繊維強化樹脂製チーズの製造方法
【課題】シワの発生がなく、外観良好で、強度を保持させた繊維強化樹脂製チーズが得られる製造方法を提供する。
【解決手段】上記繊維強化樹脂製チーズの製造方法を、(A)先端を正面視略V字状にカットした円筒管を1個または2個用い、(B)それと接合しうる端面を有する円筒管とを突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化するものとする。円筒管(B)には、一部を正面視略V字状に切り欠いたものや、円筒管(A)の正面視略V字状にカットした先端面の片側半分と接合しうる、一部斜めにカットされた端面を有するものや、円筒管(A)のカット面と接合しうる、斜めにカットされた端面を有するものなどがある。
【解決手段】上記繊維強化樹脂製チーズの製造方法を、(A)先端を正面視略V字状にカットした円筒管を1個または2個用い、(B)それと接合しうる端面を有する円筒管とを突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化するものとする。円筒管(B)には、一部を正面視略V字状に切り欠いたものや、円筒管(A)の正面視略V字状にカットした先端面の片側半分と接合しうる、一部斜めにカットされた端面を有するものや、円筒管(A)のカット面と接合しうる、斜めにカットされた端面を有するものなどがある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂製チーズの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維強化樹脂製成形体は、軽量で高強度であるため、多用されてきている。その管状体の成形には、一般的にハンドレイアップ成形法、フィラメントワインディング法やシートワインディング法が用いられている。ハンドレイアップ成形法は、成形型に、人手で樹脂を刷毛やローラで含浸させ、また脱泡しながら所定の厚さまで積層するものであり、また、フィラメントワインディング法は、連続繊維に樹脂を含浸させながら、回転するマンドレル(筒状の金属製が多い)に適宜の巻き付け角で巻き付けて所定の形状に成形するものであり(例えば特許文献1参照)、シートワインディング法は、ロール状に巻き取られた強化繊維の織布を、芯材の周囲にヘリカル状に巻回し、その織布に樹脂を含浸させて硬化させるものである(例えば特許文献2参照)。
【0003】
しかし、これらの成形法は流動液状の樹脂を強化繊維に含浸させながら成形型に巻き付けていくため、樹脂がまだ固化されておらず、直接触れて確認できないこと等から、強化繊維の巻き付けた肉厚の管理が困難であるし、また、硬化剤を混入させていると、時間経過とともに硬化が進行するため、作業を途中で中断することができないこと等から、比較的大型の成形品を製造するには好ましくなく、コストがかかるし、また、製造中にスチレン等が揮散する問題等もある。
【0004】
一方、近年、真空吸引等による減圧下で成形を行う真空注入成形法が種々提案されている。
この真空注入成形法については、例えば特許文献3にその基本的な技術が開示されており、これは、成形型に繊維レイアップ層を配置し、この上に樹脂分配用の樹脂注入管を配設してバッグフィルムで包被するとともに、その周囲をシールして、真空吸引されたバッグフィルム内に樹脂を注入することにより成形品とするものであり、これに類するものとして特許文献4がある。
【0005】
しかし、かかる真空注入成形法を、繊維強化樹脂製管状体、特に繊維強化樹脂製チーズに用いるのは種々問題がある。例えば、樹脂を含浸しないドライの状態で回転円筒型・円筒製品に強化繊維を必要量・必要肉厚として被覆する場合、シート状の強化繊維をそのまま円筒型・円筒製品に巻き付け真空にすると、強化繊維が圧縮され余った部分が軸方向にシワとなって発生し、このシワは成形後の製品の外観を悪化させるだけでなく、強度も低下させる原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平06−26858号公報
【特許文献2】特開2007−136997号公報
【特許文献3】特開平10−504501号公報
【特許文献4】特開昭60−83826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、このような事情の下、樹脂中の溶剤、スチレン等の気化飛散のトラブルがなく、作業環境が改善され、シワの発生がなく、外観良好で、強度を保持させた繊維強化樹脂製チーズを供与しうる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、先端を略V字状にカットした円筒管と、それと接合しうる端面を有する円筒管とを突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化するのが課題解決に資することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、(A)先端を正面視略V字状にカットした円筒管を1個または2個用い、(B)それと接合しうる円筒管とを突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、上記円筒管(B)が、一部を正面視略V字状に切り欠いたものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、一部を正面視略V字状に切り欠いた円筒管と、その略V字状の切り欠きに合致するように先端を正面視略V字状にカットした円筒管とを突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、上記円筒管(B)が、上記円筒管(A)の正面視略V字状にカットした先端面の片側半分と接合しうる、一部斜めにカットされた端面を有するものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第5の発明によれば、先端を正面視略V字状にカットした円筒管と、その先端面の片側半分と接合しうる、一部斜めにカットされた端面を有する円筒管2個との合計3個の部材を相互に略Y字状に突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、上記円筒管(B)が、上記円筒管(A)のカット面と接合しうる、斜めにカットされた端面を有するものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第7の発明によれば、上記円筒管(A)2個と斜めにカットされた端面を有する円筒管との合計3個の部材を、前者部材2個については、その略V字状にカットした先端面の片側半分同士を突き合わせ、それらの先端面の残余の各片側半分を後者部材と突き合わせるようにして、相互に略斜めY字状に突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、上記略V字状の形態は、その尖端部が略直角のものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第9の発明によれば、第4〜7のいずれかの発明において、上記略V字状の形態は、その尖端部が略直角のものであり、かつ斜めにカットされた端面が、略45°の傾斜面であることを特徴とする製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明において、インフュージョン成形が、繊維補強材をバッグフィルムで円筒管上に気密に覆うとともに、バッグフィルム内を真空状態に減圧する減圧ラインおよびバッグフィルム内に樹脂を注入する注入ラインを接続し、バッグフィルム内に減圧下で流動性樹脂を吸引注入し、樹脂を固化或いは硬化するものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【0019】
また、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、巻き付けは、所定の長さに切断された多数の繊維補強材を、それぞれ接合部の周方向に位置をずらせながら、一方の端面のみを接着して、略風車状に積層するものとすることを特徴とする製造方法が提供される。
【0020】
また、本発明の第12の発明によれば、第11の発明において、巻き付けは、繊維補強材を幅方向にもずらすことにより、端面がなだらかになるように積層するものとすることを特徴とする製造方法が提供される。
【0021】
また、本発明の第13の発明によれば、第12の発明において、千鳥状にずらすことを特徴とする製造方法が提供される。
【0022】
また、本発明の第14の発明によれば、第11の発明において、巻き付けは、幅が少しずつ異なる繊維補強材を順次積層し、端面をなだらかにするものとすることを特徴とする製造方法が提供される。
【0023】
また、本発明の第15の発明によれば、第1〜14のいずれかの発明において、繊維補強材を積層するのを、管軸方向に繊維が直交するように行うことを特徴とする製造方法が提供される。
【0024】
また、本発明の第16の発明によれば、第15の発明において、繊維補強材が、直交クロス材であることを特徴とする製造方法が提供される。
【0025】
また、本発明の第17の発明によれば、第1〜16のいずれかの発明において、繊維補強材が、シート状物であることを特徴とする製造方法が提供される。
【0026】
また、本発明の第18の発明によれば、第17の発明において、シート状物が、略正方形状のものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の製造方法によれば、所定の肉厚になっているか直接触れて測定確認でき、樹脂を供給する前であればトラブルが発生した時に作業を中断でき、また、インフュージョン成形でバッグフィルムで覆った中に樹脂を注入するので、従来のオープン成形におけるような樹脂中の溶剤、スチレン等の気化飛散のトラブルがなく、作業環境が改善され、また、繊維補強材を上記のように略風車状に積層することで、インフュージョン円筒管成形特有の繊維補強材のたるみによるシワの発生という問題もなく、強度低下もない高品質の成形品が得られ、また、幅方向をずらして積層することで、両端面がなだらかになり、円筒管と積層部の肉厚変化が少なくなり、応力集中のない成形品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本方法で用いられるV字状切り欠き円筒管(主円筒管)の一例を示す模式図である。
【図2】図1のV字状切り欠き円筒管(主円筒管)とV字状にカットされた円筒管(枝円筒管)との突合せ形態を示す模式図である。
【図3】図2の突合せ形態で接合させた接合部やその外周面に繊維補強材を略風車状に配設する態様の1例を示す模式図である。
【図4】図2の突合せ形態で接合させた接合部への繊維補強材の積層態様の1例を示す模式図である。
【図5】本方法で得られるチーズ円筒管の別の一例を示す模式図である。
【図6】図5のチーズ円筒管の積層上面模式図である。
【図7】図5のチーズ円筒管の製造過程における風車積層方法(片側右半分)の一例を示す説明図である。
【図8】本方法で得られるチーズ円筒管のさらに別の一例を示す模式図である。
【図9】繊維補強材の幅方向のずらし積層例を示す模式図である。
【図10】チーズ円筒管を製造するため所定接合部に巻き付け積層された繊維補強材に諸種の部材を配設してインフュージョン成形に処しうるようにした配設態様の1例を示す模式図である。
【図11】本方法で用いられる斜めにカットされた端面を有する円筒管の一例を示す模式図である。
【図12】図11の円筒管とV字状にカットされた円筒管(枝円筒管)と一端が90°角の略V字状にカットされた円筒管との突合せ形態を示す模式図である。
【図13】本方法で得られるチーズ円筒管の他の一例(円筒管を斜Y字カット)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の製造方法においては、先ず、(A)先端を正面視略V字状にカットした円筒管を1個または2個用い、(B)それと接合しうる円筒管とを突き合わせて接合する。
円筒管(B)としては、例えば、一部を正面視略V字状に切り欠いたものや、円筒管(A)の正面視略V字状にカットした先端面の片側半分と接合しうる、一部斜めにカットされた端面を有するものや、円筒管(A)のカット面と接合しうる、斜めにカットされた端面を有するものなどが挙げられる。
上記略V字状の形態は、その尖端部が略直角のものが好ましい。
また、上記した斜めにカットされた端面は、略45°の傾斜面であるのが好ましい。
【0030】
円筒管(A)と円筒管(B)との組合せとしては、例えば、(イ)一部を正面視略V字状に切り欠いた円筒管とその略V字状の切り欠きに合致するように先端を正面視略V字状にカットした円筒管や、(ロ)先端を正面視略V字状にカットした円筒管とその先端面の片側半分と接合しうる、一部斜めにカットされた端面を有する円筒管2個や、(ハ)円筒管(A)2個と斜めにカットされた端面を有する円筒管等が挙げられる。
これら組合せの円筒管の突き合わせは、上記(イ)の場合、単に嵌め合わせればよく、上記(ロ)の場合、合計3個の部材を相互に略Y字状に突き合わせればよく、上記(ハ)の場合、合計3個の部材を、円筒管(A)2個については、その略V字状にカットした先端面の片側半分同士を突き合わせ、それらの先端面の残余の各片側半分を斜めにカットされた端面を有する円筒管と突き合わせればよい。
【0031】
次いで、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化する。
上記巻き付けは、接合部の外周部およびその周縁部一帯の円筒外周面を繊維補強材で包被するように行うのが好ましく、また管軸方向に繊維補強材の繊維が直交するように行うのが好ましい。
【0032】
繊維補強材を構成する強化繊維としては、例えばガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維や、アラミド繊維等の有機繊維などが挙げられ、繊維補強材としては、例えばガラスクロス、カーボンクロス、ケブラークロスなどの編織物、不織布、チョップドストランドマット、ステッチマット、ステッチクロス、それらを積層組み合わせたもの等が挙げられ、直交クロス材が好ましい。
【0033】
また、繊維補強材としては、その形態上からは、円筒管の外周面に直接に巻回されるバインダーや、所定の長さにカットされたシート状物等が挙げられ、このシート状物は、多数枚用いられ、それらをそれぞれ周方向に位置をずらせながら、一端のみを接着し、他端は隣り合うシート状物の外面に重なり合うように配設して周方向に沿って重ね張りされるように、略風車状に配設される。また、シート状物は、上記のように周方向に位置をずらすことに加え、さらに幅方向にもずらす、例えば千鳥状にずらすか、或いは幅が少しずつ異なる繊維補強材を順次積層することにより、端面がなだらかになるようにするのが好ましい。シート状物のサイズとしては例えば円筒管の外周長を約2分割から6分割する長さに相当するものや、さらに高次に分割(例えば7〜50分割)して多重に重なり合うようにしたものなどが挙げられる。また、シート状物は、矩形状、特に略正方形状であるのが好ましい。
【0034】
次いで、この繊維補強材をバッグフィルムで円筒管上に気密に覆うとともに、バッグフィルム内を真空状態に減圧する減圧ラインおよびバッグフィルム内に樹脂を注入する注入ラインを接続し、バッグフィルム内に減圧下で流動性樹脂を吸引注入し、樹脂を固化或いは硬化する。
このようにして、チーズ型円筒管が製造される。
【0035】
上記製造過程において、繊維補強材に加えて離型材や樹脂拡散部材をバッグフィルムで覆うのが好ましい。バッグフィルムは、この種の真空注入成形法に一般的に用いられる気密な合成樹脂製のフィルム材であれば特に限定されない。そして、バッグフィルムは、円筒管の周縁部において、粘着材料等のシール材を用いて円筒管の表面に固着するのが好ましい。これにより、円筒管とバッグフィルムとの間を、気密かつ密閉された成形部として構成することができる。
離型材は固化或いは硬化した注入樹脂の離型性を高めるものであり、注入樹脂と非接着性の材料からなるシートが好ましい。
樹脂拡散部材は注入樹脂の拡散を促進するものであり、注入樹脂を繊維補強材に偏りなく含浸させるとともに、円筒管上の所望の範囲全体に注入樹脂を拡散させうるものであり、網状のシート材が好ましい。
樹脂拡散部材は繊維補強材の種類、厚みなどの条件により、成形可能であれば使用しなくてもよい。
また、注入樹脂としては、例えば、低粘度系のビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が好適に用いられるが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、塩ビ等の熱可塑性樹脂であってもよい。
【0036】
また、バッグフィルム内すなわちバッグフィルムで覆われた内部を真空状態に減圧する減圧ラインとしては、例えば減圧吸引口を真空ポンプに取り付けたものなどが挙げられる。この注入ラインとしては、樹脂注入口を樹脂貯留槽から樹脂を供給するコネクターと接続したものや樹脂注入管をバッグフィルム内に挿入し樹脂拡散部材に接するように設置したものなどが挙げられ、樹脂注入は、所定減圧下シワがないのを確認した後、行うのが好ましい。樹脂注入後は、樹脂に熱硬化性のものを用いた場合は熱を加えて、あるいは硬化剤を樹脂に加えた場合はその後硬化させ、また、熱可塑性の樹脂を用いた場合は、液化するまで加温された樹脂を注入後、円筒管を冷却し樹脂を固化させる。
なお、上記製造過程において、「繊維補強材をバッグフィルムで円筒管上に気密に覆うとともに、バッグフィルム内を真空状態に減圧する減圧ラインおよびバッグフィルム内に樹脂を注入する注入ラインを接続し、バッグフィルム内に減圧下で流動性樹脂を吸引注入し、樹脂を固化或いは硬化する」成形について、これをインフュージョン成形ともいう。
【実施例】
【0037】
以下、図面を参照しつつ、本発明を具体的に詳細に説明するが、本発明はこれらの図により何ら限定されるものではない。
【0038】
先ず、接合部の形態が正面視V字状となるカット部材を用いる場合について、以下説明する。
図1に示す、円筒管の中央を正面視V字状に切り欠いた主円筒管1−1を用い、そのV字状切り欠き部に、図2に示すように、先端を正面視V字状にカットした枝円筒管(換言すれば先端がセンターより斜め(例えば45°)にカットされ、正面視V字状(例えば90°角)の尖鋭形状を呈する枝円筒管)1−2を突き合わす。その際、突き合わ面に接着剤、糊剤、粘着剤等を塗布するなどして固定或いは仮固定し、接合する。その際、接合面の内面全周或いは外面全周にハンドレイアップ成形を施して接合するとともに気密性を持たせるのがよい。
【0039】
次に、接合部およびその周縁部一帯の円筒外周面(これを円筒管の接合部周縁面ともいう)に、図3に示すように、所定長にカットした繊維補強材2を複数個、その周方向の一端側のみを間隔をあけて各接着固定し、略風車状に配設し、これら繊維補強材を所定の厚みになるように巻き付け、積層状とする。その際、幅方向の端部肉厚がなだらかになるように、幅方向にずらしながら積層したり、幅の異なる繊維補強材を積層するのが幅方向の端部の応力集中を回避できるので好ましい。なお、図3中、1は円筒管、3は後述の伸縮材である。
このようにして図4に示すように積層された繊維補強材は、左右の積層交接部において、他の部分と比較して厚肉になる。局部的な厚肉部は、樹脂を真空含浸する場合、含浸が遅れるので、未含浸部分を内包しやすい。それを回避する為に、積層交接部の繊維を間引きすることで肉厚を均一にし、未含浸部分を回避することができる。
なお、左側のみ積層し、以下に述べるインフュージョン成形後、残りの右側を積層し、同様にインフュージョン成形する方法でも、厚肉部を回避することができる。
【0040】
具体的には、例えば、円筒管1の直径:500mm、必要積層枚数:10枚、繊維補強材長さ:円周長の1/4の場合、Vカット部の全周長≒1885mm[略3.141×(500+700)/2として算出]、繊維補強材長さ=1885/4≒471mm、繊維補強材端面ずらし代(ピッチ)=471/10=47.1mmとなり、長さ471mmの繊維補強材を47.1mmずつずらして貼り付けていき、全周で10×4=40枚貼り付けることになる。
【0041】
略風車状に巻き付け積層する方法としては、例えば以下のような方法がある。
《方法1》(長方形或いは矩形の繊維補強材を用いる方法)
図5に示すように、円筒管の接合部周縁面に、その全周長に対し長尺の繊維補強材を所定の長さにカットしたシート状物を、位置をずらしながら、一方の端面のみを接着して、所要枚数、略風車状に積層する。その際、シート状物の1枚毎の円周方向長さは特に規定しないが、短すぎると枚数が増え作業性が悪くなり、長すぎるとシワを解消する効果がなくなる。
【0042】
イ部(略V字状先端部に照応する底辺であって、積層方向が変わる部位)に必要枚数を積層する場合は、注意を要する。その方法を図5から図7をもとに以下説明する。
図5に示すように、積層は中央のイ部から図面右方向へと行われる。積層1枚目は、積層する繊維補強材の幅をW、長さをLとすると、そのWを少し外して、端面を接着積層する。そうすることにより、最後に貼り付ける繊維補強材が接着できるようになる。そして、首飾りのように、位置をずらしながら、端面を接着しつつ、最終的に1周して、図示のとおり、最初に積層した繊維補強材を越えて 繊維補強材の長さLまで積層する。このようにすることで、管接合ラインの厚みは、どの点も強度上必要な厚みが積層されることになる。
さらに詳述すると、図6は、円筒管の接合ラインを上面から見た模式図であり、図7は、その接合ラインを模式的に示したもので、右側において、略風車状に繊維補強材を積層していく態様を示す。前述したように、最初の繊維補強材(幅W,長さL)について、繊維補強材幅(W)=200mmを超えた時点で端面を接着する、その後、一定のピッチで接合ラインに沿って、略風車状に一端面を接着し必要枚数積層する。ロ部に達した時点で、接合ラインの延長上に繊維補強材長さLまで伸ばして積層する。
次に、左側を略風車状に繊維補強材を反時計周りに積層する。最初の一枚は、イ部同様に、ロ部も繊維補強材Wを超えた時点で端面を接着し、同様にイ部まで達し、接合ラインの延長上に繊維補強材長さLまで伸ばして積層する。そうすることで、接合ライン上は 強度上必要な厚みの繊維補強材が積層される。
【0043】
具体的には、例えば、円筒管1の直径:500mm、必要積層枚数:10枚、繊維補強材長さ:円周長の1/4の場合、Vカット部の全周長≒1885mm[略3.141×(500+700)/2として算出]、繊維補強材長さ(L)=1885/4≒471mm、繊維補強材幅(W)=200mm、繊維補強材端面ずらし代(ピッチ)=471/10=47.1mmとなり、長さ471mmの繊維補強材を47.1mmずつずらして貼り付けていき、全周で合計51〜52枚(=((1885/2−100−100+471)/47.1)×2(左右の積層部)積層することになる。
【0044】
《方法2》(略正方形の繊維補強材を用いる方法)
図8に示すように、円筒管の接合部周縁面に 繊維補強材を略正方形にカットしたものを、位置をずらしながら、一方の端面のみを接着して、必要枚数、略風車状に積層する。積層方法は、上記方法と全く同じである。正方形の場合は、繊維補強材の寸法がL=Wなので、図5、及び図7のようにイ部若しくはロ部で繊維補強材の幅Wの状態で積層されLまで延びることはなく、必要最低限の繊維補強材が積層される。
また、略正方形の繊維補強材を使用することで、図8のように、接合ラインに沿って、菱形に繊維補強材を略風車状に積層することで、繊維補強材の繊維が軸方向になり、繊維補強材の変形も少なくなるため、水圧などによる応力に対し最大限の効果を発揮する。それにより、繊維補強材の積層枚数を強度上最低限に抑制することができ安価な製品が供給できる。
また、風車状に繊維補強材の端面を接着しながら積層する場合、接着する面は、略正方形の場合、端面若しくは、隣接する端面の一端面の合計二端面を接着することで、繊維補強材の余分な変形が規制され、シワが発生しにくい。
【0045】
このように、略風車状に積層するに当り、所定の長さにカットされた同幅の繊維補強材を円周方向にずらしながら積層すると、円筒管と積層部の端部に厚み分の段差ができ、高圧力円筒管の場合、応力集中が懸念される。
これに対処するには、図9に示すように、幅の異なる繊維補強材を順次積層することや、同幅の繊維補強材を順次幅方向にずらしながら積層すればよく、幅方向の端部がなだらかな厚みになり、応力集中が回避される。
例えば、幅300mmで長さ500mmの繊維補強材を10mm毎に左に順次5枚ずらして積層し、更に右に10mm毎10枚ずらして積層し、又、左に10mm毎ずらして積層し、所定厚みまで積層すると、トータル幅400mmで、左右50mm幅が順次厚みが減じ、なだらかな端部になる。
更に、従来ハンドレイアップ成形法などで実施されているように、幅が順次異なる繊維補強材を積層するのが、インフュージョン成形においても有効である。
【0046】
次に、図10に示すように、前記したように円筒管1の接合部周縁面に積層した繊維補強材2の外面に、伸縮材(例えば伸縮性不織布)3が重ねて巻き付けられ、伸縮材3は、複数枚の繊維補強材2を接合部の外周面に押さえて定着させるものとなる。繊維補強材2は、前述の図3についての説明のとおり、周方向の一端側のみが接着され固定されているが、伸縮材3で押さえられて安定的に積層状態を維持することができる。また、繊維補強材2の周方向の他端側は、隣り合う繊維補強材2に重ね合わされているだけであるので、伸縮材3で巻き込む際に、不要な皺を生じることなく接合部の外周に沿って固定される。
【0047】
続いて、巻いた伸縮材3の外面に離型布4を巻き付け等で重ねて配設する。
さらに、離型布4の外面に、樹脂拡散部材5を配設する。
また、樹脂拡散部材5の外側には、注入樹脂の樹脂注入管7を配設する。樹脂注入管7の配設形態は適宜であるが、接合部の管底付近に設けることが好ましい。この樹脂注入管7としては、ゴム製のパイプなどがあり、後述のバッグフィルム6を通されて、樹脂拡散部材5に接続される。
【0048】
また、バッグフィルム6で覆った成形部には減圧ラインが配設されている。減圧ラインは、ゴムチューブ等のホースを介して減圧源に接続される。また、接合部の大きさ等に合わせて、かかる樹脂注入管7を、適宜間隔で複数本、樹脂拡散部材5の外面に配設するようにしてもよい。
【0049】
次いで、これらの離型布4並びに樹脂拡散部材5、および樹脂注入管7を配設した接合部を、バッグフィルム6で気密に被覆する。そして、接合部の周縁部に、粘着材やシールテープなどのシール材を用いてバッグフィルム6を接合部の表面に固着する。これにより、接合部とバッグフィルム6との間を、気密に密閉された成形部として構成することができる。また、バッグフィルム6で被覆した成形部には、成形部内の空気を吸引して減圧する減圧源が接続される。
【0050】
樹脂注入にあたっては、接続された減圧源によりバッグフィルム6の内側を減圧し、略真空状態とする。このとき、積層した繊維補強材2に皺が生じていないことを確認する。複数枚を重ね張りした状態の繊維補強材2は、周方向の一端側がそれぞれ固定されているのみで、周方向の他端側が固定されていないので、バッグフィルム6により密封して減圧されて繊維補強材2に皺を生じるように作用しても、繊維補強材2の非接着の他端側へ皺を逃がすことができ、その結果、皺の発生を効果的に防ぐことができる。また、この際、繊維補強材2が所定の肉厚になっているかどうかも直接触れて測定し、確認することができる。また、確認により不具合があれば、作業を中断して樹脂注入の前段階で修正することができる。
【0051】
そして、かかる減圧環境下において、樹脂注入管7から樹脂を注入し、バッグフィルム6の内側(成形部内)に拡散させる。注入された樹脂は、樹脂拡散部材5を介して全体にわたって均等に拡散され、伸縮材3、および繊維補強材2に含浸する。
【0052】
樹脂注入が完了すると、成形部内の減圧状態を維持したまま注入樹脂を固化或いは硬化させ、これにより、繊維補強材と含浸一体化させることができる。
このようにして、所望の繊維強化樹脂製チーズが得られる。
【0053】
所望の繊維強化樹脂製チーズの製造方法において、接合部の形態がY字状或いは斜めY字状となるカット部材を用いる場合については、各所定円筒管の接合方法について主に説明し、その他は基本的には前述したと同様であるので、説明を簡略化するものとする。
接合方法については、例えば、図11に示すように、先ず、一端が一部45°斜めにカットされた円筒管1−4を2個用い、それぞれの一端の非カット面同士を突き合わせ、それらの突き合わせ面で接着剤や粘着剤により固定或いは仮固定して正面視V字状の切り欠きを設けた円筒管様部材を形成させ、この円筒管様部材を、図12に示すように、そのV字状の切り欠き部に嵌合せしめるように、一端が90°角のV字状にカットされた円筒管1−2(換言すれば一端がセンターより45°斜めにカットされ、正面視90°角のV字状尖鋭形状を呈する円筒管)とY字に突き合わせ、それらの突き合わせ面で接着剤や粘着剤により固定或いは仮固定してチーズ形状に接合する。
【0054】
また、接合部の形態が斜めY字状である場合は、例えば、図13に示すように、先ず、一端が45°斜めにカットされた円筒管1−5と、一端が90°角のV字状にカットされた円筒管(換言すれば一端がセンターより45°斜めにカットされ、正面視90°角のV字状尖鋭形状とされた枝円筒管1−2と、一端が90°角の略V字状にカットされた円筒管(換言すれば一端が略センターより45°斜めにカットされ、正面視90°角の略V字状尖鋭形状とされた円筒管1−3とを、斜めY字に突き合わせ、それらの突き合わせ面で接着剤や粘着剤により固定或いは仮固定してチーズ形状に接合する。
【0055】
次いで、円筒管の接合部周縁面へ繊維補強材を巻き付け積層するには、Y字状部或いは斜めY字状部の上部は前述したV字状と同様の形状を呈し、前述したV字状カット部材を用いる場合と同様の巻き付け方を適用しうる。それに加えて、Y字状部或いは斜めY字状部の下部について、その接合部周縁面に繊維補強材を必要枚数巻き付けて積層すればよい。
さらに、前述したV字状カット部材を用いる場合と同様にして、繊維補強材をフィルムで覆い内部を真空にし、樹脂を含浸するいわゆるインフュージョン成形に処すことにより、チーズ状円筒管を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明方法は、樹脂中の溶剤、スチレン等の気化飛散のトラブルがなく、作業環境が改善され、シワの発生がなく、外観良好で、強度を保持させた繊維強化樹脂製チーズを製造することができ、産業上大いに有用である。
【符号の説明】
【0057】
1−1 主円筒管
1−2 枝円筒管
1−3 一端が90°角の略V字状にカットされた円筒管
1−4 一部斜めにカットされた端面を有する円筒管
1−5 斜めにカットされた端面を有する円筒管
2 繊維補強材
21 略正方形繊維補強材
3 伸縮材
4 離型布
5 樹脂拡散部材
6 バッグフイルム
7 樹脂注入管
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂製チーズの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維強化樹脂製成形体は、軽量で高強度であるため、多用されてきている。その管状体の成形には、一般的にハンドレイアップ成形法、フィラメントワインディング法やシートワインディング法が用いられている。ハンドレイアップ成形法は、成形型に、人手で樹脂を刷毛やローラで含浸させ、また脱泡しながら所定の厚さまで積層するものであり、また、フィラメントワインディング法は、連続繊維に樹脂を含浸させながら、回転するマンドレル(筒状の金属製が多い)に適宜の巻き付け角で巻き付けて所定の形状に成形するものであり(例えば特許文献1参照)、シートワインディング法は、ロール状に巻き取られた強化繊維の織布を、芯材の周囲にヘリカル状に巻回し、その織布に樹脂を含浸させて硬化させるものである(例えば特許文献2参照)。
【0003】
しかし、これらの成形法は流動液状の樹脂を強化繊維に含浸させながら成形型に巻き付けていくため、樹脂がまだ固化されておらず、直接触れて確認できないこと等から、強化繊維の巻き付けた肉厚の管理が困難であるし、また、硬化剤を混入させていると、時間経過とともに硬化が進行するため、作業を途中で中断することができないこと等から、比較的大型の成形品を製造するには好ましくなく、コストがかかるし、また、製造中にスチレン等が揮散する問題等もある。
【0004】
一方、近年、真空吸引等による減圧下で成形を行う真空注入成形法が種々提案されている。
この真空注入成形法については、例えば特許文献3にその基本的な技術が開示されており、これは、成形型に繊維レイアップ層を配置し、この上に樹脂分配用の樹脂注入管を配設してバッグフィルムで包被するとともに、その周囲をシールして、真空吸引されたバッグフィルム内に樹脂を注入することにより成形品とするものであり、これに類するものとして特許文献4がある。
【0005】
しかし、かかる真空注入成形法を、繊維強化樹脂製管状体、特に繊維強化樹脂製チーズに用いるのは種々問題がある。例えば、樹脂を含浸しないドライの状態で回転円筒型・円筒製品に強化繊維を必要量・必要肉厚として被覆する場合、シート状の強化繊維をそのまま円筒型・円筒製品に巻き付け真空にすると、強化繊維が圧縮され余った部分が軸方向にシワとなって発生し、このシワは成形後の製品の外観を悪化させるだけでなく、強度も低下させる原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平06−26858号公報
【特許文献2】特開2007−136997号公報
【特許文献3】特開平10−504501号公報
【特許文献4】特開昭60−83826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、このような事情の下、樹脂中の溶剤、スチレン等の気化飛散のトラブルがなく、作業環境が改善され、シワの発生がなく、外観良好で、強度を保持させた繊維強化樹脂製チーズを供与しうる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、先端を略V字状にカットした円筒管と、それと接合しうる端面を有する円筒管とを突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化するのが課題解決に資することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、(A)先端を正面視略V字状にカットした円筒管を1個または2個用い、(B)それと接合しうる円筒管とを突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、上記円筒管(B)が、一部を正面視略V字状に切り欠いたものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、一部を正面視略V字状に切り欠いた円筒管と、その略V字状の切り欠きに合致するように先端を正面視略V字状にカットした円筒管とを突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、上記円筒管(B)が、上記円筒管(A)の正面視略V字状にカットした先端面の片側半分と接合しうる、一部斜めにカットされた端面を有するものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第5の発明によれば、先端を正面視略V字状にカットした円筒管と、その先端面の片側半分と接合しうる、一部斜めにカットされた端面を有する円筒管2個との合計3個の部材を相互に略Y字状に突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、上記円筒管(B)が、上記円筒管(A)のカット面と接合しうる、斜めにカットされた端面を有するものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第7の発明によれば、上記円筒管(A)2個と斜めにカットされた端面を有する円筒管との合計3個の部材を、前者部材2個については、その略V字状にカットした先端面の片側半分同士を突き合わせ、それらの先端面の残余の各片側半分を後者部材と突き合わせるようにして、相互に略斜めY字状に突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、上記略V字状の形態は、その尖端部が略直角のものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第9の発明によれば、第4〜7のいずれかの発明において、上記略V字状の形態は、その尖端部が略直角のものであり、かつ斜めにカットされた端面が、略45°の傾斜面であることを特徴とする製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明において、インフュージョン成形が、繊維補強材をバッグフィルムで円筒管上に気密に覆うとともに、バッグフィルム内を真空状態に減圧する減圧ラインおよびバッグフィルム内に樹脂を注入する注入ラインを接続し、バッグフィルム内に減圧下で流動性樹脂を吸引注入し、樹脂を固化或いは硬化するものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【0019】
また、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、巻き付けは、所定の長さに切断された多数の繊維補強材を、それぞれ接合部の周方向に位置をずらせながら、一方の端面のみを接着して、略風車状に積層するものとすることを特徴とする製造方法が提供される。
【0020】
また、本発明の第12の発明によれば、第11の発明において、巻き付けは、繊維補強材を幅方向にもずらすことにより、端面がなだらかになるように積層するものとすることを特徴とする製造方法が提供される。
【0021】
また、本発明の第13の発明によれば、第12の発明において、千鳥状にずらすことを特徴とする製造方法が提供される。
【0022】
また、本発明の第14の発明によれば、第11の発明において、巻き付けは、幅が少しずつ異なる繊維補強材を順次積層し、端面をなだらかにするものとすることを特徴とする製造方法が提供される。
【0023】
また、本発明の第15の発明によれば、第1〜14のいずれかの発明において、繊維補強材を積層するのを、管軸方向に繊維が直交するように行うことを特徴とする製造方法が提供される。
【0024】
また、本発明の第16の発明によれば、第15の発明において、繊維補強材が、直交クロス材であることを特徴とする製造方法が提供される。
【0025】
また、本発明の第17の発明によれば、第1〜16のいずれかの発明において、繊維補強材が、シート状物であることを特徴とする製造方法が提供される。
【0026】
また、本発明の第18の発明によれば、第17の発明において、シート状物が、略正方形状のものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の製造方法によれば、所定の肉厚になっているか直接触れて測定確認でき、樹脂を供給する前であればトラブルが発生した時に作業を中断でき、また、インフュージョン成形でバッグフィルムで覆った中に樹脂を注入するので、従来のオープン成形におけるような樹脂中の溶剤、スチレン等の気化飛散のトラブルがなく、作業環境が改善され、また、繊維補強材を上記のように略風車状に積層することで、インフュージョン円筒管成形特有の繊維補強材のたるみによるシワの発生という問題もなく、強度低下もない高品質の成形品が得られ、また、幅方向をずらして積層することで、両端面がなだらかになり、円筒管と積層部の肉厚変化が少なくなり、応力集中のない成形品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本方法で用いられるV字状切り欠き円筒管(主円筒管)の一例を示す模式図である。
【図2】図1のV字状切り欠き円筒管(主円筒管)とV字状にカットされた円筒管(枝円筒管)との突合せ形態を示す模式図である。
【図3】図2の突合せ形態で接合させた接合部やその外周面に繊維補強材を略風車状に配設する態様の1例を示す模式図である。
【図4】図2の突合せ形態で接合させた接合部への繊維補強材の積層態様の1例を示す模式図である。
【図5】本方法で得られるチーズ円筒管の別の一例を示す模式図である。
【図6】図5のチーズ円筒管の積層上面模式図である。
【図7】図5のチーズ円筒管の製造過程における風車積層方法(片側右半分)の一例を示す説明図である。
【図8】本方法で得られるチーズ円筒管のさらに別の一例を示す模式図である。
【図9】繊維補強材の幅方向のずらし積層例を示す模式図である。
【図10】チーズ円筒管を製造するため所定接合部に巻き付け積層された繊維補強材に諸種の部材を配設してインフュージョン成形に処しうるようにした配設態様の1例を示す模式図である。
【図11】本方法で用いられる斜めにカットされた端面を有する円筒管の一例を示す模式図である。
【図12】図11の円筒管とV字状にカットされた円筒管(枝円筒管)と一端が90°角の略V字状にカットされた円筒管との突合せ形態を示す模式図である。
【図13】本方法で得られるチーズ円筒管の他の一例(円筒管を斜Y字カット)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の製造方法においては、先ず、(A)先端を正面視略V字状にカットした円筒管を1個または2個用い、(B)それと接合しうる円筒管とを突き合わせて接合する。
円筒管(B)としては、例えば、一部を正面視略V字状に切り欠いたものや、円筒管(A)の正面視略V字状にカットした先端面の片側半分と接合しうる、一部斜めにカットされた端面を有するものや、円筒管(A)のカット面と接合しうる、斜めにカットされた端面を有するものなどが挙げられる。
上記略V字状の形態は、その尖端部が略直角のものが好ましい。
また、上記した斜めにカットされた端面は、略45°の傾斜面であるのが好ましい。
【0030】
円筒管(A)と円筒管(B)との組合せとしては、例えば、(イ)一部を正面視略V字状に切り欠いた円筒管とその略V字状の切り欠きに合致するように先端を正面視略V字状にカットした円筒管や、(ロ)先端を正面視略V字状にカットした円筒管とその先端面の片側半分と接合しうる、一部斜めにカットされた端面を有する円筒管2個や、(ハ)円筒管(A)2個と斜めにカットされた端面を有する円筒管等が挙げられる。
これら組合せの円筒管の突き合わせは、上記(イ)の場合、単に嵌め合わせればよく、上記(ロ)の場合、合計3個の部材を相互に略Y字状に突き合わせればよく、上記(ハ)の場合、合計3個の部材を、円筒管(A)2個については、その略V字状にカットした先端面の片側半分同士を突き合わせ、それらの先端面の残余の各片側半分を斜めにカットされた端面を有する円筒管と突き合わせればよい。
【0031】
次いで、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化する。
上記巻き付けは、接合部の外周部およびその周縁部一帯の円筒外周面を繊維補強材で包被するように行うのが好ましく、また管軸方向に繊維補強材の繊維が直交するように行うのが好ましい。
【0032】
繊維補強材を構成する強化繊維としては、例えばガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維や、アラミド繊維等の有機繊維などが挙げられ、繊維補強材としては、例えばガラスクロス、カーボンクロス、ケブラークロスなどの編織物、不織布、チョップドストランドマット、ステッチマット、ステッチクロス、それらを積層組み合わせたもの等が挙げられ、直交クロス材が好ましい。
【0033】
また、繊維補強材としては、その形態上からは、円筒管の外周面に直接に巻回されるバインダーや、所定の長さにカットされたシート状物等が挙げられ、このシート状物は、多数枚用いられ、それらをそれぞれ周方向に位置をずらせながら、一端のみを接着し、他端は隣り合うシート状物の外面に重なり合うように配設して周方向に沿って重ね張りされるように、略風車状に配設される。また、シート状物は、上記のように周方向に位置をずらすことに加え、さらに幅方向にもずらす、例えば千鳥状にずらすか、或いは幅が少しずつ異なる繊維補強材を順次積層することにより、端面がなだらかになるようにするのが好ましい。シート状物のサイズとしては例えば円筒管の外周長を約2分割から6分割する長さに相当するものや、さらに高次に分割(例えば7〜50分割)して多重に重なり合うようにしたものなどが挙げられる。また、シート状物は、矩形状、特に略正方形状であるのが好ましい。
【0034】
次いで、この繊維補強材をバッグフィルムで円筒管上に気密に覆うとともに、バッグフィルム内を真空状態に減圧する減圧ラインおよびバッグフィルム内に樹脂を注入する注入ラインを接続し、バッグフィルム内に減圧下で流動性樹脂を吸引注入し、樹脂を固化或いは硬化する。
このようにして、チーズ型円筒管が製造される。
【0035】
上記製造過程において、繊維補強材に加えて離型材や樹脂拡散部材をバッグフィルムで覆うのが好ましい。バッグフィルムは、この種の真空注入成形法に一般的に用いられる気密な合成樹脂製のフィルム材であれば特に限定されない。そして、バッグフィルムは、円筒管の周縁部において、粘着材料等のシール材を用いて円筒管の表面に固着するのが好ましい。これにより、円筒管とバッグフィルムとの間を、気密かつ密閉された成形部として構成することができる。
離型材は固化或いは硬化した注入樹脂の離型性を高めるものであり、注入樹脂と非接着性の材料からなるシートが好ましい。
樹脂拡散部材は注入樹脂の拡散を促進するものであり、注入樹脂を繊維補強材に偏りなく含浸させるとともに、円筒管上の所望の範囲全体に注入樹脂を拡散させうるものであり、網状のシート材が好ましい。
樹脂拡散部材は繊維補強材の種類、厚みなどの条件により、成形可能であれば使用しなくてもよい。
また、注入樹脂としては、例えば、低粘度系のビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が好適に用いられるが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、塩ビ等の熱可塑性樹脂であってもよい。
【0036】
また、バッグフィルム内すなわちバッグフィルムで覆われた内部を真空状態に減圧する減圧ラインとしては、例えば減圧吸引口を真空ポンプに取り付けたものなどが挙げられる。この注入ラインとしては、樹脂注入口を樹脂貯留槽から樹脂を供給するコネクターと接続したものや樹脂注入管をバッグフィルム内に挿入し樹脂拡散部材に接するように設置したものなどが挙げられ、樹脂注入は、所定減圧下シワがないのを確認した後、行うのが好ましい。樹脂注入後は、樹脂に熱硬化性のものを用いた場合は熱を加えて、あるいは硬化剤を樹脂に加えた場合はその後硬化させ、また、熱可塑性の樹脂を用いた場合は、液化するまで加温された樹脂を注入後、円筒管を冷却し樹脂を固化させる。
なお、上記製造過程において、「繊維補強材をバッグフィルムで円筒管上に気密に覆うとともに、バッグフィルム内を真空状態に減圧する減圧ラインおよびバッグフィルム内に樹脂を注入する注入ラインを接続し、バッグフィルム内に減圧下で流動性樹脂を吸引注入し、樹脂を固化或いは硬化する」成形について、これをインフュージョン成形ともいう。
【実施例】
【0037】
以下、図面を参照しつつ、本発明を具体的に詳細に説明するが、本発明はこれらの図により何ら限定されるものではない。
【0038】
先ず、接合部の形態が正面視V字状となるカット部材を用いる場合について、以下説明する。
図1に示す、円筒管の中央を正面視V字状に切り欠いた主円筒管1−1を用い、そのV字状切り欠き部に、図2に示すように、先端を正面視V字状にカットした枝円筒管(換言すれば先端がセンターより斜め(例えば45°)にカットされ、正面視V字状(例えば90°角)の尖鋭形状を呈する枝円筒管)1−2を突き合わす。その際、突き合わ面に接着剤、糊剤、粘着剤等を塗布するなどして固定或いは仮固定し、接合する。その際、接合面の内面全周或いは外面全周にハンドレイアップ成形を施して接合するとともに気密性を持たせるのがよい。
【0039】
次に、接合部およびその周縁部一帯の円筒外周面(これを円筒管の接合部周縁面ともいう)に、図3に示すように、所定長にカットした繊維補強材2を複数個、その周方向の一端側のみを間隔をあけて各接着固定し、略風車状に配設し、これら繊維補強材を所定の厚みになるように巻き付け、積層状とする。その際、幅方向の端部肉厚がなだらかになるように、幅方向にずらしながら積層したり、幅の異なる繊維補強材を積層するのが幅方向の端部の応力集中を回避できるので好ましい。なお、図3中、1は円筒管、3は後述の伸縮材である。
このようにして図4に示すように積層された繊維補強材は、左右の積層交接部において、他の部分と比較して厚肉になる。局部的な厚肉部は、樹脂を真空含浸する場合、含浸が遅れるので、未含浸部分を内包しやすい。それを回避する為に、積層交接部の繊維を間引きすることで肉厚を均一にし、未含浸部分を回避することができる。
なお、左側のみ積層し、以下に述べるインフュージョン成形後、残りの右側を積層し、同様にインフュージョン成形する方法でも、厚肉部を回避することができる。
【0040】
具体的には、例えば、円筒管1の直径:500mm、必要積層枚数:10枚、繊維補強材長さ:円周長の1/4の場合、Vカット部の全周長≒1885mm[略3.141×(500+700)/2として算出]、繊維補強材長さ=1885/4≒471mm、繊維補強材端面ずらし代(ピッチ)=471/10=47.1mmとなり、長さ471mmの繊維補強材を47.1mmずつずらして貼り付けていき、全周で10×4=40枚貼り付けることになる。
【0041】
略風車状に巻き付け積層する方法としては、例えば以下のような方法がある。
《方法1》(長方形或いは矩形の繊維補強材を用いる方法)
図5に示すように、円筒管の接合部周縁面に、その全周長に対し長尺の繊維補強材を所定の長さにカットしたシート状物を、位置をずらしながら、一方の端面のみを接着して、所要枚数、略風車状に積層する。その際、シート状物の1枚毎の円周方向長さは特に規定しないが、短すぎると枚数が増え作業性が悪くなり、長すぎるとシワを解消する効果がなくなる。
【0042】
イ部(略V字状先端部に照応する底辺であって、積層方向が変わる部位)に必要枚数を積層する場合は、注意を要する。その方法を図5から図7をもとに以下説明する。
図5に示すように、積層は中央のイ部から図面右方向へと行われる。積層1枚目は、積層する繊維補強材の幅をW、長さをLとすると、そのWを少し外して、端面を接着積層する。そうすることにより、最後に貼り付ける繊維補強材が接着できるようになる。そして、首飾りのように、位置をずらしながら、端面を接着しつつ、最終的に1周して、図示のとおり、最初に積層した繊維補強材を越えて 繊維補強材の長さLまで積層する。このようにすることで、管接合ラインの厚みは、どの点も強度上必要な厚みが積層されることになる。
さらに詳述すると、図6は、円筒管の接合ラインを上面から見た模式図であり、図7は、その接合ラインを模式的に示したもので、右側において、略風車状に繊維補強材を積層していく態様を示す。前述したように、最初の繊維補強材(幅W,長さL)について、繊維補強材幅(W)=200mmを超えた時点で端面を接着する、その後、一定のピッチで接合ラインに沿って、略風車状に一端面を接着し必要枚数積層する。ロ部に達した時点で、接合ラインの延長上に繊維補強材長さLまで伸ばして積層する。
次に、左側を略風車状に繊維補強材を反時計周りに積層する。最初の一枚は、イ部同様に、ロ部も繊維補強材Wを超えた時点で端面を接着し、同様にイ部まで達し、接合ラインの延長上に繊維補強材長さLまで伸ばして積層する。そうすることで、接合ライン上は 強度上必要な厚みの繊維補強材が積層される。
【0043】
具体的には、例えば、円筒管1の直径:500mm、必要積層枚数:10枚、繊維補強材長さ:円周長の1/4の場合、Vカット部の全周長≒1885mm[略3.141×(500+700)/2として算出]、繊維補強材長さ(L)=1885/4≒471mm、繊維補強材幅(W)=200mm、繊維補強材端面ずらし代(ピッチ)=471/10=47.1mmとなり、長さ471mmの繊維補強材を47.1mmずつずらして貼り付けていき、全周で合計51〜52枚(=((1885/2−100−100+471)/47.1)×2(左右の積層部)積層することになる。
【0044】
《方法2》(略正方形の繊維補強材を用いる方法)
図8に示すように、円筒管の接合部周縁面に 繊維補強材を略正方形にカットしたものを、位置をずらしながら、一方の端面のみを接着して、必要枚数、略風車状に積層する。積層方法は、上記方法と全く同じである。正方形の場合は、繊維補強材の寸法がL=Wなので、図5、及び図7のようにイ部若しくはロ部で繊維補強材の幅Wの状態で積層されLまで延びることはなく、必要最低限の繊維補強材が積層される。
また、略正方形の繊維補強材を使用することで、図8のように、接合ラインに沿って、菱形に繊維補強材を略風車状に積層することで、繊維補強材の繊維が軸方向になり、繊維補強材の変形も少なくなるため、水圧などによる応力に対し最大限の効果を発揮する。それにより、繊維補強材の積層枚数を強度上最低限に抑制することができ安価な製品が供給できる。
また、風車状に繊維補強材の端面を接着しながら積層する場合、接着する面は、略正方形の場合、端面若しくは、隣接する端面の一端面の合計二端面を接着することで、繊維補強材の余分な変形が規制され、シワが発生しにくい。
【0045】
このように、略風車状に積層するに当り、所定の長さにカットされた同幅の繊維補強材を円周方向にずらしながら積層すると、円筒管と積層部の端部に厚み分の段差ができ、高圧力円筒管の場合、応力集中が懸念される。
これに対処するには、図9に示すように、幅の異なる繊維補強材を順次積層することや、同幅の繊維補強材を順次幅方向にずらしながら積層すればよく、幅方向の端部がなだらかな厚みになり、応力集中が回避される。
例えば、幅300mmで長さ500mmの繊維補強材を10mm毎に左に順次5枚ずらして積層し、更に右に10mm毎10枚ずらして積層し、又、左に10mm毎ずらして積層し、所定厚みまで積層すると、トータル幅400mmで、左右50mm幅が順次厚みが減じ、なだらかな端部になる。
更に、従来ハンドレイアップ成形法などで実施されているように、幅が順次異なる繊維補強材を積層するのが、インフュージョン成形においても有効である。
【0046】
次に、図10に示すように、前記したように円筒管1の接合部周縁面に積層した繊維補強材2の外面に、伸縮材(例えば伸縮性不織布)3が重ねて巻き付けられ、伸縮材3は、複数枚の繊維補強材2を接合部の外周面に押さえて定着させるものとなる。繊維補強材2は、前述の図3についての説明のとおり、周方向の一端側のみが接着され固定されているが、伸縮材3で押さえられて安定的に積層状態を維持することができる。また、繊維補強材2の周方向の他端側は、隣り合う繊維補強材2に重ね合わされているだけであるので、伸縮材3で巻き込む際に、不要な皺を生じることなく接合部の外周に沿って固定される。
【0047】
続いて、巻いた伸縮材3の外面に離型布4を巻き付け等で重ねて配設する。
さらに、離型布4の外面に、樹脂拡散部材5を配設する。
また、樹脂拡散部材5の外側には、注入樹脂の樹脂注入管7を配設する。樹脂注入管7の配設形態は適宜であるが、接合部の管底付近に設けることが好ましい。この樹脂注入管7としては、ゴム製のパイプなどがあり、後述のバッグフィルム6を通されて、樹脂拡散部材5に接続される。
【0048】
また、バッグフィルム6で覆った成形部には減圧ラインが配設されている。減圧ラインは、ゴムチューブ等のホースを介して減圧源に接続される。また、接合部の大きさ等に合わせて、かかる樹脂注入管7を、適宜間隔で複数本、樹脂拡散部材5の外面に配設するようにしてもよい。
【0049】
次いで、これらの離型布4並びに樹脂拡散部材5、および樹脂注入管7を配設した接合部を、バッグフィルム6で気密に被覆する。そして、接合部の周縁部に、粘着材やシールテープなどのシール材を用いてバッグフィルム6を接合部の表面に固着する。これにより、接合部とバッグフィルム6との間を、気密に密閉された成形部として構成することができる。また、バッグフィルム6で被覆した成形部には、成形部内の空気を吸引して減圧する減圧源が接続される。
【0050】
樹脂注入にあたっては、接続された減圧源によりバッグフィルム6の内側を減圧し、略真空状態とする。このとき、積層した繊維補強材2に皺が生じていないことを確認する。複数枚を重ね張りした状態の繊維補強材2は、周方向の一端側がそれぞれ固定されているのみで、周方向の他端側が固定されていないので、バッグフィルム6により密封して減圧されて繊維補強材2に皺を生じるように作用しても、繊維補強材2の非接着の他端側へ皺を逃がすことができ、その結果、皺の発生を効果的に防ぐことができる。また、この際、繊維補強材2が所定の肉厚になっているかどうかも直接触れて測定し、確認することができる。また、確認により不具合があれば、作業を中断して樹脂注入の前段階で修正することができる。
【0051】
そして、かかる減圧環境下において、樹脂注入管7から樹脂を注入し、バッグフィルム6の内側(成形部内)に拡散させる。注入された樹脂は、樹脂拡散部材5を介して全体にわたって均等に拡散され、伸縮材3、および繊維補強材2に含浸する。
【0052】
樹脂注入が完了すると、成形部内の減圧状態を維持したまま注入樹脂を固化或いは硬化させ、これにより、繊維補強材と含浸一体化させることができる。
このようにして、所望の繊維強化樹脂製チーズが得られる。
【0053】
所望の繊維強化樹脂製チーズの製造方法において、接合部の形態がY字状或いは斜めY字状となるカット部材を用いる場合については、各所定円筒管の接合方法について主に説明し、その他は基本的には前述したと同様であるので、説明を簡略化するものとする。
接合方法については、例えば、図11に示すように、先ず、一端が一部45°斜めにカットされた円筒管1−4を2個用い、それぞれの一端の非カット面同士を突き合わせ、それらの突き合わせ面で接着剤や粘着剤により固定或いは仮固定して正面視V字状の切り欠きを設けた円筒管様部材を形成させ、この円筒管様部材を、図12に示すように、そのV字状の切り欠き部に嵌合せしめるように、一端が90°角のV字状にカットされた円筒管1−2(換言すれば一端がセンターより45°斜めにカットされ、正面視90°角のV字状尖鋭形状を呈する円筒管)とY字に突き合わせ、それらの突き合わせ面で接着剤や粘着剤により固定或いは仮固定してチーズ形状に接合する。
【0054】
また、接合部の形態が斜めY字状である場合は、例えば、図13に示すように、先ず、一端が45°斜めにカットされた円筒管1−5と、一端が90°角のV字状にカットされた円筒管(換言すれば一端がセンターより45°斜めにカットされ、正面視90°角のV字状尖鋭形状とされた枝円筒管1−2と、一端が90°角の略V字状にカットされた円筒管(換言すれば一端が略センターより45°斜めにカットされ、正面視90°角の略V字状尖鋭形状とされた円筒管1−3とを、斜めY字に突き合わせ、それらの突き合わせ面で接着剤や粘着剤により固定或いは仮固定してチーズ形状に接合する。
【0055】
次いで、円筒管の接合部周縁面へ繊維補強材を巻き付け積層するには、Y字状部或いは斜めY字状部の上部は前述したV字状と同様の形状を呈し、前述したV字状カット部材を用いる場合と同様の巻き付け方を適用しうる。それに加えて、Y字状部或いは斜めY字状部の下部について、その接合部周縁面に繊維補強材を必要枚数巻き付けて積層すればよい。
さらに、前述したV字状カット部材を用いる場合と同様にして、繊維補強材をフィルムで覆い内部を真空にし、樹脂を含浸するいわゆるインフュージョン成形に処すことにより、チーズ状円筒管を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明方法は、樹脂中の溶剤、スチレン等の気化飛散のトラブルがなく、作業環境が改善され、シワの発生がなく、外観良好で、強度を保持させた繊維強化樹脂製チーズを製造することができ、産業上大いに有用である。
【符号の説明】
【0057】
1−1 主円筒管
1−2 枝円筒管
1−3 一端が90°角の略V字状にカットされた円筒管
1−4 一部斜めにカットされた端面を有する円筒管
1−5 斜めにカットされた端面を有する円筒管
2 繊維補強材
21 略正方形繊維補強材
3 伸縮材
4 離型布
5 樹脂拡散部材
6 バッグフイルム
7 樹脂注入管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)先端を正面視略V字状にカットした円筒管を1個または2個用い、(B)それと接合しうる円筒管とを突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法。
【請求項2】
上記円筒管(B)が、一部を正面視略V字状に切り欠いたものであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
一部を正面視略V字状に切り欠いた円筒管と、その略V字状の切り欠きに合致するように先端を正面視略V字状にカットした円筒管とを突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法。
【請求項4】
上記円筒管(B)が、上記円筒管(A)の正面視略V字状にカットした先端面の片側半分と接合しうる、一部斜めにカットされた端面を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
先端を正面視略V字状にカットした円筒管とその先端面の片側半分と接合しうる、一部斜めにカットされた端面を有する円筒管2個との合計3個の部材を相互に略Y字状に突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法。
【請求項6】
上記円筒管(B)が、上記円筒管(A)のカット面と接合しうる、斜めにカットされた端面を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
上記円筒管(A)2個と斜めにカットされた端面を有する円筒管との合計3個の部材を、前者部材2個については、その略V字状にカットした先端面の片側半分同士を突き合わせ、それらの先端面の残余の各片側半分を後者部材と突き合わせるようにして、相互に略斜めY字状に突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法。
【請求項8】
上記略V字状の形態は、その尖端部が略直角のものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
上記略V字状の形態は、その尖端部が略直角のものであり、かつ斜めにカットされた端面が、略45°の傾斜面であることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
インフュージョン成形が、繊維補強材をバッグフィルムで円筒管上に気密に覆うとともに、バッグフィルム内を真空状態に減圧する減圧ラインおよびバッグフィルム内に樹脂を注入する注入ラインを接続し、バッグフィルム内に減圧下で流動性樹脂を吸引注入し、樹脂を固化或いは硬化するものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
巻き付けは、所定の長さに切断された多数の繊維補強材を、それぞれ接合部の周方向に位置をずらせながら、一方の端面のみを接着して、略風車状に積層するものとすることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
巻き付けは、繊維補強材を幅方向にもずらすことにより、端面がなだらかになるように積層するものとすることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
千鳥状にずらすことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
巻き付けは、幅が少しずつ異なる繊維補強材を順次積層し、端面をなだらかにするものとすることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項15】
繊維補強材を積層するのを、管軸方向に繊維が直交するように行うことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
繊維補強材が、直交クロス材であることを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
繊維補強材が、シート状物であることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
シート状物が、略正方形状のものであることを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【請求項1】
(A)先端を正面視略V字状にカットした円筒管を1個または2個用い、(B)それと接合しうる円筒管とを突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法。
【請求項2】
上記円筒管(B)が、一部を正面視略V字状に切り欠いたものであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
一部を正面視略V字状に切り欠いた円筒管と、その略V字状の切り欠きに合致するように先端を正面視略V字状にカットした円筒管とを突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法。
【請求項4】
上記円筒管(B)が、上記円筒管(A)の正面視略V字状にカットした先端面の片側半分と接合しうる、一部斜めにカットされた端面を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
先端を正面視略V字状にカットした円筒管とその先端面の片側半分と接合しうる、一部斜めにカットされた端面を有する円筒管2個との合計3個の部材を相互に略Y字状に突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法。
【請求項6】
上記円筒管(B)が、上記円筒管(A)のカット面と接合しうる、斜めにカットされた端面を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
上記円筒管(A)2個と斜めにカットされた端面を有する円筒管との合計3個の部材を、前者部材2個については、その略V字状にカットした先端面の片側半分同士を突き合わせ、それらの先端面の残余の各片側半分を後者部材と突き合わせるようにして、相互に略斜めY字状に突き合わせて接合し、接合部に繊維補強材を積層状に巻き付け、インフュージョン成形に付して接合部を繊維強化樹脂で囲包し強化することを特徴とする繊維強化樹脂製チーズの製造方法。
【請求項8】
上記略V字状の形態は、その尖端部が略直角のものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
上記略V字状の形態は、その尖端部が略直角のものであり、かつ斜めにカットされた端面が、略45°の傾斜面であることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
インフュージョン成形が、繊維補強材をバッグフィルムで円筒管上に気密に覆うとともに、バッグフィルム内を真空状態に減圧する減圧ラインおよびバッグフィルム内に樹脂を注入する注入ラインを接続し、バッグフィルム内に減圧下で流動性樹脂を吸引注入し、樹脂を固化或いは硬化するものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
巻き付けは、所定の長さに切断された多数の繊維補強材を、それぞれ接合部の周方向に位置をずらせながら、一方の端面のみを接着して、略風車状に積層するものとすることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
巻き付けは、繊維補強材を幅方向にもずらすことにより、端面がなだらかになるように積層するものとすることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
千鳥状にずらすことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
巻き付けは、幅が少しずつ異なる繊維補強材を順次積層し、端面をなだらかにするものとすることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項15】
繊維補強材を積層するのを、管軸方向に繊維が直交するように行うことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
繊維補強材が、直交クロス材であることを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
繊維補強材が、シート状物であることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
シート状物が、略正方形状のものであることを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−104933(P2011−104933A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264532(P2009−264532)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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