説明

胸部撮像のための断層合成装置

【課題】影像平面に平行な物体内の任意の平面の影像が、ただ一組の影像から再構成できるようにし、従来の各平面の再構成にそれぞれ別々の一組の影像を必要とする問題を解決する。
【解決手段】物体(20)のまわりの円弧の各種位置にX線源12が移動して物体の背後の平面に置かれた固定検出器20を照明する。データ処理器10が検出器からデータを集め、運動制御器8が物体のまわりに線源を移動させる。線源が円弧に沿って移動するにつれて、検出器は画像データの組を次々に発生する。画像処理器は画像データの組に応答して物体領域内の点のX線吸収を表わす出力画像信号を発生する。処理器は画像平面データを、X線源が直線状に移動したとすれば発生したはずのデータに対応した形に変換する。その結果、従来の技術と装置が物体領域のX線吸収の最終的な表示を生成するのに使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1996年7月23日出願の米国予備特許出願60/022,276の継続出願である。
【0002】
本発明はX線撮像に関し、詳しくは胴体部の放射線造影法に関し、さらに詳しくは原影像データをデジタル処理することによりX線像を生成する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
胴体部のX線像を生成する胴体部放射線撮像技術が良く知られている。X線造影の初期の形態では、X線は注目している胴体部を透過するように指し向けられ、検出器に入射するX線の強度分布に基づく影像を生成した。このような技術により生成された影像はしばしば傷または異常個所を不明瞭にする構造的な、または解剖学的なノイズに悩まされてきた。構造ノイズはたとえば病変部を含むまたは覆う正常組織により生じる。
【0004】
こうした構造ノイズの影響を減少するデジタル処理技術が開発されている。この技術の1つにはデジタル断層合成として一般に知られている。この技術は放射写真フィルムまたはデジタル検出器のような検出媒体中の点の配列から得られたデジタル化X線情報を利用している。この検出された強度データから、造影すべき領域のX線吸収を表わす信号を生成する。
【0005】
X線造影法は初期胸部(乳房)ガンを検出する効果的な方法となった。デジタル造像法が増大するにつれて、デジタル乳房造影写真法は胸部ガンの検出のための最良の方法としてフィルムスクリーン乳房造影写真法に取って代わるものと期待されている。デジタル造影法はまた他の放射線学の分野でフィルムスクリーン造影法に取って代わることが期待されている。デジタル検出器の導入は、従来実用的でなかった数種の方法に放射線造影法に応用する機会を提供する。これらの方法には改良されたデジタル断層合成法がある。乳房造影法においては、この方法を実施すると胸部ガンからの生存率を増し、死亡率を減少し、負の生検を減じる可能性がある。
【0006】
従来のフィルムスクリーン断層造影法では、X線源とフィルムスクリーン検出器は反対方向に移動して、映像の特徴が実質的に一平面内でのみ鋭い焦点で結像するように構成されている。これら2つの技術は図1と図2に示されている。図1に示されたトゥインニング法では、物体平面内の支点のまわりでX線源(管)
と検出器を同時に直線状に移動させ、それによりただ1つの物体平面内に鋭い焦点で結像させた物体影像を形成する。
【0007】
他のすべての平面からの投影はぼかされる。この技術を使用すれば、「焦点が合った」と考えられる物体まわりの範囲が存在する。この範囲は切断厚さ(Section Thickness)と呼ばれる。一般に切断厚さはX線源の運動振幅(角度)に反比例する。
【0008】
図2に示されたグロスマン法はトゥインニング法に似ているが、X線源と検出器の回転運動を伴う。ここでもこれらは固定間隔を保ったまま一緒に支点のまわりを回転する。これらのいずれの技術においても、各断層面、並びに断層角度を通じたX線源及び検出器の全運動に対する1回以上の露出が必要になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
グロスマン法を用いる従来のデジタル断層造影法では、X線源(管)を物体及び検出器の周りに円弧を描いて移動させながら多数の影像を撮像する。従来の断層造影法ではまたトゥインニング法を用いても行われている。影像をシフトしかつ加算することにより、この限られた枚数の影像から任意平面を再構成することが可能である。しかし、これらの技術は造影すべき物体に対して移動する線源と検出器による胴体断層造影にのみ利用されている。その結果、線源と検出器の位置の不確定性が影像をぼかすことになる。
【0010】
従って、本発明の目的は、改良された断層造影装置及び方法を提供することにある。発明の他の目的は低X線線量しか必要のない断層造影装置及び方法を提供することにある。本発明のさらに他の目的は正確且つ高分解能の胴体断面影像の生成が可能な断層造影装置及び方法を提供することにある。本発明の別の目的は従来よりも単純な構造と向上した精度を有する断層造影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は新規な断層X線造影装置及び方法を提供する。本発明による装置は、X線源と、影像平面内に配置されたデジタル検出器と、デジタル影像データ処理器と制御器とより成る。X線源と検出器は、影像平面に平行な物体平面内のまわりに配置されている物体領域の両側に配置されている。線源は、そこからのX線が物体領域へ差し向けられ次いで透過して検出器へ向かうように、検出器と対面関係にある。制御器は検出器に対向した円弧に沿って線源を移動させる。線源が円弧に沿って移動するにつれて、検出器は円弧に沿った一連の引続く点に対して対応した一連の引続く影像データの組を生成する。ここに各データの組は、線源がその時点の現在位置に対して検出器へ入射するX線の強度を表わす。影像データ処理器は影像データの組に応答して物体平面内にX線吸収を表す出力影像信号を生成する。そうすることにより、処理器は影像データを、X線源が円弧に沿ってではなくて影像平面に平行な直線に沿って移動したならば得られる影像データの形に変換する。得られる影像データはトゥインニング型のような通常の直線運動により生成される影像データに相当するので、従来の技術を使用して物体領域のX線吸収を表す最終表示を生成することができる。
【0012】
このように、本発明は回転するX線源と固定した検出器を使用する。これに対して従来技術は移動する検出器を利用する。本発明が上記の従来技術と異なる主な点は、固定検出器を使用する点にある。この技術では物体の周りを円弧状に移動するX線源(管)と、静止した平面状検出器を用い、静止した物体領域(又は患者)の任意の断層影像平面を再構成することにより、断層影像を生成することができる。本発明は既存のデジタルX線装置に適用することができる利点を有する。本発明の他の利点は検出器が造影される物体に対して静止していることであり、それにより位置の不正確さの原因の一つを除くことができる。
【0013】
本発明の他の利点は、影像平面に平行な物体内の任意の平面が、ただ一組の影像から再構成できることである。これに対して従来の技術では、物体内の各平面の再構成には新たな一組の影像を取得する必要がある。乳房造影に応用される断層造影技術では、放射線技術者は一連の断層影像を観察して被疑領域が本当の病変部か或いは構成物(structures)が重畳しているせいかを判断することができる。もし本当ならば、断層造影技術は重畳した構成物からのノイズを減じることにより病変領域のより良好な影像を与えるであろう。放射線技術者は病変を分類するのに自信が持て、良性病変の生験の数を減じることが期待できる。
【0014】
本発明の上記目的及び以下に述べる目的、特徴、及び作用効果は、添付図面を参照しての次の説明からより十分に理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を具体化する装置4は図3に示されている。装置4は制御器8、デジタル影像処理器10、X線源(管)12、及び影像平面IP内に配置したデジタルX線検出器14よりなる。支持構造16が、下記のように線源12からのX線が検出器14に指向されるようにして、検出器14に対して相対的に線源12を支持している。物体領域20は線源12と検出器14との間に形成され、物体平面OPに沿って及びその周りに延びており、又X線が線源12から検出器14まで進行する経路に存在している。図示の実施例では、検出器14はX線検出素子の二次元平面配列体よりなり、影像平面IP内に存在している。
【0016】
図示の実施例では、支持構造16は関節で枢着されており、第1部分16A及び第2部分16Bを有する。第1部分16aは末端16aから軸線Aに沿って延び、第2部分16Bは軸線Bに沿ってX線源12に向けて延びている。第1部分16Aと第2部分16Bとは会合端で軸線Aに直交する軸線Pで枢着されている。作動子30が制御器8からの制御信号に応じて部分16B(及び軸線B)の部分16A(及び軸線A)に対する角度を決定するように選択制御される。本実施例では、軸線Pは物体平面OPと線源12との間にあるが、軸線Pは他の実施例では物体平面OP又はその下側にあっても良い。例示として、X線源12及び支持構造16はGeneralElectricMedicalSystems社のモデルDMRのMagnetgraphySystemを使用できる。
【0017】
好ましい実施例では、制御器8は部分16Bの部分16A(及び検出器14)に対する角度位置を調整するようにプログラムされたデジタルコンピュータである。影像データ処理器10も又好ましくは入射X線に応答して検出器14により生成されるデータを処理するようにプログラムされているデジタルコンピュータである。このような処理器10はそのほか従来知られている技術等によりX線源12からのX線の放出を制御するように機能する。他の実施例では、単一のプ口グラム制御コンピュータを使用して制御器8及び処理器10の機能を実行できる。
【0018】
上記のように、好ましい実施例における検出器14はX線検出素子(又は検出画素)を二次元配列したものよりなる、平面状の又は平坦面状の検出器である。これらの素子はシンチレータ素子(入射X線に応答して光子を放出する)及び光検出ダイオード(光検出素子)よりなり、光検出ダイオードはシンチレータ素子に入射するX線強度分布を表すデジタル信号表示を生成する。他の形式のデジタルX線検出器も使用でき、平面状のものでも湾曲したものでも良い。各検出素子は処理器10により呼び出されて処理器10に影像平面IPにおけるX線強度部分布を表すデジタルデータを供給する。好ましくは、検出器14の検出素子は小型の集積回路アレイの一部を構成するから、高解像度の影像表示を得ることが可能である。別の実施例では、電荷結合デバイス(CCD)又は直接デジタル検出器(X線を直接デジタル信号に変換する)を使用しても良い。
【0019】
デジタル影像処理器10は以下に述べる変換を行うようにプログラムされた公知のデジタルコンピュータを使用できる。図4はこうした処理器(コンピュータ)10’を例示する。すなわちコンピュータ10’はデジタル演算器21、デジタル影像メモリ22、X線制御器24、デジタルディスク集積部26を含んでいる。デジタル演算器21はデジタル影像データ28に接続され、制御器24は図3の作動子30に接続されており、線源12を移動させてその角度位置を制御する。コンピュータ10’はさらに表示部10aを含むか又は別個のモニタ10bに画像表示の指示を与えることができる。制御器24は又、多重フォーマットカメラ10cのような他の装置を駆動することもできる。更に制御器24はX線制御信号29のような信号によりX線源に指示を与えて照射量を制御することができる。
【0020】
図5は、線源12により発生されるX線により物体20と影像平面IPの制御を行う図4に示した制御器10’の動作を示す。図5に示したように、角度φは、影像平面IPに垂直な軸線Aに対する支持部分16B(図3)の角度を表す。
【0021】
これに対して、角度θは物体20内の任意の点J(x,z)に交差するX線の方向と影像平面IPに垂直な垂線とのなす角度として定義される。角度θはφ、x、及びzの関数であり次式で表される。
【0022】
θ(φ,x,z)=arctan{(Lsinφ+x)/(Lcosφ+D−z)}(1)
ここに、x、zは線源の回転面内にある軸に対応し、LとDは図5に定義されている。この角度θから、点xiは物体点J(x、z)を影像平面IPに投影した点となる。
【0023】
xi=x+{z(Lsinφ+x)/(Lcosφ+D−z)} (2)
xi(φ,x,z)はしたがって軸線Pの周りに円弧Cに沿って回転させたX線管から放出されるX線により形成される影像点となる。この型の運動にあっては、影像平面から焦点までの垂直距離は角度φに依存する。これはX線管が影像平面IPに対して平行な線源平面SPを移動するトゥインニング法により形成される影像とは対照的である。従って、物体内の点は位置の関数だけではなくて角度φだけ拡大される。
【0024】
M(φ,z)={(Lcosφ+x)/(Lcosφ+D−z)} (3)
X線管を円弧Cに沿って回転させることにより、物体点の倍率は角度φにより変わる。従って、z=(定数)の関係は、トゥインニング法により形成された影像で可能であった、zの関数だけ影像点を単純にシフトすることだけでは達成できない。本発明に従って、線源の回転により形成された影像は、焦点が影像面IP(図5の点線参照)に平行な線源平面SPに沿って移動されたときに形成されるものに近似した新規な影像を構成するように変換される。この新規な影像データは、影像データの組を単純にシフトしそして加算することにより物体内の断層造影面を再構成するのに使用される。
【0025】
より具体的に記載すると、もしもX線源12が角度φだけ回転され、水平面内で影像から距離(L+D)にとどまるように拘束されるなら(線源位置12’のように)、物体点に交差するX線の角度は次式で与えられる。
【0026】
θ’(φ,x,z)=arctan{(Ltanφ+x)/(L+D−z)} (4)
式(4)から、SPより物体点J(x,z)を経て影像平面IPに投影した影像点xi’は次式で与えられる。
【0027】
xi’(φ,x,z)=x+{z(Ltanφ+x)/(L+D−z)} (5)
本発明に従うと、X線源は式(2)の影像点を有する影像を生成する。影像中の全ての点xiに対し既知の角度φを使用すると、選択されたzに対して式(2)から物体点xを決めることができる。得られたφ、x、及びzの値を次に式(5)に代入すると、新規な影像中のxi’に対する値を決定できる。このようにして生成された新規な影像の組を使用して、トゥインニング法に類似した単純な線形シフト法を使用するとzにおける断層影像平面OPを再構成することができる。
【0028】
各所望の断層影像平面に対する一組の新規な影像の再構成技術は、平面OPの外側の構成物に対しては小さい影像ひずみを生じる。その理由は、焦点の軸線P周りを回転するときに生じる物体20を通るX線の経路が、焦点が水平面内を移動しているときに起きる経路とは少し異なるためである。ひずみの大きさは再構成される平面からの距離が大きいほど大きくなり、又影像の中心軸線すなわちx=0の点からの距離が大きいほど大きくなる。例示の目的で、本発明の造影装置をL=44cm、D=22cm、φ=15℃とし、再構成される平面を影像平面IPから上にz=4cmのところにあるものとする。x=10cmのところにある再構成された平面に対し、再構成される平面の上側5cmにある物体に対する最大ひずみは約195μになる。この影像形状に対する直線断層造影シフトは約7606μであるので、このひずみは断層造影シフトの約2.5%になる。従って、新規な影像の生成により引き起こされるひずみの大きさは断層造影再構成法に使用されている直線シフト法により引き起こされるひずみに比して小さい。この理由で、本発明により生じるひずみは断層造影法により影像の品質に実質的な影響は持たない。
【0029】
本発明は従って完全視野デジタル乳房造影法を利用する胸部ないし乳房の造影に特に有用である。断層造影法はこのようにして乳房の任意の箇所の焦点が合った断層影像平面の再構成を可能にする。放射線は低く単一視点の従来の乳房造影法に比肩できる。予備実験の結果は塊部の可視性が本発明の断層影像合成法により向上した。本発明の断層影像合成法は乳房造影法の一意性を改善し、病変部分の周辺の可視性を増し、初期ガン、特に女性の放射線的に高密度の乳ガンの検出を改善する可能性を有する。
【0030】
特に、本発明は放射線技術者が通常の乳房組織の構造的なノイズを通して観察することにより、検出性を向上させ、乳ガンの特性付けを改善することを可能にする。従来のフィルムスタリーン断層造影では、X線源及びフィルムスクリーン検出器が反対方向に移動され、その結果影像平面における特徴だけが焦点合わせされていた。これに対して本発明の断層造影法では、図6に示したように、X線源(管)60が静止した乳房62及び検出器63の上方を円弧61に沿って移動する間に、多数の影像が取得される。各角度φで検出器63により得られた影像は低線量であり、全ての影像に対する全照射線量は標準的な一枚の乳房造影に使用される線量と同等か又は若干多い程度である。複数のデジタル影像をシフトし、そして加算することにより、式(5)による影像変換後に、検出器63に平行な乳房内の任意の平面64(すなわち乳房内のzが任意に選択される)を再構成することができる。本発明の技術によると、各々が焦点の合った乳房内単一平面64を表示している一連の影像が乳房62内の全体に対して得られる。
【0031】
図5を参照するに、線源12は角度φにより規定される円弧Cと、軸線X、Zにより規定される面内を移動することがわかる。従って平面13は好ましくは物体20、検出器又は影像平面IPのほぼ中心を通って延びている。
【0032】
本発明は好ましくは高速読み出し頻度を持つ完全視野平面型のデジタル検出器を利用する。このような検出器は低ノイズであり、大きい平面面積を有し、最小の影像ひずみを有し、高速影像読み出し頻度を有するので、乳房の断層影像合成用を臨床的な設定において実用的なものとする。
【0033】
本発明は本発明に従って例えば乳房造影装置を形成するために在来のハードウエアを利用することができる。図7は完全視野デジタル影像検出(受像)器72を有するGeneralElectricモデルDMR乳房造影装置71を使用し、本発明により構成した1つの装置70を例示する。この装置は検出器72の面に垂直な軸線から±27°までの任意の角度φで影像を撮像することを可能にする。図示のように、X線源73は腕75により支持されて検出器72の上側にある枢着軸線74の周りに枢動する。X線源73は露光中は静止しており、次いで次の位置に移動して次の影像を形成する。好ましくはX線源の運動はコンピュータにより監視し、制御するのがよいが、手動で移動させても構わない。
【0034】
本発明の1実施例では、デジタル検出器72(図7)はGeneralE1ectric社より市販されているアモルファスシリコントランジスタ・ダイオードアレイ上の沃化セシウム(CeI)より構成される。この検出器72は100μの画素ピッチを有し、影像読み出し時間は300ミリ秒である。
【0035】
本発明では、好ましくは、腕75の選択角度φを決定し、腕をそこへ移動させるための作動又は制御機構76を使用する。例えば、角度φはLucusControlSystemProducts社(米国バージニア州ハンプトン所在)の、角度範囲±20°、精度±0.1%(0〜10°範囲)、精度±1%(10〜20°範囲)を有する高分解能精密傾斜計(モデル02538−01)により決定できる。
【0036】
図8は本発明に従って、目標乳房よりも上方にある円弧84に沿った個別のX線源82a〜82dから、断層影像合成の投影像を取得することを例示している。例示を明瞭にするために、4個のX線源を示してあるが、当業者は線源80を任意の個数用いても良く又任意のX線源80位置に配置しても良いことは明らかであろう。乳房81内の任意平面83の断層影像合成の影像は次に以下に示す方法を使用して再構成される。特にX線源位置82a〜82dからの投影影像85a〜85dは、位置82a’〜82d’にあるX線源から得られるであろう影像87a〜87dを模擬するようにデジタル処理器86により変換される。これらの変換において、検出器88は移動しない。むしろ、検出器の運動は処理器(コンピュータ)86の中で影像87をシフトすることにより模擬される。変換とシフトのアルゴリズムは所望により繰り返すことにより検出器88の上方のz軸線に沿った任意平面83に対する断層影像89を再構成する。影像89を得るための数学的な再構成の方法は既に説明した通りである。
【0037】
本発明の装置により得られる典型的な影像は一枚あたり26〜30kVp、10〜40mAで得ることができ、約±20°の範囲内(φの範囲内)で6〜10枚の影像を得ることができる。合計線量は従来のフィルムスクリーン影像のそれよりも大きいこともあり小さいこともある。
【0038】
本発明の断層影像合成の影像は例えばサンマイクロシステム社のSpark20ワークステーションを使用して再構成することができる。各角度φに対する初期影像が得られたら、1.5〜3mm間隔で再構成された断層影像が乳房全体で焦点のあった影像として得られる。
【0039】
本発明の好ましい実施例では、影像は、従来のようにX線管が移動するにつれて連続に得られるのではなくて、飛び飛びのX線源位置で得られる。その結果、構成物のぼけは連続影像の取得の場合に典型的に見られるような滑らかなぼけではない。例えば、断層影像合成データの組に使用されるのが9つの影像であるとすると、焦点が合った平面の上下における物体は再構成された影像中に9つの別々の物体として表示される。各物体は元の物体のコントラストの約9分の1を有するであろう。大きな灰化部のような高コントラスト物体に対しては、灰化部の9つの影像は可視化する。焦点が合っていない平面の外側の影像構造は実質的にX線源の運動方向に反復される。平面外の構成物のコントラストは大幅に減じるが高頻度情報は保持される。
【0040】
再構成された影像は更に改善できる。例えば、自己マスキング断層影像合成法はX線源の移動方向の低頻度周波情報を減じる。飛び飛びのサンプリングのため、他の影像処理法を使用して焦点の合った平面の上方又は下方の焦点の合ってない平面からの寄与を減じても良い。例えば、適当な技術は濃度の高い灰化部のような焦点の合っていない構成物の平面を同定し、その全ての他の平面への寄与を計算する。次いで、構成物の影像は、焦点の合っている平面内のもの以外は全ての平面から除去される。
【0041】
本発明によると、乳房造影のための断層影像合成法の使用として数種の用途が見込まれる。先ず、断層影像合成法は放射線造影的に緻密な乳房を有する女性に対する価値の高い選別手段であることを示すことができる。重畳している構成物をぼかすことにより乳房の中心部を見る能力は、乳ガンの早期検診における乳房造影による選別の感度を向上させる。本発明の断層影像合成法は又磁気共鳴吸収のコストよりも遥かに安価に、緻密な乳房のガンや多重焦点ガンを検出する能力を有する。本発明の断層影像合成法は問題解決のため、或いは乳房の診断的な造影に使用することができる。従来の乳房造影技術は、全体の乳房生験の70〜90%が陰性であるので、貧弱な同定性しか示さないが、本発明の断層影像合成技術は放射線診断技術者に対して潜在的な病変の改善された影像を提供することができる。本発明は又、病変の分類に際して放射線技術者に大きな自信を与え、良性生験の数を減少することができる利点を有する。本発明は更に診断検診を伴う病変部の全体的な診断評価の実行を容易にし、時間を節約し、さらに患者の放射線への被曝も減じることができる。
【0042】
他の利点も本発明により実現できる。例えば、本発明による断層影像合成法は病変部の大きさに関する3次元的な情報(巨大石灰化の大きさ、分布の様子)を提供する。石灰化の3次元的分布は良性の病変と悪性のそれを区別するための重要な指標であると考えられる。更に本発明の断層影像合成法はわずかな修正を加えれば従来の乳房造影法に応用できる。例えば本発明の影像取得装置には数種の利点が存在する。1)胸部(乳房)又は腹部の近くに可動物が存在しない。2)従来の乳房造影装置を容易に改変して本発明の型の運動を可能にすることができる。なぜなら多くは乳房の上で円弧状にX線管を移動させる能力を有するからである。3)断層影像合成を行うように改変した装置はなお通常の乳房造影を行うことができ、そのため専用の断層影像合成装置を必要としない。X線源の動力化した運動によりほぼ3〜5秒程度で全ての断層影像合成の影像を取得することができる。露出回数は既存の装置での拡大像と類似したものであるので、これは臨床的に利用できる十分に早い時間である。
【0043】
本発明はその精神から逸脱しない範囲で多くの他の形態で具体化でききる。本発明の実施例は全ての点で例示であり発明を制限するものと考えるべきではない。本発明の範囲は特許請求の範囲に記載されるもので、前記の記載によるものではない。従って、請求の範囲と均等な意味及び範囲にある全ての変形は本発明に包含されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】従来のトゥインニング型の胴体断層放射線装置の模式図である。
【図2】従来のグロスマン型の胴体断層放射線装置の模式図である。
【図3】本発明に従って構成されたデジタル断層影像合成装置を示す図である。
【図4】図3の装置のデジタル影像処理装置を示す図である。
【図5】図3の装置の動作の説明図である。
【図6】断層造影平面を取得する本発明の動作局面を示す図である。
【図7】X線管を回転軸の周りに及び固定検出器に対して回転させるための機構を示す図である。
【図8】本発明に従って行われる影像平面の再構成及び影像取得を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体領域にデジタル断層影像合成法を実施する装置において、前記物体領域を透過するX線放射線を検出して前記放射線の強度を表す影像データを生成するX線検出器(14)と、前記X線を発生するための可動のX線源(12)と、前記X線源(12)を前記物体領域の周りの円弧(C)に沿って複数位置に移動させるための運動制御器(8)と、前記影像データを有する影像データの組に基づいて前記物体領域内のX線吸収点(箇所)を決定するデータ処理器(10)とよりなり、前記X線検出器(14)が固定されている、デジタル断層影像合成法を実施する装置。
【請求項2】
前記データ処理器(10)は、前記物体領域を表す映像信号を、前記物体領域内のX線吸収点の空間分布として発生する手段を有する請求項1の装置。
【請求項3】
前記円弧(C)は平面(13)内にあり、且つ前記円弧(C)は前記平面(13)内の前記検出器の面に直交する線(A)上に回転軸線(P)を有している請求項1の装置。
【請求項4】
前記物体領域(20)は物体平面(OP)の周りに配置されており、前記データ処理器(8)は更に前記影像データを、(a)前記物体平面(OP)に対して実質的に平行な線であって、前記円弧(C)を含む前記平面(13)内にある線(SP)と、(b)前記回転軸線(P)と前記影像データに対応する位置の一つとにより規定される線であって前記円弧(C)を含む前記平面(13)内にある線(B)と、の交差点に存在するX線源から発生されることが期待されるX線放射線の露出強度を表す形態に変換する手段を具備している請求項3の装置。
【請求項5】
前記回転軸線(P)と前記円弧(C)を含む前記平面(13)が前記線源(12)と前記検出器(14)との間にある回転中心を規定している請求項3の装置。
【請求項6】
前記物体平面(OP)に実質的に平行な前記線は前記円弧(C)に接している請求項4の装置。
【請求項7】
X線源(12)はX線管である請求項1の装置。
【請求項8】
前記検出器(14)は複数個のX線検出素子のアレイであり、前記影像データは、各々が前記素子の各々により検出されるX線放射に対応する値を有する複数の強度データ値を含んでいる請求項1の装置。
【請求項9】
前記検出器(14)は検出素子の2次元アレイであり、前記影像データは、各々が前記素子の各々に対応する複数の強度データ値を含んでいる請求項1の装置。
【請求項10】
前記制御器(8)はほぼ前記円弧の回転中心に位置した第1末端と、前記検出器(14)を剛的に支持する第2末端とを有する剛性の第1支持構造(16A)を有する請求項1の装置。
【請求項11】
前記第1支持構造(16A)の前記第1末端に前記回転中心で枢着された第1端と、前記X線源を前記回転中心から固定距離に支持した第2端とを有する剛性の第2支持構造(16B)を有し、それにより前記X線源(12)が前記回転中心の周りに前記円弧に沿って回転できるようにした請求項10の装置。
【請求項12】
前記X線源(12)が前記第2支持構造(16B)にほぼ整列したX線を放射するように配置されている請求項11の装置。
【請求項13】
前記制御器(8)からの角度制御信号に応じて前記X線源(12)を前記第1及び第2支持構造(16A,16B)の軸線の間で形成される角度位置であって前記複数位置の1つへ移動させる作動子を有する請求項11の装置。
【請求項14】
前記制御器(8)は前記第1及び第2支持構造(16A、16B)の間の角度を決定する手段を有する請求項11の装置。
【請求項15】
前記制御器(8)は(a)前記検出器(14)の面に垂直な線であって前記円弧の回転中心(P)を通る線(A)と、(b)前記円弧上の前記X線源の位置と前記回転中心(P)により規定される線(B)との間に形成される角度を決定する手段を有する請求項1の装置。
【請求項16】
前記制御器(8)は前記X線源(12)を前記円弧(C)に沿った位置を制御する手段を有するコンピュータである請求項1の装置。
【請求項17】
データ処理器(10)はコンピュータを含む請求項1の装置。
【請求項18】
コンピュータはさらに前記円弧(C)に沿ったX線源(12)の選択位置を制御する手段を制御するものである請求項17の装置。
【請求項19】
前記X線源(12)は前記コンピュータにより選択的にオン・オフされる請求項17の装置。
【請求項20】
前記検出器(14)は複数のシンチレータ素子とそれらに関連した光検出素子よりなり、各光検出素子は前記シンチレータ素子の一つへのX線強度を表すデジタルか信号を生成するものである請求項1の装置。
【請求項21】
前記検出器(14)は集積回路アレイである請求項1の装置。
【請求項22】
(a)前記X線源(73)を回転中心の周りに枢着自在に支持する第1腕(75)と、(b)前記検出器(72)を前記回転中心(74)に対して剛的に支持する第2腕を有するX線支持構造体を有する請求項1の装置。
【請求項23】
前記X線源(73)を前記第1及び第2腕の間に形成される角度に対応する選択位置に移動させるために前記支持構造体(71)を制御するコンピュータを含んでいる請求項22の装置。
【請求項24】
前記検出器(14)は沃化セシウム蛍光体をアモルファスシリコン光ダイオードアレイ上に設けたものである請求項1の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−216052(P2007−216052A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128397(P2007−128397)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【分割の表示】特願平10−507173の分割
【原出願日】平成9年7月22日(1997.7.22)
【出願人】(300052453)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション (24)
【Fターム(参考)】