説明

耐水性積層シート

【課題】
インキ乾燥性、基材密着性に優れ一般コート紙用インキを用いて印刷することができる耐水性積層シートを提供する。
【解決手段】
熱可塑性樹脂層を有する積層シートの上に塗工層を形成した耐水性積層シートにおいて、熱可塑性樹脂層を有する積層シートは、シート状基材の片方又は両方の表面に1以上の熱可塑性樹脂層が積層された積層シートであって、その熱可塑性樹脂層の最外層が下記の樹脂(A)と(B)群から選ばれる少なくとも1種を混合してなる熱可塑性樹脂であって、かつ下記樹脂(A)の熱可塑性樹脂を50重量%以上含有しており、塗工層は、前記積層シートの少なくとも熱可塑性樹脂層の一表面に、無機顔料とバインダーとを主成分とする塗工層であって、該無機顔料として、一次粒子が球状であって一次粒子径に対する二次粒子径の比が1.5〜3.0のコロイダルシリカ、または、針状コロイダルアルミナを含有することを特徴とする耐水性積層シート。
(A)密度0.85〜0.92g/cm、メルトフローレート(MFR(JIS K6922−2))3〜20g/10minである低密度ポリエチレン
(B)ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−アクリレート共重合樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に熱可塑性樹脂層を積層した耐水性を有する積層シート、特にオフセット印刷に適した積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、耐水性を有する積層シートとしては、紙基材等に無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂をラミネートした複合紙タイプの積層シート(特許文献1)と、熱可塑性樹脂に無機充填剤や発泡剤を練り込んで延伸した合成紙タイプのものが知られ、ポスター、ラベル、配送伝票、冷凍・冷蔵食品の包装等、耐水性が要求される各種分野で用いられている。複合紙タイプの積層シートは、通常、押出しラミネーション法や共押出しラミネーション法、ドライラミネーション法等によって製造される。即ち、巻取りロールから繰出された基材の表面に、Tダイ製膜機から溶融した熱可塑性樹脂を押出し、または、2種以上の熱可塑性樹脂を共押出しし、クーリングロールとニップロール間で直ちに、基材とこの(これらの)熱可塑性樹脂層を押圧・圧着して積層、あるいは基材に製膜した熱可塑性樹脂フィルムを粘着剤等により貼合することにより製造される。しかし、これらの積層シートは、そのままでは表面にインキが殆ど染込まない。従って、これをオフセット印刷等の各種印刷に用いた場合、印刷されたインキはシート表面に滞留してそのまま乾燥し、そのため、印刷後のシートを擦ったりすると、乾燥したインキがシート表面から剥がれ落ちたり、シート表面で砕けて印刷面を汚したりすることとなる。
かかるトラブルを防止する方法の一つとして、シート表面に、より強固にインキ層を形成することが考えられる。例えば、市販の合成紙専用インキは、不飽和結合を多く含む植物油を主体とした溶剤を用い、酸化重合によってインキを固化させることで、シート表面のインキ層を強固なものとする。この合成紙専用インキは、合成紙のみならず複合紙にも用いることができ、これを用いれば、摩擦によっても消えたり汚れたりしない、優れた印刷面を得ることができる。一方、このインキは完全に固化するまでに非常に長い時間がかかり、印刷後、次工程に送るまでの待機時間を長く取らなければならない。この時間が不十分であると、印刷後のシートを積重ねて保存した場合に、シート表面のインキが、その上に積重ねられたシートの裏面に転移するという問題(裏付き)が発生する。また、このようなインキは、空気中の酸素と反応して固化するため、印刷中に固化が始まって印刷インキの粘度が上昇し、印刷機の安定的な操業を妨げることもある。
【0003】
そこで、積層シートの印刷性改良のための別の方法として、インキ受理層としてシート表面に無機顔料等を含有する塗工層を設け、これにインキを吸収させるインキ受理層とすることが考えられる。この方法であれば、一般のコート紙用に従来から汎用されているオフセット印刷用等のインキも用いることができる。しかし、印刷されたインキをかかる塗工層に十分吸収させて、塗工層表面に滞留させないようにするためには、通常酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ等の無機顔料を多く含んだ塗工層を設けなければならないが、複合紙にしても合成紙にしても、熱可塑性樹脂の表面に設けられることになるため、熱可塑性樹脂表面から脱離しやすい上、それ自体の表面強度も弱くなる。また、光沢性を求められる用途の場合、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ等の無機顔料等の顔料の配合は光沢性の低下につながり、好ましくない。一方、特許文献2の耐水シートのようにバインダーを多く含んだ塗工層では、熱可塑性樹脂表面からの脱離や塗工層の表面強度、光沢性等は改善されるが、印刷されたインキの吸収性は必ずしも十分でなく、また耐ブロッキング性に劣る。このため、こうして得られた耐水性シートは、全体としてオフセット印刷性に優れているとは言い難いものとなる。
また、特許文献3には、熱可塑性フィルム上に、変性ポリビニルアルコールとコロイダルシリカを主成分とするインク定着層を設けたオフセット印刷用フィルムが記載されてい
る。特許文献4には、ポリオレフィンフィルム上に、特定のポリビニルアルコールに対してコロイダルシリカを含むシリカ顔料を含有するオフセット印刷可能な樹脂塗工フィルム
が記載されている。また、特許文献5には、最外層が石油樹脂、エチレン・α−オレフィン共重合樹脂、α−オレフィン同士の共重合樹脂、高圧法低密度ポリエチレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種および非帯電性アイオノマー樹脂を含む積層耐水シートが記載されており、最外層の熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE:MFR11g/10min、密度0.916g/cm、メルトテンション1.3g)を70重量%含有した例が記載されている。特許文献6には、最外層の熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE:MFR11g/10min、密度0.916g/cm)を80重量%含有した例が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特許第2763011号公報
【特許文献2】特開2004−223882号公報
【特許文献3】特開2001−239741号公報
【特許文献4】特開2000−71596号公報
【特許文献5】特開平7−68713号公報
【特許文献6】特開平7−47642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層シートが使用される用途のうち、選挙用や商業用等の屋外ポスターなどでは、何よりも美麗性が重要視される。しかし、通常、積層シートの基材となる紙は、植物繊維等が複雑に絡み合って構成されているため、その表面には微小な凹凸が無数に存在し平坦ではなく、紙基材上に薄い膜状に押出された溶融樹脂は紙の凹凸に追従して積層され、積層シートの表面には微小な窪みが散在することとなる。そして、オフセット印刷等を施した場合には、この窪み部分にインキが転写されずいわゆる白抜けになってしまい、出来上がりの印刷物の美麗性を損ねてしまう問題がある。また、積層シートにおいては、基材と熱可塑性樹脂層間で層間剥離が起こらない程度に高い基材密着性を有することが必要であるが、基材と熱可塑性樹脂層の密着性は相溶性の悪い複数の樹脂を混合して使用したときに低下する傾向があり、外観を損なう原因ともなる。また、無機顔料等を含有する塗工層を設ける場合は、シート表面を高光沢とすることが難しいという問題がある。そのため、表面が低光沢のものであれば比較的良好なインキ乾燥を付与することが可能であるが、高光沢を維持しつつインキ乾燥性を付与することには限界がある。また、低光沢のものであってもより高度なインキ乾燥性が必要とされる場合がある。上記特許文献1、2で使用されている低密度ポリエチレンは、比較的軟らかい樹脂であり基材との密着性は良いものの、インキ乾燥性は十分とはいえない。またさらに、平版オフセット印刷は、普通の印刷が版面から直接紙面に印刷されるのに対して、版面から一度インキ画像をゴムブランケット面に転写し、それから紙等の被印刷物に印刷を行うものであり、版面の非画線部にインキが付着しないように湿し水が用いられるが、表面が熱可塑性樹脂からなる耐水性シートは、上質紙やコート紙等の一般紙に比べて水分の吸収容量が少ないため、湿し水が多くなると用紙表面に湿し水が過剰に残留してインキ転移不良を生じたり、印刷機上でインキに湿し水が混合し乳化してしまい、湿し水を通常より少なめに設定する必要がある(調整幅が狭い)など印刷作業性に劣る。
【0006】
本発明はかかる問題点を踏まえ、基材との密着性に優れ美麗性が良好であるとともに、熱可塑性樹脂層自体にも高いインキ吸収能を付与することにより、インキ乾燥性に優れ一般コート紙用インキを用いて印刷することができる耐水性積層シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究の結果、積層シートの最外層の熱可塑性樹脂層を、低密度ポリエチレンと特定の他の樹脂とを含有するものとし、さらにかかる複合紙や合成紙の表面に、特定の無機顔料を主成分とする塗工層を設けることで、上記課題が解決できることを見出し、本願発明を完成した。本願発明の主な構成は次の通りである。
【0008】
(1)熱可塑性樹脂層を有する積層シートの上に塗工層を形成した耐水性積層シートにおいて、
熱可塑性樹脂層を有する積層シートは、シート状基材の片方又は両方の表面に1以上の熱可塑性樹脂層が積層された積層シートであって、その熱可塑性樹脂層の最外層が下記の樹脂(A)と(B)群から選ばれる少なくとも1種を混合してなる熱可塑性樹脂であって、かつ下記樹脂(A)の熱可塑性樹脂を50重量%以上含有しており、
塗工層は、前記積層シートの少なくとも熱可塑性樹脂層の一表面に、無機顔料とバインダーとを主成分とする塗工層であって、該無機顔料として、一次粒子が球状であって一次粒子径に対する二次粒子径の比が1.5〜3.0のコロイダルシリカ、または、針状コロイダルアルミナを含有することを特徴とする耐水性積層シート。
(A)密度0.85〜0.92g/cm、メルトフローレート(MFR(JIS K6922−2))3〜20g/10minである低密度ポリエチレン
(B)ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−アクリレート共重合樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂
(2)樹脂(A)の熱可塑性樹脂を50〜90重量%含有していることを特徴とする(1)記載の耐水性積層シート。
(3)熱可塑性樹脂(B)が、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・メチルアクリレート共重合物(EMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合物(EEA)、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)のいずれかであることを特徴とする(1)又は(2)記載の耐水性積層シート。
(4)塗工層のバインダーが、スチレン、ブタジエン、(メタ)アクリル酸の重合体または共重合体から選ばれる少なくとも一種である(1)〜(3)のいずれかに記載の耐水性積層シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明は特に次の効果を奏する。
(1)本発明によって提供される樹脂Aとして低密度ポリエチレンを50重量%以上含有し、さらに塗工層中に配合する無機顔料として二次粒子形成しているピーナッツ状コロイダルシリカを用いた本発明の耐水性積層シートは、基材密着性とインキ乾燥性の両方を満足する品質を示し、さらに湿し水が大量な場合にもインキ転移が抑えられ、より品質のバランスが優れた耐水性を奏するものである。
(2)最外層の熱可塑性樹脂層において、低密度ポリエチレンを主成分とし特定の他の樹脂を混合することにより、基材密着性とインキ乾燥性のバランスに優れる。
(3)印刷時のインキ乾燥性、耐ブロッキング性に優れるため、インキの乾燥に長い時間がかからず、裏付き等のトラブルを起こすことなく印刷後の工程を速やかに進めることができるとともに、印刷機を安定的に操業することができる。
(4)光沢性に優れ、美麗性に優れた印刷仕上がりを可能とする。
(5)オフセット印刷時の湿し水に対する挙動が安定であり、印刷作業性が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、塗工層を設ける積層シートは、シートの一方又は両方の最外層として熱可塑性樹脂層を有するものであればどのようなものであってもよい。即ち、シートの一方の最外層が熱可塑性樹脂層であれば、シートの他方は基材が露出していても、熱可塑性樹脂層が積層されていても、どちらでも構わない。シートの両方の最外層として熱可塑性樹脂層を有する場合には、これらの層が、それぞれ異なる種類・組成の熱可塑性樹脂で形成されていても構わない。また、熱可塑性樹脂層の面調は、低光沢から高光沢までどのような面調であっても構わない。なお、かかる基材と最外層の熱可塑性樹脂層との間に、他の熱可塑性樹脂層など別の層が存在していてもよい。
【0011】
以下、本発明にについて具体的に説明する。
[熱可塑性樹脂層]
<(A)低密度ポリエチレン>
本発明において設けられる熱可塑性樹脂層のうち、最外層には、熱可塑性樹脂(A)として低密度ポリエチレン(LDPE)と、後述する特定の群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B)とが含有される。低密度ポリエチレンとしては、密度が0.85〜0.92g/cm、メルトフローレート(MFR(JIS K6922−2))が3〜20g/10minのものであれば良く、高圧法、触媒法等の製法は問わない。低密度ポリエチレンは最外層の熱可塑性樹脂層に対し50重量%以上含有され、50重量%より少ないと十分な基材密着性が得られない。好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。さらに、インキ乾燥性はやや劣るものの100重量%でも基材密着性を満足する結果が得られる。インキ乾燥性も考慮すると総合的には、90重量%以下が好ましい。
【0012】
<(B)特定の熱可塑性樹脂>
前記した低密度ポリエチレンとともに含有される熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−アクリレート共重合樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂から選ばれる少なくとも1種が使用される。これらの樹脂の中には、基材密着性に劣るものもあるが、前記した低密度ポリエチレンとの混合層として形成されることにより良化する。また、本発明において、前記した低密度ポリエチレンとこれらの樹脂とからなる混合層は、海島構造をなした状態になっており、樹脂間の微細な空隙にもインキが吸収されて、インキ乾燥性を向上させると考えられる。特に直鎖状低密度ポリエチレンは、それ自体のインキ吸収能も高く好ましく用いられる。なお、本発明でいう海島構造とは、海とその海に点々と浮かぶ島のように、ある樹脂が、それとは異なる樹脂に周囲を取り巻かれるようにして散点状に分布した構造のことをいう。但し、「海」に対する「島」の分布は、樹脂の混合割合によっては必ずしも散点状にならず、密集した状態になることもある。
【0013】
ポリエチレン系樹脂としては、前記した樹脂(A)の低密度ポリエチレンとは異なり、かつ、密度が0.85〜0.98g/cm、メルトフローレート(MFR(JIS K6922−2))が3〜20g/10minの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。高圧法、触媒法、気相法、溶液法等の製法は問わないが、直鎖状低密度ポリエチレンの中でも、シングルサイト系触媒で合成された直鎖状低密度ポリエチレン(SS−LLDPE)が好ましい。SS−LLDPEは、活性点が均一なシングルサイト系触媒により合成されるため、汎用されるチーグラー触媒を用いて合成された直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と比べ、シャープな分子量分布を示す。シングルサイト系触媒の代表的なものとしては、メタロセン系触媒を挙げることができる。これは、2個のシクロペンタジエン環に、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン又はタングステン等の遷移金属原子が、サンドイッチ状に挟まれた構造を有する触媒である。
【0014】
ポリプロピレン系樹脂としては、密度が0.85〜0.93g/cmメルトフローレート(MFR(JIS K7210:1999))が15〜50g/10minの条件を満たすものが好ましく、かかる条件を満たせばホモタイプ、ブロック共重合体タイプ及びランダム共重合タイプ、メタロセン触媒法タイプのいずれも好適に使用することができる。
【0015】
エチレン−アクリレート共重合樹脂としては、エチレン−メチルアクリレート共重合樹脂(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合樹脂が好ましく、より好ましくはこれらのそれぞれメチルアクリレート含量、エチルアクリレート含量、ブチルアクリレート含量が5%以上であるものが良い。また、エチレン−メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂等も使用可能である。
【0016】
<その他の樹脂>
その他、最外層には、本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、水素化系石油樹脂、テルペン系石油樹脂、水素化テルペン系石油樹脂、共重合系石油樹脂等の石油樹脂、エチレン・α−オレフィン共重合樹脂、プロピレン・α−オレフィン共重合樹脂を始めとするα−オレフィン同士の共重合樹脂、エチレン・カルボン酸ビニルエステル共重合樹脂、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合樹脂、通常のアイオノマー樹脂を始めとする高圧法低密度ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルペンテン樹脂などが使用可能である。例えば、上記樹脂ブレンドに接着性樹脂を添加することで、より高度な基材密着性を有する積層シートを製造することも可能である。
また、最外層を形成する熱可塑性樹脂と基材、あるいは熱可塑性樹脂層を2以上設けたとき樹脂層間の密着性が不良な場合には、基材に予め接着層を塗工又は積層することも可能であり、また、最外層あるいは他の層に使用する熱可塑性樹脂と接着性樹脂を共押出しラミネーションすることも可能である。
接着性樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、変性ポリオレフィン、アイオノマー等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。変性ポリオレフィンとしては、炭素原子数2〜20のα-オレフィンの単独重合体あるいは共重合体を極性基及びエチレン性二重結合を有するモノマーでグラフト変性した変性物を使用することができるが、これらに限定されるものではない。アイオノマーは、イオン含有高分子で、特に金属イオンあるいは第4級アンモニウムにより部分的にあるいは完全に中和された高分子であり、特にエチレン系高分子鎖に少量の(メタ)アクリル酸をグラフトし、その(メタ)アクリル酸の一部を、Na+、K+、Zn++、Mg++などで中和したものが好ましく使用できる。中でもZnを有すると光沢性が良好で好ましい。
さらに本発明では、上記した熱可塑性樹脂層の他に、熱可塑性樹脂層を適宜設けてもよい。このような層を形成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン等、ラミネート加工可能な樹脂を挙げることができる。
【0017】
[添加剤]
各熱可塑性樹脂層には、本発明の目的を害さない限り、帯電防止剤、耐ブロッキング剤(アクリルビーズ、ガラスビーズ、シリカ)等の添加剤を添加してもよい。また、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、ケイソウ土、磁性酸化鉄およびこれらの混合物などの無機充填剤が混合されていても良く、必要に応じ、カーボンブラック、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等の有機充填剤を小量混合しても良く、さらに、無機充填剤の分散性を向上させる補助手段として脂肪酸塩、粘着付与剤、親水化ポリオレフィンワックス等を適宜加えたり、或いはこれらで無機充填剤の表面処理を行うこともできる。なお、使用される無機充填剤の平均粒径は、特に限定はないが樹脂層への分散性並びに無機充填剤が樹脂層に付与する筆記性および印刷適性の見地から、0.01〜10μmが好ましく、0.1〜5μmが更に好ましい。
【0018】
[基材]
本発明において使用する基材は、薄物、厚物の各種の紙や合成樹脂フィルム、金属箔等を使用することができ、これらはシート状でありさえすればその厚みを問わない。
【0019】
[積層方法]
本発明の積層シートは、上記の熱可塑性樹脂を、基材上に押出しラミネーション、共押出しラミネーション、ドライラミネーション、ウェットラミネーション等、公知の方法を用いて積層することにより製造できる。各樹脂層の厚さは最外層が2〜25μmであるのが好ましく、5μm〜20μmが更に好ましい。また熱可塑性樹脂層が2層以上からなる場合には、最外層以外の層はぞれぞれ3〜25μmであるのが好ましく、5〜20μmがさらに好ましい。
また、基材との密着を高めるために、押出しコーティング前の基材表面にフレーム(火炎)処理、コロナ放電処理、および予熱処理を施したり、または積層されるべき樹脂層の基材と接すべき面にオゾン処理等の処理を施したりするのが望ましい。その結果、低温接着性が良好になり、樹脂からの目ヤニ発生頻度が減少し、そして樹脂の劣化や引き裂き強度低下を防止することができる。
【0020】
[インキ受理層」
本願発明においては、シート状基材の一方又は両方の最外層として熱可塑性樹脂層を有する積層シートまたは熱可塑性樹脂からなるシートの、少なくとも一方の表面に、インキ受理層として、一次粒子が球状であって一次粒子径に対する二次粒子径の比が1.5〜3.0のコロイダルシリカ、または針状コロイダルアルミナから選ばれる無機顔料とバインダーを主成分とする塗工層を有する。
【0021】
[無機顔料]
<コロイダルシリカ>
本願発明では、一次粒子が球状であって一次粒子径に対する二次粒子径の比が1.5〜3.0のコロイダルシリカを含有する。一次粒子径としては10〜300nm、より好ましくは30〜70nmである。この塗工層を設けたシートにオフセット印刷を行うことにより、本願発明の効果は発揮される。かかる無機顔料の配合により、塗工層に微細な空隙が生じ、印刷インキの溶剤を吸収しやすくする一方、カオリンやタルク、シリカ等の顔料のように光を乱反射しないため、優れた光沢性を得ることが可能となる。また、かかる無機顔料は酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ等の一般的な顔料に比べバインダーとの結合性が高く、塗工層に配合した場合に熱可塑性樹脂からの脱落や表面強度の低下を起こしにくいため、無機顔料の比率を高くすることができ、優れた耐ブロッキング性を併せて得ることが可能となる。
従って、本願発明の耐水性シートは、印刷時に裏付き等のトラブルを起こすことなく、印刷後の工程を速やかに進めることができ、印刷機も安定的に操業できる。さらに、本願発明では無機顔料の粒径が小さいため、塗工層の表面の平坦性に優れ、一般的な無機顔料を配合した場合に比べ高い光沢性を得ることができる。
【0022】
但し、かかる無機顔料の一次粒子径が10nmより小さくなると、塗工層に微細な空隙を形成しにくくなり、好ましくない。一方、一次粒子径が300nmを超えると光を散乱しやすくなり、優れた光沢性を得ることが困難となる。
また、一般に、シートの一方又は両方の最外層として熱可塑性樹脂層を有する積層シートまたは熱可塑性樹脂からなるシート等の耐水性シートは、オフセット印刷時の湿し水に対する挙動が不安定で、湿し水の水余りがしばしば問題となる。これに対し、かかる無機顔料として球状の一次粒子が結合や凝集により二次粒子を形成している無機顔料を使用することにより、水余りを起こりにくくすることができる。これは、二次粒子を形成していない無機顔料を使用した場合に比べ、粒子が密に配列しにくくなって塗工層の空隙がより多くなり、湿し水が塗工層に吸収されやすくなって、湿し水の吸収容量がより増大するためと考えられる。その結果、ブランケットからのインキの転移も阻害されなくなると考えられる。
【0023】
本願発明では、前記二次粒子の一次粒子径に対する比率が1.5〜3.0であると好ましい。比率が1.5より小さいと、一次粒子と二次粒子の形状があまり変わらず、湿し水を吸収するための塗工層の空隙が形成しにくくなる。一方、3.0を超えると塗工層の光沢が得られにくくなり、より好ましくは2.5以下である。なお、本願発明においてコロイダルシリカの一次粒子径及び二次粒子径は、BET法や動的光散乱法等で測定できる。
【0024】
本願発明におけるコロイダルシリカは、通常その分散状態を顕微鏡で観察すると、球状の単一コロイダルシリカ(一次粒子)が2〜3個連なったものが多数観察される。これを便宜上、ピーナッツ状と表す。この一次粒子連結個数を平均した値は、上記比にほぼ比例する。そして、本願発明におけるコロイダルシリカは、鎖状(パールネックレス状ともいう)のコロイダルシリカ(顕微鏡観察すると、球状の単一コロイダルシリカが少なくとも5個以上、通常は10個以上連なるもの、上記比も5以上となる)を主とするものは含まない。ここでいう含まないとは、顕微鏡観察した際に、鎖状のコロイダルシリカが全く観察されないということではなく、一部房状のコロイダルシリカが観察されても良いが、マクロ的な物性である一次粒子径に対する二次粒子径の比を測定した値が3.0を超える(通常は5以上)ことをいう。また、本願発明に使用するコロイダルシリカは、アルコキシシランを原料としてゾルゲル法により合成し、合成条件によって一次粒子径(BET法粒子径)や二次粒子径(動的光散乱法粒子径)をコントロールするようにすることが好ましい。このようなコロイダルシリカとしては、扶桑化学工業社製の商品名クォートロンを挙げることができる。なお、本発明のコロイダルシリカとしては1次粒子が凝集した凝集体を機械的手段(但し、乾式粉砕を除く)により平均粒子直径数10nm〜数100nm程度の2次粒子となるように細分化したコロイド粒子は含まない。
【0025】
<針状コロイダルアルミナ>
針状コロイダルアルミナとは、針状の一次粒子が結合や凝集により二次粒子を形成しているものであり、上記したコロイダルシリカと同様の作用効果を発揮する。1次粒子径は最長径が10〜20nm、二次粒子径は同じく20〜30nm程度である。
【0026】
<その他の無機顔料>
本願発明では所望の効果を阻害しない限り、上記の無機顔料の他に、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、カオリン、焼成カオリン、シリカ等の従来公知の無機顔料やプラスチックピグメントを含有することができる。
【0027】
[バインダー]
バインダーは、耐水性を有するものが好ましく、熱可塑性樹脂層表面又は熱可塑性樹脂シート表面との接着性、オフセットインキとの接着性、また、塗工層中に含有される無機顔料の保持力等を勘案し、適宜選択して使用することができる。例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン等の重合物もしくは共重合物、又はその変性物等、さらにはこれらとウレタン樹脂やエポキシ樹脂等との混合物を使用することができ、中でもスチレンやブタジエン、(メタ)アクリル系重合物またはこれらの共重合物が好ましい。なお、本願発明ではポリビニルアルコール等の水溶性バインダーは、スチレンやブタジエン、(メタ)アクリル系重合物またはこれらの共重合物に比べて、耐水性が劣る傾向が見られる。但し、所望の効果を阻害しない範囲であれば、上記の耐水性のバインダーと併用すると、耐水性を向上させることができる。
【0028】
[形成方法]
塗工液中の無機顔料の配合量はバインダーに対して10〜500重量%が好ましい。配合量が10重量%未満であると、形成される塗工層に空隙が生じにくく、インキ吸収能付与という効果を発揮できなくなり、500重量%を超えると、塗工層の表面強度や熱可塑性樹脂表面からの脱離が起こりやすくなる。なお、かかる上記無機顔料以外に、所望の効果を阻害しない限り、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、カオリン、焼成カオリン、シリカ等の従来公知の無機・有機填料を配合することができ、耐水性シートの不透明性を向上させ滑り性を付与する等の効果があるが、シートの光沢性を重視する場合には、こうした填料は配合しないか、最小限の配合量にとどめることが望ましい。
塗工液の熱可塑性樹脂層表面又は熱可塑性樹脂シート表面への塗工は、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、ダイコーター等を用いて定法により行うことができる。塗工量は、0.5〜10g/m(乾燥重量、以下同じ。)が好ましい。塗工量が0.5g/m未満である場合には、上記した無機顔料による効果、即ちインキ吸収能付与という効果を発揮できなくなる。一方、10g/mを超える場合には、乾燥の負荷が増大する等、経済的に好ましくない。塗工量が0.5〜10g/mの範囲、特に1〜8g/mの範囲にある場合には、かかる問題を十分に回避することができる。本願発明の耐水性シートは、一般に汎用されているインキを使用して印刷することができるにもかかわらず、シート表面の塗工層(インキ受理層)を10g/m以下と薄くすることができるので、塗工層の強度も確保でき、生産性・経済性も優れたものとなる。
なお、塗工層には、上記した以外にも一般的に使用される種々の添加剤を添加することができる。これらの添加剤としては、例えば、帯電防止剤、白色顔料(酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ等の無機顔料等)、耐ブロッキング剤(アクリルビーズ、ガラスビーズ、シリカ等)などがある。
【0029】
〔実施例〕
以下に本発明の実施例および比較例を説明するが、本発明をこれら実施例に限定するものでないことは言うまでもない。なお、特にことわらない限り、部および%は重量部および重量%を表す。実施例および比較例で用いた樹脂組成及び塗工層組成を含めた実施例1〜15及び比較例1〜20を表1に示す。また、実施例および比較例で得られた積層シートについて品質を評価した。場合によっては、平版オフセット印刷を行い、通常の湿し水量で印刷した際の印刷後の乾燥性、並びに過剰な湿し水量(通常の2倍量)で印刷した際のインキ転移性をそれぞれ評価した。印刷は、コート紙用に汎用されているオフセット印刷用インキ(大日本インキ(株)製『Values−G』)紅を用いた。
【0030】
<物性、性状>
低密度ポリエチレン(LDPE):MFR(JIS K6922−2)7.5g/10min、密度0.918g/cm
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE):MFR(JIS K6922−2)20g/10min、密度0.888g/cm
高密度ポリエチレン(HDPE):MFR(JIS K6922−2)17g/10min、密度0.967g/cm
ポリプロピレン(PP):MFR(JIS K7210:1999)24g/10min、密度0.91g/cm
エチレン・メチルアクリレート共重合物(EMA):MFR(JIS K7210:1999)6.0g/10min、密度0.930g/cm
エチレン・エチルアクリレート共重合物(EEA):MFR(JIS K6730)5.0g/10min、エチルアクリレート(EA)含有量25%
スチレン-ブタジエン共重合体(SBR):MFR(ASTM D297)3.5g/10min、密度0.89g/cm3
エチレン・αオレフィンコポリマー:MFR3.6g/10min、密度0.88g/cm、JIS−A表面硬度83
(なお、表1中、樹脂名は前述した「( )」書き表記を使用した。)
【0031】
<基材密着性>
熱可塑性樹脂層の表面に、ニチバン社製透明粘着テープ(商品名セロテープ(登録商標))を強固に密着させ、この透明粘着テープを強制的に剥離して、次の基準で目視にて評価した。
5:テープ粘着面に何も付着しておらず熱可塑性樹脂層が基材層からまったく剥離しない。または、基材ごと破壊されているが、熱可塑性樹脂層と基材との間ではまったく剥離していない。
4:テープ粘着面に僅かに熱可塑性樹脂が付着している。または、基材破壊が起こっているが、部分的に熱可塑性樹脂層と基材の間で剥離が起こっている。
3:テープ粘着面の半分ほどの面積に熱可塑性樹脂が付着しており、基材破壊は起こっておらず、基材と熱可塑性樹脂層間で剥離している。
2:テープ粘着面のほぼ全面に熱可塑性樹脂が付着しており、テープ剥離時に抵抗がある。
1:テープ粘着面のほぼ全面に熱可塑性樹脂が付着しており、かつテープ剥離時にほとんど抵抗がない。
【0032】
また、平版オフセット印刷を行い、通常の湿し水量で印刷した際の印刷後の乾燥性、並びに過剰な湿し水量(通常の2倍量)で印刷した際のインキ転移性をそれぞれ評価した。なお印刷は、コート紙用に汎用されているオフセット印刷用インキ(大日本インキ(株)製『Values−G』)紅を用いた。結果を表1に示す。
【0033】
[光沢度]
75°光沢度計(村上色彩技術研究所社製GM−26PRO)を用いて白紙光沢度を測定した。光沢性が高いほど美麗性に優れており、30%以上であると特に光沢性は良好である。
【0034】
[耐ブロッキング性]
白紙サンプルを大きさ5cm×10cmにカットし、2枚を塗工面どうし重ね合わせ、荷重がサンプルに均等にかかるように6kgの錘を載せて40°、85%RHの環境下に1週間保持した後、サンプルを引き剥がしたときの接着状態を評価した。
○:剥がした際の抵抗感が全くない。
△:若干ブロッキングしているが、サンプルの表面状態に変化は見られない。
×:ブロッキングしており、塗工層が欠落するなど表面状態が変化している。
【0035】
[印刷後のインキ乾燥性]
印刷した後に空気と触れないように保持し、一定時間経過した後にベタ部分を一般A2コート紙と重ね合わせ、一定荷重をかけた際にコート紙にインキが移らなくなるまでの時間を測定した。時間が短いほど乾燥性は良好となる。単位は「時間」である。
【0036】
[過剰な湿し水量でのインキ転移性]
印刷した際のインキの転移性を目視で評価した。
○:印刷ムラは見られず、優れた印刷しあがりである。
△:印刷ムラが見られ、所々でインキが転移していない部分が見られる。
×:インキが転移していない。
【0037】
[耐水性]
印刷してインキを十分乾燥させた後に、ベタ部分を水に塗らして、指で強く擦った際のインキの剥がれ具合を目視で評価した。
○:インキが剥がれない
×:インキが剥がれる
【0038】
[コロイダルシリカの粒径測定]
一次粒子径は窒素吸着法により比表面積を求め、下記の式から計算により求めた。二次粒子径はコールターN4計(コールター社製の商品名)で測定し、粒子径は数平均値を用いた。
【0039】
【数1】

【0040】
[実施例、比較例]
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、特にことわらない限り、部および%は重量部および重量%を示す。
【実施例1】
【0041】
予め溶融した低密度ポリエチレン(LDPE:MFR7.5g/10分、密度0.918g/cm)を、坪量81g/mの上質紙の両面に、Tダイを用いて押出温度290℃にて押出しラミネートを行い、鏡面調のクーリングロールで圧着して積層シートを作成し、次いで、この積層シートの両面にコロナ放電処理を行った。なお、このとき積層シートの両面に積層されたポリエチレン層の厚さは、それぞれ20μmであった。
一方、スチレン−アクリル共重合体の水系ディスパージョン(表1「StAC」と表記)(濃度40%、平均粒径0.19μm)150重量部に平均一次粒径23nm、二次粒子径50nmのピーナッツ状コロイダルシリカ(表1「PL−2」と表記)(商品名PL−2、扶桑化学工業(株)社製)300重量部を混合し、塗工液を調製した。この塗工液を上記積層シートの両面に固形分で3g/mとなるようにマイヤーバーを用いて塗工し耐水性シートを得た。
【0042】
(実施例2〜15、比較例1〜17)
表1に示すように、樹脂種類及びその組成または塗工層のバインダーまたは顔料の種類及びその組成を代えた以外は、実施例1と同様に耐水性シートを得た。
(比較例18〜20)
比較例18〜20は、塗工層を設けない比較例である。
【0043】
なお、他の箇所で記述した以外の表1中での略称表記は、次のとおりである
バインダー AC:アクリル重合体
配合顔料 PL−7:ピーナッツ状コロイダルシリカ
配合顔料 PL−20:ピーナッツ状コロイダルシリカ
配合顔料 HP−14:針状コロイダルアルミナ
配合顔料 ST−20:球状コロイダルシリカ
配合顔料 X−37B:合成シリカ
【0044】
【表1】



【0045】
実施例1〜15より明らかなように、樹脂Aとして低密度ポリエチレンを50重量%以上含有し、さらに塗工層中に配合する無機顔料として二次粒子形成しているピーナッツ状コロイダルシリカあるいは針状コロイダルアルミナを用いた本発明の積層シートは、基材密着性とインキ乾燥性の両方を満足する品質を示し、さらに湿し水が大量な場合にもインキ転移が抑えられ、より品質のバランスが優れたものになった。
樹脂AとしてLDPEを50〜90重量%では、LDPEを100重量%に比べてインキ乾燥性が0.5時間以下と半減させることができることが確認できた。
塗工層のバインダーとしてPVAを使用した実施例6は、耐水性に難があるものの基材密着性、インキ乾燥性などに優れ、屋内ポスター用としては十分な効果を奏する。
また、樹脂Aとして配合した低密度ポリエチレンが50重量部未満の場合(比較例1〜12、比較例14)は、基材密着性、インキ乾燥性のいずれかあるいは両方に劣り、バランスの良い品質の積層シートは得られなかった。また本発明の樹脂Bとして選ばれる特定の熱可塑性樹脂群とは異なる樹脂を用いた場合(比較例13)も、同様であった。
さらに、塗工層を設けない比較例18〜20および塗工層に顔料を含有しない比較例17では、いずれもインキ乾燥性に劣り、また、一般的な顔料を用いた比較例15(二次粒子をを形成しない球状コロイダルシリカ)はインキ転移性に、比較例16(合成シリカ)は光沢性にそれぞれ劣っていた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂層を有する積層シートの上に塗工層を形成した耐水性積層シートにおいて、
熱可塑性樹脂層を有する積層シートは、シート状基材の片方又は両方の表面に1以上の熱可塑性樹脂層が積層された積層シートであって、その熱可塑性樹脂層の最外層が下記の樹脂(A)と(B)群から選ばれる少なくとも1種を混合してなる熱可塑性樹脂であって、かつ下記樹脂(A)の熱可塑性樹脂を50重量%以上含有しており、
塗工層は、前記積層シートの少なくとも熱可塑性樹脂層の一表面に、無機顔料とバインダーとを主成分とする塗工層であって、該無機顔料として、一次粒子が球状であって一次粒子径に対する二次粒子径の比が1.5〜3.0のコロイダルシリカ、または、針状コロイダルアルミナを含有することを特徴とする耐水性積層シート。
(A)密度0.85〜0.92g/cm、メルトフローレート(MFR(JIS K6922−2))3〜20g/10minである低密度ポリエチレン
(B)ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−アクリレート共重合樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂
【請求項2】
樹脂(A)の熱可塑性樹脂を50〜90重量%含有していることを特徴とする請求項1記載の耐水性積層シート。
【請求項3】
熱可塑性樹脂(B)が、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・メチルアクリレート共重合物(EMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合物(EEA)、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2記載の耐水性積層シート。
【請求項4】
塗工層のバインダーが、スチレン、ブタジエン、(メタ)アクリル酸の重合体または共重合体から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の耐水性積層シート。

【公開番号】特開2008−221599(P2008−221599A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62927(P2007−62927)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】