説明

繊維質熱可塑性材料の成形方法及び成形装置

【課題】意匠面にシワ及びスケを生じさせることなく成形できる成形体の製造方法及びこの成形を行うための成形装置を提供する。
【解決手段】本方法は、意匠面を賦形する第1型と裏面を賦形する第2型との間に、加熱繊維質熱可塑性材料を供給するに際し、材料の少なくとも外縁部の一部を第1型から離間配置する工程と、型締めする工程と、型締めした状態で材料を冷却する工程と、を備える。本装置100は、加熱繊維質熱可塑性材料200を挟んで冷却しつつ、意匠面201を賦形する第1型110及び裏面202を賦形する第2型120と、型締めまでの間、材料の少なくとも外縁部203の一部を、第1型から離間させる離間手段130と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維質熱可塑性材料の成形方法及び成形装置に関する。更に詳しくは、加熱した繊維質熱可塑性材料を金型冷却して成形する繊維質熱可塑性材料の成形方法及び成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ケナフ等の成長が早く且つ二酸化炭素吸収量が多い植物資源は、二酸化炭素排出量削減及び二酸化炭素の固定化等の観点から注目されている。例えば、ケナフから得られたケナフ繊維と熱可塑性樹脂との複合材料は、成形体やパルプ等としての用途が期待されている。なかでも、ケナフ繊維などの繊維質材料と熱可塑性樹脂とが複合された繊維質熱可塑性材料は、軽量でありながら優れた強度を備えており、尚且つ、熱可塑を利用して簡便な方法で複雑な立体成形を行うことができるという優れた特性を併せ有している。
この繊維質材料と熱可塑性樹脂とを含有する複合材料の形成に係る技術としては下記特許文献1及び2が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開昭58−171938号公報
【特許文献2】特開2003−129365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1及び2の技術は、いずれも金型内で加熱を行って賦形する加熱成形に関するものである。一般に、加熱成形は金型の熱膨張等が問題となり、高い成形精度を要する成形には適さない傾向にある。このため、金型で冷却して成形を行う際の問題や、高い表面性を要する意匠面についての成形性等は、上記文献では何ら検討されていない。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、加熱した繊維質熱可塑性材料を金型で冷却して成形する繊維質熱可塑性成形体の製造方法において、意匠面にシワ及びスケを生じさせることなく成形できる繊維質熱可塑性成形体の製造方法及びこの成形を行うための成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、加熱した繊維質熱可塑性材料を金型で冷却して成形する繊維質熱可塑性成形体の製造方法において、多くの手直し工数を要し、効率低下の原因となる「シワ」及び「スケ」を更に抑制する方法について検討を行った。
例えば、繊維質熱可塑性材料は、加熱したうえで下型上に載置し、上型を下降させて下型に型締めし、金型内で繊維質熱可塑性材料を冷却した後、上型を引き上げて成形することができる。しかし、「シワ」及び「スケ」を意匠面に生じることがあった。
【0006】
本発明者らは、上記「シワ」は、金型内に加熱された繊維質熱可塑性材料が引き込まれる際に、過剰な引き込みを生じて折れ重なりを生じ、この折れ重なりが凹部として成形体に残存されてなること、また、上記「スケ」は、上記過剰な引き込みを防止するための拘束に行った結果、その拘束加減が過剰となった場合に得られる成形体に表裏が透ける様に薄く成形されてなること、更には、上記成形を行った際に、上記シワは下型側(意匠面)にしか生じないこと、を知見した。そして、これらは、加熱した繊維質熱可塑性材料を下型に載置した際に、繊維質熱可塑性材料の下型と接触した一部のみが先に冷却されるために生じていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は以下に示す通りである。
(1)意匠面を賦形する第1型と該意匠面に対する裏面を賦形する第2型との間に、加熱された繊維質熱可塑性材料を供給するにあたって、該繊維質熱可塑性材料の少なくとも外縁部の一部を該第1型から離間させて配置する材料供給工程と、
該第1型と該第2型とを型締めする型締め工程と、
該型締めした状態で該第1型及び該第2型を保持して該繊維質熱可塑性材料を冷却する冷却工程と、を備えることを特徴とする繊維質熱可塑性成形体の製造方法。
(2)上記第1型を固定下型として用い、且つ上記第2型を可動上型として用いる上記(1)に記載の繊維質熱可塑性成形体の製造方法。
(3)上記離間は、低摩擦面を備えるテープ部材の該低摩擦面上に上記加熱された繊維質熱可塑性材料を載せて行う上記(1)又は(2)に記載の繊維質熱可塑性成形体の製造方法。
(4)上記テープ部材に対してテンションを付加し、上記テープ部材の中心におけるテンションを、上記繊維質熱可塑性材料の質量をM(kg)とした場合に、0.5M(kgf)以上とする上記(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載の繊維質熱可塑性成形体の製造方法。
(5)意匠面と該意匠面に対する裏面とを有する繊維質熱可塑性成形体を成形する成形装置であって、
加熱された繊維質熱可塑性材料を挟んで冷却しつつ、意匠面を賦形する第1型及び該裏面を賦形する第2型と、
該第1型と該第2型との型締めまでの間、該加熱された繊維質熱可塑性材料の少なくとも外縁部の一部を、該第1型から離間させる離間手段と、を備えることを特徴とする成形装置。
(6)上記第1型は固定下型であり、上記第2型は可動上型であり、且つ上記離間手段は上記繊維質熱可塑性材料を該第1型から浮かせて離間する手段である上記(5)に記載の成形装置。
(7)上記第2型の下降挙動に伴って上記離間手段を上記第1型に向かって押圧下降させる押圧手段を備える上記(6)に記載の成形装置。
(8)上記離間手段の少なくとも上記繊維質熱可塑性材料との接触面は、低摩擦材料からなる上記(5)乃至(7)のうちのいずれかに記載の成形装置。
(9)上記離間手段はテープ形状である上記(5)乃至(8)のうちのいずれかに記載の成形装置。
(10)上記テープ形状である離間手段に対してテンションを付加するテンション付加手段を備える上記(9)に記載の成形装置。
(11)上記テンションの大きさを調節するテンション調節手段を備える上記(10)に記載の成形装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の繊維質熱可塑性成形体の製造方法によれば、意匠面にシワ及びスケを生じさせることなく繊維質熱可塑性成形体を得ることができる。
第1型を固定下型として用い、且つ第2型を可動上型として用いる場合は、冷却時の収縮により繊維質熱可塑性成形体の裏面側が第2型に張着された状態で開型される。このため成形体の離型効率がよく、意匠面を傷めることも防止できる。更に、成形体を離型している間に第1型上に加熱した繊維質熱可塑性材料を供給することができ、製造効率がよい。
離間を低摩擦面を備えるテープ部材の該低摩擦面上に加熱された繊維質熱可塑性材料を載せて行う場合は、成形時に型内に繊維質熱可塑性材料が引き込まれることを過度に抑制することがなくシワ及びスケをより効果的に防止できる。
テープ部材に対してテンションを付加し、上記テープ部材の中心におけるテンションを、繊維質熱可塑性材料の質量をM(kg)とした場合に、0.5M(kgf)以上とする場合は、特にシワ及びスケの防止効果が高く、尚かつ成形効率にも優れる。
本発明の成形装置によれば、意匠面にシワ及びスケを生じさせることなく繊維質熱可塑性成形体を得ることができる。
第1型が固定下型であり、第2型が可動上型であり、且つ離間手段が繊維質熱可塑性材料を第1型から浮かせて離間する手段である場合は、冷却時の収縮により繊維質熱可塑性成形体の裏面側が第2型に張着された状態で開型される。このため成形体の離型効率がよく、意匠面を傷めることも防止できる。更に、成形体を離型している間に第1型上に加熱した繊維質熱可塑性材料を供給することができ、製造効率がよい。
第2型の下降挙動に伴って離間手段を第1型に向かって押圧下降させる押圧手段を備える場合は、金型と繊維質熱可塑性材料との離間期間をより長くでき、シワ及びスケの発生を効果的に抑制できる。
離間手段の少なくとも繊維質熱可塑性材料との接触面が低摩擦材料からなる場合は、成形時に型内に繊維質熱可塑性材料が引き込まれることを過度に抑制することがなくシワ及びスケをより効果的に防止できる。
離間手段がテープ形状である場合は、厚さが薄くまた接触面積が小さいため繊維質熱可塑性材料から特に熱を奪い難く、また成形を阻害しない。
テープ形状である離間手段に対してテンションを付加するテンション付加手段を備える場合は、特にシワ及びスケが効果的に抑制された成形を行うことができ、尚かつ成形効率にも優れる。
テンションの大きさを調節するテンション調節手段を備える場合は、製造時に経時変化及び条件変化等に伴って適宜テンションの調節を行って、テンションを好ましい範囲に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
[1]繊維質熱可塑性成形体の製造方法
本発明の繊維質熱可塑性成形体の製造方法は、意匠面を賦形する第1型と該意匠面に対する裏面を賦形する第2型との間に、加熱された繊維質熱可塑性材料を供給するにあたって、該繊維質熱可塑性材料の少なくとも外縁部の一部を該第1型から離間させて配置する材料供給工程と、
該第1型と該第2型とを型締めする型締め工程と、
該型締めした状態で該第1型及び該第2型を保持して該繊維質熱可塑性材料を冷却する冷却工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記「材料供給工程」は、意匠面を賦形する第1型と、意匠面に対する裏面を賦形する第2型との間に、加熱された繊維質熱可塑性材料を供給するにあたって、繊維質熱可塑性材料の少なくとも外縁部の一部を第1型から離間させて配置する工程である。
【0011】
上記「第1型」は、意匠面を賦形する金型であり、上記「第2型」は、裏面を賦形する金型である。これら第1型及び上記第2型は、加熱された繊維質熱可塑性材料を互いの金型間に挟んで冷却して繊維質熱可塑性材料を賦形する金型である。この第1型及び第2型は、各々どちらが固定型であってもよく、どちらが可動型であってもよく、更には両方が可動型であってもよい。更に、これらの型は上下に開閉する型であってもよく、横方向(左右)に開閉する型であってもよい。
【0012】
これらのなかでは、上下に開閉する型であることが好ましい。第1型と第2型とが上下に開閉されることにより、横方向に開閉する型に比べて、繊維質熱可塑性材料の重量を均等に配分できるために成形体の全面にわたってより均質な成形を行うことができる。
【0013】
更に、第1型を下型とし、且つ第2型を上型とすることが好ましい。通常、意匠面は凸形状(凸部が主となる形状)として形成され、裏面はこれに対する凹形状(凹部が主となる形状)となる。そして、冷却時の収縮により繊維質熱可塑性成形体の凹形状である裏面側が第2型に張着された状態で開型されることとなる。このように得られる成形体を上型に張着させて開型できることで成形体の離型効率を向上させることができる。即ち、意匠面を傷めることなく、繊維質熱可塑性成形体の自重を利用して簡単に離型させることができる。更に、成形体を離型している間に下型(第1型)上に加熱した繊維質熱可塑性材料を供給できる。従って、この構成(第1下型と第2上型)では製造効率が向上される。また、特に第1型が固定された下型(即ち、固定下型)であって、第2型が可動される上型(即ち、可動上型)であることが好ましい。この構成(第1固定下型と第2可動上型)では、装置をより簡便にでき、設備コストをより少なく抑えることができる。
尚、第1型及び第2型は、各々1つの金型からなってもよく、2つ以上のパーツからなってもよい。
【0014】
上記「意匠面」は、繊維質熱可塑性成形体の面のうち使用時に表側に配置される面である。換言すれば、意匠面は視認される側の面である。この意匠面は表側に配置されるために高い加工精度が要求される。特に成形後又は成形時にシボ模様やエンボス模様等の凹凸量が小さい模様(例えば5mm以下の凸又は凹)が施される場合にはシワ及びスケをより確実に抑制することが要求される。このような模様の形成は、意匠面に模様が形成された別体の表層を被覆して形成してもよく、意匠面自体に形成してもよい。即ち、通常、意匠面は意匠が施されるための面又は意匠が施された面である。
上記「裏面」は、意匠面に対する反対面である。
【0015】
上記「繊維質熱可塑性材料」は、成形されて繊維質熱可塑性成形体となる材料である。この繊維質熱可塑性成形体としては、通常、繊維マットを予備成形して形成した板状体のボード、即ち、繊維質熱可塑性ボードを用いる。その他、上記繊維マット(即ち、繊維質熱可塑性繊維マット体)を用いることもできる。また、繊維質熱可塑性材料は、繊維質材料と熱可塑性樹脂とを含有する。
繊維質材料は、繊維状をなす材料であり、有機物であっても、無機物であってもよい。有機物の繊維質材料としては、植物及び動物に由来する天然繊維が挙げられる。即ち、例えば、植物に由来する天然繊維としては、ケナフ、マニラ麻、サイザル麻、ジュート麻、綿花、雁皮、三椏、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹及び各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)などの植物から得られる繊維(木質性及び非木質性を問わず、更には、採取部位を問わない)が挙げられる。また、動物に由来する天然繊維としては、各種動物から得られる毛が挙げられる。これらの天然繊維は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのなかでも、本発明の製造方法では、加熱の影響を受け難い植物に由来する天然繊維を用いることが好ましい。尚、繊維質材料の最大長も特に限定されないが30mm以上であることが好ましい。
【0016】
一方、熱可塑性樹脂は、特に限定されず種々のものを用いることができる。即ち、例えば、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエステル樹脂{(ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル樹脂)、(ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエチレン樹脂)}、ポリスチレン、ポリアクリル樹脂(メタアクリレート、アクリレート等)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
尚、上記ポリ乳酸は、L−乳酸を構成単位とするポリL−乳酸、D−乳酸を構成単位とするポリD−乳酸、L−乳酸とD−乳酸とを構成単位とするポリDL−乳酸、及びこれらの各種ポリ乳酸の混合物を含む。更に、上記ポリL−乳酸、ポリD−乳酸及びポリ−DL乳酸は、各々の種類の乳酸のみが重合された単独重合体であってもよく、乳酸以外の他の単量体が共重合された共重合体であってもよい。
【0017】
上記繊維質熱可塑性材料に含有される繊維質材料及び熱可塑性樹脂の合計量は特に限定されないが、繊維質熱可塑性材料全体を100質量%とした場合に、通常、繊維質材料と熱可塑性樹脂とを合計で50質量%以上(好ましくは70〜99.5質量%、100質量%であってもよい)含有する。
更に、繊維質材料と熱可塑性樹脂との合計を100質量%とした場合に、繊維質材料は10質量%以上(より好ましくは20〜90質量%、更に好ましくは30〜80質量%、通常95質量%以下)であることが好ましい。この範囲では、前述の加熱した繊維質熱可塑性材料を金型冷却する際のシワ及びスケが問題となるために、本製造方法を用いる効果を特に得やすいからである。
【0018】
上記繊維質熱可塑性材料には、繊維質材料及び熱可塑性樹脂以外にも他の成分が含有されてもよい。他の成分としては、各種充填剤(増量剤、補強剤)、帯電防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、酸化防止剤、老化防止剤、難燃剤、滑剤、抗菌剤、着色剤等が挙げられる。
上記充填剤としては、無機フィラーを用いることができ、例えば、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、合成ケイ酸及び珪石粉等が挙げられる。更に、これらの無機フィラーの形状は特に限定されず、例えば、粒状、薄片状及び針状等とすることができる。また、無機フィラーの大きさも特に限定されず、例えば、粒子径100nm〜10μmが好ましい。
【0019】
また、繊維質熱可塑性材料の形状は、特に限定されず板状体であればよい。この厚さは特に限定されないが、30mm以下(好ましくは0.1〜20mm、更に好ましくは0.5〜10mm)であることが好ましい。厚さがこの範囲であれば、本発明の製造方法を用いることによるシワ及びスケを抑制する効果を特に得やすい。
更に、繊維質熱可塑性材料の大きさも特に限定されないが、通常、平面積が0.1m以上(好ましくは0.20〜25m、更に好ましくは0.50〜5m)である。この範囲の大きさでは、本発明の製造方法を用いることによるシワ及びスケを抑制する効果を特に得やすい。尚、繊維質熱可塑性材料の平面形状は特に限定されない。
【0020】
上記「加熱」は、繊維質熱可塑性材料に含まれる熱可塑性樹脂を軟化させて可塑性を与えるための加熱である。従って、加熱の程度は繊維質熱可塑性材料を構成する熱可塑性樹脂の種類に応じた適宜の温度とすることが好ましい。即ち、例えば、ポリプロピレンを用いる場合、加熱は繊維質熱可塑性材料の温度が170℃以上(より好ましくは180〜220℃、通常230℃以下)となるように加熱を行うことが好ましい。また、ポリ乳酸を用いる場合、加熱は繊維質熱可塑性材料の温度が170℃以上(より好ましくは180〜210℃、通常220℃以下)とすることが好ましい。
【0021】
上記「離間」は、繊維質熱可塑性材料の少なくとも外縁部の一部と第1型とが接触しないように離すことである。
上記「少なくとも外縁部の一部」は、外縁部の一部のみであってもよく、外縁部の全部であってもよい。一部のみを離間させる場合は、得られる成形体においてより凹凸量が多い(より高低差が激しい)部分に近い外縁部を離間させることが好ましい。凹凸量が多い部分では、繊維質熱可塑性材料の引き込み量も多くスケが発生しやすく、また、引き込み量が多いためにシワを生じる確立も高いからである。尚、外縁部を除いた部位(中央部など)は離間させてもよく、離間させなくとてもよい。
【0022】
また、上記第1型からの離間を保つ期間は特に限定されず、型締めを行うまでの間の任意の期間である。通常、離間期間が長いほど、シワ及びスケの発生を効果的に抑制できる。即ち、第1型は冷却を目的とする型であるために、第1型との接触により急激に加熱した繊維質熱可塑性材料のその部位(接触部位)の温度低下を生じ、接触部位(特に接触表面)の熱可塑性樹脂が固化される。この固化を抑制する目的で上記離間を行うため、第1型と第2型との結合のより間際まで離間されていることが好ましい。
離間期間は特に限定されないが、第1型と繊維質熱可塑性材料との接触時間は型締め完了までに30秒以下(より好ましくは25秒以下、更に好ましくは20秒以下)とすることが好ましい。
【0023】
例えば、第1固定下型と第2可動上型とを用いる場合に、この離間期間をより長く(接触時間をより短く)しつつ、十分な作業効率をも得るには、第2型の可動に伴って繊維質熱可塑性材料の位置を第1型に次第に近接させることが好ましい。即ち、例えば、後述する「第2型の下降挙動に伴って離間手段を第1型に向かって押圧下降させる押圧手段を備える」成形装置などを使用することが好ましい。このような型の挙動に連動して繊維質熱可塑性材料を第1型に次第に近づける機構を備えることで、上記離間期間をより長くできる。
【0024】
また、上記離間を行う際に、加熱された繊維質熱可塑性材料の外縁部をクランプ等により掴持して第1型から離間させることもできるが、これでは型内への繊維質熱可塑性材料の引き込みを過度に制限し過ぎる傾向にある。このため、支持部材上に繊維質熱可塑性材料を載せて離間させることが好ましい。即ち、拘束手段(クランプなど)を用いることなく、繊維質熱可塑性材料の特に外縁部の型内への引き込みを阻害しないように離間させることが好ましい。
【0025】
このような支持部材としては、繊維質熱可塑性材料との摩擦により上記引き込みを阻害しないように、より低摩擦な表面を有する(低摩擦面を備える)部材(例えば、動摩擦係数が0.04〜0.4、より好ましくは0.04〜0.3)が好ましい。このような材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリアミド及びポリオレフィン等が挙げられる。
また、加熱された繊維質熱可塑性材料に対して十分な耐熱性を有する部材(例えば、180℃以上、200℃以下でもよい)であることが好ましい。このような材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、モノマーキャストポリアミド等が挙げられる。
【0026】
更に、繊維質熱可塑性材料の熱を奪わないように熱伝導が低い部材{例えば、5W/(m・K)以下、好ましくは0.5W/(m・K)以下、通常0.1W/(m・K)以上)}であることが好ましい。このような材料としては、各種樹脂材料が広く挙げられる。
また、繊維質熱可塑性材料の重量を支持できるだけの十分な強度を有することが好ましい。
これらの種々の条件をより多く充足する材料として、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、及びモノマーキャストポリアミドが好ましく、特に低摩擦であることからポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0027】
また、支持部材の形状は特に限定されないが、型締めを阻害しないようにより薄い部材(例えば1.0mm以下、好ましくは0.5mm以下、通常0.01mm以上)であることが好ましい。従って、支持部材はテープ形状(テープ部材)であることが好ましい。このテープ部材は、上記好ましい樹脂のみからなってもよいが、耐熱性を有する高強度繊維により内部補強されたものであることが好ましい。耐熱性を有する高強度繊維としては、ガラス繊維(ガラスクロス等を含む)、ポリイミド繊維(ポリイミドクロス等を含む)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、テープ部材のテープ幅は特に限定されず、繊維質熱可塑性材料の外縁部(通常、離型後に不要部として除去される)の大きさに合わせて適宜のテープ幅とすることが好ましいが、例えば、1〜10cmとすることができる。
【0028】
また、テープ部材を使用する際には、テープ部材に対してテンションを付加することが好ましい。このテンション量は特に限定されないが、テープ部材の中心におけるテンションが繊維質熱可塑性材料の質量をM(kg)とした場合に、0.5M(kgf)以上{より好ましくは0.5M〜3M(kgf)、更に好ましくは0.8M〜1.7M(kgf)}となることが好ましい。
更に、テンションはテープ部材に対して一方端側だけから付加されてもよいが、テープ部材の全体により均質にテンションが付加されることが好ましいため、テープの両端から均等にテンションを付加することが好ましい。
【0029】
上記「型締め工程」は、第1型と第2型とを型締めする工程である。型締めにおける諸条件は特に限定されず、例えば、加圧を行ってもよく、加圧を行わなくてもよい。
【0030】
上記「冷却工程」は、型締めした状態で第1型及び第2型を保持して繊維質熱可塑性材料を冷却する工程である。
上記「冷却」は、繊維質熱可塑性材料を第1型と第2型との間に挟んで行う。各金型の温度は特に限定されないが、通常、使用環境における温度であることが好ましい。即ち、例えば、10〜50℃程度であり、成形性の観点から20〜40℃であることが好ましい。加熱された繊維質熱可塑性材料から金型が温度を奪うが、十分な放熱性を有することでほぼ一定の金型温度を保持することができる。
上記冷却スピードは特に限定されないが、金型と接触している間の降温スピードは0.5〜20℃/秒(より好ましくは1〜10℃/秒、更に好ましくは3〜8℃/秒)であることが好ましい。降温スピードがこの範囲であれば、成形効率と高精度な成形性とを両立させることができる。
【0031】
本発明の製造方法では、上記材料供給工程、型締め工程、及び冷却工程以外にも他の工程を備えることができる。他の工程としては、材料供給工程前に行う繊維質熱可塑性材料を加熱する材料加熱工程、冷却工程後に行う開型工程、開型工程後に行う繊維質熱可塑性成形体の離型工程などが挙げられる。
【0032】
本発明の製造方法で得られる繊維質熱可塑性成形体は、繊維質熱可塑性材料を成形されてなり、意匠面と裏面とを有する。また、得られる繊維質熱可塑性成形体の形状は特に限定されないが、特に5cm以上(更には10cm以上、通常120cm以下)の凹凸(最低位置と最高位置における高低差)を有する場合には、本発明の製造方法を用いることによるシワ及びスケを抑制する効果を特に得やすい。
【0033】
尚、上記シワは、金型内に加熱された繊維質熱可塑性材料が引き込まれる際に、過剰な引き込みを生じて折れ重なりを生じ、この折れ重なりが凹部として繊維質熱可塑性成形体に残存されてなる不具合である。シワを生じると、例えば、意匠面上に更に被覆を行ったとしてもその凹部は表側から視認されてしまうこととなる。シワによる凹部は、通常、0.2mm以上である。また、スケは、過剰な引き込みを防止するための拘束を行った結果、その拘束加減が過剰となった場合に繊維質熱可塑性成形体の表裏が透けて見えるようになる不具合である。スケを生じると、例えば、意匠面上に更に被覆を行うに際して、被覆材を吸引付着させると、スケ部分が吸引力に耐えられず凹んだり穴開きとなり、凹部等として表側から視認されてしまうこととなる。
【0034】
本発明の成形体の用途は特に限定されない。この成形体としては、例えば、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等が挙げられる。即ち、自動車ドアトリム、各種インストルメントパネル、シート構造材、シートバックボード、コンソールボックス、自動車ダッシュボード、デッキトリム、バンパー、スポイラー及びカウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等も挙げられる。
【0035】
[2]成形装置
本発明の成形装置100は、意匠面301と該意匠面に対する裏面302とを有する繊維質熱可塑性成形体300を成形する成形装置であって、
加熱された板状体の繊維質熱可塑性材料200を挟んで冷却しつつ、意匠面201を賦形する第1型110及び該裏面202を賦形する第2型120と、
該第1型110と該第2型120との型締めまでの間、該加熱された繊維質熱可塑性材料200の少なくとも外縁部203の一部を、該第1型110から離間させる離間手段130と、を備えることを特徴とする。
【0036】
上記「第1型」、上記「第2型」、上記「意匠面」、上記「裏面」、上記「繊維質熱可塑性材料」、繊維質熱可塑性材料の上記「少なくとも外縁部の一部」、繊維質熱可塑性材料の上記「加熱」、及び、繊維質熱可塑性材料の上記「冷却」については前記製造方法における各々をそのまま適用できる。
【0037】
以下、図1〜7を用いて説明する。
成形装置100は、上記のように第1型110と第2型120とを有する。第1型及び第2型は、横開閉型であってもよいが、上下開閉型であることが好ましい。上下開閉型であることにより、横開閉型に比べて、繊維質熱可塑性材料の重量を均等に配分できるために成形体の全面にわたってより均質な成形を行うことができる。
【0038】
更に、第1型は上型であってもよいが下型であることが好ましく、第2型は下型であってもよいが上型であることが好ましい。通常、意匠面は凸形状(凸部が主となる形状)として形成され、裏面はこれに対する凹形状(凹部が主となる形状)となる。そして、冷却時の収縮により繊維質熱可塑性成形体の凹形状である裏面側が第2型に張着された状態で開型されることとなる。このように得られる成形体を上型に張着させて開型できることで成形体の離型効率を向上させることができる。従って、意匠面を傷めることなく、繊維質熱可塑性成形体の自重を利用して簡単に離型させることができる。更に、成形体を離型している間に下型(第1型)上に加熱した繊維質熱可塑性材料を供給できる。従って、この構成(第1下型と第2上型)では製造効率が向上される。
特に、第1型は上型であって且つ固定型(固定上型)であることが好ましく、第2型は下型であって且つ可動型(可動下型)であることが好ましい。この構成では装置をより簡便にでき、設備コストをより少なく抑えることができる。
【0039】
上記離間手段130は、第1型110と第2型120との型締めまでの間、加熱された繊維質熱可塑性材料200の少なくとも外縁部203の一部を、第1型110から離間させる手段である。
この離間手段は第1型から繊維質熱可塑性材料を離間させることができればよく、その構成等は特に限定されないが、例えば、繊維質熱可塑性材料を支持する支持部材(材料を載せる部材)、掴持する掴持部材(クランプによる掴持等)、吊持する吊持部材(クランプによる吊持等)などを用いることができる。これらのなかでは支持部材を用いることが好ましい。繊維質熱可塑性材料の特に外縁部の型内への引き込みを阻害しないからである。また、支持部材を摩擦係数の大小で選択することにより、型内への繊維質熱可塑性材料の引き込みを過度に制限することなく、適度に制限することもできる。
即ち、上記支持部材を用いる場合には、繊維質熱可塑性材料を第1型から浮かせて離間する手段として用いることができる。この支持部材としては、前記製造方法における支持部材をそのまま適用できる。
【0040】
また、本発明の成形装置100は、第2型120の下降挙動に伴って離間手段130を第1型110に向かって押圧下降させる押圧手段140を備えることが好ましい。特に第2型120の下降に伴って繊維質熱可塑性材料200の位置を第1型110に次第に近接させられることが好ましい。また、押圧手段140は、繊維質熱可塑性材料200の外縁部203を押圧する手段であることが好ましい。
【0041】
押圧手段140を備えることで、第1型110の挙動に連動して繊維質熱可塑性材料200を第1型110に次第に近づけることができる。これにより、シワ及びスケの発生をより効果的に抑制できる。即ち、第1型110との接触による繊維質熱可塑性材料200の急激な温度低下を防止できるために、離間期間が長いほどシワ及びスケの発生を抑制できるからである。更に、この押圧手段140が繊維質熱可塑性材料200の外縁部203を押圧することで、熱可塑性樹脂の温度低下を外縁部203のみに留めることができる。
この押圧手段140の構成は特に限定されないが、例えば、上型(第1型120)と共に基体170(上型基体)に固定された板状体を用いることができる。この板状体の構成は特に限定されないが、上記支持部材と同じ目的を要するため、形状(厚さ及びテープ幅など)以外の点において上記支持部材をそのまま適用できる。即ち、より低摩擦な表面を有し、十分な耐熱性を有し、熱伝導が低く、且つ十分な強度を有することが好ましい。更に、この板状体には緩衝機構141が付加されていることが好ましい。
【0042】
また、離間手段130の少なくとも繊維質熱可塑性材料200との接触面131は、低摩擦材料からなることが好ましい。この低摩擦材料としては、前記支持部材における低摩擦材料をそのまま適用できる。
更に、離間手段130がテープ形状である場合には、離間手段130対してテンションを付加するテンション付加手段150を備えることが好ましい。テンション付加手段の構成は特に限定されないが、バネ(弦巻バネ、板バネ)及びダンパ(エアダンパ、液体ダンパ)等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
また、上記テンションの大きさは特に限定されないが、テープ部材(離間手段130)の中心におけるテンションが繊維質熱可塑性材料200の質量をM(kg)とした場合に、0.5M(kgf)以上(より好ましくは0.5M〜3M(kgf)、更に好ましくは0.8M〜1.7M(kgf)となることが好ましい。
更に、テンションはテープ部材(離間手段130)に対して一方端側だけから付加されてもよいが、テープ部材の全体により均質にテンションが付加されることが好ましいため、テープ部材の両端から均等にテンションを付加できることが好ましい。従って、テンション付加手段150はテープ部材の両端に各々配置されることが好ましい。
【0044】
また、上記テンションの大きさを調節するテンション調節手段160を備えることが好ましい。テンション調節手段を備えることで、製造時に経時変化及び条件変化等に伴って適宜テンションの調節を行って、テンションを好ましい範囲に保持することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]実施例1
図1〜4に示す成形装置を用いて、図5〜7に示すフローに従って以下の成形条件で40枚の繊維質熱可塑性材料を成形し、ドアトリム(繊維質熱可塑性成形体)の製造を行った。その結果、スケは確認されず、シワは7個(箇所)認められた。
【0046】
図1〜4に示す成形装置100は、固定上型である第1型110を備える。また、可動下型である第2型120を備える。更に、接触面131が低摩擦材料からなるテープ部材からなる離間手段130を備える。この離間手段130は、支持体132を介してスライダ151、テンション付加手段150及びテンション調節手段160とこの順で左右端で同様に連接されている。また、第2型120の下降挙動に伴って離間手段130を第1型110に向かって押圧下降させることができ、第1型120と共に基体170に固定された板状体を備え、且つ緩衝機構141を備える押圧手段140を備える。
【0047】
図5における(1)は材料供給工程であり、(2)は第2型120の下降に伴って押圧手段140も下降される様子であり、(3)は押圧手段140が離間手段130及び繊維質可塑性材料の外縁部203を押圧する様子である。また、図6における(4)は押圧手段140により離間手段130及び繊維質可塑性材料の外縁部203を第1型110に当接する様子であり、(5)は型締め工程及び冷却工程であり、(6)は開型工程である。更に、図7における(7)は離型工程である。
【0048】
(1)繊維質熱可塑性材料;ケナフ繊維と熱可塑性樹脂(ポリプロピレン樹脂)との50/50(質量%)混合材料を厚さ2.5mmに圧縮成形した縦800mm×横1200mm、重さ1.8kgの板状体。
(2)繊維質熱可塑性材料の加熱温度;210℃
(3)金型温度;30℃(室温30℃)
(4)型締め開始から完了までの時間;15秒
(5)離間手段;芯材にガラスクロスを用いたポリテトラフルオロエチレン成形体、厚さ0.2mm、テープ幅3cm、
(6)テンション:テープ中央部において2kgf
【0049】
[2]比較例1
同様にして、離間手段130及びこれに付帯するテンション付加手段150、スライダ151、及びテンション調節手段160を備えない以外は図1〜4に示す成形装置と同じである図8の成形装置を用いて上記成形条件で40枚の繊維質熱可塑性材料の成形を行った。その結果、スケは確認されず、シワは107個(箇所)認められた。
【0050】
[3]実施例1及び比較例1の効果
これら実施例1及び比較例1の結果から、上記離間手段を備えることで、シワの発生率を1/15以下に抑制できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の植物性複合材料及びこれを用いた成形体は、自動車関連分野及び建築関連分野などにおいて広く利用される。上記自動車関連分野においては、自動車の内装材、外装材及び構造材等として好適である。即ち、例えば、ドアトリム、インストルメントパネル、シート構造材、シートバックボード、コンソールボックス、ダッシュボード及びデッキトリム等として利用される。また、鉄道車両、船舶及び飛行機等の各種移動手段及び輸送手段等においても同様に利用される。更に、上記建築関連分野においては、各種建築物の内装材、外装材及び構造材として好適である。即ち、例えば、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の成形装置の一例を側面視した場合の模式的な断面図である。
【図2】本発明の成形装置の一例を正面視した場合の模式的な断面図である。
【図3】本発明の成形装置の一例の上型を除いた状態における模式的な正面図である。
【図4】本発明の成形装置の一例の模式的な斜視図である。
【図5】本発明の製造方法の一例の一部を示すフロー図である。
【図6】本発明の製造方法の一例の図5に続く一部を示すフロー図である。
【図7】本発明の製造方法の一例の図6に続く一部を示すフロー図である。
【図8】従来の成形装置の一例の側面視した場合の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0053】
100;成形装置、110;第1型、120;第2型、130;離間手段、131;接触面、132;支持体(フレーム)、140;押圧手段、141;緩衝機構(シリンダ)、150;テンション付加手段(バネ)、151;スライダ、160;テンション調節手段、170;基体、200;繊維質熱可塑性材料、201;意匠面、202;裏面、203;外縁部、300;繊維質熱可塑性成形体、301;意匠面、302;裏面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
意匠面を賦形する第1型と該意匠面に対する裏面を賦形する第2型との間に、加熱された繊維質熱可塑性材料を供給するにあたって、該繊維質熱可塑性材料の少なくとも外縁部の一部を該第1型から離間させて配置する材料供給工程と、
該第1型と該第2型とを型締めする型締め工程と、
該型締めした状態で該第1型及び該第2型を保持して該繊維質熱可塑性材料を冷却する冷却工程と、を備えることを特徴とする繊維質熱可塑性成形体の製造方法。
【請求項2】
上記第1型を固定下型として用い、且つ上記第2型を可動上型として用いる請求項1に記載の繊維質熱可塑性成形体の製造方法。
【請求項3】
上記離間は、低摩擦面を備えるテープ部材の該低摩擦面上に上記加熱された繊維質熱可塑性材料を載せて行う請求項1又は2に記載の繊維質熱可塑性成形体の製造方法。
【請求項4】
上記テープ部材に対してテンションを付加し、上記テープ部材の中心におけるテンションを、上記繊維質熱可塑性材料の質量をM(kg)とした場合に、0.5M(kgf)以上とする請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の繊維質熱可塑性成形体の製造方法。
【請求項5】
意匠面と該意匠面に対する裏面とを有する繊維質熱可塑性成形体を成形する成形装置であって、
加熱された繊維質熱可塑性材料を挟んで冷却しつつ、意匠面を賦形する第1型及び該裏面を賦形する第2型と、
該第1型と該第2型との型締めまでの間、該加熱された繊維質熱可塑性材料の少なくとも外縁部の一部を、該第1型から離間させる離間手段と、を備えることを特徴とする成形装置。
【請求項6】
上記第1型は固定下型であり、上記第2型は可動上型であり、且つ上記離間手段は上記繊維質熱可塑性材料を該第1型から浮かせて離間する手段である請求項5に記載の成形装置。
【請求項7】
上記第2型の下降挙動に伴って上記離間手段を上記第1型に向かって押圧下降させる押圧手段を備える請求項6に記載の成形装置。
【請求項8】
上記離間手段の少なくとも上記繊維質熱可塑性材料との接触面は、低摩擦材料からなる請求項5乃至7のうちのいずれかに記載の成形装置。
【請求項9】
上記離間手段はテープ形状である請求項5乃至8のうちのいずれかに記載の成形装置。
【請求項10】
上記テープ形状である離間手段に対してテンションを付加するテンション付加手段を備える請求項9に記載の成形装置。
【請求項11】
上記テンションの大きさを調節するテンション調節手段を備える請求項10に記載の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−137240(P2008−137240A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324889(P2006−324889)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】