説明

耐熱摩擦板材料およびその製造方法

【課題】常温または高温時において安定した摩擦係数を有すると共に、高い耐久性を有し、長期間に渡って信頼性を維持することができる耐熱摩擦板材料を提供すること。
【解決手段】シート状基材に、ポリアミドイミド樹脂組成物を含浸し加熱硬化してなる耐熱摩擦板材料であって、前記ポリアミドイミド樹脂組成物として、(A)ポリアミドイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、および(C)無機フィラーを必須成分として含有し、かつ硬化物の5%質量減少温度が400℃以上となるものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱摩擦板材料およびその製造方法に係り、特に常温または高温時において安定した摩擦係数を有すると共に、高い耐久性を有し、自動車用部品として好適に用いられる耐熱摩擦板材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦板材料は、自動車等の動力伝達あるいは制動の用途に用いられており、例えばブレーキライニング、ディスクパッド、クラッチフェーシング等として用いられている。従来、このような摩擦板材料における繊維材としては石綿が使用されていたが、石綿公害を防止するために非石綿繊維材が使用されるようになっている。非石綿繊維材として、例えばガラス繊維、炭素繊維、ロックウール、セラミック繊維等の無機繊維、芳香族ポリアミド繊維等の有機繊維、各種のスチールファイバが使用されるようになっている。そして、このような繊維材をフェノール樹脂等の結合剤で結合することにより摩擦板材料が形成されている。
【0003】
しかし、摩擦板材料における結合剤の耐熱性が不十分であると、自動車等に装着して使用した際に温度上昇に伴って結合力が低下し、結果としてその寿命が短くなる。このため、結合剤として耐熱性に優れ、高強度であるポリアミドイミド樹脂を用いることが検討されている。
【0004】
このようなポリアミドイミド樹脂を用いたものとして、例えばシート状の裏打材の上に摩擦材層を形成した摩擦材であって、摩擦材層を、ガラス繊維およびアラミド繊維の各短繊維を含む繊維材、銅粉を含む摩擦調整材、並びに摩擦材層に対し固形分で10〜60重量%のポリアミドイミド樹脂を含む結合剤からなるものとしたものが提案されている。このような構成とすることで、高温、高負荷の条件下でも安定した摩擦係数および耐摩耗性を得ることができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、例えばポリアミドイミド樹脂に添加剤を混合した後、加熱加圧成形して得られるブレーキ材であって、ポリアミドイミド樹脂10〜15体積%に、添加剤として、繊維材5〜30体積%、無機質フィラー20〜45体積%、および有機質フィラー10〜25体積%を混合したものが提案されている。このような構成とすることで、耐摩耗性に優れ、相手材に対する攻撃性も低く、熱間時に高い性能を発揮するものとすることができるようになっている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平3−149284号公報
【特許文献2】特開平8−109937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、摩擦板材料に求められる要求特性は益々高くなっており、単にポリアミドイミド樹脂のような耐熱性に優れる結合剤を用いただけでは、要求特性を満たすことが難しくなっている。また、摩擦板材料を熱処理することで特性を向上させることも検討されているが、従来の摩擦板材料については400℃以上での熱処理が難しく、このような方法によってこれまで以上に特性を向上させることは難しくなっている。
【0007】
また、例えば自動車等に用いられるクラッチフェーシングのようにエンジンから駆動系への動力の伝達・制御に使用される摩擦板材料については小型化が求められており、このように小型化されたものについては破損しやすく、長期間の使用による摩耗も激しくなる。特に、エンジンの出力が高い場合に、このような問題の発生が顕著となる。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、常温または高温時において安定した摩擦係数を有すると共に、高い耐久性を有し、長期間に渡って信頼性を維持することができる耐熱摩擦板材料を提供することを目的としている。また、本発明は、このような常温または高温時において安定した摩擦係数を有すると共に、高い耐久性を有し、長期間に渡って信頼性を維持することができる耐熱摩擦板材料を製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の耐熱摩擦板材料は、シート状基材に、ポリアミドイミド樹脂組成物を含浸し加熱硬化してなる耐熱摩擦板材料であって、前記ポリアミドイミド樹脂組成物は、(A)ポリアミドイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、および(C)無機フィラーを必須成分として含有し、かつ硬化物の5%質量減少温度が400℃以上となるものであることを特徴としている。
【0010】
本発明の耐熱摩擦板材料においては、前記ポリアミドイミド樹脂は、トリカルボン酸無水物と、芳香族ジアミンとを重縮合して得られたものであることが好ましい。また、前記(B)エポキシ樹脂が、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂およびトリアジン骨格エポキシ樹脂の中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
本発明の耐熱摩擦板材料の製造方法は、(A)ポリアミドイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、および(C)無機フィラーを必須成分として含有し、かつ硬化物の5%質量減少温度が400℃以上となるポリアミドイミド樹脂組成物をシート状基材に含浸させた後、加熱硬化させて成形体を得る工程と、前記成形体を400℃以上550℃以下で加熱処理する工程とを具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の耐熱摩擦板材料によれば、(A)ポリアミドイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、および(C)無機フィラーを必須成分として含有し、かつ硬化物の5%質量減少温度が400℃以上となるポリアミドイミド樹脂組成物をシート状基材に含浸し、加熱硬化してなるものとすることで、加熱硬化後にポリアミドイミド樹脂組成物を劣化させることなく400℃以上で加熱処理することができ、これにより揮発成分を有効に除去すると共に、加熱硬化時に加圧した場合にはそれにより発生する残留圧縮応力を有効に解放することができ、常温または高温時において安定した摩擦係数を有すると共に、高い耐久性を有し、長期間に渡って信頼性を維持するものとすることができる。
【0013】
また、本発明の耐熱摩擦板材料の製造方法によれば、(A)ポリアミドイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、および(C)無機フィラーを必須成分として含有し、かつ硬化物の5%質量減少温度が400℃以上となるポリアミドイミド樹脂組成物をシート状基材に含浸させた後、加熱硬化させて成形体を得る工程と、この成形体を400℃以上550℃以下で加熱処理する工程とを行うものとすることで、揮発成分を有効に除去すると共に、加熱硬化時に加圧した場合にはそれにより発生する残留圧縮応力も有効に解放することができ、常温または高温時において安定した摩擦係数を有すると共に、高い耐久性を有し、長期間に渡って信頼性を維持する耐熱摩擦板材料を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の耐熱摩擦板材料とその製造方法について説明する。
本発明の耐熱摩擦板材料は、例えば自動車等の動力伝達あるいは制動の用途に用いられる部品、具体的にはブレーキライニング、ディスクパッド、クラッチフェーシング等として好適に用いられるものであり、シート状基材にポリアミドイミド樹脂組成物を含浸し加熱硬化してなるものであって、該ポリアミドイミド樹脂組成物として、(A)ポリアミドイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、および(C)無機フィラーを必須成分として含有し、かつ硬化物の5%質量減少温度が400℃以上となるものを用いたことを特徴としている。
【0015】
上記5%質量減少温度はTG−DTA等で測定されるものである。TG−DTAは、まずDTA(Differential Thermal Analysis:示差熱分析)で、試料および基準物質を熱的に均一な電気炉中に載置して一定速度で加熱・冷却し、試料と基準物質との温度差を熱電対で検出、増幅して示差熱曲線を測定すると同時に、TG(Thermo Gravimetry:熱重量測定)、すなわち温度変化に伴う試料の重量変化を測定する方法である。
【0016】
この測定方法による5%質量減少温度は、試料、すなわちポリアミドイミド樹脂組成物を昇温しながら重量減少を測定し、重量減少が5質量%に達したときの温度を示すものであり、ポリアミドイミド樹脂組成物が分解を開始し、本来有している特性を維持できなくなる温度を示す指標である。
【0017】
従って、TG−DTA等で測定されるポリアミドイミド樹脂組成物の5%質量減少温度が400℃以上であれば、該ポリアミドイミド樹脂組成物の耐熱性は400℃以上となる。このようなポリアミドイミド樹脂組成物を用いることで、耐熱摩擦板材料の製造時に該ポリアミドイミド樹脂組成物の劣化を抑制しつつ400℃以上で加熱処理することができ、揮発成分を有効に除去すると共に、加熱硬化時に加圧した場合にはそれにより発生する残留圧縮応力も有効に解放することができ、常温または高温時における摩耗やクラックの発生が抑制され、高い耐久性を有し、長期間に渡って信頼性を維持するものとすることができる。
【0018】
このようなポリアミドイミド樹脂組成物は、(A)ポリアミドイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、および(C)無機フィラーを必須成分として含有するものである。
【0019】
(A)成分のポリアミドイミド樹脂は、例えば酸成分とイソシアネート成分とから製造するイソシアネート法、酸クロリド成分とアミン成分とから製造する酸クロリド法、酸成分とアミン成分とから製造する直接法等の公知の製造方法によって製造されたものとすることができるが、好ましくはトリカルボン酸無水物と芳香族ジアミンとを重縮合してなるものである。
【0020】
トリカルボン酸無水物としては、例えばトリメリット酸無水物、トリメリット酸誘導体、ビフェニルトリカルボン酸、ベンゾフェノントリカルボン酸、ジフェニルスルフォントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ブタントリ力ルボン酸、シクロペンタントリカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ビシクロヘキシルトリカルボン酸、トリカルボキシシクロペンチル酢酸が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
芳香族ジアミンとしては、例えば4 ,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノトルエン、1−メトキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メトキシ−5−メチルベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジメチルベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、1,2−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノ−2−メチルナフタレン、1,5−ジアミノ−2−メチルナフタレン、1,3−ジアミノ−2−フェニルナフタレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3,3’−ジメチル−シクロヘキシルアミン)、2,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4 4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、ビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4 4’−ジアミノビフェニル、3 3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、o−トルイジンスルフォン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0022】
(B)成分のエポキシ樹脂は、ポリアミドイミド樹脂組成物の接着性等を向上させ、耐熱摩擦板材料における摩耗、剥離等の発生を抑制し、耐久性を向上させるために加えられるものであり、ビスフェノール1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、分子構造、分子量等に制限されることなく一般に使用されているものを広く用いることができる。
【0023】
具体的には、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、トリアジン骨格エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
なお、エポキシ樹脂を配合することによって、通常、ポリアミドイミド樹脂組成物の接着性は向上するものの、耐熱性は低下する。このため、(B)成分のエポキシ樹脂として、特にノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、およびトリアジン骨格エポキシ樹脂の中から選ばれる少なくとも1種を使用し、ポリアミドイミド樹脂組成物を高耐熱性のものとすることが好ましい。
【0025】
このような(B)成分のエポキシ樹脂の含有量は、(A)成分のポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、1重量部以上50重量部以下であることが好ましく、3重量部以上30重量部以下であることが好ましい。(B)成分のエポキシ樹脂の含有量が1重量部未満であると、ポリアミドイミド樹脂組成物の接着性が低下し、耐熱摩擦板材料として使用した際にその摩擦面に剥離等が発生し、耐久性が低下するおそれがある。一方、(B)成分のエポキシ樹脂の含有量が50重量部を超えると、ポリアミドイミド樹脂組成物の硬化物の5%質量減少温度が400℃未満となるおそれがあり、耐熱摩擦板材料の製造時に400℃以上で加熱処理することが困難となり、耐熱摩擦板材料の耐久性が不十分となるおそれがある。
【0026】
(C)成分の無機フィラーは、ポリアミドイミド樹脂組成物の硬化物の摩擦性、潤滑性、耐摩耗性、熱安定性等を改良するために加えられるものであって、例えばケイ酸カルシウム、タルク、シリカ、黒鉛、二硫化モリブデン、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア、もしくはマグシア等の粉末、または銅等の金属の粉末であり、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0027】
(C)成分の無機フィラーは、平均粒径が30μm以下であることが好ましい。(C)成分の無機フィラーの平均粒径が30μmを超えると、ポリアミドイミド樹脂組成物における均一分散が難しくなり、偏りを生じる可能性がある。
【0028】
また、(C)成分の無機フィラーの含有量は、(A)成分のポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、50重量部以上600重量部以下であることが好ましく、100重量部以上500重量部以下であることが好ましい。(C)成分の無機フィラーの含有量が50重量部未満であると、耐熱摩擦板材料としたときに、摩擦性、潤滑性、耐摩耗性、熱安定性等が不十分となるおそれがある。一方、(C)成分の無機フィラーの含有量が600重量部を超えると、(A)成分のポリアミドイミド樹脂や(B)成分のエポキシ樹脂の含有量が相対的に減少するため、耐熱摩擦板材料を製造する際の成形性等が低下するおそれがある。
【0029】
本発明に用いるポリアミドイミド樹脂組成物は、上記(A)成分のポリアミドイミド樹脂、(B)成分のエポキシ樹脂、および(C)成分の無機フィラーを必須成分として含有するが、硬化物の5%質量減少温度が400℃以上となる範囲で、流動性、成形性、その他の特性を改善するために、上記樹脂以外の樹脂、有機フィラー、短繊維、硬化剤、硬化促進剤、離型剤、難燃剤、カップリング剤、溶剤等を適宜含有することができる。
【0030】
(A)成分および(B)成分の樹脂以外の樹脂としては、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、またはシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂を使用することができ、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0031】
有機フィラーとしては、例えばカシューダスト、加硫済みの天然・合成ゴム粉末、タイヤリク等を使用することができ、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。このような有機フィラーは、ポリアミドイミド樹脂組成物における均一分散を確保する観点から、平均粒径が30μm以下であることが好ましい。
【0032】
短繊維としては、例えばスチール、ステンレス、銅、真鍮、青銅、アルミニウム等の金属繊維、チタン酸カリウム繊維、ガラス繊維、ロックウール、ウォラストナイト等の無機繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ポリイミド繊維、セルロース繊維、アクリル繊維等の有機繊維の各繊維の短繊維を使用することができ、例えば直径が1μm以上50μm以下、長さが0.5mm以上5mm以下のものが好適に用いられる。
【0033】
硬化剤としては、通常、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されているものを使用することができ、例えばアミン硬化系としてジシアンジアミド、芳香族ジアミン等が挙げられ、フェノール硬化系としてフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂等が挙げられ、酸無水物系としてメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の脂環式酸無水物、無水フタル酸等の芳香族酸無水物、脂肪族二塩基酸無水物(PAPA)等の脂肪族酸無水物、クロレンド酸無水物等のハロゲン系酸無水物等を使用することができ、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0034】
硬化促進剤としては、通常、エポキシ樹脂の硬化促進剤として使用されているものを使用することができ、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、三フッ化ホウ素アミン錯体、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
離型剤としては、例えば流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、もしくはポリエチレンワックス等の炭化水素系、ラウリン酸、もしくはステアリン酸等の脂肪酸系、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミ、オレイン酸アミド、もしくはエチル酸アミド等の脂肪酸アミド系、ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、もしくはエチレングリコールモノステアレート等の脂肪酸エステル系、セチルアルコール、もしくはステアリルアルコール等の脂肪アルコール系、ステアリン酸鉛、ステアリン酸アルミニウム、もしくはステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸系、またはそれらの混合系を使用することができる。
【0036】
難燃剤としては、例えば酸化アンチモンや硫化アンチモン等のアンチモン化合物を使用することができ、カップリング剤としては、例えばアミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等を用いることができる。
【0037】
溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ニトロメタン、モノメチルメタン、ニトロエタン、ジメチルアミン、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジ−イソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、エピクロヒドリン、アセトアニリド、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、ジオキサン等を使用することができる。
【0038】
本発明に用いられるポリアミドイミド樹脂組成物は、溶剤を除いたポリアミドイミド樹脂組成物全体におけるフィラー(無機フィラーおよび有機フィラー)および短繊維以外のものの含有量が10重量%以上60重量%以下となっていることが好ましい。溶剤を除いたポリアミドイミド樹脂組成物全体におけるフィラーおよび短繊維以外のものの含有量が10重量%未満の場合、樹脂類の含有量が相対的に減少するため、フィラーや短繊維を有効に結合させることができず、耐熱摩擦板材料を製造する際の成形性が低下するおそれがある。一方、フィラーおよび短繊維以外のものの含有量が60重量%を超える場合、耐熱摩擦板材料の摩擦性、潤滑性、耐摩耗性、熱安定性等が不十分となるおそれがある。
【0039】
また、ポリアミドイミド樹脂組成物における溶剤、フィラー、および短繊維を除いた部分については、(A)成分のポリアミドイミド樹脂と(B)成分のエポキシ樹脂とを合計した含有量が好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上である。(A)成分のポリアミドイミド樹脂と(B)成分のエポキシ樹脂とを合計した含有量が80重量%未満の場合、ポリアミドイミド樹脂組成物の硬化物の5%質量減少温度が400℃未満となるおそれがあり、耐熱摩擦板材料の製造時に400℃以上で加熱処理することが困難となり、耐熱摩擦板材料の耐久性が不十分となるおそれがある。
【0040】
本発明に用いられるポリアミドイミド樹脂組成物は、例えば(A)成分のポリアミドイミド樹脂をイソシアネート法、酸クロリド法、または直接法等によって製造した後、これに(B)成分のエポキシ樹脂および(C)成分の無機フィラーを添加すると共に、必要に応じてその他の添加剤を添加し、均一に撹拌、混合することによって製造することができる。
【0041】
一方、このようなポリアミドイミド樹脂組成物が含浸されるシート状基材としては、例えばスチール、ステンレス、銅、真鍮、青銅、アルミニウム等の金属繊維、チタン酸カリウム繊維、ガラス繊維、ロックウール、ウォラストナイト等の無機繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ポリイミド繊維、セルロース繊維、アクリル繊維等の有機繊維からなる織布または不織布を使用することができるが、耐熱摩擦板材料の耐久性、信頼性を向上させる観点から、これらの中でも特にアラミド繊維からなる織布または不織布を使用することが好ましい。このようなシート状基材の厚さは必ずしも限定されるものではないものの、例えば10μm以上300μm以下のものが好適に使用される。
【0042】
次に、本発明の耐熱摩擦板材料の製造方法について説明する。本発明の耐熱摩擦板材料の製造方法は、ポリアミドイミド樹脂組成物をシート状基材に含浸させた後、加熱硬化させて成形体を得る工程と、この成形体を400℃以上550℃以下で加熱処理する工程とを具備し、特にポリアミドイミド樹脂組成物として既に説明したようなポリアミドイミド樹脂組成物を用いることを特徴としている。
【0043】
本発明の耐熱摩擦板材料の製造方法では、特定のポリアミドイミド樹脂組成物を用いると共に、このようなポリアミドイミド樹脂組成物をシート状基材に含浸、加熱硬化させたものを特定の温度で加熱処理することで、常温または高温時において高い耐久性を有し、長期間に渡って信頼性を維持することができる耐熱摩擦板材料を製造することができる。
【0044】
ポリアミドイミド樹脂組成物を含浸させるシート状基材としては、既に説明したように各種繊維からなる織布または不織布を使用することができる。このようなシート状基材へのポリアミドイミド樹脂組成物の含浸は、シート状基材にポリアミドイミド樹脂組成物を有効に含浸させることができるものであれば必ずしも制限されるものではなく、例えばシート状基材の表面にポリアミドイミド樹脂組成物を塗布することにより行ってもよいし、ポリアミドイミド樹脂組成物が収容された浸漬槽内にシート状基材を浸漬することにより行ってもよい。
【0045】
成形体を製造するための加熱硬化は、例えば200℃以上500℃以下、好ましくは250℃以上400℃以下で、2MPa以上、好ましくは5MPa以上の圧力をかけて行うことが好ましい。また、このような加熱硬化は、例えば30分以上4時間以下の範囲で行うことが好ましい。
【0046】
加熱硬化の温度が200℃未満の場合、ポリアミドイミド樹脂組成物の硬化に時間がかかり、また十分に硬化させることができないおそれがある。一方、加熱硬化の温度が500℃を超える場合、ポリアミドイミド樹脂組成物が劣化するおそれがある。また、圧力が2MPa未満の場合、耐熱摩擦板材料を高密度なものとすることができないおそれがある。
【0047】
さらに、加熱硬化させるときの温度等によっても異なるが、加熱硬化の時間が30分未満の場合、ポリアミドイミド樹脂組成物を十分に硬化させることができないおそれがある。一方、加熱硬化の時間は4時間程度とすれば、ポリアミドイミド樹脂組成物を十分に硬化させることができ、それを超えて行ってもそれ以上の効果は望めず、かえって生産性が低下するため好ましくない。
【0048】
このようにして得られた成形体は、上記したように400℃以上550℃以下で加熱処理される。加熱処理の際の温度が400℃未満であると、ポリアミドイミド樹脂組成物(硬化物)中の揮発成分を有効に除去することができず、また加熱硬化時に発生した残留圧縮応力も有効に解放することができず、耐熱摩擦板材料の耐久性を向上させることができないおそれがある。一方、加熱処理の際の温度が550℃を超えると、ポリアミドイミド樹脂組成物(硬化物)の分解、劣化が生じ、摩擦板材料の強度が低下し、耐久性が低下するおそれがある。
【0049】
このような成形体の加熱処理は、加熱処理温度によっても若干異なるが、例えば1時間以上10時間以下で行うことが好ましく、3時間以上7時間以下で行うことがより好ましい。加熱処理の時間が1時間未満であると、加熱処理の効果が十分に得られないおそれがある。一方、加熱処理の時間が10時間を超えると、ポリアミドイミド樹脂組成物(硬化物)の分解、劣化が生じやすくなる。加熱処理の時間は好ましくは1時間以上10時間以下、より好ましくは3時間以上7時間以下とすることで、ポリアミドイミド樹脂組成物(硬化物)における揮発成分を有効に除去し、また加熱硬化時に発生した残留圧縮応力も有効に解放しつつ、その分解、劣化も抑制することができ、耐久性に優れ、信頼性のある耐熱摩擦板材料とすることができる。なお、このような成形体の加熱処理は、加圧または非加圧のいずれとしてもよく、例えば圧力0MPa以上2MPa以下で行うことが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明について実施例を参照して説明する。
【0051】
(実施例1)
トリメリット酸無水物100重量部と4 ,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート100重量部とを重縮合して得られたポリアミドイミド樹脂溶液に、トリアジン骨格エポキシ樹脂TEPIC−G(日産化学工業株式会社製、商品名)7重量部、ジメチルアセトアミド200重量部、フェノール樹脂RGB−5575(昭和高分子株式会社製、商品名)20重量部を添加して主剤とした。この主剤に、長さ3mm、直径9μmのアラミド短繊維100重量部、無機フィラーとして、銅粉(平均粒径10μm)100重量部、ケイ酸カルシウム(平均粒径10μm)300重量部、および硫酸バリウム(平均粒径10μm)100重量部を添加して、ポリアミドイミド樹脂組成物を調製した。
【0052】
そして、厚さ100μmのアラミドペーパー ノーメックス(デュポン帝人アドバンスドペーパー株式会社製、商品名)にポリアミドイミド樹脂組成物を含浸させた後、温度350℃、圧力20MPa、時間120分で加熱加圧成形して成形体を得た。その後、この成形体について、0.2MPaの圧力下、温度450℃、5時間の加熱処理を行って摩擦板材料を製造した。
【0053】
(実施例2)
エポキシ樹脂としてノボラック型エポキシ樹脂ESCN−195(住友化学株式会社製、商品名)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリアミドイミド樹脂組成物を調製した。そして、実施例1と同様にして成形体を得た後、温度を500℃とした以外は実施例1と同様にして加熱処理を行って摩擦板材料を製造した。
【0054】
(実施例3)
フェノール樹脂の代わりにフェノールアラルキル樹脂MEH7800(昭和化成株式会社、商品名)20重量部を用いた以外は実施例1と同様にしてポリアミドイミド樹脂組成物を調製した。そして、実施例1と同様にして成形体を得た後、加熱処理を行って摩擦板材料を製造した。
【0055】
(実施例4)
実施例1と同様にしてポリアミドイミド樹脂組成物を調製し、成形体を得た後、温度を350℃とした以外は実施例1と同様にして加熱処理を行って摩擦板材料を製造した。
【0056】
(比較例1)
トリメリット酸無水物100重量部と4,4’−ジアミノジフェニルメタン100重量部とを重縮合して得られたポリアミドイミド樹脂溶液に、リン酸3重量部、N−メチルピロリドン200重量部を添加して主剤とした。さらに、この主剤に、実施例1と同様のアラミド短繊維100重量部、無機フィラーとしての銅粉100重量部、ケイ酸カルシウム300重量部、および硫酸バリウム100重量部を添加して、ポリアミドイミド樹脂組成物を調製した。そして、実施例1と同様にして成形体を得た後、温度を350℃とした以外は実施例1と同様にして加熱処理を行って摩擦板材料を製造した。
【0057】
(比較例2)
トリメリット酸無水物100重量部と4 ,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート100重量部とを重縮合して得られたポリアミドイミド樹脂溶液に、ジメチルアセトアミド200重量部を添加して主剤とした。さらに、この主剤に、実施例1と同様のアラミド短繊維100重量部、無機フィラーとしての銅粉100重量部、ケイ酸カルシウム300重量部、および硫酸バリウム100重量部を添加して、ポリアミドイミド樹脂組成物を調製した。そして、実施例1と同様にして成形体を得た後、加熱処理を行って摩擦板材料を製造した。
【0058】
(比較例3)
主剤としてのフェノール樹脂RGB−5575(昭和高分子株式会社製、商品名)20重量部に、実施例1と同様のアラミド短繊維100重量部、無機フィラーとしての銅粉100重量部、ケイ酸カルシウム300重量部、および硫酸バリウム100重量部を添加して、フェノール樹脂組成物を調製した。そして、実施例1と同様にして成形体を得た後、温度を350℃とした以外は実施例1と同様にして加熱処理を行って摩擦板材料を製造した。
【0059】
(比較例4)
トリメリット酸無水物95重量部と4 ,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート95重量部とを重縮合して得られたポリアミドイミド樹脂溶液に、汎用エポキシ樹脂エピコート1001(ジャパンエポキシレジン株式会社)、ジメチルアセトアミド200重量部を添加して主剤とした。さらに、この主剤に、実施例1と同様のアラミド短繊維100重量部、無機フィラーとしての銅粉100重量部、ケイ酸カルシウム300重量部、および硫酸バリウム100重量部を添加して、ポリアミドイミド樹脂組成物を調製した。そして、実施例1と同様にして成形体を得た後、温度を350℃とした以外は実施例1と同様にして加熱処理を行って摩擦板材料を製造した。
【0060】
実施例および比較例で調製した樹脂組成物(ポリアミドイミド樹脂組成物、フェノール樹脂組成物)の粘度、およびその硬化物の熱分解温度(5%質量減少温度)は表1に示す通りである。なお、粘度は、B型粘度計により測定した。また、熱分解温度は、上記したTG−DTAにより測定した。
【0061】
次に、実施例および比較例の摩擦板材料について、常温および400℃での摩擦係数、常温および400℃での摩耗量、および25℃での剥離強度の測定、ならびに耐摩耗性の評価を行った。結果を表1に示す。なお、各特性の測定または評価は以下のようにして行った。
【0062】
(摩擦係数、摩耗量)
ダイナモ試験機による摩耗試験をJASO法に準拠して行った。
【0063】
(剥離強度)
大きさ50mm×200mmの試験片(摩擦板材料)の全幅にわたり、層の中心を引き裂き、さらに長さ方向に20mm引き裂き、両端をつかみ、引っ張り、その時の強度を測定した。測定装置は定速緊張引張試験機を使用し、JISC2111に準じて測定した。なお、剥離強度の測定に用いられるサンプルの形状は図1に示す通りである。
【0064】
(耐摩耗性)
直径200mmの試験片(摩擦板材料)を回転させ、S45C鋼の円盤を相手材として50RPMの速度で回転摩耗させ、1万回の回転後の摩耗性を目視で調べた。なお、表中、「○」はクラックの発生がなかったことを示し、「△」は小さなクラックが発生していたことを示し、「×」は大きなクラックまたは破損があったことを示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表1から明らかなように、ポリアミドイミド樹脂とエポキシ樹脂との両方を含有し、かつ硬化物の熱分解温度(5%質量減少温度)が400℃以上となるポリアミドイミド樹脂組成物を用いた実施例1〜4の摩擦板材料については、全体的に摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れていることが認められた。また、製造時の成形体に対する加熱処理温度を400℃以上とした実施例1〜3の摩擦板材料は剥離強度も良好であることが認められた。
【0067】
これに対して、芳香族ジアミンを4,4’−ジアミノジフェニルメタンとし、エポキシ樹脂を含まないポリアミドイミド樹脂組成物を用い、成形体に対する加熱処理温度を350℃とした比較例1の摩擦板材料については、剥離強度は良好であるものの、摩耗量が多くなると共に、耐摩耗性も低下することが認められた。また、エポキシ樹脂やフェノール樹脂を含まず、樹脂成分をポリアミドイミド樹脂のみとしたポリアミドイミド樹脂組成物を用いた比較例2の摩擦板材料については、摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れているものの、剥離強度が低下することが認められた。
【0068】
さらに、樹脂成分としてフェノール樹脂のみを含み、硬化物の熱分解温度が400℃未満となるフェノール樹脂組成物を使用した比較例3の摩擦板材料については、摩耗量が多く、耐摩耗性が低下すると共に、剥離強度も低下することが認められた。また、ポリアミドイミド樹脂とエポキシ樹脂との両方を含むものの、エポキシ樹脂として汎用のエポキシ樹脂を用い、硬化物の熱分解温度が400℃未満となるポリアミドイミド樹脂組成物を用いた比較例4の摩擦板材料については、剥離強度は良好なものの、摩耗量が多く、耐摩耗性が低下することが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】剥離強度の測定に使用されるサンプルの形状を示す外観図。
【符号の説明】
【0070】
1…剥離強度測定用サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材に、ポリアミドイミド樹脂組成物を含浸し加熱硬化してなる耐熱摩擦板材料であって、
前記ポリアミドイミド樹脂組成物は、(A)ポリアミドイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、および(C)無機フィラーを必須成分として含有し、かつ硬化物の5%質量減少温度が400℃以上となるものであることを特徴とする耐熱摩擦板材料。
【請求項2】
前記ポリアミドイミド樹脂が、トリカルボン酸無水物と、芳香族ジアミンとを重縮合して得られたものであることを特徴とする請求項1記載の耐熱摩擦板材料。
【請求項3】
前記(B)エポキシ樹脂が、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂およびトリアジン骨格エポキシ樹脂の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載の耐熱摩擦板材料。
【請求項4】
(A)ポリアミドイミド樹脂、(B)エポキシ樹脂、および(C)無機フィラーを必須成分として含有し、かつ硬化物の5%質量減少温度が400℃以上となるポリアミドイミド樹脂組成物をシート状基材に含浸させた後、加熱硬化させて成形体を得る工程と、
前記成形体を400℃以上550℃以下で加熱処理する工程と
を具備することを特徴とする耐熱摩擦板材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−114379(P2009−114379A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290829(P2007−290829)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】