耐震継手装置
リンク−ヒューズ継手は、地震により負荷される曲げモーメント及び剪断力に耐える。継手は、第1傾斜スロットが形成された第1連結プレートを有する第1連結プレートアセンブリを備える。第2連結プレートアセンブリは、第2傾斜スロットが形成された第2連結プレートを有する。第2傾斜スロットは、第1傾斜スロットと相対する傾斜が付される。第2連結プレートは、第1の連結プレートに対して第2の傾斜スロットの少なくとも一部と第1の傾斜スロットの少なくとも一部が重なり合うように位置合わせされる。ピンは、第1傾斜スロットと第2傾斜スロットを貫通して設けられる。継手構造は、地震による荷重が負荷された際に第1又は第2プレートアセンブリのうちの少なくとも1つが他方に対して滑り可能に組み合わされ、接合力に重大な損失を生じることなく維持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、耐震構造物に用いられるリンク梁継手(link beam joint)に関する。特に、リンク梁継手は、耐震壁(shear wall)又は構造骨組(fram constraction of structurers)が重大な損傷を受けることなく、地震の揺れに耐えることができるように、力学的周期を延ばし、耐震壁又は構造骨組内で耐えなければならない力を減らすリンク−ヒューズ継手(link-fuse joint)である。
【背景技術】
【0002】
大地震の発生地域において、建築物が過去に建築され、現在も毎日のように建築されている。このような建築物の設計には、格別の配慮が必要である。これらの構造物の壁及び骨組は、鉛直荷重条件だけではなく、地震に伴う特有の荷重条件に適合するように設計しなければならない。例えば、耐震壁内のリンク梁は、地震が発生している間、水平周期運動を受ける。このような荷重条件に耐えるために、地震活動を受ける建築物は、過大な荷重に対して延性(ductility)を有してエネルギを消散させるように機能しなければならない。
【0003】
従来のシステムにおいて、耐震鉄筋リンク梁は、完全に開発された(fully developed)鉄筋を有する鉄筋耐震壁に、直接、完全に連結する梁によって設計されている。これら梁は、風力(service wind)や頻発する地震に対して塑性的に耐えるように設計されており、また、激しい地震現象の間、延性又は蝶番的に動作するように設計されている。
【0004】
リンク梁の長さと深さの比(length-to-depth ratios)が比較的小さいので、剪断は、一般的に、梁の動作を制御する。大きな剪断力に対して、「X」字状に組み合わせて配置する筋交い(diagonal reinforcement)は、通常、必要とされる。剪断力が大きい他の場合では、荷重に耐えるために、構造用鋼材が鉄筋コンクリート梁内に埋設される。全ての場合において、これら梁は、激しい地震現象に対して変形が生じるように設計されている。鉄筋及び構造用鋼材は、永久に使用するならば、変形し、コンクリートに亀裂や破砕を生じさせる。従来の設計において、梁は、延性で動作してエネルギを消散させるが、塑性変形する。
【0005】
鉄骨組において、支柱(braces)間を連結する鉄骨梁は、激しい地震現象の間、ヒューズになるように設計されている。この動作は、偏心鉄骨組(eccentrically braced frame)のリンク梁と同等である。これら梁は、撓みや塑性変形によって、構造材及び柱並びに構造全体が保護されるように設計されている。
【0006】
現在のリンク梁は、地震現象に耐え得るように設計されているが、連結構造の伸縮自在な機能が無能力化することにより、これらの従来の設計を用いた構造物が使用可能状態のままであり得るか否かについては、重大な疑問がある。したがって、地震の影響を受けた後でも構造の完全性が比較的そのまま維持されるように、重大な梁や連結部位に損傷が生じることなく地震現象に耐えることができる耐震壁や筋交いが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に係る「リンク−ヒューズ」継手は、耐震壁や鉄骨組が地震現象に対して重大な損傷が生じることなく維持されることを可能とする。また、リンク−ヒューズ継手は、本明細書において継手接合(joint connection)とも称される。リンク−ヒューズ継手は、一般的に、リンク梁アセンブリに用いられる。リンク−ヒューズ継手は、例えば、耐震性の建造物又は他の構造物の鉄筋コンクリート剪断壁又は鉄骨組に組み込まれ、過大な荷重の下で滑ることによって構造物の動特性を向上させる。この滑りは、構造物の基本周期を延ばして動特性を変え、構造物を柔軟にすることによって、構造物が、地震現象中、伸縮性を示すことができるようにする。リンク−ヒューズ継手を用いることによって、同等の大きさの耐震建築物に用いられる耐震壁又は鉄骨組及び継手梁を使用することは、通常、必要でない。したがって、本願発明に係るリンク−ヒューズ継手を用いることにより、建築費を削減することができる。
【0008】
リンク−ヒューズ継手は、建築物の隣接する壁や骨組に付設する継手梁に使用される。リンク−ヒューズ継手において、梁の中のプレートアセンブリは、プレートアセンブリから外へ延びている連結プレートを貫通して延びるピンアセンブリによって、互いに組み合わされて保持されるように設計されている。更に、プレートアセンブリには、対向する傾斜スロットが設けられている。プレートアセンブリは、例えば、相互に共同して1つのネジ付ロッド、複数のネジ付ロッド、複数の高力鋼ボルト等により緊締(secured)されている。このような継手構造によって、大地震の揺れを受けたとき、スロットプレートが締付力の重大な損失なしで、互いに共同して滑ることを可能にする。連結部における動作は、プレートアセンブリの接合面を真鍮で覆うことによって、さらに制限される。連結部に設ける真鍮製のシムは、所定の負荷置換機能や優れた周期特性を有する。
【0009】
鋼鉄製の表面に対する真鍮製のシムによりプレートアセンブリの締付力から生じる摩擦によって、殆どの使用荷重状態、例えば風、重力及び中程度の地震による荷重の下では、継手は滑らない。ネジ付ロッドや高力ボルトは、トルクが付与されると、接合面間に摩擦を生じることによって、滑り抵抗接合を示す。しかしながら、大地震の荷重条件の下では、接合力のレベルは、摩擦係数掛ける通常のロッド又はボルトの締付力の積を上回り、それによって、連結性を維持しながら、継手が平面方向に滑る。
【0010】
地震現象中の継手の滑りにより、継手梁の剪断力及び曲げモーメントは、耐震壁又は鉄骨組に伝達される。この滑りによるエネルギ消散は、「フュージング(fusing)」として知られている。このエネルギ消散は、建造物に対する地震による潜在的損傷を軽減する。
【0011】
本発明は、継手構造を提供する。継手構造は、第1の傾斜スロットが貫通して形成された第1の連結プレートを有する第1のプレートアセンブリを備える。継手構造は、第2の傾斜スロットが貫通して形成された第2の連結プレートを有する第2のプレートアセンブリを備える。第2の傾斜スロットは、第1の傾斜スロットに対して傾斜方向が逆向きである。第2の連結プレートは、第2の傾斜スロットの少なくとも一部が第1の傾斜スロットの一部と重なり合うように位置合わせされる。ピンは、第1の傾斜スロットと第2の傾斜スロットを貫通して位置合わせされる。継手構造は、地震荷重が負荷されるとき、締付力の重大な損失なしで、第1及び第2のプレートアセンブリのうちの少なくとも1つの相対的な滑りを収容する。
【0012】
本発明に係る継手構造は、過大な地震荷重が負荷されると、滑りによりエネルギを消散させるが、その構造による伸縮性を維持する。更に、継手構造は、荷重によって滑ったときには、塑性的にならず、又は曲がらない。これにより、本発明を適用した継手構造を利用した耐震壁は、例えば地震に耐えた後も使用でき、更なる地震耐えることができる。
【0013】
本発明の他の特徴は、以下の図面及び詳細な説明に基づいて当業者に明らかになる。この説明内に含まれる全ての同様の更なるシステム、方法、特徴及び利点は、発明の範囲内にあり、請求の範囲によって保護される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書の一部である添付図面は、本発明の実施例を示し、構成と共に、発明の作用効果を理解するために用いられる。
【図1】本発明に係るリンク梁継手アセンブリの一実施例を示す透視図である。
【図2】図1に示したリンク梁継手アセンブリの分解正面図である。
【図2a】スロットプレートアセンブリを連結するピンアセンブリの正面図である。
【図3】図1に示したリンク梁継手アセンブリの分解平面図である。
【図3a】スロットプレートアセンブリを連結するピンアセンブリの側面図である。
【図4】図2の線IV―IV’に沿って断面したリンク梁継手アセンブリの横断面図である。
【図5】図2の線V―V’に沿って断面したプレートアセンブリの横断面図である。
【図6】図2の線VI―VI’に沿って断面したプレートアセンブリの横断面図である。
【図7】1個のネジ付貫通ロッドからなるピンアセンブリの側面図である。
【図8】複数個のネジ付貫通ロッドからなるピンアセンブリの側面図である。
【図9】複数個の高力ボルトからなるピンアセンブリの側面図である。
【図10】本発明に係るリンク継手アセンブリの実施例を示す正面図である。
【図11】本発明に係るリンク継手アセンブリの実施例を示す平面図である。
【図12】本発明に係るリンク継手アセンブリの実施例を示す正面図であり、過大な荷重の負荷によりリンク−ヒューズ継手の位置ズレが生じた状態を示す。
【図13】本発明に係るリンク梁継手アセンブリの実施例を示す斜視図であり、過大な荷重の負荷によりリンク−ヒューズ継手の位置ズレが生じた状態を示す。 対応する参照符号は、各図において対応する部位に共通する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態として示すリンク−ヒューズ継手について、図面を参照して詳細に説明する。リンク−ヒューズ継手は、地震現象に対して耐震壁や鉄骨組が、梁又は継手の重大な破損を生じることなく耐え得るようにする。リンク−ヒューズ継手は、例えば耐震建築物等の鉄筋コンクリート剪断壁又は鉄骨組に適用され、過大な荷重の下でリンク−ヒューズ継手を滑らせることにより構造物の動特性を向上させる。この滑りは、地震現象中に伸縮性を生じて構造物の基本周期を延ばし、柔軟にすることによって動特性を変化させる。リンク−ヒューズ継手を用いることにより、同等の大きさの耐震建築物に用いられるのと同じ大きさの耐震壁又は鉄骨組及び継手梁を使用する必要はない。したがって、本願発明に係るリンク−ヒューズ継手を用いることにより、建築費を削減することができる。
【0016】
図1は、本発明に係るリンク梁継手アセンブリ10の一実施例を示す斜視図である。図1に示した実施例は、鉄筋コンクリート建築物に用いるように記述されるが、当業者は、他の構成、例えば、構造用鋼材及び/又は例えば構造用鋼材と鉄筋コンクリートの合成材料からなる構造物でリンク−ヒューズ継手19を用いてもよい。リンク−ヒューズ継手は、例えば筋交い骨組の柱間に用いられる。
【0017】
図1に示すように、実施例のリンク梁継手アセンブリ10は、梁14a、14bを介して連結された壁12a、12bを含む。実施例として示す壁12a、12bは、鉄筋コンクリート壁である。壁は、例えば鋼柱及び同等の異なる材料であってもよい。梁は、例えば、コンクリート梁、鉄骨梁及び同等のものであってもよい。埋込プレート28a、28bは、例えば梁に溶接及び/又はコンクリート梁内に固定されることにより、それぞれの梁14a、14bに固定される。連結プレート16a、16bは、埋込プレート28bの端部から相対して突出される。連結プレート18a、18bは、埋込プレート28aの端部から相対して突出される。連結プレートは、例えば鋼板及び同等材であり、例えば溶接により埋込プレートに固定される。
【0018】
連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18bは、リンク−ヒューズ継手19により互いに連結される。連結プレート16a、16b及び18a、18bは、それぞれを連結するピンアセンブリ20を介して連結されることによりリンク−ヒューズ継手19を構成する。ピンアセンブリ20は、例えば構造用鋼材又は適宜の材料からなる。実施例において、連結プレート16a、16bは、外側の連結プレート18a、18b間の内側プレートとして配置される。内側連結プレート16a、16bと外側連結プレート18a、18bの各組は、リンク−ヒューズ継手19が完全なとき、互いに隣接する。さらに以下に説明するように、連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18bは、連結プレート16a、16b及び18a、18bにそれぞれ形成したスロット30、31(図2)に取り付けたピンアセンブリ20によって、本発明に係るリンク−ヒューズ継手19を構成する。
【0019】
実施例においては、2枚の連結プレート16a、16bは、2枚の連結プレート18a、18bに隣接する。リンク−ヒューズ継手は、それぞれが異なる数の連結プレートからなるようにしてもよいことは、当業者にとって明らかである。例えば、一方の継手は2枚の連結プレート16a、16bであり、他方の継手は1枚の広い連結プレート18であってもよい。それぞれの継手が、1枚以上の連結プレートであってもよい。更に、それぞれの継手が、異なる数の連結プレートであってもよい。
【0020】
図2は、図1に示したリンク梁継手アセンブリ10の分解正面図である。図示する連結プレート16aと連結プレート18aは、リンク−ヒューズ継手19が分離された状態において明らかになる。実施例において、連結プレート16aと連結プレート18aは、埋込プレート28a、28bに溶接されて埋込プレートから突出される。
【0021】
内側連結プレート16a、16bと外側連結プレート18a、18bには、それぞれ、傾斜スロット30、31が形成されている。これらスロットは、0°〜90°の基準角θを以って対向している。これら傾斜スロットは、壁12a、12bの平面における水平及び鉛直モーメント負荷を考慮する。
【0022】
図2aは、実施例のピンアセンブリ20の正面図であり、構造用鋼材(又はネジ付ロッド)21と、4つの鋼製のナット22と、8つの鋼製の座金24を有する。ピン21は、連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18bの傾斜スロット30、31に嵌挿される。ピン21は、鋼製の座金24とトルクを与えられた鋼製のナット22により連結プレートに取り付けられる。鋼製の座金24は、鋼製のナット22の下側に位置する。ピン21は、傾斜スロット30、31を貫通する。ピンアセンブリの部品には、上述した実施例以外の材料を用いてもよいことは、当業者にとって明らかである。更に、ピンアセンブリの構成は、より少ない又はより多くの座金やナットを含んでいてもよい。
【0023】
図3は、図1に示したリンク梁継手アセンブリ10の分解平面図である。図3は、内側連結プレート16a、16bと外側連結プレート18a、18bの配置を示している。傾斜スロット30、31の位置も、図3に示されている。図3に示すように、連結プレート16aは、スロット30aを有し、連結プレート16bは、スロット30bを有し、連結プレート18aは、スロット31aを有し、連結プレート18bは、スロット30bを有する。実施例においては、連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18bは、それぞれリンク梁14a、14bと平行に埋込プレート28a、28bから直接突出される。実施例においては、連結プレート16、18は、プレートアセンブリの中心線から互いに等距離を以って配置されている。
【0024】
図3aは、連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18bを連結するピンアセンブリ20の平面図である。図3aは、例えば鋼製のネジ付ピン21が、連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18bに対して鋼製の座金24上に鋼製のナット22を介してどのように固定されるかを示している。真鍮製のシム26は、鋼製の座金24と連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18b間に配置される。
【0025】
図4は、図2の線IV―IV’に沿って断面したプレートアセンブリ18の横断面図である。図4は、外側連結プレート18a、18bの断面を示している。更に、図4には、傾斜スロット31a、31bの位置が、線IV―IV’に沿った梁14aの水平方向の中心軸40と関連して示されている。
【0026】
図5は、図2の線V―V’に沿って断面したプレートアセンブリ16の横断面図である。図5は、内側連結プレート16a、16bの断面を示している。図5には、傾斜スロット30a、30bの位置が、線V―V’に沿った梁14bの水平方向の中心軸50と関連して示されている。
【0027】
図6は、図2の線VI―VI’に沿って断面したプレートアセンブリ16a、16bの横断面図である。図6には、連結プレート16aと16bとの連結位置が、鋼製の埋込プレート28に鉛直で梁14bと壁12bを経る中心軸60と関連して示されている。
【0028】
図7は、1個のネジ付貫通ロッド21を有し、内側連結プレート16a、16bと外側連結プレート18a、18bの結合に用いられるピンアセンブリ20の平面図である。図7に示すピンアセンブリは、鋼製の全長ネジ付ロッド21と、トルクロッドとして用いられる鋼製のナット22と、鋼製の座金24及び真鍮製のシム26を有する。図7aは、完成したピンアセンブリ20の側面図である。
【0029】
図8は、複数個のネジ付貫通ロッド32を有して内側連結プレート16a、16bと外側連結プレート18a、18bの結合に用いられる他のピンアセンブリ20の平面図である。このピンアセンブリは、複数個の鋼製の全長ネジ付ロッド32と、トルクロッドとして用いられる鋼製のナット33と、鋼製の座金24と、真鍮製のシム26と、ロッド間隔を維持するために用いる鋼製スペーサ板(steel spacer plate)36を有する。鋼製スペーサ板36は、棒径に適合するように、標準的な直径穴を使う。図8aは、複数個の鋼製の全長ネジ付ロッド32を用いる完成したピンアセンブリ20の側面図である。
【0030】
図9は、複数個の高力鋼ボルト34を有する、内側連結プレート16a、16bと外側連結プレート18a、18bの結合に用いられる他の完成したピンアセンブリ20の平面図である。このピンアセンブリは、耐震壁から突出されたネジ付の高力鋼ボルト34と、高力鋼ボルトにトルクを与えるのに用いられる鋼製のナット35と、鋼製の座金24と、真鍮製のシム26を有する。図9aは、複数個の高力鋼ボルト34を用いるピンアセンブリ20の側面図である。
【0031】
図10は、リンク−ヒューズ継手19を介して連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18bを結合するリンク梁継手アセンブリ10の一実施例を示す正面図である。図10には、連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18bを貫通するピンアセンブリ20の配置が示されている。この結合は、例えば1個の貫通ロッド21、複数個の貫通ロッド32又は高力鋼ボルト34からなる。上述したように、連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18bには傾斜スロット30、31が形成され、過大な地震荷重が負荷されると相対して滑るようにする。これら連結プレートは、ピンアセンブリ20がスロット内を移動することにより、ピンアセンブリ20を介して一体化した状態で動作する。連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18b間に生じる滑りは、埋込プレート28a、28bに伝達され、これによって、リンク−ヒューズ継手19のエネルギを消散させる。
【0032】
1つ以上の真鍮製のシム26は、例えば、風、重力及び中程度の地震による標準的な荷重に対して連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18b間の滑りを制御するために、例えば連結プレート間及び/又は連結プレートと座金の間に設けられる。構造用鋼材又は他の材料の平滑面に対して使用される真鍮又は他の材料の摩擦係数は、よく知られており、また、正確に予測することができる。例えば、滑りが生じる剪断力は、次の式で求められる。
F=μsN (式1)
ここで、Fは滑りが生じる剪断力、μsは静摩擦係数(例えば、鋼板間に挟み込んだ真鍮の0.30)、Nは貫通ロッド21、32又はボルト34のトルクにより接合のために負荷される締付力である。これにより、連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18b間に生じる滑り又は回転の前に耐えることが可能なリンク−ヒューズ継手19の剪断値が決定される。
【0033】
更に、鋼製ボルト21、32、34の接合力は、滑りの過程においても失われない。したがって、リンク−ヒューズ継手19の摩擦抵抗は、連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18b間の滑りによる耐震壁、リンク梁、継手の運動が終了した後にも、維持される。このように、リンク−ヒューズ継手19は、大地震による荷重が負荷された後でさえも中程度の荷重条件下では滑らない状態を維持しなければならない。
【0034】
図11は、リンク梁継手アセンブリ10の一実施例の平面図である。図11において、リンク−ヒューズ継手19により結合されるとともに埋込プレート28から突出された連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18bの相対する位置が示されている。この実施例に図示するように、シム26は、例えば連結プレート間(例えば、連結プレート16aと連結プレート18aとの間)、連結プレートと内側座金間(例えば、連結プレート16bと座金24との間)、及び/又は連結プレートと外側座金間(例えば、連結プレート18bと座金24との間)に配置される。
【0035】
図12はリンク−ヒューズ継手19の側面図、図13は透視図であり、地震による激しい荷重が負荷されて滑りが生じた状態を示す。地震荷重が負荷されると、地盤の振動により剪断力や曲げモーメントが壁12a、12bに負荷される。過大な荷重が負荷されると、リンク−ヒューズ継手19は、図12及び図13に示すように滑る。リンク−ヒューズ継手19は、ピンアセンブリ20が、連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18bに相対して形成した傾斜スロット30、31内においてピン21(又は32、34)に沿って滑る。剪断荷重は、このピン結合を介してリンク梁14a、14bへと伝達され、さらに耐震壁12a、12bへと伝達される。実施例において、壁12aは、ピン21がスロット30内での位置が変わらずにスロット31の下方へと滑ることにより、例えばリンク−ヒューズ継手19に対して左上方へと移動する。一方、構成の移動の間、ピン21のスロット30内での位置を変化させることができる。このようにして、相対する傾斜スロットは、壁12a、12bが互いに関連して動作する間、リンク−ヒューズ継手19によるピン21の結合が維持されるようにする。
【0036】
したがって、リンク−ヒューズ継手の滑りにより、エネルギは消散する。このようにして、構造物の動特性は、地震現象中に滑りが生じると変化する。この動特性の周期は、構造物の固有の軟化(softening)、すなわち剛性の低減によって、長くされ、その後、慣性力(effective force)が下がり、構造物の損傷が減る。
【0037】
上述した本発明に係る実施例は、説明の目的で示したものである。それは、包括的なものではなく、発明を開示されたものに限定するものではない。修正及び変更は、上述した技術範囲に基づいて可能であり、発明を実施することによって、可能である。本発明の範囲は、請求の範囲及びその技術的範囲に基づいて決定される。
【0038】
例えば、建造物の骨組内に設けられるリンク−ヒューズ継手19の他の実施例は、梁、例えば、耐震壁12(主に、耐震壁12の基礎)に加えて、他の構造用支持材にリンク−ヒューズ継手19を用いてもよい。他の材料としては、建造物の骨組及び継手10に用いるものが考慮されるが、これに限定されるものではなく、例えば、ファイバーグラス等の合成樹脂材を含む。代替構造鋼(alternative structural steel)も、これに限定されるものではないが、組合断面、例えば、溶接プレート又は例えばチャンネル材等の他の形態のリンク−ヒューズ継手19に用いられる。代替構造鋼(真鍮を除く)は、予測できる滑り閾値を得るために連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18b間にも用いられる。これら材料としては、限定されるものではないが、テフロン(登録商標)、銅、又は例えば制御圧延仕上(controlled mill finish)を施された鋼を用いてもよい。また、鋼、テフロン、銅又は他の材料は、プレート端部の接合として真鍮製のシム26に代えて用いられる。
【0039】
本発明の構成要件又は従来技術等の説明において、冠詞「a」、「an」、「the」「said」は、1つ以上の要素があることを意味している。用語「comprising」、「including」及び「having」は、記載された要素以外の更なる要素を含むことを意味している。
【0040】
発明の範囲から逸脱することなく、上述した構造物に様々な変更を加えることができ、上述した説明に含まれ、又は図面に示す全てのものは、限定的でなく、例示的なものと解釈されなければならない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、耐震構造物に用いられるリンク梁継手(link beam joint)に関する。特に、リンク梁継手は、耐震壁(shear wall)又は構造骨組(fram constraction of structurers)が重大な損傷を受けることなく、地震の揺れに耐えることができるように、力学的周期を延ばし、耐震壁又は構造骨組内で耐えなければならない力を減らすリンク−ヒューズ継手(link-fuse joint)である。
【背景技術】
【0002】
大地震の発生地域において、建築物が過去に建築され、現在も毎日のように建築されている。このような建築物の設計には、格別の配慮が必要である。これらの構造物の壁及び骨組は、鉛直荷重条件だけではなく、地震に伴う特有の荷重条件に適合するように設計しなければならない。例えば、耐震壁内のリンク梁は、地震が発生している間、水平周期運動を受ける。このような荷重条件に耐えるために、地震活動を受ける建築物は、過大な荷重に対して延性(ductility)を有してエネルギを消散させるように機能しなければならない。
【0003】
従来のシステムにおいて、耐震鉄筋リンク梁は、完全に開発された(fully developed)鉄筋を有する鉄筋耐震壁に、直接、完全に連結する梁によって設計されている。これら梁は、風力(service wind)や頻発する地震に対して塑性的に耐えるように設計されており、また、激しい地震現象の間、延性又は蝶番的に動作するように設計されている。
【0004】
リンク梁の長さと深さの比(length-to-depth ratios)が比較的小さいので、剪断は、一般的に、梁の動作を制御する。大きな剪断力に対して、「X」字状に組み合わせて配置する筋交い(diagonal reinforcement)は、通常、必要とされる。剪断力が大きい他の場合では、荷重に耐えるために、構造用鋼材が鉄筋コンクリート梁内に埋設される。全ての場合において、これら梁は、激しい地震現象に対して変形が生じるように設計されている。鉄筋及び構造用鋼材は、永久に使用するならば、変形し、コンクリートに亀裂や破砕を生じさせる。従来の設計において、梁は、延性で動作してエネルギを消散させるが、塑性変形する。
【0005】
鉄骨組において、支柱(braces)間を連結する鉄骨梁は、激しい地震現象の間、ヒューズになるように設計されている。この動作は、偏心鉄骨組(eccentrically braced frame)のリンク梁と同等である。これら梁は、撓みや塑性変形によって、構造材及び柱並びに構造全体が保護されるように設計されている。
【0006】
現在のリンク梁は、地震現象に耐え得るように設計されているが、連結構造の伸縮自在な機能が無能力化することにより、これらの従来の設計を用いた構造物が使用可能状態のままであり得るか否かについては、重大な疑問がある。したがって、地震の影響を受けた後でも構造の完全性が比較的そのまま維持されるように、重大な梁や連結部位に損傷が生じることなく地震現象に耐えることができる耐震壁や筋交いが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に係る「リンク−ヒューズ」継手は、耐震壁や鉄骨組が地震現象に対して重大な損傷が生じることなく維持されることを可能とする。また、リンク−ヒューズ継手は、本明細書において継手接合(joint connection)とも称される。リンク−ヒューズ継手は、一般的に、リンク梁アセンブリに用いられる。リンク−ヒューズ継手は、例えば、耐震性の建造物又は他の構造物の鉄筋コンクリート剪断壁又は鉄骨組に組み込まれ、過大な荷重の下で滑ることによって構造物の動特性を向上させる。この滑りは、構造物の基本周期を延ばして動特性を変え、構造物を柔軟にすることによって、構造物が、地震現象中、伸縮性を示すことができるようにする。リンク−ヒューズ継手を用いることによって、同等の大きさの耐震建築物に用いられる耐震壁又は鉄骨組及び継手梁を使用することは、通常、必要でない。したがって、本願発明に係るリンク−ヒューズ継手を用いることにより、建築費を削減することができる。
【0008】
リンク−ヒューズ継手は、建築物の隣接する壁や骨組に付設する継手梁に使用される。リンク−ヒューズ継手において、梁の中のプレートアセンブリは、プレートアセンブリから外へ延びている連結プレートを貫通して延びるピンアセンブリによって、互いに組み合わされて保持されるように設計されている。更に、プレートアセンブリには、対向する傾斜スロットが設けられている。プレートアセンブリは、例えば、相互に共同して1つのネジ付ロッド、複数のネジ付ロッド、複数の高力鋼ボルト等により緊締(secured)されている。このような継手構造によって、大地震の揺れを受けたとき、スロットプレートが締付力の重大な損失なしで、互いに共同して滑ることを可能にする。連結部における動作は、プレートアセンブリの接合面を真鍮で覆うことによって、さらに制限される。連結部に設ける真鍮製のシムは、所定の負荷置換機能や優れた周期特性を有する。
【0009】
鋼鉄製の表面に対する真鍮製のシムによりプレートアセンブリの締付力から生じる摩擦によって、殆どの使用荷重状態、例えば風、重力及び中程度の地震による荷重の下では、継手は滑らない。ネジ付ロッドや高力ボルトは、トルクが付与されると、接合面間に摩擦を生じることによって、滑り抵抗接合を示す。しかしながら、大地震の荷重条件の下では、接合力のレベルは、摩擦係数掛ける通常のロッド又はボルトの締付力の積を上回り、それによって、連結性を維持しながら、継手が平面方向に滑る。
【0010】
地震現象中の継手の滑りにより、継手梁の剪断力及び曲げモーメントは、耐震壁又は鉄骨組に伝達される。この滑りによるエネルギ消散は、「フュージング(fusing)」として知られている。このエネルギ消散は、建造物に対する地震による潜在的損傷を軽減する。
【0011】
本発明は、継手構造を提供する。継手構造は、第1の傾斜スロットが貫通して形成された第1の連結プレートを有する第1のプレートアセンブリを備える。継手構造は、第2の傾斜スロットが貫通して形成された第2の連結プレートを有する第2のプレートアセンブリを備える。第2の傾斜スロットは、第1の傾斜スロットに対して傾斜方向が逆向きである。第2の連結プレートは、第2の傾斜スロットの少なくとも一部が第1の傾斜スロットの一部と重なり合うように位置合わせされる。ピンは、第1の傾斜スロットと第2の傾斜スロットを貫通して位置合わせされる。継手構造は、地震荷重が負荷されるとき、締付力の重大な損失なしで、第1及び第2のプレートアセンブリのうちの少なくとも1つの相対的な滑りを収容する。
【0012】
本発明に係る継手構造は、過大な地震荷重が負荷されると、滑りによりエネルギを消散させるが、その構造による伸縮性を維持する。更に、継手構造は、荷重によって滑ったときには、塑性的にならず、又は曲がらない。これにより、本発明を適用した継手構造を利用した耐震壁は、例えば地震に耐えた後も使用でき、更なる地震耐えることができる。
【0013】
本発明の他の特徴は、以下の図面及び詳細な説明に基づいて当業者に明らかになる。この説明内に含まれる全ての同様の更なるシステム、方法、特徴及び利点は、発明の範囲内にあり、請求の範囲によって保護される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書の一部である添付図面は、本発明の実施例を示し、構成と共に、発明の作用効果を理解するために用いられる。
【図1】本発明に係るリンク梁継手アセンブリの一実施例を示す透視図である。
【図2】図1に示したリンク梁継手アセンブリの分解正面図である。
【図2a】スロットプレートアセンブリを連結するピンアセンブリの正面図である。
【図3】図1に示したリンク梁継手アセンブリの分解平面図である。
【図3a】スロットプレートアセンブリを連結するピンアセンブリの側面図である。
【図4】図2の線IV―IV’に沿って断面したリンク梁継手アセンブリの横断面図である。
【図5】図2の線V―V’に沿って断面したプレートアセンブリの横断面図である。
【図6】図2の線VI―VI’に沿って断面したプレートアセンブリの横断面図である。
【図7】1個のネジ付貫通ロッドからなるピンアセンブリの側面図である。
【図8】複数個のネジ付貫通ロッドからなるピンアセンブリの側面図である。
【図9】複数個の高力ボルトからなるピンアセンブリの側面図である。
【図10】本発明に係るリンク継手アセンブリの実施例を示す正面図である。
【図11】本発明に係るリンク継手アセンブリの実施例を示す平面図である。
【図12】本発明に係るリンク継手アセンブリの実施例を示す正面図であり、過大な荷重の負荷によりリンク−ヒューズ継手の位置ズレが生じた状態を示す。
【図13】本発明に係るリンク梁継手アセンブリの実施例を示す斜視図であり、過大な荷重の負荷によりリンク−ヒューズ継手の位置ズレが生じた状態を示す。 対応する参照符号は、各図において対応する部位に共通する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態として示すリンク−ヒューズ継手について、図面を参照して詳細に説明する。リンク−ヒューズ継手は、地震現象に対して耐震壁や鉄骨組が、梁又は継手の重大な破損を生じることなく耐え得るようにする。リンク−ヒューズ継手は、例えば耐震建築物等の鉄筋コンクリート剪断壁又は鉄骨組に適用され、過大な荷重の下でリンク−ヒューズ継手を滑らせることにより構造物の動特性を向上させる。この滑りは、地震現象中に伸縮性を生じて構造物の基本周期を延ばし、柔軟にすることによって動特性を変化させる。リンク−ヒューズ継手を用いることにより、同等の大きさの耐震建築物に用いられるのと同じ大きさの耐震壁又は鉄骨組及び継手梁を使用する必要はない。したがって、本願発明に係るリンク−ヒューズ継手を用いることにより、建築費を削減することができる。
【0016】
図1は、本発明に係るリンク梁継手アセンブリ10の一実施例を示す斜視図である。図1に示した実施例は、鉄筋コンクリート建築物に用いるように記述されるが、当業者は、他の構成、例えば、構造用鋼材及び/又は例えば構造用鋼材と鉄筋コンクリートの合成材料からなる構造物でリンク−ヒューズ継手19を用いてもよい。リンク−ヒューズ継手は、例えば筋交い骨組の柱間に用いられる。
【0017】
図1に示すように、実施例のリンク梁継手アセンブリ10は、梁14a、14bを介して連結された壁12a、12bを含む。実施例として示す壁12a、12bは、鉄筋コンクリート壁である。壁は、例えば鋼柱及び同等の異なる材料であってもよい。梁は、例えば、コンクリート梁、鉄骨梁及び同等のものであってもよい。埋込プレート28a、28bは、例えば梁に溶接及び/又はコンクリート梁内に固定されることにより、それぞれの梁14a、14bに固定される。連結プレート16a、16bは、埋込プレート28bの端部から相対して突出される。連結プレート18a、18bは、埋込プレート28aの端部から相対して突出される。連結プレートは、例えば鋼板及び同等材であり、例えば溶接により埋込プレートに固定される。
【0018】
連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18bは、リンク−ヒューズ継手19により互いに連結される。連結プレート16a、16b及び18a、18bは、それぞれを連結するピンアセンブリ20を介して連結されることによりリンク−ヒューズ継手19を構成する。ピンアセンブリ20は、例えば構造用鋼材又は適宜の材料からなる。実施例において、連結プレート16a、16bは、外側の連結プレート18a、18b間の内側プレートとして配置される。内側連結プレート16a、16bと外側連結プレート18a、18bの各組は、リンク−ヒューズ継手19が完全なとき、互いに隣接する。さらに以下に説明するように、連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18bは、連結プレート16a、16b及び18a、18bにそれぞれ形成したスロット30、31(図2)に取り付けたピンアセンブリ20によって、本発明に係るリンク−ヒューズ継手19を構成する。
【0019】
実施例においては、2枚の連結プレート16a、16bは、2枚の連結プレート18a、18bに隣接する。リンク−ヒューズ継手は、それぞれが異なる数の連結プレートからなるようにしてもよいことは、当業者にとって明らかである。例えば、一方の継手は2枚の連結プレート16a、16bであり、他方の継手は1枚の広い連結プレート18であってもよい。それぞれの継手が、1枚以上の連結プレートであってもよい。更に、それぞれの継手が、異なる数の連結プレートであってもよい。
【0020】
図2は、図1に示したリンク梁継手アセンブリ10の分解正面図である。図示する連結プレート16aと連結プレート18aは、リンク−ヒューズ継手19が分離された状態において明らかになる。実施例において、連結プレート16aと連結プレート18aは、埋込プレート28a、28bに溶接されて埋込プレートから突出される。
【0021】
内側連結プレート16a、16bと外側連結プレート18a、18bには、それぞれ、傾斜スロット30、31が形成されている。これらスロットは、0°〜90°の基準角θを以って対向している。これら傾斜スロットは、壁12a、12bの平面における水平及び鉛直モーメント負荷を考慮する。
【0022】
図2aは、実施例のピンアセンブリ20の正面図であり、構造用鋼材(又はネジ付ロッド)21と、4つの鋼製のナット22と、8つの鋼製の座金24を有する。ピン21は、連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18bの傾斜スロット30、31に嵌挿される。ピン21は、鋼製の座金24とトルクを与えられた鋼製のナット22により連結プレートに取り付けられる。鋼製の座金24は、鋼製のナット22の下側に位置する。ピン21は、傾斜スロット30、31を貫通する。ピンアセンブリの部品には、上述した実施例以外の材料を用いてもよいことは、当業者にとって明らかである。更に、ピンアセンブリの構成は、より少ない又はより多くの座金やナットを含んでいてもよい。
【0023】
図3は、図1に示したリンク梁継手アセンブリ10の分解平面図である。図3は、内側連結プレート16a、16bと外側連結プレート18a、18bの配置を示している。傾斜スロット30、31の位置も、図3に示されている。図3に示すように、連結プレート16aは、スロット30aを有し、連結プレート16bは、スロット30bを有し、連結プレート18aは、スロット31aを有し、連結プレート18bは、スロット30bを有する。実施例においては、連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18bは、それぞれリンク梁14a、14bと平行に埋込プレート28a、28bから直接突出される。実施例においては、連結プレート16、18は、プレートアセンブリの中心線から互いに等距離を以って配置されている。
【0024】
図3aは、連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18bを連結するピンアセンブリ20の平面図である。図3aは、例えば鋼製のネジ付ピン21が、連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18bに対して鋼製の座金24上に鋼製のナット22を介してどのように固定されるかを示している。真鍮製のシム26は、鋼製の座金24と連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18b間に配置される。
【0025】
図4は、図2の線IV―IV’に沿って断面したプレートアセンブリ18の横断面図である。図4は、外側連結プレート18a、18bの断面を示している。更に、図4には、傾斜スロット31a、31bの位置が、線IV―IV’に沿った梁14aの水平方向の中心軸40と関連して示されている。
【0026】
図5は、図2の線V―V’に沿って断面したプレートアセンブリ16の横断面図である。図5は、内側連結プレート16a、16bの断面を示している。図5には、傾斜スロット30a、30bの位置が、線V―V’に沿った梁14bの水平方向の中心軸50と関連して示されている。
【0027】
図6は、図2の線VI―VI’に沿って断面したプレートアセンブリ16a、16bの横断面図である。図6には、連結プレート16aと16bとの連結位置が、鋼製の埋込プレート28に鉛直で梁14bと壁12bを経る中心軸60と関連して示されている。
【0028】
図7は、1個のネジ付貫通ロッド21を有し、内側連結プレート16a、16bと外側連結プレート18a、18bの結合に用いられるピンアセンブリ20の平面図である。図7に示すピンアセンブリは、鋼製の全長ネジ付ロッド21と、トルクロッドとして用いられる鋼製のナット22と、鋼製の座金24及び真鍮製のシム26を有する。図7aは、完成したピンアセンブリ20の側面図である。
【0029】
図8は、複数個のネジ付貫通ロッド32を有して内側連結プレート16a、16bと外側連結プレート18a、18bの結合に用いられる他のピンアセンブリ20の平面図である。このピンアセンブリは、複数個の鋼製の全長ネジ付ロッド32と、トルクロッドとして用いられる鋼製のナット33と、鋼製の座金24と、真鍮製のシム26と、ロッド間隔を維持するために用いる鋼製スペーサ板(steel spacer plate)36を有する。鋼製スペーサ板36は、棒径に適合するように、標準的な直径穴を使う。図8aは、複数個の鋼製の全長ネジ付ロッド32を用いる完成したピンアセンブリ20の側面図である。
【0030】
図9は、複数個の高力鋼ボルト34を有する、内側連結プレート16a、16bと外側連結プレート18a、18bの結合に用いられる他の完成したピンアセンブリ20の平面図である。このピンアセンブリは、耐震壁から突出されたネジ付の高力鋼ボルト34と、高力鋼ボルトにトルクを与えるのに用いられる鋼製のナット35と、鋼製の座金24と、真鍮製のシム26を有する。図9aは、複数個の高力鋼ボルト34を用いるピンアセンブリ20の側面図である。
【0031】
図10は、リンク−ヒューズ継手19を介して連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18bを結合するリンク梁継手アセンブリ10の一実施例を示す正面図である。図10には、連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18bを貫通するピンアセンブリ20の配置が示されている。この結合は、例えば1個の貫通ロッド21、複数個の貫通ロッド32又は高力鋼ボルト34からなる。上述したように、連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18bには傾斜スロット30、31が形成され、過大な地震荷重が負荷されると相対して滑るようにする。これら連結プレートは、ピンアセンブリ20がスロット内を移動することにより、ピンアセンブリ20を介して一体化した状態で動作する。連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18b間に生じる滑りは、埋込プレート28a、28bに伝達され、これによって、リンク−ヒューズ継手19のエネルギを消散させる。
【0032】
1つ以上の真鍮製のシム26は、例えば、風、重力及び中程度の地震による標準的な荷重に対して連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18b間の滑りを制御するために、例えば連結プレート間及び/又は連結プレートと座金の間に設けられる。構造用鋼材又は他の材料の平滑面に対して使用される真鍮又は他の材料の摩擦係数は、よく知られており、また、正確に予測することができる。例えば、滑りが生じる剪断力は、次の式で求められる。
F=μsN (式1)
ここで、Fは滑りが生じる剪断力、μsは静摩擦係数(例えば、鋼板間に挟み込んだ真鍮の0.30)、Nは貫通ロッド21、32又はボルト34のトルクにより接合のために負荷される締付力である。これにより、連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18b間に生じる滑り又は回転の前に耐えることが可能なリンク−ヒューズ継手19の剪断値が決定される。
【0033】
更に、鋼製ボルト21、32、34の接合力は、滑りの過程においても失われない。したがって、リンク−ヒューズ継手19の摩擦抵抗は、連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18b間の滑りによる耐震壁、リンク梁、継手の運動が終了した後にも、維持される。このように、リンク−ヒューズ継手19は、大地震による荷重が負荷された後でさえも中程度の荷重条件下では滑らない状態を維持しなければならない。
【0034】
図11は、リンク梁継手アセンブリ10の一実施例の平面図である。図11において、リンク−ヒューズ継手19により結合されるとともに埋込プレート28から突出された連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18bの相対する位置が示されている。この実施例に図示するように、シム26は、例えば連結プレート間(例えば、連結プレート16aと連結プレート18aとの間)、連結プレートと内側座金間(例えば、連結プレート16bと座金24との間)、及び/又は連結プレートと外側座金間(例えば、連結プレート18bと座金24との間)に配置される。
【0035】
図12はリンク−ヒューズ継手19の側面図、図13は透視図であり、地震による激しい荷重が負荷されて滑りが生じた状態を示す。地震荷重が負荷されると、地盤の振動により剪断力や曲げモーメントが壁12a、12bに負荷される。過大な荷重が負荷されると、リンク−ヒューズ継手19は、図12及び図13に示すように滑る。リンク−ヒューズ継手19は、ピンアセンブリ20が、連結プレート16a、16bと連結プレート18a、18bに相対して形成した傾斜スロット30、31内においてピン21(又は32、34)に沿って滑る。剪断荷重は、このピン結合を介してリンク梁14a、14bへと伝達され、さらに耐震壁12a、12bへと伝達される。実施例において、壁12aは、ピン21がスロット30内での位置が変わらずにスロット31の下方へと滑ることにより、例えばリンク−ヒューズ継手19に対して左上方へと移動する。一方、構成の移動の間、ピン21のスロット30内での位置を変化させることができる。このようにして、相対する傾斜スロットは、壁12a、12bが互いに関連して動作する間、リンク−ヒューズ継手19によるピン21の結合が維持されるようにする。
【0036】
したがって、リンク−ヒューズ継手の滑りにより、エネルギは消散する。このようにして、構造物の動特性は、地震現象中に滑りが生じると変化する。この動特性の周期は、構造物の固有の軟化(softening)、すなわち剛性の低減によって、長くされ、その後、慣性力(effective force)が下がり、構造物の損傷が減る。
【0037】
上述した本発明に係る実施例は、説明の目的で示したものである。それは、包括的なものではなく、発明を開示されたものに限定するものではない。修正及び変更は、上述した技術範囲に基づいて可能であり、発明を実施することによって、可能である。本発明の範囲は、請求の範囲及びその技術的範囲に基づいて決定される。
【0038】
例えば、建造物の骨組内に設けられるリンク−ヒューズ継手19の他の実施例は、梁、例えば、耐震壁12(主に、耐震壁12の基礎)に加えて、他の構造用支持材にリンク−ヒューズ継手19を用いてもよい。他の材料としては、建造物の骨組及び継手10に用いるものが考慮されるが、これに限定されるものではなく、例えば、ファイバーグラス等の合成樹脂材を含む。代替構造鋼(alternative structural steel)も、これに限定されるものではないが、組合断面、例えば、溶接プレート又は例えばチャンネル材等の他の形態のリンク−ヒューズ継手19に用いられる。代替構造鋼(真鍮を除く)は、予測できる滑り閾値を得るために連結プレート16a、16b及び連結プレート18a、18b間にも用いられる。これら材料としては、限定されるものではないが、テフロン(登録商標)、銅、又は例えば制御圧延仕上(controlled mill finish)を施された鋼を用いてもよい。また、鋼、テフロン、銅又は他の材料は、プレート端部の接合として真鍮製のシム26に代えて用いられる。
【0039】
本発明の構成要件又は従来技術等の説明において、冠詞「a」、「an」、「the」「said」は、1つ以上の要素があることを意味している。用語「comprising」、「including」及び「having」は、記載された要素以外の更なる要素を含むことを意味している。
【0040】
発明の範囲から逸脱することなく、上述した構造物に様々な変更を加えることができ、上述した説明に含まれ、又は図面に示す全てのものは、限定的でなく、例示的なものと解釈されなければならない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の傾斜スロットが貫通して形成された第1の連結プレートを有する第1のプレートアセンブリと、
上記第1の傾斜スロットに対して逆の対角方向の傾斜が付された第2の傾斜スロットが貫通して形成され、上記第1の連結プレートに対して該第2の傾斜スロットの少なくとも一部と該第1の傾斜スロットの一部が重なり合うように位置合わせされる第2の連結プレートを有する第2のプレートアセンブリと、
上記第1の傾斜スロットと上記第2の傾斜スロットとを貫通して取り付けられるピンとを備え、
地震による荷重に対して上記第1のプレートアセンブリと上記第2のプレートアセンブリのうちの少なくとも1つを有効な連結力を保持した状態で滑らせることを特徴とする耐震継手装置。
【請求項2】
上記第1の連結プレートは、互いに位置合わせされる貫通傾斜スロットを有する複数の第1の連結プレートからなることを特徴とする請求項1に記載の耐震継手装置。
【請求項3】
上記第2の連結プレートは、互いに位置合わせされる貫通傾斜スロットを有する複数の第2の連結プレートからなることを特徴とする請求項1に記載の耐震継手装置。
【請求項4】
上記第1のプレートアセンブリが第1支持部材に連結され、上記第2のプレートアセンブリが第2支持部材に連結されることを特徴とする請求項1に記載の耐震継手装置。
【請求項5】
上記第1支持部材と上記第2支持部材の少なくとも一方は、梁であることを特徴とする請求項4に記載の耐震継手装置。
【請求項6】
上記第1支持部材と上記第2支持部材の少なくとも一方は、耐震壁であることを特徴とする請求項4に記載の耐震継手装置。
【請求項7】
上記第1支持部材と上記第2支持部材の少なくとも一方は、構造用鋼材からできていることを特徴とする請求項4に記載の耐震継手装置。
【請求項8】
上記第1支持部材と上記第2支持部材の少なくとも一方は、鉄筋コンクリートであることを特徴とする請求項4に記載の耐震継手装置。
【請求項9】
上記第1支持部材と上記第2支持部材の少なくとも一方は、合成材料であることを特徴とする請求項4に記載の耐震継手装置。
【請求項10】
上記第1の連結プレートと上記第2の連結プレート間に、シムを設けることを特徴とする請求項1に記載の耐震継手装置。
【請求項11】
上記シムは、真鍮からなることを特徴とする請求項10に記載の耐震継手装置。
【請求項12】
上記シムは、鋼からなることを特徴とする請求項10に記載の耐震継手装置。
【請求項13】
上記シムは、ポリテトラフルオロエチレン(商標名:テフロン)からなることを特徴とする請求項10に記載の耐震継手装置。
【請求項14】
上記シムは、銅からなることを特徴とする請求項10に記載の耐震継手装置。
【請求項15】
上記ピンは、鋼製のネジ付ロッド、複数の鋼製のネジ付ロッド及び複数の高力ボルトのうちの1つからなることを特徴とする請求項1に記載の耐震継手装置。
【請求項1】
第1の傾斜スロットが貫通して形成された第1の連結プレートを有する第1のプレートアセンブリと、
上記第1の傾斜スロットに対して逆の対角方向の傾斜が付された第2の傾斜スロットが貫通して形成され、上記第1の連結プレートに対して該第2の傾斜スロットの少なくとも一部と該第1の傾斜スロットの一部が重なり合うように位置合わせされる第2の連結プレートを有する第2のプレートアセンブリと、
上記第1の傾斜スロットと上記第2の傾斜スロットとを貫通して取り付けられるピンとを備え、
地震による荷重に対して上記第1のプレートアセンブリと上記第2のプレートアセンブリのうちの少なくとも1つを有効な連結力を保持した状態で滑らせることを特徴とする耐震継手装置。
【請求項2】
上記第1の連結プレートは、互いに位置合わせされる貫通傾斜スロットを有する複数の第1の連結プレートからなることを特徴とする請求項1に記載の耐震継手装置。
【請求項3】
上記第2の連結プレートは、互いに位置合わせされる貫通傾斜スロットを有する複数の第2の連結プレートからなることを特徴とする請求項1に記載の耐震継手装置。
【請求項4】
上記第1のプレートアセンブリが第1支持部材に連結され、上記第2のプレートアセンブリが第2支持部材に連結されることを特徴とする請求項1に記載の耐震継手装置。
【請求項5】
上記第1支持部材と上記第2支持部材の少なくとも一方は、梁であることを特徴とする請求項4に記載の耐震継手装置。
【請求項6】
上記第1支持部材と上記第2支持部材の少なくとも一方は、耐震壁であることを特徴とする請求項4に記載の耐震継手装置。
【請求項7】
上記第1支持部材と上記第2支持部材の少なくとも一方は、構造用鋼材からできていることを特徴とする請求項4に記載の耐震継手装置。
【請求項8】
上記第1支持部材と上記第2支持部材の少なくとも一方は、鉄筋コンクリートであることを特徴とする請求項4に記載の耐震継手装置。
【請求項9】
上記第1支持部材と上記第2支持部材の少なくとも一方は、合成材料であることを特徴とする請求項4に記載の耐震継手装置。
【請求項10】
上記第1の連結プレートと上記第2の連結プレート間に、シムを設けることを特徴とする請求項1に記載の耐震継手装置。
【請求項11】
上記シムは、真鍮からなることを特徴とする請求項10に記載の耐震継手装置。
【請求項12】
上記シムは、鋼からなることを特徴とする請求項10に記載の耐震継手装置。
【請求項13】
上記シムは、ポリテトラフルオロエチレン(商標名:テフロン)からなることを特徴とする請求項10に記載の耐震継手装置。
【請求項14】
上記シムは、銅からなることを特徴とする請求項10に記載の耐震継手装置。
【請求項15】
上記ピンは、鋼製のネジ付ロッド、複数の鋼製のネジ付ロッド及び複数の高力ボルトのうちの1つからなることを特徴とする請求項1に記載の耐震継手装置。
【図1】
【図2】
【図2a】
【図3】
【図3a】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7a】
【図8】
【図8a】
【図9】
【図9a】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図2a】
【図3】
【図3a】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7a】
【図8】
【図8a】
【図9】
【図9a】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−528234(P2010−528234A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509427(P2010−509427)
【出願日】平成20年5月6日(2008.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/062728
【国際公開番号】WO2008/147642
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(509311850)スキッドモア オーウィングス アンド メリル リミテッド ライアビリティ パートナーシップ (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月6日(2008.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/062728
【国際公開番号】WO2008/147642
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(509311850)スキッドモア オーウィングス アンド メリル リミテッド ライアビリティ パートナーシップ (8)
【Fターム(参考)】
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