説明

耐苛性膜

本発明は、1つ以上のポリフッ化ビニリデンポリマーと1つ以上のアクリルポリマーとのブレンドを溶液流延することにより形成された耐苛性膜に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上のポリフッ化ビニリデンポリマーと1つ以上のアクリルポリマーとのブレンドを溶液流延することにより形成された耐苛性膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜は、精密ろ過および限外ろ過用途に急速に普及しており、米国特許第6,013,688号明細書および米国特許第6,110,309号明細書等の米国特許に記載されている。PVDF樹脂は、化学的および生物学的に非常に不活性で、優れた機械的特性を有している。塩素やオゾン等の酸化環境に耐性があり、水の殺菌に広く用いられている。PVDF膜は、大半の鉱物および有機酸、脂肪族および芳香族炭化水素、アルコールおよびハロゲン化溶剤による攻撃に極めて耐性もある。この樹脂は、いくつかの溶剤に可溶で、容易に溶液流延して、転相法を用いて多孔性膜を形成する。PVDF膜は、平坦なシートまたは中空繊維構造のいずれかで成型される。
【0003】
通常、実質的に均一な厚さの薄いシートとして形成されるポリフッ化ビニリデン細孔膜は、多数の内部連通チャネルを含むスポンジ状内部構造を有し、チャネルは、狭い範囲内で実質的に均一な幅を有している。膜細孔径は、通常、非常に小さな範囲にわたって比較的均一に制御される。細孔径は、通常、0.01〜約10ミクロンの広い範囲内に入る。
【0004】
PVDF膜を改質(後膜形成)して、特定の特性が改善されてきた。米国特許第6,734,386号明細書には、アクリルモノマーを膜表面で重合することによるPVDF膜の後処理が記載されている。後処理反応は、複雑で、製造プロセスに費用のかかる工程が加わる。
【0005】
PVDFは、様々なアクリル樹脂と、混和性の合金を形成することが知られている。ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、ポリエチルアクリレート(PEA)およびこれらの樹脂とその他アクリルコポリマーとのコポリマーが挙げられる。これらの混和性ブレンドは、長期間にわたって安定している。アクリルポリマーおよびコポリマーは水溶性でなく、長期の浸水で移行しない。(ポリビニルピロリドン(PVP)は、PVDFと混和する他のポリマー樹脂であるが、この樹脂は水溶性で、長期の浸水でブレンドから移行する。従って、PVDF−PVPブレンドは、水のろ過用途においては、長期間安定ではない。)アクリル樹脂は、それ自体、良好な耐化学性を有し、苛性溶液に浸すとPVDFで生じる有害な脱フッ化水素化を起こさない。
【0006】
米国特許第4,377,481号明細書には、PVDF−アクリル樹脂ブレンドを、ポリマー膜に用いることが記載されており、アクリル樹脂は、重合するとPVDFと非相溶性となる少なくとも1つのモノマー、例えば、スルホン酸またはアミノ基を含む(メタ)アクリルモノマーを含有するコポリマーである。
【0007】
米国特許第6,074,718号明細書には、第2のポリマーとのブレンドであってもよいPVDFの中空糸膜が記載されている。記載されているメチルメタクリレートポリマーは、細孔形成材料であり、最終膜からは抜き出される。この用途では、最終膜に残す目的はなく、材料の利点は膜に寄与しない。
【0008】
PVDF膜の1つの大きな欠点は、耐苛性であり、これは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、有機アミンおよびその他塩基等の塩基の攻撃による。水酸化ナトリウム溶液は、ろ過膜を洗浄して、生物汚損を除去するのに用いられることが多い。この洗浄サイクルは、PVDF膜の寿命を短くし、膜の破損につながる恐れがある。可性洗浄に対する耐性を増大して、PVDF膜モジュールの性能および寿命を大幅に改善するPVDF膜が必要とされている。ろ過モジュール寿命は、膜ろ過設備にとって主要な経済的考慮事項である。
【0009】
意外なことに、均質なPVDF−アクリルブレンドで作製された膜の耐苛性が改善されることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6013688号明細書
【特許文献2】米国特許第6110309号明細書
【特許文献3】米国特許第6734386号明細書
【特許文献4】米国特許第4377481号明細書
【特許文献5】米国特許第6074718号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
a)50〜99重量パーセントの少なくとも1つのポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーまたはコポリマーと、
b)1〜50重量パーセントの少なくとも1つのアクリルポリマーと
を含む均質なポリマーブレンドを含む耐苛性膜に関する。
【0012】
本発明はまた、この耐苛性膜を、水、廃液、体液およびプロセス流体の処理のために用いる物品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】純粋なKYNAR膜(比較)の膜断面のSEM写真である。
【図2】KYNAR−アクリル膜の膜断面のSEM写真である。本発明の膜には、ボイドやクラックがない。SEM写真は、同様のスポンジ状形態を示している。KYNAR−アクリル膜には、ポリマー相分離がない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
PVDF−アクリルブレンドおよびそれから形成された膜に関して、本明細書で用いる「均質」とは、溶液中でPVDFおよびアクリルポリマーが単相を形成し、膜中のブレンドが均一であることを意味する。
【0015】
本発明には、アクリルポリマー/PVDFブレンドを、ポリマー膜への溶液流延に用いることが含まれる。ブレンド中のアクリルポリマーのレベルは、1〜50重量パーセント、好ましくは10〜25重量パーセントであり、PVDFのレベルは、50〜99重量パーセント、好ましくは75〜90重量パーセントである。
【0016】
ポリフッ化ビニリデン樹脂は、フッ化ビニリデン(VDF)の重合により作製されたホモポリマー、フッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマーおよびそれ以上のポリマーのうち1つ以上であり、フッ化ビニリデン単位は、ポリマー中の全モノマー単位の総重量の70パーセントを超え、より好ましくは、単位の総重量の75重量パーセントを超える。フッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマーおよびそれ以上のポリマーは、フッ化ビニリデンを、フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン、1つ以上の部分または完全フッ素化α−オレフィン、例えば、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、3,3,3,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテンおよびヘキサフルオロプロペン、部分フッ素化オレフィンヘキサフルオロイソブチレン、過フッ素化ビニルエーテル、例えば、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロ−n−プロピルビニルエーテルおよびパーフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル、フッ素化ジオキソール、例えば、パーフルオロ(1,3−ジオキソール)およびパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、アリル、部分フッ素化アリルまたはフッ素化アリルモノマー、例えば、2−ヒドロキシエチルアリルエーテルまたは3−アリルオキシプロパンジオールおよびエテンまたはプロペンからなる群から選択される1つ以上のモノマーと反応させることにより作製される。好ましいコポリマーまたはターポリマーは、フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン(TFE)およびヘキサフルオロプロペン(HFP)により形成される。
【0017】
好ましいコポリマーはVDFのものであり、約71〜約99重量パーセントのVDFおよび対応して約1〜約29パーセントのTFE、約71〜99重量パーセントのVDFおよび対応して約1〜29パーセントのHFP(例えば、米国特許第3,178,399号明細書に開示)、約71〜99重量パーセントのVDFおよび約1〜29重量パーセントのトリフルオロエチレンを含む。
【0018】
好ましいターポリマーは、VDF、HFPおよびTFEのターポリマー、ならびにVDF、トリフルオロエテンおよびTFEのターポリマーである。特に好ましいターポリマーは、少なくとも71重量パーセントのVDFを有し、他のコモノマーは、異なる割合で存在してよいが、併せて、ターポリマーの29重量パーセントまでである。
【0019】
ポリフッ化ビニリデンはまた、官能化PVDFとすることもでき、共重合か、後重合官能性付与のいずれかにより生成される。さらに、PVDFは、グラフトコポリマー、例えば、放射線グラフト無水マレイン酸コポリマーとすることができる。
【0020】
PVDFポリマーは、1つ以上のアクリルポリマーとブレンドされる。本明細書で用いる「アクリルポリマー」には、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレートモノマーおよびこれらの混合物から形成されたポリマー、コポリマーおよびターポリマーが含まれる。「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート、メタクリレートまたはこれらの混合物のいずれかを指すのに本明細書では用いられる。アルキルメタクリレートモノマーは、好ましくはメチルメタクリレートであり、モノマー混合物の50〜100パーセントを占める。これらに限定されるものではないが、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリルおよび低レベルの架橋剤をはじめとする0〜50パーセントの他のアクリレートおよびメタクリレートモノマーまたはその他エチレン化不飽和モノマーが、モノマー混合物中に存在してもよい。モノマー混合物において有用な他のメタクリレートおよびアクリレートモノマーとしては、これらに限定されるものではないが、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびエチルメタクリレート、ブチルアクリレートおよびブチルメタクリレート、イソ−オクチルメタクリレートおよびアクリレート、ラウリルアクリレートおよびラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレートおよびステアリルメタクリレート、イソボルニルアクリレートおよびメタクリレート、メトキシエチルアクリレートおよびメタクリレート、2−エトキシエチルアクリレートおよびメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートおよびメタクリレートモノマーが挙げられる。アルキル(メタ)アクリル酸、例えば、メチルアクリル酸およびアクリル酸が、モノマー混合物に有用である。好ましくは、アクリルポリマーは、70〜99、より好ましくは90〜99重量パーセントのメチルメタクリレート単位、1〜30、より好ましくは1〜10重量パーセントの1つ以上のC1-4アルキルアクリレート単位を含むランダム共重合体である。特に、具体的に有用なターポリマーは、約95.5〜98.5重量パーセントのメチルメタクリレート単位、1〜3重量パーセントの(メタ)アクリル酸単位および0.5〜1.5重量パーセントのエチルアクリレート単位を含むものである。
【0021】
他の好ましい実施形態において、少量の0.5〜10、好ましくは1〜5重量パーセントの(メタ)アクリル酸を、メチルメタクリレートとのコモノマーとして用いる。形成されるコポリマーは、酸官能性の存在のために、親水性が増大する。
【0022】
他の実施形態において、アクリルポリマーは、ジ−またはトリ−ブロックコポリマー等のブロックコポリマーである。ブロックコポリマー構造により、膜形成において形態制御が改善でき、これは、制御されたドメインサイズ、および制御された微細構造構築につながる。これによって、多孔性制御および安定性が改善され、かつ官能基が良好に分配されて、優れた機械的特性につながる。アクリルブロックコポリマーは、これらに限定されるものではないが、原子移動重合(ATRP)、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)、ニトロキシドを介した重合(NMP)、ホウ素を介した重合および触媒的連鎖移動重合(CCT)をはじめとする制御されたラジカル重合技術を用いて作製することができる。安定したフリーラジカルを存在させて、ニトロキシド系列からコポリマーを作製するプロセスは、米国特許第6,255,402号明細書に記載されている。ニトロキシドを介した安定なラジカルを用いて、米国特許第6,255,448号明細書および米国特許出願公開第2002/0040117号明細書に記載されているように、制御されたブロックコポリマーが製造されてきた。これらの参考文献は、参考文献として本明細書に援用される。
【0023】
主に、モノマーの選択と適合する、既存の制御された重合技術を利用して、ブロックコポリマーを作製することができる。制御されたラジカル重合のある好ましい方法は、ニトロキシドを介したCRPである。ニトロキシドを介したCRPは、種々のモノマーをトリブロックコポリマーにおいて用いることができるため好ましく、アクリルおよび酸官能性アクリルに特に良好である。一実施形態において、トリブロックアクリルポリマーは、ブチルアクリレートのセンターブロックで、5〜50重量パーセントのトリブロックポリマーと、75〜100パーセントのメチルメタクリレートおよび0〜25重量パーセントの1つ以上のC1-4アルキルアクリレートまたはアクリル酸を有するホモポリマーまたはコポリマーを含む末端基とを有する制御されたラジカル重合により形成される。各末端基は、トリブロックコポリマーの25〜47.5重量パーセントを占める。
【0024】
通常、ブレンドに用いるPVDFポリマーの分子量は、100,000〜5,000,00g/モルの範囲であり、アクリルポリマーの分子量は、30,000〜500,000の範囲である。アクリルポリマーの分子量が多すぎると、ポリマーは膜に用いるには脆性となり過ぎる。高レベルのアルキルアクリレートを有するアクリルコポリマーを用いると、Tgは低く、高分子量に耐え得る。
【0025】
PVDFおよびアクリルポリマーを溶剤と混合して、ブレンドされたポリマー溶液を形成する。PVDFおよびアクリルポリマーをブレンドした後、溶解するか、またはポリマーを同じまたは異なる溶剤で別個に溶解し、溶剤溶液をブレンドする。本発明の溶液を溶解するのに有用な溶剤としては、これらに限定されるものではないが、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、テトラメチルウレア、ジメチルスルホキシド、トリエチルホスフェート、N−オクチル−ピロリドン、γ−ブチロールアセトン、N,N’ジメチル−トリメチレン−ウレア、ジメチルカーボネートおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
ポリマー溶液は、典型的に、10〜30パーセント、好ましくは15〜22、最も好ましくは17〜20パーセントの固体レベルを有する。溶液は、混合し、任意で、80℃まで、典型的には、50〜80℃の温度まで加熱することにより形成される。
【0027】
PVDF、アクリルポリマーおよび溶剤に加え、その他の添加剤を、ポリマー溶液に、合計溶液に基づいて、1〜20重量パーセント、より好ましくは5〜10重量パーセントで添加してよい。典型的な添加剤としては、これらに限定されるものではないが、典型的に、親水性水抽出性化合物である細孔形成剤、例えば、金属塩(例えば、リチウム、カルシウムおよび亜鉛塩)、アルコール、グリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)、シリカ、カーボンナノチューブおよび抽出されるか、または抽出されないその他ナノ材料、ならびに膜材料の処理を容易にするために、溶液の粘度を増大する化合物が挙げられる。
【0028】
溶液粘度を調節すると、最良の処理条件を得ることができる。平坦なシートについては、全体の処方を調節して、平坦なウェブ成型にとって最良の粘度を得る。中空繊維形成においては、このプロセスは、実際、押出しの形態であり、より高い粘度だと有利となり得る。
【0029】
PVDF/アクリル溶液を、当該技術分野において公知の典型的なプロセスにより膜へと形成して、平坦なシート、支持された平坦なシートまたは中空糸膜を形成する。ある典型的なプロセスにおいては、PVDF/アクリル溶液は、溶剤流延され、基板上に延伸される。この膜は、支持されていても支持されていなくてもよく、多孔性支持ウェブ、例えば、織または不織ポリオレフィンまたはポリエステル上に流延される。膜は、相分離プロセスにより形成され、そこでは、流延膜溶液の熱力学が妨害されて、ポリマーがゲル化し、相が溶剤から分離する。熱力学の変化は、部分的な溶剤蒸発および/またはフィルムの高湿環境への曝露により始まることが多い。膜を、ポリマーのための溶剤以外、例えば、水、アルコールまたはこれらの混合物に入れ、溶剤を除去して、多孔性膜とする。細孔径は、当該技術分野において公知なように、添加剤の使用およびポリマー濃度により調節することができる。例えば、高分子量添加剤だと、細孔径が大きくなり、リチウム塩添加剤を用いると、小さな細孔径とすることができる。
【0030】
本発明のPVDF/アクリル膜の厚さは、通常、75〜200ミクロン、好ましくは100〜150ミクロンである。
【0031】
特定の理論に拘束されるものではないが、ブレンド中のアクリルポリマーが、ポリフッ化ビニリデンの非晶質(結晶よりも)領域において濃縮されるものと考えられる。このように、アクリルポリマーは、PVDFの弱い非晶質領域を強化する役割を果たし、これが、特性の改善につながる。
【0032】
さらに、PVDFおよびアクリルポリマーは、溶融混和性であり、固体状態において、ブレンドが熱力学的に適合することを示している。すなわち、ブレンドから形成された膜は、相分離せず、安定なままとなる。
【0033】
これらのPVDF−アクリルブレンドから得られた膜は、PVDF膜単体よりも、苛性溶液に曝露されると多少退色を示す。退色は、脱フッ化水素化の指標であり、最終的に、機械的特性の喪失、膜寿命の減少および分離性能不良につながる。苛性への曝露とは、20℃〜90℃の温度での0.5%〜50%の濃度の水酸化ナトリウム(または同様の塩基)溶液への膜の浸漬または洗浄を指す。これは、膜洗浄サイクルにおいてよく用いられる条件である。
【0034】
本発明の膜は、これらに限定されるものではないが、浄水、体液浄化、廃水処理、浸透蒸留およびプロセス流体ろ過をはじめとする多くの用途に用いてよい。
【実施例】
【0035】
KYNAR761樹脂(12.0g)(Arkema Inc.)を、250mlの瓶へと秤量し、次に3gのアクリル樹脂(約2%のメタクリル酸とのPMMAコポリマー)を入れた。次に77gのジメチルアセトアミドを添加し、瓶を密閉し、ローラを載せて、樹脂を完全に溶解した。別に、ポリエチレングリコール(2.5部、400MW)、水(3.0部)およびポリエチレングリコール(2.5部、8000MW)の混合物を秤量して、全てが完全に溶解するまで混合した。KYNAR/アクリル樹脂溶液を70℃まで加熱して、オーバーヘッド攪拌器で攪拌した。ポリエチレングリコール/水溶液を、この温ポリマー溶液に滴下して加えた。添加後、混合物を30分間70℃で混合させた。ドープ溶液を脱気して、それに温和な真空を引くことにより、気泡を除去した。脱気した膜ドープを、流延前に周囲温度まで冷却させた。
【0036】
膜を以下の手順により流延した
膜ドープを、清浄なガラス板に注ぎ、ドローダウンスクエア(drawn−down square)によりドローダウンした。湿潤フィルム厚さは5ミル〜20ミルであった。湿潤フィルムを、高湿(65℃の水浴より上の周囲蒸気)に30秒〜2分間曝露した。湿度曝露後、ガラス板を温水浴に浸して、転相を完了し、膜を硬化した。膜形成が即時になされ、形成された膜は、自然にガラス板から持ち上がった。
【0037】
あるいは、湿潤成型フィルムを、湿度曝露なしに、温水浴でクエンチすることができる。さらに他の手順には、周囲温度の水浴でクエンチしたり、低湿度レベル(デシケータキャビネットにおいて約60%RH)に曝露することが含まれる。ガラス板の代わりに、膜は、ポリエステル剥離フィルム、ポリプロピレンシートまたは不織ポリエステル布のいずれかに成型してもよい。
【0038】
膜は、水中で洗った後、アルコールで洗ってから空気乾燥した。
【0039】
追加の膜処方を上述したようにして作製した。ただし、以下のアクリル樹脂を用いた。a)微量成分としてのポリエチルアクリレートとのPMMAアクリルコポリマー、b)アクリルトリブロックコポリマー(b−PMMA/b−ポリブチルアクリレート/b−PMMA、おおよその組成が35:30:35)。
【0040】
最後に、15gのKYNAR761で、アクリルを添加せずに、処方を調製した。
【0041】
これら全ての処方から成型した膜の苛性曝露を試験した。
【0042】
苛性曝露試験
膜片(約20mm×50mm)を切断し、瓶に入れた。10重量パーセントの水酸化ナトリウムの水溶液を各瓶に加えた。瓶のキャップを締め、振とうして(攪拌でなく)周囲温度で静置した。試料を数日毎に目視でチェックした。2週間後、膜を取り出し、脱イオン水で濯ぎ、次にイソプロパノールに短く浸し、空気乾燥させた。乾燥した膜試料を、Hunter Labscan XE色度計で色の変化を分析した。
【0043】
表1から分かるとおり、純粋なPVDF膜は、苛性溶液曝露により退色した。膜ドープ処方の種類によって、反応性が非常に速かったり(<30分)、分かるまで数時間かかるものがあった。いずれにしても、匹敵するPVDF−アクリル膜は、ほとんど退色しなかった。従って、PVDF−アクリル膜は、より耐苛性であった。表1に示す膜について、純粋なPVDF膜は、一晩曝露後、赤−褐色の退色を示した(ΔE*が大きいことから分かる)。しかしながら、本発明の膜は、ΔE*値が小さいことから分かるように、ほとんど退色しなかった。
【0044】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)50〜99重量パーセントの少なくとも1つのポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーまたはコポリマーと、
b)1〜50重量パーセントの少なくとも1つのアクリルポリマーと
を含む均質なポリマーブレンドを含む耐苛性膜。
【請求項2】
前記混和性ポリマーブレンドが、
c)75〜90重量パーセントの少なくとも1つのポリフッ化ビニリデンポリマーと、
d)10〜25重量パーセントの少なくとも1つのアクリルポリマーと
を含む請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記PVDFポリマーが、85〜95モルパーセントのポリフッ化ビニリデンと5〜15モルパーセントのヘキサフルオロプロピレンとのコポリマーを含む請求項1に記載の膜。
【請求項4】
前記PVDFポリマーの分子量が、100,000〜5,000,000g/モルである請求項1に記載の膜。
【請求項5】
前記アクリルポリマーが、50〜100重量パーセントのメチルメタクリレートモノマー単位を含むコポリマーである請求項1に記載の膜。
【請求項6】
前記アクリルポリマーが、70〜100重量パーセントのメチルメタクリレートモノマー単位を含むコポリマーである請求項5に記載の膜。
【請求項7】
前記アクリルポリマーが、70〜99重量パーセントのメチルメタクリレート単位と、1〜30重量パーセントの1つ以上のC1〜4アルキルアクリレートとを有するコポリマーを含む請求項1に記載の膜。
【請求項8】
前記アクリルポリマーが、0.5〜10重量パーセントの(メタ)アクリル酸を含む請求項1に記載の膜。
【請求項9】
前記アクリルポリマーが、60〜99重量パーセントのメチルメタクリレート単位、1〜20重量パーセントの1つ以上のC1〜4アルキル(メタ)アクリレートおよび/または1〜20重量パーセントのC1〜4(メタ)アルキル−アクリル酸を有するコポリマーを含む請求項1に記載の膜。
【請求項10】
前記アクリルポリマーの分子量が、30,000〜500,000g/モルである請求項1に記載の膜。
【請求項11】
前記アクリルポリマーが、アクリルブロックコポリマーを含む請求項1に記載の膜。
【請求項12】
前記アクリルブロックコポリマーが、ポリブチルアクリレートセンターブロックおよびメチルメタクリレートまたはメチルメタクリレートコポリマーをエンドブロックとして有するトリブロックコポリマーである請求項11に記載の膜。
【請求項13】
PVDFおよびアクリルポリマー樹脂が、適切な比率で、ペレット化形態へと溶融押出しすることにより、予備ブレンドされてから、次に前記成膜に用いられる請求項1に記載の膜。
【請求項14】
PVDFおよびアクリルポリマー樹脂が、適切な比率で、ペレット化形態へと溶融押出しすることにより、予備ブレンドされてから、粉末形態へと粉砕され、これを次に前記成膜に用いる請求項1に記載の膜。
【請求項15】
PVDFおよびアクリルポリマー樹脂が、別個の粉末として予備ブレンドされて、前記膜処方に用いるのに適切な比率で、均一なコンシステンシーの粉末ブレンドとなる請求項1に記載の膜。
【請求項16】
1つ以上の添加剤をさらに含み、前記PVDFおよびアクリルポリマー樹脂は、適切な比率で、ペレット化形態へと溶融押出しすることにより、前記添加剤と共に予備ブレンドされたてから、次に前記成膜に用いられる請求項1に記載の膜。
【請求項17】
前記添加剤が、ポリアルキレングリコール、ポリ−ビニルピロリドン、金属塩およびその他水抽出可能な細孔形成剤からなる群から選択される請求項16に記載の膜。
【請求項18】
前記膜が、中空糸膜、支持された中空糸膜、平坦な支持されていない膜または平坦な支持された膜である請求項1に記載の膜。
【請求項19】
浄水、体液浄化、廃水処理、浸透蒸留およびプロセス流体ろ過のための物品を含む請求項1に記載の膜。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−526885(P2010−526885A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550090(P2009−550090)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/082795
【国際公開番号】WO2009/091351
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】