説明

置換2−カルボキサミドシクロアミノウレア類

本発明は式(I)


〔式中、置換基は明細書に定義した通りである。〕
の化合物およびその塩、組成物、および該化合物のホスファチジルイノシトール3−キナーゼ阻害により改善する疾患の処置における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ホスファチジルイノシトール(PI)3−キナーゼ阻害剤化合物としての置換2−カルボキサミドシクロアミノウレア類、その薬学的に許容される塩、そのプロドラッグおよびその製造方法に関する。本発明はまた、これらの化合物の、単独または少なくとも1種のさらなる治療剤と組み合わせた、および場合により薬学的に許容される担体と組み合わせた組成物にも関する。本発明はなおさらに、これらの化合物の、単独でまたは少なくとも1種のさらなる治療剤と組み合わせた、多くの疾患、特に、増殖因子、受容体チロシンキナーゼ類、タンパク質セリン/ヘロインキナーゼ類、Gタンパク質共役受容体およびリン脂質キナーゼ類およびホスファターゼ類の1種以上の異常活性が仲介する疾患の予防または処置における、使用方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ類(PI3K)は、イノシトール脂質のD−3'位へのホスフェートの移動を触媒し、ホスホイノシトール−3−ホスフェート(PIP)、ホスホイノシトール−3,4−ジホスフェート(PIP)およびホスホイノシトール−3,4,5−トリホスフェート(PIP)を産生する脂質キナーゼ類のファミリーを含み、これが、プレクストリン相同性、FYVE、Phoxおよび他のリン脂質結合ドメインを含むタンパク質を、種々のシグナリング複合体に、しばしば原形質膜でドッキングさせることにより、シグナリングカスケードの二次メッセンジャーとして働く((Vanhaesebroeck et al., Annu. Rev. Biochem 70: 535 (2001); Katso et al., Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 17: 615 (2001))。クラス1PI3Kの中で、クラス1A PI3Kはp85α、p55α、p50α、p85βまたはp55γであり得る調節サブユニットと構成的に関連している触媒的p110サブユニット(α、β、δアイソフォーム)から成るヘテロ二量体である。クラス1Bサブクラスは一つのファミリーメンバーである、p101またはp84である2個の調節サブユニットの一つと関連している触媒的p110γサブユニットからなるヘテロ二量体を有する(Fruman et al., Annu Rev. Biochem. 67: 481 (1998); Suire et al., Curr. Biol. 15: 566 (2005))。p85/55/50サブユニットのモジュラードメインは、クラス1A PI3Kの活性化および局在化をもたらす、活性化受容体および細胞質チロシンキナーゼ類上の特異的配列状況中のホスホチロシン残基と結合するSrc相同性(SH2)ドメインを含む。クラス1B PI3Kはペプチドおよび非ペプチドリガンドの多様なレパートリーと結合するGタンパク質−共役受容体により直接活性化される(Stephens et al., Cell 89: 105 (1997)); Katso et al., Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 17: 615-675 (2001))。その結果、クラスI PI3Kの得られたリン脂質産物は上流受容体と、増殖、生存、走化性、細胞輸送、運動性、代謝、炎症性およびアレルギー性応答、転写および翻訳を含む下流細胞活動を関連させる(Cantley et al., Cell 64: 281 (1991); Escobedo and Williams, Nature 335: 85 (1988); Fantl et al., Cell 69: 413 (1992))。
【0003】
多くの場合、PIP2およびPIP3は、ウイルス癌遺伝子v−Aktのヒトホモログの産物であるAktを原形質膜に集め、そこで、それは増殖および生存に重要な多くの細胞内シグナリング経路の接点として働く(Fantl et al., Cell 69: 413-423(1992); Bader et al., Nature Rev. Cancer 5: 921 (2005); Vivanco and Sawyer, Nature Rev. Cancer 2: 489 (2002))。PI3Kの異常制御は、しばしばAkt活性化を介して生存を高め、ヒト癌における最も多い事象の一つであり、多くのレベルで起こることが示されている。ホスホイノシチド類をイノシトール環の3'位で脱リン酸し、そうすることによりPI3K活性に拮抗する腫瘍サプレッサー遺伝子PTENは、種々の腫瘍で機能が消失している。他の腫瘍で、p110αアイソフォーム、PIK3CA、およびAktのための遺伝子は増幅され、それらの遺伝子産物の増加したタンパク質発現が数種のヒト癌において証明されている。さらに、p85−p110複合体を上方制御するように働くp85αの変異および転座がヒト癌において報告されている。最後に、下流シグナリング経路を活性化するPIK3CAにおける体細胞性ミスセンス変異が広範なヒト癌において相当な頻度で報告されている(Kang at el., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 802 (2005); Samuels et al., Science 304: 554 (2004); Samuels et al., Cancer Cell 7: 561-573 (2005))。これらの観察は、ホスホイノシトール−3キナーゼおよびこのシグナリング経路の上流および下流要素の脱制御が、ヒト癌および増殖性疾患と関連する最も一般的な脱制御の一つであることを示す(Parsons et al., Nature 436: 792 (2005); Hennessey at el., Nature Rev. Drug Disc. 4: 988-1004 (2005))。
【0004】
上記の点から、PI3Kの阻害剤は、増殖性疾患および他の障害の処置において特定の価値がある。PI3Kαアイソフォームに対する選択性は望ましく、さらに望ましい特性は薬物動態学的特性および/または化学的安定性改善である。
【0005】
WO2004/096797はある種のチアゾール誘導体をPI3キナーゼ阻害剤として、および医薬としてのそれらの使用を開示する。
WO2005/021519もまたある種のチアゾール誘導体をPI3キナーゼ阻害剤として、および医薬としてのそれらの使用を開示する。
【0006】
本発明により、以下に示す式Iの置換2−カルボキサミドシクロアミノウレア類が有利な薬理学的特性を有し、例えば、PI3キナーゼ類(ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ)を阻害することが判明した。特に、好ましくは、これらの化合物は、生化学および/または細胞アッセイにおいて、PI3Kアルファに対する選択性を、ベータおよび/またはデルタおよび/またはガンマサブタイプに比して有する。式(I)の化合物に好ましくは望まれるさらなる特性は、安定性改善、例えば固体形態でのおよび/または緩衝液中での化学的安定性の改善を含む。それ故、式(I)の化合物は、例えば、PI3キナーゼ(特にPI3Kアルファ、例えば、PIK3CAの体細胞突然変異またはPTENの生殖系列変異もしくは体細胞突然変異を示すもの)に依存する疾患、特に腫瘍疾患および白血病のような増殖性疾患の処置に使用される。
【0007】
第一の面において、本発明は式I
【化1】

〔式中、
mは0または1であり;
nは0または1であり;
はH、ハロゲン、非置換C−C−アルキルまたは置換C−C−アルキルであり;
は独立して非置換または置換C−C−アルキル、非置換または置換C−C−アルコキシ、非置換または置換アミノ、ハロゲンまたはヒドロキシからなる群から選択され;
は独立して非置換または置換C−C−アルキル、非置換または置換C−C−アルコキシ、非置換または置換アミノ、ハロゲンまたはヒドロキシからなる群から選択され;
は独立して非置換または置換C−C−アルキル、非置換または置換C−C−アルコキシ、ハロゲンまたはヒドロキシからなる群から選択されるか;または
およびRは、それらが結合している同一または異なる炭素原子と一体となって、C−C−シクロアルキルまたはヘテロシクリルを形成し;
は非置換または置換ヘテロアリールである。〕
の化合物またはその塩、溶媒和物、水和物またはプロドラッグを提供し;かつ
化合物(1R,2S,5S)−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,3−ジカルボン酸2−アミド3−{[5−(2−tert−ブチル−ピリミジン−4−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド}を除外する。
【0008】
本発明は、以下の用語集および最後の実施例を含む、以下の記載を参照してより完全に認識できる。ここで使用する用語“含む”、“含み”および“含んで”は、その開放的な、非限定的意味で使用する。
【0009】
ここに記載するいずれかの式は、構造式により示される構造を有する化合物ならびにある種の変形または形態を表すことを意図する。特に、ここに記載するいずれかの式の化合物は不斉中心を有する可能性があり、それ故、立体異性形態、例えば異なるエナンチオマー形態で存在し得る。少なくとも1個の不斉炭素原子が式(I)の化合物に存在するならば、かかる化合物は光学活性形態または光学異性体混合物形態、例えばラセミ混合物形態で存在し得る。それ故に不斉炭素原子は(R)−、(S)−または(R,S)−立体配置、好ましくは(R)−または(S)−立体配置で存在し得る。全ての光学異性体およびそれらの混合物は、ラセミ混合物を含み、本発明の一部である。それ故に、ここに記載するいずれかの式はラセミ体、1個以上のエナンチオマー形態、1個以上のジアステレオマー形態、1個以上のアトロプ異性体形態、およびそれらの混合物を表すことを意図する。さらに、ある種の構造は、幾何異性体(例えばcisおよびtrans異性体)、互変異性体、またはアトロプ異性体として存在し得る。例えば、二重結合または環上の置換基はcis−(=Z−)またはtrans−(=E−)形態で存在し得る。本発明の化合物は、それ故に異性体混合物として、または好ましくは純粋異性体、好ましくはエナンチオマー純粋ジアステレオマーまたは純粋エナンチオマーとして存在し得る。
【0010】
ここに記載するいずれかの式は、かかる化合物の水和物、溶媒和物、および多形、およびそれらの混合物を表すことを意図する。
【0011】
ここに記載するいずれかの式はまた本化合物の非標識形態ならびに同位体標識形態を表すことも意図する。同位体標識化合物は、1個以上の原子が選択した原子質量または質量数を有する原子で置換されている以外、ここに記載した式により表される構造を有する。本発明の化合物に取り込み得る同位体の例は、水素の同位体、炭素の同位体、窒素の同位体、酸素の同位体、リンの同位体、フッ素の同位体、および塩素の同位体、例えばそれぞれH、H、11C、13C、14C、15N、31P、32P、18F、35S、36Cl、125Iを含む。種々の同位体標識本発明の化合物、例えば放射性同位体、例えばH、13C、および14Cが取り込まれているものがある。かかる同位体標識化合物は薬剤または基質組織分布アッセイを含む代謝試験(好ましくは14Cを用いる)、反応動態試験(例えばHまたはHを用いる)、検出または造影法、例えば陽電子放出断層撮影(PET)または単光子放射線コンピュータ断層撮影(SPECT)に、または患者の放射活性処置に有用である。特に、18Fまたは標識化合物は、特にPETまたはSPECT試験に好ましいことがある。さらに、重い同位体、例えば重水素(すなわち、H)での置換は、大きな代謝安定性に基づくある種の治療利益、例えばインビボ半減期の延長または必要投与量の減少をもたらし得る。同位体標識した本発明の化合物およびそのプロドラッグは、一般に、下に記載するスキームまたは実施例および製造に開示する方法を実施することにより、非同位体標識反応材を容易に入手可能な同位体標識反応材に置き換えることにより製造できる。
【0012】
さらに重い同位体、特に重水素(すなわち、HまたはD)での置換は、大きな代謝安定性に基づくある種の治療利益、例えばインビボ半減期の延長または必要投与量の減少または治療指数改善をもたらし得る。この状況での重水素は、式(I)の化合物の置換基と見なすと解釈される。かかる重い同位体、特に重水素の濃度は、同位体富化指数により定義され得る。ここで使用する用語“同位体富化指数”は、特定の同位体についての同位体量対天然での量の比を意味する。本発明の化合物における置換基が重水素と記載されているならば、かかる化合物は各指定の重水素原子について少なくとも3500(各指定の重水素原子で52.5%重水素取り込み)、少なくとも4000(60%重水素取り込み)、少なくとも4500(67.5%重水素取り込み)、少なくとも5000(75%重水素取り込み)、少なくとも5500(82.5%重水素取り込み)、少なくとも6000(90%重水素取り込み)、少なくとも6333.3(95%重水素取り込み)、少なくとも6466.7(97%重水素取り込み)、少なくとも6600(99%重水素取り込み)、または少なくとも6633.3(99.5%重水素取り込み)の同位体富化指数を有する。本発明の化合物において、特定の同位体と特定されていない全ての原子は、その原子の任意の安定な同位体を表すことを意味する。特にことわらない限り、ある位置が特に“H”または“水素”と特定されているとき、その位置は、その天然量の同位体組成で水素を有すると解釈される。したがって、本発明の化合物において、重水素(D)と特に指定されている任意の原子は、例えば、上記範囲の重水素を表すことを意味する。
【0013】
ここに記載するいずれかの式について説明するとき、特定の可変基についての可能な化学種の一覧からの特定の基の選択は、他の場所に存在する該可変基の基を規定することを意図しない。言い換えると、可変基が1回以上記載されているとき、特定した一覧からの化学種の選択は、式におけるどこかの同じ可変基の化学種の選択とは無関係である(上および下で態様における好ましいとして特徴付けられる1個所から最大全ての一般的表現をより具体的な定義に置き換え、それにより本発明のより好ましい態様をそれぞれもたらし得る)。
【0014】
複数形態(例えば化合物群、塩類、医薬製剤群、疾患群など)が使用されているとき、これは単数を含む(例えば1個の化合物、1個の塩、1個の医薬製剤、1種の疾患など)。“化合物”は(例えば医薬製剤において)1個以上の式(I)の化合物(またはその塩)が存在することを除外しない。
【0015】
塩類は、好ましくは式(I)の化合物が塩形成基を有する場合、その薬学的に許容される塩類である。塩類の形成に必要な酸/塩基は一般に当分野で既知である。
【0016】
以下の一般的定義は、特にことわらない限り、本明細書において適用すべきである:
ハロゲン(またはハロ)はフッ素、臭素、塩素またはヨウ素、特にフッ素、塩素を意味する。ハロゲン置換された基および部分、例えばハロゲンで置換されたアルキル(ハロゲンアルキル)は、一、多、または過ハロゲン化されていてよい。
【0017】
ヘテロ原子は炭素および水素以外の原子、好ましくは窒素(N)、酸素(O)または硫黄(S)、特に窒素である
【0018】
“アルキル”は、直鎖または分枝鎖アルキル基を意味し、記載するときC1−4アルキルおよびC1−8アルキルを含む。かかるアルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−またはイソ−プロピル、n−、イソ−、sec−またはtert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルを含み、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチルおよびイソ−ブチルが特に好ましい。アルキルは置換されていなくても置換されていてもよい。例示的置換基は、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン(特にフルオロ)、アミノ、モノ−またはジ−アルキル置換アミノ、アセチルアミノおよびモルホリニルを含むが、これらに限定されない。置換アルキルの例はトリフルオロメチルである。シクロアルキルもアルキルの置換基であり得る。かかる場合の例は、部分(アルキル)−シクロアルキル、例えば(アルキル)−シクロプロピルまたは(アルキル)−シクロブチル、例えばメチル−シクロプロピルまたはメチル−シクロブチルである。(アルキル)−シクロアルキル部分のより具体的な例は、ジェミナルタイプの置換パターン、例えば1−アルキルシクロアルキル、例えば1−メチルシクロプロピルを含む。アルキルの置換基としてのシクロアルキルのさらなる例はアルカンジイル−シクロアルキル、例えばアルカンジイル−シクロプロピル、例えば−CH−シクロプロピルを含む。C−C−アルキルは1〜8個(両端を含む)の炭素原子のアルキル、好ましくは1〜4個(両端を含む)の炭素原子のアルキル(C−C−アルキル)であり、直鎖または分枝鎖である;好ましくは、低級アルキルはブチル、例えばn−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、プロピル、例えばn−プロピルまたはイソプロピル、エチルまたは好ましくはメチルである。
【0019】
“アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシ−カルボニルアルキル、アルキルスルホニル、アルキルスルホキシル、アルキルアミノ、ハロゲンアルキル”のような他の基の各アルキル部分は、上に記載した“アルキル”の定義に記載したものと同じ意味を有するべきである。
【0020】
“C3−8−シクロアルキル”は、炭素環あたり3〜8環原子を有する飽和または部分的に飽和の、単環式、縮合多環式、またはスピロ多環式炭素環を意味する。シクロアルキル基の説明的例は以下の部分を含む:シクロプロピル、シクロブチル、シクロ(cycl)ペンチルおよびシクロ(cylclo)ヘキシル。シクロアルキルは置換されていなくても置換されていてもよい;例示的置換基はアルキルの定義に提供されている。
【0021】
“ヘテロシクリル”は、飽和または部分的に飽和であり、好ましくは単環式、または本発明の広い面において、二環式、三環式またはスピロ環式環であり;3〜24個、より好ましくは4〜16個、最も好ましくは5〜10個および最も好ましくは5または6個の環原子を有し;ここで、1個以上、好ましくは1〜4個、特に1個または2個の炭素環原子がヘテロ原子に置き換わっており、結合する環は、好ましくは4〜12個、特に5〜7個の環原子を有する、ヘテロ環基を意味する。ヘテロ環基(ヘテロシクリル)は、置換されていなくても、アルキルからなる群から、または置換アルキルについて上に定義した置換基および/または以下の置換基の1個以上から独立して選択される1個以上、特に1〜3個の置換基で置換されていてもよい:オキソ(=O)、チオカルボニル(=S)、イミノ(=NH)、イミノ−低級アルキル。さらに、ヘテロシクリルは、特にオキシラニル、アジリジニル、1,2−オキサチオラニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、ピロリニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、(S−オキソまたはS,S−ジオキソ)−チオモルホリニル、アゼパニル、ジアゼパニル、特に1,4−ジアゼパニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、デカヒドロキノリル、オクタヒドロイソキノリル、イソクロマニル、クロマニルおよび2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イルからなる群から選択されるヘテロシクリル基であり、これらの基の各々は非置換であるか、または上に記載したものおよび/または以下の置換基の1個以上から選択される1個以上、好ましくは3個までの置換基で置換されている:オキソ(=O)、チオカルボニル(=S)、イミノ(=NH)、イミノ−低級アルキル。
【0022】
“ヘテロアリール”は、不飽和(特に最大に不飽和、例えば、環内に可能な最大数の共役二重結合を担持する)であり、好ましくは単環式または本発明の広い面において二環式または三環式環であり;3〜24個、より好ましくは4〜16個、最も好ましくは5〜10個および最も好ましくは5個または6個の環原子を有し;ここで、1個以上、好ましくは1〜4個、特に1個または2個の環原子がヘテロ原子であり、結合している環(すなわち残りの分子に結合している環)は好ましくは4〜12個、特に5〜7個の環原子を有するヘテロ環基である。ヘテロアリール基は、置換されていなくても、アルキルからなる群から、または置換アルキルについて上に定義した置換基および/または以下:オキソ(=O)、チオカルボニル(=S)、イミノ(=NH)、イミノ−低級アルキルの置換基の1個以上から独立して選択される1個以上、特に1〜3個の置換基で置換されていてもよく、そして、窒素含有ヘテロアリール類について、そのN−オキシド類を含む。さらに、ヘテロアリールは、特にアジリニル、チエニル(=チオフェニル)、フラニル、ピラニル、チオピラニル、チアンスレニル、イソベンゾフラニル、ベンゾフラニル、クロメニル、2H−ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、イミダゾリジニル、ベンゾイミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピラゾリジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、ジチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドーリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、クマリル、インダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、ジベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリル、キナゾリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、ベータ−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フラザニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、クロメニルおよびベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルからなる群から選択されるヘテロアリール基であり、これらの基の各々は、非置換であるか、または上のアリールについて記載した置換基アリールおよび/または以下:オキソ(=O)、チオカルボニル(=S)、イミノ(=NH)、イミノ−低級アルキルの1個以上から選択される1個以上、好ましくは最大3個までの置換基で置換されていてよく、窒素含有ヘテロアリール類について、そのN−オキシド類を含む。
【0023】
“処置”は予防(防止)および治療的処置ならびに疾患または障害の進行遅延を含む。
【0024】
“PI3キナーゼ仲介疾患”(特にPI3Kアルファ仲介疾患)は、特に有益な方法(例えば1種以上の症状の改善、疾患発症治験、築環の一時的または完全な治癒)でPI3キナーゼ阻害、特にPI3Kアルファ阻害に応答するこのような障害である(ここで、処置すべき疾患は、PIK3CAの体細胞突然変異またはPTENの生殖系列変異または体細胞突然変異を示すものを含み得る)。処置すべき疾患は、特に増殖性疾患、例えば固形腫瘍、白血病、神経膠芽腫を含む腫瘍疾患を含む(乳癌および前立腺癌を特記し得る)。
【0025】
“塩”(これは、“またはその塩類”または“またはその塩”により意味されるもの)は、単独で、または式Iの遊離化合物との混合物で存在してよく、好ましくは薬学的に許容される塩である。式(I)の化合物中の塩形成基は、塩基性または酸性特性を有する基またはラジカルである。少なくとも1個の塩基性基または少なくとも1個の塩基性ラジカル、例えば、アミノ;ペプチド結合を形成しない二級アミノ基またはピリジル基は、酸付加塩を、例えば、無機酸類、例えば塩酸、硫酸またはリン酸;または適当な有機カルボン酸またはスルホン酸、例えば、脂肪族モノ−またはジ−カルボン酸類、例えばトリフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸またはシュウ酸;またはアミノ酸類、例えばアルギニンまたはリシン;芳香族性カルボン酸類、例えば安息香酸;2−フェノキシ−安息香酸;2−アセトキシ−安息香酸;サリチル酸;4−アミノサリチル酸;芳香族性−脂肪族カルボン酸類、例えばマンデル酸または桂皮酸;ヘテロ芳香族性カルボン酸類、例えばニコチン酸またはイソニコチン酸;脂肪族スルホン酸類、例えばメタン−、エタン−または2−ヒドロキシエタンスルホン酸;または芳香族性スルホン酸類、例えば、ベンゼン−、p−トルエン−またはナフタレン−2−スルホン酸と形成し得る。数個の塩基性基が存在するとき、単または多酸付加塩が形成され得る。
【0026】
酸性基、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基を有する式(I)の化合物は、金属塩またはアンモニウム塩、例えばアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩またはカルシウム塩;またはアンモニアまたは適当な有機アミン類、例えば3級モノアミン類、例えば、トリエチルアミンまたはトリ(2−ヒドロキシエチル)−アミン、またはヘテロ環式塩基、例えば、N−エチル−ピペリジンまたはN,N'−ジメチルピペラジンとのアンモニウム塩を形成し得る。塩の混合物が可能である。
酸性基および塩基性基の両方を有する式(I)の化合物は分子内塩を形成できる。
【0027】
単離または精製目的で、薬学的に許容されない塩類、例えばピクリン酸塩または過塩素酸塩を使用することも可能である。治療使用のために、薬学的に許容される塩類または遊離化合物のみが使用され(適用可能であれば医薬製剤の形で)、それ故にこれらが好ましい。遊離形および中間体として、例えば、新規化合物の精製または同定において使用できる塩を含むその塩の形の新規化合物の密接な関係の点から、上におよび下における遊離化合物の記載は、適当であり、好都合である限り、その対応する塩もまた言うと解釈すべきである。
【0028】
本発明の化合物はまた溶媒和物および水和物も形成でき、そのようなものとして、適当であり、好都合である限り、式(I)の化合物の記載はまた対応する式(I)の化合物の溶媒和物および/または水和物も言うと解釈すべきである。
【0029】
本発明はまたインビボで式(I)の化合物自体に変換する式(I)の化合物のプロドラッグにも関する。それ故に、式(I)の化合物についての記載は、適当であり、好都合である限り、対応する式(I)の化合物のプロドラッグも言うと解釈すべきである。
【0030】
組合せは、一つの投与単位形態の固定された組合せ、または式(I)の化合物および組合せ相手(例えば以下に説明し、“治療剤”または“併用剤”と呼ぶ他の薬剤)を、独立して同時にまたは別々に、一定間隔で、特に、複数組合せパートナーが協調的、例えば相乗効果を示す間隔で投与してよい組合せ投与のためのキット・オブ・パーツを意味する用語“共投与”または“組合せ投与”またはここで使用する類似のものは、選択した組合せパートナーのそれを必要とする一対象(例えば患者)への投与を意味し、複数薬剤が必ずしも同一投与経路でまたは同時に投与されるものではない処置レジメンを含むことを意図する。ここで使用する用語“医薬組合せ剤”は、1種を超える有効成分の混合または組合せに由来する製品を意味し、複数有効成分の固定されたおよび固定されていない組合せの両方を含む。用語“固定された組合せ”は、複数有効成分、例えば式(I)の化合物と組合せパートナーを両方とも患者に同時に一つのものまたは投与量の形態で投与することを意味する。用語“固定されていない組合せ”は、複数有効成分、例えば式(I)の化合物と組合せパートナーを両方とも別々のものとして、同時に、一緒にまたは逐次的に特定の時間制限なく一患者に投与することを意味し、ここで、かかる投与が患者体内で2化合物の治療有効レベルを提供する。後者はまたカクテル療法、例えば、3種以上の有効成分の投与にも適用される。
【0031】
好ましい態様において、それは、独立して、集合的に、または任意の組合せもしくは下位の組み合わせで好ましいが、本発明は、遊離塩基形または塩形の式(I)の化合物に関し、ここで、置換基はここに定義する通りである。
【0032】
式Iに示す通り、アルファ−アミド置換基はピロリジン環上の2位であり、立体化学は記載する通りであり、R置換基はピロリジン環の3位であり、各置換基は互いにcis−である定義された立体化学を有する。
【0033】
は好ましくはC−C−アルキル、最も好ましくはメチルである。
は好ましくはC−C−アルキル、C−C−アルコキシ、ジ−C−C−アルキル−アミノ、ハロゲンまたはヒドロキシである。
はより好ましくはメチル、メトキシ、ジメチルアミノ、フルオロまたはヒドロキシである。
はさらに好ましくはメトキシ、ジメチルアミノ、フルオロまたはヒドロキシである。
【0034】
は好ましくはC−C−アルキル、C−C−アルコキシ、ジ−C−C−アルキル−アミノ、ハロゲンまたはヒドロキシである。
はより好ましくはメチル、メトキシ、ジメチルアミノ、フルオロまたはヒドロキシである。
はさらに好ましくはメチル、メトキシ、ジメチルアミノ、フルオロまたはヒドロキシである。
【0035】
存在するとき(すなわちm=1および/またはn=1)、RまたはR基は式Iのピロリジン環の2位および/または3位および/または4位および/または5位に結合し得る。最も好ましくは、RまたはR基はピロリジン環の3位に、すなわちR基で同時に置換されている同じ炭素に結合する。
【0036】
は好ましくはヒドロキシ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシで置換されたC−C−アルキル、非置換または置換アミノ、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールである。
はより好ましくはヒドロキシ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシで置換されたC−C−アルキル、ジ−C−C−アルキル−アミノ、アセチルアミノ、モルホリニルまたはピリジルである。
【0037】
はより好ましくはヒドロキシ、メチル、C−C−アルコキシで置換されたメチル、ジ−C−C−アルキル−アミノ、アセチルアミノ、モルホリニルまたはピリジルである。
は最も好ましくはヒドロキシ、メチル、メトキシメチル、ジメチルアミノ−メチル、アセチルアミノ−メチル、モルホリン−4−イルメチルまたはピリジル−メチルである。
【0038】
上に記載する通り、RおよびRは、それらが結合している同一または異なる炭素原子と一体となって、C−C−シクロアルキルまたはヘテロシクリルを形成し得る式(I)の化合物が提供され、化合物(1R,2S,5S)−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,3−ジカルボン酸2−アミド3−{[5−(2−tert−ブチル−ピリミジン−4−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド}が除外される。
【0039】
式(I)の化合物は、置換基が式(I)の化合物について定義したもの、および
が独立して非置換または置換C−C−アルキル、非置換または置換C−C−アルコキシ、ハロゲンまたはヒドロキシからなる群から選択されるもの;または
およびRが、それらが結合している同じ炭素原子と一体となって、C−C−シクロアルキルを形成するもの;または
およびRが、それらが結合している同一または異なる炭素原子と一体となって、ヘテロシクリルを形成するものを含む。
【0040】
さらに、別に、式(I)の化合物は、置換基が式(I)の化合物について定義したもの、および
が非置換または置換C−C−アルキル、非置換または置換C−C−アルコキシ、ハロゲンまたはヒドロキシからなる群から選択される;または
およびRが、それらが結合している同じ炭素原子と一体となって、C−C−シクロアルキルまたはヘテロシクリル(好ましくはシクロアルキル)を形成するものを含む。
【0041】
それ故に、RおよびRがC−C−シクロアルキル(好ましい)またはヘテロシクリルを形成するとき、R基がピロリジン環の3位に、すなわちR基で同時に置換されている同じ炭素に結合しているのが好ましい。
【0042】
上に記載する、Rは非置換であるか、または好ましくは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、C−C−アルキル、過重水素化C−C−アルキル、C−C12−シクロアルキル、(C−C−アルキル)−C−C12−シクロアルキル、(ハロ−C−C−アルキル)−C−C12−シクロアルキル、アミノ−C−C−アルキル、ハロ−C−C−アルキル、N−C−C−アルカノイルアミノ−C−C−アルキル、N−C−C−アルカンスルホニル−アミノ−C−C−アルキル、ピロリジノ−C−C−アルキル、オキソ−ピロリジノ−C−C−アルキル、C−C−アルカンスルフィニル、C−C−アルカンスルホニル、C−C−アルコキシ、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−(C−C−アルキル)−アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−(過重水素化C−C−アルキル)−アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−(C−C−シクロアルキル)−アミノC−C−アルカノイルアミノ、ピロリジノ、オキソ−ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジン−1−イル、4−(C−C−アルキル、C−C−アルコキシ−C−C−アルキル、ハロ−C−C−アルキルまたはC−C10−シクロアルキル)−ピペラジン−1−イル、4−(アミノ−C−C−アルキル)−ピペラジン−1−イル、4−[N−モノ−またはN,N−ジ−(C−C−アルキルアミノ)−C−C−アルキル]−ピペラジン−1−イル、モルホリノ、チオモルホリノ、S−オキソ−またはS,S−ジオキソチオモルホリノ、C−C−アルカンスルホニルアミノ、カルバモイル、N−モノ−またはN,N−ジ−(C−C−アルキル、C−C−アルコキシ−C−C−アルキル、アミノ−C−C−アルキルおよび/または(N'−モノ−またはN',N'−ジ−(C−C−アルキル)−アミノ−C−C−アルキル)−カルバモイル、ピロリジン−1−カルボニル、ピペリジン−1−カルボニル、ピペラジン−1−カルボニル、4−(C−C−アルキル)ピペラジン−1−カルボニル、モルホリン−1−カルボニル、チオモルホリン−1−カルボニル、S−オキソ−またはS,S−ジオキソチオモルホリン−1−カルボニル、スルホ、C−C−アルカンスルホニル、C−C−アルカンスルフィニル、スルファモイル、N−モノ−またはN,N−ジ−(C−C−アルキル)−スルファモイル、モルホリノスルホニル、チオモルホリノスルホニル、チアゾリルからなる群から選択される1個以上、好ましくは1個の基で置換されている置換ヘテロアリールである。
【0043】
はより好ましくは非置換ヘテロアリールまたはC−C−アルキル(特にtert.−ブチル)、過重水素化C−C−アルキル(特にd−tert−ブチル)、ハロ−C−C−アルキル(特に1−フルオロ−1−メチル−エチル、2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)、1−(C−C−アルキル)−C−C−シクロアルキル(特に1−メチル−シクロプロピル)、(ハロ−C−C−アルキル)−C−C−シクロアルキル(特に1−トリフルオロメチル−シクロプロピル)、ジ−C−C−アルキルアミノ(特にジエチルアミノ)、ジ−(過重水素化C−C−アルキル)アミノ(特にd10−ジエチルアミノ)からなる群から選択される1個の置換基で置換されているヘテロアリールである。
【0044】
はより好ましくはピリジル(特に4−ピリジル)、ピリミジニル(特に4−ピリミジニル)、ピラジニル(特に2−ピラジニル)およびチアゾリル(特にチアゾール−4−イル)からなる群から選択されるヘテロアリールであり、
ここで、該置換基はC−C−アルキル(特にtert.−ブチル)、過重水素化C−C−アルキル(特にd−tert−ブチル)、ハロ−C−C−アルキル(特に1−フルオロ−1−メチル−エチル、2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)、1−(C−C−アルキル)−C−C−シクロアルキル(特に1−メチル−シクロプロピル)、(ハロ−C−C−アルキル)−C−C−シクロアルキル(特に1−トリフルオロメチル−シクロプロピル)、ジ−C−C−アルキルアミノ(特にジエチルアミノ)、ジ−(過重水素化C−C−アルキル)アミノ(特にd10−ジエチルアミノ)からなる群から選択される。
【0045】
は、非常に好ましくは2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル、2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル、2−(1−フルオロ−1−メチル−エチル)−ピリミジン−4−イル、2−(1−(トリフルオロメチル)シクロプロピル)チアゾール−4−イル、2−d−tert−ブチル−ピリミジン−4−イル、6−tert−ブチル−ピラジン−2−イルからなる群から選択されるヘテロアリールである。
【0046】
は、非常に好ましくは、他の態様において、2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル、2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル、2−(1−フルオロ−1−メチル−エチル)−ピリミジン−4−イル、2−(1−(トリフルオロメチル)シクロプロピル)チアゾール−4−イル、2−d−tert−ブチル−ピリミジン−4−イル、6−tert−ブチル−ピラジン−2−イル、2−tert−ブチル−ピリジン−4−イルからなる群から選択されるヘテロアリールである。
【0047】
が少なくとも1個の置換基(上に定義した通り)で置換された置換ピリジル、例えば4−ピリジルであるとき、該置換基は少なくともピリジル基の2位にあるのが好ましい。
【0048】
が少なくとも1個の置換基(上に定義した通り)で置換された置換ピリミジニル、例えば4−ピリミジニルであるとき、該置換基は少なくともピリミジニル基の2位にあるのが好ましい。
【0049】
が少なくとも1個の置換基(上に定義した通り)で置換された置換ピラジニル、例えば2−ピラジニであるとき、該置換基は少なくともピラジニル基の6位にあるのが好ましい。
【0050】
が少なくとも1個の置換基(上に定義した通り)で置換された置換チアゾール、例えばチアゾール−4−イルであるとき、該置換基は少なくとも少なくともチアゾール基の2位にあるのが好ましい。
【0051】
本発明の一態様は、mおよび/またはnが0である式(I)の化合物を含む。
本発明の他の態様は、mおよびnが両方とも0である、すなわち、ピロリジン環が2位をアミドでおよび3位をR基でのみ置換されている式(I)の化合物、すなわち式(IA):
【化2】

〔式中、置換基は式(I)の化合物について定義した通りである。〕
の化合物を含む。
【0052】
本発明のさらなる態様は、mが0または1であり、nが1である式(I)の化合物を含む。この態様において、Rがピロリジン環の3位で結合している、すなわち式(IB):
【化3】

〔式中、置換基は式(I)の化合物について定義した通りである。〕
の化合物を提供するのが好ましい。
【0053】
式(IB)の化合物において、mが1である(すなわちRが存在する)とき、R基は好ましくはピロリジン環の4位または5位(好ましくは4位)に結合し、そうして式(IB'):
【化4】

の化合物を提供する。
【0054】
式IBまたはIB'において、好ましくは、RはC−C−アルキル、最も好ましくはメチルである。
【0055】
本発明のさらなる態様はmが0または1であり、nが1であり、Rがピロリジン環の3位に結合し、Rと一体となってC−C−シクロアルキルまたはヘテロシクリル、好ましくはC−C−シクロアルキル、特にシクロプロピルを形成する、すなわち式(IC)の化合物:
【化5】

〔式中、置換基は式(I)の化合物について定義した通りである。〕
を提供する、式(I)の化合物を含む。
【0056】
式(IC)の化合物において、mが1である(すなわちRが存在する)とき、R基は好ましくはピロリジン環の4位または5位(好ましくは4位)に結合する。
【0057】
本発明は、さらに式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグに関する。
本発明はさらに式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物の薬学的に許容される代謝物に関する。
【0058】
本発明は特に実施例に示した式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物、ならびにここに記載する製造方法に関する。
【0059】
本発明はまた式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物の製造方法にも関する。原則として2種のアミン類を対応するウレア誘導体に変換する全ての既知方法が適し、各出発物質を使用して適用され得る。
【0060】
それ故に、本発明は特に式(II)
【化6】

〔式中、置換基は上で定義した通りである。〕
の化合物と、式(IIIA)
【化7】

〔式中、置換基は上で定義した通りである。〕
の化合物を活性化剤の存在下で反応させるか(“方法A”)または式(IIIB)
【化8】

〔式中、Rは上に定義した通りであり;RGは反応性基(例えばイミダゾリルカルボニル)である。〕
の化合物と反応させ(“方法B”)、
いずれの場合も、場合により希釈剤の存在下、そして場合により反応助剤の存在下であり、そして
得られた式(II)の化合物を遊離形または塩の形で回収し、そして、
場合により方法Aまたは方法Bに従い得られた式(I)の化合物を異なる式(I)の化合物に変換し、および/または得られる式(I)の化合物の塩を異なるその塩に変換し、および/または得られる遊離の式(I)の化合物をその塩に変換し、および/または得られる式(I)の化合物の異性体を、1種以上の異なる得られる式(I)の異性体から分離することを含む、方法に関する。
【0061】
反応条件
本方法は当業者に既知の方法に従い、または下の実施例に記載の通りに行い得る。例えば式(II)の化合物を、式(IIIA)または(IIIB)の化合物と、溶媒、例えばジメチルホルムアミド中、塩基、例えば有機アミン、例えばトリエチルアミン存在下で反応させ得る。
【0062】
上または下において温度が記載されているとき、記載した数値からの僅かな逸脱、例えば、±10%の逸脱が一般的に耐容性であるため、“約”を付けるべきである。
【0063】
全ての反応は1種以上の希釈剤および/または溶媒の存在下で行い得る。出発物質は当モル量で使用してよい;あるいは、ある化合物を、例えば、溶媒として機能させるため、または平衡をシフトさせるため、または一般に反応速度を上げるために過剰で使用してよい。
【0064】
反応助剤、例えば酸類、塩基または触媒を、当分野で既知の通り、反応に必要な適当な量で、および一般的に既知の方法に従い、添加してよい。
【0065】
保護基
1個以上の他の官能基、例えばカルボキシ、ヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリルなどがここに記載されている出発物質においてまたは何らかの他の前駆体において、反応に参加すべきではないかまたは反応を妨害するために保護されているか、または保護する必要があるならば、これらは通常ペプチド化合物、およびまたセファロスポリンおよびペニシリン類、ならびに核酸誘導体および糖類の合成において使用されているこのような基である。保護基は一度除去されたら最終化合物にはもはや存在しない基であり、置換基として残る基は、ここで使用する意味では、出発物質または中間体段階で添加し、最終化合物を得るために除去される保護基ではない。ある式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物から異なる式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物への変換の場合、保護基を、有用であるか必要であるならば、導入し、除去してよい。
【0066】
保護基は前駆体に既に存在してよく、意図する官能基を望まない二次反応、例えばアシル化、エーテル化、エステル化、酸化、加溶媒分解、および類似反応から保護しなければならない。それ自体容易に、すなわち望まない二次反応なしに、典型的にアセトリシス、プロトノリシス、加溶媒分解、還元、光分解または酵素活性によっても、例えば生理学的条件に準ずる条件下除去され、最終産物に存在しないのが保護基の特徴である。専門家は、どの保護基が上におよび下に記載する反応に適当であるか知っているか、または容易に決定できる。
【0067】
かかる保護基によるかかる官能基の保護、保護基自体およびそれらの除去反応は、例えば標準参考書、例えばJ. F. W. McOmie, “Protective Groups in Organic Chemistry”, Plenum Press, London and New York 1973, in T. W. Greene, “Protective Groups in Organic Synthesis”, Third edition, Wiley, New York 1999, in “The Peptides”; Volume 3 (editors: E. Gross and J. Meienhofer), Academic Press, London and New York 1981, in “Methoden der organischen Chemie” (Methods of organic chemistry), Houben Weyl, 4th edition, Volume 15/I, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974, in H.-D. Jakubke and H. Jescheit, “Aminosaeuren, Peptide, Proteine” (Amino acids, peptides, proteins), Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield Beach, and Basel 1982, およびJochen Lehmann, “Chemie der Kohlenhydrate: Monosaccharide und Derivate” (Chemistry of carbohydrates: monosaccharides and derivatives), Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974に記載されている。
【0068】
場合により行う反応および変換
式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物を異なる式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物に変換してよい。
【0069】
置換基がアミノまたはアミノ−C−C−アルキル置換基を担持する式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物において、該アミノをアシルアミノ、例えばC−C−アルカノイルアミノに、対応するC−C−アルカノイルハロゲニド、例えば対応するクロライドと、3級窒素塩基、例えばトリエチルアミンまたはピリジンの存在下、適当な溶媒、例えば塩化メチレンの非存在下または存在下、例えば、−20〜50℃の範囲の温度で、例えばおおよそ室温で反応させることにより変換できる。
【0070】
塩形成基を有する式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物の塩は、それ自体既知の方法で製造できる。式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物の酸付加塩は、故に、酸または適当なアニオン交換試薬での処理により得ることができる。2酸分子を有する塩(例えば式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物のジハロゲニド)もまた化合物あたり1酸分子の塩に変換してよい(例えばモノハロゲニド);これは、融解まで加熱することにより、または例えば固体として高真空下、高温で、例えば、130〜170℃で加熱することにより、酸の1分子を式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物の1分子から除去することにより行い得る。塩は通常、例えば、適当な塩基性化合物、例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩またはアルカリ金属水酸化物、典型的には炭酸カリウムまたは水酸化ナトリウムで処理することにより遊離化合物に変換できる。
【0071】
立体異性混合物、例えばジアステレオマー混合物を、適当な分離法の手段によるそれ自体既知の方法により対応する異性体に分離してよい。ジアステレオマー混合物は、例えば、その個々のジアステレオマーに分別結晶、クロマトグラフィー、溶媒分配および類似の方法の手段により分離できる。この分離は、出発化合物または式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物自体のレベルで行い得る。エナンチオマーは、例えば、エナンチオマー純粋キラル酸との塩形成によるジアステレオマー塩の形成を介して、または、キラルリンガンドのクロマトグラフィー支持体を使用するクロマトグラフィー、例えばHPLCにより分離できる。
【0072】
ここに記載する慣用法に準じる反応はまた適当な中間体のレベルでも行い得ることは注意すべきである(そしてそれ故に対応する出発物質の製造に有用である)。
【0073】
出発物質:
式(II)および(III)の出発物質ならびにここに、例えば下に記載する他の出発物質は当分野で既知の方法に従い、またはそれに準じて製造でき、当分野で既知でありおよび/または市販されている。出発物質の製造が特に記載されていない限り、該化合物は既知であるか、または文献において、例えばWO05/021519またはWO04/096797において既知の方法に準じて、または、下に記載するとおり製造できる。新規出発物質、ならびにその製造方法は同様に本発明の一態様である。好ましい態様において、かかる出発物質は、好ましい化合物が得られるように使用し、反応を選択する。
【0074】
適当であり、好都合である限り、塩としても使用できおよび/または得られる出発物質(中間体を含む)において、置換基は、好ましくは式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物において定義した通りである。
【0075】
医薬組成物、使用および処置方法
本発明はまたここに開示する式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物の医薬としての使用にも関する。本発明は一態様において、例えば、PI3K阻害が支持される、ヒトまたは獣医使用のための、式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物を含む組成物を含む。
【0076】
一態様において、本発明は、例えばPI3Kが仲介する、細胞増殖性疾患、例えば腫瘍(良性または悪性)および/または癌細胞増殖の処置に関する。疾患は、PIK3CAの体細胞突然変異またはPTENの生殖系列変異もしくは体細胞突然変異を示すものを含み得る。特に、本化合物は、例えば、肉腫;肺;気管支;前立腺;乳房(孤発性乳癌およびカウデン病罹患者を含む);膵臓;消化器癌;結腸;直腸;結腸癌;結腸直腸腺腫;甲状腺;肝臓;肝内胆管;肝細胞;副腎;胃;胃の;神経膠腫;神経膠芽腫;子宮内膜;黒色腫;腎臓;腎盂;膀胱;子宮体;子宮頸;膣;卵巣;多発性骨髄腫;食道;白血病;急性骨髄性白血病;慢性骨髄性白血病;リンパ性白血病;骨髄性白血病;脳;口腔および咽頭;喉頭;小腸;非ホジキンリンパ腫;黒色腫;絨毛結腸腺腫;新生物;上皮特性の新生物;リンパ腫;乳癌腫;基底細胞癌腫;扁平上皮細胞癌腫;光線性角化症;固形腫瘍を含む腫瘍疾患;頭頚部の腫瘍;真性多血症;本態性血小板血症;および骨髄異型を伴う骨髄線維症を含む、ヒトまたは動物(例えばマウス)癌の処置に有用であり得る。
【0077】
他の態様において、状態または障害(例えばPI3K仲介)は:上皮過増殖、前立腺肥大、新生物、上皮特性の新生物、カウデン症候群、レルミッテ・デュドス疾患またはバナヤン・ゾナナ症候群、喘息、COPD、ARDS、レフレル症候群、好酸球性肺炎、寄生虫(特に後生動物)感染(熱帯好酸球増加症を含む)、気管支肺アスペルギルス症、結節性多発性動脈炎(チャーグ・ストラウス症候群を含む)、好酸球性肉芽腫、薬剤応答により誘発される気道に影響する好酸球関連障害、乾癬、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、多形性紅斑、疱疹状皮膚炎、強皮症、白斑症、過敏性血管炎、蕁麻疹、類天疱瘡、エリテマトーデス、天疱瘡、後天性表皮水疱症、自己免疫性血液学的障害(例えば溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球癆(pure red cell anaemia)および特発性血小板減少症)、全身性エリテマトーデス、多発性軟骨炎、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、スティーブン−ジョンソン症候群、特発性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患(例えば潰瘍性大腸炎およびクローン病)、内分泌眼疾患、グレーブス病、サルコイドーシス、肺胞炎、慢性過敏性肺炎、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、ブドウ膜炎(前部および後部)、間質性肺線維症、乾癬性関節炎、糸球体腎炎、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、深部静脈血栓症、卒中、心筋梗塞、不安定狭心症、血栓塞栓症、肺塞栓症、血栓溶解疾患、急性動脈性虚血、末梢血栓性閉塞、および冠動脈疾患、再灌流傷害、網膜症、例えば糖尿病性網膜症または高圧酸素誘発網膜症、および眼内圧上昇または眼性水性体液の分泌の増加により特徴付けられる状態、例えば緑内障からなる群から選択される。
【0078】
上記使用のために、必要投与量は当然、投与方式、処置する特定の状態および望む効果により変わる。一般に、満足いく結果が、約0.03〜10.0mg/体重kgの1日投与量で前進的に得られることが示される。大型哺乳動物、例えばヒトに支持される1日量は約0.5mg〜約1gの範囲であり、簡便には、例えば、1日4回までに分割して、または持続形態で投与する。経口投与のための単位投与形態は約0.1〜500mg活性成分を含む。
【0079】
式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物を、任意の慣用の経路で、特に経腸的に、例えば経口で、例えば、錠剤またはカプセル剤の形態で、または非経腸的に、例えば注射可能溶液または懸濁液の形態で、局所的に、例えば、ローション、ゲル、軟膏またはクリームの形態で、吸入により、経鼻的にまたは坐薬形態で投与してよい。
【0080】
式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物を遊離形で、または例えば上に示す薬学的に許容される塩形態で投与してよい。かかる塩は、慣用法で製造でき、遊離化合物と同程度の活性を示す。
【0081】
結果として、本発明はまた次のものを提供する:
・PI3、例えばPI3キナーゼアルファ酵素の活性化が仲介する状態、障害または疾患、例えば上に示す疾患の、処置を必要とする対象における処置方法であって、該対象に有効量の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法。
・遊離形または薬学的に許容される塩形態の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物の、例えば、ここに記載する方法のいずれかにおける、医薬としての使用。
例えば、ここに示す方法のいずれかにおける医薬として使用するための、特に、1種以上のホスファチジルイノシトール3−キナーゼ介在疾患において使用するための、・遊離形または薬学的に許容される塩形態の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物。
・ここに示すいずれかの方法における、特に、1種以上のホスファチジルイノシトール3−キナーゼ仲介疾患の処置のための、遊離形または薬学的に許容される塩形態の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物の使用。
・ここに示す方法におずれかにおける、特に、1種以上のホスファチジルイノシトール3−キナーゼ仲介疾患の処置用医薬の製造のための、遊離形または薬学的に許容される塩形態の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物の使用。
【0082】
PI3Kは並行したシグナリング経路を統合する二次メッセンジャー結節として働き、PI3K阻害剤と他の経路の阻害剤の組合せがヒトにおける癌および増殖性疾患の処置に有用であるとの証拠が増えている。
【0083】
ヒト乳癌の約20−30%がトラスツマブの標的であるHer−2/neu−ErbB2を過発現する。トラスツマブはHer2/neu−ErbB2を発現する患者の幾分かでの永続的な応答が証明されているが、これらの患者のサブセットのみが応答する。最近の仕事は、この限界がある応答率はトラスツマブとPI3Kの阻害剤またはPI3K/AKT経路の組合せにより相当改善できることが示されている(Chan et al., Breast Can. Res. Treat. 91: 187 (2005), Woods Ignatoski et al., Brit. J. Cancer 82: 666 (2000), Nagata et al., Cancer Cell 6: 117 (2004))。
【0084】
多様なヒト悪性腫瘍が活性化変異したまたは増加したレベルのHer1/EGFRを発現し、そして多くの抗体および小分子阻害剤が、タルセバ、ゲフィチニブおよびアービタックスを含み、この受容体チロシンキナーゼに対して開発されている。しかしながら、EGFR阻害剤はある種のヒト腫瘍(例えば、NSCLC)で抗腫瘍活性が証明されているものの、EGFR発現腫瘍を有する全患者の全体的患者生存を増加しない。これは、PI3K/Akt経路を含む、Her1/EGFRの多くの下流標的が、多くの悪性腫瘍で高頻度で変異または脱制御されているとの事実により説明され得る。例えば、ゲフィチニブはインビトロアッセイで腺癌細胞株の増殖を阻害する。それにも係わらず、これらのゲフィチニブに対する耐性細胞株のサブクローンが選択でき、PI3/Akt経路の活性上昇を証明する。この経路の下方制御または阻害は、耐性サブクローンをゲフィチニブ感受性とする(Kokubo et al., Brit. J. Cancer 92: 1711 (2005))。さらに、PTEN変異を有し、EGFRを過発現する細胞株の乳癌のインビトロモデルにおいて、PI3K/Akt経路およびEGFR両方の阻害は相乗作用を生じる(She et al., Cancer Cell 8: 287-297(2005))。これらの結果は、ゲフィチニブとPI3K/Akt経路阻害剤の組合せが、癌における魅力的な治療標的であることを示す。
【0085】
AEE778(Her−2/neu/ErbB2、VEGFRおよびEGFRの阻害剤)とRAD001(Aktの下流標的であるmTORの阻害剤)の組合せは、神経膠芽腫異種移植モデルにおいていずれかの薬剤単独よりも大きな併用効果を生じる(Goudar et al., Mol. Cancer. Ther. 4: 101-112 (2005))。
【0086】
抗エストロゲン類、例えばタモキシフェンは、細胞サイクル阻害剤p27Kipの作用を必要とする細胞サイクル停止の誘発を介して乳癌増殖を阻害する。最近、Ras−Raf−MAPキナーゼ経路活性化が、p27Kipのリン酸化状態を、その細胞サイクル停止の阻害活性が減弱され、それ故に抗エストロゲン耐性を付与するように変えることが示されている(Donovan, et al, J. Biol. Chem. 276: 40888, (2001))。Donovan et al.により報告されている通り、MEK阻害剤での処置を介するMAPKシグナリング阻害は、ホルモン耐性乳癌細胞株におけるp27の異常リン酸化状態を逆転させ、そうしてホルモン感受性を回復する。同様に、Aktによるp27Kipのリン酸化もその細胞サイクル停止における役割を無くす(Viglietto et al., Nat Med. 8: 1145 (2002))。
【0087】
したがって、本発明は、さらになる面において、ホルモン依存性癌、例えば乳および前立腺癌の処置に使用するための式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物を提供する。この使用により、慣用の抗癌剤で癌に一般に見られるホルモン抵抗性を回復することが目的である。
【0088】
血液学的癌、例えば慢性骨髄性白血病(CML)において、慢性的転座が構成的活性化BCR−Ablチロシンキナーゼに関与する。罹患患者は、Ablキナーゼ活性阻害の結果として、小分子チロシンキナーゼ阻害剤であるイマチニブに応答する。しかしながら、最初はイマチニブに応答した進行段階の疾患の患者でも、Ablキナーゼドメインにおける耐性付与変異のために、その後再発する。インビトロ試験は、BCR−Ab1がRas−Rafキナーゼ経路を使用してその作用を顕在化させることを証明している。加えて、同経路中の1種を超えるキナーゼの阻害は、耐性付与変異に対するさらなる保護を提供する。
【0089】
したがって、他の面において、本発明は、血液学的癌、例えば慢性骨髄性白血病(CML)の処置において、キナーゼ阻害剤から選択される少なくとも1種のさらなる薬剤、例えばGleevec(登録商標)と組み合わせて使用するための式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物を提供する。この使用により、少なくとも1種の該さらなる薬剤に対する抵抗性を回復または予防することが目的である。
【0090】
PI3K/Akt経路の活性化が細胞生存を駆動するため、放射線療法および化学療法を含む癌細胞のアポトーシスと組み合わせた該経路の阻害は、応答の改善をもたらす(Ghobrial et al., CA Cancer J. Clin 55: 178-194 (2005))。一例として、PI3キナーゼ阻害剤とカルボプラチンの組合せが、インビトロ増殖およびアポトーシスアッセイならびに卵巣癌の異種移植モデルにおけるインビボ腫瘍効果の両方で相乗効果が証明されている(Westfall and Skinner, Mol. Cancer Ther. 4: 1764-1771 (2005))。
【0091】
癌および増殖性疾患に加えて、クラス1Aおよび1B PI3キナーゼ類の阻害剤が他の疾患領域においても治療的に有用であるとの証拠が蓄積されつつある。PIK3CB遺伝子のPI3Kアイソフォーム産物であるp110βの阻害が、剪断誘発血小板活性化に関与することが示されている(Jackson et al., Nature Medicine 11: 507-514 (2005))。それ故に、p110βを阻害するPI3K阻害剤は、単剤として、または抗血栓治療と組み合わせて有用である。PIK3CD遺伝子の産物であるアイソフォームp110δはB細胞機能および分化(Clayton et al., J. Exp. Med. 196: 753-763 (2002))、T細胞依存性および非依存性抗原応答(Jou et al., Mol. Cell. Biol. 22: 8580-8590 (2002))および肥満細胞分化(Ali et al., Nature 431: 1007-1011 (2004))に重用である。それ故に、p110δ阻害剤がB細胞駆動自己免疫性疾患および喘息の処置に有用であることが予測される。最後に、PI3KCG遺伝子のアイソフォーム産物であるp110γの阻害は、T細胞応答を減少させるが、B細胞応答を減少させず(Reif et al., J. Immunol. 173: 2236-2240 (2004))、その阻害は、動物モデルにおいて自己免疫性疾患に有用であることが証明されている(Camps et al., Nature Medicine 11: 936-943 (2005), Barber et al., Nature Medicine 11: 933-935 (2005))。
【0092】
本発明は、さらに少なくとも1種の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物を、ヒトまたは動物対象への投与に適する薬学的に許容される賦形剤と共に、単独で、または他の治療剤、例えば他の抗癌剤と共に含む医薬組成物を提供する。
【0093】
本発明は、さらに細胞増殖性疾患、例えば癌を有するヒトまたは動物対象の処置方法を提供する。本発明は、それ故に、処置を必要とするヒトまたは動物対象の処置方法であって、治療有効量の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物を単独でまたは1種以上の他の治療剤、例えば他の抗癌剤と組み合わせて投与することを含む、方法を提供する。特に、組成物は、組合せ治療剤と共に製剤しても、別々に投与してもよい。式(I)の化合物と共に使用するのに適当な抗癌剤は、下に明示するキナーゼ阻害剤、抗エストロゲン類、抗アンドロゲン、他の阻害剤、癌化学療法剤、アルキル化剤、キレート化剤、生物学的応答修飾剤、癌ワクチン、アンチセンス治療のための薬剤を含むが、これらに限定されない:
A. キナーゼ阻害剤:式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と共に抗癌剤として使用するキナーゼ阻害剤は、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)キナーゼ類の阻害剤、例えば小分子キナゾリン類、例えばゲフィチニブ(US5457105、US5616582、およびUS5770599)、ZD-6474(WO01/32651)、エルロチニブ(タルセバ(登録商標)、US5,747,498およびWO96/30347)、およびラパチニブ(US6,727,256およびWO02/02552);SU-11248(WO01/60814)、SU5416(US5,883,113およびWO99/61422)、SU6668(US5,883,113およびWO99/61422)、CHIR-258(US6,605,617およびUS6,774,237)、バタラニブまたはPTK-787(US6,258,812)、VEGF-Trap(WO02/57423)、B43−ゲニステイン(WO−09606116)、フェンレチニド(レチノイン酸p−ヒドロキシフェニルアミン)(US4,323,581)、IM-862(WO02/62826)、ベバシズマブまたはAvastin(登録商標)(WO94/10202)、KRN-951、3−[5−(メチルスルホニルピペラジンメチル)−インドリル]−キノロン、AG-13736およびAG-13925、ピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン類、ZK-304709、Veglin(登録商標)、VMDA-3601、EG-004、CEP-701(US5,621,100)、Cand5(WO04/09769)を含む血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)キナーゼ阻害剤;Erb2チロシンキナーゼ阻害剤、例えばペルツズマブ(WO01/00245)、トラスツマブ、およびリツキシマブ;Aktタンパク質キナーゼ阻害剤、例えばRX-0201;タンパク質キナーゼC(PKC)阻害剤、例えばLY-317615(WO95/17182)、およびペリホシン(US2003171303);ソラフェニブ(BAY43-9006)、ARQ-350RP、LErafAON、BMS-354825AMG-548、およびWO03/82272に開示されるその他のものを含むRaf/Map/MEK/Rasキナーゼ阻害剤;線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)キナーゼ阻害剤;CYC-202またはロスコビチン(WO97/20842およびWO99/02162)を含む細胞依存性キナーゼ(CDK)阻害剤;血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)キナーゼ阻害剤、例えばCHIR-258、3G3mAb、AG-13736、SU-11248およびSU6668;およびBcr−Ablキナーゼ阻害剤および融合タンパク質、例えばSTI-571またはGleevec(登録商標)(イマチニブ)を含む。
【0094】
B. 抗エストロゲン類:式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と組み合わせて抗癌治療に使用するためのエストロゲン標的剤はタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェンを含む選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM);Arimidex(登録商標)またはアナストロゾールを含むアロマターゼ阻害剤;Faslodex(登録商標)またはフルベストラントを含むエストロゲン受容体下方制御剤(ERD)を含む。
【0095】
C. 抗アンドロゲン:式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物の化合物と組み合わせて抗癌治療に使用するためのアンドロゲン標的剤はフルタミド、ビカルタミド、フィナステリド、アミノグルテアミド、ケトコナゾール、およびコルチコステロイドを含む。
【0096】
D. 他の阻害剤:式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と組み合わせて抗癌剤として使用するための他の阻害剤は、ティピファルニブまたはR-115777(US2003134846およびWO97/21701)、BMS-214662、AZD-3409、およびFTI-277を含むタンパク質ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤;メルバロンおよびジフロモテカン(diflomotecan)(BN-80915)を含むトポイソメラーゼ阻害剤;SB-743921およびMKI-833を含む有糸分裂キネシン紡錘タンパク質(KSP)阻害剤;プロテアソームモジュレーター、例えばボルテゾミブまたはベルケイド(登録商標)(US5,780,454)、XL-784;および非ステロイド性抗炎症性剤I(NSAID)を含むシクロオキシゲナーゼ2(COX−2)阻害剤を含む。
【0097】
E. 癌化学療法剤:式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と組み合わせて抗癌剤として使用する特定の癌化学療法剤はアナストロゾール(Arimidex(登録商標))、ビカルタミド(Casodex(登録商標))、ブレオマイシンスルフェート(Blenoxane(登録商標))、ブスルファン(Myleran(登録商標))、ブスルファン注射(Busulfex(登録商標))、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、N4−ペントキシカルボニル−5−デオキシ−5−フルオロシチジン、カルボプラチン(Paraplatin(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、シスプラチン(Platinol(登録商標))、クラドリビン(Leustatin(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)またはNeosar(登録商標))、シタラビン、シトシンアラビノシド(Cytosar-U(登録商標))、シタラビンリポソーム注射(DepoCyt(登録商標))、ダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))、ダクチノマイシン(Actinomycin D, Cosmegan)、ダウノルビシンヒドロクロライド(Cerubidine(登録商標))、ダウノルビシンシトレートリポソーム注射(DaunoXome(登録商標))、デキサメサゾン、ドセタキセル(タキソテール(登録商標)、US2004073044)、ドキソルビシンヒドロクロライド(アドリアマイシン(登録商標)、Rubex(登録商標))、エトポシド(Vepesid(登録商標))、フルダラビンホスフェート(Fludara(登録商標))、5−フルオロウラシル(Adrucil(登録商標)、Efudex(登録商標))、フルタミド(Eulexin(登録商標))、テザシチビン、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン)、ヒドロキシウレア(Hydrea(登録商標))、イダルビシン(Idamycin(登録商標))、イホスファミド(IFEX(登録商標))、イリノテカン(Camptosar(登録商標))、L−アスパラギナーゼ(ELSPAR(登録商標))、ロイコボリンカルシウム、メルファラン(Alkeran(登録商標))、6−メルカプトプリン(Purinethol(登録商標))、メトトレキサート(Folex(登録商標))、ミトキサントロン(Novantrone(登録商標))、ミロタルグ、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、フェニックス(Yttrium90/MX-DTPA)、ペントスタチン、カルムスチンインプラントを伴うポリフェプロサン20(グリアデル(登録商標))、タモキシフェンシトレート(Nolvadex(登録商標))、テニポシド(Vumon(登録商標))、6−チオグアニン、チオテパ、チラパザミン(Tirazone(登録商標))、注射用トポテカンヒドロクロライド(Hycamptin(登録商標))、ビンブラスチン(Velban(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、およびビノレルビン(Navelbine(登録商標))を含む。
【0098】
F. アルキル化剤:式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と組み合わせて使用するためのアルキル化剤はVNP−40101Mまたはクロレチジン、オキサリプラチン(US4,169,846、WO03/24978およびWO03/04505)、グルフォスファミド、マフォスファミド、エトポフォス(US5,041,424)、プレドニムスチン;トレオスルファン;ブスルファン;イロフルベン(アシルフルベン);ペンクロメジン;ピラゾロアクリジン(PD-115934);O6−ベンジルグアニン;デシタビン(5−アザ−2−デオキシシチジン);ブロスタリシン;マイトマイシンC(MitoExtra);TLK−286(Telcyta(登録商標));テモゾロミド;トラバクテジン(US5,478,932);AP-5280(シスプラチンのプラチネート製剤);ポルフィロマイシン;およびクレアラジド(メクロエタミン)を含む。
【0099】
G. キレート化剤:式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と組み合わせて使用するためのキレート化剤はテトラチオモリブデート(WO01/60814);RP-697;キメラT84.66(cT84.66);ガドフォスベセット(Vasovist(登録商標));デフェロキサミン;および場合によりエレクトロポレーション(EPT)と組み合わせたブレオマイシンを含む。
【0100】
H. 生物学的応答修飾剤:式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と組み合わせて使用するための生物学的応答修飾剤、例えば免疫調節剤はスタウロスポリンおよびUCN−01、CEP−701およびミドスタウリン(WO02/30941、WO97/07081、WO89/07105、US5,621,100、WO93/07153、WO01/04125、WO02/30941、WO93/08809、WO94/06799、WO00/27422、WO96/13506およびWO88/07045参照)を含むその巨環アナログ;スクアラミン(WO01/79255);DA−9601(WO98/04541およびUS6,025,387);アレムツズマブ;インターフェロン類(例えばIFN−a、IFN−bなど);インターロイキン類、特にIL−2またはアラデスロイキンならびにIL−1、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、および天然ヒト配列の70%を超えるアミノ酸配列を有するその活性生物学的変異体;アルトレタミン(Hexalen(登録商標));SU 101またはレフルノミド(WO04/06834およびUS6,331,555);イミダゾキノリン類、例えばレスキモドおよびイミキモド(US4,689,338、5,389,640、5,268,376、4,929,624、5,266,575、5,352,784、5,494,916、5,482,936、5,346,905、5,395,937、5,238,944、および5,525,612);およびベンズアゾール類、アントラキノン類、チオセミカルバゾン類、およびトリプタンスリン類(WO04/87153、WO04/64759、およびWO04/60308)を含むSMIPを含む。
【0101】
I. 癌ワクチン:式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と組み合わせて使用するための抗癌ワクチンはAvicine(登録商標)(Tetrahedron Lett. 26: 2269-70 (1974));またはエゴボマブ(OvaRex(登録商標));Theratope(登録商標)(STn-KLH);黒色腫ワクチン;Rasタンパク質の5種の変異を指向するGI−4000シリーズ(GI-4014、GI-4015およびGI-4016);GlioVax-1;MelaVax;Advexin(登録商標)またはINGN-201(WO95/12660);HPV-16 E7をコードするSig/E7/LAMP-1;MAGE-3ワクチンまたはM3TK(WO94/05304);HER-2VAX;腫瘍に特異的T細胞を刺激するACTIVE;GM−CSF癌ワクチン;およびListeria monocytogenesベースのワクチンを含む。
【0102】
J. アンチセンス治療:式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と組み合わせて使用する抗癌剤はまたアンチセンス組成物、例えばAEG-35156(GEM-640);AP-12009およびAP-11014(TGF−ベータ2特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド類);AVI-4126;AVI-4557;AVI-4472;オブリメルセン(Genasense(登録商標));JFS2;アプリノカルセン(WO97/29780);GTI-2040(R2リボヌクレオチドレダクターゼmRNAアンチセンスオリゴ)(WO98/05769);GTI-2501(WO98/05769);リポソーム封入c−Rafアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(LErafAON)(WO98/43095);およびSirna-027(VEGFR−1 mRNAを標的とするRNAiベースの治療剤)を含む。
【0103】
式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物はまた、医薬組成物において気管支拡張剤または抗ヒスタミン剤と組み合わせてもよい。かかる気管支拡張剤は抗コリン剤または抗ムスカリン剤、特にグリコピロレート、イプラトロピウムブロマイド、オキシトロピウムブロマイド、およびチオトロピウムブロマイド、OrM3、アクリジニウム、CHF5407、GSK233705およびβ−2−アドレナリン受容体アゴニスト、例えばサルブタモール、テルブタリン、サルメテロール、カルモテロール、ミルベテロールおよび、特に、インダカテロールおよびフォルモテロールを含む。併用抗ヒスタミン剤はセチリジンヒドロクロライド、フマル酸クレマスチン、プロメタジン、ロラタジン、デスロラタジンジフェンヒドラミンおよびフェキソフェナジンヒドロクロライドを含む。
【0104】
本発明は、さらなる面において、式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と、血栓溶解疾患、心臓疾患、卒中などの処置に有用な1種以上の組合せを提供する。かかる化合物はアスピリン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、抗凝血剤、抗血小板剤(例えば、PLAVIX;硫酸クロピドグレル)、スタチン(例えば、LIPITORまたはアトルバスタチンカルシウム)、ZOCOR(シンバスタチン)、CRESTOR(ロスバスタチン)、など)、ベータブロッカー(例えば、アテノロール)、NORVASC(アムロジピンベシレート)、およびACE阻害剤(例えば、リシノプリル)を含む。
【0105】
本発明は、さらなる面において、式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と、抗高血圧の処置に有用な1種以上の化合物の組合せを提供する。かかる化合物はACE阻害剤、脂質低下剤、例えばスタチン、LIPITOR(アトルバスタチンカルシウム)、カルシウムチャネルブロッカー、例えばNORVASC(アムロジピンベシレート)を含む。
【0106】
本発明は、さらなる面において、式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と、フィブラート、ベータブロッカー、NEPI阻害剤、アンギオテンシン−2受容体アンタゴニストおよび血小板凝集阻害剤からなる群から選択される1種以上の化合物の組合せを提供する。
【0107】
本発明は、さらなる面において、式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と、リウマチ性関節炎を含む炎症性疾患の処置に適当な化合物の組合せを提供する。かかる化合物はTNF−α阻害剤、例えば抗TNF−αモノクローナル抗体(例えばREMICADE、CDP-870)およびD2E7(HUMIRA)およびTNF受容体免疫グロブリン融合分子(例えばENBREL)、IL−1阻害剤、受容体アンタゴニストまたは可溶性IL−1Rα(例えばKINERETまたはICE阻害剤)、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDS)、ピロキシカム、ジクロフェナク、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェンイブプロフェン、フェナメート、メフェナム酸、インドメタシン、スリンダク、アパゾン、ピラゾロン類、フェニルブタゾン、アスピリン、COX−2阻害剤(例えばCELEBREX(セレコキシブ)、PREXIGE(ルミラコキシブ))、メタロプロテアーゼ阻害剤(好ましくはMMP−13選択的阻害剤)、p2x7阻害剤、α2α阻害剤、NEUROTIN、プレガバリン、低用量メトトレキサート、レフルノミド、ヒドロキシクロロキン、d−ペニシラミン、オーラノフィンまたは非経腸または経口金からなる群から選択される。
【0108】
本発明は、さらなる面において、式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と、骨関節症の処置に適当な化合物の組合せを提供する。かかる化合物は標準非ステロイド性抗炎症剤(以後NSAID)、例えばピロキシカム、ジクロフェナク、プロピオン酸類、例えばナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェンおよびイブプロフェン、フェナメート例えばメフェナム酸、インドメタシン、スリンダク、アパゾン、ピラゾロン類、例えばフェニルブタゾン、サリチレート類例えばアスピリン、COX−2阻害剤、例えばセレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブおよびエトリコキシブ、鎮痛剤および関節内治療、例えばコルチコステロイドおよびヒアルロン酸類、例えばヒアルガンおよびシンビスクからなる群から選択され得る。
【0109】
本発明は、さらなる面において、式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と抗ウイルス剤および/または抗敗血症化合物の組合せを提供する。かかる抗ウイルス剤はViracept、AZT、アシクロビルおよびファムシクロビルからなる群から選択され得る。かかる抗敗血症化合物はValantからなる群から選択され得る。
【0110】
本発明は、さらなる面において、式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物とCNS剤、例えば抗鬱剤(セルトラリン)、抗パーキンソン病剤(例えばデプレニル、L−ドーパ、Requip、Mirapex;MAOB阻害剤(例えばセレギリン(selegine)およびラサギリン);comP阻害剤(例えばタスマール);A−2阻害剤;ドーパミン再取り込み阻害剤;NMDAアンタゴニスト;ニコチンアゴニスト;ドーパミンアゴニスト;および神経型一酸化窒素合成酵素の阻害剤)から成る群から選択される1種以上の薬剤の組合せを提供する。
【0111】
本発明は、さらなる面において、式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と1種以上の抗アルツハイマー剤の組合せを提供する。かかる抗アルツハイマー剤はドネペジル、タクリン、α2δ阻害剤、NEUROTIN、プレガバリン、COX−2阻害剤、プロペントフィリンまたはメトリホネート(metryfonate)からなる群から選択され得る。
【0112】
本発明は、さらなる面において、式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物と骨粗鬆症剤および/または免疫抑制剤の組合せを提供する。かかる骨粗鬆症剤はEVISTA(ラロキシフェンヒドロクロライド)、ドロロキシフェン、ラソフォキシフェンまたはフォサマックス(fosomax)からなる群から選択され得る。かかる免疫抑制剤はFK−506およびラパマイシンからなる群から選択され得る。
【0113】
好ましい態様の他の面において、1種以上の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物とここに開示する組合せパートナーを含むキットが提供される。代表的キットはPI3K阻害剤化合物(例えば、式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物)と、PI3K阻害量の化合物(複数もある)を投与することにより細胞増殖性疾患を処置するための支持を含む添付文書または他のラベルを含む。
【0114】
一般に、式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物は類似の有用性をもたらす薬剤についての許容される投与方式のいずれかにより、治療有効量で投与する。実際の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物、すなわち、有効成分の量は、多くの因子、例えば処置する疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康状態、使用する化合物の効力、投与経路および形態ならびに他の因子に依存する。薬剤は1日1回を超えて、好ましくは1日1回または2回投与してよい。これらの因子の全ては担当医の技術の範囲内である。式(I)の化合物の治療有効量は約0.05〜約50mg/kg/日の範囲であり得る;好ましくは約0.1−25mg/kg/日、より好ましくは約0.510mg/kg/日である。それ故に、70kgのヒトへの投与のために、投与範囲は最も好ましくは約35−70mg/日である。
【0115】
一般に、式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物は、医薬組成物として以下の経路のいずれか一つにより投与する:経口、全身(例えば、経皮、鼻腔内または坐薬により)、または非経腸(例えば、筋肉内、静脈内または皮下)投与。好ましい投与方法は、疾患の程度により調節できる簡便な1日投与レジメンを使用する経口である。組成物は錠剤、丸剤、カプセル、半固体、散剤、徐放性製剤、溶液、懸濁液、エリキシル、エアロゾルまたは任意の他の適当な組成物の形態をとり得る。式(I)の化合物の他の好ましい投与方法は吸入である。これは呼吸管に治療剤を送達させる有効な方法である。
【0116】
製剤の選択は、種々の因子、例えば投与方式および医薬物質のバイオアベイラビリティによる。吸入を介する送達のために、化合物を液体溶液、懸濁液、エアロゾル噴射剤または乾燥粉末として製剤し、適当な投与用ディスペンサーに充填してよい。いくつかの種類の医薬吸入装置、ネブライザー吸入装置、定量吸入器(MDI)および乾燥粉末吸入器(DPI)がある。ネブライザーは高速の気流を発生させ、それにより治療剤(それは液体形態に製剤されている)をミストとして噴霧させ、それが患者の呼吸器に入る。典型的に、MDIは圧縮ガスと共に充填された製剤である。動作することにより、デバイスは一定量の治療剤を圧縮ガスにより噴射し、それによって予め定められた量の薬剤を投与する信頼できる方法を提供する。DPIは、自由流動性粉末形態の治療剤を計量し、それをデバイスによる吸気により患者の吸気流中に分散させる。自由流動性粉末を得るために、治療剤を添加剤、例えばラクトースと製剤する。治療剤の定量をカプセル中に貯蔵し、各駆動毎に投与する。
【0117】
本発明はまた、式(I)の化合物の粒子径が10−1000nm、好ましくは10−400nmである製剤にも関する。かかる医薬製剤は、特に、表面積を大きくすることにより、すなわち、粒子径を小さくすることによりバイオアベイラビリティを上げることができるとの原則に基づき、バイオアベイラビリティが低い薬剤について特に開発されている。例えば、U.S.4,107,288は、活性物質が巨大分子の架橋マトリックス上に支持されている10−1,000nmの範囲の粒子径の医薬製剤を記載する。U.S.5,145,684は、医薬物質を、表面修飾剤の存在下でナノ粒子(平均粒子径400nm)まで粉砕し、そして液体媒体に分散させて、顕著に高いバイオアベイラビリティを示す製剤を得る、医薬製剤の製造法を記載する。両文献とも引用により本明細書に包含させる。
【0118】
さらなる面において、本発明は(治療有効量)の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物、および少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物を提供する。許容される添加剤は非毒性であり、投与を助け、かつ式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物の治療利益に有害な影響を与えないものである。かかる添加剤は、当業者が一般的に利用可能な任意の固体、液体、半固体、またはエアロゾル組成物の場合、ガス状添加剤であり得る。
【0119】
固体医薬添加剤はデンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルクなどを含む。
【0120】
液体および半固体添加剤は、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールおよび石油由来、動物由来、植物由来または合成由来のものを含む種々の油、例えばピーナツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などから選択してよい。好ましい液体担体は、特に、注射溶液のために、水、食塩水、水性デキストロース、およびグリコール類を含む。
【0121】
圧縮ガスをエアロゾル形態の式(I)の化合物の投与に使用し得る。この目的に適当な不活性ガスは、窒素、二酸化炭素などである。他の適当な医薬添加剤およびその製剤はRemington's Pharmaceutical Sciences, edited by E. W. Martin (Mack Publishing Company, l8th ed., l990)に記載されている。
【0122】
製剤中の化合物の量は、当業者により用いられる全範囲にわたって変えることができる。典型的に、製剤は、重量パーセント(wt%)ベースで約0.01−99.99wt%の式(I)の化合物を全製剤に基づき含み、残りは1種以上の適当な医薬添加剤である。好ましくは、化合物は約1−80wt%のレベルで存在する。
【0123】
本発明はさらに少なくとも1種の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物および少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤を含む(すなわちこれらを包含するまたはこれらから成る)医薬組成物に関する。
【0124】
遊離形または薬学的に許容される塩形態の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物を少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤(例えば担体および/または希釈剤)と共に含む医薬組成物は、これらの成分の混合による慣用法により製造し得る。
【0125】
遊離形または薬学的に許容される塩形態の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物を含み、さらに組合せパートナーを(一つの単位形態としてまたはキット・オブ・パーツとして)を少なくとも1種の薬学的に許容される担体および/または希釈剤と共に含む組合せ医薬組成物は、薬学的に許容される担体および/または希釈剤とこれらの有効成分の混合による慣用法により製造し得る。
【0126】
結果として、本発明はさらに以下の面を提供する:
・遊離形または薬学的に許容される塩形態の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物を薬学的に許容される希釈剤および/または担体と共に含む、例えば、ここに記載する方法のいずれかにおいて使用するための、組合せ医薬組成物。
・有効成分としての遊離形または薬学的に許容される塩形態の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物;1種以上の薬学的に許容される担体物質および/または希釈剤および場合により1種以上のさらなる医薬物質を含む、組合せ医薬組成物。かかる組合せ医薬組成物は一投与単位形態でも、複数部分で構成されるキットでもよい。
・治療有効量の遊離形または薬学的に許容される塩形態の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物および同時のまたは逐次的投与のための第二医薬物質を含む、組合せ医薬組成物。
・治療有効非毒性量の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも第二医薬物質、例えば、上に示すものの、例えば、同時のまたは逐次的共投与を含む、上に定義する方法。
・a)ここに開示する遊離形または薬学的に許容される塩形の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物である第一剤およびb)少なくとも1種の併用剤、例えば上に示すものを含む、医薬組合せ、例えばキット;ここで、かかるキットはその投与のための指示を含んでよい。
【0127】
以下の式(I)、(IA)、(IB)、(IB')および/または(IC)の化合物の実施例は、本発明を、その範囲を限定することなく説明する。かかる化合物の製造方法を記載する。
【0128】
温度は摂氏で測定する。特にことわらない限り、反応はアルゴン雰囲気下、rtで行い、MSはESIを用いて得る。以下のHPLCおよびLC−MS法を中間体および実施例化合物の製造および分析に使用する:
【0129】
HPLC(方法A)
システム:Agilent 1100 Series
カラム:HP Hypersil BDS C18、4×125mm、5ミクロン
温度:25℃
溶離剤A:0.1%v/v TFA含有H
溶離剤B:0.1%v/v TFA含有アセトニトリル
勾配:10%→100%Bを5分間、2.5分間100%B、次いで→10%Bを1分間
流速:1.5mL/分
検出:UV 215nm
【0130】
HPLC(方法B)
システム:Agilent 1100 Series
カラム:Macherey-Nagel Nucleosil 100-3 C18HD、4×125mm、3ミクロン
温度:30℃
溶離剤A:0.1%v/v TFA含有H
溶離剤B:0.1%v/v TFA含有アセトニトリル
勾配:2%→100%Bを7分間、2分間100%B、次いで→2%Bを1分間
流速:1.0mL/分
検出:UV 215nm
【0131】
LC−MS(方法A)
システム:Waters Acquity UPLCとWaters Micromass ZQ 2000 ESI+/-
カラム:Acquity HSS T3 C18、2.1×50mm、1.8ミクロン
温度:50℃
溶離剤A:0.05%v/v HCOOHおよび3.75mM 酢酸アンモニウム含有H
溶離剤B:0.04%HCOOH含有アセトニトリル
勾配:2%→98%Bを4.3分間、0.7分間98%B、次いで→2%Bを0.1分間および0.9分間2%B
流速:1.0mL/分
【0132】
LC−MS(方法B)
システム:Agilent 1100 Series; MS: G1946D
カラム:Symmetry C8、2.1×50mm、3.5ミクロン
溶離剤A:0.1%v/v HCOOH含有H
溶離剤B:0.1%v/v HCOOH含有アセトニトリル
勾配:0−3.3分間:5%から95%のB
流速:1.0mL/分
【0133】
LC−MS(方法C)
システム:Waters Acquity UPLC
カラム:Acquity HSS T3 C18、2.1×50mm、1.8ミクロン
溶離剤A:0.05%v/v HCOOHおよび0.05%酢酸アンモニウム含有H
溶離剤B:0.04%HCOOH含有アセトニトリル
勾配:2%→98%Bを1.7分間、0.45分間98%B、次いで→2%Bを0.04分間流速:1.2ml/分
【0134】
LC−MS(方法D)
システム:Waters Aquity UPLC; MS: Waters AQ Detector
カラム:Aquity HSS、1.8μm 2.1×50mm、3/pk
溶離剤A:0.1%v/v HCOOH含有H
溶離剤B:0.1%v/v HCOOH含有アセトニトリル
勾配:0−1.5分間:10%から95%のB、次いで1分間:95%B
流速:1.2mL/分
【0135】
ESI−MS
装置:Micromass Platform II
溶離剤:0.2%v/vの25%水酸化アンモニウム溶液を含む水中の15%v/v メタノール
流速:0.05mL/分
【0136】
以下の実施例において、下に示す略語を使用する:
【表1】

【実施例】
【0137】
実施例1:(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)
【化9】

EtN(0.53mmol)をイミダゾール−1−カルボン酸{4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド(工程1.1)(0.177mmol)および(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(工程1.8)(0.194mmol)のDMF(1mL)中の混合物にrtで添加した。20時間撹拌後、反応混合物を濃縮した。残留物をRediSep(登録商標)シリカゲルカラムを使用して精製し、EtOAcで摩砕して、表題化合物を白色固体として得た。HPLC: tR=4.27分(方法B); LC-MS: tR=1.34分, [M+H]+ 400(方法A); TLC: Rf=0.12 (95: 5 CH2Cl2/MeOH); 1H-NMR(d6-DMSO, 600 MHz): 10.92 (br s, 1H), 8.41 (d, 1H), 7.38 (br s, 1H), 7.28 (s, 1H), 7.16 (d, 1H), 6.98 (br s, 1H), 4.15 (m, 1H), 3.69 (m, 1H), 3.37 (m, 1H), 2.40 (s, 3H), 2.36 (m, 1H), 1.95 (m, 1H), 1.69 (m, 1H), 1.48 (s, 3H), 1.18 (m, 2H), 0.98 (d, 3H), 0.80 (m, 2H)。
【0138】
工程1.1:イミダゾール−1−カルボン酸{4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド
【化10】

4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イルアミン(工程1.2)(28.5mmol)およびCDI(42.8mmol)のCHCl(330mL)中の混合物を11時間還流した。rtに冷却後、反応混合物を濾過して、表題化合物を明緑色固体として得た。
【0139】
工程1.2:4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イルアミン
【化11】

N−{4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アセトアミド(工程1.3)(34.8mmol)、HClの6N水溶液(53mL)およびEtOH(265mL)の混合物を5時間、85℃で撹拌し、rtに冷却し、濃縮した。残留物をNaHCO飽和溶液でゆっくり希釈し、EtOAc(3×)で抽出した。合わせた有機相を連続的にNaHCO飽和溶液および塩水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残留物をCHClで摩砕し、濾過して、表題化合物を黄緑色固体として得た。HPLC: tR=3.55分(方法B); LC-MS: tR=1.03分, [M+H]+ 246; TLC: Rf=0.26 (1: 2 Hex/EtOAc)。
【0140】
工程1.3:N−{4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アセトアミド
【化12】

2−アセトアミド−4−メチルチアゾール[7336-51-8](60.4mmol)、炭酸セシウム(110mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィニウムテトラフルオロボレート(10.99mmol)、酢酸パラジウム(II)(5.49mmol)および4−ブロモ−2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン(工程1.4)(54.9mmol)のDMF(230mL)中の混合物を3.5時間、100℃で撹拌した。rtに冷却後、反応混合物を濾過し、濃縮した。残留物をNaHCO飽和溶液で希釈し、EtOAc(3×)で抽出した。合わせた有機相を連続的にNaHCO飽和溶液および塩水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残留物をRediSep(登録商標)シリカゲルカラムを使用して精製して、表題化合物を淡黄色固体として得た。HPLC: tR=4.37分(方法B); LC-MS: tR=1.47分, [M+H]+ 288; TLC: Rf=0.26 (1: 2 Hex/EtOAc)。
【0141】
工程1.4:4−ブロモ−2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン
【化13】

2−(1−メチル−シクロプロピル)−1H−ピリジン−4−オン(工程1.5)(13.4mmol)およびPOBr(14.74mmol)の混合物を15分間、85℃、そして15分間、120℃で撹拌した。わずかに冷却後、反応混合物をNaHCO飽和溶液に注ぎ、CHCl((2×)で抽出した。合わせた有機相をNaHCO飽和溶液で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を褐色油状物として得た. HPLC: tR=4.11分(方法B); LC-MS: tR=2.39分, [M+H]+ 212/214; TLC: Rf=0.31 (CH2Cl2)。
【0142】
工程1.5:2−(1−メチル−シクロプロピル)−1H−ピリジン−4−オン
【化14】

2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピラン−4−オン(工程1.6)(66.6mmol)および水酸化アンモニウムの28−30%水溶液(182mL)の混合物を、1時間、65℃で撹拌した。rtに冷却後、反応混合物をデカントして、暗褐色固体を除去し、濃縮した。残留物をMeOHで希釈し、再濃縮(3×)して、表題化合物を褐橙色固体として得た。HPLC: tR=3.56分(方法B); LC-MS: tR=0.87分, [M+H]+ 151; TLC: Rf=0.18 (9: 1 CH2Cl2/MeOH)。
【0143】
工程1.6:2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピラン−4−オン
【化15】

(1Z,4E)−1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1−(1−メチル−シクロプロピル)−ペンタ−1,4−ジエン−3−オン(工程1.7)(111mmol)およびTFA(221mmol)のトルエン(175mL)中の混合物を15.5時間、rtで撹拌し、濃縮した。残留物をRediSep(登録商標)シリカゲルカラムを使用して精製して、表題化合物を白色固体として得た。LC-MS: tR=1.48分, [M+H]+ 151; TLC: Rf=0.26 (EtOAc)。
【0144】
工程1.7:(1Z,4E)−1−ヒドロキシ−5−メトキシ−1−(1−メチル−シクロプロピル)−ペンタ−1,4−ジエン−3−オン
【化16】

LiHMDS(THF中1M、845mmol)をtrans−4−メトキシ−3−ブテン−2−オン[51731-17-0](845mmol)のTHF(2L)溶液に−78℃で滴下した。15分間撹拌後、1−メチル−シクロプロパンカルボニルクロライド[16480-05-0](407mmol)のTHF(100mL)溶液を添加した。得られた混合物を2.5時間かけてrtに温め、NHCl飽和溶液の添加によりクエンチした。混合物をEtO(2×)で抽出した。合わせた有機相を連続的にNaHCO飽和溶液および塩水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を黄色固体として得た。ESI-MS: [M+H]+ 183; TLC: Rf=0.29 (9: 1 Hex/EtOAc)。
【0145】
工程1.8:(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミド
【化17】

(2S,3R)−3−メチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(工程1.9)(4.76mmol)および10%Pd炭(0.947mmol)のMeOH(20mL)中の混合物を46時間、rtで水素化した。反応混合物をフルオロポア膜フィルター(0.2μm FG)を通して濾過し、蒸発させた。残留物をCHClに溶解し、蒸発乾固して、表題化合物を白色固体として得た。ESI-MS: [M+H]+ 129; TLC: Rf=0.10 (1: 3 Hex/EtOAc)。
【0146】
工程1.9:(2S,3R)−3−メチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド
【化18】

トリメチルアルミニウムのトルエン溶液(2M、6.46mmol)を、NHCl(6.47mmol)のトルエン(3.2mL)溶液に0℃で滴下し、メタンガスが伴った。反応混合物をrtに温め、さらに15分間撹拌し、ゆっくろ(2S,3R)−3−メチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステル(Tet. Lett. 1997, 38, 85-88に記載の通り製造)(6.47mmol)で処理した。56時間撹拌後、混合物を0℃に冷却し、1M HClでクエンチし、CHCl(3×)で洗浄した。水性相をNaHCO飽和溶液で塩基性化し、CHCl(3×)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残留物をRediSep(登録商標)シリカゲルカラムでを使用して精製して、表題化合物を無色油状物として得た。ESI-MS: [M+H]+ 233; HPLC: tR 2.35分(方法A)。
【0147】
実施例2:(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)
【化19】

表題化合物を、実施例1に準じるが、工程1.7において、3,3,3−トリフルオロ−2,2−ジメチル−プロピオニルクロライド(工程2.1)を1−メチル−シクロプロパンカルボニルクロライドの代わりに使用して製造した。
表題化合物を白色固体として得た。HPLC: tR=5.16分(方法B); LC-MS: tR=2.29分, [M+H]+ 456(方法A); TLC: Rf=0.17 (95: 5 CH2Cl2/MeOH); 1H-NMR(d6-DMSO, 600MHz): 10.98 (br s, 1H), 8.59 (d, 1H), 7.54 (s, 1H), 7.40 (d, 1H), 7.39 (br s, 1H), 6.98 (br s, 1H), 4.15 (m, 1H), 3.69 (m, 1H), 3.37 (m, 1H), 2.40 (s, 3H), 2.36 (m, 1H), 1.95 (m, 1H), 1.69 (m, 1H), 1.61 (s, 6H), 0.97 (d, 3H)。
【0148】
工程2.1:3,3,3−トリフルオロ−2,2−ジメチル−プロピオニルクロライド
【化20】

DMF(3滴)を3,3,3−トリフルオロ−2,2−ジメチル−プロピオン酸[889940-13-0](179mmol)のCHCl(160mL)溶液にrtで滴下した。塩化オキサリル(197mmol)のCHCl(20mL)溶液をゆっくり添加した。14時間撹拌後、反応混合物を注意深く蒸発させて(500mbar、33℃)、表題化合物(揮発性!)を黄色溶液として得た。
【0149】
実施例3:(rac)−3,3−ジメチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)
【化21】

表題化合物を、実施例1に記載の方法に準じるが、(rac)−3,3−ジメチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(J. Org. Chem., 2008, 73, 3946-3949に記載の通り製造)を(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミドの代わりに使用して製造した。
表題化合物を黄色固体として得た。HPLC: tR=2.90分(方法A); LC-MS: tR=1.32分, [M+H]+ 414(方法A); TLC: Rf=0.17 (9: 1 CH2Cl2/MeOH); 1H-NMR(d6-DMSO, 600MHz): 10.97 (br s, 1H), 8.43 (d, 1H), 7.39 (m, 2H), 7.31 (br s, 1H), 6.97 (m, 1H), 3.82 (m, 1H), 3.65 (m, 1H), 3.46 (m, 1H), 2.43 (s, 3H), 1.86 (m, 1H), 1.62 (m, 1H), 1.48 (s, 3H), 1.19 (m, 2H), 1.04 (s, 3H), 0.99 (s, 3H), 0.85 (m, 2H)。
【0150】
実施例4:(rac)−3,3−ジメチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)
【化22】

表題化合物を、実施例2に記載の方法に準じるが、(rac)−3,3−ジメチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(J. Org. Chem., 2008, 73, 3946-3949に記載の通り製造)を(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミドの代わりに使用して製造した。
表題化合物を黄色固体として得た。HPLC: tR=5.38分(方法B); LC-MS: tR=2.12分, [M+H]+ 470(方法A); TLC: Rf=0.12 (9: 1 CH2Cl2/MeOH); 1H-NMR(d6-DMSO, 600MHz): 10.93 (br s, 1H), 8.58 (d, 1H), 7.54 (s, 1H), 7.39 (d, 1H), 7.39 (br s, 1H), 6.97 (br s, 1H), 3.82 (m, 1H), 3.65 (m, 1H), 3.46 (m, 1H), 2.39 (s, 3H), 1.86 (m, 1H), 1.61 (m, 1H), 1.59 (s, 6H), 1.04 (s, 3H), 1.00 (s, 3H)。
【0151】
実施例5:(2S,3S)−3−(アセチルアミノ−メチル)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)
【化23】

表題化合物を、実施例1に記載の方法に準じるが、(2S,3S)−3−(アセチルアミノ−メチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(工程5.1)を(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミドの代わりに使用して製造した。
表題化合物を白色固体として得た。HPLC: tR=4.00分(方法B); LC-MS: tR=1.04分, [M+H]+ 457(方法A); TLC: Rf=0.17 (9: 1 CH2Cl2/MeOH); 1H-NMR(d6-DMSO, 600MHz): 10.96 (br s, 1H), 8.42 (d, 1H), 7.80 (br s, 1H), 7.49 (br s, 1H), 7.29 (s, 1H), 7.17 (d, 1H), 7.10 (br s, 1H), 4.25 (m, 1H), 3.72 (m, 1H), 3.37 (m, 1H), 3.23 (m, 1H), 2.92 (m, 1H), 2.41 (s, 3H), 2.39 (m, 1H), 2.00 (m, 1H), 1.82 (s, 3H), 1.73 (m, 1H), 1.49 (s, 3H), 1.19 (m, 2H), 0.81 (m, 2H)。
【0152】
工程5.1:(2S,3S)−3−(アセチルアミノ−メチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド
【化24】

表題化合物を、工程1.8に記載の方法に準じるが、(2S,3S)−3−(アセチルアミノ−メチル)−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(工程5.2)を(2S,3R)−3−メチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミドの代わりに使用して製造した。さらに、50%HOで湿らせた10%Pd炭(Aldrich 330108)を乾燥触媒の代わりに使用して製造した。
表題化合物を灰白色固体として得た。ESI-MS: [M+H]+ 186; TLC: Rf=0.08 (200: 20: 1 CH2Cl2/MeOH/濃NH4OH)。
【0153】
工程5.2:(2S,3S)−3−(アセチルアミノ−メチル)−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド
【化25】

チオ酢酸(2.312mmol)を(2S,3S)−3−アジドメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(工程5.3)(0.578mmol)にrtで添加し、窒素ガス発生が伴った。16時間撹拌後、反応混合物をEtOで希釈し、固体を濾過により除去し、濾液を濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を明黄色油状物として得た(チオール臭)。HPLC: tR=3.71分(方法B); LC-MS: tR=0.64分, [M+H]+ 290; TLC: Rf=0.38 (200: 20: 1 CH2Cl2/MeOH/濃NH4OH)。
【0154】
工程5.3:(2S,3S)−3−アジドメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド
【化26】

表題化合物を、工程1.9に記載の方法に準じるが、(2S,3S)−3−アジドメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステル(工程5.4)を(2S,3R)−3−メチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステルの代わりに使用して製造した。さらに、1:1 NaHCO飽和溶液/ロッシェル塩飽和溶液を塩基性化に使用し、塩基性水性層をTHFで徹底的に抽出した。
表題化合物を黄色油状物として得た。HPLC: tR=2.50分(方法A); ESI-MS: [M+H]+ 274; TLC: Rf=0.26 (3: 1 Hex/EtOAc)。
【0155】
工程5.4:(2S,3S)−3−アジドメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステル
【化27】

ナトリウムアジド(5.34mmol)を(2S,3R)−3−ヨードメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステル(工程5.5)(3.56mmol)のDMF(30mL)溶液にrtで添加した。18時間後、反応混合物を水に注ぎ、MTBE(2×)で抽出した。合わせた有機相を塩水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残留物をRediSep(登録商標)シリカゲルカラムを使用して精製して、表題化合物を褐色油状物として得た。HPLC: tR=3.26分(方法A); ESI-MS: [M+H]+ 289。
【0156】
工程5.5:(2S,3R)−3−ヨードメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステル
【化28】

[ブト−3−エニル−((S)−1−フェニル−エチル)−アミノ]−酢酸メチルエステル[432555-77-6](20.22mmol)のTHF(10mL)溶液をリチウムジイソプロピルアミド(24.26mmol)の1:2 ヘキサン/THF(30mL)溶液に−78℃でゆっくり添加した。反応混合物を0℃に温め、1時間撹拌し、−78℃に再冷却した。臭化亜鉛(50.5mmol)のEtO(40mL)溶液を添加し、反応混合物をrtに温めた。1時間撹拌後、混合物を0℃に冷却し、ヨウ素(22.24mmol)を数回に分けて添加した。反応混合物を0℃で2時間およびrtでさらに2時間撹拌し、EtOで希釈し、連続的にNa飽和溶液およびNHCl飽和溶液で洗浄した。水性層をEtOでそれぞれ逆抽出した。合わせた有機相を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を赤色油状物として得た。HPLC: tR=3.46分(方法A); ESI-MS: [M+H]+ 374。
【0157】
実施例6:(2S,3S)−3−(アセチルアミノ−メチル)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)
【化29】

表題化合物を、実施例2に記載の方法に準じるが、(2S,3S)−3−(アセチルアミノ−メチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(工程5.1)を(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミドの代わりに使用して製造した。
表題化合物を白色固体として得た。HPLC: tR=4.73/4.78分(方法B); LC-MS: tR=1.81分, [M+H]+ 513(方法A); TLC: Rf=0.17 (9: 1 CH2Cl2/MeOH); 1H-NMR(d6-DMSO, 600MHz): 11.05 (br s, 1H), 8.59 (d, 1H), 7.80 (br s, 1H), 7.55 (s, 1H), 7.49 (br s, 1H), 7.40 (m, 1H), 7.10 (br s, 1H), 4.25 (m, 1H), 3.72 (m, 1H), 3.39 (m, 1H), 3.23 (m, 1H), 2.92 (m, 1H), 2.41 (s, 3H), 2.39 (m, 1H), 2.00 (m, 1H), 1.82 (s, 3H), 1.72 (m, 1H), 1.61 (s, 6H)。
【0158】
実施例7:(2S,3S)−3−モルホリン−4−イルメチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)
【化30】

表題化合物を、実施例1に記載の方法に準じるが、(2S,3S)−3−モルホリン−4−イルメチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(工程7.1)を(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミドの代わりに使用して製造した。
表題化合物を淡黄色固体として得た。HPLC: tR=2.39分(方法A); LC-MS: tR=0.90分, [M+H]+ 485(方法A); TLC: Rf=0.09 (19: 1 CH2Cl2/MeOH); 1H-NMR(d6-DMSO, 600MHz): 10.90 (br s, 1H), 8.41 (d, 1H), 7.35 (br s, 1H), 7.29 (s, 1H), 7.17 (d, 1H), 7.02 (br s, 1H), 4.26 (br s, 1H), 3.69 (m, 1H), 3.58 (m, 4H), 3.40 (m, 1H), 2.58 (m, 1H), 2.41 (s, 3H), 2.38 (m, 4H), 2.35 (m, 1H), 2.17 (m, 1H), 2.00 (m, 1H), 1.75 (m, 1H), 1.49 (s, 3H), 1.19 (m, 2H), 0.81 (m, 2H)。
【0159】
工程7.1:(2S,3S)−3−モルホリン−4−イルメチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミド
【化31】

表題化合物を、工程1.8に記載の方法に準じるが、(2S,3S)−3−モルホリン−4−イルメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド
(工程7.2)を(2S,3R)−3−メチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド。さらに、50%HOで湿らせた10%Pd炭(Aldrich 330108)を乾燥触媒の代わりに使用して製造した。
表題化合物を無色油状物として得た。ESI-MS: [M+H]+ 214; TLC: Rf=0.14 (200: 20: 1 CH2Cl2/MeOH/濃NH4OH)。
【0160】
工程7.2:(2S,3S)−3−モルホリン−4−イルメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド
【化32】

表題化合物を、工程1.9に記載の方法に準じるが、(2S,3S)−3−モルホリン−4−イルメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステル(工程7.3)を(2S,3R)−3−メチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステルの代わりに使用して製造した。さらに、塩基性水性層をCHClの代わりにTHFで徹底的に抽出した。
表題化合物を黄色油状物として得た。HPLC: tR=2.18分(方法A); ESI-MS: [M+H]+ 318。
【0161】
工程7.3:(2S,3S)−3−モルホリン−4−イルメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステル
【化33】

(2S,3R)−3−ヨードメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステル(工程5.5)(7.07mmol)、KCO(21.22mmol)およびモルホリン(10.61mmol)のアセトニトリル(24mL)中の混合物を50℃で62時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ、EtOAc(3×)で抽出した。合わせた有機層を連続的に水および塩水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残留物をRediSep(登録商標)シリカゲルカラムを使用して精製して、表題化合物を黄色油状物として得た。HPLC: tR=2.56分(方法A); ESI-MS: [M+H]+ 333。
【0162】
実施例8:(2S,3S)−3−モルホリン−4−イルメチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)
【化34】

表題化合物を、実施例2に記載の方法に準じるが、(2S,3S)−3−モルホリン−4−イルメチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(工程7.1)を(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミドの代わりに使用して製造した。
表題化合物を黄色泡状物として得た。HPLC: tR=4.81分(方法B); LC-MS: tR=1.53分, [M+H]+ 541(方法A); TLC: Rf=0.22 (9: 1 CH2Cl2/MeOH); 1H-NMR(d6-DMSO, 600MHz): 11.02 (br s, 1H), 8.60 (d, 1H), 7.55 (s, 1H), 7.41 (d, 1H), 7.36 (br s, 1H), 7.03 (br s, 1H), 4.26 (m, 1H), 3.69 (m, 1H), 3.58 (m, 4H), 3.41 (m, 1H), 2.58 (m, 1H), 2.41 (s, 3H), 2.38 (m, 4H), 2.35 (m, 1H), 2.17 (m, 1H), 2.01 (m, 1H), 1.75 (m, 1H), 1.61 (s, 6H)。
【0163】
実施例9:(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({5−[2−(1−フルオロ−1−メチル−エチル)−ピリミジン−4−イル]−4−メチル−チアゾール−2−イル}−アミド)
【化35】

表題化合物を、実施例1に記載の方法に準じるが、イミダゾール−1−カルボン酸{5−[2−(1−フルオロ−1−メチル−エチル)−ピリミジン−4−イル]−4−メチル−チアゾール−2−イル}−アミド(工程9.1)をイミダゾール−1−カルボン酸{4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミドの代わりに使用して製造した。LC-MS: tR=1.53分, M+H=407.0(方法B); 1H-NMR(d6-DMSO, 600.13MHz) 11 (s, br, 1H) 8.7 (s, 1H), 7.5 (s, 1H), 7.35 (s, 1H), 6.95 (s, 1H), 4.15 (s, 1H), 3.65 (m, 1H), 3.4 (m, 1H); 2.6 (s, 3H), 2.3 (m, 1H), 1.95 (m, 1H), 1.75 (s, 3H), 1.7 (s, 3H), 1.7 (s, 3H), 1.7 (m, 1H), 0.95 (d, 3H)。
【0164】
工程9.1:イミダゾール−1−カルボン酸{5−[2−(1−フルオロ−1−メチル−エチル)−ピリミジン−4−イル]−4−メチル−チアゾール−2−イル}−アミド
【化36】

CDI(0.10g)を撹拌している5−[2−(1−フルオロ−1−メチル−エチル)−ピリミジン−4−イル]−4−メチル−チアゾール−2−イルアミン(工程9.2)(0.15g)のCHCl(4mL)溶液にrtで添加した。反応混合物を56時間、25℃で静置し、表題化合物を濾過により単離した。
【0165】
工程9.2:5−[2−(1−フルオロ−1−メチル−エチル)−ピリミジン−4−イル]−4−メチル−チアゾール−2−イルアミン
【化37】

N'−[5−((E)−3−ジメチルアミノ−アクリロイル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−N,N−ジメチル−ホルムアミジン[507487-90-3](2.1g)、2−フルオロ−2−メチルプロピオンアミジン(1.7gEP0227415の実施例1に記載の方法に準じて製造)および2−メトキシエタノール(3.8mL)の混合物をrtで30分間撹拌した。NaOH(0.3g)を添加し、混合物を125℃で2時間撹拌した。rtに冷却後、水を添加し、混合物を蒸発乾固し、CHCl:MeOH:濃NHOH 97.5:2:0.5で溶出する順相クロマトグラフィーで精製して、表題化合物を得た。
【0166】
実施例10:(2S,3R)−3−ヒドロキシ−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−{[4'−メチル−2−(1−トリフルオロメチル−シクロプロピル)−[4,5']ビチアゾリル−2'−イル]−アミド}
【化38】

表題化合物を、実施例1に記載の方法に準じるが、イミダゾール−1−カルボン酸[4'−メチル−2−(1−トリフルオロメチル−シクロプロピル)−[4,5']ビチアゾリル−2'−イル]−アミド(工程10.1)をイミダゾール−1−カルボン酸{4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミドの代わりに使用し、そして(2S,3R)−3−ヒドロキシ−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(H. Fukushima et al., Biorg. Med Chem. 2004, 12, 6053; H. Ji et al., J. Med Chem. 2006, 49, 6254に記載)を(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミドの代わりに使用して製造した。LC-MS: tR=1.78分, M+H=462.0, M-H=460.0(方法B); 1H-NMR(d6-DMSO, 600.13MHz) 10.8 (s, br, 1H) 7.6 (s, 1H), 7.1 (s, br, 1H), 6.9 (s, br, 1H), 5.15 (s, 1H), 4.4 (s, 1H), 4.2 (s, br, 1H), 3.6 (m, 1H); 3.40 (m, 1H), 2.4 (s, 3H), 1.9 (m, 1H), 1.7 (m, 1H), 1.6 (s, 1H), 1.52 (s, 2H)。
【0167】
工程10.1:イミダゾール−1−カルボン酸[4'−メチル−2−(1−トリフルオロメチル−シクロプロピル)−[4,5']ビチアゾリル−2'−イル]−アミド
【化39】

CDI(0.13g)を撹拌している4'−メチル−2−(1−トリフルオロメチル−シクロプロピル)−[4,5']ビチアゾリル−2'−イルアミン(工程10.2)(0.16g)のCHCl(5mL)溶液にrtで添加した。反応混合物を3時間、25℃で静置し、表題化合物を濾過により単離した。
【0168】
工程10.2:4'−メチル−2−(1−トリフルオロメチル−シクロプロピル)−[4,5']ビチアゾリル−2'−イルアミン
【化40】

HCl(1.17g 32%水性溶液)をN−[4'−メチル−2−(1−トリフルオロメチル−シクロプロピル)−[4,5']ビチアゾリル−2'−イル]−アセトアミド(工程10.3)(0.18g)のEtOH(10mL)溶液に添加し、反応混合物を7時間加熱還流した。冷却した反応混合物をEtOAcおよび水性NaHCO溶液に分配し、有機層をNaSOで乾燥させ、蒸発させて、表題化合物を得た。MS(ESI): 陽306.1 (M+H), 陰304.1 (M-H)。
【0169】
工程10.3:N−[4'−メチル−2−(1−トリフルオロメチル−シクロプロピル)−[4,5']ビチアゾリル−2'−イル]−アセトアミド
【化41】

N−[5−(2−ブロモ−アセチル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アセトアミド(0.29g、WO2005/068444に記載の通り製造)のMeOH(15mL)溶液に、rtで1−トリフルオロメチル−シクロプロパンカルボチオン酸アミド[871913-36-9](0.20g)およびアンモニウムホスホモリブデート(0.15g)を添加した。18時間、rtで撹拌後、反応混合物をEtOAcおよび水に分配し、有機層をNaSOで乾燥させ、蒸発させて、粗生成物を得た。溶離剤として1%MeOHのCHCl溶液を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を得た。MS(ESI): 陽348.1 (M+H), 陰346.1 (M-H)。
【0170】
実施例11:(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−{[4'−メチル−2−(1−トリフルオロメチル−シクロプロピル)−[4,5']ビチアゾリル−2'−イル]−アミド}
【化42】

イミダゾール−1−カルボン酸[4'−メチル−2−(1−トリフルオロメチル−シクロプロピル)−[4,5']ビチアゾリル−2'−イル]−アミド(工程10.1)(20mg)を撹拌している(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(工程1.8)(9mg)およびEtN(21μl)のDMF(0.5mL)溶液にrtで添加する。反応混合物をrtで56時間撹拌し、蒸発させ、水性MeOHから結晶化させて、表題化合物を得た。LC-MS: tR=1.90分, M+H=460.0, M-H=458.0(方法B); 1H-NMR(d6-DMSO, 600.13MHz) 10.75 (s, br, 1H) 7.62 (s, 1H), 7.35 (s, br, 1H), 6.95 (s, br, 1H), 4.15 (s, br, 1H), 3.65 (m, 1H); 3.35 (m, 1H), 2.4 (s, 3H), 2.35 (m, 1H), 1.9 (m, 1H), 1.7 (m, 1H), 1.52 (s, 1H), 1.50 (s, 2H), 0.95 (d, 3H)。
【0171】
実施例12:(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−{[5−(2−d−tert−ブチル−ピリミジン−4−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド}
【化43】

イミダゾール−1−カルボン酸[5−(2−d−tert−ブチル−ピリミジン−4−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド(工程12.1)(222mg)を撹拌している(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(工程1.8)(95mg)およびEtN(264μl)のDMF(3mL)溶液にrtで添加する。反応混合物をrtで56時間撹拌し、蒸発させ、水性MeOHから結晶化させて、表題化合物を得た。MS(ESI): 陽412.1 (M+H), 陰410.2 (M-H)。
【0172】
工程12.1:イミダゾール−1−カルボン酸[5−(2−d−tert−ブチル−ピリミジン−4−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド
【化44】

CDI(0.77g)を撹拌している5−(2−d−tert−ブチル−ピリミジン−4−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イルアミン(工程12.2)(1.11g)のDMF(4.3mL)溶液にrtで添加した。反応混合物を18時間、25℃で静置し、表題化合物を濾過により単離した。
【0173】
工程12.2:5−(2−d−tert−ブチル−ピリミジン−4−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イルアミン
【化45】

粉末NaOH(3.71g)をN'−[5−(3−ジメチルアミノ−アクリロイル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−N,N−ジメチル−ホルムアミジン[507487-90-3](5.51g)およびd−2,2−ジメチル−プロピオンアミジンヒドロクロライド(工程12.3)(4.50g)の2−メトキシエタノール(41mL)溶液に添加し、混合物を125℃で1時間撹拌しながら撹拌した。反応混合物を冷却し、水を添加し、粗生成物を濾過により単離した。粗生成物を分取HPLCにより精製し、表題化合物含有フラクションをCHClおよび水性NaHCOに分配した。表題化合物を乾燥CHCl層蒸発後黄色固体として得た. LC-MS: tR=1.12分, M+H 258.4。
【0174】
工程12.3:d−2,2−ジメチル−プロピオンアミジンヒドロクロライド
【化46】

トリメチルアルミニウムのトルエン中2M溶液(61mL)を、塩化アンモニウム(6.53g)のトルエン(46mL)懸濁液に氷浴冷却下滴下した。反応混合物を4時間、rtで撹拌し、d−2,2−ジメチル−プロピオン酸ブチルエステル(工程12.4)(6.3g)を添加した。80℃で4日間加熱後、反応混合物を0℃に冷却し、MeOH(200mL)を注意深く滴下した。1時間、rtで撹拌および音波処理後、反応混合物をHyfloを通して濾過し、MeOHで洗浄し、濾液を蒸発させて、表題化合物を灰白色固体として得た。
【0175】
工程12.4:−2,2−ジメチル−プロピオン酸ブチルエステル
【化47】

−tert−ブチルクロライド(5.0g)を、触媒的量のヨウ素で活性化したマグネシウム(1.50g)のTHF(20mL)懸濁液に、1時間かけて、一定の還流に必要な加熱を行いながら少しずつ添加した。反応混合物をさらに1時間続け、グリニャール形成を確実にした。上記グリニャール溶液を氷浴で冷却したイミダゾール−1−カルボン酸ブチルエステル(7.5g、T. WernerおよびA.G.M. Barrett, J. Org. Chem. 2006, 71, 4302-4304.に記載の通り製造)のTHF(40mL)溶液に滴下した。反応混合物を18時間、rt撹拌し、(200mL)を添加し、混合物をHyfloを通して濾過し、濾液EtOで抽出し、EtO層をNaSOで乾燥させ、蒸発させて、表題化合物を得た。
【0176】
実施例13:(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−{[5−(6−d10−ジエチルアミノ−ピラジン−2−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド}
【化48】

イミダゾール−1−カルボン酸[5−(6−d10−ジエチルアミノ−ピラジン−2−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド(工程13.1)(19mg)を撹拌している(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(工程1.8)(9mg)およびEt3N(21μl)のDMF(0.5mL)溶液にrtで添加した。反応混合物をrtで56時間撹拌し、水(1mL)を添加し、表題化合物を濾過により回収した。MS(ESI): 陽428.1 (M+H), 陰426.2 (M-H)。
【0177】
工程13.1:イミダゾール−1−カルボン酸[5−(6−d10−ジエチルアミノ−ピラジン−2−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド
【化49】

CDI(78mg)を5−(6−d10−ジエチルアミノ−ピラジン−2−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イルアミン(工程13.2)(121mg)のDMF(2mL)溶液にrtで添加し、3.5時間、rtで静置した。反応混合物を濾過し、CHClで洗浄して、表題化合物。
【0178】
工程13.2:5−(6−d10−ジエチルアミノ−ピラジン−2−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イルアミン
【化50】

濃HCl(0.4mL)をN−[5−(6−d10−ジエチルアミノ−ピラジン−2−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アセトアミド(工程13.3)(140mg)のEtOH(9ml)溶液にrtで添加し、混合物を40時間加熱還流した。冷却した反応混合物を蒸発させ、水性NaHCOで中和し、10%MeOHのCHCl溶液で抽出した。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、蒸発させて、表題化合物を得た。LC-MS: tR=1.17分, M+H 274.4(方法A)。
【0179】
工程13.3:N−[5−(6−d10−ジエチルアミノ−ピラジン−2−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アセトアミド
【化51】

アルゴンで、2−d10−ジエチルアミノ−6−クロロピラジン(工程13.4)(293mg)、2−アセトアミド−4−メチルチアゾール(300mg)、酢酸パラジウム(24mg)、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロ(fuoro)ボレート(61mg)および炭酸セシウム(1.02g)のDMF(3mL)中の混合物をrtで5分間バブリングした。反応混合物を密閉バイアル中、アルゴン雰囲気下、45分間、150℃でBiotage InitiatorTMマイクロ波装置で加熱し、濾過し、分取HPLCで精製した。表題化合物含有フラクションを合わせ、蒸発させてアセトニトリルを除去し、表題化合物を濾過によりベージュ色固体として得た。LC-MS: tR=1.68分, M+H 316.3(方法A)。
【0180】
工程13.4:2−d10−ジエチルアミノ−6−クロロピラジン
【化52】

10−ジエチルアミン(0.5g)を撹拌している2,6−ジクロロピラジン[4774-14-5](0.93g)および炭酸カリウム(1.41g)のアセトニトリル(4mL)中の混合物にrtで添加した。反応混合物を55℃で60時間加熱し、冷却し、水を添加し、CHClで抽出した。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、蒸発させ、順相クロマトグラフィー、溶離剤CHClで精製して、表題化合物を得た。LC-MS: tR=2.10分, M+H 196.4および198.4(方法A)。
【0181】
実施例14:(2S,3R)−3−メトキシメチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)
【化53】

表題化合物を、実施例2に記載の方法に準じるが、(2S,3R)−3−メトキシメチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(工程14.1)を(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミドの代わりに使用して製造した。
表題化合物を白色固体として得た。HPLC: tR=3.18分(方法A); LC-MS: tR=1.88分, [M+H]+ 486(方法A); TLC: Rf=0.14 (19: 1 CH2Cl2/MeOH); 1H-NMR(d6-DMSO, 600MHz): 10.97 (br s, 1H), 8.60 (d, 1H), 7.55 (br s, 1H), 7.41 (d, 1H), 7.39 (br s, 1H), 7.04 (br s, 1H), 4.26 (br s, 1H), 3.73 (m, 1H), 3.45 (m, 1H), 3.40 (m, 1H), 3.24 (s, 3H), 3.16 (m, 1H), 2.50 (m, 1H), 2.42 (s, 3H), 2.02 (m, 1H), 1.77 (m, 1H), 1.61 (s, 6H)。
【0182】
工程14.1:(2S,3R)−3−メトキシメチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミド
【化54】

表題化合物を、工程1.8に記載の方法に準じるが、(2S,3R)−3−メトキシメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド
(工程14.2)を(2S,3R)−3−メチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミドの代わりに使用して製造した。さらに、50%HOで湿らせた10%Pd炭(Aldrich 330108)を乾燥触媒の代わりに使用して製造した。
表題化合物を白色固体として得た。ESI-MS: [M+H]+ 159。
【0183】
工程14.2:(2S,3R)−3−メトキシメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド
【化55】

表題化合物を、工程1.9に記載の方法に準じるが、(2S,3R)−3−メトキシメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステル(工程14.3)を(2S,3R)−3−メチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステルの代わりに使用して製造した。さらに、塩基性水性層をCHClの代わりにTHFで徹底的に抽出した。
表題化合物を黄色油状物として得た。HPLC: tR=2.35分(方法A); LC-MS: tR=0.47分, [M+H]+ 263(方法C); TLC: Rf=0.05 (1: 1 ヘプタン/EtOAc)。
【0184】
工程14.3:(2S,3R)−3−メトキシメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステル
【化56】

(3aR,6aS)−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ヘキサヒドロ−フロ[3,4−b]ピロール−6−オン[805246-48-4](17.05mmol)、KOH(71.60mmol)およびヨードメタン(68.20mmol)のトルエン(79mL)中の混合物を80℃で1.5時間撹拌した。反応混合物をrtに冷却し、水およびMTBEに分配した。水性層をMTBE(3×)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を黄色油状物として得た。HPLC: tR=2.98分(方法A); LC-MS: tR=0.69分, [M+H]+ 278(方法C); TLC: Rf=0.25 (1: 3 ヘプタン/EtOAc)。
【0185】
実施例15:(2S,3S)−3−ジメチルアミノメチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)
【化57】

表題化合物を、実施例2に記載の方法に準じるが、(2S,3S)−3−ジメチルアミノメチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(工程15.1)を(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミドの代わりに使用して製造した。
表題化合物を黄色固体として得た。HPLC: tR=4.71分(方法B); LC-MS: tR=1.58分, [M+H]+ 499(方法A); TLC: Rf=0.08 (4: 1 CH2Cl2/MeOH); 1H-NMR(d6-DMSO, 600MHz): 10.99 (br s, 1H), 8.60 (d, 1H), 7.55 (br s, 1H), 7.41 (d, 1H), 7.40 (br s, 1H), 7.04 (br s, 1H), 4.25 (br s, 1H), 3.69 (m, 1H), 3.41 (m, 1H), 2.51 (m, 1H), 2.41 (s, 3H), 2.32 (m, 1H), 2.17 (m, 1H), 2.17 (s, 6H), 2.01 (m, 1H), 1.72 (m, 1H), 1.61 (s, 6H)。
【0186】
工程15.1:(2S,3S)−3−ジメチルアミノメチル−ピロリジン−2−カルボン酸アミド
【化58】

表題化合物を、工程1.8に記載の方法に準じるが、(2S,3S)−3−ジメチルアミノメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド
(工程15.2)を(2S,3R)−3−メチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミドの代わりに使用して製造した。さらに、水素化を4バール圧下で行った。
表題化合物を黄色油状物として得た。ESI-MS: [M+H]+ 172。
【0187】
工程15.2:(2S,3S)−3−ジメチルアミノメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド
【化59】

(2S,3S)−3−アミノメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(工程15.3)(0.418mmol)、ナトリウムシアノボロハイドライド(2.86mmol)および37%水性ホルムアルデヒド(2.14mmol)のMeOH(3.3mL)中の混合物を55℃で16時間撹拌した。反応混合物をrtに冷却し、濃縮した。残留物をRediSep(登録商標)シリカゲルカラムを使用して精製して、表題化合物を白色泡状物として得た。HPLC: tR 3.59分(方法B); LC-MS: tR=0.86分, [M+H]+ 276(方法A); TLC: Rf=0.13 (9: 1 CH2Cl2/MeOH)。
【0188】
工程15.3:(2S,3S)−3−アミノメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド
【化60】

(2S,3S)−3−アジドメチル−1−((S)−1−フェニル−エチル)−ピロリジン−2−カルボン酸アミド(工程5.3)(0.723mmol)およびトリフェニルホスフィン(0.867mmol)のTHF(3mL)中の混合物をrtで25時間撹拌した。反応混合物を濃縮して、粗表題化合物を明褐色固体として得た。HPLC: tR 3.53分(方法B); ESI-MS: [M+H]+ 248。
【0189】
実施例16:(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−{[5−(2−tert−ブチル−ピリジン−4−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド}
【化61】

表題化合物を市販(Combi-Phos)4−ブロモ−2−tert−ブチル−ピリジン(4−ブロモ−2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジンの代わり)から、実施例1に記載する合成法を使用して製造した。
LC-MS: tR=0.45分, M+H=402.3, M-H=400.2(方法D). 1H-NMR(d6-DMSO, 400MHz): 8.495 (d, 1H), 7.34 (s, 2H), 7.205 (d, 1H), 6.95 (bs, 1H), 4.15 (m, 1H), 3.68 (dd, 1H), 3.37 (m, 1H), 2.39 (s, 3H), 2.37 (m, 1H), 1.95 (m, 1H), 1.68 (m, 1H), 1.32 (s, 9H), 0.965 (d, 3H)。
【0190】
PI3キナーゼ阻害剤としての効果
PI3KキナーゼGloアッセイ:50nLの化合物希釈を、黒色384ウェル低体積Non Binding Styrene(NBS)プレート(Costar Cat. No. NBS#3676)に分配した。メタノール中10mg/ml溶液として提供されたL−a−ホスファチジルイノシトール(PI)をガラス管に移し、窒素ビーム下に乾燥させた。次いで、それを3%オクチルグルコシド(OG)にボルテックス処理により再懸濁させ、4℃で貯蔵した。KinaseGloLuminescentキナーゼアッセイ(Promega, Madison/WI, USA)は、キナーゼ反応後に溶液に残るATP量を提供することにより、キナーゼ活性を測定する均一HTS法である。
【0191】
5μLのPI/OGとPI3Kサブタイプの混合物を添加した(表1)。キナーゼ反応を、最終体積10μL中10mM TRIS−HCl pH7.5、3mM MgCl、50mM NaCl、0.05%CHAPS、1mM DTTおよび1μM ATPを含む5μlのATPミックスの添加により開始させ、室温で反応させた。10μlのKinaseGloで反応を停止させ、プレートを10分後Synergy2リーダーで、ウェルあたり0.1秒の積分時間を使用して読んだ。2.5μMのパン−クラス1 PI3キナーゼ阻害剤(標準)をアッセイプレートに添加して、キナーゼ反応の100%阻害とし、0%阻害を溶媒媒体(90%DMSOの水溶液)で作成した。標準を参照化合物として使用し、全アッセイプレートに16希釈点のデュプリケートの形態で包含させた。
【0192】
【表2】

【0193】
PI3Kのクローニング
PI3Kα、PI3KβおよびPI3Kδ構築物は、p85α iSH2ドメインおよび各p110アイソフォームの構築物である。p85αフラグメントおよびp110アイソフォーム遺伝子を、以下に記載する胎盤、精巣および脳由来の市販RNAからRT−PCRにより作成した第一鎖cDNAからPCRにより得た。PI3Kγ構築物をRoger Williams lab, MRC Laboratory of Molecular Biology, Cambridge, UK (November, 2003)から得て、記載する(Pacold, Michael E.; Suire, Sabine; Perisic, Olga; Lara-Gonzalez, Samuel; Davis, Colin T.; Walker, Edward H.; Hawkins, Phillip T.; Stephens, Len; Eccleston, John F.; Williams, Roger L. Crystal structure and functional analysis of Ras binding to its effector phosphoinositide 3-kinase gamma. Cell (2000), 103(6), 931-943)。
【表3】

【0194】
BV1075:バキュロウイルスBV-1075のための構築物を、p85フラグメントおよびベクターpBlueBac4.5にクローン化したp110αフラグメントから成る3パートライゲーションにより作成した。p85フラグメントはNhe/Speで消化したプラスミドp1661-2であった。このクローン由来のp110αフラグメントを配列決定により確認し、LR410においてSpeI/HindIIIフラグメントとして使用した。バキュロウイルス発現ベクターLR410の作成のために、インサートをGateway適合pBlueBac4.5(Invitrogen)ベクターに移すためのゲイトウェイLR反応を使用した。クローニングベクターpBlueBac4.5(Invitrogen)をNhe/HindIIIで消化させた。これは構築物PED 153.8をもたらした。p85要素(iSH2)を、鋳型としてORF 318(上記)および順方向プライマーKAC1028(5'-GCTAGCATGCGAGAATATGATAGAT-TATATGAAG-AATATACC)(配列番号1)および2種の逆方向プライマーKAC1029(5'-GCCTCCACCAC-CTCCGCCTG-GTTTAATGCTGTTCATACGTTTGTC)(配列番号2)およびKAC1039(5'-TACTAGTC-CGCCTCCAC-CACCTCCGCCTCCACCACCTCCGCC)(配列番号3)を使用するPCRにより作成した。2種の逆方向プライマーは重複し、12×Glyリンカーおよびp110α遺伝子のN末端配列をSpeI部位に取り込む。12×Glyリンカーは、BV1052構築物の1個のGlyリンカーを置き換える。PCRフラグメントをpCR2.1 TOPO(Invitrogen)にクローニングした。得られたクローン中、p1661-2が配列決定により正しいと確認された。このプラスミドをNheおよびSpeIで消化し、得られたフラグメントをサブクローニングのためにゲル単離および精製した。
【0195】
p110αクローニングフラグメントを、クローンLR410(上記の)SpeIおよびHindIIIでの酵素消化により作成した。SpeI部位はp110α遺伝子のコーディング部位である。得られたフラグメントをサブクローニングのためにゲル単離および精製した。クローニングベクターpBlueBac4.5(Invitrogen)をNheおよびHindIIIでの酵素消化により作成した。切断ベクターをQiagenカラムから精製し、ウシ腸アルカリホスファターゼ(CIP)(BioLabs)で脱リン酸化した。CIP反応完了後、切断ベクターを再びカラム精製して、最終ベクターを作成した。Roche Rapidリガーゼおよびベンダー明細を使用して3パートライゲーションを行った。最終プラスミドを配列決定により確認した。
【0196】
キナーゼドメイン。
BV 1075のタンパク質配列:
1 MREYDRLYEE YTRTSQEIQM KRTAIEAFNE TIKIFEEQCQ TQERYSKEYI EKFKREGNEK
61 EIQRIMHNYD KLKSRISEII DSRRRLEEDL KKQAAEYREI DKRMNSIKPG GGGGGGGGGG
121 GLVECLLPNG MIVTLECLRE ATLITIKHEL FKEARKYPLH QLLQDESSYI FVSVTQEAER
181 EEFFDETRRL CDLRLFQPFL KVIEPVGNRE EKILNREIGF AIGMPVCEFD MVKDPEVQDF
241 RRNILNVCKE AVDLRDLNSP HSRAMYVYPP NVESSPELPK HIYNKLDKGQ IIVVIWVIVS
301 PNNDKQKYTL KINHDCVPEQ VIAEAIRKKT RSMLLSSEQL KLCVLEYQGK YILKVCGCDE
361 YFLEKYPLSQ YKYIRSCIML GRMPNLMLMA KESLYSQLPM DCFTMPSYSR RISTATPYMN
421 GETSTKSLWV INSALRIKIL CATYVNVNIR DIDKIYVRTG IYHGGEPLCD NVNTQRVPCS
481 NPRWNEWLNY DIYIPDLPRA ARLCLSICSV KGRKGAKEEH CPLAWGNINL FDYTDTLVSG
541 KMALNLWPVP HGLEDLLNPI GVTGSNPNKE TPCLELEFDW FSSVVKFPDM SVIEEHANWS
601 VSREAGFSYS HAGLSNRLAR DNELRENDKE QLKAISTRDP LSEITEQEKD FLWSHRHYCV
661 TIPEILPKLL LSVKWNSRDE VAQMYCLVKD WPPIKPEQAM ELLDCNYPDP MVRGFAVRCL
721 EKYLTDDKLS QYLIQLVQVL KYEQYLDNLL VRFLLKKALT NQRIGHFFFW HLKSEMHNKT
781 VSQRFGLLLE SYCRACGMYL KHLNRQVEAM EKLINLTDIL KQEKKDETQK VQMKFLVEQM
841 RRPDFMDALQ GFLSPLNPAH QLGNLRLEEC RIMSSAKRPL WLNWENPDIM SELLFQNNEI
901 IFKNGDDLRQ DMLTLQIIRI MENIWQNQGL DLRMLPYGCL SIGDCVGLIE VVRNSHTIMQ
961 IQCKGGLKGA LQFNSHTLHQ WLKDKNKGEI YDAAIDLFTR SCAGYCVATF ILGIGDRHNS
1021 NIMVKDDGQL FHIDFGHFLD HKKKKFGYKR ERVPFVLTQD FLIVISKGAQ ECTKTREFER
1081 FQEMCYKAYL AIRQHANLFI NLFSMMLGSG MPELQSFDDI AYIRKTLALD KTEQEALEYF
1141 MKQMNDAHHG GWTTKMDWIF HTIKQHALNE LGGAHHHHHH(配列番号4)
【0197】
【表4】

【0198】
BV949:p85 PI3Kα、PI3KβおよびPI3KδサブユニットのインターSH2ドメイン(iSH2)のためのおよび完全長p110βサブユニットのためのPCR産物を、オーバーラッピングPCRにより作成し、融合させた。iSH2 PCR産物を胎盤、精巣および脳(Clontech)由来の市販ヒトRNAから、最初にプライマーgwG130-p01(5'-CGAGAATATGATAGATTATATGAAGAAT-3')(配列番号5)およびgwG130-p02(5'-TGGTTT-AATGCTGTTCATACGTTTGTCAAT-3')(配列番号6)を使用してRT−PCRにより作成した第一鎖cDNAから得た。続いて、二次PCR反応において、Gateway組み換えAttB1部位およびリンカー配列をそれぞれp85 iSH2フラグメントの5'端および3'端に、プライマーgwG130-p03(5'-GGGACAAGTT-TGTACAAAAAAGCAGGCTACGAAGGAGATATACATATGCGAGAATATGATAGATTATATGAAGAAT-3')(配列番号7)およびgwG130-p05(5'-ACTGAAGCATCCTCCTC-CTCCTCCT-CCTGGTTTAATGCTGTTCATACGTTTGTC-3')(配列番号8)を使用して付加した。p110βフラグメントを、鋳型としてp110βクローン(配列を確認した未知源由来)を使用し、リンカー配列およびp110βの5'端を含むプライマーgwG130-p04(5'-ATTAAACCAGGAGGAGGAGGAGGAGGATGCTT-CAGTTTCATAATGCCTCCTGCT-3')(配列番号9)およびヒスチジンタグに融合したp110−βの3'端の配列を含むプライマーgwG130-p06(5'-AGCTCCGTGATGGTGATGGTGATGTGCTCCAGATC-TGTAGTCTTTCCGAA-CTGTGTG-3')(配列番号10)を使用するPCRにより得た。p85−iSH2/p110β融合タンパク質を、上記gwG130-p03プライマーおよびオーバーラッピングヒスチジンタグおよびAttB2組み換え配列(5'-GGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTTTAAGCTCCGTGATGGTGATGGTGATGTGCTCC-3')(配列番号11)を含むプライマーを使用して、iSH2フラグメントの3'端とp110βフラグメントの5'端でのリンカーの反応であるオーバーラッピングPCRにより集合させた。この最終生成物をGateway(Invitrogen)OR反応によりドナーベクターpDONR201(Invitrogen)に組み換えして、ORF253エントリークローンを作成した。このクローンを配列決定により確認し、バキュロウイルス発現ベクターLR280作成のためにインサートをGateway適合pBlueBac4.5(Invitrogen)に移すGatewayLR反応(Invitrogen)に使用した。このLR280はp85配列にアミノ酸変異を有する。
【0199】
キナーゼドメイン。
BV949のタンパク質配列:
1 MREYDRLYEE YTRTSQEIQM KRTAIEAFNE TIKIFEEQCQ TQERYSKEYI EKFKREGKEK
61 EIQRIMHNYD KLKSRISEII DSRRRLEEDL KKQAAEYREI DKRMNSIKPG GGGGGCFSFI
121 MPPAMADILD IWAVDSQIAS DGSIPVDFLL PTGIYIQLEV PREATISYIK QMLWKQVHNY
181 PMFNLLMDID SYMFACVNQT AVYEELEDET RRLCDVRPFL PVLKLVTRSC DPGEKLDSKI
241 GVLIGKGLHE FDSLKDPEVN EFRRKMRKFS EEKILSLVGL SWMDWLKQTY PPEHEPSIPE
301 NLEDKLYGGK LIVAVHFENC QDVFSFQVSP NMNPIKVNEL AIQKRLTIHG KEDEVSPYDY
361 VLQVSGRVEY VFGDHPLIQF QYIRNCVMNR ALPHFILVEC CKIKKMYEQE MIAIEAAINR
421 NSSNLPLPLP PKKTRIISHV WENNNPFQIV LVKGNKLNTE ETVKVHVRAG LFHGTELLCK
481 TIVSSEVSGK NDHIWNEPLE FDINICDLPR MARLCFAVYA VLDKVKTKKS TKTINPSKYQ
541 TIRKAGKVHY PVAWVNTMVF DFKGQLRTGD IILHSWSSFP DELEEMLNPM GTVQTNPYTE
601 NATALHVKFP ENKKQPYYYP PFDKIIEKAA EIASSDSANV SSRGGKKFLP VLKEILDRDP
661 LSQLCENEMD LIWTLRQDCR EIFPQSLPKL LLSIKWNKLE DVAQLQALLQ IWPKLPPREA
721 LELLDFNYPD QYVREYAVGC LRQMSDEELS QYLLQLVQVL KYEPFLDCAL SRFLLERALG
781 NRRIGQFLFW HLRSEVHIPA VSVQFGVILE AYCRGSVGHM KVLSKQVEAL NKLKTLNSLI
841 KLNAVKLNRA KGKEAMHTCL KQSAYREALS DLQSPLNPCV ILSELYVEKC KYMDSKMKPL
901 WLVYNNKVFG EDSVGVIFKN GDDLRQDMLT LQMLRLMDLL WKEAGLDLRM LPYGCLATGD
961 RSGLIEVVST SETIADIQLN SSNVAAAAAF NKDALLNWLK EYNSGDDLDR AIEEFTLSCA
1021 GYCVASYVLG IGDRHSDNIM VKKTGQLFHI DFGHILGNFK SKFGIKRERV PFILTYDFIH
1081 VIQQGKTGNT EKFGRFRQCC EDAYLILRRH GNLFITLFAL MLTAGLPELT SVKDIQYLKD
1141 SLALGKSEEE ALKQFKQKFD EALRESWTTK VNWMAHTVRK DYRSGAHHHH HHGA(配列番号12)
【0200】
キナーゼドメイン。
【表5】

【0201】
Roger Williams lab, MRC Laboratory of Molecular Biology, Cambridge, UK (November, 2003)から得た構築物。構築物の記載(Pacold, Michael E.; Suire, Sabine; Perisic, Olga; Lara-Gonzalez, Samuel; Davis, Colin T.; Walker, Edward H.; Hawkins, Phillip T.; Stephens, Len; Eccleston, John F.; Williams, Roger L. Crystal structure and functional analysis of Ras binding to its effector phosphoinositide 3-kinase gamma. Cell (2000), 103(6), 931-943)。構築物はN末端144aaを欠く。
【0202】
BV950のタンパク質配列:
1 MSEESQAFQR QLTALIGYDV TDVSNVHDDE LEFTRRGLVT PRMAEVASRD PKLYAMHPWV
61 TSKPLPEYLW KKIANNCIFI VIHRSTTSQT IKVSPDDTPG AILQSFFTKM AKKKSLMDIP
121 ESQSEQDFVL RVCGRDEYLV GETPIKNFQW VRHCLKNGEE IHVVLDTPPD PALDEVRKEE
181 WPLVDDCTGV TGYHEQLTIH GKDHESVFTV SLWDCDRKFR VKIRGIDIPV LPRNTDLTVF
241 VEANIQHGQQ VLCQRRTSPK PFTEEVLWNV WLEFSIKIKD LPKGALLNLQ IYCGKAPALS
301 SKASAESPSS ESKGKVRLLY YVNLLLIDHR FLLRRGEYVL HMWQISGKGE DQGSFNADKL
361 TSATNPDKEN SMSISILLDN YCHPIALPKH QPTPDPEGDR VRAEMPNQLR KQLEAIIATD
421 PLNPLTAEDK ELLWHFRYES LKHPKAYPKL FSSVKWGQQE IVAKTYQLLA RREVWDQSAL
481 DVGLTMQLLD CNFSDENVRA IAVQKLESLE DDDVLHYLLQ LVQAVKFEPY HDSALARFLL
541 KRGLRNKRIG HFLFWFLRSE IAQSRHYQQR FAVILEAYLR GCGTAMLHDF TQQVQVIEML
601 QKVTLDIKSL SAEKYDVSSQ VISQLKQKLE NLQNSQLPES FRVPYDPGLK AGALAIEKCK
661 VMASKKKPLW LEFKCADPTA LSNETIGIIF KHGDDLRQDM LILQILRIME SIWETESLDL
721 CLLPYGCIST GDKIGMIEIV KDATTIAKIQ QSTVGNTGAF KDEVLNHWLK EKSPTEEKFQ
781 AAVERFVYSC AGYCVATFVL GIGDRHNDNI MITETGNLFH IDFGHILGNY KSFLGINKER
841 VPFVLTPDFL FVMGTSGKKT SPHFQKFQDI CVKAYLALRH HTNLLIILFS MMLMTGMPQL
901 TSKEDIEYIR DALTVGKNEE DAKKYFLDQI EVCRDKGWTV QFNWFLHLVL GIKQGEKHSA
961 HHHHHH(配列番号13)
【0203】
【表6】

【0204】
BV1060:p85サブユニットのインターSH2ドメイン(iSH2)のためのおよび完全長p110δサブユニットのためのPCR産物をオーバーラッピングPCRにより作成し、融合させた。iSH2 PCR産物を鋳型としてORF318(上記)およびプライマーgwG130-p03(5'-GGGACAAG-TTTGTACAAAAAAGCAGGCTACGAAGGAGATATACATATGC-GAGAATATGATAGATTATATGAAGAAT-3')(配列番号7)およびgwG154-p04(5'-TCCTCCTCCT-CCTCCTCCTGGTTTAATGCTGTTCATACGTTTGTC-3')(配列番号14)を使用して作成した。p110δフラグメントを、胎盤、精巣および脳(Clontech)由来の市販ヒトRNAから、最初にプライマーgwG154-p01(5'-ATGCCCCCTGGGGTGGACTGCCCCAT-3')(配列番号15)およびgwG154-p02(5'-CTACTGCCTGT-TGTCTTTGGACACGT-3')(配列番号16)を使用してRT−PCRにより作成した第一鎖cDNAから得た。続くPCR反応において、リンカー配列およびヒスチジンタグを、プライマーgw154-p03(5'-ATTAAACCAGGAGGAGGAGGAGGAGGACCCCCTGGGGTGGAC-TGCCCCATGGA-3')(配列番号17)およびgwG154-p06(5'-AGCTCCGTGATGGTGATGGTGAT-GTGCT-CCCTGCCTGTTGTCTTTGGACACGTTGT-3')(配列番号18)を使用して、それぞれのp110δフラグメントの5'端および3'端に付加した。p85−iSH2/p110δ融合タンパク質を、第三のPCR反応において、オーバーラッピングリンカーにより、iSH2フラグメントの3'端とp110δフラグメントの5'端で、上記gwG130-p03プライマーおよびオーバーラッピングヒスチジンタグおよびGateway(Invitrogen)AttB2組み換え配列(5'-GGG-ACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTTTAA-GCTCCGTGATGGTGATGGTGAGTGCTCC-3')(配列番号19)を含むプライマーを使用して、集合させた。この最終産物をGateway OR反応でドナーベクターpDONR201(Invitrogen)に組み換えし、ORF319エントリークローンを作成した。このクローンを配列決定により確認し、バキュロウイルス発現ベクターLR415を作成するためのインサートのGateway適合pBlueBac4.5(Invitrogen)ベクターへの移動のためのGatewayLR反応(Invitrogen)に使用した。
【0205】
BV1060のタンパク質配列:
1 MREYDRLYEE YTRTSQEIQM KRTAIEAFNE TIKIFEEQCQ TQERYSKEYI EKFKREGNEK
61 EIQRIMHNYD KLKSRISEII DSRRRLEEDL KKQAAEYREI DKRMNSIKPG GGGGGPPGVD
121 CPMEFWTKEE NQSVVVDFLL PTGVYLNFPV SRNANLSTIK QLLWHRAQYE PLFHMLSGPE
181 AYVFTCINQT AEQQELEDEQ RRLCDVQPFL PVLRLVAREG DRVKKLINSQ ISLLIGKGLH
241 EFDSLCDPEV NDFRAKMCQF CEEAAARRQQ LGWEAWLQYS FPLQLEPSAQ TWGPGTLRLP
301 NRALLVNVKF EGSEESFTFQ VSTKDVPLAL MACALRKKAT VFRQPLVEQP EDYTLQVNGR
361 HEYLYGSYPL CQFQYICSCL HSGLTPHLTM VHSSSILAMR DEQSNPAPQV QKPRAKPPPI
421 PAKKPSSVSL WSLEQPFRIE LIQGSKVNAD ERMKLVVQAG LFHGNEMLCK TVSSSEVSVC
481 SEPVWKQRLE FDINICDLPR MARLCFALYA VIEKAKKARS TKKKSKKADC PIAWANLMLF
541 DYKDQLKTGE RCLYMWPSVP DEKGELLNPT GTVRSNPNTD SAAALLICLP EVAPHPVYYP
601 ALEKILELGR HSECVHVTEE EQLQLREILE RRGSGELYEH EKDLVWKLRH EVQEHFPEAL
661 ARLLLVTKWN KHEDVAQMLY LLCSWPELPV LSALELLDFS FPDCHVGSFA IKSLRKLTDD
721 ELFQYLLQLV QVLKYESYLD CELTKFLLDR ALANRKIGHF LFWHLRSEMH VPSVALRFGL
781 ILEAYCRGST HHMKVLMKQG EALSKLKALN DFVKLSSQKT PKPQTKELMH LCMRQEAYLE
841 ALSHLQSPLD PSTLLAEVCV EQCTFMDSKM KPLWIMYSNE EAGSGGSVGI IFKNGDDLRQ
901 DMLTLQMIQL MDVLWKQEGL DLRMTPYGCL PTGDRTGLIE VVLRSDTIAN IQLNKSNMAA
961 TAAFNKDALL NWLKSKNPGE ALDRAIEEFT LSCAGYCVAT YVLGIGDRHS DNIMIRESGQ
1021 LFHIDFGHFL GNFKTKFGIN RERVPFILTY DFVHVIQQGK TNNSEKFERF RGYCERAYTI
1081 LRRHGLLFLH LFALMRAAGL PELSCSKDIQ YLKDSLALGK TEEEALKHFR VKFNEALRES
1141 WKTKVNWLAH NVSKDNRQEL GGAHHHHHH(配列番号20)
【0206】
PI3Kα、PI3KβおよびPI3Kγ構築物の精製
PI3Kα、PI3KβおよびPI3Kγを2回のクロマトグラフィー工程により精製した:Niセファロース樹脂(GE Healthcare)上の固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)およびSuperdex 200 26/60カラム(GE Healthcare)を使用するゲル濾過。全緩衝液を4℃に冷却し、溶解を氷上で冷やしながら行った。カラム分画を室温で行った。PI3Kβ精製に使用した全緩衝液は、以下に記載するものに加えて0.05%Triton X100を含んだ。
典型的に10LのTn5細胞培養からの凍結細胞を、“溶解緩衝液”(20mM Tris−Cl、pH7.5、500mM NaCl、5%グリセロール、5mM イミダゾール、1mM NaF、0.1μg/mL オカダ酸(OAA)、5mM BME、1×Completeプロテアーゼ阻害剤カクテル−無EDTA(20錠/1L緩衝液、Roche Applied Sciences)、ベンゾナーゼ(25U/mL緩衝液、EMD Biosciences))に、1:6v/vペレット対溶解緩衝液比で再懸濁させ、密接に適合した杵を使用する20回のダウンシングにより機械的に溶解した。溶解物を45,000gで30分間遠心分離し、上清を予め平衡化したIMACカラムに載せた(3mL樹脂/100mL溶解物)。カラムを3−5カラム体積の溶解緩衝液で洗浄し、続いて3−5カラム体積で、20mM Tris−Cl、pH7.5、500mM NaCl、5%グリセロール、45mM イミダゾール、1mM NaF、0.1μg/mL OAA、5mM BME、1×Completeプロテアーゼ阻害剤カクテル−無EDTAで2回目の洗浄をした。タンパク質を20mM Tris−Cl、pH7.5、0.5M NaCl、5%グリセロール、250mM イミダゾール、1mM NaF、0.1μg/mL OAA、5mM BME、1×Completeプロテアーゼ阻害剤カクテル−無EDTAで溶出した。適切なフラクションをSDS−PAGEで分析し、それに従いプールした。タンパク質をさらに20mM Tris−Cl、pH7.5、0.5M NaCl、5%グリセロール、1mM NaF、5mM DTT、1×Completeプロテアーゼ阻害剤カクテル−無EDTAで平衡化したSuperdex 200 26/60カラムでのゲル濾過により精製した。適切なフラクションをSDS−PAGEで分析し、それに従いプールした。当量の透析緩衝液(20mM Tris−Cl、pH7.5、500mM NaCl、50%グリセロール、5mM NaF、5mM DTT)をプールに添加し、2回変えて透析緩衝液に対して透析した(一夜1回交換)。タンパク質を−20℃で貯蔵した。
【0207】
PI3Kδの精製
PI3Kδを3回のクロマトグラフィー工程により精製した:Niセファロース樹脂(GE Healthcare)での固定化金属親和性クロマトグラフィー、Superdex 200 26/60カラム(GE Healthcare)でのゲル濾過および最後にQ−HPカラム(GE Healthcare)でのイオン交換。全緩衝液を4℃に冷却し、溶解を氷上で冷やしながら行った。カラム分画を室温で行った。
典型的に10LのTn5細胞培養からの凍結細胞を、“溶解緩衝液”(20mM Tris−Cl、pH7.5、500mM NaCl、5%グリセロール、5mM イミダゾール、1mM NaF、0.1μg/mL オカダ酸(OAA)、5mM BME、1×Completeプロテアーゼ阻害剤カクテル−無EDTA(20 錠剤/1L緩衝液、Roche Applied Sciences)、ベンゾナーゼ(25U/mL 溶解緩衝液、EMD Biosciences))に、1:10 v/vペレット対溶解緩衝液比で再懸濁させ、密接に適合した杵を使用する20回のダウンシングにより機械的に溶解した。溶解物を45,000gで30分間遠心分離し、上清を予め平衡化したIMACカラムに載せた(5mL樹脂/100mL溶解物)。カラムを3−5カラム体積の溶解緩衝液で洗浄し、続いて3−5カラム体積の20mM Tris−Cl、pH7.5、500mM NaCl、5%グリセロール、40mM イミダゾール、1mM NaF、0.1μg/mL OAA、5mM BME、1×Completeプロテアーゼ阻害剤カクテル−無EDTAで2回目の洗浄をした。タンパク質を20mM Tris−Cl、pH7.5、500mM NaCl、5%グリセロール、250mM イミダゾール、1mM NaF、0.1μg/mL OAA、5mM BME、1×Completeプロテアーゼ阻害剤カクテル−無EDTAで溶出した。適切なフラクションをSDS−PAGEで分析し、それに従いプールした。タンパク質をさらに20mM Tris−Cl、pH7.5、500mM NaCl、5%グリセロール、1mM NaF、0.1μg/mL OAA、5mM DTT、1×Completeプロテアーゼ阻害剤カクテル−無EDTAで平衡化したSuperdex 200で精製した。適切なフラクションをSDS−PAGEで分析し、それに従いプールした。これらのフラクションを1:10 v/vプール体積対緩衝液比で“緩衝液A”(20mM Tris−Cl、pH8.2、5%グリセロール、1mM NaF、0.1μg/mL OAA、5mM DTT)で希釈し、分取Q−HPカラムに載せた。サンプル充填完了後、我々は緩衝液Aおよび5%“緩衝液B”(20mM Tris−Cl、pH8.2、1M NaCl、5%グリセロール、1mM NaF、0.1μg/mL OAA、5mM DTT)で3−5カラム体積洗浄した。我々は、タンパク質を緩衝液Bの5%−30%勾配を使用して溶出した。典型的に本タンパク質は〜200mM NaClで溶出する。適切なフラクションをSDS−PAGEで分析し、それに従いプールした。当量の透析緩衝液(20mM Tris−Cl、pH7.5、500mM NaCl、50%グリセロール、1mM NaF、0.1μg/mL OAA、5mM DTT)をプールに添加し、2回変えて透析緩衝液に対して透析した(一夜1回交換)。タンパク質を−20℃で貯蔵した。
【0208】
以下の結果が、上記アッセイを使用して得られた。PI3Kベータ、ガンマおよびデルタアイソフォームに対する選択性計数を、各IC50値をPI3KアルファIC50値で割って、計算した。
【表7】

n.d.=行わず

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

〔式中、
mは0または1であり;
nは0または1であり;
はH、ハロゲン、非置換C−C−アルキルまたは置換C−C−アルキルであり;
は独立して非置換または置換C−C−アルキル、非置換または置換C−C−アルコキシ、非置換または置換アミノ、ハロゲンまたはヒドロキシからなる群から選択され;
は独立して非置換または置換C−C−アルキル、非置換または置換C−C−アルコキシ、非置換または置換アミノ、ハロゲンまたはヒドロキシからなる群から選択され;
は独立して非置換または置換C−C−アルキル、非置換または置換C−C−アルコキシ、ハロゲンまたはヒドロキシからなる群から選択されるか;または
およびRは、それらが結合している同一または異なる炭素原子と一体となって、C−C−シクロアルキルまたはヘテロシクリルを形成し;
は非置換または置換ヘテロアリールである。〕
の化合物またはその塩;かつ
化合物(1R,2S,5S)−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,3−ジカルボン酸2−アミド3−{[5−(2−tert−ブチル−ピリミジン−4−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド}を除外する。
【請求項2】
がC−C−アルキル、C−C−アルコキシ、ジ−C−C−アルキル−アミノ、ハロゲンまたはヒドロキシである、
請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
がC−C−アルキル、C−C−アルコキシ、ジ−C−C−アルキル−アミノ、ハロゲンまたはヒドロキシである、
請求項1または2に記載の塩、またはその塩。
【請求項4】
が独立して非置換または置換C−C−アルキル、非置換または置換C−C−アルコキシ、ハロゲンまたはヒドロキシからなる群から選択されるか;または
およびRが、それらが結合している同じ炭素原子と一体となって、C−C−シクロアルキルを形成するか;または
およびRは、それらが結合している同一または異なる炭素原子と一体となって、ヘテロシクリルである、
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
が独立して非置換または置換C−C−アルキル、非置換または置換C−C−アルコキシ、ハロゲンまたはヒドロキシからなる群から選択されるか;または
およびRが、それらが結合している同じ炭素原子と一体となって、C−C−シクロアルキルまたはヘテロシクリルを形成する、
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
が非置換または、独立してハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、C−C−アルキル、過重水素化C−C−アルキル、C−C12−シクロアルキル、(C−C−アルキル)−C−C12−シクロアルキル、(ハロ−C−C−アルキル)−C−C12−シクロアルキル、アミノ−C−C−アルキル、ハロ−C−C−アルキル、N−C−C−アルカノイルアミノ−C−C−アルキル、N−C−C−アルカンスルホニル−アミノ−C−C−アルキル、ピロリジノ−C−C−アルキル、オキソ−ピロリジノ−C−C−アルキル、C−C−アルカンスルフィニル、C−C−アルカンスルホニル、C−C−アルコキシ、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−(C−C−アルキル)−アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−(過重水素化C−C−アルキル)−アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−(C−C−シクロアルキル)−アミノC−C−アルカノイルアミノ、ピロリジノ、オキソ−ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジン−1−イル、4−(C−C−アルキル、C−C−アルコキシ−C−C−アルキル、ハロ−C−C−アルキルまたはC−C10−シクロアルキル)−ピペラジン−1−イル、4−(アミノ−C−C−アルキル)−ピペラジン−1−イル、4−[N−モノ−またはN,N−ジ−(C−C−アルキルアミノ)−C−C−アルキル]−ピペラジン−1−イル、モルホリノ、チオモルホリノ、S−オキソ−またはS,S−ジオキソチオモルホリノ、C−C−アルカンスルホニルアミノ、カルバモイル、N−モノ−またはN,N−ジ−(C−C−アルキル、C−C−アルコキシ−C−C−アルキル、アミノ−C−C−アルキルおよび/または(N'−モノ−またはN',N'−ジ−(C−C−アルキル)−アミノ−C−C−アルキル)−カルバモイル、ピロリジン−1−カルボニル、ピペリジン−1−カルボニル、ピペラジン−1−カルボニル、4−(C−C−アルキル)ピペラジン−1−カルボニル、モルホリン−1−カルボニル、チオモルホリン−1−カルボニル、S−オキソ−またはS,S−ジオキソチオモルホリン−1−カルボニル、スルホ、C−C−アルカンスルホニル、C−C−アルカンスルフィニル、スルファモイル、N−モノ−またはN,N−ジ−(C−C−アルキル)−スルファモイル、モルホリノスルホニル、チオモルホリノスルホニル、チアゾリルから成る群から選択される1個以上の基で置換されている置換ヘテロアリールである、
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
がピリジル、ピリミジニル、ピラジニルおよびチアゾリルからなる群から独立して選択されるヘテロアリールであり、各々、独立してC−C−アルキル、過重水素化C−C−アルキル、ハロ−C−C−アルキル、1−(C−C−アルキル)−C−C−シクロアルキル、(ハロ−C−C−アルキル)−C−C−シクロアルキル、ジ−C−C−アルキルアミノ、ジ−(過重水素化C−C−アルキル)アミノからなるgぬから選択される1個の置換基で置換されている、
請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
mが0または1であり、nが1である、
請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
以下のものから選択される、請求項1に記載の化合物:
(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド);
(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド);
(rac)−3,3−ジメチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド);
(rac)−3,3−ジメチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド);
(2S,3S)−3−(アセチルアミノ−メチル)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド);
(2S,3S)−3−(アセチルアミノ−メチル)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド);
(2S,3S)−3−モルホリン−4−イルメチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(1−メチル−シクロプロピル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド);
(2S,3S)−3−モルホリン−4−イルメチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド);
(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({5−[2−(1−フルオロ−1−メチル−エチル)−ピリミジン−4−イル]−4−メチル−チアゾール−2−イル}−アミド);
(2S,3R)−3−ヒドロキシ−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−{[4'−メチル−2−(1−トリフルオロメチル−シクロプロピル)−[4,5']ビチアゾリル−2'−イル]−アミド}
(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−{[4'−メチル−2−(1−トリフルオロメチル−シクロプロピル)−[4,5']ビチアゾリル−2'−イル]−アミド};
(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−{[5−(2−d−tert−ブチル−ピリミジン−4−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド};
(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−{[5−(6−d10−ジエチルアミノ−ピラジン−2−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド};
(2S,3R)−3−メトキシメチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド);
(2S,3S)−3−ジメチルアミノメチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド);
(2S,3R)−3−メチル−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−{[5−(2−tert−ブチル−ピリジン−4−イル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド}。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、および場合によりさらなる治療剤を薬学的に許容される担体と共に含む、医薬組成物。
【請求項11】
脂質および/またはタンパク質キナーゼ依存性疾患の処置に使用するための、請求項1〜9のいずれかに記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
脂質および/またはタンパク質キナーゼ依存性疾患の処置用医薬組成物の製造のための、請求項1〜9のいずれかに記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項13】
脂質および/またはタンパク質キナーゼの阻害に応答する疾患の処置方法であって、予防有効量または治療有効量の請求項1〜9のいずれかに記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を、かかる処置を必要とする温血動物に投与することを含む、方法。
【請求項14】
疾患がクラスI PI3Kに依存する脂質キナーゼ依存性疾患である、請求項11に記載の使用のための化合物、または請求項12に記載の化合物の使用、または請求項13に記載の処置方法。
【請求項15】
疾患がPI3Kアルファ、PI3Kベータ、PI3Kデルタ、PI3Kガンマからなる群から選択されるクラスI PI3Kに依存する脂質キナーゼ依存性疾患である、請求項11に記載の使用のための化合物、または請求項12に記載の化合物の使用、または請求項13に記載の処置方法。
【請求項16】
疾患が増殖性疾患;良性または悪性腫瘍;次のものから選択される癌;肉腫;肺;気管支;前立腺;乳房(孤発性乳癌およびカウデン病罹患者を含む);膵臓;消化器癌;結腸;直腸;結腸癌腫;結腸直腸腺腫;甲状腺;肝臓;肝内胆管;肝細胞;副腎;胃;胃の;神経膠腫;神経膠芽腫;子宮内膜;黒色腫;腎臓;腎盂;膀胱;子宮体;子宮頸;膣;卵巣;多発性骨髄腫;食道;白血病;急性骨髄性白血病;慢性骨髄性白血病;リンパ性白血病;骨髄性白血病;脳;脳の癌腫;口腔および咽頭;喉頭;小腸;非ホジキンリンパ腫;黒色腫;絨毛結腸腺腫;新生物;上皮特性の新生物;リンパ腫;乳癌腫;基底細胞癌腫;扁平上皮細胞癌腫;光線性角化症;固形腫瘍を含む腫瘍疾患;頭頚部の腫瘍;真性多血症;本態性血小板血症;および骨髄異型を伴う骨髄線維症である、請求項11に記載の使用のための化合物、または請求項12に記載の化合物の使用、または請求項13に記載の処置方法。

【公表番号】特表2012−531456(P2012−531456A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518092(P2012−518092)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059352
【国際公開番号】WO2011/000905
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】