繊維状柱状構造体集合体およびそれを用いた粘着部材
【課題】優れた機械的特性、高い比表面積、優れた粘着特性を有する繊維状柱状構造体集合体、優れた耐熱性、高い比表面積、室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を有する繊維状柱状構造体集合体、高い比表面積、表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有する繊維状柱状構造体集合体及び、これらのような繊維状柱状構造体集合体を用いた粘着部材を提供する。
【解決手段】粘着部材に用いる繊維状柱状構造体集合体1であって、複数の繊維状柱状構造体2を備え、該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有し、該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10〜30層であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下であり、最大層数が5〜30層であり、最小層数が1〜10層である。
【解決手段】粘着部材に用いる繊維状柱状構造体集合体1であって、複数の繊維状柱状構造体2を備え、該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有し、該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10〜30層であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下であり、最大層数が5〜30層であり、最小層数が1〜10層である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状柱状構造体集合体およびその用途に関する。より詳細には、本発明は、優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えた繊維状柱状構造体集合体およびそれを用いた粘着部材に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用途において、種々の特性を持つ粘着剤が使われている。しかし、そのほとんどの材料は、柔軟にバルク設計された粘弾性体である。粘弾性体からなる粘着剤は、そのモジュラスの低さから、被着体にぬれて馴染み、接着力を発現する。
【0003】
一方、新規な粘着剤として、微細な直径を有する柱状の繊維構造体が接着特性を示すことが知られている。ミクロオーダー、ナノオーダーの直径を有するため、被着体の表面凹凸に追従し、ファンデルワールス力によって接着力を発現することが明らかになっている。
【0004】
微細な直径を有する柱状の繊維構造体を粘着剤として用いる方法として、例えば、(1)柱状のポアを有するフィルターに樹脂を充填した後にフィルターを除去して粘着剤とする技術や、(2)Si基板上にて化学蒸着気相法(CVD法)により微細な直径を有する柱状の繊維構造体を成長させて粘着剤とする技術が挙げられる(特許文献1〜3)。
【0005】
しかし、上記(1)の技術においては、使用できるフィルターに限界があるため、作製できる柱状の繊維構造体の長さが十分でなく、接着力が低いという問題がある。
【0006】
また、上記(2)の技術においては、柱状の繊維構造体一本での接着力は高く、単位面積あたりの接着力に換算すると、汎用の粘着剤と同等の値が得られている。しかし、一般に行われている粘着剤の接着評価方法(特許文献3)に従って、1cm2程度の接着面積にて接着力の評価を行った場合、そのせん断接着力は低く、従来汎用の粘着剤に比べて微弱であるという問題がある。
【0007】
また粘着剤に要求される特性は、用途により様々である。その中で、高い温度条件下で用いられる粘着剤には、耐熱性が必要とされる。しかし、一般的に用いられている汎用の粘着剤である、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合系樹脂などを原料とする粘着剤は、これらの樹脂の分解温度が低いので、200℃以上の温度にて分解してしまうという問題がある。また、上記のような樹脂以外を原料とする粘着剤についても、高い温度条件下では、室温に比べてモジュラスの大きな変化を伴うため、室温での接着力に比べて劣るという問題や、糊残りなどによる汚染の問題がある。
【0008】
また、複数の被着体に接着剥離を繰り返す粘着剤には、被着体選択性のないことが必要とされる。しかし、一般的に用いられている汎用の粘着剤である、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合系樹脂などを原料とする粘着剤は、これら樹脂の接着力が被着体の表面自由エネルギーに依存するため、表面自由エネルギーが大きく異なる被着体に対して接着力が大幅に異なってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6737160号
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0071870号
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0068195号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、優れた機械的特性、高い比表面積、優れた粘着特性を有する繊維状柱状構造体集合体を提供することにある。また、優れた耐熱性、高い比表面積、室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を有する繊維状柱状構造体集合体を提供することにある。また、高い比表面積、表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有する繊維状柱状構造体集合体を提供することにある。さらに、これらのような繊維状柱状構造体集合体を用いた粘着部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の繊維状柱状構造体集合体(1)は、
複数の直径を有する繊維状柱状構造体を備え、
該複数の直径を有する繊維状柱状構造体の直径分布の分布幅が10nm以上であり、該直径分布の最頻値の相対頻度が30%以下である。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記直径分布の最頻値が5nmから15nmの範囲に存在する。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記複数の直径を有する繊維状柱状構造体が長さ方向に配向している。
【0014】
好ましい実施形態においては、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が15N/cm2以上である。
【0015】
好ましい実施形態においては、本発明の繊維状柱状構造体集合体(1)は、基材をさらに備え、上記繊維状柱状構造体の片端が該基材に固定されている。
【0016】
本発明の別の局面によれば、カーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)が提供される。
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、
複数の繊維状柱状構造体を備え、
該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブであり、
該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10層以上であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下である。
【0017】
好ましい実施形態においては、上記層数分布の最頻値が、層数2層から層数10層の範囲に存在する。
【0018】
好ましい実施形態においては、上記複数層を有するカーボンナノチューブが、長さ300μm以上のカーボンナノチューブを含む。
好ましい実施形態においては、上記複数層を有するカーボンナノチューブが長さ方向に配向している。
好ましい実施形態においては、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が15N/cm2以上である。
好ましい実施形態においては、本発明の繊維状柱状構造体集合体(2)は、基材をさらに備え、上記カーボンナノチューブの片端が該基材に固定されている。
【0019】
本発明のさらに別の局面によれば、カーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)が提供される。
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、
複数の繊維状柱状構造体を備え、
該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブであり、
該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10層以上であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下であり、
250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍である。
【0020】
好ましい実施形態においては、上記複数層を有するカーボンナノチューブが、長さ300μm以上のカーボンナノチューブを含む。
【0021】
好ましい実施形態においては、上記層数分布の最頻値が、層数1層から層数10層の範囲に存在する。
【0022】
好ましい実施形態においては、上記複数層を有するカーボンナノチューブが長さ方向に配向している。
好ましい実施形態においては、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が15N/cm2以上である。
好ましい実施形態においては、本発明の繊維状柱状構造体集合体(3)は、基材をさらに備え、上記カーボンナノチューブの片端が該基材に固定されている。
【0023】
本発明のさらに別の局面によれば、カーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)が提供される。
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、
複数の繊維状柱状構造体を備え、
該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブであり、
該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10層以上であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下であり、
表面自由エネルギーaの被着体に対する室温におけるせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体に対する室温におけるせん断接着力をBとすると(ただし、a>b)、B/Aの値が0.8〜1.2である。
【0024】
好ましい実施形態においては、上記複数層を有するカーボンナノチューブが、長さ300μm以上のカーボンナノチューブを含む。
【0025】
好ましい実施形態においては、上記層数分布の最頻値が、層数1層から層数10層の範囲に存在する。
【0026】
好ましい実施形態においては、上記複数層を有するカーボンナノチューブが長さ方向に配向している。
好ましい実施形態においては、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が15N/cm2以上である。
好ましい実施形態においては、本発明の繊維状柱状構造体集合体(4)は、基材をさらに備え、上記カーボンナノチューブの片端が該基材に固定されている。
【0027】
本発明のさらに別の局面によれば、粘着部材が提供される。本発明の粘着部材は、本発明の繊維状柱状構造体集合体を用いたものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、優れた機械的特性、高い比表面積、優れた粘着特性を有する繊維状柱状構造体集合体を提供することができる。また、優れた耐熱性、高い比表面積、室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を有する繊維状柱状構造体集合体を提供することができる。また、高い比表面積、表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有する繊維状柱状構造体集合体を提供することができる。さらに、これらのような繊維状柱状構造体集合体を用いた粘着部材を提供することができる。また、本発明の繊維状柱状構造体集合体は、耐熱保持力に優れ、例えば、スライドガラスに圧着して350℃で2時間などの高温下においた後でもずれを生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の好ましい実施形態における繊維状柱状構造体集合体の概略断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態におけるカーボンナノチューブ集合体製造装置の概略断面図である。
【図3】実施例1で得られたカーボンナノチューブ集合体(1)の層数分布を示す図である。
【図4】実施例2で得られたカーボンナノチューブ集合体(2)の層数分布を示す図である。
【図5】比較例1で得られたカーボンナノチューブ集合体(C1)の層数分布を示す図である。
【図6】実施例3で得られたカーボンナノチューブ集合体(3)の直径分布を示す図である。
【図7】実施例4で得られたカーボンナノチューブ集合体(4)の直径分布を示す図である。
【図8】比較例2で得られたカーボンナノチューブ集合体(C2)の直径分布を示す図である。
【図9】比較例3で得られたカーボンナノチューブ集合体(C3)の直径分布を示す図である。
【図10】実施例5で得られたカーボンナノチューブ集合体(5)の層数分布を示す図である。
【図11】実施例6で得られたカーボンナノチューブ集合体(6)の層数分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の好ましい実施形態における繊維状柱状構造体集合体の概略断面図(各構成部分を明示するために縮尺は正確に記載されていない)を示す。繊維状柱状構造体集合体10は、基材1と、繊維状柱状構造体2を備える。繊維状柱状構造体の片端2aは、基材1に固定されている。繊維状柱状構造体2は、長さ方向Lに配向している。繊維状柱状構造体2は、好ましくは、基材1に対して略垂直方向に配向している。本図示例とは異なり、繊維状柱状構造体集合体が基材を備えない場合であっても、繊維状柱状構造体は互いにファンデルワールス力によって集合体として存在し得るので、本発明の繊維状柱状構造体集合体は、基材を備えない集合体であっても良い。
【0031】
〔繊維状柱状構造体集合体(1)〕
本発明の繊維状柱状構造体集合体(1)は、複数の直径を有する繊維状柱状構造体を備え、該複数の直径を有する繊維状柱状構造体の直径分布の分布幅が10nm以上であり、該直径分布の最頻値の相対頻度が30%以下である。
【0032】
上記繊維状柱状構造体の材料としては、任意の適切な材料を採用し得る。例えば、アルミ、鉄などの金属;シリコンなどの無機材料;カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどのカーボン材料;エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックなどの高モジュラスの樹脂;などが挙げられる。樹脂の具体例としては、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。樹脂の分子量などの諸物性は、本発明の目的を達成しうる範囲において、任意の適切な物性を採用し得る。
【0033】
繊維状柱状構造体の直径分布の分布幅は10nm以上であり、好ましくは10〜30nm、より好ましくは10〜25nm、さらに好ましくは10〜20nmである。
【0034】
上記繊維状柱状構造体の直径分布の「分布幅」とは、繊維状柱状構造体の直径の最大数と最小数との差をいう。本発明において、繊維状柱状構造体の直径分布の分布幅が上記範囲内にあることにより、該繊維状柱状構造体は優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該繊維状柱状構造体は優れた粘着特性を示す繊維状柱状構造体集合体となり得る。なお、本発明において、繊維状柱状構造体の直径、直径分布は、任意の適切な装置によって測定すれば良い。好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)によって測定される。例えば、繊維状柱状構造体集合体から少なくとも10本、好ましくは20本以上の繊維状柱状構造体をSEMあるいはTEMによって測定し、直径および直径分布を評価すれば良い。
【0035】
上記繊維状柱状構造体の直径の最大数は、好ましくは5〜30nm、より好ましくは10〜30nm、さらに好ましくは15〜30nm、特に好ましくは15〜25nmである。上記繊維状柱状構造体の直径の最小数は、好ましくは1〜15nm、より好ましくは5〜15nmである。本発明において、繊維状柱状構造体の直径の最大数と最小数が上記範囲内にあることにより、該繊維状柱状構造体は一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該繊維状柱状構造体は一層優れた粘着特性を示す繊維状柱状構造体集合体となり得る。
【0036】
上記直径分布の最頻値の相対頻度は、30%以下であり、好ましくは1〜25%、より好ましくは5〜25%、さらに好ましくは10〜25%、特に好ましくは15〜25%である。本発明において、直径分布の最頻値の相対頻度が上記範囲内にあることにより、該繊維状柱状構造体は優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該繊維状柱状構造体は優れた粘着特性を示す繊維状柱状構造体集合体となり得る。
【0037】
上記直径分布の最頻値は、直径5nmから15nmの範囲に存在することが好ましく、直径5nmから10nmに存在することがより好ましい。本発明において、直径分布の最頻値が上記範囲内にあることにより、該繊維状柱状構造体は優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該繊維状柱状構造体は優れた粘着特性を示す繊維状柱状構造体集合体となり得る。
【0038】
上記繊維状柱状構造体の形状としては、その横断面が任意の適切な形状を有していれば良い。例えば、その横断面が、略円形、楕円形、n角形(nは3以上の整数)等が挙げられる。また、上記繊維状柱状構造体は、中空であっても良いし、充填材料であっても良い。
【0039】
上記繊維状柱状構造体の長さは、任意の適切な長さに設定され得る。繊維状柱状構造体の長さは、好ましくは300μm以上、より好ましくは300〜10000μm、さらに好ましくは300〜1000μm、特に好ましくは300〜900μmである。本発明において、繊維状柱状構造体の長さが上記範囲内にあることにより、該繊維状柱状構造体は一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該繊維状柱状構造体は一層優れた粘着特性を示す繊維状柱状構造体集合体となり得る。
【0040】
本発明の繊維状柱状構造体集合体(1)において、上記繊維状柱状構造体中の、長さが300μm以上の繊維状柱状構造体の含有割合は、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、さらに好ましくは95〜100%、特に好ましくは98〜100%、最も好ましくは実質的に100%である。ここで、「実質的に100%」とは、測定機器における検出限界において100%であることを意味する。本発明において、上記繊維状柱状構造体中の、長さが300μm以上の繊維状柱状構造体の含有割合が上記範囲内にあることにより、該繊維状柱状構造体は一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該繊維状柱状構造体は一層優れた粘着特性を示す繊維状柱状構造体集合体となり得る。
【0041】
本発明の繊維状柱状構造体集合体(1)は、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が、好ましくは15N/cm2以上である。より好ましくは20〜500N/cm2、さらに好ましくは30〜100N/cm2、特に好ましくは30〜80N/cm2、特に好ましくは35〜50N/cm2である。ここで、本発明において「室温」とは温度25℃の条件下を意味するものとする。
【0042】
上記繊維状柱状構造体の比表面積、密度は、任意の適切な値に設定され得る。
【0043】
本発明の繊維状柱状構造体集合体(1)は、該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブである場合、好ましくは、該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10層以上であり、好ましくは、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下である。
【0044】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅は、より好ましくは10〜30層、さらに好ましくは10〜25層、特に好ましくは10〜20層である。
【0045】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の「分布幅」とは、複数層を有するカーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数との差をいう。本発明において、複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。なお、本発明において、カーボンナノチューブの層数、層数分布は、任意の適切な装置によって測定すれば良い。好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)によって測定される。例えば、カーボンナノチューブ集合体から少なくとも10本、好ましくは20本以上のカーボンナノチューブをSEMあるいはTEMによって測定し、層数および層数分布を評価すれば良い。
【0046】
上記最大層数は、好ましくは5〜30層、より好ましくは10〜30層、さらに好ましくは15〜30層、特に好ましくは15〜25層である。上記最小層数は、好ましくは1〜10層、より好ましくは1〜5層である。本発明において、カーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは一層優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0047】
上記層数分布の最頻値の相対頻度は、好ましくは1〜25%、より好ましくは5〜25%、さらに好ましくは10〜25%、特に好ましくは15〜25%である。本発明において、層数分布の最頻値の相対頻度が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0048】
上記層数分布の最頻値は、層数2層から層数10層に存在することが好ましく、さらに好ましくは層数3層から層数10層に存在する。本発明において、層数分布の最頻値が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0049】
〔繊維状柱状構造体集合体(2):カーボンナノチューブ集合体〕
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、複数の繊維状柱状構造体を備え、該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブであり、該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10層以上であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下である。
【0050】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅は10層以上であり、好ましくは10〜30層、より好ましくは10〜25層、さらに好ましくは10〜20層である。
【0051】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の「分布幅」とは、複数層を有するカーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数との差をいう。本発明において、複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。なお、本発明において、カーボンナノチューブの層数、層数分布は、任意の適切な装置によって測定すれば良い。好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)によって測定される。例えば、カーボンナノチューブ集合体から少なくとも10本、好ましくは20本以上のカーボンナノチューブをSEMあるいはTEMによって測定し、層数および層数分布を評価すれば良い。
【0052】
上記最大層数は、好ましくは5〜30層、より好ましくは10〜30層、さらに好ましくは15〜30層、特に好ましくは15〜25層である。上記最小層数は、好ましくは1〜10層、より好ましくは1〜5層である。本発明において、カーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは一層優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0053】
上記層数分布の最頻値の相対頻度は、25%以下であり、好ましくは1〜25%、より好ましくは5〜25%、さらに好ましくは10〜25%、特に好ましくは15〜25%である。本発明において、層数分布の最頻値の相対頻度が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0054】
上記層数分布の最頻値は、層数2層から層数10層に存在することが好ましく、さらに好ましくは層数3層から層数10層に存在する。本発明において、層数分布の最頻値が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0055】
上記カーボンナノチューブの形状としては、その横断面が任意の適切な形状を有していれば良い。例えば、その横断面が、略円形、楕円形、n角形(nは3以上の整数)等が挙げられる。
【0056】
上記カーボンナノチューブの長さは、任意の適切な長さに設定され得る。複数層を有するカーボンナノチューブは、好ましくは、長さが300μm以上のカーボンナノチューブを含む。上記カーボンナノチューブの長さは、より好ましくは300〜10000μmであり、さらに好ましくは300〜1000μm、特に好ましくは300〜900μmである。本発明において、カーボンナノチューブの長さが上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは一層優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0057】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)において、上記複数層を有するカーボンナノチューブ中の、長さが300μm以上のカーボンナノチューブの含有割合は、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、さらに好ましくは95〜100%、特に好ましくは98〜100%、最も好ましくは実質的に100%である。ここで、「実質的に100%」とは、測定機器における検出限界において100%であることを意味する。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)において、上記複数層を有するカーボンナノチューブ中の、長さが300μm以上のカーボンナノチューブの含有割合が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは一層優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0058】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が、好ましくは15N/cm2以上である。より好ましくは20〜500N/cm2、さらに好ましくは30〜100N/cm2、特に好ましくは30〜80N/cm2、特に好ましくは35〜50N/cm2である。
【0059】
上記カーボンナノチューブの比表面積、密度は、任意の適切な値に設定され得る。
【0060】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、好ましくは、250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍であり、より好ましくは0.85〜1.15倍、さらに好ましくは0.9〜1.1倍である。250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍であることにより、該繊維状柱状構造体集合体(2)は優れた耐熱性を備えることができ、該繊維状柱状構造体集合体(2)は室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0061】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、好ましくは、表面自由エネルギーaの被着体に対するせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体にするせん断接着力をBとしたときの(ただしa>B)B/Aの値が0.8〜1.2であり、より好ましくは0.85〜1.15、さらに好ましくは0.9〜1.1である。表面自由エネルギーaの被着体に対するせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体にするせん断接着力をBとしたときの(ただしa>B)B/Aの値が0.8〜1.2であることにより、該繊維状柱状構造体集合体(2)は、表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0062】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、半導体ウェハに圧着して接着した後に剥離する際に、該半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が、好ましくは30個/4インチウェハ以下、より好ましくは25個/4インチウェハ以下、さらに好ましくは20個/4インチウェハ以下である。より具体的には、ポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)を、4インチ半導体ウェハに5kgローラーにより圧着して貼り合わせた後、180°ピールにて剥離した際の、剥離した半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が、好ましくは30個/4インチウェハ以下、より好ましくは25個/4インチウェハ以下、さらに好ましくは20個/4インチウェハ以下である。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、好ましくは、該集合体を上記のように半導体ウェハに圧着・接着した後に剥離する際の該半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が上記のように少数であるので、非汚染性に極めて優れる。
【0063】
なお、上記非汚染性を評価する場合の180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行う。ただし、試験片は、ポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)(半導体ウェハに圧着して接着するもの)そのものであり、圧着は5kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定する。
【0064】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、ポリプロピレン樹脂の基材(厚み30μm)に固定した場合、180°ピールの値が、好ましくは1N/20mm以下、より好ましくは0.001〜1N/20mm、さらに好ましくは0.001〜0.7N/20mm、より好ましくは0.001〜0.5N/20mm、特に好ましくは0.001〜0.4N/20mmである。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、好ましくは、ポリプロピレン樹脂の基材(厚み30μm)に固定した場合の180°ピールの値が上記のように小さいので、軽剥離性に極めて優れる。通常の粘着剤の場合、180°ピールの値は1N/20mmより大きい。
【0065】
なお、上記軽剥離性を評価する場合の180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行う。ただし、試験片は、幅20mmのポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)であり、試験板としてシリコンウェハ(ベアウェハ、P型、KST製)を用い、圧着は2kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定する。
【0066】
〔繊維状柱状構造体集合体(3):カーボンナノチューブ集合体〕
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、複数の繊維状柱状構造体を備え、該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブであり、該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10層以上であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下であり、250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍である。
【0067】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅は、好ましくは10〜30層、より好ましくは10〜25層、さらに好ましくは10〜20層である。
【0068】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の「分布幅」とは、複数層を有するカーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数との差をいう。本発明において、複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層優れた耐熱性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。なお、本発明において、カーボンナノチューブの層数、層数分布は、任意の適切な装置によって測定すれば良い。好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)によって測定される。例えば、カーボンナノチューブ集合体から少なくとも10本、好ましくは20本以上のカーボンナノチューブをSEMあるいはTEMによって測定し、層数および層数分布を評価すれば良い。
【0069】
上記最大層数は、好ましくは1〜30層、より好ましくは1〜25層、さらに好ましくは2〜25層である。上記最小層数は、好ましくは1〜10層、より好ましくは1〜5層である。本発明において、カーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層優れた耐熱性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0070】
上記層数分布の最頻値の相対頻度は、好ましくは1〜25%、より好ましくは5〜25%、さらに好ましくは10〜25%、特に好ましくは15〜25%である。本発明において、層数分布の最頻値の相対頻度が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層優れた耐熱性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0071】
上記層数分布の最頻値は、層数1層から層数10層に存在することが好ましく、より好ましくは層数2層から層数10層に存在し、さらに好ましくは層数3層から層数10層に存在する。本発明において、層数分布の最頻値が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層優れた耐熱性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0072】
上記カーボンナノチューブの形状としては、その横断面が任意の適切な形状を有していれば良い。例えば、その横断面が、略円形、楕円形、n角形(nは3以上の整数)等が挙げられる。
【0073】
上記カーボンナノチューブの長さは、任意の適切な長さに設定され得る。複数層を有するカーボンナノチューブは、好ましくは、長さが300μm以上のカーボンナノチューブを含む。上記カーボンナノチューブの長さは、より好ましくは300〜10000μmであり、さらに好ましくは300〜5000μm、特に好ましくは300〜2000μmである。本発明において、カーボンナノチューブの長さが上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層優れた耐熱性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0074】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)において、上記複数層を有するカーボンナノチューブ中の、長さが300μm以上のカーボンナノチューブの含有割合は、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、さらに好ましくは95〜100%、特に好ましくは98〜100%、最も好ましくは実質的に100%である。ここで、「実質的に100%」とは、測定機器における検出限界において100%であることを意味する。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)において、上記複数層を有するカーボンナノチューブ中の、長さが300μm以上のカーボンナノチューブの含有割合が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層優れた耐熱性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0075】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍であり、好ましくは0.85〜1.15倍、より好ましくは0.9〜1.1倍である。250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍であることにより、該繊維状柱状構造体集合体(3)は優れた耐熱性を備えることができ、該繊維状柱状構造体集合体(3)は室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0076】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が、好ましくは15N/cm2以上である。より好ましくは20〜500N/cm2、さらに好ましくは30〜100N/cm2、特に好ましくは30〜80N/cm2、特に好ましくは35〜50N/cm2である。
【0077】
上記カーボンナノチューブの比表面積、密度は、任意の適切な値に設定され得る。
【0078】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、好ましくは、表面自由エネルギーaの被着体に対するせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体にするせん断接着力をBとしたときの(ただしa>B)B/Aの値が0.8〜1.2であり、より好ましくは0.85〜1.15、さらに好ましくは0.9〜1.1である。表面自由エネルギーaの被着体に対するせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体にするせん断接着力をBとしたときの(ただしa>B)B/Aの値が0.8〜1.2であることにより、該繊維状柱状構造体集合体(3)は、表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0079】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、半導体ウェハに圧着して接着した後に剥離する際に、該半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が、好ましくは30個/4インチウェハ以下、より好ましくは25個/4インチウェハ以下、さらに好ましくは20個/4インチウェハ以下である。より具体的には、ポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)を、4インチ半導体ウェハに5kgローラーにより圧着して貼り合わせた後、180°ピールにて剥離した際の、剥離した半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が、好ましくは30個/4インチウェハ以下、より好ましくは25個/4インチウェハ以下、さらに好ましくは20個/4インチウェハ以下である。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、好ましくは、該集合体を上記のように半導体ウェハに圧着・接着した後に剥離する際の該半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が上記のように少数であるので、非汚染性に極めて優れる。
【0080】
なお、上記非汚染性を評価する場合の180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行う。ただし、試験片は、ポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)(半導体ウェハに圧着して接着するもの)そのものであり、圧着は5kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定する。
【0081】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、ポリプロピレン樹脂の基材(厚み30μm)に固定した場合、180°ピールの値が、好ましくは1N/20mm以下、より好ましくは0.001〜1N/20mm、さらに好ましくは0.001〜0.7N/20mm、より好ましくは0.001〜0.5N/20mm、特に好ましくは0.001〜0.4N/20mmである。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、好ましくは、ポリプロピレン樹脂の基材(厚み30μm)に固定した場合の180°ピールの値が上記のように小さいので、軽剥離性に極めて優れる。通常の粘着剤の場合、180°ピールの値は1N/20mmより大きい。
【0082】
なお、上記軽剥離性を評価する場合の180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行う。ただし、試験片は、幅20mmのポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)であり、試験板としてシリコンウェハ(ベアウェハ、P型、KST製)を用い、圧着は2kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定する。
【0083】
〔繊維状柱状構造体集合体(4):カーボンナノチューブ集合体〕
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、複数の繊維状柱状構造体を備え、該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブであり、該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10層以上であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下であり、表面自由エネルギーaの被着体に対する室温におけるせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体に対する室温におけるせん断接着力をBとすると(ただし、a>b)、B/Aの値が0.8〜1.2である。
【0084】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅は、好ましくは10〜30層、より好ましくは10〜25層、さらに好ましくは10〜20層である。
【0085】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の「分布幅」とは、複数層を有するカーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数との差をいう。本発明において、複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層高い比表面積を備えることができ、該カーボンナノチューブは表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。なお、本発明において、カーボンナノチューブの層数、層数分布は、任意の適切な装置によって測定すれば良い。好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)によって測定される。例えば、カーボンナノチューブ集合体から少なくとも10本、好ましくは20本以上のカーボンナノチューブをSEMあるいはTEMによって測定し、層数および層数分布を評価すれば良い。
【0086】
上記最大層数は、好ましくは1〜30層、より好ましくは1〜25層、さらに好ましくは2〜25層である。上記最小層数は、好ましくは1〜10層、より好ましくは1〜5層である。本発明において、カーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層高い比表面積を備えることができ、該カーボンナノチューブは表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0087】
上記層数分布の最頻値の相対頻度は、好ましくは1〜25%、より好ましくは5〜25%、さらに好ましくは10〜25%、特に好ましくは15〜25%である。本発明において、層数分布の最頻値の相対頻度が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層高い比表面積を備えることができ、該カーボンナノチューブは表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0088】
上記層数分布の最頻値は、層数1層から層数10層に存在することが好ましく、より好ましくは層数2層から層数10層に存在し、さらに好ましくは層数3層から層数10層に存在する。本発明において、層数分布の最頻値が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層高い比表面積を備えることができ、該カーボンナノチューブは表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0089】
上記カーボンナノチューブの形状としては、その横断面が任意の適切な形状を有していれば良い。例えば、その横断面が、略円形、楕円形、n角形(nは3以上の整数)等が挙げられる。
【0090】
上記カーボンナノチューブの長さは、任意の適切な長さに設定され得る。複数層を有するカーボンナノチューブは、好ましくは、長さが300μm以上のカーボンナノチューブを含む。上記カーボンナノチューブの長さは、より好ましくは300〜10000μmであり、さらに好ましくは300〜5000μm、特に好ましくは300〜2000μmである。本発明において、カーボンナノチューブの長さが上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層高い比表面積を備えることができ、該カーボンナノチューブは表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0091】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)において、上記複数層を有するカーボンナノチューブ中の、長さが300μm以上のカーボンナノチューブの含有割合は、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、さらに好ましくは95〜100%、特に好ましくは98〜100%、最も好ましくは実質的に100%である。ここで、「実質的に100%」とは、測定機器における検出限界において100%であることを意味する。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)において、上記複数層を有するカーボンナノチューブ中の、長さが300μm以上のカーボンナノチューブの含有割合が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層高い比表面積を備えることができ、該カーボンナノチューブは表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0092】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が、好ましくは15N/cm2以上である。より好ましくは20〜500N/cm2、さらに好ましくは30〜100N/cm2、特に好ましくは30〜80N/cm2、特に好ましくは35〜50N/cm2である。
【0093】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、表面自由エネルギーaの被着体に対する室温におけるせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体に対する室温におけるせん断接着力をBとしたとき(ただし、a>b)のB/Aの値が0.8〜1.2であり、好ましくは0.85〜1.15、より好ましくは0.9〜1.1である。表面自由エネルギーaの被着体に対する室温におけるせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体に対する室温におけるせん断接着力をBとしたとき(ただし、a>b)のB/Aの値が0.8〜1.2であることにより、該繊維状柱状構造体集合体(4)は、表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0094】
上記カーボンナノチューブの比表面積、密度は、任意の適切な値に設定され得る。
【0095】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、好ましくは、250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍であり、より好ましくは0.85〜1.15倍、さらに好ましくは0.9〜1.1倍である。250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍であることにより、該繊維状柱状構造体集合体(4)は優れた耐熱性を備えることができ、該繊維状柱状構造体集合体(4)は室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0096】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、半導体ウェハに圧着して接着した後に剥離する際に、該半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が、好ましくは30個/4インチウェハ以下、より好ましくは25個/4インチウェハ以下、さらに好ましくは20個/4インチウェハ以下である。より具体的には、ポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)を、4インチ半導体ウェハに5kgローラーにより圧着して貼り合わせた後、180°ピールにて剥離した際の、剥離した半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が、好ましくは30個/4インチウェハ以下、より好ましくは25個/4インチウェハ以下、さらに好ましくは20個/4インチウェハ以下である。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、好ましくは、該集合体を上記のように半導体ウェハに圧着・接着した後に剥離する際の該半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が上記のように少数であるので、非汚染性に極めて優れる。
【0097】
なお、上記非汚染性を評価する場合の180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行う。ただし、試験片は、ポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)(半導体ウェハに圧着して接着するもの)そのものであり、圧着は5kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定する。
【0098】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、ポリプロピレン樹脂の基材(厚み30μm)に固定した場合、180°ピールの値が、好ましくは1N/20mm以下、より好ましくは0.001〜1N/20mm、さらに好ましくは0.001〜0.7N/20mm、より好ましくは0.001〜0.5N/20mm、特に好ましくは0.001〜0.4N/20mmである。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、好ましくは、ポリプロピレン樹脂の基材(厚み30μm)に固定した場合の180°ピールの値が上記のように小さいので、軽剥離性に極めて優れる。通常の粘着剤の場合、180°ピールの値は1N/20mmより大きい。
【0099】
なお、上記軽剥離性を評価する場合の180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行う。ただし、試験片は、幅20mmのポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)であり、試験板としてシリコンウェハ(ベアウェハ、P型、KST製)を用い、圧着は2kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定する。
【0100】
〔繊維状柱状構造体集合体の製造方法〕
本発明の繊維状柱状構造体集合体の製造方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。本発明の繊維状柱状構造体集合体の製造方法の好ましい実施形態の例として、カーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体の製造方法を説明する。
【0101】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体の製造方法としては、任意の適切な方法を採用され得る。例えば、平滑な基板の上に触媒層を構成し、熱、プラズマなどにより触媒を活性化させた状態で炭素源を充填し、カーボンナノチューブを成長させる、化学蒸着気相法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)によって、基板からほぼ垂直に配向したカーボンナノチューブ集合体を製造する方法が挙げられる。この場合、基板を取り除けば、長さ方向に配向しているカーボンナノチューブ集合体が得られる。
【0102】
上記基板としては、任意の適切な基板を採用し得る。例えば、平滑性を有し、カーボンナノチューブの製造に耐え得る高温耐熱性を有する材料が挙げられる。このような材料としては、例えば、石英ガラス、シリコン(シリコンウェハなど)、アルミニウムなどの金属板などが挙げられる。
【0103】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体を製造するための装置としては、任意の適切な装置を採用し得る。例えば、熱CVD装置としては、図2に示すような、筒型の反応容器を抵抗加熱式の電気管状炉で囲んで構成されたホットウォール型などが挙げられる。その場合、反応容器としては、例えば、耐熱性の石英管などが好ましく用いられる。
【0104】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体の製造に用い得る触媒(触媒層の材料)としては、任意の適切な触媒を用い得る。例えば、鉄、コバルト、ニッケル、金、白金、銀、銅などの金属触媒が挙げられる。
【0105】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体を製造する際、必要に応じて、基板と触媒層の中間にアルミナ/親水性膜を設けても良い。
【0106】
アルミナ/親水性膜の作製方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、基板の上にSiO2膜を作製し、Alを蒸着後、450℃まで昇温して酸化させることにより得られる。このような作製方法によれば、Al2O3が親水性のSiO2膜と相互作用し、Al2O3を直接蒸着したものよりも粒子径の異なるAl2O3面が形成される。基板の上に、親水性膜を作製することを行わずに、Alを蒸着後に450℃まで昇温して酸化させても、粒子径の異なるAl2O3面が形成され難いおそれがある。また、基板の上に、親水性膜を作製し、Al2O3を直接蒸着しても、粒子径の異なるAl2O3面が形成され難いおそれがある。
【0107】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体の製造に用い得る触媒層の厚みは、微粒子を形成させるため、好ましくは0.01〜20nm、より好ましくは0.1〜10nmである。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体の製造に用い得る触媒層の厚みが上記範囲内にあることによって、該繊維状柱状構造体は優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該繊維状柱状構造体は優れた粘着特性を示す繊維状柱状構造体集合体となり得る。触媒層の形成方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、金属触媒をEB(電子ビーム)、スパッタなどにより蒸着する方法、金属触媒微粒子の懸濁液を基板上に塗布する方法などが挙げられる。
【0108】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体の製造に用い得る炭素源としては、任意の適切な炭素源を用い得る。例えば、メタン、エチレン、アセチレン、ベンゼンなどの炭化水素;メタノール、エタノールなどのアルコール;などが挙げられる。
【0109】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体の製造における製造温度としては、任意の適切な温度を採用し得る。たとえば、本発明の効果を十分に発現し得る触媒粒子を形成させるため、好ましくは400〜1000℃、より好ましくは500〜900℃、さらに好ましくは600〜800℃である。
【0110】
〔粘着部材〕
本発明の粘着部材は、本発明の繊維状柱状構造体集合体を用いたものである。本発明の粘着部材は、好ましくは、本発明の繊維状柱状構造体集合体に基材が備えられたものであり、具体的には、例えば、粘着シート、粘着フィルムが挙げられる。
【0111】
粘着部材の基材としては、石英ガラス、シリコン(シリコンウェハなど)、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。エンジニアリングプラスチックおよびスーパーエンジニアリングプラスチックの具体例としては、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミドが挙げられる。分子量などの諸物性は、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な物性を採用し得る。
【0112】
基材の厚みは、目的に応じて、任意の適切な値に設定され得る。例えば、シリコン基板の場合は、好ましくは100〜10000μm、より好ましくは100〜5000μm、さらに好ましくは100〜2000μmである。例えば、ポリプロピレン基板の場合は、好ましくは1〜1000μm、より好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは5〜100μmである。
【0113】
上記基材の表面は、隣接する層との密着性,保持性などを高めるために、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの化学的または物理的処理,下塗剤(例えば、上記粘着性物質)によるコーティング処理が施されていてもよい。
【0114】
上記基材は単層であっても良いし、多層体であっても良い。
【0115】
本発明の繊維状柱状構造体集合体を基材に固定する場合、その方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、繊維状柱状構造体の製造に使用した基板を基材としてそのまま用いてもよい。また、基材に接着層を設けて固定してもよい。さらに、基材が熱硬化性樹脂の場合は、反応前の状態で薄膜を作製し、カーボンナノチューブの一端を薄膜層に圧着させた後、硬化処理を行って固定すれば良い。また、基材が熱可塑性樹脂や金属などの場合は、溶融した状態で繊維状柱状構造体の一端を圧着させた後、室温まで冷却して固定すれば良い。
【実施例】
【0116】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、繊維状柱状構造体集合体における繊維状柱状構造体の直径・直径分布の評価、繊維状柱状構造体集合体における繊維状柱状構造体の層数・層数分布の評価、繊維状柱状構造体集合体のせん断接着力の測定、被着体の表面自由エネルギーの評価は、以下の方法により行った。
【0117】
<繊維状柱状構造体集合体における繊維状柱状構造体の直径・直径分布の評価>
本発明の繊維状柱状構造体集合体における繊維状柱状構造体の直径および直径分布は、走査型電子顕微鏡(SEM)および/または透過電子顕微鏡(TEM)によって測定した。得られた繊維状柱状構造体集合体の中から少なくとも10本以上、好ましくは20本以上の繊維状柱状構造体をSEMおよび/またはTEMにより観察し、各繊維状柱状構造体の直径を調べ、直径分布を作成した。
【0118】
<繊維状柱状構造体集合体における繊維状柱状構造体の層数・層数分布の評価>
本発明の繊維状柱状構造体集合体における繊維状柱状構造体の層数および層数分布は、走査型電子顕微鏡(SEM)および/または透過電子顕微鏡(TEM)によって測定した。得られた繊維状柱状構造体集合体の中から少なくとも10本以上、好ましくは20本以上の繊維状柱状構造体をSEMおよび/またはTEMにより観察し、各繊維状柱状構造体の層数を調べ、層数分布を作成した。
【0119】
<繊維状柱状構造体集合体のせん断接着力の測定方法(A)>
ガラス(MATSUNAMI スライドガラス27mm×56mm)に、1cm2単位面積に切り出した基材付繊維状柱状構造体集合体の先端が接触するように載置し、5kgのローラーを一往復させて繊維状柱状構造体の先端をガラスに圧着した。その後、30分間放置した。引張り試験機(Instro Tensil Tester)で引張速度50mm/minにて、25℃または250℃にてせん断試験を行い、得られたピークをせん断接着力とした。
【0120】
<繊維状柱状構造体集合体のせん断接着力の測定方法(B)>
ガラス(MATSUNAMI スライドガラス27mm×56mm、表面自由エネルギー=64.4mJ/m2)およびPP板(新神戸電機(株)製、コウベポリシート PP−N−AN、表面自由エネルギー=29.8mJ/m2)のそれぞれに、1cm2単位面積に切り出した基材付カーボンナノチューブ集合体の先端が接触するように載置し、5kgのローラーを一往復させてカーボンナノチューブの先端をガラスに圧着した。その後、30分間放置した。引張り試験機(Instro Tensil Tester)で引張速度50mm/minにて、25℃にてせん断試験を行い、得られたピークをせん断接着力とした。
【0121】
<被着体の表面自由エネルギーの評価>
被着体の表面に3種の液体(水、グリセリン、ヨウ化メチレン)を着滴後、100msの接触角を測定し、その値を用いて以下の方法から表面自由エネルギーを求めた。
表面自由エネルギーの算出方法:
γL(1+cosθ)=2(γLd・γsd)1/2+2(γLp・γsp)1/2・・・(1)
γL:接触角測定に用いた液の表面自由エネルギー
γLd:液の表面自由エネルギーの分散成分
γLp:液の表面自由エネルギーの極性成分
γs:求めたい固体の表面自由エネルギー
γsd:固体の表面自由エネルギーの分散成分
γsp:固体の表面自由エネルギーの極性成分
式(1)を(γLp/γLd)1/2とγL(1+cosθ)/2(γLd)1/2の一次関数に変形して、
γL(1+cosθ)/2(γLd)1/2
=(γsp)1/2(γLp/γLd)1/2+(γsd)1/2・・・(2)
式(2)より、γsd、γspはそれぞれ[傾き]を2乗、[切片]を2乗して求め、γs=γsd+γspとして表面自由エネルギーを算出した。
【0122】
[実施例1]
(カーボンナノチューブ集合体の作製)
表面にSiO2膜を有するシリコン基板(熱酸化膜付ウェハ、KST製、SiO2膜厚み=1μm、SiO2膜とシリコン基板を合わせた厚み=550μm)上に、真空蒸着装置(JEOL製、JEE−4X Vacuum Evaporator)により、Al薄膜(厚み10nm)を形成した後、450℃で1時間酸化処理を施した。このようにして、シリコン基板上にAl2O3膜を形成した。このAl2O3膜上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてさらにFe薄膜(厚み2nm)を蒸着させて触媒層を形成した。
次に、触媒層付シリコン基板をカットして、30mmφの石英管内に載置し、水分率350ppmに保ったヘリウム/水素(120/80sccm)混合ガスを石英管内に30分間流して、管内を置換した。その後、電気管状炉を用いて管内を765℃まで35分間で段階的に昇温させ、765℃にて安定させた。765℃にて10分間放置後、温度を保持したまま、ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)混合ガスを管内に充填させ、30分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させ、カーボンナノチューブ集合体(1)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(1)の長さは638μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(1)の層数分布を図3に示す。図3に示すとおり、最頻値は4層と8層に存在し、相対頻度はそれぞれ20%であった。
また、カーボンナノチューブ集合体(1)の直径分布の分布幅、直径分布の最頻値および該最頻値の相対頻度も測定した。
結果を表1にまとめた。
【0123】
(せん断接着力の測定)
ポリプロピレン樹脂(旭洋紙パルプ株式会社製、厚み30μm)をホットプレート上で200℃に加熱し、溶融させた。上記基板上に垂直配向させて形成させたカーボンナノチューブの片端(上端)を溶融させたポリプロピレン樹脂に圧着した後、室温に冷却して固定した。このようにして、基材付カーボンナノチューブ集合体(1)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(1)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は44.6N/cm2であった。
結果を表1にまとめた。
【0124】
[実施例2]
ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)の混合ガスを石英管内に充填させ、20分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させたこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ集合体(2)を作製した。
カーボンナノチューブ集合体(2)の長さは420μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(2)の層数分布を図4に示す。図4に示すとおり、最頻値は9層に存在し、相対頻度は20%であった。
また、カーボンナノチューブ集合体(2)の直径分布の分布幅、直径分布の最頻値および該最頻値の相対頻度も測定した。
実施例1と同様にして、基材付カーボンナノチューブ集合体(2)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(2)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は36.1N/cm2であった。
結果を表1にまとめた。
【0125】
[比較例1]
(カーボンナノチューブ集合体の作製)
シリコン基板(エレクトロニクス エンド製、厚み525μm)上に、真空蒸着装置(JEOL製、JEE−4X Vacuum Evaporator)により、Al薄膜(厚み10nm)を形成した後、450℃で1時間酸化処理を施した。このようにして、シリコン基板上にAl2O3膜を形成した。このAl2O3膜上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてさらにFe薄膜(厚み0.67nm)を蒸着させて触媒層を形成した。
次に、触媒層付シリコン基板をカットして、30mmφの石英管内に載置し、水分率350ppmに保ったヘリウム/水素(120/80sccm)混合ガスを石英管内に30分間流して、管内を置換した。その後、電気管状炉を用いて管内を765℃まで35分間で段階的に昇温させ、765℃にて安定させた。765℃にて10分間放置後、温度を保持したまま、ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)混合ガスを管内に充填させ、30分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させ、カーボンナノチューブ集合体(C1)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(C1)の長さは799μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(C1)の層数分布を図5に示す。図5に示すとおり、最頻値は4層に存在し、相対頻度は27%であった。
た。
また、カーボンナノチューブ集合体(C1)の直径分布の分布幅、直径分布の最頻値および該最頻値の相対頻度も測定した。
結果を表1にまとめた。
【0126】
(せん断接着力の測定)
ポリプロピレン樹脂(旭洋紙パルプ株式会社製、厚み30μm)をホットプレート上で200℃に加熱し、溶融させた。上記基板上に垂直配向させて形成させたカーボンナノチューブの片端(上端)を溶融させたポリプロピレン樹脂に圧着した後、室温に冷却して固定した。このようにして、基材付カーボンナノチューブ集合体(C1)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(C1)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は7.9N/cm2であった。
結果を表1にまとめた。
【0127】
【表1】
【0128】
実施例1、2に見られるように、繊維状柱状構造体であるカーボンナノチューブの層数分布が分散して且つ層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下の場合、ガラス面に対するせん断接着力が30N/cm2以上の値を示した。これに対し、比較例1に見られるように、繊維状柱状構造体であるカーボンナノチューブの層数分布が単分散で且つ層数分布の最頻値の相対頻度が25%を越えている場合、せん断接着力が10N/cm2未満という低い値を示した。
【0129】
実施例1、2において、高いせん断接着力が発現できるメカニズムとしては以下のように考えられる。層数の小さいカーボンナノチューブはガラスの表面凹凸に追従し、接触面積が増大し、強接着となる反面、カーボンナノチューブ同士の凝集によりガラス表面凹凸に追従できない可能性がある。一方、層数の大きいカーボンナノチューブはガラスの表面凹凸に対する追従性は低い反面、カーボンナノチューブ同士の凝集がないため、接着力の低下が小さい。実施例1、2においては、層数の小さいカーボンナノチューブと層数の大きいカーボンナノチューブを広い分布で存在させることにより、カーボンナノチューブ同士の凝集を防いで、カーボンナノチューブおのおのが独立に働き、ガラスの表面凹凸に追従して接着面積が増大し、強接着を発現するものと考えられる。
【0130】
なお、実施例1、2において、カーボンナノチューブの分布がブロード化する原因としては以下のように考えられる。カーボンナノチューブに関して、Fe蒸着膜を従来よりも厚くすることにより、高温時での微粒子化を一部妨げ、Fe粒子径の分布がブロード化するためと考えられる。また、従来どおりのFe蒸着膜厚であっても、SiO2酸化膜付のSi基板を使用することにより、Al2O3の表面凹凸の分布がブロード化し、Fe微粒子の径分布に影響を与えるものと考えられる。
【0131】
[実施例3]
(カーボンナノチューブ集合体の作製)
表面にSiO2膜を有するシリコン基板(熱酸化膜付ウェハ、KST製、SiO2膜厚み=1μm、SiO2膜とシリコン基板を合わせた厚み=550μm)上に、真空蒸着装置(JEOL製、JEE−4X Vacuum Evaporator)により、Al薄膜(厚み10nm)を形成した後、450℃で1時間酸化処理を施した。このようにして、シリコン基板上にAl2O3膜を形成した。このAl2O3膜上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてさらにFe薄膜(厚み2nm)を蒸着させて触媒層を形成した。
次に、触媒層付シリコン基板をカットして、30mmφの石英管内に載置し、水分率350ppmに保ったヘリウム/水素(120/80sccm)混合ガスを石英管内に30分間流して、管内を置換した。その後、電気管状炉を用いて管内を700℃まで30分間で段階的に昇温させ、700℃にて安定させた。700℃にて10分間放置後、温度を保持したまま、ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)混合ガスを管内に充填させ、30分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させ、カーボンナノチューブ集合体(3)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(3)の長さは722μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(3)の直径分布を図6に示す。図6に示すとおり、最頻値は12nmに存在し、相対頻度は25%であった。
また、カーボンナノチューブ集合体(3)の層数分布の分布幅、層数分布の最頻値および該最頻値の相対頻度も測定した。
結果を表2にまとめた。
【0132】
(せん断接着力の測定)
ポリプロピレン樹脂(旭洋紙パルプ株式会社製、厚み30μm)をホットプレート上で200℃に加熱し、溶融させた。上記基板上に垂直配向させて形成させたカーボンナノチューブの片端(上端)を溶融させたポリプロピレン樹脂に圧着した後、室温に冷却して固定した。このようにして、基材付カーボンナノチューブ集合体(3)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(3)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は40.5N/cm2であった。
結果を表2にまとめた。
【0133】
[実施例4]
ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)の混合ガスを石英管内に充填させ、20分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させたこと以外は、実施例3と同様にしてカーボンナノチューブ集合体(4)を作製した。
カーボンナノチューブ集合体(4)の長さは570μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(4)の直径分布を図7に示す。図7に示すとおり、最頻値は13nmに存在し、相対頻度は22.2%であった。
また、カーボンナノチューブ集合体(4)の層数分布の分布幅、層数分布の最頻値および該最頻値の相対頻度も測定した。
実施例3と同様にして、基材付カーボンナノチューブ集合体(4)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(4)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は31.2N/cm2であった。
結果を表2にまとめた。
【0134】
[比較例2]
(カーボンナノチューブ集合体の作製)
シリコン基板(エレクトロニクス エンド製、厚み525μm)上に、真空蒸着装置(JEOL製、JEE−4X Vacuum Evaporator)により、Al薄膜(厚み10nm)を形成した後、450℃で1時間酸化処理を施した。このようにして、シリコン基板上にAl2O3膜を形成した。このAl2O3膜上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてさらにFe薄膜(厚み0.67nm)を蒸着させて触媒層を形成した。
次に、触媒層付シリコン基板をカットして、30mmφの石英管内に載置し、水分率350ppmに保ったヘリウム/水素(120/80sccm)混合ガスを石英管内に20分間流して、管内を置換した。その後、電気管状炉を用いて管内を700℃まで30分間で段階的に昇温させ、700℃にて安定させた。700℃にて10分間放置後、温度を保持したまま、ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)混合ガスを管内に充填させ、20分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させ、カーボンナノチューブ集合体(C2)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(C2)の長さは589μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(C2)の直径分布を図8に示す。図8に示すとおり、最頻値は5nmに存在し、相対頻度は85.7%であった。
また、カーボンナノチューブ集合体(C2)の層数分布の分布幅、層数分布の最頻値および該最頻値の相対頻度も測定した。
結果を表2にまとめた。
【0135】
(せん断接着力の測定)
ポリプロピレン樹脂(旭洋紙パルプ株式会社製、厚み30μm)をホットプレート上で200℃に加熱し、溶融させた。上記基板上に垂直配向させて形成させたカーボンナノチューブの片端(上端)を溶融させたポリプロピレン樹脂に圧着した後、室温に冷却して固定した。このようにして、基材付カーボンナノチューブ集合体(C2)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(C2)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は15.3N/cm2であった。
結果を表2にまとめた。
【0136】
[比較例3]
ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)の混合ガスを石英管内に充填させ、10分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させたこと以外は、比較例2と同様にしてカーボンナノチューブ集合体(C3)を作製した。
カーボンナノチューブ集合体(C3)の長さは630μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(C3)の直径分布を図9に示す。図9に示すとおり、最頻値は13nmに存在し、相対頻度は40%であった。
また、カーボンナノチューブ集合体(C3)の層数分布の分布幅、層数分布の最頻値および該最頻値の相対頻度も測定した。
比較例2と同様にして、基材付カーボンナノチューブ集合体(C3)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(C3)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は11.5N/cm2であった。
結果を表2にまとめた。
【0137】
【表2】
【0138】
実施例3、4に見られるように、繊維状柱状構造体であるカーボンナノチューブの直径分布が分散して且つ直径分布の最頻値の相対頻度が30%以下の場合、ガラス面に対するせん断接着力が30N/cm2以上の値を示した。これに対し、比較例2に見られるように、繊維状柱状構造体であるカーボンナノチューブの直径分布が単分散で且つ直径分布の最頻値の相対頻度が30%を越えている場合、また比較例3に見られるように、繊維状柱状構造体であるカーボンナノチューブの直径分布の最頻値が5nm〜15nmの範囲であっても、直径分布の最頻値の相対頻度が30%を越えている場合、せん断接着力が20N/cm2未満という低い値を示した。
【0139】
実施例3、4において、高いせん断接着力が発現できるメカニズムとしては以下のように考えられる。直径の小さい繊維状柱状構造体はガラスの表面凹凸に追従し、接触面積が増大し、強接着となる反面、繊維状柱状構造体同士の凝集によりガラス表面凹凸に追従できない可能性がある。一方、直径の大きい繊維状柱状構造体はガラスの表面凹凸に対する追従性は低い反面、繊維状柱状構造体同士の凝集がないため、接着力の低下が小さい。実施例3、4においては、直径の小さい繊維状柱状構造体と直径の大きい繊維状柱状構造体を広い分布で存在させることにより、繊維状柱状構造体同士の凝集を防いで、繊維状柱状構造体おのおのが独立に働き、ガラスの表面凹凸に追従して接着面積が増大し、強接着を発現するものと考えられる。
【0140】
なお、実施例3、4において、繊維状柱状構造体の分布がブロード化する原因としては以下のように考えられる。繊維状柱状構造体に関して、Fe蒸着膜を従来よりも厚くすることにより、高温時での微粒子化を一部妨げ、Fe粒子径の分布がブロード化するためと考えられる。また、従来どおりのFe蒸着膜厚であっても、SiO2酸化膜付のSi基板を使用することにより、Al2O3の表面凹凸の分布がブロード化し、Fe微粒子の径分布に影響を与えるものと考えられる。
【0141】
[実施例5]
(カーボンナノチューブ集合体の作製)
表面にSiO2膜を有するシリコン基板(熱酸化膜付ウェハ、KST製、SiO2膜厚み=0.5μm、SiO2膜とシリコン基板を合わせた厚み=550μm)上に、真空蒸着装置(JEOL製、JEE−4X Vacuum Evaporator)により、Al薄膜(厚み10nm)を形成した後、450℃で1時間酸化処理を施した。このようにして、シリコン基板上にAl2O3膜を形成した。このAl2O3膜上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてさらにFe薄膜(厚み2nm)を蒸着させて触媒層を形成した。
次に、触媒層付シリコン基板をカットして、30mmφの石英管内に載置し、水分率330ppmに保ったヘリウム/水素(120/80sccm)混合ガスを石英管内に30分間流して、管内を置換した。その後、電気管状炉を用いて管内を765℃まで30分間で段階的に昇温させ、765℃にて安定させた。765℃にて10分間放置後、温度を保持したまま、ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)混合ガスを管内に充填させ、60分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させ、カーボンナノチューブ集合体(5)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(5)の長さは1073μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(5)の層数分布を図10に示す。図10に示すとおり、最頻値は4層と8層に存在し、相対頻度はそれぞれ20%であった。
結果を表3にまとめた。
【0142】
(せん断接着力の測定)
上記カーボンナノチューブ集合体(5)が備えるカーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブ)をスパチュラで取り出し、片端をガラス(MATSUNAMI スライドガラス27mm×56mm)に圧着させて、基材付カーボンナノチューブ集合体(5)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(5)をサンプルとして、せん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は、室温で40.7N/cm2、250℃で42.6N/cm2であった。
結果を表3にまとめた。
【0143】
[実施例6]
ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)の混合ガスを石英管内に充填させ、20分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させたこと以外は、実施例5と同様にしてカーボンナノチューブ集合体(6)を作製した。
カーボンナノチューブ集合体(6)の長さは357μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(6)の層数分布を図11に示す。図11に示すとおり、最頻値は4層と8層に存在し、相対頻度はそれぞれ20%であった。
実施例5と同様にして、基材付カーボンナノチューブ集合体(6)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(6)をサンプルとして、実施例5と同様に、せん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は、室温で34.6N/cm2、250℃で30.3N/cm2であった。
結果を表3にまとめた。
【0144】
[比較例4]
汎用粘着剤(日東電工株式会社製、31B)をサンプルとして、実施例5と同様に、せん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は、室温で65.3N/cm2、250℃で33.2N/cm2であった。
結果を表3にまとめた。
【0145】
【表3】
【0146】
実施例5、6では、250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍であった。これに対して、比較例4のように汎用の粘着剤を用いた場合、250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8倍未満であり、接着力の大幅な低下が見られた。
【0147】
[実施例7]
ポリプロピレン樹脂(旭洋紙パルプ株式会社製、厚み30μm)をホットプレート上で200℃に加熱し、溶融させた。実施例5で得られた、基板上に垂直配向させて形成させたカーボンナノチューブ集合体(5)の片端(上端)を溶融させたポリプロピレン樹脂に圧着した後、室温に冷却して固定した。このようにして、基材付カーボンナノチューブ集合体(5´)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(5´)をサンプルとして、せん断接着力を測定した(測定方法(B))。せん断接着力は、表面自由エネルギー64.4mJ/m2の被着体(ガラス)に対するせん断接着力Aが43.4N/cm2、表面自由エネルギー29.8mJ/m2の被着体(PP板)に対するせん断接着力Bが38.7N/cm2であった。
結果を表4にまとめた。
【0148】
[実施例8]
ポリプロピレン樹脂(旭洋紙パルプ株式会社製、厚み30μm)をホットプレート上で200℃に加熱し、溶融させた。実施例6で得られた、基板上に垂直配向させて形成させたカーボンナノチューブ集合体(6)の片端(上端)を溶融させたポリプロピレン樹脂に圧着した後、室温に冷却して固定した。このようにして、基材付カーボンナノチューブ集合体(6´)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(6´)をサンプルとして、せん断接着力を測定した(測定方法(B))。せん断接着力は、表面自由エネルギー64.4mJ/m2の被着体(ガラス)に対するせん断接着力Aが36.5N/cm2、表面自由エネルギー29.8mJ/m2の被着体(PP板)に対するせん断接着力Bが40.7N/cm2であった。
結果を表4にまとめた。
【0149】
[比較例5]
比較例4で用いた汎用粘着剤(日東電工株式会社製、31B)をサンプルとして、せん断接着力を測定した(測定方法(B))。せん断接着力は、表面自由エネルギー64.4mJ/m2の被着体(ガラス)に対するせん断接着力Aが65.0N/cm2、表面自由エネルギー29.8mJ/m2の被着体(PP板)に対するせん断接着力Bが37.0N/cm2であった。
結果を表4にまとめた。
【0150】
【表4】
【0151】
実施例7、8では、表面自由エネルギー64.4mJ/m2の被着体(ガラス)に対する室温におけるせん断接着力をA、表面自由エネルギー29.8mJ/m2の被着体(PP板)に対する室温におけるせん断接着力をBとすると、B/Aの値が0.8〜1.2であった。これに対して、比較例5のように汎用の粘着剤を用いた場合、表面自由エネルギー64.4mJ/m2の被着体(ガラス)に対する室温におけるせん断接着力をA、表面自由エネルギー29.8mJ/m2の被着体(PP板)に対する室温におけるせん断接着力をBとすると、B/Aの値が0.8倍未満であり、接着力の大幅な低下が見られた。
【0152】
[実施例9]
(カーボンナノチューブ集合体の作製)
表面にSiO2膜を有するシリコン基板(熱酸化膜付ウェハ、KST製、SiO2膜厚み=1μm、SiO2膜とシリコン基板を合わせた厚み=550μm)上に、真空蒸着装置(JEOL製、JEE−4X Vacuum Evaporator)により、Al薄膜(厚み10nm)を形成した後、450℃で1時間酸化処理を施した。このようにして、シリコン基板上にAl2O3膜を形成した。このAl2O3膜上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてさらにFe薄膜(厚み2nm)を蒸着させて触媒層を形成した。
次に、触媒層付シリコン基板をカットして、30mmφの石英管内に載置し、水分率350ppmに保ったヘリウム/水素(120/80sccm)混合ガスを石英管内に30分間流して、管内を置換した。その後、電気管状炉を用いて管内を765℃まで30分間で段階的に昇温させ、765℃にて安定させた。765℃にて10分間放置後、温度を保持したまま、ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)混合ガスを管内に充填させ、35分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させ、カーボンナノチューブ集合体(9)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(9)の長さは680μmであった。
【0153】
(せん断接着力の測定)
ポリプロピレン樹脂(旭洋紙パルプ株式会社製、厚み30μm)をホットプレート上で200℃に加熱し、溶融させた。上記基板上に垂直配向させて形成させたカーボンナノチューブの片端(上端)を溶融させたポリプロピレン樹脂に圧着した後、室温に冷却して固定した。このようにして、基材付カーボンナノチューブ集合体(9)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(9)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は44.60N/cm2であった。
【0154】
(非汚染性評価)
クラス10のクリーンルーム内で、直径4インチ、厚さ500μmの半導体ウェハに、基材付カーボンナノチューブ集合体(9)を、5kgローラーを一往復させて圧着して接着した。1時間後に、180°ピールにて剥離した。剥離面に残留している大きさ0.28μm以上のパーティクル汚染物の数を、レーザー表面検査装置(LS−5000、日立電子エンジニアリング社製)で測定した。剥離した半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数は、22個/4インチウェハであった。
なお、上記非汚染性評価における180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行った。ただし、試験片は基材付カーボンナノチューブ集合体(9)であり、圧着は5kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定した。
【0155】
(軽剥離性評価)
軽剥離性評価として、180°ピールを測定した。軽剥離性評価としての180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行った。ただし、試験片は、幅20mmの基材付カーボンナノチューブ集合体(9)であり、試験板としてシリコンウェハ(ベアウェハ、P型、KST製)を用い、圧着は2kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定した。測定の結果、180°ピールは、0.95N/20mmであった。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の繊維状柱状構造体集合体は、優れた粘着特性を有することから、粘着剤として好適に使用され得る。また、例えば、半導体ウェハの加工時の保護シートとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0157】
10 繊維状柱状構造体集合体
1 基材
2 繊維状柱状構造体
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状柱状構造体集合体およびその用途に関する。より詳細には、本発明は、優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えた繊維状柱状構造体集合体およびそれを用いた粘着部材に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用途において、種々の特性を持つ粘着剤が使われている。しかし、そのほとんどの材料は、柔軟にバルク設計された粘弾性体である。粘弾性体からなる粘着剤は、そのモジュラスの低さから、被着体にぬれて馴染み、接着力を発現する。
【0003】
一方、新規な粘着剤として、微細な直径を有する柱状の繊維構造体が接着特性を示すことが知られている。ミクロオーダー、ナノオーダーの直径を有するため、被着体の表面凹凸に追従し、ファンデルワールス力によって接着力を発現することが明らかになっている。
【0004】
微細な直径を有する柱状の繊維構造体を粘着剤として用いる方法として、例えば、(1)柱状のポアを有するフィルターに樹脂を充填した後にフィルターを除去して粘着剤とする技術や、(2)Si基板上にて化学蒸着気相法(CVD法)により微細な直径を有する柱状の繊維構造体を成長させて粘着剤とする技術が挙げられる(特許文献1〜3)。
【0005】
しかし、上記(1)の技術においては、使用できるフィルターに限界があるため、作製できる柱状の繊維構造体の長さが十分でなく、接着力が低いという問題がある。
【0006】
また、上記(2)の技術においては、柱状の繊維構造体一本での接着力は高く、単位面積あたりの接着力に換算すると、汎用の粘着剤と同等の値が得られている。しかし、一般に行われている粘着剤の接着評価方法(特許文献3)に従って、1cm2程度の接着面積にて接着力の評価を行った場合、そのせん断接着力は低く、従来汎用の粘着剤に比べて微弱であるという問題がある。
【0007】
また粘着剤に要求される特性は、用途により様々である。その中で、高い温度条件下で用いられる粘着剤には、耐熱性が必要とされる。しかし、一般的に用いられている汎用の粘着剤である、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合系樹脂などを原料とする粘着剤は、これらの樹脂の分解温度が低いので、200℃以上の温度にて分解してしまうという問題がある。また、上記のような樹脂以外を原料とする粘着剤についても、高い温度条件下では、室温に比べてモジュラスの大きな変化を伴うため、室温での接着力に比べて劣るという問題や、糊残りなどによる汚染の問題がある。
【0008】
また、複数の被着体に接着剥離を繰り返す粘着剤には、被着体選択性のないことが必要とされる。しかし、一般的に用いられている汎用の粘着剤である、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合系樹脂などを原料とする粘着剤は、これら樹脂の接着力が被着体の表面自由エネルギーに依存するため、表面自由エネルギーが大きく異なる被着体に対して接着力が大幅に異なってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6737160号
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0071870号
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0068195号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、優れた機械的特性、高い比表面積、優れた粘着特性を有する繊維状柱状構造体集合体を提供することにある。また、優れた耐熱性、高い比表面積、室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を有する繊維状柱状構造体集合体を提供することにある。また、高い比表面積、表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有する繊維状柱状構造体集合体を提供することにある。さらに、これらのような繊維状柱状構造体集合体を用いた粘着部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の繊維状柱状構造体集合体(1)は、
複数の直径を有する繊維状柱状構造体を備え、
該複数の直径を有する繊維状柱状構造体の直径分布の分布幅が10nm以上であり、該直径分布の最頻値の相対頻度が30%以下である。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記直径分布の最頻値が5nmから15nmの範囲に存在する。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記複数の直径を有する繊維状柱状構造体が長さ方向に配向している。
【0014】
好ましい実施形態においては、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が15N/cm2以上である。
【0015】
好ましい実施形態においては、本発明の繊維状柱状構造体集合体(1)は、基材をさらに備え、上記繊維状柱状構造体の片端が該基材に固定されている。
【0016】
本発明の別の局面によれば、カーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)が提供される。
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、
複数の繊維状柱状構造体を備え、
該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブであり、
該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10層以上であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下である。
【0017】
好ましい実施形態においては、上記層数分布の最頻値が、層数2層から層数10層の範囲に存在する。
【0018】
好ましい実施形態においては、上記複数層を有するカーボンナノチューブが、長さ300μm以上のカーボンナノチューブを含む。
好ましい実施形態においては、上記複数層を有するカーボンナノチューブが長さ方向に配向している。
好ましい実施形態においては、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が15N/cm2以上である。
好ましい実施形態においては、本発明の繊維状柱状構造体集合体(2)は、基材をさらに備え、上記カーボンナノチューブの片端が該基材に固定されている。
【0019】
本発明のさらに別の局面によれば、カーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)が提供される。
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、
複数の繊維状柱状構造体を備え、
該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブであり、
該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10層以上であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下であり、
250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍である。
【0020】
好ましい実施形態においては、上記複数層を有するカーボンナノチューブが、長さ300μm以上のカーボンナノチューブを含む。
【0021】
好ましい実施形態においては、上記層数分布の最頻値が、層数1層から層数10層の範囲に存在する。
【0022】
好ましい実施形態においては、上記複数層を有するカーボンナノチューブが長さ方向に配向している。
好ましい実施形態においては、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が15N/cm2以上である。
好ましい実施形態においては、本発明の繊維状柱状構造体集合体(3)は、基材をさらに備え、上記カーボンナノチューブの片端が該基材に固定されている。
【0023】
本発明のさらに別の局面によれば、カーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)が提供される。
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、
複数の繊維状柱状構造体を備え、
該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブであり、
該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10層以上であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下であり、
表面自由エネルギーaの被着体に対する室温におけるせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体に対する室温におけるせん断接着力をBとすると(ただし、a>b)、B/Aの値が0.8〜1.2である。
【0024】
好ましい実施形態においては、上記複数層を有するカーボンナノチューブが、長さ300μm以上のカーボンナノチューブを含む。
【0025】
好ましい実施形態においては、上記層数分布の最頻値が、層数1層から層数10層の範囲に存在する。
【0026】
好ましい実施形態においては、上記複数層を有するカーボンナノチューブが長さ方向に配向している。
好ましい実施形態においては、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が15N/cm2以上である。
好ましい実施形態においては、本発明の繊維状柱状構造体集合体(4)は、基材をさらに備え、上記カーボンナノチューブの片端が該基材に固定されている。
【0027】
本発明のさらに別の局面によれば、粘着部材が提供される。本発明の粘着部材は、本発明の繊維状柱状構造体集合体を用いたものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、優れた機械的特性、高い比表面積、優れた粘着特性を有する繊維状柱状構造体集合体を提供することができる。また、優れた耐熱性、高い比表面積、室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を有する繊維状柱状構造体集合体を提供することができる。また、高い比表面積、表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有する繊維状柱状構造体集合体を提供することができる。さらに、これらのような繊維状柱状構造体集合体を用いた粘着部材を提供することができる。また、本発明の繊維状柱状構造体集合体は、耐熱保持力に優れ、例えば、スライドガラスに圧着して350℃で2時間などの高温下においた後でもずれを生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の好ましい実施形態における繊維状柱状構造体集合体の概略断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態におけるカーボンナノチューブ集合体製造装置の概略断面図である。
【図3】実施例1で得られたカーボンナノチューブ集合体(1)の層数分布を示す図である。
【図4】実施例2で得られたカーボンナノチューブ集合体(2)の層数分布を示す図である。
【図5】比較例1で得られたカーボンナノチューブ集合体(C1)の層数分布を示す図である。
【図6】実施例3で得られたカーボンナノチューブ集合体(3)の直径分布を示す図である。
【図7】実施例4で得られたカーボンナノチューブ集合体(4)の直径分布を示す図である。
【図8】比較例2で得られたカーボンナノチューブ集合体(C2)の直径分布を示す図である。
【図9】比較例3で得られたカーボンナノチューブ集合体(C3)の直径分布を示す図である。
【図10】実施例5で得られたカーボンナノチューブ集合体(5)の層数分布を示す図である。
【図11】実施例6で得られたカーボンナノチューブ集合体(6)の層数分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の好ましい実施形態における繊維状柱状構造体集合体の概略断面図(各構成部分を明示するために縮尺は正確に記載されていない)を示す。繊維状柱状構造体集合体10は、基材1と、繊維状柱状構造体2を備える。繊維状柱状構造体の片端2aは、基材1に固定されている。繊維状柱状構造体2は、長さ方向Lに配向している。繊維状柱状構造体2は、好ましくは、基材1に対して略垂直方向に配向している。本図示例とは異なり、繊維状柱状構造体集合体が基材を備えない場合であっても、繊維状柱状構造体は互いにファンデルワールス力によって集合体として存在し得るので、本発明の繊維状柱状構造体集合体は、基材を備えない集合体であっても良い。
【0031】
〔繊維状柱状構造体集合体(1)〕
本発明の繊維状柱状構造体集合体(1)は、複数の直径を有する繊維状柱状構造体を備え、該複数の直径を有する繊維状柱状構造体の直径分布の分布幅が10nm以上であり、該直径分布の最頻値の相対頻度が30%以下である。
【0032】
上記繊維状柱状構造体の材料としては、任意の適切な材料を採用し得る。例えば、アルミ、鉄などの金属;シリコンなどの無機材料;カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどのカーボン材料;エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックなどの高モジュラスの樹脂;などが挙げられる。樹脂の具体例としては、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。樹脂の分子量などの諸物性は、本発明の目的を達成しうる範囲において、任意の適切な物性を採用し得る。
【0033】
繊維状柱状構造体の直径分布の分布幅は10nm以上であり、好ましくは10〜30nm、より好ましくは10〜25nm、さらに好ましくは10〜20nmである。
【0034】
上記繊維状柱状構造体の直径分布の「分布幅」とは、繊維状柱状構造体の直径の最大数と最小数との差をいう。本発明において、繊維状柱状構造体の直径分布の分布幅が上記範囲内にあることにより、該繊維状柱状構造体は優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該繊維状柱状構造体は優れた粘着特性を示す繊維状柱状構造体集合体となり得る。なお、本発明において、繊維状柱状構造体の直径、直径分布は、任意の適切な装置によって測定すれば良い。好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)によって測定される。例えば、繊維状柱状構造体集合体から少なくとも10本、好ましくは20本以上の繊維状柱状構造体をSEMあるいはTEMによって測定し、直径および直径分布を評価すれば良い。
【0035】
上記繊維状柱状構造体の直径の最大数は、好ましくは5〜30nm、より好ましくは10〜30nm、さらに好ましくは15〜30nm、特に好ましくは15〜25nmである。上記繊維状柱状構造体の直径の最小数は、好ましくは1〜15nm、より好ましくは5〜15nmである。本発明において、繊維状柱状構造体の直径の最大数と最小数が上記範囲内にあることにより、該繊維状柱状構造体は一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該繊維状柱状構造体は一層優れた粘着特性を示す繊維状柱状構造体集合体となり得る。
【0036】
上記直径分布の最頻値の相対頻度は、30%以下であり、好ましくは1〜25%、より好ましくは5〜25%、さらに好ましくは10〜25%、特に好ましくは15〜25%である。本発明において、直径分布の最頻値の相対頻度が上記範囲内にあることにより、該繊維状柱状構造体は優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該繊維状柱状構造体は優れた粘着特性を示す繊維状柱状構造体集合体となり得る。
【0037】
上記直径分布の最頻値は、直径5nmから15nmの範囲に存在することが好ましく、直径5nmから10nmに存在することがより好ましい。本発明において、直径分布の最頻値が上記範囲内にあることにより、該繊維状柱状構造体は優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該繊維状柱状構造体は優れた粘着特性を示す繊維状柱状構造体集合体となり得る。
【0038】
上記繊維状柱状構造体の形状としては、その横断面が任意の適切な形状を有していれば良い。例えば、その横断面が、略円形、楕円形、n角形(nは3以上の整数)等が挙げられる。また、上記繊維状柱状構造体は、中空であっても良いし、充填材料であっても良い。
【0039】
上記繊維状柱状構造体の長さは、任意の適切な長さに設定され得る。繊維状柱状構造体の長さは、好ましくは300μm以上、より好ましくは300〜10000μm、さらに好ましくは300〜1000μm、特に好ましくは300〜900μmである。本発明において、繊維状柱状構造体の長さが上記範囲内にあることにより、該繊維状柱状構造体は一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該繊維状柱状構造体は一層優れた粘着特性を示す繊維状柱状構造体集合体となり得る。
【0040】
本発明の繊維状柱状構造体集合体(1)において、上記繊維状柱状構造体中の、長さが300μm以上の繊維状柱状構造体の含有割合は、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、さらに好ましくは95〜100%、特に好ましくは98〜100%、最も好ましくは実質的に100%である。ここで、「実質的に100%」とは、測定機器における検出限界において100%であることを意味する。本発明において、上記繊維状柱状構造体中の、長さが300μm以上の繊維状柱状構造体の含有割合が上記範囲内にあることにより、該繊維状柱状構造体は一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該繊維状柱状構造体は一層優れた粘着特性を示す繊維状柱状構造体集合体となり得る。
【0041】
本発明の繊維状柱状構造体集合体(1)は、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が、好ましくは15N/cm2以上である。より好ましくは20〜500N/cm2、さらに好ましくは30〜100N/cm2、特に好ましくは30〜80N/cm2、特に好ましくは35〜50N/cm2である。ここで、本発明において「室温」とは温度25℃の条件下を意味するものとする。
【0042】
上記繊維状柱状構造体の比表面積、密度は、任意の適切な値に設定され得る。
【0043】
本発明の繊維状柱状構造体集合体(1)は、該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブである場合、好ましくは、該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10層以上であり、好ましくは、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下である。
【0044】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅は、より好ましくは10〜30層、さらに好ましくは10〜25層、特に好ましくは10〜20層である。
【0045】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の「分布幅」とは、複数層を有するカーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数との差をいう。本発明において、複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。なお、本発明において、カーボンナノチューブの層数、層数分布は、任意の適切な装置によって測定すれば良い。好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)によって測定される。例えば、カーボンナノチューブ集合体から少なくとも10本、好ましくは20本以上のカーボンナノチューブをSEMあるいはTEMによって測定し、層数および層数分布を評価すれば良い。
【0046】
上記最大層数は、好ましくは5〜30層、より好ましくは10〜30層、さらに好ましくは15〜30層、特に好ましくは15〜25層である。上記最小層数は、好ましくは1〜10層、より好ましくは1〜5層である。本発明において、カーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは一層優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0047】
上記層数分布の最頻値の相対頻度は、好ましくは1〜25%、より好ましくは5〜25%、さらに好ましくは10〜25%、特に好ましくは15〜25%である。本発明において、層数分布の最頻値の相対頻度が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0048】
上記層数分布の最頻値は、層数2層から層数10層に存在することが好ましく、さらに好ましくは層数3層から層数10層に存在する。本発明において、層数分布の最頻値が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0049】
〔繊維状柱状構造体集合体(2):カーボンナノチューブ集合体〕
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、複数の繊維状柱状構造体を備え、該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブであり、該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10層以上であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下である。
【0050】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅は10層以上であり、好ましくは10〜30層、より好ましくは10〜25層、さらに好ましくは10〜20層である。
【0051】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の「分布幅」とは、複数層を有するカーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数との差をいう。本発明において、複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。なお、本発明において、カーボンナノチューブの層数、層数分布は、任意の適切な装置によって測定すれば良い。好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)によって測定される。例えば、カーボンナノチューブ集合体から少なくとも10本、好ましくは20本以上のカーボンナノチューブをSEMあるいはTEMによって測定し、層数および層数分布を評価すれば良い。
【0052】
上記最大層数は、好ましくは5〜30層、より好ましくは10〜30層、さらに好ましくは15〜30層、特に好ましくは15〜25層である。上記最小層数は、好ましくは1〜10層、より好ましくは1〜5層である。本発明において、カーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは一層優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0053】
上記層数分布の最頻値の相対頻度は、25%以下であり、好ましくは1〜25%、より好ましくは5〜25%、さらに好ましくは10〜25%、特に好ましくは15〜25%である。本発明において、層数分布の最頻値の相対頻度が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0054】
上記層数分布の最頻値は、層数2層から層数10層に存在することが好ましく、さらに好ましくは層数3層から層数10層に存在する。本発明において、層数分布の最頻値が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0055】
上記カーボンナノチューブの形状としては、その横断面が任意の適切な形状を有していれば良い。例えば、その横断面が、略円形、楕円形、n角形(nは3以上の整数)等が挙げられる。
【0056】
上記カーボンナノチューブの長さは、任意の適切な長さに設定され得る。複数層を有するカーボンナノチューブは、好ましくは、長さが300μm以上のカーボンナノチューブを含む。上記カーボンナノチューブの長さは、より好ましくは300〜10000μmであり、さらに好ましくは300〜1000μm、特に好ましくは300〜900μmである。本発明において、カーボンナノチューブの長さが上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは一層優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0057】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)において、上記複数層を有するカーボンナノチューブ中の、長さが300μm以上のカーボンナノチューブの含有割合は、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、さらに好ましくは95〜100%、特に好ましくは98〜100%、最も好ましくは実質的に100%である。ここで、「実質的に100%」とは、測定機器における検出限界において100%であることを意味する。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)において、上記複数層を有するカーボンナノチューブ中の、長さが300μm以上のカーボンナノチューブの含有割合が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブは一層優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは一層優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0058】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が、好ましくは15N/cm2以上である。より好ましくは20〜500N/cm2、さらに好ましくは30〜100N/cm2、特に好ましくは30〜80N/cm2、特に好ましくは35〜50N/cm2である。
【0059】
上記カーボンナノチューブの比表面積、密度は、任意の適切な値に設定され得る。
【0060】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、好ましくは、250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍であり、より好ましくは0.85〜1.15倍、さらに好ましくは0.9〜1.1倍である。250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍であることにより、該繊維状柱状構造体集合体(2)は優れた耐熱性を備えることができ、該繊維状柱状構造体集合体(2)は室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0061】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、好ましくは、表面自由エネルギーaの被着体に対するせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体にするせん断接着力をBとしたときの(ただしa>B)B/Aの値が0.8〜1.2であり、より好ましくは0.85〜1.15、さらに好ましくは0.9〜1.1である。表面自由エネルギーaの被着体に対するせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体にするせん断接着力をBとしたときの(ただしa>B)B/Aの値が0.8〜1.2であることにより、該繊維状柱状構造体集合体(2)は、表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0062】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、半導体ウェハに圧着して接着した後に剥離する際に、該半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が、好ましくは30個/4インチウェハ以下、より好ましくは25個/4インチウェハ以下、さらに好ましくは20個/4インチウェハ以下である。より具体的には、ポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)を、4インチ半導体ウェハに5kgローラーにより圧着して貼り合わせた後、180°ピールにて剥離した際の、剥離した半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が、好ましくは30個/4インチウェハ以下、より好ましくは25個/4インチウェハ以下、さらに好ましくは20個/4インチウェハ以下である。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、好ましくは、該集合体を上記のように半導体ウェハに圧着・接着した後に剥離する際の該半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が上記のように少数であるので、非汚染性に極めて優れる。
【0063】
なお、上記非汚染性を評価する場合の180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行う。ただし、試験片は、ポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)(半導体ウェハに圧着して接着するもの)そのものであり、圧着は5kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定する。
【0064】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、ポリプロピレン樹脂の基材(厚み30μm)に固定した場合、180°ピールの値が、好ましくは1N/20mm以下、より好ましくは0.001〜1N/20mm、さらに好ましくは0.001〜0.7N/20mm、より好ましくは0.001〜0.5N/20mm、特に好ましくは0.001〜0.4N/20mmである。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)は、好ましくは、ポリプロピレン樹脂の基材(厚み30μm)に固定した場合の180°ピールの値が上記のように小さいので、軽剥離性に極めて優れる。通常の粘着剤の場合、180°ピールの値は1N/20mmより大きい。
【0065】
なお、上記軽剥離性を評価する場合の180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行う。ただし、試験片は、幅20mmのポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(2)であり、試験板としてシリコンウェハ(ベアウェハ、P型、KST製)を用い、圧着は2kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定する。
【0066】
〔繊維状柱状構造体集合体(3):カーボンナノチューブ集合体〕
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、複数の繊維状柱状構造体を備え、該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブであり、該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10層以上であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下であり、250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍である。
【0067】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅は、好ましくは10〜30層、より好ましくは10〜25層、さらに好ましくは10〜20層である。
【0068】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の「分布幅」とは、複数層を有するカーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数との差をいう。本発明において、複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層優れた耐熱性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。なお、本発明において、カーボンナノチューブの層数、層数分布は、任意の適切な装置によって測定すれば良い。好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)によって測定される。例えば、カーボンナノチューブ集合体から少なくとも10本、好ましくは20本以上のカーボンナノチューブをSEMあるいはTEMによって測定し、層数および層数分布を評価すれば良い。
【0069】
上記最大層数は、好ましくは1〜30層、より好ましくは1〜25層、さらに好ましくは2〜25層である。上記最小層数は、好ましくは1〜10層、より好ましくは1〜5層である。本発明において、カーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層優れた耐熱性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0070】
上記層数分布の最頻値の相対頻度は、好ましくは1〜25%、より好ましくは5〜25%、さらに好ましくは10〜25%、特に好ましくは15〜25%である。本発明において、層数分布の最頻値の相対頻度が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層優れた耐熱性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0071】
上記層数分布の最頻値は、層数1層から層数10層に存在することが好ましく、より好ましくは層数2層から層数10層に存在し、さらに好ましくは層数3層から層数10層に存在する。本発明において、層数分布の最頻値が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層優れた耐熱性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0072】
上記カーボンナノチューブの形状としては、その横断面が任意の適切な形状を有していれば良い。例えば、その横断面が、略円形、楕円形、n角形(nは3以上の整数)等が挙げられる。
【0073】
上記カーボンナノチューブの長さは、任意の適切な長さに設定され得る。複数層を有するカーボンナノチューブは、好ましくは、長さが300μm以上のカーボンナノチューブを含む。上記カーボンナノチューブの長さは、より好ましくは300〜10000μmであり、さらに好ましくは300〜5000μm、特に好ましくは300〜2000μmである。本発明において、カーボンナノチューブの長さが上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層優れた耐熱性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0074】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)において、上記複数層を有するカーボンナノチューブ中の、長さが300μm以上のカーボンナノチューブの含有割合は、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、さらに好ましくは95〜100%、特に好ましくは98〜100%、最も好ましくは実質的に100%である。ここで、「実質的に100%」とは、測定機器における検出限界において100%であることを意味する。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)において、上記複数層を有するカーボンナノチューブ中の、長さが300μm以上のカーボンナノチューブの含有割合が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層優れた耐熱性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該カーボンナノチューブは室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0075】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍であり、好ましくは0.85〜1.15倍、より好ましくは0.9〜1.1倍である。250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍であることにより、該繊維状柱状構造体集合体(3)は優れた耐熱性を備えることができ、該繊維状柱状構造体集合体(3)は室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0076】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が、好ましくは15N/cm2以上である。より好ましくは20〜500N/cm2、さらに好ましくは30〜100N/cm2、特に好ましくは30〜80N/cm2、特に好ましくは35〜50N/cm2である。
【0077】
上記カーボンナノチューブの比表面積、密度は、任意の適切な値に設定され得る。
【0078】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、好ましくは、表面自由エネルギーaの被着体に対するせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体にするせん断接着力をBとしたときの(ただしa>B)B/Aの値が0.8〜1.2であり、より好ましくは0.85〜1.15、さらに好ましくは0.9〜1.1である。表面自由エネルギーaの被着体に対するせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体にするせん断接着力をBとしたときの(ただしa>B)B/Aの値が0.8〜1.2であることにより、該繊維状柱状構造体集合体(3)は、表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0079】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、半導体ウェハに圧着して接着した後に剥離する際に、該半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が、好ましくは30個/4インチウェハ以下、より好ましくは25個/4インチウェハ以下、さらに好ましくは20個/4インチウェハ以下である。より具体的には、ポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)を、4インチ半導体ウェハに5kgローラーにより圧着して貼り合わせた後、180°ピールにて剥離した際の、剥離した半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が、好ましくは30個/4インチウェハ以下、より好ましくは25個/4インチウェハ以下、さらに好ましくは20個/4インチウェハ以下である。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、好ましくは、該集合体を上記のように半導体ウェハに圧着・接着した後に剥離する際の該半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が上記のように少数であるので、非汚染性に極めて優れる。
【0080】
なお、上記非汚染性を評価する場合の180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行う。ただし、試験片は、ポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)(半導体ウェハに圧着して接着するもの)そのものであり、圧着は5kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定する。
【0081】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、ポリプロピレン樹脂の基材(厚み30μm)に固定した場合、180°ピールの値が、好ましくは1N/20mm以下、より好ましくは0.001〜1N/20mm、さらに好ましくは0.001〜0.7N/20mm、より好ましくは0.001〜0.5N/20mm、特に好ましくは0.001〜0.4N/20mmである。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)は、好ましくは、ポリプロピレン樹脂の基材(厚み30μm)に固定した場合の180°ピールの値が上記のように小さいので、軽剥離性に極めて優れる。通常の粘着剤の場合、180°ピールの値は1N/20mmより大きい。
【0082】
なお、上記軽剥離性を評価する場合の180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行う。ただし、試験片は、幅20mmのポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(3)であり、試験板としてシリコンウェハ(ベアウェハ、P型、KST製)を用い、圧着は2kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定する。
【0083】
〔繊維状柱状構造体集合体(4):カーボンナノチューブ集合体〕
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、複数の繊維状柱状構造体を備え、該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブであり、該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10層以上であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下であり、表面自由エネルギーaの被着体に対する室温におけるせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体に対する室温におけるせん断接着力をBとすると(ただし、a>b)、B/Aの値が0.8〜1.2である。
【0084】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅は、好ましくは10〜30層、より好ましくは10〜25層、さらに好ましくは10〜20層である。
【0085】
上記複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の「分布幅」とは、複数層を有するカーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数との差をいう。本発明において、複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層高い比表面積を備えることができ、該カーボンナノチューブは表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。なお、本発明において、カーボンナノチューブの層数、層数分布は、任意の適切な装置によって測定すれば良い。好ましくは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)によって測定される。例えば、カーボンナノチューブ集合体から少なくとも10本、好ましくは20本以上のカーボンナノチューブをSEMあるいはTEMによって測定し、層数および層数分布を評価すれば良い。
【0086】
上記最大層数は、好ましくは1〜30層、より好ましくは1〜25層、さらに好ましくは2〜25層である。上記最小層数は、好ましくは1〜10層、より好ましくは1〜5層である。本発明において、カーボンナノチューブの層数の最大層数と最小層数が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層高い比表面積を備えることができ、該カーボンナノチューブは表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0087】
上記層数分布の最頻値の相対頻度は、好ましくは1〜25%、より好ましくは5〜25%、さらに好ましくは10〜25%、特に好ましくは15〜25%である。本発明において、層数分布の最頻値の相対頻度が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層高い比表面積を備えることができ、該カーボンナノチューブは表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0088】
上記層数分布の最頻値は、層数1層から層数10層に存在することが好ましく、より好ましくは層数2層から層数10層に存在し、さらに好ましくは層数3層から層数10層に存在する。本発明において、層数分布の最頻値が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層高い比表面積を備えることができ、該カーボンナノチューブは表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0089】
上記カーボンナノチューブの形状としては、その横断面が任意の適切な形状を有していれば良い。例えば、その横断面が、略円形、楕円形、n角形(nは3以上の整数)等が挙げられる。
【0090】
上記カーボンナノチューブの長さは、任意の適切な長さに設定され得る。複数層を有するカーボンナノチューブは、好ましくは、長さが300μm以上のカーボンナノチューブを含む。上記カーボンナノチューブの長さは、より好ましくは300〜10000μmであり、さらに好ましくは300〜5000μm、特に好ましくは300〜2000μmである。本発明において、カーボンナノチューブの長さが上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層高い比表面積を備えることができ、該カーボンナノチューブは表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0091】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)において、上記複数層を有するカーボンナノチューブ中の、長さが300μm以上のカーボンナノチューブの含有割合は、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、さらに好ましくは95〜100%、特に好ましくは98〜100%、最も好ましくは実質的に100%である。ここで、「実質的に100%」とは、測定機器における検出限界において100%であることを意味する。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)において、上記複数層を有するカーボンナノチューブ中の、長さが300μm以上のカーボンナノチューブの含有割合が上記範囲内にあることにより、該カーボンナノチューブはより一層高い比表面積を備えることができ、該カーボンナノチューブは表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0092】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、室温におけるガラス面に対するせん断接着力が、好ましくは15N/cm2以上である。より好ましくは20〜500N/cm2、さらに好ましくは30〜100N/cm2、特に好ましくは30〜80N/cm2、特に好ましくは35〜50N/cm2である。
【0093】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、表面自由エネルギーaの被着体に対する室温におけるせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体に対する室温におけるせん断接着力をBとしたとき(ただし、a>b)のB/Aの値が0.8〜1.2であり、好ましくは0.85〜1.15、より好ましくは0.9〜1.1である。表面自由エネルギーaの被着体に対する室温におけるせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体に対する室温におけるせん断接着力をBとしたとき(ただし、a>b)のB/Aの値が0.8〜1.2であることにより、該繊維状柱状構造体集合体(4)は、表面自由エネルギーが異なる被着体への接着力が変化しない(被着体選択性のない)粘着特性を有するカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0094】
上記カーボンナノチューブの比表面積、密度は、任意の適切な値に設定され得る。
【0095】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、好ましくは、250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍であり、より好ましくは0.85〜1.15倍、さらに好ましくは0.9〜1.1倍である。250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍であることにより、該繊維状柱状構造体集合体(4)は優れた耐熱性を備えることができ、該繊維状柱状構造体集合体(4)は室温から高温までの温度条件下における優れた粘着特性を示すカーボンナノチューブ集合体となり得る。
【0096】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、半導体ウェハに圧着して接着した後に剥離する際に、該半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が、好ましくは30個/4インチウェハ以下、より好ましくは25個/4インチウェハ以下、さらに好ましくは20個/4インチウェハ以下である。より具体的には、ポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)を、4インチ半導体ウェハに5kgローラーにより圧着して貼り合わせた後、180°ピールにて剥離した際の、剥離した半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が、好ましくは30個/4インチウェハ以下、より好ましくは25個/4インチウェハ以下、さらに好ましくは20個/4インチウェハ以下である。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、好ましくは、該集合体を上記のように半導体ウェハに圧着・接着した後に剥離する際の該半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数が上記のように少数であるので、非汚染性に極めて優れる。
【0097】
なお、上記非汚染性を評価する場合の180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行う。ただし、試験片は、ポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)(半導体ウェハに圧着して接着するもの)そのものであり、圧着は5kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定する。
【0098】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、ポリプロピレン樹脂の基材(厚み30μm)に固定した場合、180°ピールの値が、好ましくは1N/20mm以下、より好ましくは0.001〜1N/20mm、さらに好ましくは0.001〜0.7N/20mm、より好ましくは0.001〜0.5N/20mm、特に好ましくは0.001〜0.4N/20mmである。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)は、好ましくは、ポリプロピレン樹脂の基材(厚み30μm)に固定した場合の180°ピールの値が上記のように小さいので、軽剥離性に極めて優れる。通常の粘着剤の場合、180°ピールの値は1N/20mmより大きい。
【0099】
なお、上記軽剥離性を評価する場合の180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行う。ただし、試験片は、幅20mmのポリプロピレン樹脂に転写した本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体(4)であり、試験板としてシリコンウェハ(ベアウェハ、P型、KST製)を用い、圧着は2kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定する。
【0100】
〔繊維状柱状構造体集合体の製造方法〕
本発明の繊維状柱状構造体集合体の製造方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。本発明の繊維状柱状構造体集合体の製造方法の好ましい実施形態の例として、カーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体の製造方法を説明する。
【0101】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体の製造方法としては、任意の適切な方法を採用され得る。例えば、平滑な基板の上に触媒層を構成し、熱、プラズマなどにより触媒を活性化させた状態で炭素源を充填し、カーボンナノチューブを成長させる、化学蒸着気相法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)によって、基板からほぼ垂直に配向したカーボンナノチューブ集合体を製造する方法が挙げられる。この場合、基板を取り除けば、長さ方向に配向しているカーボンナノチューブ集合体が得られる。
【0102】
上記基板としては、任意の適切な基板を採用し得る。例えば、平滑性を有し、カーボンナノチューブの製造に耐え得る高温耐熱性を有する材料が挙げられる。このような材料としては、例えば、石英ガラス、シリコン(シリコンウェハなど)、アルミニウムなどの金属板などが挙げられる。
【0103】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体を製造するための装置としては、任意の適切な装置を採用し得る。例えば、熱CVD装置としては、図2に示すような、筒型の反応容器を抵抗加熱式の電気管状炉で囲んで構成されたホットウォール型などが挙げられる。その場合、反応容器としては、例えば、耐熱性の石英管などが好ましく用いられる。
【0104】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体の製造に用い得る触媒(触媒層の材料)としては、任意の適切な触媒を用い得る。例えば、鉄、コバルト、ニッケル、金、白金、銀、銅などの金属触媒が挙げられる。
【0105】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体を製造する際、必要に応じて、基板と触媒層の中間にアルミナ/親水性膜を設けても良い。
【0106】
アルミナ/親水性膜の作製方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、基板の上にSiO2膜を作製し、Alを蒸着後、450℃まで昇温して酸化させることにより得られる。このような作製方法によれば、Al2O3が親水性のSiO2膜と相互作用し、Al2O3を直接蒸着したものよりも粒子径の異なるAl2O3面が形成される。基板の上に、親水性膜を作製することを行わずに、Alを蒸着後に450℃まで昇温して酸化させても、粒子径の異なるAl2O3面が形成され難いおそれがある。また、基板の上に、親水性膜を作製し、Al2O3を直接蒸着しても、粒子径の異なるAl2O3面が形成され難いおそれがある。
【0107】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体の製造に用い得る触媒層の厚みは、微粒子を形成させるため、好ましくは0.01〜20nm、より好ましくは0.1〜10nmである。本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体の製造に用い得る触媒層の厚みが上記範囲内にあることによって、該繊維状柱状構造体は優れた機械的特性および高い比表面積を兼ね備えることができ、さらには、該繊維状柱状構造体は優れた粘着特性を示す繊維状柱状構造体集合体となり得る。触媒層の形成方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、金属触媒をEB(電子ビーム)、スパッタなどにより蒸着する方法、金属触媒微粒子の懸濁液を基板上に塗布する方法などが挙げられる。
【0108】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体の製造に用い得る炭素源としては、任意の適切な炭素源を用い得る。例えば、メタン、エチレン、アセチレン、ベンゼンなどの炭化水素;メタノール、エタノールなどのアルコール;などが挙げられる。
【0109】
本発明のカーボンナノチューブ集合体である繊維状柱状構造体集合体の製造における製造温度としては、任意の適切な温度を採用し得る。たとえば、本発明の効果を十分に発現し得る触媒粒子を形成させるため、好ましくは400〜1000℃、より好ましくは500〜900℃、さらに好ましくは600〜800℃である。
【0110】
〔粘着部材〕
本発明の粘着部材は、本発明の繊維状柱状構造体集合体を用いたものである。本発明の粘着部材は、好ましくは、本発明の繊維状柱状構造体集合体に基材が備えられたものであり、具体的には、例えば、粘着シート、粘着フィルムが挙げられる。
【0111】
粘着部材の基材としては、石英ガラス、シリコン(シリコンウェハなど)、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。エンジニアリングプラスチックおよびスーパーエンジニアリングプラスチックの具体例としては、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミドが挙げられる。分子量などの諸物性は、本発明の目的を達成し得る範囲において、任意の適切な物性を採用し得る。
【0112】
基材の厚みは、目的に応じて、任意の適切な値に設定され得る。例えば、シリコン基板の場合は、好ましくは100〜10000μm、より好ましくは100〜5000μm、さらに好ましくは100〜2000μmである。例えば、ポリプロピレン基板の場合は、好ましくは1〜1000μm、より好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは5〜100μmである。
【0113】
上記基材の表面は、隣接する層との密着性,保持性などを高めるために、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの化学的または物理的処理,下塗剤(例えば、上記粘着性物質)によるコーティング処理が施されていてもよい。
【0114】
上記基材は単層であっても良いし、多層体であっても良い。
【0115】
本発明の繊維状柱状構造体集合体を基材に固定する場合、その方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、繊維状柱状構造体の製造に使用した基板を基材としてそのまま用いてもよい。また、基材に接着層を設けて固定してもよい。さらに、基材が熱硬化性樹脂の場合は、反応前の状態で薄膜を作製し、カーボンナノチューブの一端を薄膜層に圧着させた後、硬化処理を行って固定すれば良い。また、基材が熱可塑性樹脂や金属などの場合は、溶融した状態で繊維状柱状構造体の一端を圧着させた後、室温まで冷却して固定すれば良い。
【実施例】
【0116】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、繊維状柱状構造体集合体における繊維状柱状構造体の直径・直径分布の評価、繊維状柱状構造体集合体における繊維状柱状構造体の層数・層数分布の評価、繊維状柱状構造体集合体のせん断接着力の測定、被着体の表面自由エネルギーの評価は、以下の方法により行った。
【0117】
<繊維状柱状構造体集合体における繊維状柱状構造体の直径・直径分布の評価>
本発明の繊維状柱状構造体集合体における繊維状柱状構造体の直径および直径分布は、走査型電子顕微鏡(SEM)および/または透過電子顕微鏡(TEM)によって測定した。得られた繊維状柱状構造体集合体の中から少なくとも10本以上、好ましくは20本以上の繊維状柱状構造体をSEMおよび/またはTEMにより観察し、各繊維状柱状構造体の直径を調べ、直径分布を作成した。
【0118】
<繊維状柱状構造体集合体における繊維状柱状構造体の層数・層数分布の評価>
本発明の繊維状柱状構造体集合体における繊維状柱状構造体の層数および層数分布は、走査型電子顕微鏡(SEM)および/または透過電子顕微鏡(TEM)によって測定した。得られた繊維状柱状構造体集合体の中から少なくとも10本以上、好ましくは20本以上の繊維状柱状構造体をSEMおよび/またはTEMにより観察し、各繊維状柱状構造体の層数を調べ、層数分布を作成した。
【0119】
<繊維状柱状構造体集合体のせん断接着力の測定方法(A)>
ガラス(MATSUNAMI スライドガラス27mm×56mm)に、1cm2単位面積に切り出した基材付繊維状柱状構造体集合体の先端が接触するように載置し、5kgのローラーを一往復させて繊維状柱状構造体の先端をガラスに圧着した。その後、30分間放置した。引張り試験機(Instro Tensil Tester)で引張速度50mm/minにて、25℃または250℃にてせん断試験を行い、得られたピークをせん断接着力とした。
【0120】
<繊維状柱状構造体集合体のせん断接着力の測定方法(B)>
ガラス(MATSUNAMI スライドガラス27mm×56mm、表面自由エネルギー=64.4mJ/m2)およびPP板(新神戸電機(株)製、コウベポリシート PP−N−AN、表面自由エネルギー=29.8mJ/m2)のそれぞれに、1cm2単位面積に切り出した基材付カーボンナノチューブ集合体の先端が接触するように載置し、5kgのローラーを一往復させてカーボンナノチューブの先端をガラスに圧着した。その後、30分間放置した。引張り試験機(Instro Tensil Tester)で引張速度50mm/minにて、25℃にてせん断試験を行い、得られたピークをせん断接着力とした。
【0121】
<被着体の表面自由エネルギーの評価>
被着体の表面に3種の液体(水、グリセリン、ヨウ化メチレン)を着滴後、100msの接触角を測定し、その値を用いて以下の方法から表面自由エネルギーを求めた。
表面自由エネルギーの算出方法:
γL(1+cosθ)=2(γLd・γsd)1/2+2(γLp・γsp)1/2・・・(1)
γL:接触角測定に用いた液の表面自由エネルギー
γLd:液の表面自由エネルギーの分散成分
γLp:液の表面自由エネルギーの極性成分
γs:求めたい固体の表面自由エネルギー
γsd:固体の表面自由エネルギーの分散成分
γsp:固体の表面自由エネルギーの極性成分
式(1)を(γLp/γLd)1/2とγL(1+cosθ)/2(γLd)1/2の一次関数に変形して、
γL(1+cosθ)/2(γLd)1/2
=(γsp)1/2(γLp/γLd)1/2+(γsd)1/2・・・(2)
式(2)より、γsd、γspはそれぞれ[傾き]を2乗、[切片]を2乗して求め、γs=γsd+γspとして表面自由エネルギーを算出した。
【0122】
[実施例1]
(カーボンナノチューブ集合体の作製)
表面にSiO2膜を有するシリコン基板(熱酸化膜付ウェハ、KST製、SiO2膜厚み=1μm、SiO2膜とシリコン基板を合わせた厚み=550μm)上に、真空蒸着装置(JEOL製、JEE−4X Vacuum Evaporator)により、Al薄膜(厚み10nm)を形成した後、450℃で1時間酸化処理を施した。このようにして、シリコン基板上にAl2O3膜を形成した。このAl2O3膜上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてさらにFe薄膜(厚み2nm)を蒸着させて触媒層を形成した。
次に、触媒層付シリコン基板をカットして、30mmφの石英管内に載置し、水分率350ppmに保ったヘリウム/水素(120/80sccm)混合ガスを石英管内に30分間流して、管内を置換した。その後、電気管状炉を用いて管内を765℃まで35分間で段階的に昇温させ、765℃にて安定させた。765℃にて10分間放置後、温度を保持したまま、ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)混合ガスを管内に充填させ、30分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させ、カーボンナノチューブ集合体(1)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(1)の長さは638μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(1)の層数分布を図3に示す。図3に示すとおり、最頻値は4層と8層に存在し、相対頻度はそれぞれ20%であった。
また、カーボンナノチューブ集合体(1)の直径分布の分布幅、直径分布の最頻値および該最頻値の相対頻度も測定した。
結果を表1にまとめた。
【0123】
(せん断接着力の測定)
ポリプロピレン樹脂(旭洋紙パルプ株式会社製、厚み30μm)をホットプレート上で200℃に加熱し、溶融させた。上記基板上に垂直配向させて形成させたカーボンナノチューブの片端(上端)を溶融させたポリプロピレン樹脂に圧着した後、室温に冷却して固定した。このようにして、基材付カーボンナノチューブ集合体(1)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(1)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は44.6N/cm2であった。
結果を表1にまとめた。
【0124】
[実施例2]
ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)の混合ガスを石英管内に充填させ、20分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させたこと以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ集合体(2)を作製した。
カーボンナノチューブ集合体(2)の長さは420μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(2)の層数分布を図4に示す。図4に示すとおり、最頻値は9層に存在し、相対頻度は20%であった。
また、カーボンナノチューブ集合体(2)の直径分布の分布幅、直径分布の最頻値および該最頻値の相対頻度も測定した。
実施例1と同様にして、基材付カーボンナノチューブ集合体(2)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(2)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は36.1N/cm2であった。
結果を表1にまとめた。
【0125】
[比較例1]
(カーボンナノチューブ集合体の作製)
シリコン基板(エレクトロニクス エンド製、厚み525μm)上に、真空蒸着装置(JEOL製、JEE−4X Vacuum Evaporator)により、Al薄膜(厚み10nm)を形成した後、450℃で1時間酸化処理を施した。このようにして、シリコン基板上にAl2O3膜を形成した。このAl2O3膜上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてさらにFe薄膜(厚み0.67nm)を蒸着させて触媒層を形成した。
次に、触媒層付シリコン基板をカットして、30mmφの石英管内に載置し、水分率350ppmに保ったヘリウム/水素(120/80sccm)混合ガスを石英管内に30分間流して、管内を置換した。その後、電気管状炉を用いて管内を765℃まで35分間で段階的に昇温させ、765℃にて安定させた。765℃にて10分間放置後、温度を保持したまま、ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)混合ガスを管内に充填させ、30分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させ、カーボンナノチューブ集合体(C1)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(C1)の長さは799μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(C1)の層数分布を図5に示す。図5に示すとおり、最頻値は4層に存在し、相対頻度は27%であった。
た。
また、カーボンナノチューブ集合体(C1)の直径分布の分布幅、直径分布の最頻値および該最頻値の相対頻度も測定した。
結果を表1にまとめた。
【0126】
(せん断接着力の測定)
ポリプロピレン樹脂(旭洋紙パルプ株式会社製、厚み30μm)をホットプレート上で200℃に加熱し、溶融させた。上記基板上に垂直配向させて形成させたカーボンナノチューブの片端(上端)を溶融させたポリプロピレン樹脂に圧着した後、室温に冷却して固定した。このようにして、基材付カーボンナノチューブ集合体(C1)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(C1)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は7.9N/cm2であった。
結果を表1にまとめた。
【0127】
【表1】
【0128】
実施例1、2に見られるように、繊維状柱状構造体であるカーボンナノチューブの層数分布が分散して且つ層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下の場合、ガラス面に対するせん断接着力が30N/cm2以上の値を示した。これに対し、比較例1に見られるように、繊維状柱状構造体であるカーボンナノチューブの層数分布が単分散で且つ層数分布の最頻値の相対頻度が25%を越えている場合、せん断接着力が10N/cm2未満という低い値を示した。
【0129】
実施例1、2において、高いせん断接着力が発現できるメカニズムとしては以下のように考えられる。層数の小さいカーボンナノチューブはガラスの表面凹凸に追従し、接触面積が増大し、強接着となる反面、カーボンナノチューブ同士の凝集によりガラス表面凹凸に追従できない可能性がある。一方、層数の大きいカーボンナノチューブはガラスの表面凹凸に対する追従性は低い反面、カーボンナノチューブ同士の凝集がないため、接着力の低下が小さい。実施例1、2においては、層数の小さいカーボンナノチューブと層数の大きいカーボンナノチューブを広い分布で存在させることにより、カーボンナノチューブ同士の凝集を防いで、カーボンナノチューブおのおのが独立に働き、ガラスの表面凹凸に追従して接着面積が増大し、強接着を発現するものと考えられる。
【0130】
なお、実施例1、2において、カーボンナノチューブの分布がブロード化する原因としては以下のように考えられる。カーボンナノチューブに関して、Fe蒸着膜を従来よりも厚くすることにより、高温時での微粒子化を一部妨げ、Fe粒子径の分布がブロード化するためと考えられる。また、従来どおりのFe蒸着膜厚であっても、SiO2酸化膜付のSi基板を使用することにより、Al2O3の表面凹凸の分布がブロード化し、Fe微粒子の径分布に影響を与えるものと考えられる。
【0131】
[実施例3]
(カーボンナノチューブ集合体の作製)
表面にSiO2膜を有するシリコン基板(熱酸化膜付ウェハ、KST製、SiO2膜厚み=1μm、SiO2膜とシリコン基板を合わせた厚み=550μm)上に、真空蒸着装置(JEOL製、JEE−4X Vacuum Evaporator)により、Al薄膜(厚み10nm)を形成した後、450℃で1時間酸化処理を施した。このようにして、シリコン基板上にAl2O3膜を形成した。このAl2O3膜上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてさらにFe薄膜(厚み2nm)を蒸着させて触媒層を形成した。
次に、触媒層付シリコン基板をカットして、30mmφの石英管内に載置し、水分率350ppmに保ったヘリウム/水素(120/80sccm)混合ガスを石英管内に30分間流して、管内を置換した。その後、電気管状炉を用いて管内を700℃まで30分間で段階的に昇温させ、700℃にて安定させた。700℃にて10分間放置後、温度を保持したまま、ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)混合ガスを管内に充填させ、30分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させ、カーボンナノチューブ集合体(3)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(3)の長さは722μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(3)の直径分布を図6に示す。図6に示すとおり、最頻値は12nmに存在し、相対頻度は25%であった。
また、カーボンナノチューブ集合体(3)の層数分布の分布幅、層数分布の最頻値および該最頻値の相対頻度も測定した。
結果を表2にまとめた。
【0132】
(せん断接着力の測定)
ポリプロピレン樹脂(旭洋紙パルプ株式会社製、厚み30μm)をホットプレート上で200℃に加熱し、溶融させた。上記基板上に垂直配向させて形成させたカーボンナノチューブの片端(上端)を溶融させたポリプロピレン樹脂に圧着した後、室温に冷却して固定した。このようにして、基材付カーボンナノチューブ集合体(3)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(3)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は40.5N/cm2であった。
結果を表2にまとめた。
【0133】
[実施例4]
ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)の混合ガスを石英管内に充填させ、20分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させたこと以外は、実施例3と同様にしてカーボンナノチューブ集合体(4)を作製した。
カーボンナノチューブ集合体(4)の長さは570μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(4)の直径分布を図7に示す。図7に示すとおり、最頻値は13nmに存在し、相対頻度は22.2%であった。
また、カーボンナノチューブ集合体(4)の層数分布の分布幅、層数分布の最頻値および該最頻値の相対頻度も測定した。
実施例3と同様にして、基材付カーボンナノチューブ集合体(4)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(4)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は31.2N/cm2であった。
結果を表2にまとめた。
【0134】
[比較例2]
(カーボンナノチューブ集合体の作製)
シリコン基板(エレクトロニクス エンド製、厚み525μm)上に、真空蒸着装置(JEOL製、JEE−4X Vacuum Evaporator)により、Al薄膜(厚み10nm)を形成した後、450℃で1時間酸化処理を施した。このようにして、シリコン基板上にAl2O3膜を形成した。このAl2O3膜上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてさらにFe薄膜(厚み0.67nm)を蒸着させて触媒層を形成した。
次に、触媒層付シリコン基板をカットして、30mmφの石英管内に載置し、水分率350ppmに保ったヘリウム/水素(120/80sccm)混合ガスを石英管内に20分間流して、管内を置換した。その後、電気管状炉を用いて管内を700℃まで30分間で段階的に昇温させ、700℃にて安定させた。700℃にて10分間放置後、温度を保持したまま、ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)混合ガスを管内に充填させ、20分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させ、カーボンナノチューブ集合体(C2)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(C2)の長さは589μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(C2)の直径分布を図8に示す。図8に示すとおり、最頻値は5nmに存在し、相対頻度は85.7%であった。
また、カーボンナノチューブ集合体(C2)の層数分布の分布幅、層数分布の最頻値および該最頻値の相対頻度も測定した。
結果を表2にまとめた。
【0135】
(せん断接着力の測定)
ポリプロピレン樹脂(旭洋紙パルプ株式会社製、厚み30μm)をホットプレート上で200℃に加熱し、溶融させた。上記基板上に垂直配向させて形成させたカーボンナノチューブの片端(上端)を溶融させたポリプロピレン樹脂に圧着した後、室温に冷却して固定した。このようにして、基材付カーボンナノチューブ集合体(C2)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(C2)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は15.3N/cm2であった。
結果を表2にまとめた。
【0136】
[比較例3]
ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)の混合ガスを石英管内に充填させ、10分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させたこと以外は、比較例2と同様にしてカーボンナノチューブ集合体(C3)を作製した。
カーボンナノチューブ集合体(C3)の長さは630μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(C3)の直径分布を図9に示す。図9に示すとおり、最頻値は13nmに存在し、相対頻度は40%であった。
また、カーボンナノチューブ集合体(C3)の層数分布の分布幅、層数分布の最頻値および該最頻値の相対頻度も測定した。
比較例2と同様にして、基材付カーボンナノチューブ集合体(C3)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(C3)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は11.5N/cm2であった。
結果を表2にまとめた。
【0137】
【表2】
【0138】
実施例3、4に見られるように、繊維状柱状構造体であるカーボンナノチューブの直径分布が分散して且つ直径分布の最頻値の相対頻度が30%以下の場合、ガラス面に対するせん断接着力が30N/cm2以上の値を示した。これに対し、比較例2に見られるように、繊維状柱状構造体であるカーボンナノチューブの直径分布が単分散で且つ直径分布の最頻値の相対頻度が30%を越えている場合、また比較例3に見られるように、繊維状柱状構造体であるカーボンナノチューブの直径分布の最頻値が5nm〜15nmの範囲であっても、直径分布の最頻値の相対頻度が30%を越えている場合、せん断接着力が20N/cm2未満という低い値を示した。
【0139】
実施例3、4において、高いせん断接着力が発現できるメカニズムとしては以下のように考えられる。直径の小さい繊維状柱状構造体はガラスの表面凹凸に追従し、接触面積が増大し、強接着となる反面、繊維状柱状構造体同士の凝集によりガラス表面凹凸に追従できない可能性がある。一方、直径の大きい繊維状柱状構造体はガラスの表面凹凸に対する追従性は低い反面、繊維状柱状構造体同士の凝集がないため、接着力の低下が小さい。実施例3、4においては、直径の小さい繊維状柱状構造体と直径の大きい繊維状柱状構造体を広い分布で存在させることにより、繊維状柱状構造体同士の凝集を防いで、繊維状柱状構造体おのおのが独立に働き、ガラスの表面凹凸に追従して接着面積が増大し、強接着を発現するものと考えられる。
【0140】
なお、実施例3、4において、繊維状柱状構造体の分布がブロード化する原因としては以下のように考えられる。繊維状柱状構造体に関して、Fe蒸着膜を従来よりも厚くすることにより、高温時での微粒子化を一部妨げ、Fe粒子径の分布がブロード化するためと考えられる。また、従来どおりのFe蒸着膜厚であっても、SiO2酸化膜付のSi基板を使用することにより、Al2O3の表面凹凸の分布がブロード化し、Fe微粒子の径分布に影響を与えるものと考えられる。
【0141】
[実施例5]
(カーボンナノチューブ集合体の作製)
表面にSiO2膜を有するシリコン基板(熱酸化膜付ウェハ、KST製、SiO2膜厚み=0.5μm、SiO2膜とシリコン基板を合わせた厚み=550μm)上に、真空蒸着装置(JEOL製、JEE−4X Vacuum Evaporator)により、Al薄膜(厚み10nm)を形成した後、450℃で1時間酸化処理を施した。このようにして、シリコン基板上にAl2O3膜を形成した。このAl2O3膜上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてさらにFe薄膜(厚み2nm)を蒸着させて触媒層を形成した。
次に、触媒層付シリコン基板をカットして、30mmφの石英管内に載置し、水分率330ppmに保ったヘリウム/水素(120/80sccm)混合ガスを石英管内に30分間流して、管内を置換した。その後、電気管状炉を用いて管内を765℃まで30分間で段階的に昇温させ、765℃にて安定させた。765℃にて10分間放置後、温度を保持したまま、ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)混合ガスを管内に充填させ、60分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させ、カーボンナノチューブ集合体(5)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(5)の長さは1073μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(5)の層数分布を図10に示す。図10に示すとおり、最頻値は4層と8層に存在し、相対頻度はそれぞれ20%であった。
結果を表3にまとめた。
【0142】
(せん断接着力の測定)
上記カーボンナノチューブ集合体(5)が備えるカーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブ)をスパチュラで取り出し、片端をガラス(MATSUNAMI スライドガラス27mm×56mm)に圧着させて、基材付カーボンナノチューブ集合体(5)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(5)をサンプルとして、せん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は、室温で40.7N/cm2、250℃で42.6N/cm2であった。
結果を表3にまとめた。
【0143】
[実施例6]
ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)の混合ガスを石英管内に充填させ、20分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させたこと以外は、実施例5と同様にしてカーボンナノチューブ集合体(6)を作製した。
カーボンナノチューブ集合体(6)の長さは357μmであった。
カーボンナノチューブ集合体(6)の層数分布を図11に示す。図11に示すとおり、最頻値は4層と8層に存在し、相対頻度はそれぞれ20%であった。
実施例5と同様にして、基材付カーボンナノチューブ集合体(6)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(6)をサンプルとして、実施例5と同様に、せん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は、室温で34.6N/cm2、250℃で30.3N/cm2であった。
結果を表3にまとめた。
【0144】
[比較例4]
汎用粘着剤(日東電工株式会社製、31B)をサンプルとして、実施例5と同様に、せん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は、室温で65.3N/cm2、250℃で33.2N/cm2であった。
結果を表3にまとめた。
【0145】
【表3】
【0146】
実施例5、6では、250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍であった。これに対して、比較例4のように汎用の粘着剤を用いた場合、250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8倍未満であり、接着力の大幅な低下が見られた。
【0147】
[実施例7]
ポリプロピレン樹脂(旭洋紙パルプ株式会社製、厚み30μm)をホットプレート上で200℃に加熱し、溶融させた。実施例5で得られた、基板上に垂直配向させて形成させたカーボンナノチューブ集合体(5)の片端(上端)を溶融させたポリプロピレン樹脂に圧着した後、室温に冷却して固定した。このようにして、基材付カーボンナノチューブ集合体(5´)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(5´)をサンプルとして、せん断接着力を測定した(測定方法(B))。せん断接着力は、表面自由エネルギー64.4mJ/m2の被着体(ガラス)に対するせん断接着力Aが43.4N/cm2、表面自由エネルギー29.8mJ/m2の被着体(PP板)に対するせん断接着力Bが38.7N/cm2であった。
結果を表4にまとめた。
【0148】
[実施例8]
ポリプロピレン樹脂(旭洋紙パルプ株式会社製、厚み30μm)をホットプレート上で200℃に加熱し、溶融させた。実施例6で得られた、基板上に垂直配向させて形成させたカーボンナノチューブ集合体(6)の片端(上端)を溶融させたポリプロピレン樹脂に圧着した後、室温に冷却して固定した。このようにして、基材付カーボンナノチューブ集合体(6´)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(6´)をサンプルとして、せん断接着力を測定した(測定方法(B))。せん断接着力は、表面自由エネルギー64.4mJ/m2の被着体(ガラス)に対するせん断接着力Aが36.5N/cm2、表面自由エネルギー29.8mJ/m2の被着体(PP板)に対するせん断接着力Bが40.7N/cm2であった。
結果を表4にまとめた。
【0149】
[比較例5]
比較例4で用いた汎用粘着剤(日東電工株式会社製、31B)をサンプルとして、せん断接着力を測定した(測定方法(B))。せん断接着力は、表面自由エネルギー64.4mJ/m2の被着体(ガラス)に対するせん断接着力Aが65.0N/cm2、表面自由エネルギー29.8mJ/m2の被着体(PP板)に対するせん断接着力Bが37.0N/cm2であった。
結果を表4にまとめた。
【0150】
【表4】
【0151】
実施例7、8では、表面自由エネルギー64.4mJ/m2の被着体(ガラス)に対する室温におけるせん断接着力をA、表面自由エネルギー29.8mJ/m2の被着体(PP板)に対する室温におけるせん断接着力をBとすると、B/Aの値が0.8〜1.2であった。これに対して、比較例5のように汎用の粘着剤を用いた場合、表面自由エネルギー64.4mJ/m2の被着体(ガラス)に対する室温におけるせん断接着力をA、表面自由エネルギー29.8mJ/m2の被着体(PP板)に対する室温におけるせん断接着力をBとすると、B/Aの値が0.8倍未満であり、接着力の大幅な低下が見られた。
【0152】
[実施例9]
(カーボンナノチューブ集合体の作製)
表面にSiO2膜を有するシリコン基板(熱酸化膜付ウェハ、KST製、SiO2膜厚み=1μm、SiO2膜とシリコン基板を合わせた厚み=550μm)上に、真空蒸着装置(JEOL製、JEE−4X Vacuum Evaporator)により、Al薄膜(厚み10nm)を形成した後、450℃で1時間酸化処理を施した。このようにして、シリコン基板上にAl2O3膜を形成した。このAl2O3膜上に、スパッタ装置(ULVAC製、RFS−200)にてさらにFe薄膜(厚み2nm)を蒸着させて触媒層を形成した。
次に、触媒層付シリコン基板をカットして、30mmφの石英管内に載置し、水分率350ppmに保ったヘリウム/水素(120/80sccm)混合ガスを石英管内に30分間流して、管内を置換した。その後、電気管状炉を用いて管内を765℃まで30分間で段階的に昇温させ、765℃にて安定させた。765℃にて10分間放置後、温度を保持したまま、ヘリウム/水素/エチレン(105/80/15sccm、水分率350ppm)混合ガスを管内に充填させ、35分間放置してカーボンナノチューブを基板上に成長させ、カーボンナノチューブ集合体(9)を得た。
カーボンナノチューブ集合体(9)の長さは680μmであった。
【0153】
(せん断接着力の測定)
ポリプロピレン樹脂(旭洋紙パルプ株式会社製、厚み30μm)をホットプレート上で200℃に加熱し、溶融させた。上記基板上に垂直配向させて形成させたカーボンナノチューブの片端(上端)を溶融させたポリプロピレン樹脂に圧着した後、室温に冷却して固定した。このようにして、基材付カーボンナノチューブ集合体(9)を得た。
基材付カーボンナノチューブ集合体(9)をサンプルとして、25℃にてせん断接着力を測定した(測定方法(A))。せん断接着力は44.60N/cm2であった。
【0154】
(非汚染性評価)
クラス10のクリーンルーム内で、直径4インチ、厚さ500μmの半導体ウェハに、基材付カーボンナノチューブ集合体(9)を、5kgローラーを一往復させて圧着して接着した。1時間後に、180°ピールにて剥離した。剥離面に残留している大きさ0.28μm以上のパーティクル汚染物の数を、レーザー表面検査装置(LS−5000、日立電子エンジニアリング社製)で測定した。剥離した半導体ウェハ上に残留する大きさ0.28μm以上のパーティクル数は、22個/4インチウェハであった。
なお、上記非汚染性評価における180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行った。ただし、試験片は基材付カーボンナノチューブ集合体(9)であり、圧着は5kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定した。
【0155】
(軽剥離性評価)
軽剥離性評価として、180°ピールを測定した。軽剥離性評価としての180°ピールは、引張圧縮試験機(ミネベア製「TG−1kN」)にて、JIS C 2107の粘着力(180°引き剥がし法)に準じて測定を行った。ただし、試験片は、幅20mmの基材付カーボンナノチューブ集合体(9)であり、試験板としてシリコンウェハ(ベアウェハ、P型、KST製)を用い、圧着は2kgのローラーを1往復して行い、温度23±2℃、湿度65±5%RH、剥離速度300mm/minで測定した。測定の結果、180°ピールは、0.95N/20mmであった。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の繊維状柱状構造体集合体は、優れた粘着特性を有することから、粘着剤として好適に使用され得る。また、例えば、半導体ウェハの加工時の保護シートとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0157】
10 繊維状柱状構造体集合体
1 基材
2 繊維状柱状構造体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維状柱状構造体を備え、
該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブであり、
該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10〜30層であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下であり、最大層数が5〜30層であり、最小層数が1〜10層である、
カーボンナノチューブ集合体である、粘着部材に用いる繊維状柱状構造体集合体。
【請求項2】
250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍である、請求項1に記載の繊維状柱状構造体集合体。
【請求項3】
表面自由エネルギーaの被着体に対する室温におけるせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体に対する室温におけるせん断接着力をBとすると(ただし、a>b)、B/Aの値が0.8〜1.2である、請求項1または2に記載の繊維状柱状構造体集合体。
【請求項4】
前記層数分布の最頻値が、層数2層から層数10層の範囲に存在する、請求項1から3までのいずれかに記載のカーボンナノチューブ集合体。
【請求項5】
前記複数層を有するカーボンナノチューブが、長さ300μm以上のカーボンナノチューブを含む、請求項1から4までのいずれかに記載の繊維状柱状構造体集合体。
【請求項6】
前記複数層を有するカーボンナノチューブが長さ方向に配向している、請求項1から5までのいずれかに記載の繊維状柱状構造体集合体。
【請求項7】
室温におけるガラス面に対するせん断接着力が15N/cm2以上である、請求項1から6までのいずれかに記載の繊維状柱状構造体集合体。
【請求項8】
基材をさらに備え、前記カーボンナノチューブの片端が該基材に固定されている、請求項1から7までのいずれかに記載の繊維状柱状構造体集合体。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれかに記載の繊維状柱状構造体集合体を用いた、粘着部材。
【請求項1】
複数の繊維状柱状構造体を備え、
該繊維状柱状構造体がカーボンナノチューブであり、該カーボンナノチューブが複数層を有するカーボンナノチューブであり、
該複数層を有するカーボンナノチューブの層数分布の分布幅が10〜30層であり、該層数分布の最頻値の相対頻度が25%以下であり、最大層数が5〜30層であり、最小層数が1〜10層である、
カーボンナノチューブ集合体である、粘着部材に用いる繊維状柱状構造体集合体。
【請求項2】
250℃雰囲気下におけるガラス面に対するせん断接着力が、室温におけるガラス面に対するせん断接着力の0.8〜1.2倍である、請求項1に記載の繊維状柱状構造体集合体。
【請求項3】
表面自由エネルギーaの被着体に対する室温におけるせん断接着力をA、表面自由エネルギーaとの差が25mJ/m2以上である表面自由エネルギーbの被着体に対する室温におけるせん断接着力をBとすると(ただし、a>b)、B/Aの値が0.8〜1.2である、請求項1または2に記載の繊維状柱状構造体集合体。
【請求項4】
前記層数分布の最頻値が、層数2層から層数10層の範囲に存在する、請求項1から3までのいずれかに記載のカーボンナノチューブ集合体。
【請求項5】
前記複数層を有するカーボンナノチューブが、長さ300μm以上のカーボンナノチューブを含む、請求項1から4までのいずれかに記載の繊維状柱状構造体集合体。
【請求項6】
前記複数層を有するカーボンナノチューブが長さ方向に配向している、請求項1から5までのいずれかに記載の繊維状柱状構造体集合体。
【請求項7】
室温におけるガラス面に対するせん断接着力が15N/cm2以上である、請求項1から6までのいずれかに記載の繊維状柱状構造体集合体。
【請求項8】
基材をさらに備え、前記カーボンナノチューブの片端が該基材に固定されている、請求項1から7までのいずれかに記載の繊維状柱状構造体集合体。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれかに記載の繊維状柱状構造体集合体を用いた、粘着部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−254572(P2010−254572A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107229(P2010−107229)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【分割の表示】特願2009−554806(P2009−554806)の分割
【原出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【特許番号】特許第4545827号(P4545827)
【特許公報発行日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【復代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【分割の表示】特願2009−554806(P2009−554806)の分割
【原出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【特許番号】特許第4545827号(P4545827)
【特許公報発行日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【復代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
【Fターム(参考)】
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