説明

締め付け具および継手

【課題】精密な締め付け調整が可能な締め付け具およびこれを用いた継手を提供する。
【解決手段】ボルト12のボルト本体13に形成されたねじ溝の一部には、ねじ溝が形成されていない平坦部12aが設けられている。このねじ溝が形成されていない平坦部12aには、ボルト本体13に対するナット14の位置を示す目盛り部16が設けられている。これにより、ナット14のボルト本体13に対する締め付け位置を容易に確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締め付け具およびこの締め付け具が用いられる継手に関する。詳細には、締め付け具を構成するボルトのねじ溝が形成されていない領域に目盛り部を設けることで、ボルトに螺合されるナットのボルトに対する締め付け位置を容易に確認できるようにした締め付け具等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電力の発電方式としては水力発電が広く採用されている。水力発電は、周知のように水路中の高低差(落差)を利用して発電する方式であり、例えば、取水ダムや上池から水路を引き、この水路中の落差に水圧管を設置し、水圧管の下部に設けられた発電機に水圧管からの水を導水することで発電を行っている。
【0003】
上述した水圧管は、この管内を流れる水の温度や外気温の変化によって僅かながら伸縮する。水圧管が伸縮すると水圧管自体に亀裂や破損が生じ、これが発端となり水圧管に接続される関連機器や発電設備に損傷を与えるおそれがある。そこで、従来から、水圧管を分割し、2本以上の水圧管を互いに連結する方法が採用されている。複数の管体で水圧管を構成する場合、水圧管同士を連結するための連結部が設けられ、この連結部に伸縮自在な継手を取り付け、この継手に伸縮調節機能を付与することで水圧管の伸縮を吸収し、水圧管の破損等を回避している。
【0004】
一方、水圧管に継手を取り付けることで、水圧管同士が伸縮すると、水圧管と継手との間に隙間が生じ、水圧管内部を流れる水の圧力によって、この隙間から水圧管内を流れる水が外部に漏れ出す場合がある。この場合には、継手に使用されているナットを締め付け直してその締結力を調節することで、水圧管と継手との隙間を埋めて止水するようにしている。
【0005】
ここで、上述した隙間から漏れ出した水は水圧管の外周面を伝って水圧管の下側に流れるため、漏れ出した箇所を特定するのは難しいが、漏水付近のボルトを締め直すことで漏れ水の止水処理を行っている。
【0006】
ところで、ボルトおよびナットは水圧管の全周に亘って多数(多いときは100本以上)設けられているので、どの箇所のナットを締め直したかを確認するために、一例として現場ではボルトのねじ山を数えながら作業を行っている。さらに、保守作業では、該当箇所に使用されているボルトのナットを均等に締めるためには、ナットの回した回数などをナット毎に数えながら行わなければならないので面倒である。特に、大型の水力発電所の場合には、水圧管の径も大きくなり、その分ボルトおよびナットの数も増大するため、締め付け作業は大変時間が掛かり、作業時間が掛かる割には充分な効果が得られていない。
【0007】
このような作業負担の軽減を図るにはボルトに締め付けたナットの位置を判別できる目安となるものがあれば良い。例えば、ボルトに目盛り部を設けておけば、ナットの締めた程度を把握できる(特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2001−304222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載されるボルトは、ボルト表面に設けた目盛り部はボルト自体の長さを読み取るために設けられたものである。そのため、ボルトの目盛り部が30mm単位と大きく、精密な締め付け調整が必要な水圧管の伸縮継手などの締結手段として利用するには不向きである。
【0010】
そこで、本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、精密な締め付け調整が可能な締め付け具および継手を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、上記課題を解決するために、ボルトとナットからなる締め付け具であって、前記ボルトに形成されたねじ溝の一部に、ねじ溝が形成されていないねじ溝非形成領域が設けられ、前記ねじ溝非形成領域には、前記ボルトに対する前記ナットの締め付け位置を示す目盛り部が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の締め付け具を構成するボルトには目盛りが付されているので、ボルトの締め付け量やナットの締め付け位置を容易に確認できるから、ボルトが複数本使用されている場合のそれぞれの締め付け力をほぼ均一に整えることができる。そのため、このボルトは、水圧管などの管体同士を伸縮可能に連結する継手の締結手段などに用いることができる。
【0013】
また、ボルトの目盛り部の表示は目的に応じた単位で表示することができ、精密な調整を必要とする場合には、例えばミリメートル単位で表示することで、締め付け力や締め付け量を微妙に調整できる。
【0014】
また、本発明の継手は、第1の管体と第2の管体と、前記第1の管体の端面と前記第2の管体の端面同士を対向させた状態で、それぞれの端面外周部を連結する連結管と、前記連結管と前記第1の管体との間に設けられ、前記第1の管体と前記第2の管体とを前記連結管とを介して締結する締結手段とからなり、前記締結手段は、前記第1の管体の端面外周部に設けられた上部フランジと、この上部フランジと対向するように、前記連結管の一端に設けられた下部フランジと、前記上部フランジと前記下部フランジとを連結する締め付け具と、前記連結管の内周面と前記第1の管体の外周面との間に設けられた漏水防止手段とで構成され、前記締め付け具はボルトとナットとからなり、前記ボルトの軸心方向に目盛り部を有するボルトが使用され、締結位置を目視できるようになされたことを特徴とするものである。
【0015】
締め付け具を構成するボルトのねじ溝非形成領域には目盛り部が設けられるため、ナットのボルトに対する締め付け位置を容易に確認できる。
これにより、複数のボルトおよびナットを使用して水圧管などの管体同士を連結する継手などの締め付け作業においても、この目盛り部の付いたボルトを締結手段として使用することで、目盛り部の目盛りを目安にして締め付け力を調節できるから、継手の全周に亘って均一な締結力で管同士を連結することができる。
【0016】
つまり、ナットは各ボルトの目盛り部を基準にして締め付ければ良いため、全てのボルトを均等に締め付けることができる。これによって、継手に加わる水圧の均一化を図ることができる。また、目盛り部を基準にしてナットを締め付ければ良いので、ナットの回した回数や、ねじ山の個数を数えたりする必要がない。さらに、予めボルトを締め付ける目盛り部の位置を確定しておけば、ボルトの目盛り部を読み取るだけで、ナットが設定した位置まで締め付けてあるかどうかを簡単かつ確実に判別できるため、締め付け作業を従来よりも大幅に簡略化できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、締め付け具を構成するボルトに目盛り部が設けられているため、ボルトに対するナットの締め付け位置を容易かつ確実に確認できる。これにより、目盛り部を基準にして各ナットを締め付ければ、ボルトが多数あったとしても全てのボルトを均等に締め付けることができる。
【0018】
本発明によれば、継手に対する締結手段として目盛り部を有するボルトを使用することで、水圧管などの管体同士を連結する連結管と管体に対する締結力を、その全周に亘って均一にできる。これによって水圧管に適用する場合には、水圧管同士の連結部における漏水を確実に防止できると共に、ボルトを締め直して漏水を止めるような保守作業を行う場合でも、弛んだボルトに対する締め付け具合も目盛り部を基準にして行えるので、保守作業の時間短縮を実現できる。結果として、作業者の負担を軽減でき、従来よりも作業効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0020】
図1は、この発明を適用できる水力発電所の概略構成を示す図である。
河川の上流には雨水等を貯水する取水ダム(図示省略)が設けられ、この取水ダムからは、勾配の比較的緩やかな導水路が下流に向かって形成される。導水路の下流には、図1に示すように、取水ダムから導水路を経由して流れる水が溜められる上水槽74が敷設され、さらに一定の落差を確保した下流側には発電所66が敷設される。上水槽74と発電所66との間(落差間)には上水槽74内の水を発電所66まで導水するための水圧管10が設置される。水圧管10は、水温や気温の変化によって生じる伸縮を吸収するため、複数本の水圧管を繋ぎ合わせたものが使用される。その繋ぎの部分は伸縮継手50によって互いの水圧管が連結される。なお、本例では、発電所66に至る水圧管10を1本の本管で繋いでいる。それぞれの本管同士は伸縮継手50によって連結される。この水圧管10の連結構成は一例である。
図1の例では、水圧管10に隣接して、上水槽74で一定量より多くなった余分の水を流すための余水路60が設けられる。水圧管10および余水路60の上部およびほぼ中間部には、水圧管10および余水路60を支持、固定するためのアンカブロック62,64が敷設されている。
【0021】
次に、上述した水圧管10を連結する継手の構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る水圧管10を連結する伸縮継手50の構成を示す図であって、2本の本管(金属管体)を繋ぎ合わせて水圧管10を構成した場合である。図3は、伸縮継手50の構成を模式的に示す正面図である。図4は、図3に示す伸縮継手50のA−A線に沿った要部断面図である。そして図5(a)はこの発明に係る締め付け具の構成例を示す正面図であり、図5(b)はその上面図である。なお、以下に示す図2〜図4および図6では、実際のボルト12のボルト本体13には、ねじ溝が形成されているが、便宜上、ねじ溝を省略して示す。また、図2では、リング状補助管26および連結管38を簡略化して示す。さらに、図3では、便宜上、締め付け具15および補強リブ34を省略して示し、本例では4個の締め付け具15と2個の補強リブを示す。
【0022】
図2および図3に示すように、水圧管10は上部本管6と下部本管8とから構成され、上部本管6は第1の管体(上流側水圧管)として機能し、下部本管8は第2の管体(下流側水圧管)として機能する。上部本管6と下部本管8とは同一径の鉄管が使用される。図1の例では上部本管6の方が下部本管8よりも長い管体が使用されていて上部本管6と下部本管8とは伸縮継手50を介して連結される。
【0023】
伸縮継手50は、上部本管6と下部本管8同士を連結するための連結管38と、連結管38と上部本管6との間に設けられ、上部本管6と下部本管8とを連結管38を介して締結する締結手段70とで構成される。
【0024】
締結手段70は、図3および図4に示すように、上部本管6の端面外周部に設けられた上部フランジ18と、この上部フランジ18と対向するように、連結管38の一端に設けられた下部フランジ22と、上部フランジ18と下部フランジ22とを連結する締め付け具15と、さらに連結管38の内周面と上部本管6の外周面との間に設けられた漏水防止手段30とで構成される。
【0025】
締め付け具15は、ボルト12とこれに螺合される締め付け用のナット14とから構成される。ボルト12はその軸心方向に目盛り部16を有する。目盛り部16を目視することでボルト12の連結管38に対する締結力や締め付け量を確認できる。
【0026】
締結手段70に対する各部の構成を以下に説明する。まず、下部本管8側の構成について説明する。
【0027】
下部本管8は、所定径を有する円筒管体であって、その下部本管8の上端外周には、下部本管8の厚み分だけ拡径された円筒状をなす連結補助管(金属管体)40が溶接により取り付けられる。
【0028】
連結管38は、さらに連結補助管40の厚み分だけ拡径された円筒管体からなり、その一端側が連結補助管40の外周面に溶接により強固に取り付けられる。連結管38の他端側は、上部本管6と平面視で所定長だけ重なる位置まで延在しており、連結管38と上部本管6とが重なる部分では連結補助管40の厚み分だけの環状間隙32が得られる。間隙32内に位置する連結管38の内周面のうち下方側(下流側)には、周方向に上部本管6の外周面に接触しないようにしてリング状のストッパ部42が溶接により取り付けられる。ストッパ部42は、後述する漏水防止材であるゴムパッキン31等を支持するものである。
【0029】
一方、下部フランジ22はリング状をなし、その内径側の端面が連結管38の上端外周面に対して溶接されることで、連結管38の周面に対して立設するように取り付け、固定される。下部フランジ22のフランジ面には、後述するボルト12を挿入するための複数のボルト挿入孔24が周方向に沿って等間隔に穿設される。
【0030】
下部フランジ22の側面と連結管38の外周面との間には、下部フランジ22の機械的強度を確保する複数の補強リブ34が取り付けられる。補強リブ34の設置個数は任意である。
【0031】
このように、下部本管8の上端外周面と連結補助管40とは溶接によって連結され、連結補助管40の上端側外周面と連結管38の下端内周面との間は溶接によって連結され、そして連結管38の上端外周面には補強リブ34付きの下部フランジ22が溶接によって連結されて締結手段70の一部が構成される。そして連結管38の内周面にはストッパ部42が溶接により一体化されている。
【0032】
次に、上部本管6側の構成について説明する。
図3および図4に示すように、上部本管6の下部端面側より所定長だけ手前側であって、連結管38の上部端面側と一部重なるように、リング状補助管26が取り付け固定される。リング状補助管26は、連結補助管40と同一の径および同一の厚みを有する円筒管体であって、上部本管6の外周面に対して溶接により取り付けられる。リング状補助管26は連結補助管40と同一の肉厚であるので、上部本管6と対向する連結管38によって、このリング状補助管26と連結管38との間には図4に示すような間隙32が生まれる。リング状補助管26の下端部側は一部間隙32内に臨むように、上部本管6に対して位置決めされた状態で溶接される。
【0033】
上部フランジ18は、このリング状補助管26の厚み分だけ拡径された内径を有する環状フランジであって、この例では下部フランジ22と同じ外径のものが使用される。上部フランジ18の内径側は、リング状補助管26の上端外周面に溶接により強固に取り付け固定されることで、上部フランジ18とリング状補助管26が一体化される。
【0034】
上部フランジ18には、上述した下部フランジ22のボルト挿入孔24と対向する位置に、同じ数のボルト挿入孔20が形成される。このように、溶接などによって上部本管6とリング状補助管26および上部フランジ18が一体化される。
図4に示すように、ストッパ部42とリング状補助管26との間の間隙32内にはパッキン部としての漏水防止手段30が配される。漏水防止手段30は間隙32を空隙なく満たすように取り付けられる。
【0035】
漏水防止手段30は、同一種類の漏水防止部材で構成することもできれば、異なる漏水防止部材を使用して構成することもできる。漏水防止効果は一般に後者の方が高い。そのため、この例は後者の例を示す。
【0036】
この漏水防止手段30は、グランドパッキン28とゴムパッキン31とで構成され、グランドパッキン28としては、グリースコットン等の環状弾性部材が使用される。上部本管6とほぼ同一径の帯状をなすグランドパッキン28を多層して、この例では5層に亘って上部本管6と連結管38との間隙32内に介挿される。
【0037】
さらに、このグランドパッキン28の下方であって、ストッパ部42との間には、パッキン部の一例を構成するゴム等の環状弾性部材が介挿される。この例では上部本管6と同一径となされた環状のゴムパッキン31が2層に亘り上部本管6の長手方向に積層された状態で介挿される。このようにストッパ部42とリング状補助管26とによって漏水防止手段30が挟持される。
【0038】
間隙32内を隙間なく漏水防止手段30で満たした状態で、上部フランジ18と下部フランジ22との間をボルト12で締結することで上部本管6と下部本管8とが連結管38によって連結される。このとき、ストッパ部42とリング状補助管26との間の漏水防止手段30が緊密となるように、上部フランジ18と下部フランジ22との間をボルト12で締結すれば、上部本管6や下部本管8に加わる水圧によって連結部(間隙32)から漏水することはない。
【0039】
さて、上述した締め付け具15は、ボルト12とこれに螺合されるナット14とから構成される。ボルト12は、図5に示すように螺旋状のねじ溝が形成されたボルト本体13を有する。ボルト本体13は、図4に示すように、下部フランジ22のボルト挿入孔24を貫通して上部フランジ18のボルト挿入孔20まで挿入できる長さとなされ、上部フランジ18より突出したボルト本体13には六角形状をなすナット14が螺合される。
【0040】
図5(a)に示すように、ボルト本体13には、ねじ溝が形成されていないねじ溝非形成領域が設けられる。ねじ溝非形成領域は、プレス加工等により平坦化された平坦部12aであり、この平坦部12aはボルト本体13の長手(軸心)方向に沿って所定幅W1で形成される。なお、ねじ溝が形成されていない領域を平坦面(平坦部12a)で構成したが、ボルト12の断面形状に沿った湾曲面(円弧面)であっても良い。
【0041】
平坦部12aには、ボルト12のボルト本体13の基端から先端に向かって締結力の基準となる目盛り部16が設けられる。目盛り部16は目的に応じた目盛りを刻印又は印刷することによって構成される。精密に締め付け位置を判別しなければならないような場所に適用する場合には、より精密な目盛りが付けられる。この例では、正確な締結力を維持するため、精密な締め付け位置を確定する必要があることから、目盛り部16の単位はミリメートル表示である。本例では目盛りを読みやすくするため、10ミリメートル単位で数字が表記されている。なお、ボルト本体13の長さはJIS規格で規定されており、本例では10cmのボルト12を用いている。
【0042】
次に、上述した締め付け具15を構成するボルト12の表面に目盛り部16を形成する方法について説明する。
【0043】
第1の加工方法としては、まず、ねじ溝が形成されてないボルト12を用意し、図5(a)および図5(b)に示すように、このボルト12のボルト本体13表面をプレス加工して平坦部12aを形成する。次に、平坦部12aの基端部から先端部に向かってミリメートル単位の目盛りをプレス加工で刻印する。次に、目盛り部16が刻印された平坦部12aを除いたボルト12の表面に、螺旋状に溝を形成する。こうすることで、目盛り部16を付したボルト12が得られる。
【0044】
第2の加工方法としては、ねじ溝が形成されたボルト12を用意する。次に、ボルト12の表面にプレス加工により平坦部12aを形成する。次に、平坦部12aの基端部から先端部に向かってミリメートル単位の目盛り部16をプレス加工して刻印する。その他の詳細は、第1の方法と同様であるため、説明を省略する。このような加工方法を用いることでボルト12の表面に目盛り部16を形成することができる。
【0045】
なお、上述した第1および第2の加工方法では、目盛り部16をプレス加工等により刻印していたが、例えば、マーカー等によって目盛り部16を表記しても良いし、目盛り部16が表記されたシール等をボルト12の平坦部12aに貼り付けることで目盛り部16を形成しても良い。ボルト12が屋外で使用されることを考慮すると、シール等からなる目盛り部16を貼り付ける方法による場合には、雨や風等によって剥がれるおそれのないように貼着することが好ましい。
【0046】
次に、伸縮継手50からの漏れ水を止水する動作について説明する。目盛り部16を有するボルト12を使用して継手が連結されている場合には、上述したように目盛り部16の目盛りを基準にして、同じ目盛りまでナット14が位置するように締め付けられる。理想的にはこのナット位置で漏水なく上部本管6と下部本管8とを連結できる。敷設した後の水圧の掛かり方などの違いによって、このナット位置は微妙にずれることがある。このずれによって部分的な漏水が発生する。
漏水が発生したときは、その保守作業(止水作業)が行われる。
【0047】
図6は、漏水していると思われる個所に取り付けられている幾つかの締め付け具1
5を示す。この例では、特に締め付け具15aを含めた2〜3の締め付け具15b、
15c付近から漏水しているものとする。
【0048】
その場合にはまず、図6(a)に示すように、例えば、当たりをつけた締め付け具15b、15c側のナット14b,14cを、ナット14b、14cの順でボルト12b、12cに締め付ける。締め付ける量(締め付け長)は、漏水の程度から予測し、この予測した締め付け長まで目盛り部16の目盛りを基準にして締め付ける。この締め付け量でボルト12b、12c付近からの漏水を確認する。止水されたときは、ボルト12b、12cの締め付けを止める。漏水が止まらないときは漏水が止まるまで締め付けを行う。図6(a)の例は完全に止水したときの締め付け後の目盛りが7.4cmを指しているものとする。
【0049】
なお、目盛りの位置は、例えばナット14の側面(上部フランジ18と接触している面とは反対側の面)を基準にして計測(目視)することができる。
【0050】
次に、図6(b)に示すように、作業者は、今度はボルト12bに隣接するボルト12aのナット14aの締め付けを行う。このとき、作業者は、隣接するボルト12bの目盛り部16の目盛りを読み取り、これを目安として読み取った目盛りの位置(7.4cm)となるまでナット14aの締め付けを行う。同じ目盛りの位置で漏水が止まったなら、そこで止水作業を止める。しかし、それでも漏水するときはさらに漏水が止まるまでナット14aを締め付けることになる。
【0051】
このようにボルト12に形成した目盛り部16を、ナット14の締め付け時における目安として使用することで、止水作業を迅速にしかも確実に遂行できる。
【0052】
本実施の形態によれば、締め付け具15を構成するボルト12の平坦部12aに目盛り部16が設けられるため、ナット14のボルト本体13に対する締め付け位置を容易に確認できる。これにより、複数のボルト12およびナット14が配設される継手50の締め付け作業において、ボルト12の目盛りを基準にして締め付ければ良いため、ボルト12をほぼ同じ締結力となるように均等に締め付けることができる。ボルト12が多数使用されていたとしても、迅速にその作業を遂行でき、これによって作業者の負担を軽減でき、従来よりも作業効率の向上を図ることができる。また、目盛り部を基準にしてナットを締め付ければ良いので、ナットの回した回数や、ねじ山の個数を数えたりする必要がない。さらに、予めボルトを締め付ける目盛り部の位置を確定しておけば、ボルトの目盛り部を読み取るだけで、ナットが設定した位置まで締め付けてあるかどうかを簡単かつ確実に判別できるため、締め付け作業を従来よりも大幅に簡略化できる。
【0053】
上述した実施例は、この発明に係るボルトを、この発明に係る継手に使用すると共に、該継手を水圧管の連結部に適用したが、水道管などの送水管の連結部や化学プラント工場やその他の工場において敷設される送給管の連結部、建築物内に敷設される送給管の連結部などにこの発明を適用できることは容易に理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、水力発電所において、落差部分に設置される水圧管用の継手やその締結手段などに好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】水力発電所の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る水圧管同士を連結する伸縮継手の構成を示す図である。
【図3】伸縮継手の構成を示す正面図である。
【図4】図3に示す伸縮継手のA−A線に沿った断面図である。
【図5】締め付け具の構成を示す図である。
【図6】伸縮継手からの漏れ水を止水する動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0056】
10…水圧管、 6…上部本管、 8…下部本管、 12…ボルト、 12a…平坦部 13…ボルト本体、 14…ナット、 15…締め付け具、 16…目盛り部、 18…上部フランジ、 20…挿入孔、 22…下部フランジ、 24…挿入孔、 26…リング状補助管、 28…グランドパッキン、 30…漏水防止手段、 31…ゴムパッキン、 32…間隙、 34…補強リブ、 38…連結管、 40…連結補助管、 42…ストッパ部、 50…伸縮継手、 60…余水路、 62,64…アンカブロック、 66…発電所、 70…締結手段、 74…上水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトとナットからなる締め付け具であって、
前記ボルトに形成されたねじ溝の一部に、ねじ溝が形成されていないねじ溝非形成領域が設けられ、
前記ねじ溝非形成領域には、前記ボルトに対する前記ナットの締め付け位置を示す目盛り部が設けられていること
を特徴とする締め付け具。
【請求項2】
管体同士を伸縮可能に連結する継手の連結用ボルトに用いられること
を特徴とする請求項1に記載の締め付け具。
【請求項3】
前記目盛り部の目盛り表示は、ミリメートル単位であること
を特徴とする請求項1に記載の締め付け具。
【請求項4】
第1の管体と第2の管体と、
前記第1の管体の端面と前記第2の管体の端面同士を対向させた状態で、それぞれの端面外周部を連結する連結管と、
前記連結管と前記第1の管体との間に設けられ、前記第1の管体と前記第2の管体とを前記連結管とを介して締結する締結手段とからなり、
前記締結手段は、前記第1の管体の端面外周部に設けられた上部フランジと、この上部フランジと対向するように、前記連結管の一端に設けられた下部フランジと、
前記上部フランジと前記下部フランジとを連結する締め付け具と、
前記連結管の内周面と前記第1の管体の外周面との間に設けられた漏水防止手段とで構成され、
前記締め付け具はボルトとナットとからなり、
前記ボルトの軸心方向に目盛り部を有するボルトが使用され、締結位置を目視できるようになされた
ことを特徴とする継手。
【請求項5】
前記第1および第2の管体は水圧管であって、
前記上部フランジは、リング状補助管を介して前記第1の管体に連結される
ことを特徴とする請求項4に記載の継手。
【請求項6】
前記漏水防止手段は、前記連結管の内周面に取り付けられたリング状ストッパ部と、前記ストッパ部と前記リング状補助管との間であって、前記連結管の内周面と前記第1の管体の外周面との間に介挿された伸縮自在なパッキン部材とで構成される
ことを特徴とする請求項4に記載の継手。
【請求項7】
前記ボルトは、このボルトに形成されたねじ溝の一部に、ねじ溝が形成されていないねじ溝非形成領域を有し、
前記目盛り部は、前記ねじ溝非形成領域が設けられたこと
を特徴とする請求項4に記載の継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−175314(P2008−175314A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10076(P2007−10076)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】