説明

肉骨粉から発生する臭気性ガスの脱臭方法

【課題】
天麩羅に揚げた肉骨粉を発生する悪臭の源である揮発性ガスの消臭方法に関するものである
【解決手段】
肉骨粉の成形体を油で揚げる工程と、該油で揚げた肉骨粉のテンプラを過熱水蒸気雰囲気炉で加熱して、該テンプラの油の蒸気と、該肉骨粉の中から臭気成分のガスを発生させる工程と、該油の蒸気と該臭気成分ガスと該過熱水蒸気の混ざった過熱水蒸気雰囲気炉排出ガスを脱臭炉に導入して脱臭燃焼させる工程を備えてなることを特徴とする。
上記脱臭炉の脱臭燃焼雰囲気温度が、800〜950℃の範囲であることを特徴とする。
上記脱臭燃焼に際して、燃焼雰囲気に水を噴霧することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉骨粉から発生する臭気性ガスの脱臭方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
BSE問題が発生以来、肉骨粉を家畜の飼料に使用することが禁止され、全量焼却されるようになった。
肉骨粉は粉末状で、焼却時、火格子の間から下に落ちて一部未焼却部が残るので、ツナギを入れていったんペレット状に成形したもの(特許文献1)を焼いている。最近は早期の腐敗防止のために、いったん天麩羅に揚げて固めた後に、焼却炉で焼いているが、天麩羅で揚げているために発熱量が高すぎて、焼却炉を損傷する問題と焼却時の激しい臭いの問題が発生している。また一方、炭化炉で炭化すること(特許文献2)も試みられているが、焼却炉損傷の問題と、炭化時に発生するガスの臭いの問題は解決されていない。
【0003】
【特許文献1】特開2003−201489号公報
【特許文献2】特開2003−160787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はかかる問題点にかんがみてなされたもので、その目的は、焼却炉損傷(異常発熱)の問題も同時に解決できる肉骨粉から発生する臭気性ガスの新しい脱臭方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記問題に関して鋭意研究を行い、下記の知見を得た。
すなわち、
油で揚げた肉骨粉の塊(テンプラ)を過熱水蒸気雰囲気で炭化すると、炭化時の異常発熱は防止できること、そして油で揚げた肉骨粉のテンプラを過熱水蒸気雰囲気で加熱して、テンプラ油は蒸気化させ、肉骨粉の中から臭気成分のガスを発生させ、このテンプラ油の蒸気と、臭気成分ガスと、過熱水蒸気の混合ガスを燃焼させると肉骨粉から発生する臭気性ガスは脱臭できることを見出した。そして燃焼(脱臭)時、燃焼雰囲気に水を噴霧することで異常発熱は防止できることを見出した。そして燃焼は、ほとんど自燃に近い状態で燃焼が起り継続すること。また必要に応じて補助バーナーを取り付けて、バーナー加熱を併用すると安定な燃焼を継続できることを見出した。
以上の知見を得た。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、下記1〜4の構成からなるものである。
1.肉骨粉の成形体を油で揚げる工程と、該油で揚げた肉骨粉のテンプラを過熱水蒸気雰囲気炉で加熱して、該テンプラの油の蒸気と、該肉骨粉の中から臭気成分のガスを発生させる工程と、該油の蒸気と該臭気成分ガスと該過熱水蒸気の混ざった過熱水蒸気雰囲気炉排出ガスを脱臭炉に導入して脱臭燃焼させる工程を備えてなることを特徴とする肉骨粉から発生する臭気性ガスの脱臭方法。
2.上記脱臭炉の脱臭燃焼雰囲気温度が、800〜950℃の範囲であることを特徴とする上記1に記載の肉骨粉から発生する臭気性ガスの脱臭方法。
3.上記脱臭燃焼に際して、燃焼雰囲気に水を噴霧することを特徴とする上記1あるいは2に記載の肉骨粉から発生する臭気性ガスの脱臭方法。
4.上記燃焼に際して、補助的にバーナー加熱してなる上記1〜3のいずれかに記載の肉骨粉から発生する臭気性ガスの脱臭方法。
【発明の効果】
【0006】
肉骨粉の加熱処理に際して、臭いを完全無臭化できる。
脱臭燃焼の際の異常昇温を防止できる。
3. 排ガスを過熱水蒸気雰囲気炉の保温に利用できる。(省エネ効果大)
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で肉骨粉とは、牛や豚などの家畜から必要な肉を切り取った後に残る内臓や骨等を加熱処理し、油脂を取って細かく磨砕あるいは破砕されて肉単独の粉、および肉と骨の混ざった粉、あるいは必要に応じて内臓や骨等を直接磨砕あるいは破砕して作られる肉単独の粉、および肉と骨の混ざった粉を総称するものである。肉粉、肉骨粉は概ねミンチあるいはすり身の状態で存在する。
【0008】
図面で本発明を詳述する。
図1は本発明方法の説明図である。
牛や豚などの家畜から必要な肉を切り取った後に残る内臓や骨等は必要に応じて加熱処理され、油脂を取られて肉骨粉の原料となる。
肉骨粉の原料は磨砕機、あるいは破砕機でミンチあるいはすり身の状態に加工される。
肉粉、肉骨粉のすり身(あるいはミンチ)は、一旦ペレット、あるいは板、あるいは固まり状に成形した後、加熱したテンプラ油に入れてテンプラに揚げる。
成形の際、必要に応じてデンプン、接着剤等のツナギを入れても良い。
テンプラ油には、植物油、魚油、鯨油、機械油、およびこれらの廃油を適宜使用してよい。
【0009】
肉骨粉のテンプラは過熱蒸気式炭化炉に投入して過熱水蒸気を吹き込んで加熱する。
過熱水蒸気の雰囲気には酸素が僅かしか含まれて居ないために、肉骨粉のテンプラは僅か焼損するだけで炭化される。
肉骨粉のテンプラは過熱水蒸気で過熱されて、揮発成分(臭いの成分)は揮発し、固形分は概ね350℃付近から炭化が開始するが、同時にテンプラの中に含浸されているテンプラ油が気化蒸発する。
炭化炉内の炭化温度は、400〜500℃の範囲が好ましい。
下限値未満では炭化が起らない。また上限を超えても炭化効率は変わらないので、経済的効率の観点から、上限以下の温度が好ましい。
【0010】
炭化した固形分は、炭化物として過熱水蒸気の炭化炉から外に排出される。
炭化炉から外に排出されるガス成分は、テンプラ油の蒸気(あるいはテンプラ油の熱分解ガス)、肉骨粉の揮発成分(臭いの成分)、過熱水蒸気、および過熱水蒸気に含まれた微量の酸素による微量の燃焼生成物(炭酸ガス)等である。
肉骨粉を加熱したときに発生する激しい臭気は、この揮発性ガスが源である。
【0011】
過熱水蒸気雰囲気炉から外に排出される排ガスに空気を少量混ぜて、脱臭炉に送り込んで着火燃焼させると、臭気成分は分解されて無臭となる。
脱臭炉の炉内温度は、概ね800〜950℃の範囲が好ましい。下限値未満では脱臭が不十分で、臭いがのこる。また上限以上に加熱しても脱臭効率は変わらず、過昇温はむしろ炉の損傷を招くので好ましくない。
【0012】
過熱水蒸気の炭化炉から外に排出されるガスにはテンプラ油の蒸気(あるいはテンプラ油の熱分解ガス)が高濃度で含まれており、極めて発熱カロリーが高い。そのために放置すると異常発熱して、脱臭炉が赤熱状態まで昇温する。
過昇温を防止するために脱臭炉内に水を噴霧する。水が蒸発するときに周囲から気化熱を奪う性質を利用して、炉内の異常昇温を防止する。また水は蒸発、加熱されても過熱水蒸気になるだけで、雰囲気に対して何ら悪影響は無い。過熱水蒸気の生成は、炉内のテンプラ油の蒸気(あるいはテンプラ油の熱分解ガス)濃度を相対的に下げて結果的には発熱量を下げる効果が発生する。
噴霧する水の量、ひいては発生させる過熱水蒸気の量を調整することによって炉内の温度を一定に保持することができる。
【0013】
脱臭炉から外に排出される排ガスは十分に高い熱を保有するので、これは過熱水蒸気雰囲気炉外周のジャケット部に導入して外周保温に有効利用できる。
【実施例1】
【0014】
図1に示す方法を採用。
肉骨粉のテンプラ1kgを、内容積φ700×900mmの過熱水蒸気雰囲気炉の中に投入して、500℃の過熱水蒸気を吹き込んで、炉内をプラス圧に保持して炭化した。
【0015】
過熱水蒸気雰囲気炉の排出ガスを消臭炉に導入して、空気を混ぜて、着火して燃焼させた。
炉内温度900℃で1.4リットル/分、の水を噴霧すると炉内温度850〜950℃に保持することができた。
水噴霧は脱臭炉の温度制御に極めて友好であることが判明した。
【0016】
脱臭炉から外に排出した排ガスは無臭であった。
なお因みに過熱水蒸気雰囲気炉から外に排出されたときの排ガスは臭いがきわめて強かった。
肉骨粉を加熱したときに発生する臭いの強い揮発性ガスに過熱水蒸気とテンプラ油の揮発性ガスを混合して空気と混合燃焼させると、臭いが消臭できることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0017】
肉骨粉の加熱処理時、臭いを周囲に拡散させることなく、かつ脱臭炉を損傷させることなく経済的に処理できる。
肉骨粉の安全、無公害、安価、大量処理に大いに貢献する見ものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明方法の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉骨粉の成形体を油で揚げる工程と、該油で揚げた肉骨粉のテンプラを過熱水蒸気雰囲気炉で加熱して、該テンプラの油の蒸気と、該肉骨粉の中から臭気成分のガスを発生させる工程と、該油の蒸気と該臭気成分ガスと該過熱水蒸気の混ざった過熱水蒸気雰囲気炉排出ガスを脱臭炉に導入して脱臭燃焼させる工程を備えてなることを特徴とする肉骨粉から発生する臭気性ガスの脱臭方法。
【請求項2】
上記脱臭炉の脱臭燃焼雰囲気温度が、800〜950℃の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の肉骨粉から発生する臭気性ガスの脱臭方法。
【請求項3】
上記脱臭燃焼に際して、燃焼雰囲気に水を噴霧することを特徴とする請求項1あるいは2に記載の肉骨粉から発生する臭気性ガスの脱臭方法。
【請求項4】
上記燃焼に際して、補助的にバーナー加熱してなる請求項1〜3のいずれかに記載の肉骨粉から発生する臭気性ガスの脱臭方法。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−170535(P2006−170535A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364189(P2004−364189)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(301047957)株式会社テラボンド (11)
【Fターム(参考)】