説明

耐熱シート及びその製造方法

【課題】厚み変動率が小さく、破断強度や破断伸度が高く、またハンダ耐熱性の高い耐熱シートを得ること
【解決手段】
溶剤に溶解されたガラス転移温度が200℃以上のポリマー溶液を押し出し成型することにより得られ、厚み変動率が5%以下であることを特徴とする耐熱シート、および溶剤に溶解されたガラス転移温度が200℃以上のポリマー溶液をスクュリー及びTダイスを備えた押し出し成型機に導入し、加熱しながら真空下、溶剤の一部または全部を除去しながら成型することを特徴とする耐熱シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱シート、特に厚膜で厚さ変動率の小さい耐熱シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、厚い耐熱シートとしては溶液キャスト方法で製造されたポリイミドシートが市販されているが、ポリイミドシートは通常、ステンレスドラムに塗布した溶液を一次乾燥した後加熱テンターに導入して400℃以上の高温で溶剤を除きながらイミド化を行い製造されている。
いかしながら、この方法で製造されるポリイミドシートの膜厚は100μm以上にすることが困難な上、高価で、膜厚がバラツクなどの欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、膜厚が安定した耐熱性、機械的強度及び寸法安定性に優れた厚膜シートを経済的に製造してプリント回路板の補強版などに有用なシートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下に示す耐熱シート及びその製造方法である。
【0005】
(1)溶剤に溶解されたガラス転移温度が200℃以上のポリマー溶液を押し出し成型することにより得られ、厚み変動率が5%以下であることを特徴とする耐熱シート。
(2)膜厚が50μm以上である前記(1)に記載の耐熱シート。
【0006】
(3)ポリマー溶液がN−メチルー2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン、N,N’−ジメチルアセトアミドの1種または2種以上からなる溶剤に溶解されたポリアミドイミド樹脂である前記(1)または(2)に記載の耐熱シート。
【0007】
(4)前記(3)に記載のポリアミドイミド樹脂の酸成分の一部がピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物およびエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートからなる群のうち少なくとも1種で置き換えられた前記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐熱シート。
【0008】
(5)ポリアミドイミド樹脂のジイソシアネート成分がナフタレン及び/又はo−トリジン残基を有する前記(1)〜(4)のいずれかに記載の耐熱シート。
【0009】
(6)成型された耐熱シートが30%以下の溶剤を含むことを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の耐熱シート。
【0010】
(7)溶剤に溶解されたガラス転移温度が200℃以上のポリマー溶液をスクュリー及びTダイスを備えた押し出し成型機に導入し、加熱しながら真空下、溶剤の一部または全部を除去しながら成型することを特徴とする耐熱シートの製造方法。
【0011】
(8)ポリマー溶液がN−メチルー2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン、N,N’−ジメチルアセトアミドの1種または2種以上からなる溶剤に溶解されたポリアミドイミド樹脂である前記(7)に記載の耐熱シートの製造方法。
【0012】
(9)前記(8)に記載のポリアミドイミド樹脂の酸成分の一部がピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物およびエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートからなる群のうち少なくとも1種で置き換えられた前記(7)または(8)に記載の耐熱シートの製造方法。
【0013】
(10)ポリアミドイミド樹脂のジイソシアネート成分がナフタレン及び/又はo−トリジン残基を有する前記(7)〜(9)のいずれかに記載の耐熱シートの製造方法。
(11)成型された耐熱シートが30%以下の溶剤を含むことを特徴とする前記(7)〜(10)のいずれかに記載の耐熱シートの製造方法。
(12)前記(7)〜(11)で成型されたシートを緊張下、定型または延伸しながら加熱、脱溶剤することを特徴とする膜厚が50μm以上の耐熱シートの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明を採用することにより、50μm以上の厚いシートであっても、その厚み変動率が小さく、破断強度や破断伸度が高く、またハンダ耐熱性の高い耐熱シートを得ることができるので、産業界に寄与すること大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は耐熱性及び機械的特性、寸法安定性に優れた耐熱シートを安価に提供できるものである。
本発明に用いられる耐熱樹脂はポリイミド系樹脂などの溶液重合法によって製造される耐熱樹脂に特に効果があり、それらの中でも特に樹脂の安定性や溶解性などからポリアミドイミド樹脂が好ましい。
本発明に用いられるポリアミドイミド樹脂はイソシアネート法等公知の方法で製造することができる。
【0016】
本発明のポリアミドイミド樹脂の製造に用いられる酸成分としてはトリメリット酸及びこれの無水物の他にピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等のテトラカルボン酸及びこれらの無水物、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリルーブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸があげられこれらの中では反応性、耐熱性、溶解性などの点からトリメリット酸無水物が最も好ましく、その一部がピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートに置き換わったものが機械的特性や寸法安定性の点から好ましい。ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートを用いる場合、共重合量は酸成分を100モル%としたときに、5〜70モル%である事が好ましい。下限は10モル%がより好ましく上限は60モル%であることがより好ましい。
【0017】
ポリアミドイミド樹脂の製造に用いられるジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられ、これらの中では耐熱性、機械的特性、溶解性などから4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が好ましい。とりわけ耐熱性、機械的特性や寸法安定性の点からはo−トリジンジイソシアネートとナフタレンジイソシアネートが好ましい。これらの成分は全ジアミン成分を100モル%としたときに、50モル%以上共重合されていることが好ましく、70モル%以上がより好ましい。
【0018】
本発明に用いるポリアミドイミド樹脂はN,N’−ジメチルアセトアミドやN−メチル−2−ピロリドン,N,N’−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン等の極性溶剤中、60〜200℃に加熱しながら攪拌することで容易に製造する事ができる。ポリアミドイミド樹脂の分子量を調整するために酸成分とジイソシアネート成分の仕込みモル比を調節する事ができ、その範囲は酸成分/ジイソシアネート成分が0.7〜1.2が好ましい。
この場合、必要に応じてトリエチルアミン、ジエチレントリアミン、ジアザビシクロウンデセン等の有機アミン化合物やフッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、ナトリウムメトキシド等の金属化合物を触媒に用いることが出来る。
【0019】
本発明の耐熱シートはその主たる目的であるフレキシブルプリント回路板の補強板であるから耐熱性のほかに機械的強度や寸法安定性が求められためポリアミドイミド樹脂としての対数粘度は0.5dl/g以上が好ましく、さらに好ましくは0.55dl/g以上、特に好ましくは0.6dl/g以上である。対数粘度の上限は特に定めるものではないが、現実的には3.0dl/g以下、さらには2.5dl/g以下であることが作業性などの点から好ましい。対数粘度が0.5dl/g以下であると、得られたシートは脆く、加熱時の寸法変化が大きくなる場合がある。
【0020】
本発明のポリアミドイミド樹脂には、耐熱性や機械的強度、寸法安定性などの特性を損なわない範囲で着色剤、分散剤、無機フィラー、レベリング剤、消泡剤、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン等の他樹脂、シリコーン系離型剤、架橋剤等を配合することができる。架橋剤としては2官能以上のエポキシ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物が挙げられる。
【0021】
本発明の耐熱シートの成型は、スクリューとTダイス、ヒーターを備えた押し出し成形機、ブロー成形機、射出成形機等の加熱シリンダー部分にベント口が複数設けられた設備を用いることによって行われ、これらの中では連続成形が可能な押し出し成型機が好ましく、特に押し出しの安定性から二軸押し出し機が特に好ましい。
ポリアミドイミド樹脂溶液は押し出し機のホッパーに供給され、シリンダーに導かれて加熱され、シリンダーに設けられたベント口から真空脱溶剤される。溶剤が好ましくは30%以下になった状態でマニホールドを経て、Tダイスからシート状に成型、押し出される。
【0022】
シリンダーの温度は用いる溶剤によって異なるが、100℃〜300℃までの範囲で徐々に昇温するのが好ましい。ベント口は通常3〜8個設けられ、それらの真空度も用いる溶剤によって異なるが、0.01torr〜200torrの範囲で徐々に真空度を高めていくのが好ましい。
【0023】
このようにして成型された本発明耐熱シートの厚み変動率は5%以下、好ましくは4%以下、さらに望ましくは3%以下である。また、該シートの残存溶剤量は30%以下、好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下、最も好ましいのは1%以下である。耐熱シートの残存溶剤量はシートの耐熱性や機械的強度の点からは低いほうが好ましいが、残存溶剤量が少ないほど成型性は困難になる。残存溶剤量が30%を超えると成型されたシートが粘着するため巻取りが困難になる恐れがある。
【0024】
本発明では、押し出し成型された耐熱シートを更に熱処理を行うことができる。熱処理により、耐熱シートの残存溶剤を低減して機械的強度、耐熱性、寸法安定性が改良される効果がある。
該熱処理温度は該耐熱樹脂のガラス転移温度によって異なるが、通常150℃以上でガラス転移温度+50℃以下の範囲で、10秒〜10分の範囲で行うのが良い。
この場合、クリップまたはピンで端部を把持し、定長下または延伸した状態で熱処理することによって機械的強度、寸法安定性は更に改良される。
【実施例】
【0025】
以下実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例よって何ら制限されるものではない。尚、実施例中の測定値は以下の方法で測定した値である。
1. 対数粘度
ポリマー0.5gを100mlのNMP(N−メチル−2−ピロリドン)に溶解した溶液を25℃でウベローデ粘度管を用いて測定した。
【0026】
2. ガラス転移温度
測定幅4mmのシートを 社製の動的粘弾性測定装置を用い、周波数110Hz昇温速度 ℃/分で測定し、損失弾性率の変曲点をガラス転移温度とした。
3.厚み変動率
ソニー(株)製マイクロメーターにより、シート長20m当たりの長さ方向における最大厚みと最小厚みと平均厚みとを測定し、下記式に基づいて求めた。
厚み変動率(%)=100×(最大厚み−最小厚み)/平均厚み
4. シートの強伸度
測定幅10mm、測定長40mmのシートを25℃、65%RH環境下、引っ張り速度20mm/分の条件で東洋ボールドウイン社の引張り試験機を用いて測定した。
5. 残存溶剤量
TGA(熱重量測定器)を用い、10℃/分で昇温したとき、150℃〜300℃の範囲の重量減少率を残存溶剤量とした。
6. ハンダ耐熱性
2cm□のシートを260℃のハンダ浴に1分間浸漬した後の状態を観察した。
・ :変化なし △:わずかな変形 ×:変形、収縮が著しい
【0027】
参考例1(ポリアミドイミド樹脂Aの合成)
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにトリメリット酸無水物(TMA)1.01モルとジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)1モルを固形分濃度が20%となるようにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と共に仕込み、攪拌しながら120℃に昇温して約3時間反応させた後180℃に昇温して約3時間反応継続した。得られたポリアミドイミド樹脂Aの対数粘度は0.65dl/g、ガラス転移温度は280℃であった。
【0028】
参考例2(ポリアミドイミド樹脂Bの合成)
ポリアミドイミド樹脂Aの合成と同じ装置を用いて、TMA1.01モル、o−トリジンジイソシアネート0.8モル、2,4−トリレンジイソシアネート0.2モルを固形分濃度が20%となるようにNMPと共に仕込み、攪拌しながら90℃で約5時間反応させた。得られたポリアミドイミド樹脂Bの対数粘度は1.36dl/g、ガラス転移温度は305℃であった。
【0029】
参考例3(ポリアミドイミド樹脂Cの合成)
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにTMA0.71モル、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物0.30モルとo−トリジンジイソシアネート(TODI)0.8モル、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)0.2モル、ジアザビシクロウンデセン0.01モルを固形分濃度が20%となるようにNMPと共に仕込み、攪拌しながら90℃に昇温して約5時間反応させた。得られたポリアミドイミド樹脂Cの対数粘度は1.43dl/g、ガラス転移温度は315℃であった。
【0030】
参考例4(ポリアミドイミド樹脂Dの合成)
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにTMA0.81モル、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物0.125モル、ビフェニルテトラカルボン酸無水物0.075モルとo−トリジンジイソシアネート1モルとジアザビシクロウンデセン
0.01モルを固形分濃度が15%となるようにN−メチル−2−ピロリドンと共に仕込み、攪拌しながら80℃に昇温して約5時間反応させた。得られたポリアミドイミド樹脂Dの対数粘度は1.54dl/g、ガラス転移温度は320℃であった。
【0031】
参考例5(ポリアミドイミド樹脂Eの合成)
冷却管と窒素導入口のついた4ツ口フラスコにTMA0.71モル、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物0.30モル、ナフタレンジイソシアネート1モルとジアザビシクロウンデセン0.01モルを固形分濃度が15%となるようにNーメチルー2−ピロリドンとともに仕込み、80℃で約3時間反応させた。このポリアミドイミド樹脂Eの対数粘度は1.38dl/g、ガラス転移温度は380℃であった。
【0032】
参考例6(ポリアミドイミド樹脂Fの合成)
冷却管と窒素導入口のついた4ツ口フラスコにTMA0.5モル、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート0.5モル、ジフェニルメタン−4,4’ジイソシアネート1モル、ジアザビシクロウンデセン0.01モルを固形分濃度が50%となるようにγ―ブチロラクトンとともに仕込み、120℃で約1.5時間反応させた後、180℃に昇温して更に3時間反応を継続した。その後、冷却しながら固形分濃度が30%となるようにN,N’−ジメチルアセトアミドで希釈した。このポリアミドイミド樹脂Fの対数粘度は0.68dl/g、ガラス転移温度は235℃であった。
【0033】
実施例1〜6(耐熱シートの押し出し成型例)
ポリアミドイミド樹脂溶液A〜Fを下記条件で押し出し成型して耐熱シートを作成した。
・ 押し出し機:日本製鋼所製TEX30(2軸押し出し機)
・ シリンダー温度:100℃/150℃/200℃/250℃/275℃の5段階
・ 真空度:100torr/40torr/40torr/4torrの4段階
・ 巻き取り:幅300mmのTダイスからシートを吐出させ、チルロールで冷却した後巻き取った。
尚、膜厚はスクリューの回転数を調整して100μm〜200μmの範囲で調整した。
実施例1:ポリアミドイミド樹脂Aから作成した耐熱シート
実施例2:ポリアミドイミド樹脂Bから作成した耐熱シート
実施例3:ポリアミドイミド樹脂Cから作成した耐熱シート
実施例4:ポリアミドイミド樹脂Dから作成した耐熱シート
実施例5:ポリアミドイミド樹脂Eから作成した耐熱シート
実施例6:ポリアミドイミド樹脂Fから作成した耐熱シート
各々のシートの特性を表1に示す。
【0034】
実施例7〜8(耐熱シートの熱処理例)
実施例1〜3で得られた耐熱シートを20cm×30cmに切断して金属枠にポリイミド粘着テープで固定して、窒素ガス雰囲気下300℃で10分熱処理を行った。
実施例7:ポリアミドイミド樹脂Aから作成した耐熱シートを熱処理
実施例8:ポリアミドイミド樹脂Bから作成した耐熱シートを熱処理
実施例9:ポリアミドイミド樹脂Cから作成した耐熱シートを熱処理
各々のシートの特性を表1に示す。
【0035】
比較例1
実施例1におけるポリアミドイミド樹脂の合成に用いたのと同じ装置を用い、TMA0.7モル、ダイマー酸0.3モル、ジフェニルメタン−4,4’’−ジイソシアネート1モル、フッ化カリウム0.02モルを固形分濃度が50%となるようにN−メチル−2−ピロリドンとともに仕込み、150℃で1時間、引き続き190℃で2時間反応させ固形分濃度が30%となるようにN−メチルー2−ピロリドンで希釈することによってポリアミドイミド樹脂Gを得た。得られたポリアミドイミド樹脂Gの対数粘度は0.54dl/g、ガラス転移温度は158℃であった。 このポリアミドイミド樹脂Gを用いて耐熱シートの押し出し例と同じ条件でシートを作成した。その特性を表1に示す。
【0036】
比較例2
実施例1におけるポリアミドイミド樹脂を用いた押し出し成型条件で、シリンダー温度を100℃/100℃/100℃/100℃/100℃とフラットにして、真空度も100torr/100torr/100torr/100torrとフラットな条件にして成型した結果、残存溶剤量が38%であり、得られたシートは巻取り時にブロッキングを起こした。
【0037】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明を採用することにより、50μm以上の厚いシートであっても、その厚み変動率が小さく、破断強度や破断伸度の高い耐熱シートを得ることができ、概耐熱シートはフレキシブルプリント回路板の補強版などに有用なシートとして利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤に溶解されたガラス転移温度が200℃以上のポリマー溶液を押し出し成型することにより得られ、厚み変動率が5%以下であることを特徴とする耐熱シート。
【請求項2】
膜厚が50μm以上である請求項1に記載の耐熱シート。
【請求項3】
ポリマー溶液がN−メチルー2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン、N,N’−ジメチルアセトアミドの1種または2種以上からなる溶剤に溶解されたポリアミドイミド樹脂である請求項1または2に記載の耐熱シート。
【請求項4】
請求項3に記載のポリアミドイミド樹脂の酸成分の一部がピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物およびエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートからなる群のうち少なくとも1種で置き換えられた請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱シート。
【請求項5】
ポリアミドイミド樹脂のジイソシアネート成分がナフタレン及び/又はo−トリジン残基を有する請求項1〜4のいずれかに記載の耐熱シート。
【請求項6】
成型された耐熱シートが30%以下の溶剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐熱シート。
【請求項7】
溶剤に溶解されたガラス転移温度が200℃以上のポリマー溶液をスクュリー及びTダイスを備えた押し出し成型機に導入し、加熱しながら真空下、溶剤の一部または全部を除去しながら成型することを特徴とする耐熱シートの製造方法。
【請求項8】
ポリマー溶液がN−メチルー2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン、N,N’−ジメチルアセトアミドの1種または2種以上からなる溶剤に溶解されたポリアミドイミド樹脂である請求項7に記載の耐熱シートの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のポリアミドイミド樹脂の酸成分の一部がピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物およびエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートからなる群のうち少なくとも1種で置き換えられた請求項7または8に記載の耐熱シートの製造方法。
【請求項10】
ポリアミドイミド樹脂のジイソシアネート成分がナフタレン及び/又はo−トリジン残基を有する請求項7〜9のいずれかに記載の耐熱シートの製造方法。
【請求項11】
成型された耐熱シートが30%以下の溶剤を含むことを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の耐熱シートの製造方法。
【請求項12】
請求項7〜11で成型されたシートを緊張下、定型または延伸しながら加熱、脱溶剤することを特徴とする膜厚が50μm以上の耐熱シートの製造方法。

【公開番号】特開2008−120955(P2008−120955A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308609(P2006−308609)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】