説明

締切り機構付き減圧弁

【課題】内部構造の複雑化を招くことなく、受圧デバイス側への高圧流体の過大な漏れを防止することのできる締切り機構付き減圧弁を提供する。
【解決手段】高圧側の一次側圧力室13と、受圧デバイス側の二次側圧力室14を連通孔17によって連通する。二次側圧力室14の圧力を受けるダイヤフラム19を設け、弁体18をダイヤフラム19に連結する。ダイヤフラム19はスプリング20で開弁方向に付勢する。ダイヤフラム19の受圧面り面積Sとスプリング20のばね定数kを、式(1),(2)を満たすように設定する。
P1×S−k×ΔL>C (1)
P1<P2 (2)
式中、P1は、二次側圧力室14の圧力、ΔLは、スプリング20の変位、Cは、弁体18の締切り必要荷重、P2は、受圧デバイスの許容最大圧力を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、供給源側の高圧流体を所定圧力に減圧して受圧デバイスの存在する低圧通路に供給する減圧弁に関し、とりわけ、受圧デバイスの停止時等に供給源側から低圧通路側への高圧流体の漏れを防止する機能を備えた締切り機構付き減圧弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池においては、高圧水素を充填した水素タンクをアノード側の流体供給源として用いることがある。このような高圧流体を扱うシステムにおいては、高圧流体の供給源と受圧デバイスの間に減圧弁を介装し、流体供給源の高圧流体を減圧弁によって所定圧力に減圧して受圧デバイスに供給する。
【0003】
このような用途で用いられる減圧弁として、受圧デバイス側の圧力に応動するダイヤフラムを設け、このダイヤフラムと一体に変位する弁体によって連通孔(ガス流路)を開閉するものが知られている。この減圧弁は、受圧デバイス側での流体使用によって下流側の圧力が低下すると、ダイヤフラムがその圧力低下に応動して弁体を開弁作動させ、上流側の高圧流体を、連通孔を通して下流側に所定圧力に減圧して流入させるようになっている。
【0004】
ところが、この種の減圧弁は、高圧流体の圧力調整(減圧)を目的としたものであるため、弁体と弁座(連通孔の周縁部)の間の密閉は完全なものではなく、受圧デバイス側での流体の流れが長時間停止する場合等には、上流側の高圧流体が弁体と弁座の隙間を通って受圧デバイスの存在する下流側に漏れてしまう。そして、この高圧流体の漏れによって下流側の圧力が増大し過ぎると、下流側の圧力が受圧デバイスの最大許容圧力を超えてしまう可能性が考えられる。
このため、この種の減圧弁を用いる場合には、減圧弁の上流側または下流側に遮断弁を設け、その遮断弁によって高圧流体の漏れを防止するようにしている。
【0005】
ところで、このように減圧弁と遮断弁を配管中に直列に設ける場合、配管上の設置スペースが大きくなってシステムの大型化を余儀なくされ、また、設置部品の増加によって組み付け工数も増加してしまう。
このため、これに対処する減圧弁として、減圧弁ブロックの内部に遮断弁機能(締切り機構)を組み込んだものが案出されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−278315号公報
【特許文献2】特許第2858199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の減圧弁においては、減圧弁ブロックの内部に複数種の弁機構が組み込まれることになるため、内部構造が複雑になり、製品の大型化やコストの高騰を招いてしまう。
【0008】
そこでこの発明は、内部構造の複雑化を招くことなく、受圧デバイス側への高圧流体の過大な漏れを防止することのできる締切り機構付き減圧弁を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る締切り機構付き減圧弁では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、高圧流体の供給源(例えば、実施形態の水素タンク2)側の通路に導通する一次側圧力室(例えば、実施形態の一次側圧力室13)と、受圧デバイス(例えば、実施形態の受圧デバイス7)側の低圧通路に導通する二次側圧力室(例えば、実施形態の二次側圧力室14)と、前記一次側圧力室と二次側圧力室とを連通する連通孔(例えば、実施形態の連通孔17)と、前記二次側圧力室の圧力を受ける受圧面(例えば、実施形態の受圧面19a)を有し、この受圧面に作用する前記二次側圧力室の圧力に応じて変位するダイヤフラム(例えば、実施形態のダイヤフラム19)と、このダイヤフラムと一体変位可能に連結され、前記連通孔を前記一次側圧力室側から開閉する弁体(例えば、実施形態の弁体18)と、前記ダイヤフラムを、前記弁体が前記連通孔を開く方向に付勢するスプリング(例えば、実施形態のスプリング20)と、を備え、前記二次側圧力室の圧力が所定圧力以下に低下したときに、前記弁体が連通孔を開口することによって、前記一次側圧力室から二次側圧力室に高圧流体を減圧して流入させる締切り機構付き減圧弁であって、前記ダイヤフラムの受圧面の面積と前記スプリングのばね定数が、以下の式(1),(2)を満たすように設定されていることを特徴とするものである。
P1×S−k×ΔL>C (1)
P1<P2 (2)
なお、式中、P1は、弁体が連通孔を閉じたときの二次側圧力室の圧力、Sは、ダイヤフラムの受圧面の面積、kは、スプリングのばね定数、ΔLは、スプリングの自由長からの変位、Cは、弁体の締切り必要荷重、P2は、受圧デバイスの許容最大圧力を表す。
これにより、弁体が連通孔を閉じた後に受圧デバイス側の流体の流れが停止すると、一次側圧力室内の高圧流体が弁体と連通孔の隙間を通して二次側圧力室に僅かずつ漏れ出る。こうして二次側圧力室の圧力が次第に増大し、ダイヤフラムに作用する閉弁方向の推力(式(1)の左辺の値)が弁体の締切り必要荷重(式(1)の右辺の値)を超えると、その推力によって弁体が締切られ、弁体と連通孔の隙間を通した高圧流体の漏れが規制される。そして、このときの二次側圧力室の圧力(P1)は、式(2)のように、受圧デバイスの許容最大圧力(P2)よりも小さい値となる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る締切り機構付き減圧弁において、前記弁体と前記連通孔の周縁の弁座(例えば、実施形態の弁座23)が同軸に配置され、前記弁体と弁座のうち、一方が円錐状に突出する第1の当接面(例えば、実施形態の第1の当接面21)を備えるとともに、他方が前記第1の当接面との初期当接部が円弧断面(例えば、実施形態の円弧断面24a)である環状の第2の当接面(例えば、実施形態の第2の当接面24)を備え、前記第1の当接面と第2の当接面の一方が樹脂によって形成され、他方が金属によって形成されていることを特徴とするものである。
これにより、受圧デバイス側での流体の流れがない状態において、一次側圧力室内の高圧流体が弁体と弁座の隙間を通しって二次側圧力室に僅かずつ漏れ、二次側圧力室の圧力の増大によってダイヤフラムに作用する閉弁方向の推力が増大すると、弁体と弁座が円錐状の第1の当接面と第2の当接面の円弧断面部分で当接する。ダイヤフラムに作用する閉弁方向の推力が比較的小さい間は、第1の当接面と第2の当接面とは線接触し、閉弁方向の推力が増大すると、樹脂材料の変形に伴って第1の当接面と第2の当接面が面で接触するようになる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、ダイヤフラムの受圧面の面積とスプリングのばね定数が式(1),(2)を満たすように設定され、ダイヤフラムに閉弁方向の推力として作用する二次側圧力室の圧力が受圧デバイスの許容最大圧力を超えない範囲で弁体を締切るようになっているため、遮断弁用の専用の弁機構を追加することなく、受圧デバイス側への高圧流体の過大な漏れを防止することができる。したがって、この発明によれば、製品の大型化やコストの高騰を抑えることができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、弁体と弁座が円錐状の第1の当接面と円弧断面部分を有する環状の第2の当接面で当接し、これらの当接面の一方が金属で形成されるとともに他方が樹脂によって形成されているため、閉弁方向の推力が小さい間は第1の当接面と第2の当接面を線接触させて閉弁し、閉弁方向の推力が増大すると、第1の当接面と第2の当接面を樹脂材料の変形によって面接触させることができる。このため、比較的小さい推力によって弁体と弁座の間を密閉することができるともに、大きな推力が作用した場合にあっても、弁体と弁座の間を確実に密閉しつつ当接面の劣化を防止することができる。
そして、この発明によれば、弁体の締切り必要荷重を小さくできることから、ダイヤフラムの受圧面積を小さくして、装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態の締切り機構付き減圧弁を採用した燃料電池システムの概略構成図である。
【図2】この発明の一実施形態の締切り機構付き減圧弁の断面図である。
【図3】この発明の一実施形態の締切り機構付き減圧弁の図2のA部の拡大図である。
【図4】この発明の一実施形態の締切り機構付き減圧弁の断面図である。
【図5】この発明の一実施形態の締切り機構付き減圧弁の断面図である。
【図6】この発明の一実施形態の締切り機構付き減圧弁の図5のB部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、燃料電池システムの概略構成図であり、符号1は、燃料としての水素と酸化剤としての酸素が供給されて発電をする燃料電池スタック(燃料電池)を示している。燃料電池スタック1は、例えば固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)であり、MEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)をセパレータ(図示しない)で挟持してなる単セルが複数積層されて構成されている。
【0015】
燃料電池スタック1には、高圧の水素を貯蔵する水素タンク2(高圧流体の供給源)から水素供給流路3を介して所定圧力および所定流量の水素が供給されるとともに、図示しない空気供給装置を介して酸素を含む空気が所定圧力および所定流量で供給される。
水素タンク2は、長手方向の両端が略半球状の筒状をなし、その長手方向の一端が開口している。この開口部2aには、パイロット式電磁弁からなる主止弁10が取り付けられている。水素タンク2から水素供給流路3には、主止弁10を介して水素が供給される。
【0016】
水素供給流路3には、締切り機構付き減圧弁5(以下、「減圧弁5」と呼ぶ。)と受圧デバイス7とが介装されている。水素タンク3から放出される高圧(例えば、35MPaあるいは70MPa等)の水素は、減圧弁5によって所定の圧力(例えば、1MP以下)に減圧されて受圧デバイス7に供給される。ここで、受圧デバイス7とは、減圧弁5と燃料電池スタック1との間に配置されるデバイスの総称であり、エゼクタ、インジェクタ、加湿器などが含まれる。エゼクタは、燃料電池スタック1から排出される水素オフガスを循環利用するために水素オフガスを再び水素供給流路3に戻すデバイスであり、インジェクタは燃料電池スタック1に供給する水素流量を調整するデバイスであり、加湿器は燃料電池スタック1に供給される水素を加湿するデバイスである。受圧デバイス7としていずれのデバイスが組み込まれるかは燃料電池システムの全体構成により決定される。
【0017】
図2は、減圧弁5の詳細な構造を示す図である。
同図に示すように、減圧弁5は、弁ハウジング11の内部に隔壁12を挟んで一次側圧力室13と二次側圧力室14とが設けられている。一次側圧力室13は、弁ハウジング11の流入ポート15を介して水素供給流路3の上流側3a(水素タンク1側)に接続され、二次側圧力室14は、弁ハウジング11の流出ポート16を介して水素供給流路3の下流側3b(受圧デバイス7側)に接続されている。隔壁12には、一次側圧力室13と二次側圧力室14を連通する連通孔17が設けられ、この連通孔17が、後述する弁体18によって一次側圧力室13側から開閉されるようになっている。
【0018】
また、弁ハウジング11内には、二次側圧力室14に臨むようにダイヤフラム19が設置されている。ダイヤフラム19は、二次側圧力室14に臨む側の面が受圧面19aとされ、受圧面19aの背面側の空間部が大気に導通している。ダイヤフラム19の中央部には、隔壁12の連通孔17を貫通する上記の弁体18の弁軸18bが連結されている。弁体18は、連通孔17内を貫通する弁軸18bと、弁軸18bの端部に連設されて連通孔17の一次側圧力室13側の端部を開閉する弁頭部18aと、を備えている。また、ダイヤフラム19の背面側には、ダイヤフラム19を、弁体18が連通孔17を開口する方向に付勢するスプリング20が設けられている。
【0019】
ここで、ダイヤフラム19には、スプリング20の付勢力と二次側圧力室14の圧力とが作用しており、弁体18は、受圧デバイス7側での水素ガスの消費(流れ)によって二次側圧力室14の圧力が所定圧力以下に低下したときに、ダイヤフラム19の応動によって弁頭部18aが連通孔17を開口して、一次側圧力室13から二次側圧力室14に高圧の水素ガスを減圧して流入させる。
【0020】
図3は、弁体18と連通孔17の一次側圧力室13に臨む側の端部を拡大して示した図である。
同図に示すように、弁体18は、弁頭部18aが弁軸18b側に向かって円錐状に突出して形成されている。この弁頭部18aの円錐面は第1の当接面21を成し、金属製のベース面に弾性を有する樹脂から成る表皮材22が取り付けられて構成されている。表皮材22を構成する樹脂は、弾性を有し、かつ充分な耐久性を有することが望ましく、例えば、ポリアミドイミド等が用いられる。
【0021】
一方、連通孔17の一次側圧力室13側の端縁は、弁体18の弁頭部18aが離接する弁座23とされている。この弁座23は全体が金属によって形成されている。また、弁体18はこの弁座23に対して同軸に配置されている。
弁座23は、連通孔17の端部のコーナが円周方向に亙って円弧状に面取りされ、その部分が円弧断面24aとされている。この実施形態の場合、円弧断面24a部分とその内外の縁部が第2の当接面24とされている。この弁座23側の第2の当接面24は、弁体18側の第1の当接面21との当接初期に円弧断面24a部分で第1の当接面21に対して線接触する。
なお、第2の当接面24の円弧断面24aは、小さな圧接荷重でも弁体18と弁座23の間の密閉性を維持できるようにするためには、曲率半径がより小さいことが有利であるが、樹脂材料から成る第1の当接面21の耐久性との兼ね合いから、弁体18側と弁座51側の各部は以下の範囲に設定することが望ましい。例えば、
連通孔17の直径 →3mm〜8mm
弁体18の弁頭部18aの円錐角度 →60°〜120°
弁座23の円弧断面24aの曲率半径 →0.1mm〜0.5mm
【0022】
ところで、この減圧弁5の場合、ダイヤフラム19の受圧面19aの面積Sと、スプリング20のばね定数kが、以下の式(1),(2)を満たすように設定されている。この減圧弁5においては、後に詳述するようにこの設定によって受圧デバイス7の作動停止時に弁体18が連通孔17を締切るようになる。
P1×S−k×ΔL>C (1)
P1<P2 (2)
ただし、式中、P1は、弁体18が連通孔17を閉じたときの二次側圧力室14の圧力、ΔLは、スプリング20の自由長からの変位、Cは、弁体18の締切り必要荷重、P2は、受圧デバイス7の許容最大圧力を表す。
【0023】
以上の構成において、燃料電池が運転されると、水素タンク2内の水素ガスが減圧弁5で所定圧力に減圧されて受圧デバイス7に供給される。このとき、減圧弁5においては、受圧デバイス7側の水素ガスの流れに伴って二次側圧力室14の圧力が所定値以下に低下すると、ダイヤフラム19が開弁方向に変位し、このとき弁体18が連通孔17を開いて一次側圧力室13から二次側圧力室14に高圧の水素ガスが減圧されて供給される。
【0024】
一方、受圧デバイス7の作動停止等によって受圧デバイス7側での水素ガスの流れが停止すると、当初は、ダイヤフラム19に作用する二次側圧力室14の圧力P1による閉弁方向の推力(P1×S)と、スプリング20による開弁方向の推力(k×ΔL)が釣り合い、図2,図3に示すように弁体18が弁座23に対して微小接触した状態となる。
【0025】
この状態では、弁体18と弁座23の間の圧接力が小さいため、図4に示すように、時間の経過とともに弁体18と弁座23の隙間から一次側圧力室13の高圧の水素ガスが二次側圧力室14側に僅かずつ漏れ、二次側圧力室14と受圧デバイス7側の流路の圧力P1が次第に高まる。こうして、二次側圧力室14の圧力P1が所定圧力まで高まると、ダイヤフラム19に作用する二次側圧力室14の圧力P1による閉弁方向の推力(P1×S)と、スプリング20による開弁方向の推力(k×ΔL)との差が弁体18の締切り必要荷重Cに達し、図5,図6に示すように、弁体18と弁座23の間が密閉されて、一次側圧力室13と二次側圧力室14の間が完全に遮断されるようになる。
そして、このときの二次側圧力室14の圧力P1は、上記の式(2)のように受圧デバイス7の許容最大圧力に達しない範囲に設定されているため、この閉弁状態が継続した場合であっても、受圧デバイス7は水素ガスの圧力P1によって悪影響を受けることがない。
【0026】
以上のように、この減圧弁5においては、ダイヤフラム19の受圧面19aの面積Sとスプリング20のばね定数kを式(1),(2)を満たすように設定するだけで、遮断弁用の専用の弁機構を追加することなく、受圧デバイス7側の流れが停止しているときに、その受圧デバイス7に一次側圧力室13の高圧ガスの圧力が作用するのを未然に防止することができる。したがって、この減圧弁5を採用することにより、減圧弁5全体の大型化やコストの高騰を抑えることができる。
【0027】
また、この実施形態の減圧弁5においては、弁体18と弁座23が、円錐状の第1の当接面21と円弧断面24aを有する第2の当接面24で当接し、第1の当接面21が弾性を有する樹脂によって形成され、第2の当接面24が金属によって形成されているため、閉弁方向の推力が小さい間は、図2〜図4に示すように第1の当接面21と第2の当接面24を線接触させて閉弁し、閉弁方向の推力が増大すると、図5,図6に示すように第1の当接面21と第2の当接面24を樹脂材料の変形によって面接触させることができる。
したがって、この減圧弁5においては、ダイヤフラム19に作用する閉弁方向の推力が比較的小さい段階から弁体18と弁座23の間を密閉することができるため、ダイヤフラム19の受圧面積の過大な増大を回避して、装置の小型化を図ることができる。また、ダイヤフラム19に作用する閉弁方向の推力が増大すると、弁体18と弁座23が面で接触するようになるため、弁体18や弁座23の当接面の劣化を未然に防止することができる。
【0028】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、弁体18側に円錐状に突出する第1の当接面21を設け、弁座23側に円弧断面24aを有する第2の当接面24を設けたが、逆に、弁座側に円錐状に突出する第1の当接面を設け、弁体側に円弧断面を有する第2の当接面を設けるようにしても良い。また、弁体側の当接面と弁座側の当接面は、一方が金属で他方が樹脂であれば良く、弁体側の当接面を金属で形成し、弁座側の当接面を樹脂で形成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0029】
2…水素タンク(高圧ガスの供給源)
5…減圧弁(締切り機構付き減圧弁)
7…受圧デバイス
13…一次側圧力室
14…二次側圧力室
17…連通孔
18…弁体
19…ダイヤフラム
19a…受圧面
20…スプリング
21…第1の当接面
23…弁座
24…第2の当接面
24a…円弧断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧流体の供給源側の通路に導通する一次側圧力室と、
受圧デバイス側の低圧通路に導通する二次側圧力室と、
前記一次側圧力室と二次側圧力室とを連通する連通孔と、
前記二次側圧力室の圧力を受ける受圧面を有し、この受圧面に作用する前記二次側圧力室の圧力に応じて変位するダイヤフラムと、
このダイヤフラムと一体変位可能に連結され、前記連通孔を前記一次側圧力室側から開閉する弁体と、
前記ダイヤフラムを、前記弁体が前記連通孔を開く方向に付勢するスプリングと、を備え、
前記二次側圧力室の圧力が所定圧力以下に低下したときに、前記弁体が連通孔を開口することによって、前記一次側圧力室から二次側圧力室に高圧流体を減圧して流入させる締切り機構付き減圧弁であって、
前記ダイヤフラムの受圧面の面積と前記スプリングのばね定数が、以下の式(1),(2)を満たすように設定されていることを特徴とする締切り機構付き減圧弁。
P1×S−k×ΔL>C (1)
P1<P2 (2)
なお、式中、P1は、弁体が連通孔を閉じたときの二次側圧力室の圧力、Sは、ダイヤフラムの受圧面の面積、kは、スプリングのばね定数、ΔLは、スプリングの自由長からの変位、Cは、弁体の締切り必要荷重、P2は、受圧デバイスの許容最大圧力を表す。
【請求項2】
前記弁体と前記連通孔の周縁の弁座が同軸に配置され、
前記弁体と弁座のうち、一方が円錐状に突出する第1の当接面を備えるとともに、他方が前記第1の当接面との初期当接部が円弧断面である環状の第2の当接面を備え、
前記第1の当接面と第2の当接面の一方が樹脂によって形成され、他方が金属によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の締切り機構付き減圧弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−208801(P2012−208801A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74824(P2011−74824)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】