説明

耐光性封止樹脂組成物

【課題】耐光性に優れた光学素子の封止用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】フッ素化された多官能エポキシ樹脂および/またはフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む硬化性の主剤、および該樹脂を硬化させるための硬化剤を含む光学素子の封止用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の光学材料の封止や材料として有用であり、耐光性、特に紫外線に対する耐性に優れたエポキシ基含有フッ素樹脂を含む耐光性封止樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学素子の封止剤としては、非フッ素系のエポキシ樹脂が多用されている(特許文献1)。
【0003】
また、エポキシ基を有する含フッ素化合物を用いた硬化性樹脂組成物も知られており(特許文献2、3)、光学部品の材料、光学素子・装置の部品などの接着剤として有用とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−114390号公報
【特許文献2】特公平08−030028号公報
【特許文献3】特開平09−309943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非フッ素系のエポキシ樹脂では紫外線などの光に対する耐光性が不充分であり、劣化が激しく、耐久性の点で改善が求められている。
【0006】
特許文献2および3に開示されている硬化性組成物は、接着剤としての用途、光学材料の原料としての用途が示唆されているだけである。
【0007】
封止剤は、たとえば発光ダイオード(LED)、EL素子、非線形光学素子などの発光素子などの光機能素子のパッケージ(封入)、実装などに使用する場合、発光素子からの光による劣化が特に問題となり、寿命を短くする一因となっている。
【0008】
本発明の目的は、耐光性に優れた封止用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、フッ素化された多官能エポキシ樹脂および/またはフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む硬化性の主剤(A)、および該樹脂を硬化させるための硬化剤(B)を含む光学素子の封止用樹脂組成物に関する。
【0010】
硬化性の主剤(A)としては、主剤(A)が、式(I)〜(IV):
【化1】

[式中、Rfは、
【化2】

{式中、
Aは式:
【化3】

(式中、Rf1は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基;Rf2は炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基;pは0〜3の整数;qは0〜3の整数;rは0または1;sは0〜5の整数;tは0〜5の整数)で示される含フッ素有機基;
BはAと同じかまたは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、もしくは炭素数1〜8のフルオロアルキル基;
Zは水素原子または炭素数1〜18のフルオロアルキル基;
Mは、
【化4】

(式中、Rは同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、OH、CH3、NH2、ハロゲン原子、炭素数1〜20のフルオロアルキル基;l1、l2およびl3はいずれも0または1〜10の整数で置換基Rの個数を表す)で示される環式脂肪族炭化水素基;
x1およびx2は1〜36の整数}で示される環式脂肪族炭化水素基;n1〜n4は0または任意の正の数]で示されるフッ素化された多官能エポキシ樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種、および/または式(V)〜(VI):
【化5】

[式中、Rfは上記と同じ;Yは水素原子またはCH3;n5およびn6は0または任意の正の数]で示されるフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましい。
【0011】
Rfは、
【化6】

(x3は1〜6の整数)
であることが好ましく、なかでも
【化7】

であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の封止用樹脂組成物は、波長350〜500nmに主発光ピークを有する発光素子の封止に特に好適であり、また、発光ダイオード(LED)の封止に特に好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の封止用樹脂組成物は優れた耐光性を有しているので、たとえば発光ダイオード(LED)、EL素子、非線形光学素子などの発光素子などの光機能素子のパッケージ(封入)、実装などに使用した場合に、耐久性が向上し、光機能素子の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例16で測定した所定量の露光後の硬化物の透過性の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の耐光性封止用樹脂組成物は、フッ素化された多官能エポキシ樹脂および/またはフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む硬化性の主剤(A)、および該樹脂を硬化させるための硬化剤(B)を含む。
【0016】
以下、各成分について説明する。
【0017】
(A)フッ素化された多官能エポキシ樹脂および/またはフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む硬化性の主剤
フッ素化された多官能エポキシ樹脂および/またはフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、たとえばビスフェノール系化合物、ベンゼン系化合物、ジフェニルエーテル系化合物、シクロヘキサン系化合物、グリコール系化合物、ビニルエーテル系化合物のフッ素化物が用いられ、化学構造にフッ素をもつ多官能エポキシ樹脂、多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂であれば特に限定されない。
【0018】
なかでも、前記の式(I)〜(IV)で示されるフッ素化された多官能エポキシ樹脂、式(V)〜(VI)で示されるフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、耐光性に優れるほか、屈折率や耐熱性の観点から好ましい。
【0019】
【化8】

(式中、Rf、Y、n1〜n6は前記と同じ)
【0020】
式(I)で示される化合物としては、なかでもRfが、
【化9】

{式中、
Aは式:
【化10】

(式中、Rf1は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基;Rf2は炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基;pは0〜3の整数;qは0〜3の整数;rは0または1;sは0〜5の整数;tは0〜5の整数)で示される含フッ素有機基;
BはAと同じかまたは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、もしくは炭素数1〜8のフルオロアルキル基;
Zは水素原子または炭素数1〜18のフルオロアルキル基}
であるものが好ましく、特に、つぎの化合物が好適である。
【0021】
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

(式中、n7〜n13は0もしくは任意の正の数)
【0022】
式(II)で示される化合物としては、なかでもRfが、
【化18】

(x4およびx5は1〜8の整数)
であるものが好ましく、特に、つぎの化合物が好適である。
【0023】
【化19】

(x6は1〜6の整数)
【0024】
式(III)で示される化合物としては、なかでもRfが、
【化20】

{式中、
Aは式:
【化21】

(式中、Rf1は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基;Rf2は炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基;pは0〜3の整数;qは0〜3の整数;rは0または1;sは0〜5の整数;tは0〜5の整数)で示される含フッ素有機基;
BはAと同じかまたは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、もしくは炭素数1〜8のフルオロアルキル基;
Zは水素原子または炭素数1〜18のフルオロアルキル基}
であるものが好ましく、特に、つぎの化合物が好適である。
【0025】
【化22】

(n14〜n18は0または任意の正の数)
【0026】
式(IV)で示される化合物としては、なかでもRfが、
【化23】

(x6およびx7は1〜6の整数)
であるものが好ましく、特に、つぎの化合物が好適である。
【0027】
【化24】

(x8は1〜6の整数)
【0028】
式(V)または(VI)で示されるフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂における「エポキシ(メタ)アクリレート」は、多官能エポキシ化合物(たとえばグリシジルエーテル類など)を(メタ)アクリル酸と反応させること、すなわち、ヒドロキシアクリレートを生成させることによって製造される複数の(メタ)アクリロイル基を有するヒドロキシ(メタ)アクリレートを意味する。
【0029】
式(V)のフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、なかでもRfが、
【化25】

{式中、
Aは式:
【化26】

(式中、Rf1は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基;Rf2は炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基;pは0〜3の整数;qは0〜3の整数;rは0または1;sは0〜5の整数;tは0〜5の整数)で示される含フッ素有機基;
BはAと同じかまたは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、もしくは炭素数1〜8のフルオロアルキル基;
Zは水素原子または炭素数1〜18のフルオロアルキル基}
であり、YがHであるものが好ましく、特に、つぎの化合物が好適である。
【0030】
【化27】

(n19は0または任意の正の数)
【化28】

(n20は0または任意の正の数)
【化29】

(n21は0または任意の正の数)
【化30】

(n22は0または任意の正の数)
【化31】

(n23は0または任意の正の数)
【0031】
式(VI)で示されるフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、なかでもRfが、
【化32】

(x9およびx10は1〜8の整数)
であり、YがHであるものが好ましく、特に、つぎの化合物が好適である。
【0032】
【化33】

(x11は1〜6の整数)
【0033】
化合物(I)〜(VI)の中でも、封止剤の耐熱性、透明性という要求特性と耐光性に特に優れる点から、式(I)、(III)、(V)の化合物、特につぎのものが好ましい。
【0034】
【化34】

(n7は0または任意の正の数)
【化35】

(n16は0または任意の正の数)
【化36】

(n19は0または任意の正の数)
【0035】
本発明におけるフッ素化された多官能エポキシ樹脂および/またはフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む主剤は、上記の少なくとも1つの成分としてフッ素化された多官能エポキシ樹脂やフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が含まれていれば、フッ素化された多官能エポキシ樹脂やフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の1種または複数種で構成されていてもよいし、屈折率の調整、硬化性の調整、樹脂組成物相互の相溶性の調整などのために、これらのフッ素化された多官能エポキシ樹脂やフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂以外の他のエポキシ化合物や(メタ)アクリレート化合物を併用してもよい。
【0036】
そのような併用する化合物の具体例として、以下、主剤としてフッ素化多官能エポキシ樹脂を用いる場合とフッ素化多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を用いる場合に分けて説明する。
【0037】
(フッ素化多官能エポキシ樹脂を用いる場合)
本発明の耐光性封止樹脂組成物の中で、式(I)〜(IV)で表わされるフッ素化多官能エポキシ樹脂と混合して使用される他のエポキシ化合物の例としては、以下の構造式で表わされるエポキシ樹脂:
【化37】

(n24〜n26は0または任意の正の数)
【化38】

【化39】

のほかに、ノボラツクエポキシ、o−クレゾールノボラツクエポキシ、エポキシ化ポリブタジエンなどの非フッ素系多官能エポキシ樹脂があげられる。
【0038】
また、つぎの構造式に示すような非フッ素系多官能エポキシ化合物も用いることができる。
【0039】
【化40】

(x12は1〜40の整数)
【0040】
また、組成物の粘性を下げる目的で、希釈剤として、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルなどの炭素数2〜25のアルキルモノグリシジルエーテルのほか、ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ドデカンジオールジグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、テトラフルオロプロピルグリシジルエーテル、オクタフルオロペンチルグリシジルエーテル、ドデカフルオロオクチルジグリシジルエーテル、スチレンオキシド、リモネンジエポキシド、リモネンモノオキシド、α−ピネンエポキシド、β−ピネンエポキシド、シクロヘキセンエポキシド、シクロオクテンエポキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシドなどがあげられる。そのほか、つぎの構造式で表わされる化合物も希釈剤として用いることができる。
【0041】
【化41】

(QはH、Cl、Br、炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数1〜18のフルオロアルキル基)、
【化42】

(YはHまたはCH3
【0042】
(フッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を用いる場合)
本発明の耐光性封止樹脂組成物の中で、式(V)〜(VI)で表わされるフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と混合して使用される(メタ)アクリレート化合物としては、フッ素系または非フッ素系の単官能(メタ)アクリレート化合物、非フッ素系の2官能(メタ)アクリレート化合物、3官能以上の非フッ素系の多官能(メタ)アクリレート化合物などをあげることができる。
【0043】
非フッ素系の単官能(メタ)アクリレート化合物としては、たとえばメチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリエトキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレートなどをあげることができる。
【0044】
フッ素系の単官能(メタ)アクリレート化合物としては、
【化43】

(式中、Z1はH、F、CH3;kは1〜6の整数;m1は1〜29の整数;m2は0〜50の整数;Y1はHまたはF;R1e、R2e、R3eは同じかまたは異なり、H、炭素数1〜29のエーテル結合を含んでいてもよいアルキル基または炭素数1〜29のエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキル基。ただし、R1e、R2e、R3eのいずれかにフッ素原子を含む)
などがあげられる。
【0045】
より具体的には、
【化44】

などがあげられる。
【0046】
非フッ素系の2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどをあげることができる。
【0047】
非フッ素系の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物としては、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(たとえば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620など)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどをあげることができる。
【0048】
非フッ素系の(メタ)アクリレートのオリゴマーも併用できる。具体的には、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどをあげることができる。
【0049】
非フッ素系のウレタン(メタ)アクリレートとしては、たとえばジオール化合物(たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ビスフェノールAポリプロポキシジオールなど)、またはこれらジオール化合物と二塩基酸もしくはその無水物(たとえば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸もしくはこれらの無水物)との反応物であるポリエステルジオールと、有機ポリイソシアネート(たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの鎖状飽和炭化水素イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネートなどの環状飽和炭化水素イソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート)を反応させ、ついで水酸基含有(メタ)アクリレートを付加した反応物などがあげられる。
【0050】
非フッ素系のエポキシ(メタ)アクリレートはエポキシ樹脂類と(メタ)アクリル酸との反応物などであり、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の末端グリシジルエーテル、フルオレンエポキシ樹脂などをあげることができる。
【0051】
非フッ素系のポリエステル(メタ)アクリレートとしては、たとえば、上記のジオール化合物と上記の二塩基酸またはその無水物との反応物であるポリエステルジオールと、(メタ)アクリル酸の反応物などがあげられる。
【0052】
さらに、以上のエポキシ化合物や(メタ)アクリレート化合物をオリゴマーとしてそのまま、あるいは他の成分と混合して用いてもよい。一般に、硬化性エポキシ樹脂やエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の製造では、生成物は、単量体から数量体、オリゴマー、固体高分子までその沸点などにより取り分けられる。これらの生成物は、それぞれ粘性が異なり、接着剤などとしての用途により使い分けられる。本発明においても、主剤を構成するフッ素化多官能エポキシ樹脂、フッ素化多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の使い方はこれと同様である。
【0053】
本発明の耐光性封止樹脂組成物には、さらに、主剤の樹脂を硬化させるための硬化剤(B)、酸化防止剤、UV吸収剤などを配合することができる。
【0054】
硬化剤(B)としては、フッ素化された多官能エポキシ樹脂が主剤(A)の場合、酸無水物、酸無水物の変性物、およびカチオン重合開始剤よりなる群から選ばれる1種または2種以上のものが用いられる。
【0055】
カチオン重合開始剤としては、いわゆるオニウム塩、メタロセン錯体が好適に用いられる。オニウム塩としては、アンモニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、アルソニウム塩などが用いられる。なお、これらの硬化剤は、単量体、数量体、オリゴマー、ポリマーの化学構造であってもよい。各硬化剤の化学構造は特に限定されないが、通常、エポキシ樹脂の硬化に有効性が知られている公知の化合物を任意に選択して使用することができ、たとえば「イメージング用有機材料」(有機エレクトロニクス材料研究会編、1993年7月8日、ぶんしん出版発行)に記述されているオニウム塩、メタロセン錯体を使うことができる。例示すれば、以下の式で表される各化合物、およびその誘導体をあげることができる。硬化剤の濃度は、用いる硬化剤の活性度、反応性により異なるが、通常、樹脂組成物100質量部に対して10質量部以下の濃度で用いられる。より好適には、5質量部以下で十分であり、特に反応性の高いものでは1質量部以下で用いられる。
【0056】
【化45】

【化46】

【化47】

【化48】

【化49】

【化50】

【化51】

【0057】
上記の構造式において、特に指定しない限り、RおよびR1〜R4は、H、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフルオロアルキル基またはフェニル基を示し、互いに同じでも異なっていてもよい。X-は、ハロゲンイオン、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-、CF3COO-、HSiF6-、HSO4-、SCN-、CH3SO4-、あるいは次式:
【化52】

で表される陰イオンを示す。nは1〜10,000である。
【0058】
また、硬化剤(B)として酸無水物、および酸無水物の変性物も使用できる。
【0059】
本発明の耐光性封止樹脂組成物中における硬化剤(B)としての酸無水物は、分子中に炭素−炭素の二重結合を持たない酸無水物が好ましく、具体的には、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、水添無水ナジック酸、水添無水メチルナジック酸、水添無水トリアルキルヘキサヒドロフタル酸、無水2,4−ジエチルグルタル酸などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中で、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸が耐熱性に優れ、無色の硬化物が得られる点で特に好ましい。
【0060】
硬化剤(B)として酸無水物のみを用いる場合、酸無水物の配合割合は、耐光性封止樹脂組成物の全エポキシ樹脂成分のエポキシ当量により異なるが、好ましくは全エポキシ樹脂成分100質量部に対し、40〜200質量部の範囲内で配合される。
【0061】
本発明の耐光性封止樹脂組成物中における硬化剤(B)としての酸無水物の変性物とは、上述の酸無水物、好ましくは無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸をグリコールなどで変性したものである。
【0062】
変性に用いることのできるグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリエーテルグリコール類;これらのうちの2種類以上のグリコールおよび/またはポリエーテルグリコールの共重合ポリエーテルグリコール類を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0063】
変性量は酸無水物1モルに対してグリコール0.4モル以下が好ましい。変性量が多くなると、組成物の粘度が高くなり、作業性が悪くなってしまったり、エポキシ樹脂との反応性が低下し、硬化が遅くなり、素子を封止する時の生産性が悪くなってしまったりするため好ましくない。
【0064】
硬化剤(B)として酸無水物の変性物のみを用いる場合、酸無水物の変性物の配合割合は、耐光性封止樹脂組成物の全エポキシ樹脂成分のエポキシ当量により異なるが、好ましくは全エポキシ樹脂成分100質量部に対し、40〜200質量部の範囲内で配合される。
【0065】
硬化剤(B)として酸無水物および/または酸無水物の変性物を用いる場合、本発明の耐光性封止樹脂組成物中には、エポキシ樹脂と酸無水物および/またはその変性物との硬化反応を促進する目的で、硬化促進剤を使用することができる。
【0066】
硬化促進剤の例としては、3級アミン類およびその塩類;イミダゾール類およびその塩類;有機ホスフィン化合物類;オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズなどの有機酸金属塩類が挙げられ、特に好ましい硬化促進剤は、有機ホスフィン化合物類である。
【0067】
硬化促進剤の配合割合は、硬化剤として配合した酸無水物および/またはその変性物100質量部に対し、好ましくは0.01〜10質量部の範囲内である。上記範囲を外れると、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性および耐湿性のバランスが悪くなる傾向にある。
【0068】
フッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が硬化性の主剤(A)である場合は、硬化剤(B)としては、熱ラジカル重合性開始剤および光ラジカル重合性開始剤が好適に用いられる。
【0069】
熱ラジカル重合性開始剤としては、具体的には、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオジケネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスジエチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0070】
光ラジカル重合性開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド類などを挙げることができる。
【0071】
好ましくは、アセトフェノン類であり、さらに好ましくは2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを挙げることができる。
【0072】
なお、本発明の樹脂組成物においては、ラジカル開始剤は単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。また、熱ラジカル開始剤と光ラジカル開始剤を組み合わせてもよい。ラジカル開始剤の配合比率は耐光性封止樹脂組成物100質量部に対し、通常、0.001〜50質量部であり、好ましくは0.005〜40質量部である。
【0073】
本発明の耐光性封止樹脂組成物には、酸化防止剤を配合して、加熱時の酸化劣化を防止し、着色の少ない硬化物とすることが好ましい。
【0074】
酸化防止剤としては、フェノール系、硫黄系、リン系酸化防止剤を使用することができ、具体的には、以下のような酸化防止剤が挙げられる。
【0075】
(フェノール系酸化防止剤)
モノフェノール類;2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなど
【0076】
ビスフェノール類;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなど
【0077】
高分子型フェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノールなど
【0078】
(硫黄系酸化防止剤)
ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネートなど
【0079】
(リン系酸化防止剤)
ホスファイト類;トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイトなど
【0080】
オキサホスファフェナントレンオキサイド類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなど
【0081】
これらの酸化防止剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよいが、フェノール系/硫黄系の組み合わせ、またはフェノール系/リン系の組み合わせで使用することが特に好ましい。
【0082】
これらの酸化防止剤の配合割合は、本発明の耐光性封止樹脂組成物の全エポキシ樹脂成分もしくは全エポキシ(メタ)アクリレート樹脂成分100質量部に対して0.01〜10質量部とすることが好ましい。酸化防止剤の配合量が少なすぎると十分な添加効果を得ることができず、多すぎると硬化後の物性、特に耐紫外線劣化性が低下する傾向にある。
【0083】
本発明の耐光性封止樹脂組成物にはまた、紫外線吸収剤を配合して、さらに耐光性を向上させることもできる。
【0084】
紫外線吸収剤としては、一般のプラスチック用紫外線吸収剤を使用することができ、例としては次のものが挙げられる。
【0085】
フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレートなどのサリチル酸類;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジtert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジtert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジtert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{(2’−ヒドロキシ−3’、3”、4”、5”、6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル}ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール類;ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ブチルマロネートなどのヒンダートアミン類
【0086】
これらの紫外線吸収剤の配合割合は、本発明の耐光性封止樹脂組成物の全エポキシ樹脂成分もしくは全エポキシ(メタ)アクリレート樹脂成分100質量部に対して0.01〜10質量部とすることが好ましい。紫外線吸収剤の配合量が少なすぎると十分な添加効果を得ることができず、多すぎると硬化後の物性、特に耐熱劣化性が低下する傾向にある。
【0087】
本発明の耐光性封止樹脂組成物には、上記成分以外に必要に応じてその他の添加剤を本発明の耐光性封止樹脂組成物の特性を損なわない程度に適宜に配合することができる。
【0088】
その他の添加剤としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0089】
(i)粉末状の補強剤や充填剤
例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;微粉末シリカ、溶融シリカ、結晶シリカなどのケイ素化合物;ガラスビーズなどの透明フィラー;水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;その他、カオリン、マイカ、石英粉末、グラファイト、二硫化モリブデンなどが例示できる。
【0090】
これらの補強剤や充填剤は、本発明の耐光性封止樹脂組成物の透明性を損なわない範囲で配合され、通常本発明の耐光性封止樹脂組成物の主剤(A)100質量部に対して、100質量部以下が適当である。
【0091】
(ii)着色剤または顔料
例えば二酸化チタン、モリブデン赤、紺青、群青、カドミウム黄、カドミウム赤および有機色素などが例示できる。
【0092】
(iii)難燃剤
例えば、三酸化アンチモン、ブロム化合物およびリン化合物などが例示できる。
【0093】
その他、(iv)イオン吸着体、(v)カップリング剤なども使用できる。
【0094】
これら(ii)〜(v)の成分は、通常、本発明の耐光性封止樹脂組成物の主剤(A)100質量部に対して、各々0.01〜30質量部配合することができる。
【0095】
本発明の耐光性封止樹脂組成物には、得られる硬化物の特性を改善する目的で、さらに種々の硬化性モノマー、オリゴマー、または合成樹脂を配合することができる。
【0096】
このような特性改善のための化合物や樹脂類としては、たとえばジオールまたはトリオール類、ビニルエーテル類、オキセタン化合物、シリコーン樹脂などの1種または2種以上の組み合わせをあげることができる。
【0097】
これらの化合物および樹脂類の配合割合は、本発明の耐光性封止樹脂組成物の本来の性質を損なわない範囲の量、すなわち本発明の耐光性封止樹脂組成物の主剤(A)100質量部に対して、50質量部以下が好ましい。
【0098】
本発明の封止用樹脂組成物は、光学素子などの封止のために用いる組成物である。
【0099】
封止用樹脂組成物の使用形態としては、例えば発光ダイオード(LED)、EL素子、非線形光学素子などの発光素子やCCDやCMOS、PDのような受光素子などの光機能素子のパッケージ(封入)、実装などが例示できる。
【0100】
また、封止された光素子は種々の場所に使用されるが、非限定的な例示としては、液晶ディスプレイ等のバックライト、フォトカプラ、ハイマウントストップランプやメーターパネル、携帯電話のバックライト、照明、各種センサー、プリンター、コピー機等の光源、車両用計測器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、各種電気製品のリモートコントロール装置の光源、装飾、各種ライト、スイッチング素子等の発光素子;カメラのオートフォーカス、CD/DVD用光ピックアップ用受光素子などがあげられる。とりわけ、発光素子からの光を直接取り出すトップビュー型の光半導体素子であることが好ましい
【0101】
特に本発明の光学素子の封止用樹脂組成物を硬化させて得られる硬化体は、耐熱性、耐光性、透明性に優れる上に、低吸水性であるため、使用環境(熱、光、水)にかかわらず、封止樹脂としての性能を発現するため、LEDのような光半導体関連の用途、特にピーク波長が350〜500nmの比較的短い波長の光を発光する発光素子である、紫外LED、青紫LED、青色LED、白色LEDあるいは照明用白色LEDの封止材として有用である。
【0102】
このような発光素子としては、一例として有機金属気相成長法(MOCVD法)、分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)により形成された周期表第III族窒化物系化合物半導体があげられる。一般式としてはAlXGaYIn1-X-YN(0≦X≦1,0≦Y≦1,0≦X+Y≦1)で表され、AlX、GaNおよびInNのいわゆる2元系、AlXGa1-XN、AlXIn1-XNおよびGaXIn1-XN(以上において0≦X≦1)のいわゆる3元系を包含する。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルヘテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
【0103】
封止の一般的な方法としては、低圧トランスファー成形法が挙げられるが、射出成形、圧縮成形、注型、ポッティング、キャスティング、スクリーン印刷等により封止することもできる。成形時および/または成形後の硬化条件は、樹脂組成物の各成分の種類や、配合量により異なるが、通常、硬化温度は50〜200℃、硬化時間は1分〜10時間が好ましい。
【0104】
本発明の封止剤を用いて上記発光素子を封止する際には、他の封止剤を併用してもよい。この場合、本発明の封止剤で上記発光素子を封止した後、その周囲を上記他の封止剤で封止してもよく、上記発光素子を上記他の封止剤で封止した後、その周囲を本発明の封止剤で封止してもよい。
【0105】
上記その他の封止剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレア樹脂、イミド樹脂、ガラス等が挙げられる。また、表面改質剤を含有すると液を塗布して表面に保護層を設けることもできる。
【0106】
また、本発明の封止樹脂組成物は、耐光性、耐熱性に優れるため、太陽電池用の封止用樹脂、封止用材料、シーリング材用材料などとしても有用である。本発明の封止樹脂組成物は吸水性が低いため、太陽電池としては、比較的水分に弱いとされている、特に色素増感太陽電池や、有機薄膜太陽電池などのような有機系の太陽電池用にも有用である。これらの太陽電池は意匠性も高く、透明な封止用材料、シーリング材用材料が求められている。また、耐光性が高いため、深紫外線顕微鏡のレンズなどの光学部材用封止材(または充填材)などとしても有用である。これらの用途においては、高い耐光性が求められている。そのほか、本発明の耐熱性、低吸水性を活かした電子半導体用の封止部材用材料、耐水耐湿性接着剤、SiCなどのパワーデバイス用の耐熱封止材料としても使用できる。
【実施例】
【0107】
つぎに実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0108】
本実施例で行った試験方法をまとめる。
【0109】
(1)屈折率(n)
ナトリウムD線を光源として25℃においてアッベ屈折率計を用いて測定した値を採用する。
【0110】
(2)吸水率
10mmφ×1mmの円盤状サイズの試験片を用いた以外はJIS K 6911に準拠した方法により吸水率を求める。
【0111】
(3)透過率
厚さ1mmのシートの405nmでの透過率を分光光度計((株)日立製作所製のU−4100)を用いて測定する。
【0112】
(4)フッ素含有率
酸素フラスコ燃焼法により試料10mgを燃焼し、分解ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ素イオン濃度をフッ素選択電極法(フッ素イオンメーター、オリオン社製901型)で測定することにより求める(質量%)。
【0113】
(5)熱分解温度(Td)
熱重量計((株)島津製作所のTGA−50)を用い、空気雰囲気の条件で昇温速度10℃/minの条件で測定し、1%質量減の温度で評価する。
【0114】
(6)耐光性
UV−LED装置(オムロン(株)製のZUV−C10)を用いて、365nmのUV光を厚さ1mmのシートに120分照射した後、405nmの光の透過率を分光光度計((株)日立製作所製のU−4100)を用いて測定する。
【0115】
(7)耐熱性
厚さ1mmの硬化物を150℃のオーブンに500時間放置した後、500nmの透過率を分光光度計((株)日立製作所製のU−4100)を用いて測定する。
【0116】
実施例1
フッ素化された多官能エポキシ樹脂としてCHEpを2g、酸無水物として日立化成工業(株)製HN−5500を1.15g、エポキシ硬化触媒としてサンアプロ(株)製U-CAT18Xを0.09g加えて、全体を60℃に保ち、均一な硬化性組成物を調製した。
【0117】
ついでこの組成物を真空減圧下で脱泡後、所定の型の中に流し込み、恒温槽中にて90℃で2時間、さらに130℃で3時間加熱して硬化物を得た。
【0118】
得られた硬化物の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0119】
実施例2〜10
表1に示す成分を用いて実施例1と同様にして組成物を調製後、実施例1と同様にして熱硬化させ、硬化物を得た。
【0120】
得られた硬化物の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0121】
比較例1〜2
表1に示す成分を用いて実施例1と同様にして組成物を調製後、実施例1と同様にして熱硬化させ、硬化物を得た。
【0122】
得られた硬化物の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0123】
表1に示す実施例1〜10および比較例1〜2で用いた各成分はつぎのとおりである。
【0124】
(フッ素化された多官能エポキシ樹脂)
AFEp:
【化53】

DFEp:
【化54】

CHEp:
【化55】

BzEP:
【化56】

DPEp:
【化57】

CHCOp:
【化58】

Rfn=2Ep:
【化59】

【0125】
(非フッ素系多官能エポキシ樹脂)
Aep:
【化60】

XY−8000((株)ジャパンエポキシレジン製):
【化61】

【0126】
(希釈剤)
エポライト1600(共栄社化学(株)製):
【化62】

エポライト1500NP(共栄社化学(株)製):
【化63】

セロキサイド2021P(ダイセル化学(株)製):
【化64】

【0127】
(硬化剤:酸無水物)
HN−5500(日立化成工業(株)製)
【化65】

【0128】
(硬化促進剤)
U−CAT18X(サンアプロ(株)製のエポキシ樹脂硬化促進剤)
【0129】
【表1】

【0130】
実施例11
フッ素化された多官能エポキシ樹脂としてCHEpを1g、多官能エポキシとしてエポライト1600(共栄社化学(株)製)を1g、光カチオン重合開始剤としてサンアプロ(株)製CPI−100を0.085g加えて、全体を60℃に保ち、均一な硬化性組成物を調製した。
【0131】
この組成物を真空減圧下で脱泡後、所定の型の中に流し込み、スライドガラスで上下をはさみこみ、ベルトコンベア式UV露光機にて、合計で6J/cm2のUV光を照射し、硬化物を得た。
【0132】
得られた硬化物の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0133】
実施例12〜14
表2に示す成分を用いて実施例11と同様にして組成物を調製後、実施例11と同様にして光硬化させ、硬化物を得た。
【0134】
得られた硬化物の各種物性を測定した。結果を表2に示す。
【0135】
表2において使用した各成分は表1に記載したもののほか、つぎのものを用いた。
【0136】
(硬化剤:光触媒)
CPI−100P(サンアプロ(株)製の光カチオン重合開始剤)
【0137】
【表2】

【0138】
実施例15
フッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としてCHEpAを1g、非フッ素系多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物として16HXを1g、光ラジカル重合開始剤としてチバスペシャリティケミカルズ社製ダイキュアMBFを0.08g加えて、全体を60℃に保ち、均一な硬化性組成物を調製した。
【0139】
この組成物を真空減圧下で脱泡後、所定の型の中に流し込み、スライドガラスで上下をはさみこみ、ベルトコンベア式UV露光機にて、合計で4J/cm2のUV光を照射し、硬化物を得た。
【0140】
得られた硬化物の各種物性を測定した。結果を表3に示す。
【0141】
実施例16〜23
表3に示す成分を用いて実施例15と同様にして組成物を調製後、実施例15と同様にして光硬化させ、硬化物を得た。
【0142】
得られた硬化物の各種物性を測定した。結果を表3に示す。
【0143】
比較例3〜4
表3に示す成分を用いて実施例15と同様にして組成物を調製後、実施例15と同様にして光硬化させ、硬化物を得た。
【0144】
得られた硬化物の各種物性を測定した。結果を表3に示す。
【0145】
表3に示す実施例15〜23および比較例3〜4で用いた各成分はつぎのとおりである。
【0146】
(フッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂)
AFEpA:
【化66】

AfEpMA:
【化67】

CHEpA:
【化68】

BzEpMA:
【化69】

DpEpA:
【化70】

Rfn=2EpA:
【化71】

【0147】
(非フッ素系多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂)
BisA−EpA:
【化72】

【0148】
(非フッ素系多官能(メタ)アクリレート化合物)
16HX(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート):
CH2=CHCOO(CH26OCOCH=CH2
TMPA(トリメチロールプロパントリアクリレート):
52−C(CH2OCOCH=CH23
【0149】
(含フッ素単官能(メタ)アクリレート化合物)
8FA:
CH2=CHCOOCH248
【0150】
(硬化剤:光触媒)
ダロキュアMBF(チバスペシャリティケミカルズ社製の光ラジカル重合開始剤)
【0151】
【表3】

【0152】
実施例16
実施例1および比較例2でそれぞれ調製した樹脂組成物をベルトコンベア式UV露光機を用いて露光し、所定量露光後に得られた各硬化物について、400nmの透過率を測定した。
【0153】
露光後の各硬化物の透過率を、初期の透過率を100%とした相対値(%)として求め、グラフにプロットした。結果を図1に示す。
【0154】
図1より明らかなように、本実施例の硬化物は高い耐光性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化された多官能エポキシ樹脂および/またはフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む硬化性の主剤(A)、および該樹脂を硬化させるための硬化剤(B)を含む光学素子の封止用樹脂組成物。
【請求項2】
主剤(A)が、式(I)〜(IV):
【化1】

[式中、Rfは、
【化2】

{式中、
Aは式:
【化3】

(式中、Rf1は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基;Rf2は炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基;pは0〜3の整数;qは0〜3の整数;rは0または1;sは0〜5の整数;tは0〜5の整数)で示される含フッ素有機基;
BはAと同じかまたは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、もしくは炭素数1〜8のフルオロアルキル基;
Zは水素原子または炭素数1〜18のフルオロアルキル基;
Mは、
【化4】

(式中、Rは同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、OH、CH3、NH2、ハロゲン原子、炭素数1〜20のフルオロアルキル基;l1、l2およびl3はいずれも0または1〜10の整数で置換基Rの個数を表わす)で示される環式脂肪族炭化水素基;
xは1〜36の整数}で示される環式脂肪族炭化水素基;nは0または任意の正の数]で示されるフッ素化された多官能エポキシ樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種、および/または式(V)〜(VI):
【化5】

[式中、Rfは上記と同じ;Yは水素原子またはCH3;nは0または任意の正の数]で示されるフッ素化された多官能エポキシ(メタ)アクリレート樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
Rfが、
【化6】

である請求項2記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
Rfが、
【化7】

である請求項2記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
光学素子が、波長350〜500nmに主発光ピークを有する発光素子である請求項1〜4のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
光学素子が発光ダイオード(LED)である請求項1〜4のいずれかに記載の封止用樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−148878(P2011−148878A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9950(P2010−9950)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】