説明

脱臭装置

【課題】触媒活性のためのエネルギー投入量を増加させることなく臭気の分解性能に優れた脱臭装置を提供する。
【解決手段】吸気口1と、吸着剤と触媒を含有すると共に前記吸気口1から流入する空気を脱臭する脱臭体2と、前記脱臭体2により浄化された空気を排気する排気口3とを備え、前記吸気口1から流入する空気の一部を酸素富化膜ユニット6内の酸素富化膜(図示せず)を通して供給するようにしたもので、酸素富化膜ユニット6を通して得られた大気の酸素濃度以上の酸素を吸気口1に供給することにより、触媒における酸化分解が促進され、触媒を活性化させるためのエネルギー投入量を増加させることなく、臭気の分解性能をあげることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪臭やVOCなどの有害物質を吸着および酸化分解により除去する脱臭装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の触媒を用いた脱臭装置としては、吸着剤と組み合わせ、通常は吸着による吸着作用により悪臭やVOCなどの有害物質を除去し、間欠的にヒータなどの加熱手段により触媒の温度を触媒活性温度まで上昇させ、吸着した悪臭や有害物質を酸化分解する装置が一般的である。
【0003】
近年では、ヒータと触媒を一体化して浄化効率を上げるなどの工夫を行っているものもある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−155159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の触媒を用いた脱臭装置においては、触媒の酸化効率を上げるためには、触媒を活性化させる活性化手段であるヒータへのエネルギーの投入量を増加させて、触媒温度を上げなければならず、多くのエネルギーを費やすといった課題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、触媒活性のためのエネルギー投入量を増加させることなく臭気分解性能に優れた脱臭装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の脱臭装置は、吸気口と、吸着剤と触媒を含有すると共に前記吸気口から流入する空気を脱臭する脱臭体と、前記脱臭体により浄化された空気を排気する排気口とを備え、前記吸気口から流入する空気の一部を酸素富化膜を通して供給するようにしたもので、酸素富化膜を通して得られた大気の酸素濃度以上の酸素を吸気口に供給することにより、触媒における酸化分解が促進され、触媒を活性化させるためのエネルギー投入量を増加させることなく、臭気の分解性能をあげることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の脱臭装置は、触媒活性のためのエネルギー投入量を増加させることなく分解性能が大幅に向上するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、吸気口と、吸着剤と触媒を含有すると共に前記吸気口から流入する空気を脱臭する脱臭体と、前記脱臭体により浄化された空気を排気する排気口とを備え、前記吸気口から流入する空気の一部を酸素富化膜を通して供給するようにしたもので、酸素富化膜を通して得られた大気の酸素濃度以上の酸素を吸気口に供給することにより、触媒における酸化分解が促進され、触媒を活性化させるためのエネルギー投入量を増加させることなく、臭気の分解性能をあげることができる。
【0009】
第2の発明は、特に、第1の発明の酸素富化膜をシリコーン系高分子膜で形成したもので、効率よく酸素を供給できるので、酸化分解効率の高い脱臭装置を提供することができる。
【0010】
第3の発明は、特に、第1又は第2の発明の酸素富化膜を通して空気を吸引し、得られた酸素富化空気を吸気口に供給する吸気手段を設けたもので、吸気手段により酸素供給量を増大させることができるので、さらに酸化分解効率の高い脱臭装置とすることができる。
【0011】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明の吸着剤は、活性炭、ゼオライト、シリカ、アルミナのいずれかを含むもので、室内や車内の悪臭やVOCなどを効率よく吸着する脱臭装置とすることができる。
【0012】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか一つの発明の触媒を活性化させる活性手段を備えたもので、活性手段により触媒を活性化することにより、さらに酸化分解効率の高い脱臭装置とすることができる。
【0013】
第6の発明は、特に、第5の発明の触媒をマンガン、コバルト、銅のいずれかを含む酸化金属触媒とし、活性手段として発熱源を用いたもので、酸化分解効率の高い脱臭装置を提供することができる。
【0014】
第7の発明は、特に、第5の発明の触媒を白金を含む貴金属触媒とし、活性手段として発熱源を用いたもので、酸化分解効率が高く、かつ耐久性に優れた脱臭装置を提供することができる。
【0015】
第8の発明は、特に、第5の発明の触媒を酸化チタンを含む光触媒とし、活性手段として光源を用いたもので、浄化される空気の温度が上がらないので、排気口から排出される空気の温度も上昇せず、取り扱いが容易な脱臭装置を提供することができる。
【0016】
第9の発明は、特に、第8の発明の光源を紫外光を発する光源としたもので、さらに酸化分解効率の高い脱臭装置とすることができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1〜3を用いて、本発明の第1の実施の形態における脱臭装置について説明する。図1は、本実施の形態における脱臭装置の概略構成を示す構成図である。
【0019】
図1において、本実施の形態における脱臭装置10は、脱臭体2を内包する筐体4と、前記筐体4に設けられ汚染空気が流入する吸気口1と、同じく筐体4に設けられると共に脱臭体2により浄化された空気を排気する排気口3と、シリコーン高分子よりなる酸素富化膜から構成された酸素富化膜ユニット6と、酸素富化膜ユニット6を通して空気を吸引し、それを吸気口1に供給する吸気手段となるポンプ5から構成されている。
【0020】
また脱臭体2は、触媒材料である四三酸化コバルトと吸着材料である疎水性のゼオライトを、セラミックハニカムに1:1の割合で担持したものを約200cc用いている。また図中の矢印は空気の流れを示している。
【0021】
次に、図2を用いて、酸素富化膜ユニット6の詳細を説明する。
【0022】
図2において、シリコーン高分子よりなる酸素富化膜21およびポリエーテルスルフォン、ポリプロピレン、PETの多孔体で多層構造を構成し、これら全体で酸素富化膜多層体22を構成している。また支持体23で酸素富化膜多層体22を支持しており、図示していないが内部に無数の通気溝が存在している。酸素富化された空気の流出口24から、酸素富化膜多層体22を通気した空気を支持体23内の図示していない通気溝を通過して排出する。また図中の矢印は空気の流れを示している。
【0023】
以上のように構成された脱臭装置10の動作を説明する。汚染空気は図示していない吸気ファンの働きにより吸気口1から脱臭体2に導かれる。
【0024】
一方、ポンプ5の働きにより、空気は酸素富化膜ユニット6内に吸引される。酸素富化膜ユニット6においては、酸素富化膜多層体22のシリコーン高分子膜からなる酸素富化膜21の作用により、窒素に比べ選択的に酸素が透過し、酸素富化の状態となる。酸素富化された空気すなわち酸素富化空気は、支持体23内の図示していない通気溝を通過し、流出口24からポンプ5に吸引される。そして酸素富化空気は、ポンプ5からの排気として、吸気口1に導入され、汚染空気と混合され、筐体4内の脱臭体2に導かれる。
【0025】
導入された汚染空気は、脱臭体2の表面においてまず、吸着材料である疎水ゼオライトの働きにより吸着される。その後、触媒材料である四三酸化コバルトの働きにより、汚染空気と共に導入された酸素および酸素富化空気中の酸素と反応し、酸化分解作用を受け浄化され、排気口3から浄化空気として排出される。
【0026】
以上の脱臭装置10を用いて、浄化性能の評価試験を行なった結果を以下に述べる。
【0027】
まず、ポンプ5を調整し流量3L/分で酸素富化空気を吸気口1に導入するようにした。このときポンプ5の排気側の酸素濃度は30〜31%であった。つぎに図示していない吸気ファンを調整し、トータルで6L/分の流量で脱臭体2に流入するようにした。よってこのとき、酸素濃度が約25%となっていることになる。
【0028】
ここでは悪臭ガスとしてアセトアルデヒドを選定し、吸気口1で100ppmとなるように調整し通気した。この状態で、アセトアルデヒドの除去率の経時変化を求めた。また、対照実験1として、酸素富化をせずに流量6L/分としたときのアセトアルデヒドの除去率の経時変化も求めた。その結果を図3に示す。
【0029】
図3から、本実施の形態も、対照実験1においても、流通初期においては、疎水性ゼオライトの吸着作用により除去率はほぼ100%であるが、約1時間後には破過が始まり、除去率は低下するが、本実施の形態では、約90%で除去率が安定したのに対して、対照実験1においては除去率は約60%で安定し、酸化分解作用に明らかな差異が見られた。
【0030】
以上のように、本実施の形態によれば、脱臭装置10に大気の酸素濃度以上の酸素を供給することにより、酸化触媒において酸化分解を促進し、分解性能をあげることが可能となった。なお本実施の形態では、脱臭体2の吸着材料として疎水性のゼオライトを用いたが、活性炭やシリカアルミナなどの吸着剤を用いてもよい。
【0031】
また本実施の形態では、脱臭体3の触媒材料として四三酸化コバルトを用いたが、これ以外にもマンガンや銅などの酸化物を用いてもよい。
【0032】
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における脱臭装置の概略構成を示す構成図、図5は、同脱臭装置によるアセトアルデヒド除去性能を示す実験特性図である。なお、上記第1の実施の形態と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0033】
本実施の形態は、図4に示すように、シーズヒータなどの発熱源からなる活性手段7を脱臭体2の上流部近傍に配置し、脱臭体2の中心温度が200℃となるように活性手段7に電力供給を行うようにしたものである。
【0034】
以上のように構成された脱臭装置10を用いて、同様に浄化性能の評価試験を行なった。
【0035】
実施の形態1と同様に、ポンプ5を調整し流量3L/分の酸素富化空気を吸気口1に導入するものとした。図示していない吸気ファンを調整し、トータルで6L/分の流量で脱臭体2に流入するものとした。よってこのとき、酸素濃度が約25%となっていることになる。
【0036】
同様に悪臭ガスとしてアセトアルデヒドを選定し、吸気口で100ppmとなるように調整し通気した。この状態で、アセトアルデヒドの除去率の経時変化を求めた結果を示したのが図5である。
【0037】
図5に示されるように、本実施の形態においては、破過が始まる約1時間後以降も、除去率はほとんど低下せず、本実施の形態ではほぼ99%以上で除去率が安定した。
【0038】
以上のように、本実施の形態によれば、脱臭装置10に、シーズヒータなどからなる活性手段7を追加することにより、触媒が活性となり、さらに酸化分解性能をあげることができる。なお、実使用においては、活性手段7は、間欠的に通電されるものであるが、実験においては比較のため連続通電で実験を行った。
【0039】
(実施の形態3)
図6は、本発明の第3の実施の形態における脱臭装置による硫化水素除去性能を示す実験特性図である。なお、上記第2の実施の形態と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0040】
本実施の形態における脱臭装置10の構成は、第2の実施の形態と同様であるが、脱臭体2は、吸着材料である疎水性のゼオライトを上記実施の形態2と同量担持した後、白金硝酸溶液に浸漬し、600℃で焼成したものを用い、同じく実施の形態2と同様に、シーズヒータからなる活性手段7を脱臭体2の上流部に配置し、脱臭体2の中心温度が200℃となるように活性手段7に電力供給を行った。
【0041】
以上の脱臭装置10を用いて、同様に浄化性能の評価試験を行なった。
【0042】
同様に、ポンプ5を調整し流量3L/分で酸素富化空気を吸気口1に導入するものとし、図示していない吸気ファンを調整して、トータルで6L/分の流量で脱臭体2に流入するものとした。
【0043】
ここでは、悪臭ガスとして硫化水素を選定し、吸気口で100ppmとなるように調整し通気した。この状態で、硫化水素の除去率の経時変化を求めた結果を示したのが図6である。
【0044】
図6に示すように、実施の形態2においては、硫化水素の除去率は安定せず、徐々に低下していくが、本実施の形態3では低下せず、ほぼ99%で除去率が安定した。
【0045】
以上のように、本実施の形態によれば、脱臭装置10に触媒材料として白金を用いることによって、触媒が硫化水素などの臭気に対しても化学変化を起こさず、耐久性能のよい脱臭装置を提供することができる。
【0046】
(実施の形態4)
図7は、本発明の第4の実施の形態における脱臭装置によるアセトアルデヒド除去性能を示す実験特性図である。なお、上記第2、3の実施の形態と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
本実施の形態における脱臭装置10の構成は、上記第2、第3の実施の形態と同様であるが、脱臭体2には、吸着材料である疎水性のゼオライトと光触媒である二酸化チタンを1:1で担持したものを用いたものである。なお、光触媒は可視光応答型の光触媒を用いた。
【0048】
また、活性手段7として、紫外線を発光する光源であるブラックライト(図示せず)を脱臭体2の上流部に配置し、脱臭体2の上流表面部の照射強度が2mW/cmとなるようにブラックライトに電力供給を行った。
【0049】
以上のように構成された脱臭装置10を用いて、同様に浄化性能の評価試験を行なった。
【0050】
同様に、ポンプ5を調整し流量3L/分で酸素富化空気を吸気口1に導入すると共に、図示していない吸気ファンを調整し、トータルで6L/分の流量で脱臭体2に流入するものとした。
【0051】
本実施の形態では、悪臭ガスとしてアセトアルデヒドを選定し、吸気口で100ppmとなるように調整し通気した。この状態で、アセトアルデヒドの除去率の経時変化を求めた。
【0052】
対照実験41は、酸素富化をせずに流量6L/分としたときのアセトアルデヒドの除去率の経時変化を求めたもので、対照実験42は、活性手段7として、光源である蛍光灯を用いて経時変化を求めたもので、その実験結果を図7に示す。
【0053】
図7に示すように、酸素富化空気を供給しない対照実験41においては除去率はほぼ20%で安定し、蛍光灯を用いた対照実験42においては除去率はほぼ15%で安定したのに対して、本実施の形態ではほぼ除去率30%と高い除去率で安定した。
【0054】
また、本実施の形態において排気口3の温度は、室温である約20℃であったが、活性手段7としてシーズヒータを用いた実施の形態2および3では約100℃であった。
【0055】
以上のように、本実施の形態によれば、脱臭装置10に、触媒材料として光触媒である二酸化チタンを用い、活性手段7として紫外光を発する光源であるブラックライトを用いることによって、排気温度を上昇させることなく、酸化分解効率が向上した脱臭装置を提供することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明にかかる脱臭装置は、大気の酸素濃度以上の酸素を供給することにより、触媒における酸化分解を促進させ、触媒活性のためのエネルギー投入量を増加させることなく分解性能をあげることができるもので、室内用の脱臭装置のほか、業務用、車載用、冷蔵庫用、トイレ用などの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1における脱臭装置の構成図
【図2】同脱臭装置の酸素富化膜ユニットの構成図
【図3】同脱臭装置によるアセトアルデヒド除去性能を示す実験特性図
【図4】本発明の実施の形態2における脱臭装置の構成図
【図5】同脱臭装置によるアセトアルデヒド除去性能を示す実験特性図
【図6】本発明の実施の形態3における脱臭装置による硫化水素除去性能を示す実験特性図
【図7】本発明の実施の形態4における脱臭装置によるアセトアルデヒド除去性能を示す実験特性図
【符号の説明】
【0058】
1 吸気口
2 脱臭体
3 排気口
4 筐体
5 ポンプ(吸気手段)
6 酸素富化膜ユニット
7 活性手段
21 酸素富化膜
22 酸素富化膜多層体
23 支持体
24 流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口と、吸着剤と触媒を含有すると共に前記吸気口から流入する空気を脱臭する脱臭体と、前記脱臭体により浄化された空気を排気する排気口とを備え、前記吸気口から流入する空気の一部を酸素富化膜を通して供給するようにした脱臭装置。
【請求項2】
酸素富化膜をシリコーン系高分子膜で形成した請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項3】
酸素富化膜を通して空気を吸引し、得られた酸素富化空気を吸気口に供給する吸気手段を設けた請求項1又は2に記載の脱臭装置。
【請求項4】
吸着剤は、活性炭、ゼオライト、シリカ、アルミナのいずれかを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱臭装置。
【請求項5】
触媒を活性化させる活性手段を備えた請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱臭装置。
【請求項6】
触媒をマンガン、コバルト、銅のいずれかを含む酸化金属触媒とし、活性手段として発熱源を用いた請求項5に記載の脱臭装置。
【請求項7】
触媒を白金を含む貴金属触媒とし、活性手段として発熱源を用いた請求項5に記載の脱臭装置。
【請求項8】
触媒を酸化チタンを含む光触媒とし、活性手段として光源を用いた請求項5に記載の脱臭装置。
【請求項9】
光源を紫外光を発する光源とした請求項8に記載の脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−38087(P2007−38087A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223640(P2005−223640)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】