説明

緩衝材、および電子機器内部の緩衝構造

【課題】小型且つ軽量な物品であっても十分な緩衝効果を得ることができる緩衝材と、その緩衝材を備えた電子機器内部の緩衝構造を提供すること。
【解決手段】緩衝材1は、本体部11と、本体部11から突出するスペーサー部13とを備えている。スペーサー部13は、2つの左上スペーサー41、2つの右上スペーサー42、2つの左下スペーサー43、2つの右下スペーサー44、2つの前スペーサー45、および2つの後スペーサー46によって構成され、このスペーサー部13が収容部内面に当接することにより、収容部の内面と本体部11との間には、x,y,z方向のどちらから見ても、本体部11の内側に収容される物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収容部に収容する際に、物品と収容部との間に介装されることにより、収容部に衝撃が作用した場合に、収容部から物品へと伝わる衝撃を緩和可能な緩衝材と、この緩衝材を備えた電子機器内部の緩衝構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスク装置関連の技術が発達し、既に10〜15g程度の小型且つ軽量なハードディスク装置が開発されている。そのため、様々な機器にハードディスク装置が搭載可能となっており、特に、PDA、ポータブルオーディオ機器、ポータブルテレビ、携帯電話機などに代表されるモバイル機器において、今後、ハードディスク装置を搭載した製品が増えるものと考えられる。このようなモバイル機器は、持ち運ぶ際に、誤って落としたりどこかにぶつけたりすることも多いので、モバイル機器内に収容したハードディスク装置を保護するためには、ハードディスク装置収容部の内面とハードディスク装置との間に緩衝材を介装することが望ましい。
【0003】
ハードディスク装置用の緩衝材としては、従来、例えば、下記特許文献1に記載の如き緩衝材が提案されていた。このような緩衝材を利用すれば、緩衝材が弾性変形するのに伴って衝撃・振動を吸収・緩和することができ、その後、形状が復元することで衝撃・振動吸収性を維持することができるので、緩衝材によって取り囲まれたハードディスク装置を衝撃から保護することができた。
【特許文献1】特許第3466150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の如き小型且つ軽量なハードディスク装置の場合、ハードディスク装置の質量がきわめて小さいので、上記特許文献1の図1等に記載の如く、単にハードディスク装置の周囲を取り囲むように緩衝材を配置するだけでは、衝撃を受けてもハードディスク装置から緩衝材に大きな荷重が作用しない。そのため、緩衝材はほとんど変形せず、所期の緩衝効果が得られない、という問題が生じた。
【0005】
ここで、緩衝材を十分に変形させるための対策としては、緩衝材の材料硬度をさらに低下させるという方法もある。しかし、材料硬度を低くするといっても限界があり、材料硬度を過剰に低くしようとすると、材料の選定は困難になる。また、緩衝材の材料硬度が余りにも低くなると、緩衝材そのものの形状維持が困難になるので、緩衝材そのものが取り扱いにくくなり、ハードディスク装置に対する組み付け性が悪くなるなどの問題を招くおそれもあった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、小型且つ軽量な物品であっても十分な緩衝効果を得ることができる緩衝材と、その緩衝材を備えた電子機器内部の緩衝構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明の緩衝材は、内部空間を有する収容部に物品を収容する際に、前記物品と前記収容部内面との間に介装されて、前記物品を前記収容部内面に接触させないように支持するとともに、前記収容部に特定方向からの衝撃が作用した場合に、弾性変形を伴って前記収容部から前記物品へと伝わる衝撃を緩和する緩衝材であって、前記物品に接触する本体部と、前記本体部と一体に形成されており、前記本体部よりも前記特定方向へ突出した部分で前記収容部内面に当接することにより、前記本体部と前記収容部内面との間に空間を確保するスペーサー部とを備え、前記スペーサー部が、前記特定方向から見て前記物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間を確保していることを特徴とする。
【0008】
このように構成された緩衝材によれば、スペーサー部によって本体部と収容部内面との間に空間が確保されており、しかも、その空間は特定方向から見て物品と重なる範囲全体にわたって存在する。そのため、特定方向から衝撃を受けた場合、特定方向から見て物品と重なる範囲の内側には、圧縮応力を受ける部分が存在しない。また、特定方向から見て物品と重なる範囲の内側においては、緩衝材を物品側から空間側へ変位させる方向への応力が作用する一方、特定方向から見て物品と重なる範囲の外側では、スペーサー部が緩衝材の変位を妨げる。そのため、特定方向から見て物品と重なる範囲とスペーサー部との中間にある部分には、比較的大きなせん断応力が生じやすくなり、このせん断応力によって緩衝材が変形するのに伴って、振動・衝撃が吸収・緩和される。
【0009】
すなわち、単に物品と収容部内面との間に空間を設けることなく緩衝材のみを挟み込んだ場合は、主に緩衝材の圧縮変形に伴って振動・衝撃が吸収・緩和されることになるが、本発明の場合は、物品と収容部内面との間に特定方向から見て物品と重なる範囲全体にわたる空間が存在するので、大きな圧縮変形は生じず、主に緩衝材のせん断変形に伴って振動・衝撃が吸収・緩和されることになる。
【0010】
このような構成にすると、緩衝材を圧縮変形させなくても緩衝効果を得ることができるようになるので、小型且つ軽量な物品であっても、緩衝材の材料硬度を過剰に低くすることなく十分な緩衝効果を得ることができるようになる。また、緩衝材の材料硬度を過剰に低くしなくてもよいことから、緩衝材の材料を選定する際の自由度は高くなり、緩衝材の形状維持も容易になり、緩衝材の組み付け性も改善することができる。
【0011】
ところで、例えば、水平面上に必ず水平に設置される電子機器の場合、設置の際に水平面に対して垂直な方向への衝撃を受けることはあるものの、水平面に平行な方向への衝撃は受けにくい。したがって、このような電子機器の内部に衝撃からの保護対象となる物品を収容する場合は、一方向(=水平面に対して垂直な方向)についてのみ緩衝材による緩衝効果を得られればよい。一方、物によっては、二次元的にどちらからも衝撃を受ける可能性がある物や、三次元的にどちらからも衝撃を受ける可能性がある物もある。
【0012】
そこで、二次元的にどちらからも衝撃を受ける可能性がある物であれば、前記特定方向は、互いに直交するx,y方向を想定するとよく、この場合、前記スペーサー部は、前記本体部よりも前記x方向へ突出した部分で前記収容部内面に当接することにより、前記本体部と前記収容部内面との間に、前記x方向から見て前記物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間を確保しており、且つ、前記本体部よりも前記y方向へ突出した部分で前記収容部内面に当接することにより、前記本体部と前記収容部内面との間に、前記y方向から見て前記物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間を確保していると好ましい。
【0013】
この場合、x,y方向双方に平行な面に対して平行ないずれの方向から衝撃を受けても物品に伝わる衝撃を緩和することができる。
また、三次元的にどちらからも衝撃を受ける可能性がある物であれば、前記特定方向は、互いに直交するx,y,z方向を想定するとよく、この場合、前記スペーサー部は、前記本体部よりも前記x方向へ突出した部分で前記収容部内面に当接することにより、前記本体部と前記収容部内面との間に、前記x方向から見て前記物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間を確保しており、且つ、前記本体部よりも前記y方向へ突出した部分で前記収容部内面に当接することにより、前記本体部と前記収容部内面との間に、前記y方向から見て前記物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間を確保しており、且つ、前記本体部よりも前記z方向へ突出した部分で前記収容部内面に当接することにより、前記本体部と前記収容部内面との間に、前記z方向から見て前記物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間を確保していると好ましい。
【0014】
この場合、三次元的にいずれの方向から衝撃を受けても物品に伝わる衝撃を緩和することができる。
また、互いに直交するx,y方向について緩衝効果を得たい場合、前記スペーサー部は、前記x,y方向の内、いずれか一方を一次突出方向、他方を二次突出方向として、前記本体部よりも前記一次突出方向へ突出する一次突出部が、前記本体部から突出するとともに、前記本体部よりも前記二次突出方向へ突出する二次突出部が、前記一次突出部から突出していると好ましい。
【0015】
このように構成すると、二次突出部が一次突出部から突出しているので、二次突出部については、本体部から離れた位置に設けることができ、本体部と二次突出部との間でせん断応力を発生させやすくすることができる。
【0016】
また、互いに直交するx,y,z方向について緩衝効果を得たい場合、前記スペーサー部は、前記x,y,z方向の内、いずれかを一次突出方向、前記一次突出方向とは別のいずれかを二次突出方向として、前記本体部よりも前記一次突出方向へ突出する一次突出部が、前記本体部から突出するとともに、前記本体部よりも前記二次突出方向へ突出する二次突出部が、前記一次突出部から突出していると好ましい。
【0017】
このように構成すると、二次突出部が一次突出部から突出しているので、二次突出部については、本体部から離れた位置に設けることができ、本体部と二次突出部との間でせん断応力を発生させやすくすることができる。
【0018】
また、前記スペーサー部は、前記収容部に前記特定方向からの衝撃が作用した場合に、少なくとも一部分が弾性変形に伴って変位する構造で、且つ、当該変位後の前記一部分が、前記特定方向から見て前記物品と重なる範囲内へは変位しない構造とされていると好ましい。
【0019】
このように構成すると、スペーサー部が弾性変形するのに伴ってスペーサー部の少なくとも一部分が変位しても、特定方向から見て物品と重なる範囲内へは変位しない。したがって、スペーサー部の少なくとも一部分が、特定方向から見て物品と重なる範囲内において本体部と収容部内面との間に挟み込まれるおそれがなく、スペーサー部によって確保した空間を有効に利用することができる。
【0020】
また、前記本体部は、前記スペーサー部によって確保された空間内へと突出する凸部を備えており、前記収容部に前記特定方向から衝撃が作用するのに伴って前記本体部が前記凸部の先端と前記収容部内面との間隔よりも大きく変位した場合には、前記凸部が前記収容部内面に接触するように構成されていると好ましい。
【0021】
このように構成すれば、想定した衝撃よりも大きな衝撃が特定方向から作用したような場合に、本体部が過剰に大きく変位したとしても、通常は収容部の内面に当接していない凸部が収容部の内面に当接することにより、それ以上本体部が収容部内面側へ変位するのを阻止する状態になる。したがって、想定した衝撃よりも大きな衝撃が特定方向から作用したような場合に、本体部が直接収容部内面に衝突してしまうことを未然に防ぐことができる。
【0022】
また、前記本体部は、前記物品を三次元的に全方向から取り囲んで、前記物品を内側に保持可能な構造で、しかも、前記本体部の一部には、前記スペーサー部によって確保された空間内に前記物品を露出させる開口部が形成されていると好ましい。
【0023】
このように構成されていれば、本体部によって物品が三次元的に全方向から取り囲まれるので、物品を安定に保持することができ、しかも、物品が開口部を介してスペーサー部によって確保された空間内に露出するので、熱を発する物品である場合には、開口部を介して空間への放熱を図ることができる。
【0024】
また、前記開口部は、前記本体部を引き延ばすと前記物品が通過可能な大きさまで拡大する構造で、拡大させた前記開口部から前記物品を前記本体部の内側へ収容可能となっていると好ましい。
【0025】
このように構成されていれば、本体部を引き延ばすだけで、簡単に物品を本体部の内部に収めることができる。
また、前記スペーサー部は、前記開口部の周縁から突出していると好ましい。
【0026】
このように構成されていると、スペーサー部の付け根付近に開口部が存在しないものよりも、スペーサー部の付け根付近において本体部の剛性が低下する。したがって、スペーサー部に応力が作用した際に、開口部の拡大または縮小を伴って本体部が変形しやすくなり、変形が生じやすくなる分だけ緩衝効果を向上させることができる。
【0027】
次に、本発明の電子機器内部の緩衝構造は、内部空間を有する収容部を備えた電子機器本体と、前記収容部に収容される内蔵型機器と、前記収容部に前記内蔵型機器を収容する際に、前記内蔵型機器と前記収容部内面との間に介装されて、前記内蔵型機器を前記収容部内面に接触させないように支持するとともに、前記収容部に特定方向からの衝撃が作用した場合に、弾性変形を伴って前記収容部から前記内蔵型機器へと伝わる衝撃を緩和する緩衝材とを備えた電子機器内部の緩衝構造であって、前記緩衝材は、前記内蔵型機器に接触する本体部と、前記本体部と一体に形成されており、前記本体部よりも前記特定方向へ突出した部分で前記収容部内面に当接することにより、前記本体部と前記収容部内面との間に空間を確保するスペーサー部とを備え、前記スペーサー部が、前記特定方向から見て前記内蔵型機器と重なる範囲全体にわたって存在する空間を確保していることを特徴とする。
【0028】
このように構成された電子機器内部の緩衝構造は、本発明の緩衝材を利用して構成された緩衝構造となるので、緩衝材が既に説明した通りの作用、効果を奏することになる。したがって、緩衝材を圧縮変形させなくても緩衝効果を得ることができるようになるので、小型且つ軽量な内蔵型機器であっても、緩衝材の材料硬度を過剰に低くすることなく十分な緩衝効果を得ることができるようになり、電子機器に内蔵された内蔵型機器を効果的に衝撃から保護することができる。また、緩衝材の材料硬度を過剰に低くしなくてもよいことから、緩衝材の材料を選定する際の自由度は高くなり、緩衝材の形状維持も容易になり、緩衝材の組み付け性も改善することができるので、電子機器の製造コストを低減することができる。
【0029】
なお、本発明の電子機器内部の緩衝構造においても、緩衝材は、請求項2〜請求項10に記載した好ましい構成を備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明の実施形態について、いくつかの具体的な例を挙げて説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態として例示する緩衝材の斜視図である。図2(a)は、同緩衝材の平面図、図2(b)は、同緩衝材の正面図、図2(c)は、同緩衝材の右側面図である。図3(a)は、同緩衝材の図2(b)におけるA−A線断面図、図3(b)は、同緩衝材の図2(c)におけるB−B線断面図、図3(c)は、同緩衝材の図2(c)におけるC−C線断面図である。なお、この緩衝材の底面図は平面図と同一に表れ、背面図は正面図と同一に表れ、左側面図は右側面図と同一に表れる。加えて、図3(d)は、同緩衝材を内蔵型機器と収容部内面との間に介装してなる電子機器内部の緩衝構造を示す断面図である。
【0031】
以下の説明においては、緩衝材各部に部分名称を付与するが、この部分名称を付与するに当たっては、緩衝材各部の相対的な位置関係を理解しやすくするため、便宜的に次のような方向を規定する。まず、図2(a)の紙面に平行な方向を水平方向、図2(a)の紙面に垂直な方向を垂直方向と規定し、図2(a)の平面図に表れる面を緩衝材の上側、図2(b)の正面図に表れる面を緩衝材の前側、図2(c)の右側面図に表れる面を緩衝材の右側と規定する。また、図示を省略した底面図に表れる面を緩衝材の下側、図示を省略した背面図に表れる面を緩衝材の後側、図示を省略した左側面図に表れる面を緩衝材の左側と規定する。ただし、ここで規定する上下左右前後は、上述の通り、部分名称を付与する上での便宜的な措置に過ぎず、実際に緩衝材を使用する際に、緩衝材の上下左右前後を図示した通りの方向に向けるべきことを意味するものではない。例えば、図2(a)の平面図に表れる面は、以下の説明では上側と規定するが、この面を上に向けて配置することが必須であることを意味するものではなく、この面を横に向けたり下に向けたりするなど、緩衝材を所望の向きにして使用することができる。また、以下の説明では、図2(a)の紙面に垂直な方向をz方向、図2(b)の紙面に垂直な方向をx方向、図2(c)の紙面に垂直な方向をy方向とも称する。ただし、これらx,y,z方向も、各実施形態を説明しやすくするため、便宜的に三次元直交座標の座標軸を規定しただけである。例えば、各実施形態で規定したx方向をy方向やz方向と規定したり、y方向をx方向やz方向と規定したり、z方向をy方向やx方向と規定したりしても、何ら差異が生じるものではない。
【0032】
第1実施形態において、緩衝材1は、本体部11と、本体部11から突出するスペーサー部13とを備え、これらがエラストマー材料によって一体成形された構造になっている。
【0033】
本体部11は、上側水平部21、下側水平部22、左側垂直部23、右側垂直部24、前側垂直部25、および後側垂直部26を備え、これらで衝撃からの保護対象となる物品を三次元的に全方向から取り囲んで、その物品を内側に保持可能な構造になっている。なお、本実施形態においては、物品として特定の小型ハードディスク装置(24mm×32mm×5mm)を保持することを想定しており、本体部11の内側は、特定の小型ハードディスク装置がぴったりと収まる寸法となるように設計されている。
【0034】
また、本体部11の一部(より具体的には、上側水平部21、下側水平部22、左側垂直部23、および右側垂直部24)には、大型開口部31、32と、小型開口部35、36、37、38が形成されている。
【0035】
大型開口部31、32は、本体部11の内側に物品を入れたり本体部11の内側から物品を取り出したりするために利用される。具体的には、物品を出し入れする際には、本体部11を引き延ばすことにより、大型開口部31、32のいずれかを物品が通過可能な大きさまで拡大させて、拡大させた大型開口部31、32のいずれかから物品を出し入れすることができる。
【0036】
また、本体部11の内側に物品を収容した際には、大型開口部31、32、および小型開口部35、36、37、38を介して物品が本体部11の外部へ露出し、これにより、物品が発する熱を本体部11の外側へと放出できるようになっている。
【0037】
スペーサー部13は、2つの左上スペーサー41、2つの右上スペーサー42、2つの左下スペーサー43、2つの右下スペーサー44、2つの前スペーサー45、および2つの後スペーサー46によって構成されている。
【0038】
これらの内、左上スペーサー41は、図3(c)に示すように、左方向を一次突出方向、上方向を二次突出方向として、本体部11よりも一次突出方向へ突出する一次突出部41aが、本体部11から突出するとともに、本体部11よりも二次突出方向へ突出する二次突出部41bが、一次突出部41aから突出する形状になっている。また、右上スペーサー42は、右方向を一次突出方向、上方向を二次突出方向として、本体部11よりも一次突出方向へ突出する一次突出部42aが、本体部11から突出するとともに、本体部11よりも二次突出方向へ突出する二次突出部42bが、一次突出部42aから突出する形状になっている。また、左下スペーサー43は、左方向を一次突出方向、下方向を二次突出方向として、本体部11よりも一次突出方向へ突出する一次突出部43aが、本体部11から突出するとともに、本体部11よりも二次突出方向へ突出する二次突出部43bが、一次突出部43aから突出する形状になっている。また、右下スペーサー44は、右方向を一次突出方向、下方向を二次突出方向として、本体部11よりも一次突出方向へ突出する一次突出部44aが、本体部11から突出するとともに、本体部11よりも二次突出方向へ突出する二次突出部44bが、一次突出部44aから突出する形状になっている。また、前スペーサー45は、本体部11から前方向へのみ突出し、後スペーサー46は、本体部11から後方向へのみ突出している。
【0039】
また、スペーサー部13の内、前側にある左上スペーサー41、前側にある左下スペーサー43、および左側にある前スペーサー45は、小型開口部35の周縁から突出し、前側にある右上スペーサー42、前側にある右下スペーサー44、および右側にある前スペーサー45は、小型開口部36の周縁から突出している。また、後側にある左上スペーサー41、後側にある左下スペーサー43、および左側にある後スペーサー46は、小型開口部37の周縁から突出し、後側にある右上スペーサー42、後側にある右下スペーサー44、および右側にある後スペーサー46は、小型開口部38の周縁から突出している。
【0040】
以上のように構成される緩衝材1は、図3(d)に示すように、内部空間を有する収容部51に物品53(本実施形態においては、ハードディスク装置)を収容する際に、物品53と収容部51の内面との間に介装されて、物品53を収容部51の内面に接触させないように支持する。
【0041】
この状態において、左上スペーサー41および右上スペーサー42は、本体部11よりも上方向へ突出した部分で収容部51の内面に当接し、これにより、収容部51の内面と本体部11(より具体的には、上側水平部21)との間に空間(図3(d)中の空間S)が確保されるようになっている。また、左下スペーサー43および右下スペーサー44は、本体部11よりも下方向へ突出した部分で収容部51の内面に当接し、これにより、収容部51の内面と本体部11(より具体的には、下側水平部22)との間に空間(図3(d)中の空間S)が確保されるようになっている。そして、これら左上スペーサー41および右上スペーサー42によって確保された空間と、左下スペーサー43および右下スペーサー44によって確保された空間は、双方とも、z方向から見て、本体部11の内側に収容される物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間となっている。
【0042】
また、左上スペーサー41および左下スペーサー43は、本体部11より左方向へも突出しているので、その左方向へ突出した部分で収容部51の内面に当接し、これにより、収容部51の内面と本体部11(より具体的には、左側垂直部23)との間に空間(図3(d)中の空間S)が確保されるようになっている。また、右上スペーサー42および右下スペーサー44は、本体部11より右方向へも突出しているので、その右方向へ突出した部分で収容部51の内面に当接し、これにより、収容部51の内面と本体部11(より具体的には、右側垂直部24)との間に空間(図3(d)中の空間S)が確保されるようになっている。そして、これら左上スペーサー41および左下スペーサー43によって確保された空間と、右上スペーサー42および右下スペーサー44によって確保された空間は、双方とも、y方向から見て、本体部11の内側に収容される物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間となっている。
【0043】
また、前スペーサー45は、本体部11よりも前方向へ突出した部分で収容部51の内面に当接し、これにより、収容部51の内面と本体部11(より具体的には、前側垂直部25)との間に空間(図示略)が確保されるようになっている。また、後スペーサー46は、本体部11よりも後方向へ突出した部分で収容部51の内面に当接し、これにより、収容部51の内面と本体部11(より具体的には、後側垂直部26)との間に空間(図示略)が確保されるようになっている。そして、これら前スペーサー45によって確保された空間と、後スペーサー46によって確保された空間は、双方とも、x方向から見て、本体部11の内側に収容される物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間となっている。
【0044】
つまり、x,y,z方向のどちらから見ても、収容部51の内面と本体部11との間には、本体部11の内側に収容される物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間が確保されている。
【0045】
このように構成された緩衝構造において、収容部51に衝撃が作用した場合、緩衝材1は、弾性変形を伴って収容部51から物品53へと伝わる衝撃を緩和する役割を果たす。
ただし、上述の通り、x,y,z方向のどちらから見ても、収容部51の内面と本体部11との間には、物品53と重なる範囲全体にわたって存在する空間が確保されているため、物品53と重なる範囲の内側には、圧縮応力を受ける部分が存在しない。また、物品53と重なる範囲の内側においては、本体部11を物品53側から空間側へ変位させる方向への応力が作用する一方、物品53と重なる範囲の外側では、スペーサー部13が緩衝材1の変位を妨げる。そのため、物品53と重なる範囲とスペーサー部13との中間にある部分には、比較的大きなせん断応力が生じやすくなり、このせん断応力によって緩衝材1が変形するのに伴って、振動・衝撃が吸収・緩和される。
【0046】
すなわち、単に物品53と収容部51の内面との間に空間を設けることなく緩衝材のみを挟み込んだ場合は、主に緩衝材の圧縮変形に伴って振動・衝撃が吸収・緩和されることになるが、上記緩衝材1の場合は、物品53と収容部51の内面との間にx,y,z方向のどちらから見ても物品53と重なる範囲全体にわたる空間が存在する。そのため、大きな圧縮変形は生じず、主に緩衝材1のせん断変形に伴って振動・衝撃が吸収・緩和されることになる。
【0047】
したがって、このような構造の緩衝材1であれば、緩衝材1を圧縮変形させなくても緩衝効果を得ることができるようになるので、小型且つ軽量な物品であっても、緩衝材1の材料硬度を過剰に低くすることなく十分な緩衝効果を得ることができるようになる。また、緩衝材1の材料硬度を過剰に低くしなくてもよいことから、緩衝材1の材料を選定する際の自由度は高くなり、緩衝材1の形状維持も容易になり、緩衝材1の組み付け性も改善することができる。
【0048】
また、上記緩衝材1において、左上スペーサー41、右上スペーサー42、左下スペーサー43、および右下スペーサー44は、それぞれ一次突出方向および二次突出方向の二方向へ突出しているが、一次突出方向へ突出する一次突出部が本体部11から突出しているのに対し、二次突出方向へ突出する二次突出部は、一次突出部から突出する形状になっている。したがって、二次突出部については、本体部11から直接突出するものに比べ、本体部11から離れた位置に設けることができ、本体部11と二次突出部との間でせん断応力を発生させやすくすることができる。
【0049】
さらに、この緩衝材1において、本体部11の内側に物品53を収容すると、本体部11によって物品53が三次元的に全方向から取り囲まれるので、物品53を安定に保持することができる。しかも、物品53が開口部(大型開口部31、32、および小型開口部35、36、37、38)を介してスペーサー部13によって確保された空間内に露出する。したがって、ハードディスク装置のように熱を発する物品53を収容しても、開口部(大型開口部31、32、および小型開口部35、36、37、38)を介して空間への放熱を図ることができる。
【0050】
また、上記緩衝材1において、大型開口部31、32は、本体部11を引き延ばすと物品53が通過可能な大きさまで拡大する構造で、拡大させた大型開口部31、32から物品53を本体部11の内側へ収容することができるので、本体部11を引き延ばすだけで、簡単に物品53を本体部11の内部に収めることができる。
【0051】
また、上記緩衝材1において、スペーサー部13は、いずれも小型開口部35、36、37、38の周縁から突出しており、スペーサー部13の付け根付近に開口部が存在しないものよりも、スペーサー部13の付け根付近において本体部11の剛性が低下している。したがって、スペーサー部13に応力が作用した際に、小型開口部35、36、37、38の拡大または縮小を伴って本体部11が変形しやすくなり、変形が生じやすくなる分だけ緩衝効果を向上させることができる。
【0052】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態として例示する緩衝材の斜視図である。図5(a)は、同緩衝材の平面図、図5(b)は、同緩衝材の正面図、図5(c)は、同緩衝材の右側面図である。図6(a)は、同緩衝材の図5(b)におけるD−D線断面図、図6(b)は、同緩衝材の図5(c)におけるE−E線断面図、図6(c)は、同緩衝材の図5(c)におけるF−F線断面図である。なお、この緩衝材の底面図は平面図と同一に表れ、背面図は正面図と同一に表れ、左側面図は右側面図と同一に表れる。加えて、図6(d)は、同緩衝材を内蔵型機器と収容部内面との間に介装してなる電子機器内部の緩衝構造を示す断面図である。
【0053】
なお、第2実施形態以降の各実施形態は、先に説明済みの実施形態に対して改良を加えた実施形態に相当するので、各実施形態とも改良部分を中心に詳細に説明する。先に説明済の実施形態との差異が無い部分については、先に説明済みの実施形態を参照すれば理解できるので、機能的に同等となる部分には、形状や大きさが若干異なっていても各実施形態とも同じ符号を付すことにして、詳細な説明を省略する。
【0054】
第2実施形態において、緩衝材2は、スペーサー部13の構成が、第1実施形態とは異なっている。より具体的には、2つの左上スペーサー41、2つの右上スペーサー42、2つの左下スペーサー43、および2つの右下スペーサー44の形状が、第1実施形態とは大きく相違する。また、2つの前スペーサー45、および2つの後スペーサー46の形状およびサイズも、第1実施形態とは若干異なっている。
【0055】
より詳しくは、左上スペーサー41は、図6(c)に示すように、左方向を一次突出方向、上方向を二次突出方向として、本体部11よりも一次突出方向(左方向)へ突出する一次突出部41aが、本体部11から突出する形状になっている。そして、本体部11よりも二次突出方向(上方向)へ突出する二次突出部41bが、一次突出部41aから突出する形状になっている。これらの突出方向そのものは、第1、第2実施形態とも同じである。
【0056】
ただし、一次突出部41aの突出長さは、第1実施形態よりも長くなっていて、二次突出部41bは、第1実施形態よりも本体部11から離れた位置において、一次突出部41aから突出している。しかも、第1実施形態においては、二次突出部41bの左側面が一次突出部41aの突出方向最端部の端面と同一面となっており、その面が収容部51との当接面として機能していたが、第2実施形態においては、二次突出部41bの左側面よりもさらに左方へ一次突出部41aが突出しており、一次突出部41aの突出方向最端部の端面が収容部51との当接面として機能する。
【0057】
なお、右上スペーサー42、左下スペーサー43、および右下スペーサー44は、それぞれ左上スペーサー41と対称ないし同一の形状を持つので詳細な説明については省略するが、それぞれ一次突出部の突出方向最端部の端面が、二次突出部よりもさらに一次突出方向へ突出しており、左上スペーサー41と同様に、収容部51との当接面として機能するようになっている。
【0058】
以上のように構成された緩衝材2を利用して構成された緩衝構造においても、収容部51に衝撃が作用した場合、緩衝材2は、弾性変形を伴って収容部51から物品53へと伝わる衝撃を緩和する役割を果たす。特に、x,y,z方向のどちらから見ても、収容部51の内面と本体部11との間には、物品53と重なる範囲全体にわたって存在する空間が確保されているため、第1実施形態同様、物品53と重なる範囲とスペーサー部13との中間にある部分には、比較的大きなせん断応力が生じやすくなる。したがって、このせん断応力によって緩衝材2が変形するのに伴って、振動・衝撃が吸収・緩和される。
【0059】
したがって、このような構造の緩衝材2であれば、緩衝材2を圧縮変形させなくても緩衝効果を得ることができるようになるので、小型且つ軽量な物品であっても、緩衝材2の材料硬度を過剰に低くすることなく十分な緩衝効果を得ることができるようになる。また、緩衝材2の材料硬度を過剰に低くしなくてもよいことから、緩衝材2の材料を選定する際の自由度は高くなり、緩衝材2の形状維持も容易になり、緩衝材2の組み付け性も改善することができる。
【0060】
また、上記緩衝材2において、左上スペーサー41、右上スペーサー42、左下スペーサー43、および右下スペーサー44それぞれが備える二次突出部41b、42b、43b、44bは、第1実施形態に比べ、より本体部11から離れた位置に設けてあるので、本体部11と二次突出部との間でせん断応力を発生させやすくすることができる。
【0061】
なお、上述の効果の他にも、上記緩衝材2は、第1実施形態の緩衝材1と同様の効果を奏する。例えば、開口部(大型開口部31、32、および小型開口部35、36、37、38)を介して放熱を図ることができる点、本体部11を引き延ばすだけで大型開口部31、32から簡単に物品53を本体部11の内部に収めることができる点、スペーサー部13が小型開口部35、36、37、38の周縁から突出しているので、スペーサー部13に応力が作用した際に、小型開口部35、36、37、38の拡大または縮小を伴って本体部11が変形しやすくなる点などは、第1実施形態と同様である。
【0062】
[第3実施形態]
図7は、本発明の第3実施形態として例示する緩衝材の斜視図である。図8(a)は、同緩衝材の平面図、図8(b)は、同緩衝材の正面図、図8(c)は、同緩衝材の右側面図である。図9(a)は、同緩衝材の図8(b)におけるG−G線断面図、図9(b)は、同緩衝材の図8(c)におけるH−H線断面図、図9(c)は、同緩衝材の図8(c)におけるI−I線断面図である。なお、この緩衝材の底面図は平面図と同一に表れ、背面図は正面図と同一に表れ、左側面図は右側面図と同一に表れる。加えて、図9(d)は、同緩衝材を内蔵型機器と収容部内面との間に介装してなる電子機器内部の緩衝構造を示す断面図である。
【0063】
なお、第3実施形態は、先に説明済みの第2実施形態に対して改良を加えた実施形態に相当するので、第2実施形態との差異を中心に説明する。
第3実施形態において、緩衝材3は、スペーサー部13の構成が、第2実施形態とは異なっており、より具体的には、2つの左上スペーサー41、2つの右上スペーサー42、2つの左下スペーサー43、2つの右下スペーサー44、2つの前スペーサー45、および2つの後スペーサー46が備える各突出部分の突出方向が、僅かずつ外側に傾かせてある点で、第2実施形態とは相違する。
【0064】
より詳しくは、2つの後スペーサー46は、図8(a)に示すように、後方へ向かって突出しているが、第2実施形態においては、2つの後スペーサー46が平行に突出していたのに対し、第3実施形態において、2つの後スペーサー46は、突出方向先端部ほど間隔が拡大する方向へ傾いている。各後スペーサー46の傾きは、本実施形態の場合x軸に対して5度だけ傾いており、従って、2つの後スペーサー46の突出方向がなす内角は10度となっている。同様に、2つの前スペーサー45は、前方へ向かって突出しているが、これらも突出方向先端部ほど間隔が拡大する方向へ傾いており、各前スペーサー45の傾きは、本実施形態の場合x軸に対して5度、2つの前スペーサー45の突出方向がなす内角は10度となっている。
【0065】
また、左上スペーサー41は、図8(b)に示すように、本体部11よりも一次突出方向へ突出する一次突出部41aが、本体部11から突出するとともに、本体部11よりも二次突出方向へ突出する二次突出部41bが、一次突出部41aから突出する形状になっているが、一次突出方向は、本実施形態の場合y軸に対して5度だけ傾いており、二次突出方向は、本実施形態の場合z軸に対して5度だけ傾いている。右上スペーサー42、左下スペーサー43、および右下スペーサー44も、それぞれ左上スペーサー41と対称ないし同一の形状を持つので詳細な説明については省略するが、それぞれ一次突出方向はy軸に対して5度だけ傾き、二次突出方向はz軸に対して5度だけ傾いている。そのため、左上スペーサー41の一次突出部41aと左下スペーサー43の一次突出部43aは、突出方向先端部ほど間隔が拡大する方向へ傾き、左上スペーサー41の二次突出部41bと右上スペーサー42の二次突出部42bも、突出方向先端部ほど間隔が拡大する方向へ傾いた状態になっており、これらと対称な位置にある各一次突出部および二次突出部も、突出方向先端部ほど間隔が拡大する方向へ傾いている。
【0066】
さらに、2つの左上スペーサー41、2つの右上スペーサー42、2つの左下スペーサー43、および2つの右下スペーサー44それぞれの付け根部分において、上側水平部21および下側水平部22には切欠57が形成されている。この切欠57は、図9(a)に示すように、左側垂直部23および右側垂直部24それぞれの肉厚と同じ深さの凹部をなしている。しかも、上述の2つの前スペーサー45は、図9(a)に示すように、第2実施形態よりも、2つの前スペーサー45間の間隔を狭める方向へシフトさせた位置から突設されており、2つの後スペーサー46も、第2実施形態よりも、2つの後スペーサー46間の間隔を狭める方向へシフトさせた位置から突設されており、それぞれのシフト量(図9(a)中に示す距離L1参照)は、各前スペーサー45および後スペーサー46いずれも、左側垂直部23および右側垂直部24それぞれの肉厚に相当する長さとなっている。そして、このように切欠57を設けたことと、前スペーサー45および後スペーサー46の突設位置をシフトさせたこととにより、2つの左上スペーサー41、2つの右上スペーサー42、2つの左下スペーサー43、および2つの右下スペーサー44それぞれの一次突出方向への突出長さは、左側垂直部23および右側垂直部24それぞれの肉厚相当分だけ長くなっている。
【0067】
以上のように構成された緩衝材3を利用して構成された緩衝構造においても、収容部51に衝撃が作用した場合、緩衝材3は、弾性変形を伴って収容部51から物品53へと伝わる衝撃を緩和する役割を果たす。特に、x,y,z方向のどちらから見ても、収容部51の内面と本体部11との間には、物品53と重なる範囲全体にわたって存在する空間が確保されているため、第1実施形態同様、物品53と重なる範囲とスペーサー部13との中間にある部分には、比較的大きなせん断応力が生じやすくなり、このせん断応力によって緩衝材3が変形するのに伴って、振動・衝撃が吸収・緩和される。
【0068】
したがって、このような構造の緩衝材3であれば、緩衝材3を圧縮変形させなくても緩衝効果を得ることができるようになるので、小型且つ軽量な物品であっても、緩衝材3の材料硬度を過剰に低くすることなく十分な緩衝効果を得ることができるようになる。また、緩衝材3の材料硬度を過剰に低くしなくてもよいことから、緩衝材3の材料を選定する際の自由度は高くなり、緩衝材3の形状維持も容易になり、緩衝材3の組み付け性も改善することができる。
【0069】
また、上記第2実施形態においては平行に突出していたスペーサー部13の一対の突出部分が、第3実施形態においては、突出方向先端ほど間隔が広がるように突出方向を僅かに(5度だけ)傾けてある。そのため、特定方向から衝撃を受けたときにスペーサー部13が弾性変形し、その変形に伴ってスペーサー部13の少なくとも一部分が変位したとしても、スペーサー部13は、特定方向から見て物品53と重なる範囲内へは変位せず、物品53と重なる範囲から離れる方向へ変位しやすくなる。したがって、スペーサー部13の少なくとも一部分が、特定方向から見て物品と重なる範囲内において本体部11と収容部51の内面との間に挟み込まれるおそれがなく、スペーサー部13によって確保した空間を、本体部11を変位させるために有効利用することができる。
【0070】
さらに、切欠57を設けたことと、前スペーサー45および後スペーサー46の突設位置をシフトさせたこととにより、左上スペーサー41、右上スペーサー42、左下スペーサー43、および右下スペーサー44それぞれの一次突出方向への突出長さを、左側垂直部23および右側垂直部24それぞれの肉厚相当分だけ長くしたので、左側垂直部23および右側垂直部24の外面からの突出長さを変更することなく、左上スペーサー41、右上スペーサー42、左下スペーサー43、および右下スペーサー44をより変形しやすくすることができ、緩衝効果を高めることができる。
【0071】
なお、上述の効果の他にも、上記緩衝材3は、第2実施形態の緩衝材1と同様の効果を奏する。例えば、二次突出部41b、42b、43b、44bは、第1実施形態に比べ、より本体部11から離れた位置に設けてあるので、本体部11と二次突出部との間でせん断応力を発生させやすくすることができる点は、第2実施形態と同様である。また、開口部(大型開口部31、32、および小型開口部35、36、37、38)を介して放熱を図ることができる点、本体部11を引き延ばすだけで大型開口部31、32から簡単に物品53を本体部11の内部に収めることができる点、スペーサー部13が小型開口部35、36、37、38の周縁から突出しているので、スペーサー部13に応力が作用した際に、小型開口部35、36、37、38の拡大または縮小を伴って本体部11が変形しやすくなる点などは、第1、第2実施形態と同様である。
【0072】
次に、第3実施形態においては、上記緩衝材3の緩衝性能を確認するため、次のような実験を行った。
図10(a)は、落下試験装置61の概略構造を示す説明図である。
【0073】
この実験においては、保護対象となる物品としてハードディスク装置62を利用し、このハードディスク装置62を緩衝材3の内側に収容し、それら緩衝材3およびハードディスク装置62を、収容部に相当するABS製のケース63に収めた。なお、ケース63の内部は、緩衝材3およびハードディスク装置62がぴったりと収まるような寸法になっている。また、ハードディスク装置62の上面側には、加速度計64が取り付けてあり、加速度計64からの検出信号を出力するための信号線65が、ケース63の上面側に形成された穴を介してケース63の外部へと導出されている。
【0074】
落下試験装置61は、図示しない支柱に沿って水平を保ったまま回転することなく自由落下するように構成されたホルダ66と、このホルダ66に取り付けられた一対のエアシリンダ67、67と、衝突面を提供するコンクリートブロック68とを備えている。
【0075】
このように構成された落下試験装置61において、一対のエアシリンダ67、67は、互いに対向するように配置されており、これら一対のエアシリンダ67、67間に上記ケース63を挟持することができる。そして、一対のエアシリンダ67、67間に上記ケース63を挟持した状態のまま、ホルダ66を自由落下させることにより、上記ケース63を水平に保ったまま回転させることなく、図10(a)中に矢印で示した方向へ自由落下させることができる。
【0076】
ただし、ホルダ66は、コンクリートブロック68に衝突する直前に制動がかかる構造になっており、しかも、ホルダ66に制動がかかる前にエアシリンダ67、67が作動して、エアシリンダ67、67がケース63から離れるようになっている。そのため、ケース63がコンクリートブロック68に到達する直前には、ケース63がエアシリンダ67、67から離れ、ケース63のみが水平を保ったまま単独でコンクリートブロック68に衝突する。
【0077】
したがって、ケース63には、回転を生じずにそのままの姿勢で自由落下した場合と同様の衝撃が加わることになる。なお、ケース63が受けた衝撃は、加速度計64によって検出され、信号線65を介してFFTアナライザーで加速度が測定される。
【0078】
なお、この実験においては、上述の実施例に対する比較例として、図10(b)に示すように、同じハードディスク装置62、およびケース63を利用するとともに、緩衝材3のみを緩衝材69に代えたサンプルを用意し、このサンプルについても緩衝性能を測定した。緩衝材69は、緩衝材3と同じ材料を単なる板状に形成したもので、ハードディスク装置62の上下左右前後を取り囲むように敷き詰めてある。
【0079】
この比較例において、ハードディスク装置62の上側と下側には、一部空間があるが、この空間は上方ないし下方から見て、ハードディスク装置62と重なる範囲全体にわたって存在する空間とはなっていない。すなわち、上方ないし下方から見て、ハードディスク装置62と重なる範囲には、一部、緩衝材69が存在する状態にある。この上方ないし下方から見てハードディスク装置62と重なる範囲に存在する緩衝材69の一部は、この実験でケース63の下方から衝撃が加わった際に、ハードディスク装置62の下面とケース63の内面との間に挟まれて、圧縮応力が作用する部分となる。
【0080】
測定結果を図11(a)および図11(b)に示す。
図11(a)は、横軸に撓み量(ハードディスク装置62の変位量)、縦軸にハードディスク装置62に作用した応力をとったグラフである。
【0081】
このグラフから、比較例の緩衝材69は、撓みが大きくなるほど応力が増大してしまう傾向があり、撓みが概ね1mmを超える時点では、既に応力が5Nを超過していることがわかる。これに対し、第3実施形態の緩衝材3(実施例)の場合、2mm近くまでは撓みが増大してもほとんど応力が増大せず、5N以下の応力を保っていることがわかる。
【0082】
このような傾向があるのは、緩衝材69は上下方向に圧縮されるため、圧縮に伴って圧縮方向に垂直な方向へも変形し、ハードディスク装置62の下面側における緩衝材69との接触面積が増大することから、ハードディスク装置62に対して作用する反発応力が強くなるためではないかと推察される。これに対し、第3実施形態の緩衝材3は、ハードディスク装置62の下面とケース63の内面との間に挟み込まれて圧縮される部分が存在せず、ハードディスク装置62直下よりも外側で変形が起こるため、ハードディスク装置62に作用する応力が低いレベルで一定に維持されるのではないかと推察される。
【0083】
図11(b)は、横軸に時間、縦軸にハードディスク装置62に作用した加速度をとったグラフである。自由落下させる高さは、50cmとした。
このグラフから、第3実施形態の緩衝材3の場合、50cmの自由落下衝撃に対して、比較例の緩衝材69に比べ、約1/2まで衝撃を緩和していることがわかる。したがって、この測定結果から第3実施形態の緩衝材3が優れた緩衝性能を備えていることがわかる。
【0084】
[第4実施形態]
図12は、本発明の第4実施形態として例示する緩衝材の斜視図である。図13(a)は、同緩衝材の平面図、図13(b)は、同緩衝材の正面図、図13(c)は、同緩衝材の右側面図である。図14(a)は、同緩衝材の図13(b)におけるJ−J線断面図、図14(b)は、同緩衝材の図13(c)におけるK−K線断面図、図14(c)は、同緩衝材の図13(c)におけるL−L線断面図である。なお、この緩衝材の底面図は平面図と同一に表れ、背面図は正面図と同一に表れ、左側面図は右側面図と同一に表れる。加えて、図14(d)は、同緩衝材を内蔵型機器と収容部内面との間に介装してなる電子機器内部の緩衝構造を示す断面図である。
【0085】
なお、第4実施形態は、先に説明済みの第2実施形態に対して改良を加えた実施形態に相当するので、第2実施形態との差異を中心に説明する。
第4実施形態において、緩衝材4は、本体部11の局所局所に凹部を設けた点で、第2実施形態とは相違する。
【0086】
より詳しくは、緩衝材4の本体部11の内、上側水平部21および下側水平部22には、凹部71、72が形成され、これらの凹部71、72により、上側水平部21および下側水平部22の肉厚が部分的に薄くなっている(図14(b)および同図(c)参照)。
【0087】
なお、この緩衝材4においても、第3実施形態において説明した通りの切欠57が設けてあり、しかも、第3実施形態において説明した通り、前スペーサー45および後スペーサー46の突設位置をシフトさせてあるので、左上スペーサー41、右上スペーサー42、左下スペーサー43、および右下スペーサー44それぞれの一次突出方向への突出長さは、左側垂直部23および右側垂直部24の外面からの突出長さを変更することなく、左側垂直部23および右側垂直部24それぞれの肉厚相当分だけ長くなっている。
【0088】
以上のように構成された緩衝材4を利用して構成された緩衝構造においても、収容部51に衝撃が作用した場合、緩衝材4は、弾性変形を伴って収容部51から物品53へと伝わる衝撃を緩和する役割を果たす。特に、x,y,z方向のどちらから見ても、収容部51の内面と本体部11との間には、物品53と重なる範囲全体にわたって存在する空間が確保されているため、第1実施形態同様、物品53と重なる範囲とスペーサー部13との中間にある部分には、比較的大きなせん断応力が生じやすくなり、このせん断応力によって緩衝材4が変形するのに伴って、振動・衝撃が吸収・緩和される。
【0089】
したがって、このような構造の緩衝材4であれば、緩衝材4を圧縮変形させなくても緩衝効果を得ることができるようになるので、小型且つ軽量な物品であっても、緩衝材4の材料硬度を過剰に低くすることなく十分な緩衝効果を得ることができるようになる。また、緩衝材4の材料硬度を過剰に低くしなくてもよいことから、緩衝材4の材料を選定する際の自由度は高くなり、緩衝材4の形状維持も容易になり、緩衝材4の組み付け性も改善することができる。
【0090】
また、第4実施形態においては、本体部11に凹部71、72を設けたので、想定した衝撃よりも大きな衝撃が特定方向(第4実施形態の場合はz方向)から作用した場合に、本体部11が過剰に大きく変位して、上側水平部21または下側水平部22が収容部51の内面に当接したとしても、凹部71、72がある箇所は収容部51の内面に接触しない。そのため、上側水平部21または下側水平部22全体が収容部51の内面に接触してしまう場合に比べ、接触に伴う急激な応力の増加を抑制することができる。
【0091】
なお、上述の効果の他にも、上記緩衝材4は、第1〜第3実施形態の緩衝材と同様の効果を奏する。例えば、切欠57を設けたことと、前スペーサー45および後スペーサー46の突設位置をシフトさせたこととにより、左上スペーサー41、右上スペーサー42、左下スペーサー43、および右下スペーサー44それぞれの一次突出方向への突出長さを、左側垂直部23および右側垂直部24それぞれの肉厚相当分だけ長くしたので、左側垂直部23および右側垂直部24の外面からの突出長さを変更することなく、左上スペーサー41、右上スペーサー42、左下スペーサー43、および右下スペーサー44をより変形しやすくすることができ、緩衝効果を高めることができる点は、第3実施形態と同様である。また、二次突出部41b、42b、43b、44bは、第1実施形態に比べ、より本体部11から離れた位置に設けてあるので、本体部11と二次突出部との間でせん断応力を発生させやすくすることができる点は、第2、第3実施形態と同様である。また、開口部(大型開口部31、32、および小型開口部35、36、37、38)を介して放熱を図ることができる点、本体部11を引き延ばすだけで大型開口部31、32から簡単に物品53を本体部11の内部に収めることができる点、スペーサー部13が小型開口部35、36、37、38の周縁から突出しているので、スペーサー部13に応力が作用した際に、小型開口部35、36、37、38の拡大または縮小を伴って本体部11が変形しやすくなる点などは、第1〜第3実施形態と同様である。
【0092】
[第5実施形態]
図15は、本発明の第5実施形態として例示する緩衝材の斜視図である。図16(a)は、同緩衝材の平面図、図16(b)は、同緩衝材の正面図、図16(c)は、同緩衝材の右側面図である。図17(a)は、同緩衝材の図16(b)におけるM−M線断面図、図17(b)は、同緩衝材の図16(c)におけるN−N線断面図、図17(c)は、同緩衝材の図16(c)におけるO−O線断面図である。なお、この緩衝材の底面図は平面図と同一に表れ、背面図は正面図と同一に表れ、左側面図は右側面図と同一に表れる。加えて、図17(d)は、同緩衝材を内蔵型機器と収容部内面との間に介装してなる電子機器内部の緩衝構造を示す断面図である。
【0093】
なお、第5実施形態は、先に説明済みの第4実施形態に対して改良を加えた実施形態に相当するので、第4実施形態との差異を中心に説明する。
第5実施形態において、緩衝材5は、本体部11の局所局所にさらに凹部を追加した点、および、スペーサー部13によって確保された空間内へと突出する凸部を本体部11に設けた点で、第4実施形態とは相違する。
【0094】
より詳しくは、第4実施形態の緩衝材4の場合、本体部11の内、上側水平部21および下側水平部22に、凹部71、72を形成してあったが、第5実施形態の緩衝材5の場合は、さらに、左側垂直部23、右側垂直部24、前側垂直部25、および後側垂直部26にも、凹部73、74が形成され、これらの凹部73、74により、左側垂直部23、右側垂直部24、前側垂直部25、および後側垂直部26の肉厚が部分的に薄くなっている(図17(a)および同図(b)参照)。
【0095】
また、上側水平部21および下側水平部22の外面側には、スペーサー部13によって確保された空間内へと突出する凸部77が設けてある。この凸部77は、想定した範囲内の衝撃が加わる程度では、収容部51の内面に当接しない状態のまま維持されるが、想定した衝撃よりも大きな衝撃が特定方向(第5実施形態の場合はz方向)から作用したような場合に、本体部11が過剰に大きく変位すると、収容部51の内面に当接する。そして、凸部77が収容部51の内面に当接した時点で、凸部77は、それ以上本体部11が収容部51の内面側へ変位するのを阻止する状態になる。
【0096】
なお、この緩衝材5においても、2つの左上スペーサー41、2つの右上スペーサー42、2つの左下スペーサー43、2つの右下スペーサー44、2つの前スペーサー45、および2つの後スペーサー46が備える各突出部分の突出方向が、僅かずつ外側に傾かせてあり、この点は、第3実施形態と同様である。
【0097】
また、この緩衝材5においても、第3、第4実施形態において説明した通りの切欠57が設けてあり、しかも、第3、4実施形態において説明した通り、前スペーサー45および後スペーサー46の突設位置をシフトさせてあるので、左上スペーサー41、右上スペーサー42、左下スペーサー43、および右下スペーサー44それぞれの一次突出方向への突出長さは、左側垂直部23および右側垂直部24の外面からの突出長さを変更することなく、左側垂直部23および右側垂直部24それぞれの肉厚相当分だけ長くなっている。
【0098】
以上のように構成された緩衝材5を利用して構成された緩衝構造においても、収容部51に衝撃が作用した場合、緩衝材5は、弾性変形を伴って収容部51から物品53へと伝わる衝撃を緩和する役割を果たす。特に、x,y,z方向のどちらから見ても、収容部51の内面と本体部11との間には、物品53と重なる範囲全体にわたって存在する空間が確保されているため、第1実施形態同様、物品53と重なる範囲とスペーサー部13との中間にある部分には、比較的大きなせん断応力が生じやすくなり、このせん断応力によって緩衝材5が変形するのに伴って、振動・衝撃が吸収・緩和される。
【0099】
したがって、このような構造の緩衝材5であれば、緩衝材5を圧縮変形させなくても緩衝効果を得ることができるようになるので、小型且つ軽量な物品であっても、緩衝材5の材料硬度を過剰に低くすることなく十分な緩衝効果を得ることができるようになる。また、緩衝材5の材料硬度を過剰に低くしなくてもよいことから、緩衝材5の材料を選定する際の自由度は高くなり、緩衝材5の形状維持も容易になり、緩衝材5の組み付け性も改善することができる。
【0100】
また、第5実施形態においては、本体部11の全面に凹部71、72、73、74を設けたので、想定した衝撃よりも大きな衝撃がどの方向から作用した場合でも、凹部71、72、73、74がある箇所は収容部51の内面に接触しない。そのため、これら凹部71、72、73、74が設けられていない場合に比べ、収容部51内面接触に伴う急激な応力の増加を抑制することができる。
【0101】
さらに、第5実施形態において、本体部11の内、上側水平部21および下側水平部22の外面側には、スペーサー部13によって確保された空間内へと突出する凸部77が設けてある。そのため、想定した衝撃よりも大きな衝撃が特定方向(第5実施形態の場合はz方向)から作用したような場合に、本体部11が過剰に大きく変位しても、凸部77が収容部51の内面に当接した時点で、凸部77は、それ以上本体部11が収容部51の内面側へ変位するのを阻止する状態になるので、本体部11が直接収容部51の内面に衝突してしまうことを未然に防ぐことができる。
【0102】
つまり、比較的弱い衝撃しか作用しない状態においては、第1段階として、主に本体部11とスペーサー部13との境界付近でのせん断変形により衝撃を緩和するが、さらに強い衝撃が作用した際には、第2段階として、凸部77を収容部51の内面に当接させることで、凸部77の圧縮変形による衝撃の緩和も図ることになる。このような2段構えの緩衝構造を構成することで、通常時には、物品53に作用する応力を可能な限り弱めるとともに、緊急時には、第1段階の緩衝構造が破綻しても第2段階の緩衝構造が機能し、物品53に伝わる衝撃が過大にならないようにすることができる。
【0103】
ちなみに、第5実施形態では、同じ高さの凸部77を4箇所に設けたので、2段構えの緩衝構造となったが、さらに異なる高さの凸部を何種類か設ければ、第1段階としては凸部が当接せず、第2段階で第1の高さを持つ凸部が収容部の内面に当接、第3段階で第2の高さを持つ凸部が収容部の内面に当接、といった具合に、さらに多段階の緩衝構造を構成することもできる。
【0104】
なお、上述の効果の他にも、上記緩衝材5は、第1〜第4実施形態の緩衝材と同様の効果を奏する。例えば、切欠57を設けたことと、前スペーサー45および後スペーサー46の突設位置をシフトさせたこととにより、左上スペーサー41、右上スペーサー42、左下スペーサー43、および右下スペーサー44それぞれの一次突出方向への突出長さを、左側垂直部23および右側垂直部24それぞれの肉厚相当分だけ長くしたので、左側垂直部23および右側垂直部24の外面からの突出長さを変更することなく、左上スペーサー41、右上スペーサー42、左下スペーサー43、および右下スペーサー44をより変形しやすくすることができ、緩衝効果を高めることができる点は、第3、第4実施形態と同様である。また、二次突出部41b、42b、43b、44bは、第1実施形態に比べ、より本体部11から離れた位置に設けてあるので、本体部11と二次突出部との間でせん断応力を発生させやすくすることができる点は、第2〜第4実施形態と同様である。また、開口部(大型開口部31、32、および小型開口部35、36、37、38)を介して放熱を図ることができる点、本体部11を引き延ばすだけで大型開口部31、32から簡単に物品53を本体部11の内部に収めることができる点、スペーサー部13が小型開口部35、36、37、38の周縁から突出しているので、スペーサー部13に応力が作用した際に、小型開口部35、36、37、38の拡大または縮小を伴って本体部11が変形しやすくなる点などは、第1〜第4実施形態と同様である。
【0105】
[変形例等]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0106】
例えば、上記実施形態においては、x,y,z方向のどちらから見ても、収容部51の内面と本体部11との間には、物品53と重なる範囲全体にわたって存在する空間が確保されていたが、二次元的な方向(x,y方向)の衝撃のみを考慮すればよい場合には、収容部51の内面と本体部11との間に、z方向から見て物品53と重なる範囲全体にわたって存在する空間が確保されていなくても構わない。また、一次元的な方向(x方向)の衝撃のみを考慮すればよい場合には、収容部51の内面と本体部11との間に、y方向から見て物品53と重なる範囲全体にわたって存在する空間が確保されていなくても構わず、また、z方向から見て物品53と重なる範囲全体にわたって存在する空間が確保されていなくても構わない。なお、二次元的な方向(x,y方向)の衝撃のみを考慮すればよい場合としては、特定の面に沿って運動する物体に設けられる緩衝構造を想定することができ、一次元的な方向(x方向)の衝撃のみを考慮すればよい場合としては、特定の線に沿って運動する物体に設けられる緩衝構造を想定することができる。
【0107】
また、上記実施形態において、スペーサー部13の内、2つの左上スペーサー41、2つの右上スペーサー42、2つの左下スペーサー43、および2つの右下スペーサー44は、y方向を一次突出方向、z方向を二次突出方向として、本体部11から一次突出方向へ突出する部分と、一次突出方向へ突出する部分から二次突出方向へ突出する部分とを一体に形成してあったが、本実施形態で規定したx,y,z方向は、緩衝材各部の相対的な位置関係をわかりやすくするために規定したものに過ぎないので、x,y,z方向の内、いずれかを一次突出方向した場合、その一次突出方向とは別のいずれかを二次突出方向としてあれば、一次突出方向がx,y,z方向のいずれとなるかは、座標軸の規定の仕方で変わり得るものであり、また、二次突出方向がx,y,z方向のいずれとなるかは、座標軸の規定の仕方で変わり得るものである。具体的には、座標軸の規定の仕方によっては、x方向が一次突出方向、y方向が二次突出方向となったり、x方向が一次突出方向、z方向が二次突出方向となったり、y方向が一次突出方向、x方向が二次突出方向となったり、z方向が一次突出方向、x方向が二次突出方向となったり、z方向が一次突出方向、y方向が二次突出方向となったりするが、これらはすべて等価である。
【0108】
また、上記実施形態においては、x,y,z方向の内、いずれかを一次突出方向、一次突出方向とは別のいずれかを二次突出方向として、本体部11から一次突出方向へ突出する部分と、一次突出方向へ突出する部分から二次突出方向へ突出する部分とを一体に形成してなる左上スペーサー41、右上スペーサー42、左下スペーサー43、および右下スペーサー44を例示したが、さらに、一次突出方向および二次突出方向とは別のいずれかを三次突出方向として、一次突出方向へ突出する部分または二次突出方向へ突出する部分のいずれかから三次突出方向へ突出する部分を一体に形成してなるスペーサーを設けてもよい。このようなスペーサーであれば、単独でもx,y,z方向のすべてについて、スペーサーとしての役割を果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】第1実施形態の緩衝材の斜視図。
【図2】第1実施形態の緩衝材を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)はその右側面図。
【図3】第1実施形態の緩衝材を示す図であり、(a)はそのA−A線断面図、(b)はそのB−B線断面図、(c)はそのC−C線断面図、(d)は第1実施形態の緩衝材を内蔵型機器と収容部内面との間に介装してなる電子機器内部の緩衝構造を示す断面図。
【図4】第2実施形態の緩衝材の斜視図。
【図5】第2実施形態の緩衝材を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)はその右側面図。
【図6】第2実施形態の緩衝材を示す図であり、(a)はそのD−D線断面図、(b)はそのE−E線断面図、(c)はそのF−F線断面図、(d)は第2実施形態の緩衝材を内蔵型機器と収容部内面との間に介装してなる電子機器内部の緩衝構造を示す断面図。
【図7】第3実施形態の緩衝材の斜視図。
【図8】第3実施形態の緩衝材を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)はその右側面図。
【図9】第3実施形態の緩衝材を示す図であり、(a)はそのG−G線断面図、(b)はそのH−H線断面図、(c)はそのI−I線断面図、(d)は第3実施形態の緩衝材を内蔵型機器と収容部内面との間に介装してなる電子機器内部の緩衝構造を示す断面図。
【図10】(a)は、落下試験装置61の概略構造を示す説明図、(b)は、落下試験で比較例として使用したサンプルの構造を示す説明図。
【図11】落下試験における測定結果を示すグラフ。
【図12】第4実施形態の緩衝材の斜視図。
【図13】第4実施形態の緩衝材を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)はその右側面図。
【図14】第4実施形態の緩衝材を示す図であり、(a)はそのJ−J線断面図、(b)はそのK−K線断面図、(c)はそのL−L線断面図、(d)は第4実施形態の緩衝材を内蔵型機器と収容部内面との間に介装してなる電子機器内部の緩衝構造を示す断面図。
【図15】第5実施形態の緩衝材の斜視図。
【図16】第5実施形態の緩衝材を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)はその右側面図。
【図17】第5実施形態の緩衝材を示す図であり、(a)はそのM−M線断面図、(b)はそのN−N線断面図、(c)はそのO−O線断面図、(d)は第5実施形態の緩衝材を内蔵型機器と収容部内面との間に介装してなる電子機器内部の緩衝構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0110】
1,2,3,4,5・・・緩衝材、11・・・本体部、13・・・スペーサー部、21・・・上側水平部、22・・・下側水平部、23・・・左側垂直部、24・・・右側垂直部、25・・・前側垂直部、26・・・後側垂直部、31,32・・・大型開口部、35,36,37,38・・・小型開口部、41・・・左上スペーサー、42・・・右上スペーサー、43・・・左下スペーサー、44・・・右下スペーサー、41a,42a,43a,44a・・・一次突出部、41b,42b,43b,44b・・・二次突出部、45・・・前スペーサー、46・・・後スペーサー、51・・・収容部、53・・・物品、57・・・切欠、61・・・落下試験装置、62・・・ハードディスク装置、63・・・ケース、64・・・加速度計、65・・・信号線、66・・・ホルダ、67・・・エアシリンダ、68・・・コンクリートブロック、71,72,73,74・・・凹部、77・・・凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する収容部に物品を収容する際に、前記物品と前記収容部内面との間に介装されて、前記物品を前記収容部内面に接触させないように支持するとともに、前記収容部に特定方向からの衝撃が作用した場合に、弾性変形を伴って前記収容部から前記物品へと伝わる衝撃を緩和する緩衝材であって、
前記物品に接触する本体部と、
前記本体部と一体に形成されており、前記本体部よりも前記特定方向へ突出した部分で前記収容部内面に当接することにより、前記本体部と前記収容部内面との間に空間を確保するスペーサー部とを備え、
前記スペーサー部が、前記特定方向から見て前記物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間を確保している
ことを特徴とする緩衝材。
【請求項2】
前記特定方向は、互いに直交するx,y方向であり、
前記スペーサー部は、前記本体部よりも前記x方向へ突出した部分で前記収容部内面に当接することにより、前記本体部と前記収容部内面との間に、前記x方向から見て前記物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間を確保しており、且つ、前記本体部よりも前記y方向へ突出した部分で前記収容部内面に当接することにより、前記本体部と前記収容部内面との間に、前記y方向から見て前記物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間を確保している
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝材。
【請求項3】
前記特定方向は、互いに直交するx,y,z方向であり、
前記スペーサー部は、前記本体部よりも前記x方向へ突出した部分で前記収容部内面に当接することにより、前記本体部と前記収容部内面との間に、前記x方向から見て前記物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間を確保しており、且つ、前記本体部よりも前記y方向へ突出した部分で前記収容部内面に当接することにより、前記本体部と前記収容部内面との間に、前記y方向から見て前記物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間を確保しており、且つ、前記本体部よりも前記z方向へ突出した部分で前記収容部内面に当接することにより、前記本体部と前記収容部内面との間に、前記z方向から見て前記物品と重なる範囲全体にわたって存在する空間を確保している
ことを特徴とする請求項2に記載の緩衝材。
【請求項4】
前記スペーサー部は、前記x,y方向の内、いずれか一方を一次突出方向、他方を二次突出方向として、前記本体部よりも前記一次突出方向へ突出する一次突出部が、前記本体部から突出するとともに、前記本体部よりも前記二次突出方向へ突出する二次突出部が、前記一次突出部から突出している
ことを特徴とする請求項2に記載の緩衝材。
【請求項5】
前記スペーサー部は、前記x,y,z方向の内、いずれかを一次突出方向、前記一次突出方向とは別のいずれかを二次突出方向として、前記本体部よりも前記一次突出方向へ突出する一次突出部が、前記本体部から突出するとともに、前記本体部よりも前記二次突出方向へ突出する二次突出部が、前記一次突出部から突出している
ことを特徴とする請求項3に記載の緩衝材。
【請求項6】
前記スペーサー部は、前記収容部に前記特定方向からの衝撃が作用した場合に、少なくとも一部分が弾性変形に伴って変位する構造で、且つ、当該変位後の前記一部分が、前記特定方向から見て前記物品と重なる範囲内へは変位しない構造とされている
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の緩衝材。
【請求項7】
前記本体部は、前記スペーサー部によって確保された空間内へと突出する凸部を備えており、前記収容部に前記特定方向から衝撃が作用するのに伴って前記本体部が前記凸部の先端と前記収容部内面との間隔よりも大きく変位した場合には、前記凸部が前記収容部内面に接触する
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の緩衝材。
【請求項8】
前記本体部は、前記物品を三次元的に全方向から取り囲んで、前記物品を内側に保持可能な構造で、しかも、前記本体部の一部には、前記スペーサー部によって確保された空間内に前記物品を露出させる開口部が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の緩衝材。
【請求項9】
前記開口部は、前記本体部を引き延ばすと前記物品が通過可能な大きさまで拡大する構造で、拡大させた前記開口部から前記物品を前記本体部の内側へ収容可能となっている
ことを特徴とする請求項8に記載の緩衝材。
【請求項10】
前記スペーサー部は、前記開口部の周縁から突出している
ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の緩衝材。
【請求項11】
内部空間を有する収容部を備えた電子機器本体と、
前記収容部に収容される内蔵型機器と、
前記収容部に前記内蔵型機器を収容する際に、前記内蔵型機器と前記収容部内面との間に介装されて、前記内蔵型機器を前記収容部内面に接触させないように支持するとともに、前記収容部に特定方向からの衝撃が作用した場合に、弾性変形を伴って前記収容部から前記内蔵型機器へと伝わる衝撃を緩和する緩衝材と
を備えた電子機器内部の緩衝構造であって、
前記緩衝材は、
前記内蔵型機器に接触する本体部と、
前記本体部と一体に形成されており、前記本体部よりも前記特定方向へ突出した部分で前記収容部内面に当接することにより、前記本体部と前記収容部内面との間に空間を確保するスペーサー部とを備え、
前記スペーサー部が、前記特定方向から見て前記内蔵型機器と重なる範囲全体にわたって存在する空間を確保している
ことを特徴とする電子機器内部の緩衝構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−210665(P2007−210665A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35720(P2006−35720)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】