説明

耐震補強部材および耐震補強工法

【課題】変形を抑制するための強度を必要に応じて確保でき、大きな力が加わった時にも壊れにくい靭性を有し、且つ優れた復元力を有する耐震補強部材および耐震補強工法を提供する。
【解決手段】耐震補強部材は、少なくとも一以上の弾性部材6を備え、且つ、直交差する構造材各々と略平行に配置された一対の材軸応力伝達部1と、当該材軸応力伝達部1と材軸応力伝達部1の間に位置する少なくとも一以上の斜め応力伝達部2とから成り、当該材軸応力伝達部1が構造材に各々摺動自在に取り付けられるように構成している。斜め応力伝達部2の両端は材軸応力伝達部1に固着または、摺動自在に装着している。斜め応力伝達部2と材軸応力伝達部1との接合部は回動自在なピン接合12とするのが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物、工作物等、構造材によって構成される構造物において、土台と柱、梁と柱、梁と梁など、隣接する構造材どうしを連結して耐震・耐風圧性能を向上するための耐震補強部材および当該部材を使用した耐震補強工法に関する。なお、建築物を構成する建具、あるいは大型家具等、部材によって構成された物への応用も可能である。
【背景技術】
【0002】
従来、木造建築物の耐震工法としては、柱等垂直材と梁等横架材で囲まれた構面に、筋交い、あるいは合板、パネル等を設置した耐力壁を設けて強度を高める工法が公知である。また、鉄骨造においては、同様にブレースを設置して強度を高める工法が公知である。
【0003】
また、耐震性能を高めるために前記構面の構造材が直交差する部分、すなわちコーナー部を補強する種々の部材が提案されている。
例えば、ばね材の変形によって地震力を吸収する耐震補強金具(特許文献1・2・3参照)。例えば、粘弾性材によって地震力を吸収する仕口ダンパー(特許文献4参照)等がある。上記特許文献に記載の補強構造は、いずれも地震や強風等の水平力がかかった場合に、仕口が変形することによりエネルギーを吸収して建物崩壊を防ぐものである。
【特許文献1】特開2003−96911号公報
【特許文献2】特開2005−220585号公報
【特許文献3】特開2005−68912号公報
【特許文献4】特開2005−220614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の補強部材(特許文献1−3)は、仕口変形のエネルギーを吸収し、地震時に仕口がばらばらになってしまうのを防ぐことは可能であるが、大地震等、大きな力が加わった場合に、変形を抑制するための必要な強度を確保するには未だ不十分である。
【0005】
また、上記従来の補強部材(特許文献4)は必要とされる強度を確保することが可能と思われるが、ずれて変形した仕口金物が元に戻る復元力はなく、地震後建物が変形したままの状態となる恐れがある。
【0006】
公知の技術である筋交い、合板、パネル等を利用した耐力壁は、耐震工法として安価で最も効果的な方法であるが、建築物における重要な要素である開口部には設置できない。そのため自由なプランニングができない。また、基本的に靭性の小さい剛接合の考え方に基づく技術であるため、上記筋交い、合板等を留め付ける部材は、変形時の復元力を持たない釘、ねじ等で固着される。そのため、大地震等、大きな力が加わった場合には、釘、ねじ等の留め付け部材に力がかかり、変形あるいは破断する恐れもある。
【0007】
本発明は、上記従来技術の欠点を解消するためになされたものであり、変形を抑制するための強度を必要に応じて確保でき、大きな力が加わった時にも壊れにくい靭性を有し、且つ優れた復元力を有する耐震補強部材および耐震補強工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(1)建築物、工作物等、構造材によって構成される構造物において、直交差する構造材同士を接合する補強部材であって、
棒状体から成り、当該棒状体の所定の2個所を折り曲げて形成された3つの直線状部分である材軸応力伝達部1、斜め応力伝達部2、および材軸応力伝達部1の内、両端に位置する材軸応力伝達部1が、前記直交差する二つの構造材それぞれと略平行になるように構成した一体型コーナー部材100を備え、
当該一体型コーナー部材100を構成する材軸応力伝達部1、材軸応力伝達部1を、所定の位置で前記構造材と略平行に摺動自在になるように取り付け、且つ前記構造材それぞれに固定可能となるように形成したガイド部4を当該材軸応力伝達部1に一以上備えたことを特徴とする耐震補強部材。
【0009】
(2)建築物、工作物等、構造材によって構成される構造物において、直交差する構造材同士を接合する補強部材であって、
棒状体で形成され、前記直交差する二つの構造材それぞれと略平行になるように配置された材軸応力伝達部1と材軸応力伝達部1と、
当該材軸応力伝達部1と材軸応力伝達部1との間に位置し、所定の形態を有する連接部材12を所定の形態を有する斜め応力伝達部2の両端部に接合して形成された接合型斜め応力伝達部2aの連接部材12を、
当該材軸応力伝達部1および材軸応力伝達部1に接合することで、材軸応力伝達部1、斜め応力伝達部2、および、材軸応力伝達部1が一体となるように形成した接合型コーナー部材101を備え、
当該接合型コーナー部材101を構成する材軸応力伝達部1、材軸応力伝達部1を、所定の位置で前記構造材と略平行に摺動自在になるように取り付け、且つ前記構造材それぞれに固定可能となるように形成したガイド部4を当該材軸応力伝達部1に一以上備えたことを特徴とする耐震補強部材。
【0010】
(3)建築物、工作物等、構造材によって構成される構造物において、直交差する構造材同士を接合する補強部材であって、
棒状体で形成され、前記直交差する二つの構造材それぞれと略平行になるように配置された材軸応力伝達部1と材軸応力伝達部1と、
当該材軸応力伝達部1と材軸応力伝達部1との間に位置し、当該材軸応力伝達部1に摺動自在に装着できるガイドを有するスライド部材5を所定の形態を有する斜め応力伝達部2の両端部に接合して形成されたスライド型斜め応力伝達部2bのスライド部材5を、
当該材軸応力伝達部1に摺動自在に装着することで、材軸応力伝達部1、スライド型斜め応力伝達部2b、および、材軸応力伝達部1が一体となるように形成したスライド型コーナー部材102を備え、
当該スライド型コーナー部材102を構成する材軸応力伝達部1、材軸応力伝達部1を、所定の位置で前記構造材と略平行に摺動自在になるように取り付け、且つ前記構造材それぞれに固定可能となるように形成したガイド部4を当該材軸応力伝達部1に一以上備えたことを特徴とする耐震補強部材。
【0011】
(4)前記接合型コーナー部材101の接合型斜め応力伝達部2a、または、スライド型コーナー部材102のスライド型斜め応力伝達部2bを構成する接合部材12と斜め応力伝達部2との接合部、または、スライド部材5と斜め応力伝達部2との接合部の内、少なくとも一以上の接合部を回動自在なピン接合としたことを特徴とする上記(2)または(3)に記載の耐震補強部材。
【0012】
(5)前記接合型コーナー部材101の接合型斜め応力伝達部2aを構成する斜め応力伝達部2、または、前記スライド型コーナー部材102のスライド型斜め応力伝達部2bを構成する斜め応力伝達部2が棒状体で形成されたことを特徴とする上記(2)ないし(4)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0013】
(6)上記(1)ないし(5)の何れかに記載の一体型コーナー部材100、または、接合型コーナー部材101を備え、加えて当該一体型コーナー部材100、または、接合型コーナー部材101を構成する材軸応力伝達部1に、上記(3)ないし(5)の何れかに記載のスライド型斜め応力伝達部2bを少なくとも一以上摺動自在に装着したことを特徴とする耐震補強部材。
【0014】
(7)上記(3)ないし(5)の何れかに記載のスライド型コーナー部材102を備え、加えて当該スライド型コーナー部材102を構成する材軸応力伝達部1に、上記(3)ないし(5)の何れかに記載のスライド型斜め応力伝達部2bを少なくとも一以上摺動自在に装着したことを特徴とする耐震補強部材。
【0015】
(8)前記材軸応力伝達部1の一部を所定の形状に成形、あるいは略円形に捲回することで、材軸応力伝達部1自体が伸縮可能となる緩衝湾曲部10を設けたことを特徴とする上記(1)ないし(7)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0016】
(9)前記一体型コーナー部材100、または、接合型コーナー部材101、または、スライド型コーナー部材102を構成する材軸応力伝達部1の内、少なくとも一方の材軸応力伝達部1の構造材直交差側の端部を、対置する構造材または基礎に固定された所定の固着部材に接合可能なように構成されたことを特徴とする上記(1)ないし(8)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0017】
(10)前記材軸応力伝達部1の一部を、当該材軸応力伝達部1が設置された前記構造材に固着可能となるように構成されたことを特徴とする上記(1)ないし(9)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0018】
(11)前記材軸応力伝達部1が当該材軸応力伝達部1が取り付けられている構造材に対して所定の角度を有するように構成されたことを特徴とする上記(1)ないし(10)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0019】
(12)前記材軸応力伝達部1および斜め応力伝達部2から成る一体型コーナー部材100、または、接合型コーナー部材101、または、スライド型コーナー部材102の材軸応力伝達部1を片側1個のみ備え、且つ、当該コーナー部材を構成する斜め応力伝達部2の端部を前記構造材に固着可能、または回動自在なピン接合で固定可能としたことを特徴とする上記(1)ないし(11)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0020】
(13)前記スライド型斜め応力伝達部2bを構成するスライド部材5に、前記材軸応力伝達部1が挿通可能な通孔を備え、且つ、当該材軸応力伝達部1に当該スライド部材5を嵌着することで、スライド型斜め応力伝達部2bが材軸応力伝達部1に摺動自在に装着されたことを特徴とする上記(3)ないし(12)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0021】
(14)前記ガイド部4に、前記材軸応力伝達部1が挿通可能な通孔を備え、当該ガイド部4に当該材軸応力伝達部1を挿着することで、材軸応力伝達部1が摺動自在となるようにガイド部4が形成されたことを特徴とする上記(1)ないし(13)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0022】
(15)前記一体型コーナー部材100、または、接合型コーナー部材101、または、スライド型コーナー部材102を構成する材軸応力伝達部1の所定の位置に取り付けられ、材軸応力伝達部1が摺動した時、前記ガイド部4、または、スライド部材5と接触することで材軸応力伝達部1の摺動が阻害されるように形成されたストッパ部材3を少なくとも一以上備えたことを特徴とする上記(1)ないし(14)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0023】
(16)前記ストッパ部材3の外端が、前記ガイド部4、または、スライド部材5の通孔の縁よりも外方に位置するように形成することで、ガイド部4、または、スライド部材5と接触可能となり、材軸応力伝達部1の摺動が阻害されるように形成されたことを特徴とする上記(15)に記載の耐震補強部材。
【0024】
(17)前記材軸応力伝達部1の一部または全てが雄ねじ部材で形成されたことを特徴とする上記(1)ないし(16)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0025】
(18)前記ストッパ部材3の少なくとも一以上が雌ねじ部材で形成されたことを特徴とする上記(15)ないし(17)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0026】
(19)前記スライド型コーナー部材102を構成するスライド部材5の両端に雌ねじ部材を設置し、スライド部材5を材軸応力伝達部1に固着することでスライド部材5、および、雌ねじ部材に前記接合型コーナー部材101を構成する接合部材12としての機能を持たせたことを特徴とする上記(2)ないし(18)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0027】
(20)前記一体型コーナー部材100、または、接合型コーナー部材101、または、スライド型コーナー部材102を構成する材軸応力伝達部1の所定の位置に装着し、前記ガイド部4、または、ストッパ部材3、または、スライド部材5、または、接合部材12の端部と接触可能となるように形成された弾性部材6を一以上備えたことを特徴とする上記(1)ないし(19)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0028】
(21)前記一体型コーナー部材100、または、接合型コーナー部材101、または、スライド型コーナー部材102を構成する材軸応力伝達部1の所定の位置に装着し、前記ガイド部4、または、ストッパ部材3、または、スライド部材5、または、接合部材12の端部に一端を固着した弾性部材6を一以上備えたことを特徴とする上記(1)ないし(20)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0029】
(22)前記ストッパ部材3とガイド部4との間に、上記(20)に記載の弾性部材6を一以上備えることで、材軸応力伝達部1がスライド移動した時に、当該弾性部材6が当該ストッパ部材3、および、ガイド部4と接触し、縮退することで圧縮ばねとして機能するように構成したことを特徴とする上記(15)ないし(21)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0030】
(23)前記接合部材12とガイド部4との間に、上記(20)に記載の弾性部材6を一以上備えることで、材軸応力伝達部1がスライド移動した時に、当該弾性部材6が接合部材12、および、ガイド部4と接触し、縮退することで圧縮ばねとして機能するように構成したことを特徴とする上記(2)または、上記(4)ないし(22)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0031】
(24)前記スライド部材5とガイド部4との間に、上記(20)に記載の弾性部材6を一以上備えることで、材軸応力伝達部1がスライド移動した時に、当該弾性部材6がスライド部材5、および、ガイド部4と接触し、縮退することで圧縮ばねとして機能するように構成したことを特徴とする上記(3)ないし(23)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0032】
(25)前記ストッパ部材3とガイド部4との間に、上記(21)に記載の弾性部材6を備え、当該弾性部材6の両端部をストッパ部材3の端部、および、ガイド部4の端部にそれぞれ固着することで、材軸応力伝達部1がスライド移動した時に、当該弾性部材6が縮退、あるいは伸張し、圧縮ばね、あるいは引きばねとして機能するように構成したことを特徴とする上記(15)ないし(24)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0033】
(26)前記接合部材12とガイド部4との間に、上記(21)に記載の弾性部材6を備え、当該弾性部材6の両端部を接合部材12の端部、および、ガイド部4の端部にそれぞれ固着することで、材軸応力伝達部1がスライド移動した時に、当該弾性部材6が縮退、あるいは伸張し、圧縮ばね、あるいは引きばねとして機能するように構成したことを特徴とする上記(2)または、上記(4)ないし(25)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0034】
(27)前記スライド部材5とガイド部4との間に、上記(21)に記載の弾性部材6を備え、当該弾性部材6の両端部をスライド部材5の端部、および、ガイド部4の端部にそれぞれ固着することで、スライド部材5がスライド移動した時に、当該弾性部材6が縮退、あるいは伸張し、圧縮ばね、あるいは引きばねとして機能するように構成したことを特徴とする上記(3)ないし(26)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0035】
(28)前記ガイド部4とガイド部4との間に、上記(20)または(21)に記載の弾性部材6を二以上設け、当該弾性部材6と弾性部材6との間に前記ストッパ部材3を二以上設けたことを特徴とする上記(15)ないし(27)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0036】
(29)前記ガイド部4と前記接合部材12との間に、上記(20)または(21)に記載の弾性部材6を二以上設け、当該弾性部材6と弾性部材6との間に前記ストッパ部材3を二以上設けたことを特徴とする上記(15)ないし(28)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0037】
(30)前記ガイド部4と前記スライド部材5との間に、上記(20)または(21)に記載の弾性部材6を二以上設け、当該弾性部材6と弾性部材6との間に前記ストッパ部材3を二以上設けたことを特徴とする上記(15)ないし(29)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0038】
(31)前記弾性部材6がコイルばねであることを特徴とする上記(20)ないし(30)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0039】
(32)前記ガイド部4を少なくとも一以上固着することで、ガイド部4と一体となるように形成された台座部7を備えたことを特徴とする上記(1)ないし(31)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0040】
(33)前記台座部7の一部、または全体を板状の部材で形成したことを特徴とする上記(32)に記載の耐震補強部材。
【0041】
(34)前記台座部7が、前記材軸応力伝達部1と略平行な辺に沿って、当該台座部7と略直角に延伸した脇台座部9を台座部7の片辺、または、両辺に備えたことを特徴とする上記(32)または(33)に記載の耐震補強部材。
【0042】
(35)前記台座部7、または、脇台座部9、または、台座部7と脇台座部9の所定の位置に締結具を挿通するための一以上の締結孔が設けられたことを特徴とする上記(32)ないし(34)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0043】
(36)前記接合型コーナー部材101、または、一体型コーナー部材100、または、スライド型コーナー部材102を構成する材軸応力伝達部1の内、少なくとも一方の材軸応力伝達部1の構造材直交差側端部を、対置する構造材に固着可能な台座部7、または、脇台座部9に接合されたことを特徴とする上記(32)ないし(35)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0044】
(37)前記直交差する構造材の各々に取付け可能となるように構成された前記台座部7の構造材直交差側の端部に、棒状部材が挿通可能となる通孔を有する引寄せ部材8を備えたことを特徴とする上記(32)ないし(36)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0045】
(38)前記直交差する構造材の各々に取付け可能となるように構成された一対の前記台座部7を、構造材の直交差する部分近傍まで各々延伸し、構造材の直交差部分近傍にて両台座部同士を接合、または、両台座部を一の部材を折り曲げて略L型の一体の部材となるように形成されたことを特徴とする上記(32)ないし(37)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0046】
(39)前記一対の台座部7の接合部を回動自在なピン接合としたことを特徴とする上記(38)に記載の耐震補強部材。
【0047】
(40)前記ガイド部4を形成する通孔の一端もしくは両端に、外方に向かう末広がり部を設けたことを特徴とする上記(14)ないし(39)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0048】
(41)前記スライド部材5を形成する通孔の一端もしくは両端に、外方に向かう末広がり部を設けたことを特徴とする上記(13)ないし(40)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0049】
(42)前記ガイド部4を形成する通孔において、当該ガイド部4が取り付けられている構造材の材面に対して垂直な方向の内径が、構造材の材面に対して平行な方向の内径よりも大きくなるようにガイド部4の通孔が形成されたことを特徴とする上記(14)ないし(41)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0050】
(43)前記ガイド部4の、一端もしくは両端が凹形状に形成されたことを特徴とする上記(42)に記載の耐震補強部材。
【0051】
(44)前記ガイド部4が、当該ガイド部4に挿着された材軸応力伝達部1に対して、所定の角度を有するように傾斜して形成されていることを特徴とする上記(42)または(43)に記載の耐震補強部材。
【0052】
(45)前記材軸応力伝達部1、または、斜め応力伝達部2、または、材軸応力伝達部1と斜め応力伝達部2の両方がばね鋼材で形成されたことを特徴とする上記(1)ないし(44)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0053】
(46)前記構造材によって構成される構造物の部分において、4本の構造材で形成された略四角形の構面の隣り合うコーナー部に、前記上記(1)ないし(45)の何れかに記載の耐震補強部材を固着し、当該耐震補強部材を形成する前記材軸応力伝達部1の外端同士を外端接合部材11を介して接合したことを特徴とする耐震補強工法。
【0054】
(47)4本の構造材で形成された略四角形の構面に設置される筋かい、ブレース等、斜材の端部を接合可能とする斜材接合部材13を、前記斜め応力伝達部に備えたことを特徴とする上記(1)ないし(45)の何れかに記載の耐震補強部材。
【0055】
(48)前記斜材接合部材13が板状部材で形成され、当該板状部材の所定の位置に締結具を挿通するための一以上の締結孔が設けられたことを特徴とする上記(47)に記載の耐震補強部材。
【発明の効果】
【0056】
本発明は、建築物あるいは工作物において、直交差する構造材それぞれに略平行に配置された二つの棒状部材(材軸応力伝達部)もしくは構造材と、当該棒状部材(材軸応力伝達部)を連接する部材(斜め応力伝達部)とによって略トラス形状を形成することを可能にした耐震補強部材であり、当該トラスを変形可能な構成とすることで、地震等のエネルギーを吸収することが可能な制震構造が得られる。
【0057】
また、棒状部材の所定の2個所を折り曲げて形成された一体型コーナー部材で構成した耐震補強部材の場合は、当該一体の部材の変形により地震エネルギーを吸収できるとともに、当該部材の曲げ抵抗力によりトラスの変形を抑制し、且つ良好な復元力を得ることができる。
【0058】
さらには、構造材と略平行な棒状部材に配置した弾性部材が変形することでさらに大きなエネルギーを吸収できるとともに、当該弾性部材の弾発力によりトラスの変形を抑制し、且つ良好な復元力を得ることができる。
【0059】
さらには、構造材と略平行な棒状部材(材軸応力伝達部)に配置した弾性部材の数は、必要に応じて増減できるので、強度の大きな耐震補強部材、あるいは強度の小さな耐震補強部材等、強度を変えた耐震補強部材が製造上の大きな変更をすることなく簡単に製造できる。
【0060】
さらには、本耐震補強部材の変形時には、棒状部材(材軸応力伝達部)が構造材と略平行にスライドして変形するため、本耐震補強部材を構造材に締結しているねじ等の締結具に生じる力は引抜き力のみではなく、構造材と平行な力、すなわちせん断力にも分散される。そのため、締結具は引抜き抵抗力とせん断抵抗力との両方で抵抗し、より破壊し難い耐震補強部材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
本発明は前記「課題を解決するための手段」に記したとおり、数種の部材の組合せにより成立するものである。例えば接合方法、接合部材、接合形態など、略同一機能を有するものであっても多くの異なる形態があり、異なる部材、形態、組合せを採用したとしても、その効果の大小に差はあるものの、課題を解決する手段としては有効である。以下、添付図面を参照しながら本発明を実施例に基づいて説明するが、本実施例は本発明の実施形態の代表的実施例であり、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
(実施例1)図1(a)は本発明の実施例1にかかる耐震補強部材の斜視図、図1(b)、(c)は構造原理を説明するための図であり、地震力等、水平力が加わった場合の本耐震補強部材の変形状態を示した側面図である。(本説明図においては、原理を示すため、図を簡略化している。以下他の実施例の説明図も同様とする)なお、矢印は本耐震補強部材の各部材に生じる力の方向を示している。(以下他の実施例の説明図も同様とする)
【0063】
実施例1は、棒状体の2箇所を折り曲げ、二つの材軸応力伝達部1と一つの斜め応力伝達部2を形成した一体型コーナー部材100で構成されている。なお、棒状部材はばね鋼材を素材とするのがより好ましい。図1(a)に示すように二つの材軸応力伝達部1は略90度の角度をなし、斜め応力伝達部2がその間に略45度の角度を成して構成されている。材軸応力伝達部1はそれぞれ二つのガイド部4にスライド可能に挿着されている。また、ガイド部4とガイド部4との間、及び外側にはガイド部4と接触可能となるように突出したストッパ3が材軸応力伝達部1に取り付けられている。
【0064】
本実施例1にかかる耐震補強部材は、図1(b)に示すように、直交差する構造材に取り付ける。地震力等、水平力(この場合は構造材が開く方向)が加わった場合には、図1(c)のごとく垂直の構造材が傾く。このとき材軸応力伝達部1は図面下方及び左方にスライドするとともに斜め応力伝達部2はコーナー側に移動し、耐震補強部材は図示のように全体として変形する。(破線は材軸応力伝達部1と斜め応力伝達部2の元の形状を示している。以下他の実施例においても同様とする)なお、この変形はストッパ3がガイド部4と接触することで止まる。このように、地震力が加わった場合には、本耐震補強部材が変形することで一定の地震力を吸収(構造体に作用する地震力を減ずる)するのである。
【0065】
また、本実施例の場合は、材軸応力伝達部1と斜め応力伝達部2とが同一部材で一体に形成されているので、材軸応力伝達部1と斜め応力伝達部2とで形成されたコーナー部には元に戻ろうとする曲げ応力が生じる。同時にストッパ3がガイド部4と接触することでガイド部4には、構造材と略平行、すなわち、材軸方向の力が生じる。
【0066】
本実施例ではガイド部4に固着された台座部7が、木ねじ等締結具によって構造材に固定されるように構成されているが、この締結具にかかる力は先の曲げモーメントによって生じる引抜き力と、材軸応力伝達部1がスライドすることによって構造材の材軸方向に生じるせん断力である。すなわち従来の多くの耐震補強部材の締結具が主として引抜き力で抵抗するのに対し、本発明にかかる耐震補強部材の場合は引抜き力とせん断力の両方で抵抗する。従って、より大きな地震力にも、締結具が破断することなく耐えることができる。なお、本実施例では締結孔を設けた台部座7によって構造材に固定されているが、このような形態に限定されるものではない。例えば鉄骨造の構造材にガイド部4を直接溶接しても良い。また、その形状も実施例に限定されることは無い。
【0067】
(実施例2)図2(a)は本発明の実施例2にかかる耐震補強部材の斜視図、図2(b)、(c)は構造原理を説明するための側面図である。
【0068】
実施例2は、図2(a)に示すように二つの材軸応力伝達部1と一つの接合型斜め応力伝達部2aとから成る接合型コーナー部材101で構成されている。接合型斜め応力伝達部2aは斜め応力伝達部2の両端に回動自在にピン接合した接合部材12を有し、当該接合部材12が材軸応力伝達部1に溶接により接合されている。材軸応力伝達部1は実施例1と同様、ガイド部4にスライド可能に挿着されている。
また、材軸応力伝達部1は一部に雄ねじが切られ、ストッパ部材3(雌ねじ部材)が設けられている。なお、ガイド部4とガイド部4との間は、接合部材12がストッパ部材としての機能を有している。
【0069】
図2(b)に示すように、本実施例2にかかる耐震補強部材は、実施例1と同様、直交差する構造材に取り付ける。図2(c)に示すように、地震力が加わった場合には、実施例1と略同様に変形する。実施例1と同様、本実施例2の場合も本耐震補強部材が変形することで地震力を吸収するのである。ただし、ピン接合のため、変形時において曲げモーメントは生じず、そのため締結具にかかる引抜き力は小さい。
【0070】
(実施例3)図3(a)は本発明の実施例3にかかる耐震補強部材の斜視図、図3(b)、(c)は構造原理を説明するための側面図である。
【0071】
実施例3は、図3(a)に示すように二つの材軸応力伝達部1と一つのスライド型斜め応力伝達部2bとから成るスライド型コーナー部材102で構成されている。前記スライド型斜め応力伝達部2bは斜め応力伝達部2の両端に、材軸応力伝達部1が挿通可能な部材(筒体)で形成されたスライド部材5を接合(ピン接合)し、当該スライド部材5を材軸応力伝達部1に摺動自在となるように嵌着させている。
なお、材軸応力伝達部1が実施例2と同様にガイド部4にスライド可能に取り付けられているが、本実施例の場合、スライド部材5がスライドするので材軸応力伝達部1をガイド部4に固定することで材軸応力伝達部1を構造材に固着するようにしても良い。
【0072】
図3(b)(c)に示すように、本実施例3にかかる耐震補強部材の構造材への取り付け方、地震力が加わった場合の変形形態は、実施例2と略同様である。ただし、本実施例の場合は図面右方、すなわち圧縮側に水平力が加わった場合の変形状態を示してある。この場合もガイド部4にかかる力、すなわち締結具にかかる力は主に構造材の材軸方向に生じるせん断力である。
【0073】
(実施例4)図4(a)は本発明の実施例4にかかる耐震補強部材の斜視図、図4(b)は構造原理を説明するための側面図である。
【0074】
実施例4は、実施例1と同様、材軸応力伝達部1と斜め応力伝達部2とが一体の部材で形成された一体型コーナー部材100で構成され、当該材軸応力伝達部1に取り付けられたストッパ部材3とガイド部4との間に、コイルばねで形成された弾性部材6が設けられている。材軸応力伝達部1と斜め応力伝達部2は、ばね鋼材で形成するほうがより好ましい。なお、ガイド部4は2つとも1枚の板状部材からなる台座部7に固着され、当該台座部7に設けた締結孔を通してねじ等の締結具により構造材に固定されている。
【0075】
図4(b)に示すように、本実施例4にかかる耐震補強部材へ地震力が加わった場合の変形形態は、実施例1と略同様である。また部材に生じる応力の方向も実施例1と略同様であり、本体(材軸応力伝達部1と斜め応力伝達部2)コーナー部に生じる曲げ応力も実施例1と略同様である。また、本実施例4においても材軸応力伝達部1が構造材の材軸と略平行にスライドする。このとき、ストッパ部材3とガイド部4との間に設けられた弾性部材6(この場合はコイルばね)は当該ストッパ部材3、および、ガイド部4と接触することで、縮退する。
【0076】
本実施例4にかかる耐震補強部材は、このように耐震補強部材全体の変形と耐震補強部材内部に設けられた弾性部材6の変形とで地震力を吸収するのである。同時に、縮退した弾性部材6が復元しようとする弾発力と一体型コーナー部材100本体の曲げ応力の両方で耐震補強部材の変形に抵抗するのである。
すなわち、変形に抵抗する力、すなわち、弾性部材6の弾発力と曲げ応力の両方が合わさった抵抗力が本耐震補強部材における変形時(変形限度内)での強度となる。
【0077】
なお、弾性部材6をその両端に位置するストッパ部材3とガイド部4とにそれぞれ固着(例えば溶接あるいは止着する等)しても良い。そのようにすれば一の弾性部材6は圧縮ばね、隣に位置する弾性部材6は引きばねとして働く。すなわち同一の弾性部材が圧縮/引きばねの両機能を有することとなり、略半分の数で略同一の強度を確保することが可能である。また、地震が収まり外力が零(ゼロ)となった場合には、弾性部材6の復元力および、本体の復元力により本耐震補強部材ならびに構造体が元の形状に復元することは言うまでもない。
【0078】
本実施例においては、二つのガイド部4が1枚の板状部材からなる台座部7に固着され、ねじ等、締結具で構造体に固定されている。このようにすることで、力は一部に集中することなく台座部7に分散される。また、締結具をより多く設置できるという利点があることは言うまでもない。締結具にかかる力は実施例1と同様引抜き力とせん断力である。
【0079】
(実施例5)図5(a)は本発明の実施例5にかかる耐震補強部材の斜視図、図5(b)は構造原理を説明するための側面図である。
【0080】
実施例5は、前記実施例3と同様、斜め応力伝達部2の両端にスライド部材5をピン接合したスライド型斜め応力伝達部2bのスライド部材5を材軸応力伝達部1に摺動自在に嵌着させたスライド型コーナー部材102で構成され、当該スライド部材5とガイド部4との間に、コイルばねで形成された弾性部材6が設けられている。
【0081】
図5(b)に示すように、本実施例5にかかる耐震補強部材へ地震力が加わった場合の変形形態は、実施例3と略同様で、本実施例5においても、スライド部材5が材軸応力伝達部1に沿ってスライドすることで全体が変形する。このとき、スライド部材5とガイド部4との間に設けられた弾性部材6(コイルばね)が当該スライド部材5および、ガイド部4と接触することで、縮退する。
【0082】
本実施例5にかかる耐震補強部材は、実施例4と略同様に、耐震補強部材全体の変形と耐震補強部材内部に設けた弾性部材6の変形とで地震力を吸収する。また、圧縮された弾性部材6の弾発力で耐震補強部材の変形に抵抗する。そしてこの場合は、弾性部材6の弾発力が本耐震補強部材における変形時(変形限度内)での強度となる。
【0083】
なお、弾性部材が圧縮されて最大限に縮小した場合は、スライド型斜め応力伝達部2b自身の強度、および、締結具の強度で変形、あるいは崩壊に抵抗することは言うまでもない。また、本実施例においては、材軸応力伝達部1の両端に位置するガイド部4の外側に固着部材(ナット)が設けられて材軸応力伝達部1を構造材に固着可能となるように構成されている。スライド型コーナー部材102で構成された本実施例の場合は、このように材軸応力伝達部1を構造材に固着してもよい。
【0084】
(実施例6)図6(a)は本発明の実施例6にかかる耐震補強部材の斜視図、図6(b)は構造原理を説明するための側面図である。
【0085】
実施例6は、実施例2と同様に、斜め応力伝達部2の両端に連接部材12をピン接合した接合型斜め応力伝達部2aの連接部材12を材軸応力伝達部1に接合した接合型コーナー部材101で構成されている。ただし本実施例の場合は、実施例2と異なり、スライド部材5の両端に固着用部材(雌ねじ)を配することで斜め応力伝達部2を材軸応力伝達部1に固着し、スライド部材5と両端の雌ねじとが連接部材12としての機能を備えている。このように斜め応力伝達部2を材軸応力伝達部1に固着しても良い。あるいは、スライド部材5そのものに雌ねじを形成することで、雄ねじを形成した材軸応力伝達部1に固着しても良い。(図示せず)
【0086】
また、連接部材12とガイド部4、ならびにガイド部4とストッパ部材3との間には弾性部材6が設けられている。
また、垂直な構造材に取り付けられた台座部7の端部に、土台、基礎に固定された棒状部材(アンカーボルト)が挿通可能となる通孔を有する引寄せ部材8を備えている。
【0087】
本実施例6にかかる耐震補強部材は、実施例4と略同様に、耐震補強部材全体の変形と内部に設けられた弾性部材6の変形とで地震力を吸収する。しかしながら、図bのように、図面上、左方から力がかかった場合、すなわち本耐震補強部材が圧縮されるように力がかかった場合には、垂直な構造材に上方に向かう大きな引抜き力が生じる。
【0088】
本実施例6にかかる耐震補強部材においては、図示のごとく引寄せ部材8を設け、アンカーボルトで土台、基礎等に繋ぐことで、垂直な構造材の引き抜きを防止できる。さらには、本実施例のように引寄せ部材8と台座部7とを一体的に形成すれば、上方に向かう力とアンカーボルトの引抜き抵抗力(下方に向かう力)とが釣り合う。そのため、台座部7を固定している締結具にかかる力の内、本耐震補強部材に起因するせん断力は略零(ゼロ)となり、よって締結具をより簡易なものとすることが可能になる。
【0089】
なお、引寄せ部材は本実施例の形態に限定されるものではない。アンカーボルト等、土台、基礎等に定着可能な部材を留め着け可能で、且つ、所定の強度を有するように形成されていればどのような形態でも良い。
【0090】
(実施例7)図7(a)は本発明の実施例7にかかる耐震補強部材の斜視図、図7(b)は構造原理を説明するための側面図である。
【0091】
実施例7は、前記実施例4と略同様、一体型コーナー部材100で構成され、ばね鋼材で形成された材軸応力伝達部1の一部を折り曲げることで、材軸応力伝達部1自体が伸縮可能となる緩衝湾曲部10を設けたものである。また、実施例6と同様、引寄せ部材8を備えている。
【0092】
本発明にかかる耐震補強部材は、耐震補強部材全体が変形するとともに、変形時、地震によって生じる力が構造材の材軸と略平行に配置した材軸応力伝達部1に流れ、スライド可能な材軸応力伝達部1に配置した弾性部材6が変形することで地震力を吸収するものであるが、本実施例7は、さらに材軸応力伝達部1に緩衝湾曲部10を設けることで、材軸応力伝達部1自体が伸縮可能となるようにしたものである。本実施例7においては、図7(b)に示したように、地震等による水平力(この場合は圧縮側)が加わった場合、耐震補強部材が変形し、材軸応力伝達部1が上方(右方)にスライドすることで、ガイド部4の下側(左側)の弾性部材6が縮退する。そしてさらに力が加わり、弾性部材6が弾性限度一杯まで縮退した場合には、緩衝湾曲部10が変形することで、地震力をさらに吸収することが可能となる。
【0093】
なお、弾性部材6を設けることなく材軸応力伝達部1に緩衝湾曲部10のみを備えていても良い。その場合は材軸応力伝達部1の一部をガイド部4に固定(すなわち構造材に固定)するのが望ましい。
【0094】
なお、緩衝湾曲部10の形態は図示の形状に限定されることはなく、たとえば、略円形に捲回することでコイルばね形状としてもよい。(図示せず)すなわち、材軸応力伝達部1自身が伸縮可能な機能を有していれば、どのような形態であっても良いのである。
【0095】
(実施例8)図8(a)は本発明の実施例8にかかる耐震補強部材の斜視図、図8(b)は本実施例8にかかる耐震補強部材の部品の構成を示した斜視図である。
【0096】
実施例8は、前記実施例4と略同様の構成に引寄せ部材8を備えたものであるが、ガイド部4とガイド部4との間に位置する一の弾性部材6と他の弾性部材6との間にストッパ部材3(雌ねじ部材)を二つ備えていることを特徴とする。
【0097】
このような構成とすれば、図8(a)に示すように、本耐震補強部材を構造材に設置したあと、ストッパ部材3をスパナ等で回転して上下させることで、コイルばねから成る弾性部材6を縮退させ、ばね力を強くするなど微調整が可能となる。さらには、ストッパ部材3を上下させることで、材軸応力伝達部1本体が構造材の材軸に沿って上下することとなり、本耐震補強部材全体の形状が変形する。そのため構造材(この場合は垂直材)が他の構造材(横架材)と成す角度(略90度)が変わる。すなわち、建築物等の建て入れに際して、ストッパ部材3を回転させるだけで、建て入れ精度の微調整が可能になる。
【0098】
(実施例9)図9(a)は本発明の実施例9にかかる耐震補強部材の斜視図、図9(b)は実施例9にかかる耐震補強部材の正面図、図9(c)は実施例9にかかる耐震補強部材の側面図、図9(d)〜(l)は実施例9にかかる耐震補強部材の部分詳細図である。
【0099】
実施例9は、斜め応力伝達部2の両端に連接部材12をピン接合した接合型斜め応力伝達部2aを材軸応力伝達部1に接合した接合型コーナー部材101を備え、加えて当該材軸応力伝達部1に摺動自在に嵌着し、ピン接合したスライド型斜め応力伝達部2bを備えたものである。
【0100】
このような構成とすれば、実施例6と略同様に、耐震補強部材全体が変形するとともに、材軸応力伝達部1にピン接合した接合型斜め応力伝達部2aの変形(移動)により材軸応力伝達部1がスライドし、弾性部材6が縮退して地震力を吸収する。さらに本実施例においては、耐震補強部材全体の変形時にスライド型斜め応力伝達部2bも変形(移動)する。そのため、スライド部材両端に設置した弾性部材6の一方を縮退させ、さらに地震力を吸収する。すなわち、より多くの地震力を吸収できると同時に、当該弾性部材6の抵抗力が加わることで、本耐震補強部材の変形時(変形限度内)での強度をより大きくできる。
また両構造材を連結する点が、接合型斜め応力伝達部2aの端部とスライド型斜め応力伝達部2bの端部との2点となるので、応力も分散され、構造的にも有利となる。
なお、本実施例ではスライド型斜め応力伝達部2bは1個のみ設けているが複数設置しても良い。この場合、より強度が大きくなるのは言うまでもない。
【0101】
図9(d)〜(f)はガイド部4の側面詳細図、平断面詳細図、縦断面詳細図である。本実施例においては材軸応力伝達部1が摺動自在となるようにガイド部4に通孔を設けているが、当該通孔の両端が内部よりも広く、すなわち、末広がりとなるように形成されている。このようにすることで、材軸応力伝達部1がガイド部4の通孔端部で引っ掛かることなくスムースにスライドすることが可能となる。無論、本実施例に限定されることなく、他の実施例においてもこのような形態とするのが好ましいことは言うまでもない。
【0102】
図9(g)〜(i)は接合型斜め応力伝達部2aの接合部の側面詳細図、平断面詳細図、縦断面詳細図である。本実施形態は既に実施例6においても例示されているが、このように、スライド部材5の両端に固着用部材(この場合はナット)を配して材軸応力伝達部1に接合して接合型コーナー部材101を形成しても良い。この場合は、スライド部材と固着用部材(ナット)の両方が連接部材12の機能を有することになる。
【0103】
図9(j)〜(l)はスライド部材5の側面詳細図、平断面詳細図、縦断面詳細図である。本実施例においては材軸応力伝達部1が摺動自在となるようにスライド部材5に通孔を設けているが、当該通孔の両端が内部よりも広く、すなわち、末広がりとなるように形成されている。このようにすることで、材軸応力伝達部1がガイド部4の通孔端部で引っ掛かることなくスムースにスライドすることが可能となる。無論、本実施例に限定されることなく、他の実施例においてもこのような形態とするのが好ましいことは言うまでもない。
【0104】
(実施例10)図10(a)は本発明の実施例10にかかる耐震補強部材の斜視図、図10(b)〜(f)は実施例10にかかる耐震補強部材の部分詳細図である。
【0105】
実施例10は、斜め応力伝達部2と材軸応力伝達部1とを同一の棒状部材で一体のものとして形成した一体型コーナー部材100を備え、加えて当該材軸応力伝達部1に摺動自在に嵌着し、ピン接合したスライド型斜め応力伝達部2bを備えたものである。
【0106】
本実施例10は、実施例9と略同様に斜め応力伝達部2とスライド型斜め応力伝達部2bとの二つを備えることで、変形時(変形限度内)での強度をより大きくできる。また両構造材を連結する点が斜め応力伝達部2とスライド型斜め応力伝達部2bとの2点となるので、応力も分散され、構造的にも有利となる。なお、本実施例においては、一体の棒状部材で形成された一体型コーナー部材100を備えているため、変形時における一体型コーナー部材100の曲折部の復元力(曲げ応力)が期待できる。そのためさらに大きな強度、および、復元力を得ることができる。
なお、本実施例ではスライド型斜め応力伝達部2bは1個のみ設けているが複数設置しても良い。この場合、より強度が大きくなるのは言うまでもない。
【0107】
図10(b)〜(d)はガイド部4の側面詳細図、平断面詳細図、縦断面詳細図であり、図10(e)は材軸応力伝達部1が構造体に取り付けられた状態の縦断面詳細図、図10(f)は外力(地震力)が加わった時の変形形態を示す縦断面詳細図である。
本実施例においては材軸応力伝達部1が摺動自在となるようにガイド部4に通孔を設けているが、図(c)に示したように、当該ガイド部4が取り付けられている台座部7、すなわち構造材の材面に対して垂直な方向の内径が、台座部7、すなわち構造材の材面に対して平行な方向の内径よりも大きくなるようにガイド部4の通孔が形成されている。ガイド部4はこのような形状であっても良い。
【0108】
このような形状とすれば、変形初期の段階では材軸応力伝達部1はガイド部4の通孔内でスライドするので、図10(f)に示すように材軸応力伝達部1の変形(傾斜)は生じず、弾性体の変形のみ生じる。すなわち、コーナー部材として一体型コーナー部材100を使用した場合でも、この段階では一体型コーナー部材100に曲げ応力が生じないため、締結具に引抜き力があまり生じない。さらに外力が大きくなって構造材が変形(さらに傾斜)した場合には、ガイド部4の通孔内端と接触することで材軸応力伝達部1が変形(傾斜)し、一体型コーナー部材100に曲げ応力が生じる。その場合には締結具の引抜き抵抗とせん断抵抗とで構造材との接合部分の崩壊を防ぐのである。
【0109】
図11(a)〜(c)は前記実施例10で示したガイド部4の変形例である。形状は前記実施例10のガイド部4と略同様であるが、当該ガイド部4の端部が凹形状に形成されている。このようにすれば、外力が加わらない場合には、上下の弾性体の弾発力によって凹形状の最底部に材軸応力伝達部1が位置するようになる。すなわち、平常時は常に材軸応力伝達部1がガイド部4の略中央に保持されることになる。
【0110】
図12(a)〜(c)も前記実施例10で示したガイド部4の変形例である。形状は前記実施例10のガイド部4と略同様であるが、当該ガイド部4が当該ガイド部4に挿着された材軸応力伝達部1に対して、所定の角度を有するように傾斜して形成されている。このようにすれば、外力が加わらない場合には、上下の弾性体の弾発力によって材軸応力伝達部1がガイド部4の略中央に位置するようになる。すなわち、平常時は常に材軸応力伝達部1がガイド部4の略中央に保持されることになる。
【0111】
なお、前記ガイド部4は一体型コーナー部材100を保持する部材として例示されているが、接合型コーナー部材101、あるいは、スライド型コーナー部材102を保持する部材としても利用できる。
【0112】
(実施例11)図13は本発明の実施例11にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【0113】
実施例11は、直交差する二つの構造材それぞれに配置された材軸応力伝達部1と材軸応力伝達部1とをスライド型斜め応力伝達部2bで回動自在にピン接合したスライド型コーナー部材102を備え、加えてスライド型斜め応力伝達部2bを材軸応力伝達部1に摺動自在に装着し、且つ垂直構造材に配置された材軸応力伝達部1の端部(構造材直交差側の端部)を、対置する構造材(基礎)に固定された所定の固着部材(本実施例ではアンカーボルト)に接合したものである。
【0114】
本実施例11は、耐震補強部材としての機能を備えると同時に、材軸応力伝達部1を対置した構造材に固定された固着部材(この場合はアンカーボルト)に接合したものである。このような構成とすることで、地震力等による変形時の構造材(この場合は柱)の引抜きを防止できる。また、当該材軸応力伝達部1には弾性部材6が配置されているので、例えば地震等で垂直な方向に外力が加わった場合でも、当該弾性部材6の縮退により外力を吸収し、ねじ等、部材を緊結する締結具の先行破壊を防止できる。
【0115】
なお、本実施例では材軸応力伝達部1とアンカーボルトとの接合は金具を介して接合されているが、材軸応力伝達部1が確実に接合されれば接合部の形態はどのような形態であっても良い。また、接合方法もピン接合であっても良い。さらには、アンカーボルトと材軸応力伝達部1とが一体の部材で形成されても良い。また、本実施例では例としてアンカーボルトが例示されているが、梁,柱等を緊結するボルト等と接合しても良いことは言うまでもない。
【0116】
(実施例12)図14は本発明の実施例12にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【0117】
実施例12は、実施例11と略同様の形態を有し、且つ垂直構造材に配置された材軸応力伝達部1の端部(構造材直交差側の端部)を、対置した構造材に固定された台座部7に接合したものである。機能およびその効果は実施例11と略同様であるが、より簡易に構造材に設置することができるので、例えば改修時における耐震補強等に有効である。
なお、本実施例では台座部と一体になったプレートにピン接合されているが、剛接合であってもよく、またその形態は本実施例に限定されるものではなく、材軸応力伝達部1が確実に接合されれば接合部はどのような形態であっても良いことは言うまでも無い。
【0118】
(耐震工法の実施例)図15(a)は本発明にかかる耐震補強部材を使用した耐震補強工法の側面図、図15(b)はA部分の詳細図である。
【0119】
本耐震補強工法は、梁、柱、土台等、4本の構造材で構成された略四角形の構面の隣り合うコーナー部に、本発明にかかる耐震補強部材を少なくとも二つ設置し、当該耐震補強部材を形成する材軸応力伝達部1の外端同士を外端接合部材11にて繋いだものである。本実施例においては、両端に雄ねじを形成した棒鋼をターンバックルにて当該材軸応力伝達部1に接合している。
【0120】
図示のような構面に地震等の水平外力が加わった場合には、構面を形成するコーナーの位置によって生じる力が異なるが、図示の如く隣り合う材軸応力伝達部1を繋ぐことで、材軸応力伝達部1がスライドしたときに、材軸方向に生じる力を隣接する耐震補強部材の材軸応力伝達部1に伝達することが可能となる。すなわち力を分散することが可能になり、当該耐震補強部材がより有効に機能することになる。
【0121】
なお、本実施例では外端接合部材11として棒鋼を使用し、ターンバックルにて接合しているが、本実施例の形態に限定されることは無い。接合方法も隣り合う耐震補強部材を緊結して力が確実に伝達されれば、どのような形態であっても良い。
【0122】
(実施例13)図16は本発明の実施例13にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【0123】
実施例13は本耐震補強部材を、筋かい、ブレース等を留め付ける部材として利用したものである。図示の如く、斜め応力伝達部2に筋かい、ブレース等、斜材の端部を接合可能とする斜材接合部材13を備えた構成とすることで可能となる。本実施例では、斜材接合部材13をプレートで形成し、斜材を留め付けるための締結孔を設けている。
従来、筋かい、ブレース等は、プレート等を介して、釘等締結具によって留め付ける、あるいは溶接等によって留め付ける方法が一般的であるが、釘等締結具は弾性を持たないため、大きな力がかかった場合には、変形、あるいは破断してしまう可能性がある。
本発明にかかる耐震補強部材を使用すれば、材軸応力伝達部1がスライドし、弾性部材6が縮退することで地震力を吸収する。また、大きな力がかかった場合にも崩壊し難い靭性を有する耐震補強とすることができる。
【0124】
(実施例14)図17は本発明の実施例14にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【0125】
実施例14はスライド型コーナー部材102を構成する斜め応力伝達部2に斜材接合部材13を備えたものである。また、本実施例では締結孔を一つ設けてピン接合が可能な形態としている。斜材接合部材13はこのような形態であってもよく、またその形状は実施例13、14に限定されない。筋かい、ブレース等を接合できるものであれば、どのような形態であっても良い。
【0126】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、部材の組合せ、形状、その他種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0127】
たとえば、実施例1〜14において材軸応力伝達部が構造材と略平行になるように形成されているが、このような構成に限定されるものではない。
(実施例15)図18は本発明の実施例15にかかる耐震補強部材の斜視図である。
本実施例のように、材軸応力伝達部1が構造材に対して所定の角度を有するように構成されてもよい。特に本実施例の如く材軸応力伝達部1の内端(構造材直交差側)と斜め応力伝達部2との成す角度がより大きくなるように形成すれば、斜め応力伝達部2から材軸応力伝達部1への力の流れはよりスムースになる。
【0128】
たとえば、実施例1〜15において材軸応力伝達部が直交差する構造材それぞれに配置されているが、このような構成に限定されるものではない。
(実施例16)図19は本発明の実施例16にかかる耐震補強部材の斜視図である。
本実施例では、材軸応力伝達部1を片側1個のみ備え、斜め応力伝達部2の端部を構造材に固着可能(締結孔を有する台座部に溶接固定することで固着可能)としている。このような構成とすれば、部材の数は少なくて済み、製造単価を低減することが可能となる。なお、斜め応力伝達部2の端部は、回動自在なピン接合としてもよい。(図示せず)
【0129】
たとえば、実施例1、4、7,8、13、15、16において斜め応力伝達部2は丸棒で形成されているがこのような形態に限定されるものではない。
(実施例17)図20は本発明の実施例17にかかる耐震補強部材の斜視図である。
本実施例では、斜め応力伝達部2にプレートを取り付けて斜め応力伝達部2の剛性を高めている。このような構成とすれば、斜め応力伝達部2の座屈を防ぎ、耐震補強部材の強度をより大きくすることが可能となる。なお、その斜め応力伝達部2の形状、断面等はどんな形態であってもよい。
【0130】
たとえば、実施例1〜17において斜め応力伝達部は直軸の部材で構成されているが、このような構成に限定されるものではない。
(実施例18)図21は本発明の実施例18にかかる耐震補強部材の斜視図である。
本実施例では、斜め応力伝達部2の一部を曲折することで、斜め応力伝達部2自体が伸縮可能となる緩衝湾曲部を設けている。このような構成とすれば、材軸応力伝達部1に設置された弾性部材6が最大限縮退しても、緩衝湾曲部の変形により、耐震補強部材全体がさらに変形し、地震力を吸収することが可能となる。無論、その形態は図示の形状に限定されることはなく、たとえば、略円形に捲回することでコイルばね形状としてもよい。(図示せず)
【0131】
たとえば、実施例1〜18において斜め応力伝達部は材軸応力伝達部同士を直線状に繋いでいるが、このような構成に限定されるものではない。
(実施例19)図22は本発明の実施例19にかかる耐震補強部材の斜視図である。
本実施例では、材軸応力伝達部1同士をL型の斜め応力伝達部2で繋いでいる。このような構成とすれば耐震補強部材は構面コーナーに収まり、より大きな開口部が設置できるなど、構造物設計の自由度がより大きくなる。
【0132】
また、斜め応力伝達部を材軸応力伝達部に接合する位置は、実施例1〜19に例示した実施形態に限定されることはない。
(実施例20)図23は本発明の実施例20にかかる耐震補強部材の斜視図である。
本実施例では、材軸応力伝達部1の外端(構造材直交差部分と反対側)同士を斜め応力伝達部2で繋いでいる。このような構成とすれば耐震補強部材をよりコンパクトに形成することができる。
【0133】
たとえば、斜め応力伝達部と材軸応力伝達部とによって構成される角度が、実施例1〜18、20においては略45度となっているが、これらの実施形態に限定されることはない。
(実施例21)図24は本発明の実施例21にかかる耐震補強部材の斜視図である。
本実施例では、垂直方向の材軸応力伝達部1に対して略30度内外となるように、接合型斜め応力伝達部2a、および、スライド型斜め応力伝達部2bが接合されている。このように斜め応力伝達部と材軸応力伝達部との成す角度は0〜90度の範囲内で可能であり、設置する構造体の形状、機能に合わせて自由な選択ができる。
【0134】
なお、斜め応力伝達部の数も、図示してはいないが、3つ以上設けることも無論可能である。多く設けるほど耐震補強部材の強度は大きくなる。それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0135】
たとえば、斜め応力伝達部の一端と材軸応力伝達部との接合部は、実施例1〜21において一箇所のみとなっているが、これらの実施形態に限定されることはない。
(実施例22)図25は本発明の実施例22にかかる耐震補強部材の斜視図である。
本実施例では、接合型斜め応力伝達部2a、および、スライド型斜め応力伝達部2bの一端にそれぞれ一対の連接部材12、あるいはスライド部材5が取り付けられ、材軸応力伝達部1に各々2箇所で接合されている。
本耐震補強部材に地震等水平外力が加わった場合には、斜め応力伝達部を通して当該接合部に大きな力が加わり、材軸応力伝達部の接合部分が湾曲する恐れがある。しかしながら、本実施例のような構成とすれば、接合部分にかかる力は2箇所に分散され、小さくなる。そのため、材軸応力伝達部の部材断面を小さくできるなどのメリットが生じる。
無論、接合部の数は、2箇所以上であってもよいのは言うまでもない。
【0136】
たとえば、弾性部材の形状、数、取付形態は、実施例4〜22の実施形態に限定されることはない。実施例4〜22において、コイルばねを使用しているが、たとえば板ばねを使用してもよい。(図示せず)その他、素材、数、取付形態も実施例4〜22の実施形態に限定されることはなく、材軸応力伝達部、あるいは斜め応力伝達部の摺動を、その弾発力で阻害、および、変形を復元する機能が備わっていればよい。
【0137】
(実施例23)図26は本発明の実施例23にかかる耐震補強部材の斜視図である。
本実施例では、垂直方向の材軸応力伝達部1が上方に長く延伸し、多数の弾性部材6が取り付けられている。このように構造材に沿って弾性部材を補強できるので、構面(四周を構造材で形成する架構面)内に大きく出っ張ることなく、本耐震補強部材の強度を大きくすることができる。また、同時に垂直構造材のせん断補強としての機能も有する。
【0138】
たとえば、台座部の形態も、実施例1〜23の実施形態に限定されることはない。ねじ、コーチボルト、さらには溶接等で構造材に確実に固着可能な形態であれば、どんな形状であってもよい。また、実施例1〜23においては板状部材で台座部が形成されているが、板状部材に限定されることはない。たとえば、リブを設ける(図示せず)等、剛性を確保して外力が締結部材に分散するようにしてもよい。
【0139】
(実施例24)図27は本発明の実施例24にかかる耐震補強部材の斜視図である。
本実施例では、材軸応力伝達部1と略平行な辺に沿って台座部7と略直角に延伸した脇台座部9を備えている。このような構成とすれば、構造材の側面にも締結具にて固着できるため、台座部を留めつける締結具にかかる引抜き抵抗力、およびせん断抵抗力を補強することができる。
【0140】
たとえば、直交差する構造材に設置された台座同士を接合した構成としてもよい。
(実施例25)図28は本発明の実施例25にかかる耐震補強部材の斜視図である。
本実施例では、水平、垂直な構造材に取り付けた台座部7同士を、構造材が直交差する近傍において、接合(本実施例においては両部材を一体の部材で形成)している。
【0141】
(実施例26)図29は本発明の実施例26にかかる耐震補強部材の斜視図である。
本実施例では、水平、垂直な構造材に取り付けた台座部7同士を、構造材が直交差する近傍において、回動自在にピン接合している。
このように、台座部同士を接合してもよい。このようにすれば、引寄せ部材を備えてなくても、柱等の引抜きを防止することが可能で、特に引抜き力が小さい部位に設置するような場合には有効である。
【0142】
また、材軸応力伝達部の形態も、実施例1〜26の形態に限定されることはない。構造材の所定の個所に設置でき、且つスライド可能となる機能を備えていれば、どのような形態であってもよい。
【0143】
また、斜め応力伝達部の形態も、実施例1〜26の形態に限定されることはない。材軸応力伝達部の所定の個所に接合でき、且つ一方の材軸応力伝達部の力を他方の材軸応力伝達部に連接部材、あるいは、スライド部材を介して伝達する機能が備わっていれば、どのような形態であってもよい。
【0144】
また、ガイド部の形態も、実施例1〜26の実施の形態に限定されることはない。材軸応力伝達部を所定の位置に保持し、且つスライド可能となる機能を備えていれば、どのような形態であってもよい。
【0145】
また、ストッパ部材の形態も、実施例1〜26の実施の形態に限定されることはない。材軸応力伝達部の所定の位置に形成あるいは固着され、材軸応力伝達部がスライドしたときに、弾性部材と接触することで弾性部材を縮退(固着した場合は、縮退あるいは伸張)させるように形成されていればよい。
【0146】
また、スライド部材の形態も、実施例1〜26の実施の形態に限定されることはない。斜め応力伝達部に接合され、且つ材軸応力伝達部の所定の位置に摺動自在に取付られるように形成されていればよい。実施例においては、通孔を備え、材軸応力伝達部に嵌着することで摺動可能なように形成されているが、例えば、材軸応力伝達部に通孔を形成し、スライド部材を挿着することで摺動自在に取り付けても良い。すなわち、斜め応力伝達部に接合され、且つ材軸応力伝達部の所定の位置に摺動自在に装着できるように構成されていればよい。
【0147】
また、連接部材の形態も、実施例1〜26の実施の形態に限定されることはない。斜め応力伝達部に固着、あるいは、ピン接合され、且つ材軸応力伝達部の所定の位置に固着されていればよい。
【0148】
また、引寄せ部材の形態も、実施例1〜26の実施の形態に限定されることはない。当該台座部に取り付け、あるいは一体に形成され、対置する構造材(基礎を含む)に固着されたボルト等、接合部材を固着できるように形成されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】第1の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図、および構造原理を説明するための側面図である。
【図2】第2の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図、および構造原理を説明するための側面図である。
【図3】第3の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図、および構造原理を説明するための側面図である。
【図4】第4の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図、および構造原理を説明するための側面図である。
【図5】第5の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図、および構造原理を説明するための側面図である。
【図6】第6の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図、および構造原理を説明するための側面図である。
【図7】第7の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図、および構造原理を説明するための側面図である。
【図8】第8の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図、および本耐震補強部材を構成する部品の構成図である。
【図9a】第9の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図9b】第9の実施例にかかる耐震補強部材の正面図である。
【図9c】第9の実施例にかかる耐震補強部材の側面図である。
【図9d】第9の実施例にかかる側面部分詳細図である。
【図9e】第9の実施例にかかるA−A平断面詳細図である。
【図9f】第9の実施例にかかるB−B縦断面詳細図である。
【図9g】第9の実施例にかかる側面部分詳細図である。
【図9h】第9の実施例にかかるA−A平断面詳細図である。
【図9i】第9の実施例にかかるB−B縦断面詳細図である。
【図9j】第9の実施例にかかる側面部分詳細図である。
【図9k】第9の実施例にかかるA−A平断面詳細図である。
【図9l】第9の実施例にかかるB−B縦断面詳細図である。
【図10a】第10の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図10b】第10の実施例にかかる側面部分詳細図である。
【図10c】第10の実施例にかかるA−A平断面詳細図である。
【図10d】第10の実施例にかかるB−B縦断面詳細図である。
【図10e】第10の実施例にかかる縦断面詳細図である。
【図10f】第10の実施例にかかる変形時の縦断面詳細図である。
【図11】ガイド部の変形例の部分詳細図である。
【図12】ガイド部の変形例の部分詳細図である。
【図13】第11の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図14】第12の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図15】本発明にかかる耐震補強部材を使用した耐震補強工法の側面図、および詳細図である。
【図16】第13の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図17】第14の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図18】第15の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図19】第16の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図20】第17の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図21】第18の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図22】第19の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図23】第20の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図24】第21の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図25】第22の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図26】第23の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図27】第24の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図28】第25の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【図29】第26の実施例にかかる耐震補強部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0150】
1 材軸応力伝達部
2 斜め応力伝達部
2a 接合型斜め応力伝達部
2b スライド型斜め応力伝達部
3 ストッパ部材
4 ガイド部
5 スライド部材
6 弾性部材
7 台座部
8 引寄せ部材
9 脇台座部
10 緩衝湾曲部
11 外端接合部材
12 連接部材
13 斜材接合部材
100 一体型コーナー部材
101 接合型コーナー部材
102 スライド型コーナー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物、工作物等、構造材によって構成される構造物において、直交差する構造材同士を接合する補強部材であって、
棒状体から成り、当該棒状体の所定の2個所を折り曲げて形成された3つの直線状部分である材軸応力伝達部、斜め応力伝達部、および材軸応力伝達部の内、両端に位置する材軸応力伝達部が、前記直交差する二つの構造材それぞれと略平行になるように構成した一体型コーナー部材を備え、
当該一体型コーナー部材を構成する材軸応力伝達部、材軸応力伝達部を、所定の位置で前記構造材と略平行に摺動自在になるように取り付け、且つ前記構造材それぞれに固定可能となるように形成したガイド部を当該材軸応力伝達部に一以上備えたことを特徴とする耐震補強部材。
【請求項2】
建築物、工作物等、構造材によって構成される構造物において、直交差する構造材同士を接合する補強部材であって、
棒状体で形成され、前記直交差する二つの構造材それぞれと略平行になるように配置された材軸応力伝達部と材軸応力伝達部と、
当該材軸応力伝達部と材軸応力伝達部との間に位置し、所定の形態を有する連接部材を所定の形態を有する斜め応力伝達部の両端部に接合して形成された接合型斜め応力伝達部の連接部材を、
当該材軸応力伝達部および材軸応力伝達部に接合することで、材軸応力伝達部、斜め応力伝達部、および、材軸応力伝達部が一体となるように形成した接合型コーナー部材を備え、当該接合型コーナー部材を構成する材軸応力伝達部、材軸応力伝達部を、所定の位置で前記構造材と略平行に摺動自在になるように取り付け、且つ前記構造材それぞれに固定可能となるように形成したガイド部を当該材軸応力伝達部に一以上備えたことを特徴とする耐震補強部材。
【請求項3】
建築物、工作物等、構造材によって構成される構造物において、直交差する構造材同士を接合する補強部材であって、
棒状体で形成され、前記直交差する二つの構造材それぞれと略平行になるように配置された材軸応力伝達部と材軸応力伝達部と、
当該材軸応力伝達部と材軸応力伝達部との間に位置し、当該材軸応力伝達部に摺動自在に装着できるガイドを有するスライド部材を所定の形態を有する斜め応力伝達部の両端部に接合して形成されたスライド型斜め応力伝達部のスライド部材を、
当該材軸応力伝達部に摺動自在に装着することで、材軸応力伝達部、スライド型斜め応力伝達部、および、材軸応力伝達部が一体となるように形成したスライド型コーナー部材を備え、
当該スライド型コーナー部材を構成する材軸応力伝達部、材軸応力伝達部を、所定の位置で前記構造材と略平行に摺動自在になるように取り付け、且つ前記構造材それぞれに固定可能となるように形成したガイド部を当該材軸応力伝達部に一以上備えたことを特徴とする耐震補強部材。
【請求項4】
前記接合型コーナー部材の接合型斜め応力伝達部、または、スライド型コーナー部材のスライド型斜め応力伝達部を構成する接合部材と斜め応力伝達部との接合部、または、スライド部材と斜め応力伝達部との接合部の内、少なくとも一以上の接合部を回動自在なピン接合としたことを特徴とする請求項2または3に記載の耐震補強部材。
【請求項5】
前記接合型コーナー部材の接合型斜め応力伝達部を構成する斜め応力伝達部、または、前記スライド型コーナー部材のスライド型斜め応力伝達部を構成する斜め応力伝達部が棒状体で形成されたことを特徴とする請求項2ないし4の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の一体型コーナー部材、または、接合型コーナー部材を備え、加えて当該一体型コーナー部材、または、接合型コーナー部材を構成する材軸応力伝達部に、請求項3ないし5の何れか一項に記載のスライド型斜め応力伝達部を少なくとも一以上摺動自在に装着したことを特徴とする耐震補強部材。
【請求項7】
請求項3ないし5の何れか一項に記載のスライド型コーナー部材を備え、加えて当該スライド型コーナー部材を構成する材軸応力伝達部に、請求項3ないし5の何れか一項に記載のスライド型斜め応力伝達部を少なくとも一以上摺動自在に装着したことを特徴とする耐震補強部材。
【請求項8】
前記材軸応力伝達部の一部を所定の形状に成形、あるいは略円形に捲回することで、材軸応力伝達部自体が伸縮可能となる緩衝湾曲部を設けたことを特徴とする請求項1ないし7の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項9】
前記一体型コーナー部材、または、接合型コーナー部材、または、スライド型コーナー部材を構成する材軸応力伝達部の内、少なくとも一方の材軸応力伝達部の構造材直交差側の端部を、対置する構造材または基礎に固定された所定の固着部材に接合可能なように構成されたことを特徴とする請求項1ないし8の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項10】
前記材軸応力伝達部の一部を、当該材軸応力伝達部が設置された前記構造材に固着可能となるように構成されたことを特徴とする請求項1ないし9の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項11】
前記材軸応力伝達部が当該材軸応力伝達部が取り付けられている構造材に対して所定の角度を有するように構成されたことを特徴とする請求項1ないし10の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項12】
前記材軸応力伝達部および斜め応力伝達部から成る一体型コーナー部材、または、接合型コーナー部材、または、スライド型コーナー部材の材軸応力伝達部を片側1個のみ備え、且つ、当該コーナー部材を構成する斜め応力伝達部の端部を前記構造材に固着可能、または回動自在なピン接合で固定可能としたことを特徴とする請求項1ないし11の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項13】
前記スライド型斜め応力伝達部を構成するスライド部材に、前記材軸応力伝達部が挿通可能な通孔を備え、且つ、当該材軸応力伝達部に当該スライド部材を嵌着することで、スライド型斜め応力伝達部が材軸応力伝達部に摺動自在に装着されたことを特徴とする請求項3ないし12の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項14】
前記ガイド部に、前記材軸応力伝達部が挿通可能な通孔を備え、当該ガイド部に当該材軸応力伝達部を挿着することで、材軸応力伝達部が摺動自在となるようにガイド部が形成されたことを特徴とする請求項1ないし13の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項15】
前記一体型コーナー部材、または、接合型コーナー部材、または、スライド型コーナー部材を構成する材軸応力伝達部の所定の位置に取り付けられ、材軸応力伝達部が摺動した時、前記ガイド部、または、スライド部材と接触することで材軸応力伝達部の摺動が阻害されるように形成されたストッパ部材を少なくとも一以上備えたことを特徴とする請求項1ないし14の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項16】
前記ストッパ部材の外端が、前記ガイド部、または、スライド部材の通孔の縁よりも外方に位置するように形成することで、ガイド部、または、スライド部材と接触可能となり、材軸応力伝達部の摺動が阻害されるように形成されたことを特徴とする請求項15に記載の耐震補強部材。
【請求項17】
前記材軸応力伝達部の一部または全てが雄ねじ部材で形成されたことを特徴とする請求項1ないし16の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項18】
前記ストッパ部材の少なくとも一以上が雌ねじ部材で形成されたことを特徴とする請求項15ないし17の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項19】
前記スライド型コーナー部材を構成するスライド部材の両端に雌ねじ部材を設置し、スライド部材を材軸応力伝達部に固着することでスライド部材、および、雌ねじ部材に前記接合型コーナー部材を構成する接合部材としての機能を持たせたことを特徴とする請求項2ないし18の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項20】
前記一体型コーナー部材、または、接合型コーナー部材、または、スライド型コーナー部材を構成する材軸応力伝達部の所定の位置に装着し、前記ガイド部、または、ストッパ部材、または、スライド部材、または、接合部材の端部と接触可能となるように形成された弾性部材を一以上備えたことを特徴とする請求項1ないし19の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項21】
前記一体型コーナー部材、または、接合型コーナー部材、または、スライド型コーナー部材を構成する材軸応力伝達部の所定の位置に装着し、前記ガイド部、または、ストッパ部材、または、スライド部材、または、接合部材の端部に一端を固着した弾性部材を一以上備えたことを特徴とする請求項1ないし20の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項22】
前記ストッパ部材とガイド部との間に、請求項20に記載の弾性部材を一以上備えることで、材軸応力伝達部がスライド移動した時に、当該弾性部材が当該ストッパ部材、および、ガイド部と接触し、縮退することで圧縮ばねとして機能するように構成したことを特徴とする請求項15ないし21の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項23】
前記接合部材とガイド部との間に、請求項20に記載の弾性部材を一以上備えることで、材軸応力伝達部がスライド移動した時に、当該弾性部材が接合部材、および、ガイド部と接触し、縮退することで圧縮ばねとして機能するように構成したことを特徴とする請求項2または、請求項4ないし22の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項24】
前記スライド部材とガイド部との間に、請求項20に記載の弾性部材を一以上備えることで、材軸応力伝達部がスライド移動した時に、当該弾性部材がスライド部材、および、ガイド部と接触し、縮退することで圧縮ばねとして機能するように構成したことを特徴とする請求項3ないし23の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項25】
前記ストッパ部材とガイド部との間に、請求項21に記載の弾性部材を備え、当該弾性部材の両端部をストッパ部材の端部、および、ガイド部の端部にそれぞれ固着することで、材軸応力伝達部がスライド移動した時に、当該弾性部材が縮退、あるいは伸張し、圧縮ばね、あるいは引きばねとして機能するように構成したことを特徴とする請求項15ないし24の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項26】
前記接合部材とガイド部との間に、請求項21に記載の弾性部材を備え、当該弾性部材の両端部を接合部材の端部、および、ガイド部の端部にそれぞれ固着することで、材軸応力伝達部がスライド移動した時に、当該弾性部材が縮退、あるいは伸張し、圧縮ばね、あるいは引きばねとして機能するように構成したことを特徴とする請求項2または、請求項4ないし25の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項27】
前記スライド部材とガイド部との間に、請求項21に記載の弾性部材を備え、当該弾性部材の両端部をスライド部材の端部、および、ガイド部の端部にそれぞれ固着することで、スライド部材がスライド移動した時に、当該弾性部材が縮退、あるいは伸張し、圧縮ばね、あるいは引きばねとして機能するように構成したことを特徴とする請求項3ないし26の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項28】
前記ガイド部とガイド部との間に、請求項20または21に記載の弾性部材を二以上設け、当該弾性部材と弾性部材との間に前記ストッパ部材を二以上設けたことを特徴とする請求項15ないし27の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項29】
前記ガイド部と前記接合部材との間に、請求項20または21に記載の弾性部材を二以上設け、当該弾性部材と弾性部材との閧に前記ストッパ部材を二以上設けたことを特徴とする請求項15ないし28の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項30】
前記ガイド部と前記スライド部材との間に、請求項20または21に記載の弾性部材を二以上設け、当該弾性部材と弾性部材との間に前記ストッパ部材を二以上設けたことを特徴とする請求項15ないし29の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項31】
前記弾性部材がコイルばねであることを特徴とする請求項20ないし30の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項32】
前記ガイド部を少なくとも一以上固着することで、ガイド部と一体となるように形成された台座部を備えたことを特徴とする請求項1ないし31の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項33】
前記台座部の一部または全体を板状の部材で形成したことを特徴とする請求項32に記載の耐震補強部材。
【請求項34】
前記台座部が、前記材軸応力伝達部と略平行な辺に沿って、当該台座部と略直角に延伸した脇台座部を台座部の片辺、または、両辺に備えたことを特徴とする請求項32または33に記載の耐震補強部材。
【請求項35】
前記台座部、または、脇台座部、または、台座部と脇台座部の所定の位置に締結具を挿通するための一以上の締結孔が設けられたことを特徴とする請求項32ないし34の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項36】
前記接合型コーナー部材、または、一体型コーナー部材、または、スライド型コーナー部材を構成する材軸応力伝達部の内、少なくとも一方の材軸応力伝達部の構造材直交差側端部を、対置する構造材に固着可能な台座部、または、脇台座部に接合されたことを特徴とする請求項32ないし35の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項37】
前記直交差する構造材の各々に取付け可能となるように構成された前記台座部の構造材直交差側の端部に、棒状部材が挿通可能となる通孔を有する引寄せ部材を備えたことを特徴とする請求項32ないし36の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項38】
前記直交差する構造材の各々に取付け可能となるように構成された一対の前記台座部を、構造材の直交差する部分近傍まで各々延伸し、構造材の直交差部分近傍にて両台座部同士を接合、または、両台座部を一の部材を折り曲げて略L型の一体の部材となるように形成されたことを特徴とする請求項32ないし37の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項39】
前記一対の台座部の接合部を回動自在なピン接合としたことを特徴とする請求項38に記載の耐震補強部材。
【請求項40】
前記ガイド部を形成する通孔の一端もしくは両端に、外方に向かう末広がり部を設けたことを特徴とする請求項14ないし39の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項41】
前記スライド部材を形成する通孔の一端もしくは両端に、外方に向かう末広がり部を設けたことを特徴とする請求項13ないし40の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項42】
前記ガイド部を形成する通孔において、当該ガイド部が取り付けられている構造材の材面に対して垂直な方向の内径が、構造材の材面に対して平行な方向の内径よりも大きくなるようにガイド部の通孔が形成されたことを特徴とする請求項14ないし41の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項43】
前記ガイド部の、一端もしくは両端が凹形状に形成されたことを特徴とする請求項42に記載の耐震補強部材。
【請求項44】
前記ガイド部が、当該ガイド部に挿着された材軸応力伝達部に対して、所定の角度を有するように傾斜して形成されていることを特徴とする請求項42または43に記載の耐震補強部材。
【請求項45】
前記材軸応力伝達部、または、斜め応力伝達部、または、材軸応力伝達部と斜め応力伝達部の両方がばね鋼材で形成されたことを特徴とする請求項1ないし44の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項46】
前記構造材によって構成される構造物の部分において、4本の構造材で形成された略四角形の構面の隣り合うコーナー部に、前記請求項1ないし45の何れか一項に記載の耐震補強部材を固着し、当該耐震補強部材を形成する前記材軸応力伝達部の外端同士を外端接合部材を介して接合したことを特徴とする耐震補強工法。
【請求項47】
4本の構造材で形成された略四角形の構面に設置される筋かい、ブレース等、斜材の端部を接合可能とする斜材接合部材を、前記斜め応力伝達部に備えたことを特徴とする請求項1ないし45の何れか一項に記載の耐震補強部材。
【請求項48】
前記斜材接合部材が板状部材で形成され、当該板状部材の所定の位置に締結具を挿通するための一以上の締結孔が設けられたことを特徴とする請求項47に記載の耐震補強部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9a】
image rotate

【図9b】
image rotate

【図9c】
image rotate

【図9d】
image rotate

【図9e】
image rotate

【図9f】
image rotate

【図9g】
image rotate

【図9h】
image rotate

【図9i】
image rotate

【図9j】
image rotate

【図9k】
image rotate

【図9l】
image rotate

【図10a】
image rotate

【図10b】
image rotate

【図10c】
image rotate

【図10d】
image rotate

【図10e】
image rotate

【図10f】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate


【公開番号】特開2007−332743(P2007−332743A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187193(P2006−187193)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(500481640)
【Fターム(参考)】