説明

脱硫排液からの脱水濾液の噴霧乾燥装置、排ガス処理システム及び方法

【課題】安定して操業することができる無排水化を図る脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置、排ガス処理システム及び排ガス処理方法を提供する。
【解決手段】噴霧乾燥装置本体51内に、脱硫排水からの脱水濾液33を噴霧する噴霧ノズル52と、噴霧乾燥装置本体51に設けられ、噴霧液33aを乾燥する排ガス18を導入する導入口51aと、噴霧乾燥装置本体51内に設けられ、排ガス18により脱水濾液33を乾燥する乾燥領域53と、乾燥に寄与した排ガス18を排出する排出口51bと、乾燥領域内に複数設けられ、内部の温度を計測する温度計T1〜T7と、温度計の計測結果により、脱水濾液33の噴霧・乾燥状態の良否の判断を行う判定手段54と、判定手段54の判断の結果、噴霧乾燥不良であると判断した場合に、排ガス又は脱水濾液の調整を行う制御手段55とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラから排出される排ガスを処理する排ガス処理の際に発生する脱硫排液からの脱水濾液の噴霧乾燥装置、排ガス処理システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電設備等に設置されるボイラから排出される排ガスを処理するための排ガス処理システムが知られている。排ガス処理システムは、ボイラからの排ガスから窒素酸化物を除去する脱硝装置と、脱硝装置を通過した排ガスの熱を回収するエアヒータと、熱回収後の排ガス中の煤塵を除去する集塵機と、除塵後の排ガス中の硫黄酸化物を除去するための脱硫装置とを備えている。脱硫装置としては、石灰吸収液等を排ガスと気液接触させて排ガス中の硫黄酸化物を除去する湿式の脱硫装置が一般的に用いられる。
【0003】
湿式の脱硫装置から排出される排水(以下、「脱硫排水」という。)には、塩素イオン、アンモニウムイオン等のイオンや水銀など様々な種類の有害物質が多量に含まれる。このため、脱硫排水をシステム外部に放流する前に脱硫排水からこれらの有害物質を除去する必要があるが、脱硫排水中に含まれるこれら多種類の有害物質の除去処理は複雑であり、処理コストが高いという問題がある。そこで、脱硫排水の処理コストを節減すべく、脱硫排水をシステム外部に放出することなくシステム内で再利用する方法が提案されている。例えば、特許文献1及び2には、脱硝装置、エアヒータ、集塵機、脱硫装置とが接続される主ラインの煙道から分岐して、脱硫排水を噴霧してガス化する設備を別途設置し、主ラインの煙道から排ガスの一部をこの設備内に導入し、設備内の排ガス中に脱硫排水を噴霧して蒸発させることにより有害物質を析出させた後、このガスを主ラインの煙道に戻すように構成された排ガス処理装置が開示されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−200818号公報
【特許文献2】特開平9−313881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2の排ガス処理装置では、煙道から排ガスを一部分岐して、脱硫装置からの脱硫排水(又は排液)を噴霧してガス化する設備を設けて、脱硫排水を蒸発させているが、脱硫装置からの脱硫排水は、固形分が含有されているために、噴霧乾燥を良好に行うことができない、という問題がある。
【0006】
さらに、近年、内陸部等における水資源に対する環境配慮のために、排ガス処理設備における無排水化が切望されており、安定して操業することができる無排水化を図る排ガス処理設備の出現が切望されている。
【0007】
この無排水化を実施する設備として、脱硫排水を乾燥する噴霧乾燥機を用いることができるが、脱硫排水を噴霧乾燥する場合には、以下のような問題がある。
1)熱量バランスの乱れによる問題
噴霧液を蒸発させるには、噴霧液と温風との熱移動により乾燥が促進されるが、温風に対して噴霧液が過剰の場合には、蒸発不良が発生する。
2)灰付着による噴霧液の液滴径の粗大化による問題
噴霧ノズル先端部に灰が付着すると、ノズルから発生する噴霧液滴径が変化し、一般的には粗大化する。この粗大化した液滴は、温風と熱交換する比表面積が小さく、熱交換が遅いため、蒸発遅れが発生する。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、安定して操業することができる無排水化を図る脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置、排ガス処理システム及び排ガス処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、噴霧乾燥装置本体内に、脱硫排水からの脱水濾液を噴霧する噴霧ノズルと、噴霧乾燥装置本体に設けられ、噴霧液を乾燥する排ガスを導入する導入口と、噴霧乾燥装置本体内に設けられ、排ガスにより脱水濾液を乾燥する乾燥領域と、乾燥に寄与した排ガスを排出する排出口と、前記乾燥領域内に複数設けられ、内部の温度を計測する温度計と、前記温度計の計測結果により、脱水濾液の噴霧・乾燥状態の良否の判断を行う判定手段と、前記判定手段の判断の結果、噴霧乾燥不良であると判断した場合に、排ガス又は脱水濾液の調整を行う制御手段とを具備することを特徴とする脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置にある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、脱水濾液の調整は、脱水濾液の供給量の増減又はアトマイズエアの供給量の増減により行うことを特徴とする脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置にある。
【0011】
第3の発明は、第1の発明において、排ガスの調整は、排ガスの導入量の制御により行うことを特徴とする脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置にある。
【0012】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、噴霧乾燥不良は、温度減少度合いにより判断することを特徴とする脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置にある。
【0013】
第5の発明は、燃料を燃焼させるボイラと、前記ボイラからの排ガスの熱を回収するエアヒータと、熱回収後の排ガス中の煤塵を除去する集塵機と、除塵後の排ガス中に含まれる硫黄酸化物を吸収液で除去する脱硫装置と、前記脱硫装置から排出される脱硫排水から石膏を除去する脱水機と、前記脱水機からの脱水濾液を噴霧する噴霧手段を備えた請求項1乃至4のいずれか一つの噴霧乾燥装置と、前記噴霧乾燥装置に排ガスの一部を導入する排ガス導入ラインとを具備することを特徴とする排ガス処理システムにある。
【0014】
第6の発明は、第5の発明において、前記脱水機からの脱水濾液中の浮遊物質を除去する固液分離装置を有することを特徴とする排ガス処理システムにある。
【0015】
第7の発明は、燃料を燃焼させるボイラからの排ガスの熱をエアヒータにより回収した後、脱硫装置において、熱回収後の排ガス中に含まれる硫黄酸化物を吸収液で除去する排ガス処理方法において、前記脱硫装置から排出される脱硫排水から石膏を除去した脱水濾液を、排ガスの一部により噴霧乾燥する際、脱水濾液の噴霧乾燥状態を乾燥領域における温度状態を監視しつつ行うことを特徴とする排ガス処理方法にある。
【0016】
第8の発明は、第7の発明において、前記脱水濾液中の浮遊物質を除去した分離液を噴霧乾燥することを特徴とする排ガス処理方法にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明法によれば、ボイラからの排ガスを用いて、脱硫装置から分離された脱硫排水から石膏を除いた脱水濾液を用いて、噴霧乾燥機で噴霧する際、噴霧乾燥状態を把握して、噴霧不良が有る場合には除去することで、安定して噴霧することができる。これにより、脱硫装置からの脱硫排水の無排水化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施例1に係る排ガス処理システムの概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例に係る脱硫排液からの脱水濾液の噴霧乾燥機(噴霧乾燥機)の概略図である。
【図3−1】図3−1は、噴霧乾燥装置本体内の7箇所に設けた温度計(T1〜T7)に対するノズルからの距離と、計測温度との関係図である。
【図3−2】図3−2は、噴霧乾燥装置本体内の7箇所に設けた温度計(T1〜T7)に対するノズルからの距離と、計測温度との関係図である。
【図4】図4は、実施例2に係る排ガス処理システムの概略構成図である。
【図5】図5は、実施例3に係る排ガス処理システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0020】
図1は、実施例1に係る排ガス処理システムの概略構成図である。図1に例示される排ガス処理システム10Aは、石炭を燃料として使用する石炭焚きボイラや重油を燃料として使用する重油焚きボイラ等のボイラ11からの排ガス18から、窒素酸化物(NO)、硫黄酸化物(SO)、水銀(Hg)等の有害物質を除去する装置である。
【0021】
排ガス処理システム10Aは、燃料Fを燃焼させるボイラ11と、前記ボイラ11からの排ガス18の熱を回収するエアヒータ13と、熱回収後の排ガス18中の煤塵を除去する集塵機14と、除塵後の排ガス18中に含まれる硫黄酸化物を吸収液である石灰スラリー20で除去する脱硫装置15と、前記脱硫装置15から排出される脱硫排水30から石膏31を除去する脱水機32と、前記脱水機32からの脱水濾液33を噴霧する噴霧手段を備えた噴霧乾燥機50と、前記噴霧乾燥機50に排ガス18の一部を導入する排ガス導入ラインL11とを具備するものである。これにより、石膏を除去した脱水濾液33を用いて噴霧乾燥機50で噴霧乾燥するので、安定した噴霧を行うことを可能としている。
これにより、噴霧乾燥機での目詰まりが発生せず、脱硫排水の水分の無排水化を安定して実施することができる。
【0022】
脱硝装置12は、ボイラ11からガス供給ラインL1を介して供給される排ガス18中の窒素酸化物を除去する装置であり、その内部に脱硝触媒層(図示せず)を有している。脱硝触媒層の前流には還元剤注入器(図示せず)が配置され、この還元剤注入器から排ガス18に還元剤が注入される。ここで還元剤としては、例えばアンモニア、尿素、塩化アンモニウムなどが用いられる。脱硝装置12に導入された排ガス18中の窒素酸化物は、脱硝触媒層と接触することにより、排ガス18中の窒素酸化物が窒素ガス(N)と水(HO)に分解・除去される。また排ガス18中の水銀は、排ガス中の塩素(Cl)分が多くなると、水に可溶な2価の塩化水銀の割合が多くなり、後述する脱硫装置15で水銀が捕集しやすくなる。
【0023】
なお、上記の脱硝装置12は必須のものではなく、ボイラ11からの排ガス18中の窒素酸化物濃度や水銀濃度が微量、あるいは、排ガス18中にこれらの物質が含まれない場合には、脱硝装置12を省略することも可能である。
【0024】
エアヒータ13は、脱硝装置12で窒素酸化物が除去された後、排ガス供給ラインL2を介して供給される排ガス18中の熱を回収する熱交換器である。脱硝装置12を通過した排ガス18の温度は350℃〜400℃程度と高温であるため、エアヒータ13により高温の排ガス18と常温の燃焼用空気との間で熱交換を行う。熱交換により高温となった燃焼用空気は、ボイラ11に供給される。一方、常温の燃焼用空気との熱交換を行った排ガス18は150℃程度まで冷却される。
【0025】
集塵機14は、熱回収後、ガス供給ラインL3を介して供給される排ガス18中の煤塵を除去するものである。集塵機14としては慣性力集塵機、遠心力集塵機、濾過式集塵機、電気集塵機、洗浄集塵機等が挙げられるが、特に限定されない。
【0026】
脱硫装置15は、煤塵が除去された後、ガス供給ラインL4を介して供給される排ガス18中の硫黄酸化物を湿式で除去する装置である。この脱硫装置15では、アルカリ吸収液として石灰スラリー20(水に石灰石粉末を溶解させた水溶液)が用いられ、装置内の温度は30〜80℃程度に調節されている。石灰スラリー20は、石灰スラリー供給装置21から脱硫装置15の塔底部22に供給される。脱硫装置15の塔底部22に供給された石灰スラリー20は、図示しない吸収液送給ラインを介して脱硫装置15内の複数のノズル23に送られ、ノズル23から塔頂部24側に向かって噴出される。脱硫装置15の塔底部22側から上昇してくる排ガス18がノズル23から噴出する石灰スラリー20と気液接触することにより、排ガス18中の硫黄酸化物及び塩化水銀が石灰スラリー20により吸収され、排ガス18から分離、除去される。石灰スラリー20により浄化された排ガス18は、浄化ガス26として脱硫装置15の塔頂部24側より排出され、煙突27から系外に排出される。
【0027】
脱硫装置15の内部において、排ガス18中の硫黄酸化物SOは石灰スラリー20と下記式(1)で表される反応を生じる。
CaCO+SO+0.5HO → CaSO・0.5HO +CO・・・(1)
【0028】
さらに、排ガス18中のSOを吸収した石灰スラリー20は、脱硫装置15の塔底部22に供給される空気(図示せず)により酸化処理され、空気と下記式(2)で表される反応を生じる。
CaSO・0.5HO+0.5O+1.5HO → CaSO・2HO・・・(2)
このようにして、排ガス18中のSOは、脱硫装置15において石膏CaSO・2HOの形で捕獲される。
【0029】
また、上記のように、石灰スラリー20は、脱硫装置15の塔底部22に貯留した液を揚水したものが用いられるが、この揚水される石灰スラリー20には、脱硫装置15の稼働に伴い、反応式(1)、(2)により石膏CaSO・2HOが混合される。以下では、この揚水される石灰石膏スラリー(石膏が混合された石灰スラリー)を吸収液とよぶ。
【0030】
脱硫に用いた吸収液(石灰石膏スラリー)は、脱硫排水30として脱硫装置15の塔底部22から外部に排出され、後述する排水ラインL20を介して脱水機32に送られ、ここで脱水処理される。この脱硫排水30には、石膏の他、水銀等の重金属やCl-、Br-、I-、F-等のハロゲンイオンが含まれている。
【0031】
脱水機32は、脱硫排水30中の石膏31を含む固体分と液体分の脱水濾液33とを分離するものである。脱水機32としては、例えばベルトフィルタ、遠心分離機、デカンタ型遠心沈降機等が用いられる。脱硫装置15から排出された脱硫排水30は、脱水機32により石膏31が分離される。その際、脱硫排水30中の塩化水銀は石膏31に吸着された状態で石膏31とともに液体と分離される。分離した石膏31は、システム外部(以下、「系外」という)に排出される。
一方、分離液である脱水濾液33は脱水ラインL21を介して噴霧乾燥機50に送られる。なお、脱水濾液33は一時的に排水タンク(図示せず)に貯留するようにしてもよい。
【0032】
噴霧乾燥機50は、排ガス供給ラインL2から分岐した排ガス導入ラインL11を介して一部の排ガスが導入されるガス導入手段と、脱水濾液33を散布又は噴霧する噴霧手段とを具備している。そして、導入される排ガス18の熱により散布された脱水濾液33を蒸発乾燥させている。なお、符号L12は噴霧乾燥機で乾燥に寄与した排ガスをガス供給ラインL3に送給する排ガス供給ラインである。
【0033】
本発明では、脱硫排水から石膏31を除去した脱水濾液33を噴霧乾燥しているので、噴霧手段での目詰まりを防止することができる。
すなわち、脱硫排水そのものを噴霧するのではないので、脱硫排水が蒸発するのに伴い発生する乾燥粒子の量を大幅に低減させることができる。その結果、乾燥粒子の付着に起因する目詰まりを低減させることができる。また、脱硫排水30を脱水処理することにより、石膏31とともに塩化水銀も分離・除去されるため、排水噴霧時に排ガス18中の水銀濃度が増加するのを防止することができる。
【0034】
また、本実施例では、エアヒータ13へ流入する排ガスの一部を排ガス供給ラインL2から排ガス導入ラインL11を介して分岐しているので、排ガスの温度が高く(350〜400℃)、脱水濾液33の噴霧乾燥を効率よく行うことができる。
【0035】
図2は、本実施例に係る脱硫排液からの脱水濾液の噴霧乾燥機(噴霧乾燥機)の概略図である。
図2に示すように、本実施例の噴霧乾燥装置は、噴霧乾燥装置本体51内に、脱硫排水からの脱水濾液33を噴霧する噴霧ノズル52と、噴霧乾燥装置本体51に設けられ、噴霧液33aを乾燥する排ガス18を導入する導入口51aと、噴霧乾燥装置本体51内に設けられ、排ガス18により脱水濾液33を乾燥する乾燥領域53と、乾燥に寄与した排ガス18を排出する排出口51bと、乾燥領域53内に複数設けられ、内部の温度を計測する温度計T1〜T7と、温度計の計測結果により、脱水濾液33の噴霧・乾燥状態の良否の判断を行う判定手段54と、判定手段54の判断の結果、噴霧乾燥不良であると判断した場合に、排ガス18又は脱水濾液38の調整を行う制御手段55とを具備するものである。なお、符号56は分離された固形物、L22は脱水濾液33を集塵灰16に供給する供給ラインを図示する。
【0036】
本実施例では、7箇所に温度計(T1〜T7)を設けているが、本発明はこれに限定されず、乾燥領域53の長さに応じて適宜変更するようにしている。
なお、温度計測は装置本体の鉛直軸線部分に設置しているが、本発明はこれに限定されず、蒸発状態を確認する位置に設置することができれば、いずれに設置してもよい。
【0037】
図3−1及び図3−2は、噴霧乾燥装置本体内の7箇所に設けた温度計(T1〜T7)に対するノズルからの距離と、計測温度との関係図である。
ここで、液体の蒸発過程では、噴霧液33aの液滴の温度上昇や蒸発に対して熱が必要となる。この場合、排ガス18の熱が液滴の温度上昇や蒸発に使用されるので、排ガス18の温度が下がることとなる。この温度の低下を検知することで乾燥の良否を判断するようにしている。
図3−1は、乾燥が良好な場合の関係図であり、図3−2は、乾燥が不良の場合の関係図である。
図3−1では、温度減少がT4付近から止まり、温度が一定となっている。これは、噴霧液33aの液滴が無いことに起因する。
これに対して、図3−2では、温度減少がT7まで断続的に低下している。これは、噴霧液33aの液滴が多量の残存していることに起因する。
【0038】
この結果を判定手段54で判断する。
この判定手段54での判断の結果、乾燥良好である場合には、そのまま脱水濾液33の噴霧乾燥を継続する。
【0039】
これに対し、判断手段54での判断の結果、乾燥不良であると判断した場合には、排ガス18又は脱水濾液33の調整を制御手段55により行うようにしている。
【0040】
具体的には、脱水濾液33の調整は、調整バルブV1を操作して脱水濾液33の供給量の増減又は噴霧ノズル52に供給するアトマイズエアの供給量の増減により、噴霧液の液滴径の調整をする。
また、脱水濾液33を所定量備蓄するバッファタンクを設け、調整を行うようにしてもよい。
【0041】
このため、制御手段55には図示しない脱水濾液33の流量を計測した流量情報(※1)、排ガス18の流量を計測した流量情報(※2)が入力され、この情報をもとに、バルブ開度の調整又は図示しないポンプ流量の調整を行うようにしている。
【0042】
また、排ガス18の調整は、排ガスの導入量の制御により行うようにしている。
導入量の調整は、排ガス導入ラインL11との圧損調整によるバルブV2又はダンパ等の開度の制御により調整を行うようにしている。
【0043】
また、排ガス導入ラインL11を複数系列として、噴霧乾燥機50を2台以上設置し、排ガスの供給量を調整するようにしてもよい。
【0044】
また、温度計測により、瞬間的な判断だけではなく、経時的に温度プロファイルを計測し乾燥良好な状態から乾燥不良の状態に過渡的に変化することを確認できた時点で、乾燥不良の要因を改善する前述した操作を行うようにしてもよい。
【0045】
本実施例によれば、前記脱硫装置から排出される脱硫排水から石膏を除去した脱水濾液を、排ガスの一部により噴霧乾燥する際、脱水濾液の噴霧乾燥状態を乾燥領域における温度状態を監視しつつ行うことしているので、安定して噴霧乾燥状態を保持でき、脱硫排水の無排水化を実施することができる。
【実施例2】
【0046】
次に、実施例2に係る排ガス処理システムについて説明する。
図4は、実施例2に係る排ガス処理システムの概略構成図である。なお、上述した実施例1と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。図4に例示される排ガス処理システム10Bは、実施例1に係る排ガス処理システム10Aにおいて、脱硫濾液33中の浮遊物質(SS:suspended solids)又は懸濁物質(suspended substance)を除去する固液分離装置41を脱水ラインL21に介装したものである。
固液分離装置41としては、例えば液体サイクロン、ベルトフィルタ、分級器、膜分離装置等を挙げることができる。
【0047】
この固液分離装置41は、脱水濾液33中の浮遊物質(SS)を除去し、分離液42中のSS濃度を1重量%以下、より好ましくは0.1〜0.5重量%としている。
これにより、SS濃度が低減し、噴霧乾燥機50でのノズルや配管等の詰まりをさらに抑制することができる。
すなわち、SS濃度を1重量%以下、より好ましくは0.1〜0.5重量%とすることで、噴霧乾燥の際の噴霧ノズル先端部での噴霧乾燥物の付着や、煤塵の付着成長により、噴霧不良となることが抑制される。この結果、閉塞による運転停止、噴霧液滴径の粗大化による必要乾燥時間の長期化に起因する乾燥不足等が解消される。また、噴霧範囲のかたよりに起因する乾燥状況の乾燥ムラ、乾燥不足等が解消される。
【0048】
固液分離装置で分離した分離残渣43は、集塵灰16に合流させ、脱水濾液33により水分を含ませるようにしてもよい。
なお、集塵灰16単独で別途利用するような場合には、集塵灰16と残渣とを別々の場所において脱水濾液33の噴霧処理を行うようにすればよい。
【0049】
また、排ガス導入ラインL11に設けた噴霧乾燥機50の前段側又は後段側のいずれか一方又は両方に小型の集塵機を設け、排ガス中の煤塵を排ガス導入ラインL11にて除去するようにしてもよい。
【0050】
なお、排ガス18の導入は、排ガスのガス供給ラインL2と排ガス導入ラインL11との圧力損失の相違により、排ガス18を噴霧乾燥機50内へ導入するようにしたり、必要に応じて誘引ファン等を用いて排ガス18を導入したりしている。
【実施例3】
【0051】
次に、実施例3に係る排ガス処理システムについて説明する。なお、上述した実施例1と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図5は、実施例3に係る排ガス処理システムの概略構成図である。本実施例に係る排ガス処理システム10Cでは、図5に示すように、排ガス18の分岐をエアヒータ13の排ガスラインL3から行っており、噴霧乾燥機50で噴霧乾燥に寄与した排ガスを再び同じ箇所の排ガスラインL3に戻している。
これにより、実施例1のようなバイパスラインを設けることが不要となる。
【符号の説明】
【0052】
10A〜10C 排ガス処理システム
11 ボイラ
12 脱硝装置
13 エアヒータ
14 集塵機
15 脱硫装置
16 集塵灰
18 排ガス
20 石灰スラリー
21 石灰スラリー供給装置
22 塔底部
23 ノズル
24 塔頂部
26 浄化ガス
27 煙突
30 脱硫排水
32 脱水機
33 脱水濾液
50 噴霧乾燥機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧乾燥装置本体内に、脱硫排水からの脱水濾液を噴霧する噴霧ノズルと、
噴霧乾燥装置本体に設けられ、噴霧液を乾燥する排ガスを導入する導入口と、
噴霧乾燥装置本体内に設けられ、排ガスにより脱水濾液を乾燥する乾燥領域と、
乾燥に寄与した排ガスを排出する排出口と、
前記乾燥領域内に複数設けられ、内部の温度を計測する温度計と、
前記温度計の計測結果により、脱水濾液の噴霧・乾燥状態の良否の判断を行う判定手段と、
前記判定手段の判断の結果、噴霧乾燥不良であると判断した場合に、排ガス又は脱水濾液の調整を行う制御手段とを具備することを特徴とする脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置。
【請求項2】
請求項1において、
脱水濾液の調整は、脱水濾液の供給量の増減又はアトマイズエアの供給量の増減により行うことを特徴とする脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置。
【請求項3】
請求項1において、
排ガスの調整は、排ガスの導入量の制御により行うことを特徴とする脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
噴霧乾燥不良は、温度減少度合いにより判断することを特徴とする脱硫排水からの脱水濾液の噴霧乾燥装置。
【請求項5】
燃料を燃焼させるボイラと、
前記ボイラからの排ガスの熱を回収するエアヒータと、
熱回収後の排ガス中の煤塵を除去する集塵機と、
除塵後の排ガス中に含まれる硫黄酸化物を吸収液で除去する脱硫装置と、
前記脱硫装置から排出される脱硫排水から石膏を除去する脱水機と、
前記脱水機からの脱水濾液を噴霧する噴霧手段を備えた請求項1乃至4のいずれか一つの噴霧乾燥装置と、
前記噴霧乾燥装置に排ガスの一部を導入する排ガス導入ラインとを具備することを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記脱水機からの脱水濾液中の浮遊物質を除去する固液分離装置を有することを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項7】
燃料を燃焼させるボイラからの排ガスの熱をエアヒータにより回収した後、
脱硫装置において、熱回収後の排ガス中に含まれる硫黄酸化物を吸収液で除去する排ガス処理方法において、
前記脱硫装置から排出される脱硫排水から石膏を除去した脱水濾液を、排ガスの一部により噴霧乾燥する際、脱水濾液の噴霧乾燥状態を乾燥領域における温度状態を監視しつつ行うことを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記脱水濾液中の浮遊物質を除去した分離液を噴霧乾燥することを特徴とする排ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200657(P2012−200657A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66776(P2011−66776)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】