説明

縮合へテロ環化合物

【課題】GK活性化剤として有用な化合物を提供する。
【解決手段】発明者等は、縮合へテロ環について鋭意検討した結果、縮合へテロ環のベンゼン環上に-X-Bで示される基及びカルバモイル基を有し、当該カルバモイル基の窒素原子には、特定の置換基で置換されていてもよいピリジル、ピラジニル又はチアゾリル基が結合することを特徴とする化合物が、良好なGK活性化作用を有することを確認し、本発明を完成した。
本発明化合物は、良好なGK活性化作用を有することから、糖尿病、特に2型糖尿病の治療剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、殊に糖尿病治療剤として有用な新規な縮合へテロ環化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
GK(グルコキナーゼ(ATP:D-hexose 6-phosphotransferase, EC2.7.1.1))は膵臓、肝臓に発現する6炭糖をリン酸化する酵素で、近年脳にも存在することが明らかにされている。本酵素はヘキソキナーゼファミリーに属し、別名ヘキソキナーゼIVともよばれる。GKは他のヘキソキナーゼと比較し 1)基質であるグルコースに対する親和性が低く血糖濃度に近いKm値を示す、2)酵素反応生成物のグルコース 6-リン酸による阻害を受けない、3)分子量が約半分の50 kDaである等の特徴を持つ。
ヒト−グルコキナーゼ遺伝子は、単一遺伝子として第7染色体p13に位置し、膵β細胞と肝細胞では30 kb以上離れた組織特異的な異なるプロモーターで制御され、異なる第1エクソンを用いるが、残りのエクソン2-10は共通である。そのため、膵型と肝型のGK蛋白ではN末15残基が異なるのみである。
【0003】
血糖値の上昇に伴い、膵β細胞内のグルコース濃度は糖輸送担体であるGLUT2を介し速やかに平衡に達し、GKが細胞内のグルコース濃度変化を察知し解糖系を活性化する。この結果膵β細胞内のATP/ADP比が上昇しKATPチャンネルが閉鎖し、これを電位依存性のCaチャンネルが察知し細胞内カルシウム濃度が上昇しインスリンの放出が起こる。即ち膵β細胞においてGKはグルコースセンサーとして働きインスリン分泌の制御に重要な役割を果たしている。肝臓でもGKはグルコースセンサーとして働き、血糖値の上昇に反応し、グルコースをグルコース 6-リン酸に変換する。この結果グリコーゲンの産生が上昇すると共に、解糖系が活性化され肝臓での糖新生が抑制される。
GKの遺伝子変異によりグルコースのリン酸化能が低下した患者では高血糖が頻発し、若年性の糖尿病を発症する(MODY2)。一方遺伝子変異によりGK活性のKm値が低値を示す患者では、食後並びに空腹時に低血糖が認められる。即ち、ヒトにおいてもGKはグルコースセンサーとして働き、血中のグルコースレベルを正常に維持する上で重要な役割を演じている。これらの事実から、GKを活性化する薬剤は、膵β細胞内からのグルコース依存的なインスリン分泌を亢進させ食後高血糖を是正すると共に、肝臓からの糖放出を抑制する優れた2型糖尿病の治療薬となると期待される。更に食後の高血糖状態で肝臓への糖取り込みが促進され、余分なインスリン分泌亢進が起こらず、従来スルホニルウレア(SU)剤で問題となる膵疲弊を回避できる可能性もある。
【0004】
脳に存在するGKは膵臓タイプであり、摂食中枢であるVMH(視床下部腹内側部:Ventromedial hypothalamus)の神経に多く発現する。グルコース感受性神経はグルコースに対し興奮性のGE (Glucose Exited)-neuronと、グルコースに対し抑制性のGI (Glucose Inhibited)-neuronに分類される。GKのmRNAや蛋白は、GE-neuronの約70%に、GI-neuronの約40%にその存在が認められる。
これらグルコース感受性神経では、GKが細胞内グルコースの上昇を察知し、解糖系が活性化され、細胞内のATP/ADP比が上昇する。この結果GE-neuronではKATPチャンネルが閉鎖しニューロンの活動電位頻度が高まり、神経伝達物質が放出される。一方、GI-neuronではCl-チャンネルが関与すると考えられている。VMHにおいてGK mRNAの発現を上昇させたラットでは、グルコース欠乏状態に対する補償作用が低下する。
グルコース感受性神経には摂食行動に関与するレプチンやインスリンに対する受容体も存在する。高グルコース条件下のGE-neuronにおいて、レプチンやインスリンは、KATPチャンネルを開口させ活動電位頻度を減少させる。さらにARC(弓状核)において食欲増進に働くNPY (Neuroeptide Y)-neuronはグルコースに対し抑制性であり、食欲抑制に働くPOMC (Proopiomelanocortin)-neuronはグルコースに対し興奮性である(Diabetes 53: 2521-2528 (2004))。これらの事実から、中枢のGKを活性化することで摂食行動が抑制され、肥満やメタボリックシンドロームの治療に有効であることが期待される。
【0005】
GK活性化作用を有する化合物は多数報告されているものの、現在までのところ臨床での有効性が確認された化合物の報告は無い。また、種々の副作用(hERGやCYPに対する作用)の軽減や溶解性においても良好なプロファイルを有する新規なGK活性化剤が切望されている。
GK活性化作用を有する下記ベンゾフラン誘導体が報告されている(例えば、特許文献1)。
【化2】

(式中、Aはハロゲン、カルボキシ及びC1-4アルキルから選択される基で置換されていてもよい、ピリジン-2-イル又はチアゾール-2-イルを示し、R3は、それぞれハロゲン、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、モノ又はジアルキルアミノ、へテロ環、炭化水素環-O、へテロ環-O又はカルボシクリリデニルで置換されていてもよい、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、炭化水素環、へテロ環、炭化水素環-O又はへテロ環-Oを示す。その他は当該公報参照。)
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2004/046139号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、GK活性化作用を有する医薬、特に糖尿病治療剤として有用な、新規な化合物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、縮合へテロ環化合物について鋭意検討した結果、縮合へテロ環のベンゼン環上に-X-Bで示される基及びカルバモイル基を有し、当該カルバモイル基の窒素原子には、特定の置換基で置換されていてもよいピリジル、ピラジニル又はチアゾリル基が結合することを特徴とする化合物が、良好なGK活性化作用を有することを確認し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、一般式(I)で示される縮合へテロ環化合物又はその塩に関する。
【化3】

(式中の記号は以下の意味を示す。
A:S、O又はN(R5)、
B:R0、-(置換されていてもよいアリール)又は-低級アルキレン-(置換されていてもよいアリール)
X:O、S、SO又はSO2
D:チアゾール、ピリジン又はピラジン、
R1及びR2:同一又は互いに異なって、下記(i)又は(ii)から選択される基、
(i):-CH(ORA)-RB、-CO-CO-NRCRD、-CO-CO-NRC-ORD、-C(ORE)(ORF)-RB、-C(ORE)(ORF)-R0、-CH(ORE)-CH(ORF)-RC及び/又は-CH(ORE)-CH(ORF)-RB
(ii):-H、-ハロゲン、-CO2H、-CO2R0、-NO2、-CN、-R0、-低級アルケニル、-CO-CO2H、-CO-CO-OR0、-ハロゲノ低級アルキル及び/又は-低級アルキレン-NRCRD
RA:同一又は互いに異なって、-H、-R0、-ハロゲノ低級アルキル又は-低級アルキレン-アリール、
RB:-CO2H、-CO2R0、-CO-NRCRD、-CO-NRC-ORD、-低級アルキレン-NRCRD、-低級アルキレン-ORA、-低級アルキレン-CO2R0、-低級アルキレン-CO-NRCRD又は-低級アルキレン-CO-NRC-ORD
RC及びRD:同一又は互いに異なって、-H、-R0、-低級アルキレン-N(RA)2、-低級アルキレン-ORA、-低級アルキレン-CO2H、-低級アルキレン-CO2R0又は-低級アルキレン-CO-N(RA)2
RE及びRF:同一又は互いに異なって、RAに記載の基、あるいは、RE及びRFが一体となって、低級アルキレン、
R0:同一又は互いに異なって、低級アルキル、
R3及びR4:同一又は互いに異なって、-H、-ハロゲン、-R0、-ハロゲノ低級アルキル又は-低級アルキレン-OH、
R5:-H、-R0、-ハロゲノ低級アルキル、-(置換されていてもよいアリール)又は-低級アルキレン-(置換されていてもよいアリール)。
但し、AがOのとき、Bは、少なくとも1個の-SO2R0で置換されたアリールを示す。以下同様。)
【0009】
更に本願は、一般式(I)で示される縮合へテロ環化合物又はその塩を有効成分とする医薬、殊にGK活性化剤にも関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明化合物は、GK活性化作用を有することから、糖尿病、特に2型糖尿病の治療並びに予防薬として有用である。また糖尿病の合併症である腎症、網膜症、神経障害、末梢循環障害、脳血管障害、虚血性心疾患、動脈硬化症の治療並びに予防薬として有用である。更に過食を抑制することにより、肥満、メタボリックシンドロームの治療並びに予防薬としても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書中、「アルキル」、「アルキレン」及び「アルケニル」とは、直鎖状又は分枝状の飽和炭化水素鎖を意味する。「低級アルキル」とは、炭素数1〜6個(以下、C1-6)のアルキル基であり、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、ヘキシル等である。「低級アルキレン」は、上記「低級アルキル」の任意の水素原子1個を除去してなる二価基を意味し、好ましくはC1-4のアルキレンであり、より好ましくはメチレン、エチレン、メチルメチレン及びプロピレンである。「低級アルケニル」とは、一個以上の二重結合を有するC2-6のアルケニルであり、好ましくはC2-4のアルケニルであり、より好ましくはビニル、1-プロペニル及びアリルである。
「ハロゲン」とは、F、Cl、Br及びIである。「ハロゲノ低級アルキル」とは、1個以上のハロゲンで置換されたC1-6アルキルを意味し、好ましくは1個以上のFで置換されたC1-6アルキルであり、より好ましくは、1〜3個のFで置換されたC1-6アルキルであり、より更に好ましくは、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル及びトリフルオロエチルである。
【0012】
「シクロアルキル」は、C3-10のシクロアルキルであり、アダマンチル等の架橋環を形成していてもよい。好ましくはC3-7のシクロアルキルであり、より好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルである。「シクロアルケニル」は、1又は2個の二重結合を有するC3-7の環基である。「アリール」は、C6-14の芳香族炭化水素基を意味し、「シクロアルケニル」と縮環したフェニル基、例えばインデニル、テトラヒドロナフチル、フルオレニル基を含む。好ましくはフェニル及びナフチルであり、より好ましくはフェニルである。
「炭化水素環」とは、前記「シクロアルキル」、「シクロアルケニル」及び「アリール」を包含する。
【0013】
「ヘテロ環基」とは、O、S及びNから選択されるヘテロ原子を1〜4個含有する3〜7員の単環又は二環式ヘテロ環基であり、飽和環、芳香環(ヘテロアリール)、及びその部分的に水素化された環基を包含する。例えば、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ピロリル、ピロリジニル、チエニル、フリル、ジオキサニル、ジオキソラニル、トリアジニル、トリアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、キノリル、イソキノリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ピペリジル、ピペラジニル、アゼパニル、ジアゼパニル、テトラヒドロフラニル、モルホリニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル、トリチアニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、インダゾリル、テトラヒドロベンゾイミダゾリル、クロマニル、クロモニル(4-オキソ-4H-1-ベンゾピラニル)、ベンゾイミダゾロニル(2,3-ジヒドロ-2-オキソベンゾイミダゾリル)が挙げられる。好ましくは、5乃至6員単環式ヘテロアリールであり、更に好ましくは、フリル、チエニル、イミダゾリル、チアゾリル、又はピリジルである。
【0014】
「置換されていてもよい」とは、「無置換」あるいは「同一又は異なる置換基を1〜5個有していること」を示す。なお、複数個の置換基を有する場合、それらの置換基は同一でも互いに異なっていてもよい。
「置換されていてもよいアリール」における置換基は、好ましくは、-R0、ハロゲノ低級アルキル、ハロゲン、-OH、-低級アルキレン-OH、-N3、-OR0、-低級アルキレン-OR0、-O-炭化水素環、-O-へテロ環、-CN、-NO2、-CHO、-CO2H、-CO2R0、-低級アルキレン-CO2H、-低級アルキレン-CO2R0、-CO-R0、-CO-炭化水素環、-CO-へテロ環、-CONH2、-CONH-R0、-CON(R0)2、-CONH-炭化水素環、-CONH-へテロ環、-NHCO-R0、-N(R0)-CO-R0、-NHCO-炭化水素環、-NHCO-へテロ環、-SH、-SR0、-S-炭化水素環、-S-へテロ環、-SO-R0、-SO-炭化水素環、-SO-へテロ環、-SO2R0、-SO2-炭化水素環、-SO2-へテロ環、-SO3H、-SO2NH2、-SO2NH-R0、-SO2N(R0)2、-SO2NH-炭化水素環、-SO2NH-へテロ環、-NHSO2-R0、-N(R0)-SO2-R0、-NHSO2-炭化水素環、-NHSO2-へテロ環であり、ここに、上記「炭化水素環」及び「へテロ環」は、1〜5個のR0、ハロゲノ低級アルキル、ハロゲン、-OH、-OR0から選択される基で置換されていてもよい。
【0015】
本発明の好ましい態様を以下に示す。
(1)Aとしては、好ましくはS又はN(R5)である。ここにR5として好ましくはH、低級アルキル又は置換されたフェニル、より好ましくはC1-4アルキル又は4位がC1-2アルキル-SO2-で置換されたフェニルである。
(2)Bとしては、好ましくは1又は2個の置換基で置換されていてもよいフェニルであり、より好ましくは少なくとも1個は4位に置換基を有するフェニルであり、更に好ましくは4位に1個の置換基を有するフェニルである。ここに、B上の置換基としては、好ましくはハロゲノ低級アルキル、ハロゲン、-OR0、-CN、-NO2、-CHO、-CO2H、-CO2R0、-CO-R0、-CO-炭化水素環、-CO-へテロ環、-SO2R0、-SO2-炭化水素環又は-SO2-へテロ環であり、より好ましくはハロゲノ低級アルキル、ハロゲン、-NO2、-CO-R0、-CO-炭化水素環、-CO-へテロ環又は-SO2R0であり、更に好ましくは-SO2-メチル又は-SO2-エチルであり、より更に好ましくは-SO2-メチルである。
(3)Dとしては、アミド基の窒素原子とそれぞれ2位で結合する、チアゾール(即ち、チアゾール-2-イル)、ピリジン(即ち、2-ピリジル)又はピラジン(即ち、ピラジン-2-イル)である。
(4)R1及びR2としては、好ましくはともにHである;R1及びR2の別の好ましい態様としては、好ましくは一方がHであり、他方が(i)及び(ii)から選択されるH以外の基であり、より好ましくはR1がHであり、R2が(i)及び(ii)から選択されるH以外の基である。(i)及び(ii)から選択される基としては、好ましくは-CO2H、-CO2R0、-CH(ORA)-RB、-CO-CO-NRCRD、-C(ORE)(ORF)-RB、-C(ORE)(ORF)-R0又は-CH(ORE)-CH(ORF)-RCであり、より好ましくは-CH(OH)-CH2OH、-CH(OR0)-CH2OH、-CH(OR0)-CH2OR0、-CH(OH)-CO2H、-CH(OR0)-CO2H、-CH(OH)-CO2R0、-CH(OR0)-CO2R0又は-CO-CO-NRCRDであり、更に好ましくは-CH(OH)-CH2OH、-CH(OR0)-CH2OH、-CH(OR0)-CH2OR0、-CH(OH)-CO2R0、-CH(OR0)-CO2R0、-CO-CO-NH2、-CO-CO-NH-R0、-CO-CO-N(R0)2、-CO-CO-NH-低級アルキレン-O-R0、又は-CO-CO-NH-低級アルキレン-OHである。
別の好ましい態様としては、上記(1)〜(4)に記載の各好ましい基の組合せからなる化合物が好ましい。
【0016】
本発明の化合物は、置換基の種類によっては他の互変異性体や幾何異性体が存在する場合もある。本明細書中、それら異性体の一形態のみで記載することがあるが、本発明にはこれらの異性体も包含し、異性体の分離したもの、あるいは混合物も包含する。
また、化合物(I)は不斉炭素原子や軸不斉を有する場合があり、これに基づく(R)体、(S)体などの光学異性体が存在しうる。本発明はこれらの光学異性体の混合物や単離されたものを全て包含する。
更に、本発明には、化合物(I)の薬理学的に許容されるプロドラッグも含まれる。薬理学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で本発明のアミノ基、OH、CO2H等に変換できる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、例えば、Prog. Med., 5, 2157-2161 (1985)や「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
【0017】
更に、本発明化合物は、酸付加塩又は置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合もあり、かかる塩が製薬学的に許容され得る塩である限りにおいて本発明に包含される。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、又はグルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リシン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
本発明は、本発明化合物及びその製薬学的に許容され得る塩の各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形を有する物質も包含する。
【0018】
(製造法)
本発明化合物及びその製薬学的に許容され得る塩は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基(容易に当該官能基に転化可能な基)に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような官能基としては例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基等であり、それらの保護基としては例えばグリーン(Greene)及びウッツ(Wuts)著、「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、1999年)」に記載の保護基等を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行った後、必要に応じて保護基を除去することにより、所望の化合物を得ることができる。
また、化合物(I)のプロドラッグは上記保護基と同様、原料乃至中間体の段階で特定の基を導入、あるいは得られた化合物(I)を用い反応を行うことで製造できる。反応は通常のエステル化、アミド化、脱水等、当業者により公知の方法を適用することにより行うことができる。
以下、本発明化合物の代表的な製造法を説明する。なお、本発明の製造法は以下に示した例には限定されない。
【0019】
【化4】

(式中、Lは脱離基又はOHを示す。以下同様。)
本製法は、カルボン酸誘導体(II)とアミノ化合物(III)とをアミド化反応に付して、式(I)で示される本発明化合物を得る方法である。Lの脱離基としては、メタンスルホニルオキシもしくはp-トルエンスルホニルオキシ等の有機スルホン酸基、ハロゲン等が挙げられる。或いは、(II)として、種々の酸無水物が使用できる。
Lが水酸基である場合はN,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3'-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)、1,1'-カルボニルジイミダゾール(CDI)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、オキシ塩化リン/ピリジン、トリフェニルホスフィン/N-ブロモスクシンイミド等の縮合剤の存在下反応を行うことができ、場合によっては、更に添加剤(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(HONSu)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)等)の存在下行うことができる。Lが脱離基である場合は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩基、或いは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基の存在下反応させるのが好ましい場合がある。
溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジグリム、1,2-ジメトキシエタン、2-メトキシジエチルエーテル等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、アセトニトリル、酢酸エチル等の反応に不活性な溶媒を単独で、又は2種以上混合して用いることができる。また、化合物(II)及び化合物(III)は、等モル乃至過剰量を、反応や化合物に応じて適宜使用する。
【0020】
式(I)における基R1及びR2、或いはB上の種々の置換基は、本発明化合物(I)を原料として、当業者にとって自明である反応、又はこれらの変法を用いることにより、他の官能基へと容易に変換することができる。例えば、アルキル化、アシル化、酸化、還元、加水分解、アミド化等、当業者が通常採用し得る工程を任意に組み合わせて行うことができる。具体的には、水酸基を有する化合物の製造においては、ケトンやエステルの還元反応やオレフィンの酸化反応(四酸化オスミウム等)等を、化合物の構造を考慮して適宜選択できる。
(原料合成)
【0021】
【化5】

(式中、X1はO又はSを、P1は低級アルキルなどのカルボン酸の保護基を、L'はハロゲン等の脱離基をそれぞれ示す。以下同様。)
原料化合物(IIa)は、対応するアルコール体又はチオール体である化合物(V)のエーテル化/チオエーテル化反応後、カルボン酸の脱保護を行うことにより製造できる。エーテル化/チオエーテル化反応は、通常のアルキル化反応の条件が適用でき、或いは脱離基を有するアリール(好ましくは、4-置換-フルオロベンゼン等)を用いることもできる。反応は塩基の存在下に行うのが好ましい場合がある。
また、原料化合物(IV)を酸化反応に付すことにより、X1がSO又はSO2の化合物を得ることができる。
更に、AがN(R5)であり、R5がH以外の原料化合物(Va)は、以下の方法で製造できる。
【0022】
【化6】

(式中、P2はベンジル基など水酸基の保護基を示す。以下同様。)
化合物(VIII)のアルキル化反応は、種々のアルキル化の条件が適用できる。種々のアルキル化の条件のうち、対応するアルコール存在下に(トリブチルホスホラニリデン)アセトニトリルを反応剤としてもちいるアルキル化剤が効果的であることがある。
また、X1がOである原料化合物(Vb)は、以下の方法で製造できる。
【0023】
【化7】

(式中、P3はアセチル基など水酸基の保護基を示す。以下同様。)
本合成はJ.Chem.Soc.(C), 3171-3173 (1971)に記載の方法に準拠して行うことができる。すなわち、ベンズアルデヒド誘導体(XII)に対し、コハク酸エステルを作用させることにより(XI)とし、次いで、酸無水物存在下の環化反応に付し環化体(X)を得る。その後、脱保護することにより、原料化合物(Vb)を得ることができる。
【0024】
本発明化合物は、遊離化合物、その製薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、あるいは結晶多形の物質として単離され、精製される。本発明化合物(I)の製薬学的に許容される塩は、常法の造塩反応に付すことにより製造することもできる。
単離、精製は、抽出、分別結晶化、各種分画クロマトグラフィー等通常の化学操作を適用して行われる。
各種の異性体は、適当な原料化合物を選択することにより、あるいは異性体間の物理化学的性質の差を利用して分離することができる。例えば、光学異性体は一般的な光学分割法(例えば、光学活性な塩基又は酸とのジアステレオマー塩に導く分別結晶化やキラルカラム等を用いたクロマトグラフィー等)により、立体化学的に純粋な異性体に導くことができる。また、適当な光学活性な原料化合物より製造することもできる。
【0025】
本発明化合物の薬理活性は以下の試験により確認した。
試験例 GK活性化の測定
被検薬剤のGK活性化測定は、Science 301: 370-373, 2003に記載された方法に準拠し、一部これを改変して実施した。GK活性は、glucoseを基質としGKにより産生されるglucose-6-phosphateをglucose-6-phosphate dehydrogenaseにより脱水素する際に、NADP (nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)より転換されるNADPH量に基づく吸光度の変化として測定した。
本アッセイで使用するrecombinant human liver GK (GST-hGK2)は、GST (Glutathione S transferase)-fusion proteinとしてE. coliに発現させ、Glutathione Sepharoseカラムで精製したものを使用した。
Glucokinase isoform 2の配列は、AK122876.1(アクセッションナンバー)に基づき、以下の手順でORF (open reading frame)のクローニングを行った。pME18S-FL3-Glucokinase isoform 2を鋳型として、5'-TAGAATTCATGGCGATGGATGTCACAAG-3'(配列番号1)を5'プライマーに、5'-ATCTCGAGTCACTGGCCCAGCATACAG-3'(配列番号2)を3'プライマーに使ってPCR (polimerase chain reaction)を行い、PCR産物をpGEM-T easy vectorにTAクローニングした。このクローンの配列はシークエンスして確認した。その後、EcoRIとXhoIで切断した断片を、同様に切断したベクターpGEX-5X-1にライゲーションしてpGEX-human Glucokinase 2を作製した。
酵素反応は96穴の平底プレートを用い、27℃で測定を行った。酵素混合液として、25 mM HEPES pH7.4;25 mM KCl;2 mM MgCl2;1 mM ATP;0.1% BSA;1 mM DTT;0.8 mM NADP;2.5 U/ml glucose-6-phosphate dehydrogenase;GST-hGK2(いずれも終末濃度。但し、GST-hGK2量はDMSOコントロールの10分間の吸光度の増加(ΔOD)が0.12程度となるよう調製)を調製した。上記プレートに、酵素混合液89μlを分取し、DMSOに溶解させた被検薬剤もしくはDMSOコントロールを1μl加えた。ついで基質溶液としてglucose (終末濃度5 mM)を10μl加え27℃で反応を開始させた。
反応の開始後、340 nMの波長で約30秒ごとに15分間吸光度を測定し、最初の10分間の吸光度の増加(ΔOD)から化合物のGK活性化を計算した。被検薬剤のGK活性化の指標は、GK活性化(%)として下記の式から算出した。
GK活性化(%)=[(ΔODTest)−(ΔODCont)]/(ΔODCont)X100
ΔODTest:被検薬剤10μMにおけるΔOD
ΔODCont:DMSOコントロールΔOD
上記測定の結果、実施例7の化合物は158%という活性を示した。
以上の試験結果より、本発明化合物は、良好なGK活性化作用を有することが確認された。また、種々の副作用(hERGやCYPに対する作用)及び/又は溶解性が改善された化合物も見出されていることから、本発明化合物は糖尿病等の予防・治療薬として有用であることは明らかである。
【0026】
本発明化合物(I)又はその塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する製剤は、当分野において通常用いられている薬剤用担体、賦形剤等を用いて通常使用されている方法によって調製することができる。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、関節内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、点眼剤、眼軟膏、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種又は2種以上の有効成分を、少なくとも1種の不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、及び/又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等のような崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水又はエタノールを含む。当該液体組成物は不活性な希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤は、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤又は乳濁剤を含有する。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水又は生理食塩液が含まれる。非水溶性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はオリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、又はポリソルベート80(局方名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、又は溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解又は懸濁して使用することもできる。
吸入剤や経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体又は半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば公知の賦形剤や、更に、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、安定剤や増粘剤等が適宜添加されていてもよい。投与は、適当な吸入又は吹送のためのデバイスを使用することができる。例えば、計量投与吸入デバイス等の公知のデバイスや噴霧器を使用して、化合物を単独で又は処方された混合物の粉末として、もしくは医薬的に許容し得る担体と組み合わせて溶液又は懸濁液として投与することができる。乾燥粉末吸入器等は、単回又は多数回の投与用のものであってもよく、乾燥粉末又は粉末含有カプセルを利用することができる。あるいは、適当な駆出剤、例えば、クロロフルオロアルカン、ヒドロフルオロアルカン又は二酸化炭素等の好適な気体を使用した加圧エアゾールスプレー等の形態であってもよい。
【0027】
通常経口投与の場合、1日の投与量は、体重当たり約0.001〜100mg/kg、好ましくは0.1〜30mg/kg、更に好ましくは0.1〜10mg/kgが適当であり、これを1回であるいは2乃至4回に分けて投与する。静脈内投与される場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.0001〜10mg/kgが適当で、1日1回乃至複数回に分けて投与する。また、経粘膜剤としては、体重当たり約0.001〜100mg/kgを1日1回乃至複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
【実施例】
【0028】
以下、実施例に基づき本発明化合物(I)の製法を更に詳細に説明する。本発明化合物は下記実施例に記載の化合物に限定されるものではない。また原料化合物の製法を参考例に示す。
参考例1
カリウム t-ブトキシド(1.3 g)をt-ブチルアルコール(5.6 ml)に溶解し、70℃で1時間撹拌した。反応液に5-メチル-2-チオフェンカルボアルデヒド(1.0 g)とコハク酸ジメチル(1.2 ml)のt-ブチルアルコール(1.2 ml)溶液を滴下し、70℃にて1時間撹拌した。氷冷下、酢酸(1.0 ml)を加えpHを約5にし、10分間撹拌した。ジエチルエーテル(40 ml)と水(30 ml)を加え、分液後、有機層に飽和重曹水(40 ml)を加え水層のpHを約8にした。水層をジエチルエーテル(30 ml)で洗浄した後、濃塩酸(6 ml)を加え水層のpHを約3にした。水層を酢酸エチル(40 ml)で抽出後、得られた有機層を飽和食塩水(30 ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、3-(メトキシカルボニル)-4-(5-メチル-2-チエニル)-3-ブテンカルボン酸(1.3 g)を淡黄色固体として得た。
【0029】
参考例2
3-(メトキシカルボニル)-4-(5-メチル-2-チエニル)-3-ブテンカルボン酸(1.2 g)のトルエン(48 ml)溶液に、酢酸ナトリウム(410 mg)および無水酢酸(4.8 ml)を順次加え、70℃にて3時間撹拌した。反応液を室温まで放冷し、飽和重曹水(30 ml)を加え10分間撹拌した後、酢酸エチル(40 ml)で希釈した。得られた有機層を水(30 ml)及び飽和食塩水(30 ml)にて順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、4-(アセチルオキシ)-2-メチル-1-ベンゾチオフェン-6-カルボン酸メチル(1.1 g)を淡黄色固体として得た。
参考例3
4-(アセチルオキシ)-2-メチル-1-ベンゾチオフェン-6-カルボン酸メチル(1.0 g)のメタノール(32 ml)溶液に、28% ナトリウムメトキシド/メタノール溶液(3.3 ml)を加え、75℃にて終夜撹拌した。氷冷下、酢酸エチル(40 ml)を加えて希釈した後、1M塩酸(18 ml)を加え水層のpHを約3にした。分液操作により得られた有機層を水(30 ml)、飽和食塩水(30 ml)にて順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し、4-ヒドロキシ-2-メチル-1-ベンゾチオフェン-6-カルボン酸メチル(823 mg)を淡黄色固体として得た。
【0030】
参考例4
4-ヒドロキシ-1H-インドール-6-カルボン酸メチル(500 mg)及び炭酸カリウム(361 mg)のDMF(10 ml)懸濁液にブロモメチルベンゼン(320μl)を-10℃にて滴下し、30分間撹拌後、室温で更に5時間撹拌した。反応混合物に水(30 ml)と酢酸エチル(30 ml)を加え、分液し、有機層を飽和重曹水(30 ml)、飽和食塩水(30 ml)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製して、4-(ベンジルオキシ)-1H-インドール-6-カルボン酸メチル(543 mg)を黄色固体として得た。
参考例5
4-ヒドロキシ-1-ベンゾチオフェン-6-カルボン酸メチル(150 mg)のDMF(3 ml)溶液に炭酸カリウム(200 mg)及び2-ヨードイソプロパン(100μl)を加え、終夜撹拌した。反応液に水(30 ml)と酢酸エチル(40 ml)を加え、分液操作により得られた有機層を水(30 ml×3)、飽和重曹水(30 ml)及び飽和食塩水(30 ml)にて順次洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸メチル)にて精製し、4-イソプロポキシ-1-ベンゾチオフェン-6-カルボン酸メチル(142 mg)を黄土色固体として得た。
【0031】
参考例6
4-(ベンジルオキシ)-1H-インドール-6-カルボン酸メチル(150 mg)及びメタノール(61 μl)のトルエン(3 ml)溶液に(トリブチルホスホラニリデン)アセトニトリル(193 mg)のトルエン(0.6 ml)溶液を氷冷下にて滴下した。反応液を氷冷下で30分間撹拌した後、50℃で終夜撹拌した。反応溶液を室温まで放冷した後、減圧下溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製して、4-(ベンジルオキシ)-1-メチル-1H-インドール-6-カルボン酸メチル(139 mg)を赤褐色固体として得た。
参考例7
20%水酸化パラジウム/炭素(58 mg)及び4-(ベンジルオキシ)-1-メチル-1H-インドール-6-カルボン酸メチル(130 mg)のメタノール(4 ml)懸濁液を、4気圧の水素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応液をセライトろ過後、減圧下溶媒を留去し、4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-インドール-6-カルボン酸メチル(78 mg)を無色固体として得た。
【0032】
参考例8
4-ヒドロキシ-1-メチル-1H-インドール-6-カルボン酸メチル(80 mg)のDMA (1.6 ml)溶液に、炭酸カリウム(81 mg)及び1-フルオロ-4-(メチルスルホニル)ベンゼン(102 mg)を順次加え、150℃で終夜撹拌した。反応混合物を室温まで放冷し、水(30 mL)及び酢酸エチル(30 ml)を加えた。分液操作により得られた有機層を飽和重曹水(30 ml)及び飽和食塩水(30 ml)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製して、1-メチル-4-[4-(メチルスルホニル)フェノキシ]-1H-インドール-6-カルボン酸メチル(94 mg)を無色固体として得た。
参考例9
1-メチル-4-[4-(メチルスルホニル)フェノキシ]-1H-インドール-6-カルボン酸メチル(90 mg)のメタノール(2 ml)、THF (2 ml)混合溶液に1M 水酸化ナトリウム水溶液(4 ml)を加え、室温で6時間撹拌した。反応溶液に水(20 ml)及びジエチルエーテル(20 ml)を加え、分液操作により得られた水層に1M 塩酸(4.5 ml)を加えpHを約3とした。酢酸エチル(30 ml)を加え、分液操作により得られた有機層を、飽和食塩水(20 ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、1-メチル-4-[4-(メチルスルホニル)フェノキシ]-1H-インドール-6-カルボン酸(83 mg)を無色固体として得た。
上記参考例1と同様にして参考例10の化合物を、参考例2と同様にして参考例11の化合物を、参考例3と同様にして参考例12及び13の化合物を、参考例6と同様にして参考例14及び15の化合物を、参考例7と同様にして参考例16及び17の化合物を、参考例8と同様にして参考例18〜22の化合物を、参考例9と同様にして参考例23〜27の化合物をそれぞれ合成した。
各参考例化合物の構造及び物理化学的データを後記表1〜4に示す。
【0033】
実施例1
1-メチル-4-[4-(メチルスルホニル)フェノキシ]-1H-インドール-6-カルボン酸(75 mg)と1,3-チアゾール-2-アミン(24 mg)のピリジン(2.5 ml)溶液にオキシ塩化リン(20μl)を-10℃にて滴下した。反応液を-10℃で30分間撹拌した後、50℃で終夜撹拌した。反応溶液を室温まで放冷後、クロロホルム(30 ml)で希釈し、水(30 ml)を加え10分間撹拌した。分液操作により得られた有機層を1M 塩酸(30 ml)、飽和重曹水(30 ml)、飽和食塩水(30 ml)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製して、1-メチル-4-[4-(メチルスルホニル)フェノキシ]-N-(1,3-チアゾール-2-イル)-1H-インドール-6-カルボキサミド(44 mg)を無色固体として得た。
実施例2
4-メチルモルホリン-4-オキシド(75 mg)のTHF(5 ml)及び水(3 ml)溶液に、氷冷下で四酸化オスミウム(0.08 M 2-メチル-2-プロパノール溶液)(0.800 ml)及び2-メチル-4-[4-(メチルスルホニル)フェノキシ]-N-(5-ビニルピラジン-2-イル)-1-ベンゾチオフェン-6-カルボキサミド(280 mg)のTHF (7 ml)溶液を順次加えた。氷冷下で1時間攪拌後、室温で15時間攪拌した。反応溶液に酢酸エチル(30 ml)、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液(30 ml)を加え、分液により得られた有機層を飽和食塩水(20 ml)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で精製して、N-[5-(1,2-ジヒドロキシエチル)ピラジン-2-イル]-2-メチル-4-[4-(メチルスルホニル)フェノキシ]-1-ベンゾチオフェン-6-カルボキサミド(244 mg)を薄茶色アモルファスとして得た。
【0034】
実施例1の方法と同様にして後記表に示す実施例3〜10の化合物を、それぞれ対応する原料を使用して製造した。各実施例化合物の構造及び物理化学的データを表5〜7に示す。
また、表8及び9に本発明の別の化合物の構造を示す。これらは、上記の製造法や実施例に記載の方法及び当業者にとって自明である方法、又はこれらの変法を用いることにより、容易に合成することができる。
後記表中以下の略号を用いる。REx:参考例番号、Ex:実施例番号、No:化合物番号、Str:構造式、Dat:物理化学的データ(MS:質量分析におけるm/z値(+:陽イオン、-:陰イオン)、NMR1:DMSO-d6中の1H NMRにおけるδ(ppm)、NMR2:CDCl3中の1H NMRにおけるδ(ppm))、Me:メチル、Et:エチル、iPr:2-プロピル、Ms:メチルスルホニル、Ac:アセチル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル。また、置換基の前の数字は置換位置を示し、例えば4-Ms-Phは4-メチルスルホニルフェニルを示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
【表6】

【0041】
【表7】

【0042】
【表8】

【0043】
【表9】

【配列表フリーテキスト】
【0044】
以下の配列表の数字見出し<223>には、「Artificial Sequence」の説明を記載する。具体的には、配列表の配列番号1及び2の配列で表される塩基配列は、人工的に合成したプライマー配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で示される縮合へテロ環化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【化1】

(式中の記号は以下の意味を示す。
A:S、O又はN(R5)、
B:R0、-(置換されていてもよいアリール)又は-低級アルキレン-(置換されていてもよいアリール)
X:O、S、SO又はSO2
D:チアゾール、ピリジン又はピラジン、
R1及びR2:同一又は互いに異なって、下記(i)又は(ii)から選択される基、
(i):-CH(ORA)-RB、-CO-CO-NRCRD、-CO-CO-NRC-ORD、-C(ORE)(ORF)-RB、-C(ORE)(ORF)-R0、-CH(ORE)-CH(ORF)-RC及び/又は-CH(ORE)-CH(ORF)-RB
(ii):-H、-ハロゲン、-CO2H、-CO2R0、-NO2、-CN、-R0、-低級アルケニル、-CO-CO2H、-CO-CO-OR0、-ハロゲノ低級アルキル及び/又は-低級アルキレン-NRCRD
RA:同一又は互いに異なって、-H、-R0、-ハロゲノ低級アルキル又は-低級アルキレン-アリール、
RB:-CO2H、-CO2R0、-CO-NRCRD、-CO-NRC-ORD、-低級アルキレン-NRCRD、-低級アルキレン-ORA、-低級アルキレン-CO2R0、-低級アルキレン-CO-NRCRD又は-低級アルキレン-CO-NRC-ORD
RC及びRD:同一又は互いに異なって、-H、-R0、-低級アルキレン-N(RA)2、-低級アルキレン-ORA、-低級アルキレン-CO2H、-低級アルキレン-CO2R0又は-低級アルキレン-CO-N(RA)2
RE及びRF:同一又は互いに異なって、RAに記載の基、あるいは、RE及びRFが一体となって、低級アルキレン、
R0:同一又は互いに異なって、低級アルキル、
R3及びR4:同一又は互いに異なって、-H、-ハロゲン、-R0、-ハロゲノ低級アルキル又は-低級アルキレン-OH、
R5:-H、-R0、-ハロゲノ低級アルキル、-(置換されていてもよいアリール)又は-低級アルキレン-(置換されていてもよいアリール)。
但し、AがOのとき、Bは、少なくとも1個の-SO2R0で置換されたアリールを示す。)

【公開番号】特開2009−13065(P2009−13065A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300584(P2005−300584)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】