片104を撓み易くしている。
【0051】
操作片104は、図9に示すように両ハーフ12A,12Bの挿脱を操作し易くするために外部に多少突出した突起部となされている。操作片104の先端部は外側に向かった係合突起106となされ、この係合突起106によって両ハーフ12Aと12Bとの連結および開放が行われる(図24参照)。
【0052】
左ハーフ12Bのほぼ中央部に形成された窓孔110には、図9に示すように左ハーフ12Bの内側に延びる筒状フランジ112が一体形成されている。この
筒状フランジ112は、カートリッジ80を構成する筒状胴部82(図14参照)が挿通できる大きさ(外径)となされる(図24参照)。筒状フランジ112の外周には、右ハーフ12Aの筒状リブ22と同じ大きさに選定された筒状リブ24が一体形成されている。
【0053】
図10は、左ハーフ12Bの内側の構成例である。左ハーフ12Bは右ハーフ12Aと対をなすものであるから、対象な位置に対応する部材が設けられている(図11、図12参照)。
【0054】
膨出部30の内面には僅かに突出した円形凸部36a、36bが設けられているが、これらの円形凸部36a、36bは右ハーフ12Aの軸筒46,48の先端部と当接する位置に設けられている。
【0055】
同様に、第2の衝合ガイド片70(70B)も、第1の衝合ガイド片70Aと対象をなす形状および大きさに選定されると共に、その端面同士が第1の衝合ガイド片70Aと衝合する位置に設けられている。
【0056】
これに対して第2の当接ガイド片72Bは、図30および図32に示すようにその側面同士が当接するように、板体の厚み分だけずらされた状態で垂設される。その結果、図30および図32に示すようにそれぞれのU字状ガイド76a、76bが互いに向き合うようになるが、先端側の一部が互いに重なるために、両U字状ガイド76a、76bによって形成される孔の大きさが規制されることになる。
【0057】
この規制孔は後述する線材120を安定してカートリッジ80側から繰り出し手段40側に引き出せるようにするためである。そのため、線材120の線径よりも十分大きな孔径となるようにU字状ガイド76a、76bの深さと幅が選定されている。
【0058】
取り付け部58に設けられた係合凹部59bも、図11に示すように、右ハーフ12Aの係合凹部59aと同じ形状となされる。図29に示すようにこれら一対の係合凹部59a、59bによって後述するガイド部材60を挟持することができる。これによって、ガイド部材60を本装置10に対して着脱自在に構成できる。
【0059】
図13〜図16は、カートリッジ80の構成例を示す。このカートリッジ80は線材120を巻回した状態で保管するためのもので、ボビン構成である。
【0060】
図14以下に示すようにこのカートリッジ80は筒状胴部82を有し、この筒状胴部82の両端に円形フランジ84a、84bが一体形成されたものであり、筒状胴部82は図13および図16に示すように複数のリブ86によって筒状胴部82の内側に設けられた内部軸筒88と連結される。
【0061】
ここで、図24に示すように内部軸筒88の内径は、右ハーフ12Aの軸筒20と外接する大きさに選定され、筒状胴部82の内径は、左ハーフ12Bの筒状フランジ112に内接する大きさに選定されている。このように両ハーフ12A、12Bによってカートリッジ80を回動自在に挟持することで、カートリッジ80を安定して回動させることができる。
【0062】
図13および図15にそれぞれ示すように、一方のフランジ84a側には外部に連通したスリット90が設けられている。このスリット90に線材120の巻始め端および巻き終わり端を引っ掛けることによって、線材120をむらなく巻回できると共に、巻き崩れを防止できる。
【0063】
内部軸筒88の頂部中央部にはスリット状の凹部92が形成されている。この凹部92は治具装着用の凹部として機能するものである。マイナスドライバーなどをここに嵌め込んで回転させることで、線材120の緩みをとることができる。
【0064】
なお、両フランジ84a、84bの内面には図15などに示すように多少の段差を持たせてある。この段差によって線材120を繰り出すとき、フランジ84a、84bの内面を線材120が摺接しながら繰り出されることがなくなるので、それだけ繰り出し時の線材120の摺動抵抗を少なくできる。
【0065】
このように線材120をボビン形状のカートリッジに巻回すると、線材120の保管および取り扱いが容易になるし、本装置10への挿脱を簡単に行うことができる。凹部92によって線材装着後における線材120の撓みを簡単に吸収できるから、常に安定して線材120を供給できるので、マニュアルソルダリング作業などの時間短縮を図れる。
【0066】
図17は、繰り出しローラ42の一例を示すもので、その一端側にはギア52が付設されている。このギア52は繰り出しローラ42の不用意な回転を阻止する逆回転阻止手段50の一部材として機能する。詳細は後述する。
【0067】
図18〜図21はガイド部材60の一例を示す。
図18に示すようにこのガイド部材60は、ガイド部材本体60Aと、この本体60Aに連結された線材ガイド用の導出パイプ68(図19参照)とで構成される。
【0068】
ガイド部材本体60Aは収納ケースと同じく扁平な漏斗状をなし、導出パイプ取り付け側とは反対側には、このガイド部材本体60Aを左右のハーフ12A,12Bに着脱自在に取り付け固定するための係合胴部61が一体形成されている。
【0069】
係合胴部61は図20に示すように断面形状が円形をなし、この係合胴部61に連なってその上下方向には、180°対向する方向に一対の係止リブ62,62が一体的に設けられる。さらに、係合胴部61の遊端側には係止フランジ64が一体形成されている。係止フランジ64は左右ハーフ12A,12Bの内側に係止されるものであるから、係合胴部61の幅は左右ハーフ12A,12Bの厚み分に相当する幅となされる。
【0070】
ガイド部材60は図29に示すように一対の係合凹部59a、59b間に嵌合装着されるものであるから、係合後にもがたつかないようにそれぞれの寸法などが適宜選定されることになる。
【0071】
一対のリブ62,62を設けることによって、図29に示すようにガイド部材60の左右回転が阻止され、係止フランジ64によってガイド部材60の本装置10からの抜け(離脱)を阻止できる。
【0072】
また、図21に示すようにガイド部材本体60Aと係合胴部61内を貫通するように線材挿通孔66が穿設される。この線材挿通孔66にあって、係合胴部61の開口端面側が線材120の誘導孔66aとして機能する。線材120を差し込みやすくするため図のように漏斗状に開口されている。
【0073】
中心部に位置する挿通孔66はガイド用の細孔66bとして機能する。そして係止フランジ64と相対する側に位置する挿通孔66はパイプ連結孔66cとして機能する。このパイプ連結孔66c内に導出パイプ68が嵌入固定される。
【0074】
導出パイプ68は金属製のパイプが使用されている。その外径は1〜2mm程度である。導出パイプ68を嵌入したとき細孔66bの内側に導出パイプ68の嵌入端面が突きでて段差が生じないように、導出パイプ68の内径は、細孔66bよりも若干大きく選定することもできる。
【0075】
挿通孔66の内径と線材120の線径との関係について次に説明する。線材120の線径に対して挿通孔66の内径があまりに大きいと、却って線材120を誘導しにくくなるし、反対に線径よりも僅かに大きいときは、孔内壁面に引っ掛かり易くなる。そのため、線径と内径との関係は非常に重要である。
【0076】
線材120として、上述したように極細の糸はんだの場合、その線径は0.1〜0.5mm程度である。仮に、線径0.3mmの糸はんだの場合には、挿通孔66のうち特にガイド用細孔66bおよび導出パイプ68の内径がそれぞれ、0.4〜0.5mm程度(例えば0.41mm)であり、誘導孔66aの最大開口部径は2〜4mm程度に選定される。この例では、導出パイプ68は細孔66bの内径と同じ内径に選んだ場合を示す。
【0077】
糸はんだの線径がさらに細い場合には、それに応じて挿通孔66の対応する部分径が選定されることになる。例えば、線径が0.25mmであるときは、細孔66bおよび導出パイプ68の内径は、0.33〜0.37mm程度(好ましくは0.35mm)に選ばれる。
【0078】
このように、ガイド部材を着脱自在としたため、使用する線径に応じた内径を有するガイド部材を複数用意しておけば、使用する線材の線径に応じた、最適な内径を有する挿通孔66を備えたガイド部材に交換して使用することができる。
【0079】
図22以下は内部にカートリッジ80を収納し、ガイド部材60を取り付けた状態の説明図である。図22は右ハーフ12Aから見た図であり、その上面図を図23に示す。膨出部30をケースの上部に位置させたのは線材120の繰り出し操作をし易くするためである。
【0080】
カートリッジ80の収納状態を図24に示す。カートリッジ80の両フランジ84a、84bの外面は何れも筒状リブ22,24によって支えられているため、両フランジ84a、84bは左右ハーフ12A,12Bの内面から浮いた状態となり、ケース内面に接することはない。これによって、少ない回動力でカートリッジ80を回動できる。
【0081】
また、図23および図24に示すように係合突起106は係合孔108aに係合しているので、操作片104を撓ませてその係合を解除しない限り、両ハーフ12A,12Bが外れることはない。
【0082】
右ハーフ12Aを外した状態が図25となる。図25は線材120の繰り出し経路や、逆回転阻止手段50の作用を夫々説明するための図である。繰り出しローラ42は左ハーフ12B側に置いた状態を示す。ギア52は左ハーフ12Bの内面と対峙するように軸支されるので、繰り出しローラ42は仮想線で示す。
【0083】
カートリッジ80より繰り出された線材120は第2の当接ガイド片72B内を通過してから繰り出しローラ42と従動ローラ44によって挟持されながら第2の衝合ガイド片70Bへと導かれる。さらに第2の衝合ガイド片70Bへと導かれた線材120はガイド部材60の誘導孔66a内に引き込まれ、さらに導出パイプ68へと導かれるため、最終的には導出パイプ68より外部に導出されることになる。
【0084】
実際、ガイド部材60内に線材120を引き込むには、次のような作業手順が好ましいと考えられる。その一例を説明すると、まずガイド部材60を本装置10から取り外し、誘導孔66aを上にした状態でカートリッジ80から引き出した線材120の先端を誘導孔66aの漏斗状入口まで導き、そのまま誘導孔66a内に差し入れて、送り出す。
【0085】
線材120の先端が導出パイプ68より露出した段階で、その先端を導出パイプ68に絡めて仮止めする。その後、ガイド部材60を係合凹部59a(59b)内に装着し、続いてカートリッジ80を軸筒20に差し込み、カートリッジ80を軸支した状態で繰り出しローラ42と従動ローラ44との転接面内に線材120を差し込む作業を行うことで、線材120の装着作業が終了する。
【0086】
続いて、上述した繰り出し手段40の構成と、差し込み作業についてさらに詳述する。
【0087】
図26は図25の要部拡大図であって、繰り出しローラ42の軸孔42aの内径φaは、その軸筒46の外径φbよりも僅かに大きく選定される。その差Δφは、
Δφ=0.3〜0.5mm
程度である。このような差分Δφがあることで、その差分Δφだけ繰り出しローラ42は軸筒46に対して遊嵌される。
【0088】
一方、繰り出しローラ42に付設されたギア52と対向する枠辺16の内側にはバネの係止用凹部56が設けられ、ここに当接バネ54を嵌め込む。ギア52と当接バネ54によって逆回転阻止手段50が構成され、当接バネ54の先端部は従動ローラ44の転接点に近いギア52の歯部に当接するようにその長さと当接位置が選定されている。
【0089】
当接バネ54がないときは、繰り出しローラ42と従動ローラ44とは図26のように転接した状態にあるが、当接バネ54をギア52に当接させると繰り出しローラ42に当接バネ54の付勢力が作用するため、繰り出しローラ42は差分(クリアランス)Δφだけ従動ローラ44から離間する方向にシフトする(図27参照)。離間は差分Δφだけであるので、図27は実際より遙かに誇張して描いてある。
【0090】
このように、繰り出しローラ42に対して押圧力を加えない限り図27のように繰り出しローラ42が従動ローラ44から離間する方向にシフトしているので、繰り出しローラ42と従動ローラ44との間隙内に線材120を挿入し易くなる。つまり差し込み易くなるので、線材120を挟みやすく、挿着作業が非常に簡単になる。
【0091】
これに加えて、当接バネ54がギア52に当接しているため、繰り出しローラ42を時計方向に回したときには、ギア52に当接バネ54がくい込むので繰り出しローラ42は回らない。そのため、線材繰り出し方向とは反対側への不用意な回転力が繰り出しローラ42に加わっても線材120が送り出されたり、戻されたりすることがなくなるので、特に線材120の不用意な弛みを防止できる。
【0092】
また、線材120の緩みをとるためにカートリッジ80の凹部92にマイナスドライバーなどを差し込んで、線材120の巻き戻し方向にカートリッジ80を回転させる場合、繰り出しローラ42を使用していないときは、繰り出しローラ42は従動ローラ44から離間しているので、逆回転阻止手段50があっても線材の巻き戻しには支障をきたさない。
【0093】
繰り出しローラ42に対して図28に示すように従動ローラ44方向に力を付与すると共に反時計方向に回すと、繰り出しローラ42は従動ローラ44にしっかりと転接するため、線材120がガイド部材60側にギア52の回動ピッチ分だけ順次繰り出される。
【0094】
当接バネ54の爪54aはギア52の歯部に噛合しているため、繰り出しローラ42の反時計方向は許容し得るが、時計方向への回動は阻止される。その結果、繰り出しローラ42の時計方向への回動に伴う線材120の弛み、緩みを防止できる。
【0095】
また、当接バネ54の爪54aが軸筒46方向に曲げられているので、当接バネ54の付勢力を無駄なくギア52側に伝達できるようになり、バネ力の弱い当接バネ54でも十分実用に耐え得る。
【0096】
図30は、線材120をガイド部材本体60A内に挿通させた状態の部分断面図である。左右ハーフ12A,12Bを連結することで、図30および図31のように第1および第2の衝合ガイド片70A,70Bの端面同士が衝合し合い、これで夫々の段部74a,74bによって形成される空間によって線材120の繰り出し方向を規制できる。
【0097】
また図31および図32に示すように第1および第2の当接ガイド片72A,72Bによってその側面同士が当接し合うので、線材120の繰り出し方向に対するガイドが確実となり、線材120を安定に規制した状態で外部に導出できる。
【0098】
図33は、線材120として糸はんだを使用したときの本装置10の使用状態を示す。プリント基板などの回路基板130上の回路パターンに形成された接続端子(ランド)132、132間に抵抗などのチップ部品134が載置されたとき、本装置10より繰り出された糸はんだ120をはんだごて140で溶融させてはんだ付けされる。
【0099】
線材120の繰り出し量はギア52の回動ピッチ数によって調整できるので、必要量だけ確実に接続端子132側に供給できる。また、当接バネ54が、ギア52の山部から谷部に乗り越えるごとに「カチッ、カチッ」というクリック音が発生するので、このクリック音をもって線材120の繰り出し量の目安とすることができる。
【0100】
フローソルダリングやリフローソルダリングにおける不良接合個所があった場合でも、本装置10を用いてはんだ付けの修復が行われる。
【0101】
上述した実施例は、この発明をマニュアルソルダリングなどに用いられる糸はんだを繰り出す線材繰り出し装置に適用した例であるが、軟質な材質からなり、ガイド部材によってその繰り出しをガイド(補助)する必要があるような線材に対する供給装置としてこの発明を適用できることは容易に理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
この発明は、糸はんだのように軟質な材質からなる線材を装置本体から繰り出して使用するソルダリング用線材繰り出し装置およびこの装置に使用されるカートリッジなどに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】この発明に係る線材繰り出し装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1を左ハーフ側から見た平面図である。
【図3】右ハーフを外側から見た平面図である。
【図4】右ハーフを内側から見た平面図である。
【図5】図4のA−A線上断面図である。
【図6】図4のB−B線上断面図である。
【図7】右ハーフの左側面図である。
【図8】左ハーフを外側から見た平面図である。
【図9】図8のC−C線上断面図である。
【図10】左ハーフを内側から見た平面図である。
【図11】図10の右側面図である。
【図12】図10の左側面図である。
【図13】カートリッジの平面図である。
【図14】カートリッジの上面図である。
【図15】図13のD−D線上断面図である。
【図16】図13のE−E線上断面図である。
【図17】繰り出しローラの一例を示す斜視図である。
【図18】ガイド部材の一例を示す斜視図である。
【図19】ガイド部材の平面図である。
【図20】図19のG−G線上断面図である。
【図21】図19のF−F線上断面図である。
【図22】カートリッジを装着し、ガイド部材を取り付けた状態を、その右ハーフ側より見た平面図である。
【図23】カートリッジを装着し、ガイド部材を取り付けた状態の上面図である。
【図24】図22のH−H線上断面図である。
【図25】図22のうち、右ハーフを外した状態の平面図である。
【図26】図25の一部拡大平面図である。
【図27】図26の動作説明例を示す一部拡大平面図である(その1)。
【図28】図26の動作説明例を示す一部拡大平面図である(その2)。
【図29】ガイド部材の取り付け状態を示す部分拡大断面図である。
【図30】ガイド部材を含む一部の部分拡大断面図である。
【図31】衝合ガイド片の一部拡大断面図である。
【図32】当接ガイド片の一部拡大断面図である。
【図33】この発明に係る線材繰り出し装置の使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0104】
10・・・線材繰り出し装置、10A・・・線材収納部、12A,12B・・・ハーフ、30・・・膨出部、40・・・繰り出し手段、42・・・繰り出しローラ、44・・・従動ローラ、50・・・逆回転阻止手段、60・・・ガイド部材、61・・・係合胴部、59・・・取り付け部、68・・・導出パイプ、80・・・カートリッジ、90・・・スリット、92・・・治具装着用凹部、46・・・軸筒、100・・・係合手段、104・・・操作片、106・・・係合突起、120・・・線材
【技術分野】
【0001】
この発明は、軟質な材質からなる糸はんだなどの線材を繰り出すことができる線材繰り出し装置およびその線材繰り出し装置に使用できる線材巻回用のカートリッジに関する。
【0002】
詳しくは、線材の繰り出し方向にこの線材を挿通させた状態で案内するガイド部材を装置本体(ケース)に対して着脱自在となるようにすることで、ガイド部材に対する線材の挿通を簡単に行えるようにしたものである。またそのような軟質線材を容易に巻回できるようにしたものである。
【背景技術】
【0003】
ICチップや抵抗、コンデンサなどの各種電子部品をプリント基板などの回路基板に実装した上ではんだ付けする場合には、一般にフローソルダリングやリフローソルダリングなどの手法が用いられる。
【0004】
この他に実装密度が高密度化するに伴ってフローソルダリングやリフローソルダリングの手法によっては、はんだ付けすることが困難な場合が生ずる。さらに、これらフローソルダリングやリフローソルダリングによっては確実にはんだ付けできないことも発生する。そのような場合に再はんだ付け処理のための修理を行ったり、手動ではんだ付けする場合には、はんだごてを使用したマニュアルソルダリングによってはんだ付けされる。
【0005】
最近では、面実装密度が高密度化するに伴い、回路基板に形成される配線パターンが狭ピッチ化する傾向にあり、そのため電子部品をはんだ付けするランド面積も非常に狭い。その結果、マニュアルソルダリングに使用するはんだの線径も非常に小さくなり、最近では線径が0.1〜0.5mmのように極細の糸はんだが使用されている。糸はんだは、通常松脂などのフラックスを有したいわゆるヤニ入りはんだが多用されている。
【0006】
このように極細の糸はんだは、軟質な材質からなる線材であるためにボビンに巻回されたままの糸はんだを引き出しただけでは使用することができない。腰が折れてしまうからである。そのため、このような極細の糸はんだを用いてはんだ付けする場合には、線材繰り出し装置のような治具を用いてはんだを供給してはんだ付けする場合が多い。
【0007】
このような目的で使用される線材繰り出し装置として従来から特許文献1のような装置が使用されている。この線材繰り出し装置は、極細の糸はんだを巻き付けたボビンを装置本体(ケース)内に収納し、ガイド部材を介して所定量(所定長)の糸はんだを外部に引き出して使用するものである。
【0008】
【特許文献1】特開2006−182514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に開示された線材繰り出し装置にあって、線材を挿通するガイド部材は、多少その角度は調整し得るものの、装置本体に固定された状態にあるため、ガイド部材の挿通孔が装置本体からは僅かしか浮いた状態になく、ガイド部材に穿設された挿通孔まで線材である糸はんだを導きにくい。そのため、糸はんだをこの挿通孔内に挿通してガイド部材に設けられたパイプの先端まで引き出すことが非常に難しくなる。
【0010】
これは、糸はんだが極細であり、しかも非常に軟質であるために腰が弱く、曲がりやすいからである。挿通孔の入り口付近の孔径が小さく、しかも糸はんだの先端が少しでも挿通孔の入り口付近に当たってしまうと、直ぐに糸はんだの先端が折れ曲がってしまう。
【0011】
先端部付近が一旦折れ曲がると、折れ曲がったままでは糸はんだの先端を挿通孔内に導くことができなくなるので、折れ曲がった部分を切り取ってからでないと、挿通作業を再開できない。
【0012】
また、糸はんだの先端ではなく、その後端側が折れ曲がっても同じような理由で挿通孔内に糸はんだを差し込むことができなくなってしまう。
【0013】
このように、ガイド部材が装置本体内に固定されているため、作業空間が狭く、0.1〜0.5mm程度の線材を、これよりも若干広い内径を有する挿通孔内に手差しする作業であるために、非常に作業しづらい環境で糸はんだを挿通しなければならない。
【0014】
また、この特許文献1に記載された技術では、線材である糸はんだを外部に繰り出せるように装置本体に装着するには、例えば一方のローラを軸から外して他方のローラの周面を開放し、その状態でガイド部材内に糸はんだを通し、糸はんだを通した状態で、他方のローラの周面に糸はんだを這わせ、その後で一方のローラを軸に嵌め込む。こうすることで、糸はんだは一対のローラに挟持された状態になるので、一方のローラを回動させれば、糸はんだをボビンからガイド部材側に繰り出すことができる。
【0015】
このように、糸はんだを装置本体に収納させてからガイド部材より糸はんだを取り出すまでの交換作業などが非常に面倒である。使用する糸はんだの線径が0.3mm程度の太さであるときは、ガイド部材に穿設された挿通孔の内径は0.4mm程度であって、線材入口付近がロート状に拡幅されていたとしてもその外径は数mm程度に過ぎないから、ガイド部材を装置本体内に取り付けた状態でその挿入作業を行うには相当な困難を伴うことは容易に理解できる。糸はんだの線径がさらに細くなれば、一層困難な作業になる。
【0016】
そこで、この発明はこのような従来の課題を解決したものであって、特に軟質の材質からなる線材を比較的簡単に装置本体に装着してガイド部材を介して外部に取り出すことができるようにした線材繰り出し装置およびこの線材繰り出し装置に使用される線材巻回用のカートリッジを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載したこの発明に係る線材繰り出し装置は、軟質な材質からなる線材を少なくとも一対のローラで挟持すると共に、線材の繰り出し方向に上記線材をガイド部材で案内して繰り出すようにした線材繰り出し装置であって、
上記ガイド部材は装置本体に対して着脱自在になされたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項4に記載したこの発明に係るカートリッジは、軟質な材質からなる線材を少なくとも一対のローラで挟持すると共に、線材の繰り出し方向に上記線材をガイド部材で案内して繰り出すようにした線材繰り出し装置に対して着脱自在になされたことを特徴とする。
【0019】
線材繰り出し装置の本体は扁平で、円盤状をなす収納ケースとなされ、その内部に線材例えば糸はんだを巻回したカートリッジが収納される。
【0020】
装置本体の一部は膨出部となされ、膨出部に近接して線材取り出し用のガイド部材が取り付け固定される。膨出部には繰り出し手段が配される。繰り出し手段は、一対のローラで構成され、外部より操作できるローラが繰り出しローラとなる。線材はこの繰り出しローラとこれに転接した従動ローラに挟持された状態でクリック音を発してガイド部材側に繰り出される。
【0021】
ガイド部材は、装置本体内の線材を外部に導出するためのガイド手段である。線材が軟質な材質からなるものであるから、このガイド部材がないと線材を所定長だけ正しく引き出すことが困難となる。
【0022】
したがってガイド部材を構成する本体にはパイプが取り付けられ、このパイプと係止部内に穿設された挿通孔とが連通するようになされている。挿通孔およびパイプの内径は、使用する線材の線径によって相違する。
【0023】
ガイド部材は、装置本体に対して着脱自在である。繰り出しローラは、装置本体に垂設された軸筒に回動自在に軸支されるが、繰り出しローラは軸筒に対して遊嵌できるように選定されている。そのため、繰り出しローラの内径は軸筒の外径よりも僅かに大きく選定されると共に、繰り出しローラに対しては常時外方への付勢力が働くようになっている。
【0024】
線材は、ボビン状をなすカートリッジに巻回されたものが使用される。装置本体に取着したカートリッジより線材を引き出して装置本体外まで導出するには、まず装置本体をなす一対のケースの係合状態を解く。そして装置本体よりガイド部材を外す。
【0025】
カートリッジより引き出された線材の先端部を係止部に設けられた挿通孔に通す。このときガイド部材は装置本体より外されているため、ガイド部材に対する線材挿通作業は比較的簡単であり、軟質な線材を曲げることなく係止部からパイプ先端まで挿通させることができる。
【0026】
このパイプより引き出した線材は一旦仮止めするなどして線材がガイド部材から抜け出さないようにする。その後、繰り出しローラと従動ローラとの転接領域内に線材を引き込む。
【0027】
常時は繰り出しローラには外方に、すなわち従動ローラから離間する方向に向かう付勢力が作用しているため、極めて僅かではあるが、従動ローラに対して繰り出しローラが離間した状態となっている。
【0028】
その結果、繰り出しローラは従動ローラの周面に軽く接触した状態となっているから、この接触面に線材を這わせれば、比較的簡単に線材を一対のローラによって挟持させることができる。一対のローラに線材を挟持させた後は、ガイド部材を装置本体の係止凹部内に装着することで、外部を装置本体に固定でき、これで一連の線材導出作業が終了する。
【発明の効果】
【0029】
この発明では、軟質な材質からなる線材を少なくとも一対のローラで挟持し、線材の繰り出し方向に線材をガイド部材で案内して繰り出す線材繰り出し装置であって、ガイド部材を装置本体に対して着脱自在となるように構成したものである。
【0030】
これによれば、装置本体からガイド部材を外した状態で線材を挿通させることができるため、糸はんだのように線材が軟質な材質から構成され、曲がり易く、線径が極細であったとしても、ガイド部材への線材挿通を比較的簡単に行うことができる。そのため、線材取着作業およびその交換作業をスムーズに行える特徴を有する。
【0031】
また、この発明に係るカートリッジは、本装置に対して着脱式であって、ボビン内に線材が巻回されているため、線材の保管および取り扱いが容易になるし、本装置への挿脱を簡単に行うことができるなどの特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
続いて、この発明に係る線材繰り出し装置およびこれに使用されるカートリッジの好ましい実施例を図面を参照して詳細に説明する。以下説明する軟質な材質からなる線材としては、マニュアルソルダリング時に使用する糸はんだを例示する。また、線径が0.1〜0.5mm程度のヤニ入りはんだを例示する。
【実施例1】
【0033】
図1以下を参照して線材として糸はんだを使用したときの線材繰り出し装置10について説明する。
【0034】
図1に示すように、本装置10は、収納ケースとしての右ハーフ12Aと左ハーフ12Bで構成され、これらが合体された状態で使用される。両ハーフ12A,12Bは何れも扁平で、ほぼ円形をなす樹脂製の半ケースである。本装置10には線材収納部10Aが設けられ、ここに線材が巻回されたカートリッジ80(図13参照)が回動自在に収納される。
【0035】
線材収納部10Aの一部、この例では上部前方が膨出部30となされ、この膨出部30内に線材を装置外に繰り出す(送り出す)繰り出し手段40が設けられる。
【0036】
膨出部30の連なる前方側は、膨出部30よりもさらに少しばかり突出した取り付け部58となされ、ここに線材をガイドしながら外部に導出するためのガイド部材60が着脱自在に取り付けられる。
【0037】
左ハーフ12Bには、図2に示すようにそのほぼ中央部に窓孔110が設けられ、収納されたカートリッジ80を外部から回転させられるようになされている。線材の弛みを吸収できるようにするためである。
【0038】
図3は右ハーフ12Aの外側の形状例を示すもので、一部は相違するものの図2に示す左ハーフ12Bとほぼ対をなす形状となっている。
【0039】
図4は右ハーフ12Aの内側の構成例を示す。図5〜図7に示すようにこの右ハーフ12Aはほぼ円形で、所定の深みを有する連結用の枠辺14を有し、枠辺14の内部中央部には、図5などに示すように後述するカートリッジ80を軸支するための軸筒20が垂設され、この軸筒20を囲繞するように筒状リブ22が配設される。
【0040】
筒状リブ22は軸支されたカートリッジ80のフランジ(後述する)がハーフ内面に直接摺接しないようにするためであって、その外径はフランジの外径よりも小さい。
【0041】
膨出部30にはその所定位置に軸筒46が垂設される。この軸筒46は繰り出し手段40を構成する繰り出しローラ42(図25参照)を回動自在に軸支するためのものである。
【0042】
膨出部30に対応した枠辺14には所定の範囲に亘って窓孔として機能する切り欠き部34が設けられる。繰り出しローラ42を軸支したとき、繰り出しローラ42の周面の一部がこの切り欠き部34を通して外部に露出するように、繰り出しローラ42の外径と軸筒46の垂設位置が選定される。繰り出しローラ42の周面の一部を外部に露出させるのは、繰り出しローラ42を外部より回動操作できるようにするためである。
【0043】
軸筒46に近接してこの軸筒46よりも小径な軸筒48が垂設される。この軸筒48は繰り出しローラ42に転接する従動ローラ44(図25参照)が軸支される。転接するこれら繰り出しローラ42と従動ローラ44とで後述する線材が挟持される。
【0044】
2つの軸筒46,48は、図5に示すように一対のハーフ12A,12Bを連結したとき他方のハーフ(この例では左ハーフ12B)の内面にほぼ接する高さに選定され、左ハーフ12Bによっても軸筒46,48が支えられるようになっている。
【0045】
膨出部30の前方に、これと連なるように設けられた取り付け部58は、膨出部30よりもさらに少しばかり外部に突出しており、この取り付け部58の先端部側には係合凹部59a(図7参照)が設けられ、ここに後述するガイド部材60が着脱自在に取り付け固定される。
【0046】
枠辺14の所定位置には、ほぼ180°の間隔を保持して係合孔108aを有する一対の係合部108が設けられているが(図4〜図6参照)、その詳細については後述する。
【0047】
膨出部30内に垂設された軸筒46,48と係合凹部59aとの間であって、係合凹部59aに接近したケース内部には、図4に示すように、ほぼハの字状をなしてケース開放面側に向かって開口された第1の衝合ガイド片70(70A)が一体形成されている。第1の衝合ガイド片70Aはほぼ枠辺14の高さと同じである。
【0048】
これに対して係合凹部59aとは反対側の筒状リブ22側であって、多少軸筒48側寄りに、第1の当接ガイド片72(72A)が垂設されている。
【0049】
この第1の当接ガイド片72Aは細長い板体であって、図5に示すようにその上端側には、その上端側が開放されたU字状ガイド76a(図32参照)が設けられている。第1の当接ガイド片72Aの高さは図5および図7に示すように、枠辺14よりも僅かに高い。その理由は後述する。
【0050】
図8〜図12は左ハーフ12Bの構成例を示す。まず図8において、上述の係合部108に対向した枠辺16には係合手段100の一部を構成する操作片104,104がそれぞれ設けられる。この例では左右に切り込み102を設けることによって着脱操作時(押圧操作)に操作片104を撓み易くしている。
【0051】
操作片104は、図9に示すように両ハーフ12A,12Bの挿脱を操作し易くするために外部に多少突出した突起部となされている。操作片104の先端部は外側に向かった係合突起106となされ、この係合突起106によって両ハーフ12Aと12Bとの連結および開放が行われる(図24参照)。
【0052】
左ハーフ12Bのほぼ中央部に形成された窓孔110には、図9に示すように左ハーフ12Bの内側に延びる筒状フランジ112が一体形成されている。この
筒状フランジ112は、カートリッジ80を構成する筒状胴部82(図14参照)が挿通できる大きさ(外径)となされる(図24参照)。筒状フランジ112の外周には、右ハーフ12Aの筒状リブ22と同じ大きさに選定された筒状リブ24が一体形成されている。
【0053】
図10は、左ハーフ12Bの内側の構成例である。左ハーフ12Bは右ハーフ12Aと対をなすものであるから、対象な位置に対応する部材が設けられている(図11、図12参照)。
【0054】
膨出部30の内面には僅かに突出した円形凸部36a、36bが設けられているが、これらの円形凸部36a、36bは右ハーフ12Aの軸筒46,48の先端部と当接する位置に設けられている。
【0055】
同様に、第2の衝合ガイド片70(70B)も、第1の衝合ガイド片70Aと対象をなす形状および大きさに選定されると共に、その端面同士が第1の衝合ガイド片70Aと衝合する位置に設けられている。
【0056】
これに対して第2の当接ガイド片72Bは、図30および図32に示すようにその側面同士が当接するように、板体の厚み分だけずらされた状態で垂設される。その結果、図30および図32に示すようにそれぞれのU字状ガイド76a、76bが互いに向き合うようになるが、先端側の一部が互いに重なるために、両U字状ガイド76a、76bによって形成される孔の大きさが規制されることになる。
【0057】
この規制孔は後述する線材120を安定してカートリッジ80側から繰り出し手段40側に引き出せるようにするためである。そのため、線材120の線径よりも十分大きな孔径となるようにU字状ガイド76a、76bの深さと幅が選定されている。
【0058】
取り付け部58に設けられた係合凹部59bも、図11に示すように、右ハーフ12Aの係合凹部59aと同じ形状となされる。図29に示すようにこれら一対の係合凹部59a、59bによって後述するガイド部材60を挟持することができる。これによって、ガイド部材60を本装置10に対して着脱自在に構成できる。
【0059】
図13〜図16は、カートリッジ80の構成例を示す。このカートリッジ80は線材120を巻回した状態で保管するためのもので、ボビン構成である。
【0060】
図14以下に示すようにこのカートリッジ80は筒状胴部82を有し、この筒状胴部82の両端に円形フランジ84a、84bが一体形成されたものであり、筒状胴部82は図13および図16に示すように複数のリブ86によって筒状胴部82の内側に設けられた内部軸筒88と連結される。
【0061】
ここで、図24に示すように内部軸筒88の内径は、右ハーフ12Aの軸筒20と外接する大きさに選定され、筒状胴部82の内径は、左ハーフ12Bの筒状フランジ112に内接する大きさに選定されている。このように両ハーフ12A、12Bによってカートリッジ80を回動自在に挟持することで、カートリッジ80を安定して回動させることができる。
【0062】
図13および図15にそれぞれ示すように、一方のフランジ84a側には外部に連通したスリット90が設けられている。このスリット90に線材120の巻始め端および巻き終わり端を引っ掛けることによって、線材120をむらなく巻回できると共に、巻き崩れを防止できる。
【0063】
内部軸筒88の頂部中央部にはスリット状の凹部92が形成されている。この凹部92は治具装着用の凹部として機能するものである。マイナスドライバーなどをここに嵌め込んで回転させることで、線材120の緩みをとることができる。
【0064】
なお、両フランジ84a、84bの内面には図15などに示すように多少の段差を持たせてある。この段差によって線材120を繰り出すとき、フランジ84a、84bの内面を線材120が摺接しながら繰り出されることがなくなるので、それだけ繰り出し時の線材120の摺動抵抗を少なくできる。
【0065】
このように線材120をボビン形状のカートリッジに巻回すると、線材120の保管および取り扱いが容易になるし、本装置10への挿脱を簡単に行うことができる。凹部92によって線材装着後における線材120の撓みを簡単に吸収できるから、常に安定して線材120を供給できるので、マニュアルソルダリング作業などの時間短縮を図れる。
【0066】
図17は、繰り出しローラ42の一例を示すもので、その一端側にはギア52が付設されている。このギア52は繰り出しローラ42の不用意な回転を阻止する逆回転阻止手段50の一部材として機能する。詳細は後述する。
【0067】
図18〜図21はガイド部材60の一例を示す。
図18に示すようにこのガイド部材60は、ガイド部材本体60Aと、この本体60Aに連結された線材ガイド用の導出パイプ68(図19参照)とで構成される。
【0068】
ガイド部材本体60Aは収納ケースと同じく扁平な漏斗状をなし、導出パイプ取り付け側とは反対側には、このガイド部材本体60Aを左右のハーフ12A,12Bに着脱自在に取り付け固定するための係合胴部61が一体形成されている。
【0069】
係合胴部61は図20に示すように断面形状が円形をなし、この係合胴部61に連なってその上下方向には、180°対向する方向に一対の係止リブ62,62が一体的に設けられる。さらに、係合胴部61の遊端側には係止フランジ64が一体形成されている。係止フランジ64は左右ハーフ12A,12Bの内側に係止されるものであるから、係合胴部61の幅は左右ハーフ12A,12Bの厚み分に相当する幅となされる。
【0070】
ガイド部材60は図29に示すように一対の係合凹部59a、59b間に嵌合装着されるものであるから、係合後にもがたつかないようにそれぞれの寸法などが適宜選定されることになる。
【0071】
一対のリブ62,62を設けることによって、図29に示すようにガイド部材60の左右回転が阻止され、係止フランジ64によってガイド部材60の本装置10からの抜け(離脱)を阻止できる。
【0072】
また、図21に示すようにガイド部材本体60Aと係合胴部61内を貫通するように線材挿通孔66が穿設される。この線材挿通孔66にあって、係合胴部61の開口端面側が線材120の誘導孔66aとして機能する。線材120を差し込みやすくするため図のように漏斗状に開口されている。
【0073】
中心部に位置する挿通孔66はガイド用の細孔66bとして機能する。そして係止フランジ64と相対する側に位置する挿通孔66はパイプ連結孔66cとして機能する。このパイプ連結孔66c内に導出パイプ68が嵌入固定される。
【0074】
導出パイプ68は金属製のパイプが使用されている。その外径は1〜2mm程度である。導出パイプ68を嵌入したとき細孔66bの内側に導出パイプ68の嵌入端面が突きでて段差が生じないように、導出パイプ68の内径は、細孔66bよりも若干大きく選定することもできる。
【0075】
挿通孔66の内径と線材120の線径との関係について次に説明する。線材120の線径に対して挿通孔66の内径があまりに大きいと、却って線材120を誘導しにくくなるし、反対に線径よりも僅かに大きいときは、孔内壁面に引っ掛かり易くなる。そのため、線径と内径との関係は非常に重要である。
【0076】
線材120として、上述したように極細の糸はんだの場合、その線径は0.1〜0.5mm程度である。仮に、線径0.3mmの糸はんだの場合には、挿通孔66のうち特にガイド用細孔66bおよび導出パイプ68の内径がそれぞれ、0.4〜0.5mm程度(例えば0.41mm)であり、誘導孔66aの最大開口部径は2〜4mm程度に選定される。この例では、導出パイプ68は細孔66bの内径と同じ内径に選んだ場合を示す。
【0077】
糸はんだの線径がさらに細い場合には、それに応じて挿通孔66の対応する部分径が選定されることになる。例えば、線径が0.25mmであるときは、細孔66bおよび導出パイプ68の内径は、0.33〜0.37mm程度(好ましくは0.35mm)に選ばれる。
【0078】
このように、ガイド部材を着脱自在としたため、使用する線径に応じた内径を有するガイド部材を複数用意しておけば、使用する線材の線径に応じた、最適な内径を有する挿通孔66を備えたガイド部材に交換して使用することができる。
【0079】
図22以下は内部にカートリッジ80を収納し、ガイド部材60を取り付けた状態の説明図である。図22は右ハーフ12Aから見た図であり、その上面図を図23に示す。膨出部30をケースの上部に位置させたのは線材120の繰り出し操作をし易くするためである。
【0080】
カートリッジ80の収納状態を図24に示す。カートリッジ80の両フランジ84a、84bの外面は何れも筒状リブ22,24によって支えられているため、両フランジ84a、84bは左右ハーフ12A,12Bの内面から浮いた状態となり、ケース内面に接することはない。これによって、少ない回動力でカートリッジ80を回動できる。
【0081】
また、図23および図24に示すように係合突起106は係合孔108aに係合しているので、操作片104を撓ませてその係合を解除しない限り、両ハーフ12A,12Bが外れることはない。
【0082】
右ハーフ12Aを外した状態が図25となる。図25は線材120の繰り出し経路や、逆回転阻止手段50の作用を夫々説明するための図である。繰り出しローラ42は左ハーフ12B側に置いた状態を示す。ギア52は左ハーフ12Bの内面と対峙するように軸支されるので、繰り出しローラ42は仮想線で示す。
【0083】
カートリッジ80より繰り出された線材120は第2の当接ガイド片72B内を通過してから繰り出しローラ42と従動ローラ44によって挟持されながら第2の衝合ガイド片70Bへと導かれる。さらに第2の衝合ガイド片70Bへと導かれた線材120はガイド部材60の誘導孔66a内に引き込まれ、さらに導出パイプ68へと導かれるため、最終的には導出パイプ68より外部に導出されることになる。
【0084】
実際、ガイド部材60内に線材120を引き込むには、次のような作業手順が好ましいと考えられる。その一例を説明すると、まずガイド部材60を本装置10から取り外し、誘導孔66aを上にした状態でカートリッジ80から引き出した線材120の先端を誘導孔66aの漏斗状入口まで導き、そのまま誘導孔66a内に差し入れて、送り出す。
【0085】
線材120の先端が導出パイプ68より露出した段階で、その先端を導出パイプ68に絡めて仮止めする。その後、ガイド部材60を係合凹部59a(59b)内に装着し、続いてカートリッジ80を軸筒20に差し込み、カートリッジ80を軸支した状態で繰り出しローラ42と従動ローラ44との転接面内に線材120を差し込む作業を行うことで、線材120の装着作業が終了する。
【0086】
続いて、上述した繰り出し手段40の構成と、差し込み作業についてさらに詳述する。
【0087】
図26は図25の要部拡大図であって、繰り出しローラ42の軸孔42aの内径φaは、その軸筒46の外径φbよりも僅かに大きく選定される。その差Δφは、
Δφ=0.3〜0.5mm
程度である。このような差分Δφがあることで、その差分Δφだけ繰り出しローラ42は軸筒46に対して遊嵌される。
【0088】
一方、繰り出しローラ42に付設されたギア52と対向する枠辺16の内側にはバネの係止用凹部56が設けられ、ここに当接バネ54を嵌め込む。ギア52と当接バネ54によって逆回転阻止手段50が構成され、当接バネ54の先端部は従動ローラ44の転接点に近いギア52の歯部に当接するようにその長さと当接位置が選定されている。
【0089】
当接バネ54がないときは、繰り出しローラ42と従動ローラ44とは図26のように転接した状態にあるが、当接バネ54をギア52に当接させると繰り出しローラ42に当接バネ54の付勢力が作用するため、繰り出しローラ42は差分(クリアランス)Δφだけ従動ローラ44から離間する方向にシフトする(図27参照)。離間は差分Δφだけであるので、図27は実際より遙かに誇張して描いてある。
【0090】
このように、繰り出しローラ42に対して押圧力を加えない限り図27のように繰り出しローラ42が従動ローラ44から離間する方向にシフトしているので、繰り出しローラ42と従動ローラ44との間隙内に線材120を挿入し易くなる。つまり差し込み易くなるので、線材120を挟みやすく、挿着作業が非常に簡単になる。
【0091】
これに加えて、当接バネ54がギア52に当接しているため、繰り出しローラ42を時計方向に回したときには、ギア52に当接バネ54がくい込むので繰り出しローラ42は回らない。そのため、線材繰り出し方向とは反対側への不用意な回転力が繰り出しローラ42に加わっても線材120が送り出されたり、戻されたりすることがなくなるので、特に線材120の不用意な弛みを防止できる。
【0092】
また、線材120の緩みをとるためにカートリッジ80の凹部92にマイナスドライバーなどを差し込んで、線材120の巻き戻し方向にカートリッジ80を回転させる場合、繰り出しローラ42を使用していないときは、繰り出しローラ42は従動ローラ44から離間しているので、逆回転阻止手段50があっても線材の巻き戻しには支障をきたさない。
【0093】
繰り出しローラ42に対して図28に示すように従動ローラ44方向に力を付与すると共に反時計方向に回すと、繰り出しローラ42は従動ローラ44にしっかりと転接するため、線材120がガイド部材60側にギア52の回動ピッチ分だけ順次繰り出される。
【0094】
当接バネ54の爪54aはギア52の歯部に噛合しているため、繰り出しローラ42の反時計方向は許容し得るが、時計方向への回動は阻止される。その結果、繰り出しローラ42の時計方向への回動に伴う線材120の弛み、緩みを防止できる。
【0095】
また、当接バネ54の爪54aが軸筒46方向に曲げられているので、当接バネ54の付勢力を無駄なくギア52側に伝達できるようになり、バネ力の弱い当接バネ54でも十分実用に耐え得る。
【0096】
図30は、線材120をガイド部材本体60A内に挿通させた状態の部分断面図である。左右ハーフ12A,12Bを連結することで、図30および図31のように第1および第2の衝合ガイド片70A,70Bの端面同士が衝合し合い、これで夫々の段部74a,74bによって形成される空間によって線材120の繰り出し方向を規制できる。
【0097】
また図31および図32に示すように第1および第2の当接ガイド片72A,72Bによってその側面同士が当接し合うので、線材120の繰り出し方向に対するガイドが確実となり、線材120を安定に規制した状態で外部に導出できる。
【0098】
図33は、線材120として糸はんだを使用したときの本装置10の使用状態を示す。プリント基板などの回路基板130上の回路パターンに形成された接続端子(ランド)132、132間に抵抗などのチップ部品134が載置されたとき、本装置10より繰り出された糸はんだ120をはんだごて140で溶融させてはんだ付けされる。
【0099】
線材120の繰り出し量はギア52の回動ピッチ数によって調整できるので、必要量だけ確実に接続端子132側に供給できる。また、当接バネ54が、ギア52の山部から谷部に乗り越えるごとに「カチッ、カチッ」というクリック音が発生するので、このクリック音をもって線材120の繰り出し量の目安とすることができる。
【0100】
フローソルダリングやリフローソルダリングにおける不良接合個所があった場合でも、本装置10を用いてはんだ付けの修復が行われる。
【0101】
上述した実施例は、この発明をマニュアルソルダリングなどに用いられる糸はんだを繰り出す線材繰り出し装置に適用した例であるが、軟質な材質からなり、ガイド部材によってその繰り出しをガイド(補助)する必要があるような線材に対する供給装置としてこの発明を適用できることは容易に理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
この発明は、糸はんだのように軟質な材質からなる線材を装置本体から繰り出して使用するソルダリング用線材繰り出し装置およびこの装置に使用されるカートリッジなどに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】この発明に係る線材繰り出し装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1を左ハーフ側から見た平面図である。
【図3】右ハーフを外側から見た平面図である。
【図4】右ハーフを内側から見た平面図である。
【図5】図4のA−A線上断面図である。
【図6】図4のB−B線上断面図である。
【図7】右ハーフの左側面図である。
【図8】左ハーフを外側から見た平面図である。
【図9】図8のC−C線上断面図である。
【図10】左ハーフを内側から見た平面図である。
【図11】図10の右側面図である。
【図12】図10の左側面図である。
【図13】カートリッジの平面図である。
【図14】カートリッジの上面図である。
【図15】図13のD−D線上断面図である。
【図16】図13のE−E線上断面図である。
【図17】繰り出しローラの一例を示す斜視図である。
【図18】ガイド部材の一例を示す斜視図である。
【図19】ガイド部材の平面図である。
【図20】図19のG−G線上断面図である。
【図21】図19のF−F線上断面図である。
【図22】カートリッジを装着し、ガイド部材を取り付けた状態を、その右ハーフ側より見た平面図である。
【図23】カートリッジを装着し、ガイド部材を取り付けた状態の上面図である。
【図24】図22のH−H線上断面図である。
【図25】図22のうち、右ハーフを外した状態の平面図である。
【図26】図25の一部拡大平面図である。
【図27】図26の動作説明例を示す一部拡大平面図である(その1)。
【図28】図26の動作説明例を示す一部拡大平面図である(その2)。
【図29】ガイド部材の取り付け状態を示す部分拡大断面図である。
【図30】ガイド部材を含む一部の部分拡大断面図である。
【図31】衝合ガイド片の一部拡大断面図である。
【図32】当接ガイド片の一部拡大断面図である。
【図33】この発明に係る線材繰り出し装置の使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0104】
10・・・線材繰り出し装置、10A・・・線材収納部、12A,12B・・・ハーフ、30・・・膨出部、40・・・繰り出し手段、42・・・繰り出しローラ、44・・・従動ローラ、50・・・逆回転阻止手段、60・・・ガイド部材、61・・・係合胴部、59・・・取り付け部、68・・・導出パイプ、80・・・カートリッジ、90・・・スリット、92・・・治具装着用凹部、46・・・軸筒、100・・・係合手段、104・・・操作片、106・・・係合突起、120・・・線材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質な材質からなる線材を少なくとも一対のローラで挟持すると共に、線材の繰り出し方向に上記線材をガイド部材で案内して繰り出すようにした線材繰り出し装置であって、
上記ガイド部材は装置本体に対して着脱自在になされた
ことを特徴とする線材繰り出し装置。
【請求項2】
上記一対のローラのうち少なくとも1つのローラが、外部より操作できる繰り出しローラとなされると共に、
上記繰り出しローラを上記装置本体に設けられた軸筒に対して遊嵌させることで、上記一対のローラ同士を互いに接近および離間させられるようにした
ことを特徴とする請求項1記載の線材繰り出し装置。
【請求項3】
上記線材が巻回されたカートリッジは上記装置本体に対して着脱自在になされた
ことを特徴とする請求項1記載の線材繰り出し装置。
【請求項4】
軟質な材質からなる線材を少なくとも一対のローラで挟持すると共に、線材の繰り出し方向に上記線材をガイド部材で案内して繰り出すようにした線材繰り出し装置に対して着脱自在になされたことを特徴とする上記線材が巻回された線材繰り出し装置用のカートリッジ。
【請求項1】
軟質な材質からなる線材を少なくとも一対のローラで挟持すると共に、線材の繰り出し方向に上記線材をガイド部材で案内して繰り出すようにした線材繰り出し装置であって、
上記ガイド部材は装置本体に対して着脱自在になされた
ことを特徴とする線材繰り出し装置。
【請求項2】
上記一対のローラのうち少なくとも1つのローラが、外部より操作できる繰り出しローラとなされると共に、
上記繰り出しローラを上記装置本体に設けられた軸筒に対して遊嵌させることで、上記一対のローラ同士を互いに接近および離間させられるようにした
ことを特徴とする請求項1記載の線材繰り出し装置。
【請求項3】
上記線材が巻回されたカートリッジは上記装置本体に対して着脱自在になされた
ことを特徴とする請求項1記載の線材繰り出し装置。
【請求項4】
軟質な材質からなる線材を少なくとも一対のローラで挟持すると共に、線材の繰り出し方向に上記線材をガイド部材で案内して繰り出すようにした線材繰り出し装置に対して着脱自在になされたことを特徴とする上記線材が巻回された線材繰り出し装置用のカートリッジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2010−155689(P2010−155689A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334501(P2008−334501)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000199197)千住金属工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000199197)千住金属工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】
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