説明

耐引掻性及び耐候性のある、化学線放射で又は熱及び化学線放射で硬化可能なラッカー

(A)少なくとも1つの不飽和ウレタン(メタ)アクリレート、及び(B)少なくとも1つの不飽和メラミン(メタ)アクリレートを含有する、化学線放射又は熱で、及び化学線放射で硬化可能な被覆組成物であって、その際、構成成分(A)と(B)との質量割合の比が(A):(B)=1:1〜(A):(B)=1:5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学線放射で又は熱及び化学線放射で硬化可能な、特に耐引掻性及び耐候性を有する、ウレタン(メタ)アクリレートを基礎とする被覆組成物に関する。本発明はさらに、塗装の製造のためのかかる被覆組成物の使用及びかかる被覆組成物で塗装された基材に関する。
【0002】
従来技術
化学線放射で硬化可能な、ウレタン(メタ)アクリレートを基礎とする被覆組成物は公知であり、かつ例えば国際特許出願WO2005/120725において記載されている。前記出願では特に自動車修理塗装を予定している。そこでは、当然、耐引掻性及び耐候性に関する必然的に高い要求を受ける。被覆組成物から得られる塗装の耐引掻性は、公知のように架橋密度の増加によって改善されうる。しかしながら、この点において、通常、それに伴う塗装の弾性の損失の欠点がある。高く架橋された塗装は、確かにしばしば極めて高い耐引掻性を示すが、しかし、亀裂に対する不十分な弾性に基づいて減少し、かつそのために最適な耐候性を有さない。
【0003】
弾性の損失の問題は、ドイツ特許文献DE 197 09 467においても認識されている。これらの特許は、従って、一般に、完全に硬化させた状態で、貯蔵弾性率E’が少なくとも107.6Paのゴム弾性範囲であり、及び20℃で最大0.10の損失率tanδを示す被覆剤を要求する。バインダーの選択は、完全に硬化させた塗装の挙げられた物理的基準に従って実施される。バインダーの化学的性質に関して、個々のバインダーが完全に硬化された塗装のための基準を満たす可能性があるために、単に化合物の種類の広い範囲を提案する。例えば(メタ)アクリロイル官能性(メタ)アクリルコポリマー、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アミノアクリレート、メラミンアクリレート、シリコーンアクリレート、及び対応するメタクリレート(4頁、36〜38行目)が挙げられる。有利には、芳香族構造単位を有さないバインダー(4頁、38〜39行目)である。この際、その常に存在する芳香族トリアジン環のために特にメラミン(メタ)アクリレートは含まれない。脂肪族ウレタンアクリレートが特に有利である。使用されるバインダーの化学的性質に対する具体的な教示は提供されていない。
【0004】
本発明の課題
本発明の課題は、従って、化学線放射で又は熱及び化学線放射で硬化可能な被覆組成物を提供することであり、該被覆組成物から高い耐引掻性を有し、同時に高い耐候性を有する塗装を得ることができる。得られた被覆は、さらに、自動車塗装に、特に光沢、光沢安定性、耐化学薬品性、耐チッピング性及び接着強さに関して付与する高い要求をかなえる。
【0005】
課題の解決
前記目的は、驚くべきことに、化学線放射で又は熱及び化学線放射で硬化可能な、(A)少なくとも1つの不飽和ウレタン(メタ)アクリレート及び(B)少なくとも1つの不飽和メラミン(メタ)アクリレートを含有する被覆組成物によって解決され、その際、構成成分(A)と(B)との質量割合の比は、(A):(B)=1:1〜(A):(B)=1:5である。
【0006】
発明の詳細な説明
不飽和ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、原則的に任意の不飽和ウレタンアクリレート及び/又は不飽和ウレタンメタクリレートが適している。"不飽和"の概念は、本記載内容において、平均して少なくとも1つの炭素−炭素−二重結合を分子において、例えばアクリレート基において含有することを意味する。有利には脂肪族の不飽和ウレタン(メタ)アクリレートが使用される。適した不飽和ウレタン(メタ)アクリレートを、例えば、ジイソシアネート又はポリイソシアネートと、ジオール/ポリオール、及び/又はジアミン/ポリアミン、及び/又はジチオール/ポリチオール、及び/又はアルカノールアミンの群から選択される連鎖延長剤との反応によって、続いて残りの有利イソシアネート基と、少なくとも1つのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応によって、得ることができる。連鎖延長剤、ジイソシアネート又はポリイソシアネート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの量は、この場合、有利には
1)NCO基と連鎖延長剤の反応性基(ヒドロキシル基、アミノ基又はメルカプチル基)との比が、3:1〜1:2、有利には2:1であり、かつ
2)ヒドロキシアルキル(メタ)アルキル基のOH基が、化学量論量で、さらにイソシアネート及び連鎖延長剤からのプレポリマーのイソシアネート基に関連して存在する
ように選択される。
【0007】
変法は、例えば、まずジイソシアネート又はポリイソシアネートのイソシアネート基の一部と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応し、そして残りのイソシアネート基を、続いて前記の性質の連鎖延長剤と反応させることによって、適した不飽和ウレタン(メタ)アクリレートを製造することも可能である。この場合も、連鎖延長剤、イソシアネート及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの量は、NCO基と連鎖延長剤の反応性基との当量比が3:1〜1:2、有利には2:1であり、かつ残りのNCO基と少なくとも1つのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのOH基が1:1であるように選択される。
【0008】
もちろんまた、これら2つの方法の全体的な中間形態も可能である。例えば、ジイソシアネートのイソシアネート基の一部が、まずジオールと反応することができ、続いてさらにイソシアネート基の一部がヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと反応し、そして引き続き残りのイソシアネート基がジアミンと反応することができる。
【0009】
これらの種々の不飽和ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法は、公知であり(例えばEP−A−204 161)、かつ従って詳述を必要としない。
【0010】
不飽和ウレタン(メタ)アクリレートの可撓性は、例えば、対応するイソシアネート官能性プレポリマー又はオリゴマーと、長鎖の脂肪族ジオール及び/又はジアミン、特に少なくとも6個のC原子を有する脂肪族ジオール及び/又はジアミンとの反応によって可能である。この可撓性反応は、少なくとも1つのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの添加前又は添加後に実施することができる。
【0011】
適した不飽和ウレタン(メタ)アクリレート(A)の例としては、次の市販の製品も挙げられる:
− Desmolux(登録商標)XP 2513、Bayer MaterialScience社製の不飽和脂肪族ウレタンアクリレート
− Ebecryl(登録商標)8465、Cytec社製の不飽和脂肪族ウレタンアクリレート、
− Laromer(登録商標)UA 9028V、BASF SE社製の不飽和脂肪族ウレタンアクリレート。
【0012】
有利には、少なくとも1つの不飽和ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、1000〜10000g/mol、有利には2000〜5000g/molの質量平均分子量を有する。前記質量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーによって、標準としてポリスチロールの使用下で測定される。
【0013】
一般に、アクリレート基は、メタクリレート基より反応しやすく、その結果容易に反応することができる。有利には、少なくとも1つの不飽和ウレタン(メタ)アクリレートは、不飽和脂肪族ウレタンアクリレートである。特に有利には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を基礎とする、有利にはHDIトリマーを基礎とする不飽和脂肪族ウレタンアクリレートであり、極めて特に有利には1分子あたり平均してアクリレート基2〜3個の官能性を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を基礎とする不飽和脂肪族ウレタンアクリレートである。
【0014】
不飽和メラミン(メタ)アクリレート(B)として、原則的に任意の不飽和メラミンアクリレート及び/又は不飽和メラミンメタクリレートが適している。"不飽和"の概念は、本記載内容において、平均して少なくとも1つの炭素−炭素−二重結合を分子において、例えばアクリレート基において含有することを意味する。有利には、少なくとも1つの不飽和メラミン(メタ)アクリレート(B)は、1個のトリアジン環あたり平均して少なくとも3個の(メタ)アクリレート基、及び特に有利には1個のトリアジン環あたり平均して少なくとも4個の(メタ)アクリレート基の官能性を有する。適した不飽和メラミン(メタ)アクリレートは、例えばヘキサメチロールメラミン(HMM)の直接エーテル化によって、又はヘキサキス(メトキシメチル)メラミン(HMMM)と少なくとも1つのヒドロキシ(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタクリレート)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート又はカプロラクトン(メタ)アクリレートとの反応によって製造される。
【0015】
有利には、少なくとも1つの不飽和メラミン(メタ)アクリレート(B)は、1000〜7000g/mol、有利には2000〜4500g/molの質量平均分子量を有する。前記質量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーによって、標準としてポリスチロールの使用下で測定される。
【0016】
一般に、アクリレート基は、メタクリレート基より反応しやすく、その結果容易に反応することができる。有利には、少なくとも1つの不飽和メラミン(メタ)アクリレート(B)は、不飽和メラミンアクリレート、特に有利には1個のトリアジン環あたり平均して少なくとも3個の(メタ)アクリレート基の官能性を有する不飽和メラミンアクリレート、及び極めて特に有利には1個のトリアジン環あたり平均して少なくとも4個の(メタ)アクリレート基の官能性を有する不飽和メラミンアクリレートである。
【0017】
適した不飽和メラミン(メタ)アクリレート(B)の例としては、次の市販の製品も挙げられる:
− CN890、Sartomer社製の多官能メラミンアクリレート、
− BMM−215、Bomar Specialties Co.社製の三官能メラミンメタクリレート、
− BMA−200、Bomar Specialities Co.社製の三官能メラミンアクリレート、
− BMA−222、Bomar Specialities Co.社製の三官能メラミンアクリレート、
− BMA−300、Bomar Specialities Co.社製の三官能メラミンアクリレート。
【0018】
構成成分(A)と(B)との質量割合の比は、本発明に従って、(A):(B)=1:1〜(A):(B)=1:5である。有利には、前記質量割合の比は、(A):(B)=1:1.5〜(A):(B)=1:2.5、特に有利には(A):(B)=1:1.8〜(A):(B)=1:2.2である。
【0019】
前記構成成分(A)及び(B)は、本発明による被覆剤において、液状の被覆組成物の合計質量に対して、有利には30〜90質量%、特に有利には50〜70質量%の量[(A)+(B)]で使用される。
【0020】
本発明による被覆組成物の硬化をUV線によって実施する場合に、本発明による被覆組成物は、少なくとも1つの光開始剤(C)を含有する。有利には、構成成分(A)、(B)、(C)及び場合により存在する反応性希釈剤の合計に対して、0.1〜5質量%、特に有利には0.5〜3質量%の1つの光開始剤(C)を使用する。当業者に公知である、通常の、UV硬化可能な被覆組成物において使用される光開始剤、例えば、市販の Irgacure(登録商標)184、Irgacure(登録商標)2959、Irgacure(登録商標)819、Darocure(登録商標)MBF(全てCIBA Specialty Chemicals Inc.社製)及びLucirin(登録商標)TPO(BASF AG社製)の名前で得られる製品を使用することができる。有利には、使用される光開始剤の吸収は、200〜400nmの吸収極大である。
【0021】
本発明による被覆組成物は、場合により1つ以上の反応性希釈剤を含有してよい。前記反応性希釈剤は、この場合エチレン性不飽和化合物であってよい。前記反応性希釈剤は、例えばモノ不飽和、ジ不飽和又はポリ不飽和であってよい。反応性希釈剤は、膜形成の場合に化学反応によってバインダーの成分である溶剤と解する。
【0022】
本発明による被覆組成物は、場合によりさらに1つ以上の、反応性希釈剤、例えばエーテル、エステル、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、特にキシロール、酢酸ブチル、メチルエチルケトン並びに/又はエタノールに含まれない溶剤を含有してよい。
【0023】
本発明の被覆組成物は、さらに通常の添加剤、例えば光安定剤(例えば、HALS化合物、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、オキサラニド)、スリップ剤、重合開始剤、艶消し剤、消泡剤、流動剤又は他のラッカーにおいて通常使用される添加剤を含有してよい。この通常の添加剤は、通常、被覆組成物の合計量に対して、15質量%まで、有利には2〜9質量%の量で使用される。有利には、本発明の被覆組成物は、少なくとも1つの光安定剤を含む。
【0024】
本発明による被覆組成物は、有利にはクリアラッカーであり、有利には全く含まないか透明な充填剤のみを含み、かつ不透明な顔料は含まない。しかし、着色された被覆組成物の形での使用も可能である。この場合、被覆組成物は、被覆組成物の合計質量に対して、2〜40質量%の1つ以上の顔料を含む。さらに、前記被覆組成物は、この場合、被覆組成物の全質量に対して、さらに1〜20質量%の1つ以上の充填剤を含むことができる。より高い顔料濃度及び/又は充填剤濃度の使用の場合に、硬化方法として、電子線硬化が好ましい。
【0025】
さらに本発明の目的は、塗装の製造のための本発明による被覆組成物の使用である。塗装の製造のために、本発明による被覆組成物は、通常の、当業者に公知である適用方法によって、塗装されるべき基材に適用される。例えば、前記適用は、刷毛塗り、ロール塗り、浸し塗り、ローラー塗り、流し塗り又は噴霧塗布によって実施することができる。
【0026】
本発明による被覆組成物の適用は、有利には、5〜60μm、特に有利には20〜50μm、及び極めて特に有利には35〜45μmの乾燥膜厚で実施する。
【0027】
本発明による被覆組成物は、単層又は多層塗装の製造のために使用されうる。多層塗装の製造の場合に、本発明による組成物は、1つ以上の他のトップコート塗装に適用されるベースコート塗装を製造するために、又は多層塗装の一番上のトップコート塗装の製造のためにも使用されうる。有利には、本発明による被覆組成物は、多層被覆の一番上の層の製造のために使用される。
【0028】
前記被覆組成物を、任意の塗装されるべき基材に被覆を製造するために、例えば金属性の基材の被覆のために使用することができる。有利には、本発明による被覆組成物は、自動車車体及びそれらの部品の被覆のために使用される。
【0029】
極めて特に有利には、本発明による被覆組成物は、自動車車体及びそれらの部品上にトップコート塗装を製造するために、殊に有利には、自動車車体における透明なトップコートの製造のために使用される。
【0030】
金属基材への被覆の製造のために、本発明による被覆組成物は、有利には下塗りされた及び/又はベースコートで被覆された金属シート、金属テープ、又は自動車車体もしくはそれらの部品に適用される。プライマーとして、通常使用されるプライマーを使用することができる。ベースコートとして、従来と同様に、水性の、熱硬化及び/又は放射線硬化させたベースコートも使用することができる。さらに、まず電着塗装で、及び続いて充填剤及び/又はベースコートで被覆させた本発明による被覆組成物を金属基材に適用することも可能である。この場合、ウェットオンウェット法でも行われうる。挙げられた方法は、通常、ベースコート及び/又は充填剤を本発明による被覆組成物の適用前に焼き付けることが必要である。
【0031】
基材に適用された被覆組成物は、化学線放射で又は熱及び化学線放射で硬化される。
【0032】
硬化前に、例えば得られた溶剤のフラッシュオフのために、例えば5〜30分間30℃〜80℃で、適用された被覆組成物の中間乾燥を実施することができる。
【0033】
本発明の範囲で、"熱硬化"の概念は、熱によって開始される被覆組成物からの層の硬化を意味する。
【0034】
本発明の枠内において化学線とは、電磁線、例えば近赤外線(NIR)、可視光線、UV線、X線又はγ線、特にUV線、及び粒子線、例えば電子線、β線、α線、陽子線又は中性子線、特に電子線であると解釈される。UV線による硬化は、通常、ラジカル又はカチオン性光開始剤によって開始される。有利には、化学線放射による硬化は、UV線による硬化又は電子線による硬化である。
【0035】
熱硬化及び化学線放射での硬化が、1つの本発明による被覆組成物で共に使用される場合に、"二重硬化(Dual Cure)"についても述べられる。
【0036】
熱硬化及び化学線放射での硬化は、当業者にこの場合それぞれ公知の装置によって、通常の公知の被覆下で実施することができる。例えば、UV硬化は、100〜10000mJ/cm2のUV量、50〜4000mW/cm2の放射強度(測定器:Power Puck, EIT Inc.)、及び<0.2%の残留酸素含有率で実施できる。電子線硬化は、例えば5〜15kGrayの量で実施できる。
【0037】
本発明の他の目的は、本発明による被覆組成物で塗装された基材、有利には自動車車体又はそれらの部品である。
【0038】
次に、本発明を実施例によってより詳細に説明する。
【0039】
実施例
実施例1
本発明による被覆組成物の製造
表1のB段において挙げられた項目1〜5を装入し、そして撹拌下で均一な混合物にする。続いて、連続して項目6〜10を撹拌下で添加する。さらなる撹拌によって、均一な混合物を得る。
【0040】
比較例1
本発明ではない被覆組成物の製造
表1のA段において挙げられた項目1〜5を装入し、そして撹拌下で均一な混合物にする。続いて、連続して項目6〜10を撹拌下で添加する。さらなる撹拌によって、均一な混合物を得る。
【0041】
【表1】

【0042】
塗装の製造
実施例1からの本発明による被覆組成物と、比較例1からの本発明ではない被覆組成物とを、透明なトップコートの製造のために、次の仕様に従って使用した。
【0043】
基材として、通常のカチオン電着塗装(CathoGuard 500, BASF)で前被覆させた薄鋼板を使用した。前記薄鋼板に通常の13〜18μmの乾燥膜厚を有する水性ベースコートを適用し、そして10分間80℃で、そして続いて15分間130℃で焼き付けた。さらに同日に、前記薄鋼板に、実施例1からの本発明による被覆組成物、又は比較例1からの本発明ではない被覆組成物を噴霧適用し、そして40〜45μmの乾燥膜厚を適用した。15分間60℃での溶剤のフラッシュオフ後に、UV硬化を、4000mJ/cm2のUV量、2000mW/cm2の放射強度(測定器:Power Puck, EIT Inc.)、<0.1%の残留酸素含有率、及び45℃の露出温度で実施した。
【0044】
塗装の試験及び性質
得られた塗装は、表2〜9中に挙げられた性質を有した。
【0045】
耐化学薬品性(表2)を、勾配オーブン試験(Gradientenofentests)(DIN EN ISO 2812−5に対応)によって測定した。前記塗装を、それぞれ挙げられた化学薬品で散布し、そして、24時間23℃で標準雰囲気中で貯蔵し場合により続いて2時間80℃でオーブン中で加熱する前に、30分間それぞれ異なる温度Xでインキュベートした。それを最も高いインキュベート温度Xを摂氏度で示し、その温度では貯蔵(23℃で24時間)後に、又は続く加熱(80℃で2時間)後に、さらに場合により塗装の目に見える損傷は見られない。
【0046】
耐引掻性(表3)の測定のために、まず塗装の初期光沢を、20°の観測角度下で測定した。続いて、該塗装に、DIN EN ISO 20566 DE(AMTEC−洗浄ブラシ耐性(Waschbuerstenbestaendigkeit))に従って引掻要求を受けさせた。負荷の後に、その試験体を、ホワイトスピリットで洗浄し、そして光沢の程度を再度測定した。%で得られた残りの光沢は、負荷前及び負荷後に光沢値の割合をもたらす。
【0047】
さらに、耐引掻性を、ASTM D 6279のテスト規定に従って試験した。結果を表4において示す。
【0048】
前塗装の耐チッピング性(表5)を、VDAの多チッピング装置(Multisteinschlaggeraets)によってDIN EN ISO 20567−1に従って検査した。
【0049】
前記塗装の接着強さを、ボール衝突試験によってDIN 55996−3に従って算出し(表6)、並びに凝縮水−一定雰囲気−試験(KK−試験)によってDIN 50017 KKに従って算出した(表7)。
【0050】
塗装の耐候性を試験するために、Q−Panel社製のQUV耐候試験装置を使用した。亀裂形成を種々の時点で可視的に評価した(表8)(i.O.=正常)。その光沢を、種々の時点で、20°の初期光沢下で測定した(表9)。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
【表7】

【0057】
【表8】

【0058】
【表9】

【0059】
前記試験の結果は、本発明による被覆組成物から得られた塗装が、非常に高い耐引掻性を示し(表3及び表4)、同時に従来の塗装に対して改良された耐候性を示す(表8及び表9)ことを明確に示す。そのうえ、本発明による被覆組成物から得られた塗装は、従来の塗装に対して改良された耐化学薬品性(表2)を示すが、高い耐チッピング性(表5)及び接着強さ(表6及び7)は変わらない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1つの不飽和ウレタン(メタ)アクリレート、及び
(B)少なくとも1つの不飽和メラミン(メタ)アクリレート
を含有する、化学線放射で又は熱及び化学線放射で硬化可能な被覆組成物であって、
構成成分(A)と(B)との質量割合の比が(A):(B)=1:1〜(A):(B)=1:5であることを特徴とする被覆組成物。
【請求項2】
前記質量割合の比が、(A):(B)=1:1.5〜(A):(B)=1:2.5であることを特徴とする、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの不飽和ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、脂肪族不飽和ウレタン(メタ)アクリレートであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の被覆組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの不飽和ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、不飽和ウレタンアクリレートであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の被覆組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの不飽和メラミン(メタ)アクリレート(B)が、1個のトリアジン環あたり平均して少なくとも3個の(メタ)アクリレート基の官能性を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の被覆組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの不飽和メラミン(メタ)アクリレート(B)が、不飽和メラミンアクリレートであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の被覆組成物。
【請求項7】
前記被覆組成物が、UV線によって又は熱及びUV線で硬化可能であり、かつ少なくとも1つの光開始剤(C)を含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の被覆組成物。
【請求項8】
前記被覆組成物が、電子線によって又は熱及び電子線で硬化可能であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の被覆組成物。
【請求項9】
前記被覆組成物がクリアラッカーであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の被覆組成物。
【請求項10】
塗装を製造するための、請求項1から9までのいずれか1項に記載の被覆組成物の使用。
【請求項11】
前記塗装が多層被覆の一番上の層であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記塗装が自動車車体又はそれらの部品の被覆であることを特徴とする、請求項10又は11に記載の使用。
【請求項13】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の被覆組成物で被覆された基材。
【請求項14】
前記基材が、自動車車体又はそれらの部品であることを特徴とする、請求項13に記載の基材。

【公表番号】特表2012−505300(P2012−505300A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531389(P2011−531389)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007344
【国際公開番号】WO2010/043374
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】