説明

肝性幹/前駆細胞を含む生存能のあるヒト肝臓細胞を得る方法

本発明は、全肝臓またはその切除物から、ヘパトサイトおよび肝性幹/前駆細胞で富化された生存能のある機能性の肝臓細胞を含む細胞の集団を得る方法、その組成物、ならびにその用途に関する。組成物としては、ヘパトサイトおよび肝性幹/前駆細胞で富化された肝臓細胞の組成物、ならびにその医薬組成物が含まれる。用途としては、肝臓疾患の治療、肝臓の再生、毒性検査および肝臓支援装置が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全肝臓またはその切除物から、ヘパトサイトおよび肝性幹/前駆細胞で富化された生存能のある機能性の肝臓細胞を含む細胞の集団を得る方法、その組成物、ならびにその用途に関する。組成物としては、ヘパトサイトおよび肝性幹/前駆細胞で富化された肝臓細胞の組成物、ならびにその医薬組成物が含まれる。用途としては、肝臓疾患の治療、肝臓の再生、毒性検査および肝臓支援装置が含まれる。
【背景技術】
【0002】
1. 背景
正常な肝臓は損傷した組織を修復または置換することによってそれ自体を再生させる能力を有する。この保護にも関わらず、一旦限界量の肝臓細胞が疾患または損傷によって死滅すると、肝臓は機能を失い、疾病および死を引き起こし得る。肝不全は深刻な健康問題である。毎年、アメリカ合衆国では慢性肝臓疾患による概算300,000件の入院および30,000人の死亡がある。現在、これらの肝臓疾患の多くに対する唯一の治療法は、肝臓移植である。しかし、アメリカ合衆国では毎年わずかに約5,000のドナー肝臓が利用可能となるだけである。2002年5月現在、約18,000人の患者が肝臓移植待ちの名簿に載っており、過去4年間で100%以上の増加、10年前の1,700人からの増加である。更に、現在アメリカ合衆国で重症の肝硬変および他の種類の慢性肝不全を患う約100,000人の成人は移植の候補者となりうる。
【0003】
ドナー臓器の不足の結果、肝臓移植の可能性のある患者は、しばしば何年もドナー肝臓が利用可能になるのを待たなくてはならない。現在、全臓器肝臓移植術には、脳死しているが心臓はまだ拍動しているドナーが必要とされる。これは院内死亡の約1〜2%しか発生せず、可能性のあるドナープールを大幅に制限している。明らかに、肝臓疾患を持つ患者の圧倒的多数は、解決法として臓器移植に頼ることができない。損傷を受けた肝臓を有する患者を支援する新しい技術が緊急に必要である。
【0004】
肝臓の再生能は、肝臓細胞移植が全肝臓の同所性移植の有用な代替法を提供する可能性を持つことを示唆する。肝臓疾患を持つ患者に注入されたドナー肝臓細胞は、レシピエントの肝臓(および/または脾臓に注入された場合は脾臓)にコロニーを形成でき、機能を修復しうる。しかし、成熟したヘパトサイトの長期間生存する潜在能力および移植後に増殖する潜在能力は不明なままである。
【0005】
従来の知識では、すべての成熟した成人の肝臓細胞(ヘパトサイト)が何度も分裂でき、従って損傷後に臓器の再生を可能にすると考えられてきた。しかし、肝臓から得られる実質細胞の再生能力の範囲について正しい認識が増加している。齧歯類のヘパトサイトの研究では、中心静脈周囲の領域由来の成熟したヘパトサイトは分裂するとしても限られた細胞分裂しかできないこと、時に「小型ヘパトサイト」と呼ばれる門脈周囲の成体のヘパトサイトはより大きな再生能を有するが、それでもなお限られた回数の細胞分裂しか行わないこと、最も大きな再生能は、非常に広範に増殖して成熟したヘパトサイトを生じることができる幹細胞または前駆細胞様の特性を有する二倍体実質細胞の小集団に存在することが示された(Kubota HおよびReid LM. 2000. Clonogenic hepatoblasts, common precursors for hepatocytic and biliary lineages, are lacking classical major histocompatiblity complex class I antigen. Proceedings of the National Academy of Sciences (USA) 97: 12132-12137.)。
【0006】
肝性幹/前駆細胞は、肝臓細胞系統に分化することが決まっているがまだ大部分の成熟した肝臓細胞の機能を発現していない未熟な細胞の集団である。しかし、それらは広範に増殖することができ、肝臓機能を提供する完全に分化した娘細胞を生じることができる。齧歯類モデルでの研究は、胎仔および成体の肝臓において、少なくとも両能性のある、換言するとそれらの子孫が2種類の細胞、すなわちヘパトサイトおよび胆管細胞を含む、幹/前駆細胞の存在を実証した(Kubota HおよびReid LM. 2000. Clonogenic hepatoblasts, common precursors for hepatocytic and biliary lineages, are lacking classical major histocompatiblity complex class I antigen. Proceedings of the National Academy of Sciences (USA) 97: 12132-12137)。成体の肝臓では、レシピエントの成熟ヘパトサイトが破壊されているかまたは低下した増殖能力を有するある種の肝臓損傷の後に、幹/前駆細胞は肝再生に関与し、広範囲にわたって宿主肝臓を再集団化することが示されている。
【0007】
過去30年間で、成体の肝臓から単離され注入されたヘパトサイトの宿主組織への移植、生存、増殖、機能および、再生過程に関与する能力を実証する、相当数の科学文献が蓄積された。脾臓または肝臓へのヘパトサイトの移植は、多数のモデルにおいて代謝の遺伝的欠損を修正すること、(FAH-欠損マウスモデルでのように)宿主肝臓細胞が失われるまたはその寿命が減少する条件下で完全に宿主肝臓を再集団化すること、様々な傷害によって引き起こされる急性肝不全の際に肝臓機能を提供すること、および、肝臓機能を改善しCCl4誘導性の肝硬変モデルにおける生存を延長することが示された。
【0008】
文献中の事例研究および症例報告では、急性および慢性、遺伝性および後天性の様々な肝臓疾患を有する40人以上の患者へのヘパトサイトの投与が記載されている(Strom SC, Chowdhury JR,およびFox IJ. 1999. Hepatocyte transplantation for the treatment of human disease(総説)Seminars in Liver Disease 19: 39-48.)。これらのいくつかの報告のデータは、細胞が実際に移植、生存、および数ヶ月間まで機能したことを示唆する。ある研究では、肝臓の合成能力は移植4〜6ヶ月後に改善を示し、そのことは改善されたアルブミンレベルおよびプロトロンビン時間によって裏付けられた。移植および移植されたヘパトサイトの機能を実証している最も良い公開された報告の1つは、Crigler-Najjar症候群、すなわち個体がビリルビンを抱合する酵素UDPグルクロノシルトランスフェラーゼに欠損を持ち、重症の黄疸を引き起こす遺伝性疾患を有する10歳の少女に関するものである(Foxら、I. J.,"Treatment of the Crigler-Najjar Syndrome Type I with hepatocyte transplantation," New England Journal of Medicine, (1998) 338:1422-1426)。移植後18ヶ月間、この個体は、胆汁中への抱合型ビリルビンの排出の有意な増加、肝生検での酵素活性の増加、および紫外線治療の必要性の減少を示した。しかし、移植されたヘパトサイトを用いたこれらの以前の実験は、結果として一時的な恩恵しかもたらさなかった。成熟ヘパトサイトの限定された増殖能力は、必然的にヘパトサイト単独での治療の有効期間を制限する。
【0009】
肝臓疾患を治療するための以前の試みにおける前述の問題は、生存能のある機能性肝臓細胞で富化された本発明の細胞の集団を用いることによって克服されることがここに見出された。本発明の細胞の広範な増殖能力は、最大限の組織再生を支援し、移植を成功させるのに必要な細胞の投与量を低下させる。幹/前駆細胞の存在はまた、成熟ヘパトサイトと比較して改善された生存、増殖、機能および再生過程に関与する能力によって、肝臓細胞療法の有効期間の延長を提供する。
【0010】
肝臓細胞療法が商品化され、多数の患者にとって実行可能な治療選択肢となるには、肝臓組織の十分な供給が確立されなければならない。本発明の方法によって得られる細胞は、全臓器移植に適さないまたは時間/輸送の制約のために直ちに使用できない特定の臓器ドナーの肝臓から得られうることがわかった。生存能のある機能性肝臓細胞は、本発明の方法によって、従来のガイドラインでは同所性移植に適さない、または細胞移植のための大量の成熟ヘパトサイトの調製に適さない肝臓から単離できる。最も重要なことに、本発明の方法による幹/前駆細胞を含むヒト肝臓細胞集団の精製は、肝臓細胞治療のためのドナープールを劇的に拡張することを保証する。更に、明らかに虚血性傷害に対する幹/前駆細胞の相対的な抵抗性のために、これらの細胞は本方法によって多くの不全収縮期の(すなわち心臓の拍動していない)ドナーから取得できることが判明した。
【0011】
本発明の単離方法は、ドナー肝臓からの肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性肝臓細胞が細胞の凍結保存混合物に含まれることを保証する。この方法は、提供されたヒト全肝臓またはその切除物から(粗製の肝臓調製物と比較して)より高い比率で生存能のある肝臓細胞懸濁体を単離し、小型の肝性幹/前駆細胞の集団を、仮に減少させたとしても、過度に減少させることなく、死細胞および破片を除去する。得られる細胞集団は凍結保存前に80%以上の生存能のある細胞を含み、解凍後に70%以上の生存能のある細胞を含むことができ、細胞の75%以上はヘパトサイトである。
【0012】
対照的に、既知のヘパトサイト単離方法は、多くの場合パーコールを含む媒体による低速遠心分離を用いて、(遠心分離後のペレット中に見いだされる)生存ヘパトサイトを富化させる。この方法は、大型の生存能のあるヘパトサイト、特により大型のヘパトサイトの単離に非常に有効であるが、それは肝性幹/前駆細胞の著しい減少、さらにはより小型の成熟ヘパトサイトの著しい損失をも引き起こす。
【0013】
本発明は前述のニーズに取り組み、従来の方法ではこれまで入手不可能だった肝性幹/前駆細胞を含む、医薬品品質の肝臓細胞移植製品または細胞療法製品および高い生存能のある機能性肝臓細胞集団を得る方法を提供することによって、肝臓細胞移植または細胞療法の状況を向上させる。本発明の肝臓細胞移植製品または細胞療法製品は、肝性幹/前駆細胞ならびに肝臓で見いだされる他の種類の細胞を含む肝臓細胞のよく特徴づけられた混合物から成る。
【発明の開示】
【0014】
2. 発明の概要
本発明は、生存能のあるヒト肝臓細胞で富化された細胞の集団を得るために以下を含む方法に関する。すなわち、ヒト全肝臓またはその切除物をタンパク質分解酵素製剤により消化して、消化済みのヒト全肝臓またはその切除物を得ること、消化済みのヒト全肝臓またはその切除物を解離させて細胞の懸濁体を得ること、細胞が懸濁されている媒体の密度を調整して、遠心分離後に密度障壁により分離された細胞の少なくとも2つのバンドが得られるようにすること、その際、少なくとも2つのバンドのうち少なくとも1つのバンドが、少なくとも2つのバンドのうちの別のバンドより低い密度のものであること、および、より低い密度の少なくとも1つのバンドを集めて、肝性幹/前駆細胞を含む生存能のあるヒト肝臓細胞で富化された細胞の集団を得ること、である。
【0015】
本発明の別の実施形態では、肝性幹/前駆細胞を含む生存能のあるヒト肝臓細胞で富化された細胞の集団を得るために以下を含む方法が提供される。すなわち、ヒト全肝臓またはその切除物をタンパク質分解酵素製剤により消化して、消化済みのヒト全肝臓またはその切除物を得ること、消化済みのヒト全肝臓またはその切除物を解離させて細胞の懸濁体を得ること、細胞が懸濁されている媒体の密度を調整して、遠心分離後に少なくとも1つのバンドの細胞が得られ、その少なくとも1つのバンドの細胞が細胞または細胞破片のペレットより低い密度であること、および、より低い密度の少なくとも1つのバンドを集めて、肝性幹/前駆細胞を含む生存能のあるヒト肝臓細胞で富化された細胞の集団を得ること、である。本発明の他の実施形態は、機能性のヘパトサイト、機能性の胆管細胞、機能性の造血細胞、またはそれら組合せをも含有する細胞の集団を含むが、それに限定されない。
【0016】
本発明の更なる実施形態は、肝臓またはその切除物が心臓の拍動しているもしくは不全収縮期の新生児、小児、若年者、または成人ドナーから得られうることを示す。特に、ある期間温虚血にさらされたまたは不全収縮期のドナーから得られたドナー肝臓から、本発明の方法によって細胞を得てもよい。
【0017】
本発明は更に、生存能のある機能性肝臓細胞で富化された肝臓細胞の集団を含む組成物に関し、その細胞の集団は機能性のヘパトサイトおよび肝性幹/前駆細胞を含む。本発明の特定の実施形態では、富化された細胞の集団は約9〜13ミクロンの直径を持つ肝性幹/前駆細胞で富化され、EP-CAM(GA733-2、C017-1A、EGP40、KS1-4、KSAとも呼ばれる)、CD133またはその両方の発現に関して陽性である。
【0018】
更なる実施形態において、本発明は、肝臓から得られる粗製の細胞懸濁体と比較して、生存能のある機能性のヘパトサイトおよび肝性幹/前駆細胞で富化された肝臓細胞の集団を含む組成物に関する。更なる実施形態は胆管細胞をさらに含む。本発明の細胞集団の胆管細胞はサイトケラチン-19(CK19)の発現に関して陽性であり、アルブミンの発現に関して陰性であることが見いだされた。
【0019】
本発明はまた、肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性肝臓細胞で富化された細胞の集団を有効な量で投与することを含む、肝臓疾患の治療方法に関する。様々な投与方法が本方法によって検討され、脾動脈もしくは門脈からの導入、肝髄への直接導入、肝臓被膜の下への導入、または脾臓への直接導入を含むがこれらに限定されない。
【0020】
別の実施形態では、本発明は肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性肝臓細胞で富化された肝臓細胞の集団および薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物に関する。更なる実施形態では、薬学的に許容される担体は例えばHYPOTHERMOSOL(商標)などの凍結保存剤を含んでもよい。
【0021】
更なる実施形態では、本発明は、肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性肝臓細胞で富化された肝臓細胞集団を試験物質に曝露すること、および、肝臓細胞の集団に対する試験物質の影響(例えば細胞生存能、細胞機能、またはその両方)を、あるとしたら少なくとも1つ観察することを含むin vitro毒性試験を行う方法に関する。本発明はまた、肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性肝臓細胞で富化された肝臓細胞集団を試験物質に曝露すること、および、予め決められた試験期間の後で試験物質に関係する変化を、あるとしたら少なくとも1つ観察することを含むin vitro薬物代謝研究を行う方法を検討する。少なくとも1つの変化は、試験物質の構造、濃度、またはその両方の変化を含みうるが、これらに限定されない。
【0022】
本発明の別の実施形態は、肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性肝臓細胞で富化されたヒト肝臓細胞の集団を収納したハウジングを含む肝臓支援装置に関する。その肝臓細胞はヒト肝臓細胞またはブタ肝臓細胞を含みうる。
【0023】
本発明はまた、遺伝子発現の欠陥を治療する方法に関し、遺伝子の機能的コピーを生存能のある機能性の肝性幹/前駆細胞を含むヒト肝臓細胞の集団に導入して形質転換された集団を得ること、および形質転換された集団の少なくとも一部をその遺伝子の機能的コピーを必要とする患者の肝臓に導入することを含む。前述の方法に有効な本発明の組成物は本発明の別の実施形態である。
【0024】
本発明によって提供される他の方法は、損傷または罹患した肝臓の再生を高める方法、肝臓の感染症を治療するのに有効な薬剤について試験を行う方法、目的のタンパク質を製造する方法、および目的のワクチンを製造する方法を含む。
【0025】
肝臓の感染症を治療するのに有効な薬剤について試験を行う方法では、ヒト肝臓細胞の集団に対象となる病原体を感染させる。その後、感染した集団を予め決められた量の試験物質に曝露し、感染した集団に対する曝露の影響があるとしたら、その影響を観察する。目的のタンパク質を製造する方法では、目的のタンパク質をコードする機能性遺伝子を、肝性幹/前駆細胞を含む肝臓細胞の集団に導入する。その結果生じる細胞集団をその後、転写、翻訳および場合により翻訳後修飾が生じるのに効果的な条件下でインキュベートし、その後目的のタンパク質を回収する。組換えウイルスまたはビリオン粒子を本発明の細胞集団に導入することによるワクチンの製造もまた検討され、ここでは、ウイルスまたはビリオン粒子を細胞の集団の少なくとも一部のメンバーに感染させ、感染したメンバーに抗原を発現させ、その集団の感染メンバーを被験者に導入したとき、抗原と関連した病原体への将来の曝露に対して免疫をつけたいと望む被験者から免疫応答が誘導されるようにする。
【0026】
本発明の実施には、別に指示されないかぎり、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子組換え生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来技術が用いられ、これらは当分野の技術の範囲内である。これらの技術は文献中に記載されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual, 第2版、Sambrook,FritschおよびManiatis編 (Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989); DNA Cloning, 第 IおよびII巻 (D. N. Glover編、1985); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait編、1984); Mullisら、米国特許第4,683,195号; Nucleic Acid Hybridization (B. D. HamesおよびS. J. Higgins編 1984); Transcription And Translation (B. D. HamesおよびS. J. Higgins編 1984); Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); Methods In Enzymology全書(Academic Press, Inc., N.Y.); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. MillerおよびM. P. Calos編 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); Methods In Enzymology, 第154および155巻 (Wuら編), Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (MayerおよびWalker編 Academic Press, London, 1987); Handbook Of Experimental Immunology,
第I-IV巻 (D. M. WeirおよびC. C. Blackwell編 1986); Manipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986); Applications and Products 2001: Density Gradient Media (Axis-Shield PoC AS, Oslo, Norway, 2001)を参照されたい。
【0027】
本発明の他の構成および効果は、例証として本発明の原理を説明する添付の図面と併せて、以下の発明の詳細な説明から明白になるであろう。
【0028】
3. 図面の簡単な説明
本明細書の最後に記載する。
【0029】
4. 発明の詳細な説明
本発明は一つには、生存能のある機能性のヘパトサイトおよび肝性幹/前駆細胞で富化された細胞の集団を得る方法に関する。別の関連した本発明の態様は、肝性幹/前駆細胞の同定である。以下に記載される本発明の実施形態は、成人ヒト肝臓からの肝性幹/前駆細胞の同定および単離において成された重大な進歩を伝えるであろう。
【0030】
いくつかの細胞表面タンパク質は、ヒト胎児肝臓から単離された肝性幹/前駆細胞によって発現されることが確認されている。同一の表面抗原が新生児、小児、および成人のヒト肝臓での少ない割合の細胞によって発現されることが見いだされている。磁気細胞選別技術はその表面抗原の1つを発現している細胞を大幅に富化するために利用される。このアプローチによって単離された細胞は、ある種の大きい(成熟した実質細胞より大きい)、好酸性の肝細胞を肝臓の補充細胞として同定された以前の齧歯類の肝性幹/前駆細胞の研究(米国特許第5,559,022号)とは対照的に、成熟したヘパトサイトより平均してずっと小型のサイズである。更に、その細胞の大多数はまた、胎児の肝性幹/前駆細胞に特徴的な第2の抗原をも発現する。齧歯類の肝性幹/前駆細胞の増殖を厳密に選択し、より成熟した肝細胞の増殖を制限する条件下で培養した場合、選別された成人ヒト細胞は増殖能力の向上を示す。更に述べると、選別された集団中の単一細胞から増殖したコロニーの解析は、ヘパトサイトと胆管細胞系統の両方に特徴的なタンパク質の発現を示し、両能性の肝性幹/前駆細胞と期待される。
【0031】
特徴的な表面抗原を発現している細胞が、採取前に数時間の重度の酸素欠乏を受けた(心臓の拍動していないドナー由来の)肝臓に依然として存在することは、本発明において顕著な特徴である。実際、肝性幹/前駆細胞は成熟ヘパトサイトよりかなり虚血に対して耐性があるようである。更に、不全収縮期のドナー由来の全肝臓細胞調製物は通常、著しく増加した数の組織損傷および炎症反応に関連した細胞を含むが、本発明の方法によって高度に肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性肝臓細胞で富化することは、まだ依然として実現可能である。本発明の好ましい実施形態では、肝臓から得られた選択された種類の細胞を更に単離または除去するために、免疫選択および磁気選別技術が利用される。
【0032】
生存能のある機能性のヒト肝臓細胞で富化するために用いられる本発明の方法は、全肝臓細胞調製物または肝臓の切除物から調製されたものに直接適用できる。本方法は迅速であり、良好な細胞収量および生存能を与え、数百億の細胞を処理するよう拡大できる。単離された細胞は迅速に凍結保存され、解凍した際それらの生存能を保持する。
【0033】
本発明は、生存能のある肝臓細胞が、肝臓が全臓器移植に使用できない心臓の拍動していないドナーの肝臓を含む様々な肝臓供給源から死後に単離できることを実証する。本発明の肝臓細胞集団は不全収縮期のドナーから得ることができるため、本発明は、肝臓細胞移植または細胞療法への使用に適したドナー臓器のプールを劇的に拡張するであろう。表1は心臓の拍動しているドナーおよび不全収縮期のドナーからの収量を要約する。
【表1】

【0034】
4.1. 本発明の単離方法および標準的な(従来の)方法との比較
細胞は、精製された状態のコラゲナーゼであるLiberase(商標)により組織を灌流すること、およびその結果生じる細胞懸濁体を回収することによって、全ドナー肝臓またはその切除物から単離される。死亡した細胞から生存細胞を分離するために2つの方法が検討される。本発明の新規の方法では、肝細胞懸濁体のアリコートを等容量のイオジキサノールの溶液(OptiPrep(商標)、60%イオジキサノール水溶液、Axis-Shield, Noway)と混合し、以下のように2000 rpm(約500 x g)で、Cobe 2991(商標)細胞洗浄機(Blood Component Technology, Lakewood, COから入手可能)で、15分間室温で遠心分離する。
【0035】
滅菌した500 mlビンに208.5 mlのOptiPrep(商標)、291.5 mlのフェノールレッド不含RPMI-1640を加える。これは結果として1.12の密度を有する25%イオジキサノール溶液を生じる。重量に基づく細胞の容量を計算した後、10 x 109の合計細胞数(40 x 106 細胞/ml)で、250 mlの最終容量になるように、十分なフェノールレッド不含RPMI-1640を加える。250 mlの25%イオジキサノールを加え、穏やかに撹拌してよく混合する。その結果生じたイオジキサノール細胞溶液をCOBE 2991(商標)細胞洗浄機プロセシングバッグ中に重力供給する。100 mlのフェノールレッド不含RPMI-1640をイオジキサノール細胞溶液上にペリスタポンプを20 ml/minの速度で用いて、バッグを回転させながら重層する。2000 rpm(約500 x g)で合計15分間遠心分離する。その結果イオジキサノール細胞溶液およびフェノールレッド不含RPMI-1640の境界面に生じる肝細胞バンドはペレット化物質とは別々に回収される。
【0036】
上述の条件につながる別の実験では、出発原料の密度ならびに選択された遠心分離バンド(「Umix」バンドと呼ぶもの、「勾配内容物」バンド、およびペレットを含む)の密度を測定する。目的のバンド、「Umix」バンドは1.0607の密度を有することが見いだされた。この密度の値は出発原料(1.0792)、「勾配内容物」バンド(1.0792)およびペレット(1.1061)で見られるものより低い。その結果、目的の細胞を遠心分離後に直接その上に安定させるであろう勾配を提供するためには、11.59%のイオジキサノール溶液が必要であることが決定された。
【0037】
肝臓細胞調製のための標準的な方法の1つでは、肝細胞懸濁体のアリコートを等張のパーコール(Sigma, MO)と混合し、最終濃度22.5%パーコールにする。100 x g、5分間4℃でSorvall RC3B遠心分離機での遠心分離に続いて、ペレットを回収する。従来の方法の教示では、上清は生存能がより低い細胞を含み、そして一般的により多くの細胞破片を含むとこれまで考えられてきたため、上清は廃棄されることに注目すべきである。比較の目的のため、上清を回収し、5倍希釈し、300 x g 5分間4℃で遠心分離し、その結果生じるペレットを回収する。肝臓細胞調製のための他の主要な標準的方法は、肝臓の酵素消化によって肝臓細胞懸濁体を単離することおよびその後、細胞を一般的に約50 gで低速遠心分離することである。ペレット化された細胞は保持され、上清中の細胞は廃棄される。
【0038】
トリパンブルー排除は、パーコール上清(40〜60%の範囲)と比較して、100 x gパーコールペレットが生存能のある細胞で富化されている(70〜90%の範囲)ことを示す。対照的に、本発明のOptiPrep(商標)勾配については、ペレット化物質(通常20%以下)と比較して、最も上層のバンドの細胞が生存能のある細胞で富化されている(80〜90%)。Coulter Counterを用いたサイズ解析は、9〜13μMの直径範囲でペレットより大規模な細胞集団を含むパーコール上清と比較して、パーコールペレットでより大型の細胞(直径18〜22μM)の富化を示す。OptiPrep(商標)勾配からの最も上層のバンドは直径18〜22μMおよび直径9〜13μMの細胞の両方を含む。OptiPrep(商標)ペレットのサイズ分布測定は大量の破片のため困難である。これらの細胞のEP-CAM免疫染色後の蛍光活性化細胞選別(FACS)解析は、パーコールによる沈殿がEP-CAM陽性染色細胞の減少を引き起こし、これらの陽性細胞はパーコール上清に残存することを示した。OptiPrep(商標)勾配の最も上層のバンドは、パーコール上清と同様にEP-CAM陽性細胞の集団を有する。コロニー形成アッセイは、パーコールペレットに細胞のコロニー形成が実質的に見られず、一方、パーコール上清がOptiPrep(商標)勾配の最も上層のバンドに相当するレベルのコロニー形成能を有することを示す。このコロニー形成能はEP-CAM陽性染色と相関し、EP-CAM陽性細胞での富化はまた細胞調製物のコロニー形成能も富化する。
【0039】
図1で説明されるように、新規のOptiPrep(商標)分画法のCoulter Counterサイズ分画プロファイルは細胞の2つのピークを示す。すなわち、相対的に小型の(通常、直径9〜13μmの範囲)および大型の(通常、直径18〜22μmの範囲)と本発明者らが呼んでいるものである。小型の細胞集団は幹/前駆細胞を含み、これらの細胞は約10μmのサイズである。これら2つの細胞集団の相対量は、ピーク集団の平均サイズミクロンと同様に、ドナー肝臓によって変化する。
【0040】
図2は、標準的なパーコール法の後、より大型の細胞(直径18〜22μm)の相対量が対応する上清(300 x g)よりもパーコールペレット(100 x g)においてより多いことを示す。
【0041】
図3は、ヒトEP-CAMに特異的な抗体で免疫染色した後のFACS解析の結果を示し、パーコールペレット(100 x g)が出発原料(右側のパネル、EP-CAM(+)は集団の0.76%)の5分の1より少ないEP-CAM陽性染色細胞(左側のパネル、EP-CAM(+)は集団の0.12%)しか含まないことを示す。
【0042】
対照的に、図4に示されるように、OptiPrep(商標)分画はEP-CAM陽性染色集団の全体量に影響を与えないようである(それぞれ、分画サンプルおよび未分画サンプルにおけるEP-CAM染色陽性は集団の3.07%および3.06%)。
【0043】
OptiPrep(商標)分画細胞(最も上層のバンド)を出発原料として用いた、2つの異なるドナー肝臓を用いた実験では、本発明者らはまたEP-CAM陽性免疫染色細胞が標準的なパーコール法の後の上清にも残存することを実証する。図5および6で説明されるように、EP-CAM陽性細胞の集団はOptiPrep(商標)分画細胞出発原料およびパーコール上清に相当し、他方、パーコールペレットではこれらの陽性細胞が2〜5分の1に減少している。
【0044】
これらの細胞調製物に存在する幹/前駆細胞に対する生物学的試験として、OptiPrep(商標)分画およびパーコール密度勾配遠心法の後、20,000個の生存細胞/ウェルをSTO支持細胞層上に播種し、ホルモン規定培地で維持し、2週間のインキュベート後にコロニー形成について記録した。EP-CAM免疫反応性が幹/前駆細胞の存在と一致するという本発明者らの主張を更に支持するために、EP-CAM細胞の集団を増加させた場合、その集団におけるコロニー形成数も増加するはずであると本発明者らは考える。この目的で、本発明者らは免疫選択によってこれらの細胞を富化し、それらを本発明者らのアッセイに含める。図7および8に示されるように、本発明者らはEP-CAM陽性細胞を40倍に富化した(出発集団の0.59%がEP-CAM陽性であるが、免疫選択後、集団の24.7%がこのマーカーに関して陽性である)。
【0045】
表2は、本発明者らがEP-CAM陽性細胞を富化した時、実際にコロニー形成も富化することを示す。更に、OptiPrep(商標)分画細胞およびパーコール上清はともにコロニー形成細胞を含むが、パーコールペレットはこれらの細胞を欠如している。
【表2】

【0046】
これらのコロニーが単一細胞から生じたことを裏付けるために、EP-CAM陽性富化細胞に対して限界希釈法を行い、平均1個の細胞を含むウェルを、実質細胞の指標であるヒト・アルブミンおよび胆管細胞と反応するCK19に対する抗体を用いて免疫染色する。図9および10に示されるように、単一コロニーにおけるこれら両方の種類の細胞の存在は、そのコロニーを生じさせた細胞の両能性についての証拠を裏付けている。このような両能性は幹/前駆細胞の機能上の定義である。
【0047】
これらのデータは明らかに、本発明の新規のOptiPrep(商標)分画法が、生存能のある肝性幹/前駆細胞を生存画分に保持すると同時に、生存細胞を死細胞から分離することを示す。対照的に、当分野における標準的なパーコール密度勾配による遠心分離の方法は、これらの細胞をペレットから排除する。パーコール密度勾配を行う条件の改変はあるが、これらの改変のすべては短い遠心分離時間(分)および低い重力加速度(50, 70, 88 x g)を必要とする。従来の方法の目的は大型のサイズの成熟した生存能のあるヘパトサイトの富化のようである。後続のすべての実験にはパーコールペレットが使用されるため(上清は廃棄される)、当分野は一貫してこのような増殖性の幹/前駆細胞の除去された細胞調製物を用いてきた。本発明者らの新規の方法は間違いなく、実行される実験の種類および生じるデータを変え、このことは当分野をさらに進歩させる。これは特に細胞移植の分野に当てはまり、その分野では、肝臓機能を再構築する最大の可能性を有するように、最も高い増殖能力を有する移植細胞を持つことが不可欠であると考えられる。
【0048】
免疫富化(免疫選択)は本発明の肝性幹/前駆細胞の集団を富化する方法のうちの1つにすぎない。モノクローナル抗体は、特定の細胞系統および/または分化段階に関連するマーカー(表面膜タンパク質、例えば受容体)を同定するために特に有用である。対象の幹/前駆細胞を分離するための方法は、抗体で被覆した磁気ビーズを用いる磁気分離、アフィニティークロマトグラフィー、および例えばプレートなどの固形マトリックスに付着させた抗体による「パニング法」、または他の都合の良い技術を含みうる。正確な分離を提供する技術は、蛍光活性化細胞選別を含み、それは様々な程度の高度化、例えば、複数のカラーチャネル、小角および鈍角光散乱検出チャネル、インピーダンスチャネル等を有することができる。
【0049】
不要な細胞集団を本発明の生存能のあるヒト肝臓細胞から除去することも可能である。ヘパトサイトおよびそれらの直前の前駆細胞に加えて、肝臓は、胆管細胞、内皮細胞、組織マクロファージ(クップファー細胞)、星細胞、およびリンパ球を含む、多数の更なる種類の細胞を含む。灌流した肝臓から調製された細胞懸濁体はまた、血液循環由来の少量の残存血液細胞を含む可能性もある。本発明の生存能のあるヒト肝臓細胞調製物では、大部分の細胞は細胞内アルブミンを発現し、従ってヘパトサイトまたはヘパトサイトを生じることができる幹/前駆細胞である。調製物中に残存する細胞内アルブミンを発現しない細胞のうちの大多数は、白血球共通抗原、すなわちリンパ球、単球/マクロファージ、および顆粒球系統のほとんどまたはすべての細胞上、ならびに赤血球前駆細胞上に存在することが知られる抗原である、表面マーカーCD45に対して染色される。CD45を発現すると予想される成人肝臓に存在する重要な種類の細胞は、Tリンパ球、クップファー細胞(体の組織マクロファージの約80%を構成する)、およびおそらくはいくらかの顆粒球を含む。
【0050】
本発明の生存能のあるヒト肝臓細胞からのCD45陽性細胞の除去は、当業者にとって既知の免疫除去法により達成できる。例えば、CD45に特異的なモノクローナル抗体を磁気ミクロスフェアと結合させてもよい。その後、そのミクロスフェアを生存能のあるヒト肝臓細胞と接触させる。CD45陽性細胞はミクロスフェアに結合し、磁場の適用によって除去できる。CD45陽性細胞の除去に適した系の1つは、Miltenyi Biotecから市販されている(Miltenyi Biotec GmbH, Friedrich-Ebert-Straβe 68, D-51429 Bergisch Gladbach, Germany)。Miltenyiの系では、CD45マイクロビーズは(AutoMACSまたはCliniMACSなどの装置において)磁気カラムと併用され、CD45陽性細胞と結合しそれを除去する。これまたはこれと同等の系を用いて、1回の除去で、少なくとも約90〜95%のCD45陽性細胞を除去できる。CD45が除去された細胞集団はまた、ヘパトサイトを含む、接着可能で、上皮細胞に好適な条件下での培養液中で増殖できる、肝臓調製物由来の実質的にすべての細胞を保持する。これらの細胞の多くは無血清培地中でコラーゲン被覆ディッシュに接着でき、いくつかはヘパトサイトの形態を示す。他方、免疫除去を用いて本発明の生存能のある肝臓細胞調製物から除去された磁気選別CD45集団は、接着して肝実質細胞の形態を示す細胞をほとんど持たない。
【0051】
当業者ならば、他のモノクローナル抗体を特異的に特定の不要な細胞集団を除去するために容易に選択できる。例えば、細胞表面マーカーCD3に対する抗体はTリンパ球を除去するために使用できる。同様に、細胞表面マーカーCD14に対する抗体はクップファー細胞などのマクロファージ/単球系統の細胞を除去するために使用できる。
【0052】
都合良いように、抗体は細胞単離を容易にするようにコンジュゲート型で提供されうる。コンジュゲートのための材質は、直接的な分離を可能にする磁気ビーズ、支持体に付着したアビジンまたはストレプトアビジンへの結合による間接的な分離を可能にするビオチン、蛍光活性化細胞選別装置に使用できる蛍光色素を含むが、それらに限定されない。細胞の生存能に過度の悪影響を及ぼさない任意の技術を使用できる。
【0053】
本発明の細胞は、任意のいくつかの凍結保存法による凍結保存で保存できる。一般的に、(上述のように)単離した細胞は、Hypothermosol(商標)(Biolife Solutions, NY)の水性混合物中で所望の濃度に希釈し、所望の保存温度への制御凍結に供することができる。本発明の凍結細胞は液体窒素中で保存することも可能である。
【0054】
4.2. 本発明の細胞の機能性
本発明の肝性幹/前駆細胞を含む肝臓細胞集団を単離し凍結保存した時点で、それらを細胞特異的モノクローナルまたはポリクローナル抗体および蛍光色素とコンジュゲートした二次抗体を利用したフローサイトメトリーによって特徴付けし、存在する細胞型を定量化する。さらに、凍結保存した細胞の機能性を一連のin vitroおよびin vivoエンドポイントで評価する。
【0055】
例えば、本発明の肝性幹/前駆細胞を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)とコンジュゲートしたヒトEP-CAM抗原に対するマウスモノクローナルIgG多型抗体100μL(Serotec Inc, UK)と氷上で反応させる。対照の細胞はマウスIgG-FITCのみで処理される。サンプルは、対照細胞の98%を排除するように蛍光増幅を調整し、488nmの波長に合わせたEPICS Cフローサイトメーター(Coulter Electronics, Hialeah, Fla.)を用いて解析される。様々な細胞集団について前方散乱光(FLS)と側方散乱光(SS)の2パラメーターヒストグラムを用いて枠が設定され、蛍光陽性事象の割合が測定される。
【0056】
in vitroでのエンドポイントは、ミクロソームのシトクロムP-450依存性の第I相酸化反応ならびに共役した第II相コンジュゲーション反応の両方を測定する7-エトキシクマリン代謝、アンモニアを尿素に変換する細胞の能力(肝不全において失われる重要な機能)を評価するための尿素生成、および増殖能力を含む。
【0057】
本発明者らは、in vivoにおける、細胞の長期にわたる生存能力、成熟したヘパトサイトの表現型の確立および維持能力、ならびに肝実質への生着能力を評価した。
【0058】
以下の研究では、重症複合免疫不全症を持つNOD-SCIDマウスを使用し、動物が移植されたヒト細胞を拒絶することを防いだ。ある研究では、細胞を解凍し、それらが付着するマイクロキャリアとともにin vitroでインキュベートした。その後マイクロキャリアをマウスの腹腔内に注射した。1週間後、マイクロキャリア細胞集合体を腹腔から回収し、光学顕微鏡検査のために切片にして染色した。電子顕微鏡検査もまた行った。
【0059】
図11の、NOD-SCIDマウス内でのマイクロキャリアビーズ上のヒト・ヘパトサイトの顕微鏡写真では、明瞭にマイクロキャリアに付着したヘパトサイトを見ることができる。それらの丸い核および大量の明瞭な細胞質に注目されたい。右の矢印は二核細胞を示す。右端の細胞はレシピエントマウスの腹膜由来の、繊維芽細胞の可能性が高い、宿主の間質細胞である。
【0060】
図12は、宿主によって血管新生されたヘパトサイトの大きな島を視覚化するために、より低倍率で撮られた顕微鏡写真を示し、血管新生は赤血球によって裏付けられる。特に注目に値するのは、ひも状の構造物(cords)またはヘパトサイトの列への細胞の明かな組織化であり、これは肝臓組織の断面で容易に観察される構造機構である。
【0061】
本発明の肝性幹/前駆細胞が実際にヘパトサイトへと成熟でき、そして成熟した表現型を発現している証拠は図13に示され、それらの細胞質でのグリコーゲンに対する陽性染色を示している。この場合にも細胞がひも状の構造物に明らかに組織化していることに注目されたい。
【0062】
電子顕微鏡レベルでは、図14においてこのマイクロキャリアに付着した3個のヘパトサイトを識別できる。黒枠は2つの隣接した細胞間の境界面周辺を描画する。その領域の拡大図は、もう一つの成熟ヘパトサイトのマーカーである毛細胆管を表す微小絨毛の構造を示している。
【0063】
図15および16に示された2つの顕微鏡写真は、本発明の凍結保存されたヒト肝臓細胞がNOD-SCIDマウスの肝臓に生着することを実証する。この研究では、1,000,000個の解凍細胞がマウスの脾臓に注射される。移植後の様々な時点で、動物を安楽死させ、ヒト細胞の存在をヒト・セントロメアに対するDNAプローブを用いたin situハイブリダイゼーションならびにPCR解析によって決定した。移植2時間後(図15)、ヒト細胞はin situハイブリダイゼーションによって門脈および肝類洞において明瞭に見ることができる。しかし、それらはまだ血管間隙を通過して肝実質に到達していない。
【0064】
移植40日後(図16)、ヒト細胞は肝臓に残存するだけでなく、肝細胞プレートに生着し肝実質に完全に統合されている。
【0065】
4.3. 肝臓細胞移植
本発明の方法による本発明の細胞での治療の対象集団は、様々な要因によって引き起こされる肝硬変および末期肝臓疾患(ESLD)を有する外来患者である。患者は、肝臓移植なしで6ヶ月以上、2年未満の平均余命を有する。従って、このような患者のほとんどは同所性肝臓移植(すなわち、完全なドナー臓器の移植)の順番待ち名簿に載っていると考えられる。これらの患者は、腹水(腹水症)、出血、錯乱状態(肝性脳症)、感染症およびその他の問題など、これらの疾患の1つ以上の合併症を患っている。対象患者はすべて、完全な肝臓を移植する場合のように、移植される肝臓細胞の拒絶を予防するために免疫抑制治療を受けるであろうと予測される。計画される治療の目的は、全肝臓移植の必要性を遅らせるまたは除くこと、肝臓疾患の合併症のための入院を減少させること、および患者の生活の質を改善することである。
【0066】
基礎および追跡評価は、通常の実験的および臨床的な肝臓機能の評価、ならびに損傷を受けた肝臓の解毒、薬物の代謝およびタンパク質の合成能力の特異的な定量的生化学的評価を含む。移植された肝臓細胞は肝臓と脾臓の両方で集団化すると予想されるので、脾臓の肝臓細胞特異的な検査を定期的に行い、移植された肝臓細胞の生着および増殖を観察する。移植された細胞はドナー細胞に特異的な可溶性抗原を放出する。血中で測定できるこれらの可溶性抗原は、移植された細胞の生存能および機能のさらなる証拠として観察される。
【0067】
細胞移植のために入院する2週間前に、患者は外来で治験責任医師によって診察される。その治験責任医師はインフォームド・コンセントを得て、ABO式血液型分類を含む基礎評価を開始する。患者の血液型は固形肝臓移植または肝臓細胞移植におけるドナー血液細胞と適合しなくてはならない。入院の2日前に、免疫抑制治療を開始する。凍結保存された細胞は病院に送られ、そこでそれらは移植直前まで凍結したまま維持される。
【0068】
細胞移植の前夜、患者は病院に入る。翌朝、患者は侵襲性放射線室に移され、そこで彼/彼女は意識下鎮静法を受ける。患者の(鼡径部の)大腿動脈にカテーテルを留置し、脾動脈に前進させる。ドナー肝臓細胞を解凍し、希釈して、好ましくは注射器によって脾動脈カテーテルに送達する。投与時間は、用量によって、5分から約30分まで変化する。カテーテルを除去し、患者を追加治療のために彼/彼女の部屋に移送する。患者は処置の8時間後に退院する。
【0069】
本発明のヘパトサイトおよび肝性幹/前駆細胞移植は、(生理食塩水などの移植媒体中に含まれる)ヘパトサイトおよび/または肝性幹/前駆細胞を含むある量の生存能のある機能性肝臓細胞を適切な解剖学的部位に注射することによって肝臓機能の復元をもたらすために使用でき、そこでヘパトサイトおよび/または肝性幹/前駆細胞を含む肝臓細胞は、肝実質および/または脾臓などの標的部位内に定着し、ヘパトサイトの機能を含む分化した肝臓機能を発現することができる。そのように移植された、ヘパトサイトおよび/または肝性幹/前駆細胞を含む肝臓細胞の量に応じて、異なる程度の肝臓機能の欠陥が細胞移植を用いた肝臓機能の復元によって修復されうる。ヘパトサイトおよび/または肝性幹/前駆細胞の細胞移植はしかし、単一の酵素もしくは他のタンパク質産物の機能の欠如または減少をもたらす遺伝的欠損に起因する肝臓疾患の治療に最も有利である。このような疾患は、例えば、高脂血症およびα-アンチトリプシン欠乏症を含む。本発明によって治療可能な他の肝臓疾患は、肝炎、肝硬変、先天性代謝異常、急性肝不全、急性肝臓感染症、急性化学薬品中毒、慢性肝不全、細胆管炎、胆汁性肝硬変、肝内胆管閉鎖症、α-1-アンチトリプシン欠乏症、自己免疫肝炎、胆管閉鎖、肝臓癌、肝臓嚢胞病、脂肪肝、ガラクトース血症、胆石、ジルベール症候群、ヘモクロマトーシス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、ポリフィリア、原発性硬化性胆管炎、ライ症候群、サルコイドーシス、チロシン血症、1型糖原病、およびウイルソン病を含む。
【0070】
移植処置を行うために、肝臓細胞を肝実質に移植するための注射部位が選択される。これを達成するための1つの技術において、注射部位は患者の脾臓である。脾臓の位置座標を計算した後、注射器を設置してヘパトサイトおよび/または肝性幹/前駆細胞を含む肝臓細胞を含む移植媒体を脾臓に注射する。その後、移入された細胞は脾静脈を経て肝実質に移動する(Guptaら、Seminars in Liver Disease 12, 321 (1992) 参照)。別の技術では、例えば放射性造影剤の注射後、腹部のCATスキャンによって門脈枝を撮像する。別々の肝葉に養分を供給している門脈枝の位置座標は、その後、移植媒体の門脈枝への注射ひいては特定の肝葉への肝臓細胞の注入のために使用できる。このような選択的注入は他の肝臓を通る持続した門脈血流を可能にする。
【0071】
別法として、本発明のヘパトサイト、胆管細胞、および/または肝性幹/前駆細胞を含む肝臓細胞は、直接肝髄に、脾静脈もしくは門脈を介して、または肝臓被膜の下に注射あるいは注入できる。
【0072】
本発明の細胞を被験体、特にヒト被験者に投与する適切な方法は、本明細書において詳細に記載され、被験者の標的部位への細胞の注射もしくは移植を含み、または本発明の細胞は被験者への細胞の注射または移植による導入を容易にする送達装置に挿入できる。このような送達装置は、細胞および液体をレシピエント被験者の体内に注射するためのチューブ、例えばカテーテルを含む。好ましい実施形態では、チューブは更に針、例えば注射器を有し、それによって本発明の細胞を所望の位置で被験者に導入できる。本発明の肝性幹/前駆細胞を含む肝臓細胞は、このような送達装置、例えば注射器に異なる形態で挿入できる。例えば、細胞は、このような送達装置に収容する際、溶液中に懸濁でき、または支持マトリックスに埋め込むことができる。本明細書において用いられる場合、「溶液」は、本発明の細胞が生存能を維持する薬学的に許容される担体または希釈剤を含む。薬学的に許容される担体または希釈剤は、生理食塩水、水性バッファー溶液、溶媒および/または分散媒体を含む。このような担体または希釈剤の使用は当技術分野において周知である。溶液は好ましくは滅菌された、容易に注射できる範囲の液体である。好ましくは、溶液は製造および保存条件下で安定であり、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの使用によって、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護される。本発明の溶液は、本明細書において記載されるような生存能のある機能性肝臓細胞を薬学的に許容される担体または希釈剤、および必要に応じて上記に列挙した他の成分に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製できる。
【0073】
生存能のある機能性細胞を組み込むまた埋め込むことのできる支持マトリックスは、レシピエントに適合し、レシピエントに対して無害な生成物に分解されるマトリックスを含む。天然および/合成の生分解性マトリックスは、このようなマトリックスの例である。天然の生分解性マトリックスは、例えば哺乳動物に由来する凝固血漿およびコラーゲンマトリックスを含む。合成の生分解性マトリックスは、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの合成ポリマーを含む。他の合成ポリマーの例、および、細胞をこれらのマトリックスに組み込むまたは埋め込む方法の他の例は、当技術分野において公知である。例えば、米国特許第4,298,002号および米国特許第5,308,701号を参照されたい。これらのマトリックスはin vivoにおいて肝臓細胞の支持および保護を提供し、従って、肝臓細胞をレシピエント被験者に導入する好ましい形態である。
【0074】
4.4. 本発明の遺伝子治療
遺伝子治療の臨床試験の結果は、往々にして標的遺伝子の継続した遺伝子発現を得ることができないため、概して医師および患者の両方にとって期待はずれであった。肝性幹/前駆細胞を含む本発明のような肝臓細胞集団は、それらの広範な増殖能力のため、効果的な遺伝子発現を獲得し維持する有望な細胞集団を意味する。ある実施形態では、本発明の遺伝子治療は、外来性遺伝子を細胞内に挿入すること、およびこれらの細胞を患者に移植することによって達成されるであろう。理論上の対象疾患は、高コレステロール血症におけるLDL受容体の欠損、および血友病における凝固因子の欠損のような、患者の肝臓細胞が適切に重要なタンパク質を作ることができないことに起因する疾患である。
【0075】
異なる臓器の真核宿主細胞への外来遺伝子の安定した組込みを達成するための、昨今の試みにおける主要な障害は、これらの細胞のほとんどがin vitroで増殖できないことである。このことは、成熟したヘパトサイトがin vitroで完全な細胞分裂を行わない、または良くても1〜2回しか分裂しないため、肝臓細胞に外来性遺伝子を挿入する試みにとって特に問題である。最近、遺伝子導入の研究が、ヒトでの家族性高コレステロール血症の動物モデルとして広く使用されているWatanabe遺伝性高脂血症ウサギから単離されたヘパトサイトを用いて行われた。それらに相当するヒトと同様に、Watanabeウサギ細胞は低比重リポタンパク質(LDL)受容体に遺伝的欠損を含み、循環中での高レベルのコレステロールおよび早期冠動脈疾患の発生率の増加を引き起こす(Wilsonら、1990, Proceedings of the National Academy of Sciences USA 87:8437)。ウサギ・ヘパトサイトを機能性LDL受容体遺伝子を持っている組換えウイルスに感染させ、移植後に遺伝的欠損ウサギにおける高脂血症の一時的な改善を引き起こすことが示された。もし目的の遺伝子がレシピエント細胞の集団へのより安定した統合を達成でき、その集団が実質的に細胞分裂できるならば、この形態の治療の成功率を更に増加させられると考えられている。本発明の肝性幹/前駆細胞は、特に、実質細胞が未発達の間質細胞とともに共培養される、本明細書に記載された系においてより長期間in vitroで増殖するため、これらの細胞は培養液中で外来性遺伝子の導入のためのレシピエントとして理想的な候補でありうる。
【0076】
様々な先天性代謝異常は肝臓細胞における遺伝性の遺伝子欠損によって引き起こされる。これらの疾患は、正しい遺伝子の機能的コピーを持つ本発明の肝臓細胞の移植によって治療されうる。簡潔に述べると、この方法は、特定の欠陥に悩まされる患者から肝性幹/前駆細胞を含む本発明の肝臓細胞を単離すること、遺伝的欠陥を修正するために従来の遺伝子導入技術によってこれらの細胞に機能的遺伝子を導入すること、安定な組込みおよび所望の遺伝子産物の発現を確認すること、ならびにその細胞を同一のまたは他の患者自身の肝臓に再構成のために移植することを含む。このアプローチは、単一遺伝子の欠陥がその疾患の原因であり、欠陥のある遺伝子が同定され分子的にクローニングされている状況において特に適切であるが、このアプローチはこうした状況だけに限定されるものではない。自家移植における遺伝子治療に加えて、機能的遺伝子を持つ本発明の肝性幹/前駆細胞はまた、同種HLA適合個体にも移植されうる。この形態の治療を受けることのできる標的遺伝子およびそれらが関連する肝臓疾患の例は、家族性高コレステロール血症におけるLDL受容体遺伝子、血友病におけるVIII因子およびIX因子に対する凝固因子遺伝子、気腫におけるα-1-アンチトリプシン遺伝子、フェニルケトン尿症におけるフェニルアラニン水酸化酵素遺伝子、高アンモニア血症におけるオルニチン・トランスカルバミラーゼ遺伝子、および様々な形態の補体欠損症における補体タンパク質遺伝子を含むが、これらに限定されない。
【0077】
肝臓は多くの分泌タンパク質の産生の中心である。様々なタンパク質の血流中への効率的な放出を可能にするように、肝臓は解剖学的に循環系と連結されている。従って、全身的作用を持つタンパク質をコードする遺伝子は、通常それらを産生する特異的な種類の細胞に代わって、特にこれらの細胞に遺伝子を組み込むことが困難である場合、本発明の肝臓細胞に挿入されうる。例えば、様々なホルモン遺伝子または特異的な抗体遺伝子は、それらの遺伝子産物を循環中に分泌するために本発明の肝臓細胞に挿入されうる。
【0078】
本発明の実施のために、上述の方法によって単離された本発明の肝臓細胞は遺伝子導入実験のレシピエントとして使用される。その細胞は外来性遺伝子の導入の前、間、または後に培養液中で増殖されうる。これらの細胞のin vitroでの分化は、造血幹細胞の培養における白血病抑制因子の使用と類似の方法で、サイトカインの添加によって最小限に抑えられる。
【0079】
本発明の培養細胞への外来性遺伝子の導入のために、任意のクローニングされた遺伝子を従来の技術を用いて導入でき、該従来技術はマイクロインジェクション、トランスフェクションおよび形質導入を含むがこれらに限定されない。更に、肝臓細胞がアシアロ糖タンパク質に対する受容体を発現する場合、目的の遺伝子を含むプラスミドをアシアロ糖タンパク質にコンジュゲートさせ、細胞に添加し、取り込みおよび発現を誘導させることができる(Wuら、1991, Journal of Biological Chemistry 266:14338)。この方法はレシピエント細胞に対してより穏やかである。
【0080】
好ましい遺伝子導入の方法は、レトロウイルスおよびアデノウイルスなどの組換えウイルスを利用する。例えば、アデノウイルス発現ベクターを用いる場合、コード配列はアデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーターおよびトリパータイトリーダー配列にライゲーションされうる。このキメラ遺伝子はその後、in vitroまたはin vivoでの組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入されうる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えばE1またはE3領域)への挿入は、生存能があり感染させた肝臓保存細胞において遺伝子産物を発現できる組換えウイルスを生じる(例えばLoganおよびShenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659を参照)。別法として、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーターが使用されうる(例えばMackettら、1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:7415-7419; Mackettら、1984, J. Virol. 49:857-864; Panicaliら、1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:4927-4931を参照)。特に興味深いのは、染色体外エレメントとして複製する能力を持つウシ乳頭腫ウイルスに基づくベクターである(Sarverら、1981, Mol. Cell. Biol. 1:486)。このDNAの細胞への侵入直後に、プラスミドは細胞当たり約100〜200コピーに複製する。挿入されたcDNAの転写はプラスミドの宿主染色体への組込みを必要とせず、よって高レベルの発現をもたらす。これらのベクターは、プラスミドに選択可能なマーカー、例えばneo遺伝子などを含むことによって、安定した発現のために使用され得る。別法として、本発明の肝性幹/前駆細胞に目的の任意の遺伝子を導入し、発現を誘導することができるベクターとして使用するために、レトロウイルスゲノムが改変され得る(ConeおよびMulligan, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6349-6353)。高レベルの発現はまた、メタロチオネインIIAプロモーターおよび熱ショックプロモーターを含むがそれらに限定されない、誘導性プロモーターを用いることでも達成されうる。
【0081】
長期にわたる高収率の組換えタンパク質の産生のためには、安定した発現が好ましい。ウイルスの複製起点を持つ発現ベクターを用いるよりむしろ、本発明の肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性肝臓細胞は、適切な発現制御エレメント(例えばプロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)および選択可能なマーカーにより制御されたcDNAによって形質転換され得る。組換えプラスミドの選択可能なマーカーは、選択に対して耐性を与え、細胞がプラスミドをそれらの染色体内に安定に組み込むことを可能にし、増殖して焦点を形成することを可能にし、これらは順次クローニングして細胞株へと拡大できる。例えば、外来DNAの導入に続いて、操作された肝臓細胞は1〜2日間富化培地で増殖させることが可能であり、その後、選択培地に切り換えられる。多数の選択系を使用でき、その選択系は単純ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ(Wiglerら、1977, Cell 11:223)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(SzybalskaおよびSzybalski, 1962, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:2026)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、1980, Cell 22:817)遺伝子を含むがこれらに限定されない。選択の基礎として代謝拮抗物質耐性もまた使用でき、メトトレキサートに対する耐性を与えるdhfr遺伝子(Wiglerら、1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567; O'Hareら、1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527)、ミコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt遺伝子(MulliganおよびBerg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072)、アミノグリコシドG-418に対する耐性を与えるneo遺伝子(Colberre-Garapinら、1981, J. Mol. Biol. 150:1)およびハイグロマイシンに対する耐性を与えるhygro遺伝子(Santerre, et al., 1984, Gene 30:147)などが挙げられる。最近、更なる選択可能な遺伝子が開示された。すなわち、細胞がトリプトファンに代わってインドールを利用することを可能にするtrpB遺伝子、細胞がヒスチジンに代わってヒスチジノールを利用することを可能にするhisD遺伝子(HartmanおよびMulligan, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047)、およびオルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン、DFMOに対する耐性を与えるODC遺伝子(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue L., 1987, In: Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory編)である。
【0082】
ノーザンブロットおよびELISAなどの技術によりその遺伝子産物の発現によって測定されるような、特定の遺伝子を組み込んだ本発明の肝臓細胞は、上述のように、細胞がもともと由来する患者またはHLAの適合する個体に移植されうる。HLAの適合する同種移植については、肝臓保存細胞は必ずしも移植前に遺伝子導入を必要としない場合もありうる。例えば、凝固因子VIIIをコードする機能的遺伝子を有するドナーから得られた肝臓保存細胞は、直接HLAの適合する血友病患者への移植に使用されうる。移植される細胞は恐らく増殖し、凝固因子VIIIの産生を含む正常な肝臓機能を担う成熟したPCを生じるであろう。
【0083】
肝臓の遺伝子の欠陥を修正するための本発明の肝臓細胞の使用に加えて、これらの細胞は上述のように、肝硬変の場合に幹実質を補充するために使用され、またはこれらは肝臓特異的な感染症に対して操作されうる。例えば、感染していない肝性幹/前駆細胞が早期肝炎患者から得られ、肝炎ウイルスの複製に関連する重要な遺伝的エレメントに相補的なアンチセンスRNAをコードする遺伝子のレシピエントとして使用されうる。細胞はその後患者に移植され、ウイルスの蔓延を制御し、正常な肝臓機能を修復しうる。
【0084】
4.5. ゲノミクスおよび研究用途
本発明の肝臓細胞技術は、新しい薬剤を同定するため、ならびに薬剤の開発および試験法におけるツールとしての用途を有する。肝性幹/前駆細胞は増殖させて成熟した肝臓細胞に分化させることができる。肝臓細胞系統の様々な段階での遺伝子発現パターンの決定は、創薬のためのゲノム情報を提供する。例えば、この情報は創薬計画のための新しい標的を同定するために使用され、または治療において用途を有しうる生物学的機能を果たすタンパク質を同定するために使用され得る。
【0085】
薬剤の試験および開発法のためのツールとして、開発が検討されている薬剤に起因する遺伝子発現パターンの変化を評価するために、肝臓細胞およびそれらの子孫を使用してもよい。可能性のある薬剤による遺伝子発現パターンの変化を、肝臓に作用する既知の薬剤に起因するものと比較してもよい。これは、製薬会社が開発過程の早い段階で肝臓に対する化合物の効果についてスクリーニングすることを可能にし、時間と費用を節約するであろう。前駆細胞から成熟細胞までの完全な肝臓細胞系統はまた、薬剤の肝臓に対する毒性試験のため、およびどのように薬剤が代謝されるかを研究するためにも使用されうる。現在、製薬会社は毒性試験のための肝臓細胞の一貫した供給を得ることが困難である。本発明の方法はこの必要性に答えるものである。
【0086】
4.6. 肝臓支援装置
本発明の肝性幹/前駆細胞技術は、肝臓支援装置(「LAD」)の開発において用途を有する。LADは、短期間(7〜30日間)肝臓機能を提供することによって急性肝不全の患者の治療を提供するよう設計され、患者自身の肝臓が障害から回復するために十分な時間を与え、または移植への橋渡しを提供する。
【0087】
他者による臨床的に有用なLADの試みは、多種多様なバイオリアクター型においてブタ・ヘパトサイトまたはヒト腫瘍に由来する低分化肝臓細胞を利用している。これらの装置は将来性を示しはしたが、いずれも、本発明者らの細胞が克服するであろう制限を有する細胞を使用する。ブタ・ヘパトサイトは、容易に得られるが、例えば、分泌されるブタタンパク質に対する免疫反応、限られた生存期間および非ヒトウイルスなどの、深刻な制限を有する。肝臓腫瘍細胞は容易に増殖させられるが、正常な肝臓細胞の機能の一部しか保持せず、安全上の懸念を伴う。ドナー臓器からの機能性ヒト肝臓細胞は、ドナー肝臓の不足のためにこれまで代替手段にはなっていなかった。本発明のヒト肝臓前駆細胞を用いたLADは、今日までに経験されてきた多くの問題を克服するであろう。これらの細胞によって分泌されるタンパク質はヒト起源であるので、免疫反応は最小限に抑えられるであろう。前駆細胞は培養液中で大規模に分裂できるので、1つのドナー肝臓由来の細胞は多くのLADを供給し得る。最も重要なことには、これらの細胞は臨床的有用性に必要な幅広い肝臓機能を示すはずである。
【0088】
本発明の細胞に適したLADの例は、国際特許出願番号PCT US00/15524に開示されている。
【0089】
4.7. 本発明のワクチンの製造
本発明の肝臓細胞はまた、ワクチンの製造にも利用され得る。例えば、複製に欠陥のあるウイルス(例えばあるレンチウイルス、Naldiniら、Science 272:263-267, 1996参照)をヒト肝臓細胞に感染させるために使用でき、該欠陥ウイルスは1つ以上の特異的なタンパク質抗原をコードする遺伝子を持つよう更に改変されている。特異的なタンパク質抗原は、必要とされる免疫応答の種類に応じて選択される。基本的には、本発明の肝臓細胞に組換えウイルスを感染させる。感染した細胞はその結果、タンパク質抗原を発現し、それに対する免疫応答が開始される。(抗体または細胞性の)免疫応答はC型肝炎などの病原体に対して誘導されることが期待される。感染した細胞に曝露された被験者はその結果、その病原体から保護される。細胞性免疫応答を誘導するためのC型肝炎非構造タンパク質をコードする組換えセムリキ森林熱ウイルスの使用の開示については、Bristerら(J. Gen. Virol. 83 (Pt. 2):369-381, 2002)を参照されたい。
【実施例】
【0090】
5. 実施例
5.1. 方法の要約
すべての肝臓の処理を、無菌法および優良な調製法に従い、クラス10,000の部屋に設置されたクラス100のフード内で行った。肝臓に接触するすべての部品を滅菌状態として購入し、または組み立て後にガス滅菌もしくはオートクレーブ滅菌に供した。
【0091】
5.2. 初期の処理
肝臓は、VIASPAN(商標)(http://www.viaspan.com/viaspan/pdfを参照)に沈められ、クーラー内の湿った氷上で3重に袋詰めされた状態で入手した。生物学的安全キャビネット(BSC)において、肝臓の重量を測定し、その全体の外見を記録した。VIASPAN(商標)のサンプルを無菌試験に供した(VIASPAN(商標)は臓器の洗浄および保存のための冷却溶液として有用である)。肝臓を滅菌した容器に移し、抗生物質洗浄液(0.1 mg/mLゲンタマイシンおよび5 mg/mLセファゾリン)に5分間浸した。この処置の間に、肝臓を上下ひっくり返して、確実に両側を浸した。
【0092】
肝臓を持ち上げ、容器の上で総量2 Lの滅菌生理食塩水で2回リンスした。その後、肝臓を別の滅菌した容器に移した。大静脈を2つの滅菌した使い捨てのプラスチック臍帯クランプを用いて挟み、門脈および/または肝動脈に、様々なサイズのプラスチック径違い継手/連結器で作製された予め滅菌したカニューレを挿入した。(肝葉の先端からの)少量の生検を組織観察に供した。肝臓を灌流槽に移し、温めた(≦37℃)キレート化バッファーで15分間、肝臓の最大膨張を可能にする流速(一般的に120〜240 mL/min)で灌流した。灌流期間の終わりに、バッファーを灌流槽の底に位置する排水口から排出した。
【0093】
5.3. 灌流および消化
その後、肝臓をLIBERASE(商標)CI(コラゲナーゼおよびエラスターゼを含む酵素製剤)を含む灌流液で30分間、28〜37℃で消化した。消化の終わりにLIBERASE(商標)含有バッファーを排出し、肝臓を冷却した血清含有回収バッファーで灌流し、酵素による消化を停止させた。最後の灌流後、バッファーを廃液容器に排出し、槽を新しい血清含有回収バッファーで満たした。滅菌したステンレス鋼の外科用メスを用いて肝臓被膜に切り込みを入れ、組織をもみ出して(20分より長くは行わない)、細胞の解離を促進させた。消化済みの組織からすべての細胞がバッファー内に解離したと思われる時点で、その結果生じた細胞懸濁体をプレフィルター、ならびに一連の1000、500、250および150μmの予め滅菌したステンレス鋼のふるいに通し、その後、氷上で冷却した4リットルの血液バッグに回収した。粗製の細胞懸濁体を、生存能、濃度、全細胞数、組織グラム当たりの収量および無菌性を調製過程で試験するためにサンプリングした。
【0094】
5.4. 下流の処理
粗製の細胞懸濁体を無菌的に適切な数の600 mL血液バッグに移し、800 x gでの遠心分離によって濃縮した。等容量の細胞濃縮物およびOPTIPREP(商標)溶液(25%イオジキサノール)を混合し、COBE 2991細胞洗浄機を用いることによって、濃縮した細胞懸濁体を生細胞で富化した。2000 rpm 15分間の遠心分離後、所望の細胞集団は上端に移動してバンドを形成した。そのバンドを無菌的に回収し、望ましくは200 mL/バッグを越えない容量で、適切な数の600 mL血液バッグに分配した。その後、バッグの容量をRPMI 1640で500 mLに希釈した。バッグを800 x gで10分間遠心分離し、上清を絞り出す。その結果生じたペレットの重量を測定し、500 mLの最終容量に達するように十分量のRPMI 1640を加え、800 x gで10分間遠心分離した。上清を除去した後、洗浄後のペレットの重量を測定し、細胞計数および生存能のためにサンプリングし、6 x 107 個/mL の濃度になるようにHTSに再懸濁した。多数の細胞のために複数のCOBEの稼働が必要な場合、各々の稼働から回収したバンドをプールした。
【0095】
5.5. 充填および保存
細胞をその後、ラベルした33-mLのフッ素樹脂凍結保存バッグに手作業で(1.5 mLの充填容量で)充填し、続いて等容量の凍結保存バッファー(HTS: DMSO: ヒト血清60:20:20)と混合し、3 x 107 個/mL、10%DMSOおよび10%ヒト血清の最終濃度を得た。Cryomedプログラム可能フリーザーを用いてこれらのバッグを冷凍し、凍結細胞を気相窒素フリーザーで保存した。少なくとも冷凍の24時間後に、サンプルをフリーザーから引き出し、放出試験のために指定された試験施設に送った。
【0096】
5.6. 工程のフローチャート
行われた調製方法を記載したフローチャートを下記に示す。
【0097】
5.7. 臨床現場での投与
臨床的な供給は、-120℃またはそれより低い温度を維持できる気相液体窒素シッパーで臨床現場に送られた。細胞懸濁体を含む凍結保存バッグは患者の準備が整うまでシッパー中で維持された。使用前に、製品をシッパーから取り出し、37℃で急速解凍して氷上に置いた。その後包装を取り、標準的な病院の無菌処置を用いて、細胞懸濁体を患者に投与する前に凍結保存バッグ内で冷却したPlasma-Lyte(登録商標)Aによって10倍希釈した。この方法は注入の前に細胞を洗浄する必要性を排除し、無菌状態を損なう危険性を最小限にする。患者に施行する本発明のある実施形態は、3 x 106 個/mLの細胞を含み、更にPlasma-Lyte(登録商標)中にDMSO(1%)、ヒト血清AB(1%)、HypoThermosol(登録商標)(4%〜8%)およびフェノールレッド不含RPMI(0%〜4%)を含む。
【0098】
5.8. ブタ肝臓細胞の単離
上述のような細胞懸濁体の濾過および回収の方法を、ブタ肝臓のサンプルに対しても行った。
【0099】
サンプルの生存能、密度および収量について検査した。計算を行った後、100億個の細胞が取り出される。密度が25,000,000 個/mLより低い場合、Sorval RC3B遠心分離機、Sorval centritech、またはCOBE 2991細胞処理装置のいずれかを用いて細胞を濃縮した。そのペレットを250 mLのフェノールレッド不含RPMI 1640培地に再懸濁した。その細胞懸濁体を600 mL血液バッグに移し、等容量(250 mL)のフェノールレッド不含RPMI 1640に希釈した25%イオジキサノール (Opti-prep(商標)、http://www.nycomed-diagnostics.com/gradmed/optiprep/opti1.html参照)を添加した。2つの溶液を完全に混合し、低温に保った。
【0100】
COBE 2991細胞処理装置は単一処理セットを用いて調整した。細胞懸濁体はそのセットの赤い線を用いて重力供給した。ドーナツが充満された時点で、2000 rpm 15分間の遠心分離を開始した。遠心分離を開始する際に、100 mLのRPMI 1640培地を勾配の上端にペリスタポンプを用いて20 mL/minで重層し、混合バンドのバッファーとして作用させた。15分後、上層のバッファーは100 mL/minの速度で廃液バッグに「移され」、上端の細胞バンドを回収バッグに回収した。ペレットもまた、必要に応じて、今後の解析のために回収した。上端の細胞バンドを氷上に置き、生存能および収量のためにサンプリングした。すべての未分画ブタ・ヘパトサイトを処理するまで、この工程を繰り返した。すべてのバンドを回収し一緒にプールしたら、その後、合わせた回収細胞バンドを、回収バッファーに希釈し、3000 rpmで10分間 Sorval RC3Bを用いて遠心分離することにより洗浄した。その結果生じる沈殿を凍結保存バッファーに30,000,000/mLの密度で再懸濁した。必要に応じて、アリコートをバッグおよび/またはバイアルに入れた。最終ブタ細胞調製物は速度制御フリーザーの液体窒素中で保存した。
【0101】
本発明は例示した実施形態によって範囲が限定されず、それは本発明の個々の態様の説明を意図する。実際、本明細書において示され記載されたものに加えて、本発明の様々な改変が、上記の説明および添付図面から当業者にとって明らかになるであろう。このような改変は添付の特許請求の範囲内にあるものとする。
【0102】


【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】新規のOptiPrep(商標)分画法に対するCoulter Counterサイズ分画プロファイルを示し、それは細胞の2つのピークを示す。すなわち、本発明者らが相対的に「小型」(通常約9〜13μmの範囲)および相対的に大型(通常約18〜22μmの範囲)と呼んでいるものである。「小型」の細胞集団は幹/前駆細胞を含み、これらの細胞は約10μmのサイズである。
【図2】標準的な(従来の)パーコール法に対するCoulter Counterサイズ分画プロファイルを示し、より大きい細胞(18〜22μm)の相対存在量は対応する上清(300 x g)よりパーコール沈殿ペレット(100 x g)でより多いことを示す。
【図3】ヒトEP-CAMに特異的な抗体により免疫染色した後のFACS解析の結果を示し、パーコール沈殿ペレット(100 x g)が出発原料(右側のパネル、EP-CAM(+)は集団の0.76%)の6分の1より少ないEP-CAM陽性染色細胞(左側のパネル、EP-CAM(+)は集団の0.12%)しか含まないことを示す。
【図4】ヒトEP-CAMに特異的な抗体により免疫染色した後のFACS解析の結果を示し、OptiPrep(商標)分画がEP-CAM陽性染色集団の全体量に影響を与えないらしいことを示す(それぞれ、分画サンプルおよび未分画サンプルにおけるEP-CAM染色陽性は集団の3.07%および3.06%)。
【図5】標準方法の上清(中央枠)および標準方法の沈殿ペレット(右枠)と比較した、本発明の細胞単離において見いだされるEP-CAM陽性細胞の相対数(左枠)のグラフを示す。結果は9ヶ月齢のドナー由来である。
【図6】標準方法の上清(中央枠)および標準方法の沈殿ペレット(右枠)と比較した、本発明の細胞単離において見いだされるEP-CAM陽性細胞の相対数(左枠)を表すグラフを示す。結果は3歳のドナー由来である。
【図7】免疫選択後のEP-CAM陽性細胞の富化を実証しているグラフを示す。
【図8】免疫選択後のEP-CAM陽性細胞の富化を実証しているグラフを示す。
【図9】単一細胞から増殖したコロニーの様々な染色条件下での顕微鏡写真を示し、本発明の方法によって単離された細胞が肝性幹/前駆細胞であることを実証している。
【図10】単一細胞から増殖したコロニーの様々な染色条件下での顕微鏡写真を示し、本発明の方法によって単離された細胞が肝性幹/前駆細胞であることを実証している。
【図11】NOD-SCIDマウス内でのマイクロキャリアビーズ上の本発明によって得られたヒト・ヘパトサイトの顕微鏡写真を示す。
【図12】宿主によって血管新生されたヘパトサイトの大きな島を視覚化するために、図11の顕微鏡写真より低倍率で撮影された顕微鏡写真を示し、血管新生は赤血球によって裏付けられる。
【図13】本発明の肝性幹/前駆細胞がヘパトサイトに発達することができ成熟した表現型を発現している証拠を示し、それらの細胞質でのグリコーゲンに対する陽性染色を示している。細胞のコードへの明かな組織化に注目せよ。
【図14】宿主に注入されたマイクロキャリアに付着した、本発明によって得られた3つのヘパトサイトを示す。黒枠は2つの隣接した細胞間の境界面周辺を描画する。その領域の拡大図は、もう一つの成熟ヘパトサイトのマーカーである毛細胆管を表す微小絨毛の構造を示している。
【図15】本発明の凍結保存したヒト肝臓細胞のNOD-SCIDマウス肝臓への移植を示した顕微鏡写真を示す。移植2時間後、ヒト細胞はin situハイブリダイゼーションによって門脈および肝類洞において明瞭に見ることができる。細胞はまだ血管間隙を通過して肝実質に到達していない。
【図16】本発明の凍結保存したヒト肝臓細胞のNOD-SCIDマウス肝臓への移植を示した顕微鏡写真を示す。移植40日後、ヒト細胞は肝臓に残存するだけでなく、肝細胞プレートに生着し肝実質に完全に統合されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝性幹/前駆細胞を含む生存能のあるヒト肝臓細胞で富化された細胞の集団を得る方法であって、
(a) ヒト全肝臓またはその切除物をタンパク質分解酵素製剤により消化して、消化済みのヒト全肝臓またはその切除物を得ること、
(b) 消化済みのヒト全肝臓またはその切除物を解離させて細胞の懸濁体を得ること、
(c) 細胞が懸濁している媒体の密度を調整して、遠心分離後に密度障壁により分離された細胞の少なくとも2つのバンドが得られるようにすること、その際、前記少なくとも2つのバンドのうち少なくとも1つのバンドが、前記少なくとも2つのバンドの別のバンドより低い密度のものであること、
(d) より低い密度の少なくとも1つのバンドを集めて、肝性幹/前駆細胞を含む生存能のあるヒト肝臓細胞で富化された細胞の集団を得ること、
を含んでなる方法。
【請求項2】
生存能のあるヒト肝臓細胞で富化された細胞の集団が機能性のヘパトサイトをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生存能のあるヒト肝臓細胞で富化された細胞の集団が機能性の胆管細胞をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生存能のあるヒト肝臓細胞で富化された細胞の集団が機能性の造血細胞をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)が、
(e) ヒト全肝臓またはその切除物を約37℃のキレート化バッファーで約15分間灌流すること、
(f) ヒト全肝臓またはその切除物を、コラゲナーゼと少なくとも1種の他のタンパク質分解酵素を含む酵素製剤により約37℃で約30分以下消化して、消化済み肝臓を得ること、
(g) 消化済み肝臓を4〜15℃の温度の回収バッファーで灌流すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酵素製剤が少なくとも1種の中性プロテアーゼを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記酵素製剤がエラスターゼを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記酵素製剤がLIBERASE(商標)を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記解離が機械的解離を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記解離が肝臓の切断、かき回し、引っ掻き、またはすり潰しによる機械的解離を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)が、
(h) 細胞懸濁体を濾過して細胞の破片および凝集物を除去すること、
(i) 得られた濾過済みの細胞懸濁体を第1のバッグに集めること、
(j) 場合により、濾過済みの細胞懸濁体中の細胞の濃度を測定すること、
(k) 所望により、細胞の濃度を調整して出発細胞懸濁体を得ること、
(l) 出発細胞懸濁体のアリコートを液体媒体中の25%イオジキサノール溶液の等容量と混合して混合液を得ること、
(m) 少なくとも一部の前記混合液を、その上に予め決められた容量の前記液体媒体を重層させて遠心分離にかけ、生存能のあるヒト肝臓細胞が富化された少なくとも1つのバンドを得ること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(d)が、
(n) 前記少なくとも1つのバンドを氷上の容器に集めること、
(o) 場合により、細胞の生存能および濃度を測定すること、
(p) 遠心分離および凍結保存バッファーへの再懸濁により細胞を洗浄して、最終細胞懸濁体を得ること、
(q) 最終細胞懸濁体を速度制御凍結に供して凍結細胞懸濁体を得ること、
(r) 凍結細胞懸濁体を液体窒素フリーザー内に保存すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記回収バッファーが10%ヒトまたはウシ血清を含むRPMI 1640培地からなる、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記濾過ステップが前記細胞懸濁体をフィルターカートリッジに通すことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記液体媒体がフェノールレッドを含まないRPMI 1640培地からなる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記遠心分離を約500xgで約15分行う、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記容器が収集バッグを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
凍結保存バッファーがNa+、K+、Ca2+、Mg2+、Cl-、H2PO4-、HCO3-、HEPES、ラクトビオン酸、ショ糖、マンニトール、グルコース、デキストラン-40、アデノシン、グルタチオン、またはそれらの組合せを含有する混合物を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
凍結保存バッファーが血清およびジメチルスルホキシドをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記混合物、血清およびジメチルスルホキシドが約80:10:10(v/v/v)の比で存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記血清がヒト血清、ウシ血清、またはそれらの組合せを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記媒体の密度を、イオジキサノールまたはイオヘキソールの水溶液を用いて調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記イオジキサノールまたはイオヘキソールの水溶液が、無菌の60%(W/V)イオジキサノール水溶液、および等濃度のイオヘキソール水溶液、またはそれらの組合せを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記媒体の密度を、ショ糖の親水性ポリマーの水溶液を用いて調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記ショ糖の親水性ポリマーの水溶液がフィコール、EDTAカルシウムを含むフィコール-ジアトリゾ酸塩、またはそれらの組合せを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記富化された細胞集団が、約9〜13ミクロンの範囲の直径を有しかつEP-CAM、CD133、またはその両方の発現に関して陽性である肝性前駆/幹細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
機能性のヘパトサイトおよび肝性幹/前駆細胞を含む生存能のあるヒト肝臓細胞で富化された集団を得る方法であって、
(a) 新生児、小児、若年者、成人、または死体のドナーに由来するヒト全肝臓またはその切除物を用意すること、
(b) ヒト全肝臓またはその切除物を約37℃のキレート化バッファーで約15分間灌流すること、
(c) ヒト全肝臓またはその切除物を、コラゲナーゼおよびエラスターゼを含む酵素製剤により37℃で約30分以下消化して、消化済み肝臓を得ること、
(d) 冷却した回収バッファーで消化済み肝臓を灌流すること、
(e) 消化済み肝臓を機械的に解離させて細胞懸濁体を得ること、
(f) 細胞の破片および凝集物を除去するために細胞懸濁体をフィルターカートリッジに通すこと、
(g) 得られた濾過済みの細胞懸濁体を第1のバッグに集めること、
(h) 場合により、濾過済みの細胞懸濁体中の細胞の生存能および濃度を測定すること、
(i) 細胞の濃度を約2500万個/mlに調整して出発細胞懸濁体を得ること、
(j) 第2のバッグ内で、出発細胞懸濁体のアリコート(250mL)を、等容量のフェノールレッド不含RPMI 1640培地中の25%イオジキサノール(OptiPrep(商標))溶液と混合すること、
(k) 得られた混合液(500mL)を、その上に予め決められた容量(60mL)のフェノールレッド不含RPMI 1640培地を重層させて、COBE(商標)2991細胞プロセッサで遠心分離(2000rpm、約500xgで15分)にかけ、生存能のある細胞が富化された少なくとも1つのバンドを得ること、
(l) 前記少なくとも1つのバンドを氷上の第3のバッグに集めること、
(m) 場合により、第3のバッグ内の細胞の生存能および濃度を測定すること、
(n) 第3のバッグ内の細胞を遠心分離して凍結保存バッファーに再懸濁することにより細胞を洗浄して、最終細胞懸濁体を得ること、
(o) 最終細胞懸濁体を速度制御凍結に供して凍結細胞懸濁体を得ること、
(p) 凍結細胞懸濁体を液体窒素フリーザー内に保存すること、
を含んでなる方法。
【請求項28】
前記富化された細胞集団が、約9〜13ミクロンの範囲の直径を有しかつEP-CAM、CD133、またはその両方の発現に関して陽性である肝性前駆/幹細胞で富化される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性肝臓細胞で富化された細胞集団を含んでなる組成物。
【請求項30】
前記肝臓細胞がヒト肝臓細胞または哺乳動物肝臓細胞である、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物がヘパトサイト、胆管細胞、造血細胞、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記肝臓細胞がEP-CAM、CD133またはその両方の発現に関して陽性である細胞を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
前記肝臓細胞が直径約9〜13ミクロンの幹/前駆細胞を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項34】
肝臓から得られる粗製の細胞懸濁体に比べて、生存能のある機能性のヘパトサイトおよび肝性幹/前駆細胞で富化された肝臓細胞の集団を含んでなる組成物。
【請求項35】
前記肝臓細胞がヒト肝臓細胞である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記肝臓細胞の集団が、サイトケラチン19(CK19)の発現に関して陽性でありかつアルブミンの発現に関して陰性である胆管細胞をさらに含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記幹/前駆細胞がEP-CAM、CD133またはその両方の発現に関して陽性である、請求項34に記載の組成物。
【請求項38】
前記集団が単核細胞/マクロファージ系統の細胞(例えばクップファー細胞)、リンパ球(例えばTリンパ球)、内皮細胞、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項39】
前記肝臓細胞の集団が免疫系の細胞を除去したものである、請求項34に記載の組成物。
【請求項40】
前記肝臓細胞の集団が負の免疫選択により免疫系の細胞を除去されている、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記負の免疫選択が、CD45、CD3、CD11bもしくはCD14除去、またはそれらの組合せを利用して造血細胞を除くものである、請求項39に記載の組成物。
【請求項42】
前記除去された免疫系の細胞が単核細胞/マクロファージ系統の細胞(例えばクップファー細胞)、リンパ球(例えばTリンパ球)、またはそれらの両方を含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項43】
前記ドナーの肝臓がある期間にわたる温虚血に付されたものである、請求項34に記載の組成物。
【請求項44】
前記肝臓細胞が不全収縮期のドナーから得られたものである、請求項34に記載の組成物。
【請求項45】
肝臓細胞の集団の少なくとも75%がヘパトサイトおよび肝性前駆/幹細胞を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項46】
生存能のある機能性の胆管細胞および肝性幹/前駆細胞で富化された肝臓細胞の集団を含んでなる組成物。
【請求項47】
前記肝臓細胞がヒト肝臓細胞、ブタ肝臓細胞、またはそれらの混合物である、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記肝臓細胞が不全収縮期のドナーから得られたものであるか、またはある期間にわたる温虚血に付されたものである、請求項46に記載の組成物。
【請求項49】
前記胆管細胞がCK19の発現に関して陽性でありかつアルブミンの発現に関して陰性である、請求項46に記載の組成物。
【請求項50】
肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性の肝臓細胞で富化された細胞の集団を有効な量で投与することを含む、肝臓疾患の治療方法。
【請求項51】
前記投与が脾動脈または門脈から導入することにより行われる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記投与が肝髄に直接導入することにより行われる、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記投与が肝臓被膜の下に導入することにより行われる、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記投与が脾臓に直接導入することにより行われる、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記導入が注入または注射によるものである、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記肝臓疾患が、肝炎、肝硬変、先天性代謝異常、急性肝不全、急性肝臓感染症、急性化学薬品中毒、慢性肝不全、細胆管炎、胆汁性肝硬変、肝内胆管閉鎖症、α-1-アンチトリプシン欠乏症、自己免疫肝炎、胆管閉鎖、肝臓癌、肝臓嚢胞病、脂肪肝、ガラクトース血症、胆石、ジルベール症候群、ヘモクロマトーシス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎および他のウイルス性肝炎、ポリフィリア、原発性硬化性胆管炎、ライ症候群、サルコイドーシス、チロシン血症、1型糖原病、またはウイルソン病を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性肝臓細胞で富化された肝臓細胞の集団および薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物。
【請求項58】
前記肝臓細胞がヒト肝臓細胞、ブタ肝臓細胞、またはそれらの混合物である、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記肝臓細胞が不全収縮期のドナーから得られたものであるか、またはある期間にわたる温虚血に付されたものである、請求項57に記載の組成物。
【請求項60】
前記幹/前駆細胞がEP-CAM、CD133またはその両方の発現に関して陽性である、請求項57に記載の組成物。
【請求項61】
前記幹/前駆細胞が直径約9〜13ミクロンの細胞である、請求項57に記載の組成物。
【請求項62】
前記薬学的に許容される担体がHYPERTHERMOSOL(商標)を含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項63】
前記薬学的に許容される担体がヒト血清およびジメチルスルホキシドをさらに含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項64】
in vitro毒性試験を行う方法であって、
(i) 肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性肝臓細胞で富化された肝臓細胞集団を試験物質に曝露すること、
(ii) 前記細胞集団に対する試験物質の影響を、あるとしたら少なくとも1つ観察すること、
を含んでなる方法。
【請求項65】
少なくとも1つの影響が細胞の生存能、細胞の機能、またはその両方に対する影響を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
in vitro薬物代謝研究を行う方法であって、
(i) 肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性肝臓細胞で富化された肝臓細胞集団を試験物質に曝露すること、
(ii) 予め決められた試験期間の後で試験物質に関係する変化を、あるとしたら少なくとも1つ観察すること、
を含んでなる方法。
【請求項67】
少なくとも1つの変化が試験物質の構造、濃度、またはその両方の変化を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性肝臓細胞で富化された細胞の集団が収められているハウジングを含む肝臓支援装置。
【請求項69】
前記肝臓細胞が免疫系の細胞を除去されている、請求項68に記載の装置。
【請求項70】
遺伝子発現の欠陥を治療する方法であって、
(i) 遺伝子の機能的コピーを、生存能のある機能性の肝性幹/前駆細胞を含むヒト肝臓細胞の集団に導入して、形質転換された集団を得ること、
(ii) 形質転換された集団の少なくとも一部を、該遺伝子の機能的コピーを必要とする患者の肝臓に導入すること、
を含んでなる方法。
【請求項71】
遺伝子の機能的コピーが導入されている生存能のある機能性の肝性幹/前駆細胞を含むヒト肝臓細胞の形質転換された集団を含有する、遺伝子発現の欠陥を治療するための組成物。
【請求項72】
遺伝子の機能的コピーが導入されている生存能のある機能性の肝性幹/前駆細胞を含むヒト肝臓細胞の集団、および薬学的に許容される担体を含有する、遺伝子発現の欠陥を治療するための医薬組成物。
【請求項73】
前記薬学的に許容される担体がNa+、K+、Ca2+、Mg2+、Cl-、H2PO4-、HCO3-、HEPES、ラクトビオン酸、ショ糖、マンニトール、グルコース、デキストラン-40、アデノシン、グルタチオン、またはそれらの組合せを含有する混合物を含む、請求項72に記載の組成物。
【請求項74】
損傷または罹患した肝臓に、有効量の、肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性肝臓細胞で富化されたヒト肝臓細胞の集団を投与することを含む、損傷または罹患した肝臓の再生を高める方法。
【請求項75】
前記投与が脾動脈もしくは門脈からの導入、肝髄への直接導入、肝臓被膜の下への導入、またはそれらの組合せによって行われる、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記投与が脾臓に直接導入することにより行われる、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記導入が注入または注射によるものである、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
肝臓の感染症を治療するのに有効な薬剤について試験を行う方法であって、
(i) 肝性幹/前駆細胞を含む生存能のある機能性肝臓細胞で富化されたヒト肝臓細胞の集団に対象となる病原体を感染させて、感染した細胞集団を得ること、
(ii) 前記感染した細胞集団を、予め決められた量の試験物質に曝露すること、
(iii) 前記感染した細胞集団に対する曝露の影響があるとしたら、その影響を観察すること、
を含んでなる方法。
【請求項79】
前記病原体が微生物を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記病原体が1種以上のウイルス、細菌、真菌またはそれらの組合せを含む、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記観察される影響がウイルス病原体のウイルス複製に対する影響を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記ウイルス病原体が肝炎ウイルスを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
目的のタンパク質を製造する方法であって、目的のタンパク質をコードする機能性遺伝子を、肝性前駆/幹細胞を含む肝臓細胞の集団に導入すること、転写、翻訳および場合により翻訳後修飾が生じるのに効果的な条件下で前記肝臓細胞の集団をインキュベートすること、目的のタンパク質を回収すること、を含んでなる方法。
【請求項84】
前記肝臓細胞がヒト肝臓細胞である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
目的のタンパク質がワクチン用の抗原である、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
ワクチンの製造方法であって、肝性前駆/幹細胞を含む肝臓細胞の集団に、該肝臓細胞の集団の少なくとも一部のメンバーに感染することにより感染したメンバーに抗原を発現させることができる組換えウイルスまたはビリオン粒子を導入することを含んでなり、前記細胞集団の感染メンバーを被験者に導入したとき、該抗原と関連した病原体への将来の曝露に対して免疫をつけたいと望む被験者から免疫応答が引き出されるようにする、上記方法。
【請求項87】
細胞性免疫応答が引き出される、請求項86に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2006−506971(P2006−506971A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−523460(P2004−523460)
【出願日】平成15年7月17日(2003.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/022220
【国際公開番号】WO2004/009766
【国際公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(505024017)ヴェスタ セラピューティクス,インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】