耐油ミストエレクトレット物品及びフィルター
【課題】すぐれた油ミスト捕集性能、低透過及び小さい圧力降下を示すポリマー及び性能増強添加剤を含有する新規なエレクトレット物品の提供。
【解決手段】性能増強添加剤として、
からなる群から選択される含フッ素化合物を用いた、繊維又はフィルター等の形状のエレクトレット物品。
【解決手段】性能増強添加剤として、
からなる群から選択される含フッ素化合物を用いた、繊維又はフィルター等の形状のエレクトレット物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレクトレット物品、エレクトレットフィルター、エレクトレットフィルターを使用するマスク、及び粒子をガスから除去、特にエーロゾルを空気から除去するのにエレクトレットフィルターを使用することに関する。この発明は特に、油ミスト(すなわち、液体エーロゾル)の存在下でエレクトレット安定性などの特性を改善したエレクトレットフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
科学者及び技術者は以前から、空気フィルターの濾過性能を改善することを目指している。最も効率的な空気フィルターのなかには、エレクトレット物品を用いるものがある。エレクトレット物品は、持続的または半永久的な電荷を示す。G・M・セスラー著、エレクトレット、スプリンガー出版、ニューヨーク、1987年を参照のこと。研究者たちは、フィルターに使用するためのエレクトレット物品の特性を改善するためにかなりの努力を注いでいる。改善されたエレクトレット物品の製造を目的とする広範な研究にもかかわらず、作業変数の作用は十分に理解されていず、概して、加工条件を変える作用は、予想不可能でないにしても難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エレクトレット物品は、加工工程に著しく影響を及ぼされることがある電荷安定性、捕集性能、湿気及び油暴露に対する耐性などの特別な特性必要条件を有し、それらは、不織布及び布状材料に概して無害または有益である。従って、広範な経験的データがない場合、特定の加工工程(例えば急冷)が得られた製品のエレクトレット特性に及ぼすことがある作用の有無を理解することは、しばしば非常に難しい。
【0004】
エレクトレットフィルター性能を改善すると報告されている1つの方法は、エレクトレット繊維を形成するために用いられるポリマー中に性能増強添加剤をブレンドすることである。例えば、米国特許第5,411,576号及び5,472,481号においてジョーンズらは、ポリマー及び溶融加工性フルオロケミカルのブレンドを押出して微小繊維ウェブを形成し、次いで、アニールまたはコロナ処理することによって作製されるエレクトレットフィルターを開示している。公開第96/26783号(米国特許第5,645,627号に対応する)においてリフシュッツらは、ポリマーと脂肪酸アミドまたはフルオロケミカルオキサゾリジノンフルオロケミカルとのブレンドを押出して微小繊維ウェブを形成し、次いで、アニールまたはコロナ処理することによって作製されるエレクトレットフィルターを報告している。
【0005】
エレクトレット物品の電荷特性を改善する他の技術が報告されている。例えば、米国特許第4,588,537号においてクラッセらは、電荷をエレクトレットフィルター中に導入するためにコロナ処理を用いたことを報告している。米国特許第5,496,507号においてアンガジュバンドらは、小水滴を不織微小繊維上に衝突させることにより、電荷がウェブに付与されたことを見い出し、ルソーらは公開第97/07272号において、ポリマーとフルオロケミカルまたは有機トリアジン化合物とのブレンドを押出して微小繊維ウェブを形成し、次いで、小水滴を衝突させて電荷を付与することによって作製され、それによって水流帯電(hydrocharged)ウェブ濾過性能を改善するエレクトレットフィルターを開示している。
【0006】
マツウラらは米国特許第5,256,176号において、エレクトレットに、電荷を適用し、引き続いて物品を加熱する交互の作業周期にかけることによって安定したエレクトレットを作製するプロセスを開示している。マツウラらは油ミスト捕集性能増強添加剤を有するエレクトレットを開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、ポリマー及び性能増強添加剤(他の成分も下記のように添加されてもよい)を含有するエレクトレット物品を提供する。エレクトレット物品は、例えば、繊維またはフィルムの形であってもよく、またはそれは、特にフィルターとして用いられる時、不織ウェブの形であってもよい。発明者は、ポリマー及び性能増強添加剤を含有する低結晶性組成物が、すぐれた特性を有するエレクトレットフィルターに変換され得るため、特に価値があることを発見した。下記のように、低結晶性組成物を、加工中に急冷する工程を導入することによって作製することができる。
【0008】
急冷することにより、急冷プロセスを用いない材料の秩序と比較して材料の秩序(例えば結晶性)が低減される。急冷工程は、溶融材料を所望の形状に変換するのと同時にまたはすぐ後に行なわれる。通常、材料は、ダイオリフィスを通して押出し、オリフィスを出たすぐ後に(一般に冷媒を押出し物に適用することによって)急冷することによって成形される。
【0009】
本発明はまた、ポリマー及び性能増強添加剤を含む固有のエレクトレット物品を提供するが、同物品の熱刺激放電電流(TSDC)スペクトルは、TSDC試験方法3によって測定するとき、約30℃の半値幅を有するピークを示す。これらの固有のTSDCスペクトルの特徴を示すエレクトレット物品を取り入れるエレクトレットフィルターは、驚く程すぐれた濾過性能を示すことができる。
【0010】
本発明は、エレクトレット物品を組み入れる物品を含み、また、粒状物質固体または液体エーロゾルを、本発明のエレクトレット物品を用いてガスから取り除く方法を含む。
【0011】
本発明は更に、本発明のエレクトレット物品を用いない同様に作られたフィルターで得られないすぐれた特性を示すエレクトレットフィルターを提供する。これらのフィルターは、ポリマー及び性能増強添加剤のブレンドから作製された繊維を含有し、それらはすぐれたジオクチルフタレート(DOP)液体エーロゾル捕集性能を示す。DOP液体エーロゾル捕集性能は、実施例の節で特定の試験に関連して規定される。好ましいフィルターは、フィルターの全体にわたり圧力降下を小さくすると同時に、増強された油ミスト捕集性能、エーロゾルまたは微粒子の透過の減少、及び液体エーロゾルの存在下での電荷安定性を示す。
【0012】
本発明のエレクトレット物品は、顔面マスクなどのマスク、家庭及び産業用冷房装置、加熱炉、空気クリーナ、真空クリーナ、医用及び送気管フィルター、及び車両中及びコンピュータ及びディスクドライブなどの電子装置における空気浄化系等、多数の濾過用途に使用することができる。
【0013】
本発明はまた、ポリマー及び性能増強添加剤のブレンドを含有するエレクトレット繊維を含有する不織ウェブと、マスク及びマスクの装着者の口及び鼻の上に付けるようになっているカップ状部材を人に取付けるための支持構造体と、を含むエレクトレットフィルターを含有するマスクを提供するものであり、液体微粒子に対する負圧マスクを試験する全米職業保安・健康協会の微粒子フィルター透過方法(方法APRS−STP−0051−00)を用いて試験するとき、前記マスクのMin@Chlが、400mgDOPより多く、前記マスクが約180cm2の露出表面積を有するか、または露出表面積が約180cm2になるように調整して試験される。エレクトレットフィルターを作製するのに有用な中間組成物もまた、本発明の態様である。前記中間組成物は、結晶のピーク強度の、6〜36度の散乱角の範囲についての全散乱強度に対する比によって測定したときに結晶化度が0.3より小さいポリプロピレン、及び性能増強添加剤からなる繊維の不織ウェブを含んでもよい。中間組成物を、90〜99.8重量パーセントの有機ポリマー及び0.2〜10重量パーセントの性能増強添加剤の混合物をブレンドし、押出すことによって作製してもよく、前記繊維は溶融吹込条件下でダイを通して押出され、不織ウェブとして採取されるが、前記繊維は採取される前に急冷される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のエレクトレット物品は、ポリマー及び性能増強添加剤を含有する。前記ポリマーは、非導電性熱可塑性樹脂、すなわち、抵抗率が1014ohm×cmより大きい、より好ましくは1016ohm×cmより大きい樹脂であってもよい。前記ポリマーは一時的でない、または持続する閉じ込められた電荷を保持する能力があるのがよい。前記ポリマーは、ホモポリマー、コポリマーまたはポリマーブレンドであってもよい。米国特許第4,588,537号においてクラッセらが報告しているように、好ましいポリマーには、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、線状低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート及びポリエステルなどがある。前記ポリマーの主成分は、ポリプロピレンが高い抵抗率を有し、空気濾過に有用な直径、良好な電荷安定性、疎水性、及び耐湿性を有する溶融吹込繊維を形成することができるため、好ましくはポリプロピレンである。他方、ポリプロピレンは一般に疎油性ではない。本発明のエレクトレット物品は好ましくは、物品の重量に対して、約90〜99.8重量パーセント、より好ましくは約95〜99.5重量パーセント、最も好ましくは約98〜99重量パーセントのポリマーを含有する。
【0015】
本発明において規定するように、性能増強添加剤は、エレクトレットフィルター中に形成された後にエレクトレット物品の油状エーロゾル濾過能力を増強する性能増強添加剤である。油状エーロゾルの濾過能力は、実施例の節に記載したDOP負荷試験によって測定される。個々の性能増強添加剤には、ジョーンズらの米国特許第5,472,481号及びルソーらの公開第WO97/07272号に記載されている性能増強添加剤などがある。性能増強添加剤には、米国特許第5,025,052号(クレーターら)に記載されているようなフルオロケミカルオキサゾリジノンの他、フルオロケミカルピペラジン、及びペルフルオロアルコールのステアラートエステルなどのフルオロケミカル添加剤などがある。エレクトレット特性を改善するそれらの実証済の有効性のために、性能増強添加剤は好ましくはフルオロケミカルであり、より好ましくはフルオロケミカルオキサゾリジノンである。好ましくは前記フルオロケミカルは、ポリマーの融点より高く押出し温度より低い融点を有する。加工上の問題点のために、ポリプロピレンを用いる時、フルオロケミカルの融点は好ましくは、160℃より高く、より好ましくは160℃〜290℃である。特に好ましいフルオロケミカル添加剤には、それぞれ以下の構造:
【化1】
を有する米国特許第5,411,576号に記載の添加剤A、B及びCなどがある。本発明のエレクトレット物品は好ましくは、物品の重量に対して約0.2〜10重量パーセント、より好ましくは約0.5〜5.0重量パーセント、最も好ましくは約1.0〜2.0重量パーセントの性能増強添加剤を含有する。
【0016】
ポリマー及び性能増強添加剤を、それらを溶融する前に固体としてブレンドしてもよいが、成分は好ましくは別々に溶融され、液体として互いにブレンドされる。あるいは、フルオロケミカル添加剤とポリマーの一部分とを、固体として混合し、溶融して比較的フルオロケミカル分の高い溶融ブレンドを形成してもよく、次に非フルオロケミカル含有ポリマーを配合される。
【0017】
次いで、溶融ブレンドをフィルムまたは繊維などの所望の形に造形する。一般に、溶融ブレンドはダイを通して押出すことによって造形され、同程度に好ましい実施態様とはいえないが、前記ブレンドを静電界での絞り成形などの別のプロセスによって造形することができる(例えば、インデックス81の会議レポートのY・トルーイレット著、『New Method of Manufacturing Nonwovens By Electrostatic Laying』、ウェブ形成の進歩、欧州使い捨て品及び不織布協会(European Disposables And Nonwovens Association)、アムステルダム、1981年5月5−7日を参照のこと)。好ましい押出しプロセスは2つの押出機を用い、このプロセスにおいて、約10〜約20重量パーセントのフルオロケミカル添加剤及び約80〜約90重量パーセントのポリマーを第1の押出機内でブレンドし、この比較的高フルオロケミカル含有量の溶融ブレンドを(フルオロケミカルを含有しない)溶融ポリマーと共に第2の押出機中に供給してブレンドを形成し、ダイオリフィスを通して押出す。前記高フルオロケミカル含有量の溶融ブレンドは好ましくは、溶融物質をダイを通して押出す直前に非フルオロケミカル含有ポリマーを配合される。これは、フルオロケミカルが高温に暴露される時間を最小に抑える。押出し中の温度は、所望の押出し物のレオロジーを提供すると共にフルオロケミカルの熱崩壊を避けるように制御されるのがよい。異なった押出機は一般に、異なった温度プロフィールを必要とし、実験が、特定の系のための押出し条件を最適にすることを必要とすることもある。ポリプロピレン/フルオロケミカルのブレンドについては、押出し中の温度は好ましくは、フルオロケミカルの熱崩壊を低減させるために約290℃より低い温度に維持される。押出機を用いる場合、それらは好ましくは、より十分に混合するために双スクリュー型であり、ワーナー&プフレイダラーまたはバーストーフ押出機などの市販の押出機であってもよい。
【0018】
溶融ブレンドを好ましくはダイを通して押出し、より好ましくは前記ブレンドを、溶融吹き込み条件下でダイを通して押出す。溶融吹き込みは、特に不織ウェブを製造する多数の利点を提供することが周知であり、本発明の物品を、従来技術に公知の溶融吹き込みプロセス及び機器を用いて作製することができる。繊維の溶融吹き込みは、最初はヴァンウェンテ著、「Superfine Thermoplastic Fibers」、Ind.Eng.Chem.、Vol.48、1342−46ページ、(1956年)に記載された。概して、本発明の溶融吹き込みは従来の方法を用いて行われるが、ただし改良点として、材料がダイを出る時に急冷される(冷却される)。
【0019】
好適な急冷技術には、水の吹付け、揮発性液体の吹付け、または冷気または二酸化炭素または窒素などの低温ガスとの接触などがある。一般に冷却液(液体またはガス)が、ダイオリフィスから約5センチメートル(cm)以内に配置されたノズルから吹付けられる。ダイを通して押出される材料の場合、冷却液を、ダイから押出されたすぐ後に(且つ、材料が採取される十分に前に)、溶融押出物に衝突させる。例えば、溶融吹込繊維の場合、溶融押出し物は不織ウェブの形で採取される前に急冷されなければならない。冷却液は好ましくは水である。水は水道水であってもよいが、好ましくは蒸留水または脱イオン水である。
【0020】
急冷工程の目的は、得られた物品中のポリマーの結晶化を最小にすることである。本発明者は、急冷された材料から作製されたエレクトレットフィルターが、引き続いてアニール及び帯電される時、予想外に良好な液体エーロゾル濾過性能を示すことを発見した。急冷工程は、同じ条件下で押出した急冷されないポリマーと比較してポリマーの結晶含有量を低減させる。急冷材料は好ましくは、X線回折によって確認するとき、低結晶化度を有する。好ましくは、急冷材料中のポリマーは、結晶のピーク強度の、6〜36度の散乱角の範囲についての全散乱強度に対する比によって測定したときに結晶化度が0.3より小さく、より好ましくは0.25より小さく、更により好ましくは0.2より小さく、更により好ましくは0.1より小さい。従って、エレクトレットフィルターを作製するための好ましい中間組成物を作製するために、90〜99.8重量パーセントの有機ポリマー及び性能増強添加剤の0.2〜10重量パーセントの混合物をブレンドして押出すが、その際、材料を溶融吹込み条件下でダイを通して押出して繊維を形成し、不織ウェブとして採取する。繊維は、水の吹付け、揮発性液体の吹付け、もしくは冷気または二酸化炭素または窒素などの低温ガスとの接触などの冷却プロセスによって、採取される前に急冷される。
【0021】
急冷後に、材料を採取する。材料が繊維の形である場合、それを採取、切断、及び不織ウェブにカード仕上げすることができる。溶融吹込繊維を一般に、回転ドラムまたは移動ベルトで不織ウェブとして採取することができる。好ましくは急冷及び採取工程は、採集された材料上に残留している液体(残留液体が存在する場合、それは一般に水である)過剰な急冷液体が存在しないように行われる。採取された材料上に残留している液体が貯蔵上の問題を引き起こすことがあり、急冷液体を除くためにアニール中に更に加熱する必要がある。従って、採集された材料は好ましくは、1重量パーセントより少ない急冷液体を含有し、より好ましくは残留した急冷液体を含有しない。
【0022】
前記急冷された材料を油ミストの存在下で静電荷安定性を増大させるためにアニールする。好ましくは、性能増強添加剤はフルオロケミカルなどの低エネルギー表面をもたらす物質であり、アニール工程は、添加剤を材料の界面(例えば、ポリマー−空気の界面、及び結晶相及び非晶質相の間の境界)に拡散させるのに十分な温度及び十分な時間で行われる。概して、アニール温度がより高くなると時間をより短くできる。最終製品の好ましい特性を得るために、ポリプロピレン材料のアニールは、約100℃より高い温度で行われるのがよい。好ましくは、アニールは約2〜20分間約130〜155℃、好ましくは約2〜10分間約140〜150℃、更により好ましくは約4.5分間約150℃で行なわれる。アニールは、ウェブの構造体を実質的に崩壊させない条件下で行われるのがよい。ポリプロピレンウェブについては、実質的に約155℃より高いアニール温度は、材料が損傷を与えられることがあるため、望ましくない場合がある。
【0023】
アニールされていないウェブは、許容範囲内の油ミスト捕集性能を示さない。アニールされないウェブは一般に、ゼロのMin@Chlを示す。発明者は、アニールされたウェブの改善した性能が界面面積の増大及び/または安定した電荷閉じ込め部位の数の増大によると仮定する。従って界面面積を増大させる別の方法をアニールの代わりに用いることができる。
【0024】
アニールは、材料中のポリマーの結晶性を増大させる。アニールはまた、材料の剛性及び脆性を増大させ、伸び、軟度及び引裂き抵抗を減少させることが知られている。にもかかわらず、軟度及び引裂き抵抗の減少は、本発明の目標がエレクトレットフィルター性能を改善することにあるので、問題とされない。
【0025】
急冷の有無に関わらず、アニール工程は一般に、液体エーロゾルに耐性があるエレクトレットフィルターウェブの作製において速度に制限がある工程である。1つの実施態様において、ウェブは、約0.5〜1.4ポンド/時間/ダイの1インチの速度で溶融吹込プロセスにおいて形成される。
【0026】
本発明の方法は更に、急冷された後に材料を静電帯電する工程を含む。本発明に有用な静電帯電方法の例には、米国特許再発行特許第30,782号(ファン・ターンハウト)、再発行特許第31,285号(ファン・ターンハウト)、5,401,446号(ツァイら)、4,375,718号(ワッズワースら)、4,588,537号( クラッセら)及び4,592,815号(ナカオ)に記載されている方法などがある。エレクトレット材料はまた、水流帯電されてもよい(アンガジュバンドらの米国特許第5,496,507号を参照のこと)。切断繊維を、摩擦することによって、または異なった繊維と共に振ることによって摩擦帯電することができる(ブラウンらに付与された米国特許第4,798,850号を参照のこと)。好ましくは、帯電プロセスは、前述の特許のいくつかに開示されているように材料をコロナ放電、または脈動高圧にかける工程を含む。
【0027】
繊維は鞘−芯形状であってもよく、その場合、鞘材は、上に論じたブレンド中に記載したようにな性能増強添加剤を含有しなければならない。好ましくは、押出し物は、デイビーズ、C.N.、「The Separation of Airborne Dust and Particulates」、Inst.of Mech.Eng.、ロンドン、プロシーディングス 1B、1952年に記載の方法に従って計算すると、有効直径が約5〜30マイクロメータ(mm)、好ましくは約6〜10mmである微小繊維の形である。
【0028】
本発明のエレクトレット物品は、TSDC検査によって特性を決定することができる。TSDCにおいて、試料を2つの電極間に置き、一定の速度で加熱し、試料から放電された電流を電流計によって測定する。TSDCは、公知の技術である。例えば、米国特許第5,256,176号、ラバーグンらの「A Review of Thermo−Stimulated Current」、IEEEエレクトリックインシュレーションマガジン、Vol.9、No.2、5−21、1993年、及びチェンらの「Analysis of Thermally Stimulated Processes」、パーガモンプレス、1981年を参照のこと。試料から放電される電流は、試験される物品の分極率及び電荷閉じ込めの関数である。帯電物品を直接に試験することができる。あるいは、帯電及び未帯電物品を高温の電界内で先ずポーリング処理し、次に分極場を表面に有するポリマーのガラス転移温度(Tg)より低い温度に急速に冷却し、誘発分極を「凍結」することができる。次に、試料を一定の速度で加熱し、得られた放電した電流を測定する。分極プロセスにおいて、電荷注入、双極子の調整、電荷再分配またはこれらのいくつかの組合せが存在してもよい。
【0029】
熱刺激放電中に、エレクトレット中に蓄えられた電荷が可動的になり、反対符号の電荷を再結合することによって電極においてまたはバルク試料中のどちらかで中和される。これは、グラフ上にプロットされる温度の関数として記録時に多数のピークを示す外部電流を生み出す。これらのピークの形状及び位置は、電荷閉じ込めエネルギーレベル及び閉じ込め部位の物理的な位置に依存する。
【0030】
多くの研究者が示すように(例えば、セスラー編、「エレクトレット」、スプリンガー−出版、1987年及びヴァンターンハウト、「ポリマーエレクトレットの熱刺激放電」、エルセヴィアサイエンティフィックパブリッシングカンパニー、1975年、を参照のこと)、エレクトレット電荷は通常、不純物、モノマー単位の欠陥、鎖の不規則さなどの構造的な特異部分に蓄えられる。TSDCピークの幅は、エレクトレット中の電荷閉じ込めレベルの分布によって影響を及ぼされる。半結晶質ポリマーにおいて、しばしば電荷は、相の伝導率の差のために非晶質−結晶界面付近に蓄積されるか、または消耗される(マックスウェル−ワグナー効果)。これらの閉じ込め部位は通常、異なった閉じ込めエネルギーと結び付いており、そこにおいて、活性化エネルギーの連続した分布が予想され、TSDCピークが部分的に重なり合い、幅の広いピークになることが予想される。
【0031】
驚くべきことに、実施例の節に記載した一連のTSDC測定値において、TSDCスペクトルのいろいろな特徴がすぐれた油ミスト捕集性能と関連していることが発見された。すぐれた性能と関連しているTSDCスペクトルの特徴は、好ましい実施態様として以下に論じた特徴を含む。
【0032】
好ましい実施態様の一つにおいて、エレクトレットフィルターを作製するための中間組成物は、(実施例の節で明らかにしたように)TSDC試験方法1に従って試験される時に電荷密度が1平方メートル当たり少なくとも約10micrcolombs(mC/m2)である繊維の不織ウェブを含む。
【0033】
別の好ましい実施態様において、エレクトレット物品のTSDCスペクトルは、TSDC試験方法2によって測定したとき、物品の融解温度より約15℃〜30℃、より好ましくは約15℃〜25℃低い温度でピークを示す。前記ポリマーがポリプロピレンである時、TSDCは約130℃〜140℃でピークを示す。
【0034】
更に別の好ましい実施態様において、エレクトレット物品のTSDCスペクトルは、TSDC試験方法3によって測定したとき、約30℃未満の半値幅を有するピークを示し、より好ましくは約25℃未満、更により好ましくは約20℃未満の半値幅を有するピークを示す。前記ポリマーがポリプロピレンである場合、上述の狭いピークは約138〜142℃でその最大値を有する。
【0035】
別の好ましい実施態様において、エレクトレット物品は、TSDC試験方法4によって測定したとき、ポーリング時間の1〜5分にわたり、及び/または5〜10分にわたり電荷密度の増大を示す。エレクトレット物品は繊維の形であってもよく、多数のこれらの繊維がエレクトレットフィルターに形成されてもよい。エレクトレットフィルターは、支持構造と組み合わせた少なくとも若干のエレクトレット繊維を含有する不織ウェブの形を取ってもよい。いずれの場合も、エレクトレット物品に若干の非エレクトレット材料を組み合わせることができる。例えば、支持構造は、非エレクトレット繊維または非エレクトレット、不織支持ウェブであってもよい。エレクトレットフィルターは好ましくは、帯電した溶融吹込微小繊維を含有する不織エレクトレットウェブである。
【0036】
エレクトレットフィルターウェブはまた、より嵩だかな、より密度が低いウェブを提供するステーブルファイバーを含んでもよい。ステーブルファイバーを不織ウェブに組み入れる方法は、ハウザーの米国特許第4,118,531号に記載されているように実施できる。ステーブルファイバーを用いる場合、ウェブは、好ましくは90重量パーセントより少ないステーブルファイバー、より好ましくは70重量パーセントより少ないステーブルファイバーを含有する。簡素さ及び最適性能のために、エレクトレットウェブはいくつかの場合には、本質的に溶融吹込繊維からなり、ステーブルファイバーを含有しない。
【0037】
エレクトレットフィルターは更に、アルミナまたは活性炭などの収着剤微粒子を含有してもよい。前記微粒子をフィルターに加え、フィルターを通過する気流から気体汚染物質を取り去るのを助けることができる。このような微粒子配合ウェブは、例えば、ブラウンの米国特許第3,971,373号、アンダーソンの第4,100,324号及びコルピンらの4,429,001号に記載されている。微粒子材料が添加される場合、ウェブは好ましくは、80容積パーセントより少ない微粒子材料、より好ましくは60容積パーセントより少ない微粒子材料を含有する。エレクトレットフィルターが気体汚染物質を取り去る必要がない実施態様においては、フィルターは溶融吹込繊維だけを含有することがある。
【0038】
エレクトレットフィルターを形成するために用いた材料は望ましくは、電気伝導率を増大させるか、ないしは他の方法で物品が静電荷を受容及び保持する能力を妨げる帯電防止剤などの材料を実質的に含まない。更に、エレクトレット物品は、電気伝導率を増大させることがあるγ線、UV照射、熱分解、酸化などへの暴露などの不必要な処理にかけられるべきではない。従って、好ましい実施態様において、エレクトレット物品は、γ照射または他のイオン化照射に暴露されずに作製され、用いられる。
【0039】
溶融吹込繊維から作製されたエレクトレットフィルターは一般に、基本重量が平方メートル当たり約10〜500グラム(g/m2)、より好ましくは約10〜100g/m2である。非常に緻密なフィルターは帯電することが難しいことがあり、非常に軽いかまたは非常に薄いフィルターはもろいか、または不十分な濾過能力を有することがある。多くの用途に対して、エレクトレットフィルターは厚さ約0.25〜20ミリメートル(mm)、一般に厚さ約0.5〜2mmである。これらの基本重量及び厚さのエレクトレットフィルターは、マスクに特に有用である場合がある。
【0040】
本発明のフィルターは好ましくは、実施例の節に記載したようにDOPフィルターウェブ負荷試験方法1によって測定するとき、初期DOP透過が5%より小さく、平均Min@Chlが200mgDOPより多く、より好ましくは400mgDOPより多い。表及び実施例に用いられている「平均」は、フィルターウェブの全幅にわたり等間隔に離隔した部分から切り分けた4〜6つの試料で行なった測定値の平均である。試料の何れの他の組についても、平均は、デボアーの『Probability and Statistics for Engineering and the Sciences』、ブルックス/コールパブリッシングカンパニー(1987年)に記載されているように選択され「t試験」を用いて負荷試験され、1つの標準偏差内の統計学的に有意な平均を求める適当な数の試料平均Min@Chl値と定義される。
【0041】
すぐれた濾過性能が好ましい本発明のフィルターによって達せられ、平均を取らずに別々にみた各フィルター(以下、単に「各フィルター」と呼ばれる)のMin@Chlが、500mgDOPより多く、より好ましくは約600mgDOPより多く、更により好ましくは約800〜1000mgDOPより多い。これらのフィルターは好ましくは、実施例の節に記載したように、負荷試験方法1の方法によって測定したとき、圧力損失が13mmH2Oより少なく、より好ましくは10mmH2Oより少なく、更により好ましくは8mmH2Oより少ない。
【0042】
DOP透過は一般に、自動化フィルター試験機(AFT)として周知の計測器で測定される。DOPエーロゾルがフィルターに達して電子機器が安定するために必要とされる初期設定時間が必要とされる。初期DOP透過は、初期暴露の間、通常6〜40秒間、ウェブを透過するDOP%を指し、その間試験装置は平衡を保っている。初期DOP透過は、内蔵プログラムを用いてAFTによって与えられる第1の読取り値である。本発明のフィルターは、少なくとも検出可能な透過(すなわち、実施例の節に記載したAFT計測器に対して約0.001%より多い透過)を有する。
【0043】
マスクにおいて、繊維エレクトレットウェブを、例えば、成形されたまたは曲がった半面マスク、置き換え可能なカートリッジまたはカニスタのためのフィルタエレメント、またはプレフィルターの形で、特別に造形または収容してもよい。
【0044】
本発明のマスク10の例は、図10及び11に示される。マスクのマスク部17は、曲線状、半球状の形状であってもよく、または、必要に応じて他の形状を取ることができる(例えば、米国特許第5,307,796号及び4,827,924号を参照のこと)。マスク10において、エレクトレットフィルター15は、被覆ウェブ11と内部造形層16との間に挟持される。造形層16は、マスク10に対する構造体及び濾過層18に対する支持体を提供する。造形層16は、濾過層18の内側及び/または外側に位置していてもよく、例えば、カップ形の形状に成形された熱接着性繊維の不織ウェブから作製することができる。前記造形層は、周知の手順に従って成形されてもよい(例えば、米国特許第5,307,796号を参照のこと)。造形層は典型的には、金型内で加熱時に造形層が金型の外形に適合し、室温に冷却時にこの外形を保持するように、より低融点の材料の鞘材によって囲まれたポリエチレンテレフタレートなどのより高融点の材料の芯材を有する複合繊維から作製される。フィルター層などの別の層と一緒に押圧される時、低融点の鞘材料はまた、前記層を互いに接着するのに役立つことがある。装着者の顔の上に心地よくマスクを保持するために、マスク本体は、紐12、結束糸、マスクハーネスなどをそれに取付けることができる。アルミニウムなどの金属の柔軟な軟質バンド13をマスク本体17上に設けて、それを装着者の鼻の上に所望の取付け状態でマスクを保持するように造形することができる(例えば、米国特許第5,558,089号を参照のこと)。マスクはまた、付加的な層、弁(例えば、米国特許第5,509,436号を参照のこと)、成形面片などの付加的な特徴を有してもよい。本発明の改善されたエレクトレットフィルターを組み入れることができるマスクの例には、米国特許第4,536,440号、4,827,924号、 5,325,892号、4,807,619号及び4,886,058号及び米国特許出願第08/079,234号に記載されているマスクなどがある。
【0045】
約180平方センチメートル(cm2)の表面積を有する本発明のマスクのMin@Chlは、液体微粒子に対する負圧マスクを試験する全米職業保安・健康協会の微粒子フィルター透過方法(方法APRS−STP−0051−00、ウェストバージニア州、モーガンタウン、NIOSH安全リサーチ課、1995年5月31日)を用いて試験するとき、400ミリグラム(mg)DOPより多く、より好ましくは、600mgDOPより多い。マスクは好ましくは、5%より少ない初期DOP透過を示す。この方法に従って試験されたマスクは好ましくは、圧力損失が13mmH2Oより少なく、より好ましくは10mmH2Oより少なく、更により好ましくは8mmH2Oより少ない。表面積がより大きいマスクは、露出表面積を180cm2に低減させることによってこの基準に従って試験される。より小さいマスクをこの基準に従って試験するために、約180cm2の全露出面積を有するいろいろなマスクのためにホルダーを適合させる。
【0046】
約150cm2の表面積を有するこの発明のフィルターエレメントのMin@Chlは、NIOSH方法APRS−STP−0051−00を用いて試験するとき、300mgDOPより多く、より好ましくは、450mgDOPより多い。マスク上で対の形で用いられるフィルターは、その対の単一フィルターを用いて試験される。この方法に従って試験されたフィルターは好ましくは、5%より少ない初期DOP透過を示す。前記フィルターは好ましくは、圧力損失が13mmH2Oより少なく、より好ましくは10mmH2Oより少なく、更により好ましくは8mmH2Oより少ない。
【0047】
約65cm2の表面積を有するこの発明のプレフィルターのMin@Chlは、NIOSH方法APRS−STP−0051−00を用いて試験するとき、170mgDOPより多く、より好ましくは、255mgDOPより多い。マスク上で対の形で用いられたプレフィルターは、その対の単一フィルターを用いて試験される。前記プレフィルターは好ましくは、5%より少ない初期DOP透過を示す。この発明に従って試験された前記プレフィルターは好ましくは、圧力損失が17mmH2Oより少なく、より好ましくは14mmH2Oより少なく、更により好ましくは12mmH2Oより少ない。
【実施例】
【0048】
全体的な試料の作製及び試験
ウェブの押出し
以下の説明は、ポリマー及び性能増強添加剤を含有するエレクトレット物品の「作製方法」の特定の好ましい実施態様を例示する。これらの実施例の物品は、溶融吹込条件下で押出され、採取されて吹込微小繊維(BMF)ウェブを形成する、ポリプロピレン及びフルオロケミカルのブレンドから作製される不織フィルターウェブである。フルオロケミカル溶融添加剤をポリプロピレンとともに双スクリュー押出機のスロートに供給し、約11重量パーセントのフルオロケミカルを含有する溶融流を生じさせた。前記ポリプロピレンのバルクを、第2の双スクリュー押出機のスロートに添加した。いくつかの場合には、過酸化物も計量しながら供給して粘度を低減させる。フルオロケミカルを保有する押出機の押出し量は、全押出し量をフルオロケミカル溶融添加剤約1.1重量パーセントにする速度でポリプロピレンを保有する押出機に送り込まれた。
【0049】
フルオロケミカル溶融添加剤を含有する溶融流の温度は、すべての場所で290℃より低い温度に維持された。ウェブそれ自体は、ヴァンウェンテらに記載されているのと同様の従来の方法で製造されたが、ただし、ドリルドオリフィスダイを用いた。
【0050】
急冷
2つの急冷方法を用い、以下に記載する。
方法A
4インチ隔置したユニジェットスプレーノズルチップ No. 9501を有する13個の独立フラットファンノズルを含有する吹付けバーを、ダイ面から0.75インチ離し、ダイを出る溶融ポリマー流より2.5インチ下に取り付けた。各ノズルを、水滴のファンが互いにぶつからず水圧が均一な吹付けを維持する最小レベルに設定されるように、クロスウェブ方向から10°回転させた。
【0051】
方法B
ニュージャージー州、ペンソーケンのソニックエンバイアロンメンタルコーポレーション製のNo.SDC 035噴霧スプレーノズルを有する音波吹付け装置の吹付けバーを、センターラインより約7インチ下、及びダイチップの約1インチ下流に取り付けた。空気圧を、平方インチ当たり50ポンド(psi)、水圧を30psiに設定した。水流量計は、特に指示しない限り、各ノズルが水30ml/分を供給するように調節した。各ノズルは、ダイを出る溶融ポリマー流に円錐形の水滴を供給した。
【0052】
アニール
押出されたウェブを更に、炉内での滞留時間が約4.5分になる速度で平均温度約150℃に加熱された炉にそれらを通すことによって処理した。このアニールプロセスは、ポリマーの付加的な結晶化を引き起こし、フルオロケミカル溶融添加剤を繊維の界面に拡散させる。
【0053】
帯電
アニール後に、ウェブを更に、30の線状クロスウェブコロナ源と接地電極との間にコロナ源の長さ1cm当たりコロナ電流2.6×10up−3ミリアンペア及び滞留時間約15秒で提供された高電圧電界を用いてコロナ帯電することによって処理した。
【0054】
ウェブの規格
ウェブの厚さを、直径10センチのディスク上で230gの重りを用いてASTM D1777−64に従って測定した。圧力損失を、ASTM F778に従って測定してもよい。基礎重量を、直径5.25インチ(13.3cm)のディスクの重りから計算した。
【0055】
DOP負荷試験
ジオクチルフタレート(DOP)捕集の測定を行なうために、制御されたDOPエーロゾルに長時間暴露する間に試料を通るDOPエーロゾルの透過の記録をとった。測定は、DOPエーロゾルに適合させた自動化フィルター試験器(AFT)モデル#8110または#8130(ミネソタ州、セントポールのTSIインコーポレーテッド製)を用いて行なった。
DOP透過%は、以下のように規定される。
DOP透過%=100(下流のDOP濃度/上流のDOP濃度)、
式中、上流及び下流の濃度を光散乱によって測定し、DOP透過パーセントをAFTによって機械的に計算した。8110及び8130AFT計測器によって生み出されたDOPエーロゾルは、標準フィルターによって測定すると、上流の濃度が立方メートル当たり100mgである公称単一分散0.3マイクロメータの質量中位径であった。試験される試料は全て、エーロゾルイオン発生器を止めてフィルターウェブ試料を通る流量を毎分85リットル(LPM)にして試験された。
【0056】
DOPフィルターウェブ負荷試験方法1
測定を、DOPエーロゾルに適合させたAFTモデル#8110を用いて行なった。押出されたウェブは、直径6.75インチ(17.15cm)のディスクに切り分けた。2つのディスクを直接上に重ね合わせ、ディスクを、直径6.0インチ(15.2cm)の円を前記エーロゾルに暴露するように、試料ホルダーを取付けた。面速度は毎秒7.77センチメートル(cm/秒)であった。
【0057】
試料を、試料ホルダーに挿入する前に秤量した。それぞれの試験を、継続的なDOPエーロゾル暴露によってDOP透過パーセントを増大させるはっきりした傾向があるまで、または少なくともDOPの200mgに暴露するまで続けた。DOP透過パーセント及び対応する圧力損失データを、付属コンピュータに送り、そこにそれらを格納した。DOP負荷試験の終了後に、装填した試料を再び秤量して繊維ウェブ試料上で採取されたDOPの量の記録をとった。これは、繊維ウェブ上に残ったDOP濃度の測定値及びウェブを通るエーロゾル流量の測定値から推定されるDOP暴露のクロスチェックに役立つ。
【0058】
得られた捕集データをスプレッドシートに読み込み、阻止量(Min@Chl)を計算した。Min@Chlは、DOP透過パーセントがその最小値に達する点でフィルターウェブ上に残った全DOP阻止量またはDOP質量(すなわち試料上及び内部全体にわたるDOPの質量)であると定義される。このMin@Chlは、DOP捕集に対するウェブ性能の特性を決定するために用いられ、Min@Chlがより大きくなると、DOP捕集性能はより良好である。
【0059】
DOPフィルターウェブ負荷試験方法2
方法2は、試料を直径5.25インチ(13.34cm)に切分け、直径4.5インチ(11.4cm)の円を露出したままにして試料ホルダー内に置き、面速度が13.8cm/秒であったことを除き、1と同じであった。
【0060】
いずれの方法においても、同等のフィルター試験器を用いて試験を行なうことができる。上にイオン発生器を有するAFTモデル番号TSI8110を用いて露出面が102.6cm2、流量が85LPMで測定したとき8〜20mm H2Oの圧力損失があり、検出可能な透過が36%DOP透過より少ないように単一層の瞬間的な濾過性能がなっている場合、フィルターウェブの二重層よりむしろ単一層を試験してもよい。どちらの方法も、同等の露出面積(すなわち方法2について102.6cm2)を有する濾過材を集成する試料ホルダーを用いることにより、表面積がより小さいフィルターを試験することを含む。
【0061】
ポリマー結晶化度の測定
結晶性のデータは、フィリップス竪形X線ディフラクトメーターの使用、銅Ka放射線及び散乱放射線の比例検出器の記録によって集められた。前記ディフラクトメーターは、可変的な入口スリット、固定受容スリット、及び回折ビームモノクロメータを備えた。X線発生装置を45kV及び35mAに設定して作動させた。ステップ走査は、0.05度のステップサイズ及び5秒のカウント時間を用いて5〜40度(2q)で行われた。試料を、両面塗布テープを用いてアルミニウムホルダー上に取り付け、ウェブの下に裏材料プレートまたは支持体を用いなかった。
【0062】
前述の観察された散乱データを散乱角及び強度値のx−y値の対に帰し、データ解析ソフトウェアOriginTM(マサチューセッツ州、ノースハンプトンのミクロカルソフトウェアインク製)を用いて分析表の調整にかけた。ガウスピーク形状モデルを使用して6つのアルファ−形ポリプロピレンピーク及び非晶質ピークの寄与率を記述した。いくつかのデータセットについては、単一の非晶質ピークは、非アルファ形散乱強度を十分に明らかにしなかった。これらの場合、観察された強度を完全に明らかにするために、付加的な幅の広い最大値を使用した。これらの幅の広い変曲は、主にポリプロピレンの準変形性(mesomorphic)の形のためであった(準変形性ポリプロピレンの考察についてはクルーガーらの米国特許第4,931,230号及びそこに引用された文献を参照のこと)。ポリプロピレンの準変形性の形による散乱寄与率は、非晶質散乱と組み合わせられた。結晶化度は、結晶ピーク面積の6〜36度(2q)の散乱角の範囲内の全散乱強度(非晶質+結晶質)に対する比として計算された。1の値は、100パーセントの結晶性を表し、ゼロは結晶性が存在しないことを表す。
【0063】
熱刺激放電電流(TSDC)
TSDC検査を、コネチカット州、スタンフォードのサーモールドパートナー,L.P.サーマルアナリシスインスツルメント製のピボット電極を有する、Solomat TSC/RMA モデル91000を用いて行なった。ウェブ試料を切り分け、Solomat TSC/RMAの電極間に置いた。Solomat計測器において、温度計を試料に隣接して、接触させずに配置した。ウェブ試料は、光学的に緻密であるのがよく、試料ウェブを貫通する可視的な穴がないのがよい。試料は、上部接触電極を完全に覆うのに十分な大きさであるのがよい。電極は直径約7mmであるため、試料を直径7mmより大きく切り分けた。電極との良好な電気接触を確保するために、ウェブ試料を厚さ約1/10に圧縮することができる。空気を試料チャンバーから排気し、約1100の圧力のヘリウムと入れ替える。液体窒素冷却を用いる。
【0064】
TSDC試験方法1
物品が、上述された機器で毎分2.5キロボルト(kV/mm)の電場印加で1分間、100℃でポーリング処理される。電場がONの状態で、試料を−50℃に(計測器の最大速度で)急速に冷却する。前記試料は電界をOFFにした状態で5分間−50℃に保持され、次に、放電電流を測定する間に3℃/分に加熱する。電荷密度を、選択されたピークのそれぞれの側の最小値の間に基線を引き、ピーク下のその面積を積分することによってそれぞれのTSDCスペクトルのピークから計算することができる。
【0065】
TSDC試験方法2
ポーリング処理されていない物品の放電電流を、25℃から出発して3℃/分の速度で加熱して測定する。前記物品からの2つの試料を同様に試験したが、同試料を電極の間に置く時に向かい合った向きに方向付けする。ピークの位置を、約110℃より高い温度で正の放電電流を生じるように方向付けした物品について測定する(例えば、図15のB側)。
【0066】
物品の融解温度を、10℃/分の加熱速度で行なった示差走査熱量測定(DSC)によって求めるが、それは第2のDSC加熱サイクルで観察される溶融によって生じたピーク最大値(すなわち、融解温度より高い温度に加熱し、前記物品を冷却して凍結し、再加熱した後に観察されたピーク)と定義される。
【0067】
TSDC試験方法3
試料を方法2のTSDC法によって調べ、試料の正しい方向付けを確認した。次に、物品を、方法2でより低温のピークの正の放電電流を生じる方向にSolomat TSC中で方向付けする。物品を方法1に従って試験したが、ただし、各々の試料を1、5、10または15分間、100℃でポーリング処理する。それぞれのピークの半高におけるピークの幅の値を計算するために、0〜約30℃の曲線の傾きに対して基線を引き、半高におけるピークの幅の値を測る。
【0068】
TSDC試験方法4
この方法は方法3と同じであったが、ただし、各ポーリング時間における物品の電荷密度を計算するために、選択されたピークのそれぞれの側の最小値の間に基線を引き、またはピークの高温側の最小値が存在しない場合、曲線が電流ゼロと交差するまたは交差すると推定されるところに基線を引き、ピーク下のその面積を積分する。
【0069】
比較例1−3
比較例1−3は、改善された捕集性能を、比較的低い結晶化度を有する、ポリマー及び性能増強添加剤含有組成物によって達成できることについて説明する。
【0070】
実施例1
不織フィルターウェブを、毎時50ポンドの速度(ポンド/時間、毎時23キログラム(kg/時間))及び溶融温度288℃で48インチ(121.9cm)のドリルドオリフィスダイを用いて、エクソンケミカルカンパニー製のエクソンエスコレン 3505G、及びフルオロケミカル
【化2】
から作製した。前記ウェブは、基本重量が平方メートル当たり71グラム、厚さ1.3ミリメートル(mm)及び13.8cm/sの面速度において測定したとき圧力損失6.6mmH2Oであった。上述のように、前記ウェブをアニール及び帯電させた後、DOP負荷試験を、ウェブの幅の全体にわたり6つの位置から取った直径5.25インチ(13.34cm)の2層の試料上で行なった。ポリプロピレンの結晶化度を、アニールの前(位置1、4及び6)及びアニールの後(位置1−6)にウェブの同じ6つの位置から切り分けた試料について求めた。6つの位置についての捕集データ(Min@Chlによる)及び結晶化度を表1に示し、位置1、4及び6についてのアニールしない結晶化度対Min@Chl値を図2にプロットする。
【0071】
【表1】
【0072】
位置1、4及び6について表1の値及び図2のプロットに示すように、 DOP捕集性能(Min@Chlによる)とアニールする前のウェブの結晶化度との間に相関関係がある。アニールする前の結晶性が低くなるとと、それだけMin@Ch1の値が大きくなる。他方、表1に示すように、アニール後のウェブの結晶化度と DOP捕集性能(Min@Chlによる)との間には相関関係がない。
【0073】
実施例2
BMFウェブを実施例1に記載したように作製及び処理した。前記ウェブは、基本重量が平方メートル当たり74グラム、厚さ1.4ミリメートル(mm)及び13.8cm/sの面速度において測定したとき圧力損失7.0mmH2Oであった。前記ウェブを、実施例1と同様にDOP捕集を試験し、結晶化度について分析し、得られたデータを表2及び図3に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
また、表2及び図3の値は、アニールしない組成物のより低い結晶化度はより良好な捕集性能と相関関係があるが、アニールしたフィルターについては相関関係が観察されない一般的な傾向を示す。
【0076】
実施例3
BMFウェブを実施例1に記載したように作製及び処理したが、ただし、フィナオイルアンドケミカルカンパニー製のFina 3860ポリプロピレン樹脂を、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンを含有する過酸化物濃縮物を押出機中に同時に供給し、ポリプロピレンの溶融レオロジー及び溶融吹込ウェブの物理的なパラメータを制御した。前記ウェブは、基本重量が平方メートル当たり73グラム、厚さ1.4mm及び毎分85リットルで測定したとき圧力損失7.0mmH2Oであった。前記ウェブを、実施例1と同様に負荷試験し、結晶化度について分析し、得られたデータを表3及び図4に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
また、表3及び図4の値は、アニールしない組成物のより低い結晶化度はより良好な捕集性能と相関関係があるが、アニールしたフィルターについては相関関係が観察されない一般的な傾向を示す。
【0079】
実施例4−8
実施例4−8は、アニールしない繊維(すなわち中間組成物)の急冷または低結晶性がアニールされたエレクトレットフィルターウェブのすぐれた油ミスト捕集特性と相関関係があることを示す。
【0080】
実施例4
BMFウェブを実施例1に記載したように作製及び処理した。前記ウェブは、基本重量が平方メートル当たり69グラム、厚さ1.3mm及び13.8cm/sの面速度において測定したとき圧力損失6.2mmH2Oであった。十分なウェブを更に加工及び試験するために採取した後、押出し物に上述の方法Aを用いて水を吹付けた。逆浸透及び脱イオンによって精製した水を用いた。この実験において、吹付けバーは、ダイの幅の約2/3だけであった。コレクタを約12〜約8インチ移動させ、所望のウェブのパラメータを維持した。前記ウェブを、実施例1と同様にDOP捕集を試験し、結晶化度について分析し、得られたデータを表4A及び4B及び図5に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
表4A及び4Bのデータは、急冷が押出し繊維の結晶化度を低減させることを示す。低結晶化度組成物をアニールすることが、アニール及び帯電したフィルターウェブの捕集性能を改善する。前記データは更に、結晶化度が約0.3より小さいアニール組成物がすぐれた捕集性能を有するエレクトレットフィルターをもたらすことを示す。より詳しくは、結晶化度が約0.3より小さいアニールウェブは、平均Min@Ch1が200mgより多いフィルターをもたらし、結晶化度が約0.3より大きいアニールウェブは、平均Min@Ch1が200mgより少ないフィルターをもたらす。
【0084】
実施例5
BMFウェブを実施例1に記載したように作製及び処理したが、ただし、押出し量が毎時100ポンドであり実施例3におけるように過酸化物を添加して、ポリプロピレンの溶融レオロジー及び溶融吹込ウェブの物理的なパラメータを制御した。前記ウェブは、基本重量が平方メートル当たり73グラム、厚さ1.3mm及び面速度13.8cm/sで測定したとき圧力損失6.6mmH2Oであった。十分なウェブを更に加工及び試験するために採取した後(表5Aの実施例を参照のこと)、押出し物に上述の方法Bを用いて水を吹付けた。前記吹付けバーはウェブの全体に及び、前記ウェブは、基本重量が平方メートル当たり74グラム、厚さ1.3mm及び毎分85リットルで測定したとき圧力損失6.2mmH2Oであった。コレクタを12〜11インチ移動させ、ウェブのパラメータを維持した。未精製水道水を用いた。前記ウェブを、実施例1と同様にDOP捕集を試験し、結晶化度について分析したが、ただし、6.75インチ(17.15cm)の円を負荷試験ために用い、得られたデータを表5A及び5B 及び図6に示す。
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
実施例4と同様に、表5A及び5Bのデータは、急冷がアニールしないウェブの結晶化度を低減させ、アニール及び帯電したウェブの捕集性能を改善することを示す。前記データは更に、結晶化度が約0.3より小さいアニールウェブは平均Min@Ch1が200mgより多いフィルターをもたらし、結晶化度が約0.3より大きいアニールウェブは、平均Min@Ch1が200mgより少ないフィルターをもたらすことを示す。前記のデータはまた、結晶化度が約0.1であるようなより低結晶性の組成物は更に改善された捕集性能につながることを示す。例えば、いくつかのエレクトレットフィルターは、Min@Ch1が500mgより多いことがある。
【0088】
実施例6
BMFウェブを実施例1に記載したように作製及び処理した。前記ウェブは、基本重量が平方メートル当たり73グラム、厚さ1.3mm及び面速度13.8cm/sで測定したとき圧力損失7.0mmH2Oであった。十分なウェブを更に加工及び試験するために採取した後、押出し物に上述の方法Bを用いて実施例5と同様に水を吹付けた。コレクタを10〜8.5インチ移動させ、ウェブのパラメータを維持した。水を吹付けたウェブは、基本重量が平方メートル当たり71グラム、厚さ1.4mm及び毎分85リットルで測定したとき圧力損失6.6mmH2Oであった。前記ウェブを、実施例5と同様にDOP捕集を試験し、結晶化度について分析し、得られたデータを表6A及び6B及び図7に示す。
【0089】
【表8】
【0090】
【表9】
【0091】
実施例4−7と同様に、表6A及び6Bのデータは、急冷がアニールしないウェブの結晶化度を低減させ、アニール及び帯電したウェブの捕集性能を改善することを示す。前記データは更に、結晶化度が約0.3より小さいアニールウェブは平均Min@Ch1が200mgより多いフィルターをもたらし、結晶化度が約0.3より大きいアニールウェブは、平均Min@Ch1が200mgより少ないフィルターをもたらすことを示す。前記のデータはまた、急冷した材料から作製されたいくつかのエレクトレットフィルターは、Min@Ch1が500mgより多いことがあり、また、Min@Ch1が800mgより多いものもあることを示す。
【0092】
実施例7
BMFウェブを、方法Bを用いて水を吹付け、及び吹付けずに実施例6に記載したように作製及び処理した。この実施例については、水を逆浸透及び脱イオンによって精製した。前記ウェブの規格は、実施例6の場合と同様であった。前記ウェブを、実施例6と同様にDOP捕集を試験し、結晶化度について分析し、得られたデータを表7A及び7B及び図8に示す。
【0093】
【表10】
【0094】
【表11】
【0095】
実施例4−6と同様に、表7A及び7Bのデータは、急冷がアニールしないウェブの結晶化度を低減させ、アニール及び帯電したウェブの捕集性能を改善することを示す。前記データは更に、結晶化度が約0.3より小さいアニールウェブは平均Min@Ch1が200mgより多いフィルターをもたらし、結晶化度が約0.3より大きいアニールウェブは、平均Min@Ch1が200mgより少ないフィルターをもたらすことを示す。前記のデータはまた、急冷した材料から作製されたいくつかのエレクトレットフィルターは、Min@Ch1が500mgより多いことがあり、また、Min@Ch1が800mgより多いものもあることを示す。
【0096】
実施例8
BMFウェブを、方法Bを用いて水を吹付け、及び吹付けずに実施例7に記載したように作製及び処理した。前記ウェブの規格は、実施例7の場合と同様であった。前記ウェブを、前の実施例と同様にDOP捕集を試験し、結晶化度について分析し、得られたデータを表8A及び8B及び図9に示す。
【0097】
【表12】
【0098】
【表13】
【0099】
実施例4−7と同様に、表8A及び8Bのデータは、急冷がアニールしないウェブの結晶化度を低減させ、アニール及び帯電したウェブの捕集性能を改善することを示す。前記データは更に、結晶化度が約0.3より小さいアニールウェブは平均Min@Ch1が200mgより多いフィルターをもたらし、結晶化度が約0.3より大きいアニールウェブは、平均Min@Ch1が200mgより少ないフィルターをもたらすことを示す。前記のデータはまた、急冷した材料から作製されたいくつかのエレクトレットフィルターは、Min@Ch1が500mgより多いことがあることを示す。表9A及び9Bは、急冷しない及び急冷した試料について実施例4−8の平均Min@Chlデータを示す。
【0100】
【表14】
【0101】
【表15】
【0102】
表9A及び9Bの平均データは、前の表に示した結晶化度と共に、急冷が約0.3より小さいアニールしないウェブの結晶化度を低減させることがあり、更に、結晶化度が約0.3より小さいアニールウェブは平均Min@Ch1が200mgより多いフィルターをもたらし、結晶化度が約0.3より大きいアニールウェブは、平均Min@Ch1が200mgより少ないフィルターをもたらすことを示す。
【0103】
実施例9及び10
実施例9及び10は、性能増強添加剤を添加することにより、TSDCスペクトルに強い信号を生じることを示す。不織ウェブを、(急冷を含む)実施例4に記載したように作製した。第2の同じように作製したが、性能増強添加剤を用いなかった。両方のウェブ試料を、TSDC試験方法1の方法によって検査した。性能増強添加剤を含有する試料は、約110℃で有意の放電ピークを示した。比較すると、性能増強添加剤を含まないウェブは有意のピークを示さなかった。この観察により、性能増強添加剤を含有する試料によって生み出された放電電流が加熱時に性能増強添加剤の減極のためであることが示唆される。性能増強添加剤はポーリング工程において分極化されると考えられる。
【0104】
実施例11−15
実施例11−15は、ポーリング後に急冷したウェブは急冷したウェブより高い電荷密度を有することを示す。 試料ウェブa(急冷し、アニールしない)及びc(急冷し、アニールする)は、実施例4に記載した、位置4のウェブと同じであった(ただしコロナ帯電しない)。試料b(急冷せず、アニールしない)は、実施例2に記載した、位置4のウェブと同じであり(ただしコロナ帯電しない)、試料d(アニールされて、急冷しない)は、実施例2に記載した、位置6のウェブと同じであった(ただしコロナ帯電しない)。すべてのウェブ試料を、TSDC試験方法1の方法によって検査した。
【0105】
得られたTSDCスペクトルを図12に示す。電荷密度を、選択されたピークのそれぞれの側の最小値の間に基線を引き、ピーク下の面積を積分することによって、それぞれのTSDCスペクトルのピークから計算することができる。図12に示したように、TSDCスペクトルは概して、温度が試験される物品の融点に近づくときに急に増大する放電電流を示す。
【0106】
実施例7に記載したような未帯電のアニールしたウェブの多数の試料を、急冷しない(位置2及び6)及び急冷した(位置3、4、5及び6)ウェブの両方について実施例11−15のために記載したように試験した。前記急冷しないウェブのいずれも平方メートル当たり10マイクロクーロンより大きい電荷密度を有しなかった。アニールしないウェブの結晶化度対アニールした、未帯電ウェブの電荷密度を図13aにプロットする。図13aは、比較的低い結晶化度を有するアニールしないウェブが、TSDC試験方法1によって確認するとき、より高い電荷密度を有することを示す。
【0107】
DOP捕集性能(Min@Chlによる)アニール及び帯電したウェブ対アニールした、未帯電ウェブの電荷密度を図13bにプロットする。図13bは、TSDC試験方法1によって確認するとき、10mC/mup2より大きい電荷密度を有するアニールした、未帯電ウェブが帯電後にすぐれたDOP捕集性能を示すという非常に驚くべき結果を示す。
【0108】
実施例17及び18
実施例17及び18は、性能増強添加剤を用いずに作製した急冷した、及び急冷しないアニールした、コロナ帯電したウェブについて説明する。急冷した (a, b)及び急冷しない(a’,b’)ウェブを実施例4に記載したように作製したが、ただし、フルオロケミカル添加剤がウェブ中に存在していなかった。ポーリング処理しないウェブのTSDCスペクトルを試験方法2を用いて得て、図14に示す。放電電流の符号(正または負のどちらか)は、TSC計測器中のウェブの方向付けのコロナ帯電中の方向付けに対する関数である。
【0109】
実施例19及び20
実施例19及び20は、ポリマー及び性能増強添加剤から作製した急冷した、及び急冷しないアニール及びコロナ帯電したウェブについて説明する。急冷した(a,b)及び急冷しない(a’,b’)ウェブを実施例8、位置1、に記載したように作製した。前記ウェブを、TSDC試験方法2に記載したように、TSDCによって調べた。TSDC検査の結果を図15に示す。試験方法の一部として、試験される物品の融点をDSC によって確認し、この場合159℃であった。
【0110】
図15に示すように、約110℃ より高い温度で正の放電電流を示すように方向付けされる時、急冷したウェブ、aは、約137℃を中心とする比較的狭いピークを示す。このスペクトルは、急冷がアニール及び帯電したウェブの電荷閉じ込め部位のエネルギー分布を狭めることを表す。比較すると、急冷しないウェブ、a’のスペクトルは、電荷閉じ込め部位の比較的広い分布を示す。従って、本発明の物品は、TSDC試験方法2によって測定される時、前記物品の融点より約15〜30℃低い温度を中心とする電流ピークの特徴的な特性を示すことがある。
【0111】
上述のDOP負荷試験の結果が示すように、急冷した(または比較的低い結晶性)中間物から作製されたウェブは、急冷しない(または比較的高い結晶性)中間物から作製されたウェブと比較して、大幅に増強されたDOP捕集性能を有する。従って、発明者は驚くべきことだが、増強されたDOP捕集性能と相関する特有のスペクトルの特徴(すなわち、上記の電流ピーク)を発見した。
【0112】
実施例20及び21
実施例20及び21は、急冷した(図16a)及び急冷しない(図16b)物品のTSDCスペクトルを示し、本発明の特定の物品を特性を決定することができるスペクトルの特徴を示す。これらの例は、実施例8に記載したウェブ、位置3(急冷した、及び急冷しない)であった。TSDC検査をTSDC試験方法3に記載したように行なった。図16aの物品は、それらのポーリング処理時間においてだけ異なっている:a−1分、b−5分、c−10分、及びd−15分。同様に、図16bの物品は、それらのポーリング処理時間においてだけ異なっている:a’−1分、b’−5分、c’−10分、及びd’−15分。
【0113】
図16aのTSDCスペクトルは、それぞれ5、10及び15分のポーリング時間について18(b)、14(c)、及び19(d)の半高におけるピークの幅を示す。これらの3つのピークは、140または141℃で最大値を有する。比較すると、図16bの急冷しない比較例は、5、10及び15分のポーリング時間について、それぞれ40(b’)、32(c’)、及び34(d’)の半高におけるピークの幅を示し、それぞれ、121、132及び136℃でピーク最大値を示す。急冷した物品のすぐれた捕集性能は、DOP負荷試験に関連して上述されている。
【0114】
従って、図16a及び16b及びDOP負荷試験は、(試験方法3によって測定したとき)30 ℃未満のTSDCピークの幅を特徴とする物品は、すぐれた油ミスト捕集性能と相関するという驚くべき発見を示す。これらの結果は、ポーリング処理された状態で電荷閉じ込めエネルギーレベルのより狭い分布を有する物品が、改善された捕集性能と相関することを示唆する。従って、より好ましい物品は、25℃ 未満、更により好ましくは20 ℃未満のピークの幅を有する。
【0115】
前記のデータはまた、少なくともポリプロピレン含有物品について、約138〜142℃のピーク位置を有する好ましい物品に関してピーク位置と捕集性能との間に相関関係があることを示す。
【0116】
実施例22及び23
別のTSDCデータセットが、実施例20及び21において記載したのと同様に作製及び試験した試料について得られた。電荷密度をTSDC試験方法4に記載したように各試験条件について計算し、表10を表にし、図17にプロットする。
【0117】
【表16】
【0118】
急冷した及び急冷しない物品の電荷密度を比較すると、試験方法4によって測定するとき、対応するDOP負荷試験は驚くべきことに、前記の物品がポーリング処理されるときの電荷密度の変化と捕集性能との間の相関関係を示す。図17にみられるように、急冷された(すぐれた捕集性能)物品(点線)は、1〜10分間物品がポーリング処理されるときに電荷密度の増加を示す。対照的に、急冷しない(より不十分な捕集性能)物品(実線)は、同じポーリング時間にわたり電荷密度の減少を示す。従って、本発明の好ましい物品の特徴は、TSDC試験方法4によって測定したとき、ポーリング時間の1〜5及び/または5〜10分にわたり電荷密度を増大させることである。
【0119】
本明細書に言及したすべての特許及び特許出願を、全体にわたり、本明細書に引用したものとする。
【0120】
本発明は、その精神及び範囲から外れることなくいろいろな修正及び変更を加えることができる。したがって、この発明は上記の実施例に制限されるものではなく、以下の請求項及びその何れかの相当物に示される制限条件によって制御されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明によるエレクトレットフィルター媒体を製造するプロセスを示すフローチャートである。
【図2】急冷しないがアニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料の「阻止量(minimum at challenge)」(すなわち、DOP透過パーセントが最小値に達する点でフィルターウェブ上に残ったジオクチルフタレート(DOP)のミリグラム(mg)単位での質量、以下、「Min@Chl」と略記)対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。実施例の節で詳細に説明するように、このデータは、フィルターの上流側及び下流側のDOP液体エーロゾルの濃度を測定する計測器中でフィルターウェブをDOP液体エーロゾルに暴露することによって得られた。透過パーセントは、下流のエーロゾル濃度を上流の濃度で割り、100を掛けて算出される。
【図3】急冷しないがアニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料のMin@Chl対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。
【図4】急冷しないがアニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料のMin@Chl対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。
【図5】急冷しないがアニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料のMin@Chl対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。
【図6】急冷しないがアニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料のMin@Chl対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。
【図7】急冷した及び急冷しない、アニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料のMin@Chl対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。
【図8】急冷した及び急冷しない、アニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料のMin@Chl対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。
【図9】急冷した及び急冷しない、アニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料のMin@Chl対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。
【図10】本発明のエレクトレットフィルターを組み入れるマスクまたは濾過顔面マスク10を示す。
【図11】マスク本体17の横断面図を示す。
【図12】1分間100℃で1ミリメートル当たり2.5キロボルト(kV/mm)の電界内でポーリング処理された未帯電ポリマー及び性能増強添加剤を含有するウェブの熱刺激放電電流(TSDC)スペクトルを示す。前記ウェブは、次の4つの加工条件を用いて製造された。a)急冷されるがアニールされない、b)急冷されず、アニールされない、c)急冷され、アニールされる、及びd)急冷されないがアニールされる。
【図13a】6つの未帯電ポリマー及び性能増強添加剤含有ウェブ試料の結晶化度対1分間100℃で1ミリメートル当たり2.5キロボルト(kV/mm)の電界内でポーリング処理された(帯電することなく)アニールした後の前記試料の電荷密度のプロットを示す。
【図13b】6つのアニールされた、帯電ポリマー及び性能増強添加剤含有ウェブ試料の(Min@Chlにおける)DOP捕集性能対1分間100℃で1ミリメートル当たり2.5キロボルト(kV/mm)の電界内でポーリング処理された(帯電することなく)アニールした後の試料の電荷密度とのプロットを示す。
【図14】性能増強添加剤を用いない、アニール及びコロナ帯電した、ポーリング処理しないポリマー含有ウェブのTSDCスペクトルを示す。試料a及びbは加工中に急冷されるが、試料a’及びb’は急冷されなかった。A側は、正の電流が放電される時に上側の電極と接触するウェブの側面を指し、B側は、上側の電極と接触する時に、負の電流を放電するウェブの反対側を指す。
【図15】アニール及びコロナ帯電した、ポーリング処理しないポリマー及び性能増強添加剤含有ウェブのTSDCスペクトルを示す。試料a及びbは加工中に急冷されるが、試料a’及びb’は急冷されなかった。A側は、上側の電極への接触に対して図14のA側と同じウェブの側面を指し、B側がウェブの反対側を指す。
【図16a】a)1分間、b)5分間、c)10分間及びd)15分間、100℃で1ミリメートル当たり2.5キロボルト(kV/mm)の電界内でポーリング処理された、アニール及びコロナ帯電した、急冷したポリマー及び性能増強添加剤含有ウェブのTSDCスペクトルを示す。
【図16b】a’)1分間、b’)5分間、c’)10分間及びd’)15分間、100℃で1ミリメートル当たり2.5キロボルト(kV/mm)の電界内でポーリング処理された、アニール及びコロナ帯電した、急冷しないポリマー及び性能増強添加剤含有ウェブのTSDCスペクトルを示す。
【図17】急冷しない(実線)及び急冷した(点線)アニール及びコロナ帯電したポリマー及び性能増強添加剤含有ウェブについて電荷密度対ポーリング時間のプロットを示す。
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレクトレット物品、エレクトレットフィルター、エレクトレットフィルターを使用するマスク、及び粒子をガスから除去、特にエーロゾルを空気から除去するのにエレクトレットフィルターを使用することに関する。この発明は特に、油ミスト(すなわち、液体エーロゾル)の存在下でエレクトレット安定性などの特性を改善したエレクトレットフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
科学者及び技術者は以前から、空気フィルターの濾過性能を改善することを目指している。最も効率的な空気フィルターのなかには、エレクトレット物品を用いるものがある。エレクトレット物品は、持続的または半永久的な電荷を示す。G・M・セスラー著、エレクトレット、スプリンガー出版、ニューヨーク、1987年を参照のこと。研究者たちは、フィルターに使用するためのエレクトレット物品の特性を改善するためにかなりの努力を注いでいる。改善されたエレクトレット物品の製造を目的とする広範な研究にもかかわらず、作業変数の作用は十分に理解されていず、概して、加工条件を変える作用は、予想不可能でないにしても難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エレクトレット物品は、加工工程に著しく影響を及ぼされることがある電荷安定性、捕集性能、湿気及び油暴露に対する耐性などの特別な特性必要条件を有し、それらは、不織布及び布状材料に概して無害または有益である。従って、広範な経験的データがない場合、特定の加工工程(例えば急冷)が得られた製品のエレクトレット特性に及ぼすことがある作用の有無を理解することは、しばしば非常に難しい。
【0004】
エレクトレットフィルター性能を改善すると報告されている1つの方法は、エレクトレット繊維を形成するために用いられるポリマー中に性能増強添加剤をブレンドすることである。例えば、米国特許第5,411,576号及び5,472,481号においてジョーンズらは、ポリマー及び溶融加工性フルオロケミカルのブレンドを押出して微小繊維ウェブを形成し、次いで、アニールまたはコロナ処理することによって作製されるエレクトレットフィルターを開示している。公開第96/26783号(米国特許第5,645,627号に対応する)においてリフシュッツらは、ポリマーと脂肪酸アミドまたはフルオロケミカルオキサゾリジノンフルオロケミカルとのブレンドを押出して微小繊維ウェブを形成し、次いで、アニールまたはコロナ処理することによって作製されるエレクトレットフィルターを報告している。
【0005】
エレクトレット物品の電荷特性を改善する他の技術が報告されている。例えば、米国特許第4,588,537号においてクラッセらは、電荷をエレクトレットフィルター中に導入するためにコロナ処理を用いたことを報告している。米国特許第5,496,507号においてアンガジュバンドらは、小水滴を不織微小繊維上に衝突させることにより、電荷がウェブに付与されたことを見い出し、ルソーらは公開第97/07272号において、ポリマーとフルオロケミカルまたは有機トリアジン化合物とのブレンドを押出して微小繊維ウェブを形成し、次いで、小水滴を衝突させて電荷を付与することによって作製され、それによって水流帯電(hydrocharged)ウェブ濾過性能を改善するエレクトレットフィルターを開示している。
【0006】
マツウラらは米国特許第5,256,176号において、エレクトレットに、電荷を適用し、引き続いて物品を加熱する交互の作業周期にかけることによって安定したエレクトレットを作製するプロセスを開示している。マツウラらは油ミスト捕集性能増強添加剤を有するエレクトレットを開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、ポリマー及び性能増強添加剤(他の成分も下記のように添加されてもよい)を含有するエレクトレット物品を提供する。エレクトレット物品は、例えば、繊維またはフィルムの形であってもよく、またはそれは、特にフィルターとして用いられる時、不織ウェブの形であってもよい。発明者は、ポリマー及び性能増強添加剤を含有する低結晶性組成物が、すぐれた特性を有するエレクトレットフィルターに変換され得るため、特に価値があることを発見した。下記のように、低結晶性組成物を、加工中に急冷する工程を導入することによって作製することができる。
【0008】
急冷することにより、急冷プロセスを用いない材料の秩序と比較して材料の秩序(例えば結晶性)が低減される。急冷工程は、溶融材料を所望の形状に変換するのと同時にまたはすぐ後に行なわれる。通常、材料は、ダイオリフィスを通して押出し、オリフィスを出たすぐ後に(一般に冷媒を押出し物に適用することによって)急冷することによって成形される。
【0009】
本発明はまた、ポリマー及び性能増強添加剤を含む固有のエレクトレット物品を提供するが、同物品の熱刺激放電電流(TSDC)スペクトルは、TSDC試験方法3によって測定するとき、約30℃の半値幅を有するピークを示す。これらの固有のTSDCスペクトルの特徴を示すエレクトレット物品を取り入れるエレクトレットフィルターは、驚く程すぐれた濾過性能を示すことができる。
【0010】
本発明は、エレクトレット物品を組み入れる物品を含み、また、粒状物質固体または液体エーロゾルを、本発明のエレクトレット物品を用いてガスから取り除く方法を含む。
【0011】
本発明は更に、本発明のエレクトレット物品を用いない同様に作られたフィルターで得られないすぐれた特性を示すエレクトレットフィルターを提供する。これらのフィルターは、ポリマー及び性能増強添加剤のブレンドから作製された繊維を含有し、それらはすぐれたジオクチルフタレート(DOP)液体エーロゾル捕集性能を示す。DOP液体エーロゾル捕集性能は、実施例の節で特定の試験に関連して規定される。好ましいフィルターは、フィルターの全体にわたり圧力降下を小さくすると同時に、増強された油ミスト捕集性能、エーロゾルまたは微粒子の透過の減少、及び液体エーロゾルの存在下での電荷安定性を示す。
【0012】
本発明のエレクトレット物品は、顔面マスクなどのマスク、家庭及び産業用冷房装置、加熱炉、空気クリーナ、真空クリーナ、医用及び送気管フィルター、及び車両中及びコンピュータ及びディスクドライブなどの電子装置における空気浄化系等、多数の濾過用途に使用することができる。
【0013】
本発明はまた、ポリマー及び性能増強添加剤のブレンドを含有するエレクトレット繊維を含有する不織ウェブと、マスク及びマスクの装着者の口及び鼻の上に付けるようになっているカップ状部材を人に取付けるための支持構造体と、を含むエレクトレットフィルターを含有するマスクを提供するものであり、液体微粒子に対する負圧マスクを試験する全米職業保安・健康協会の微粒子フィルター透過方法(方法APRS−STP−0051−00)を用いて試験するとき、前記マスクのMin@Chlが、400mgDOPより多く、前記マスクが約180cm2の露出表面積を有するか、または露出表面積が約180cm2になるように調整して試験される。エレクトレットフィルターを作製するのに有用な中間組成物もまた、本発明の態様である。前記中間組成物は、結晶のピーク強度の、6〜36度の散乱角の範囲についての全散乱強度に対する比によって測定したときに結晶化度が0.3より小さいポリプロピレン、及び性能増強添加剤からなる繊維の不織ウェブを含んでもよい。中間組成物を、90〜99.8重量パーセントの有機ポリマー及び0.2〜10重量パーセントの性能増強添加剤の混合物をブレンドし、押出すことによって作製してもよく、前記繊維は溶融吹込条件下でダイを通して押出され、不織ウェブとして採取されるが、前記繊維は採取される前に急冷される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のエレクトレット物品は、ポリマー及び性能増強添加剤を含有する。前記ポリマーは、非導電性熱可塑性樹脂、すなわち、抵抗率が1014ohm×cmより大きい、より好ましくは1016ohm×cmより大きい樹脂であってもよい。前記ポリマーは一時的でない、または持続する閉じ込められた電荷を保持する能力があるのがよい。前記ポリマーは、ホモポリマー、コポリマーまたはポリマーブレンドであってもよい。米国特許第4,588,537号においてクラッセらが報告しているように、好ましいポリマーには、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、線状低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート及びポリエステルなどがある。前記ポリマーの主成分は、ポリプロピレンが高い抵抗率を有し、空気濾過に有用な直径、良好な電荷安定性、疎水性、及び耐湿性を有する溶融吹込繊維を形成することができるため、好ましくはポリプロピレンである。他方、ポリプロピレンは一般に疎油性ではない。本発明のエレクトレット物品は好ましくは、物品の重量に対して、約90〜99.8重量パーセント、より好ましくは約95〜99.5重量パーセント、最も好ましくは約98〜99重量パーセントのポリマーを含有する。
【0015】
本発明において規定するように、性能増強添加剤は、エレクトレットフィルター中に形成された後にエレクトレット物品の油状エーロゾル濾過能力を増強する性能増強添加剤である。油状エーロゾルの濾過能力は、実施例の節に記載したDOP負荷試験によって測定される。個々の性能増強添加剤には、ジョーンズらの米国特許第5,472,481号及びルソーらの公開第WO97/07272号に記載されている性能増強添加剤などがある。性能増強添加剤には、米国特許第5,025,052号(クレーターら)に記載されているようなフルオロケミカルオキサゾリジノンの他、フルオロケミカルピペラジン、及びペルフルオロアルコールのステアラートエステルなどのフルオロケミカル添加剤などがある。エレクトレット特性を改善するそれらの実証済の有効性のために、性能増強添加剤は好ましくはフルオロケミカルであり、より好ましくはフルオロケミカルオキサゾリジノンである。好ましくは前記フルオロケミカルは、ポリマーの融点より高く押出し温度より低い融点を有する。加工上の問題点のために、ポリプロピレンを用いる時、フルオロケミカルの融点は好ましくは、160℃より高く、より好ましくは160℃〜290℃である。特に好ましいフルオロケミカル添加剤には、それぞれ以下の構造:
【化1】
を有する米国特許第5,411,576号に記載の添加剤A、B及びCなどがある。本発明のエレクトレット物品は好ましくは、物品の重量に対して約0.2〜10重量パーセント、より好ましくは約0.5〜5.0重量パーセント、最も好ましくは約1.0〜2.0重量パーセントの性能増強添加剤を含有する。
【0016】
ポリマー及び性能増強添加剤を、それらを溶融する前に固体としてブレンドしてもよいが、成分は好ましくは別々に溶融され、液体として互いにブレンドされる。あるいは、フルオロケミカル添加剤とポリマーの一部分とを、固体として混合し、溶融して比較的フルオロケミカル分の高い溶融ブレンドを形成してもよく、次に非フルオロケミカル含有ポリマーを配合される。
【0017】
次いで、溶融ブレンドをフィルムまたは繊維などの所望の形に造形する。一般に、溶融ブレンドはダイを通して押出すことによって造形され、同程度に好ましい実施態様とはいえないが、前記ブレンドを静電界での絞り成形などの別のプロセスによって造形することができる(例えば、インデックス81の会議レポートのY・トルーイレット著、『New Method of Manufacturing Nonwovens By Electrostatic Laying』、ウェブ形成の進歩、欧州使い捨て品及び不織布協会(European Disposables And Nonwovens Association)、アムステルダム、1981年5月5−7日を参照のこと)。好ましい押出しプロセスは2つの押出機を用い、このプロセスにおいて、約10〜約20重量パーセントのフルオロケミカル添加剤及び約80〜約90重量パーセントのポリマーを第1の押出機内でブレンドし、この比較的高フルオロケミカル含有量の溶融ブレンドを(フルオロケミカルを含有しない)溶融ポリマーと共に第2の押出機中に供給してブレンドを形成し、ダイオリフィスを通して押出す。前記高フルオロケミカル含有量の溶融ブレンドは好ましくは、溶融物質をダイを通して押出す直前に非フルオロケミカル含有ポリマーを配合される。これは、フルオロケミカルが高温に暴露される時間を最小に抑える。押出し中の温度は、所望の押出し物のレオロジーを提供すると共にフルオロケミカルの熱崩壊を避けるように制御されるのがよい。異なった押出機は一般に、異なった温度プロフィールを必要とし、実験が、特定の系のための押出し条件を最適にすることを必要とすることもある。ポリプロピレン/フルオロケミカルのブレンドについては、押出し中の温度は好ましくは、フルオロケミカルの熱崩壊を低減させるために約290℃より低い温度に維持される。押出機を用いる場合、それらは好ましくは、より十分に混合するために双スクリュー型であり、ワーナー&プフレイダラーまたはバーストーフ押出機などの市販の押出機であってもよい。
【0018】
溶融ブレンドを好ましくはダイを通して押出し、より好ましくは前記ブレンドを、溶融吹き込み条件下でダイを通して押出す。溶融吹き込みは、特に不織ウェブを製造する多数の利点を提供することが周知であり、本発明の物品を、従来技術に公知の溶融吹き込みプロセス及び機器を用いて作製することができる。繊維の溶融吹き込みは、最初はヴァンウェンテ著、「Superfine Thermoplastic Fibers」、Ind.Eng.Chem.、Vol.48、1342−46ページ、(1956年)に記載された。概して、本発明の溶融吹き込みは従来の方法を用いて行われるが、ただし改良点として、材料がダイを出る時に急冷される(冷却される)。
【0019】
好適な急冷技術には、水の吹付け、揮発性液体の吹付け、または冷気または二酸化炭素または窒素などの低温ガスとの接触などがある。一般に冷却液(液体またはガス)が、ダイオリフィスから約5センチメートル(cm)以内に配置されたノズルから吹付けられる。ダイを通して押出される材料の場合、冷却液を、ダイから押出されたすぐ後に(且つ、材料が採取される十分に前に)、溶融押出物に衝突させる。例えば、溶融吹込繊維の場合、溶融押出し物は不織ウェブの形で採取される前に急冷されなければならない。冷却液は好ましくは水である。水は水道水であってもよいが、好ましくは蒸留水または脱イオン水である。
【0020】
急冷工程の目的は、得られた物品中のポリマーの結晶化を最小にすることである。本発明者は、急冷された材料から作製されたエレクトレットフィルターが、引き続いてアニール及び帯電される時、予想外に良好な液体エーロゾル濾過性能を示すことを発見した。急冷工程は、同じ条件下で押出した急冷されないポリマーと比較してポリマーの結晶含有量を低減させる。急冷材料は好ましくは、X線回折によって確認するとき、低結晶化度を有する。好ましくは、急冷材料中のポリマーは、結晶のピーク強度の、6〜36度の散乱角の範囲についての全散乱強度に対する比によって測定したときに結晶化度が0.3より小さく、より好ましくは0.25より小さく、更により好ましくは0.2より小さく、更により好ましくは0.1より小さい。従って、エレクトレットフィルターを作製するための好ましい中間組成物を作製するために、90〜99.8重量パーセントの有機ポリマー及び性能増強添加剤の0.2〜10重量パーセントの混合物をブレンドして押出すが、その際、材料を溶融吹込み条件下でダイを通して押出して繊維を形成し、不織ウェブとして採取する。繊維は、水の吹付け、揮発性液体の吹付け、もしくは冷気または二酸化炭素または窒素などの低温ガスとの接触などの冷却プロセスによって、採取される前に急冷される。
【0021】
急冷後に、材料を採取する。材料が繊維の形である場合、それを採取、切断、及び不織ウェブにカード仕上げすることができる。溶融吹込繊維を一般に、回転ドラムまたは移動ベルトで不織ウェブとして採取することができる。好ましくは急冷及び採取工程は、採集された材料上に残留している液体(残留液体が存在する場合、それは一般に水である)過剰な急冷液体が存在しないように行われる。採取された材料上に残留している液体が貯蔵上の問題を引き起こすことがあり、急冷液体を除くためにアニール中に更に加熱する必要がある。従って、採集された材料は好ましくは、1重量パーセントより少ない急冷液体を含有し、より好ましくは残留した急冷液体を含有しない。
【0022】
前記急冷された材料を油ミストの存在下で静電荷安定性を増大させるためにアニールする。好ましくは、性能増強添加剤はフルオロケミカルなどの低エネルギー表面をもたらす物質であり、アニール工程は、添加剤を材料の界面(例えば、ポリマー−空気の界面、及び結晶相及び非晶質相の間の境界)に拡散させるのに十分な温度及び十分な時間で行われる。概して、アニール温度がより高くなると時間をより短くできる。最終製品の好ましい特性を得るために、ポリプロピレン材料のアニールは、約100℃より高い温度で行われるのがよい。好ましくは、アニールは約2〜20分間約130〜155℃、好ましくは約2〜10分間約140〜150℃、更により好ましくは約4.5分間約150℃で行なわれる。アニールは、ウェブの構造体を実質的に崩壊させない条件下で行われるのがよい。ポリプロピレンウェブについては、実質的に約155℃より高いアニール温度は、材料が損傷を与えられることがあるため、望ましくない場合がある。
【0023】
アニールされていないウェブは、許容範囲内の油ミスト捕集性能を示さない。アニールされないウェブは一般に、ゼロのMin@Chlを示す。発明者は、アニールされたウェブの改善した性能が界面面積の増大及び/または安定した電荷閉じ込め部位の数の増大によると仮定する。従って界面面積を増大させる別の方法をアニールの代わりに用いることができる。
【0024】
アニールは、材料中のポリマーの結晶性を増大させる。アニールはまた、材料の剛性及び脆性を増大させ、伸び、軟度及び引裂き抵抗を減少させることが知られている。にもかかわらず、軟度及び引裂き抵抗の減少は、本発明の目標がエレクトレットフィルター性能を改善することにあるので、問題とされない。
【0025】
急冷の有無に関わらず、アニール工程は一般に、液体エーロゾルに耐性があるエレクトレットフィルターウェブの作製において速度に制限がある工程である。1つの実施態様において、ウェブは、約0.5〜1.4ポンド/時間/ダイの1インチの速度で溶融吹込プロセスにおいて形成される。
【0026】
本発明の方法は更に、急冷された後に材料を静電帯電する工程を含む。本発明に有用な静電帯電方法の例には、米国特許再発行特許第30,782号(ファン・ターンハウト)、再発行特許第31,285号(ファン・ターンハウト)、5,401,446号(ツァイら)、4,375,718号(ワッズワースら)、4,588,537号( クラッセら)及び4,592,815号(ナカオ)に記載されている方法などがある。エレクトレット材料はまた、水流帯電されてもよい(アンガジュバンドらの米国特許第5,496,507号を参照のこと)。切断繊維を、摩擦することによって、または異なった繊維と共に振ることによって摩擦帯電することができる(ブラウンらに付与された米国特許第4,798,850号を参照のこと)。好ましくは、帯電プロセスは、前述の特許のいくつかに開示されているように材料をコロナ放電、または脈動高圧にかける工程を含む。
【0027】
繊維は鞘−芯形状であってもよく、その場合、鞘材は、上に論じたブレンド中に記載したようにな性能増強添加剤を含有しなければならない。好ましくは、押出し物は、デイビーズ、C.N.、「The Separation of Airborne Dust and Particulates」、Inst.of Mech.Eng.、ロンドン、プロシーディングス 1B、1952年に記載の方法に従って計算すると、有効直径が約5〜30マイクロメータ(mm)、好ましくは約6〜10mmである微小繊維の形である。
【0028】
本発明のエレクトレット物品は、TSDC検査によって特性を決定することができる。TSDCにおいて、試料を2つの電極間に置き、一定の速度で加熱し、試料から放電された電流を電流計によって測定する。TSDCは、公知の技術である。例えば、米国特許第5,256,176号、ラバーグンらの「A Review of Thermo−Stimulated Current」、IEEEエレクトリックインシュレーションマガジン、Vol.9、No.2、5−21、1993年、及びチェンらの「Analysis of Thermally Stimulated Processes」、パーガモンプレス、1981年を参照のこと。試料から放電される電流は、試験される物品の分極率及び電荷閉じ込めの関数である。帯電物品を直接に試験することができる。あるいは、帯電及び未帯電物品を高温の電界内で先ずポーリング処理し、次に分極場を表面に有するポリマーのガラス転移温度(Tg)より低い温度に急速に冷却し、誘発分極を「凍結」することができる。次に、試料を一定の速度で加熱し、得られた放電した電流を測定する。分極プロセスにおいて、電荷注入、双極子の調整、電荷再分配またはこれらのいくつかの組合せが存在してもよい。
【0029】
熱刺激放電中に、エレクトレット中に蓄えられた電荷が可動的になり、反対符号の電荷を再結合することによって電極においてまたはバルク試料中のどちらかで中和される。これは、グラフ上にプロットされる温度の関数として記録時に多数のピークを示す外部電流を生み出す。これらのピークの形状及び位置は、電荷閉じ込めエネルギーレベル及び閉じ込め部位の物理的な位置に依存する。
【0030】
多くの研究者が示すように(例えば、セスラー編、「エレクトレット」、スプリンガー−出版、1987年及びヴァンターンハウト、「ポリマーエレクトレットの熱刺激放電」、エルセヴィアサイエンティフィックパブリッシングカンパニー、1975年、を参照のこと)、エレクトレット電荷は通常、不純物、モノマー単位の欠陥、鎖の不規則さなどの構造的な特異部分に蓄えられる。TSDCピークの幅は、エレクトレット中の電荷閉じ込めレベルの分布によって影響を及ぼされる。半結晶質ポリマーにおいて、しばしば電荷は、相の伝導率の差のために非晶質−結晶界面付近に蓄積されるか、または消耗される(マックスウェル−ワグナー効果)。これらの閉じ込め部位は通常、異なった閉じ込めエネルギーと結び付いており、そこにおいて、活性化エネルギーの連続した分布が予想され、TSDCピークが部分的に重なり合い、幅の広いピークになることが予想される。
【0031】
驚くべきことに、実施例の節に記載した一連のTSDC測定値において、TSDCスペクトルのいろいろな特徴がすぐれた油ミスト捕集性能と関連していることが発見された。すぐれた性能と関連しているTSDCスペクトルの特徴は、好ましい実施態様として以下に論じた特徴を含む。
【0032】
好ましい実施態様の一つにおいて、エレクトレットフィルターを作製するための中間組成物は、(実施例の節で明らかにしたように)TSDC試験方法1に従って試験される時に電荷密度が1平方メートル当たり少なくとも約10micrcolombs(mC/m2)である繊維の不織ウェブを含む。
【0033】
別の好ましい実施態様において、エレクトレット物品のTSDCスペクトルは、TSDC試験方法2によって測定したとき、物品の融解温度より約15℃〜30℃、より好ましくは約15℃〜25℃低い温度でピークを示す。前記ポリマーがポリプロピレンである時、TSDCは約130℃〜140℃でピークを示す。
【0034】
更に別の好ましい実施態様において、エレクトレット物品のTSDCスペクトルは、TSDC試験方法3によって測定したとき、約30℃未満の半値幅を有するピークを示し、より好ましくは約25℃未満、更により好ましくは約20℃未満の半値幅を有するピークを示す。前記ポリマーがポリプロピレンである場合、上述の狭いピークは約138〜142℃でその最大値を有する。
【0035】
別の好ましい実施態様において、エレクトレット物品は、TSDC試験方法4によって測定したとき、ポーリング時間の1〜5分にわたり、及び/または5〜10分にわたり電荷密度の増大を示す。エレクトレット物品は繊維の形であってもよく、多数のこれらの繊維がエレクトレットフィルターに形成されてもよい。エレクトレットフィルターは、支持構造と組み合わせた少なくとも若干のエレクトレット繊維を含有する不織ウェブの形を取ってもよい。いずれの場合も、エレクトレット物品に若干の非エレクトレット材料を組み合わせることができる。例えば、支持構造は、非エレクトレット繊維または非エレクトレット、不織支持ウェブであってもよい。エレクトレットフィルターは好ましくは、帯電した溶融吹込微小繊維を含有する不織エレクトレットウェブである。
【0036】
エレクトレットフィルターウェブはまた、より嵩だかな、より密度が低いウェブを提供するステーブルファイバーを含んでもよい。ステーブルファイバーを不織ウェブに組み入れる方法は、ハウザーの米国特許第4,118,531号に記載されているように実施できる。ステーブルファイバーを用いる場合、ウェブは、好ましくは90重量パーセントより少ないステーブルファイバー、より好ましくは70重量パーセントより少ないステーブルファイバーを含有する。簡素さ及び最適性能のために、エレクトレットウェブはいくつかの場合には、本質的に溶融吹込繊維からなり、ステーブルファイバーを含有しない。
【0037】
エレクトレットフィルターは更に、アルミナまたは活性炭などの収着剤微粒子を含有してもよい。前記微粒子をフィルターに加え、フィルターを通過する気流から気体汚染物質を取り去るのを助けることができる。このような微粒子配合ウェブは、例えば、ブラウンの米国特許第3,971,373号、アンダーソンの第4,100,324号及びコルピンらの4,429,001号に記載されている。微粒子材料が添加される場合、ウェブは好ましくは、80容積パーセントより少ない微粒子材料、より好ましくは60容積パーセントより少ない微粒子材料を含有する。エレクトレットフィルターが気体汚染物質を取り去る必要がない実施態様においては、フィルターは溶融吹込繊維だけを含有することがある。
【0038】
エレクトレットフィルターを形成するために用いた材料は望ましくは、電気伝導率を増大させるか、ないしは他の方法で物品が静電荷を受容及び保持する能力を妨げる帯電防止剤などの材料を実質的に含まない。更に、エレクトレット物品は、電気伝導率を増大させることがあるγ線、UV照射、熱分解、酸化などへの暴露などの不必要な処理にかけられるべきではない。従って、好ましい実施態様において、エレクトレット物品は、γ照射または他のイオン化照射に暴露されずに作製され、用いられる。
【0039】
溶融吹込繊維から作製されたエレクトレットフィルターは一般に、基本重量が平方メートル当たり約10〜500グラム(g/m2)、より好ましくは約10〜100g/m2である。非常に緻密なフィルターは帯電することが難しいことがあり、非常に軽いかまたは非常に薄いフィルターはもろいか、または不十分な濾過能力を有することがある。多くの用途に対して、エレクトレットフィルターは厚さ約0.25〜20ミリメートル(mm)、一般に厚さ約0.5〜2mmである。これらの基本重量及び厚さのエレクトレットフィルターは、マスクに特に有用である場合がある。
【0040】
本発明のフィルターは好ましくは、実施例の節に記載したようにDOPフィルターウェブ負荷試験方法1によって測定するとき、初期DOP透過が5%より小さく、平均Min@Chlが200mgDOPより多く、より好ましくは400mgDOPより多い。表及び実施例に用いられている「平均」は、フィルターウェブの全幅にわたり等間隔に離隔した部分から切り分けた4〜6つの試料で行なった測定値の平均である。試料の何れの他の組についても、平均は、デボアーの『Probability and Statistics for Engineering and the Sciences』、ブルックス/コールパブリッシングカンパニー(1987年)に記載されているように選択され「t試験」を用いて負荷試験され、1つの標準偏差内の統計学的に有意な平均を求める適当な数の試料平均Min@Chl値と定義される。
【0041】
すぐれた濾過性能が好ましい本発明のフィルターによって達せられ、平均を取らずに別々にみた各フィルター(以下、単に「各フィルター」と呼ばれる)のMin@Chlが、500mgDOPより多く、より好ましくは約600mgDOPより多く、更により好ましくは約800〜1000mgDOPより多い。これらのフィルターは好ましくは、実施例の節に記載したように、負荷試験方法1の方法によって測定したとき、圧力損失が13mmH2Oより少なく、より好ましくは10mmH2Oより少なく、更により好ましくは8mmH2Oより少ない。
【0042】
DOP透過は一般に、自動化フィルター試験機(AFT)として周知の計測器で測定される。DOPエーロゾルがフィルターに達して電子機器が安定するために必要とされる初期設定時間が必要とされる。初期DOP透過は、初期暴露の間、通常6〜40秒間、ウェブを透過するDOP%を指し、その間試験装置は平衡を保っている。初期DOP透過は、内蔵プログラムを用いてAFTによって与えられる第1の読取り値である。本発明のフィルターは、少なくとも検出可能な透過(すなわち、実施例の節に記載したAFT計測器に対して約0.001%より多い透過)を有する。
【0043】
マスクにおいて、繊維エレクトレットウェブを、例えば、成形されたまたは曲がった半面マスク、置き換え可能なカートリッジまたはカニスタのためのフィルタエレメント、またはプレフィルターの形で、特別に造形または収容してもよい。
【0044】
本発明のマスク10の例は、図10及び11に示される。マスクのマスク部17は、曲線状、半球状の形状であってもよく、または、必要に応じて他の形状を取ることができる(例えば、米国特許第5,307,796号及び4,827,924号を参照のこと)。マスク10において、エレクトレットフィルター15は、被覆ウェブ11と内部造形層16との間に挟持される。造形層16は、マスク10に対する構造体及び濾過層18に対する支持体を提供する。造形層16は、濾過層18の内側及び/または外側に位置していてもよく、例えば、カップ形の形状に成形された熱接着性繊維の不織ウェブから作製することができる。前記造形層は、周知の手順に従って成形されてもよい(例えば、米国特許第5,307,796号を参照のこと)。造形層は典型的には、金型内で加熱時に造形層が金型の外形に適合し、室温に冷却時にこの外形を保持するように、より低融点の材料の鞘材によって囲まれたポリエチレンテレフタレートなどのより高融点の材料の芯材を有する複合繊維から作製される。フィルター層などの別の層と一緒に押圧される時、低融点の鞘材料はまた、前記層を互いに接着するのに役立つことがある。装着者の顔の上に心地よくマスクを保持するために、マスク本体は、紐12、結束糸、マスクハーネスなどをそれに取付けることができる。アルミニウムなどの金属の柔軟な軟質バンド13をマスク本体17上に設けて、それを装着者の鼻の上に所望の取付け状態でマスクを保持するように造形することができる(例えば、米国特許第5,558,089号を参照のこと)。マスクはまた、付加的な層、弁(例えば、米国特許第5,509,436号を参照のこと)、成形面片などの付加的な特徴を有してもよい。本発明の改善されたエレクトレットフィルターを組み入れることができるマスクの例には、米国特許第4,536,440号、4,827,924号、 5,325,892号、4,807,619号及び4,886,058号及び米国特許出願第08/079,234号に記載されているマスクなどがある。
【0045】
約180平方センチメートル(cm2)の表面積を有する本発明のマスクのMin@Chlは、液体微粒子に対する負圧マスクを試験する全米職業保安・健康協会の微粒子フィルター透過方法(方法APRS−STP−0051−00、ウェストバージニア州、モーガンタウン、NIOSH安全リサーチ課、1995年5月31日)を用いて試験するとき、400ミリグラム(mg)DOPより多く、より好ましくは、600mgDOPより多い。マスクは好ましくは、5%より少ない初期DOP透過を示す。この方法に従って試験されたマスクは好ましくは、圧力損失が13mmH2Oより少なく、より好ましくは10mmH2Oより少なく、更により好ましくは8mmH2Oより少ない。表面積がより大きいマスクは、露出表面積を180cm2に低減させることによってこの基準に従って試験される。より小さいマスクをこの基準に従って試験するために、約180cm2の全露出面積を有するいろいろなマスクのためにホルダーを適合させる。
【0046】
約150cm2の表面積を有するこの発明のフィルターエレメントのMin@Chlは、NIOSH方法APRS−STP−0051−00を用いて試験するとき、300mgDOPより多く、より好ましくは、450mgDOPより多い。マスク上で対の形で用いられるフィルターは、その対の単一フィルターを用いて試験される。この方法に従って試験されたフィルターは好ましくは、5%より少ない初期DOP透過を示す。前記フィルターは好ましくは、圧力損失が13mmH2Oより少なく、より好ましくは10mmH2Oより少なく、更により好ましくは8mmH2Oより少ない。
【0047】
約65cm2の表面積を有するこの発明のプレフィルターのMin@Chlは、NIOSH方法APRS−STP−0051−00を用いて試験するとき、170mgDOPより多く、より好ましくは、255mgDOPより多い。マスク上で対の形で用いられたプレフィルターは、その対の単一フィルターを用いて試験される。前記プレフィルターは好ましくは、5%より少ない初期DOP透過を示す。この発明に従って試験された前記プレフィルターは好ましくは、圧力損失が17mmH2Oより少なく、より好ましくは14mmH2Oより少なく、更により好ましくは12mmH2Oより少ない。
【実施例】
【0048】
全体的な試料の作製及び試験
ウェブの押出し
以下の説明は、ポリマー及び性能増強添加剤を含有するエレクトレット物品の「作製方法」の特定の好ましい実施態様を例示する。これらの実施例の物品は、溶融吹込条件下で押出され、採取されて吹込微小繊維(BMF)ウェブを形成する、ポリプロピレン及びフルオロケミカルのブレンドから作製される不織フィルターウェブである。フルオロケミカル溶融添加剤をポリプロピレンとともに双スクリュー押出機のスロートに供給し、約11重量パーセントのフルオロケミカルを含有する溶融流を生じさせた。前記ポリプロピレンのバルクを、第2の双スクリュー押出機のスロートに添加した。いくつかの場合には、過酸化物も計量しながら供給して粘度を低減させる。フルオロケミカルを保有する押出機の押出し量は、全押出し量をフルオロケミカル溶融添加剤約1.1重量パーセントにする速度でポリプロピレンを保有する押出機に送り込まれた。
【0049】
フルオロケミカル溶融添加剤を含有する溶融流の温度は、すべての場所で290℃より低い温度に維持された。ウェブそれ自体は、ヴァンウェンテらに記載されているのと同様の従来の方法で製造されたが、ただし、ドリルドオリフィスダイを用いた。
【0050】
急冷
2つの急冷方法を用い、以下に記載する。
方法A
4インチ隔置したユニジェットスプレーノズルチップ No. 9501を有する13個の独立フラットファンノズルを含有する吹付けバーを、ダイ面から0.75インチ離し、ダイを出る溶融ポリマー流より2.5インチ下に取り付けた。各ノズルを、水滴のファンが互いにぶつからず水圧が均一な吹付けを維持する最小レベルに設定されるように、クロスウェブ方向から10°回転させた。
【0051】
方法B
ニュージャージー州、ペンソーケンのソニックエンバイアロンメンタルコーポレーション製のNo.SDC 035噴霧スプレーノズルを有する音波吹付け装置の吹付けバーを、センターラインより約7インチ下、及びダイチップの約1インチ下流に取り付けた。空気圧を、平方インチ当たり50ポンド(psi)、水圧を30psiに設定した。水流量計は、特に指示しない限り、各ノズルが水30ml/分を供給するように調節した。各ノズルは、ダイを出る溶融ポリマー流に円錐形の水滴を供給した。
【0052】
アニール
押出されたウェブを更に、炉内での滞留時間が約4.5分になる速度で平均温度約150℃に加熱された炉にそれらを通すことによって処理した。このアニールプロセスは、ポリマーの付加的な結晶化を引き起こし、フルオロケミカル溶融添加剤を繊維の界面に拡散させる。
【0053】
帯電
アニール後に、ウェブを更に、30の線状クロスウェブコロナ源と接地電極との間にコロナ源の長さ1cm当たりコロナ電流2.6×10up−3ミリアンペア及び滞留時間約15秒で提供された高電圧電界を用いてコロナ帯電することによって処理した。
【0054】
ウェブの規格
ウェブの厚さを、直径10センチのディスク上で230gの重りを用いてASTM D1777−64に従って測定した。圧力損失を、ASTM F778に従って測定してもよい。基礎重量を、直径5.25インチ(13.3cm)のディスクの重りから計算した。
【0055】
DOP負荷試験
ジオクチルフタレート(DOP)捕集の測定を行なうために、制御されたDOPエーロゾルに長時間暴露する間に試料を通るDOPエーロゾルの透過の記録をとった。測定は、DOPエーロゾルに適合させた自動化フィルター試験器(AFT)モデル#8110または#8130(ミネソタ州、セントポールのTSIインコーポレーテッド製)を用いて行なった。
DOP透過%は、以下のように規定される。
DOP透過%=100(下流のDOP濃度/上流のDOP濃度)、
式中、上流及び下流の濃度を光散乱によって測定し、DOP透過パーセントをAFTによって機械的に計算した。8110及び8130AFT計測器によって生み出されたDOPエーロゾルは、標準フィルターによって測定すると、上流の濃度が立方メートル当たり100mgである公称単一分散0.3マイクロメータの質量中位径であった。試験される試料は全て、エーロゾルイオン発生器を止めてフィルターウェブ試料を通る流量を毎分85リットル(LPM)にして試験された。
【0056】
DOPフィルターウェブ負荷試験方法1
測定を、DOPエーロゾルに適合させたAFTモデル#8110を用いて行なった。押出されたウェブは、直径6.75インチ(17.15cm)のディスクに切り分けた。2つのディスクを直接上に重ね合わせ、ディスクを、直径6.0インチ(15.2cm)の円を前記エーロゾルに暴露するように、試料ホルダーを取付けた。面速度は毎秒7.77センチメートル(cm/秒)であった。
【0057】
試料を、試料ホルダーに挿入する前に秤量した。それぞれの試験を、継続的なDOPエーロゾル暴露によってDOP透過パーセントを増大させるはっきりした傾向があるまで、または少なくともDOPの200mgに暴露するまで続けた。DOP透過パーセント及び対応する圧力損失データを、付属コンピュータに送り、そこにそれらを格納した。DOP負荷試験の終了後に、装填した試料を再び秤量して繊維ウェブ試料上で採取されたDOPの量の記録をとった。これは、繊維ウェブ上に残ったDOP濃度の測定値及びウェブを通るエーロゾル流量の測定値から推定されるDOP暴露のクロスチェックに役立つ。
【0058】
得られた捕集データをスプレッドシートに読み込み、阻止量(Min@Chl)を計算した。Min@Chlは、DOP透過パーセントがその最小値に達する点でフィルターウェブ上に残った全DOP阻止量またはDOP質量(すなわち試料上及び内部全体にわたるDOPの質量)であると定義される。このMin@Chlは、DOP捕集に対するウェブ性能の特性を決定するために用いられ、Min@Chlがより大きくなると、DOP捕集性能はより良好である。
【0059】
DOPフィルターウェブ負荷試験方法2
方法2は、試料を直径5.25インチ(13.34cm)に切分け、直径4.5インチ(11.4cm)の円を露出したままにして試料ホルダー内に置き、面速度が13.8cm/秒であったことを除き、1と同じであった。
【0060】
いずれの方法においても、同等のフィルター試験器を用いて試験を行なうことができる。上にイオン発生器を有するAFTモデル番号TSI8110を用いて露出面が102.6cm2、流量が85LPMで測定したとき8〜20mm H2Oの圧力損失があり、検出可能な透過が36%DOP透過より少ないように単一層の瞬間的な濾過性能がなっている場合、フィルターウェブの二重層よりむしろ単一層を試験してもよい。どちらの方法も、同等の露出面積(すなわち方法2について102.6cm2)を有する濾過材を集成する試料ホルダーを用いることにより、表面積がより小さいフィルターを試験することを含む。
【0061】
ポリマー結晶化度の測定
結晶性のデータは、フィリップス竪形X線ディフラクトメーターの使用、銅Ka放射線及び散乱放射線の比例検出器の記録によって集められた。前記ディフラクトメーターは、可変的な入口スリット、固定受容スリット、及び回折ビームモノクロメータを備えた。X線発生装置を45kV及び35mAに設定して作動させた。ステップ走査は、0.05度のステップサイズ及び5秒のカウント時間を用いて5〜40度(2q)で行われた。試料を、両面塗布テープを用いてアルミニウムホルダー上に取り付け、ウェブの下に裏材料プレートまたは支持体を用いなかった。
【0062】
前述の観察された散乱データを散乱角及び強度値のx−y値の対に帰し、データ解析ソフトウェアOriginTM(マサチューセッツ州、ノースハンプトンのミクロカルソフトウェアインク製)を用いて分析表の調整にかけた。ガウスピーク形状モデルを使用して6つのアルファ−形ポリプロピレンピーク及び非晶質ピークの寄与率を記述した。いくつかのデータセットについては、単一の非晶質ピークは、非アルファ形散乱強度を十分に明らかにしなかった。これらの場合、観察された強度を完全に明らかにするために、付加的な幅の広い最大値を使用した。これらの幅の広い変曲は、主にポリプロピレンの準変形性(mesomorphic)の形のためであった(準変形性ポリプロピレンの考察についてはクルーガーらの米国特許第4,931,230号及びそこに引用された文献を参照のこと)。ポリプロピレンの準変形性の形による散乱寄与率は、非晶質散乱と組み合わせられた。結晶化度は、結晶ピーク面積の6〜36度(2q)の散乱角の範囲内の全散乱強度(非晶質+結晶質)に対する比として計算された。1の値は、100パーセントの結晶性を表し、ゼロは結晶性が存在しないことを表す。
【0063】
熱刺激放電電流(TSDC)
TSDC検査を、コネチカット州、スタンフォードのサーモールドパートナー,L.P.サーマルアナリシスインスツルメント製のピボット電極を有する、Solomat TSC/RMA モデル91000を用いて行なった。ウェブ試料を切り分け、Solomat TSC/RMAの電極間に置いた。Solomat計測器において、温度計を試料に隣接して、接触させずに配置した。ウェブ試料は、光学的に緻密であるのがよく、試料ウェブを貫通する可視的な穴がないのがよい。試料は、上部接触電極を完全に覆うのに十分な大きさであるのがよい。電極は直径約7mmであるため、試料を直径7mmより大きく切り分けた。電極との良好な電気接触を確保するために、ウェブ試料を厚さ約1/10に圧縮することができる。空気を試料チャンバーから排気し、約1100の圧力のヘリウムと入れ替える。液体窒素冷却を用いる。
【0064】
TSDC試験方法1
物品が、上述された機器で毎分2.5キロボルト(kV/mm)の電場印加で1分間、100℃でポーリング処理される。電場がONの状態で、試料を−50℃に(計測器の最大速度で)急速に冷却する。前記試料は電界をOFFにした状態で5分間−50℃に保持され、次に、放電電流を測定する間に3℃/分に加熱する。電荷密度を、選択されたピークのそれぞれの側の最小値の間に基線を引き、ピーク下のその面積を積分することによってそれぞれのTSDCスペクトルのピークから計算することができる。
【0065】
TSDC試験方法2
ポーリング処理されていない物品の放電電流を、25℃から出発して3℃/分の速度で加熱して測定する。前記物品からの2つの試料を同様に試験したが、同試料を電極の間に置く時に向かい合った向きに方向付けする。ピークの位置を、約110℃より高い温度で正の放電電流を生じるように方向付けした物品について測定する(例えば、図15のB側)。
【0066】
物品の融解温度を、10℃/分の加熱速度で行なった示差走査熱量測定(DSC)によって求めるが、それは第2のDSC加熱サイクルで観察される溶融によって生じたピーク最大値(すなわち、融解温度より高い温度に加熱し、前記物品を冷却して凍結し、再加熱した後に観察されたピーク)と定義される。
【0067】
TSDC試験方法3
試料を方法2のTSDC法によって調べ、試料の正しい方向付けを確認した。次に、物品を、方法2でより低温のピークの正の放電電流を生じる方向にSolomat TSC中で方向付けする。物品を方法1に従って試験したが、ただし、各々の試料を1、5、10または15分間、100℃でポーリング処理する。それぞれのピークの半高におけるピークの幅の値を計算するために、0〜約30℃の曲線の傾きに対して基線を引き、半高におけるピークの幅の値を測る。
【0068】
TSDC試験方法4
この方法は方法3と同じであったが、ただし、各ポーリング時間における物品の電荷密度を計算するために、選択されたピークのそれぞれの側の最小値の間に基線を引き、またはピークの高温側の最小値が存在しない場合、曲線が電流ゼロと交差するまたは交差すると推定されるところに基線を引き、ピーク下のその面積を積分する。
【0069】
比較例1−3
比較例1−3は、改善された捕集性能を、比較的低い結晶化度を有する、ポリマー及び性能増強添加剤含有組成物によって達成できることについて説明する。
【0070】
実施例1
不織フィルターウェブを、毎時50ポンドの速度(ポンド/時間、毎時23キログラム(kg/時間))及び溶融温度288℃で48インチ(121.9cm)のドリルドオリフィスダイを用いて、エクソンケミカルカンパニー製のエクソンエスコレン 3505G、及びフルオロケミカル
【化2】
から作製した。前記ウェブは、基本重量が平方メートル当たり71グラム、厚さ1.3ミリメートル(mm)及び13.8cm/sの面速度において測定したとき圧力損失6.6mmH2Oであった。上述のように、前記ウェブをアニール及び帯電させた後、DOP負荷試験を、ウェブの幅の全体にわたり6つの位置から取った直径5.25インチ(13.34cm)の2層の試料上で行なった。ポリプロピレンの結晶化度を、アニールの前(位置1、4及び6)及びアニールの後(位置1−6)にウェブの同じ6つの位置から切り分けた試料について求めた。6つの位置についての捕集データ(Min@Chlによる)及び結晶化度を表1に示し、位置1、4及び6についてのアニールしない結晶化度対Min@Chl値を図2にプロットする。
【0071】
【表1】
【0072】
位置1、4及び6について表1の値及び図2のプロットに示すように、 DOP捕集性能(Min@Chlによる)とアニールする前のウェブの結晶化度との間に相関関係がある。アニールする前の結晶性が低くなるとと、それだけMin@Ch1の値が大きくなる。他方、表1に示すように、アニール後のウェブの結晶化度と DOP捕集性能(Min@Chlによる)との間には相関関係がない。
【0073】
実施例2
BMFウェブを実施例1に記載したように作製及び処理した。前記ウェブは、基本重量が平方メートル当たり74グラム、厚さ1.4ミリメートル(mm)及び13.8cm/sの面速度において測定したとき圧力損失7.0mmH2Oであった。前記ウェブを、実施例1と同様にDOP捕集を試験し、結晶化度について分析し、得られたデータを表2及び図3に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
また、表2及び図3の値は、アニールしない組成物のより低い結晶化度はより良好な捕集性能と相関関係があるが、アニールしたフィルターについては相関関係が観察されない一般的な傾向を示す。
【0076】
実施例3
BMFウェブを実施例1に記載したように作製及び処理したが、ただし、フィナオイルアンドケミカルカンパニー製のFina 3860ポリプロピレン樹脂を、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンを含有する過酸化物濃縮物を押出機中に同時に供給し、ポリプロピレンの溶融レオロジー及び溶融吹込ウェブの物理的なパラメータを制御した。前記ウェブは、基本重量が平方メートル当たり73グラム、厚さ1.4mm及び毎分85リットルで測定したとき圧力損失7.0mmH2Oであった。前記ウェブを、実施例1と同様に負荷試験し、結晶化度について分析し、得られたデータを表3及び図4に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
また、表3及び図4の値は、アニールしない組成物のより低い結晶化度はより良好な捕集性能と相関関係があるが、アニールしたフィルターについては相関関係が観察されない一般的な傾向を示す。
【0079】
実施例4−8
実施例4−8は、アニールしない繊維(すなわち中間組成物)の急冷または低結晶性がアニールされたエレクトレットフィルターウェブのすぐれた油ミスト捕集特性と相関関係があることを示す。
【0080】
実施例4
BMFウェブを実施例1に記載したように作製及び処理した。前記ウェブは、基本重量が平方メートル当たり69グラム、厚さ1.3mm及び13.8cm/sの面速度において測定したとき圧力損失6.2mmH2Oであった。十分なウェブを更に加工及び試験するために採取した後、押出し物に上述の方法Aを用いて水を吹付けた。逆浸透及び脱イオンによって精製した水を用いた。この実験において、吹付けバーは、ダイの幅の約2/3だけであった。コレクタを約12〜約8インチ移動させ、所望のウェブのパラメータを維持した。前記ウェブを、実施例1と同様にDOP捕集を試験し、結晶化度について分析し、得られたデータを表4A及び4B及び図5に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
表4A及び4Bのデータは、急冷が押出し繊維の結晶化度を低減させることを示す。低結晶化度組成物をアニールすることが、アニール及び帯電したフィルターウェブの捕集性能を改善する。前記データは更に、結晶化度が約0.3より小さいアニール組成物がすぐれた捕集性能を有するエレクトレットフィルターをもたらすことを示す。より詳しくは、結晶化度が約0.3より小さいアニールウェブは、平均Min@Ch1が200mgより多いフィルターをもたらし、結晶化度が約0.3より大きいアニールウェブは、平均Min@Ch1が200mgより少ないフィルターをもたらす。
【0084】
実施例5
BMFウェブを実施例1に記載したように作製及び処理したが、ただし、押出し量が毎時100ポンドであり実施例3におけるように過酸化物を添加して、ポリプロピレンの溶融レオロジー及び溶融吹込ウェブの物理的なパラメータを制御した。前記ウェブは、基本重量が平方メートル当たり73グラム、厚さ1.3mm及び面速度13.8cm/sで測定したとき圧力損失6.6mmH2Oであった。十分なウェブを更に加工及び試験するために採取した後(表5Aの実施例を参照のこと)、押出し物に上述の方法Bを用いて水を吹付けた。前記吹付けバーはウェブの全体に及び、前記ウェブは、基本重量が平方メートル当たり74グラム、厚さ1.3mm及び毎分85リットルで測定したとき圧力損失6.2mmH2Oであった。コレクタを12〜11インチ移動させ、ウェブのパラメータを維持した。未精製水道水を用いた。前記ウェブを、実施例1と同様にDOP捕集を試験し、結晶化度について分析したが、ただし、6.75インチ(17.15cm)の円を負荷試験ために用い、得られたデータを表5A及び5B 及び図6に示す。
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
実施例4と同様に、表5A及び5Bのデータは、急冷がアニールしないウェブの結晶化度を低減させ、アニール及び帯電したウェブの捕集性能を改善することを示す。前記データは更に、結晶化度が約0.3より小さいアニールウェブは平均Min@Ch1が200mgより多いフィルターをもたらし、結晶化度が約0.3より大きいアニールウェブは、平均Min@Ch1が200mgより少ないフィルターをもたらすことを示す。前記のデータはまた、結晶化度が約0.1であるようなより低結晶性の組成物は更に改善された捕集性能につながることを示す。例えば、いくつかのエレクトレットフィルターは、Min@Ch1が500mgより多いことがある。
【0088】
実施例6
BMFウェブを実施例1に記載したように作製及び処理した。前記ウェブは、基本重量が平方メートル当たり73グラム、厚さ1.3mm及び面速度13.8cm/sで測定したとき圧力損失7.0mmH2Oであった。十分なウェブを更に加工及び試験するために採取した後、押出し物に上述の方法Bを用いて実施例5と同様に水を吹付けた。コレクタを10〜8.5インチ移動させ、ウェブのパラメータを維持した。水を吹付けたウェブは、基本重量が平方メートル当たり71グラム、厚さ1.4mm及び毎分85リットルで測定したとき圧力損失6.6mmH2Oであった。前記ウェブを、実施例5と同様にDOP捕集を試験し、結晶化度について分析し、得られたデータを表6A及び6B及び図7に示す。
【0089】
【表8】
【0090】
【表9】
【0091】
実施例4−7と同様に、表6A及び6Bのデータは、急冷がアニールしないウェブの結晶化度を低減させ、アニール及び帯電したウェブの捕集性能を改善することを示す。前記データは更に、結晶化度が約0.3より小さいアニールウェブは平均Min@Ch1が200mgより多いフィルターをもたらし、結晶化度が約0.3より大きいアニールウェブは、平均Min@Ch1が200mgより少ないフィルターをもたらすことを示す。前記のデータはまた、急冷した材料から作製されたいくつかのエレクトレットフィルターは、Min@Ch1が500mgより多いことがあり、また、Min@Ch1が800mgより多いものもあることを示す。
【0092】
実施例7
BMFウェブを、方法Bを用いて水を吹付け、及び吹付けずに実施例6に記載したように作製及び処理した。この実施例については、水を逆浸透及び脱イオンによって精製した。前記ウェブの規格は、実施例6の場合と同様であった。前記ウェブを、実施例6と同様にDOP捕集を試験し、結晶化度について分析し、得られたデータを表7A及び7B及び図8に示す。
【0093】
【表10】
【0094】
【表11】
【0095】
実施例4−6と同様に、表7A及び7Bのデータは、急冷がアニールしないウェブの結晶化度を低減させ、アニール及び帯電したウェブの捕集性能を改善することを示す。前記データは更に、結晶化度が約0.3より小さいアニールウェブは平均Min@Ch1が200mgより多いフィルターをもたらし、結晶化度が約0.3より大きいアニールウェブは、平均Min@Ch1が200mgより少ないフィルターをもたらすことを示す。前記のデータはまた、急冷した材料から作製されたいくつかのエレクトレットフィルターは、Min@Ch1が500mgより多いことがあり、また、Min@Ch1が800mgより多いものもあることを示す。
【0096】
実施例8
BMFウェブを、方法Bを用いて水を吹付け、及び吹付けずに実施例7に記載したように作製及び処理した。前記ウェブの規格は、実施例7の場合と同様であった。前記ウェブを、前の実施例と同様にDOP捕集を試験し、結晶化度について分析し、得られたデータを表8A及び8B及び図9に示す。
【0097】
【表12】
【0098】
【表13】
【0099】
実施例4−7と同様に、表8A及び8Bのデータは、急冷がアニールしないウェブの結晶化度を低減させ、アニール及び帯電したウェブの捕集性能を改善することを示す。前記データは更に、結晶化度が約0.3より小さいアニールウェブは平均Min@Ch1が200mgより多いフィルターをもたらし、結晶化度が約0.3より大きいアニールウェブは、平均Min@Ch1が200mgより少ないフィルターをもたらすことを示す。前記のデータはまた、急冷した材料から作製されたいくつかのエレクトレットフィルターは、Min@Ch1が500mgより多いことがあることを示す。表9A及び9Bは、急冷しない及び急冷した試料について実施例4−8の平均Min@Chlデータを示す。
【0100】
【表14】
【0101】
【表15】
【0102】
表9A及び9Bの平均データは、前の表に示した結晶化度と共に、急冷が約0.3より小さいアニールしないウェブの結晶化度を低減させることがあり、更に、結晶化度が約0.3より小さいアニールウェブは平均Min@Ch1が200mgより多いフィルターをもたらし、結晶化度が約0.3より大きいアニールウェブは、平均Min@Ch1が200mgより少ないフィルターをもたらすことを示す。
【0103】
実施例9及び10
実施例9及び10は、性能増強添加剤を添加することにより、TSDCスペクトルに強い信号を生じることを示す。不織ウェブを、(急冷を含む)実施例4に記載したように作製した。第2の同じように作製したが、性能増強添加剤を用いなかった。両方のウェブ試料を、TSDC試験方法1の方法によって検査した。性能増強添加剤を含有する試料は、約110℃で有意の放電ピークを示した。比較すると、性能増強添加剤を含まないウェブは有意のピークを示さなかった。この観察により、性能増強添加剤を含有する試料によって生み出された放電電流が加熱時に性能増強添加剤の減極のためであることが示唆される。性能増強添加剤はポーリング工程において分極化されると考えられる。
【0104】
実施例11−15
実施例11−15は、ポーリング後に急冷したウェブは急冷したウェブより高い電荷密度を有することを示す。 試料ウェブa(急冷し、アニールしない)及びc(急冷し、アニールする)は、実施例4に記載した、位置4のウェブと同じであった(ただしコロナ帯電しない)。試料b(急冷せず、アニールしない)は、実施例2に記載した、位置4のウェブと同じであり(ただしコロナ帯電しない)、試料d(アニールされて、急冷しない)は、実施例2に記載した、位置6のウェブと同じであった(ただしコロナ帯電しない)。すべてのウェブ試料を、TSDC試験方法1の方法によって検査した。
【0105】
得られたTSDCスペクトルを図12に示す。電荷密度を、選択されたピークのそれぞれの側の最小値の間に基線を引き、ピーク下の面積を積分することによって、それぞれのTSDCスペクトルのピークから計算することができる。図12に示したように、TSDCスペクトルは概して、温度が試験される物品の融点に近づくときに急に増大する放電電流を示す。
【0106】
実施例7に記載したような未帯電のアニールしたウェブの多数の試料を、急冷しない(位置2及び6)及び急冷した(位置3、4、5及び6)ウェブの両方について実施例11−15のために記載したように試験した。前記急冷しないウェブのいずれも平方メートル当たり10マイクロクーロンより大きい電荷密度を有しなかった。アニールしないウェブの結晶化度対アニールした、未帯電ウェブの電荷密度を図13aにプロットする。図13aは、比較的低い結晶化度を有するアニールしないウェブが、TSDC試験方法1によって確認するとき、より高い電荷密度を有することを示す。
【0107】
DOP捕集性能(Min@Chlによる)アニール及び帯電したウェブ対アニールした、未帯電ウェブの電荷密度を図13bにプロットする。図13bは、TSDC試験方法1によって確認するとき、10mC/mup2より大きい電荷密度を有するアニールした、未帯電ウェブが帯電後にすぐれたDOP捕集性能を示すという非常に驚くべき結果を示す。
【0108】
実施例17及び18
実施例17及び18は、性能増強添加剤を用いずに作製した急冷した、及び急冷しないアニールした、コロナ帯電したウェブについて説明する。急冷した (a, b)及び急冷しない(a’,b’)ウェブを実施例4に記載したように作製したが、ただし、フルオロケミカル添加剤がウェブ中に存在していなかった。ポーリング処理しないウェブのTSDCスペクトルを試験方法2を用いて得て、図14に示す。放電電流の符号(正または負のどちらか)は、TSC計測器中のウェブの方向付けのコロナ帯電中の方向付けに対する関数である。
【0109】
実施例19及び20
実施例19及び20は、ポリマー及び性能増強添加剤から作製した急冷した、及び急冷しないアニール及びコロナ帯電したウェブについて説明する。急冷した(a,b)及び急冷しない(a’,b’)ウェブを実施例8、位置1、に記載したように作製した。前記ウェブを、TSDC試験方法2に記載したように、TSDCによって調べた。TSDC検査の結果を図15に示す。試験方法の一部として、試験される物品の融点をDSC によって確認し、この場合159℃であった。
【0110】
図15に示すように、約110℃ より高い温度で正の放電電流を示すように方向付けされる時、急冷したウェブ、aは、約137℃を中心とする比較的狭いピークを示す。このスペクトルは、急冷がアニール及び帯電したウェブの電荷閉じ込め部位のエネルギー分布を狭めることを表す。比較すると、急冷しないウェブ、a’のスペクトルは、電荷閉じ込め部位の比較的広い分布を示す。従って、本発明の物品は、TSDC試験方法2によって測定される時、前記物品の融点より約15〜30℃低い温度を中心とする電流ピークの特徴的な特性を示すことがある。
【0111】
上述のDOP負荷試験の結果が示すように、急冷した(または比較的低い結晶性)中間物から作製されたウェブは、急冷しない(または比較的高い結晶性)中間物から作製されたウェブと比較して、大幅に増強されたDOP捕集性能を有する。従って、発明者は驚くべきことだが、増強されたDOP捕集性能と相関する特有のスペクトルの特徴(すなわち、上記の電流ピーク)を発見した。
【0112】
実施例20及び21
実施例20及び21は、急冷した(図16a)及び急冷しない(図16b)物品のTSDCスペクトルを示し、本発明の特定の物品を特性を決定することができるスペクトルの特徴を示す。これらの例は、実施例8に記載したウェブ、位置3(急冷した、及び急冷しない)であった。TSDC検査をTSDC試験方法3に記載したように行なった。図16aの物品は、それらのポーリング処理時間においてだけ異なっている:a−1分、b−5分、c−10分、及びd−15分。同様に、図16bの物品は、それらのポーリング処理時間においてだけ異なっている:a’−1分、b’−5分、c’−10分、及びd’−15分。
【0113】
図16aのTSDCスペクトルは、それぞれ5、10及び15分のポーリング時間について18(b)、14(c)、及び19(d)の半高におけるピークの幅を示す。これらの3つのピークは、140または141℃で最大値を有する。比較すると、図16bの急冷しない比較例は、5、10及び15分のポーリング時間について、それぞれ40(b’)、32(c’)、及び34(d’)の半高におけるピークの幅を示し、それぞれ、121、132及び136℃でピーク最大値を示す。急冷した物品のすぐれた捕集性能は、DOP負荷試験に関連して上述されている。
【0114】
従って、図16a及び16b及びDOP負荷試験は、(試験方法3によって測定したとき)30 ℃未満のTSDCピークの幅を特徴とする物品は、すぐれた油ミスト捕集性能と相関するという驚くべき発見を示す。これらの結果は、ポーリング処理された状態で電荷閉じ込めエネルギーレベルのより狭い分布を有する物品が、改善された捕集性能と相関することを示唆する。従って、より好ましい物品は、25℃ 未満、更により好ましくは20 ℃未満のピークの幅を有する。
【0115】
前記のデータはまた、少なくともポリプロピレン含有物品について、約138〜142℃のピーク位置を有する好ましい物品に関してピーク位置と捕集性能との間に相関関係があることを示す。
【0116】
実施例22及び23
別のTSDCデータセットが、実施例20及び21において記載したのと同様に作製及び試験した試料について得られた。電荷密度をTSDC試験方法4に記載したように各試験条件について計算し、表10を表にし、図17にプロットする。
【0117】
【表16】
【0118】
急冷した及び急冷しない物品の電荷密度を比較すると、試験方法4によって測定するとき、対応するDOP負荷試験は驚くべきことに、前記の物品がポーリング処理されるときの電荷密度の変化と捕集性能との間の相関関係を示す。図17にみられるように、急冷された(すぐれた捕集性能)物品(点線)は、1〜10分間物品がポーリング処理されるときに電荷密度の増加を示す。対照的に、急冷しない(より不十分な捕集性能)物品(実線)は、同じポーリング時間にわたり電荷密度の減少を示す。従って、本発明の好ましい物品の特徴は、TSDC試験方法4によって測定したとき、ポーリング時間の1〜5及び/または5〜10分にわたり電荷密度を増大させることである。
【0119】
本明細書に言及したすべての特許及び特許出願を、全体にわたり、本明細書に引用したものとする。
【0120】
本発明は、その精神及び範囲から外れることなくいろいろな修正及び変更を加えることができる。したがって、この発明は上記の実施例に制限されるものではなく、以下の請求項及びその何れかの相当物に示される制限条件によって制御されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明によるエレクトレットフィルター媒体を製造するプロセスを示すフローチャートである。
【図2】急冷しないがアニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料の「阻止量(minimum at challenge)」(すなわち、DOP透過パーセントが最小値に達する点でフィルターウェブ上に残ったジオクチルフタレート(DOP)のミリグラム(mg)単位での質量、以下、「Min@Chl」と略記)対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。実施例の節で詳細に説明するように、このデータは、フィルターの上流側及び下流側のDOP液体エーロゾルの濃度を測定する計測器中でフィルターウェブをDOP液体エーロゾルに暴露することによって得られた。透過パーセントは、下流のエーロゾル濃度を上流の濃度で割り、100を掛けて算出される。
【図3】急冷しないがアニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料のMin@Chl対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。
【図4】急冷しないがアニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料のMin@Chl対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。
【図5】急冷しないがアニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料のMin@Chl対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。
【図6】急冷しないがアニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料のMin@Chl対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。
【図7】急冷した及び急冷しない、アニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料のMin@Chl対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。
【図8】急冷した及び急冷しない、アニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料のMin@Chl対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。
【図9】急冷した及び急冷しない、アニールしたエレクトレットフィルターから切分けた試料のMin@Chl対アニールする前の試料の結晶化度のプロットを示す。
【図10】本発明のエレクトレットフィルターを組み入れるマスクまたは濾過顔面マスク10を示す。
【図11】マスク本体17の横断面図を示す。
【図12】1分間100℃で1ミリメートル当たり2.5キロボルト(kV/mm)の電界内でポーリング処理された未帯電ポリマー及び性能増強添加剤を含有するウェブの熱刺激放電電流(TSDC)スペクトルを示す。前記ウェブは、次の4つの加工条件を用いて製造された。a)急冷されるがアニールされない、b)急冷されず、アニールされない、c)急冷され、アニールされる、及びd)急冷されないがアニールされる。
【図13a】6つの未帯電ポリマー及び性能増強添加剤含有ウェブ試料の結晶化度対1分間100℃で1ミリメートル当たり2.5キロボルト(kV/mm)の電界内でポーリング処理された(帯電することなく)アニールした後の前記試料の電荷密度のプロットを示す。
【図13b】6つのアニールされた、帯電ポリマー及び性能増強添加剤含有ウェブ試料の(Min@Chlにおける)DOP捕集性能対1分間100℃で1ミリメートル当たり2.5キロボルト(kV/mm)の電界内でポーリング処理された(帯電することなく)アニールした後の試料の電荷密度とのプロットを示す。
【図14】性能増強添加剤を用いない、アニール及びコロナ帯電した、ポーリング処理しないポリマー含有ウェブのTSDCスペクトルを示す。試料a及びbは加工中に急冷されるが、試料a’及びb’は急冷されなかった。A側は、正の電流が放電される時に上側の電極と接触するウェブの側面を指し、B側は、上側の電極と接触する時に、負の電流を放電するウェブの反対側を指す。
【図15】アニール及びコロナ帯電した、ポーリング処理しないポリマー及び性能増強添加剤含有ウェブのTSDCスペクトルを示す。試料a及びbは加工中に急冷されるが、試料a’及びb’は急冷されなかった。A側は、上側の電極への接触に対して図14のA側と同じウェブの側面を指し、B側がウェブの反対側を指す。
【図16a】a)1分間、b)5分間、c)10分間及びd)15分間、100℃で1ミリメートル当たり2.5キロボルト(kV/mm)の電界内でポーリング処理された、アニール及びコロナ帯電した、急冷したポリマー及び性能増強添加剤含有ウェブのTSDCスペクトルを示す。
【図16b】a’)1分間、b’)5分間、c’)10分間及びd’)15分間、100℃で1ミリメートル当たり2.5キロボルト(kV/mm)の電界内でポーリング処理された、アニール及びコロナ帯電した、急冷しないポリマー及び性能増強添加剤含有ウェブのTSDCスペクトルを示す。
【図17】急冷しない(実線)及び急冷した(点線)アニール及びコロナ帯電したポリマー及び性能増強添加剤含有ウェブについて電荷密度対ポーリング時間のプロットを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱刺激放電電流(TSDC)スペクトルが、TSDC試験方法3によって測定したとき,約30℃未満の半値幅を有するピークを示す、ポリマー及び性能増強添加剤を含むエレクトレット物品。
【請求項2】
前記性能増強添加剤がフルオロケミカルを含み、熱刺激放電電流(TSDC)スペクトルが、TSDC試験方法3によって測定したとき、約25℃未満の半値幅を有するピークを示す、請求項1に記載のエレクトレット物品。
【請求項3】
前記ポリマーがポリプロピレンを含有する請求項1または2に記載のエレクトレット物品。
【請求項4】
前記性能増強添加剤が、
【化1】
からなる群から選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項5】
95〜99.5重量パーセントのポリプロピレン及び0.5〜5重量パーセントのフルオロケミカルを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項6】
前記ポリマーが、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、線状低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、及びそれらの組合せからなる群から選択される請求項1〜5のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項7】
前記ポリマーが本質的にポリプロピレンからなる請求項1〜6のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項8】
TSDC試験方法4によって測定したとき、ポーリング時間の1〜5分にわたり電荷密度の増大がある請求項1〜7のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項9】
溶融吹込繊維の形である請求項1〜8のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項10】
請求項9に記載の溶融吹込繊維を含有する不織ウェブ。
【請求項11】
繊維の形である請求項1〜8のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項12】
前記繊維が鞘−芯構造を有し、該鞘材が95〜99.5重量パーセントのポリプロピレン及び0.5〜5重量パーセントのフルオロケミカルを含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の繊維または不織ウェブ。
【請求項13】
DOPフィルターウェブ負荷試験方法1によって測定したとき、初期の検出可能なDOP透過が5%より少なく、平均Min@Chlが200mgDOPより多い、請求項9〜10のいずれか1項に記載の繊維の不織ウェブを含むエレクトレットフィルター。
【請求項14】
圧力損失が12mmH2Oより少ない請求項13に記載のフィルター。
【請求項15】
DOPフィルターウェブ負荷試験方法1によって測定したとき、初期の検出可能なDOP透過が5%より少なく、Min@Chlが約800〜約1000mgDOPである、請求項10に記載の不織ウェブを含むエレクトレットフィルター。
【請求項16】
請求項10及び13〜15のいずれか1項に記載の不織ウェブまたはエレクトレットフィルターをフィルターとして含むマスク。
【請求項17】
請求項10及び13〜15のいずれか1項に記載の不織ウェブまたはエレクトレットフィルターをフィルターとして含む電子装置。
【請求項18】
ポリマー及び性能増強添加剤のブレンドを含有するエレクトレット繊維を含有する不織ウェブと、マスク及びマスクの装着者の口及び鼻の上に付けるようになっているカップ状部材を人に取付けるための支持構造体と、を含むエレクトレットフィルターを具備するマスクであって、該マスクのMin@Chlが、液体微粒子に対する負圧マスクを試験する全米職業保安・健康協会の微粒子フィルター透過方法(方法APRS−STP−0051−00)を用いて試験するとき、400mgDOPより多く、該マスクが約180cm2の露出表面積を有するか、または露出表面積が約180cm2になるように調整して試験されるマスク。
【請求項19】
前記性能増強添加剤がフルオロケミカルであり、前記ポリマーがポリプロピレンであり、圧力損失が13mmH2Oより小さい請求項18に記載のマスク。
【請求項20】
結晶のピーク強度の、6〜36度の散乱角の範囲についての全散乱強度に対する比によって測定したときに結晶化度が0.3より小さいポリプロピレン、及び性能増強添加剤からなる繊維の不織ウェブを含む、エレクトレットフィルターを作製するための中間組成物。
【請求項21】
前記性能増強添加剤がフルオロケミカルであり、前記結晶化度が約0〜0.2である請求項20に記載の中間組成物。
【請求項22】
前記性能増強添加剤がフルオロケミカルであり、前記ポリマーがポリプロピレンである請求項21に記載の中間組成物。
【請求項23】
エレクトレット物品中のエレクトレット材料の熱刺激放電電流(TSDC)スペクトルが、TSDC試験方法2によって測定したときエレクトレット物品の溶融温度より約15℃〜30℃低い温度でピークを示す、ポリマー及び性能増強添加剤を含むエレクトレット物品。
【請求項24】
前記性能増強添加剤がフルオロケミカルを含み、エレクトレット物品の熱刺激放電電流(TSDC)スペクトルが、TSDC試験方法2によって測定したとき、前記材料の溶融温度より約15℃〜25℃低い温度でピークを示す、請求項23に記載のエレクトレット物品。
【請求項25】
前記ポリマーがポリプロピレンであり、前記熱刺激放電電流(TSDC)スペクトルが約130℃〜140℃でピークを示す請求項23に記載のエレクトレット物品。
【請求項26】
溶融吹込繊維の形である請求項23または24に記載のエレクトレット物品。
【請求項27】
請求項26に記載の溶融吹込繊維を含有する不織ウェブ。
【請求項28】
請求項27に記載の不織ウェブをフィルターとして含むマスク。
【請求項29】
TSDC試験方法4によって測定したとき、ポーリング時間の1〜5分にわたり電荷密度の増大がある、ポリマー及び性能増強添加剤を含むエレクトレット物品。
【請求項30】
TSDC試験方法4によって測定したとき、ポーリング時間の1〜5分にわたり電荷密度の増大がある、請求項29に記載のエレクトレット物品。
【請求項31】
前記性能増強添加剤がフルオロケミカルである請求項29または30に記載のエレクトレット物品。
【請求項32】
溶融吹込繊維の形である請求項29〜31のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項33】
請求項32に記載の溶融吹込繊維を含有する不織ウェブ。
【請求項34】
ポリプロピレン及び性能増強添加剤からなる繊維の不織ウェブを含むと共に、TSDC試験方法1に従って試験したとき1平方メートル当たり少なくとも約10マイクロクーロン(mC/m2)の電荷密度を有する、エレクトレットフィルターを作製するための中間組成物。
【請求項35】
前記性能増強添加剤がフルオロケミカルである請求項34に記載の中間組成物。
【請求項36】
前記ポリマーが、結晶のピーク強度の、6〜36度の散乱角の範囲についての全散乱強度に対する比によって測定したとき結晶化度が0.3より小さいポリプロピレンを含む請求項34に記載の中間組成物。
【請求項1】
熱刺激放電電流(TSDC)スペクトルが、TSDC試験方法3によって測定したとき,約30℃未満の半値幅を有するピークを示す、ポリマー及び性能増強添加剤を含むエレクトレット物品。
【請求項2】
前記性能増強添加剤がフルオロケミカルを含み、熱刺激放電電流(TSDC)スペクトルが、TSDC試験方法3によって測定したとき、約25℃未満の半値幅を有するピークを示す、請求項1に記載のエレクトレット物品。
【請求項3】
前記ポリマーがポリプロピレンを含有する請求項1または2に記載のエレクトレット物品。
【請求項4】
前記性能増強添加剤が、
【化1】
からなる群から選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項5】
95〜99.5重量パーセントのポリプロピレン及び0.5〜5重量パーセントのフルオロケミカルを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項6】
前記ポリマーが、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、線状低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、及びそれらの組合せからなる群から選択される請求項1〜5のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項7】
前記ポリマーが本質的にポリプロピレンからなる請求項1〜6のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項8】
TSDC試験方法4によって測定したとき、ポーリング時間の1〜5分にわたり電荷密度の増大がある請求項1〜7のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項9】
溶融吹込繊維の形である請求項1〜8のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項10】
請求項9に記載の溶融吹込繊維を含有する不織ウェブ。
【請求項11】
繊維の形である請求項1〜8のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項12】
前記繊維が鞘−芯構造を有し、該鞘材が95〜99.5重量パーセントのポリプロピレン及び0.5〜5重量パーセントのフルオロケミカルを含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の繊維または不織ウェブ。
【請求項13】
DOPフィルターウェブ負荷試験方法1によって測定したとき、初期の検出可能なDOP透過が5%より少なく、平均Min@Chlが200mgDOPより多い、請求項9〜10のいずれか1項に記載の繊維の不織ウェブを含むエレクトレットフィルター。
【請求項14】
圧力損失が12mmH2Oより少ない請求項13に記載のフィルター。
【請求項15】
DOPフィルターウェブ負荷試験方法1によって測定したとき、初期の検出可能なDOP透過が5%より少なく、Min@Chlが約800〜約1000mgDOPである、請求項10に記載の不織ウェブを含むエレクトレットフィルター。
【請求項16】
請求項10及び13〜15のいずれか1項に記載の不織ウェブまたはエレクトレットフィルターをフィルターとして含むマスク。
【請求項17】
請求項10及び13〜15のいずれか1項に記載の不織ウェブまたはエレクトレットフィルターをフィルターとして含む電子装置。
【請求項18】
ポリマー及び性能増強添加剤のブレンドを含有するエレクトレット繊維を含有する不織ウェブと、マスク及びマスクの装着者の口及び鼻の上に付けるようになっているカップ状部材を人に取付けるための支持構造体と、を含むエレクトレットフィルターを具備するマスクであって、該マスクのMin@Chlが、液体微粒子に対する負圧マスクを試験する全米職業保安・健康協会の微粒子フィルター透過方法(方法APRS−STP−0051−00)を用いて試験するとき、400mgDOPより多く、該マスクが約180cm2の露出表面積を有するか、または露出表面積が約180cm2になるように調整して試験されるマスク。
【請求項19】
前記性能増強添加剤がフルオロケミカルであり、前記ポリマーがポリプロピレンであり、圧力損失が13mmH2Oより小さい請求項18に記載のマスク。
【請求項20】
結晶のピーク強度の、6〜36度の散乱角の範囲についての全散乱強度に対する比によって測定したときに結晶化度が0.3より小さいポリプロピレン、及び性能増強添加剤からなる繊維の不織ウェブを含む、エレクトレットフィルターを作製するための中間組成物。
【請求項21】
前記性能増強添加剤がフルオロケミカルであり、前記結晶化度が約0〜0.2である請求項20に記載の中間組成物。
【請求項22】
前記性能増強添加剤がフルオロケミカルであり、前記ポリマーがポリプロピレンである請求項21に記載の中間組成物。
【請求項23】
エレクトレット物品中のエレクトレット材料の熱刺激放電電流(TSDC)スペクトルが、TSDC試験方法2によって測定したときエレクトレット物品の溶融温度より約15℃〜30℃低い温度でピークを示す、ポリマー及び性能増強添加剤を含むエレクトレット物品。
【請求項24】
前記性能増強添加剤がフルオロケミカルを含み、エレクトレット物品の熱刺激放電電流(TSDC)スペクトルが、TSDC試験方法2によって測定したとき、前記材料の溶融温度より約15℃〜25℃低い温度でピークを示す、請求項23に記載のエレクトレット物品。
【請求項25】
前記ポリマーがポリプロピレンであり、前記熱刺激放電電流(TSDC)スペクトルが約130℃〜140℃でピークを示す請求項23に記載のエレクトレット物品。
【請求項26】
溶融吹込繊維の形である請求項23または24に記載のエレクトレット物品。
【請求項27】
請求項26に記載の溶融吹込繊維を含有する不織ウェブ。
【請求項28】
請求項27に記載の不織ウェブをフィルターとして含むマスク。
【請求項29】
TSDC試験方法4によって測定したとき、ポーリング時間の1〜5分にわたり電荷密度の増大がある、ポリマー及び性能増強添加剤を含むエレクトレット物品。
【請求項30】
TSDC試験方法4によって測定したとき、ポーリング時間の1〜5分にわたり電荷密度の増大がある、請求項29に記載のエレクトレット物品。
【請求項31】
前記性能増強添加剤がフルオロケミカルである請求項29または30に記載のエレクトレット物品。
【請求項32】
溶融吹込繊維の形である請求項29〜31のいずれか1項に記載のエレクトレット物品。
【請求項33】
請求項32に記載の溶融吹込繊維を含有する不織ウェブ。
【請求項34】
ポリプロピレン及び性能増強添加剤からなる繊維の不織ウェブを含むと共に、TSDC試験方法1に従って試験したとき1平方メートル当たり少なくとも約10マイクロクーロン(mC/m2)の電荷密度を有する、エレクトレットフィルターを作製するための中間組成物。
【請求項35】
前記性能増強添加剤がフルオロケミカルである請求項34に記載の中間組成物。
【請求項36】
前記ポリマーが、結晶のピーク強度の、6〜36度の散乱角の範囲についての全散乱強度に対する比によって測定したとき結晶化度が0.3より小さいポリプロピレンを含む請求項34に記載の中間組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図14】
【図15】
【図16a】
【図16b】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図14】
【図15】
【図16a】
【図16b】
【図17】
【公開番号】特開2009−6313(P2009−6313A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−74246(P2008−74246)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【分割の表示】特願2000−513658(P2000−513658)の分割
【原出願日】平成10年1月26日(1998.1.26)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74246(P2008−74246)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【分割の表示】特願2000−513658(P2000−513658)の分割
【原出願日】平成10年1月26日(1998.1.26)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】
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