説明

羽根駆動装置及び光学機器

【課題】誤作動が防止された羽根駆動装置及び光学機器を提供することを課題とする。
【解決手段】羽根駆動装置1は、開口11を有した基板10と、開口11に進退可能な羽根20、30、40と、羽根20、30を駆動するアーム58aと、羽根40を駆動するアーム58bと、基板10に移動可能に支持されアーム58aに連動して規制位置及び許容位置間を移動する規制部材60とを備え、アーム58bは、第1及び第2位置間を移動可能であり、規制部材60が規制位置にありアーム58bが第1位置にある場合には、規制部材60とアーム58bとが当接することにより、アーム58bの第1位置から第2位置までの移動は規制され、規制部材60が許容位置にある場合には、規制部材60とアーム58bとが当接することなく、アーム58bの第1及び第2位置間の移動が許容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根駆動装置及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
光学機器に採用される羽根駆動装置が知られている。羽根駆動装置には、基板に形成された開口を開閉する複数の羽根を備えたものがある。特許文献1には、複数の羽根を、それぞれ独立して駆動する複数の駆動源を備えた装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−338134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
衝撃や振動等により羽根が誤作動する場合がある。羽根が誤作動すると、画質に影響を与える恐れがある。
【0005】
そこで本発明は、誤作動が防止された羽根駆動装置及び光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、開口を有した基板と、前記開口に進退可能な第1及び第2羽根と、前記第1及び第2羽根をそれぞれ駆動する第1及び第2駆動部材と、前記基板に移動可能に支持され前記第1駆動部材に連動して規制位置及び許容位置間を移動する規制部材とを備え、前記第2駆動部材は、第1及び第2位置間を移動可能であり、前記規制部材が前記規制位置にあり前記第2駆動部材が前記第1位置にある場合には、前記規制部材と前記第2駆動部材とが当接により、前記第2駆動部材の前記第1位置から前記第2位置までの移動は規制され、前記規制部材が前記許容位置にある場合には、前記規制部材と前記第2駆動部材とが当接することなく、前記第2駆動部材の前記第1及び第2位置間の移動が許容される、羽根駆動装置により達成できる。
【0007】
この構成により、規制部材が規制位置にあり第2駆動部材が第1位置にある場合には、第2駆動部材の第1位置から第2位置への移動が規制される。従って、この状態においては、第2駆動部材の誤作動が防止される。第2駆動部材は第2羽根を駆動するものであるので、第2羽根の誤作動が防止される。
【0008】
また、上記の羽根駆動装置を備えた光学機器であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、誤作動が防止された羽根駆動装置及び光学機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】羽根駆動装置の分解斜視図である。
【図2】全開状態での羽根駆動装置の正面図である。
【図3】全閉状態での羽根駆動装置の正面図である。
【図4】全閉状態から小絞り状態への移行時での羽根駆動装置の正面図である。
【図5】小絞り状態での羽根駆動装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、光学機器に採用される羽根駆動装置の分解斜視図である。羽根駆動装置1は、光学機器に搭載された撮像素子(不図示)への光量を調整する装置として機能する。羽根駆動装置1は、基板10、羽根20、30、40、電磁アクチュエータ50a、50bを含む。図2は、全開状態での羽根駆動装置の正面図である。尚、図2においては、上部に、電磁アクチュエータ50a、50bを示している。また、図2に示した羽根駆動装置1おいては、電磁アクチュエータ50a、50bの一部の構成を省略してある。羽根20、30は、第1羽根、開閉羽根に相当する。羽根40は、第2羽根、絞り羽根に相当する。尚、図2〜図5において、規制部材60をハッチングにより示している。また、羽根20を一点鎖線、羽根30を実線、羽根40を2点差線で示している。
【0012】
図1に示すように、基板10の一方側に羽根20、30、40、規制部材60が、基板10の他方側に電磁アクチュエータ50a、50bが配置されている。電磁アクチュエータ50aは、羽根20、30、規制部材60を駆動する。電磁アクチュエータ50bは、羽根40を駆動する。基板10の中央部には、被写体側からの光量が通過する開口11が形成されている。羽根20、30、40は、開口11を通過する通過光量を調整する。羽根20、30、40は、開口11に対して進退自在に基板10に支持されている。
【0013】
電磁アクチュエータ50a、50bは、図2において基板10よりも手前側に配置されている。羽根20、30、40、規制部材60は、図2において基板10よりも背面側に配置されている。
【0014】
基板10には、羽根20、30、40をそれぞれ回転可能に支持する支軸12、13、14が設けられている。詳細には、支軸12は、羽根20の嵌合孔22と回転可能に嵌合し、支軸13は、羽根30の嵌合孔33と回転可能に嵌合し、支軸14は、羽根40の嵌合孔44と回転可能に嵌合している。羽根20、30は、開口11を協働で開閉する。即ち、羽根20、30は、開口11を協働で全開状態又は全閉状態にする。
【0015】
羽根40には、開口41が形成されている。開口41は、開口11よりも径が大きい。羽根40には、開口41と重なるようにNDフィルタ42が貼り付けられている。開口41が開口11と重なることにより、NDフィルタ42を通過した光が開口11を通過する。このように羽根40は、単独で開口11を通過する光量を絞る。尚、開閉羽根としての羽根20、30には、開口は設けられていない。
【0016】
また、規制部材60は、薄板状であり合成樹脂製である。規制部材60は、基板10に設けられた支軸16により回転可能に支持されている。詳細には、図1に示すように、規制部材60には支軸16と回転可能に嵌合する嵌合孔66が設けられている。規制部材60には、駆動ピン59aと係合する係合溝69が設けられている。規制部材60は、支軸12との接触を回避するための逃げ溝62が設けられている。規制部材60は、規制部材60の位置に応じて駆動ピン59bの移動を規制又は許容する機能を有している。規制部材60は、駆動ピン59bの移動を規制する規制位置、駆動ピン59bの移動を許容する許容位置の間を移動する。詳しくは後述するが、図2、図5に示す規制部材60は、規制位置に位置し、図3、図4に示す規制部材60は、許容位置に位置している。詳しくは後述するが、規制部材60には切欠部65が形成されている。
【0017】
電磁アクチュエータ50aについて簡単に説明する。電磁アクチュエータ50aは、ロータ51a、ステータ53a、コイルボビン54a、コイル55aを有している。ロータ51aは、基板10に設けられた支軸15aにより回転可能に支持されており、円筒状であり、周方向に異なる極性に着磁されている。アーム58aは、合成樹脂製であり、ロータ51aの下面側に固定されロータ51aの回転動力を羽根20へ伝達する。コイルボビン54aは合成樹脂製でありコイル55aが巻回されている。コイルボビン54aは、ステータ53aの脚部に嵌合している。ステータ53aは、コイル55aが通電することにより励磁される。ステータ53aとロータ51aとの間で発生する磁気的な吸引力、反発力によってロータ51aは所定の範囲を回転する。電磁アクチュエータ50bも同様の構成である。
【0018】
アーム58aは、ロータ51aの回転により所定の範囲を旋回する。アーム58aは、ロータ51aの径方向の外側に突出している。アーム58aの先端には、光軸方向に突出した駆動ピン59aが形成されており、この駆動ピン59aは、基板10に設けられた逃げ溝18a内を移動する。また、駆動ピン59aは、羽根20の係合溝29及び羽根30の係合溝39と係合する。従って、駆動ピン59aは、係合溝29、39、69と係合している。尚、図2〜図5においては、係合溝29、39、69については符号を付していない。
【0019】
同様に、電磁アクチュエータ50bも、ロータ51bと、ロータ51bの回転動力を羽根40へ伝達するアーム58bとを有している。ロータ51bは、支軸15bに回転可能に支持されている。アーム58bには、駆動ピン59bが形成されている。駆動ピン59bは、基板10に設けられた逃げ溝18b内を移動する。駆動ピン59bは、羽根40の切欠部49に係合している。アーム58a、58bは、それぞれ第1、第2アームに相当する。駆動ピン59a、59bは、それぞれ第1、第2駆動ピンに相当する。アーム58a、駆動ピン59aは、第1駆動部材に相当する。アーム58b、駆動ピン59bは、第2駆動部材に相当する。
【0020】
図2〜図5においては、駆動ピン59a、59bの軌跡を点線で示している。ロータ51a、51bは、それぞれ回転範囲の両端位置で停止可能である。詳細には、揺動範囲を規定するストッパ(不図示)が設けられている。
【0021】
ロータ51aが回転すると、駆動ピン59aは所定の範囲を旋回する。これにより羽根20、30は、それぞれ支軸12、13を支点として回転する。ロータ51bが回転すると、駆動ピン59bは所定の範囲を旋回する。これにより、羽根40は、支軸14を支点として回転する。図2、図3に示す駆動ピン59bの位置を、第1位置と称し、図4、5に示す駆動ピン59bの位置を第2位置と称する。駆動ピン59bは、第1位置及び第2位置間を移動する。
【0022】
また、前述したように、駆動ピン59aには規制部材60の係合溝69と係合している。従って、駆動ピン59aの旋回に伴って、規制部材60は、支軸16を支点として回転する。
【0023】
次に、羽根駆動装置1の動作について説明する。
まず、全開状態について説明する。羽根20、30、40が開口11から退避した状態を、全開状態と称する。全開状態においては、開口11を通過する通過光量が最大となる。図2は、全開状態での羽根駆動装置1を示している。全開状態においては、規制部材60は規制位置に位置している。アーム58bは、第1位置にある。駆動ピン59bは、規制部材60の切欠部65から僅かに外れた箇所と対向する。この状態で、アーム58bが反時計方向に旋回しようとした場合、駆動ピン59bが規制部材60に当接する。これにより、アーム58bの反時計方向への旋回が規制される。即ち、規制部材60が規制位置にある場合には、アーム58bは、第1位置から第2位置への移動が規制される。従って、全開状態においては、例えば羽根駆動装置1に衝撃が加わった場合であっても、駆動ピン59bが反時計方向に旋回することが規制される。従って、羽根40が衝撃により移動することが防止できる。このように、羽根40の誤作動が防止されて全開状態が保持されている。尚、全開状態においては、羽根30、羽根40はストッパピン19cに当接し、羽根20はストッパピン19aに当接する。
【0024】
尚、駆動ピン59bの先端部と規制部材60とが当接する。詳細には、駆動ピン59bの先端部は、逃げ溝18bから突出しており、この先端部が規制部材60に当接する。これにより、基板10を介して電磁アクチュエータ50a、50bと、規制部材60とを基板10を介して反対側に配置した場合であっても、アーム58bの移動を規制することができる。
【0025】
全開状態から全閉状態への移行について説明する。
図2に示した状態から、ロータ51aが反時計方向に回転すると駆動ピン59aは反時計方向に旋回し、羽根20、30は、図3に示すように開口11を覆う。これにより、全閉状態となる。また、この際に規制部材60は、駆動ピン59aの旋回に伴って時計方向に回転し、許容位置に位置する。図3に示すように、全閉状態では、規制部材60の切欠部65の端部と駆動ピン59bとが対向するが、当接はしていない。尚、全閉状態においては、羽根30はストッパピン19aに当接する。これにより、全閉状態での羽根30の位置が規定される。また、ロータ51bが第1位置にある場合にロータ51aが回転することにより、図2に示した全開状態と図3に示した全閉状態とを繰り返すことができる。
【0026】
次に、全閉状態から小絞り状態への移行について説明する。
図3に示した状態から、ロータ51bが反時計方向に回転すると駆動ピン59bは反時計方向に旋回し、駆動ピン59bは第2位置に位置する。これにより、図4に示すように、羽根20、30が開口11を覆った状態で、羽根40は開口11と重なる。詳細には、開口41と開口11とが重なる。この状態においては、図4に示すように、羽根20、30、40が開口11と重なる。従って、図4に示した状態も全閉状態である。切欠部65の形状は、規制部材60が許容位置にある場合には、駆動ピン59bの第1及び第2位置間の移動を逃すような形状である。
【0027】
次に、図4に示した状態から、ロータ51aが時計方向に回転することにより、駆動ピン59aは時計方向に旋回し、規制部材60は、反時計方向に回転する。これにより、規制部材60は、許容位置から規制位置に移動する。これにより、図5に示すように、羽根20、30は、開口11から退避し、羽根40のみが開口11に重なった状態となる。従って、小絞り状態となる。尚、駆動ピン59bが第2位置に位置している場合には、規制部材60の許容位置から規制位置への移動が可能である。尚、小絞り状態においては、羽根40はストッパピン19bに当接する。これにより、羽根40の位置が規定される。また、アーム58bが第2位置にある場合に、ロータ51aが回転することにより、図4に示した全閉状態と図5に示した小絞り状態とを繰り返すことができる。このように、羽根駆動装置1は、全開、全閉、小絞り状態の順に移行する。
【0028】
以上のように、本実施例の羽根駆動装置1においては、規制部材60は全開状態での羽根40の誤作動を防止している。これにより、画質への影響を防止できる。尚、規制部材により規制される状態は、全開状態に限られず、全閉状態であってもよい。
【0029】
また、図2〜図5に示したように、規制部材60は、アーム58bが第1又は第2位置にある場合には、規制位置及び許容位置間の移動が許容される。従って、規制部材60によってアーム58aの回転が制限されることは無い。即ち、規制部材60によって、羽根20、30の動作が制限されることはない。
【0030】
尚、ロータ51a、51bは、回転範囲の両端位置でのみ停止可能である。これにより、ロータがその回転範囲の両端位置及び途中位置の3箇所で停止可能なアクチュエータを採用する場合と比較し、コストが抑制される。詳細には、このようなアクチュエータよりも、回転範囲の両端位置でのみ停止可能なアクチュエータを2つ用いた方が、コストが抑制される。また、ロータを回転範囲の途中位置で停止させる場合には、ハンチングなどの問題が起こり得る。
【0031】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0032】
本実施例において、NDフィルタを備えた羽根の代わりに、基板の開口よりも小さい絞り開口を有した羽根を用いてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 羽根駆動装置
10 基板
11 開口
20、30、40 羽根
50a、50b 電磁アクチュエータ
58a、58b アーム
59a、59b 駆動ピン
60 規制部材
65 切欠部
69 係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有した基板と、
前記開口に進退可能な第1及び第2羽根と、
前記第1及び第2羽根をそれぞれ駆動する第1及び第2駆動部材と、
前記基板に移動可能に支持され前記第1駆動部材に連動して規制位置及び許容位置間を移動する規制部材とを備え、
前記第2駆動部材は、第1及び第2位置間を移動可能であり、
前記規制部材が前記規制位置にあり前記第2駆動部材が前記第1位置にある場合には、前記規制部材と前記第2駆動部材との当接により、前記第2駆動部材の前記第1位置から前記第2位置までの移動は規制され、
前記規制部材が前記許容位置にある場合には、前記規制部材と前記第2駆動部材とが当接することなく、前記第2駆動部材の前記第1及び第2位置間の移動が許容される、羽根駆動装置。
【請求項2】
前記規制部材は、前記第2駆動部材が前記第1又は第2位置にある場合には、前記規制位置及び許容位置間の移動が許容される、請求項1の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記第2駆動部材は、旋回する第2アームと、前記第2アームに設けられ前記第2羽根と係合した第2駆動ピンとを含み、
前記規制部材は、前記第2駆動ピンと当接することにより前記第2駆動部材の移動を規制する、請求項1の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記規制部材及び前記第2駆動部材は、前記基板を介してそれぞれ反対側に配置されており、
前記第2駆動ピンは、前記基板に形成された逃げ孔から突出し前記規制部材に当接し得る先端部を有している、請求項3の羽根駆動装置。
【請求項5】
前記第1駆動部材は、旋回する第1アームと、前記第1アームに設けられ前記第1羽根及び前記規制部材と係合した第1駆動ピンとを含む、請求項1乃至4の何れかの羽根駆動装置。
【請求項6】
前記第1羽根は、前記開口を開閉する開閉羽根であり、
前記第2羽根は、単独で前記開口を小絞り状態にする絞り羽根である、請求項1乃至5の何れかの羽根駆動装置。
【請求項7】
前記第1及び第2駆動部材をそれぞれ駆動する第1及び第2駆動源を備え、
前記規制部材、前記第1及び第2羽根は、前記基板に対して同一側に配置されており、
前記第1及び第2駆動源は、前記基板に対して反対側に配置されている、請求項1乃至6の何れかの羽根駆動装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかの羽根駆動装置を備えた光学機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−266718(P2010−266718A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118428(P2009−118428)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】