説明

線状に拡張可能な尿管ステント

管腔を規定する細長部材を備える尿管ステントであって、該部材は、螺旋形状の開口部を規定する固体側壁を有し、この部材は、この管腔の長手方向軸に沿って線状に拡張可能である。腎臓内での保持のための遠位保持構造体が、この細長部材の遠位端に接続される。膀胱内での保持のための近位保持構造体が、この細長部材の近位端に接続される。本発明により、患者に、尿管の開存性を維持し、そして留置デバイスに通常付随する疼痛および不快さを最小にしながら、流体の排出を可能にする、可撓性デバイスが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、流体の排出のための医療デバイスに関し、そしてより具体的には、尿管ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
尿管は、腎臓から膀胱へと尿を運ぶ、ヒト身体内の管状通路である。尿管は、腎盤で開始し、そして膀胱三角領域(すなわち、両方の尿管口と膀胱頸部との間の三角形の領域)で終了する。尿は、静水圧の影響下で尿管を通って、尿管の壁内に位置する粘膜(ライニング)の収縮によって補助されて移送される。いくらかの患者は、尿管の封鎖または閉塞として公知の泌尿器科学的状態を経験する。尿管の封鎖のいくつかの共通の原因は、尿管ライニングにおける腫瘍または変形の形成、あるいは腎臓結石の形成および通過である。
【0003】
尿管ステントは、尿管の閉塞または損傷を有する患者において、腎臓から膀胱への尿の排出を容易にするため、あるいは種々の外科手術における尿管の一体性を保護するために、使用される。ステントは、腎臓から膀胱への尿の流れを妨害する、尿管の閉塞(例えば、尿管結石または尿管腫瘍)を処置または回避するために使用され得る。重篤な閉塞は、尿を上昇させて腎臓内に戻し得、腎機能を危険に曝す。尿管ステントはまた、尿管の内視鏡検査の後に使用され得る。
【0004】
ステントは、ステント自体によって強いられるか、またはデバイスの通過によって摩擦される手術中の外傷との組み合わせでの、壁内トンネルの疼痛に起因して、患者に対して不快であり得る。疼痛はまた、上昇した膀胱圧力の間(例えば、肺尿の間)に尿道を上昇して戻る尿の逆流によって、引き起こされ得る。さらに、疼痛は、膀胱係留特徴によって強いられるかまたはデバイスの通過によって与えられる手術中の外傷と組み合わせての、一定の刺激から生じる、三角の刺激から発生し得る。さらに、不快さは、逆流または腎臓の係留によって引き起こされる、側腹部の疼痛から生じ得る。
【0005】
尿管ステントは、代表的に、形状が三角形であり、2つの反対側の端部(腎臓側の遠位端および膀胱側の近位端)で終わる。既存の尿管ステントは、1対のコイル状エンドエフェクターを使用することによって、腎臓と膀胱との間の動きを補償する。一方のエフェクターは、膀胱側の近位端に配置され、そして他方は、腎臓側の遠位端に配置される。動きが起こる場合、尿管がこのステント本体を滑って上昇および下降する。任意の他の移動が、エンドエフェクターの曲がりの戻りを生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(発明の要旨)
本発明の目的は、患者(男性または女性)に、尿管の開存性を維持し、そして留置デバイスに通常付随する疼痛および不快さを最小にしながら、流体の排出を可能にする、可撓性デバイスを提供することである。
【0007】
不快さは、尿管の壁を擦るステントに関連し得、これは、腎臓と膀胱との間での一定の相対的運動によって引き起こされる。この運動は、せいぜい5センチメートル(cm)(約2インチ)であり得、そして患者の各呼吸と共に循環する。これは、5秒間ごとに1回の呼吸を仮定すると、1日あたり約17,000サイクルに等しい。本発明は、尿管と同様に、腎臓と膀胱との間の相対運動に応答して、線状に拡張および収縮し、これによって、尿管の壁を擦るステントによって引き起こされる摩擦を減少させるステントを提供することによって、不快さを軽減する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの局面において、本発明は、管腔を規定する細長部材を有する尿管ステントを特徴とする。この部材は、螺旋形状の開口部を規定する固体側壁を有し、この部材は、管腔の長手方向軸に沿って、線状に拡張可能である。腎臓内での保持のための遠位保持構造体が、細長部材の遠位端に接続され、そして膀胱内での保持のために、近位保持構造体が、細長部材の近位端に接続される。
【0009】
以下の特徴のうちの1つ以上が、含まれ得る。上記部材は、1ポンドより大きいばね力を有する。上記部材は、ワイヤばねを備える。このワイヤばねは、金属合金を含有し、この金属合金は、チタン、ニッケル、銅、コバルト、バナジウム、および鉄のうちの少なくとも1種を含有し得る。この金属合金は、ニチノールを含有する。このワイヤばねは、ポリマーでコーティングされる。このポリマーは、ウレタン、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリエチル、およびシリコーンのうちの少なくとも1種を含有する。
【0010】
上記ステントは、固体側壁を有しかつ管腔を規定する、管を備える。螺旋形状の開口部は、管の側壁に形成されるスリットによって規定される。細長部材は、ポリマーを含有し得、このポリマーは、例えば、ウレタン、ナイロン、TPU,熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリエチル、およびシリコーンである。
【0011】
細長部材は、内側ライナーおよび外側カバーを備える。ワイヤばねが、これらの内側ライナーと外側カバーとの間に挟まれ、螺旋形状の開口部が、内側ライナーと外側カバーとに、ワイヤばねの複数のコイルの間で形成されたスリットによって規定される。このワイヤばねは、例えば、チタン、ニッケル、銅、コバルト、バナジウム、および鉄のうちの少なくとも1種を含有する金属合金を含有する。この金属合金としてはニチノールが挙げられる。内側ライナーと外側カバーとのうちの少なくとも一方は、ポリマーを含む。このポリマーは、ウレタン、ナイロン、TPU、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリエチル、およびシリコーンのうちの少なくとも1種を含有する。
【0012】
取り外し可能な導入器が、管腔内での配置のための大きさにされる。
【0013】
本発明の別の局面において、尿管ステントは、管腔を規定する細長部材を備え、この部材は、少なくとも1つのスリットが形成された固体側壁を有し、この部材は、管腔の長手方向軸に沿って線状に拡張可能である。遠位保持構造体が、腎臓内での保持のために、細長部材の遠位端に接続されており、そして近位保持構造体が、膀胱内での保持のために、細長部材の近位端に接続されている。
【0014】
本発明のなお別の局面において、患者における腎臓から膀胱への尿の排出を容易にする、患者に対する不快さを減少させる方法は、患者の尿管内に尿管ステントを配置する工程を包含し、この尿管ステントは、管腔を規定する細長部材を有する尿管ステント、腎臓内での保持のための遠位保持構造体、および膀胱内での保持のための近位保持構造体を有し、この部材は、螺旋形状の開口部を規定する固体側壁を有し、この部材は、この管腔の長手方向軸に沿って線状に拡張可能であり、この遠位保持構造体は、この細長部材の遠位端に接続されており、そしてこの近位保持構造体は、この細長部材の近位端に接続されている。この細長部材は、患者内での器官の相対位置、患者の呼吸パターン、および腎臓と膀胱との相対位置のうちの少なくとも1つに基づいて、拡張位置と引き込み位置との間で、線状に拡張および収縮される。さらに、細長部材は、引き込み位置に付勢され得る。
【0015】
本発明のなお別の局面において、線状に拡張可能な尿管ステントを製造する方法は、管腔を規定する細長部材を提供する工程を包含し、この部材は、螺線形状の開口部を規定する固体側壁を有し、この部材は、この管腔の長手方向軸に沿って線状に拡張可能である。このステントはまた、遠位保持構造体および近位保持構造体を備える。この遠位保持構造体は、細長部材の遠位端に接続されており、そしてこの近位保持構造体は、細長部材の近位端に接続されている。
【0016】
以下の特徴が、含まれ得る。細長部材を提供する工程は、ワイヤばねを提供する工程を包含する。ワイヤばねを提供する工程は、ワイヤばねをポリマーでコーティングする工程を包含する。ワイヤばねを提供する工程は、このワイヤばねを、内側ライニングと外側カバーとの間に挟む工程を包含する。これらの内側ライニングおよび外側カバーは、押し出し成型されたシートを備える。これらの内側ライニングおよび外側カバーは、収縮され、そしてスリットが、内側ライニングおよび外側カバーを通して、ワイヤばねの複数のコイルの間に形成される。内側ライニングおよび外側カバーは、融解され、そしてスリットが、内側ライニングおよび外側カバーを通して、ワイヤばねの複数のコイルの間に形成される。細長部材は、ポリマーを含む管を形成し、そしてこの管を通して螺旋スリットを形成することによって提供される。
【0017】
本発明のなお別の局面において、患者において尿管ステントを配置する方法は、尿管ステントを提供する工程を包含する。この尿管ステントは、管腔を規定する細長部材を備え、この部材は、螺旋形状の開口部を規定する固体側壁を有し、この部材は、管腔の長手方向軸に沿って線状に拡張可能である。この尿管ステントはまた、細長部材の遠位端に接続された遠位保持構造体、および細長部材の近位端に接続された近位保持構造体を備える。この尿管ステントは、患者の尿管に挿入される。この尿管ステントは、遠位保持構造体が実質的に患者の腎臓内にあり、細長部材が実質的に尿管の壁内トンネル部分内にあり、そして近位保持構造体が実質的に患者の膀胱内にある状態で、患者内に配置される。詳細な実施形態において、この尿管ステントは、管腔内にフィットするような大きさにされた、取り外し可能な導入器をさらに備え得、そしてこの尿管ステントを挿入する工程は、この取り外し可能な導入器を用いて、尿管にステントを挿入する工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(詳細な説明)
本発明は、患者の尿管内に配置される場合に、患者に対する不快さを有意に減少させる、一時的な尿管ステントを特徴とする。本明細書中において使用される場合、近位とは、患者においてステントを配置する場合に、医療の専門家に最も近いステントの端部をいう。本明細書中において使用される場合、遠位とは、患者におけるステントの配置の際に、医療の専門家から最も遠いステントの端部をいう。
【0019】
図1Aを参照すると、ヒト尿路100は、尿路105を備え、この尿路は、腎臓110から膀胱115へと尿を移送する。尿管105が、例えば、腎臓結石後の断片化/除去および尿管の狭小化治療に起因して、遮断または閉塞される場合、流体の排出が制限され得る。尿管ステントは、開存性および流体排出を回復させるために、尿管105内に移植される医療デバイスである。尿管ステント120は、患者の尿管105内に配置され、このとき、遠位保持構造体125は、腎臓110の盤130内にあり、そして近位保持構造体135は、膀胱115内の、尿管口136の近くにある。管腔137は、遠位保持構造体25、細長部材140、および近位保持構造体135の内部に延びて、流体の通路を提供する。遠位保持構造体125は、細長部材120の遠位端142に接続され、そして近位保持構造体135は、細長部材140の近位端に接続される。遠位保持構造体125は、腎臓110の内部または近くで、細長部材の遠位端142に固定される。近位保持構造体135は、膀胱115の内部または近くで、細長部材10の近位端144に固定され、そしてフックによる把持のために適切なループを提供することによって、ステント120の取り外しを容易にする。
【0020】
遠位保持構造体125および近位保持構造体135は、ナイロン、ポリウレタンなどのような材料から作製され得る。これらの材料の、細長部材140への熱結合は、例えば、プラスチックの管およびカテーテルについて通常使用されるように、RF熱源を使用することによって、好都合に達成される。遠位保持構造体125および近位保持構造体135の所望の形状は、射出成形または押し出し成型によって形成され得る。これらはまた、例えば、熱を付与しながら、適切な形状のアンビル上で加工片を広げることによって、熱形成され得る。遠位保持構造体125の形状は、例えば、コイル、ピグテールコイル、J字型、または螺旋コイルであり得る。近位保持構造体135の形状は、例えば、コイル、ピグテールコイル、J字型、または螺旋コイルであり得る。図示される実施形態において、遠位保持構造体125と近位保持構造体135との両方が、J字型である。
【0021】
図1A〜1Cを参照すると、細長部材140は、固体側壁150を有する管145を備える。スリット155が、側壁150に形成されて、螺旋形状の開口部160を規定し、細長部材140は、管腔137の長手方向軸163に沿って線状に拡張可能である。細長部材140は、ポリマー(例えば、ウレタン、ニチノール、TPU、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリエチル、およびシリコーン)から形成され得る。
【0022】
細長部材140は、例えば、射出成型または追い出し成型によって製造され得、そして必要に応じて、引き続く機械加工操作との組み合わせである。例えば、押し出し成型プロセスは、均一な形状(例えば、単一のモノリシック管)を提供するために使用され得る。螺旋形状の開口部160は、引き続く機械加工操作によって、所望の位置に作製され得る。
【0023】
図2Aおよび2Bもまた参照して、細長部材140は、拡張位置(例えば、図1A〜1Bを参照のこと)と引き込み位置(図2A〜2Bを参照のこと)との間で、線状に拡張可能である。細長部材140が引き込まれる場合、螺旋形状の開口部160が閉じる。細長部材140の、その拡張位置における拡張長さLと、細長部材140の、その引き込み位置における引き込み長さLとの差異は、約5cm(約2インチ)であり得る。例えば、細長部材140は、引き込み長さLが約8cm〜20cmであり、そして拡張長さLが約13cm〜35cmであるような大きさにされ得る。細長部材140は、その引き込み位置において、約3.7フレンチ〜14.0フレンチに対応する外径dを有し得る。管腔137は、例えば、細長部材140がその引き込み位置にある場合に、ガイドワイヤの導入を可能にするために、約0.035インチより大きい(例えば、少なくとも0.039インチの)直径dを有し得る。
【0024】
使用の際に、細長部材140は、拡張長さLまで2インチまで線状に拡張して、以下のうちの少なくとも1つを補償することによって、患者に快適さを提供し得る:患者内の器官の相対的位置、患者の呼吸パターン、および腎臓110と膀胱115との相対位置。線形の拡張の可能性に起因して、外科医は、従来のステントに対して要求されるより小さい大きさを有する尿管ステント1120を選択することが可能であり得る。
【0025】
図3A〜3Bを参照すると、別の実施形態において、尿管ステント300は、ばね315を備える細長部材310を有する。遠位保持構造体125は、細長部材310の遠位端312に接続され、そして近位保持構造体135は、細長部材310の近位端314に接続される。
【0026】
ばね315は、複数のコイル320を有し、これらのコイルは、いくつかの実施形態において、1ポンド未満のばね力を有する。ばね315は、超弾性材料から形成されるワイヤ325を備える。超弾性特性を有する材料は、構成要素を特定の形状(例えば、コイルまたはスリーブ)に構成し、次いでこの構成要素の幾何学的形状を、例えば、真っ直ぐにすることによって、可逆的に改変することを可能にする。一旦、このデバイスが真っ直ぐにされると、真っ直ぐにする力の除去後に、この構成要素は、自発的に、その予め決定された構成に戻り、これによって、その前の幾何学的形状を得る。このようにする際に、この構成要素は、その元の構成に戻る付勢力を提供する。
【0027】
超弾性材料としては、In−Ti、Fe−Mn、Ni−Ti、Ag−Cd、Au−Cd、Au−Cu、Cu−Al−Ni、Cu−Au−Zn、Cu−Zn−Al、Cu−Zn−Sn、Cu−Zn−Xe、FeBe、FePt、Ni−Ti−V、Fe−Ni−Ti−Co、およびCu−Snの合金が挙げられ得る。好ましくは、ワイヤ325は、ニッケルおよびチタンの合金を含有する超弾性材料(ニチノールとして通常公知であり、Brookfield,CTのMemory Corp.、またはSan Jose,CAのSMA Inc.から入手可能である)を含有する。ニチノール中のニッケルとチタンとの比は、変動し得る。例としては、約50重量%〜約52重量%のニッケルの比、または約48重量%〜約50重量%のチタンの比が挙げられる。ニチノールは、その超弾性相において、形状保持特性を有する。
【0028】
ワイヤ320は、生体適合性材料(例えば、ウレタン、ナイロン、TPU、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリエチル、またはシリコーンのようなポリマー)を含むコーティング330を有し得る。コーティング330は、ワイヤ320に、種々の方法(例えば、スプレーコーティングまたはペイント)によって、塗布され得る。
【0029】
尿管ステント300は、拡張位置(例えば、図3A〜3Bを参照のこと)および引き込み位置(例えば、図4A〜4Cを参照のこと)を有する。引き込み位置において、コイル320は、互いに当接し、管腔332を規定し、この管腔は、実質的に収容されている。拡張位置において、コイル320は、螺線形状の開口部335を規定し、これらの開口部は、コイル320の間の複数のギャップ340によって形成される。細長部材310は、管腔332の長手方向軸345に沿って、線状に拡張可能である。
【0030】
図5A〜5Cを参照すると、別の実施形態において、ステント500は、ワイヤばね510によって形成され、このばねは、内側ライニング515と外側カバー520との間に、複数のコイル512を有する。ワイヤばね512は、例えば、チタン、ニッケル、銅、コバルト、バナジウム、または鉄を含む、金属合金から作製され得る。この金属合金としては、ニチノール(ニッケルおよびチタンを含有する材料)が挙げられ得る。内側ライニング515および外側カバー520は、それぞれ、押し出し成型シートから形成され得る。内側ライニング515および外側カバー520は、各々が、ポリマー(例えば、ウレタン、ナイロン、TPU、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリエチル、およびシリコーン)から作製され得る。
【0031】
内側ライニング515および外側カバー520は、高温にて、ワイヤばね510を完全に囲むように変形される。例えば、内側ライニング515および外側カバー520は、例えば、熱ランプへの曝露によって、収縮され得る。あるいは、内側ライニング515および外側カバー520は、例えば、熱オーブン中で加熱することによって、融解され得る。変形後、複数のスリット525が、内側ライニング515と外側カバー520とを通して、コイル512の間に形成され、細長部材530を形成する。細長部材530は、細長部材530を通って延びる管腔540の長手方向軸535に沿って、線状に拡張可能である。細長部材530は、遠位端545において、遠位保持構造体125に接続され、そして近位端555において、近位保持構造体135に接続される。
【0032】
図6A〜6Cを参照すると、なお別の実施形態において、ステント600は、腎臓内での保持のための遠位保持構造体125、および膀胱内での保持のための近位保持構造体135に接続された、細長部材610を有する。細長部材610は、管腔620を規定し、そして固体側壁625を有する。固体側壁625は、生体適合性材料(例えば、ポリマー(例えば、ウレタン、ナイロン、TPU、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリエチル、またはシリコーン))から作製され得る。固体側壁625は、少なくとも1つのスリット630が形成されており、細長部材610は、管腔620の長手方向軸635に沿って線状に拡張可能である。
【0033】
図7を参照すると、別の局面において、本発明は、ステントを患者に送達するための装置を提供する。導入器700は、ガイドワイヤ710を備える。ガイドワイヤ710の近位端720は、このデバイスを使用する際に補助するための、グリップ725を備える。
【0034】
図7およびまた図1を参照すると、使用の際に、ステント(例えば、ステント120)は、導入器700に取り付けられる。遠位保持構造体125が、ガイドワイヤ710の上に螺合され、そしてその固有の湾曲のほとんどが除かれる。次に、ガイドワイヤ710が、膀胱115に挿入され、尿管口136を通って尿道105を登り、そして腎臓110に入る。次いで、プッシャー(図示せず)が、ガイドワイヤ710に沿って移動され、ステント120を、ガイドワイヤ710に沿って腎臓110の方へ通す。細長部材140の近位端144は、尿管口136またはその遠位のいずれかに配置され得る。ステント120はまた、近位保持構造体135が尿管口136またはその遠位にくるように、配置され得る。
【0035】
一旦、外科医がステント120の所望の配置を達成すると、ガイドワイヤ710が取り除かれ、一方で、ステント120を適所に保持するように、プッシャーを静止して保持する。最後に、このプッシャーが患者の内部から取り除かれ、ステント120を適所に残す。この方法を使用して、本発明のステントは、患者の尿管105内に正確に配置され得る。この方法はまた、近位保持構造体135を膀胱115内に、そして遠位保持構造体125を腎臓110内に正確に配置するために使用され得る。
【0036】
本発明の1つの実施形態において、ガイドワイヤ、プッシャー、およびステントは、外科的開口部を皮下的に通して尿管105に挿入される。別の実施形態において、これらは、患者の尿路を介して尿管に挿入される。
【0037】
本発明は、特定の好ましい実施形態を参照して詳細に図示および説明されたが、形態および細部における種々の変化が、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることが、当業者によって理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図面において、同じ参照文字は、一般に、異なる図にわたって同じ部品を表す。また、図面は、必ずしも同一縮尺ではなく、本発明の原理を説明する際に、誇張が一般になされる。
【図1A】図1Aは、拡張位置での、患者の尿管内での、本発明の1つの実施形態の配置を示す、ヒト尿路の概略図である。
【図1B】図1Bは、図1Aの本発明の実施形態の一部分の詳細断面図である。
【図1C】図1Cは、図1Aの本発明の実施形態の一部分の詳細断面図である。
【図2A】図2Aは、引き込み位置での、図1A〜1Cに示される本発明の実施形態の概略図である。
【図2B】図2Bは、引き込み位置での、図1A〜1Cに示される本発明の実施形態の概略図である。
【図3A】図3Aは、拡張位置での、本発明の別の実施形態の概略図である。
【図3B】図3Bは、拡張位置での、本発明の別の実施形態の概略図である。
【図4A】図4Aは、引き込み位置での、図3A〜3Bに示される本発明の実施形態の概略図である。
【図4B】図4Bは、引き込み位置での、図3A〜3Bに示される本発明の実施形態の概略図である。
【図4C】図4Cは、引き込み位置での、図3A〜3Bに示される本発明の実施形態の概略図である。
【図5A】図5Aは、種々の製造段階における、本発明のなお別の実施形態の概略図である。
【図5B】図5Bは、種々の製造段階における、本発明のなお別の実施形態の概略図である。
【図5C】図5Cは、種々の製造段階における、本発明のなお別の実施形態の概略図である。
【図6A】図6Aは、引き込み位置および拡張位置での、本発明のなお別の実施形態の概略図である。
【図6B】図6Bは、引き込み位置および拡張位置での、本発明のなお別の実施形態の概略図である。
【図6C】図6Cは、引き込み位置および拡張位置での、本発明のなお別の実施形態の概略図である。
【図7】図7は、導入器の概略図である。







【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿管ステントであって、
管腔を規定する細長部材であって、該部材は、螺旋形状の開口部を規定する固体側壁を有し、該部材は、該管腔の長手方向軸に沿って線状に拡張可能である、細長部材;
該細長部材の遠位端に接続された、腎臓内での保持のための遠位保持構造体;および
該細長部材の近位端に接続された、膀胱内での保持のための近位保持構造体、
を備える、尿管ステント。
【請求項2】
前記部材が、1ポンド未満のばね力を有するばねを備える、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記部材が、ワイヤばねを備える、請求項2に記載のステント。
【請求項4】
前記ワイヤばねが、金属合金を含有する、請求項3に記載のステント。
【請求項5】
前記金属合金が、チタン、ニッケル、銅、コバルト、バナジウム、および鉄のうちの少なくとも1種を含有する、請求項4に記載のステント。
【請求項6】
前記金属合金が、ニチノールを含有する、請求項5に記載のステント。
【請求項7】
前記ニチノールが、ニッケルおよびチタンを含有する、請求項6に記載のステント。
【請求項8】
前記ニチノールが、約50%〜約52%のニッケルを含有する、請求項7に記載のステント。
【請求項9】
前記ニチノールが、約48%〜約50%のチタンを含有する、請求項8に記載のステント。
【請求項10】
前記ワイヤばねが、ポリマーでコーティングされている、請求項3に記載のステント。
【請求項11】
前記ポリマーが、ウレタン、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリエチル、およびシリコーンのうちの少なくとも1種を含有する、請求項10に記載のステント。
【請求項12】
前記細長部材が、前記固体側壁を有しかつ前記管腔を規定する管を備え、そして前記螺旋形状の開口部が、該管の該側壁に形成されるスリットによって規定される、請求項1に記載のステント。
【請求項13】
前記細長部材が、ポリマーを含有する、請求項12に記載のステント。
【請求項14】
前記ポリマーが、ウレタン、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリエチル、およびシリコーンのうちの少なくとも1種を含有する、請求項13に記載のステント。
【請求項15】
前記細長部材が、内側ライナーおよび外側カバーを備える、請求項1に記載のステント。
【請求項16】
請求項15に記載のステントであって、
前記内側ライナーと前記外側カバーとの間に挟まれた、ワイヤばね、
をさらに備え、前記螺旋形状の開口部が、該ワイヤばねの複数のコイルの間で該内側ライナーおよび該外側カバーに形成されるスリットによって規定される、ステント。
【請求項17】
前記ワイヤばねが、金属合金を含有する、請求項16に記載のステント。
【請求項18】
前記金属合金が、チタン、ニッケル、銅、コバルト、バナジウム、および鉄のうちの少なくとも1種を含有する、請求項17に記載のステント。
【請求項19】
前記金属合金が、ニチノールを含有する、請求項17に記載のステント。
【請求項20】
前記ニチノールが、ニッケルおよびチタンを含有する、請求項19に記載のステント。
【請求項21】
前記内側ライナーと前記外側カバーとの少なくとも一方が、ポリマーを含有する、請求項15に記載のステント。
【請求項22】
前記ポリマーが、ウレタン、ナイロン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリエチル、およびシリコーンのうちの少なくとも1種を含有する、請求項21に記載のステント。
【請求項23】
前記管腔内での配置のための大きさにされた、取り外し可能な導入器
をさらに備える、請求項1に記載のステント。
【請求項24】
尿管ステントであって、
管腔を規定する細長部材であって、該部材は、少なくとも1つのスリットが内部に形成された固体側壁を有し、該部材は、該管腔の長手方向軸に沿って線状に拡張可能である、細長部材;
該細長部材の遠位端に接続された、腎臓内での保持のための遠位保持構造体;および
該細長部材の近位端に接続された、膀胱内での保持のための近位保持構造体、
を備える、尿管ステント。
【請求項25】
患者において腎臓から膀胱への尿の排出を容易にする、該患者に対する不快さを減少させる方法であって、該方法は、
患者の尿管に尿管ステントを配置する工程であって、該尿管ステントは、
管腔を規定する細長部材と、
該細長部材の遠位端に接続された、腎臓内での保持のための遠位保持構造体と、
該細長部材の近位端に接続された、膀胱内での保持のための近位保持構造体と
を有し、該部材は、螺旋形状の開口部を規定する固体側壁を有し、該部材は、該管腔の長手方向軸に沿って線状に拡張可能である、工程;ならびに
該患者内の器官の相対位置、該患者の呼吸パターン、および該腎臓と該膀胱との相対位置のうちの少なくとも1つに基づいて、該細長部材が、拡張位置と引き込み位置との間で線状に拡張および収縮することを可能にする工程、
を包含する、方法。
【請求項26】
前記器官が、腎臓および膀胱を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記器官が、腎臓および膀胱である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記可能にする工程が、前記引き込み位置に付勢された細長部材を提供する工程を包含する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
線状に拡張可能な尿管ステントを製造する方法であって、
管腔を規定する細長部材と、遠位保持構造体と、近位保持構造体とを提供する工程であって、該部材は、螺旋形状の開口部を規定する固体側壁を有し、該部材は、該管腔の長手方向軸に沿って線状に拡張可能である、工程;
該遠位保持構造体を、該細長部材の遠位端に接続する工程;ならびに
該近位保持構造体を、該細長部材の近位端に接続する工程、
を包含する、方法。
【請求項30】
前記細長部材を提供する工程が、ワイヤばねを提供する工程を包含する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ワイヤばねを提供する工程が、該ワイヤばねをポリマーでコーティングする工程を包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ワイヤばねを提供する工程が、該ワイヤばねを、内側ライニングと外側カバーとの間に挟む工程を包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記内側ライニングおよび外側カバーが、押し出し成型されたシートを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記内側ライニングおよび前記外側カバーを収縮させる工程;ならびに
該内側ライニングおよび外側カバーを通して、前記ワイヤばねの複数のコイルの間に、スリットを形成する工程、
をさらに包含する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記内側ライニングおよび前記外側カバーを融解させる工程;ならびに
該内側ライニングおよび外側カバーを通して、前記ワイヤばねの複数のコイルの間に、スリットを形成する工程、
をさらに包含する、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記細長部材を提供する工程が、ポリマーを含む管を形成する工程、および該管を通して螺旋状スリットを形成する工程を包含する、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
患者において尿管ステントを配置する方法であって、該方法は、
尿管ステントを提供する工程であって、該尿管ステントは、
管腔を規定する細長部材であって、該部材は、螺旋形状の開口部を規定する固体側壁を有し、該部材は、該管腔の長手方向軸に沿って、線状に拡張可能である、細長部材;
該細長部材の遠位端に接続された、遠位保持構造体;および
該保持構造体の近位端に接続された、近位保持構造体、
を備える、工程;
該尿管ステントを、該患者の尿管に挿入する工程;ならびに
該遠位保持構造体は実質的に該患者の腎臓内にあり、該細長部材は実質的に尿管の壁内トンネル部分内にあり、そして該近位保持構造体は実質的に該患者の膀胱内にある状態で、該尿管ステントを該患者内で配置する工程、
を包含する、方法。
【請求項38】
前記尿管ステントが、取り外し可能な導入器をさらに備え、該導入器は、前記管腔内にフィットするような大きさにされており、そして前記尿管ステントを挿入する工程が、該取り外し可能な導入器を用いて該ステントを挿入する工程を包含する、請求項37に記載の方法。

【図7】
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【公表番号】特表2006−504487(P2006−504487A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550158(P2004−550158)
【出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2003/034214
【国際公開番号】WO2004/041345
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(304061631)ボストン サイエンティフィック リミテッド (4)
【Fターム(参考)】