説明

縦結合多重モード共振子型弾性表面波フィルタ

【課題】平衡端子を持つ縦結合多重モード型SAWフィルタを小型化し位相平衡度を改善する。
【解決手段】弾性表面波の伝搬方向に配列した複数のIDTと、平衡又は不平衡端子である第一信号端子と、平衡端子である第二信号端子とを有する縦結合多重モード型フィルタで、前記複数のIDTは、第一IDT群と、第二IDT群と、両IDT群間に配されこれらを音響結合する中央IDTとを含み、第一IDT群の1以上のIDTと、第二IDT群の1以上のIDTを第一信号端子に接続し、第一IDT群の1以上のIDTと、第二IDT群の1以上のIDTを第二信号端子に接続し、中央IDTを2分割して、これら分割した各IDT部を、第二信号端子の一方の端子と他方の端子とに夫々接続する。中央IDTの2つのIDT部は共に、それらを構成する一対の櫛形電極のうちの一方の櫛形電極を第二信号端子に接続し、他方の櫛形電極を浮き電極とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦結合多重モード共振子型弾性表面波フィルタに係り、特に平衡信号端子を備えた当該弾性表面波フィルタの位相平衡度を改善する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電効果によって発生する弾性表面波(Surface Acoustic Wave/SAW)を利用した弾性表面波フィルタ(以下、SAWフィルタという)は、小型軽量で信頼性に優れることから、移動体通信機器の送受信フィルタやアンテナ分波器などに今日広く使用されている。かかるSAWフィルタは、一般に、弾性表面波を励振する複数の交差指状電極(インターデジタルトランスデューサ:Interdigital Transducer/以下、IDTという)を圧電基板上に複数形成し、これらのIDTを電気的あるいは音響的に接続することにより構成される。
【0003】
IDTの接続構造としては、例えば、梯子形に複数のIDTを接続するラダー型構造や、複数のIDTを弾性表面波の伝搬経路内に配して音響的に結合させる縦結合共振子型構造が知られているが、縦結合共振子型構造は、ラダー型構造に比べて一般に広帯域での減衰特性に優れ、耐ノイズ性に優れた平衡出力を容易に実現できる利点を有する。
【0004】
平衡出力を得るには、例えば、2つの縦結合共振子多重モード型フィルタを入出力端子間に電気的に並列に接続し、これら2つの縦結合共振子多重モード型フィルタを弾性表面波の伝搬方向に配列して音響的に結合させる構成が知られている(例えば下記非特許文献1および特許文献1〜4参照)。
【0005】
【非特許文献1】2004 IEEE Ultrasonics Symposium Proceeding 第294〜297頁 “DMS Filter with Reduced Resistive Losses”(第297頁,図7)
【特許文献1】WO2005/107065
【特許文献2】特開2004‐304513号公報
【特許文献3】特開2006‐186433号公報
【特許文献4】特開2004‐096244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、平衡端子を備えた上記縦結合共振子多重モード型フィルタは、2つのフィルタを配列させた構成であるから、その分デバイスのサイズは大きくならざるを得ず、したがってより一層の小型化が求められる。また同時に、フィルタ特性として出力信号の位相平衡度が良好であることも要求される。
【0007】
ところが、従来のフィルタ構造では、デバイスサイズを小さくする手法は上記文献のように種々提案されているが、同時に位相平衡度を向上させる手段については必ずしも十分な提案がなされていない。
【0008】
具体的には、上記非特許文献1(2004 IEEE Ultrasonics Symposium Proceeding)には、2つの3‐IDT型の多重モード型フィルタを並列接続するときに、一方の反射器を取り除いて音響結合させることでフィルタを小型化することが出来ること、ならびに平衡出力およびインピーダンス変換が可能であることが示されているが、フィルタ特性の改善方法については述べられていない。
【0009】
一方、上記特許文献1(WO2005/107065)は、複数のIDTを並べた多重モード型構造において、浮きバスバーSS1を、電極指を介した接続電極により接地することにより特性改善が可能であるとする。しかしながら、3つのIDTを持つ平衡出力多重モード型フィルタを従来例として特性比較を行っているものの、接続電極を用いたことによる位相平衡度の改善効果は明らかにされていない。また、実際のデバイスでは、図19に示すようにバンプ61から接地用の電極62に至るまでには寄生成分が介在されてしまい、理想的な接地とはならないため、素子60上で接地用の電極63に接続するだけは十分な効果を得ることは難しい。さらに、小型化のために図20に示すような構成をとっても、少なからず寄生成分が存在する。なお、この図20の構造は、圧電基板51上のIDT53を形成した面に非圧電材66(例えば封止用の樹脂やその他の基板・膜、あるいは弾性境界波フィルタを構成するための非圧電材(例えばSiO2やSi等)など)を配するとともに、この非圧電材の上面にバンプ61を備え、バンプ61とIDT53とを非圧電材52を貫通するビア65を介して電気的に接続したものである。
【0010】
また、特許文献2(特開2004‐304513)は、2つの多重モード型フィルタを2つ並列に並べ、接地用配線および接地用パッドを一方から取り出すことでフィルタを小型化する構造を開示する。また、並列接続するときにそれらの間に共通の反射器を1つ設けることで更なる小型化を図る。しかしながらこの文献は、平衡化と小型化を実現するに留まり、特性改善を可能とするものではない。
【0011】
さらに特許文献3(特開2006‐186433)は、2つの多重モード型フィルタを並列接続する場合に、共通の反射器を1つ設けると共に、反射器の本数とピッチを調整することで特性劣化を抑えつつ小型化を図るが、平衡端子を備えるフィルタに関するものではない。
【0012】
また特許文献4(特開2004‐096244)は、位相平衡度の改善を図るものではあるが、平衡信号端子にリアクタンス成分を付加して各端子に生じるリアクタンス分を等しくするもので、IDTとは別に平衡端子からの引出線路を付加する必要があり、フィルタ自体の構成によって改善効果を得ることは示されていない。
【0013】
したがって、本発明の目的は、平衡端子を備えた縦結合多重モード共振子型SAWフィルタにおいて小型化と位相平衡度の改善を同時に実現可能な新たなフィルタ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る縦結合多重モード共振子型SAWフィルタは、圧電基板上において弾性表面波の伝搬方向に配列させた複数のIDT(交差指状電極)と、これらIDTの両側に配した1対の反射器と、平衡端子または不平衡端子である第一信号端子と、平衡端子である第二信号端子とを有する縦結合多重モード共振子型SAWフィルタであって、前記複数のIDTが、弾性表面波の伝搬方向に順に配列させた複数のIDTからなる第一交差指状電極群(第一IDT群)と、弾性表面波の伝搬方向に順に配列させた複数のIDTからなる第二交差指状電極群(第二IDT群)と、これら第一IDT群と第二IDT群との間に配されて両IDT群を音響結合させる中央交差指状電極(中央IDT)とを含み、前記第一IDT群のうちの1以上のIDTと、前記第二IDT群のうちの1以上のIDTとを前記第一信号端子に接続すると共に、前記第一IDT群のうちの1以上のIDTを前記平衡端子である第二信号端子の一方の端子に接続し、前記第二IDT群のうちの1以上のIDTを前記第二信号端子の他方の端子に接続し、かつ前記中央IDTを、弾性表面波の伝搬方向に2つの交差指状電極部が配列されるように略対称に2分割して、これら分割したIDT部のうちの一方のIDT部を、前記第二信号端子の一方の端子に接続し、他方のIDT部を、前記第二信号端子の他方の端子に接続する。
【0015】
本発明に係る縦結合多重モード共振子型弾性表面波フィルタは、フィルタ全体としてのサイズの増大を招くことなく従来より位相平衡度を改善可能なフィルタ構成を得るべく、IDTの配置ならびに接続構造を様々に検討した結果得られたもので、上記のように弾性表面波の伝搬方向に配列させた複数のIDTからなる第一IDT群と第二IDT群との間に別にIDTを設けてこのIDT(中央IDT)により両IDT群を音響結合させる。中央IDTは、弾性表面波の伝搬方向に2つの交差指状電極部(IDT部)が配列されるように略対称に2分割し、これら分割した各IDT部を、平衡端子である第二信号端子の一方の端子と他方の端子とにそれぞれ接続する。これにより、位相平衡度が改善される。なお、第一IDT群および第二IDT群のうちの各1以上のIDTが接続される第一信号端子は、平衡端子または不平衡端子のいずれとすることもでき、当該フィルタの両端部(両側)には反射器を配する。
【0016】
また、さらに良好な位相平衡度の改善効果を得るためには、上記フィルタ構成に対し、次の(1)から(6)の1以上の構成を加えることが好ましいことを見出した。位相平衡度の具体的な改善効果については、後の実施形態の説明において述べる。
【0017】
(1) 中央IDTに含まれる2つのIDT部が共に、それらを構成する一対の櫛形電極のうちの一方の櫛形電極を第二信号端子に接続し、他方の櫛形電極を電気的に開放状態とする。なお、開放状態とは、当該他方の櫛型電極が電気的に浮いている、浮き電極となっていることを意味する。
(2) 中央IDTに含まれる2つのIDT部が、互いに、電極対数が同一でかつ電極指ピッチが異なるようにする。
(3) 中央IDTに含まれる2つのIDT部が、互いに、電極対数が異なる。
(4) 上記(3)において電極対数が少ない方のIDT部の電極指ピッチと比べて電極対数が多い方のIDT部の電極指ピッチが小さくなるようにする。
(5) 中央交差指状電極とこの両側に隣り合って配される2つの交差指状電極との合計の電極対数が、前記反射器の各々に隣り合って配される2つの交差指状電極の合計の電極対数より多い。
(6) 第一IDT群と第二IDT群とが共に、2つ以上のIDTをそれぞれ備えるようにする。
【0018】
さらに上記本発明のフィルタでは、中央IDTの2つのIDT部の間に反射器を備えても良い。また、第一信号端子を不平衡端子とし、第一IDT群のうちの1以上のIDTと第二IDT群のうちの1以上のIDTとの接続点と、第一信号端子との間に、弾性表面波共振子を直列にさらに接続しても良い。また、第一信号端子を不平衡端子とし、第一IDT群のうちの1以上のIDTと第一信号端子との間、ならびに、第二IDT群のうちの1以上のIDTと第一信号端子との間にそれぞれ弾性表面波共振子を直列にさらに接続しても良い。
【0019】
また、第一IDT群のうちの1以上のIDTと第二IDT群のうちの1以上のIDTと中央IDTの2つのIDT部のうちの一方との接続点と、第二信号端子の一方の端子との間に、弾性表面波共振子を直列にさらに接続すると共に、第一IDT群のうちの1以上のIDTと第二IDT群のうちの1以上のIDTと中央IDTの2つのIDT部のうちの他方との接続点と、第二信号端子の他方の端子との間に、弾性表面波共振子を直列にさらに接続しても良い。
【0020】
上記フィルタ構成は、弾性表面波フィルタだけなく、弾性境界波フィルタに対しても同様に適用することが可能である。
【0021】
具体的には、当該弾性境界波フィルタは、圧電基板と、当該圧電基板に接するように配した非圧電材(例えば非圧電基板または非圧電膜)と、前記圧電基板と非圧電材の境界面に弾性境界波の伝搬方向に配列させた複数のIDTと、これらIDTの両側に配した1対の反射器と、平衡端子または不平衡端子である第一信号端子と、平衡端子である第二信号端子とを有する縦結合多重モード共振子型弾性境界波フィルタであり、前記複数のIDTが、弾性境界波の伝搬方向に順に配列させた複数のIDTからなる第一IDT群と、弾性境界波の伝搬方向に順に配列させた複数のIDTからなる第二IDT群と、これら第一IDT群と第二IDT群との間に配されて両IDT群を音響結合させる中央IDTとを含み、前記第一IDT群のうちの1以上のIDTと、前記第二IDT群のうちの1以上のIDTとを前記第一信号端子に接続すると共に、前記第一IDT群のうちの1以上のIDTを前記平衡端子である第二信号端子の一方の端子に接続し、前記第二IDT群のうちの1以上のIDTを前記第二信号端子の他方の端子に接続し、かつ前記中央IDTを、弾性境界波の伝搬方向に2つの交差指状電極部が配列されるように略対称に2分割して、これら分割したIDT部のうちの一方のIDT部を、前記第二信号端子の一方の端子に接続し、他方のIDT部を、前記第二信号端子の他方の端子に接続する。
【0022】
さらに、この弾性境界波フィルタにおいても同様に、弾性境界波フィルタについて述べた前記(1)から(6)の各構成の1以上を加えることが、より良好な位相平衡度の改善効果を得る点で好ましい。また、第一信号端子側や第二信号端子側に弾性境界波共振子を適宜接続しても良いことは前記弾性表面波フィルタと同様である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、平衡端子を備えた縦結合多重モード共振子型SAW(又は弾性境界波)フィルタにおいて小型化と位相平衡度の改善を同時に実現可能な新たなフィルタ構造を得ることが出来る。
【0024】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の第一の実施形態に係る縦結合多重モード共振子型SAW(弾性表面波)フィルタを示す模式図である。同図に示すようにこのSAWフィルタは、圧電基板上の弾性表面波の伝搬方向に配列させた6個のIDT21〜26を備えた縦結合多重モード共振子型SAWフィルタの中央に(より具体的には、左側に配列させた3個のIDT21,22,23からなる第一IDT群11と、右側に配列させた3個のIDT24,25,26からなる第二IDT群12との間に)、1つのIDT(中央IDT)27を挿入したものである。
【0026】
第一IDT群11および第二IDT群12内において中央に位置するIDT22,25は、不平衡端子である入力端子1にそれぞれ接続する。一方、第一IDT群11内の左右両端のIDT21,23は、平衡端子である出力端子2の一方の端子2aに、また、第二IDT群12内の左右両端のIDT24,26は、平衡出力端子2の他方の端子2bにそれぞれ接続する。
【0027】
ここで上記各IDTについて、第一IDT群11の左右両端のIDT21,23から取り出される出力位相と、第二IDT群12の左右両端のIDT24,26から取り出される出力位相とがほぼ180°異なるように構成してあり、これにより出力端子2から平衡出力信号を得る。具体的には、弾性表面波の伝搬方向に直交する中心線Y‐Y´(図1参照)に対して、IDT22とIDT25とが面内(圧電基板表面内)で回転対称となるように、またIDT21,23とIDT24,26とが鏡面対称となるように配置する。
【0028】
また、第一IDT群11および第二IDT群12を構成する各IDT21〜26は、互いに噛み合うように差し込まれた一対の櫛形電極からなるが、このうち入力端子1および出力端子2のいずれにも接続されない側の各櫛形電極は、接地電位に接続する。また、上記のように配列させたIDT21〜26の両側には、一対の反射器10を設ける。なお、上記入力端子1および出力端子2のいずれにも接続されない側の各櫛形電極の接地電位への接続は、圧電基板上に形成した接続配線、接続用のバンプ、ならびにベース基板上およびベース基板内部に設けた配線を通じて行う。
【0029】
中央IDT27は、1つのIDTを弾性表面波の伝搬方向に配列されるように分割してそれらを電気的に直列に接続した2つの電極部27a,27bからなり、これら2つの電極部27a,27bは、電極部27aの出力位相を第一IDT群11に含まれるIDT21およびIDT23の出力位相と略等しくする一方、電極部27bの出力位相を第二IDT群に含まれるIDT24およびIDT26と略等しくすることにより、電極部27aと電極部27bの出力位相が互いにほぼ180°異なるようにしてある。
【0030】
また、これら電極部27a,27bは、他のIDT21〜26と同様に、互いに噛み合うように差し込まれた一対の櫛形電極からなるが、そのうちの一方の櫛形電極27d,27eは、左側の電極部27a(櫛形電極27d)については上記平衡出力端子2の一方の端子2aに、右側の電極部27b(櫛形電極27e)については上記平衡出力端子2の他方の端子2bにそれぞれ接続する。出力端子2に接続しない各電極部の他方の櫛形電極27cは、接地せずに浮き電極としている。
【0031】
なお、本実施形態では上述のように、中心線Y‐Y´に対して、IDT22とIDT25を面内で回転対称に、IDT21,23とIDT24,26を鏡面対称に配置したが、これとは逆に、IDT22とIDT25が鏡面対称となるように、またIDT21,23とIDT24,26が回転対称となるように配置しても良く、また他の配置により出力端子2から平衡信号を取り出しても良い。この場合も中央IDTの電極部27aの出力位相とIDT21,23の出力位相を略等しくし、27bの出力位相とIDT24、26の出力位相を略等しくなるように配置する。
【0032】
また、上記各IDT21〜27ならびに反射器10は、46°YカットX伝搬LiTaO3基板の表面に、TiNからなる下地膜を例えば4nmの厚さで成膜し、その上にAl単結晶膜を例えば170nmの厚さで成膜して各電極パターンを形成することにより構成する。またこれらの電極パターンは、上記圧電基板上に同時に多数作成し、ダイシングにより分割することで個々のフィルタチップとする。チップ化したフィルタは、フリップチップボンディングによりセラミックのベース基板上に搭載し、これを樹脂で封止する。また、本実施形態のシステムは、PCSの受信用フィルタを想定しており、通過帯域は1930MHzから1990MHzである。
【0033】
本実施形態に係るフィルタの各部の仕様は、例えば次のとおりとすることが出来る。なお、下記の各数値のうちアンダーラインを付したものは、中央IDT(左側電極部27a及び右側電極部27b)に関するもので、本実施形態では浮き電極とした中央IDTの左側電極部27aと右側電極部27bとで電極対数は同一であるが、電極周期を異ならせている。また、図16(a)に示すようにIDTは、互いに対向する一対の櫛形電極8a,8bによって構成されるが、本明細書においてIDTの電極指ピッチとは、当該櫛形電極8a,8bの交差し合う電極指の中心間の距離p1を言い、この電極指ピッチp1の2倍がIDTの電極周期λ1である。一方、図16(b)に示すように反射器の電極指ピッチとは、当該反射器10の隣り合う電極中心間の距離p2を言い、この電極指ピッチp2の2倍が反射器の電極周期λ2である。
【0034】
・ IDTの電極対数:(IDT21,IDT22,IDT23,左側電極部27a,右側電極部27b,IDT24,IDT25,IDT26)=(17.5対,41.0対,14.5対,3対3対,14.5対,41.0対,17.5対)
・ IDTの電極周期(電極指ピッチの2倍):(IDT21,IDT22,IDT23,左側電極部27a,右側電極部27b,IDT24,IDT25,IDT26)=(2.012μm,2.036μm,2.012μm,2.017μm2.007μm,2.012μm,2.036μm,2.012μm)
・ 反射器の電極本数: 55本
・ 反射器の電極周期(電極指ピッチの2倍): 2.013μm
・ IDT‐反射器間の距離: 0.5×(2.012+2.013)/2 μm
・ IDT23‐左側電極部27a間の距離: 0.5×(2.012+2.017)/2 μm
・ 右側電極部27b‐IDT24間の距離: 0.5×(2.007+2.012)/2 μm
・ 電極指デューティーファクタ(電極指ピッチに対する電極線幅の比):0.60
【0035】
図17および図18は、本実施形態との比較対照として従来の縦結合多重モード共振子型SAWフィルタの一例(以下、第一従来例という)ならびに他の一例(以下、第二従来例という)を示すものである。第一従来例のフィルタは、図17に示すように一対の反射器10の間に弾性表面波の伝搬方向に配列させた6個のIDT51〜56を備えた6‐IDT型の縦結合多重モード型SAWフィルタで、中央に位置する2つのIDT53,54を接地せずに浮き電極としたものである。また第二従来例のフィルタは、図18に示すように同じく6個のIDT51〜56を配列させた6‐IDT型縦結合多重モード型SAWフィルタであるが、中央に位置する2つのIDT53,54を接地したものである。
【0036】
図2は、これら第一従来例および第二従来例、ならびに本実施形態の各フィルタの位相平衡度を測定した結果を示す線図である。なお、同図において第一従来例を一点鎖線で、第二従来例を破線で、本実施形態を実線でそれぞれ示し、平衡出力端子2a,2b間の位相差が180°異なる時、位相平衡度を0°として表している(以降の線図:図3〜図9においても同様)。この結果から明らかなように、第一従来例(図17の構成)では通過帯域(1930〜1990MHz)内の位相平衡度の最大値が4.8°、最小値が−1.7°、変動量(通過帯域内での位相平衡度の最大値と最小値の差)が6.5°であり、また第二従来例(図18の構成)では通過帯域内の位相平衡度の最大値が2.9°、最小値が−0.6°、変動量が3.5°であるのに対し、本実施形態では通過帯域内の位相平衡度の最大値が2.9°、最小値0.3°、変動量が2.6°となっており、本実施形態のフィルタによれば、第一従来例と比べて位相平衡度を改善することが出来ることが分かる。また第二従来例と比較しても、位相平衡度の最大値は変わっていないが、通過帯域内の変動量は小さくなっており、改善効果が得られている。
【0037】
また、図3は減衰特性を示すものであるが、この図から分かるように、本実施形態のフィルタ構造を採用しても、従来のフィルタと比較して挿入損失ならびに帯域外特性について特性劣化を引き起こすことは無い。
【0038】
さらに、図4は本実施形態に係るSAWフィルタの変形例を示すものである。この図に示すように本実施形態のフィルタでは、前記図1に示した接続例とは逆に、第一IDT群および第二IDT群内においてそれぞれ左右両端に位置するIDT21,23とIDT24,26とを不平衡端子である入力端子1に接続する一方、第一IDT群および第二IDT群内においてそれぞれ中央に位置するIDT22,25を平衡端子である出力端子2a,2bにそれぞれ接続しても良い。なお、中央IDTの一方の電極部27aは出力端子の一方の端子2aに、中央IDTの他方の電極部27bは出力端子の他方の端子2bにそれぞれ接続する。
【0039】
〔実施形態2〕
本発明の第二の実施形態に係る縦結合多重モード共振子型SAWフィルタは、前記第一実施形態のフィルタ(図1)同様に、弾性表面波の伝搬方向に沿って一対の反射器10の間に中央IDT27を含めた7個のIDT21〜27を配列し、中央IDT27を2つの電極部27a,27bに分割したものであるが、フィルタ各部の仕様が前記第一実施形態と異なる。具体的には、以下のとおりであるが、前記中央IDT27の左側電極部27aの対数を2対、右側電極部27bの対数を4対として相互に異ならせた。なお、両電極部27a,27bの電極周期は前記第一実施形態と同じである。
【0040】
・ IDTの電極対数:(IDT21,IDT22,IDT23,左側電極部27a,右側電極部27b,IDT24,IDT25,IDT26)=(17.5対,41.0対,14.5対,2対4対,14.5対,41.0対,17.5対)
・ 電極周期(電極指ピッチの2倍):(IDT21,IDT22,IDT23,左側電極部27a,右側電極部27b,IDT24,IDT25,IDT26)=(2.012μm,2.036μm,2.012μm,2.017μm2.007μm,2.012μm,2.036μm,2.012μm)
・ 反射器の電極本数: 55本
・ 反射器の電極周期(電極指ピッチの2倍): 2.013μm
・ IDT‐反射器間の距離: 0.5×(2.012+2.013)/2 μm
・ IDT23‐左側電極部27a間の距離: 0.5×(2.017+2.012)/2 μm
・ 右側電極部27b‐IDT24間の距離: 0.5×(2.007+2.012)/2 μm
・ 電極指デューティーファクタ:0.60
【0041】
図5は、前記図2と同様に、第一従来例、第二従来例ならびに本実施形態の各フィルタの位相平衡度を測定した結果を示すものである。この結果から明らかなように、本実施形態のフィルタでは通過帯域(1930〜1990MHz)内の位相平衡度の最大値が2.9°、最小値が0.7°、変動量が2.2°となっており、この実施形態によっても前記実施形態と同様に、従来例と比べて通過帯域内における位相平衡度を改善することが出来る。
【0042】
〔実施形態3〕
本発明の第三の実施形態に係る縦結合多重モード共振子型SAWフィルタは、前記実施形態(図1)と同様に、6個のIDTと中央IDTとを備えるものであるが、中央IDT27の左側電極部27aと、これに隣接するIDT23との距離を前記各実施形態とは異ならせたものである。具体的には、以下のとおりである。
【0043】
・ IDTの電極対数:(IDT21,IDT22,IDT23,左側電極部27a,右側電極部27b,IDT24,IDT25,IDT26)=(17.5対,41.0対,14.5対,3対3対,14.5対,41.0対,17.5対)
・ 電極周期(電極指ピッチの2倍):(IDT21,IDT22,IDT23,左側電極部27a,右側電極部27b,IDT24,IDT25,IDT26)=(2.012μm,2.036μm,2.012μm,2.012μm2.012μm,2.012μm,2.036μm,2.012μm)
・ 反射器の電極本数: 55本
・ 反射器の電極周期(電極指ピッチの2倍): 2.013μm
・ IDT‐反射器間の距離: 0.5×(2.013+2.012)/2 μm
・ IDT23‐左側電極部27a間の距離: 0.508×(2.012+2.012)/2 μm
・ 右側電極部27b‐IDT24間の距離: 0.5×(2.012+2.012)/2 μm
・ 電極指デューティーファクタ:0.60
【0044】
図6は、第一従来例、第二従来例ならびに本実施形態の各フィルタの位相平衡度を測定した結果を示すものである。この図から明らかなように、本実施形態のフィルタでは通過帯域(1930〜1990MHz)内の位相平衡度の最大値が2.9°、最小値が0.4°、変動量が2.5°となっており、この実施形態によっても前記実施形態と同様に、従来例と比べて通過帯域内における位相平衡度を改善することが出来る。
【0045】
〔実施形態4〕
本発明の第四の実施形態に係る縦結合多重モード共振子型SAWフィルタは、前記実施形態(図1)と同様に、6個のIDTと中央IDTとを備えるものであるが、中央IDT27の左側電極部27aと右側電極部27bとで電極指ピッチを異ならせた。さらに、前記第一から第三実施形態では、IDT21とIDT26の電極対数の合計と、IDT23、IDT24およびIDT27の電極対数の合計とを一致(対数合計:35対)させているが、本実施形態では後者(IDT23、IDT24およびIDT27の合計対数)の方が大きくなるようにしている。具体的には、以下のとおりである。
【0046】
・ IDTの電極対数:(IDT21,IDT22,IDT23,左側電極部27a,右側電極部27b,IDT24,IDT25,IDT26)=(17.5対,41.0対,17.5対,2対2対,17.5対,41.0対,17.5対)
・ 電極周期(電極指ピッチの2倍):(IDT21,IDT22,IDT23,左側電極部27a,右側電極部27b,IDT24,IDT25,IDT26)=(2.012μm,2.036μm,2.012μm,2.042μm2.032μm,2.012μm,2.036μm,2.012μm)
・ 反射器の電極本数: 55本
・ 反射器の電極周期(電極指ピッチの2倍): 2.013μm
・ IDT‐反射器間の距離: 0.5×(2.012+2.013)/2 μm
・ IDT23‐左側電極部27a間の距離: 0.5×(2.012+2.042)/2 μm
・ 右側電極部27b‐IDT24間の距離: 0.5×(2.032+2.012)/2 μm
・ 電極指デューティーファクタ:0.60
【0047】
図7は第一従来例、第二従来例ならびに本実施形態の各フィルタの位相平衡度を測定した結果を示し、図8は減衰特性を示すものである。これらの図から明らかなように本実施形態のフィルタでは通過帯域(1930〜1990MHz)内の位相平衡度の最大値が2.7°、最小値が−0.2°、変動量が2.9°となっており、この実施形態によっても通過帯域での特性に影響を与えることなく、位相平衡度を改善することが出来る。
【0048】
〔実施形態5〕
本発明の第五の実施形態に係る縦結合多重モード共振子型SAWフィルタは、前記実施形態(図1)と同様に、6個のIDTと中央IDTとを備えるものであるが、中央IDT27の右側電極部27bと、これに隣接するIDT24との距離、ならびに、中央IDT27の両電極部27a,27b間の距離を異ならせた。また前記第四実施形態と同様に、各IDT群11,12の両端のIDTの電極対数を等しくすると共に、IDT21とIDT26の電極対数の合計より、IDT23、IDT24およびIDT27の電極対数の合計の方が大きくなるようにした。具体的には、以下のとおりである。
【0049】
・ IDTの電極対数:(IDT21,IDT22,IDT23,左側電極部27a,右側電極部27b,IDT24,IDT25,IDT26)=(17.5対,41.0対,17.5対,2対2対,17.5対,41.0対,17.5対)
・ IDTの電極周期(電極ピッチの2倍):(IDT21,IDT22,IDT23,左側電極部27a,右側電極部27b,IDT24,IDT25,IDT26)=(2.012μm,2.036μm,2.012μm,2.012μm2.012μm,2.012μm,2.036μm,2.012μm)
・ 反射器の電極本数: 55本
・ 反射器の電極周期(電極ピッチの2倍): 2.013μm
・ IDT‐反射器間の距離: 0.5×(2.012+2.013)/2 μm
・ IDT23‐左側電極部27a間の距離: 0.5×(2.012+2.012)/2 μm
・ 右側電極部27b‐IDT24間の距離: 0.488×(2.012+2.012)/2 μm
・ 左側電極部27a‐右側電極部27b間の距離: 0.55×(2.012+2.012)/2 μm
・ 電極指デューティーファクタ:0.60
【0050】
図9は第一従来例、第二従来例ならびに本実施形態の各フィルタの位相平衡度を測定した結果を示し、図10は減衰特性を示すものである。これらの図から明らかなように本実施形態のフィルタでは通過帯域(1930〜1990MHz)内の位相平衡度の最大値が2.8°、最小値が0.4°、変動量が2.4°となっており、この実施形態によっても通過帯域での特性に影響を与えることなく、位相平衡度を改善することが出来る。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0052】
例えば、前記実施形態では中央IDTの左右各電極部の他方の櫛形電極を、浮き電極としたが、接地しても(接地電位に接続しても)良い。また、IDTの数は、中央IDTを除いて計6個としたが、他の数、例えば7個以上とすることも可能である。また、フィルタの通過帯域は実施形態において一例を示しただけであって、これ以外の様々な帯域周波数を有するフィルタを本発明に基づいて構成することが可能である。さらに前記実施形態では、入力側を不平衡端子、出力側を平衡端子としたが、逆に、入力側を平衡端子、出力側を不平衡端子とすることも出来るし、入出力双方の端子を平衡端子とすることも可能である。また、図11に示すように中央IDT27の左側電極部27aと右側電極部27bとの間に反射器27rを備えても良い。この場合、当該反射器27rは、左右のIDT電極部27a,27bの音響結合を妨げない程度の電極本数とすることが望ましい。
【0053】
本発明ないし前記実施形態に係る縦結合共振子多重モード型SAWフィルタでは、1つ以上のSAW共振子をさらに接続しても良い。例えば、図12に示すように前記実施形態(図1)のフィルタにおいて、第一IDT群11内のIDT22と第二IDT群12内のIDT25との接続点3と、不平衡入力端子1との間にSAW共振子101を挿入(直列に接続)することが出来る。このSAW共振子101は、IDT103の両側に反射器102を備えたものである。また、図13に示すように第一IDT群11内のIDT22と不平衡入力端子1との間、ならびに、第二IDT群12内のIDT25と不平衡入力端子1との間のそれぞれにSAW共振子110,111を挿入しても良い。
【0054】
さらに図14に示すように、第一IDT群内の左右両側のIDT21,23および中央IDTの左側電極部27aの接続点4aと、平衡出力端子の一方の端子2aとの間にSAW共振子201を挿入すると共に、第二IDT群内の左右両側のIDT24,26および中央IDTの右側電極部27bの接続点4bと、平衡出力端子の他方の端子2bとの間にSAW共振子301を挿入しても良い。
【0055】
また本発明は弾性表面波フィルタだけでなく、図15に示すように圧電基板(例えばLiTaO3、LiNbO3等からなる基板)51と非圧電材(例えばSiO2、Si等からなる膜または基板)52との間にIDT53を備えた弾性境界波フィルタに対しても同様に適用することが可能である。さらに、前記図20のようなデバイス構造に対しても本発明は適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る縦結合多重モード共振子型SAWフィルタを示す模式図である。
【図2】前記第一実施形態に係るSAWフィルタについて位相平衡度の測定結果を従来のフィルタと比較して示す線図である。
【図3】前記第一実施形態に係るSAWフィルタの減衰特性を測定した結果を従来のフィルタと比較して示す線図である。
【図4】前記第一実施形態に係るSAWフィルタの変形例を示す模式図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係るSAWフィルタについて位相平衡度の測定結果を従来のフィルタと比較して示す線図である。
【図6】本発明の第三の実施形態に係るSAWフィルタについて位相平衡度の測定結果を従来のフィルタと比較して示す線図である。
【図7】本発明の第四の実施形態に係るSAWフィルタについて位相平衡度の測定結果を従来のフィルタと比較して示す線図である。
【図8】前記第四実施形態に係るSAWフィルタの減衰特性を測定した結果を従来のフィルタと比較して示す線図である。
【図9】本発明の第五の実施形態に係るSAWフィルタについて位相平衡度の測定結果を従来のフィルタと比較して示す線図である。
【図10】前記第五実施形態に係るSAWフィルタの減衰特性を測定した結果を従来のフィルタと比較して示す線図である。
【図11】本発明に係る縦結合多重モード共振子型SAWフィルタの別の構成例を示す模式図である。
【図12】本発明に係る縦結合多重モード共振子型SAWフィルタのさらに別の構成例を示す模式図である。
【図13】本発明に係る縦結合多重モード共振子型SAWフィルタのさらに別の構成例を示す模式図である。
【図14】本発明に係る縦結合多重モード共振子型SAWフィルタのさらに別の構成例を示す模式図である。
【図15】本発明を適用可能な弾性境界波フィルタの断面構造を模式的に示す図である。
【図16】IDT(a)および反射器(b)のピッチを説明する図である。
【図17】従来の縦結合多重モード共振子型SAWフィルタの一例(第一従来例)を示す模式図である。
【図18】従来の縦結合多重モード共振子型SAWフィルタの別の一例(第二従来例)を示す模式図である。
【図19】従来のSAWフィルタの断面構造を例示する模式図である。
【図20】SAWフィルタの断面構造の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0057】
1…入力端子
2…出力端子
10,27r,102…反射器
11…第一IDT群
12…第二IDT群
21,22,23,24,25,26,51,52,53,54,55,56,103…IDT
27…中央IDT
27a,27b…電極部
27c,27d,27e…櫛形電極
51…圧電基板
52…非圧電材(非圧電膜または非圧電基板)
53…電極(IDT電極指または反射器電極)
101,201,301…弾性表面波共振子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板上において弾性表面波の伝搬方向に配列させた複数の交差指状電極と、
これら交差指状電極の両側に配した1対の反射器と、
平衡端子または不平衡端子である第一信号端子と、
平衡端子である第二信号端子と、
を有する縦結合多重モード共振子型弾性表面波フィルタであって、
前記複数の交差指状電極が、
弾性表面波の伝搬方向に順に配列させた複数の交差指状電極からなる第一交差指状電極群と、
弾性表面波の伝搬方向に順に配列させた複数の交差指状電極からなる第二交差指状電極群と、
これら第一交差指状電極群と第二交差指状電極群との間に配されて両交差指状電極群を音響結合させる中央交差指状電極と、
を含み、
前記第一交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極と、前記第二交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極とを前記第一信号端子に接続すると共に、
前記第一交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極を前記平衡端子である第二信号端子の一方の端子に接続し、
前記第二交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極を前記第二信号端子の他方の端子に接続し、かつ
前記中央交差指状電極を、弾性表面波の伝搬方向に2つの交差指状電極部が配列されるように略対称に2分割して、これら分割した交差指状電極部のうちの一方の交差指状電極部を、前記第二信号端子の一方の端子に接続し、他方の交差指状電極部を、前記第二信号端子の他方の端子に接続した
ことを特徴とする縦結合多重モード共振子型弾性表面波フィルタ。
【請求項2】
圧電基板と、
当該圧電基板に接するように配した非圧電材と、
前記圧電基板と非圧電材の境界面に弾性境界波の伝搬方向に配列させた複数の交差指状電極と、
これら交差指状電極の両側に配した1対の反射器と、
平衡端子または不平衡端子である第一信号端子と、
平衡端子である第二信号端子と、
を有する縦結合多重モード共振子型弾性境界波フィルタであって、
前記複数の交差指状電極が、
弾性境界波の伝搬方向に順に配列させた複数の交差指状電極からなる第一交差指状電極群と、
弾性境界波の伝搬方向に順に配列させた複数の交差指状電極からなる第二交差指状電極群と、
これら第一交差指状電極群と第二交差指状電極群との間に配されて両交差指状電極群を音響結合させる中央交差指状電極と、
を含み、
前記第一交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極と、前記第二交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極とを前記第一信号端子に接続すると共に、
前記第一交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極を前記平衡端子である第二信号端子の一方の端子に接続し、
前記第二交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極を前記第二信号端子の他方の端子に接続し、かつ
前記中央交差指状電極を、弾性境界波の伝搬方向に2つの交差指状電極部が配列されるように略対称に2分割して、これら分割した交差指状電極部のうちの一方の交差指状電極部を、前記第二信号端子の一方の端子に接続し、他方の交差指状電極部を、前記第二信号端子の他方の端子に接続した
ことを特徴とする縦結合多重モード共振子型弾性境界波フィルタ。
【請求項3】
前記中央交差指状電極に含まれる2つの交差指状電極部は共に、それらを構成する一対の櫛形電極のうちの一方の櫛形電極を前記第二信号端子に接続し、他方の櫛形電極を浮き電極とした
請求項1に記載の縦結合多重モード共振子型弾性表面波フィルタまたは請求項2に記載の縦結合多重モード共振子型弾性境界波フィルタ。
【請求項4】
前記中央交差指状電極に含まれる2つの交差指状電極部は、互いに、電極対数が同一でかつ電極指ピッチが異なる
請求項1から3のいずれか一項に記載の縦結合多重モード共振子型弾性表面波フィルタまたは縦結合多重モード共振子型弾性境界波フィルタ。
【請求項5】
前記中央交差指状電極に含まれる2つの交差指状電極部は、互いに電極対数が異なる
請求項1から3のいずれか一項に記載の縦結合多重モード共振子型弾性表面波フィルタまたは縦結合多重モード共振子型弾性境界波フィルタ。
【請求項6】
前記中央交差指状電極に含まれる2つの交差指状電極部は、電極対数が少ない方の交差指状電極部の電極指ピッチと比べて電極対数が多い方の交差指状電極部の電極指ピッチが小さい
請求項5に記載の縦結合多重モード共振子型弾性表面波フィルタまたは縦結合多重モード共振子型弾性境界波フィルタ。
【請求項7】
前記中央交差指状電極とこの両側に隣り合って配される2つの交差指状電極との合計の電極対数が、前記反射器の各々に隣り合って配される2つの交差指状電極の合計の電極対数より多い
請求項1から6のいずれか一項に記載の縦結合多重モード共振子型弾性表面波フィルタまたは縦結合多重モード共振子型弾性境界波フィルタ。
【請求項8】
前記第一交差指状電極群と前記第二交差指状電極群とは共に、2以上の交差指状電極をそれぞれ備える
請求項1から7のいずれか一項に記載の縦結合多重モード共振子型弾性表面波フィルタまたは縦結合多重モード共振子型弾性境界波フィルタ。
【請求項9】
前記中央交差指状電極の2つの交差指状電極部の間に反射器を備えた
請求項1から8のいずれか一項に記載の縦結合多重モード共振子型弾性表面波フィルタまたは縦結合多重モード共振子型弾性境界波フィルタ。
【請求項10】
前記第一信号端子は、不平衡端子であり、
前記第一交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極と前記第二交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極との接続点と、前記第一信号端子との間に、弾性表面波共振子または弾性境界波共振子を直列にさらに接続した
請求項1から9のいずれか一項に記載の縦結合共振子多重モード型弾性表面波フィルタまたは縦結合共振子多重モード型弾性境界波フィルタ。
【請求項11】
前記第一信号端子は、不平衡端子であり、
前記第一交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極と前記第一信号端子との間、ならびに、前記第二交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極と前記第一信号端子との間にそれぞれ弾性表面波共振子または弾性境界波共振子を直列にさらに接続した
請求項1から10のいずれか一項に記載の縦結合共振子多重モード型弾性表面波フィルタまたは縦結合共振子多重モード型弾性境界波フィルタ。
【請求項12】
前記第一交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極と前記第二交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極と前記中央交差指状電極の2つの交差指状電極部のうちの一方との接続点と、前記第二信号端子の一方の端子との間に、弾性表面波共振子または弾性境界波共振子を直列にさらに接続すると共に、
前記第一交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極と前記第二交差指状電極群のうちの1以上の交差指状電極と前記中央交差指状電極の2つの交差指状電極部のうちの他方との接続点と、前記第二信号端子の他方の端子との間に、弾性表面波共振子または弾性境界波共振子を直列にさらに接続した
請求項1から9のいずれか一項に記載の縦結合共振子多重モード型弾性表面波フィルタまたは縦結合共振子多重モード型弾性境界波フィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2008−283425(P2008−283425A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125255(P2007−125255)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】