説明

置換されたシクロアルキル[e又はd]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−セロトニン5−HT6受容体のアンタゴニスト、その調製の方法及び使用

本発明は、セロトニン5−HT受容体のアンタゴニスト/置換された2−アルキルスルファニル−3−アリールスルホニル−シクロアルカノ[e及びd]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、新規な医薬成分、及び医薬成分を上述の化合物の形態で含有する医薬組成物、新規な薬剤、及びその病変形成が5−HT受容体によるヒト及び温血動物におけるCNS疾病の発症を治療及び予防するための方法に関する。
一般式(1)及び(2)


において、Rは、水素原子又はC−Cアルキルであり;Rは、C−Cアルキルであり;Rは、水素原子、一つ又は二つの所望により同一であってもよいハロゲン原子;C1−C3アルキル及び所望によりアルキル置換されていてもよいヒドロキシルであり;そしてnは、整数1、2又は3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な3−(アリールスルホニル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、新規なセロトニン5−HT受容体アンタゴニスト、薬物物質、医薬組成物、医薬、これらの調製のための方法及び使用に関する。更に具体的には、本発明は、セロトニン5−HT受容体アンタゴニスト−置換された2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)シクロアルキル[e又はd]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、薬物物質、及び前記化合物を活性成分として含んでなる医薬組成物、並びにその病変形成が5−HT受容体に関係する中枢神経系(CNS)の疾病の治療及び予防の方法に関する。新規な薬物物質の薬理学的作用の根源は、中枢神経系の疾病(CNS)、特にアルツハイマー病(AD)、ハンチントン病、統合失調症、他の神経変性疾患、認知障害及び肥満症の治療において重要な役割を演じるセロトニン5−HT受容体とアンタゴニストとして相互作用するその能力である。
【背景技術】
【0002】
CNSの疾病、特に統合失調症、AD及び他の神経変性疾患並びに認知障害の治療のためのセロトニン5−HT受容体の選択的アンタゴニストの有用性は、臨床診療において決定的に証明され、そして将来の医学において非常に見込みがある(perspective)と考えられる[Holenz J.,Pauwels P.J.,Diaz J.L.,Merce R.,Codony X.,Buschmann H.Medicinal chemistry strategies to 5−HT receptor ligands as potential cognitive enhancers and antiobesity agents.Drug Disc.Today.2006;11:283−299]。哺乳動物において、これらの受容体は、中枢神経系(CNS)に、そして主として訓練及び記憶に関係する脳の部分に排他的に局在化している[Ge’rard C.,Martres M.−P.,Lefe’vre K.,Miquel M.−C.,Verge’D.,Lanfumey L.,Doucet E.,Hamon M.,ElMestikawy S.Immuno−localisation of serotonin 5−HT receptor−like material in the rat central nervous system.Brain Research.1997;746:207−219]。一方、5−HT受容体が、コリン作動性、ノルアドレナリン作動性、グルタミン酸作動性及びドーパミン作動性を含む神経媒介物質系の全ての修飾物質であることが示されている[Dawson L.A.,Nguyen H.Q.,Li P.The 5−HT(6)receptor antagonist SB−271046 selectively enhances excitatory neurotransmission in the rat frontal cortex and hippocampus.Neuropsychopharmacology.2001;25:662−668]。これらの系の正常な認知過程における基本的な役割、及び神経変性におけるその機能障害を考慮すれば、正常な、及び“病的な”記憶の形成における5−HT受容体の排他的役割は明白となる。
【0003】
5−HT受容体の遮断が、訓練−記憶−再現の各種の動物モデルにおける記憶の固定のかなりな向上に導くことが、多くの今日の刊行物に示された[Foley A.G.,Murphy K.J.,Hirst W.D.,Gallagher H.C.,Hagan J.J.,Upton N.,Walsh F.S.,Regan C.M.The 5−HT(6)receptor antagonist SB−271046 reverses scopolamine−disrupted consolidation of a passive avoidance task and ameliorates spatial task deficits in aged rats.Neuropsychopharmacology.2004;29:93−100.Riemer C.,Borroni E.,Levet−Trafit B.,Martin J.R.,Poli S.,Porter R.H.,Bos M.Influence of the 5−HT6 receptor on acetylcholine release in the cortex:pharmacological characterization of 4−(2−bromo−6−pyrrolidin−1−ylpyridine−4−sulfonyl)phenylamine,a potent and selective 5−HT receptor antagonist.J.Med.Chem.2003;46:1273−1276.King M.V.,Woolley M.L.,Topham I.A.,Sleight A.J.,Marsden C.A.,Fone K.C.5−HT6 receptor antagonists reverse delay−dependent deficits in novel object discrimination by enhancing consolidation an effect sensitive to NMDA receptor antagonism.Neuropharmacology 2004;47:195−204]。5−HT受容体アンタゴニストの作用下で行われたモリソン水迷路実験における成長したのラットにおける認知機能のかなりな向上も更に証明された[Foley A.G.,Murphy K.J.,Hirst W.D.,Gallagher H.C.,Hagan J.J.,Upton N.,Walsh F.S.,Regan C.M.The 5−HT(6)receptor antagonist SB−271046 reverses scopolamine−disrupted consolidation of a passive avoidance task and ameliorates spatial task deficits in aged rats.Neuropsychopharmacology.2004;29:93−100]。最近、認知過程における5−HT受容体機能、及びそのアンタゴニストの可能な薬理作用団的特質に関する更に正確な概念の更に完全な理解が達成された[Holenz J.,Pauwels P.J.,Diaz J.L.,Merce R.,Codony X.,Buschmann H.Medicinal chemistry strategies to 5−HT receptor ligands as potential cognitive enhancers and antiobesity agents.Drug Disc.Today.2006;11:283−299]。これは、非常に擬似的な選択的リガンド(“分子ツール”)の調製を、そしてその後の臨床候補をもたらした。現在、多くの5−HT受容体アンタゴニストが、AD、ハンチントン病、統合失調症(抗神経病剤)並びに他の神経変性及び認知疾患の治療のための潜在的成分として臨床治験の各種の相にある(表1)[http://integrity.prous.com]。
【0004】
【表1】

【0005】
5−HT受容体アンタゴニストのもう一つの魅力的な特性は、過体重の低下及び肥満症の治療のための本質的に新規な療法のその基本の調製に導くことができる食欲を抑制するその能力である[Vicker S.P.,Dourish C.T.Serotonin receptor ligands and the treatment of obesity.Curr.Opin.Investig.Drugs.2004;5:377−388]。この効果は、多くの研究において確認され[Holenz J.,Pauwels P.J.,Diaz J.L.,Merce R.,Codony X.,Buschmann H.Medicinal chemistry strategies to 5−HT receptor ligands as potential cognitive enhancers and antiobesity agents.Drug Disc.Today.2006;11:283−299.Davies S.L.Drug discovery targets:5−HT receptor.Drug Future.2005;30:479−495]、その機構は、5−HT受容体アンタゴニストによるγ−アミノ酪酸シグナル伝達の抑制、及び最終的に食料の要求の低下をもたらすα−メラニン細胞刺激ホルモン放出の増加に基づく[Woolley M.L.5−HT receptors.Curr.Drug Targets CNS Neurol.Disord.2004;3:59−79]。現在二つの5−HT受容体アンタゴニストが、肥満症の治療のための薬物候補として臨床治験の第1相にある(表1)[http://integrity.prous.com]。
【0006】
この文脈において、新しい選択的なそして有効なセロトニン5−HT受容体アンタゴニストの研究は、多くの神経性及び神経変性疾患並びに認知障害の治療のための新規な薬物物質の開発に対する本来のそして見込みのある方法であるように見受けられる。
【0007】
科学的文献において各種の生物学的に活性なアリールスルホニル置換アザ複素環、特にセロトニン受容体リガンドを記載した多くの刊行物が存在する。例えば、以下の一般式A1の置換された1−(2−アミノエチル)−4−(アリールスルホニル)ピラゾールは、セロトニンR−HT2c受容体リガンドとして[WO2003057674A1]、そして以下の置換された7−アミノ−3−(スルホニル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンA2:
【0008】
【化1】

【0009】
[A1:Ar=アルキル、アリール;R及びR=H、OH、アルキル、アルコキシ;R及びR=H、アルキル、アリールである。
A2:Ar=アリール、ヘテロシクリル;R=H、アルキル、アルキルチオ;R=H、アルキル、ハロゲン;R=H、アルキル、ヒドロキシアルキル;R及びR=H;NR=ピペラジニルである;]
は、セロトニン5−HT受容体アンタゴニストとして[ЕР941994А1,1999]記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許出願公開WO2003/057674A1
【特許文献2】欧州特許ЕР第941994А1号、1999
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Holenz J.,Pauwels P.J.,Diaz J.L.,Merce R.,Codony X.,Buschmann H.Medicinal chemistry strategies to 5−HT6 receptor ligands as potential cognitive enhancers and antiobesity agents.Drug Disc.Today.2006;11:283−299.
【非特許文献2】Ge’rard C.,Martres M.−P.,Lefe’vre K.,Miquel M.−C.,Verge’D.,Lanfumey L.,Doucet E.,Hamon M.,ElMestikawy S.Immuno−localisation of serotonin 5−HT6 receptor−like material in the rat central nervous system.Brain Research.1997;746:207−219.
【非特許文献3】Dawson L.A.,Nguyen H.Q.,Li P.The 5−HT(6)receptor antagonist SB−271046 selectively enhances excitatory neurotransmission in the rat frontal cortex and hippocampus.Neuropsychopharmacology.2001;25:662−668.
【非特許文献4】Foley A.G.,Murphy K.J.,Hirst W.D.,Gallagher H.C.,Hagan J.J.,Upton N.,Walsh F.S.,Regan C.M.The 5−HT(6)receptor antagonist SB−271046 reverses scopolamine−disrupted consolidation of a passive avoidance task and ameliorates spatial task deficits in aged rats.Neuropsychopharmacology.2004;29:93−100.
【非特許文献5】Riemer C.,Borroni E.,Levet−Trafit B.,Martin J.R.,Poli S.,Porter R.H.,Bos M.Influence of the 5−HT6 receptor on acetylcholine release in the cortex:pharmacological characterization of 4−(2−bromo−6−pyrrolidin−1−ylpyridine−4−sulfonyl)phenylamine,a potent and selective 5−HT6 receptor antagonist.J.Med.Chem.2003;46:1273−1276.
【非特許文献6】King M.V.,Woolley M.L.,Topham I.A.,Sleight A.J.,Marsden C.A.,Fone K.C.5−HT6 receptor antagonists reverse delay−dependent deficits in novel object discrimination by enhancing consolidation an effect sensitive to NMDA receptor antagonism.Neuropharmacology 2004;47:195−204.
【非特許文献7】Foley A.G.,Murphy K.J.,Hirst W.D.,Gallagher H.C.,Hagan J.J.,Upton N.,Walsh F.S.,Regan C.M.The 5−HT(6)receptor antagonist SB−271046 reverses scopolamine−disrupted consolidation of a passive avoidance task and ameliorates spatial task deficits in aged rats.Neuropsychopharmacology.2004;29:93−100.
【非特許文献8】Holenz J.,Pauwels P.J.,Diaz J.L.,Merce R.,Codony X.,Buschmann H.Medicinal chemistry strategies to 5−HT6 receptor ligands as potential cognitive enhancers and antiobesity agents.Drug Disc.Today.2006;11:283−299.
【非特許文献9】http://integrity.prous.com.
【非特許文献10】Vicker S.P.,Dourish C.T.Serotonin receptor ligands and the treatment of obesity.Curr.Opin.Investig.Drugs.2004;5:377−388.
【非特許文献11】Holenz J.,Pauwels P.J.,Diaz J.L.,Merce R.,Codony X.,Buschmann H.Medicinal chemistry strategies to 5−HT6 receptor ligands as potential cognitive enhancers and antiobesity agents.Drug Disc.Today.2006;11:283−299.Davies S.L.Drug discovery targets:5−HT6 receptor.Drug Future.2005;30:479−495.
【非特許文献12】Woolley M.L.5−HT6 receptors.Curr.Drug Targets CNS Neurol.Disord.2004;3:59−79。
【発明の概要】
【0012】
新規な非常に有効な神経保護性医薬を解明するために、本発明の著者等は、置換された3−(アリールスルホニル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンの分野において幅広い研究を行い、その結果として、5−HT受容体アンタゴニストである新規な薬物物質を見出した。
【0013】
本発明の文脈において、用語は、一般的に以下のように定義される:
“アゴニスト”は、規定された種類の受容体と結合し、その特異的シグナル伝達を活発に促進し、そしてこれによって細胞の生物学的回答を起こすリガンドを意味する。
【0014】
“アザ複素環”は、少なくとも一つの窒素原子を持つ芳香族或いは非芳香族の単環又は多環系を意味する。アザ複素環は、一つ又はそれより多い“環系置換基”を有することができる。
【0015】
“アルキル”は、1−12個の炭素原子を持つ脂肪族炭化水素の直鎖又は分枝鎖基を意味する。分枝は、一つ又はそれより多い“低級アルキル”置換基を持つアルキル鎖を意味する。アルキル基は、ハロゲン、アルケニルオキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アロイル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、アルキニルオキシ、アラルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルキルチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、アリールスルホニル、アルキルスルホニルヘテロアラルキルオキシ、縮合(annelated)ヘテロアリールシクロアルケニル、縮合ヘテロアリールシクロアルキル、縮合ヘテロアリールヘテロシクレニル、縮合ヘテロアリールヘテロシクリル、縮合アリールシクロアルケニル、縮合アリールシクロアルキル、縮合アリールヘテロシクレニル、縮合アリールヘテロシクリル、アルコキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、ヘテロアラルキルオキシカルボニル或いはRk+1N−、Rk+1NC(=O)−、Rk+1NC(=S)−、Rk+1NSO−を含む同一又は異なった構造の一つ若しくはそれより多い置換基(“アルキル置換基”)を有することができ、ここで、R及びRk+1は、互いに独立に、その意味が本節で定義される“アミノ基”置換基、例えば、水素、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロシクリル又はヘテロアリールを表すか、或いはR及びRk+1は、これらが接続しているN原子と一緒に、R及びRk+1を経由する4−7員のヘテロシクリル又はヘテロシクレニルを形成する。好ましいアルキル基は、メチル、トリフルオロメチル、シクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、3−ペンチル、メトキシエチル、カルボキシメチル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、ベンジルオキシカルボニルメチル及びピリジルメチルオキシカルボニルメチルである。好ましい“アルキル置換基”は、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アラルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルコキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、ヘテロアラルキルオキシカルボニル又はRk+1N−、Rk+1NC(=O)−、縮合アリールヘテロシクレニル、縮合アリールヘテロシクリルである。
【0016】
“アルコキシ”は、アルキルが本節で定義されるアルキル−O−基を意味する。好ましいアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソ−プロポキシ及びn−ブトキシである。
【0017】
“アルキルチオ又はアルキルスルファニル”は、アルキル基が本節で定義されるアルキル−S−基を意味する。好ましいアルキルスルファニル基は、メチルスルファニル、エチルスルファニル、n−プロピルスルファニル、イソ−プロピルスルファニルである。
【0018】
“抗不安剤”(精神安定剤)は、不安性疾患の治療を意図する医薬を意味する。
“縮環した環”(縮合環)は、縮環した環及びそれと縮環した環又は多環が、少なくとも二つの共通の原子を有する二又は多環系を意味する。
【0019】
“アンタゴニスト”は、規定された受容体と結合して、活性な細胞の反応を起こさないリガンドを意味する。アンタゴニストは、アゴニスト及び受容体間の結合を防止し、そしてそれによって特異的受容体のシグナル伝達を遮断する。
【0020】
“抗鬱剤”は、鬱病の治療を意図する医薬を意味する。
“抗精神病剤”は、精神病性疾病の治療を意図する治療剤を意味する。
“アリール”は、6−14個の炭素原子、主として6から10個までのC原子を持つ芳香族の単環又は多環系を意味する。アリールは、一つ若しくはそれより多い同一又は異なった構造の“環系置換基”を有することができる。フェニル、置換されたフェニル、ナフチル又は置換されたナフチルは、アリール基の典型である。アリールは、非芳香族の環系又は複素環と縮合することができる。
【0021】
“アリールスルホニル”は、アリールの意味が本節において定義されるアリール−SO−基を意味する。
“水和物”は、化合物又はその塩の水との化学量論的或いは非化学量論的組成物を意味する。
【0022】
“鬱病”は、大鬱病;一過性、慢性及び再発の形態の大鬱病;気分変調性障害(気分変調症)、気分循環症(cyclotymia);感情障害;季節性感情障害の症候群;I及びII型の双極性障害を含む双極性障害;及び他の抑鬱性疾患及び症状を意味する。鬱病は、更にAD、血管性認知症に伴う鬱病;アルコール及び物質によって誘発されるモード障害;鬱病型の統合失調感情障害;適応障害を意味する。これら以外に、鬱病は、癌患者の鬱病;パーキンソン病の鬱病;心筋梗塞後の鬱病;不妊症女性の鬱病;小児性鬱病;産後鬱病;体細胞、神経痛性及び他の疾病に伴う鬱病を含む。
【0023】
“置換基”は、骨格(断片)に接続している化学ラジカル、例えばこれらの意味が本節において定義される“アルキル置換基”、“アミノ基置換基”、“カルバモイル置換基”、及び“環系置換基”を意味する。
【0024】
“アルキル基置換基”は、その意味が本節において定義されるアルキル又はアルケニル基に接続される置換基を意味する。アルキル基置換基は、水素、アルキル、ハロゲン、アルケニルオキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アロイル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、アルキニルオキシ、アラルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルキルチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、アリールスルホニル、アルキルスルホニル、ヘテロアラルキルオキシ、縮合ヘテロアリールシクロアルケニル、縮合ヘテロアリールシクロアルキル、縮合ヘテロアリールヘテロシクレニル、縮合ヘテロアリールヘテロシクリル、縮合アリールシクロアルケニル、縮合アリールシクロアルキル、縮合アリールヘテロシクレニル、縮合アリールヘテロシクリル、アルコキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、ヘテロアラルキルオキシカルボニル或いはRk+1N−、Rk+1NC(=O)−、Rk+1NSO−から選択され、ここで、R及びRk+1は、互いに独立に、その意味が本節において定義される“アミノ基置換基”、例えば水素、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロシクリル又はヘテロアリールを表すか、或いはR及びRk+1は、これらが結合しているN原子と一緒に、R及びRk+1を経由して4−7員のヘテロシクリル又はヘテロシクレニルを形成する。好ましいアルキル基は、メチル、トリフルオロメチル、シクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、3−ペンチル、メトキシエチル、カルボキシメチル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、ベンジルオキシカルボニルメチル、及びピリジルメチルオキシカルボニルメチルである。好ましい“アルキル基置換基”は、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アラルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルコキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、ヘテロアラルキルオキシカルボニル又はRk+1N−、Rk+1NC(=O)−、縮合アリールヘテロシクレニル、縮合アリールヘテロシクリルである。
【0025】
“認知障害又は認知機能の障害”は、記銘力、記憶、心理、認知、教育、言語、精神、実行及び創造能力、時間及び空間的見当識;特にAD、パーキンソン及びハンチントン病、老人性認知症;加齢関連記憶障害、AAMIに伴う認識障害;代謝異状性脳障害;精神的記憶障害;健忘症;健忘性障害;一過性全健忘症;解離性健忘症;血管性認知症;軽度又は中程度の認知機能障害(MCI);注意欠陥多動性疾患(AD/HD);精神病、癲癇、譫妄、自閉症、精神病、ダウン症候群、双極性障害及び鬱病に伴う認知障害;AIDS関連認知症;甲状腺機能障害における認知症;依存性及び神経毒を起こすアルコール、物質に関係する認知症;神経変性疾患、例えば小脳変性症及び筋萎縮性側索硬化症に伴う認知症;大脳性発作、感染及び腫瘍学的脳疾患、並びに外傷性脳損傷に関係する認知障害;自己免疫性及び内分泌性疾患に伴う認知機能損傷、等を含む精神的能力の障害(低下)を意味する。
【0026】
“薬物物質”は、医薬の製造及び調製において使用される医薬組成物の活性成分である、薬理学的活性を示す合成又は他の起源(生物工学、野菜、動物、微生物等)の生理学的に活性な化合物を意味する。
【0027】
“医薬”−は、ヒト及び動物における生理学的機能の修復、改良又は改変、並びに疾病の治療及び予防、診断、麻酔、避妊、美容術等を意図する、錠剤、カプセル、注射、軟膏及び他の薬物製品の形態の医薬組成物を表す化合物又は化合物の混合物である。
【0028】
“リガンド”(ラテン語のligoから)は、受容体と相互作用し、この相互作用を特異的なシグナルに転換することが可能な化学化合物(低分子、ペプチド、タンパク質、無機イオン、等)を表す。
【0029】
“神経変性疾患”は、中枢神経系のある領域中の神経細胞集団の損傷及び一次破壊に伴う特異的症状及び疾病を意味する。神経変性疾患は、制約されるものではないが:AB;パーキンソン及びハンチントン病(舞踏病);多発性(multiocular)硬化症;小脳縮退;筋萎縮性側索硬化症;レビー小体を伴う認知症;脊髄性筋萎縮症;末梢神経障害;海綿状脳炎(クロイトフェルツ・ヤコブ病);AIDS認知症;多発脳梗塞性(multi−infract)認知症;前頭側頭型認知症;白質脳症(白質の海綿状変性);慢性神経変性疾患;大脳発作;虚血性、再潅流性及び低酸素性脳障害;癲癇;脳虚血;緑内障;外傷性脳損傷;ダウン症候群;脳脊髄炎;髄膜炎;脳炎;神経芽細胞腫;統合失調症;鬱病を含む。更に、神経変性疾患は、低酸素症、神経毒性の影響下で依存性を起こす物質乱用;感染性及び腫瘍性脳障害、並びに自己免疫性及び内分泌性疾病等に伴う神経細胞障害に関連する病理学的状態及び疾患を含む。
【0030】
“向知性薬”又は“向知性剤”(神経代謝性刺激物質)は、認知高揚のために服用される医薬である。
“受容体”(ラテン語のrecipereから)は、制限された数の生理学的に活性な化合物(リガンド)と、特異的に相互作用し、そしてこの相互作用に関するシグナルを限定的な細胞反応に転換することが可能な細胞質内細胞膜又は細胞内のいずれかに位置する生物学的巨大分子を表す。
【0031】
“精神障害(精神病)”は、精神障害及び/又は心理的欲求不満に伴う疾病又は疾病状態である。“精神病”は、感情障害(双極性感情障害、大鬱病、軽躁病、小鬱病、躁病症候群、コタール症候群、気分循環症、統合失調感情障害等)、知的健忘(mnestic)障害;躁病(軽躁病、書字狂、窃盗癖(cleptomania)、衝動買い、被害妄想狂、ポルノ狂、色情狂等);多重人格性障害、知的傷害、アルコール狂、譫妄、譫妄症候群、幻覚症、幻覚、ルシナトリー(lucinatory)効果、殺人狂、譫妄;錯覚、好訴妄想 臨床的オオカミ憑き、大視症、拮抗性妄想、小視症、麻薬狂;神経性食欲不振症、夢幻様(oneiroid)症候群、偏執傾向、偏執狂、パラフレニー、偽幻覚、精神障害、コタール症候群、統合失調感情障害、統合失調型障害、統合失調症、統合失調感情性精神障害、統合失調症型障害、Shrebera’s症候群、Daniel Paul’s症候群)、恐怖症(広場恐怖症(agarophobia)、クモ恐怖症、孤独恐怖症、黴菌恐怖症、ヒドロソホビア(hydrosophobia)、恐水病、群集恐怖症、動物恐怖症、癌恐怖症、閉所恐怖症、階段恐怖症、外国人嫌悪症、不潔恐怖症、放射線恐怖症、羞明;スコリーホビア(skoliephobia)、暗黒恐怖症、社会恐怖症、四恐怖症、13恐怖症、性愛恐怖症);アルコール性精神病、アルコール性記憶喪失、異食症、失語症、書字狂、解離性遁走状態、解離性疾患;不快気分、インターネット依存症、心気症、ヒステリー、疲労恐怖症、迫害の譫妄、憂鬱、人間嫌い、強迫、パニック発作、アスペルガー症候群、カプグラ症候群、ミュンヒハウゼン症候群、レット(Retta’s)症候群、フレゴリ(Fregoly’s)症候群、注意及び多動性欠損症候群、強迫性障害、慢性麻酔後症候群、精神的自動症症候群、小児自閉症症候群、狂気、墓場愛好症、不安症状、引篭り症候群、性愛書狂等を含む。
【0032】
“精神病的障害”は、全ての種類の統合失調症;統合失調性精神病;統合失調型障害;双極性及び鬱病型を含む統合失調感情障害;関係妄想、迫害妄想、誇大妄想狂、嫉妬妄想、色情狂、そして更に心気、体性、混合型及び区別されない譫妄を含む譫妄性障害;短時間精神障害;物質的欲求不満によって誘発される誘発性精神病的欲求不満;並びに他の精神病的障害を含む。
【0033】
“治療キット”は、異なった機構の薬理学的作用を持ち、そして疾病の病変形成の一部を担う異なった生体標的を目標にする、同時に投与される二つ又はそれより多い薬物物質の組合せである。
【0034】
“不安障害”は、一般的な(不明確な)不安症;急性の制御されない不安症;パニック障害;恐怖症、例えば、広場恐怖症(密集した場所の急性の恐怖)或いは社会(他人の存在時の屈辱の急性の恐怖)又はいずれもの他の恐怖症(特定の対象、動物又は高さ、医学的方法、上昇、開放空間等の恐怖症の形態の状況の急性の恐怖);強迫的条件(強迫症障害);外傷後ストレス障害及び急性ストレス障害を意味する。他に、不安障害は、アルコール又は物質によって誘発される不安症状;順応下の不安症;並びに不安障害及び鬱病の混合型を含む。
【0035】
“シクロアルキル”は、3−10個のC原子からなる非芳香族の単環又は多環系を意味する。シクロアルキルは、一つ若しくはそれより多い同一又は異なった構造の“環系置換基”を有することができる。シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、デカリニル、ノルボルニル、アダマント−1−イル等は、シクロアルキル基の典型である。シクロアルキルは、芳香族環又は複素環と縮合することができる。好ましい“環系置換基”は、その意味が本節において定義されるアルキル、アラルコキシ、ヒドロキシル又はRk+1N−基である。
【0036】
“統合失調症”は:単純、破瓜型、偏執傾向、高毒性(発熱性)、緊張型、統合失調感情性、残遺型又は分別されていない統合失調症を含む疾病の全ての既知の種類、形態及び変種、及び/又は米国精神医学会(American Psychiatric Association;in:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,IV Edition,Washington D.C.2000)の分類、又は国際的分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)中に定義されている統合失調症の形態、或いはいずれもの他の既知の形態を意味する。
【0037】
“医薬組成物”は、少なくとも一つの一般式1の化合物、並びにその選択及び適した比率がその特質並びに投与の方法及び投与量に依存する、医薬的に受容可能な、そして薬理学的に適合性の充填剤、溶媒、希釈剤、補助剤、分散及び感作剤、保存剤、安定剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、増粘剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、抗細菌剤、殺真菌剤、潤滑剤、及び持続放出調節剤のような放出剤からなる群から選択される少なくとも一つの成分を含んでなる組成物を意味する。適した懸濁剤の例は;エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエテン、ソルビトール及びソルビトールエーテル、微結晶セルロース、メタ水酸化(metahydroxide)アルミニウム、ベントナイト、寒天並びにトラガカントゴム、そして更にこれらの混合物である。微生物の作用に対する保護は、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸、及び同様な化合物のような各種の抗細菌剤及び抗真菌剤によって得ることができる。組成物は、更に:糖、塩化ナトリウム、及び同様な化合物のような等張剤を含有することができる。組成物の持続性効果は、活性成分の吸収を遅延する薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンによって達成することができる。適した担体、溶媒、希釈剤及び放出剤の例は、水、エタノール、ポリアルコール及びこれらの混合物、天然油(オリーブ油のような)、並びに注射級有機エステル(オレイン酸エチルのような)を含む。充填剤の例は:ラクトース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等である。崩壊剤及び分散剤の例は:デンプン、アルギン酸及びその塩、並びにケイ酸塩である。適した潤滑剤の例は;ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク及び高分子量のポリエチレングリコールである。活性成分の経口、舌下、経皮、筋肉内、静脈内、皮下、局所又は直腸投与のための、単独の又はもう一つの活性化合物との組合せの医薬組成物は、標準的な投与形態で、又は伝統的な医薬的担体との混合物でヒト及び動物に投与することができる。適した標準的な投与形態は、錠剤、ゼラチンカプセル、丸薬、粉末、顆粒、チューインガム及び経口溶液又は懸濁液、例えば治療キットのような経口用形態;舌下及び頬側経由投与形態;エアゾール;インプラント;局所、経皮、皮下、筋肉内、静脈内、鼻腔内又は眼内形態、並びに直腸投与形態を含む。
【0038】
“医薬的に受容可能な塩”は、本発明中で開示される酸及び塩基の、比較的非毒性の有機及び無機塩の両方を意味する。塩は、化合物の合成、単離又は精製の過程中でin situで調製することができるか、或いはこれらは、特別に調製することができる。特に、塩基の塩は、本発明において開示される精製された塩基及び適した有機又は無機酸から出発して調製することができる。この方法で調製される塩の例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩(valeriates)、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、マロン酸塩、サリチル酸塩、プロピオン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、スルファミン酸塩等を含む(このような塩の特性の詳細な説明は:Berge S.M.,et al.,“Pharmaceutical Salts”J.Pharm.Sci.,1977,66:1−19中に与えられている)。開示される酸の塩は、精製された酸の、特別に適した塩基との反応によって調製することができ;更に、金属塩及びアミン塩も合成することができる。金属塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、リチウム及びアルミニウムの塩であり;ナトリウム及びカリウム塩が好ましい。それらから金属塩を調製することができる適した無機塩基は:水酸化、炭酸、重炭酸及び水素化ナトリウム;水酸化、炭酸及び重炭酸カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛である。開示される酸塩の調製のために適した有機塩基は、安定な塩を製造し、そして医薬の目的において使用するために適した(特に、これらは低い毒性を有しなければならない)その塩基性が十分に足りているアミン及びアミノ酸である。このようなアミンは、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペラジン、エチルピペリジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等を含む。一方、塩は、コリン(holine)、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、等のような幾つかの水酸化テトラアルキルアンモニウムを使用して調製することができる。アミノ酸は、主要なアミノ酸−リシン、オルニチン及びアルギニンから選択することができる。
【0039】
本発明の目的は、新規な3−(アリールスルホニル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、新規なセロトニン5−HT受容体アンタゴニスト、新規な薬物物質及び前記の新規な化合物を活性成分として含んでなる医薬組成物、新規な医薬、並びにヒト及び温血動物のCNSの各種の疾病、特に神経変性疾患並びに認知、神経性及び不安障害の予防及び治療のための方法である。
【0040】
考慮中の目的は、以下の一般式1の置換された2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン及び以下の一般式2の置換された2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンによって達成される。
【0041】
【化2】

【0042】
[式中:
は、水素又はC−Cアルキルを表し;
は、C−Cアルキルを表し;
は、水素、一つ又は二つの所望により同一であってもよいハロゲン原子、C−Cアルキル又はC−Cアルキルで所望により置換されていてもよいヒドロキシル基を表し;
nは、整数1、2又は3を表す。]
好ましいセロトニン5−HT受容体アンタゴニストは、以下の一般式1.1の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−シクロペンタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、以下の一般式1.2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−シクロヘキサ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、及び以下の一般式1.3の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−シクロヘプタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンである。
【0043】
【化3】

【0044】
[式中:R、R及びRは、全て上記で定義したとおりである。]
好ましいセロトニン5−HT受容体アンタゴニストは、以下の式:
【0045】
【化4】

【0046】
の2−メチルスルファニル−3−(フェニルスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−シクロペンタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.1(1)、2−メチルスルファニル−3−(3−フルオロフェニルスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−シクロペンタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.1(2)、2−メチルスルファニル−3−(3−クロロフェニルスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−シクロペンタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.1(3)、2−メチルスルファニル−3−(3−クロロ−4−フルオロフェニルスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−シクロペンタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.1(4)、2−メチルスルファニル−3−(フェニルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−シクロヘキサ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.2(1)、2−メチルスルファニル−3−(3−クロロフェニルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−シクロヘキサ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.2(2)、5−メチル−2−メチルスルファニル−3−(フェニルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−シクロヘキサ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.2(3)、5−メチル−2−メチルスルファニル−3−(3−フルオロフェニルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−シクロヘキサ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.2(4)、5−メチル−2−メチルスルファニル−3−(3−クロロフェニルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−シクロヘキサ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.2(5)、5−メチル−2−メチルスルファニル−3−(3−クロロ−4−フルオロフェニルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−シクロヘキサ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.2(6)、2−メチルスルファニル−3−(フェニルスルホニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−シクロヘプタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.3(1)及び2−メチルスルファニル−3−(3−クロロフェニルスルホニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−シクロヘプタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.3(2)である。
【0047】
本発明の目的は、一般式1、1.1、1.2、1.3の置換された2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、及び一般式2の置換された2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンの調製のための、一般式3の3−アミノ−4−アリールスルホニル−2H−ピラゾールの、一般式4の対応するβ−ジカルボニル化合物又は一般式5のその誘導体との、以下に示すスキーム:
【0048】
【化5】

【0049】
[式中:R、R、R及びnは、全て上述したとおりである]
による相互作用、及びその後の一般式1、1.1、1.2、1.3、2の反応生成物の単離又は分離による方法である。
【0050】
本発明の目的は、セロトニン5−HT受容体を阻害する特性を保有する生理学的に活性な化合物の特性の研究のための新規な“分子ツール”である。
考慮中の目的は、一般式1、1.1、1.2、1.3の置換された2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、及び一般式2の置換された2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンであるセロトニン5−HT受容体アンタゴニストによって達成される。
【0051】
本発明の対象は、少なくとも一つの一般式1、1.1、1.2、1.3の置換された2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、又は一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンである医薬組成物及び医薬のための薬物物質である。
【0052】
本発明の対象は、ヒト及び温血動物におけるCNSの各種の症状及び疾病の予防及び治療のための、医薬的に有効な量の少なくとも一つの一般式1、1.1、1.2、1.3の置換された2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン又は一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンである新規な薬物物質を含んでなる医薬組成物である。
【0053】
医薬組成物は、医薬的に受容可能な賦形剤を含むことができる。医薬的に受容可能な賦形剤は、薬剤学の分野において適用される希釈剤、補助剤及び/又は担体を意味する。本発明によれば、開示された薬物物質と一緒の医薬組成物は、他の活性成分を、これらがアレルギー反応のような好ましくない影響を与えないことを条件として含むことができる。
【0054】
必要な場合、本発明によれば、医薬組成物は、前記の組成物を慣用的な医薬的担体と混合することによって調製した各種の形態、例えば経口用形態(錠剤、ゼラチンカプセル、丸薬、溶液又は懸濁液のような);注射のための形態(注射のための溶液又は懸濁液、又は使用前に注射用水の添加のみを必要とする注射用乾燥粉末のような);局所形態(軟膏又は溶液のような)で臨床診療に使用することができる。
【0055】
本発明によれば、医薬組成物中で使用される担体は、通常使用される形態の調製のために薬剤学の分野において使用される担体を表す。結合剤、潤滑剤、崩壊剤、溶媒、希釈剤、安定剤、懸濁剤、無色(colrless)剤、味覚芳香剤が経口形態のために使用され;防腐剤、可溶化剤、安定剤が注射用形態で使用され;基剤物質、希釈剤、潤滑剤、防腐剤が、局所形態で使用される。
【0056】
本発明の対象は、更に少なくとも一つの一般式1、1.1、1.2、1.3の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、又は一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンである薬物物質を、不活性充填剤及び/又は溶媒と混合することによる、医薬組成物の調製のための方法でもある。
【0057】
本発明の対象は、更にその病変形成が5−HT受容体に関係するヒト及び温血動物のCNS疾病、特に神経変性疾患並びに認知、神経性及び不安障害の治療及び予防を意図する、少なくとも一つの一般式1、1.1、1.2、1.3の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、又は一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンである薬物物質、或いはこの薬物物質を含んでなる医薬組成物を含んでなる、医薬的に受容可能な包装中に入れられた錠剤、カプセル、又は注射の形態の医薬でもある。
【0058】
好ましい医薬は、AD、パーキンソン病、ハンチントン病の治療及び予防を意図する、医薬的に有効な量の少なくとも一つの一般式1、1.1、1.2、1.3の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、又は一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンである薬物物質、或いはこの薬物物質を含んでなる医薬組成物を含んでなる、医薬的に受容可能な包装中に入れられた錠剤、カプセル、又は注射の形態の医薬である。
【0059】
本発明の対象は、精神病的障害及び統合失調症の治療及び予防を意図する、医薬的に有効な量の少なくとも一つの一般式1、1.1、1.2、1.3の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、又は一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンである薬物物質、或いはこの薬物物質を含んでなる医薬組成物を含んでなる、医薬的に受容可能な包装中に入れられた錠剤、カプセル、又は注射の形態の医薬である。
【0060】
好ましい医薬は、不安障害の治療及び予防を意図する、医薬的に有効な量の少なくとも一つの一般式1、1.1、1.2、1.3の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、又は一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンである薬物物質、又はこの薬物物質を含んでなる医薬組成物を含んでなる医薬(抗不安剤又は精神安定剤)である。
【0061】
好ましい医薬は、多動性疾患、更に具体的には精神能力の亢進の治療及び予防を意図する、医薬的に有効な量の少なくとも一つの一般式1、1.1、1.2、1.3の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、又は一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンである薬物物質、又はこの薬物物質を含んでなる医薬組成物を含んでなる医薬(向知性剤)である。
【0062】
本発明の目的は、肥満症の治療及び予防を意図する、医薬的に有効な量の少なくとも一つの一般式1、1.1、1.2、1.3の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、又は一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンである薬物物質、或いはこの薬物物質を含んでなる医薬組成物を含んでなる、医薬的に受容可能な包装中に入れられた錠剤、カプセル、又は注射の形態の医薬である。
【0063】
本発明の対象は、その病変形成がヒト及び動物におけるセロトニン5−TH受容体に関係するCNSの各種の疾病の治療及び予防を意図する、医薬的に有効な量の少なくとも一つの一般式1、1.1、1.2、1.3の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、及び一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンである薬物物質を含んでなる医薬、又はこの薬物物質を含んでなる医薬組成物を含む治療キットである。
【0064】
本発明の対象は、動物及びヒトにおける神経性疾患、神経変性及び認知障害、特にAD、パーキンソン病、ハンチントン病、精神病性障害、統合失調症、低酸素性虚血、低血糖症、痙攣状態、脳損傷、ラチリズム、筋萎縮性側索硬化症、肥満症又は発作の予防及び治療を意図する、医薬的に有効な量の少なくとも一つの一般式1、1.1、1.2、1.3の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、及び一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンである薬物物質を含んでなる医薬、又はこの薬物物質を含んでなる医薬組成物を含む治療キットである。
【0065】
ヒト及び動物における神経性疾患、神経変性及び認知障害、特にAD、パーキンソン及びハンチントン病、精神病性障害、統合失調症、低酸素性虚血、低血糖症、痙攣状態、脳損傷、ラチリズム、筋萎縮性側索硬化症、肥満症又は発作の予防及び治療ための治療キットは、本発明中で開示される薬物物質と共に:非ステロイド系抗炎症剤(Orthophene、インドメタシン、イブプロフェン等);アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(タクリン、アミリジン、Fizostigmine、アリセプト、フェンセリン等);エストロゲン(例えば、エストラジオール);NMDA−受容体アンタゴニスト(例えば、メマンチン、Neramexane);向知性剤(例えば、ピラセタム(Pyracetam)、フェニブト等);AMPA受容体修飾物質(例えば、Ampalex);カンナビノイド受容体CB−1のアンタゴニスト(例えば、リモナバン);モノアミノオキシダーゼ阻害剤MAO−B及び/又はMAO−A(例えば、ラサギリン);抗アミロイド形成剤(例えば、Tramiprosate);β−アミロイド神経毒性低下化合物(例えば、インドール−3−プロピオン酸);γ−及び/又はβ−セクレターゼ阻害剤;M1−ムスカリン受容体アゴニスト(例えば、セビメリン);金属キレート(helates)(例えば、クリオキノール);GABA(A)受容体アンタゴニスト(例えば、CGP−36742);モノクローナル抗体(例えば、バピネオズマブ);抗酸化剤;神経栄養剤(例えば、Cerebrolisine);抗鬱剤(例えば、イミプラミン、セルトラリン等)等のような他の活性成分を含むことができる。
【0066】
過体重低下及び肥満症治療のための治療キットは、本発明において開示される薬物物質と共に:食欲低下剤(例えば、Fepranon、Desopimon、Masindole)、ホルモン剤(例えば、Tireoidine)、フィブラートのような抗高脂血症手段(例えば、フェノフィブラート)、スタチン(例えば、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン及びプロブコール)、そして更に血糖降下剤(スルホニル尿素−例えば、ブタミド、グリベンクラミド;ビグアニド−例えば、ブホルミン、Metamorphine)及びカンナビノイドCB−1受容体アンタゴニスト(リモナバン)、ノルエピネフリン及びセロトニン再取込みの阻害剤(シブトラミン)、脂肪酸合成の発酵の阻害剤(オルリスタット)等のような幾つかの他の作用の機構を持つ薬物のような他の活性成分を、抗酸化剤、食品添加物等と共に含むことができる。
【0067】
本発明によれば、その病変形成がヒト及び動物におけるセロトニン5−HT受容体に関係する各種の疾病の予防及び治療のための方法は、医薬的に有効な量の少なくとも一つの一般式1、1.1、1.2、1.3の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、又は一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンである活性成分、或いはこの薬物物質を含む医薬組成物を含んでなる、医薬的に受容可能な包装に入れられた錠剤、カプセル、又は注射の形態の新規な医薬の導入からなる。
【0068】
医薬は、経口的に又は非経口的に(例えば、静脈内、皮下、腹腔内又は局所的に)導入することができる。一般式1又は2の薬物物質を含んでなる医薬組成物又は医薬の臨床投与量は:活性成分の患者の器官内の治療効率及び生体到達性、その交換及び器官からの除去の速度、並びに年齢、性別、及び患者の兆候の重篤度によって修正することができる。従って、成人のための一日の摂取量は、通常10〜500mg、好ましくは50〜300mgである。従って、上記の有効な投与量は、本発明の医薬を調製する場合に、医薬のそれぞれの投与量単位が、10〜500mgの、好ましくは50〜300mgの薬物物質を含有するように考慮されるべきである。医師又は薬剤師の指示に従って、医薬は、規定された時間にわたって数回(好ましくな1から6回)摂取することができる。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明は、以下に具体的な実施例によって記載され、これは、例示であって、本発明の範囲を制約するものではない。
実施例1. 一般式1、1.1、1.2、1.3の置換された2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン及び一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンの調製のための一般的方法。
【0070】
0.005molのアミノピラゾール3及び0.0055molの対応する一般式4のβ−ジカルボニル化合物又は一般式5のその誘導体の、5mlの酢酸又は他の適した溶媒中の混合物を、4−12時間沸騰した。冷却後、沈澱した固体を濾過して取出し、メタノール及び水で洗浄した。必要な場合、生成物を、適当な溶媒からの再結晶化、又はクロマトグラフ的精製、或いはクロマトグラフ的分離にかけた。
【0071】
表2は、一般式1、1.1、1.2、1.3の新規な2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン及び一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンの幾つかの例、これらのLCMS及びNMRデータを示す。
【0072】
【表2−1】

【0073】
【表2−2】

【0074】
【表2−3】

【0075】
実施例2. 5−HT受容体に対する一般式1及び2の化合物の拮抗性活性の決定。
一般式1及び2の化合物を、セロトニンによる5−HR受容体の活性化を防止するその能力に対して試験した。セロトニンによるその活性化が、細胞内cAMPの濃度の増加に導く、人工的に発現した5−HT受容体を伴うHEK293細胞(ヒト胎児腎臓の細胞)を使用した。細胞内cAMPの含有量は、試薬キットLANCE cAMP(PerkinElmer)を使用して、キットの製造業者によって記載された方法[http://las.perkinelmer.com/content/Manuals/MAN_LANCEcAMP384KitUser.pdf]によって決定した。
【0076】
化合物の有効性は、セロトニンによって誘導される細胞内cAMPの含有量を減少するその能力によって推定した。
表3は、機能アッセイの設定における、その中程度又は高い拮抗性活性を証明する一般式1及び2のアンタゴニストによるセロトニン5−HT受容体阻害のIC50値を示す。
【0077】
【表3】

【0078】
実施例3. セロトニン5−HT受容体への競合的結合の設定における一般式1のセロトニン5−HT受容体アンタゴニストの活性の決定。
セロトニン5−HT受容体と相互作用するその潜在的能力に対する開示された化合物のスクリーニングを、放射性リガンド結合の方法によって行った。この目的のために、膜検体を、組換えヒト5−HT受容体を発現しているHeLa細胞から、ガラスホモジナイザー中のその均質化、その後の細胞膜の、細胞核、ミトコンドリア及び細胞の残骸からの分画遠心による分離によって調製した。5−HT受容体に結合する試験された化合物の決定は、[Monsma FJ Jr,Shen Y,Ward RP,Hamblin MW and Sibley DR,Cloning and expression of a novel serotonin receptor with high affinity for tricyclic psychotropic drugs.Mol Pharmacol.43:320−327,1993]中に記載されている方法によって行った。好ましい態様において、膜標本を、放射性リガンド(1.5nMの[H]リゼルグ酸ジエチルアミド)と共に、調査される化合物を含まない、及びその存在中で、120分間37℃で、mMのトリス−HCl、pH7.4、150mMのNaCl、2mMのアスコルビン酸、0.001%のBSAからなる培地中でインキュベートした。インキュベーション後、試料を真空中でガラス繊維濾紙G/F(Millipor,USA)で濾過し、フィルターを培地の冷溶液で三回洗浄し、そして放射能をシンチレーションカウンターMicroBeta 340(PerkinElmer,USA)によって測定した。全体の結合の30%を構成する非特異的結合を、膜標本の放射性リガンドとの、5μMのセロトニン(5−HT)の存在中のインキュベーションによって決定した。メチオテピンを、正の対照として使用した。試験化合物の受容遺体への結合を、放射性リガンドを置換するその能力によって決定し、そして置換のパーセントによって表示した。置換のパーセントを以下の式:
【0079】
【化6】

【0080】
[式中:TA−は、放射性リガンドのみの存在中の全体の放射能であり、CA−は、放射性リガンド及び試験化合物の存在中の放射能であり、そしてNA−は、放射性リガンド及びセロトニン(5μM)の存在中の放射能である;]
によって計算した。
【0081】
表4は、セロトニン5−HT受容体に対するその高い活性を証明する、競合的結合の設定における幾つかの一般式1及び2のセロトニン5−HT受容体に対する試験結果を示す。
【0082】
【表4】

【0083】
表3及び4に示したデータは、一般式1及び2の化合物を、セロトニン5−HT受容体を阻害する特性を保有する生理学的に活性な化合物の特性の研究のための“分子ツール”として、そして医薬組成物及び医薬のための薬物物質として使用することができる証拠を与える。
【0084】
実施例4. 錠剤の形態の医薬の調製。
1600mgのデンプン、1600mgの粉砕ラクトース、400mgのタルク及び100mgの化合物1.2(3)を一緒に混合し、そして棒状に圧縮した。得られた棒状物を顆粒に粉砕し、そして篩を通して、14−16メッシュの顆粒を収集した。このようにして得た顆粒を、それぞれ560mgの重量の適した形態の錠剤に成形した。
【0085】
実施例5. カプセルの形態の医薬の調製。
化合物1.2(3)及びラクトース粉末を、2:1の比で注意深く混合した。得られた粉末状の混合物を、適した大きさのゼラチンカプセルに、カプセル当り300mgによって充填した。
【0086】
実施例6. 筋肉内、腹腔内又は皮下注射のための組成物の形態の医薬の調製。
500mgの化合物1.2(3)、300mgのクロロブタノール、2mlのプロピレングリコール、及び100mlの注射用水を一緒に混合した。得られた溶液を、濾過し、そして1mlのアンプルに入れ、これを密封し、そしてオートクレーブ中で滅菌した。
【0087】
実施例7. “シャトルチャンバー中のマウスの受動的回避”試験における一般式1及び2の化合物の向知性作用(スコポラミンによって妨害された記憶の高揚)。
二つの区分からなるシャトルチャンバー(Ugo Basile,Italy)を使用した。一つの区分の壁は不透明であり、一方他の区分は、透明なカバーを有していた。区分は、縦の扉によって部分的に重なることができる穴によって接続されていた。床は横方向の金属棒で作られ、それにはDC電流のパルスを与えることができた。実験は、体重20−24グラムのBALB/c系の成長したオスのマウスで行った。
【0088】
試験の一日目、訓練の30分前に、マウスにスコポラミン(0.3mg/kg)の生理学的溶液又は活性成分1.2(3)と組合わせたスコポラミンを、小腸内に注射した。それぞれのグループは、少なくとも8匹のマウスからなっていた。マウスを明区分に置き、そして暗室への最初の進入の潜伏期を記録した。次いで、縦の扉を閉じ、そしてマウスを3秒間の0.6mAのDC電流によって罰した。この後、マウスをそのホームケージに戻した。22−24時間内に、同じマウスを再びシャトルチャンバーの明区分に入れ、そしてその暗区分への最初の進入の潜伏期、明区分におけるその全滞在時間、及び暗区分への進入の回数を記録した。それぞれの監視を5分間続けた。
【0089】
試験は、日中に、ヒト可聴閾値より約70デシベル上のレベルのホワイトノイズを使用して隔離された研究室で行った。
スコポラミンは、暗区分への最初の進入の潜伏期の増加、明区分中のより長期の滞在、及び暗区分への進入回数の減少をもたらす訓練の妨害(記憶喪失)を起こす。
【0090】
スコポラミンによって妨害された記憶を高揚する活性成分1.2(3)の能力は、その向知性効果の証拠と考えられる。与えられたデータは、活性成分1.2(3)の向知性作用を確認する。
【0091】
実施例8. “シャトルチャンバー中のマウスの受動的回避”試験における一般式1及び2の化合物の向知性作用(MK−801によって妨害された記憶の高揚)。
試験を実施例7のように行った。試験の一日目、訓練の30分前に、マウスにMK−801(0.1mg/kg)の生理学的溶液を小腸内に注射した。同時に、活性成分1.2(3)と組合わせたMK−801の生理学的溶液を、マウスの独立のグループに訓練前に小腸内に注射した。
【0092】
得られた結果は、活性成分1.2(3)が向知性効果を産生する能力を証明する。
実施例9. “高架式十字迷路におけるマウスの挙動”試験における一般式1及び2の化合物の抗不安剤(精神安定剤)作用。
【0093】
迷路のそれぞれの腕の長さは、30cmであり、幅は5cmであり、そして壁の高さは15cmであった。二本の対向する腕は、両側及び端面で透明な壁によって閉鎖され、他の二本の腕は、照明され、そして開放されていた。マウスを迷路の中心に置き、そして次の5分間、開放及び閉鎖された腕への進入、及びそれぞれの種類の腕で過ごした時間を記録した。これらのデータを使用して、全ての腕への進入の全体の回数及びそこで過ごした全時間に対する開放腕への進入の回数、並びにそこで過ごした全時間との比としての開放腕に対する選好指標を計算した。マウスは、通常開放腕を避ける(選好指標は0.2及び0.3間である)。精神安定化作用を持つ化合物は、この指標を0.5−0.6、又は更に増加し、そしてマウスの全体的な運動活性(その腕へのその進入の全回数)を変化することなく排便の回数を減少した。
【0094】
得られた結果は、活性成分1.2(3)が、ブスピロン及びロラゼパンの活性に匹敵する抗不安性(精神安定化)作用を示すことを証明する。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、医学、獣医学、生化学において使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式1の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン及び以下の一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン:
【化1】

式中:
は、水素又はC−Cアルキルを表し;
は、C−Cアルキルを表し;
は、水素、一つ又は二つの所望により同一であってもよいハロゲン原子、C−Cアルキル又はC−Cアルキルで所望により置換されていてもよいヒドロキシルを表し;
nは、整数1、2又は3を表す。
【請求項2】
以下の一般式1.1の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−シクロペンタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン、以下の一般式1.2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロシクロヘキサ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン及び以下の一般式1.3の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−シクロヘプタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン:
【化2】

[式中:R、R及びRは、全て上述のとおりである]である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
以下の式:
【化3】

の2−メチルスルファニル−3−(フェニルスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−シクロペンタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.1(1)、2−メチルスルファニル−3−(3−フルオロフェニルスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−シクロペンタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.1(2)、2−メチルスルファニル−3−(3−クロロフェニルスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−シクロペンタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.1(3)、2−メチルスルファニル−3−(3−クロロ−4−フルオロフェニルスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−シクロペンタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.1(4)、2−メチルスルファニル−3−(フェニルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−シクロヘキサ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.2(1)、2−メチルスルファニル−3−(3−クロロフェニルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−シクロヘキサ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.2(2)、5−メチル−2−メチルスルファニル−3−(フェニルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−シクロヘキサ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.2(3)、5−メチル−2−メチルスルファニル−3−(3−フルオロフェニルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−シクロヘキサ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.2(4)、5−メチル−2−メチルスルファニル−3−(3−クロロフェニルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−シクロヘキサ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.2(5)、5−メチル−2−メチルスルファニル−3−(3−クロロ−4−フルオロフェニルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロ−シクロヘキサ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.2(6)、2−メチルスルファニル−3−(フェニルスルホニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−シクロヘプタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.3(1)及び2−メチルスルファニル−3−(3−クロロフェニルスルホニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−シクロヘプタ[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン1.3(2)である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
以下の一般式3の3−アミノ−4−アリールスルホニル−2H−ピラゾールの、対応する以下の一般式4のβ−ジカルボニル化合物又は以下の一般式5のその誘導体との相互作用:
【化4】

[式中:R、R及びRは、全て上記で定義したとおりである]による、その後の反応生成物の単離又は分離を伴う、請求項1−3のいずれか1項に記載の一般式1又は2の化合物の調製のための方法。
【請求項5】
請求項1−3のいずれか1項に記載の一般式1及び2の化合物である、セロトニン5−HT受容体を阻害する特性を示す生理学的に活性な化合物の特性の研究のための“分子ツール”。
【請求項6】
請求項1−3のいずれか1項に記載の、少なくとも一つの一般式1の置換された2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[e]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン又は一般式2の2−アルキルスルファニル−3−(アリールスルホニル)−シクロアルキル[d]ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンである、医薬組成物及び医薬のための薬物物質。
【請求項7】
ヒト及び温血動物のCNSの各種の症状及び疾病の予防及び治療のための、医薬的に有効な量の請求項6に記載の薬物物質を含んでなる医薬組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の薬物物質を、不活性な充填剤及び/又は希釈剤と混合することによる、請求項7に記載の医薬組成物の調製のための方法。
【請求項9】
その病変形成が、セロトニン5−HT受容体に関係するヒト及び温血動物のCNSの疾病の予防及び治療のための、有効な量の請求項6に記載の薬物物質又は請求項7に記載の医薬組成物を含んでなる、医薬的に受容可能な包装中に入れられた錠剤、カプセル、又は注射の形態の医薬。
【請求項10】
アルツハイマー病、パーキンソン及びハンチントン病の予防及び治療のための、請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
精神障害及び統合失調症の予防及び治療のための、請求項9に記載の医薬。
【請求項12】
不安障害の予防及び治療のための、請求項9に記載の医薬(抗不安剤)。
【請求項13】
精神能力亢進を含む多動障害の予防及び治療のための、請求項9に記載の医薬(向知性剤)。
【請求項14】
認知障害及び神経変性疾患の予防及び治療のための、請求項9に記載の医薬。
【請求項15】
肥満症の予防及び治療のための、請求項9に記載の医薬。
【請求項16】
その病変形成が、ヒト及び動物における5−HT受容体に関係する各種の疾病の予防及び治療のための、請求項6に記載の薬物物質、又は請求項7に記載の医薬組成物、或いは請求項9に記載の医薬を含んでなる治療キット。
【請求項17】
ヒト及び動物における神経性疾患、神経変性及び認知障害の予防及び治療のための、特にヒト及び動物におけるアルツハイマー病、パーキンソン及びハンチントン病、精神病的障害、統合失調症、低酸素性虚血、低血糖症、痙攣状態、脳損傷、ラチリズム、筋萎縮性側索硬化症、肥満症又は発作の予防及び治療のための、請求項6に記載の薬物物質、又は請求項7に記載の医薬組成物、或いは請求項9に記載の医薬を含んでなる治療キット。
【請求項18】
その病変形成が、ヒト及び動物におけるセロトニン5−HT受容体に関係する各種のCNS疾病の予防及び治療のための、有効な量の請求項6に記載の薬物物質、若しくは請求項7に記載の医薬組成物、又は請求項9に記載の医薬、或いは請求項16−17のいずれか1項に記載の治療キットの、ヒト又は動物への投与からなる方法。

【公表番号】特表2011−510064(P2011−510064A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543612(P2010−543612)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【国際出願番号】PCT/IB2009/050275
【国際公開番号】WO2009/093210
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(509277338)
【出願人】(509276582)アラ・ケム・エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】