説明

緩衝材製造装置

【課題】ダンボール紙等の板状材を使用し、一工程で容易に梱包等に使用する緩衝材を製造可能で、緩衝材は一定の長さに切断されて製造される緩衝材製造装置を提供する。
【解決手段】切込み形成部2は供給材の流れ方向と平行のスリットを断続的に形成するとともに、流れの方向と直交する方向に供給材を一定間隔で切断分離する。切込み形成部2のカッター21,22は、円板状のカッターを軸方向に一定間隔をおいて重ね合わせて構成されているとともに、上下カッター外周がわずかに噛み合う状態に側面視で重なり合わせて配置されていて、円板状カッターの外周には凹状切り欠き部が適宜に設けてあり、凹状切り欠き部のカッター外周とのなす角部が、鋭角に設けた角部を有する凹状切り欠き部の作用により流れの方向と直交する方向に切断分離する緩衝材製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンボール紙等の板状材にスリットを形成して波板状に成形した梱包等に使用される緩衝材を製造する緩衝材製造装置に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、ダンボール紙等の廃材に切り込みを設けるとともに波板状にさせ、梱包用の緩衝材や運搬用のクッション材として使用する緩衝材を製造する緩衝材製造装置として、特開2001−277384号公報「緩衝材成形装置」(特許文献1)や特開平9−29864号公報「緩衝材の製造装置」(特許文献2)等が知られている。
【特許文献1】特開2001−277384号公報
【特許文献2】特開平9−29864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の特許文献1の緩衝材成形装置で製造された緩衝材の幅方向の寸法は希望の長さで製造可能であるが、長さは投入されたダンボール紙の長さにより決められ製造排出される。このため、梱包などで使用する場合に必要な長さに別途に切断して使用することになる。また、希望の長さに切断する場合は切断部を別途設ける必要があり、装置全体が長くなるとともに装置全体が複雑となる。さらに、特許文献2の緩衝材の製造装置においては、切断部にミシン目が形成されていて、分離が容易に可能であるが、ミシン目は供給する紙素材に予め別途に形成しておく必要があるとともに紙素材を別途にロール状に製造する必要がある。さらにまた、廃材等のダンボール紙等を使用する場合には不都合である。
【0004】
そこで本発明は、ダンボール紙等の板状材が使用可能で、一工程で容易に梱包等に使用する緩衝材を製造できるとともに、緩衝材は一定の長さに切断されて製造されるコンパクトな緩衝材製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、水平方向の回転軸を上下に平行に設けたアッパーローラーカッターとロアローラーカッターとが配置され、該アッパーローラーカッターとロアローラーカッターとの間を通過させた板状材にスリットを形成する切込形成部と、切込形成部の下流に設けた板状材の下流側案内部とを設けた緩衝材製造装置において、前記切込形成部は供給された板状材の流れ方向と平行のスリットを断続的に形成するとともに、流れの方向と直交する方向に流れの方向の一定間隔で板状材を切断分離することを特徴とする緩衝材製造装置を提案したものである。
【0006】
また、0005欄記載の緩衝材製造装置において、切込形成部のアッパーローラーカッターとロアローラーカッターは、それぞれ円板状のカッターを軸方向に一定間隔をおいて重ね合わせて構成されているとともに、アッパーローラーカッターとロアローラーカッターの外周がわずかに噛み合いの状態に側面視で重なりあうように互いの円板状カッターの間に入り込んで配置されていて、それぞれの円板状カッターの外周には凹状切り欠き部が適宜に設けてあり、凹状切り欠き部は凹状切り欠き部のカッター外周とのなす角部がアール形状で形成された凹状切り欠き部と、前記角部の一方を鋭角に設けた角部分で形成された凹状切り欠き部とがあり、該鋭角に設けた角部を有する凹状切り欠き部の作用により供給板状材を流れの方向と直交する方向に切断分離することを特徴とする緩衝材製造装置を提案したものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によると、切込形成部において供給された板状材の流れ方向と平行のスリットを断続的に形成するとともに、流れの方向と直交する方向に流れの方向の一定間隔で板状材を切断分離するため、製造された緩衝材は一定の長さで製造される。このため、梱包時には切断分離された必要な数量の緩衝材を使用することで、使用量の調整を容易にできる。また、供給する板状材は廃材等のダンボール紙が使用できるため緩衝材の製造コストも抑えることができ、供給材の汎用性の高い緩衝材製造装置を提供できる。
【0008】
また、請求項2の発明によると、凹状切り欠き部のカッター外周とのなす角部が鋭角に設けた角部を有する凹状切り欠き部の作用により供給板状材を流れの方向と直交する方向に切断分離するように構成した切込形成部により、簡単な構造でスリット形成と横方向の切断を同時に行うことができる。このため点検調整等も容易でコンパクトに構成された緩衝材製造装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態を図面を参照しながら説明する。図1はこの発明の一実施例を示す緩衝材製造装置の側面図、図2は板状材を投入した緩衝材製造装置の要部側断面図、図3はアッパーローラーカッターとロアローラーカッターの一部を示した斜視図、図4は切込形成部を通過した後の板状材の平面図、図5は円板状カッターの凹状切り欠き部の各タイミングと板状材の形成部との対比を示した説明図である。
【0010】
緩衝材製造装置1は、成形するダンボール紙等の板状材Wを投入する側の上流側案内部12と、投入された板状材Wを強制的に送り込む強制送り込み部5と、その下流に板状材Wにスリット60や分離部61を形成する切込み形成部2と、板状材Wに皺を形成させるとともに排出させる下流側案内部13が水平方向に順次配置されていて、上流側案内部12の高さは、作業者が板状材Wを投入しやすい高さに設定されていると作業者の負担が軽減できる。またこれらの下方部には装置駆動用の駆動モータ3が設置されている。
【0011】
強制送り込み部5は、二つの強制送り込みローラ51を上下に平行に配置し、投入した板状材Wを上下の強制送り込みローラ51の間に狭持させ、投入側の下流側へ板状材を送り込む方向に互いに逆回転するように設けられている。強制送り込みローラ51は、外周に突起を放射状に設けていて、板状材Wを確実に狭持し送り込むことができる。
【0012】
強制送り込み部5の上流側案内部12側には作業者の巻き込まれ防止のため、投入口カバー11が設けてあり、上流側案内部12下面と投入口カバー11との隙間は、板状材Wが通過できる程度に接近して設けてある。
【0013】
切込み形成部2は、2本のローラーカッターであるアッパーローラーカッター21とロアローラーカッター22とが上下に平行に図2に示されるように設置されている。アッパーローラーカッター21とロアローラーカッター22はそれぞれアッパー回転軸23とロア回転軸24に取り付けられ、上流側の板状材Wを上下で狭持し下流側に送り込む方向に互いに逆回転で駆動される。
【0014】
アッパーローラーカッター21とロアローラーカッター22はともに数mmの厚さからなる円板状の円板状カッター25を、数mmの隙間を空けてアッパー回転軸23とロア回転軸24に多数枚重ねて取り付けている。アッパーローラーカッター21とロアローラーカッター22の外周がわずかに噛み合いの状態に側面視で重なりあうように互いの円板状カッター25の間の隙間に入り込ませ回転軸の芯間寸法が設定されている。
【0015】
円板状カッター25には、外周部に部分的に凹状切り欠き部251が設けてあり、それぞれの隣り合う円板状カッター25のこれら凹状切り欠き部251の位相を設定することで、板状材Wにスリット60を形成することやスリット60の無い部分を連続的に形成することができる。例えば、アッパーローラーカッター21側の円板状カッター25の間にロアローラーカッター22の円板状カッター25が位置し、重なり部のどちらの円盤状カッター25にも凹状切り欠き部251が無い状態では、ロアローラーカッター22の円板状カッター25の厚さ分の間隔をおいてスリット60が平行に投入された板状材Wに形成され、重なり部分のアッパーローラーカッター21側の円板状カッター25に凹状切り欠き部251が形成されていると、スリット60が形成されない状態となる。このようにアッパーローラーカッター21とロアローラーカッター22の重なり部分の凹状切り欠き部251の位相タイミングを調整することで、形成されるスリット60のパターンを調整できる。
【0016】
凹状切り欠き部251は凹状切り欠き部251の円板状カッター25外周とのなす角部が滑らかなアール形状のアール形角部252で形成された凹状切り欠き部と、前記角部の一方を鋭角に設けた鋭角角部253で形成された凹状切り欠き部とがあり、アッパーローラーカッター21とロアローラーカッター22の前記重なり部分が、両側に凹状切り欠き部251が無い部分が位置し、中間部の円板状カッター25に凹状切り欠き部251の鋭角角部253が位置した状態になると、鋭角角部253により板状材Wはカッター幅分流れの方向と直交する方向に切断される。この作用部を隣り合うスリットの一つ飛び措きに設置させるとともに、流れの方向にわずかに位置をずらしてその隣り合うスリット部に設置することで、流れの方向と直交する方向にジグザグ状に板状材Wが切断される。
【0017】
切込み形成部2を通過した板状材Wは、さらに下流の下流側案内部13に送られる。下流側案内部13では、水平面のテーブルと、その上方に下流側案内部13の基部側を回動支点に上下方向に回動する下流側押圧板42との間に挿入して送られる。下流側押圧板42の上面には、重り43が取り付けられていて、基部側の回動支点を中心に他方端が下方に回動し重り43の重量で押圧している。このため送られてくる板状材Wには送り方向に抵抗が作用し、板状材Wは切り込み形成部2で形成された多数のスリット60により柔らかくなっているため波板状に変形または凸凹状に変形し、緩衝材としてクッション機能がもたらされる。変形した板状材Wは送り方向の抵抗に抗しながら順次装置外に排出される。
【0018】
切り込み形成部2の下方には、緩衝材製造装置27を駆動する駆動モータ3が設置されていて、出力軸に固着された駆動スプロケット32から掛け渡されたローラーチェーン33によりロアローラーカッター22が取り付けられたロア回転軸24端部に固着させたロアローラースプロケット27に動力が伝達され回転駆動する。
【0019】
ロア回転軸24端部とアッパー回転軸23端部には、上下カッター21,22の回転を連動させるためのカッター連動ギヤ35がそれぞれ設けられ噛み合っている。この為、円板状カッター25の凹状切り欠き部251の位置関係は一定に維持される。また、アッパー回転軸23端部にはアッパーローラースプロケット26が固着されていて、これに強制送り込み部5の送りローラスプロケット53とローラーチェーン34を巻着させ、強制送り込み部5に動力を伝達し駆動している。送りローラスプロケット53は、強制送り込みローラ51が取り付けられた送り込みローラ回転軸52端部に固着されている。また、送り込みローラ回転軸52端部には、上下ローラー51,51が連動して回転するように送りローラ連動ギヤ36がそれぞれ設けられ噛み合っている。
【0020】
図5において板状材Wにスリット60および分離部61が形成される工程を説明する。A部分では、ロアローラーカッター22の鋭角角部253により、流れの直交する方向に切断される。さらに回転してB部分ではアッパーローラーカッター21の鋭角角部253により切断される。また、C部分の様な流れの方向に連続したスリット60を形成する場合は、上下カッター21,22の凹状切り欠き部251がお互いに無い部分が重なり合うと形成される。さらに、スリット60を成形しない部分のD位置では、上下一方のカッターのアール形角部252のみを有した凹状切り欠き部251を位置させることでその通過部分にスリット60が形成されない。
【0021】
E部分の形成はロアローラーカッター22のA部分を形成するカッターに隣接して設けたカッターにより形成され、順次F部のスリット、G部のスリット無し部、H部のスリット形成部が各凹状切り欠き部251の組み合わせ配置によりそれぞれ形成される。
【0022】
前記した構成の緩衝材製造装置1で緩衝材を製造するには、装置上方に設けた起動用スイッチ16により装置を起動させ、上流側案内部12のテーブルに成形する板状材Wを載せ、前方の投入口カバー11とテーブル14との隙間で形成された投入口へ挿入する。挿入された板状材Wが強制送り込み部5に達すると、回転する上下の強制送り込みローラ51,51に狭持され下流側に送られる。強制送り込み部5の下流側には、切込み形成部2があり、上下に位置するアッパーローラーカッター21とロアローラーカッター22の中間部に板状材Wが狭持されるように挿入され、スリット60が形成されるとともに、流れの方向の一定間隔で分離部61が形成される。さらに送られ下流側案内部13に達すると、水平面の固定したテーブルとその上方にある上下方向に回動する下流側押圧板42との間に挿入され、重り43の重量が作用する下流側押圧板42により板状材Wが押圧され、流れを阻止する狭持抵抗が作用し流れ速度が減速する。一方上流の送る側は一定の速度で送るため、板状材Wには流れ方向である水平方向に力が作用し座屈が連続して起こり、板状材Wが変形し波板状や皺が形成され緩衝材となって排出される。排出された緩衝材は一定の長さに切断分離されているため、梱包などに使用する場合は必要な長さに改めて切断する必要がなく、一定長さで足りない場合は必要数使用すればよい。装置上面には、非常停止用スイッチ15や逆回転スイッチ17が設けてあり、異物が噛みこんだときや駆動抵抗が大きくなった場合等に停止させると共に逆転させ除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施例を示す緩衝材製造装置の側面図。
【図2】板状材を投入した緩衝材製造装置の要部側断面図。
【図3】アッパーローラーカッターとロアローラーカッターの一部を示した斜視図。
【図4】切込形成部を通過した後の板状材の平面図。
【図5】円板状カッターの凹状切り欠き部の各タイミングと板状材の形成部との対比を示した説明図。
【符号の説明】
【0024】
1 緩衝材製造装置
11 投入口カバー
12 上流側案内部
13 下流側案内部
14 テーブル
15 非常停止用スイッチ
16 起動用スイッチ
17 逆回転スイッチ
2 切込み形成部
21 アッパーローラーカッター
22 ロアローラーカッター
23 アッパー回転軸
24 ロア回転軸
25 円板状カッター
251 凹状切り欠き部
252 アール形角部
253 鋭角角部
26 アッパーローラースプロケット
27 ロアローラースプロケット
3 駆動モータ
32 駆動スプロケット
33,34 ローラーチェーン
35 カッター連動ギヤ
36 送りローラ連動ギヤ
42 下流側押圧板
43 重り
5 強制送り込み部
51 強制送り込みローラ
52 送り込みローラ回転軸
53 送りローラスプロケット
60 スリット
61 分離部
W 板状材
X 板状材流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向の回転軸を上下に平行に設けたアッパーローラーカッターとロアローラーカッターとが配置され、該アッパーローラーカッターとロアローラーカッターとの間を通過させた板状材にスリットを形成する切込形成部と、切込形成部の下流に設けた板状材の下流側案内部とを設けた緩衝材製造装置において、前記切込形成部は供給された板状材の流れ方向と平行のスリットを断続的に形成するとともに、流れの方向と直交する方向に流れの方向の一定間隔で板状材を切断分離することを特徴とする緩衝材製造装置。
【請求項2】
切込形成部のアッパーローラーカッターとロアローラーカッターは、それぞれ円板状のカッターを軸方向に一定間隔をおいて重ね合わせて構成されているとともに、アッパーローラーカッターとロアローラーカッターの外周がわずかに噛み合いの状態に側面視で重なりあうように互いの円板状カッターの間に入り込んで配置されていて、それぞれの円板状カッターの外周には凹状切り欠き部が適宜に設けてあり、凹状切り欠き部は凹状切り欠き部のカッター外周とのなす角部がアール形状で形成された凹状切り欠き部と、前記角部の一方を鋭角に設けた角部分で形成された凹状切り欠き部とがあり、該鋭角に設けた角部を有する凹状切り欠き部の作用により供給板状材を流れの方向と直交する方向に切断分離することを特徴とする請求項1記載の緩衝材製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−183763(P2008−183763A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17805(P2007−17805)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】