説明

編成管理装置、多重送信装置、編成多重システム及びプログラム

【課題】リアルタイム・コンテンツの品質を確保しつつ、非リアルタイム・コンテンツの要求条件を満たす様に両者を混在させて送信する編成多重システムを提供する。
【解決手段】編成多重システムは、編成管理装置と多重送信装置を含み、編成管理装置は、全リアルタイム・コンテンツの送信速度に関する要求条件に基づき、各非リアルタイム・コンテンツの送信速度及び送信期間を特定する情報を含む編成情報を出力し、多重送信装置は、リアルタイム・コンテンツを符号化してリアルタイム・コンテンツの各時刻における速度を示す速度情報を算出し、編成情報及び速度情報から、各時刻における各リアルタイム・コンテンツの送信速度を、利用する伝送路の伝送速度を超えない様に確定し、確定した各リアルタイム・コンテンツの送信速度及び編成情報に従い、両コンテンツを伝送路に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送又は通信サービスにおいて、リアルタイム・コンテンツと、非リアルタイム・コンテンツを混在させて送信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
放送又は通信ネットワークによる、音声、動画像、静止画、図形及び/又はテキスト等を含むコンテンツの配信は、リアルタイム配信と、非リアルタイム配信に分類することができる。リアルタイム配信とは、受信側において、コンテンツを受信しながら視聴する配信形態であり(例えば、非特許文献1、参照。)、非リアルタイム配信とは、受信側において、コンテンツを一旦記憶装置に保存し、その後に視聴する形態である。なお、以下の説明において、リアルタイム配信用のコンテンツをRTコンテンツ、非リアルタイム配信用のコンテンツをNRTコンテンツと呼ぶ。
【0003】
非特許文献1は、RTコンテンツのみを配信する形態であるが、今後サービスが開始されるマルチメディア放送では、RTコンテンツとNRTコンテンツを混在させて放送することが予定されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「デジタル放送ハンドブック」、編者:社団法人 映像情報メディア学会、発行所:オーム社、平成15年6月20日、p.430、p479
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マルチメディア放送においては、配信に使用する伝送路の帯域にて、RTコンテンツ及びNRTコンテンツの両方の要求条件を満たしつつ、効率よく送信することが必要になる。ここで、RTコンテンツの品質を確保しつつ、効率よく送信するために、RTコンテンツは統計多重を行うことが好ましく、よって、RTコンテンツ送信で使用する帯域は刻々と変動することになる。NRTコンテンツは、通常、所定の時刻までに送信を終了することが求められるが、RTコンテンツの帯域が変動することにより、NRTコンテンツの送信に利用できる帯域も変動し、これにより、要求された時刻までにNRTコンテンツの送信が完了しないこと、つまり、放送事故が発生し得ることになる。
【0006】
よって、RTコンテンツの品質を確保しつつ、NRTコンテンツについても、送信完了時刻等の要求される条件を満たすように送信することを確実にするための仕組みがマルチメディア放送を実現するためには必要となる。
【0007】
したがって、本発明はRTコンテンツの品質を確保しつつ、各NRTコンテンツの要求条件を満たす様にRTコンテンツとNRTコンテンツを混在させて送信する編成管理装置、多重送信装置、編成多重システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による編成管理装置によれば、
1つ以上のRTコンテンツのそれぞれに指定されている速度に基づき、合計保証速度を求める手段と、コンテンツ配信に使用する伝送路の伝送速度から前記合計保証速度を減じてNRTコンテンツの送信に利用できる第1の伝送速度を求め、1つ以上のNRTコンテンツのそれぞれに指定されている送信終了時刻を含む要求条件に基づき、総てのNRTコンテンツを、前記第1の伝送速度内で、前記送信終了時刻までに送信可能であるか否かを判定し、送信可能である場合には、前記1つ以上のNRTコンテンツの送信速度及び送信期間を特定する情報を含む編成情報を出力する手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明による編成管理装置の他の実施形態によれば、
RTコンテンツに指定されている前記速度は、該RTコンテンツの平均速度であり、前記合計保証速度は、各RTコンテンツの前記平均速度に、あらかじめ定めた0より大きく1以下の低減率を乗じた値の和であることも好ましい。
【0010】
本発明による多重送信装置によれば、
RTコンテンツを符号化し、該RTコンテンツの各時刻における送信速度を示す速度情報を算出する符号化手段と、コンテンツ配信に使用する伝送路の伝送速度並びに1つ以上のNRTコンテンツの送信速度及び送信期間を特定する情報を含む編成情報に基づき、各時刻においてRTコンテンツの送信に利用できる第2の伝送速度を算出し、前記第2の伝送速度及び1つ以上のRTコンテンツの速度情報から、各時刻における各RTコンテンツの送信速度の合計が対応する時刻における前記第2の伝送速度を超えない様に、各RTコンテンツの各時刻における送信速度を確定させる速度確定手段と、前記編成情報と、前記確定した各RTコンテンツの各時刻における送信速度に従い、NRTコンテンツ及びRTコンテンツを伝送路に送信する送信手段とを備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明による多重送信装置の他の実施形態によれば、
前記速度確定手段は、RTコンテンツの速度情報に基づき、該RTコンテンツに対する所定数の速度候補を、その順位と共に算出する手段と、各RTコンテンツの同じ順位の速度候補の同じ時刻における送信速度の合計値の中で、同じ時刻における前記第2の伝送速度以下となる最大の合計値を判定し、判定した合計値に対応する順位の速度候補の送信速度を、各RTコンテンツの該時刻における送信速度に決定し、総ての合計値が前記第2の伝送速度より大きい時刻については、該時刻における各RTコンテンツの速度情報の送信速度比に基づき、該時刻における第2の伝送速度を各RTコンテンツに配分することで、各RTコンテンツの送信速度を決定する手段とを備えていることも好ましい。
【0012】
本発明による多重送信装置の他の実施形態によれば、
前記配分後の各RTコンテンツの送信速度の大小関係は、速度情報の送信速度の大小関係と同じであるが、前記配分後の各RTコンテンツの送信速度の最も遅い送信速度に対する比は、最も遅い送信速度を除き、速度情報の送信速度比に従い比例配分する場合より小さくすることも好ましい。
【0013】
本発明による編成多重システムは、
前記編成管理装置と前記多重送信装置を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明によるプログラムによれば、
前記編成管理装置、前記多重送信装置又は編成多重システムとしてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、送信に使用する伝送路の伝送帯域を十分に有効利用し、RTコンテンツの品質と、NRTコンテンツの送信終了時刻といった要求条件を満たす様に、RTコンテンツ及びNRTコンテンツを編成多重し、与えられた伝送路の帯域内で、放送事故を起こさないよう安全に送信することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による編成多重システムの概略的な構成図である。
【図2】編成管理装置の概略的な構成図である。
【図3】シミュレーション部の処理フロー図である。
【図4】シミュレーション部の処理を説明する図である。
【図5】編成情報の説明図である。
【図6】NRTコンテンツの要求条件の他の形態を示す図である。
【図7】多重送信装置の概略的な構成図である。
【図8】判定部の処理フロー図である。
【図9】RT信号の非線形配分を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明による編成多重システム100の概略的な構成図であり、編成多重システム100は、編成管理装置1と、多重送信装置2とを備えている。編成管理装置1は、RTコンテンツ及びNRTコンテンツの要求条件と、使用する伝送路の帯域(伝送速度)に基づき、NRTコンテンツの確定した送信スケジュールを含む編成情報を出力し、多重送信装置2は、編成情報に基づきRT及びNRTコンテンツの合計送信速度が、使用する伝送路の伝送速度を超えない様にRTコンテンツの送信速度を決定して、RTコンテンツ及びNRTコンテンツの送信を行う。
【0018】
図2は、編成管理装置1の概略的な構成図である。図2に示す様に、編成管理装置1は、保証速度算出部11と、シミュレーション部12とを備えている。
【0019】
保証速度算出部11は、同時に送信する1つ以上のRTコンテンツの要求条件に基づき合計保証速度を決定する。RTコンテンツの要求条件には、コンテンツの提供者又は送信管理者が指定する、当該RTコンテンツの平均速度が含まれており、最低保証速度算出部11は、各RTコンテンツの平均速度に所定の低減率(0<低減率≦1)を乗じて、各RTコンテンツの保証速度を算出し、全RTコンテンツの保証速度の和を合計保証速度とする。
【0020】
低減率は、RTコンテンツの映像品質に大きく影響しない範囲で、RTコンテンツの平均速度から、RTコンテンツに適用できる送信速度の下限を求めるものであり、その値については、使用する符号化方式に基づきあらかじめ決めておく。具体的には、あらかじめ、様々なコンテンツを様々な送信速度で符号化し、平均速度と、許容できる下限の映像品質に対応する送信速度との関係から経験的に決定しておく。なお、低減率は、符号化方式が異なる各RTコンテンツに対して同じ値を使用する形態であっても良く、また、符号化方式が同じであってもコンテンツに応じて異なる値を使用する形態であっても良い。なお、コンテンツの提供者等が期待値として指定する速度に対応する低減率を使用する限り、要求条件において使用する速度は、例えば、最高速度等、平均速度以外の速度を使用する形態であっても良い。さらには、コンテンツの提供者又は送信管理者が最低速度を指定する形態であってもよい。この場合には低減率を1に設定する。
【0021】
シミュレーション部12は、NRTコンテンツの要求条件と、保証速度算出部11からの合計保証速度に基づき、NRTコンテンツの送信が可能であるか否かを判定し、可能である場合には、合計保証速度と、NRTコンテンツの送信スケジュール、つまり、NRTコンテンツの送信期間及び送信速度を示す編成情報を多重送信装置2に出力する。なお、NRTコンテンツの要求条件には、NRTコンテンツのデータ・サイズ(bit)と、送信開始時刻及び送信終了時刻が含まれている。
【0022】
図3は、シミュレーション部12における処理を示すフロー図である。なお、シミュレーション部12は、シミュレーションの対象とする全時間(編成管理時間)を、所定長の単位時間に分割して、単位時間を単位として処理を行う。単位時間は、例えば、1秒から数十分といった値に設定する。
【0023】
まず、シミュレーション部12は、NRTコンテンツの送信に利用できる伝送速度Qを、伝送路の伝送速度から合計保証速度を減じることにより求める(S31)。続いて、編成管理時間における最初の単位時間を選択し(S32)、選択した単位時間に送信する必要があるNRTコンテンツを、要求条件の送信開始時刻及び送信終了時刻に基づき判定する(S33)。
【0024】
シミュレーション部12は、選択している単位時間にて伝送する各NRTコンテンツの送信速度rの合計を求めてQと比較する(S34)。なお、NRTコンテンツの送信速度rは以下の式により求める。
=NRTコンテンツのデータ・サイズ/(送信終了時刻−送信開始時刻) (1)
【0025】
シミュレーション部12は、送信速度rの合計がQより大きければ送信不可能と判断し(S37)、その旨を図示しない表示部に表示して終了する。一方、送信速度rの合計がQ以下であれば、現在選択している単位時間が、編成管理時間に含まれる最後の単位時間であるか否かを判定し(S35)、最後の単位時間で無ければ、次の単位時間を選択して(S36)、S33及びS34の処理を繰り返す。また、S35において最後の単位時間であれば、送信可能と判断して(S38)、各NRTコンテンツの送信速度及び送信期間を特定できる情報と、合計保証速度を含む編成情報を多重送信部2に出力する。
【0026】
例えば、4つのNRTコンテンツについて、図4に示す送信開始時刻及び送信終了時刻が要求されているものとする。なお、図4においてNRTコンテンツに対応する四角形の高さはコンテンツの送信速度に対応し、その面積がデータ・サイズに対応している。この場合、第8番目の単位時間において送信しなければならない3つのNRTコンテンツの送信速度の合計がQを超えるため、シミュレーション部12は、第8番目の単位時間の処理において送信不可能と判断してその旨を表示部に表示する。
【0027】
なお、このとき、送信不可能との判定になった単位時間や、この単位時間において伝送する各NRTコンテンツの送信速度とQの値を併せて表示することも好ましい。また、S34において、送信速度rの合計がQより大きくなった段階で直ちに処理を終了するのではなく、総ての単位時間についてS33及びS34の処理を行い、送信速度rの合計がQより大きくなった総ての単位時間の情報を表示部に出力する形態や、図4に示すグラフを出力する形態であっても良い。
【0028】
いずれにしても、送信不可能との判断になった場合には、まず、NRTコンテンツの要求条件のうち変更可能なものを順次変更し送信可能となるまで上記処理を繰り返す。具体的には、送信開始時刻のみを早めたり、送信開始時刻及び送信終了時刻の両方を早めたり、NRTコンテンツのサイズを変更して上記処理を繰り返す。なお、上述した形態においては式(1)から明らかな様に、各NRTコンテンツの送信速度は、全送信期間に渡り一定であるものとしていたが、時間に応じて変更できる形態であっても良い。これは、例えば、図6に示す様に、コンテンツを任意のサイズの任意の数に分割し(図6では3つに分割)、分割点における時刻も指定することで可能となる。図6に示す様に分割して時刻指定した場合、送信開始時刻から時刻T1までの送信速度R1と、時刻T1から時刻T2までの送信速度R2と、時刻T2から送信終了時刻までの送信速度R3は、それぞれ、
R1=A/(時刻T1−送信開始時刻)
R2=B/(時刻T2−時刻T1)
R3=C/(送信終了時刻−時刻T2)
となる。
【0029】
図5は、NRTコンテンツ#3の要求条件を上記の通り変更して送信可能となった状態を示している。なお、NRTコンテンツの送信速度を送信途中で変更するために、各期間の送信速度を要求条件において直接指定する形態であっても良い。なお、NRTコンテンツの変更可能な要求条件を変更しても送信可能とならない場合には、RTコンテンツの要求条件や、RTコンテンツに適用する低減率についても見直し行う。
【0030】
図7は、多重送信装置2の概略的な構成図であり、多重送信装置2は、符号化部21と、速度確定部22と送信部23とを備えており、速度確定部22は、速度候補算出部221と、判定部222とを備えている。
【0031】
符号化部21は、まず、入力された1つ以上のRTコンテンツを符号化し、各RTコンテンツの速度を算出し、速度情報として速度確定部22に出力する。なお、RTコンテンツは、可変速度の信号であり、速度情報は、例えば、100ミリ秒、1秒、1フレームの周期といった期間を単位として指定される各時刻におけるRTコンテンツの送信速度をそれぞれ示すものである。なお、RTコンテンツを符号化する場合の符号化パラメータを総てのRTコンテンツで同じとするのではなく、コンテンツの提供者等が期待値として指定した平均速度といった、各RTコンテンツの符号化速度を編成管理装置から多重送信装置に入力し、符号化部21は、各RTコンテンツの符号化速度に応じた符号化パラメータを設定して符号化することも望ましい。
【0032】
速度確定部22は、各RTコンテンツの速度情報と、編成情報に基づき各RTコンテンツの各時刻における送信速度を決定し、決定した各RTコンテンツの各時刻における送信速度を、確定速度情報として出力する。以下に、速度確定部22における処理の詳細を説明する。
【0033】
速度候補算出部221には、算出する速度候補の数m(mは自然数)があらかじめ設定されており、速度候補算出部221は、RTコンテンツの速度情報に基づき、当該RTコンテンツのm個の速度候補を算出して、その順位と共に判定部222に出力する。具体的には、速度候補算出部221は、RTコンテンツの速度情報を、当該RTコンテンツの第1の速度候補とし、RTコンテンツの第kの速度候補(2≦k≦m)の各時刻における送信速度については、当該RTコンテンツの第k−1の速度候補の対応する時刻における送信速度に、あらかじめ定めた候補算出係数(0<候補算出係数<1)を乗じることにより算出する。なお、順位は、第1の速度候補が最も高く、第mの速度候補が最も低いものとする。
【0034】
判定部222は、各RTコンテンツの各速度候補と、編成情報に基づき各RTコンテンツの各時刻における送信速度を決定して最終的な送信スケジュールを確定させる。
【0035】
図8は、判定部222における、各RTコンテンツの送信速度を確定させるためのフロー図である。判定部222も、シミュレーション部12と同様に、単位時間を単位として処理を行う。しかしながら、判定部222が使用する単位時間は、例えば、速度情報における、100ミリ秒、1秒、フレーム周期といった送信速度を指定する期間であり、シミュレーション部12での単位時間よりは短い時間を使用する。以後、判定部222における処理の単位時間を処理時刻と呼ぶものとする。
【0036】
まず、判定部222は、編成管理時間における最初の処理時刻を選択し(S81)、nを1に設定する(S82)。その後、各RTコンテンツの第nの速度候補を選択し(S83)、当該処理時刻において送信可能であるか否かを判定する(S84)。具体的には、判定部222は、編成情報に基づき、当該処理時刻において送信する各NRTコンテンツの合計送信速度を求め、伝送路の速度から前記合計送信速度を減じて、当該処理時刻においてRTコンテンツの送信に利用できる伝送速度を求め、当該処理時刻における各RTコンテンツの第nの速度候補の送信速度を合計し、合計値が、当該処理時刻においてRTコンテンツの送信に利用できる伝送速度以下であれば送信可能と判断し、それ以外の場合には、送信不可能と判定する。
【0037】
送信可能である場合、選択した処理時刻における各RTコンテンツの送信速度を、現在選択している速度候補の送信速度に確定させる(S88)。一方、送信不可能である場合には、nを1増やして(S87)、候補算出係数により低減させられた速度に対して送信可能であるか否かを判定する処理を繰り返す。ただし、n=mとなっても送信不可能である場合(S85)には、各RTコンテンツの速度情報の当該処理時刻における送信速度に基づき、当該処理時刻においてRTコンテンツの伝送に利用できる伝送速度を、各RTコンテンツに所定の規則で配分し、配分した速度を当該処理時刻における各RTコンテンツの送信速度として確定させる(S88)。
【0038】
判定部222は、これら処理を、総ての処理時刻に対して行い(S89、S90)、各RTコンテンツの各処理時刻における送信速度を確定させる。なお、この時点において、各RTコンテンツは、第1の速度候補に従い符号化されているのみであるため、RTコンテンツの総ての処理時刻における送信速度が、第1の速度候補と同じでなければ、再度、符号化を行う必要がある。このため、判定部222は、各RTコンテンツの各処理時刻における確定した速度を示す確定速度情報を符号化部21に送信して再度RTコンテンツの符号化を行わせる。また、判定部222は、確定速度情報及び編成情報を送信部23に通知し、送信部23は、編成情報及び確定速度情報に基づきRTコンテンツとNRTコンテンツを伝送路に送信する。
【0039】
なお、S86における強制配分は、各RTコンテンツの速度情報の当該処理時刻における送信速度比に応じて比例配分する形態であっても、非線形に配分する形態であっても良い。非線形に配分する場合には、各RTコンテンツに配分する送信速度の大小関係は、速度情報における送信速度の大小関係と同じにするが、配分する最も遅い送信速度に対する比については、最も遅い送信速度を除き、速度情報における送信速度の比で比例配分する場合よりも小さくするものとする。この例を図9に示す。図9において、例えば、3つのRTコンテンツA、B及びCの速度情報における送信速度の比が2:4:6であったとすると、A:B:C=7:11:13の比率で配分を行う。この場合、速度情報における最も遅い送信速度(RTコンテンツA)に対する比は、Bは2であり、Cは3であるが、実際に配分される最も遅い送信速度(RTコンテンツA)に対する比は、Bは約1.57、Cは約1.86となる。
【0040】
なお、図9に示す様に、“速度情報における最も遅い送信速度に対する比”に対する“実際に配分する送信速度の最も遅い送信速度に対する比”の割合は、送信速度が大きいものほど小さくする。具体的には、図9のRTコンテンツBについては、速度情報の最も遅い送信速度に対する比は2であり、実際に配分する送信速度の最も遅い送信速度に対する比は約1.57である。したがって、その割合は約1.57/2=0.79となる。一方、RTコンテンツCについては、速度情報の最も遅い送信速度に対する比は3であり、実際に配分する送信速度の最も遅い送信速度に対する比は約1.86である。したがって、その割合は約1.86/3=0.62と、RTコンテンツBより小さくなっている。
【0041】
比例配分では、元の送信速度が低いRTコンテンツは、さらに送信速度が削られ、これは品質に多大な影響を及ぼす可能性があるが、元の送信速度が高いRTコンテンツの送信速度をより多く削り、元の送信速度の低いRTコンテンツの送信速度をあまり変更しない様に、非線形に配分することで、品質の劣化を回避することができる。
【0042】
以上、本発明により、送信に使用する伝送路の伝送帯域を十分に有効利用し、RTコンテンツの品質と、NRTコンテンツの送信終了時刻といった要求条件を満たす様に編成多重し、与えられた伝送路の帯域内で、放送事故を起こさないよう安全に送信することが可能になる。
【0043】
なお、本発明による編成管理装置1、多重送信装置2及び編成多重システム100は、コンピュータを図1、図2及び図7の各部として機能させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。さらに、本発明は、ハードウェア及びソフトウェアの組合せによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 編成管理装置
2 多重送信装置部
11 保証速度算出部
12 シミュレーション部
21 符号化部
22 速度確定部
23 送信部
100 編成多重システム
221 速度候補算出部
222 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のリアルタイム・コンテンツのそれぞれに指定されている速度に基づき、合計保証速度を求める手段と、
コンテンツ配信に使用する伝送路の伝送速度から前記合計保証速度を減じて非リアルタイム・コンテンツの送信に利用できる第1の伝送速度を求め、1つ以上の非リアルタイム・コンテンツのそれぞれに指定されている送信終了時刻を含む要求条件に基づき、総ての非リアルタイム・コンテンツを、前記第1の伝送速度内で、前記送信終了時刻までに送信可能であるか否かを判定し、送信可能である場合には、前記1つ以上の非リアルタイム・コンテンツの送信速度及び送信期間を特定する情報を含む編成情報を出力する手段と、
を備えている編成管理装置。
【請求項2】
リアルタイム・コンテンツに指定されている前記速度は、該リアルタイム・コンテンツの平均速度であり、
前記合計保証速度は、各リアルタイム・コンテンツの前記平均速度に、あらかじめ定めた0より大きく1以下の低減率を乗じた値の和である、
請求項1に記載の編成管理装置。
【請求項3】
リアルタイム・コンテンツを符号化し、リアルタイム・コンテンツの各時刻における送信速度を示す速度情報を算出する符号化手段と、
コンテンツ配信に使用する伝送路の伝送速度並びに1つ以上の非リアルタイム・コンテンツの送信速度及び送信期間を特定する情報を含む編成情報に基づき、各時刻においてリアルタイム・コンテンツの送信に利用できる第2の伝送速度を算出し、前記第2の伝送速度及び1つ以上のリアルタイム・コンテンツの速度情報から、各時刻における各リアルタイム・コンテンツの送信速度の合計が対応する時刻における前記第2の伝送速度を超えない様に、各リアルタイム・コンテンツの各時刻における送信速度を確定させる速度確定手段と、
前記編成情報と、前記確定した各リアルタイム・コンテンツの各時刻における送信速度に従い、非リアルタイム・コンテンツ及びリアルタイム・コンテンツを伝送路に送信する送信手段と、
を備えている多重送信装置。
【請求項4】
前記速度確定手段は、
リアルタイム・コンテンツの速度情報に基づき、該リアルタイム・コンテンツに対する所定数の速度候補を、その順位と共に算出する手段と、
各リアルタイム・コンテンツの同じ順位の速度候補の同じ時刻における送信速度の合計値の中で、同じ時刻における前記第2の伝送速度以下となる最大の合計値を判定し、判定した合計値に対応する順位の速度候補の送信速度を、各リアルタイム・コンテンツの該時刻における送信速度に決定し、総ての合計値が前記第2の伝送速度より大きい時刻については、該時刻における各リアルタイム・コンテンツの速度情報の送信速度比に基づき、該時刻における第2の伝送速度を各リアルタイム・コンテンツに配分することで、各リアルタイム・コンテンツの送信速度を決定する手段と、
を備えている請求項3に記載の多重送信装置。
【請求項5】
前記配分後の各リアルタイム・コンテンツの送信速度の大小関係は、速度情報の送信速度の大小関係と同じであるが、前記配分後の各リアルタイム・コンテンツの送信速度の最も遅い送信速度に対する比は、最も遅い送信速度を除き、速度情報の送信速度比に従い比例配分する場合より小さくする、
請求項4に記載の多重送信装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の編成管理装置と、請求項3から5のいずれか1項に記載の多重送信装置を含む編成多重システム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の編成管理装置、請求項3から5のいずれか1項に記載の多重送信装置、或いは、請求項6に記載の編成多重システムとしてコンピュータを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−166649(P2011−166649A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29856(P2010−29856)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】