説明

繊維補強ゴム成形物の製造方法

【課題】繊維とα−β−不飽和有機酸金属塩を3重量%以上含むエチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴム組成物とを強固に接着させることができる、繊維とゴム組成物の接着方法を提供する。
【解決手段】繊維とα−β−不飽和有機酸金属塩を3重量%以上含むエチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴム組成物とを接着するのに際し、繊維をエポキシ樹脂または/およびウレタン樹脂を含む第一浴で処理し、さらにキシレンで希釈されたマレイン酸ポリブタジエン樹脂を含む第二浴で処理した後、これを該ゴム組成と接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−β−不飽和有機酸金属塩を3重量%以上含むエチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴム組成物を繊維により補強してなる繊維補強ゴム成形物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴム組成物(以下「EODMゴム」と略すことがある)は、耐熱性、耐候性、耐オゾン性に優れているので、耐熱ベルト、耐熱ホース等に利用されている。そしてこれらのゴム組成物は、単にゴム加硫物としてだけではなく、強度の点などから繊維との複合体として使用されることが多い。
しかしながら、EODMゴムは繊維、特に補強効果の大きい高強力、高弾性繊維であるポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維などとのとの接着性が劣るため、その用途が限定されるという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するため、有機過酸化架橋系ゴムを用いた方法、即ち、ジアルキルパーオキサイド及び(メタ)アクリレート類を配合したEODMゴムと、レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物とポリクロロプレンラテックスとを含有するディップ液で処理した繊維とを加硫接着する方法(特許文献1)が、また、レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物とクロロスルホン化ポリエチレンラテックス又はポリクロロプレンラテックスとからなるディップ液で繊維を処理し、ハロゲン含有ゴムを配合したEODMゴムと加硫接着させる方法(特許文献2)が知られているが、いずれの方法においても十分な接着力は得られていないのが実情である。
【0004】
さらに近年、ゴム側の改質、すなわち接着性の高いEODMゴムを得るため、α−β−不飽和酸金属塩を含むゴム組成物の検討がなされており、α−β−不飽和有機酸金属塩含むEODMゴム組成物からなるベルトが開示されている。(特許文献3)
しかしながら、α−β−不飽和酸金属塩を含むEODMゴム組成物を用いると繊維との接着性は向上するものの、繊維側の接着剤がなければ、充分な接着性を得るものではない。また、ベルト心線として繊維成形物用いた場合には、ベルト作成時のほつれが問題となる。
【0005】
これらを解決する手段として、ポリエステル繊維として、その表面に、長径が0.1〜1.0μmの微細孔が100μmあたり10〜8000個形成されているポリエステル繊維を用いることが提案されている(特許文献4)。しかしながら、この方法は主にポリエチレンテレフタレート繊維には適しているものの、高耐久性を求められる耐熱ベルト、耐熱ホースなどに用いられる補強成形物として、近年、需要が期待されるポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維等の高強力、高ヤング率を有する繊維などに幅広く応用するのは難しい。
【0006】
【特許文献1】特公昭63−10732号公報
【特許文献2】特公平5−86968号公報
【特許文献3】特表平9−500930号公報
【特許文献4】特開2005−76129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点を解決し、繊維とα−β−不飽和有機酸金属塩含むエチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴム組成物とが強固に接着した繊維補強ゴム成形物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、α−β−不飽和有機酸金属塩含むEODMゴム組成物と繊維とを接着させるに際し、繊維に後述する処理を実施すれば、工程通過性良好で強固な接着性を有することができることを究明し、本発明に到達した。
【0009】
かくして本発明によれば、α−β−不飽和有機酸金属塩を3重量%以上含むエチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴム組成物を繊維で補強してなる繊維補強ゴム成形物の製造方法であって、該繊維を、エポキシ樹脂および/またはウレタン樹脂を含む第一処理剤で処理し、さらに溶剤系溶媒で希釈したマレイン酸ポリブタジエン樹脂を含む第二処理剤で処理した後、該ゴム組成物と加硫接着することを特徴とする繊維補強ゴム成形物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、繊維とα−β−不飽和有機酸金属塩を含むエチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴム組成物とが強固に接着した繊維補強ゴム成形物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、α−β−不飽和有機酸金属塩をエチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴム組成物を繊維で補強してなる繊維補強ゴム成形物の製造方法である。
【0012】
本発明で使用されるエチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴム組成物とは、エチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのαオレフィンと、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4ヘキサジエン等のジエンとの3元共重合体であり、α−オレフィンとしてプロピレンを使用することが好ましい。
【0013】
上記エチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴム組成物は、有機過酸化物架橋系のものであることが好ましい。有機過酸化物としてはジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等が好ましく例示される。
【0014】
上記エチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体には、3重量%以上のα−β−不飽和有機酸金属塩が含まれていることが必要である。ここで、α−β−不飽和有機酸金属塩としては、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩が好ましく例示され、具体的には、アクリル酸亜鉛、アクリル酸カルシウム、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸カルシウム、メタクリル酸マグネシウムなどが例示される。
該α−β−不飽和有機酸金属塩の含有量は、あまり多すぎてもゴムとしての物性が不十分となるため、好ましくは4〜50重量%、より好ましくは5〜25重量%である。
【0015】
本発明に用いられる繊維としては高強度、高ヤング率等の優れた物理的特性を有する合成繊維であることが好ましく、たとえばより具体的にはポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維などを挙げることができる。そして本発明は特にポリエステル繊維、あるいは芳香族ポリアミド繊維の接着力を増加するために有効である。ポリエステル繊維としては、テレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分とし、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール又はテトラメチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルからなる繊維であることが好ましい。芳香族ポリアミド繊維としては、ポリパラアミノベンズアミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド、ポリパラアミノベンズヒドラジドテレフタルアミド、ポリテレフタル酸ヒドラジド、ポリメタフェニレンイソフタラミド等、もしくはこれらの共重合体からなるいわゆるアラミド繊維であることが好ましく、特に強力が高いパラ型アラミド繊維が有効に用いられる。
【0016】
これら繊維の繊度、フィラメント数、断面形状等には制限は無く、本発明の繊維はヤーン、コード、不織布、織編物、繊維を0.1〜10mm程度にカットされたカットファイバー等種々の繊維集合形態を含むものである。また、ベルト補強用心線、ホース補強用繊維として用いる場合、好適な繊維の形状は複数回撚られた撚糸コードである。
【0017】
本発明では、上記繊維に、エポキシ樹脂またはウレタン樹脂を含む第一処理剤、または、または、エポキシ樹脂およびウレタン樹脂の両方を含む第一処理剤による処理が施される。また、第一処理剤の溶媒は水系および溶剤系双方とも使用可能である。例えばホースなど、柔軟性が求められる用途では水系溶媒が好ましく、ベルト心線などのほつれ防止が求められる用途では溶剤系溶媒が好ましい。上記第一処理剤による処理で重要な点は繊維ポリマーが不活性な状態から活性な状態、すなわち繊維表面を水酸基や反応可能なアミド基を有する状態に変換することである。
【0018】
エポキシ樹脂および/またはウレタン樹脂の繊維への付着量は、繊維重量を基準として、0.05〜10重量%とするのが好ましく、0.1〜5重量%とするのがより好ましい。上記濃度が、0.05重量%未満では、第二処理の樹脂と充分反応せず、充分な接着性を得ない傾向があり、10重量%を超えると、エポキシ樹脂および/またはウレタン樹脂の凝集破壊がおこりやすくなり、結果的に十分な接着性を得ない傾向がある。なお、エポキシ樹脂とウレタン樹脂の両方を第一処理剤中に含有させる場合は、これらの合計重量から算出した付着量が上記範囲にあることが好ましい。
【0019】
また、第一処理剤中のエポキシ樹脂および/またはウレタン樹脂の濃度は、先に述べた付着量を達成する適正な濃度で調整される必要があるが、第一処理剤の重量を基準として、0.05〜40重量%とするのが好ましく、0.5〜30重量%とするのがより好ましい。上記濃度が、0.05重量%未満では、少量調整する場合、液の希釈調整を正確に行う秤量に精密機器が必要であるし、40重量%を超えると、処理剤の溶媒への分散が充分でなく、沈殿を生じる可能性がある。
なお、エポキシ樹脂とウレタン樹脂の両方を第一処理剤中に含有させる場合は、これらの合計重量から算出した濃度が上記範囲にあることが好ましい。
【0020】
本発明において肝要な点は、上記第一処理剤により処理した後、さらにマレイン酸ポリブタジエン樹脂を含む第二処理剤で処理することである。この第二処理剤は反応性および塗布性を加味して、溶剤系溶媒に希釈されたものである必要がある。分散に用いられる溶剤系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどが好適に用いることができるが、環境に鑑みて、トルエンおよびキシレンが良く、特にトルエンよりも沸点が高いため取扱い性の良いキシレンが最も優れる。
【0021】
マレイン酸ポリブタジエン樹脂は、第一処理剤による処理によって繊維表面に形成された水酸基およびアミド基と水素結合し、さらにエチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴム組成物中に含まれるα−β−不飽和有機酸金属塩と強固に結合する。
【0022】
第二処理剤中のブタジエン樹脂の繊維への付着量は、繊維重量を基準として、0.5〜20重量%が好ましく、1〜10重量%が好ましい。上記付着量が、0.5重量%未満では、十分な接着性を得られない傾向があり、20重量%を超えると樹脂の凝集破壊がおこりやすくなり、結果的に十分な接着性を得ない傾向がある。
【0023】
また、第二処理剤中のブタジエン樹脂の濃度は、先に述べた付着量を達成する適正な濃度で調整される必要があるが、第一処理剤の重量を基準として、0.05〜40重量%とするのが好ましく、1〜30重量%とするのがより好ましい。上記濃度が、0.05重量%未満では、少量調整する場合、液の希釈調整を正確に行う秤量に精密機器が必要であるし、40重量%を超えると、処理剤の溶媒への分散が充分でなく、沈殿を生じる可能性がある。
【0024】
さらに強固な接着性を得るため、第二処理剤に、マレイン酸ポリブタジエン樹脂とともに、エチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなる樹脂や、カーボンブラックを添加することが好ましい。そうすることで、従来ベルト心線処理で実施されていたトップコート処理などが不要になる。
【0025】
ここで使用されるエチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体は被着体であるゴム組成物(ゴムマトリックス)と同様のものが良い。カーボンブラックは特に限定されるものではないが、繊維とゴム組成物とを接着し、繊維補強ゴム成形物としたときの補強性を考慮すると、窒素吸着比表面積が40〜120cm/g、ジブチルフタレート吸油量が80〜130cm/100gの特性を有するものを使用することが好ましい。ここで、窒素吸着比表面積(NSA)は、カーボンブラックの比表面積であって、JIS K 6217−2に従い測定される。
【0026】
第二処理剤中のエチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体の繊維への付着量は、繊維重量を基準として0.5〜20重量%が好ましく、1〜10重量%が好ましい。上記付着量が、0.5重量%未満では、十分な接着性を得られない傾向があり、20重量%を超えると樹脂の凝集破壊がおこりやすくなり、結果的に十分な接着性を得ない傾向がある。
【0027】
また、第二処理剤中のエチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体の濃度は、第二処理剤の重量を基準として、0.05〜40重量%とするのが好ましく、1〜30重量%とするのがより好ましい。上記濃度が、0.05重量%未満では、少量調整する場合、液の希釈調整を正確に行う秤量に精密機器が必要であるし、40重量%を超えると、処理剤の溶媒への分散が充分でなく、沈殿を生じる可能性がある。
【0028】
一方、第二処理剤中のカーボンブラックの繊維への付着量は、繊維重量を基準として、0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜5重量%が好ましい。
また第二処理剤中のカーボンブラックの濃度は、第二処理剤の重量を基準として、0.05〜20重量%とするのが好ましく、0.05〜10重量%とするのがより好ましい。
【0029】
また、上記第二処理剤に酸化亜鉛を添加することで、繊維とエチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴムとの反応性が増し、接着性を向上させることができる。酸化亜鉛と、エチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴム、もしくはα−β−不飽和有機酸金属塩との反応機構は不明であるが酸化亜鉛を添加することで格段に上記接着性を増すことができる。
【0030】
第二処理剤中の酸化亜鉛の繊維への付着量は、繊維重量を基準として、0.05〜1重量%が好ましく、0.1〜0.8重量%が好ましい。
また、第二処理剤中の酸化亜鉛の濃度は、第二処理剤の重量を基準として、0.01〜5重量%とするのが好ましく、0.05〜2.5重量%とするのがより好ましい。
【0031】
本発明においては、以上の処理をした繊維と、エチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴム組成物の未加硫ゴムと加硫接着することにより、繊維補強ゴム成形物とすることができる。
【0032】
加硫の方法としては、従来公知の方法を採用することができ、繊維を未加硫ゴムに埋め込み、所望の形状に加圧成形後、有機過酸化物架橋が可能な温度(例えば100〜250℃)や時間(例えば作業効率も考慮し5〜60分)で加硫すればよい。加圧、過熱方法としては、電気ヒータ、蒸気、温水、シリコンオイルなどの熱媒を用いて加熱し、プレス成形する方法などを採用することができる。
【0033】
以上に説明した本発明によれば、高耐久性を求められる耐熱ベルト、耐熱ホースなどの繊維補強ゴム成形物を提供することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各評価項目の測定値は下記の測定方法にしたがって求めた。
【0035】
(1)剥離接着性
処理コードとゴムとの接着力を示すものである。アクリル酸亜鉛10重量%含むジクミルパーオキサイド架橋型エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム(以下、EPDMゴムと略すことがある)の未加硫ゴムシート表層近くに25本のコードを埋め、160℃、20分間、5MPaのプレス圧力で加硫し、次いで、25本のコードをシート面に対し90度の方向へ50mm/分の速度で剥離するのに要した力を求め、後述する比較例1を100とするインデックスで接着性表示する。
【0036】
(2)引抜接着性
処理コードとゴムとの剪断接着力を示すものである。コードをアクリル酸亜鉛10重量%含むジクミルパーオキサイド架橋型EPDMゴムの未加硫ゴムブロック中に1本のコードを埋め込み、160℃、20分間加硫し、次いで、コードをゴムブロックから200mm/分の速度で引き抜き、引き抜きに要した力を求め、後述する比較例1を100とするインデックスで接着性表示する。
【0037】
[実施例1]
コ・パラフェニレン・3・4’オキシジフェニレン・テレフタラミドからなる1670デシテックス、1000フィラメントのヤーン(商品名:テクノーラ、帝人テクノプロダクツ株式会社製)(TN)にS方向に4T/10cmの撚りをかけ、このヤーンを2本合わせ、同一方向(S方向)へさらに6T/10cmの撚りをかけて3340デシテックスのコードとした。
【0038】
第一処理剤は、水1019.2重量部に、ピペラジン0.5重量部を分散させ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩(ネオコールSW−30、第一工業製薬株式会社製)1重量部(固形成分濃度:30重量%)を添加し、次いでポリエポキシド化合物(デナコールEX314、ナガセケムテックス株式会社製)20重量部を分散させて作成した。これにより、第一処理剤中の全固形成分濃度を2重量%とした。
上記コードを第一処理剤に浸漬した後、150℃で2分間乾燥し、さらに240℃で1分間熱処理を行った。上記処理によりコードに付着した固形成分の付着量はコード重量を基準として0.5重量%であった。
【0039】
第二処理剤は表1に示す通り、マレイン酸ポリブタジエン樹脂(Ricobond 1756、Sartomer Company製)20重量部、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(ELTAN578、DSM製)10重量部(以下、EPDMポリマーと略すことがある)、カーボンブラック(N660、三菱化学株式会社製、窒素吸着比表面積27m/g、ジブチルフタレート吸油量100cm/100g)5重量部、酸化亜鉛1重量部を、キシレン324重量部に分散させて作成した。これにより、第二処理剤中の全固形成分濃度を10重量%(マレイン酸ポリブタジエン樹脂の濃度は5.6重量%)とした。
上記コードを第二処理剤に浸漬した後、スクイズローラーで絞り、80℃で2分間乾燥した。上記処理によりコードに付着した第二処理剤の固形成分の付着量はコード重量を基準として9重量%であった。結果を表1に示す。
【0040】
[実施例2〜5]
第二処理剤において、マレイン酸ポリブタジエン樹脂、EPDMポリマー、カーボンブラック、酸化亜鉛、キシレンの量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にした。スクイズローラーを調節し、第二処理剤の固形成分の付着量をコード重量を基準として9重量%にした。
【0041】
[実施例6]
ポリエチレンナフタレートからなる1670デシテックス、250フィラメントのヤーン(商品名:テオネックス、帝人ファイバー株式会社製)(PEN)に実施例1と同様の撚糸と処理を行った。
【0042】
[比較例1]
撚糸コードに第二処理剤による処理を行わないで、アクリル酸亜鉛を10重量%含むEPDMゴムとの接着性を評価した。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、α−β−不飽和有機酸金属塩含むエチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴム組成物とが強固に接着した繊維補強ゴム成形物を提供でき、高耐久性を持つ耐熱ベルト、耐熱ホースを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−β−不飽和有機酸金属塩を3重量%以上含むエチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなるゴム組成物を繊維で補強してなる繊維補強ゴム成形物の製造方法であって、該繊維を、エポキシ樹脂および/またはウレタン樹脂を含む第一処理剤で処理し、さらに溶剤系溶媒で希釈したマレイン酸ポリブタジエン樹脂を含む第二処理剤で処理した後、該ゴム組成物と加硫接着することを特徴とする繊維補強ゴム成形物の製造方法。
【請求項2】
α−β−不飽和有機酸金属塩が、アクリル酸金属塩またはメタクリル酸金属塩である請求項1記載の繊維補強ゴム成形物の製造方法。
【請求項3】
第二処理剤に、エチレン−αオレフィン−非共役ジエン3元共重合体からなる樹脂、カーボンブラック、または、酸化亜鉛の少なくとも一つが含有されている請求項1記載の繊維補強ゴム成形物の製造方法。
【請求項4】
繊維が、ポリエステル繊維またはアラミド繊維である請求項1記載の繊維補強ゴム成形物の製造方法。

【公開番号】特開2009−286987(P2009−286987A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144334(P2008−144334)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】