説明

耐熱性導電性接着剤

【課題】高耐熱性で、金属に対する付着性の良い導電性接着剤を提供する。
【解決手段】有機無機ハイブリッド樹脂または超高分子ポリアミドを基体とした導電性接着剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱性で金属に対する付着性の良い導電性接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型、軽量化に伴い、素子接続用のポストソルダリング技術として、また、鉛ハンダの代替を目的に多くの導電性接着剤が開発、市販されてきた。
これらの接着剤に使用されている樹脂は、エポキシ樹脂が一般的であるが要求特性や使用箇所に応じて、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、その他の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が使用される。特に、高耐熱性を要求する用途ではエポキシ樹脂やポリイミド樹脂が使用されている。
その詳細は、例えば、以下に示す非特許文献1〜5などに報告されている。しかし、一般的に、エポキシ樹脂は接着力は優れているが200℃以上の温度では熱分解により、接着力は著しく低下する。一方、ポリイミド樹脂は耐熱性は優れているが接着力は弱いという欠点を有する。
【非特許文献1】はんだ代替導電性接着剤:エレクトロニクス実装学会誌Vol.12 No.2,P.147−153(1999)、同No.5,P.14−17(2002)
【非特許文献2】はんだ代替用導電性接着剤:電子材料、11月、P.81−84(2000)
【非特許文献3】導電性接着剤:日本接着学会誌Vol.38 No.12(2002)
【非特許文献4】導電性接着剤:Web版CMCReport」2002/09/19記載
【非特許文献5】エレクトロニクスを支える接着技術:東レリサ−チセンタ−2003年3月発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、耐熱性と金属に対する高度の付着性を合わせ有する新規な導電性接着剤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究の結果、基体樹脂に有機無機ハイブリッド樹脂または超高分子ポリアミド樹脂を使用した導電性接着剤が効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、次の通りである。
第1の発明は、有機無機ハイブリッド樹脂または超高分子ポリアミド粉末および導電性粉末からなる導電性接着剤であることを特徴とする。
第2の発明は、有機無機ハイブリッド樹脂が分子中にアルコキシシリル基を有する、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミドおよび加水分解性アルコキシシランまたはその縮合物を包含してなることを特徴とする。
第3の発明は、超高分子ポリアミド粉末が超高分子ポリアミドイミド粉末であることを特徴とする。
第4の発明は、超高分子ポリアミド粉末または超高分子ポリアミドイミド粉末とポリシロキサンまたはシリコーンカップリング剤を包含してなることを特徴とする。
第5の発明は、酸化防止剤を包含してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明に基づく導電性接着剤は、一液性で作業性および貯蔵安定性がよく、その硬化物は耐熱性および金属に対する接着性に優れていることから電気、電子機器や産業機械分野で、特に、高耐熱性を必要とする接着部で幅広く用いることが出来る。また、鉛フリーであり、ハンダ代替接合剤としても有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について詳細に説明する。
発明の導電性接着剤の基体となる有機無機ハイブリッド樹脂は、分子中にアルコキシシラン基を含む樹脂であり、更に詳しくは分子の両末端または分子中にペンダントしたアルコキシシラン基を含む樹脂である。骨格となる樹脂は、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、フッ素樹脂などであるが使用目的によって選定される。これらシラン変性樹脂の製造法は、例えば特開2000−63661、特開2001−240670、特開2002−179762などに例示されるが、特に、これら製造方法に限定されるものではない。
該シラン変性樹脂は、加水分解性アルコキシシランまたはその縮合体と併用したり、単独で使用する。
【0007】
本発明の超高分子ポリアミドまたは超高分子ポリアミドイミド粉末は、分子量が10万以上の分子量であり、射出または押出成形に使用されるレベルのものが対象となる。
これらの樹脂は、一般的に、分子量が10万以上と高いため通常の有機溶剤には溶解し難いので50ミクロン以下の微粒子として難溶解性の有機溶剤に分散させて使用する。ポリアミドまたはポリアミドイミド粉末は単独または混合して使用するが目的に応じて、ポリシロキサンやシリコーンカップリング剤を併用しても良い。
【0008】
導電性接着剤は、一般的にペーストとして使用されるので上記樹脂に流動性や構造粘性を付与するため、更に、有機溶剤や油類またはシリカを添加することがある。
また、長期間の耐熱性保持のため、高融点のフェノール系酸化防止剤を添加しても良い。
本発明の導電性接着剤は、上記樹脂成分と導電性フィラーから構成される。
導電性フィラーとしては、金粉、銀粉、銅粉、ニッケル粉、アルミ粉、メッキ粉、カーボン粉、グラファイト粉、低融点合金(ハンダ)の金属粉、酸化亜鉛や酸化インジュウムなどの金属粉末、金属を被覆したポリマー粒子、金属繊維や炭素繊維などが使用される。
【0009】
本発明に基づく導電性接着剤は、固形分で樹脂成分10−50重量%および導電性フィラー50−85重量%からなり、他に、接着剤の粘性を調整するために有機溶剤や植物油または鉱油を適宜使用する。
導電性接着剤は、体積固有抵抗が1Ωcm以下になるように配合設計し、各成分をロールミルなどで強制分散させることにより作られる。
該導電性接着剤を使用するにあたり、被塗物である金属の接着表面にペーストを塗布し、100−120℃で予備乾燥後、200−250℃で10−60分加熱硬化させるだけでよく、なんら金属表面への表面処理を必要としない。
【実施例】
【0010】
以下実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0011】
[実施例1−6]
表1.に示す樹脂、銀粉、亜麻仁油をディスパーで分散し、ペースト状の導電性接着剤を作成した。これを40mm×10mm×0.8mmサイズの銅板の2/3部分に薄く塗布し、この上に同サイズのニッケル板を重ね合わせ、120℃で10分予備乾燥した後、250℃で加熱硬化した。硬化後の各試料の接着性および導電性も表1に示した。
(試験方法)
1.接着性
硬化加熱後の銅板とニッケル板との張り合わせ試験片を接着剤が塗布されていない部分から手で剥離し、その度合いを○、△、×印の三段階で評価した。
○:強い力でも剥離しない。△:強い力で剥離する。×:弱い力で剥離する。
尚、接着性は加熱硬化後の初期、200℃雰囲気下1週間および2週間後に評価した。
2.導電性(体積固有抵抗Ωcm)
DSTM−101に基づく。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明に基づく導電性接着剤は、電気、電子機器や産業機械分野で、特に、高耐熱性を必要とする接着部で幅広く用いることが出来る。また、鉛フリ−であり、ハンダ代替接合剤としても有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機無機ハイブリッド樹脂または超高分子ポリアミド粉末および導電性粉末からなる導電性接着剤。
【請求項2】
有機無機ハイブリッド樹脂が分子中にアルコキシシリル基を有する、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、フッ素樹脂および加水分解性アルコキシシランまたはその縮合物を包含してなる請求項1記載の導電性接着剤。
【請求項3】
超高分子ポリアミド粉末が超高分子ポリアミドイミド粉末である請求項1記載の導電性接着剤。
【請求項4】
超高分子ポリアミド粉末または超高分子ポリアミドイミド粉末とポリシロキサンまたはシリコーンカップリング剤を包含してなる請求項1又は3記載の導電性接着剤。
【請求項5】
酸化防止剤を包含してなる請求項1から4のいずれかに記載の導電性接着剤。

【公開番号】特開2007−51272(P2007−51272A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159611(P2006−159611)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(592262532)ダイセー工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】