説明

胎児赤血球細胞に対して特異性を有するモノクローナル抗体

本発明は、母体血液から胎児細胞を単離するのに適した、モノクローナル抗体および対応するハイブリドーマ細胞および抗原に関する。本発明のモノクローナル抗体は、胎児赤血球(それらの有核前駆細胞を含む)上に存在する表面抗原と反応するが、成人赤血球細胞上の表面抗原とは反応しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胎児赤血球細胞に対して特異性を有するモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
社会の発展は、出生前調査の増加をもたらした。羊水穿刺またはそれほど多くないものの絨毛膜絨毛のサンプリングは、出生前分析(例えば第21番染色体トリソミー)のため、妊娠の10分の1で行われている。染色体欠損のリスクは、母体の年齢とともに増加する。これは、羊水穿刺が35才以上の妊婦の50%以上で行われているためである。しかしながら、総数を考慮に入れた場合、染色体あるいは遺伝子欠損を有する子供の多くはなお、35才以下の女性から生まれている。第21番染色体トリソミーの確率は、35才以上の女性の胎児では0.3%である。これについては、羊水穿刺処置によって中絶を誘発する0.5%のリスクも併せて考慮されなければならない。これらの数字から、胎児へのリスクを課すことなく、同じ結果をもたらす代替的な診断方法の必要性が大きいことは明らかである。一つのアプローチとして、母体血液から胎児細胞を分離することが考えられる。これは胎児に対するリスクを解消するであろう。
【0003】
母体の105〜107の有核血液細胞中から一つの胎児細胞を見つけ出すことができると推定されていた。さらなる調査で、染色体異常が存在する場合、より多くの胎児細胞が母体循環系で検出できることが開示された。これは、非侵襲性の手順によって異数性の胎児を検出できる可能性を上昇させる。3つの異なるタイプの胎児細胞が、母体血液において確認された:リンパ球、栄養芽細胞および有核赤血球(NRBCs)。
【0004】
胎児リンパ球は、出産後1〜5年たってもなお検出された。この長寿命は、次の妊娠時における正確な診断を妨げる可能性がある。
栄養芽細胞は、その形態によって容易に同定できるという理由から、魅力的なターゲットである。しかしながら、それらは診断目的のために安易に使用できない。なぜなら胎盤細胞のように、それらは胎児の細胞ではないかもしれない:栄養芽細胞において染色体異常が診断されたうちの約1%で、その胎児が健康であることが判明した。
【0005】
胎児の有核赤血球(NRBCs)は、母体循環系中に早期に現れるが、出生後は残存しない。それらは核を有するので、染色体分析の好ましい候補である。しかしながら、これまでは、それらを他の血液細胞から容易かつ明確に区別することはできなかった。
【0006】
それらは赤血球前駆細胞に特有であり、他の血液細胞亜集団と異なるマーカー・プロフィールを通じて同定される。血液細胞は、ヒト白血球分化抗原に関する第7回ワークショップおよびカンファレンス(ハロゲート2000)で定義されたように、いわゆる表面抗原分類(CD)マーカーによって幅広く特徴付けられている。未成熟の赤血球細胞はCD71を発現し、白血球上に発現されるCD45が欠けている。この知見は、他の単核細胞から赤血球前駆細胞を区別するのに使用することができる。
【0007】
胎児細胞(105〜107の母体の有核細胞の内1つ)を単離および同定するには、もっとも厳しい判定基準に適合させる必要がある。胎児のNRBCs上にのみ発現する利用可能な細胞表面マーカーは、まだ見つかっていない。胎児細胞を濃縮するためには、通常、免疫磁性あるいはフローサイトメトリーによる細胞分離技術が、どちらか単独であるいは組み合わせで使用される。単離された細胞の染色体あるいは遺伝子分析の結果は、羊膜細胞で得られた結果と比較されてきた。多くの調査が、大規模コホートを伴う非侵襲性アプローチの技術的可能性を示してきた。
【0008】
しかしながら、既存の手段は未だ通常の診断として適当とはいえない。検査中の細胞が、確実に胎児細胞であることが保証されなければならない。胎児のNRBCsの同定は、胎児赤血球細胞上に選択的に発現したマーカー、あるいは血液内の胎児細胞に特異的な方法で発現あるいは局在化したマーカーの認識によってのみ達成できる。
【0009】
胎児細胞を特異的に同定するマーカーがないことは、信頼できる非侵襲性の出生前診断を開発するに当たって、重大な障害である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、胎児と成人の赤血球細胞の識別を可能にし、かつ胎児細胞の一義的な同定を可能にする抗体を生成することである。これらの抗体によって認識される胎児細胞は、好ましくはCD71抗原を発現する無傷の細胞核を少なくとも一部所有していなければならず、かつ従前に発行された研究結果と一致してCD45抗原を欠損していなければならない。
【0011】
さらに本発明の目的は、そのような抗体を産生するハイブリドーマ細胞株に加えて胎児細胞と特異的に反応するモノクローナル抗体も生成することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1,7あるいは10にかかる抗体、請求項9にかかる抗原、および請求項4あるいは5にかかるハイブリドーマ細胞によって解決される。従属請求項により、前記の抗体、ハイブリドーマ細胞および抗原のさらなる改良が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の目的のため、臍帯血から単離された赤血球細胞(CD71+,CD45-)であって、DE 100 35 433 A1に記述の自己抗体によって定義される"i"抗原を保有している赤血球細胞を用いて、5匹のマウスを免疫化した。これらの細胞を用いた免疫化は、"i"抗原に対する抗体のほかに、赤血球前駆細胞を同定するのに使用できる新しいマーカーに対して特異性を有する抗体を生成できる可能性を開く。ハイブリドーマ細胞を産生するために、免疫化マウスの脾臓細胞を標準手順によって骨髄腫細胞株と融合させた(Schetters H, Production of monoclonal antibody, in: Methods of Immunological Analysis, Masseyeff RF, Albert WH and Staines NA (Eds.) Vol. 2, Ch. 4.3, 230-245, VCH Weinheim, 1993)。
【0014】
詳細な設計および方法
具体的には、フローソートしたヒト臍帯血細胞(CD71+,抗原i+,CD19-およびCD45-)を用いてマウスを免疫化した。ハイブリドーマ上清を、プールした単核臍帯血細胞でスクリーンする一方、対応する量の赤血球前駆体を、血液塗抹標本の細胞化学的染色によって測定した。ハイブリドーマ・スクリーニングのために、6パラメータ・フローサイトメトリー分析(4カラー、前方および側方散乱)を、赤血球前駆細胞、白血球、除核赤血球、および胎児細胞と特異的に反応する抗体の同時同定のためにセットアップした。さらに、妊娠期間第6週〜第38週における胎児血液塗抹標本および胎児肝切片について、及び、コントロールとして成人血液、正常な成人骨髄および成人赤血球について、免疫組織化学解析を行った。
【0015】
結果:
胎児赤血球細胞上にのみ発現する表面抗原に対して特異性を有するクローン(ドイツ微生物および細胞培養コレクション(DSMZ)における受入番号 DSM ACC 2666)を同定した。この新しい抗体は、妊娠期間初期(第6週)から出産までの胎児血液の赤血球細胞に対して、不変的な結合を示した。さらに、詳細な検査において、成人の赤血球、赤芽球あるいはリンパ細胞および骨髄細胞との表面反応性がないことが示された。この抗体は、胎児の血リンパ性器官の細胞とは反応しなかった。
【0016】
結論:
前記研究により、新しいモノクローナル抗体が、胎児赤血球細胞と特異的に結合し、これにより、胎児と成人の赤血球を区別できることが証明された。妊娠期間の初期におけるこの胎児抗原の発現により、非侵襲性の出生前診断が可能になりうる。この抗体は、別の濃縮技術及び/又は胎児赤血球細胞の同定のために適用可能である。
【0017】
ハイブリドーマ細胞の詳細分析
胎児NRBCsと特異的に反応する抗体を産生するハイブリドーマ細胞のスクリーニング
【0018】
好適なクローンを見つけるために、数千の抗体産生ハイブリドーマをスクリーニングする必要があるので、必要とされる特異性を維持する一方、高処理を可能にする手順を構築した。赤血球前駆細胞の同時同定、除核赤血球と白血球の区別、および新しい抗体の同定をシングルステップで可能にする、6パラメータ分析(4蛍光チャネル、前方および側方散乱)を確立した。分析した細胞を、核酸色素(LDS751,Molecular Probes,cat# 7595)を用いて染色し、クローン化ハイブリドーマ細胞の抗体とともにインキュベートした。これらの抗体を、蛍光色素(FITC)で標識したそれらに対する抗体(ヤギ抗マウスIgG(H+L)-FITC,Caltag Laboratories,cat# M35001)と反応させた。抗体の性質を決定するその後の実験において、前記抗体はFITCで直接標識された。
【0019】
赤血球前駆細胞の同定は、この光散乱特性によって及びそれらのフィコエリトリン標識CD71特異抗体(CD71 PE,Diatec,cat#3212)の結合によって可能である。白血球は、アロフィコシアニン標識CD45特異抗体(CD45 APC,BD Pharmingen,cat#555485)へのそれらの結合によって識別できた。有核および除核の赤血球細胞は、それらの核酸色素との結合あるいは結合の欠如によって区別することができる。この手順によって、目的とする標的細胞、すなわち胎児のNRBCsへ結合する抗体を、成人の赤血球あるいは白血球との交差反応なしで同定することが可能である(図1)。
【0020】
共通血液型抗原を含む成人赤血球上の抗原と反応する抗体の排除
血液型抗原は、成人の赤血球およびそれらの前駆体上に大量に見受けられる。それゆえ、それらは抗原として使用された場合、主要な免疫応答を誘導するかもしれない。これらの血液型抗原に対する抗体は、胎児細胞の同定のために好適ではない。血液型抗原を有する成人赤血球上の抗原へ結合する抗体を排除するために、胎児細胞に関するそれらの結合特異性を、赤血球への吸収後に調査した。血液型AB Rh+の赤血球を収集し、Meridian Diagnostics Europe(バートホンブルク)が提供する試薬を用いて安定化した。調査において抗体は、数を増す赤血球とともにインキュベートされ、標的細胞に対するそれらの結合活性を前後で試験された。CD71+,CD45-有核赤血球前駆細胞への結合強度が赤血球とのインキュベーション後も不変である場合、血液型抗原に関する抗体の反応性は消失していると考えられる(図2)。このようにして選択された抗体は、成人の血液細胞とは反応せず、胎児赤血球前駆細胞の正確な同定を可能とする(図3)。
【0021】
選択されたモノクローナル抗体の特異性試験
スクリーニング手順において必要とされる結合特性を示すIgMアイソタイプのモノクローナル抗体を産出するハイブリドーマ・クローンを同定することができた。それは、記号表示4B9を有し、本特許あるいは本特許出願の出願人によって、2004年7月13日に、ドイツ微生物および細胞培養コレクション(DSMZ,ブラウンシュヴァイク)に受入番号 DSM ACC 2666のもと寄託された。同一のエピトープを認識する第二の抗体4B8を、図2および図3に示す。
【0022】
胎児および成人の赤芽球は、グリコホリンAを強く明確に発現し、それゆえ、このマーカータンパク質によって同定できる。これらの細胞へのモノクローナル抗体の結合は、免疫蛍光二重染色によって可視化した。
【0023】
免疫蛍光染色の手順
1.アセトン中で10分間サイトスピンあるいは凍結組織切片を固定する。
2.5分間乾燥する。
3.グリコホリンAに対するモノクローナル抗体(1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)にて1:100に希釈したDAKO M0819)を60分間適用する。
4.PBSですすぐ。
5.ヤギ抗マウス抗体F(ab)フラグメント[Alexa Fluor 488(Molecular Probes A-21044),グリーン,PBSにて1:100に希釈]を60分間適用する。
6.PBSですすぐ。
7.モノクローナル抗体4B9(ハイブリドーマ上清)を60分間適用する。
8.PBSですすぐ。
9.ヤギ抗マウスIgM[Alexa Fluor 594(Molecular Probes A-21044),レッド]を60分間適用する。
10.PBSですすぐ。
11.細胞核をDAPI[(Molecular Probes),ブルー,PBSにて1:300に希釈]で3分間染色する。
12.PBSですすぐ。
13.蛍光培地(S3023,DAKO)でカバーする。
14.フィルターセット02,10および15を用いてCarl Zeiss社の"Universalmikroskop Axioplan"を用いて可視化し、デジタルカメラシステム(例えば、Visitron Systems GmbH)を用いて撮影する。
PBS:1LのH2O中に8g NaCl,1.3g Na2HPO4,4g NaH2PO4.pH 7.4
【0024】
免疫酵素法も使用した:
アルカリホスファターゼ-抗-アルカリホスファターゼ(APAAP)染色の手順
1.アセトン中で10分間サイトスピンあるいは凍結組織切片を固定する。
2.5分間乾燥する。
3.30分間モノクローナル抗体4B9(ハイブリドーマ上清)とインキュベートする。
4.トリス緩衝食塩水(TBS)ですすぐ。
5.30分間APAAP複合体[(D0651,DAKO),TBS/HS(不活化ヒト血清)にて1:25に希釈]とインキュベートする。
6.TBSですすぐ。
7.ステップ5〜7を10分おきに2度繰り返す。
8.TBSですすぐ。
9.基質を用いてスライドを展開する。
i.溶液Aの調製:18mlの0.2 mol/Lの2-アミノ-2メチル-1,3-プロパンジオールを50mlの0.05mol/Lのトリス緩衝液(pH 9.7)および600mgのNaClと混合する。28mgのレバミソールを添加する。
ii.溶液Bの調製:35mgのナフトールAS-bi-ホスフェートを0.42mlのN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解する。
iii.溶液Cの調製:0.14mlの5%新フクシンと0.35の調製したばかりの4%亜硝酸ナトリウムを混合する。60秒間撹拌する。
iv.溶液Aと溶液Bを混合し、その後溶液Cを添加する。pHを8.7に調整する。混合し、濾過し、およびスライドに塗布する。
v.室温で10〜20分間インキュベートする。
vi.水道水ですすぐ。
vii.5分間、マイヤー酸Haemalaunで対比染色する。
viii.10分間水道水中で”青化”し、カイザーのグリセロール・ゼラチンでカバーする。
TBS(トリス緩衝食塩水):5LのH2O中に43.33gのNaClおよび39.40gのTris-HCLを溶解した。NaOHでpHを7.4に調節した。
TBS/HS:9部のTBS+1部の不活性化ヒト血清
ネガティブ・コントロール:同一のアイソタイプまたはマウスの過免疫血清のモノクローナル抗体
【0025】
CD71と反応する抗体の排除
使用した免疫化方法で産生された抗体は、CD71と反応するかもしれない。このような抗体を除外するために、CD71-抗体が同じ結合サイトで競合するかどうかを調べる分析を行った。ビオチン化抗体4B8を臍帯血由来の単核細胞とともにプレ-インキュベートした。その後、非標識のCD71-特異抗体(Anti-CD71,クローンDF1513,DPC ビーアマン,バート・ナウハイム,ドイツ)を添加した。ストレプトアビジン-DTAF-標識化後、CD71-抗体が抗体4B8に置き換わるかどうかを、フローサイトメトリーによって分析した。この競合実験用のポジティブ・コントロールサンプルとして、非標識の抗体4B8をCD71の代わりに添加した。これらの分析により、非標識の抗体4B8の添加がそのシグナルを減少させたのに対して、抗体4B8およびCD71が同じエピトープに対して競合しないことが証明された。
【0026】
結果
・4B9-反応抗原が胎児赤芽球の表面に発現した。これは妊娠期間第6から第38週までの胎児細胞で実証できた。図4において、抗体4B9はすべてのグリコホリンA陽性胎児赤芽球を認識した。
・正常な成人骨髄における赤芽球は、4B9陰性であった。対照的に、全ての赤血球生成細胞はグリコホリンA陽性であった。32症例の1においてのみ、初期の好塩基性赤芽球の細胞質中に細胞内顆粒の発現が見られた。
・4B9反応抗原は、成人および胎児の肝細胞上で見つからなかった。クッパー細胞、マクロファージ、内皮細胞および類洞細胞も陰性であった。
・成人における血リンパ性細胞の詳細分析によって、リンパおよび骨髄球性の細胞において反応性がないことが示された。
・胎児の血リンパ性組織は全て陰性であった。これは骨髄球性の細胞だけでなくリンパ細胞にも当てはまる。
【0027】
【表1】

【0028】
以下、図1〜4を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】単核臍帯血細胞を標識抗体(抗CD45,抗CD71および研究中の抗体,4B9)およびDNA色素で染色した。抗体結合は流動血球計算器で測定した。a)図1aは、赤血球前駆細胞の光散乱特性の図である。さらなる性質決定のために、R1領域中の光散乱特性によって特徴づけられる細胞を使用した。b)図1bは、R1領域内でかつCD71抗体並びに全ての核を標識する色素LDS751で標識された細胞の蛍光特性を示す図である。R2領域はCD71抗原を発現するあるいは発現しない有核細胞を囲む。c)図1cは、CD71抗体およびCD45抗体とともにインキュベートされたR2領域内の細胞の蛍光特性を示す図である。R3領域内の細胞は、CD71抗原を発現するがCD45抗原は発現しない。この図は、CD71陽性有核赤血球細胞(R3領域)とCD45陽性白血球の間の差別化を実証するものである。d)図1dは、R2領域内の細胞の蛍光特性を示す図である。R4領域内の細胞は、CD71抗原を発現し4B9抗体と結合する。従って、抗体4B9は、CD45陰性であるCD71陽性細胞に優先的に結合する。
【図2】図2は、それらの臍帯血細胞上への結合能力を測定することにより、成人赤血球によるモノクローナル抗体4B8並びに4B9の吸収を示す。4B8抗体も4B9抗体もいずれも成人赤血球によって吸収されないことが分かる。ポジティブおよびネガティブ・コントロールのために、CD71およびグリコホリンAに対する抗体を使用した。
【図3】臍帯血細胞および成人の血液細胞上へのモノクローナル抗体4B8および4B9の結合のフローサイトメトリーによる調査(x軸:蛍光強度)。a)このヒストグラムは、"非標識"と表示した未染色の、陰性の臍帯血細胞および標識化抗体4B8ならびに4B9とインキュベートされた臍帯血細胞(4B8、4B9と表示)を示す。これは、臍帯血細胞が抗体4B8および4B9によって染色されることを実証するものである。b)この図において、成人の血液細胞は、それらが抗体4B8("4B8")で、あるいは4B9("4B9")で、または抗体なし("非標識")でインキュベートされたかにかかわらず、同じ蛍光強度(X軸)を示す。したがって、抗体4B8と4B9は、成人血液細胞には結合しない。
【図4】胎児血液細胞の免疫蛍光分析および免疫酵素分析 A)およびB)グリコホリンA-陽性("G"と表示)胎児の赤血球生成細胞は、4B9抗原を発現する(図4Bにて模式的に描かれた細胞内において蛍光は黒い領域に塗りつぶされる)。細胞核はDAPIで染色し、"B"と表示する。明らかに、有核および除核赤血球は、4B9抗原が陽性である。A1およびB1は蛍光写真原本を示し、A2、B2はA1とB1それぞれの模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胎児赤血球(その有核前駆細胞を含む)上に存在する表面抗原と反応するが、成人赤血球細胞上の表面抗原とは反応しないモノクローナル抗体。
【請求項2】
CD71抗原を発現するが、CD45抗原の発現が陰性である大半のあるいは全ての胎児赤血球細胞と反応することを特徴とする、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
胎児赤血球細胞と反応するが、CD71抗原と反応しないことを特徴とする、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞。
【請求項5】
ドイツ微生物および細胞培養コレクション(ドイツ、ブラウンシュヴァイク)に、2004年7月13日、受入番号DSM ACC 2666として寄託されたハイブリドーマ細胞。
【請求項6】
請求項4および5に記載のハイブリドーマ細胞。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載のハイブリドーマ細胞によって発現される抗体。
【請求項8】
請求項7および請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
請求項1〜3および7〜8のいずれか1項にて特徴付けられるモノクローナル抗体によって認識される、胎児赤血球上の表面抗原。
【請求項10】
請求項9に記載の表面抗原を認識するかあるいは特異的に結合することを特徴とする抗体。
【請求項11】
サンプル中の胎児細胞を検出および同定するための、請求項1〜3、7、8、または10のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体の使用。
【請求項12】
母体血液サンプル中の胎児細胞を検出および同定するための、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
請求項1〜3、7、8、または10のいずれか1項に記載の抗体によって前記胎児細胞を標識することを特徴とする、サンプル中の胎児細胞を検出あるいは同定する方法。
【請求項14】
前記サンプルが母体血液あるいは母体血液のサンプルであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記検出および同定の後で、前記胎児細胞を、染色体及び/又は遺伝子の異常、欠損及び/又は変異について分析することを特徴とする、
請求項13〜14に記載の方法によって検出および同定された胎児細胞中の、染色体及び/又は遺伝子の異常、欠損及び/又は変異を検出するための、請求項13あるいは14に記載の方法の使用。
【請求項16】
前記モノクローナル抗体と結合した細胞を、フローサイトメトリー、固相分離、免疫磁性ビーズ分離、プラスチック表面上でのパニングなどによって分離することを特徴とする、請求項11〜15のいずれか1項に記載の使用または方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−530629(P2007−530629A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505500(P2007−505500)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003371
【国際公開番号】WO2005/100401
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(502175620)アトナーゲン アクチエンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】ADNAGEN AG
【Fターム(参考)】