説明

織機用のモジュール駆動システム

【課題】織機の緯入れに係わる各機構のモジュール駆動及び制御システムに関する。
【解決手段】よこ糸挿入サイクルに、従って織物の形成に介入する機構のセットに属する各機構の別個の駆動を実現するように適応され、技術的な製織の要求に従って1つの駆動と他の駆動との間で可変の相互位相を備えるとともに、各サーボ機構の作動線図の別個の変化の可能性を備える、織機用のモジュール駆動システム(18)であって、この駆動システム(18)は一連の制御装置を包含し、制御装置の各々が2つの部品で構成され、第1の部品が、割り当てられた駆動装置のために別個に作動する一方、第2の部品が、1つの共通ベース(19)の内部で、織機の共有可能な機能に関して、他の制御装置と一体化され、この織機は、電力供給、通信、管理及び制御、エネルギー回収又は電気的フライホイール、及び織機を安全に停止させるための制動用のシステムとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、よこ糸及びたて糸織機用のモジュール駆動システムに関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、連続して繰り返しながら織機での織物の形成を導く、よこ糸の挿入サイクルを行うようにしたセットの各機構の個々の駆動のための一体の駆動及び制御システムに関する。
【背景技術】
【0003】
よこ糸及びたて糸織物の形成プロセスは、基本的に、たて糸を横切ってよこ糸を挿入することから成り、たて糸は、糸がそれぞれ挿入されるアイ又はヘルドを採用して、異なるレベルに並べられた位置で適切に分離されてヒ口を形成し、このヒ口では、よこ糸が導入され、形成されている織物の端縁に対しオサによってオサ打ちされる。
【0004】
オサ打ち後、ヘルドは閉じ、それら自体整合して、前述の方法と似ているが、形成を求められた織物の織り方のタイプで決定される異なる指示に従った方法で再び開く。
【0005】
記載したものを除く他の機構は、連続して繰り返しながら織機での織物の形成を導く、所謂「よこ糸の挿入サイクル」に介入する。一般に、上記作動を実行するのに必要な基本の部品は下記のとおりである。
− 制御された速度及び張力でたて糸を供給するのに適応した機構;
− ヒ口を形成するためのたて糸の位置の駆動機構;
− よこ糸をたて糸とで製織するようによこ糸のヒ口への挿入機構;
− オサによって、たて糸とで製織したよこ糸に接近して連続して手繰るオサ打ち機構;
− 織物を所定の比率で前進させ、織機の外部において巻き取る機構。
【0006】
織機の技術分野から、前記構成要素が特定の駆動装置によって駆動され、これらの駆動装置は、機械的又は電的なものとし、また、よこ糸の挿入のためには、機械的又は流体−機械的なものとすることができることが知られている。すべての駆動は、よこ糸挿入サイクルのシーケンスに関連して同期されなければならない。さらに、1つの駆動と他の駆動との間の相互の位相調整は、固定されていないが、理論上定義され実験的に最適化されたパラメーターに従って、生産中の織物の相関関係として可変である。
【0007】
よこ糸及びたて糸のタイプ、よこ糸及びたて糸の織り方、織物のカバーファクタ、及び織物の幅は、すべての適用において生産性を最適化するために織機の特別な調節を必要とする特徴のうちの幾つかである。しかしながら、この調節は、織機が始動前で停止している時に行なわれなければならず、製織コストを不利にする資源及び時間の浪費を伴う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、織物の形成プロセスにおいて介入する各機構の別個の駆動を起動し制御するとともに、上記調節の問題を簡素化し改善することができるようにした、織機用のモジュール駆動システムを実現することである。
【0009】
本発明の別の目的は、よこ糸の挿入サイクルにおいて介入する各機構の別個の駆動を起動し制御することができ、製織の技術的な要求に従って相互の位相調整を可変にし、製織サイクルの典型的な駆動トルクの脈動コースにおけるエネルギー回収を得るように適応された装置に接続されるとともに、関連する機構に接続された各サーボ機構の作動線図の別個の変化を可能にするようにした、織機用のモジュール駆動システムを実現することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、簡単、コンパクト且つ合理的な構造で、先行技術に対して縮小したサイズであり、従って織機の生産性を改善した、織機用のモジュール駆動システムを実現することである。
【0011】
本発明の最後ではない目的は、織物形成機構の別個の駆動のための一体化した制御システムと同様に、始動時あるいは製織中に、生産されるすべての織物のための迅速で容易な調節を行いながら、あらゆるタイプのよこ糸及びたて糸及び/又は織物のための織機を利用することを可能にした、織機用のモジュール駆動システムを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、請求項1による、織機用のモジュール駆動システムを実現することによって、達成される。
【0013】
他の技術的な特徴は、後続の請求項に示されている。
【0014】
有益的に、織物の形成機構にそれぞれ関連したサーボ駆動装置の制御装置の各々は、2つの部品で構成され、第1の部品は、割り当てられた駆動装置の要求に関して別個に作動する一方、第2の部品は、共通ベースにおいて共有可能な機能に関して他の制御装置と一体化され、これらの制御装置は、電力供給システム、通信システム、管理及び制御システム、エネルギー回収システム、緊急停止用制動システム等とすることができる。
【0015】
モジュール駆動システムは、有益的に、レピア織機及び/又はエアジェットルームようなすべてのタイプの織機に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明による織機用のモジュール駆動システムの更なる特徴及び利点は、制限されない一例として提供された下記説明及び添付図面からより明白となるであろう。
【0017】
特に図1に関して、レピア織機(ルーム)に入るたて糸は、総括的に1で示され、よこ糸は総括的に2で示される一方、本発明によるレピア織機の出口で形成される織物は、3で示されている。
【0018】
さらに、たて糸ヒ口の形成用の装置は、4で示され、一連のアイ又はヘルドは4’で示され、アイ又はヘルドの各々には糸が挿入されて、たて糸を定位置に分離するようにし、左側グリッパは5で示され、右側グリッパは6で示され、左側グリッパ5の駆動歯車及び右側グリッパ6の駆動歯車はそれぞれ7及び8で示され、左側グリッパ5及び右側グリッパ6はスレーのオサ11に隣接して摺動する。
【0019】
また、織機は、たて糸を供給するための駆動モータ9、織物3を前進させるための駆動モータ10、スレーの駆動モータ12、左側グリッパ5の駆動モータ13、右側グリッパ6の駆動モータ14、及びたて糸ヒ口の形成用の駆動モータ15を包含する。
【0020】
特に添付の図2に関し、最後に、サイクル位相の基準及び信号装置は16で示され、織機全体の電気コントロールボックスは17で示され、本発明によるモジュール制御システムは18で示され、このモジュール制御システムは共通ベース19を包含し、添付の図の例では、モジュール19’及び19”から成る2つのモジュールに細分することができる。
【0021】
モジュール制御システム18は、共通ベース19に加えて、たて糸1の供給のためのサーボ駆動装置9’、織物3の前進のための駆動モータ10のサーボ駆動装置10’、スレーの駆動モータ12のサーボ駆動装置12’、左側グリッパ5の駆動モータのサーボ駆動装置13’、右側グリッパ6の駆動モータ14のサーボ駆動装置14’、及びたて糸ヒ口の形成用の駆動モータ15のサーボ駆動装置15’を含む。
【0022】
特に、図3では、エアジェット織機(ルーム)が例示され、図1及び2の同じ装置は同じ符号で示されており、エアジェットルームにおけるよこ糸の挿入に使用される装置は、20及び21で同様に示されている。
【0023】
織機及び関連するモジュール駆動システムの機能は、本発明によれば、本質的に下記のとおりである。
【0024】
たて糸1は、駆動モータ9によって動力供給されて前進する一方、ヒ口形成装置4はこれらのたて糸1を上下に位置させてヒ口を形成し、ヒ口は、織物3を実現するために、たて糸1が、(レピア織機の場合)左側グリッパ5及び右側グリッパ6の交互運動で、あるいは、(エアジェットルームの場合)プレフィーダとノズル20及び21から成る装置によって、横断方向に挿入されるよこ糸2とで製織できるようにする。レピア織機の場合には、グリッパ5,6は、それぞれの駆動歯車7,8により、モジュール制御システム18に一体化したサーボ駆動装置13’,14’により、そしてそれぞれの駆動モータ13,14によって駆動される。
【0025】
本発明は、技術的に共有可能な機能をすべて一纏めにするプラットホームに一体化した織機(ルーム)の基礎的な装置の個別駆動システムを実現しており、コスト削減、制御プログラムの高い処理潜在力、パルス電力流れを償いエネルギー消費量を低減させる最適な能力に関する利点を備え、最後に、緊急の場合には織機を安全な位置に置く可能性をも備えている。
【0026】
それぞれの駆動モータ9,10,12,13,14,15の、モジュール制御システム18に一体化されたサーボ駆動装置9’,10’,12’,13’,14’,15’のセットは、基準装置16からの信号及び/又は駆動モータ9,10,12,13,14,15に設置された位置又は速度変換器からの信号によって同期される、閉ループ制御システムで作動したり、あるいは、モジュール制御装置18で発生された信号によって同期される、「センサ無し」タイプの閉ループ制御システムで作動したり、あるいは、開ループ制御システムで作動することができる。
【0027】
スレーの駆動は、駆動モータ12とスレー機構11との間の直接駆動であり、関連するサーボ駆動装置12’は、製織される織物の技術的な要求の相関関係として、一定あるいは調整された回転速度で機構を駆動することができる。
【0028】
駆動モータ15及び関連するサーボ駆動装置15’で構成されたたて糸ヒ口の形成機構のサーボ機構は、糸及び織物3の技術的な特性の相関関係として、リアルタイムで調整可能な位相及び運動法則でもって、ヘルド4を駆動することができる。
【0029】
よこ糸2の挿入は、圧力タイミング及び制御システムにより駆動される流体−機械装置(添付の図には示されていない)によって、あるいは、それぞれ駆動モータ13及び14と関連するサーボ駆動装置13’及び14’とから成るグリッパ5及び6によって、生じることができる。コンパクトな構造で、複雑で高価な機械的構成要素の無い前記サーボ機構は、織機の他の部材を備えた電気的ギア又は電気的カムにおいて、位置制御タイプあるいは速度制御タイプとすることができる。
【0030】
製織プロセスの技術的な要求、そして様々な機械部品の運転及び加速による動荷重に由来するセットの機械的機能の要求によって決定されるグリッパ5及び6の運動法則は、融通の利く方法で前記法則を本発明の目的に適応させる適切なアルゴリズムをもつソフトウェアプログラムによって実現される。
【0031】
さらに、本発明によると、モジュール制御システム18のサブモジュール19’及び19”に細分され得る共通ベース19では、たて糸の巻戻しシステム9及び織物3の案内システム10は一体化され、これらシステムに割り当てられた特定の機能に必要な部品に特有の制御サーボ駆動装置9’及び10’を有する一方、これらは、他のサーボ駆動装置12’,13’,14’及び15’で共有できる機能のためにモジュール制御システム18の共通ベース19の潜在力を使用する。
【0032】
上記記載から、本発明の目的である織機用のモジュール駆動システムの特徴は、その利点とともに、明らかである。特に、これらは次のような様相である。
− 縮小されたサイズ且つ複雑及び/又は高価ではない機械的構成要素をもつ簡素でコンパクトな構造;
− 制御プログラムの高い処理潜在力;
− 緊急の場合に織機を安全な位置に置く可能性をもつと共に、パルス電力流れを償いエネルギー消費量を低減させる能力;
− 加速又は定速位相における他のモータの利益のために減速位相でモータの制動エネルギーを回収できる、直流の単一バスから成るサーボ駆動の電力供給システムを実現する可能性;
− 電力供給ネットワークの吸収能力の連続制御を備えた、減速及び制動位相中のネットワークエネルギー回収システムを実現する可能性;
− 製織の技術的な要求に従って、織物の形成機構の可変相互位相調整を実現する可能性;
− 各サーボ機構の作動線図の別個の変化を実現する可能性;
− 織物の各形成機構の別個の駆動のための一体化した制御システムの実現;
− 融通の利く方法で本発明の目的に適応させるために、グリッパの運動法則の適切なソフトウェア制御プログラムを実現する可能性。
【0033】
最後に、本発明において固有の新規な原理を逸脱することなしに、多数の他の変形例が問題の織機用のモジュール駆動システムになされることが明らかであり、従って、本発明の実際の駆動では、例示した詳細の材料、形状及びサイズは、必要に応じて任意のタイプとし、他の技術的に同等の要素に置き換えることができることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の目的であるモジュール駆動システムを装備した、特にレピア型の織機の概略正面図である。
【図2】本発明による図1のレピア織機の概略平面図である。
【図3】本発明の目的であるモジュール駆動システムを装備したエアジェット織機の概略平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
よこ糸の挿入サイクルに、従って織物の形成に介入する、セットに属する単一機構の別個の駆動を実現するように適応された織機用のモジュール駆動システム(18)において、複数の制御装置を包含し、制御装置の各々が少なくとも2つの部品によって構成され、少なくとも1つの第1の部品が、少なくとも1つの割り当てられた駆動装置のために別個に作動し、少なくとも1つの第2の部品が、少なくとも1つの共通ベース(19)の内部で、織機の共有可能な機能に関して、他の制御装置と一体化されることを特徴とするモジュール駆動システム(18)。
【請求項2】
織機の前記共有可能な機能が、少なくとも1つの電力供給システム、少なくとも1つの通信システム、少なくとも1つの管理及び制御システム、少なくとも1つのエネルギー回収システム及び/又は少なくとも1つの緊急停止システムのうちの1つ以上を含んでいることを特徴とする請求項1記載のモジュール駆動システム(18)。
【請求項3】
他の制御装置と共通の前記ベース(19)が、少なくとも2つのモジュール(19’、19”)に細分することができることを特徴とする請求項1記載のモジュール駆動システム(18)。
【請求項4】
前記モジュール駆動システム(18)が、織物の前記形成機構を駆動する、回転タイプあるいは別のタイプのそれぞれのモータ(9,10,12,13,14,15)の複数のサーボ駆動装置(9’,10’,12’,13’,14’,15’)を含んでいることを特徴とする請求項1記載のモジュール駆動システム(18)。
【請求項5】
織物の前記形成機構が、特にレピア織機あるいはエアジェット織機で使用することができることを特徴とする請求項1記載のモジュール駆動システム(18)。
【請求項6】
前記レピア織機が、たて糸(1)を供給するための少なくとも1つの第1の駆動モータ(9)、織物(3)の前進用の少なくとも1つの第2の駆動モータ(10)、スレーの少なくとも1つの第3の駆動モータ(12)、及びたて糸ヒ口の形成のための少なくとも1つの第4の駆動モータ(15)を包含することに加え、左側グリッパ(5)の少なくとも1つの第5の駆動モータ(13)及び右側グリッパ(6)の少なくとも1つの第6の駆動モータ(14)をも包含することを特徴とする請求項5記載のモジュール駆動システム(18)。
【請求項7】
モジュール駆動システム(18)の内部に一体化されたサーボ駆動装置(9’,10’,12’,13’,14’,15’)及びそれぞれの駆動モータ(9,10,12,13,14,15)が、基準装置(16)からの信号及び/又は前記駆動モータ(9,10,12,13,14,15)に設置された速度変換器からの信号によって同期される、閉ループ制御システムで作動することができることを特徴とする請求項4記載のモジュール駆動システム(18)。
【請求項8】
モジュール駆動システムが、このモジュール駆動システム(18)により発生された信号によって同期される、「センサ無しタイプ」の閉ループ制御システムで作動することができることを特徴とする請求項7記載のモジュール駆動システム(18)。
【請求項9】
モジュール駆動システムが開ループ制御システムで作動することができることを特徴とする請求項7記載のモジュール駆動システム(18)。
【請求項10】
スレーの前記第3の駆動モータ(12)が、一定の回転速度あるいは調整された速度でオサ打ち機構(11)を駆動するのに適応した少なくとも1つの関連するサーボ駆動装置(12’)に接続されていることを特徴とする請求項6記載のモジュール駆動システム(18)。
【請求項11】
ヒ口形成機構の前記第6の駆動モータ(15)が、リアルタイムで調整可能な位相及び運動法則でもって複数のヘルド(4)を駆動するのに適応した少なくとも1つのサーボ駆動(15’)に接続されていることを特徴とする請求項6記載のモジュール駆動システム(18)。
【請求項12】
レピア織機の左側グリッパ(5)及び右側グリッパ(6)の動作のための前記第5の駆動モータ(13)及び前記第6の駆動モータ(14)が、互いに独立したそれぞれのサーボ駆動装置(13’,14’)に接続されていることを特徴とする請求項6記載のモジュール駆動システム(18)。
【請求項13】
過剰エネルギーがある場合に、電力供給システムが1つ以上のサーボ機構からエネルギーを必要とする他の機構へエネルギーを転送できることで、前記電力供給システムが一種の電気的フライホイールとすることができることを特徴とする請求項2記載のモジュール駆動システム(18)。
【請求項14】
電力供給システム及び/又は電気的フライホイールシステムが、直流の単一電源バスによって実現することができ、ネットワークにおいてエネルギー回収システムを実現する可能性を備えたことを特徴とする請求項11記載のモジュール駆動システム(18)。
【請求項15】
モジュール駆動システムが、パルスエネルギー流れをオフセットするように適応され、緊急の場合に織機を安全な位置に置く可能性を備えたことを特徴とする請求項記載のモジュール駆動システム(18)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−126808(P2007−126808A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−282591(P2006−282591)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(505296577)スミト ソシエタ ペル アチオニ − ウニペルソナーレ (5)
【氏名又は名称原語表記】SMIT S.P.A. − UNIPERSONALE
【住所又は居所原語表記】VIALE DELL′INDUSTRIA 135, SCHIO, VICENZA, IYALY
【Fターム(参考)】