説明

繊維製品用難燃剤水性分散液及びその製造方法

トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン(TTBT)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(TBBPE)、又はそれらの混合物と、一種以上の非イオン性又はアニオン性界面活性剤及び/又は湿潤剤とを含む、繊維用難燃剤水性分散液又は懸濁液。該難燃剤は繊維材料との親和性が高く、且つ水溶液中で安定である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維に使用される難燃水性分散液に関する。より詳細には本発明は、繊維材料と高い親和性(compatibility)を有し且つ水溶液中で安定な難燃剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品の難燃化方法としては、芳香族臭素含有配合物をバインダーによって基材に付着させることがこれまでに確立されている(例えば、米国特許第3955032号及び同第4600606号)。現在までの配合物の主たる問題点としては、高臭素含有量が要求されること、添加物の乾燥換算の要求量(high dry add-on demand)が高いこと、暗色の織地に縞状マークが発生すること、熱可塑性ファイバーの燃焼中に過剰なドリップを生じること、分散物が不安定であることが挙げられる。これら問題点のほとんどは、使用される芳香族臭素化合物に由来する。
【0003】
【特許文献1】米国特許第3955032号
【特許文献2】米国特許第4600606号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の芳香族臭素含有配合物を用いる場合、十分な難燃性を得るためには、樹脂成分の割合は全添加成分の60〜70重量%という高率となる(国立リサーチ・カウンシル(National Research Council)、環境研究及び毒物学に関する委員会(Board on Environmental Studies and Toxicology)、毒物学に関する委員会(Committee on Toxicology)、難燃性化学製品に関する分科委員会(Subcommittee on Flame-Retardant Chemicals)、ドナルド E.ガードナー(Donald E. Gardner)(理事長)による「使用難燃性化学製品の毒性リスク(Toxicological Risks of Selected Flame-Retardant Chemicals)(2000)」507ページ参照)。このように添加量が高くなる一因は、難燃(FR)剤を繊維に固定するために大量のバインダーが必要となることにある。バインダーは全FR配合物の50重量%という高率となる(「使用難燃性化学製品の毒性リスク(2000)」507ページ参照)。バインダーが相当量存在することにより、可燃性が高まり且つドリップが起こるために、より高い臭素含有量が必要となる。このように、非効率的サイクルが作り出される。より良好な性能を有し且つ繊維としての特性をあまり損ねない難燃繊維製品を得るためには、バインダー含有量の低い組成で分散性良く配合できる効率的なFR剤が必要とされる。
【0005】
トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン(FR−245)は、芳香族臭素とシアヌレートを共に含み、高いFR効率と良好な熱安定性を付与する難燃剤である。該難燃剤は微粉化されていない状態でも多くの用途に有用であり、特にプラスチック組成物用耐火剤分野で有用であるがこれに限定されない。FR−245は水に不溶であるが比重が約2.4であり、これは、そのような用途に通常用いられるデカブロモジフェニルオキシド(デカ)(比重3)等の臭素リッチFR剤よりも大幅に低い。またFR−245は微粉状としやすい。従ってFR−245は、より安定な水性分散液の調製及び使用に適している。FR−245はまた、初期分解温度がデカブロモジフェニルオキシドよりも高い。
【0006】
テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(FR−720)は、芳香族性臭素と脂肪族性臭素を共に含み、高いFR効率と良好な熱安定性を付与する難燃剤である。FR−720は多くの用途に有用であり、特にプラスチック組成物用耐火剤分野で有用であるがこれに限定されない。FR−720は水に不溶であるが比重が約2.3であり、これは、そのような用途に通常用いられるデカブロモジフェニルオキシド(デカ)等の臭素リッチFR剤よりも大幅に低い。FR−720は、融点範囲が低く(113〜117℃)、加工中に該材料が溶融浸透することができるため、塗布時に均一なフィルムを形成できるという利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、本発明者らは、これまで繊維への使用が試みられたことのない2種の特定の芳香族系難燃剤が予期しない安定性と親和性とを有し、この性質により繊維材料の難燃化目的に非常に有効であることを見出した。これが本発明の対象である。
【0008】
従って本発明の目的は、繊維材料処理用の従来の配合物の問題点を解消する、A)トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン又はB)テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)の安定な分散物又は懸濁物、或いはそれらの混合物の安定な分散物又は懸濁物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、水性の分散液又は懸濁液であり非水溶媒を必要としない上述の分散物又は懸濁物を提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、上述の水性の分散液又は懸濁液の調製方法を提供することである。
【0011】
本発明の更に他の目的は、コーティング及び/又はパッディング(padding)及び/又は発泡加工(foaming)及び/又はスプレーの各塗布方法による繊維関連産業における特定用途の、トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン又はテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)の分散物、或いはトリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)とのブレンドの分散物を提供することである。
【0012】
本発明の更なる目的は、トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン又はテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)の分散物、或いはトリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)とのブレンドの分散物であって、更にこれらの難燃剤から得られる組成物の耐火効率を向上させるための共力剤(synergist)等の付加的な化合物を含有する分散物を提供することである。
【0013】
本発明の更に他の目的は、トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン又はテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)の分散物、或いはトリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)とのブレンドの分散物において、バインダー含有量を大幅に低減した分散物を提供することである。
【0014】
本発明の目的は、トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、又はトリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)とのブレンドを水溶液として繊維材料上に適用して、滑らかで半透明のコーティングを形成することでもある。
【0015】
本発明の他の目的及び利点は、記載が進むにつれて明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明によれば、トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、又はトリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)とのブレンドの分散物は、前記難燃剤の一方若しくは両方、又はそれらの混合物を含み、且つ非イオン性又はアニオン性界面活性剤或いは湿潤剤を含有することを特徴とする。
【0017】
本発明に有用な非イオン性又はアニオン性界面活性剤或いは湿潤剤は本技術分野においてよく知られており、当業者であれば実験を行わずとも選択することができる。非イオン性の剤の例示的且つ非限定的な例としては、例えば、ポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテル型、好ましくはNP−6(ノニルフェノールエトキシレート、エチレンオキシドユニット6)を挙げることができる。
【0018】
アニオン性の剤の例示的且つ非限定的な例としては、例えば、スルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルや遊離酸、有機リン酸エステルを挙げることができる。
【0019】
本発明の分散物は更に、分散剤としても懸濁剤としても機能し且つ当業者によって通常使用される他の添加剤を含むことができる。他の添加剤としては、例えば、アクリル酸/アクリル酸エステルコポリマーポリカルボン酸ナトリウム中和物、好ましくはナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩を挙げることができる。
【0020】
本発明に係る懸濁物は更に、当業者によく知られた消泡剤又は発泡防止剤を含むことができる。これらの例としては、鉱油のエマルジョンや天然オイルのエマルジョン、好ましくはAF−52TM等のシリコーン油のエマルジョンを挙げることができる。
【0021】
本発明に係る懸濁物は更に、当業者によく知られたバインダー剤を含むことができる。バインダー剤は、任意のアクリルコモノマーから得られるポリマーラテックスエマルジョンを含むことができる。本発明に用いることができるコモノマーの例としては、アクリル酸やメタクリル酸、又はそれらの誘導体(エステルやニトリト、アミド等)を挙げることができる。好ましい化合物はエステルである。本発明で用いることができるアクリレートの具体例としては、メチルアクリレートやエチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ビニルアクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、パーフルオロエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ステアリルアクリレート又はステアリルメタクリレート、アクリルアミド又はメタクリルアミド、N−(C〜C−アルキル)アクリルアミド又はN−(C〜C−アルキル)メタクリルアミド等を挙げることができる。コポリマーを作製する場合、一種類のアクリレートを用いることもできるし、アクリレートを各種組合わせて用いることもできる。更に、他のコモノマーをコポリマーラテックスに用いることができ、このコモノマーとしては、飽和C〜Cカルボン酸ビニルエステル(ビニルアセテートやビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルステアレート)やスチレン、フェノキシエチルアクリレート、ヒドロキシアルキレンモノアクリルエステル及びヒドロキシアルキレンモノメタクリルエステル、エトキシル化C〜C18アルコールのアクリルエステル及びメタクリルエステル等を挙げることができる。
【0022】
他の好適な繊維用バインダーとしては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーやポリクロロプレンゴム、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム、ポリウレタン等を挙げることができる。
【0023】
本発明の分散物にはまた、ホルムアルデヒドや、好ましくはメチルヒドロキシベンゾエートとプロピルヒドロキシベンゾエートの混合物等の保存剤又は安定化剤を添加することもできる。
【0024】
本発明の好ましい一実施形態においては、トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、又はトリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)とのブレンドの分散物に、耐火共力剤等の付加的な化合物(例えば、耐火剤である酸化アンチモン(AO))を混合する。
【0025】
本発明の別の好ましい実施形態においては、トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、又はトリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)とのブレンドの分散物は、通常30重量%以下、好ましくは27重量%以下のバインダーと共に配合される。
【0026】
本発明の更に別の好ましい実施形態においては、トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、又はトリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)とのブレンドの組成物は、繊維製品に十分な難燃性を付与するために添加剤重量(乾燥換算)の60%未満、好ましくは添加剤重量(乾燥換算)の50%、最も好ましくは添加剤重量(乾燥換算)の40%で用いられる。
【0027】
本発明の更に別の好ましい実施形態においては、トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、又はトリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)とのブレンドの配合物は、洗剤で洗浄した後に繊維製品に十分な難燃性が付与されているように用いられる。
【0028】
本発明のより好ましい実施形態においては、トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、又はトリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジンとテトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)とのブレンドの配合物は、繊維基材上に滑らかで半透明、且つ縞状のスジのないコーティングが付与されているように用いられる。
【0029】
本発明の分散物、特に水性分散液は安定である。この分散物を室温で保存する場合、少なくとも2週間、好ましくは少なくとも1ヶ月間安定である。また、分散物の安定性を向上させることができ、例えば3ヶ月以上の安定性とすることができる。
【0030】
本発明の上述の特徴及び利点、更に他の特徴及び利点は、次の実施例に示される本発明の好ましい実施形態の例示的且つ非限定的な詳細な記載によってよりよく理解されるであろう。
【実施例】
【0031】
実施例1
トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン(FR−245)分散液の調製
粒度分布0.1μ〜20μのFR−245(248g)を、脱イオン水164gと分散剤25gとの混合溶液に滴下した。混合分散液にSbを100g添加した。この分散液を15分間混合した。混合中にアクリル系増粘剤を約5g添加して、分散液を水酸化アンモニウムで中和しpH7とした。分散液の組成の詳細を次の表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
FR−245分散液は、滑らか、白色、且つ流動性が良好であった。この分散液を6ヶ月間貯蔵したところ、安定な棚持ち性を示した(沈澱観察されず)。
【0034】
実施例2
FR−245配合物の調製
脱イオン水58gとアクリルバインダー58gを、実施例1で得た分散液79gに添加した。混合しながらアクリル系増粘剤19gを添加して、この分散液を水酸化アンモニウムで中和しpH7〜8とした。分散液の詳細を次の表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
この配合物はバインダーを27重量%、FR剤を16.8重量%含み、臭素含有量は11.3重量%であった。FR−245配合物は、滑らか、白色、且つ流動性が良好であった。この分散液を6ヶ月間貯蔵したところ、安定な棚持ち性を示した(沈澱観察されず)。
【0037】
実施例3
FR−245配合物のポリエステル織地への塗布
164g/m2のポリエステル織地に、実施例2で得た配合物を添加成分量(乾燥換算)が57.7%となるようにナイフコーターでコーティングし硬化させた。この織地は、ASTM D 6413−99に合格し、ドリッピングは無視できる程度であった。この織地は、視認できる縞状マークのない半透明のものであった。
【0038】
実施例4
FR−245配合物のポリエステル織地への塗布
164g/m2のポリエステル織地に、実施例2で得た配合物を添加成分量(乾燥換算)が40%となるようにナイフコーターでコーティングし硬化させた。この織地は、ASTM D 6413−99に合格し、ドリッピングは無視できる程度であった。この織地は、視認できる縞状マークのない半透明のものであった。
【0039】
実施例5
FR−245配合物のポリエステル織地への塗布
164g/m2のポリエステル織地に、実施例2で得た配合物を添加成分量(乾燥換算)が40%となるようにナイフコーターでコーティングし硬化させた。この織地を、1g/Lの標準的な洗剤を用いて80℃で30分間洗浄し乾燥させた。この織地は、ASTM D 6413−99に合格し、ドリッピングは無視できる程度であった。この織地は、視認できる縞状マークのない半透明のものであった。
【0040】
実施例6
テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(FR−720)分散液の調製
FR−720(248g)を、脱イオン水241gと分散剤36gとの混合溶液に滴下した。混合分散液にSbを100g添加した。この分散液を15分間混合した。混合中にアクリル系増粘剤を約7.3g添加して、分散液を水酸化アンモニウムで中和しpH7とする。分散液の詳細を次の表3に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
FR−720分散液は、滑らか、白色、且つ流動性が良好であった。この分散液を6ヶ月間貯蔵したところ、安定な棚持ち性を示した(沈澱観察されず)。
【0043】
実施例7
FR−720配合物の調製
脱イオン水140gとアクリルバインダー145gを、実施例6で得た分散液198gに添加した。混合しながらアクリル系増粘剤18.4gを添加して、この分散液を水酸化アンモニウムで中和しpH7〜8とした。分散液の詳細を次の表4に示す。
【0044】
【表4】

【0045】
この配合物はバインダーを34.2重量%、FR剤を15.9%含み、臭素含有量は10.7%であった。配合物は滑らか、白色、且つ流動性が良好であった。この分散液を6ヶ月間貯蔵したところ、安定な棚持ち性を示した(沈澱観察されず)。
【0046】
実施例8
FR−720配合物のポリエステル織地への塗布
164g/m2のポリエステル織地に、実施例7で得た配合物を添加成分量(乾燥換算)が35%となるようにナイフコーターでコーティングし硬化させた。この織地は、ASTM D 6413−99に合格し、ドリッピングは無視できる程度であった。この織地は、視認できる縞状マークのない半透明のものであった。
【0047】
実施例9
FR−245/FR−720ブレンド分散液の調製
FR−245/FR−720の1:1ブレンド(248g)を、脱イオン水315gと分散剤25gとの混合溶液に滴下した。混合分散液にSbを100g添加した。この分散液を15分間混合した。混合中にアクリル系増粘剤を約6.6g添加して、分散液を水酸化アンモニウムで中和しpH7とした。分散液の詳細を次の表5に示す。
【0048】
【表5】

【0049】
FR−245/FR−720の1:1ブレンド分散液は、滑らか、白色、且つ流動性が良好であった。この分散液を6ヶ月間貯蔵したところ、安定な棚持ち性を示した(沈澱観察されず)。
【0050】
実施例10
FR−245/FR−720ブレンド配合物の調製
脱イオン水145gとアクリルバインダー145gを、実施例9で得た分散液198gに添加した。混合しながらアクリル系増粘剤17gを添加して、この分散液を水酸化アンモニウムで中和しpH7〜8とした。分散液の詳細を次の表6に示す。
【0051】
【表6】

【0052】
この配合物はバインダーを38重量%、FR剤を13.7%含み、臭素含有量は9.2%であった。FR−245/FR−720の1:1ブレンド配合物は、滑らか、白色、且つ流動性が良好であった。この分散液を6ヶ月間貯蔵したところ、安定な棚持ち性を示した(沈澱観察されず)。
【0053】
実施例11
FR−245/FR−720ブレンド配合物のポリエステル織地への塗布
164g/m2のポリエステル織地に、実施例10で得た配合物を添加成分量(乾燥換算)が44%となるようにナイフコーターでコーティングし硬化させた。ブレンドフィルムは透明で柔らかかった。この織地は、ASTM D 6413−99に合格し、ドリッピングは無視できる程度であった。この織地は、視認できる縞状マークのない半透明のものであった。
【0054】
本発明の実施例は例示目的で記載されたものであるが、請求項の範囲を超えることなく、当業者によって多くの修正や変更、改変が行われ得ることは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、又はそれらの混合物と、一種以上の非イオン性又はアニオン性界面活性剤及び/又は湿潤剤とを含む分散物。
【請求項2】
前記非イオン性の剤は、ポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテル型、好ましくはNP−6(ノニルフェノールエトキシレート、エチレンオキシドユニット6)から選択される、請求項1に記載の分散物。
【請求項3】
前記アニオン性の剤は、スルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステル、遊離酸、有機リン酸エステルから選択される、請求項1に記載の分散物。
【請求項4】
分散剤としても懸濁剤としても機能する一種以上の添加剤を含む、請求項1に記載の分散物。
【請求項5】
前記一種以上の添加剤は、アクリル酸/アクリル酸エステルコポリマーポリカルボン酸ナトリウム中和物、好ましくはナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩から選択される、請求項4に記載の分散物。
【請求項6】
一種以上の消泡剤又は発泡防止剤を更に含む、請求項1に記載の分散物。
【請求項7】
前記消泡剤又は発泡防止剤は、鉱油のエマルジョン及び天然オイルのエマルジョン、好ましくはAF−52(登録商標)等のシリコーン油のエマルジョンから選択される、請求項6に記載の分散物。
【請求項8】
一種以上の保存剤又は安定化剤を更に含む、請求項1に記載の分散物。
【請求項9】
前記一種以上の保存剤又は安定化剤は、メチルヒドロキシベンゾエートとプロピルヒドロキシベンゾエートとの混合物及びホルムアルデヒドから選択される、請求項8に記載の分散物。
【請求項10】
耐火共力剤を更に含む、請求項1に記載の分散物。
【請求項11】
前記耐火共力剤は酸化アンチモン(AO)である、請求項10に記載の分散物。
【請求項12】
室温で保存したときに少なくとも2週間安定である、請求項1に記載の分散物。
【請求項13】
室温で保存したときに少なくとも1ヶ月間安定である、請求項12に記載の分散物。
【請求項14】
バインダー剤を更に含む、請求項1に記載の分散物。
【請求項15】
バインダー剤は、アクリルコモノマーから得られるポリマーラテックスエマルジョンから選択される、請求項14に記載の分散物。
【請求項16】
前記アクリルコモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらのエステル、ニトリト、アミド等の誘導体を含む、請求項15に記載の分散物。
【請求項17】
アクリレートはメチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ビニルアクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、パーフルオロエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ステアリルアクリレート又はステアリルメタクリレート、アクリルアミド又はメタクリルアミド、N−(C〜C−アルキル)アクリルアミド又はN−(C〜C−アルキル)メタクリルアミド、及びこれらアクリレートの二種以上を組合せたコモノマーから選択される、請求項16に記載の分散物。
【請求項18】
バインダー剤は、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルステアレート等の飽和C〜Cカルボン酸ビニルエステル、スチレン、フェノキシエチルアクリレート、ヒドロキシアルキレンモノアクリルエステル及びヒドロキシアルキレンモノメタクリルエステル、及びエトキシル化C〜C18アルコールのアクリルエステル及びメタクリルエステルを含むコモノマーから作製されるコポリマーから選択される、請求項14に記載の分散物。
【請求項19】
バインダーは、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリクロロプレンゴム、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム及びポリウレタンから選択される、請求項14に記載の分散物。
【請求項20】
繊維製品に用いる難燃組成物であって、トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、又はそれらの混合物と、一種以上の非イオン性又はアニオン性界面活性剤及び/又は湿潤剤とを含む分散物を含む難燃組成物。
【請求項21】
前記分散物は、30重量%以下、好ましくは27重量%以下のバインダーと共に配合される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
分散物は、繊維製品に十分な難燃性を付与するために添加剤重量(乾燥換算)の60%未満、好ましくは添加剤重量(乾燥換算)の50%未満、最も好ましくは添加剤重量(乾燥換算)の約40%用いられる、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
繊維製品において十分な難燃性(ASTM D 6413−99又は他の適用可能な基準に準拠)を洗剤での洗浄後に維持する、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
繊維基材上に滑らかで半透明、且つ縞状のスジのないコーティングを与える、請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
繊維材料における難燃剤としての、トリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、又はそれらの混合物を含む分散物の使用。

【公表番号】特表2007−534824(P2007−534824A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510230(P2007−510230)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000379
【国際公開番号】WO2005/103361
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(500165175)ブローミン コンパウンズ リミテッド (9)
【Fターム(参考)】