説明

耐水性を有するバリア紙カップとその製造方法

【課題】基材の紙端面および表面の被覆のバリア性を保持できる紙カップと、ロール状の紙基材から直接紙カップにする製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】外面に設けられた熱可塑性樹脂層は、外側から無延伸ポリプロピレン樹脂層とポリプロピレンとポリエチレンとの混合層からなるシーラント層と、ポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層とからなり、ドライラミネート法によりイソシアネート系の接着剤を介して紙に積層されており、シーラント層は、押出しラミネート法により、中密度ポリエチレン樹脂又は酸変性中密度ポリエチレン樹脂を介してポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層に積層されてなることを特徴とする紙カップとその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙容器とその製造方法に関し、特に熱水レトルト処理の可能な耐水性を有する紙カップとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジュース等の飲料を充填し、上部の開口部を蓋材で密封して使用するカップ状紙容器は、紙を基材とし両面にポリエチレン等の熱可塑性樹脂層を設けた積層材料を所定の形状に打ち抜いたブランクを、胴部に接合部を設けて成形した紙カップが一般的であった。
【0003】
また、酸素や水蒸気等のガスに対するバリア性を必要とする場合、前記胴部の積層材料として、例えば、表側から、ポリエチレン/紙/ポリエチレン/アルミニウム箔/ポリエチレンテレフタレートフィルム/ポリエチレンのような金属箔を含む積層シート、またはポリエチレン/紙/ポリエチレン/金属酸化物蒸着層を有するプラスチックフィルム/ポリエチレンのような透明蒸着フィルムを含む積層シートのような層構成の材料を用いて成形した紙カップを用いることが多かった。
【0004】
このような積層シートを用いてブランクに打ち抜いて必要な端部を接合してカップ状に成形される。この時に紙カップの接合部のバリア性を確保するため、例えば、紙カップの胴部を構成する胴部材の接合部の両側端の端面を保護するための端面処理(エッジプロテクト)の方法として、図13(a)〜(c)に示すスカイブヘミングと呼ばれる方法も知られている。
【0005】
この方法では紙基材(101)に熱可塑性樹脂(102)を積層した図13(a)に示すような積層シートからなる胴部材(100)の最外層端縁部を切削ミーリング方式あるいは切削ベルナイフ方式等により図13(b)に示すように胴部材(100)の厚みの約半分をスカイブ(切削)する。次に、スカイブした残りの半分を削除面が内側になるようにヘミング(折り返し)し、図13(c)に示すように熱可塑性樹脂によって紙端面を保護する。
【0006】
上記、紙端面のスカイブヘミング加工を行うためには、あらかじめ打ち抜いた胴部材ブランクを紙カップに成形する前に、特別の加工機械を用いて紙端面のスカイブヘミング加工を行うことが必要である。また、スカイブ端面を一直線上にそろえるため、カップ成形機でスカイブヘミング加工をすると同時にカップ成形をすることは困難であった。
このようにスカイブヘミング加工は複雑な加工工程を経なければならず、さらに、用紙をスカイブするために紙粉が発生し、この紙粉を完全に除去することが困難であった。
【0007】
スカイブヘミング加工はさらに、スカイブ深さの管理が難しく成形後にスカイブ部からの切れが発生する場合があり、サイドシール等が安定しないという問題もあった。加えて、スカイブヘミング加工でのスカイブ後の折り返し接着に使用する糊の量や位置等の管理が難しかった。
【0008】
スカイブヘミング加工を行わずにバリア性に優れた紙カップを作製する方法として、紙基材の表面を覆う熱可塑性耐水耐油性プラスチックフィルムを端面から延設することによって紙基材の端面が覆われたブランクを用い、紙カップを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この紙基材の端面を保護した、バリア性を有する紙カップにおいては、胴部貼り合わせ
部の内側の端縁は全体にわたって熱可塑性樹脂層が紙基材から延出して作製されている。このように、紙基材から延出した熱可塑性樹脂層のフィルムは、カップ成形する際に、不規則に成形されてしまい、本来の目的である紙基材の端面を被覆することが十分にできなかった。また、紙カップとしての仕上がりが悪く、外観的に不具合が生じてしまう等の問題があった。のみならず、上記の熱可塑性樹脂層は耐水耐油性というバリア性とともに成型時のヒートシール性というシーラントとしての性質を併せ持つことが要求されるため機械的強度に関しては軽視されがちであった。
【0010】
さらに、少なくとも内面に熱可塑性樹脂層が設けられた紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜き、一方の側端縁に外方に延出する樹脂部を、基材の端面に沿って、密着被覆させたブランクを、他方の側端縁の内側となるように重ね合わせ、密着することにより胴部貼り合わせ部を形成することが提案されている(特許文献2参照)。
【0011】
この紙容器では、胴部貼り合わせ部のバリア性は確保されるが、カップ状容器の場合、開口部に胴部材の上端縁部を巻き込んでフランジ部が形成されているため、フランジ部で基材の紙の厚みによる段差が生じる。そのため、フランジ部の上面に蓋材を重ね、そのまま加熱シールした場合、前記段差があることにより密封を確実に行うことができなかった。特に、フランジ部の断面が扁平な状態の場合、基材の厚みによる段差の影響が大きかった。
【0012】
したがって、フランジ部の密封を確実に行うためには、フランジ部の上面の段差部を埋めるために別の樹脂等からなる充填部材を用意して、段差部を解消するために段差部の位置の密封シールを部分的に行なわなければならなかった。
【0013】
さらに、内面に熱可塑性樹脂層が設けられた紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜き、一方の側端縁に外方に延出する樹脂部を外面側に折り返した折り返し樹脂部を有するブランクを、他方の側端縁の内側となるように重ね合わせて基材に密着することにより胴部貼り合わせ部を形成した紙容器も提案されている(特許文献3参照)。
【0014】
この紙容器では、貼り合わせ部における内面側基材端面は、熱可塑性樹脂層で被覆することにより保護されている。特許文献3にはまた、カップ状容器の場合、開口部に胴部材の上端縁部を巻き込んで形成するフランジ部が位置によって厚さが異なるために生じる段差に起因する問題点、すなわちフランジ部の上面に蓋材を重ね、そのまま加熱シールしても密封を確実に行うことができなかったという問題に対する解決策も用意されている。
【0015】
紙への端面からの水分浸透を防止するために容器に用いる紙の端面をプラスチックフィルムで覆う方法以外にも紙自体の耐水性を改良することによってこの目的を達成する方法が提案されている。
【0016】
特許文献4では、胴部と底部のブランク板が、少なくとも最外層の耐熱性熱接着性樹脂層と、中間層のコップ原紙およびガスバリア層と、最内層の耐熱性熱接着性樹脂層とを含む積層シートで形成され、且つ、該コップ原紙の米坪量が150〜400g/mの範囲であって、該コップ原紙のステキヒト・サイズ度が400秒以上である原紙を使用する、レトルト殺菌処理可能な紙カップ容器が提案されている。
ステキヒト・サイズ度が400秒を下回る場合はコップ原紙の耐水度が不足し、積層シート端縁部の端面は、外部に露出しているため、レトルト殺菌処理の加熱蒸気がこの部分からコップ原紙の内部に浸透し、ふやけ現象を発生すると共に、剛性の低下により容器の変形も認められるとされている。
【0017】
ここでは、熱水が浸透しにくい紙を使用してはいるが、レトルト殺菌時に加わり得る高
圧条件下で熱水の浸透を完全に防ぐのは困難である。また、水分浸透性の指標としてのステキヒト・サイズが通常の倍以上の秒数の原紙が必要となり、特殊な紙を使用する必要があるので経済性および加工技術面からの問題もある。
【0018】
基材に用いる紙として、熱水浸漬時にも強度が低下し難い加工を施した紙を使用することによってレトルト殺菌時の熱水にも耐えるカップ状容器とする試みも提案されている。
特殊な紙を必要としない方法として、特許文献5には、耐熱性、耐水性、耐摩擦性および耐レトルト性に優れた塗膜物性が得られるα−メチルスチレンとメタクリル酸メチル、およびカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を必須成分とする水性アクリル樹脂を紙基材へ塗工して耐久性を付与することが提案されている。
【0019】
さらに特許文献5には、含浸により紙基材の繊維構造物内部にポリイソシアネート化合物を導入し、繊維自体に被膜を形成して繊維の絡み合い部分に固着し水と尿素化合物を生成させることを併用することも提案されている。生成した尿素化合物は耐水性、耐熱性に優れるため、その含浸物である繊維構造物に極めて高い乾燥強度、湿潤強度、耐熱水性を付与することができる。
【0020】
この方法によれば、たとえばレトルト殺菌時に紙基材内部に熱水が浸透しても紙基材に極めて高い乾燥強度、湿潤強度、耐熱水性が付与されているためにふやけ現象を発生することや、剛性の低下により容器の変形が発生することがない。
しかしながら、高温高圧でのレトルト殺菌時に紙基材内部に浸透した熱水を蒸発させる過程で内部の水蒸気を外部に蒸散させるための水蒸気透過性が必要であるため、紙基材表面の印刷適性を確保するためのコート層の形成に限界があり美麗な容器とならない場合があった。
【0021】
特許文献6には、トップ材とサイド材とボトム材を持ち、サイド材とトップ材を接着する部分を形成する際に、サイド材のトップ側およびボトム側の端部を容器内側にカーリングさせる工程において、サイド材端部を1周以上カーリングさせることによってサイド材端部のエッジを容器外部に露出させない構造とした紙容器が提案されており、胴部サイド材の重なる端面のみならずトップとボトムの胴部サイド材の端面も確実に封止して端面からの熱水等の浸透を防止する容器となっている。
【0022】
以上のように、液体紙容器のバリア性を熱水レトルト処理に耐え得るまで強化するために特に紙基材の端面からの水分浸透を防止する多くの提案によって、従来困難であった紙容器の耐水性確保の課題は一定の前進をみている。
しかしながら、紙基材表面に設けられる熱可塑性樹脂層は耐水耐油性というバリア性とともに成型時のヒートシール性というシーラントとしての性質を併せ持つことが要求されるため機械的強度に関しては軽視されがちという問題点は未だ完全に解決したとはいえないのが現状である。
【0023】
紙基材表面に設けられた熱可塑性樹脂層の機械的強度が不足することよって引き起こされる問題のうちで深刻なのは成型時のダメージによる表面の傷であって、これによって生成した孔によって必要なバリア性が失われてしまい、特に熱水でのレトルト工程に耐えられなくなることである。
【0024】
紙カップの成型時のダメージのうちで典型的なのは容器底部を形成する工程において、筒状に形成した胴部材の底部を、金型上に載置した底部材(ボトム材)の外周周縁部(起立部)を巻き込むようにカールさせる(ボトムインカール)時に胴部材の底部外周に金型が当たることによって表面の熱可塑性樹脂層が削られて孔が出来、この孔からの熱水の浸透によってレトルト処理時に基材の紙が膨潤してしまう場合である。
【0025】
さらに内側にカールさせた胴部材の底部を、底部材外周を挟む形で圧着するかしめ作業の工程でも、胴部材底部を内側から底部材起立部に押し付けながら回転するローレットまたは内側から膨張するエキスパンションの目によって熱可塑性樹脂層が切られて孔が出来、この孔からの熱水の浸透によってレトルト処理時に基材の紙が膨潤してしまう場合もある。
【0026】
図11及び図12を参照して容器底部を形成する工程における上記の問題の一例を具体的に説明する。
通常紙カップは底部の成型においては、扇形に打ち抜いた胴部材(サイド材)の両側端を重ねて接着して円錐状となし、この底部に円形の底部材(ボトム材)の外周部を起立させたものを嵌め込んで環状脚部を形成することが行われる。
【0027】
図11の(a)には両側端を接着して円錐状に形成された胴部材(18)をその下端部(19)を上にして円錐台上金型(C1)に嵌めこみ、その内側に起立部(21)を上側にした底部材(20)を上記金型(C1)の上に載置した様子を模式的に断面図で示してみた。
次に胴部材下端部(19)を底部材の起立部(21)を挟み込むように内側へカールさせるボトムインカールの様子を図11の(b)に示した。
【0028】
ここでは、胴部材下端部(19)をその外側上部から底部材の起立部(21)を越えて内側へ曲げるためにボトムインカール金型(C2)の内側が胴部材下端部の外側に加圧接触するためにしばしば胴部材の容器外側の熱可塑性樹脂層等のバリア性の確保に必要な保護層が傷つけられるということが起こる。
【0029】
ボトムインカールの次の工程である環状脚部の圧着の代表的な例を図12に示した。内側にカールした胴部材の下端部(19)を環状脚部の内側から底部材の起立部(21)に圧接する方法としては、(a)のように環状脚部の内側に外側に向けて加圧しながら回転するローラー(ローレット)を挿入してローレット(C3)を回転させながら圧着する方法や、(b)のようにローレットの代わりにエキスパンション部材(C4)を環状脚部の中に挿入して広げることで圧着することが出来る。
この場合にも、胴部材下端部(19)の容器外側の面とローレットもしくはエキスパンション部材が加圧接触するために、胴部材の容器外側の熱可塑性樹脂層等のバリア性の確保に必要な保護層が傷つけられるということが起こる。
【0030】
紙カップのトップカールを形成する工程と圧着によってトップフランジを形成する工程に於いても容器外側の面と圧着金型との接触が起こる場合には、同様に摩擦によって胴部材の容器外側の熱可塑性樹脂層等のバリア性の確保に必要な保護層が傷つけられるということが起こりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開昭51−122566号公報
【特許文献2】特開2005−272010号公報
【特許文献3】特開2008−222245号公報
【特許文献4】特開2005−35574号公報
【特許文献5】特開2003−26980号公報
【特許文献6】特開2009−230238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明は、重ね合わせ部に位置する側端縁が、延出した熱可塑性樹脂層からなる樹脂部フィルムがはみだして形成されている胴部材を用いてバリア性に優れた容器を成形する際に発生する以上のような問題に鑑みてなされたもので、基材の紙端面および表面の被覆のバリア性を保持できる紙カップと、ロール状の紙基材から直接紙カップを製造する製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、紙カップの胴部材の容器外面側に、ドライラミネート法により積層された、耐熱性と耐摩擦性にすぐれたポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層(耐熱耐摩擦性樹脂層)を設けることにより、カップ成型時の胴部材表面の孔傷の発生を防止して、熱水の浸透力に対する抵抗の強い、熱水式レトルト処理も可能なバリア性を保持できる紙カップとしたものである。
【0034】
また、シーラント層として無延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂層の内面にポリプロピレン(PP)樹脂とポリエチレン(PE)樹脂の混合層を形成したものを用いて、中密度ポリエチレン(MDPE)樹脂又は酸変性中密度ポリエチレン樹脂により押出しラミネートすることで成形性を保持しながらシーラント層の密着性を向上させることが可能になった。
【0035】
本発明の請求項1の発明は、
紙を主体とし、両面に熱可塑性樹脂層を有する基材シートからなる胴部形成用ブランクと底部形成用ブランクを用いて形成される紙カップであって、
外面に設けられた前記熱可塑性樹脂層は、外側から無延伸ポリプロピレン樹脂層とポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂との混合層からなるシーラント層と、ポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層と、からなり、
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層は、ドライラミネート法により、イソシアネート系の接着剤を介して紙に積層されてなり、
前記シーラント層は、押出しラミネート法により、中密度ポリエチレン樹脂又は酸変性中密度ポリエチレン樹脂を介してポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層に積層されてなることを特徴とする紙カップである。
【0036】
本発明の請求項2の発明は、前記ポリエチレンテレフタレート層またはナイロン層の厚さは6μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の紙カップである。
【0037】
本発明の請求項3の発明は、前記ブランクの重ね合わせ部の内側に位置する側端縁は、前記基材の側端縁から延出する樹脂部を、基材の外面側に折り返した折り返し樹脂部を有し、前記ブランクの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁は、前記基材の側端縁から延出する樹脂部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の紙カップである。
【0038】
本発明の請求項4の発明は、前記ブランクの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁から延出する樹脂部が、基材の外面側または内面側に折り返した折り返し樹脂部を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の紙カップである。
【0039】
本発明の請求項5の発明は、前記ブランクの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁から延出する樹脂部が、前記重ね合わせ部の内側のブランクに沿って密着していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の紙カップである。
【0040】
本発明の請求項6の発明は、少なくとも前記内面の熱可塑性樹脂層は、ガスバリア性層を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の紙カップである。
【0041】
本発明の請求項7の発明は、前記内側及びまたは外側に位置する側端縁から延出する樹脂部は、側端縁の全長に設けたことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の紙カップである。
【0042】
本発明の請求項8の発明は、紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜きブランクを形成する打ち抜き工程と、前記ブランクの、両方の側端縁に外方に延出する樹脂部を形成する樹脂部形成工程と、前記ブランクの、樹脂部を折り返す樹脂部折り返し工程と、前記ブランクの樹脂部を形成した両方の側端縁を重ね合わせ、密着する胴部貼り合わせ部を形成する胴部形成工程と、を有することを特徴とする請求項1、2、3、4、6、7のいずれか1項に記載の紙カップの製造方法である。
【0043】
本発明の請求項9の発明は、紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜きブランクを形成する打ち抜き工程と、前記ブランクの、両方の側端縁に外方に延出する樹脂部を形成する樹脂部形成工程と、前記ブランクの、一方の側端縁の樹脂部を折り返す樹脂部折り返し工程と、前記ブランクの樹脂部を折り返した側端縁を、他方の側端縁の内側となるように重ね合わせ、密着する胴部貼り合わせ部を形成する胴部形成工程と、を有することを特徴とする請求項1、2、3、5、6、7のいずれか1項に記載の紙カップの製造方法である。
【発明の効果】
【0044】
本発明の請求項1に係る発明の紙カップは、紙を主体とし、両面に熱可塑性樹脂層を有する基材シートからなる胴部形成用ブランクと底部形成用ブランクを用いて形成される紙カップであって、外面に設けられた前記熱可塑性樹脂層は、外側から無延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂層とポリプロピレン(PP)樹脂とポリエチレン(PE)樹脂との混合層からなるシーラント層と、ポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層とからなり、耐熱性と耐摩耗性の優れたポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層が表面層に設けられていることによって、保存時や輸送時の外部からの摩擦や衝撃に対する耐久性に優れている容器とすることが出来る。
【0045】
のみならず、容器底部の成型の際にボトムインカール金型の内側が胴部材下端部の外側に加圧接触するために起こる熱可塑性樹脂層の傷つきや、環状脚部の圧着の際に胴部材下端部の外側の面とローレットもしくはエキスパンション部材が加圧接触するために起こる熱可塑性樹脂層の傷つきを防止できるので、バリア性の確保とともに熱可塑性樹脂層の傷やピンホールに起因する紙基材層への熱水の浸透防止が可能になる。容器頂部の成型の際にも胴部材上端部を傷つけることを防止することが出来る。
【0046】
さらに外面に設けられた、外側からシーラント層とポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層とからなる前記熱可塑性樹脂層は、ドライラミネート法によりイソシアネート系の接着剤を介して紙を主体とする基材に積層されてなることにより、押出しラミネート法により基材に積層されている場合に起こる製造時の以下の問題を効果的に回避することが出来る。その結果、バリア性の確保と熱可塑性樹脂層の傷やピンホールに起因する紙基材層への熱水の浸透防止がより確実に可能になる。
【0047】
本発明の紙カップのようにレトルト殺菌工程を含む用途に用いられる容器の場合は、レトルト処理中に容器外面が熱水に接触したり、冷却時に冷却水が接触することが想定されるために高い密封性が要求される。
【0048】
基材となる紙に、外側からシーラント層とポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層とからなる前記熱可塑性樹脂層を積層する方法として押出しラミネート法を
もちいた場合には、外側のシーラント層に用いる樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)の融点よりも低い融点の樹脂(例えばポリエチレン樹脂)を基材と例えばポリエチレンテレフタレート樹脂層の間に熱溶融させて層状に形成する必要がある。
【0049】
このような構成の積層体(基材シート)を用いてカップ状に成型を行う場合には、ブランク端部において外側のシーラント層を熱溶融させて内側表面に溶着することが必要であるが、この時の加熱によって紙基材とポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層の間にある融点の低いポリエチレン樹脂が溶融して加熱された紙基材から発生する水分の蒸発によって発泡して空気層が出来ると、浮いた熱可塑性樹脂層が強く加熱され、密封性を破壊するピンホール等の孔が発生しやすくなる。
【0050】
カップ成型時の貼り合わせにおける、以上のような密封不良の発生を防止するために、本発明の紙カップにおいては、カップ外面に設けられた前記熱可塑性樹脂層と紙基材を積層する方法として接着にイソシアネート系の接着剤を用いたドライラミネート法を採用した。
【0051】
イソシアネート系の接着剤を用いたドライラミネート法においてはラミネート後の硬化した接着剤層が実質的に熱溶融しない状態であるために、上記のような貼り合わせ時の発泡や孔傷等の不良発生を防止することが出来る。このような紙基材層への熱水の浸透防止を安定して確実に行うことは、熱水を使用したレトルト殺菌の工程に於いて特に重要である。
【0052】
外側からシーラント層とポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層とからなる前記熱可塑性樹脂層を形成する場合には、通常シーラント層をポリプロピレン樹脂層単層で形成してポリエチレン樹脂による押出しラミネート法を用いて延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂層または延伸ナイロン樹脂層に接着する簡単な方法が用いられやすい。
しかしながら、この方法ではポリプロピレン樹脂層とポリエチレン樹脂層の密着が悪いので、積層した両層間の良好な密着性を維持することが出来なかった。
【0053】
本発明者は、溶融押出し法に通常使用されるポリエチレン樹脂として低密度ポリエチレン樹脂では耐熱性が不足しているので、低密度ポリエチレン樹脂よりも耐熱性に優れ、加工性が同等である中密度ポリエチレン樹脂を用い、さらにシーラント層のポリプロピレン層にポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂の混合層を介在させることによって加工性と密着性の問題を同時に解決することが出来ることを発見して本発明の完成に至った。
【0054】
本発明の請求項2に係る発明によれば、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層の厚さは6μm以上30μm以下であることによって、上記金型や部材が加圧接触するために起こる熱可塑性樹脂層の傷つきをより効果的に防止できるので、バリア性の確保と熱可塑性樹脂層の傷やピンホールに起因する紙基材層への熱水の浸透防止がより確実に可能になる。
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層の厚さは6μm未満であると上記の耐久性を確保することが困難になり、30μmよりも大きいと成型時の加工性が悪くなってしまう。
【0055】
本発明の請求項3に係る発明によれば、前記ブランクの重ね合わせ部の内側に位置する側端縁は、前記基材の側端縁から延出する樹脂部を、基材の外面側に折り返した折り返し樹脂部を有し、前記ブランクの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁は、前記基材の側端縁から延出する樹脂部を有することで、貼り合わせ部における外面側基材端面が重ね合わされている状態で胴部貼り合わせ部に段差部が生じ、外観上不都合なだけでなく、重ね合
わせ時のシワ等により外部からの水分の浸透が起こりやすいという問題をなくすことが出来る。
【0056】
本発明の請求項4に係る発明によれば、前記ブランクの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁から延出する樹脂部が、基材の外面側または内面側に折り返した折り返し樹脂部を有することにより、基材端部の封止が確実に行えるだけでなく、胴部貼り合わせ部の樹脂量が確保でき、さらに、ガスバリア層を含む熱可塑性樹脂層の場合、前記ガスバリア層の端面が露出しない紙カップが得られる。
【0057】
本発明の請求項5に係る発明によれば、前記ブランクの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁から延出する樹脂部が、前記重ね合わせ部の内側のブランクに沿って密着していることによって基材端部の封止が確実に行えるだけでなく、胴部貼り合わせ部の樹脂量が確保できる紙カップが得られる。
【0058】
本発明の請求項6に係る発明によれば、少なくとも前記内面の熱可塑性樹脂層は、ガスバリア層が含まれた構成とすることにより、内容物の保存性が優れた紙カップが得られる。
【0059】
本発明の請求項7に係る発明によれば、前記内側及びまたは外側に位置する側端縁から延出する樹脂部は、側端縁の全長に設けることで、フランジ部以外の胴部貼り合わせ部の密封性の優れた紙カップが得られる。
【0060】
本発明の請求項8に係る発明によれば、紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜きブランクを形成する打ち抜き工程と前記ブランクの、両方の側端縁に外方に延出する樹脂部を形成する樹脂部形成工程と、前記ブランクの、樹脂部を折り返す樹脂部折り返し工程と、前記ブランクの樹脂部を形成した両方の側端縁を重ね合わせ、密着する胴部貼り合わせ部を形成する胴部形成工程と、を有する紙カップの製造方法であるから、紙端面の被覆に支障をきたさず、かつ、紙カップとしての仕上がり外観の綺麗なバリア性を有する紙カップ等の紙容器とそれをロール状の紙基材から直接紙カップや紙容器にする紙カップの製造方法を提供することが出来る。
【0061】
本発明の請求項9に係る発明によれば、紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜きブランクを形成する打ち抜き工程と、前記ブランクの、両方の側端縁に外方に延出する樹脂部を形成する樹脂部形成工程と、前記ブランクの、一方の側端縁の樹脂部を折り返す樹脂部折り返し工程と、前記ブランクの樹脂部を折り返した側端縁を、他方の側端縁の内側となるように重ね合わせ、密着する胴部貼り合わせ部を形成する胴部形成工程と、を有する紙カップの製造方法であるから、紙端面の被覆に支障をきたさず、かつ、紙カップとしての仕上がり外観の綺麗なバリア性を有する紙カップ等の紙容器とそれをロール状の紙基材から直接紙カップや紙容器にする紙カップの製造方法を提供することが出来る。
【0062】
本発明の製造方法では、さらに、側端縁の端面折り返し装置を紙カップを成形する紙カップ成形機上に設けることができる。このために各工程間でのロスが少なく、さらに効率良く紙カップを生産することができる。
【0063】
また、ウェブ状シートの状態で側端縁の端面処理(エッジプロテクト)が施されるために、紙カップや紙容器を成形する成形機の選択の幅が広くなり、巻き取り形式タイプ、枚葉形式タイプ等の広範な成形機での製造が可能になる。また、ウェブ状シートの不要部分がカットされているので、従来の紙カップ成形機も容易に使用することができる。
【0064】
さらに、端面処理(エッジプロテクト)が紙基材等を折り曲げることなく熱可塑性樹脂
層で端面を封止処理する層が形成される。このためにポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層という耐熱耐摩擦性樹脂の積層と相俟ってピンホールやクラック等のない酸素バリア性、水蒸気バリア性などの向上した物性品質の高い紙カップが得られる。
【0065】
融点が高く、耐摩擦性に優れるフィルムであるポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層を紙基材の外側にドライラミネートすることで、成形時の外層フィルムの流動を防ぎ、安定して成形できるようになった。
【0066】
また、押出し樹脂をポリエチレン系のなかでも比較的耐熱性に優れた中密度ポリエチレン樹脂とすることによって、安定して成形できるようになった。同時に、外面のポリプロピレン樹脂層をポリエチレン樹脂で溶融押出しラミネート法によって積層する場合に起こる接着性の不足を防止するために、外面のシーラント層をポリプロピレン樹脂層のラミネート面にポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂の混合層を有するポリプロピレン樹脂層とした。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】カップ状容器の製造工程を示す説明図である。
【図2】胴部材の層構成例を示す断面説明図である。(a)は紙基材とポリエチレンテレフタレート樹脂層(またはナイロン樹脂層)をドライラミネートで貼り付けた段階の積層体を、(b)はさらに表裏に熱可塑性樹脂層を積層した積層体を示す。
【図3】胴部貼り合わせ部の例を示す断面説明図である。
【図4】胴部貼り合わせ部の例を示す断面説明図である。
【図5】紙カップの製造に用いる胴部材ブランクの長窓を設ける第1打ち抜き工程を示し、(a)は平面説明図であり、(b)は(a)のA−A’線断面説明図である。
【図6】紙カップの製造に用いる胴部材ブランクの熱可塑性樹脂貼り合わせ工程を示し、(a)は平面説明図であり、(b)は(a)のA−A’線断面説明図である。
【図7】紙カップの製造に用いる、樹脂部を有する胴部材ブランクを所定の形状に打ち抜く第2打ち抜き工程を示し、(a)は平面説明図であり、(b)は(a)のA−A’線断面説明図である。
【図8】樹脂部を紙基材の外面側に折り曲げ仮接着させる、仮接着機構の一例を示す説明図である。
【図9】樹脂部を紙基材の外面側に折り曲げ仮接着させる工程を示す説明図である。
【図10】胴部貼り合わせ部の例を示す断面説明図である。
【図11】ボトム部成型時の断面説明図である。(a)はボトム材載置(b)はボトムインカールの工程を示す。
【図12】ボトム部成型時の断面説明図である。(a)はローレット(b)はエキスパンダでのカシメ例を示す。
【図13】スカイブヘミング加工の例を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明を紙カップの一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
本発明の紙カップは、例えば、内面に熱可塑性樹脂層及び外面に耐熱耐摩耗性樹脂層であるポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層を含む熱可塑性樹脂層が設けられた、紙を基材とする積層シートから構成されている。この耐熱耐摩耗性樹脂層は基材である紙とイソシアネート系接着剤を用いたドライラミネート法により接着されている。
また、耐熱耐摩耗性樹脂層の外面には、内面にポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂の混合層を備えたシーラントとしての無延伸ポリプロピレン樹脂層が溶融押出しの中密度ポリエチレンを介して積層されている。
【0069】
図2には、本発明の紙カップの胴部材に用いる積層シートの層構成の例を示した。図2は容器外面となる図の上側から容器内面となる図の下側までの積層シートの内面の熱可塑性樹脂層にバリア層を含む場合の構成を示している。図2(a)は紙基材とたとえばポリエチレンテレフタレート樹脂層をドライラミネートで貼り付けた積層体を、図2(b)は(a)に長窓を穿孔した後に積層された層を含む積層体の層構成を説明するための図である。
【0070】
図2(a)の積層体は耐熱耐摩耗性樹脂層であるポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層(41b)をドライラミネート用接着剤(41c)を用いて紙基材(1)に貼り付けたシートであり、この後に必要な穿孔と積層を行って図2(b)に示す積層体を完成する。
図2(b)の積層体は、図2(a)の積層体の上面にPE/PP混合層(41d)を片面に備えたシーラントとなるPP層(41a)を接着用樹脂MDPE(41e)を用いて貼り付け、下面にバリア層(2a)を挟んでシーラントとなるPP層(41a)を接着用樹脂MDPE(40c)を用いて貼り付けることによって作製される。
【0071】
紙基材(1)は通常のカップ原紙として用いられるものであればよく、特に限定はしないが、印刷適性と紙力を有し、成形性に優れ、且つ表面強度が強いカップ紙の坪量150〜500g/m程度のものが好んで用いられる
【0072】
容器外側の熱可塑性樹脂層(41)を構成するシーラント層(41a)及び容器内側の熱可塑性樹脂層(40)を構成するシーラント層(40a)はヒートシール製を有する樹脂、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が通常使われる。
【0073】
代表的なのは低密度ポリエチレン樹脂であるが、レトルト処理等の耐熱性が要求される場合にはポリプロピレン樹脂や中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレンなどの高融点樹脂を組み合わせて使用することも出来る。この観点からは無延伸ポリプロピレン樹脂が望ましい。
無延伸ポリプロピレン樹脂をシーラントとして用いる場合シーラント層の膜厚は通常10μmから60μmであり、エクストルーダー等の熱溶融押出しやドライラミネート等公知の方法によって設けることが出来る。
【0074】
バリア層(2a)としては、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着プラスチックフィルム、無機化合物蒸着プラスチックフィルム、エチレン−ポリビニルアルコール共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルムなど、ガスバリア性の優れた材料を使用できる。
バリア層として代表的なのは延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂(O−PET)フィルム単層、あるいはO−PETフィルムの片面に酸化アルミニウムや酸化ケイ素などの無機化合物の薄膜を物理蒸着あるいは化学蒸着などの蒸着法により20〜100nm程度の厚さに設けた無機化合物蒸着PETフィルム(GLフィルム)が挙げられる。
【0075】
本発明の紙カップに用いる耐熱耐摩耗性樹脂層(41b)としては、使用時及び工程中での熱と摩擦により傷やピンホール等の欠陥を生じない程度の必要な機械的特性を持った材料が使用できるが、成型性やシーラント層との接着性等の加工適性を考慮するとポリエチレンテレフタレート樹脂またはナイロン樹脂からなる層が最適である。
この場合、ポリエチレンテレフタレート樹脂またはナイロン樹脂は延伸されたフィルムであることが望ましい。ポリエチレンテレフタレート層またはナイロン層の厚さは6μm未満であると上記の機械的特性(耐久性)を確保することが困難になり、30μmよりも大きいと成型時の加工性が悪くなってしまうので、厚さは6μm以上30μm以下である
ことが望ましい。
【0076】
上記耐熱耐摩耗性樹脂層(41b)と紙基材(1)はイソシアネート系接着剤を用いた通常のドライラミネート法により接着されており、接着剤の架橋硬化後はこの接着層(41c)は加熱により溶融することはない。イソシアネート系の接着剤の構成成分としては耐熱耐摩耗性樹脂層(41b)と紙基材(1)との接着適性を考慮して適宜選択できるが、耐熱耐摩耗性樹脂層(41b)がポリエチレンテレフタレート樹脂またはナイロン樹脂であるので通常はポリエステルポリオールを主剤とするエステル系接着剤が望ましい。
【0077】
図1は本発明の紙カップ(カップ状容器)の製造工程を簡単に示す説明図である。
図1に示すように、胴部材(18)を、両側端縁上部にそれぞれ切欠き部(31)(32)を設けた胴部材ブランク(10)の、一方の端縁(11)をもう一方の端縁(12)に重ね合わせて胴部貼り合わせ部(15)を形成させて円筒形状とする。
また、底部材(20)は、円形状で、下向きに起立させた周縁部(21)を有する。そして、前記胴部材(18)の下部内面に、底部材(20)の周縁部(21)の外面を接合させる。
【0078】
さらにボトムインカール金型の内面に沿って周縁部(21)を覆うように、前記胴部材(18)の下端縁部を外側から内方に折り曲げ、底部材の周縁部(21)内面に接合させて、ローレットまたはエキスパンダで圧着することにより環状脚部(22)を形成させる一方、胴部材の上部周縁を外方に、1周以上巻き込み、フランジ部(16)を形成させて紙カップとする。
【0079】
なお、このような構造は、テーパー状の紙カップに限定されず、円筒状のカップ状紙容器であっても同様である。さらには、内容物および外部環境からの水分の浸透等に対する紙基材接合部のエッジプロテクトを要求される紙容器であっても以下の接合部の構造の基本は同じである。
【0080】
本発明の紙カップは、外面に設けられた前記熱可塑性樹脂層が、図2に示すように紙基材と外側シーラント層(41a)との間に機械的強度に優れたポリエチレンテレフタレート層またはナイロン層を形成してなるものであることによって、保存や輸送時の外部からの摩擦や衝撃に対する耐久性に優れている容器とすることが出来る。
【0081】
さらに、図11及び図12を用いて説明したように、容器底部の成型の際にボトムインカール金型の内側が胴部材下端部の外側に加圧接触するために起こる熱可塑性樹脂層が傷つけられることや、環状脚部の圧着の際に胴部材下端部の容器外側の面とローレットもしくはエキスパンション部材が加圧接触するために起こる熱可塑性樹脂層の傷つきを防止できるので、バリア性の確保と熱可塑性樹脂層の傷やピンホールに起因する熱水の浸透防止が可能になる。
【0082】
図3は本発明の紙カップの胴部貼り合わせ部の請求項4に係る例を示す断面説明図であり、(a)は胴部貼り合わせ部の内側となるブランクの断面説明図、(b)は胴部貼り合わせ部の外側となるブランクの断面説明図であり、(c)は貼り合わせ後の貼り合わせ部の断面説明図である。
【0083】
図4は胴部貼り合わせ部の請求項5に係る例を示す断面説明図であり、(a)は胴部貼り合わせ部の内側となるブランクの断面説明図、(b)は胴部貼り合わせ部の外側となるブランクの断面説明図であり、(c)は貼り合わせ後の貼り合わせ部の断面説明図である。
【0084】
図3に示すように、胴部材ブランク(10)は、胴部貼り合わせ部(15)において容器内面側に位置する一方の端縁(11)が、紙基材内面側の熱可塑性樹脂層(40)と紙基材外面側の熱可塑性樹脂層(41)が、紙基材(1)の側端縁より外方に延出した樹脂部(4a)を、基材(1)の近傍で、基材(1)の外面側に折り返した折り返し樹脂部(4b)を備えた構成とする。
【0085】
また、胴部貼り合わせ部(15)において容器外面側に位置するもう一方の端縁(12)が、紙基材内面側の熱可塑性樹脂層(40)と紙基材外面側の熱可塑性樹脂層(41)が、紙基材(1)の側端縁より外方に延出した樹脂部(4c)を、基材(1)の近傍で、基材(1)の外面側に折り返した折り返し樹脂部(4d)を備えた構成とする。
このように、樹脂部(4b)は、樹脂部(4a)を基材(1)の外面側に折り返した構成とすることで、胴部貼り合わせ部(15)における樹脂量が確保でき、貼り合わせ部内面の密封性が良好となる。
【0086】
また、樹脂部(4d)は、樹脂部(4c)を基材(1)の外面側に折り返した構成とすることで、胴部貼り合わせ部(15)における樹脂量が確保でき、貼り合わせ部外面の密封性が良好となる。この樹脂部(4a)の端部と樹脂部(4c)の端部との間は空隙であってももちろん重なっていても構わない。
もしくは、図示していないが樹脂部(4d)は、樹脂部(4c)を基材(1)の内面側に折り返した構成とすることも可能である。
【0087】
さらに、胴部貼り合わせ部の外部に対するエッジプロテクトの必要性の程度によっては、図4に示したように胴部貼り合わせ部(15)において容器外面側に位置する紙基材のもう一方の端縁(12)が、紙基材内面側の熱可塑性樹脂層(40)と紙基材外面側の熱可塑性樹脂層(41)が、紙基材(1)の側端縁より外方に延出した樹脂部(4c)を、容器内面側の基材(1)の外面側の熱可塑性樹脂(41)に重ねて圧着した構成とすることも出来る。
【0088】
このような構造を有している本発明の紙カップは、胴部貼り合わせ部(15)の内側に位置する紙基材の端面が、折り返し樹脂部(4b)により保護されており、胴部貼り合わせ部(15)の外側に位置する紙基材の端面が、折り返し樹脂部(4d)または熱圧着により封止された樹脂部(4c)で保護されているので、容器に充填された内容物が紙基材端面から浸透することがないのみならず、容器外部からの浸透をも防止するエッジプロテクト効果を得ることが出来る。
【0089】
さらに、紙基材の両面に熱可塑性樹脂層(40)、(41)を設けることと、特に外面の熱可塑性樹脂層の層構成中に耐熱耐摩耗性の優れたポリエチレンテレフタレート又はナイロン層を設けたことによって紙基材のエッジのみならず表面ピンホール等からの水の浸透をも効果的に防止することが出来る。
【0090】
このように、紙基材の両面に熱可塑性樹脂層(40)、(41)を設けることにより、基材端面に外延した樹脂部(4a)、(4c)が、前記両面の熱可塑性樹脂層(40)(41)が外縁で一体化された状態で形成される。
そして、前記樹脂部(4a)を、前述のように紙基材の端縁から外方に延出した構成でなく、紙基材の外面側に折り返した折り返し樹脂部(4b)の構成とするとともに、前記樹脂部(4c)を、紙基材の端縁から外方に延出して熱圧着する構成かまたは、紙基材の外面側もしくは内面側に折り返した折り返し樹脂部(4d)の構成とする。
【0091】
このように、容器内面側の胴部材の貼合わせ樹脂部を、基材の外面側もしくは内面側に折り返した折り返し樹脂部(4b)の構成とすることによって、胴部貼り合わせ部の段差
が、前記折り返し樹脂部(4b)で埋まり、段差のない構成とすることができるうえ、紙基材(1)と前記樹脂部の端面が紙カップ内部に露出しない構成とすることができる。
【0092】
また、前記樹脂部(4c)を、紙基材の端縁から外方に延出して熱圧着する構成とすることによって、胴部貼り合わせ部の段差が、前記外延樹脂部(4c)で埋まり、段差のない構成とすることができるうえ、紙基材(1)が紙カップ外部に露出しない構成とすることができる。
また、前記樹脂部(4c)を、紙基材の端縁から紙基材の外面側に折り返した折り返し樹脂部(4d)の構成とすることによって、胴部貼り合わせ部の段差が、前記折り返し樹脂部(4d)で埋まり、段差のない構成とすることができるうえ、紙基材(1)とさらに前記樹脂部の端面が紙カップ外部に露出しない構成とすることができる。
【0093】
本発明の紙カップには通常フランジ部(16)が設けられており、胴部材(18)の貼合わせ部(15)の上端においては、両側端縁上部にそれぞれ切欠き部(31)(32)を設けた胴部材ブランク(10)を用いることによって、胴部材の上部周縁を外方に1周以上巻き込んで、少なくとも3重構成のフランジ部を形成した際、貼り合わせ部においても、基材が、前記貼り合せ部以外の部分と同様の3重構成の巻き込み状態となる。
【0094】
ここで、この切欠き部(31)(32)の形状を異なる形状とすることにより、少なくとも3重構成のフランジ部(16)の上面を平坦にしても、フランジ部上面に、前記貼り合せ部の位置に生じる段差を解消することができる。
【0095】
本発明の紙カップにおいては、前記熱可塑性樹脂層(40)が、バリア層を含む層とする構成とすることもできる。このように、バリア層(2a)を含む構成とすることにより、紙基材(1)の表面及び端面もバリア層によって保護されるので、バリア性に優れた紙カップとすることができる。
【0096】
また、図10に示すように、バリア層を含めた樹脂部(4a)を折り返した樹脂部(4b)の構成とすることで、バリア層(2a)の端面が、容器内部に露出しない構成となり、内容物がバリア層と接触することがないようにすることができ、内容物の保存に悪影響を及ぼさない。
【0097】
このように、折り返し樹脂部(4b)、(4d)を、樹脂部先端が、貼り合わせ部内側基材外面側もしくは貼り合わせ部外側基材外面側もしくは内面側に折り返した構成となっていることにより、前記熱可塑性樹脂層(40)が、異なる材料のバリア層(2a)を含む構成であっても、胴部を形成した際、胴部貼り合わせ部(15)において貼り合わせのための一定の樹脂量が確保でき、紙基材(1)の端面の保護ばかりでなく、胴部貼り合わせ部(15)の紙基材による段差を解消することができる。
【0098】
また、図2に示したように、紙基材(1)の外側面に耐熱耐摩耗性樹脂層(41b)を挟む形のシーラント層(41a)と接着層(41c)からなる熱可塑性樹脂層(41)を設け、紙基材の両面に熱可塑性樹脂層(40)(41)を設けた構成としたので、両面の熱可塑性樹脂層(40)(41)の先端の内面同士を一体化することで紙基材(1)の端面を封止する樹脂部(4a)、(4c)を単なる熱圧着で形成することができる。
【0099】
特に、胴部貼り合わせ部(15)の外側に接着される紙基材(1)の端部に両面の熱可塑性樹脂層(40)(41)で形成した樹脂部(4c)は、容器外部からの水分等の侵入を防止する必要性が付加的になければ単なる熱圧着で形成したのちに、内側の紙基材(1)の端部に形成された樹脂部(4b)または熱可塑性樹脂層(41)に密着させて固定することによって必要な端部保護が出来、接着部で一定の樹脂量が確保でき、胴部を形成し
た際、胴部貼り合わせ部(15)の段差を解消することもできる。
【0100】
また、前記熱可塑性樹脂層(40)が、異なる材料のバリア層(2a)を含む構成であっても、内側の紙基材端部の樹脂部が折り返した構成となっていることで、バリア層(2a)の端面が、容器内部に露出しない構成となり、内容物がバリア層と接触することがないようにすることができ、内容物の保存に悪影響を及ぼさない。
また、前記熱可塑性樹脂層(41)が、耐熱耐摩耗性の優れたポリエチレンテレフタレート層またはナイロン層(41b)を含む構成であるから成型時に傷ついて孔が開くようなことがなく、外側から熱水等の液体が付着してもその浸透によって紙基材の剛性が弱くなることがないので熱水式レトルト処理も可能な耐水性に優れた紙カップとすることができる。
【0101】
なお、このような構造は、テーパー状の紙カップに限定されず、円筒状のカップ状紙容器であってもよく、貼り合わせ部のエッジプロテクトと表面の機械的耐久性の必要な紙容器に用いることが出来る。
【0102】
次に、本発明の紙カップの製造方法の一例について、胴部材ブランクの製造方法を含めて説明する。
【0103】
先ず、ロール状の紙基材(1)に扇形状の胴部材ブランク(10)を複数個並べて割りつけ印刷すると共に、紙基材の片面にポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層(41b)をドライラミネート法により積層して積層シートを形成させる。
この積層シートの胴部材ブランクとなる領域の両方の端縁(11)、(12)に、その端縁を含めて外方の部分を長窓(13)、(14)として穿設する(図5参照)〜第1打ち抜き工程。
【0104】
上記積層シートの内側面に熱可塑性樹脂層(40)、及び外側面に熱可塑性樹脂層(41)を形成する。
内面の熱可塑性樹脂層(40)はバリア層(2a)の上面にMDPE(40c)、下面にPP(40a)樹脂層を押出し法で設けて貼り合せ、外面の熱可塑性樹脂層(41)はPE/PP混合層(41d)を備えたシーラント層PP(41a)をMDPE(41e)の押出しでポリエチレンテレフタレート層またはナイロン層(41b)面に貼り合せて積層シートを形成させる。
この時、紙基材(1)の長窓部分に、前記の熱可塑性樹脂層の積層した樹脂部(4a)、(4c)を形成させる(図6(a),(b)参照)〜熱可塑性樹脂貼り合わせ工程。
【0105】
前記積層シートの紙基材(1)からは、外方に延出して設けられた樹脂部(4a)、(4c)を含む長窓部分を形成させた胴部材ブランク(10)の不必要部分を連続してカットする。
同時に、不必要部分が切り取られた積層シートから、印刷された複数個の扇形状の胴部材ブランク(10)を打ち抜き、樹脂部(4a)、(4c)を形成させた一枚ずつの胴部材ブランク(10)を作製する(図7(a),(b)参照)〜第2打ち抜き工程。
【0106】
このような各工程を経て紙基材(1)より所定幅外方に延出した樹脂部(4a)、(4c)を両方の側端縁に形成させた胴部材ブランク(10)を作製することができる。
【0107】
つぎに、この胴部材ブランク(10)の樹脂部(4a)を、紙基材端面に密着させて折り返し樹脂部(4b)を形成させる方法について、図8、図9に沿って説明する。
図8は樹脂部を紙基材の片面側に折り曲げ仮接着させる機構の一例を示す説明図である。
図9は樹脂部を紙基材の片面側に折り曲げ仮接着させる工程を示す説明図である。
【0108】
樹脂部(4c)を、紙基材端面に密着させて折り返し樹脂部(4d)を形成させる方法も同様であり、樹脂部(4c)を、紙基材端面より所定幅外方に延出した部分で圧着する場合の方法は折り返し樹脂部(4b)を形成させる方法にも含まれているより単純な工程であるので説明は省略する。
【0109】
たとえば、図8のような機構を用いて、胴部材ブランク(10)の貼り合わせ部(15)の内側となる紙基材(1)より所定幅だけ延出した樹脂層(4a)を、紙カップに成形した際の紙基材(1)の外面側となる側に向けて、櫛状に形成された押さえ突起(D11)を具備した第1部材(D1)を、上方から下方に垂直方向に移動させて略90°の角度に押し曲げ、仮折りする(図9(a),(b)参照)。
【0110】
ついで、櫛状に形成された押さえ突起(D21)を具備した第2部材(D2)を、前記第1部材の押さえ突起(D11)と押さえ突起(D11)の間の間隙(D12)を目掛けて、胴部材ブランクの外側方向より内側方向に向けて水平移動させ、樹脂層(4a)を略90°押し曲げ、前記樹脂層(4a)が、折り返し樹脂部(4b)を具備するように、胴部材ブランクの紙基材反対面方向に重なるように仮折りする(図9(c)参照)。
【0111】
最後に、第1部材の下側に配置され、櫛状に形成された押さえ突起(D31)を具備する第3部材(D3)を、垂直に上方に押しつけ圧着して、折り返し樹脂部(4b)を胴部材ブランク(10)の紙基材の外面側に仮接着させる(図9(d)参照)。
貼り合わせ部(15)の外側となる紙基材(1)の場合も必要であれば同様にして折返し樹脂部(4d)を形成することが出来る。
【0112】
なお、第3部材の押さえ突起(D31)を適宜の温度に加熱しておくと樹脂部の接着性が向上してより効果的である。
また、折返しを必要としない場合に、単なる圧着によって、紙基材端面の封止をこの装置を用いて行うことも可能である。
このような方法により作製した胴部材ブランク(10)を用いて紙カップを成形する成形方法の例についてはすでに説明したのでここでは省略する(図1参照)。
【0113】
本発明の紙容器は周知の方法で加飾することが出来る。たとえば、紙基材の表面に通常のグラビアあるいはオフセット等の印刷により、装飾層を設けた基材を胴部ブランクとして用い、紙容器を製造することが出来る。あるいは、紙基材の表面側に印刷等による装飾層および/または金属蒸着層を設けたプラスチックフィルムを積層した積層材料を用いて紙容器を製造することも出来る。
または、成形された紙容器の胴部の表面に、印刷、金属蒸着により装飾層を施したプラスチックフィルムを被覆することも出来る。
【実施例】
【0114】
<実施例1>
印刷を施した紙基材(坪量260g/m)の表面に、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)をイソシアネート系接着剤を用いたドライラミネート法により貼着してからこのシートに長窓を形成した。
次に、前記シートの表面に内面にポリプロピレンとポリエチレンの混合層を有するポリプロピレン層(30μm)/中密度ポリエチレン層(30μm)からなる積層シートを、裏面に中密度ポリエチレン層(30μm)/無機酸化物蒸着バリアフィルム(12μm)/ポリプロピレン層(30μm)からなる積層シートをおのおの中密度ポリエチレン(30μm)の溶融押出し法で積層して、前記長窓の位置で内面を接合一体化した。
【0115】
そして、紙基材の片側の側端縁上部に、幅が9mm、高さが5mmの三角形の切欠き部、他方の側端部上部に、幅が8mm、高さが6mmの三角形の切欠き部を有する扇形形状(上辺の長さ225mm、下辺の長さ162mm)に打ち抜き、胴部ブランクを形成した。なお、両方の側端縁に設けた樹脂部は、5mm幅で設け、折り返した、2.5mm延出する折り返し樹脂部を有する胴部ブランクを形成した。
【0116】
前記折り返し樹脂部を有する前記ブランクの側端縁を重ね合わせ接合一体化し、胴部貼り合わせ部を設けて胴部を形成した。
次に、前記胴部の下部内面に、円形状で、下向きに起立させた周縁部(21)を有する底部材の周縁部(21)の外面を接合させた。
【0117】
そして、カップ成形機を用い、前記胴部材(18)の下部内面に、底部材(20)の周縁部(21)の外面を接合させ、さらにボトムインカール金型の内面に沿って周縁部(21)を覆うように、前記胴部材(18)の下端縁部を外側から内方に折り曲げ、底部材の周縁部(21)内面に接合させて、ローレットで圧着することにより直径が52mmの環状脚部(22)を形成した。この時に前記胴部材(18)の下端縁部外面を含めてカップ表面には孔傷は見られなかった。
【0118】
また、トップカールユニットにより、上部開口部を1周以上巻き込み、下側半分が一重巻き、上側半分が二重巻きとなる、幅が3mmのフランジ部を有する、開口の直径が69mmの紙カップを成形した。
【0119】
この紙カップは、胴部貼り合わせ部およびフランジ部の上面の、胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形された。さらに超音波シール装置を用い、上下から加圧圧着し、フランジ上面を平坦にした。
前記、紙カップは、フランジ部の上面を平坦にしたにもかかわらず、フランジ部の上面の胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形された。
さらに内容物として水を入れて蓋材でシールしたのち30分間熱湯中で煮沸したが取り出した容器には外観上異常は見られなかった。
【0120】
<実施例2>
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて延伸ナイロンフィルムを用いた他は実施例1と同様にして紙カップを作成した。
この紙カップは、フランジ部の上面を平坦にしたにもかかわらず、フランジ部の上面の胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形された。この紙カップは前記胴部材(18)の下端縁部外面を含めてカップ表面には孔傷は見られなかった。内容物として水を入れて蓋材でシールしたのち30分間熱湯中で煮沸したが取り出した容器には外観上異常は見られなかった。
【0121】
実施例1〜2の本発明の紙カップでは、従来見られた、ボトム部分において起こりやすかった、成型の際の部材表面に発生するローレットとの摩擦による多くの孔傷の発生は見られなかった。
このように、本発明の紙カップでは、部材端面だけでなく、表面のピンホールや傷を完全になくすことにより、熱水の浸透に対する抵抗が強い、熱水レトルト処理も可能な紙容器が安定して製造可能となった。また、紙容器表面の耐摩耗性が向上したことにより輸送適性も向上した。
【符号の説明】
【0122】
1‥‥‥紙基材
2a‥‥バリア層
3‥‥‥積層シート
40‥‥熱可塑性樹脂層(内側)
40a‥‥シーラント層(PP)
40c‥‥接着用樹脂層(MDPE又は酸変性MDPE)
41‥‥熱可塑性樹脂層(外側)
41a‥‥シーラント層(PP)
41b‥‥耐熱耐磨耗性樹脂層(延伸PETまたは延伸Ny)
41c‥‥ドライラミ接着剤層
41d‥‥PE/PP混合層
41e‥‥接着用樹脂層(MDPE又は酸変性MDPE)
4‥‥‥樹脂部
4a‥‥外延樹脂部
4b‥‥折り返し樹脂部
4c‥‥外延樹脂部
4d‥‥折り返し樹脂部
10‥‥胴部材ブランク
11‥‥樹脂部を有する側端縁
12‥‥樹脂部を有する側端縁
13‥‥長窓
14‥‥長窓
15‥‥貼り合わせ部
16‥‥フランジ部
18‥‥胴部材(サイド材)
19‥‥胴部材下端部
20‥‥底部材(ボトム材)
21‥‥周縁部(起立部)
22‥‥環状脚部
31‥‥切欠き部
32‥‥切欠き部
C1‥‥円錐台状金型
C2‥‥ボトムインカール金型
C3‥‥ローレット
C4‥‥エキスパンダ
D1‥‥第1部材
D11‥押さえ突起
D12‥間隙
D2‥‥第2部材
D21‥押さえ突起
D3‥‥第3部材
D31‥押さえ突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を主体とし、両面に熱可塑性樹脂層を有する基材シートからなる胴部形成用ブランクと底部形成用ブランクを用いて形成される紙カップであって、
外面に設けられた前記熱可塑性樹脂層は、外側から無延伸ポリプロピレン樹脂層とポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂との混合層からなるシーラント層と、ポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層と、からなり、
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層は、ドライラミネート法により、イソシアネート系の接着剤を介して紙に積層されてなり、
前記シーラント層は、押出しラミネート法により、中密度ポリエチレン樹脂又は酸変性中密度ポリエチレン樹脂を介してポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層に積層されてなることを特徴とする紙カップ。
【請求項2】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂層またはナイロン樹脂層の厚さは6μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の紙カップ。
【請求項3】
前記ブランクの重ね合わせ部の内側に位置する側端縁は、前記基材の側端縁から延出する樹脂部を、基材の外面側に折り返した折り返し樹脂部を有し、前記ブランクの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁は、前記基材の側端縁から延出する樹脂部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の紙カップ。
【請求項4】
前記ブランクの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁から延出する樹脂部が、基材の外面側または内面側に折り返した折り返し樹脂部を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の紙カップ。
【請求項5】
前記ブランクの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁から延出する樹脂部が、前記重ね合わせ部の内側のブランクに沿って密着していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の紙カップ。
【請求項6】
少なくとも前記内面の熱可塑性樹脂層は、ガスバリア性層を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の紙カップ。
【請求項7】
前記内側及びまたは外側に位置する側端縁から延出する樹脂部は、側端縁の全長に設けたことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の紙カップ。
【請求項8】
紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜きブランクを形成する打ち抜き工程と、前記ブランクの、両方の側端縁に外方に延出する樹脂部を形成する樹脂部形成工程と、前記ブランクの、樹脂部を折り返す樹脂部折り返し工程と、前記ブランクの樹脂部を形成した両方の側端縁を重ね合わせ密着する胴部貼り合わせ部を形成する胴部形成工程と、を有することを特徴とする請求項1、2、3、4、6、7のいずれか1項に記載の紙カップの製造方法。
【請求項9】
紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜きブランクを形成する打ち抜き工程と、前記ブランクの、両方の側端縁に外方に延出する樹脂部を形成する樹脂部形成工程と、前記ブランクの、一方の側端縁の樹脂部を折り返す樹脂部折り返し工程と、前記ブランクの樹脂部を折り返した側端縁を、他方の側端縁の内側となるように重ね合わせ密着する胴部貼り合わせ部を形成する胴部形成工程と、を有することを特徴とする請求項1、2、3、5、6、7のいずれか1項に記載の紙カップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−20769(P2012−20769A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160524(P2010−160524)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】