説明

背景画像生成方法及び装置

【課題】移動物体を正確に認識するためのより正確な背景画像を得る。
【解決手段】時系列画像の対応する画素(x,y)について、画素値のヒストグラム26xyを作成し、その最頻値Pm0と更新前の背景画像の対応する画素の値Pbとの差の絶対値が所定値以上であれば、画素値Pbを、更新せずに維持する。移動物体の領域の画素値を除いてヒストグラムを作成してもよい。画像フレーム内にカメラぶれ検出領域を3箇所設定し、フレーム画像と背景画像とを比較して各カメラぶれ検出領域の動きベクトルを求め、該動きベクトルに基づいて、カメラぶれによる画像内各部のシフトを定める座標変換式のパラメータを決定し、該座標変換式に基づいて、該時系列画像に対し該背景画像を相対的に対応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列画像の対応する画素について、画素値のヒストグラムの最頻値に関する値を画素値とする画像を、移動物体認識用背景画像として生成する背景画像生成方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラで移動物体を撮像し、その画像を処理して移動物体を認識し追跡することにより、交通状態や交通事故の検出、駐車場の車の出入り分析、店舗内の客の移動分析等を自動的に行うことができる。
【0003】
この種の方法としては、例えば480×640画素のフレームを8×8画素のブロックに分割して60×80ブロックの画像とし、各ブロックの画像を背景画像の対応するブロックの画像と比較して、ブロック単位で移動物体存否を判定し、時刻t−1とtのフレーム画像の時空相関に基づいてブロック単位で移動物体の識別符号及び動きベクトルを求める方法がある(例えば下記特許文献1〜3)。
【0004】
背景画像は、例えば過去10分間のフレーム画像から選択した時系列画像の各画素(x、y)について、画素値のヒストグラムを作成し、その最頻値を画素値とすることにより得られる(例えば下記特許文献1〜3)。日照変化により撮影対象の輝度が変化するので、移動物体認識を正確に行うためには背景画像を定期的に更新する必要がある。更新周期を短くするほど、日照条件が現在のものにより近くなるので、得られる背景画像が現在の背景をより反映したものとなる。
【0005】
しかしながら、更新周期を例えば1分にすると、次のような問題が生ずる。すなわち、図19に示すようにフレーム画像10において、交差点11の中央部に移動物体12が例えば40秒間一時停止している場合、この部分が背景として認識され、図20に示すような移動物体12(ノイズ)を含む背景画像が作成される。この場合、この背景画像と現フレーム画像とが比較されて移動物体が認識されるので、図19の移動物体12の部分に移動物体が存在しないにも関わらず、移動物体が存在すると判定される。
【0006】
また、背景画像は少し過去のものであるため、次のような問題も生ずる。すなわち、固定したビデオカメラが地震等により揺れた場合に、フレーム画像を背景画像と比較して移動物体を認識すると、背景の一部が移動物体と認識されたり、移動物体とその周囲の背景とが1つの移動物体と認識されたり、移動物体の位置や速度の計測値、或いは移動物体の軌跡が、不正確となる。
【0007】
下記特許文献4では、動きベクトル検出部、手ブレ判定部、アクティビティ判定部を備え、動きベクトルを検出して手ブレ量を補正している。しかし、被写体全体の画像データに基づいて背景を推定しそのシフト量を求めているので、背景のシフト量が不正確になるとともに、処理時間が長くなり、複数の移動物体をリアルタイムで追跡処理する装置にこの方法を適用するのは現実的でない。
【0008】
また、下記特許文献5及び6には照明条件の変化による背景画像の変化の問題が記載されているが、上記ノイズを除去可能な背景画像作成方法については記載がない。
【特許文献1】特開2002−133421号公報
【特許文献2】特開2003−006655号公報
【特許文献3】特開2003−263626号公報
【特許文献4】特開平05−137050号公報
【特許文献5】特開2000−251079号公報
【特許文献6】特開平09−009249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、移動物体を正確に認識するためのより正確な背景画像を得ることができる背景画像生成方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による背景画像生成方法では、時系列画像の対応する画素について、画素値のヒストグラムの最頻値に関する値を画素値とする画像を、移動体認識用背景画像として生成する。
【0011】
本発明による背景画像生成方法の第1態様では、該ヒストグラムに、更新前の背景画像の対応する画素の値の所定頻度を追加し、追加後のヒストグラムの最頻値を、更新後の背景画像の対応する画素の値とする。
【0012】
本発明による背景画像生成方法の第2態様では、該最頻値と更新前の背景画像の対応する画素の値との差が所定値以上であれば、該更新前の背景画像の対応する画素の値を、更新せずに維持する。
【0013】
本発明による背景画像生成方法の第3態様では、該ヒストグラム上の最頻値に対応した頻度の変動の大きさが所定値以上であれば、更新前の背景画像の対応する画素の値を、更新せずに維持する。
【0014】
本発明による背景画像生成方法の第4態様では、該時系列画像と該背景画像とを比較して該時系列画像に含まれる移動物体の領域を認識し、該ヒストグラムでは該移動物体の領域の画素値を除く。
【0015】
本発明による背景画像生成方法の第5態様では、画像フレーム内にカメラぶれ検出領域を実質的に少なくとも3箇所設定し、フレーム画像と該背景画像とを比較して各カメラぶれ検出領域の動きベクトルを求め、該動きベクトルに基づいて、カメラぶれによる画像内各部のシフトを定める座標変換式のパラメータを決定し、該座標変換式に基づいて、該時系列画像に対し該背景画像を相対的に対応させる。
【発明の効果】
【0016】
上記第1態様の構成によれば、背景画像更新周期に対し移動物体が比較的長く一時停止しても、停止した移動物体が背景画像に含まれるのを避けることが可能となる。
【0017】
上記第2、第3態様のいずれの構成によっても、移動物体の一時停止等と考えられる領域のみ背景画像の前回画素値が維持されるので、照明条件変化による背景画像の変化を取り入れるとともに、停止した移動物体が背景画像に含まれるのを避けることが可能となる。
【0018】
上記第4態様の構成によれば、移動物体不存在領域内の画素値のみのヒストグラムに基づいて背景画像の画素値が更新されるので、照明条件変化による背景画像の変化を取り入れるとともに、停止した移動物体が背景画像に含まれるのを避けることが可能となる。
【0019】
上記第5態様の構成によれば、設定された検出領域のみについてカメラぶれを検出すればよいので、短時間で容易かつ正確にカメラぶれ量を検出することが可能であり、これにより、リアルタイムで画像上の移動物体を正確に認識することが可能となる。
【0020】
本発明の他の目的、構成及び効果は以下の説明から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。図面において、同一又は類似の要素には、同一又は類似の符号を付している。
【実施例1】
【0022】
図1は、ビデオカメラ(例えばITVカメラ)13で撮像された画像を処理して移動物体を追跡する移動物体追跡装置20の概略機能ブロック図である。
【0023】
この装置20のうち記憶部以外の処理部は、コンピュータソフトウェア、専用のハードウェア又はコンピュータソフトウエアと専用のハードウエアの組み合わせで構成することができる。
【0024】
ビデオカメラ13で撮影された時系列画像は、例えば30フレーム/秒で画像メモリ21に複数フレームが格納され、最も古いフレームが新しいフレーム画像で書き換えられる。
【0025】
本発明は、画像メモリ21に格納された画像データを構成要素23〜27により、リアルタイムで処理する場合のみならず、不図示の外部記憶装置に格納しておき、必要な部分のみ後で処理する場合にも適用できる。
【0026】
また、画像メモリ21に格納された画像(原画像)を直接、構成要素23〜27で処理しても、ラプラシアンフィルタ等のフィルタをかけて空間的差分フレーム画像に変換したもの又は2次元フーリエ変換し所定周波数以上の成分を強調した後逆フーリエ変換したもの(変換画像)を、構成要素23〜27で処理する構成であってもよい。以下、「画像」とは原画像又は変換画像を意味する。
【0027】
移動物体認識部22は、画像メモリ21に格納されたフレーム画像の、上述の各ブロックについて、記憶部23に格納された背景画像の対応するブロックとの非類似度を算出し、これが閾値以上であれば、移動物体が存在すると判定し、記憶部24に格納されているオブジェクトマップの対応するブロックに移動物体識別符号(ID)を付与する。オブジェクトマップは、画像処理によりブロック単位の情報を取得しこれを記憶したものであり、この情報にはIDの他にブロック単位の動きベクトルが含まれる。動きベクトルは、移動物体認識部22により、時刻t(シリアルフレーム番号)と時刻t−1のフレーム画像を比較して求められる。オブジェクトマップの時系列は、移動物体追跡結果を示しており、装置20の用途に応じてその情報がさらに処理される。
【0028】
オブジェクトマップ作成の詳細は、例えば上記特許文献1〜3のいずれかに記載されたものと同じであるので、その説明を省略する。
【0029】
本実施例1の特徴は、背景画像生成部25の処理方法にあり、以下、これについて詳説する。
【0030】
背景画像生成部25は、画像メモリ21をアクセスし、例えば過去1分間の全ての又は間引かれたもののフレーム画像の対応する画素(x、y)について画素値のヒストグラムを作成し、その最頻値に関する以下に述べる値を画素(x、y)の値とする背景画像を生成する。背景画像は、この処理が周期的、例えば1分毎に行われて更新される。
【0031】
図2は、図1中の背景画像生成部25による処理を示すフローチャートであり、図3は、この処理の説明図である。
【0032】
ここで、背景画像作成に用いられる、時刻t1〜tnの時系列フレーム画像をG0〜Gnで表す。また、時刻tにおけるフレーム画像の画素(x,y)の値をP(t|x,y)、背景画像の画素(x,y)の値をPb(t|x,y)で表す。
【0033】
最初、画素値Pbが格納される背景画像記憶部23及び後述の最大頻度Fが格納される最大頻度分布記憶部27は、全画素についてゼロクリアされている。
【0034】
(S0)画素(x,y)に初期値(0,0)を代入する。
【0035】
(S1)フレーム画像G0〜Gnの画素(x、y)に着目した画素値P(t0|x,y)〜P(tn|x,y)のヒストグラム26xyを、図1のヒストグラムメモリ26に作成する。このヒストグラム26xyの最頻値及びその頻度をそれぞれPm0及びF0とする。
【0036】
ここで、背景画像更新前における補正後のヒストグラム26xyの最頻値及びその頻度はそれぞれ記憶部23及び27に格納されている画素(x,y)についての値Pb(t|x,y)及びF(t|x,y)である。
【0037】
(S2)ヒストグラム26xyをこれらPb(t|x,y)及びF(t|x,y)で補正する。すなわち、ヒストグラム26xyの画素値Pb(t|x,y)の頻度にα・F(t|x,y)を加算することにより、ヒストグラム26xyを補正する。
【0038】
ここにαは1以下の正の定数であり、本実施例1の効果が得られるように経験的に定められ、例えば0.5であって、予め設定されている。この設定は、図1において、マウス等のポインティングデバイス又はキーボード等の入力装置INと、設定を確認する表示装置OUTと、背景画像生成部25に含まれる入力処理プログラムとを含む設定手段により、人の操作に基づいて行われる。
【0039】
初回は各(x,y)について最大頻度F(t|x,y)=0であるので、このステップS2の処理は初回において実質的に意味がないが、初回も2回目以降と同じ処理を行えばよいことになる。
【0040】
なお、図3ではヒストグラムを簡単化して模式的に示している。この点は、他の図のヒストグラムについても同様である。
【0041】
(S3)補正されたヒストグラム26xyの最頻値Pm1を求める。この最頻値Pm1の頻度をF1とする。
【0042】
(S4)背景画像の画素(x,y)の値を最頻値Pm1に更新する。すなわち、Pb(x,y)に値Pm1を代入する。
【0043】
(S5)画素(x,y)について最大頻度分布記憶部27を最大頻度F1に更新する。すなわち、最大頻度F(x,y)に頻度F1を代入する。
【0044】
(S7)(x,y)の値を更新する。
【0045】
(S8)(x,y)がフレーム画像内であればステップS1へ戻る。
【0046】
このような処理により、背景画像記憶部23及び最大頻度分布記憶部27の内容が更新される。
【0047】
なお、初回は補正されないので、最初に作成する背景画像は、移動物体が存在しない時が好ましい。
【0048】
例えば、更新周期60秒のうち25秒間は、図19において移動物体12が交差点中央部に一時停止しなかったが、その後35秒間、移動物体12がこの位置に一時停止し、図3の補正前のヒストグラム26xyが得られたとする。この場合、最頻値Pm0及び次に頻度が多い画素値Pm1はそれぞれ移動物体及び路面の画素値である。1つ前の更新周期において、移動物体が交差点中央部に殆ど一時停止していなかったとすると、そのヒストグラムにおける画素値Pm1の頻度Fは比較的大きく、図3に示すように補正される。これにより、移動物体が比較的長く一時停止しても、図20に示すようなノイズを含む背景画像が生成されるのを避けることができ、図4に示すような背景画像が得られる。
【0049】
本実施例1では最大頻度分布記憶部27を用いる場合を説明したが、最大頻度分布記憶部27を用いずに、すなわちステップS2でα・F(t|x,y)を加算する替わりに、予め設定した値を加算する構成であってもよい。換言すれば、最頻値Fの平均値を用いてもよい。
【0050】
また、実質的に図2の処理が行えればよい。例えば、図2のステップS1の時刻tに関する各画素の処理を移動物体認識部22による時刻tのフレーム画像に関する処理と並行して行い、所定フレーム数に関する各画素のヒストグラムが得られた後にステップS2〜S5の処理を一括して行う構成であってもよい。また、背景画像の画素の更新時点がT/N(Nはフレーム画像の画素数)ずつずれるようにしてもよい。
【実施例2】
【0051】
図5は、本発明の実施例2に係る移動物体追跡装置20Aの概略機能ブロック図である。図6は、この装置の背景画像生成部25Aによる処理を示すフローチャートであり、図7は、この処理の説明図である。
【0052】
図5の設定値記憶部28には、上述の設定手段により照明条件変化判定幅ΔPが予め設定されている。背景画像生成部25Aは、上記実施例1と同様にしてヒストグラム26xyを生成し、補正をせずに最頻値Pm0を求め、更新前の背景画像の対応する最頻値Pm1との差の絶対値がΔP/2より小さい場合のみ、最頻値Pm0で背景画像の画素値Pb(x,y)を更新する。以下、この方法を詳説する。
【0053】
図6のステップS10、S11、S15及びS16はそれぞれ図2のステップS0、S1、S6及びS7と同一である。
【0054】
(S12)ヒストグラム26xyの最頻値Pm0を求める。
【0055】
(S13)|Pm0−Pb(x,y)|<ΔP/2であればステップS14へ進み、そうでなければ、移動物体の一時停止等による最頻値のシフトであると考えられるので更新せずにステップS15へ進む。
【0056】
(S14)照明条件の変化による最頻値のシフトであると考えられるので、最頻値Pm0を画素値Pb(x,y)として背景画像記憶部23の画素(x,y)に格納し、ステップS15へ進む。
【0057】
すなわち、背景画像更新周期で日照変化により背景画像の画素値が変動する幅は一般に比較的小さいので、ヒストグラム26xyの最頻値Pm0で該画素値を更新し、これが大きくなった場合には移動物体の画像が含まれていることによるものと判断して、更新前の画素値を維持する。これにより、移動物体の一時停止等と考えられる領域のみ背景画像生成部25Aによる補正が行われる。
【0058】
なお、更新しない場合に移動物体の画素値が背景画像中に維持されないようにするため、最初に作成する背景画像は、移動物体が存在しない時が好ましい。
【0059】
本実施例2によれば、照明条件の変化により背景画像の変化を取り入れるとともに、移動物体の一時停止等によるノイズを含む背景画像の生成を防止することができる。
【実施例3】
【0060】
実施例2ではヒストグラム26xyの横軸に着目したが、縦軸に着目した構成であってもよく、これを本発明の実施例3として説明する。
【0061】
図8は、本発明の実施例3に係る移動物体追跡装置20Bの概略機能ブロック図である。
【0062】
この装置では、図5の設定値記憶部28の替わりに、後述の基準値Kを設定する設定値記憶部28Aを備え、また、図1の最大頻度分布記憶部27を備えている。
【0063】
この装置の背景画像生成部25Bは、図10(A)に示す更新前の背景画像の画素値Pb(t|x,y)に対応した最大頻度F(x,y)に対する、図10(B)に示すヒストグラム26xy上の画素値Pb(t|x,y)の頻度F1の割合に基づいて、日照変化又は移動物体一時停止であるかを判定する。
【0064】
図9は、この装置の背景画像生成部25Bによる処理を示すフローチャートであり、図10は、この処理の説明図である。
【0065】
図9のステップS20〜S22、S25及びS26はそれぞれ図6のステップS10〜S12、S15及びS16と同一である。
【0066】
(S23)F1/F(x,y)≧KであればステップS24へ進み、そうでなければ、移動物体の一時停止等により最大頻度F(x,y)から頻度F1へ比較的大きく低下したと考えられるので、背景画像の画素値Pb(x,y)を更新せずにステップS25へ進む。ここにKは、1より小さい正の定数であり、例えば0.8であって、上述の設定手段により予め設定される。
【0067】
(S24)最大頻度F(x,y)から頻度F1へ少し低下したとしても、日照変化によるものと考えられるので、ステップS22で求めたヒストグラム26xyの最頻値Pm0で背景画像の画素値Pb(x,y)を更新し、ステップS25へ進む。
【0068】
すなわち、背景画像更新周期で日照変化により更新前最頻値に対応した頻度が変動する幅は比較的小さく、これが大きくなった場合には移動物体の画像が含まれていることによるものと判断する。
【0069】
本実施例3によれば、移動物体の一時停止等と考えられる領域のみ背景画像の前回画素値が維持されるので、照明条件変化による背景画像の変化を取り入れるとともに、移動物体の一時停止等によるノイズを含む背景画像の生成を防止することができる。
【0070】
なお、最大頻度分布記憶部27を用いずに、最大頻度Fを予め設定した値で置き換えた構成であってもよい。
【実施例4】
【0071】
図11は、本発明の実施例4に係る移動物体追跡装置20Cの概略機能ブロック図である。
【0072】
背景画像生成部25Cは、オブジェクトマップ記憶部24に格納されているIDのオブジェクトマップを参照し、フレーム画像のうち移動物体が存在しない領域の画素値のみ用いてヒストグラム26xyを作成し、ヒストグラム26xyの頻度の合計FTが設定値以上であれば最頻値Pm0を背景画像の画素値とし、そうでなければ画素値を更新しないで維持する。
【0073】
図14はIDのオブジェクトマップ説明図であり、理解を容易にするため移動物体12が重ねて示されている。1ブロックは例えば8×8画素であり、ブロック単位で移動物体IDが付与されている。
【0074】
図13に示す如く、オブジェクトマップのブロックの位置座標を(X,Y)と表記する。図13では簡単化のため1ブロックが2×2画素である場合を示している。時刻tにおけるブロック(X,Y)のIDをID(t|X,Y)で表す。移動物体が存在しないと判定されたブロックに付与されているIDの値は0であるとする。また、画素(x,y)はブロック(X,Y)内であるとする。
【0075】
図12は、背景画像生成部25Cによる背景画像の画素(x,y)の更新処理を示すフローチャートであり、図13は、この処理の説明図である。
【0076】
(S30)時刻t(フレーム番号に対応)及び頻度合計FTにそれぞれ初期値t0及び0を代入する。
【0077】
(S31)ID(t|X,Y)≠0であれば、すなわち時刻tのオブジェクトマップのブロック(X,Y)が移動物体存在ブロックと判定されていれば、ステップS32へ進み、そうでなければステップS33へ進む。
【0078】
(S32)ヒストグラム26xyの横軸の値がP(t|x,y)である頻度をインクリメントし、頻度合計FTをインクリメントする。
【0079】
(S33)時刻tをインクリメントする。
【0080】
(S34)t≦tnであればステップS31へ戻り、そうでなければステップS35へ進む。
【0081】
(S35)FT≧FT0であればステップS36へ進み、そうでなければ処理を終了する。基準値FTrは1以上の値であり、例えば10である。本実施例4では移動物体が存在すると判定された領域のみの画素値を用いてヒストグラム26xyを作成するので、基準値FTrを比較的小さな値にすることができる。
【0082】
(S36)ヒストグラム26xyの最頻値Pm0を求め、これを画素値Pb(x、y)に代入する。すなわち、背景画像記憶部23の画素(x、y)の値を最頻値Pm0で更新する。
【0083】
FT<FTrの場合には背景画像の画素値更新が行われないので、前回値が維持される。
【0084】
本実施例4によれば、移動物体認識部22で作成されたオブジェクトマップを参照し、移動物体不存在ブロック内の画素値のみのヒストグラムに基づいて背景画像の画素値を更新するので、照明条件変化による背景画像の変化を取り入れるとともに、移動物体の一時停止等によるノイズを含む背景画像が生成されるのを防止することができる。
【0085】
なお、図14に太線で示すように、同一IDのブロックの集合が内接する矩形を求め、ステップS31でこの矩形内を移動物体領域と判定する構成であってもよい。
【実施例5】
【0086】
図15は、本発明の実施例5に係る移動物体追跡装置20Dの概略機能ブロック図である。
【0087】
本実施例5では、上述の記設定手段により設定部29に、図17に示すような検出領域A1〜A3を予め設定しておく。検出領域A1〜A3は、不動物であり、かつ、テクスチャー情報が比較的多くて動きベクトルMVを容易に求めることが可能な背景特徴部B1〜B3の一部又は全部を含むように設定される。
【0088】
図16は、図15のカメラぶれ検出部30及び座標変換パラメータ決定部31による処理を示すフローチャートである。ステップS40〜S46はカメラぶれ検出部30による処理であり、ステップS47及びS48は座標変換パラメータ決定部31による処理である。
【0089】
(S40)検出領域Aiの識別変数iに初期値1を代入する。
【0090】
(S41)フレーム画像上の領域検出領域Ai内の画素値P(x,y)と背景画像内の対応する画素値Pb(x,y)との差の絶対値の総和を、非類似度NSとして求める。
【0091】
(S42)NS≧ΔであればステップS43へ進み、そうでなければステップS44へ進む。
【0092】
(S43)背景画像上の検出領域Ai内の画像と時刻tのフレーム画像との間でブロックマッチングを行って、検出領域Ai内の画像の動きベクトルMViを求める。ブロックマッチングを行う範囲は、時刻tのフレーム画像上の検出領域Aiを中心とする、検出領域Aiより広い所定範囲内である。次にステップS45へ進む。
【0093】
(S44)動きベクトルMViに0を代入する。
【0094】
(S45)iを1だけインクリメントする。
【0095】
(S46)I≦3であればステップS41へ戻り、そうでなければステップS47へ進む。
【0096】
(S47)動きベクトルMV1〜MV3が全て0であれば処理を終了し、そうでなければステップS48へ進む。
【0097】
(S48)動きベクトルMV1〜MV3の一端の座標(x,y)をそれぞれの他端の座標(x’,y’)に変換する6個の座標変換パラメータa(i,j)、i=1〜2、j=1〜3を算出する。このパラメータは、次式により求めることができる。
【0098】
x’=a(1,1)・x+a(1,2)・y+a(1,3)
x’=a(2,1)・x+a(2,2)・y+a(2,3)
図18中に動きベクトルMV1〜MV3の具体例を示す。図18中、実線はカメラぶれが生ずる前のフレーム画像であって、背景画像はこれに対応しており、点線はカメラぶれが生じた後のフレーム画像である。このカメラぶれにより、検出領域A1〜A3はそれぞれA1S〜A3Sにシフトし、背景特徴部B1〜B3はそれぞれB1S〜B3Sにシフトし、移動物体14〜17はそれぞれ14S〜17Sにシフトしている。
【0099】
図15において、移動物体認識部22は、座標変換パラメータ決定部31から座標変換パラメータを受け取ると、このパラメータで定まる座標変換式に基づいて、フレーム画像と背景画像の一方を座標変換し、両画像を比較して公知の方法によりブロック毎に移動物体存否の判定を行う。
【0100】
本実施例5によれば、上記のような検出領域A1〜A3を設定し、これら制限された領域のみについてカメラぶれを検出すればよいので、短時間で容易かつ正確にカメラぶれ量を検出することが可能であり、これにより、リアルタイムで画像上の移動物体を正確に認識することが可能となる。
【0101】
なお、検出領域は実質的に3以上であればよく、4以上にして座標変換誤差がより小さくなるようにしてもよい。「実質的に」とは、例えば検出領域を1つだけ設定し、その領域内の3箇所を検出領域とする場合を含む意味である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施例1に係る移動物体追跡装置の概略機能ブロック図である。
【図2】図1中の背景画像生成部による処理を示すフローチャートである。
【図3】図2の処理の説明図である。
【図4】図2の処理結果である背景画像を示す図である。
【図5】本発明の実施例2に係る移動物体追跡装置の概略機能ブロック図である。
【図6】図5中の背景画像生成部による処理を示すフローチャートである。
【図7】図6の処理の説明図である。
【図8】本発明の実施例3に係る移動物体追跡装置の概略機能ブロック図である。
【図9】図8中の背景画像生成部による処理を示すフローチャートである。
【図10】図8の処理の説明図である。
【図11】本発明の実施例4に係る移動物体追跡装置の概略機能ブロック図である。
【図12】図11中の背景画像生成部による処理を示すフローチャートである。
【図13】図12の処理の説明図である。
【図14】移動物体IDのオブジェクトマップ説明図である。
【図15】本発明の実施例5に係る移動物体追跡装置の概略機能ブロック図である。
【図16】図15中のカメラぶれ検出部及び座標変換パラメータ決定部による処理を示すフローチャートである。
【図17】背景画像動きベクトル検出領域の説明図である。
【図18】背景画像動きベクトルMV1〜MV3の具体例を示す図である。
【図19】従来技術の問題点説明図である。
【図20】従来技術の問題点説明図である。
【符号の説明】
【0103】
10 フレーム画像
10A、10B 背景画像
11 交差点
12、14〜17 移動物体
13 ビデオカメラ
20、20A、20B 移動物体追跡装置
21 画像メモリ
22 移動物体認識部
23 背景画像記憶部
24 オブジェクトマップ記憶部
25、25A、25B 背景画像生成部
26 ヒストグラムメモリ
26xy ヒストグラム
27 最大頻度分布記憶部
28 設定値記憶部
29 検出領域設定部
30 カメラぶれ検出部
31 座標変換パラメータ決定部
A1〜A3 検出領域
B1〜B3 背景特徴部
MV1〜MV3 動きベクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列画像の対応する画素について、画素値のヒストグラムの最頻値に関する値を画素値とする画像を、移動体認識用背景画像として生成する背景画像生成方法において、
該ヒストグラムに、更新前の背景画像の対応する画素の値の所定頻度を追加し、追加後のヒストグラムの最頻値を、更新後の背景画像の対応する画素の値とする
ことを特徴とする背景画像生成方法。
【請求項2】
時系列画像の対応する画素について、画素値のヒストグラムの最頻値に関する値を画素値とする画像を、移動体認識用背景画像として生成する背景画像生成方法において、
該最頻値と更新前の背景画像の対応する画素の値との差が所定値以上であれば、該更新前の背景画像の対応する画素の値を、更新せずに維持する
ことを特徴とする背景画像生成方法。
【請求項3】
時系列画像の対応する画素について、画素値のヒストグラムの最頻値に関する値を画素値とする画像を、移動体認識用背景画像として生成する背景画像生成方法において、
該ヒストグラム上の最頻値に対応した頻度の変動の大きさが所定値以上であれば、更新前の背景画像の対応する画素の値を、更新せずに維持する
ことを特徴とする背景画像生成方法。
【請求項4】
時系列画像の対応する画素について、画素値のヒストグラムの最頻値に関する値を画素値とする画像を、移動体認識用背景画像として生成する背景画像生成方法において、
該時系列画像と該背景画像とを比較して該時系列画像に含まれる移動体の領域を認識し、
該ヒストグラムでは該移動物体の領域の画素値を除く
ことを特徴とする背景画像生成方法。
【請求項5】
時系列画像の対応する画素について、画素値のヒストグラムの最頻値に関する値を画素値とする画像を、移動体認識用背景画像として生成する背景画像生成方法において、
画像フレーム内にカメラぶれ検出領域を実質的に少なくとも3箇所設定し、
フレーム画像と該背景画像とを比較して各カメラぶれ検出領域の動きベクトルを求め、
該動きベクトルに基づいて、カメラぶれによる画像内各部のシフトを定める座標変換式のパラメータを決定し、
該座標変換式に基づいて、該時系列画像に対し該背景画像を相対的に対応させる
ことを特徴とする背景画像生成方法。
【請求項6】
時系列画像が格納される画像記憶部と、
該時系列画像の対応する画素について、画素値のヒストグラムが格納されるヒストグラム記憶部と、
背景画像記憶部と、
該ヒストグラムの最頻値に関する値を画素値とする画像を、移動体認識用背景画像として生成し該背景画像記憶部に格納する背景画像生成部と
を有する背景画像生成装置において、
該背景画像生成部は、該ヒストグラムに、更新前の背景画像の対応する画素の値の所定頻度を追加し、追加後のヒストグラムの最頻値を、更新後の背景画像の対応する画素の値とする
ことを特徴とする背景画像生成装置。
【請求項7】
時系列画像が格納される画像記憶部と、
該時系列画像の対応する画素について、画素値のヒストグラムが格納されるヒストグラム記憶部と、
背景画像記憶部と、
該ヒストグラムの最頻値に関する値を画素値とする画像を、移動体認識用背景画像として生成し該背景画像記憶部に格納する背景画像生成部と
を有する背景画像生成装置において、
該背景画像生成部は、該最頻値と更新前の背景画像の対応する画素の値との差が所定値以上であれば、該更新前の背景画像の対応する画素の値を、更新せずに維持する
ことを特徴とする背景画像生成装置。
【請求項8】
時系列画像が格納される画像記憶部と、
該時系列画像の対応する画素について、画素値のヒストグラムが格納されるヒストグラム記憶部と、
背景画像記憶部と、
該ヒストグラムの最頻値に関する値を画素値とする画像を、移動体認識用背景画像として生成し該背景画像記憶部に格納する背景画像生成部と
を有する背景画像生成装置において、
該背景画像生成部は、該ヒストグラム上の最頻値に対応した頻度の変動の大きさが所定値以上であれば、更新前の背景画像の対応する画素の値を、更新せずに維持する
ことを特徴とする背景画像生成装置。
【請求項9】
時系列画像が格納される画像記憶部と、
該時系列画像の対応する画素について、画素値のヒストグラムが格納されるヒストグラム記憶部と、
背景画像記憶部と、
該ヒストグラムの最頻値に関する値を画素値とする画像を、移動体認識用背景画像として生成し該背景画像記憶部に格納する背景画像生成部と、
該時系列画像と該背景画像とを比較して該時系列画像に含まれる移動体の領域を認識する移動体認識部と
を有する背景画像生成装置において、
該背景画像生成部は、該ヒストグラムでは該移動体の領域の画素値を除く
ことを特徴とする背景画像生成装置。
【請求項10】
時系列画像が格納される画像記憶部と、
該時系列画像に基づいて生成される背景画像が格納される背景画像記憶部と、
該時系列画像を該背景画像と対比して移動物体を認識する移動物体認識部と、
を有する背景画像生成装置において、
画像フレーム内にカメラぶれ検出領域を実質的に少なくとも3箇所設定するための設定手段と、
フレーム画像と該背景画像とを比較して各カメラぶれ検出領域の動きベクトルを求めるカメラぶれ検出部と、
該動きベクトルに基づいて、カメラぶれによる画像内各部のシフトを定める座標変換式のパラメータを決定する座標変換パラメータ決定部と
をさらに有し、該移動物体認識部は、該座標変換式に基づいて、該時系列画像に対し該背景画像を相対的に対応させる
ことを特徴とする背景画像生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−24147(P2006−24147A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203853(P2004−203853)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(801000049)財団法人生産技術研究奨励会 (72)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】