説明

耐摩耗性の織物基材接着テープ

【課題】従来技術に比較して著しい改良を達成すること、および個別導線をケーブルルームにまとめてバンデージでき、同時に鋭利な縁、突起部または溶接点での摩損および摩擦による機械的損傷に対して高い保護を有し、しかもフラッギングの発生しないテープを提供すること。
【解決手段】基材と少なくとも片面に塗布された接着層とから成り、基材が織物、好ましくはポリエステル織物である接着テープであって、横糸の単位長当たりの線密度と縦糸の単幅当たりの線密度の商が2.2〜6であり、基材の単位面積重量が110g/m以上であることを特徴とする接着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも片面に感圧性接着コーティングを施した基材から成る耐摩耗性のあるテープ、好ましくは長尺物品、特に導線またはケーブルルーム(Kabelsatz; cable loom)などの長尺物品の包被のための耐摩耗性のあるテープに関する。本発明は、さらに、該テープの使用および本発明に基づくテープで外装されたケーブルハーネスにも関する。
【背景技術】
【0002】
多くの工業分野では多数の導線から成る束が、導線束の所要空間をバンデージによって低減するため、および追加の保護機能を得るために、取付け前にまたは既に据え付けられた状態で巻き付けられる。フィルム状接着テープによれば液体の浸入に対して確実な防護が達成され、厚地不織布またはフォーム材をベースに使用した、空気を含む嵩高な接着テープでは緩衝特性が得られ、耐摩耗性で安定な基材材料を使用すれば、摩損および摩擦に対する防護機能が達成される。
【0003】
耐摩耗性は接着テープの耐摩損性の尺度である。自動車電気設備での保護系統の耐摩耗性の測定方法としては、国際規格ISO 6722第9.3章に「引っ掻き摩耗試験(Scrape abrasion test)」(2002年4月発行)が制定された。接着テープの耐摩耗性は、ISO規格6722に準拠してLV312に基づき試験される。長さ約10cmの試験片を太さ5mmまたは10mmのスチール製マンドレルの上に縦方向1層に貼り付ける。摩耗具として直径0.45mmの鋼線を用い、これを7Nの重量負荷のもとで試験片の中央に擦りつける。摩耗特性の尺度として、試験片が破壊されるまでの往復行程数を求める。織物の場合、鋼線の移動方向は、経糸と平行に設定される。
【0004】
試験の結果は、マンドレル直径および重量負荷を明記して試験片の摩耗等級として記録する。接着テープの等級は、表1に従い等級A〜Fに分類される。
【0005】
マンドレルの直径が5mmの場合では、試験片は大抵は、直径10mmのマンドレルを使用する場合よりも少ない行程数で破壊される。したがって、例えば、マンドレル直径10mmでは接着テープは摩耗等級Dになるが、マンドレル直径5mmでは摩耗等級Cとなり得る。
【0006】
【表1】

【0007】
上記のとおり、耐摩耗性の高い接着テープは摩耗等級Dの接着テープである。今日では高い摩耗保護を得るためには、殆どの場合、織物基材(例えばポリエステル織物)と接着剤層とから成る1層の織物接着テープが使用される。
【0008】
基材織物は、糸素材(例えばポリエステル糸)、糸条の繊度(長さ当たりの重量、単位dtex、1dtex=1g/10000m糸)および糸密度または糸本数(cm当たりの糸条の本数)によって特徴付けられている。織物は経糸(長手方向、縦方向、それを用いて作成された接着テープの長手方向にも相当)と緯糸(横糸)とから成っている。糸条は通例、平織に織られる。その他の織種として繻子織および綾織がある。綾織の織物(例えば、1本の糸条の上を2本の糸条が通された綾織)は、縦方向に対して対角線方向に延びる、いわゆる綾目を形成している。綾織の織物は、通例、同じ素材の平織物より少し柔軟性がある。特に対角線方向では曲げ強さが弱い。これで作られた接着テープは、その点が長所になることがある。
【0009】
糸条は、紡ぎ糸またはフィラメント糸(連続糸)で構成することができる。通例、フィラメント糸が使用される。これは一定数の個別フィラメントから成り、テクスチャード加工を施してもよいかあるいはフラットで、および点状に固定(punktverfestigen)させたまたは固定させないものでもよい。織物は後から染め上げることも、あるいは原液染めした糸で構成することもできる。
【0010】
織物の横線密度(Quertiter)は、横糸(緯糸)の1センチメートル当たりの本数に横糸の繊度(dtex)を掛けた値を表す。その単位はdtex/cmである。縦線密度(Laengstiter)は、縦糸(経糸)の1センチメートル当たりの本数に縦糸の繊度(dtex)を掛けた値を表す。その単位は同様にdtex/cmである。
【0011】
織物の単位面積重量は、最終的には、使用する糸、その本数および織組織によって決まる。ケーブル巻付けテープの基材として利用されるポリエステル織物の単位面積重量は、典型的には60〜140g/mである。接着テープの耐摩耗性は、使用するポリエステル織物の単位面積重量の増加と共に増大する。
【0012】
ケーブル巻付け用としてのポリエステル織物の摩耗保護接着テープは公知である。そのようなケーブル巻付けテープは「tesa(登録商標)51026」または「Coroplast 837X」の市販名で流通している。それらは、単位面積重量125〜135g/mのポリエステル織物と80〜100g/mの接着剤層とから成っている。経糸および緯糸は約167dtexの同繊度の糸である。繊度の大きな経糸が多数集まればその接着テープは耐摩耗性が高く、したがって、マンドレル直径10mmでLV312規定の摩耗等級Dの条件を充足する。これら公知の接着テープの欠点は、使用する織物の縦方向、つまり加工方向の経糸が太くて本数も非常に多いので非常に剛直なことである。縦方向に硬直であるため、接着テープをケーブル巻付けテープとして適用した場合、接着テープの末端がしばらくすると持ち上がる傾向があるという欠点がある。この挙動は端末剥がれまたはフラッギングと言われる。これは、接着テープの縦方向の強い硬直性によって、および巻付け対象物品の小さな直径によって増長される。フラッギング性向は、接着テープ適用後に接着テープのそれ自体の裏面に対する接着力が高ければ回避される。高い接着力を得るには、とりわけ、接着テープの接着剤塗布量を多くすることが前提である。
【0013】
例えば綾織物など、より柔軟な組織の織物を使用すれば、曲げ強さの低下によりフラッギング性向を抑制することができる。
【0014】
ドイツ実用新案第202007008003号(特許文献1)にはこれら公知の接着テープの発展形態が記述されている。フラッギングのない製品という目標の達成には、縦および横方向の繊維密度が引き下げられる。このようにして、接着テープの曲げ強さが低下され、フラッギングが防止される。しかし、上記公報の表2と表3とを組み合わせると、この対処策のジレンマが明白になる。すなわち、糸の本数を減らすほど、確かに織物はそれだけ柔軟になる(曲げ強さの値が小さくなる)が、しかし同時に、それから製造される接着テープの耐摩耗性が著しく低下する。曲げ強さが3〜4mNcmに低下した時点で既に、マンドレル10mmで摩耗等級Dの達成はもはや不可能である。すなわち、接着テープにはもはや高い耐摩耗性はない。しかし、長期の適用期間が経ってもフラッギングの発生しない接着テープを得るためには、上記の値の曲げ強さが必要である。
【0015】
欧州特許第1074595号(特許文献2)(または優先権の対象であるフランス出願公開第9910029号(特許文献3))から、手での引裂きが可能なポリエステル織物基材の接着テープが公知である。この接着テープの耐摩耗性または摩耗等級については取り上げられていない。縦線密度は最大で2500dtex/cm、横線密度は最大で4500dtex/cmと記載されている。この値から、織物の単位面積重量は最大で約70g/mとなる。このような低い単位面積重量では、マンドレル10mmで摩耗等級Dは達成できない。
【0016】
ドイツ実用新案第202007006816号(特許文献4)も、ポリエステル織物と接着剤層とから成る、手で引裂き可能な織物基材接着テープについて記述している。例として、縦線密度2613dtex/cmおよび横線密度5200dtex/cmの織物が挙げてある。摩耗等級は10mmでCと分類される。織物の単位面積重量は、計算上では約78g/mなので、これは尤もな結果であって、摩耗等級Dは達成不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】ドイツ実用新案第202007008003号
【特許文献2】欧州特許第1074595号
【特許文献3】フランス出願公開第9910029号
【特許文献4】ドイツ実用新案第202007006816号
【特許文献5】欧州出願公開第1312097号
【特許文献6】欧州出願公開第1300452号
【特許文献7】ドイツ出願公開第10229527号
【特許文献8】国際出願公開第2006108871号
【特許文献9】欧州出願公開第1367608号
【特許文献10】欧州出願公開第1315781号
【特許文献11】ドイツ出願公開第10329994号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、従来技術に比較して著しい改良を達成すること、および鋭利な縁、突起部または溶接点での摩損および摩擦による機械的損傷に対して高い保護を有し、しかもこの際フラッギングの発生しないケーブルルームに個別導線をまとめてバンデージできるテープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この課題は、主請求項に詳しく特徴付けされているテープによって解決される。従属請求項には本発明の有利な実施形態が記述されている。さらに、本発明に基づくテープの使用およびこのテープで外装されたケーブルハーネスも本発明の概念に含まれる。
【0020】
すなわち、本発明は、基材と少なくとも片面に塗布された接着層とから成り、基材が織物、好ましくはポリエステル織物である、接着テープに関する。本発明にとって重要なのは、横糸の単位長当たりの線密度(auf die Laenge bezogenem Titer der Querfaeden)と縦糸の単位幅当たりの線密度(auf die Breite bezogenem Titer der Laensfaeden)の商が2.2〜6、好ましくは2.8〜4であること、および基材の単位面積重量が110g/m以上であることである。
【0021】
驚くべきことに、横線密度が縦線密度より遥かに高い織物基材を使用すれば、フラッギングの発生がなく、同時に高い耐摩耗性の達成という要求の充足が可能であることが明らかになった。その場合、LV312規格に基づく10mmマンドレルでの測定で、耐摩耗性として摩耗等級Dが達成される。特に、本発明に従って提供される縦方向に細い糸の場合、機械的安定性は低いことを前提としなければならなかったが、全く驚くべきことに、それにも拘わらず非常に高い縦方向耐摩耗性が達成可能である。
【0022】
耐摩耗性は、意外にも、高い繊度および/または多い糸本数の横糸によって確保される。その結果、織物の、したがって接着テープの低い縦方向曲げ強さが維持される。織物の縦方向曲げ強さは、DIN 53362規定の測定では、好ましくは3mNcm未満である。
【発明の効果】
【0023】
上記の結果として、接着テープのフラッギング性向は非常に小さい。例えば、LV312規定の方法によるフラッギング試験では0ミリメートルの値になる。したがって、本発明によれば、テープに課されるテープ自体の裏面への保持力に対する要求が低くなるので、接着剤塗布量も少なくすることができる。これは、接着テープの総厚さの点、および所与の外径でのロール上における巻付け長さの点で有利に作用する。
【0024】
縦線密度を低く設定できることのもう1つの結果として、抜群に切り易い接着テープが得られるように縦糸を張る可能性が生れる。接着テープの縦方向最大引張力は、好ましくは、115N/cm未満である。縦糸(経糸)の繊度は、好ましくは、最大で90dtexである。その結果、接着テープは鋏などの補助具で横方向に非常に切れ味良く切断することができる。このことは、特に機械加工では、殊に、そこで使用される刃物の切れの鈍化を遅らせるので利点をもたらす。高い耐摩耗性と良好な被切断性が兼ね備わっている。
【0025】
さらに好ましいのは、経糸の繊度が30dtex超の場合であり、特に好ましくは33〜65dtex、最も好ましくは50〜60dtexである。さらに、緯糸の繊度が220〜470dtexであれば好ましく、300〜370dtexであればより好ましい。
【0026】
本発明の別の有利な実施形態では、経糸の本数は30〜60本/cm、好ましくは45〜60本/cm、特に好ましくは48〜55本/cmおよび/または緯糸の本数は20〜40本/cm、好ましくは25〜30本/cmである。
【0027】
本発明のさらに別の有利な実施形態では、織物はポリエステル織物である。それ以外に、ポリアミド織物、ビスコース織物および/または列挙した素材の混合織物も可能である。糸条は、紡ぎ糸またはフィラメント糸(連続糸)で構成することができる。通例、フィラメント糸が使用される。これは一定数の個別フィラメントから成り、テクスチャード加工を施してもよいかまたはフラットで、および点状に固定させたまたは固定させないものでもよい。
【0028】
さらに、織物の厚さについては、好ましくは、最大で200μm、特に好ましくは130〜190μm、最も好ましくは180〜190μmである。本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、基材の単位面積重量は200g/mまでであり、好ましくは114〜140g/m、特に好ましくは118g/mである。
【0029】
接着テープ面積当たりの接着剤塗布量は、好ましくは90g/m未満で、特に好ましくは30g/m超、最も好ましくは40〜60/mである。
【0030】
それにより、接着テープの総厚さは、従来技術に比較すると薄くなっている。すなわち、耐摩耗性を高くしながら厚さを減らした製品が実現される。これは、例えばケーブル束など長尺物品へのバンデージがあまり厚くならないという利点をもたらす。そのため、より太いケーブルルームまたはより狭い設置空間が、摩耗保護を損なわずに可能になる。
【0031】
上記基材から接着テープを製造するに当っては、公知のすべての接着剤系を採用することができる。天然ゴムまたは合成ゴムをベースとする接着剤のほか、特にシリコーン系接着剤およびポリアクリレート系接着剤が使用できる。接着剤としては、感圧接着剤、すなわち、室温、乾燥状態で永久的に粘着性があって粘着力を保ったままの粘弾性の剤が好ましい。接着は、殆どすべての基材での軽い押し付けで即座に行われる。
【0032】
非常に適しているのが明らかになっている接着剤は、BASF社からacResin UVの名称で市販されているような低分子アクリレート系融解感圧接着剤である。低K値であるこの接着剤は、放射線化学的に誘起された最終的架橋結合により適用に適した特性を獲得する。
【0033】
合成ゴムベースの接着剤、すなわち特に、少なくとも1種のビニル芳香族ブロックコポリマーと少なくとも1種の接着樹脂とから成る接着剤で構成される接着コーティング層も同様に好ましい。ブロックコポリマーの典型的な使用濃度は、30重量%〜70重量%、特に35重量%〜55重量%の濃度範囲である。
【0034】
その他のポリマーで対象になり得るのは、天然または合成のポリイソプレンまたはポリブタジエンなど、例えば不飽和ポリジエンのような純炭化水素をベースとするポリマー、例えば、飽和エチレン/プロピレンコポリマー、α−オレフィンコポリマー、ポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレン/プロピレンゴムなどの化学的に実質上飽和のエラストマー、および、例えば、ハロゲン含有、アクリレート含有またはビニルエーテル含有のポリオレフィンのような化学的に官能化された炭化水素であり、これはビニル芳香族ブロックコポリマーで半分まで置き換えることができる。
【0035】
粘着付与剤としては、スチレンブロックコポリマーのエラストマーブロックと相容性のある粘着樹脂が使用される。
【0036】
その他の添加剤として、典型的なものとして、光保護剤、例えばUV吸収剤、立体障害アミン、抗オゾン剤、金属不活性化剤、加工助剤、末端ブロック増強樹脂が使用できる。
【0037】
可塑剤は、典型的には、例えば液状樹脂、可塑化オイル(Weichmacheroele)、もしくは、例えばモル質量1500g/mol(数平均)未満の低分子ポリイソブチレンのような低分子液状ポリマー、または液状EPDMタイプなどが使用される。
【0038】
幾つか列挙するだけに止めるが、例えば二酸化ケイ素、ガラス(砕粉状またはビーズ状)、酸化アルミニウム類、酸化亜鉛類、炭酸カルシウム類、二酸化チタン類、カーボンブラックなどのフィラー、さらには顔料、染料および蛍光増白剤も同様に使用できる。
【0039】
通例、感圧接着剤には、その耐エージング性を改良させるために、一次抗酸化剤および二次抗酸化剤が添加される。その場合、一次抗酸化剤は、酸素の存在時に生成され得るオキシラジカルおよびペルオキシラジカルと反応して、より反応性の低い化合物をもたらす。二次抗酸化剤は、例えばヒドロペルオキシドをアルコールに還元する。周知のように、一次エージング防止剤と二次エージング防止剤との間には相乗効果があるので、混合物の保護効果は両方の単独効果の和よりしばしば大きくなる。
【0040】
記述の接着テープに難燃特性が望まれる場合には、それは、基材および/または接着剤に難燃剤を添加することで達成できる。難燃剤としては、有機臭素化合物が可能であり、必要な場合には三酸化アンチモンなどの相乗剤を添加することができる。しかし、接着テープがハロゲンを含まない点に鑑みて、好ましくは、赤リン、有機リン化合物、鉱物化合物または発泡性化合物、例えばポリリン酸アンモニウムを単独で、または相乗剤と組み合わせて使用する。
【0041】
感圧接着剤の製造および加工は、溶液、分散液および融解物から行うことができる。好ましい製造方法および加工方法では融解物から行う。後者の場合、適した製造方法にはバッチ法も連続法も含まれる。
【0042】
接着剤は、部分的に、例えば接着テープの縦方向に接着テープの基材より幅の狭い帯状に塗布することができる。使用例によっては、接着剤は基材上に平行な数本の帯状にコーティングすることもできる。基材上での接着帯の位置は自由に選択することができるが、基材の縁部の一方に直に配置することが好ましい。
【0043】
基材の接着コーティング面には、接着テープの縦方向に延び、接着コーティング面の20%〜80%を覆う少なくとも1つのカバー帯を設けることができる。
【0044】
本発明の好ましい一実施形態によれば、接着コーティング上に、正確に一つのカバー帯が配置される。
【0045】
接着コーティング上の帯の位置は自由に選択できるが、基材の縦縁部の一方に直に配置することが好ましい。そうすれば、接着テープの縦方向に延び、基材の他方の縦縁部で終わる接着帯が得られる。接着テープをケーブルハーネスの外装に使用する場合、接着テープをケーブルハーネスの周りに螺旋を描くように導くと、ケーブルハーネスの包被を、接着テープの接着剤が接着テープ自体にだけ接着し、物品には接着剤が接触しないように行うことができる。そのように外装されたケーブルハーネスは、何らかの接着剤によってケーブルが固定されないので非常に高い可撓性を有している。したがって、その据付時の曲げ性は−狭い通過空間または鋭角曲折の場合でさえも−かなり高まる。
【0046】
物品への接着テープの確実な固定が望まれる場合には、接着帯が一方では接着テープ自体に、他方では物品に接着するように外装を行うことができる。
【0047】
別の有利な実施形態によれば、帯が接着コーティングの中央に置かれ、したがって基材の縦縁部には接着テープの縦方向に延びる2本の接着帯ができる。ケーブルハーネスの周りに接着テープを前記の螺旋運動により、得られる保護包被が位置ずれしないように、確実かつ経済的に取り付けるには、2本の接着帯を接着テープのそれぞれ縦縁部に設けるのが有利であり、第1の大抵は第2の帯より狭い帯を固定補助手段とし、広い方の第2の帯を止着に用いる場合は特にそうである。このように、接着テープは、ケーブルルームが位置ずれに対して安定に保持され、それにも拘わらず可撓性に仕立てられるように、ケーブルに接着される。
【0048】
上記のほか、複数のカバー帯を接着コーティング上に設ける実施形態もある。1本だけの帯について述べている場合、複数の帯材で同時に接着コーティングを覆うことも全く可能であるとの考えが当業者には読み取れよう。
【0049】
好ましくは、帯材は全体で、接着コーティングの50%〜80%を覆う。被覆率はケーブルルームの用途および直径に応じて選択される。接着帯が1本または2本にとどまり、その幅の合計が基材幅の20〜50%を占めることが特に好ましい。
【0050】
特に、接着コーティングが全面にではなく、例えば帯状になされる場合では、カバー帯の幅に関するパーセント表示は、基材幅に対する値であり、本発明によれば、カバー帯(複数可)は基材幅の20〜80%に当る幅を有している。
【0051】
このように調製された接着剤は、次に、一般に知られた方法で基材上に塗布される。融解物からの加工ではノズルまたはカレンダを介しての塗布方法が可能である。溶液からの方法としては、幾つか挙げれば、ドクター、ナイフまたはノズルによるコーティングが公知である。また、接着剤を抗粘着性基布または剥離ライナから基材複合体上に転写することも可能である。
【0052】
接着テープの裏面には、アルキメデスの螺旋状に巻き付けた接着テープの繰り出し特性に好影響を与えるために、裏面用ワニスを塗布することができる。そのために、裏面用ワニスには、粘着作用物質としてシリコーンまたはフルオロシリコーン化合物、およびカルバミン酸ポリビニルステアリル、ポリエチレンイミンステアリルカルバミドまたは有機フッ素化合物を付与することができる。裏面用ワニスは、一般的に、後から接着される接着テープのフラッギングを誘起しないように、極めて控え目に使用すべきである。
【0053】
一般的表現としての「接着テープ」は、本発明の意味では、二次元に広がるフィルムまたはフィルム切片、広がった長さと限られた幅を有するテープ、テープ切片類、最後にダイカット品またはラベル及び類似物など、平坦構造物すべてを含む。
【0054】
接着テープは、ロール状に、つまりアルキメデスの螺旋状にそれ自体に巻き付けた状態で製造することも、また、接着剤側がシリコーン加工紙またはシリコーン加工フィルムなどの剥離材で覆われた状態で製造することもできる。剥離材としては、プラスチックフィルムまたはよくサイジングされた長繊維質の紙など、毛羽立たない材料が好ましく、適している。
【0055】
接着テープは、特にケーブルルームなどの長尺物品を外装するのに使用することが好ましい。その場合、長尺物品を接着テープで軸方向に包被するか、または長尺物品の周りに接着テープを螺旋を描くように導く。それにより、へリックス形態が得られる(螺旋、渦巻線、円筒状スパイラルまたはコイルとも言われる。ヘリックスは、巻付け材を円筒側面の周りに一定のピッチで巻き付けたときに描く曲線のことである)。
【0056】
最後に、本発明の概念には、本発明に基づく接着テープで外装された長尺物品も含まれる。長尺物品とは、特にケーブルルームである。
【0057】
接着テープはその卓越した適合性により、カバー材から成る外装に使用することができる。そのカバー材の少なくとも一方の縁部領域には自己接着性の接着テープが配置され、接着テープがカバー材の縦縁部の一方に沿って、それも好ましくは、カバー材の幅より狭い縁部領域を延びるように、カバー材上に接着される。この種の製品および最適化されたその実施形態が欧州出願公開第1312097号(特許文献5)に開示されている。欧州出願公開第1300452号(特許文献6)、ドイツ出願公開第10229527号(特許文献7)および国際出願公開第2006108871号(特許文献8)には発展形態が示されており、それらには本発明に基づく接着テープも非常によく適している。本発明に基づく接着テープは、欧州出願公開第1367608号(特許文献9)に開示されているような方法にも使用できる。最後に、欧州出願公開第1315781号(特許文献10)およびドイツ出願公開第10329994号(特許文献11)が、本発明に基づく接着テープにも可能であるような接着テープの実施形態を記述している。
【0058】
以下では幾つかの図に基づいて接着テープについてより詳しく説明するが、それによりいかなる制限も意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】接着テープの側断面図である。
【図2】基材を形成する織物を示す図である。
【図3】個別ケーブルの束から成り、本発明に基づく接着テープで外装された、ケーブルハーネスの一区間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1には、片面に自己接着性のコーティング層12が付与された織物基材10から成る接着テープの側断面が示されている。
【0061】
図2は、基材10を形成する織物の詳細を示している。この織物は、緯糸が経糸より遥かに重い繊度を有することを特色とする。
【0062】
図3には、個別ケーブル7の束から成り、本発明に基づく接着テープで外装されたケーブルハーネスの一区間が示されている。接着テープはケーブルハーネスの周りに螺旋を描くように導くかれる。図示されたケーブルハーネスの区間には、接着テープの2つの巻きIおよびIIが見られる。左へさらに巻きが続いているが、ここには描かれていない。接着コーティング上にカバー帯5が設けられ、それにより、テープの縦方向に延びる接着帯6が生じる。接着テープの非接着性領域11、21、23と接着性領域12、22、24とが交互に並んでいる(区間22、24は、開放状態の接着剤12とは違って外から見えないので、描画には濃い陰影が選ばれている)。ケーブルハーネスの外装は、接着剤帯6が接着テープ上に全面的に接着するように行われる。ケーブル7との接着は排除されている。
【0063】
以下では1つの例と3つの対照例を手掛かりに本発明を詳しく説明していくが、それによって本発明に何らかの制限を与えるものではない。なお、測定はそれぞれ次の規格に従って行われる。
・ 織物の単位面積重量および接着剤コーティング:DIN EN ISO 2286−1
・ 繊度:DIN 53830 T3
・ 糸本数:DIN EN 1049第2部
・ 織物および接着テープの縦方向の最大引張力および最大引張伸び:破断伸び曲線の最大値での測定 DIN EN 14410(クランプ長 100mm、引張速度 300mm/分)
・ 接着力:DIN EN 1939
・ 織物および接着テープの厚さ:DIN EN 1942
・ 耐摩耗性:LV312−1
・ 曲げ強さ:DIN 53362
【0064】
フラッギング試験用にLV312法をさらに改良した。その目的は、実際の適用により近い結果を得ることであった(ケーブル束の緊張、より小さな束直径)。ケーブル束は、撚り長約2cmで撚り合わされた導線断面0.35mmの2本の撚った心線で構成されている。その上に、接着テープロールから取り出した接着テープを手でスポット巻きで巻き付け(オーバラップ率100%)、鋏で切断し、手でしっかり押え付ける。接着テープ片の長さは3.0〜6.0cmである。続いて、テープを巻いたケーブル束を室温にて自由な状態で吊り下げ放置する。7日後に、持ち上がった端部の長さを測定する。
(I)対照例:tesa 51026
(II)対照例:ドイツ実用新案202007006816(特許文献4)からの例
(III)対照例:ドイツ実用新案202007008003(特許文献1)からの例
(IV)本発明に基づく例
【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
例(IV)は、接着テープの耐摩耗性が高く、同時に縦方向の曲げ強さが低いという、本発明の利点を示している。これら2つの利点は、縦線密度に対する横線密度の比が本発明の設定する限界内にある場合は、兼ね備えることができる。
【0068】
したがって、直径が小さく長尺物品に対しても、テープ末端のフラッギング現象なしに巻き付けることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と少なくとも片面に塗布された接着層とから成り、前記基材が織物、好ましくはポリエステル織物である接着テープにおいて、
横糸の単位長当たりの線密度と縦糸の単位幅当たりの線密度の商が2.2〜6であり、前記基材の単位面積重量が110g/m以上であることを特徴とする接着テープ。
【請求項2】
前記基材の厚さが、DIN EN 1944の規定に基づく測定で最大で200μm、好ましくは130〜190μm、特に好ましくは180〜190μmであることを特徴とする、請求項1に記載の接着テープ。
【請求項3】
前記経糸の繊度が最大で90dtex、好ましくは30dtex超、特に好ましくは33〜65dtex、最も好ましくは50〜60dtexであること、および/または
前記緯糸の繊度が220〜470dtex、好ましくは300〜370dtexであることを特徴とする、請求項1または2に記載の接着テープ。
【請求項4】
前記経糸の本数が30〜60本/cm、好ましくは45〜60本/cm、特に好ましくは48〜55本/cmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の接着テープ。
【請求項5】
前記緯糸の本数が20〜40本/cm、好ましくは25〜30本/cmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の接着テープ。
【請求項6】
前記基材の単位面積重量が200g/mまで、好ましくは114〜140g/m、特に好ましくは118g/mであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の接着テープ。
【請求項7】
前記基材がポリエステル織物、ポリアミド織物、ビスコース織物および/または前記素材の混合織物、好ましくはポリエステル織物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の接着テープ。
【請求項8】
前記接着テープの最大引張力が、DIN EN 14410の規定に基づく測定で115N/cm未満であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の接着テープ。
【請求項9】
前記接着テープの耐摩耗性が、LV312の規定に基づく直径10mmのマンドレルによる測定で少なくとも摩耗等級Dを、および/またはLV312の規定に基づく直径5mmのマンドレルによる測定で少なくとも摩耗等級Cを満たすことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の接着テープ。
【請求項10】
前記基材の曲げ強さが、DIN 53362の規定に基づく測定で3mNcm未満であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の接着テープ。
【請求項11】
前記接着剤の接着テープ面積当たりの塗布量が90g/m未満で、好ましくは30g/m超であり、特に好ましくは40〜60g/mであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の接着テープ。
【請求項12】
前記接着コーティングが、自己接着性の接着コーティング、好ましくは弾性ゴム、アクリレートまたはシリコーンをベースとする自己接着性の接着コーティングであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つに記載の接着テープ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一つに記載された接着テープの、長尺物品を外装するための使用であって、前記接着テープが前記長尺物品の周りに渦巻線を描くように導かれる使用。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一つに記載された接着テープの、長尺物品を外装するための使用であって、前記長尺物品が前記テープにより軸方向に包被される使用。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一つに記載の接着テープにより外装された、長尺物品、特にケーブルルーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−63801(P2011−63801A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205061(P2010−205061)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】