説明

耐熱性多層構造重合体粒子からなる光学フィルムの製造方法

【課題】耐熱性および耐衝撃性に優れたフィルムを形成しうる熱可塑性樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】内部にアクリル酸アルキルエステル単位を有するゴム成分層と最外層にグルタル酸骨格を有し、ガラス転移温度が120℃以上200℃以下である共重合体を含む熱可塑性樹脂層を持つ多層構造重合体粒子を加熱成形することによる樹脂フィルムを提供する。本発明により得られる樹脂フィルムは、耐熱性および耐衝撃性に優れ、光学フィルムの必要特性である透明性にも優れ、および異物、不均質箇所の存在の極めて少ないフィルムを簡便に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、無色透明性、機械特性に優れ、製造における簡便さを備えた、アクリル系共重合体からなる光学用熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリメタクリル酸メチル(以下PMMAと称する)やポリカーボネート(以下PCと称する)といった非晶性樹脂は、その透明性や寸法安定性を活かし、光学材料、家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な分野で使用されている。
【0003】
近年、これらの樹脂は、特に光学レンズ、プリズム、ミラー、光ディスク、光ファイバー、液晶ディスプレイ用シート・フィルム、導光板などの、より高性能な光学材料にも幅広く使用されるようになっており、樹脂に要求される光学特性や成形加工性、耐熱性もより高度なものになっている。
【0004】
また現在、これらの透明樹脂は、テールランプやヘッドランプといった自動車等の灯具部材としても使用されているが、近年、車内空間を大きくするためやガソリン燃費を改良するために、テールランプレンズやインナーレンズ、ヘッドランプ、シールドビーム等の各種レンズと光源の間隔を小さくすること、部品の薄肉化が図られる傾向にあり、優れた成形加工性が要求されるようになっている。また、車両は過酷な条件下で使用されるため、高温多湿下での形状変化が小さいことや、優れた耐傷性、耐候性、耐油性も要求される。
【0005】
しかしながら、PMMA樹脂は、優れた透明性、耐候性を有するものの、耐熱性が十分ではないといった問題があった。一方、PC樹脂は、耐熱性、耐衝撃性に優れるものの、光学的歪みである複屈折率が大きく、成形物に光学的異方性が生じること、成形加工性、耐傷性、耐油性に著しく劣るといった問題があった。
【0006】
そのため、PMMAの耐熱性を改良する目的で、耐熱性付与成分としてマレイミド系単量体あるいは無水マレイン酸単量体等を導入した樹脂が開発されている。しかし、マレイミド系単量体は高価であると同時に反応性が低く、無水マレイン酸は熱安定性が悪いという問題があった。
【0007】
これらの問題点を解決する方法として、不飽和カルボン酸単量体単位を含有する共重合体を、押出機を用いて加熱して環化反応させることにより得られるグルタル酸無水物単位を含有する共重合体が開示されている。(特許文献1,2、3参照)
【0008】
また、耐衝撃性などの機械特性を改良する方法として、グルタル酸無水物含有単位を含有する共重合体に、ゴム質含有重合体を添加する方法が開示されている(特許文献4〜9参照)。しかしながら、これら特許文献に開示された方法においては、耐衝撃性などの機械特性はある程度改良される場合もあるが、耐衝撃性、引張破断伸度等の機械特性、耐熱性、流動性、色調(無色性)、耐溶剤性等に均衡して優れる組成物は得られなかった。さらに、樹脂組成物の透明性が著しく低下するといった問題点や、樹脂組成物の光弾性係数(複屈折)、すなわち光学異方性が大きいという問題点もあり、近年要求されるより高度な光学特性(透明性や光学等方性)を有しながら、良好な耐衝撃性などの機械特性が兼備する材料も得られていなかった。
【0009】
そこで、これらの問題を回避する新たな方法として、熱可塑性樹脂組成物中に多層構造重合体ゴム質含有体を含有させる方法が開示されている(特許文献8、9)。しかし、これら開示された方法においては、ゴム質含有体の不均質な分散により、機械的特性、光学的特性が低下したりすることが問題であった。最近の高性能光学フィルム用途においては、より一層の高性能化に伴い、フィルム上の異物、不均質箇所の存在が極めて少ない材料が求められており、これらの課題の解決は非常に重要なものとなってきた。
【特許文献1】特開昭49−85184号公報(第1−2頁、実施例)
【特許文献2】特開昭61−261303号公報(第1−2頁、実施例)
【特許文献3】特開2002−284816号公報
【特許文献4】特開昭60−67557号公報(第1−2頁、実施例)
【特許文献5】特開昭60−120734号公報(第1−2頁、実施例)
【特許文献6】特開平4−277546号公報(第1−2頁、実施例)
【特許文献7】特開平5−186659号公報(第1−2頁、実施例)
【特許文献8】特開2006−274118号公報
【特許文献9】特開2007−162013号公報
【特許文献10】特開2007−169626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明は、高度な耐熱性、無色透明性を有すると同時に、フィルム製膜時におけるフィルム上の異物の発生が極めて少ない、機械特性に優れた新規な光学フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、特定の最外層をもつ多層構造ゴム粒子を原料とし、それを熱成形することによりこの課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
即ち本発明は、
[1]多層構造重合体粒子中の最外層に熱可塑性樹脂層中の共重合体構造単位の中に、下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物構造単位を少なくとも有し、かつガラス転移温度が120℃以上200℃以下である共重合体を含む熱可塑性樹脂層(A)が,多層構造重合体粒子中に50質量%超99質量%以下、かつ多層構造重合体粒子中の内部に少なくとも1層以上のアクリル酸アルキルエステル単位および他の単量体単位を有する共重合体組成物からなるゴム成分層(B)50未満1質量%以上である2つ以上の層からなる多層構造重合体粒子を加熱成形してなる光学樹脂フィルムの製造方法。
【0013】
【化1】

【0014】
(上記式中、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す。)
[2]ゴム成分層(B)と熱可塑性樹脂層(A)との質量比が、(A)/(B)において50/50超〜99/1以下であることを特徴とする[1]記載の光学用樹脂フィルムの製造方法。
[3]多層構造重合体粒子を140℃以上で加熱することで成形することを特徴とする[1]または[2]記載の光学用熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[4]多層構造重合体粒子の一次粒子の平均粒子径が、0.05μmから0.5μmであることを特徴とする[1]から[3]いずれか1項記載の光学用樹脂フィルムの製造方法、
[5]熱可塑性樹脂層中の共重合体構造単位が、不飽和カルボン酸単量体単位および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体単位からなる共重合体を含む多層構造重合体を、加熱閉環によりグルタル酸無水物構造単位を生成させる工程と加熱成形する工程を同時に行うことを特徴とする[1]から[4]記載のいずれか1項である光学用熱可塑性樹脂フィルムの製造方法、
[6]共重合体が不飽和カルボン酸アルキルエステル単位50〜90質量%、および、不飽和カルボン酸単位10質量%以下を有するものである共重合体を熱可塑性樹脂層(A)に含むことを特徴とする[1]から[5]いずれか1項記載の光学用熱可塑性樹脂フィルムの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、高度な耐熱性、無色透明性を有すると同時に、フィルム製膜時におけるフィルム上の異物の発生を高度に抑制でき、かつ機械特性に優れた新規光学用樹脂フィルムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の多層構造重合体粒子について説明する。
【0017】
本発明における多層構造重合体粒子は、ゴム成分層(B)を内部に少なくとも1層有し、かつ熱可塑性樹脂成分層(A)を少なくとも最外層として有することを特徴とする。本発明の多層構造重合体粒子を構成する層の数は、2層以上であればよく、3層で構成されていても4層以上で構成されていてもよい。2層構造の場合は、層(B)(中心層)/層(A)(最外層)の構成であり、3層構造の場合は、層(B)(最内層)/層(B)(中間層)/層(A)(最外層)、層(B)(最内層)/層(A)(中間層)/層(A)(最外層)又は層(A)(最内層)/層(B)(中間層)/層(A)(最外層)の構成であり、4層構造の場合には、例えば、層(B)(最内層)/層(A)(中間層)/層(B)(中間層)/層(A)(最外層)の構成を有することができる。これらの中でも、取扱い性に優れる点において、層(B)(中心層)/層(A)(最外層)の2層構造が好ましい。
【0018】
本発明における熱可塑性樹脂層(A)は、多層構造重合体粒子中に50質量%超99%以下であり、好ましくは、70質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは、80質量%〜90質量%である。
【0019】
この範囲であれば、熱可塑性樹脂フィルムに成形した際、耐熱性を保つことができ、かつ製造において、ひび割れ等工程不良が起こりにくくなる等の利点を有する。
【0020】
本発明におけるゴム成分層(B)は、多層構造重合体粒子中に50質量部未満1%以上であり、好ましくは、5質量%〜30質量%であり、より好ましくは、10質量%〜20質量%である。この範囲であれば、熱可塑性樹脂フィルムに成形した際、製造に耐えうる柔軟性を保持することができ、また十分な耐熱性を保持するフィルムを得ることができる。
【0021】
なお、熱可塑性樹脂層(A)とゴム成分層(B)とが複数層ある場合は、その合計質量をその成分層量とする。
【0022】
本発明における多層構造重合体粒子の最外層は、熱可塑性樹脂共重合体で形成され、その中の共重合体の構造単位中に少なくとも、下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物構造単位を少なくとも有する。
【0023】
【化2】

【0024】
この際、上記式中、R、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを示す。また、これらは同一または相異なるものであってもよい。
【0025】
このうち、好ましいものとしては、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基であり、特に好ましいのは、水素原子、メチル基である。
【0026】
この共重合体中のグルタル酸無水物構造単位の含有率は、熱可塑性樹脂層(A)中の質量比において、通常50質量%以下であり、好ましくは、25〜50質量%であり、より好ましくは、30〜45質量%である。この範囲内であれば、、十分な耐熱性が得られるだけでなく、現在要求される光学フィルムに必要な複屈折特性(光学等方性)や耐溶剤性を満たすことができる。
【0027】
本発明における多層構造重合体粒子の最外層の熱可塑性樹脂共重合体のうち、グルタル酸無水物構造単位以外の共重合成分としては、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位または、不飽和カルボン酸単位であることが好ましい。
【0028】
本発明の熱可塑性重合体(A)における各成分単位の定量には、一般に赤外分光光度計やプロトン核磁気共鳴(H−NMR)測定機が用いられる。赤外分光法では、グルタル酸無水物含有単位は、1800cm−1および1760cm−1の吸収が特徴的であり、不飽和カルボン酸単位や不飽和カルボン酸アルキルエステル単位から区別することができる。また、H−NMR法では、スペクトルの積分比から共重合体組成を決定することができる。例えば、グルタル酸無水物含有単位、メタクリル酸単位、およびメタクリル酸メチル単位からなる共重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5〜1.5ppmのピークはメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびグルタル酸無水物環化合物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素である。
【0029】
上記不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を生成する不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、他のビニル化合物と共重合させることが可能ないずれの不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体も使用可能であり、下記一般式(2)で表される構造を有するものが好ましい。
【0030】
【化3】

【0031】
上記式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを示す。
【0032】
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の好ましい具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−へキシル、メタクリル酸n−へキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸クロロメチル、メタクリル酸クロロメチル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルおよびメタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどから形成される単量体単位であり、なかでもメタクリル酸メチルから形成される単量体単位が最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
不飽和カルボン酸アルキルエステル単位の含有量としては、50〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは50〜75質量%である、さらに好ましくは、55〜70質量%である。
【0034】
上記不飽和カルボン酸単位を生成する不飽和カルボン酸単量体としては、他のビニル化合物と共重合させることが可能ないずれの不飽和カルボン酸単量体も使用可能である。好ましい不飽和カルボン酸単量体として、下記一般式(3)で表される化合物、
【0035】
【化4】

【0036】
上記式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを示すものの他、マレイン酸、および無水マレイン酸の加水分解物から形成される単量体単位などが挙げられる。
【0037】
特に熱安定性が優れる点でアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上用いることができる。
【0038】
さらに、不飽和カルボン酸単位の含有量としては、10質量%以下、即ち0〜10質量%である、好ましくは、0〜5質量%である。不飽和カルボン酸単位が、10質量%を超える場合には、無色透明性、滞留安定性が低下する傾向にある。
【0039】
また、本発明における多層構造重合体粒子の最外層の熱可塑性樹脂共重合体(A)はガラス転移温度(Tg)が120℃以上であることが耐熱性の面で必要である。ガラス転移温度は、140℃以上がより好ましく、150℃以上が特に好ましい。また、上限としては、通常、170℃程度である。なお、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定したガラス転移温度(Tg)である。
【0040】
本発明における多層構造重合体粒子は、内部に少なくとも1層以上のアクリル酸アルキルエステル単位および他の単量体単位を有する共重合成分からなるゴム成分(B)を有する。
【0041】
上記アクリル酸アルキルエステルとしては、下記一般式(4)で表される化合物
【0042】
【化5】

【0043】
で表されるものである。この際、上記式中Rは、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基のうち少なくとも一つ以上の水酸基または、塩素原子、臭素原子、フッ素原子で置換されたものである。
【0044】
具体的に例示するならば、好ましいアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸2−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−へキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸クロロメチル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよびアクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられる。好ましくは、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−ブチル、アクリル酸n−へキシル、アクリル酸n−オクチルであり、より好ましくは、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−ブチル、アクリル酸n−へキシルである。これらはその1種または2種以上を用いることができる。但しこれらのものを選択するにおいて、その選択がゴム状態即ちTgが室温下になることを必須要件とする。
【0045】
上記アクリル酸アルキルエステル単位の含有量としては、ゴム成分層を構成する共重合成分中の 50〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは50〜75質量%である、さらに好ましくは、55〜70質量%である。
【0046】
本発明における多層構造重合体粒子の内部にあるゴム成分の他の単量体単位としては、上記アクリル酸アルキルエステル単位と共重合させることが可能な不飽和結合を有するものであればいずれも使用可能である。これらは、多官能単量体であっても良い。
【0047】
上記、共重合可能な他の単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミド、N−(クロロフェニル)マレイミド等のマレイミド系単量体;ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチル−3−エチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、3−メチル−1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、シクロペンタジエン、クロロプレン、ミルセン等の共役ジエン系単量体等が挙げられる。
【0048】
上記多官能性単量体としては、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する単量体であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸とアリルアルコール、メタリルアルコール等の不飽和アルコール又はエチレングリコール、ブタンジオール等のグリコールとのエステル;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸等のジカルボン酸と前記の不飽和アルコールとのエステル等が包含され、具体的には、アクリル酸アリル、アクリル酸メタリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸メタリル、桂皮酸アリル、桂皮酸メタリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、エチレンジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性単量体の中でも、メタクリル酸アリルが特に好ましい。なお、前記の「ジ(メタ)アクリレート」は、「ジアクリレート」と「ジメタクリレート」との総称を意味する。
【0049】
本発明における多層構造重合体粒子のゴム成分層中の共重合体と熱可塑性樹脂層中の共重合体の質量比は、50/50〜99/1が好ましい。より好ましくは、60/40〜95/15であり、さらに好ましくは、80/20〜90/10である。なお、(A)層と(B)層が複数ある場合は、それぞれの合計質量による比を意味する。
【0050】
また、層(B)と層(A)の質量比は、(A)/(B)において50/50超90/10以下の範囲内である。好ましくは、70/30〜95/5であり、より好ましくは、80/20〜90/10である。
【0051】
層(B)の割合がこの範囲より小さいと多層構造重合体粒子の耐衝撃性が不十分となり、反対に層(B)の割合がこの範囲より大きいと耐熱性が不十分となる。
【0052】
本発明は、特に光学フィルム用材料として用いられることから、ゴム成分層中の共重合体(B)と熱可塑性樹脂層中の共重合体(A)のそれぞれの屈折率が近似している場合、透明性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができるため、そのようなゴム成分層中の共重合体(B)と熱可塑性樹脂層中の共重合体(A)の組み合わせを選択することが好ましい。具体的には、両成分層中の共重合体の屈折率の差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。
【0053】
このような屈折率条件を満たすためには、熱可塑性樹脂層中の共重合体(A)の各単量体単位組成を調整する方法、および/またはゴム成分層中の共重合体(B)に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成を調製する方法などが挙げられる。
【0054】
なお、ここで言う屈折率差とは、ゴム成分層中の共重合体(B)と熱可塑性樹脂層中の共重合体(A)のそれぞれの23℃、測定波長:550nmにおける屈折率を測定し、その差の絶対値と定義する。
【0055】
本発明における多層構造重合体粒子は、1次粒子の平均粒径が、0.05μm〜0.5μmが好ましい。より好ましくは、0.1μm〜0.4μmであり、さらに好ましくは、0.1μm〜0.3μmである。
【0056】
上記の範囲未満では得られる熱可塑性組成物の衝撃強度が低下する傾向を生じ、上記の範囲を越えると透明性が低下する場合がある。なお、多層構造重合体の平均粒子径は、小角光散乱測定によるギニエプロットあるいは透過型電子顕微鏡写真にて100個の粒子直径を測定しその算術平均を求めることにより算出することができる。上記写真において真円状でない時、即ち楕円状の時は、粒子の長軸方向の径をその粒子径とする。
【0057】
本発明における、多層構造重合体粒子の製造は、通常公知のラジカル重合により重合し、必要であれば引き続き、加熱反応または化学反応を行うことにより実施可能である。
【0058】
好ましい方法としては、多層構造重合体粒子前駆体(C)を通常公知のラジカル重合により加熱し(イ)脱アルコール及び/又は(ロ)脱水による分子内環化反応を行わせることにより製造することができる。この場合、典型的には、共重合体を加熱することにより2単位の不飽和カルボン酸単位(iii)のカルボキシル基が脱水されて、あるいは、隣接する不飽和カルボン酸単位(iii)と不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(ii)からアルコールの脱離により1単位の前記グルタル酸無水物構造単位が生成される。
【0059】
上記の重合法については特に制限はなく、例えば、通常の多層構造重合体粒子を製造するための公知の重合法に準じて、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、またはこれらの組み合わせを採用することができる。
【0060】
例えば、乳化重合を用いる場合、好ましい反応媒体は、通常公知の水を使用するが、必ずしもこれに限定されるものではなく、有機溶媒、またはその混合溶媒でも良い。
【0061】
乳化重合の温度としては、必ずしも限定されないが、20〜120℃が好ましく、より好ましくは30〜100℃、とりわけ40〜90℃が分子量制御の点で好ましい。また、重合時間について、特に制限はないが、通常、30分〜10時間であり、1時間〜8時間が生産性の点で特に好ましい。
【0062】
乳化重合の際、使用する乳化剤としては、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、及びステアリン酸ナトリウム等の脂肪族のアルカリ金属塩;スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の脂肪族アルキルエステルスルホン化物のアルカリ金属塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族アルコール硫酸エステル塩;ロジン酸カリウム等のロジン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルアリルスルホン酸、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム等のポリアルキルエーテルスルホン酸塩、等が挙げられ、これらは、1種類ないし2種類以上の組み合わせで用いられる。
【0063】
乳化重合で使用する重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が一般的である。ラジカル重合開始剤の具体例としては、過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物を単独で用いることができる。また、ラジカル重合開始剤として、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機ハイドロパーオキサイド類と、遷移金属塩等の還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤を使用することができる。
【0064】
上記の多層構造重合体粒子を製造する場合、最外部の熱可塑性樹脂成分層およびゴム成分層を形成させるための重合反応において分子量調節剤を使用してもよい。この際の分子量調整剤の使用量は、本発明を損なわない範囲であり、左記基準において高々10重量%あれば十分であり、分子量調節剤の具体例としては、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ターピノーレン、ジペンテン、t−テルピネン及び少量の他の環状テルペン類よりなるテルペン混合物;クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これらの中でも、n−オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタンが好ましい。
【0065】
乳化重合によって得られる多層構造重合体粒子またはその前駆体の平均粒子径は乳化剤の添加量等の重合条件によって影響されるので、それらの条件を適宜選択することによって、容易に最終的な多層構造重合体粒子の平均粒子径を制御することができる。
【0066】
乳化重合後、生成した多層構造重合体粒子を重合反応系からの分離取得することにより、多層構造重合体粒子またはその前駆体を得ることができる。上記分離取得の方法は、公知の手法に従って行うことができ、例えば、酸析法、塩析法、スプレードライ法、凍結凝固法などを採用することができる。なお、分離取得された多層構造重合体粒子は、熱可塑性樹脂成分からなる最外層において粒子間相互で部分的に融着していても差し支えない。
【0067】
必要であれば、引き続き、加熱反応または化学反応を行うことにより、最外層の熱可塑性樹脂層の分子内環化反応を行うことにより、本発明の多層構造重合体粒子を得ることができる。
【0068】
本発明において加熱による分子内環化を行う場合、そのための加熱温度はイ)脱水および/または(ロ)脱アルコールにより分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、120℃〜300℃、より好ましくは200℃〜260℃である。加熱温度が120℃未満であると、環化反応が十分に行えず、300℃を越えると着色する傾向がある。
【0069】
上記分子内環化反応は、例えばベントを有する加熱した押出機を用いる方法や、不活性ガス雰囲気下または真空下で加熱脱気できる装置を用いる方法、非水系溶媒中における脱水反応―単離法で実施することができる。
【0070】
生産性の観点から、ベントを有する加熱した押出機を用いる方法が好ましい。特に好ましい装置として、例えば、”ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機、連続式またはバッチ式ニーダータイプの混練機などを用いることができ、とりわけ二軸押出機が好ましく使用することができる。
【0071】
また、この際の加熱脱揮する時間も特に限定されず、所望する共重合組成に応じて適宜設定可能であるが、通常、1分間〜60分間、好ましくは2分間〜30分間、とりわけ3〜20分間の範囲が好ましい。特に、押出機を用いて、十分な分子内環化反応を進行させるための加熱時間を確保するため、押出機のスクリュー直径(D)とスクリューの長さ(L)の比(L/D)が40以上であることが好ましい。L/Dの短い押出機を使用した場合、未反応の不飽和カルボン酸単位が多量に残存するため、吸湿による寸法安定性が低下する傾向がある。
【0072】
また、押出機の中でも、二軸・単軸複合型連続混練押出機を用いることにより、極めて無色透明性、機械特性に優れる熱可塑性重合体が得られる傾向があるため、好ましく使用することができる。ここで、二軸・単軸複合型連続混練押出機とは、押出機ケーシング内に、スクリュー部を形成した第1軸および第2軸が並列に配置された二軸スクリュー部、および二軸スクリュー部より延長された第1軸が配置された単軸スクリュー部を有し、かつ前記二軸スクリュー部と単軸スクリュー部の連通部に流量調節機構を備え、前記ケーシングに二軸スクリュー部に連通する原料供給口を備えるとともに、前記延長された第1軸の端部に連通する吐出口を備えた二軸・単軸複合型連続混練押出機を言い、市販されているこのタイプの押出機としては、CTE社製の「HTM型押出機」が挙げられる。原料となる共重合体(a)を、連続式で加熱処理し環化反応を進行させる際、反応の進行に従い、溶融粘度が高くなることに起因し、押出装置のせん断による発熱が大きくなり、分子主鎖の熱分解による着色が大きくなる傾向が見られる。また、該せん断発熱は、単軸スクリューよりも二軸スクリューで溶融混練した場合に大きくなる。一方、反応速度の観点からは、二軸スクリューで溶融混練することが好ましい。以上のことから、特定の二軸・単軸複合型連続混練押出機を用いることにより、溶融粘度が比較的低い反応初期段階では、二軸スクリューで、十分な反応速度を確保しながら、溶融粘度が比較的高くなる反応後期段階では、せん断発熱を抑制した単軸スクリュー部で加熱処理することにより、分子主鎖の熱分解が抑制されたため、得られるグルタル酸無水物含有単位を含有する熱可塑性樹脂(C)は色調、機械特性に優れるものと推察される。
【0073】
さらに本発明では、熱可塑性樹脂層中の共重合体(A)を上記方法等により加熱する際にグルタル酸無水物への環化反応を促進させる触媒として、酸、アルカリ、塩化合物の1種以上を添加することができる。その添加量は特に制限はなく、熱可塑性樹脂層中の共重合体(A)100重量部に対し、0.01〜1重量部程度が適当である。また、これら酸、アルカリ、塩化合物の種類についても特に制限はなく、酸触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類、水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。さらに、塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩等が挙げられる。ただし、その触媒保有の色が熱可塑性重合体の着色に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加する必要がある。中でも、アルカリ金属を含有する化合物(アルカリ金属化合物)が、比較的少量の添加量で、優れた反応促進効果を示すため、好ましく使用することができる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムフェノキシド等のアルコキシド化合物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩等が挙げられ、とりわけ、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムが好ましく使用することができる。
【0074】
また、本発明の多層構造重合体粒子中の熱可塑性樹脂層(A)およびゴム成分層(B)には本発明の目的を損なわない範囲で、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、およびシアノアクリレート系の紫外線吸収剤および酸化防止剤、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ハロゲン系難燃剤、リン系やシリコーン系の非ハロゲン系難燃剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、顔料、染料、蛍光増白剤などの着色剤などの添加剤を任意に含有させてもよい。ただし、適用する用途が要求する特性に照らし、その添加剤保有の色が熱可塑性樹脂層およびゴム成分層を構成する重合体に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加することが好ましい。
【0075】
本発明の多層構造重合体粒子は、引き続きフィルム製造の工程の原料として供される。
【0076】
本発明においては上記多層構造重合体粒子を用いて加熱成形することでフィルムにした場合、耐熱性、耐薬品性に対して効果があると考えられる場合、この特徴を活かすためには、成形に供する原料として、本多層構造重合体粒子を全てでフィルム化してもよいが、本多層構造重合体粒子を80質量%以上含むことが好ましい。この際、添加剤として、本発明の目的を損なわない範囲内で、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、およびシアノアクリレート系の紫外線吸収剤および酸化防止剤、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ハロゲン系難燃剤、リン系やシリコーン系の非ハロゲン系難燃剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、顔料、染料、蛍光増白剤などの着色剤などの添加剤を含有させてもよい。ただし、適用する用途が要求する特性に照らし、その添加剤保有の色が熱可塑性樹脂層およびゴム成分層を構成する重合体に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加することが好ましい。
【0077】
本発明の多層構造重合体粒子からなるフィルムの製造方法には、公知の方法を使用することができる。すなわち、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルション法、ホットプレス法等の製造方法が使用できる。好ましくは、インフレーション法、T−ダイ法、キャスト法またはホットプレス法が使用できる。インフレーション法やT−ダイ法による製造法の場合、単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。
【0078】
本発明のフィルムを製造するための溶融押出温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。また、溶融押出装置を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し減圧下での溶融混練あるいは窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。
【0079】
また、流延法により本発明のフィルムを製造する場合、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の溶剤が使用可能である。好ましい溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン等である。該フィルムは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を前記の1種以上の溶剤に溶かし、その溶液をバーコーター、Tダイ、バー付きTダイ、ダイ・コートなどを用いて、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱フィルム、スチールベルト、金属箔などの平板または曲板(ロール)上に流延し、溶剤を蒸発除去する乾式法、あるいは溶液を凝固液で固化する湿式法等を用いることにより製造できる。
【0080】
また、これまで本発明における多層構造重合体粒子を製造する工程とフィルム製膜を区分したが、本発明では、多層構造重合体粒子前駆体とフィルム製膜における加熱製膜を同時に実施してもよい。この際、多層構造重合体粒子前駆体は、前記に示した方法で多層構造重合体前駆体(C)を得、得られた多層構造重合体粒子前駆体(C)を、引き続きフィルム製造の工程の原料として供される。上記のごとく、多層構造重合体粒子前駆体(C)から直接フィルムを製造する場合の製造方法は、公知の方法を使用することができる。すなわち、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルション法、ホットプレス法等の製造方法が使用できる。好ましくは、インフレーション法、T−ダイ法、キャスト法またはホットプレス法が使用できる。インフレーション法やT−ダイ法による製造法の場合、単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。
【0081】
上記のごとく、連続でフィルムを製造するための溶融押出温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。また、溶融押出装置を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し減圧下での溶融混練あるいは窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。また、この際、グルタル酸無水物への環化反応を促進させる触媒として、酸、アルカリ、塩化合物の1種以上を添加することができる。その添加量は特に制限はなく、多層構造重合体粒子前駆体(C)100重量部に対し、0.01〜1重量部程度が適当である。また、これら酸、アルカリ、塩化合物の種類についても特に制限はなく、酸触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類、水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。さらに、塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩等が挙げられる。ただし、その触媒保有の色が熱可塑性重合体の着色に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加する必要がある。中でも、アルカリ金属を含有する化合物(アルカリ金属化合物)が、比較的少量の添加量で、優れた反応促進効果を示すため、好ましく使用することができる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムフェノキシド等のアルコキシド化合物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩等が挙げられ、とりわけ、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムが好ましく使用することができる。
【0082】
また、上記のごとく、多層構造重合体粒子前駆体(C)から連続でフィルムを製造する際にも、本発明の目的を損なわない範囲内で、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、およびシアノアクリレート系の紫外線吸収剤および酸化防止剤、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ハロゲン系難燃剤、リン系やシリコーン系の非ハロゲン系難燃剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、顔料、染料、蛍光増白剤などの着色剤などの添加剤を任意に含有させてもよい。ただし、適用する用途が要求する特性に照らし、その添加剤保有の色が熱可塑性樹脂層およびゴム成分層を構成する重合体に悪影響を及ぼさず、かつ透明性が低下しない範囲で添加することが好ましい。
【0083】
かくして得られる本発明でのフィルムは、その優れた耐熱性および機械特性を活かして、電気電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、一般雑貨など種々の用途に用いることができる。
【0084】
本発明で得られるフィルムは、特に、透明性および耐熱性に優れている点から、映像機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTV等の撮影用レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ等、光記録または光通信関連部品として各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板、各種ディスク基板保護フィルム、光ディスクプレイヤーピックアップレンズ、光ファイバー、光スイッチ、光コネクター等、情報機器関連部品として、液晶ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイの導光板、フレネルレンズ、偏光板、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、ピックアップレンズ、タッチパネル用導電フィルム、カバー等、自動車等の輸送機器関連部品として、テールランプレンズ、ヘッドランプレンズ、インナーレンズ、アンバーキャップ、リフレクター、エクステンション、サイドミラー、ルームミラー、サイドバイザー、計器針、計器カバー、窓ガラスに代表されるグレージング等、医療機器関連部品として、眼鏡レンズ、眼鏡フレーム、コンタクトレンズ、内視鏡、分析用光学セルの部材等、建材関連部品として、採光窓、道路透光板、照明カバー、看板、透光性遮音壁、バスタブ用材料の部材等の用途にとって極めて有用である。
【0085】
本発明で製造されるフィルムでは、従来知られていた熱可塑性樹脂とゴム質含有共重合体との混合により得る方法に比べ、ゴム成分が非常に均質に分散すること、また、フィルム製膜工程時のガス発生が大幅に低減できることから、高品質な光学用樹脂フィルムを得ることができる。
【0086】
また、本発明の方法によれば、これまで熱可塑性樹脂とゴム質含有体の2つの重合工程を必要としていたものが、単一の重合工程に集約することができることから、従来の方法に比べ大幅に製造工程の簡略化ができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、実施例で使用した各種物性の測定方法を記載する。
【0088】
(1)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定し。最外層のガラス転移温度の測定を行った。
【0089】
(2)熱可塑性樹脂層の成分組成
熱可塑性樹脂層中の共重合体組成を決定するために、以下の方法を行った。テトラヒドロフラン50cc中に、多層構造重合体粒子を5g加え、加熱還流下にて5時間攪拌した。得られた反応液を遠心分離機(重力加速度の10000倍の条件下 30分)にて、不溶分を沈殿させ得られたろ液を濃縮乾固した。乾固により得られた生成物を重ジメチルスルホキシド中、30℃で H−NMRを測定し、各共重合単位の質量比の組成決定を行った。
【0090】
(3)赤外分光光度測定
赤外分光光度計 (Perkin Elmer社製System2000)で測定し、グルタル酸無水物含有単位の特徴的ピークである1800cm−1および1760cm−1の吸収ピークの有無により、グルタル酸無水物含有単位の生成を確認した。
【0091】
(4)粒子径
透過型電子顕微鏡写真にて、任意粒子の100個の平均をとり、数平均を算出した。
【0092】
上記写真において真円状でない時、即ち楕円状の時は、粒子の長軸方向の径をその粒子径とする。
【0093】
(5)滞留安定性(ガス発生量)
測定対象となる、多層構造重合体粒子または熱可塑性共重合体ペレットを80℃で12時間予備乾燥し、280℃に温調した加熱炉内で30分間加熱処理した前後での重量を測定し、下式により算出した重量減少率を滞留時の発生ガス量として評価した。
重量減少率(%)=[(加熱処理前重量−加熱処理後重量)/加熱処理前重量]×100。
【0094】
(6)透明性(ヘイズ)
得られた平均厚みが40μmのフィルムを、東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを用いて、23℃でのヘイズ(曇度)(%)を測定し、透明性を評価した。
【0095】
(7)フィルム上の異物評価
得られたフィルム中、任意箇所の20cm×50cm角(1000cm)を蛍光灯に翳し、目視で観察される異物数をカウントした。
【0096】
(8)光学等方性バラツキ
得られた平均厚みが40μmのフィルム中、任意の10箇所を選択し、ASTM D542に準じて従って、エリプソメーター(大塚電子株式会社製、LCDセルギャップ検査装置 RETS−1100)を用いて23℃で、レーザー光をフィルムサンプル面に対して90°の角度で照射し、透過光の633nmでのリターデーション(Re)を測定した。測定値10点の最大値と最小値の差を光学特性バラツキの指標とした。
【0097】
(9)フィルムの耐熱性
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用い、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で測定し。フィルム状態での耐熱性の確認を行った。最外層のガラス転移温度の測定を行った。
【0098】
(10)引張伸度
127mm×12.7mm×0.1mmの短冊状フィルムサンプルを用い、ASTM D−638に準じて引張破断伸度を測定し、引張伸度とした。
【0099】
(11)フィルム内の多層構造重合体粒子の分散性
透過型電子顕微鏡写真にて、フィルム内に存在する粒子の分散状態を観察し、分散性を評価した。写真中の任意の粒子100個を観察し、粒子の融着により粒子径が増加しているものの個数が20個以下であるものを○、個数が30個以下であるものを△、それ以外のものを×として評価を行った。粒子融着による粒子径増加が31個以上のものは、フィルムの靭性が悪化し、フィルムにした場合、フィルムが割れやすくなる。
【0100】
(12)総合評価
総合評価は前記(1)〜(12)の結果を参考に、総合評価を行った。◎実用性に優れる。○実用性がある。×:実用性に劣る。
【0101】
参考例1〜5 多層構造重合体粒子および前駆体の製造
乳化重合による、多層構造重合体粒子の製造法につき、代表例として、参考例1のものを下記に詳述する。参考例2〜5については、各成分を表1に示した以外は、同様に実施した。
【0102】
(X−1)
窒素雰囲気下、撹拌翼、冷却管を装着した重合器に、脱イオン水100質量部及び乳化剤としてラテムルE−118B(花王製)1質量部、ピロリン酸ナトリウム0.01質量部を加え、80℃に加熱した。次いで、同温度においてn−ブチルアクリレート3質量部、スチレン1質量部を加え、過硫酸カリウム0.01質量部を加え重合を開始した。1時間後、ガスクロマトグラフィーで各単量体が全て消費されたことを確認した。次いで、得られた共重合体ラテックスに、脱イオン水57質量部、n−ブチルアクリレート57質量部、スチレン20質量部、1,4−ブタンジオールジアクリレート4質量部、ピロリン酸ナトリウム0.2質量部、過硫酸カリウム0.1質量部を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応を続け、原料が全て消費されたことをガスクロマトグラフィーで確認し、共重合体ラテックスを得た。さらに得られた共重合体ラテックスに、脱イオン水35質量部、ラテムルE−118B(花王製)2質量部、メチルメタクリレート25質量部、メタクリル酸10質量部、ピロリン酸ナトリウム0.1質量部、過硫酸カリウム0.1質量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応を続け、原料が全て消費されたことをガスクロマトグラフィーで確認し、多層構造重合体ラテックスを得た。
【0103】
このラテックスを−30℃に24時間冷却して凍結凝集させた後、凝集物を融解させて取り出した。これを50℃で2日間減圧乾燥して、凝集粉末状の2層型の多層構造重合体粒子前駆体を得た。この平均粒径は、170nmであった。
【0104】
【表1】

【0105】
参考例6〜9
参考例1〜4で得られた多層構造重合体粒子前駆体を下記の方法で加熱することにより、多層構造重合体粒子を得た。代表例として、参考例6のものを下記に示す。参考例6〜7については、同条件で、参考例7〜9については、温度を低下させることにより多層構造重合体粒子の
生成の検討を行った。結果を表2に示す。
【0106】
得られた多層構造重合体粒子前駆体を真空オーブンに入れ、180℃で240分、減圧度10torrで加熱処理を行い、多層構造重合体粒子を得た。得られた、重合体粒子を赤外分光光度計にて確認を行ったところ、グルタル酸無水物骨格を示すピークが存在することがわかった。透過型電子顕微鏡から平均粒子径は188nmであった。
【0107】
上記の参考例5から9で得られたゴム質含有共重合体は、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いてシリンダ温度280℃、スクリュー回転数100rpmで混練し、ペレット状体にし、実施例1および2、比較例1〜3の原料とした。
【0108】
【表2】

【0109】
参考例15
従来から知られている熱可塑性樹脂組成物と多層構造重合体粒子から得られるフィルムを比較の対象とすべく、以下のように合成を行った。
【0110】
熱可塑性重合体(A−1)の作成
メタクリル酸メチル20重量部、アクリルアミド80重量部、過硫酸カリウム0.3重量部およびイオン交換水1500重量部を反応器中に仕込み、反応器中を窒素ガスで置換しながら70℃に保った。単量体が完全に、重合体に転化するまで反応を続け、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体の水溶液を得た。得られた水溶液を懸濁剤として使用した。容量が5リットルで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、前記のメタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体懸濁剤0.05重量部をイオン交換水165重量部に溶解した溶液を供給し、400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、70℃に昇温した。内温が70℃に達した時点を重合開始として、180分間保ち、重合を終了した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行い、ビーズ状の共重合体(a−1)を得た。この共重合体(a−1)の重合率は98%であった。
メタクリル酸 28重量部
メタクリル酸メチル 72重量部
t−ドデシルメルカプタン 1.2重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部。
【0111】
次いで、得られた(a−1)を、流量調節バルブを備えた非噛合異方向回転の二軸・単軸複合型連続混練押出装置であるHTM38mm(二軸部分L/D=34、単軸部分L/D=14、CTE社製)を用いて、酢酸リチウム(LiOAc)0.2部を添加し、原料供給速度10kg/h、スクリュー回転数:75rpm、シリンダ温度285〜305℃で分子内環化反応を行い、ペレット状の熱可塑性重合体(A−1)を得た。尚、ホッパー部より窒素を10L/分の量でパージしながら反応を行った。
【0112】
得られた熱可塑性重合体(A−1)を、赤外分光光度計を用いて分析した結果、いずれも1800cm−1及び1760cm−1に吸収ピークが確認され、この熱可塑性重合体(A−1)中にグルタル酸無水物単位が形成していることを確認した。
【0113】
ゴム質含有重合体(B−1)の作成
冷却器付きのガラス容器(容量5リットル)内に脱イオン水120重量部、炭酸カリウム0.5重量部、スルフォコハク酸ジオクチル0.5重量部および過硫酸カリウム0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌後、アクリル酸ブチル51重量部、スチレン19重量部およびメタクリル酸アリル(架橋剤)1重量部を仕込んだ。これら混合物を70℃で30分間反応させて、コア層重合体を得た。次いで、メタクリル酸メチル21重量部、メタクリル酸9重量部および過硫酸カリウム0.005重量部の混合物を90分かけて連続的に添加し、さらに90分間保持して、シェル層を重合させた。この重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥して、2層構造のゴム質含有重合体(B−1)を得た。電子顕微鏡で測定したこの重合体粒子の平均一次粒子径は150nm(0.15μm)であった。なお、この平均一次粒子径の測定は、2万倍の電子顕微鏡を用い、任意の100個について一次粒子径を測定し、平均したものとする。
【0114】
上記のA−1で得られた熱可塑性重合体80質量部、およびB−1で得られたゴム質重合体質量部を配合し、2軸押出機(TEX30(日本製鋼社製、L/D=44.5)を用いてシリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpmで混練し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。これを比較例4の原料とした。本方法では、重合工程が2工程必要なことから、フィルム製膜を行うまでの肯定の負荷が高く、非効率であることが容易にわかる。
【0115】
実施例1〜2、比較例1〜4 フィルムの製造方法
参考例5〜9で得た多層構造重合体粒子および参考例15で得た熱可塑性樹脂組成物を40mmφのベント付き単軸押出機に供し、280℃で20kg/hの速度で、幅200mmのフィルム製造用T−ダイから押出し、ポリッシングロールに供し、平均フィルム厚みが約40μmのフィルムを得た。その評価結果を表3に示す。
【0116】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造重合体粒子中の最外層に熱可塑性樹脂層中の共重合体構造単位の中に、下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物構造単位を少なくとも有し、かつガラス転移温度が120℃以上200℃以下である共重合体を含む熱可塑性樹脂層(A)が,多層構造重合体粒子中に50質量%超99質量%以下、かつ多層構造重合体粒子中の内部に少なくとも1層以上のアクリル酸アルキルエステル単位および他の単量体単位を有する共重合体組成物からなるゴム成分層(B)50質量%未満1質量%以上である2つ以上の層からなる多層構造重合体粒子を加熱成形してなる樹脂フィルムの製造方法。
【化1】

(上記式中、R、Rは、同一または相異なるものであり、水素原子および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれるいずれかを表す。)
【請求項2】
ゴム成分層(B)と熱可塑性樹脂層(A)との質量比が、(A)/(B)において50/50超〜99/1以下であることを特徴とする請求項1記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
多層構造重合体粒子を140℃以上で加熱することで成形することを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
多層構造重合体粒子の一次粒子の平均粒子径が、0.05μmから0.5μmであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂層中の共重合体構造単位が、不飽和カルボン酸単量体単位および不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体単位からなる共重合体を含む多層構造重合体を、加熱閉環によりグルタル酸無水物構造単位を生成させる工程と加熱成形する工程を同時に行うことを特徴とする請求項1から4記載のいずれか1項である熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
共重合体が不飽和カルボン酸アルキルエステル単位50〜90質量%、および、不飽和カルボン酸単位10質量%以下を有するものである共重合体を熱可塑性樹脂層(A)に含むことを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2009−203435(P2009−203435A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50081(P2008−50081)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】