説明

脅威物質を検出及び識別するシステム及び方法

【課題】脅威物質の試料を基板に付着させるシステム及び方法を提供する。
【解決手段】単一の照明源は、基板上に付着した脅威物質を複数の光子で照明し、弾性散乱光子及びラマン散乱光子を発生する。基板上の脅威物質を識別する。このシステム及び方法は、脅威物質の存在または不在を検出するトリガモードと、脅威物質を識別する識別モードで動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は一般に、有害物質を検出及び識別するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、「生物学的ラマン静電検出識別(BioREDI)センサの開発(Development of a Biological Raman Electrostatic Detector Identifier(BioREDI)Sensor)」という名称の、2005年2月9日出願の米国特許出願第60/651,375号の利益を主張する。
脅威物質の展開は、人間及び経済双方の健康に重大な脅威をもたらす。この脅威は、脅威物質の展開を検出する能力が制限されているため倍加している。先行技術の検出戦略は、脅威物質の検出及び識別のための個別の計装に依存している。浮遊物質を検出する従来の手段は、レーザー散乱法、紫外線レーザー誘起蛍光法(UV−LIF)及びレーザー誘起放電分光法(LIBS)を含む、比較的非特異的な光学的及び分光的方法を含む。脅威物質を識別する従来の手段は、湿式化学法または分光法を含む。試薬に基づく生物脅威物質の識別は、特定の抗体、遺伝標識、培養による増殖といった方法を含む。極めて特異的であるが、こうした識別方法は時間がかかり、労働集約的で、コストも高くつく。分光手段は、識別のため、試薬に基づく識別法に対する代替案を提供し、質量分光測定法、赤外線分光法、ラマン分光法、及びイメージング分光法を含む。質量分光測定法は背景干渉に影響されやすいという制限がある。赤外分光法は低い感度を示す。ラマン分光法は、標準ラマン分光法、紫外線共振ラマン分光法、表面増強ラマン分光法(SERS)及び非線形ラマン分光法を含む、いくつかの異なる構成で実現可能である。標準ラマン分光法は、浮遊物質を検出するために十分な感度及び特異性を実証したが、他の形態のラマン分光法は、不十分な感度、特異性またはシグネチャの堅牢性が不十分であるという欠点を有する。先行技術のイメージング分光法は、光学イメージングのための広帯域光源から、分光イメージングのための実質上単色の光源への切り換えが必要であるという制限がある。このため、検出と識別との間の期間が長くなり、その間に試料が劣化することがある。
【0003】
本開示は、試料付着と同時に試料を検出及び識別する、ラマン分光法及びラマンイメージング分光法を使用した試薬を必要としないセンサを記述する。本開示のシステム及び方法はトリガモードまたは識別モードで動作できる。本開示は、単一の照明源を使用することによって、システム及び方法の複雑さを減少させるアプローチを記述する。
【発明の開示】
【0004】
本開示は、脅威物質の試料を基板に付着させるシステム及び方法を提供する。基板への脅威物質の試料の付着と実質上時間的に一致して脅威物質を検出及び識別する。オプションで、基板の試料を含む部分の非直線的な視野を分光計の入射スリットに結合する曲線マップに変換するファイバアレイスペクトル変換器を使用して、脅威物質の識別に適した空間分解ラマンスペクトルに変換する。
【0005】
1つの実施形態では、単一の照明源によって、基板に付着した脅威物質を複数の光子で照明し、弾性散乱光子及びラマン散乱光子を発生する。脅威物質の画像を形成する弾性散乱イメージングを使用して基板上の脅威物質によって発生した弾性散乱光子を分析し、ラマン分光法を使用して基板上の脅威物質によって発生したラマン散乱光子を分析することによって、脅威物質の識別を行ってもよい。ラマンスペクトルを少なくとも1つの基準ラマンライブラリスペクトルと比較して脅威物質を識別してもよい。ラマン散乱光子の分析はさらに、20cm-1未満のスペクトル分解能で約0cm-1〜約3500cm-1のラマンシフト範囲内のどこかでラマンスペクトルを生成することを含んでもよい。ラマン散乱光子の分析はさらに、20cm-1未満の全スペクトル分解能で約0cm-1〜約3500cm-1のラマンシフト範囲内で多数の空間的に独立した画像チャネルを同時に生成することを含んでもよい。
【0006】
1つの実施形態では、脅威物質によって発生した弾性散乱光子の分析は、CMOS検出器、CCD検出器または高フレームレートデジタル検出器のうちの1つをフィードバック制御機構と組み合わせて使用し、基板上の脅威物質の画像に自動的に焦点を合わせることを含む。また、ラマン散乱光子の分析は、波長可変フィルタ、帯域通過フィルタ、液晶波長可変フィルタ、干渉計、音響光学波長可変フィルタまたは分散光学素子からなるグループから選択される素子を、ラマン散乱光子が通過するようにして、複数の空間分解ラマンスペクトルを発生することを含んでもよい。また、ラマン散乱光子の分析は、線走査分光計、多点分光計、一点分光計または面分光計の1つをラマン散乱光子が通過するようにすることを含んでもよい。
【0007】
1つの実施形態では、光学系を使用して弾性散乱光子及びラマン散乱光子を収集し、その際前記照明源を光学通路に沿って配置し前記基板を平面に沿って配置し、その際光学通路または付着装置は基板平面に対して90°以外の角度をなす。
【0008】
1つの実施形態では、脅威物質を付着させ識別するシステム及び方法は、脅威物質の存在または不在を検出するトリガモードと、脅威物質を識別する識別モードとで動作する。トリガモードはトリガ期間を使用してもよく、識別モードは識別期間を使用してもよく、その際トリガ期間は識別期間より短い。1つの実施形態では、識別モードはトリガモードで脅威物質の存在が検出されると開始される。識別モードでの動作中に、追加量の脅威物質を蓄積してもよい。1つの実施形態では、識別モードは、トリガモードで脅威物質の存在が検出されると実質上同時に開始してもよい。
【0009】
基板への脅威物質の付着は、基板への脅威物質の超音波付着、エレクトロスプレー及び慣性衝突を使用して達成してもよい。1つの実施形態では、基板への脅威物質の試料の付着は、少なくとも50個の粒子を基板に付着させることを含む。基板への脅威物質の試料の付着は、密閉環境または外部環境から空気を収集することを含んでもよい。
【0010】
脅威物質は、細菌、ウイルス、原生動物、生物毒素、真菌、化学物質、放射線材料、及び爆発材料を含む有害物質でもよく、かつ/または浮遊粒子物質またはエアロゾル物質でもよい。
【0011】
さらに別の態様によれば、本開示は、脅威物質の試料を基板に付着させるシステム及び方法を提供する。単一の照明源が、基板に付着した脅威物質を複数の光子で照明し、弾性散乱光子及びラマン散乱光子を発生する。基板上の脅威物質を識別する。このシステム及び方法は、脅威物質の存在または不在を検出するトリガモードと、脅威物質を識別する識別モードとで動作する。オプションで、脅威物質を識別するため、基板の試料を含む部分の非直線的な視野を分光計の入射スリットに結合する曲線マップに変換するファイバアレイスペクトル変換器を使用する。
【0012】
基板への脅威物質の試料の付着は、基板上の脅威物質の識別の前に行ってもよい。基板への脅威物質の付着の前に、基板の背景レベルを識別してもよい。この実施形態では、基板上の脅威物質の識別は、基板への脅威物質の試料の付着と実質上時間的に一致してかまたはその後に行われる。
【0013】
さらに別の態様によれば、本開示は、脅威物質の試料を基板に付着させるシステム及び方法を提供する。基板上の脅威物質の画像を形成する弾性散乱イメージングを使用して脅威物質によって発生した弾性散乱光子を分析することによって、基板への脅威物質の付着を目視観察し、その際脅威物質の付着は、脅威物質の付着の目視観察と実質上時間的に一致する。脅威物質によって発生した弾性散乱光子の分析は、CMOS検出器、CCD検出器または高フレームレートデジタル検出器をフィードバック制御機構と組み合わせて使用し、基板上の脅威物質の画像に自動的に焦点を合わせることを含んでもよい。光学系によって弾性散乱光子を収集してもよく、その際光学系を基板に対して位置決めし基板の位置に対して移動させて、基板上の脅威物質の画像に焦点を合わせる。モードスクランブルとフレーム平均化とによって照明源の干渉縞を除去することによって、基板上の脅威物質の画像の画像コントラストを改善してもよい。基板上の脅威物質の付着の目視観察は分光計なしで行われる。
【0014】
さらに別の態様によれば、本開示は、脅威物質の試料を基板に付着させるシステム及び方法を提供する。単一の照明源が、基板上の脅威物質を複数の光子で照明し、弾性散乱光子を発生する。基板上の脅威物質の画像を形成する弾性散乱イメージングを使用して脅威物質によって発生した弾性散乱光子を分析することによって、基板への脅威物質の付着を目視観察する。
【0015】
さらに別の態様によれば、本開示は、基板に付着した脅威物質の試料を識別するシステム及び方法を提供する。第1の光収集装置が、脅威物質によって発生した弾性散乱光、及び脅威物質によって発生したラマン散乱光の少なくとも1つを収集する。第2の光収集装置が、脅威物質によって発生したラマン散乱光を収集し、その際第2の光収集装置は、非直線的な視野を曲線マップに変換する1次元ファイバスタックに引き込まれる光ファイバの2次元非直線アレイを備え、曲線ファイバスタックはラマン分光計の入射スリットに結合される。ラマン分光法を使用して、基板に付着した脅威物質を識別する。
【0016】
さらに別の態様によれば、本開示は、基板に付着した脅威物質の試料を識別するシステム及び方法を提供する。単一の照明源によって複数の光子で脅威物質を照明し、脅威物質によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子を発生する。光学系は、脅威物質によって発生した弾性散乱光子、及び脅威物質によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の少なくとも1つを収集し、その際前記照明源を光学通路に沿って配置し、前記基板を平面に沿って配置し、その際光学通路または付着装置は基板平面に対して90°以外の角度をなす。弾性散乱光子、及び脅威物質によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の少なくとも1つに位相マスクを通過させることによって、光学系の被写界深度を拡大する。
【0017】
本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本出願に組み入れられ本出願の一部を構成する添付図面は、本開示の実施形態を例示し、記載と合わせて本開示の原理を説明する役目を果たす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ここで、添付図面中に例示される、本開示の実施形態を詳細に参照する。可能な限り、同一の参照符号が、全図を通じて同一または類似の部分を指すために使用される。
【0019】
図1は、本開示の方法を実行するために使用し得るシステム100を例示する。システム100は、付着手段101及び検出手段113を含む。付着手段は、周囲環境102に開かれた吸気ポート104、収集機106、濃縮機108、試料109、付着基板110(例えば、コンパクトディスク)、基板平面111、及び基板位置決め機構112を含んでもよい。識別手段113は、第1の光学系114、オプションの位相マスク115、ビームスプリッタ116、第2の光学系117、光学通路119、弾性散乱画像検出器118、照明源122、ダイクロイックミラー120、ミラー124、分光検出器126、分光計127、及びスペクトルライブラリ130を有するプロセッサ128を備える。
【0020】
図1に例示するように、試料は周囲環境102から収集され,その後濃縮される。試料は、浮遊粒子状物質またはエアロゾル物質を備えてもよい。周囲環境102は密閉環境及び外部環境を含む。密閉環境は、建造物、貯蔵容器、航空機、列車または他の大量輸送手段、及び人間の呼吸系を含む。密閉環境から空気を収集するため、システム100は、空気を密閉空間に循環させる建造物、輸送手段または貯蔵容器の空気調整または暖房システムに接続される。
【0021】
システム100が収集及び識別する試料は脅威物質を含む。脅威物質は有害物質を備え、細菌、ウイルス、原生動物、生物毒素、真菌、化学物質、放射線材料、及び爆発材料を含む。細菌は、炭疽菌、バチルス、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌、エルウィニア属、及びシュードモナス属を含む。ウイルスは、天然痘、インフルエンザ及びエボラウイルスから選択される病原性ウイルスを含む。生物毒素はリシンを含む。有害物質とは、人間等の動物に疾患、障害、不快、苦痛、または死をもたらし得る何らかの物質である。
【0022】
試料は多様な装置を使用して収集及び濃縮してよい。1つの実施形態では、空気を除去し試料を濃縮するバーチャルインパクタと組み合わせたエアロゾル収集機によって試料を収集する。第2の実施形態では、液体濃縮機と組み合わせたエアロゾル収集機を使用して試料を収集する。この収集及び濃縮処理は、収集用の空気の速度に応じて数分の1秒〜数分程度で行われる。その後、基板の表面に濃縮した試料を付着させる。慣性衝突、超音波付着、及びエレクトロスプレー付着を使用して基板の表面に試料を付着させればよい。
【0023】
1つの実施形態では、超音波付着を使用して試料を基板に付着させる。1つの実施形態では、ウェットウォール型サイクロ(登録商標)ン収集機を使用してエアロゾル及び粒子状物質を収集してもよい。水貯蔵タンクを含むリザーバに接続可能な検体含有流体を使用して、検体含有流体を超音波ノズル液体入口ポートに提供してもよい。また、超音波ノズルは、基板表面に付着する液体を集束させるため圧縮空気入口を含んでもよい。超音波スプレー装置を使用して、同じ空間位置に対して複数回スプレーを塗布し、望ましい視野での検体濃度を増大してもよい。1つの実施形態では、本開示を実現するため、ニューヨーク州ミルトン(Milton)のソノテック社(Sono−Tek Corporation)が製造するもののような超音波スプレー装置を使用してもよい。
【0024】
付着装置は、複数の試料粒子109を基板110に付着させる。1つの実施形態では、少なくとも1個の試料粒子を基板に付着させる。別の実施形態では、少なくとも50個の試料を基板に付着させる。別の実施形態では、少なくとも約50〜250個の試料粒子を基板に付着させる。別の実施形態では、少なくとも約250〜2500個の試料粒子を基板に付着させる。別の実施形態では、少なくとも約2500〜10,000個の試料粒子を基板に付着させる。別の実施形態では、少なくとも約10,000〜100,000個の試料粒子を基板に付着させる。別の実施形態では、少なくとも約100,000〜1,000,000個の試料粒子を基板に付着させる。
【0025】
図1をさらに参照すると、システム100は、光学通路119に沿って方向付けられた単一の照明源122を使用して、試料を複数の光子で照明し、弾性散乱光子、または試料によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子を発生する。1つの実施形態では、照明源は、試料を複数の光子で照明し、弾性散乱光子及びラマン散乱光子を発生する。照明源は低出力レーザーを含む。カリフォルニア州サンタクララ(Santa Clara)のコヒーレント社(Coherent Inc.)またはカリフォルニア州マウンテンビュー(Mountain View)のニューポート社スペクトラフィジックス事業部(Spectra−Physics Division of Newport Inc.)が製造する低出力レーザーが適切である。1つの実施形態では、照明源122の光学通路119は、2次元基板110によって定義される平面111から90°以外の角度をなす。別の実施形態では、付着手段101は、2次元基板110によって定義される平面111から90°以外の角度をなす。
【0026】
図1をさらに参照すると、システム100は第1の光学系114を有する。1つの実施形態では、光学系114は、試料によって発生した弾性散乱光子を収集する。第2の実施形態では、光学系114は、試料によって発生した弾性散乱光子及びラマン散乱光子を収集する。第3の実施形態では、光学系114は、試料によって発生した、弾性散乱光子、及び伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の少なくとも1つを収集する。
【0027】
図1をさらに参照すると、システム100は位相マスク115を含んでもよい。位相マスク115は、試料によって発生した、弾性散乱光子、及び伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の少なくとも1つに位相マスク115を通過させることによって、光学系の被写界深度を拡大するために使用される。
【0028】
システム100の1つの実施形態は、第2の光学系であるファイバアレイスペクトル変換器(“FAST”)を含んでもよい。図2を参照すると、FASTシステム200は、第1のレンズ206、照明源208、第1のフィルタ210、第2のフィルタ212、第2のレンズ214、ファイバ束の第1の端部216、及び分光計220に接続されるファイバ束の第2の端部218を含む。第1のレンズ206は、照明源の焦点を試料204に合わせて、レーザー波長以外の波長の、弾性散乱光子以外の全ての光子を収集する。これは試料によって放出またはラマン散乱された光子を含む。試料によって伝送または反射された光子はレーザーと同じ周波数を有するのでフィルタ素子212によって阻止される。レンズ206は試料によって発生した光子を平行にして光子を無限に投影する。第2のレンズ214は第1のレンズ206と組み合わせて使用され、第2のレンズ214の最終焦点面に画像を形成する。ファイバ束の第1の端部216はファイバ束の2次元非直線アレイから構成される。ファイバ束の第2の端部218はファイバ束の、直線及び曲線の形状を含み得る曲線アレイから構成される。
【0029】
本開示の1つの実施形態では、システム100は、弾性散乱イメージング検出器118を利用して付着を目視観察し、試料によって発生した弾性散乱光子を分析することによって基板上の試料の画像を形成する。この画像を使用して、試料の付着密度、形態及び集束を評価する。1つの実施形態では、イメージング分光計がない場合、付着を目視観察するため弾性散乱イメージングを使用する。第2の実施形態では、システム100は、試料を識別するため、弾性散乱イメージング検出器118を分光計127と組み合わせて利用する。1つの実施形態では、試料を識別するため、単一の低電力照明源を使用して、弾性散乱イメージング検出と分光識別とを同時に行う。
【0030】
図1をさらに参照すると、弾性散乱イメージング検出器118は、CMOS検出器、CCD検出器及び高フレームレートデジタル検出器の1つから構成される。システムは、検出器118をフィードバック制御機構と組み合わせて使用して、集光レンズの下の試料に自動的に焦点を合わせる。1つの実施形態では、光学系114の集光対物レンズを基板の位置に対して移動させて、基板上の試料の画像に焦点を合わせる。分光計127は、CCD、CMOS、CID(電荷注入素子)、ダイオードアレイ、光電子増倍管(PMT)、PMTアレイ、アバランシェフォトダイオードといった検出器を利用してもよい。
【0031】
本開示の1つの実施形態では、試料の弾性散乱画像を検出器上に収集し、モードスクランブルとフレーム平均化とを使用して照明源の干渉縞を除去することによって画像のコントラストを改善し最終画像を生じる。図3A及び図3Bは、本開示のシステムの1つの実施形態によって得られたヒト上皮細胞の弾性散乱画像を例示する。低電力レーザー源はヒト上皮細胞を照明し、高断面弾性散乱画像信号を生じる試料の弾性散乱画像を生成する。しかし、弾性散乱画像は通常、レーザー干渉縞の存在によってマスクされている。レーザー干渉縞はモードスクランブル及びフレーム平均化によって除去する。図3Aに例示するように、画像取り込みのために利用した20倍対物レンズの視野内の元来低コントラストな細胞オブジェクトの存在をマスクするレーザー干渉縞(すなわちスペックルパターン)が存在するため、ヒト上皮細胞は容易には観察できない。図3Bに例示するように、光ファイバを横断するモードをスクランブルし、単色レーザー光を有効にインコヒーレントにすることによって、細胞は容易に観察できるようになる。複数の画像を時間平均し、コヒーレントレーザースペックルパターンを有効に抑圧することによって細胞画像のコントラストを向上させる。図3Bの画像を得るため、10枚の画像を各々30フレーム/秒で収集した。
【0032】
本開示の別の実施形態では、照明源122の光学通路119または付着手段101が2次元基板110によって定義される平面111から90°以外の角度をなす時、光学系を使用して散乱光子を収集することによって、試料の弾性散乱画像を得る。1つの実施形態では、基板の平面の軸から60°ずれた、弾性散乱光子を収集する対物レンズを操作することによってこれを達成する。この実施形態は有限の対象矩形領域に焦点を合わせるが、この対象領域は対物レンズの視野より小さい。焦点の外れた対象領域を補償するため、拡張焦点深度(“EDF”)光学補償を使用して、顕微鏡対物レンズの全視野にわたる画像をイメージングしてもよい。EDFを実現するため、弾性散乱画像収集光学通路に位相マスクを配置して、点広がり関数(“PSF”)が焦点外れの影響を受けにくく、通過帯域内にゼロ値の領域が存在しない光学的伝達関数(“OTF”)を形成するような形でインコヒーレント光学系を修正する。OTFがゼロの領域を有さないので、デジタル処理を使用してサンプリングされた中間画像を「復元」することができる。さらに、OTFは焦点外れの影響を受けにくいので、同じデジタル処理によって焦点外れの全ての値を復元する。この複合光学/デジタル系は、回折限界PSFと同等だが、それよりはるかに広い焦点領域にわたるPSFを発生する。通常、DOFを8倍増大することが可能である。
【0033】
別の実施形態では、システム100は、試料を識別するため、分光計127を弾性散乱イメージング検出器118と組み合わせて使用する。脅威物質によって発生した弾性散乱光子を弾性散乱イメージングを使用して分析し、基板上の試料の画像を生じる。1つの実施形態では、分光法を使用して、試料によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の少なくとも1つを分析するため、分光計を使用する。別の実施形態では、複数の空間分解スペクトルを発生する分光イメージングを使用して、試料によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の少なくとも1つを分析するため、分光計を使用する。分光計は、紫外線(UV)、可視光線、近赤外線、及び中赤外線の1つかそれ以上のスペクトル範囲で動作するものでよい。分光計は、伝送または反射何れかのモードの紫外線、可視光線、近赤外線または中赤外線吸収イメージング、ラマン散乱イメージング、蛍光、フォトルミネセンス、化学ルミネセンス、及びエレクトロルミネセンスイメージングといった検出様式に基づいて画像を収集するように動作してもよい。分光計は、偏光顕微鏡法及び/または微分干渉コントラストイメージングと共に動作してもよい。試料によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子はフィルタを通過し、複数の空間分解スペクトルを発生する。フィルタは、波長可変フィルタ、帯域通過フィルタ、液晶波長可変フィルタ、干渉計、音響光学波長可変フィルタまたは分散光学素子でもよい。伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子は、線走査分光計、多点分光計、一点分光計または面分光計でもよい分光計を通過してもよい。1つの実施形態では、分光計をイメージングモードで使用して、照明源によって照明された試料の体積に由来する複数の空間分解スペクトルを発生してもよい。別の実施形態では、イメージングモードで収集された全てのスペクトルを合計することによって分光計を非イメージングモードで使用して、照明源によって照明された試料の体積に由来する複合スペクトルを形成してもよい。別の実施形態では、分光計を非イメージングモードで使用して、照明源によって照明された試料の体積に由来する複合スペクトルを収集してもよい。
【0034】
1つの実施形態では、分光計は、試料によって発生したラマン散乱光子を分析するラマンイメージング分光計を含む。1つの実施形態では、ラマンイメージング分光計は、20cm-1未満の全スペクトル分解能で0〜3500cm-1のラマンシフト範囲内のどこかでラマンスペクトルを生成する。1つの実施形態では、ラマンイメージング分光計は、20cm-1未満の全スペクトル分解能で0〜3500cm-1のラマンシフト範囲内の1000までの多数の空間的に独立したスペクトルを同時に取り込む。1つの実施形態では、分光計はラマン線イメージング分光計を備える。別の実施形態では、分光計は分散ラマンイメージング分光計を備える。
【0035】
1つの実施形態では、分光計をファイバアレイスペクトル変換器と組み合わせて使用して、試料を識別する。図4を参照すると、卵白アルブミン(“Ova”)とディーゼル煤煙(“DS”)から構成される試料の物理的混合物から、ケムイメージ(ChemImage)社のFALCON IIラマン顕微鏡上で複数のラマンスペクトルを収集した。コヒーレント光ファイバ束(FAST)を使用して、試料から収集した空間分解ラマンスペクトルを、FASCON IIの分散ラマン分光計の入射スリットにマッピングした。FASTを使用して、画像の円形の視野を曲線形に変換し、それが分光計の入射スリットにマップされる。このアプローチの利点には、空間またはスペクトル走査機構の必要なしに、完全なラマン画像スペクトルハイパーキューブを素早く収集できることが含まれる。レーザーを再位置決めする必要なしに、広い視野内の多数のラマンスペクトルを取り込みできるので、蛍光フォトブリーチング時間を最小化することができる。さらに、空間分解ラマンスペクトルは試料混合物の局所的な不均一性をマッピングするので、焦点を絞った検査に基づくスペクトルアンミキシングが可能になる。その結果、信号対雑音比の十分な低減が達成されれば、試料混合物は実時間で分析される。図4Aは、倍率100倍の対物レンズ下のOva/DSの光画像を例示する。図4Bは、混合物試料の平均レスポンスを表す分散ラマンスペクトルを例示し、図4Cは、FASTを使用して試料から収集した7つの空間分解分散ラマンスペクトルを例示する。図4Dは、分光計の焦平面で収集した分散ラマンスペクトル画像を例示する。y軸に沿った7つの独立空間チャネル画像と焦平面のx軸に沿ったラマンスペクトルが明瞭に見られる。
【0036】
また別の実施形態では、システム100は位相マスク115を利用して、光学系の被写界深度を拡大する。この実施形態では、試料109を基板110に付着させる。光学系119に沿った照明源112によって、弾性散乱光子を発生する複数の光子及び、試料によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の少なくとも1つで試料を照明する。試料は脅威物質を備えてもよい。光学系は、試料によって発生した弾性散乱光子、及び脅威物質によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の少なくとも1つを収集する。照明源122を光学通路119に沿って配置し、前記基板110を平面111に沿って配置するが、その際光学通路119は基板平面111に対して90°以外の角度をなす。別の実施形態では、付着手段101を基板平面111に対して90°以外の角度に配置する。弾性散乱光子、及び脅威物質によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の少なくとも1つが位相マスク115を通過するようにして、光学系の被写界深度を拡大する。(1)試料の画像を形成する弾性散乱イメージング118の使用により弾性散乱光子を分析し、(2)複数の空間分解スペクトルを発生する分光イメージング126の使用により、試料によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の少なくとも1つを分析することによって、少なくとも部分的には位相マスク115の出力に基づいて試料を識別する。伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子はフィルタを通過して、複数の空間分解スペクトルを発生する。試料の付着と識別は実質上互いに時間的に一致して行われる。すなわち付着は識別の前に行われ、背景識別の後付着が続くが、付着は実質上識別と同時またはその前に行ってもよい。
【0037】
本開示の方法は、試料の付着、目視観察及び識別を準備する。1つの実施形態では、試料を基板の表面に付着させるのと実質上時間的に一致して試料を目視観察し識別する。最初の粒子を付着させてから、イメージング分光計による試料の検出及び識別を可能にする測定可能な信号を生成するのに十分な粒子密度の試料を付着させるまでの数分の1秒にわたって付着処理が行われる。本開示のシステムが実証したところによれば、ラマンイメージング分光計による試料の目視観察及び識別に十分な測定可能な信号は、照明源による照明後わずか10秒で観察することができる。1つの実施形態では、観察及び識別に必要な粒子密度は、5分間の識別モードの場合検出器の視野内で20個の試料粒子が基板に付着していることである。別の実施形態では、十分な粒子密度はわずか1個の試料粒子が基板に付着していればよい。バイオエアロゾルの場合、試料は個別の胞子または細胞または細胞の集合体として発生する。単一の細胞は測定可能なラマン信号を生成するが、その際測定可能な信号を生成するラマン処理のための期間は、照明源による照明後数フェムト秒以内に開始される。従って、単一の細胞の付着、観察及び識別は瞬間的であると考えられる。
【0038】
本開示の方法で使用されるシステム100は、脅威物質の付着及び識別を準備する。好適実施形態では、粒子試料の付着は、粒子試料の識別と実質上一致して行われる。本出願の目的で、実質上一致という用語は、付着及び識別処理の間、理想的には試料基板を付着装置、または検出装置に対して再位置決めする必要なしに、試料の付着が試料の識別とほぼ同じ期間に行われることを意味する。1つの実施形態では、試料を照明源が連続して照明するという条件下では、基板に検体を付着させてから識別するまでの時間はわずか10秒である。別の実施形態では、粒子試料の識別は試料の付着の後行われる。別の実施形態では、試料基板の背景レベル測定が行われ、その後、試料の識別と実質上一致してかまたはその前に、試料の付着が行われる。
【0039】
別の実施形態では、本開示の方法で使用されるシステム100は、脅威物質の付着及び目視観察を準備する。好適実施形態では、粒子試料の付着は、粒子試料の目視観察と実質上一致して行われる。本出願の目的で、実質上一致という用語は、付着及び観察処理の間、理想的には試料基板を付着装置、または検出装置に対して再位置決めする必要なしに、試料の付着が試料の観察とほぼ同じ期間に行われることを意味する。1つの実施形態では、試料を照明源が連続して照明するという条件下では、基板に検体を付着させてから観察するまでの時間はわずか10秒である。別の実施形態では、粒子試料の観察は試料の付着の後行われる。別の実施形態では、試料基板の背景レベル測定が行われ、その後、試料の観察と実質上一致してかまたはその前に、試料の付着が行われる。
【0040】
システム100は、トリガモードまたは識別モードで動作できる。トリガモードは、脅威物質の存在及び脅威物質の不在を検出する。トリガモードはトリガ期間を有する。トリガ期間は数分の1秒〜約60秒の範囲でよい。脅威物質の濃度が高い場合、トリガ期間は実質上瞬間でよい。1分以下のトリガサイクル時間で、環境を動的にサンプリングして、脅威の到来を監視し極めて変わりやすい背景条件を管理することができる。
【0041】
識別モードは、脅威物質を識別し、識別時間を有する。1つの実施形態では、トリガ期間は識別期間より短い。別の実施形態では、識別モードは、トリガモードで脅威物質の存在が検出されると開始される。別の実施形態では、識別モードは、トリガモードで脅威物質の存在が検出されると実質上同時に開始される。別の実施形態では、システムが識別モードで動作している間に、追加量の試料が蓄積される。
【0042】
トリガモードが開始されると、システム100は、システムソフトウェアの下で確認モードに切り換わる。確認モードでは、イメージングシステムが連続5分間試料を探索する間、追加粒子の収集及び付着が続けられる。試料の移動または試料の位置合わせは必要ない。トリガモードから確認モードへの移行は瞬間的である。確認時間の間、連続収集により全ての粒子が検査される。
【0043】
また、システム100は、動作のモードと試料の識別を決定するプロセッサ128を含む。システム100がトリガモードまたは確認モードで動作する時、プロセッサは異なるアルゴリズムを利用する。1つの実施形態では、アルゴリズムは、定誤警報率アルゴリズムを含む。他のアルゴリズムは、焦点を絞った検査、ベイズのアプローチ、及びマハラノビス距離に基づく整合フィルタのアプローチを含む。試料識別のアプローチは、各々その全体を引用によって本出願の記載に援用する、「スペクトル分析の成分識別の方法(Method for Identifying Components of a Spectral Analysis)」という名称の2004年3月29日出願の米国特許出願第10/812,233号、「多様式検出の方法及び装置(Method and Apparatus for Multimodal Detection)」という名称の2005年7月14日出願のPCT国際出願第PCT/US05/013036号、及び「フォレンジック統合検索技術(FIST)(Forensic Integrated Search Technology(FIST))」という名称の2005年7月9日出願の米国特許仮出願第60/688,812号で開示されている。
【0044】
試料を識別するため、イメージング分光計によって発生した複数の空間分解スペクトルを少なくとも1つの基準ライブラリスペクトルと比較して脅威物質を識別する。1つの実施形態では、複数の空間分解ラマンスペクトルを少なくとも1つの基準ラマンライブラリスペクトルと比較して脅威物質を識別する。
【0045】
1つの実施形態では、プロセッサ128は焦点を絞った検査を利用して、自動化された形で、シグネチャをアンミキシングし、測定された混合物のスペクトルを、純粋成分のシグネチャライブラリを基準として検索する。焦点を絞った検査に基づくスペクトルアンミキシングは、主成分分析(“PCA”)を使用して混合物の空間を特徴付け、混合物のデータ空間への適合度を定量化することでライブラリスペクトルを等級付けし、焦点を絞った検査によって混合物試料中に存在する純粋スペクトルの数と識別情報を決定することによって、混合物のスペクトルを純粋成分のライブラリスペクトルと比較する。
【0046】
図4をさらに参照すると、ユークリッド距離(ED)整合フィルタ識別子アルゴリズムを使用して試料をディーゼル煤煙として分類した。EDアルゴリズムは、試料を純粋成分であると想定したが、これは不正確な想定であった。焦点を絞った検査によるスペクトルアンミキシングアルゴリズムを使用して空間分解分散ラマンスペクトルを分析すると、ラマンスペクトルの類似性から見て、混合物試料は、Ovaと、DSとフミン酸から構成される種類の炭素を含む材料とから構成されるものとして正しく分類された。
【0047】
焦点を絞った検査によるアルゴリズムは以下の大まかなステップを含む。
1.混合物のスペクトルに対してPCAを使用して混合物のデータ空間を特徴付ける。
2.各ライブラリスペクトルが混合物のデータ空間に対してなす投射角を計算する。n次空間とのベクトルのドット積。ドット積が1.0であることは、データ空間に完全に適合していることを表す。
3.混合物のデータ空間への投射角によって全てのライブラリスペクトルを等級付けする。
4.角度による等級付けにおいて適合度が最も高いものの全ての順列を検討する。n個の最も有望な純粋成分の候補を決定する。m個の成分のあり得る全ての解を生成するが、ここでmは1からnまでの間で変化し、所与の解におけるライブラリスペクトルの数である。
5.各候補解について相関係数を計算する。(既知の混合物のスペクトルと既知のライブラリスペクトルについて)m個の成分のライブラリスペクトルの各組について投影されたライブラリスペクトルを計算する。投影されたライブラリスペクトル各々と実際のライブラリスペクトルとの相関係数を計算する。選択基準として使用される相関係数は、所与のm個の成分の解の各要素についてのドット積の2乗の和の平方根である。
6.最尤解は最も高い相関係数を有する解である。
【0048】
焦点を絞った検査によるアルゴリズムは、脅威物質、近傍物質、及び脅威物質の成長または準備条件及び試料の履歴と無関係なクラッタの間の区別をサポートするラマンシグネチャライブラリを必要とする。脅威物質のラマンスペクトルは、成長条件の影響を極めて受けやすいあるスペクトル帯と、成長条件の影響を比較的受けにくいその他のスペクトル帯とを含む。検出及び識別アルゴリズムは、物質の弁別を最大化するが、成長条件に対する感受性を最小にするスペクトル帯に焦点を絞る。このため、生物学的要因による不要な変動へのシグネチャライブラリの依存を最小化することができる。
【0049】
図1をさらに参照すると、システム100は、付着基板110と基板位置決め機構112を含む。基板110は、所定の部位での複数の試料の付着を準備するものである。基板110は、コンパクトディスク(“CD”)形状または何らかの同様の円形または非円形の、実質上扁平な表面の金属または非金属を含む。基板110は、基板へのラマンレーザーの自立的な焦点合わせを可能にするものである。1つの実施形態では、基板は、標準的な直径120mmのCD上に約1,800個の試料を収集できる基板のための標準オーディオCDの寸法を含む。また、システム100は、25枚の基板を保持し、30日分のサンプリング、すなわち基板1枚当たりの試料数が1,800個の時30日間で収集される43,800個の試料のサンプリングをサポートすることのできる格納ユニットを含む。この概念は、30日間の動作後容易に取り出して交換できるカートリッジ内に基板ディスクを供給することである。格納システムは、例えば、時間、日付、センサの設定といったデータ収集時点の条件、及び試料の再配置についてアーカイブした試料の記録を取るマーキング技術を含む。基板位置決め装置112は、方向性直線運動と回転可変運動との2自由度を有するモーションステージを含む。基板位置決め装置112の運動は、螺旋軌跡、同心円軌跡、または直線軌跡の試料の付着を生じる。基板は、機械的衝撃/振動、湿気、及び付着スポットの安定性を劣化させ得る物理化学的作用から付着スポットの弾性を保護するよう設計した格納システムに格納する。
【実施例】
【0050】
図5は、ラマンイメージング分光法検出技術の推定感度を例示する。このグラフは、トリガ及び確認両方の検出モードでの、システム100の推定信号対雑音比(“SNR”)をバイオエアロゾルの濃度と対照させている。ケムイメージ(ChemImage)社のラマンシステム性能モデルを使用して推定を行った。
【0051】
図5に示すように、検出時間(“Td”)が増大するとSNRが向上するため検出感度も向上する。トリガ検出モードでは、細胞800粒子/リットル(PPL)のLODが達成できると推定される。確認検出モードでは、細胞100PPLのLODが達成できる。LODは、90%を越える検出確率(“Pd”)、指定されたTd及び確定した誤警報確率(“Pfa”)での、再現可能な形で検出可能な生物脅威の最小濃度として定義される。許容可能な誤警報率は動作要求によって決定される。しかし、トリガ検出モード(Td−30秒、Pd>90%)では、許容可能な誤警報のレベルは5回/日(Pfa−1.7×103)を想定した。確認モード(Td−300秒、Pd>90%)では、必要なPfaは1回/月(Pfa−1.1×104)である。図5に示す較正曲線はラマン検出SNR性能モデルを使用して生成する。
【0052】
本開示は、本開示の精神または本質的属性から逸脱することなく他の特定の形態で実施してもよい。従って、本開示の範囲を示すものとしては、上記の明細書ではなく、添付の請求項を参照すべきである。上記の説明は本開示の好適実施形態に関するものであるが、他の変形及び修正も当業者には明らかであり、本開示の精神または範囲から逸脱することなく実施可能であることに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本開示に関連して使用するシステムを例示する。
【図2】本開示のシステムで使用する装置を例示する。
【図3】本開示のシステム及び方法によって発生した弾性散乱画像を例示する。
【図4】本開示のシステム及び方法を使用したラマンイメージング分析を例示する。
【図5】本開示のシステム及び方法を使用した検出及び識別の推定感度を例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
脅威物質の試料を基板に付着させるステップと、
前記基板への前記脅威物質の前記試料の付着と実質上時間的に一致して前記脅威物質を識別するステップとを含む方法。
【請求項2】
さらに、単一の照明源によって、前記基板に付着した前記脅威物質を複数の光子で照明し、弾性散乱光子及びラマン散乱光子を発生するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脅威物質を識別する前記ステップが、
前記脅威物質の画像を形成する弾性散乱イメージングを使用して、前記基板上の前記脅威物質によって発生した前記弾性散乱光子を分析するステップと、
ラマン分光法を使用して、前記基板上の前記脅威物質によって発生した前記ラマン散乱光子を分析するステップとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、ラマンスペクトルを少なくとも1つの基準ラマンライブラリスペクトルと比較して前記脅威物質を識別するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ラマン散乱光子を分析する前記ステップがさらに、20cm-1未満のスペクトル分解能で約0cm-1〜約3500cm-1のラマンシフト範囲内のどこかでラマンスペクトルを生成するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ラマン散乱光子を分析する前記ステップがさらに、20cm-1未満のスペクトル分解能で約0cm-1〜約3500cm-1のラマンシフト範囲内のどこかで多数の空間的に独立した画像チャネルを同時に生成するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記脅威物質によって発生した前記弾性散乱光子を分析する前記ステップが、CMOS検出器、CCD検出器または高フレームレートデジタル検出器のうちの1つをフィードバック制御機構と組み合わせて使用し、前記基板上の前記脅威物質の前記画像に自動的に焦点を合わせるステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記ラマン散乱光子を分析する前記ステップが、波長可変フィルタ、帯域通過フィルタ、液晶波長可変フィルタ、干渉計、音響光学波長可変フィルタ及び分散光学素子からなるグループから選択される素子を、前記ラマン散乱光子が通過するようにして、複数の空間分解ラマンスペクトルを発生するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記ラマン散乱光子を分析する前記ステップが、
前記照明源によって照明された試料の体積に由来する複数の空間分解ラマンスペクトルを発生する線走査分光計と、
前記照明源によって照明された試料の体積に由来する複数の空間分解ラマンスペクトルを発生する多点分光計と、
前記照明源によって照明された試料の体積に由来する複数の空間分解ラマンスペクトルを発生する一点分光計と、
前記照明源によって照明された試料の体積に由来する複数の空間分解ラマンスペクトルを発生する面分光計と、
前記照明源によって照明された試料の体積に由来する単一のラマンスペクトルを発生する点分光計と、
の1つを、前記ラマン散乱光子が通過するようにするステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
さらに、光学系を使用して、前記弾性散乱光子及び前記ラマン散乱光子を収集するステップを含み、その際前記照明源を光学通路に沿って配置し前記基板を平面に沿って配置し、その際前記光学通路が前記基板平面に対して90°以外の角度をなす、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
さらに、
前記脅威物質の存在と、
前記脅威物質の不在と、
の1つを検出するトリガモードで動作するステップと、
前記脅威物質を識別する識別モードで動作するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記トリガモードがトリガ期間を有し前記識別モードが識別期間を有し、その際前記トリガ期間が前記識別期間より短い、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
さらに、前記トリガモードで前記脅威物質の前記存在が検出されると前記識別モードを開始するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
さらに、前記識別モードでの動作中に、追加量の前記脅威物質を蓄積するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記トリガモードで前記脅威物質の前記存在が検出されると実質上同時に前記識別モードを開始するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記脅威物質を前記基板に付着させる前記ステップが、前記基板への前記脅威物質の超音波付着、エレクトロスプレー及び慣性衝突の1つを行うステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記脅威物質を前記基板に付着させる前記ステップがさらに、少なくとも50個の粒子を前記基板に付着させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記脅威物質を前記基板に付着させる前記ステップがさらに、
密閉環境と、
外部環境と、
の1つから空気を収集するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記脅威物質が、細菌、ウイルス、原生動物、生物毒素、真菌、化学物質、放射線材料、及び爆発材料からなるグループから選択される有害物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記有害物質が化学物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記有害物質が生物毒素である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記有害物質が微生物である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記有害物質が細菌である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記有害物質が原生動物である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記有害物質がウイルスである、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記有害物質が空気浮遊物質またはエアロゾル物質からなるグループから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
脅威物質の試料を基板に付着させるステップと、
前記基板への前記脅威物質の前記試料の付着と実質上時間的に一致して前記脅威物質を識別するステップとを含み、
前記脅威物質を識別する前記ステップが、前記基板の前記試料を含む部分の非直線的な視野を分光計の入射スリットに結合する曲線マップに変換するファイバアレイスペクトル変換器を使用するステップを含み、
前記分光計が、前記脅威物質の識別に適したラマンスペクトルを収集するために使用される方法。
【請求項28】
脅威物質の試料を基板に付着させる手段と、
前記付着手段による前記基板への前記脅威物質の前記試料の付着と実質上時間的に一致して前記脅威物質を識別する手段を備えるシステム。
【請求項29】
脅威物質の試料を基板に付着させる手段と、
前記付着手段による前記基板への前記脅威物質の前記試料の付着と実質上時間的に一致して前記脅威物質を識別する手段を備え、
前記識別手段が、分光計と、前記基板の前記試料を含む部分の非直線的な視野を前記分光計の入射スリットに結合する曲線マップに変換するファイバアレイスペクトル変換器とを備え、
前記分光計が、前記脅威物質の識別に適したラマンスペクトルを収集するために使用されるシステム。
【請求項30】
脅威物質の試料を基板に付着させるステップと、
単一の照明源によって、前記基板に付着した前記脅威物質を複数の光子で照明し、弾性散乱光子及びラマン散乱光子を発生するステップと、
前記基板上の前記脅威物質を識別するステップと、
前記脅威物質の存在と、
前記脅威物質の不在と、
の1つを検出するトリガモードで動作するステップと、
前記脅威物質を識別する識別モードで動作するステップとを含む方法。
【請求項31】
前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップが、前記基板上の前記脅威物質を識別する前記ステップの前に行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
さらに、
前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップの前に前記基板の背景レベルを識別するステップを含み、その際前記基板上の前記脅威物質を識別する前記ステップが、前記脅威物質の前記試料を付着させる前記ステップの後で行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
さらに、
前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップの前に前記基板の背景レベルを識別するステップを含み、その際前記基板上の前記脅威物質を識別する前記ステップが、前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップと実質上時間的に一致して行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
脅威物質の試料を基板に付着させるステップと、
単一の照明源によって、前記基板に付着した前記脅威物質を複数の光子で照明し、弾性散乱光子及びラマン散乱光子を発生するステップと、
前記基板上の前記脅威物質を識別するステップと、
前記脅威物質の存在と、
前記脅威物質の不在との、
1つを検出するトリガモードで動作するステップと、
前記脅威物質を識別する識別モードで動作するステップとを含み、
前記脅威物質を識別する前記ステップが、前記基板の前記試料を含む部分の非直線的な視野を分光計の入射スリットに結合する曲線マップに変換するファイバアレイスペクトル変換器を使用するステップを含み、
前記分光計が、前記脅威物質の識別に適したラマンスペクトルを収集するために使用される方法。
【請求項35】
脅威物質の試料を基板に付着させる手段と、
前記基板に付着した前記脅威物質を複数の光子で照明し、弾性散乱光子及びラマン散乱光子を発生する単一の照明源と、
前記基板上の前記脅威物質を識別する手段とを備え、
前記システムが、
前記脅威物質の存在と、
前記脅威物質の不在と、
の1つを検出するトリガモードで動作し、
前記システムが前記脅威物質を識別する識別モードで動作するシステム。
【請求項36】
脅威物質の試料を基板に付着させる手段と、
前記基板に付着した前記脅威物質を複数の光子で照明し、弾性散乱光子及びラマン散乱光子を発生する単一の照明源と、
前記基板上の前記脅威物質を識別する手段とを備え、
前記システムが、
前記脅威物質の存在と、
前記脅威物質の不在と、
の1つを検出するトリガモードで動作し、
前記システムが前記脅威物質を識別する識別モードで動作し、
前記識別手段が、分光計と、前記基板の前記試料を含む部分の非直線的な視野を前記分光計の入射スリットに結合する曲線マップに変換するファイバアレイスペクトル変換器とを備え、
前記分光計が、前記脅威物質の識別に適したラマンスペクトルを収集するために使用されるシステム。
【請求項37】
脅威物質の試料を基板に付着させるステップと、
前記基板上の前記脅威物質の画像を形成する弾性散乱イメージングを使用して前記脅威物質によって発生した弾性散乱光子を分析することによって、前記基板上の前記脅威物質の付着を目視観察するステップとを含み、前記脅威物質を付着させる前記ステップが、前記脅威物質の付着を目視観察する前記ステップと実質上時間的に一致している方法。
【請求項38】
前記脅威物質によって発生した前記弾性散乱光子の前記分析がさらに、CMOS検出器、CCD検出器または高フレームレートデジタル検出器をフィードバック制御機構と組み合わせて使用し、前記基板上の前記脅威物質の前記画像に自動的に焦点を合わせることを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
さらに、光学系によって前記弾性散乱光子を収集するステップであって、その際前記光学系を前記基板に対して位置決めし前記基板の位置に対して移動させて、前記基板上の前記脅威物質の前記画像に焦点を合わせるステップを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
さらに、モードスクランブルとフレーム平均化とによって照明源の干渉縞を除去することによって前記基板上の前記脅威物質の前記画像の画像コントラストを改善するステップを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
さらに、光学系を使用して、前記弾性散乱光子及び前記ラマン散乱光子を収集するステップを含み、その際前記照明源を光学通路に沿って配置し前記基板を平面に沿って配置し、その際前記光学通路が前記基板平面に対して90°以外の角度をなす、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記基板上の前記脅威物質の付着を目視観察する前記ステップが分光計なしで行われる、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記脅威物質が、細菌、ウイルス、原生動物、生物毒素、真菌、化学物質、放射線材料、及び爆発材料からなるグループから選択される有害物質である、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記有害物質が化学物質である、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
前記有害物質が生物毒素である、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
前記有害物質が微生物である、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
前記有害物質が細菌である、請求項37に記載の方法。
【請求項48】
前記有害物質が原生動物である、請求項37に記載の方法。
【請求項49】
前記有害物質がウイルスである、請求項37に記載の方法。
【請求項50】
前記有害物質が空気浮遊物質またはエアロゾル物質からなるグループから選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項51】
脅威物質の試料を基板に付着させる手段と、
前記基板上の前記脅威物質の画像を形成する弾性散乱イメージングを使用して前記脅威物質によって発生した弾性散乱光子を分析することによって、前記基板上の前記脅威物質の付着を目視観察する手段とを備え、前記付着手段が、前記基板上の前記脅威物質の前記画像の形成と実質上時間的に一致して前記脅威物質を付着させるシステム。
【請求項52】
脅威物質の試料を基板に付着させるステップと、
単一の照明源によって、前記基板上の前記脅威物質を複数の光子で照明し、弾性散乱光子を発生するステップと、
前記基板上の前記脅威物質の画像を形成する弾性散乱イメージングを使用して前記脅威物質によって発生した前記弾性散乱光子を分析することによって、前記基板上の前記脅威物質の付着を目視観察するステップとを含む方法。
【請求項53】
前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップが、前記基板上の前記脅威物質を観察する前記ステップの前に行われる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
さらに、
前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップの前に前記基板の背景レベルを識別するステップを含み、その際前記基板上の前記脅威物質を観察する前記ステップが、前記脅威物質の前記試料を付着させる前記ステップの後で行われる、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
さらに、
前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップの前に前記基板の背景レベルを識別するステップを含み、その際前記基板上の前記脅威物質を観察する前記ステップが、前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップの後で行われる、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
脅威物質の試料を基板に付着させる手段と、
前記基板に付着した前記脅威物質を複数の光子で照明し、弾性散乱光子を発生する単一の照明源と、
前記基板上の前記脅威物質の画像を形成する弾性散乱イメージングを使用して前記脅威物質によって発生した前記弾性散乱光子を分析することによって、前記基板上の前記脅威物質の付着を目視観察する手段とを備えるシステム。
【請求項57】
脅威物質の試料を基板に付着させるステップと、
第1の光収集装置によって、
前記脅威物質によって発生した弾性散乱光と、
前記脅威物質によって発生したラマン散乱光と、
の少なくとも1つを収集するステップと、
第2の光収集装置によって、前記脅威物質によって発生したラマン散乱光を収集するステップであって、その際前記第2の光収集装置は、非直線的な視野を曲線視野に変換する1次元ファイバスタックに引き込まれる光ファイバの2次元非直線アレイを備え、前記1次元ファイバスタックがラマンイメージング分光計の入射スリットに結合されるステップと、
前記基板に付着した前記脅威物質を識別するステップとを含む方法。
【請求項58】
さらに、単一の照明源によって、前記基板に付着した前記脅威物質を複数の光子で照明し、弾性散乱光子及びラマン散乱光子を発生するステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記脅威物質を識別する前記ステップが、
前記脅威物質の画像を形成する弾性散乱イメージングを使用して、前記基板上の前記脅威物質によって発生した前記弾性散乱光子を分析するステップと、
ラマン分光法を使用して、前記基板上の前記脅威物質によって発生した前記ラマン散乱光子を分析するステップとを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
さらに、ラマンスペクトルを少なくとも1つの基準ラマンライブラリスペクトルと比較して前記脅威物質を識別するステップを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記ラマン散乱光子を分析する前記ステップがさらに、20cm-1未満のスペクトル分解能で約0cm-1〜約3500cm-1のラマンシフト範囲内のどこかでラマンスペクトルを生成するステップを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記ラマン散乱光子を分析する前記ステップがさらに、20cm-1未満のスペクトル分解能で約0cm-1〜約3500cm-1のラマンシフト範囲内のどこかで多数の空間的に独立した画像チャネルを同時に生成するステップを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記脅威物質によって発生した前記弾性散乱光子を分析する前記ステップが、CMOS検出器、CCD検出器または高フレームレートデジタル検出器をフィードバック制御機構と組み合わせて使用し、前記基板上の前記脅威物質の前記画像に自動的に焦点を合わせるステップを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記ラマン散乱光子を分析する前記ステップが、波長可変フィルタ、帯域通過フィルタ、液晶波長可変フィルタ、干渉計、音響光学波長可変フィルタ及び分散光学素子からなるグループから選択されるフィルタを、前記ラマン散乱光子が通過するようにして、複数の空間分解ラマンスペクトルを発生するステップを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記ラマン散乱光子を分析する前記ステップが、
前記照明源によって照明された試料の体積に由来する複数の空間分解ラマンスペクトルを発生する線走査分光計と、
前記照明源によって照明された試料の体積に由来する複数の空間分解ラマンスペクトルを発生する多点分光計と、
前記照明源によって照明された試料の体積に由来する複数の空間分解ラマンスペクトルを発生する一点分光計と、
前記照明源によって照明された試料の体積に由来する複数の空間分解ラマンスペクトルを発生する面分光計と、
前記照明源によって照明された試料の体積に由来する単一のラマンスペクトルを発生する点分光計と、
の1つを、前記ラマン散乱光子が通過するようにするステップを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
さらに、光学系を使用して、前記弾性散乱光子及び前記ラマン散乱光子を収集するステップを含み、その際前記照明源を光学通路に沿って配置し前記基板を平面に沿って配置し、その際前記光学通路が前記基板平面に対して90°以外の角度をなす、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
さらに、
前記脅威物質の存在と、
前記脅威物質の不在と、
の1つを検出するトリガモードで動作するステップと、
前記脅威物質を識別する識別モードで動作するステップとを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項68】
前記トリガモードがトリガ期間を有し前記識別モードが識別期間を有し、その際前記トリガ期間が前記識別期間より短い、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
さらに、前記トリガモードで前記脅威物質の前記存在が検出されると前記識別モードを開始するステップを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
さらに、前記識別モードでの動作中に、追加量の前記脅威物質を蓄積するステップを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
さらに、前記トリガモードで前記脅威物質の前記存在が検出されると実質上同時に前記識別モードを開始するステップを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップが、前記基板上の前記脅威物質を識別する前記ステップと実質上一致して行われる、請求項57に記載の方法。
【請求項73】
前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップが、前記基板上の前記脅威物質を識別する前記ステップの前に行われる、請求項57に記載の方法。
【請求項74】
さらに、
前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップの前に前記基板の背景レベルを識別するステップを含み、その際前記基板上の前記脅威物質を識別する前記ステップが、前記脅威物質の前記試料を付着させる前記ステップの後で行われる、請求項57に記載の方法。
【請求項75】
さらに、
前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップの前に前記基板の背景レベルを識別するステップを含み、その際前記基板上の前記脅威物質を識別する前記ステップが、前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップと実質上時間的に一致して行われる、請求項57に記載の方法。
【請求項76】
前記脅威物質を前記基板に付着させる前記ステップが、前記基板への前記脅威物質の超音波付着、エレクトロスプレー及び慣性衝突の1つを行うステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項77】
前記脅威物質を前記基板に付着させる前記ステップがさらに、少なくとも50個の粒子を前記基板に付着させるステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項78】
前記脅威物質を前記基板に付着させる前記ステップがさらに、
密閉環境と、
外部環境と、
の1つから空気を収集するステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項79】
前記脅威物質が、細菌、ウイルス、原生動物、生物毒素、真菌、化学物質、放射線材料、及び爆発材料からなるグループから選択される有害物質である、請求項57に記載の方法。
【請求項80】
前記有害物質が化学物質である、請求項57に記載の方法。
【請求項81】
前記有害物質が生物毒素である、請求項57に記載の方法。
【請求項82】
前記有害物質が微生物である、請求項57に記載の方法。
【請求項83】
前記有害物質が細菌である、請求項57に記載の方法。
【請求項84】
前記有害物質が原生動物である、請求項57に記載の方法。
【請求項85】
前記有害物質がウイルスである、請求項57に記載の方法。
【請求項86】
前記有害物質が空気浮遊物質またはエアロゾル物質からなるグループから選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項87】
脅威物質の試料を基板に付着させる手段と、
前記脅威物質によって発生した弾性散乱光と、
前記脅威物質によって発生したラマン散乱光と、
の少なくとも1つを収集する第1の光収集装置と、
前記脅威物質によって発生したラマン散乱光を収集する第2の光収集装置であって、前記第2の光収集装置が、非直線的な視野を曲線視野に変換する1次元ファイバスタックに引き込まれる光ファイバの2次元非直線アレイを備え、前記1次元ファイバスタックがラマンイメージング分光計の入射スリットに結合される第2の光収集装置と、
前記基板に付着した前記脅威物質を識別する手段とを備えるシステム。
【請求項88】
方法であって、
脅威物質の試料を基板に付着させるステップと、
光学通路に沿った照明源によって、前記脅威物質を複数の光子で照明し、前記脅威物質によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子を発生するステップと、
光学系によって、前記脅威物質によって発生した弾性散乱光子、及び前記脅威物質によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の少なくとも1つを収集するステップであって、前記照明源を光学通路に沿って配置し、前記基板を平面に沿って配置し、その際前記光学通路が前記基板平面に対して90°以外の角度をなすステップと、
弾性散乱光子と、
前記脅威物質によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子と、
の少なくとも1つに位相マスクを通過させることによって、前記光学系の被写界深度を拡大するステップとを含む方法。
【請求項89】
さらに、
少なくとも部分的には前記位相マスクの出力に基づいて前記脅威物質を識別するステップを含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記脅威物質を識別する前記ステップが、
前記脅威物質の画像を形成する弾性散乱イメージングを使用して、前記弾性散乱光子を分析するステップと、
複数の空間分解スペクトルを発生する分光イメージングを使用して、前記脅威物質によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の少なくとも1つを分析するステップとを備える、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
伝送された光子、反射された光子、放出された光子またはラマン散乱された光子の少なくとも1つを分析する前記ステップが、
近赤外線と、
紫外線(UV)と、
中赤外線と、
の少なくとも1つのスペクトル範囲で動作し、複数の空間分解スペクトルを発生するステップを含む、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
伝送された光子、反射された光子、放出された光子またはラマン散乱された光子の少なくとも1つを分析する前記ステップが、
近赤外線イメージングと、
紫外線(UV)イメージングと、
中赤外線イメージングと、
ラマン散乱イメージングと、
蛍光と、
フォトルミネセンスと、
化学ルミネセンスと、
エレクトロルミネセンスイメージングと、
の1つに基づいて画像を収集するステップを含み、
前記近赤外線イメージング、紫外線(UV)イメージング、及び中赤外線イメージングが伝送モード及び反射モードの1つで動作する、請求項89に記載の方法。
【請求項93】
分光イメージングが、偏光顕微鏡法及び微分干渉コントラストイメージングの1つと共に行われる、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記脅威物質によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の少なくとも1つを分析する前記ステップがさらに、波長可変フィルタ、帯域通過フィルタ、液晶波長可変フィルタ、干渉計、音響光学波長可変フィルタ及び分散光学素子からなるグループから選択されるフィルタを、伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の前記少なくとも1つが通過するようにして、複数の空間分解ラマンスペクトルを発生する、請求項89に記載の方法。
【請求項95】
前記脅威物質によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の前記少なくとも1つを分析する前記ステップがさらに、
前記照明源によって照明された試料の体積に由来する複数の空間分解ラマンスペクトルを発生する線走査分光計と、
前記照明源によって照明された試料の体積に由来する複数の空間分解ラマンスペクトルを発生する多点分光計と、
前記照明源によって照明された試料の体積に由来する複数の空間分解ラマンスペクトルを発生する一点分光計と、
前記照明源によって照明された試料の体積に由来する複数の空間分解ラマンスペクトルを発生する面分光計と、
前記照明源によって照明された試料の体積に由来する単一のラマンスペクトルを発生する点分光計と、
の1つを、伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の前記少なくとも1つが通過するようにするステップを含む、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップが、前記基板上の前記脅威物質を識別する前記ステップと実質上一致して行われる、請求項89に記載の方法。
【請求項97】
前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップが、前記基板上の前記脅威物質を識別する前記ステップの前に行われる、請求項89に記載の方法。
【請求項98】
さらに、
前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップの前に前記基板の背景レベルを識別するステップを含み、その際前記基板上の前記脅威物質を識別する前記ステップが、前記脅威物質の前記試料を付着させる前記ステップの後で行われる、請求項89に記載の方法。
【請求項99】
さらに、
前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップの前に前記基板の背景レベルを識別するステップを含み、その際前記基板上の前記脅威物質を識別する前記ステップが、前記脅威物質の前記試料を前記基板に付着させる前記ステップと実質上時間的に一致して行われる、請求項89に記載の方法。
【請求項100】
前記脅威物質が、細菌、ウイルス、原生動物、生物毒素、真菌、化学物質、放射線材料、及び爆発材料からなるグループから選択される有害物質である、請求項88に記載の方法。
【請求項101】
前記有害物質が化学物質である、請求項88に記載の方法。
【請求項102】
前記有害物質が生物毒素である、請求項88に記載の方法。
【請求項103】
前記有害物質が微生物である、請求項88に記載の方法。
【請求項104】
前記有害物質が細菌である、請求項88に記載の方法。
【請求項105】
前記有害物質が原生動物である、請求項88に記載の方法。
【請求項106】
前記有害物質がウイルスである、請求項88に記載の方法。
【請求項107】
前記有害物質が空気浮遊物質またはエアロゾル物質からなるグループから選択される、請求項88に記載の方法。
【請求項108】
システムであって、
脅威物質の試料を基板に付着させる手段と、
前記脅威物質を光学通路に沿って複数の光子で照明し、前記脅威物質によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子を発生する照明源と、
前記脅威物質によって発生した弾性散乱光子と、前記脅威物質によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子の少なくとも1つとを収集する光学系であって、前記照明源を光学通路に沿って配置し、前記基板を平面に沿って配置し、その際前記光学通路が前記基板平面に対して90°以外の角度をなす光学系と、
弾性散乱光子と、
前記脅威物質によって伝送、反射、放出またはラマン散乱された光子と、
の少なくとも1つを通過させることによって前記光学系の被写界深度を拡大する位相マスクとを備えるシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2008−533448(P2008−533448A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558028(P2007−558028)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/004561
【国際公開番号】WO2007/092009
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(506001309)ケムイメージ コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】