説明

脱臭装置

【課題】室内空間や車内空間において温湿度環境に影響を受けることなく汚染物質除去に適した脱臭装置を提供することを目的とする。
【解決手段】光触媒と吸着剤とを基材に担持した脱臭フィルタ3と,光触媒を励起させるための励起部4とを備えた脱臭部2の上流側に,回転機構を設けたデシカントロータ6と,デシカントロータ6の一部を加熱し,再生を行うヒータ部7と,再生空気13と被処理空気9の間で熱交換を行う熱交換器11と,デシカントロータ6の再生部と熱交換器11を循環する再生風路12とを備えた除湿部5からなる脱臭装置1の下流側に送風機17を備えた脱臭機15を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光触媒を利用した脱臭装置に関し、特に室内空間や車内空間において温湿度環境に影響を受けることなく汚染物質除去に適した脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒を利用した脱臭技術が従来から報告されている。光触媒は例えば二酸化チタンや酸化タングステン、酸化亜鉛のような半導体の金属酸化物が挙げられる。これらに紫外線を照射することで価電子帯の電子が励起されて伝導帯に遷移し、電子と正孔が生じる。これらが光触媒表面に移動することで空気中の汚染物質と反応するか、あるいは、空気中の酸素や水と反応し、スーパーオキサイドイオン(O2-)とヒドロキシラジカル(・OH)が発生し、これらが汚染物質と反応することで脱臭されるというものである。しかしながら、光触媒による脱臭は処理空気の湿度によって脱臭性能が大きく左右されることが知られており、特に高湿度域では脱臭性能が低下してしまうという問題があった。これに対して、光触媒によって脱臭処理を行う前に処理空気の湿度を下げることで、光触媒の脱臭効率を上げることが考えられ、例えば特許文献1、特許文献2のような脱臭方法が提案されている。すなわち、上記特許文献1に示される従来例にあっては、光触媒によって脱臭処理を行う前の汚染空気を加熱部で加熱処理することによって汚染空気の相対湿度を15%以下としてから、光触媒で脱臭処理を行うというものである。また、上記特許文献2に示される従来例にあっては、汚染空気の除湿処理前の相対湿度が60%以上、光触媒による空気浄化前の相対湿度が45%以下にするか、または汚染空気の除湿処理前の絶対湿度Aと光触媒による空気清浄前の絶対湿度Bの関係がA/B≧1.5とするというものである。
【特許文献1】特開2005−80726号公報
【特許文献2】特開2000−70671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に示される従来例にあっては、加熱手段を備えているだけで、脱臭後の空気処理に対する対策がなされていない。つまり、加熱部で高温になった被処理空気はそのまま排出されることとなり、例えば野外に設置された脱臭処理設備等や、室内であっても高温の空気を排気ダクトなどを用いて屋外へ排出するような設備であれば問題なく使用できるが、閉鎖空間では室内の温度が上がってしまうために、居住空間や車内空間などでは利用できないという問題があった。また、加熱手段のみで相対湿度を15%以下まで下げるためには、比較的低湿度域においては問題なく減湿できるが、例えば雨天時などの高湿度域においては性能を発揮できないという問題があった。
【0004】
また、可能であってもかなり高温に加熱する必要があり、コストや安全性に問題があった。また、特許文献2に示される従来例にあっては、除湿手段として乾燥剤や除湿剤などの薬剤での処理や、除湿機などの装置による処理を行っているが、乾燥剤や除湿剤などの薬剤を用いた除湿手段は維持管理に多額の費用と人的労力が必要であるという問題があった。また、除湿機による除湿手段は冷却設備やコンプレッサーなど多額のコストを必要とするため、除湿するためだけの設備としてこれらを組み込むことはあまり現実的とはいえなかった。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を鑑みてなされたものであり、家庭用の除湿機などにも使われているデシカントロータによる除湿機構及びその再生機構を利用することで従来の課題を解決し、光触媒の脱臭能力を著しく向上させることができるに至った。すなわち本発明は、住居内や車内などの室内空間でも使用でき、高湿度環境においても優れた脱臭性能を満たす脱臭装置を提供することを目的とする。また、比較的低コストで、メンテナンスも容易であり、様々な悪臭を除去することのできる脱臭機および、除湿機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の脱臭装置は、請求項1記載のとおり、光触媒と吸着剤とを基材に担持した脱臭フィルタと前記光触媒を励起させるための励起部を備えた脱臭部と、前記脱臭部の上流側に回転機構を設けたデシカントロータと前記デシカントロータの一部を加熱して再生を行うヒータ部からなる除湿部を備え、前記除湿部で除湿した被処理空気をヒータ部の輻射熱によって加熱した後、前記脱臭部に送風することを特徴とするものであり、脱臭部を通過する被処理空気を低湿且つ、高温の状態にし、光触媒の脱臭性能を向上することができる。
【0007】
また、請求項2記載の脱臭装置は、光触媒と吸着剤とを基材に担持した脱臭フィルタと前記光触媒を励起させるための励起部を備えた脱臭部と、前記脱臭部の上流側に回転機構を設けたデシカントロータと前記デシカントロータの一部を加熱して再生を行うヒータ部と前記ヒータ部による加熱によってデシカントロータから脱離した水分を含む再生空気と被処理空気間で熱交換を行う熱交換器と前記ヒータ部から前記熱交換器を通って脱臭フィルタの上流側へ再生空気を導入する再生風路を備えた除湿部を備え、前記除湿部で除湿した被処理空気と前記再生風路から導入された再生空気を混合し、前記脱臭部に送風することを特徴とするものであり、脱臭部を通過する被処理空気を低湿且つ、高温の状態にし、光触媒の脱臭性能を向上することができる。
【0008】
また、請求項3記載の脱臭装置は、光触媒と吸着剤とを基材に担持した脱臭フィルタと前記光触媒を励起させるための励起部を備えた脱臭部と、前記脱臭部の上流側に回転機構を設けたデシカントロータと前記デシカントロータの一部を加熱して再生を行うヒータ部と前記ヒータ部による加熱によってデシカントロータから脱離した水分を含む再生空気と被処理空気間で熱交換を行う熱交換器を備えた除湿部を備え、前記除湿部で除湿した被処理空気と前記デシカントロータから脱離した水分を含む再生空気が、それぞれ壁面で隔てられた前記熱交換器内で交差する処理風路と再生風路を通過することにより、被処理空気を加熱した後、前記脱臭部に送風することを特徴とするものであり、脱臭部を通過する被処理空気を低湿且つ、高温の状態にし、光触媒の脱臭性能を向上することができる。
【0009】
また、請求項4記載の脱臭装置は、デシカントロータと脱臭フィルタの間の風路を熱交換器で形成することを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項5記載の脱臭装置は、脱臭フィルタが、光触媒と吸着剤とを円盤形状の基材に担持し、且つ回転機構を設けたものであり、脱臭フィルタとデシカントロータを両者でヒータ部を挟み込むように配置し、ヒータ部でデシカントロータと脱臭フィルタの一部を加熱することを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項6記載の脱臭装置は、前記円盤形状の基材がグラスファイバークロスであることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項7記載の脱臭装置は、前記円盤形状の基材がセラミックハニカムであることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項8記載の脱臭装置は、ヒータ部から熱交換器へ通じる再生風路において、熱交換器出口側に湿度センサを備え、再生風路内の相対湿度が高湿度の時は熱交換器から再びヒータ部へ戻るように再生風路を循環させ、低湿度の時は再生風路から脱臭フィルタの上流側へ再生空気を導入するように風路制御することを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項9記載の脱臭装置は、熱交換器で凝集した水を、ヒータ部によって加熱された回転する脱臭フィルタに滴下して気化させ、室内に放出することを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項10記載の脱臭装置は、脱臭フィルタに水を滴下する場所が、回転する脱臭フィルタがヒータ部にさしかかる手前の部分であることを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項11記載の脱臭装置は、熱交換器で凝集した水を回収するためのタンクを備えることを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項12記載の脱臭装置は、デシカントロータに脱臭剤を添加することを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項13記載の脱臭装置は、デシカントロータに触媒を添加することを特徴とするものである。
【0019】
また、請求項14記載の脱臭機は、請求項1乃至14記載の脱臭装置を備えることを特徴とするものである。
【0020】
また、請求項15記載の除湿機は、請求項1乃至14記載の脱臭装置を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、デシカントロータで除湿した被処理空気を、除湿部に組み込まれたヒータ部および熱交換器を利用して加熱し、光触媒によって処理される被処理空気を常に低湿、高温の状態にすることで、室内の湿度条件に左右されることなく、光触媒の脱臭性能を最大限に発揮させることができる。また、デシカントロータが再生時に吸収する気化熱及び、熱交換器での熱交換によって再生空気の廃熱温度を低減することで、脱臭処理後に供給される清浄空気による室内空間の温度上昇を抑制することができる。また、本発明の脱臭装置を搭載することで快適な清浄空気を供給する脱臭機や除湿機を提供することができる。デシカントロータで除湿した空気を、デシカントロータを再生するヒータで加熱してその後、光触媒脱臭を行うことにより、除湿と脱臭を高効率に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明は、光触媒と吸着剤とを基材に担持した脱臭フィルタと前記光触媒を励起させるための励起部を備えた脱臭部と、前記脱臭部の上流側に回転機構を設けたデシカントロータと前記デシカントロータの一部を加熱して再生を行うヒータ部からなる除湿部を備え、前記除湿部で除湿した被処理空気をヒータ部の輻射熱によって加熱した後、前記脱臭部に送風することで、脱臭部を通過する被処理空気を低湿且つ、高温の状態にすることを特徴とするものである。
【0023】
まず、脱臭フィルタについて説明すると、本発明による脱臭フィルタは光触媒と吸着剤を任意の配合比率で混合したものを接着成分と一緒に基材表面に担持したものである。
【0024】
光触媒としては種々挙げられるが、構造安定性や安全性、有害物質分解除去能力から酸化チタンが最も適しており、本発明に係る光触媒としても有効である。
【0025】
吸着剤としては活性炭、ゼオライト、シリカゲル、セピオライトなどのメソ〜マイクロ孔を有した多孔質材料が挙げられる。酸化チタン自体には悪臭物質を吸着する性質はほとんどなく、悪臭を光触媒で分解するためには一旦吸着剤で悪臭物質を捕獲する必要がある。基材に酸化チタンと吸着剤の両方を担持する場合、双方を事前に混合してから基材に担持する方法が最も簡便であり、酸化チタンへの悪臭物質の接触効率を考えても均一に混和することが望ましいが、このとき酸化チタンが励起する400nm以下の紫外波長領域に吸収端を持つような吸着剤を混ぜると、吸着剤が紫外線を吸収してしまい、酸化チタンの励起効率が著しく低下してしまう恐れがある。400nm以下の紫外波長領域に吸収端を持たない吸着剤としてはゼオライトやシリカゲルなどが適しており、特にゼオライトを疎水化処理したハイシリカゼオライトは400nm付近にほとんど吸収波長を持たず、且つ疎水化処理することで悪臭物質を吸着する能力が向上するために光触媒と混合する吸着剤として好都合である。
【0026】
光触媒と吸着剤を担持する基材としては、セラミックハニカム、発泡セラミック、発泡ウレタン、ガラス、グラスファイバークロス、アルミハニカム、不織布、抄紙ハニカムなど様々なものが挙げられるが、耐UV性を有していることが望ましい。また、光触媒性能と担持強度が確保できる材質であることが望ましく、セラミックハニカムや発泡セラミックは基材自体が多孔質であるため担持強度を確保しやすく、且つ基材自体への悪臭物質の吸着も期待できることから基材に適している。また、グラスファイバーを幾本も束ねて一本の糸とし、それを織り込んだ生機と呼ばれるグラスファイバークロスは一本の糸が三次元構造を有しているために担持強度を確保しやすく、且つ素材がガラスであるためにUV透過性に優れ、これも基材に適している。
【0027】
光触媒を励起するための励起部としては例陰極管、ブラックライト、殺菌灯、LEDなどのUVランプが適しているが、光触媒を励起することができればいかなる手段を用いても効果になんら差異はない。
【0028】
次に除湿部について説明する。本発明の請求項1記載の発明における除湿部は、脱臭装置の上流側に回転機構を設けたデシカントロータと、デシカントロータの一部を加熱し、再生を行うヒータ部からなる。デシカントロータはガラス繊維が混抄された基材紙をコルゲート加工したものをロール状に積層して基材を形成し、これに吸湿材(ゼオライト)を担持して焼成後、スライスカットしたものである。吸湿材として用いられるゼオライトは水の吸着エネルギーと気化エネルギーが近いため、吸放出性に優れ、除湿と再生を繰り返すことが可能である。また、デシカントロータは回転機構を有しており、別途設けたモータの回転と連動して一定速度で回転する。ヒータ部はデシカントロータ下流側の被処理空気が通過する処理風路外に備えられており、デシカントロータと一定範囲の角度で近接するように配置されている。処理風路は脱臭装置の吸い込み口からデシカントロータと脱臭部を通過して吹き出し口に通じており、デシカントロータと脱臭部の間でヒータ部を沿うように風路を形成している。
【0029】
こうすることで、デシカントロータで除湿され、さらに脱臭部へ流れる間にヒータ部の輻射熱によって加熱された被処理空気は低湿、高温となり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。デシカントロータで除湿した空気を、デシカントロータを再生するヒータで加熱してその後、光触媒脱臭を行うことにより、除湿と脱臭を高効率に行うことができる。ヒータはデシカントロータの再生とデシカントロータで除湿した空気の加熱の両方を行う。すなわち、共用する。尚、被処理空気は処理風路を隔てて加熱されるため、再生時の高湿度空気が脱臭前の処理風路に流入することはない。
【0030】
また、請求項2記載の脱臭装置は、光触媒と吸着剤とを基材に担持した脱臭フィルタと前記光触媒を励起させるための励起部を備えた脱臭部と、前記脱臭部の上流側に回転機構を設けたデシカントロータと前記デシカントロータの一部を加熱して再生を行うヒータ部と前記ヒータ部による加熱によってデシカントロータから脱離した水分を含む再生空気と被処理空気間で熱交換を行う熱交換器と前記ヒータ部から前記熱交換器を通って脱臭フィルタの上流側へ再生空気を導入する再生風路を備えた除湿部を備え、前記除湿部で除湿した被処理空気と前記再生風路から導入された再生空気を混合し、前記脱臭部に送風することで、脱臭部を通過する被処理空気を低湿且つ、高温の状態にすることを特徴とするものである。
【0031】
本発明の請求項2記載の発明における除湿部は、上記請求項1記載の発明にかかる除湿部に加え、加熱によってデシカントロータから脱離した水分を含む再生空気と被処理空気間で熱交換を行う熱交換器と、ヒータ部から熱交換器を通って脱臭フィルタの上流側へ再生空気を導入する再生風路からなる。熱交換器は二つの風路にそれぞれ温度の異なる空気を流し、熱エネルギーのみを交換することで、低温の空気を加熱し、高温の空気を冷却するものである。このとき高温側の空気が高湿であれば、冷却することにより飽和蒸気圧が下がり、露点を下回ることで風路壁面に水分が結露し、空気中の絶対湿度を下げることができる。すなわち、ヒータ部によって加熱され放出したデシカントロータからの高湿、高温空気は熱交換器を通過する際に除湿され、それでも尚高い温度を保ったまま再生風路を通って脱臭フィルタの上流へ導入される。こうすることで、デシカントロータで除湿された処理空気は再生風路から導入された高温の空気と混合し、低湿、高温となり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。
【0032】
また、請求項3記載の脱臭装置は、光触媒と吸着剤とを基材に担持した脱臭フィルタと前記光触媒を励起させるための励起部を備えた脱臭部と、前記脱臭部の上流側に回転機構を設けたデシカントロータと前記デシカントロータの一部を加熱して再生を行うヒータ部と前記ヒータ部による加熱によってデシカントロータから脱離した水分を含む再生空気と被処理空気間で熱交換を行う熱交換器を備えた除湿部を備え、前記除湿部で除湿した被処理空気と前記デシカントロータから脱離した水分を含む再生空気が、それぞれ壁面で隔てられた前記熱交換器内で交差する処理風路と再生風路を通過することにより、被処理空気を加熱した後、前記脱臭部に送風することことで、脱臭部を通過する被処理空気を低湿且つ、高温の状態にすることを特徴とするものである。
【0033】
本発明の請求項3記載の発明における除湿部は、上記請求項1記載の発明にかかる除湿部に加え、加熱によってデシカントロータから脱離した水分を含む再生空気と被処理空気間で熱交換を行う熱交換器からなる。除湿後の被処理空気が流れる処理風路の一部を熱交換器内の低温空気が流れる風路となるような風路構成としている。
【0034】
こうすることで、デシカントロータで除湿された処理空気は熱交換器内の処理風路を通過する際に再生空気と熱交換することで低湿、高温となり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。
【0035】
また、請求項4記載の脱臭装置は、デシカントロータと脱臭フィルタの間の風路を熱交換器で形成することを特徴とするものである。こうすることで除湿後の被処理空気が脱臭フィルタへと通じる処理風路全てを熱交換器として利用することができ、熱交換される風路長が長くなるため、被処理空気は再生空気の熱エネルギーを効率よく吸収して低湿、高温となり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。
【0036】
また、請求項5記載の脱臭装置は、脱臭フィルタが、光触媒と吸着剤とを円盤形状の基材に担持し、且つ回転機構を設けたものであり、脱臭フィルタとデシカントロータを両者でヒータ部を挟み込むように配置し、ヒータ部でデシカントロータと脱臭フィルタの一部を加熱することを特徴とするものである。円盤形状の基材は耐UV性を有し、且つ耐熱性を有していることが望ましい。円盤形状をした脱臭フィルタは、回転機構を備えることでフィルタの一部がヒータ部で加熱されるため、フィルタ表面が常に高温状態に保つことができる。こうすることで、被処理空気が脱臭フィルタを通過する際により低湿、高温になり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。尚、脱臭フィルタの径は、一定の脱臭能力を確保できる範囲であればいかなる大きさでもよいが、デシカントロータと脱臭フィルタを同径にすることで風路を均一化し、コンパクト化できる。
【0037】
また、請求項6記載の脱臭装置は、前記円盤形状の基材がグラスファイバークロスであることを特徴とするものである。グラスファイバークロスはグラスファイバーを幾本も束ねて一本の糸とし、それを織り込んで一枚のクロスに形成したものであり、これを円形にカットしたものに光触媒と脱臭剤を担持することで脱臭フィルタを形成する。グラスファイバークロスは一本の糸が三次元構造を有しているために担持強度を確保しやすく、且つ素材がガラスであるために耐UV性に優れ、耐熱性にも優れている。こうすることで、脱臭フィルタ表面が常に高温状態に保つことができ、被処理空気が脱臭フィルタを通過する際により低湿、高温になり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。
【0038】
また、請求項7記載の脱臭装置は、前記円盤形状の基材がセラミックハニカムであることを特徴とするものである。円盤形状のセラミックハニカム基材は上記デシカントロータとおよそ同様の製造方法で形成することができるが、吸湿材の代わりに脱臭剤を担持してから焼成することで脱臭性能を持たせることができる。尚、脱臭剤を担持するときに同時に光触媒を混合したものを担持してもよいが、焼成過程で熱による光触媒の構造変化が懸念される場合は、焼成後に改めて光触媒を担持してもよい。またこのとき、光触媒のみを担持してもよいが、光触媒と脱臭剤を混合したものを担持するとより好ましい。セラミックハニカムは耐UV性に優れ、耐熱性にもすぐれている。こうすることで、脱臭フィルタ表面が常に高温状態に保つことができ、被処理空気が脱臭フィルタを通過する際により高温・低湿になり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。また、ハニカム形状にすることで被処理空気との接触面積が増え、脱臭効果が向上するという作用を有する。
【0039】
また、請求項8記載の脱臭装置は、ヒータ部から熱交換器へ通じる再生風路において、熱交換器出口側に湿度センサを備え、再生風路内の相対湿度が高湿度の時は熱交換器から再びヒータ部へ戻るように再生風路を循環させ、低湿度の時は再生風路から脱臭フィルタの上流側へ再生空気を導入するように風路制御することを特徴とするものである。こうすることで、再生風路内を流れる再生空気が低湿度のときだけ処理風路に導入することができ、デシカントロータで除湿された被処理空気は再生風路から導入された高温の空気と混合し、低湿、高温となり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。
【0040】
また、請求項9記載の脱臭装置は、熱交換器で凝集した水を、ヒータ部によって加熱された回転する脱臭フィルタに滴下して気化させ、室内に放出することを特徴とするものである。こうすることで、室内空間を過度に除湿することを抑制し、且つ気化熱によって廃熱温度を下げることで室内に快適な清浄空気を供給することができるという作用を有する。
【0041】
また、請求項10記載の脱臭装置は、脱臭フィルタに水を滴下する場所が、回転する脱臭フィルタがヒータ部にさしかかる手前の部分であることを特徴とするものである。こうすることで回転する脱臭フィルタが、被処理空気を脱臭する処理風路に差し掛かる前に水分を全て放出し、脱臭性能が低下するのを抑制することができるという作用を有する。
【0042】
また、請求項11記載の脱臭装置は、熱交換器で凝集した水を回収するためのタンクを備えることを特徴とするものである。こうすることで高湿条件下であっても脱臭フィルタを通過する被処理空気を低湿に保つことができ、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。
【0043】
また、請求項12記載の脱臭装置は、デシカントロータに脱臭剤を添加することを特徴とするものである。脱臭剤は活性炭、ゼオライト、シリカゲル、セピオライトなどの悪臭物質を物理的に吸着して脱臭する吸着剤や、悪臭物質と化学反応することで脱臭する化学吸着剤を添加することができ、あるいはその両方を添加してもよい。こうすることで、被処理空気がデシカントロータを通過する際に除湿するのと同時に脱臭することができ、より脱臭性能の高い脱臭装置を提供することができる。
【0044】
また、請求項13記載の脱臭装置は、デシカントロータに触媒を添加することを特徴とするものである。触媒はPtやPdなどの貴金属触媒や、MnO2やZnOなどの金属酸化物を添加することができる。これらの触媒は常温でも脱臭効果を発揮することができるが、ヒータ部によって加熱することでより高い触媒活性を発揮し、優れた脱臭効果を得ることができる。こうすることで、被処理空気がデシカントロータを通過する際に除湿するのと同時に脱臭することができ、より脱臭性能の高い脱臭装置を提供することができる。
【0045】
また、請求項14記載の脱臭機は、請求項1乃至14記載の脱臭装置を備えることを特徴とするものである。上記請求項1乃至14に記載の脱臭装置と送風手段を備えた脱臭機は、室内の汚染空気を送風手段で機内に取り込み、デシカントロータで除湿し、ヒータ部あるいは熱交換器で加熱することで低湿、高温の状態にし、光触媒で効率よく脱臭して室内に清浄空気を供給することができる。
【0046】
また、請求項15記載の除湿機は、請求項1乃至14記載の脱臭装置を備えることを特徴とするものである。上記請求項1乃至14に記載の脱臭装置と送風手段および貯水タンクを備えた除湿機は、デシカントロータで吸着した被処理空気中の水分を熱交換器で冷却して凝集し、結露した水分を貯水タンクに回収すると同時に、除湿した被処理空気を加熱して低湿・高温の状態にし、光触媒で効率よく脱臭して室内に快適な清浄空気を放出することができる。
【0047】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
(実施の形態1)
本発明による脱臭装置を図1に示す。図1に示すように、脱臭装置1は光触媒と吸着剤とを基材に担持した脱臭フィルタ3と、光触媒を励起させるための励起部4からなる脱臭部2の上流側に回転機構(図示なし)を設けたデシカントロータ6と、デシカントロータ6の一部を加熱し、再生を行うヒータ部7からなる除湿部5と、被処理空気9がデシカントロータ6から脱臭フィルタ3を通って室内に放出する処理風路8を備えている。脱臭フィルタ3は微粉末の光触媒と吸着剤を任意の配合比率で混合したものに接着成分混ぜてスラリ状とし、それを基材表面に担持後、乾燥してフィルタ形成したものであり、光触媒には酸化チタンを、脱臭剤にはハイシリカゼオライトを用いている。
【0049】
基材は耐UV性を有し、光触媒と脱臭剤の担持量を確保できればいかなるものを用いてもよいが、セラミックハニカムや発泡セラミックは基材自体が多孔質であるため担持強度を確保しやすく、且つ基材自体への悪臭物質の吸着も期待できることから基材に適している。また、グラスファイバーを幾本も束ねて一本の糸とし、それを織り込んだ生機と呼ばれるグラスファイバークロスは一本の糸が三次元構造を有しているために担持強度を確保しやすく、且つ素材がガラスであるためにUV透過性に優れ、これも基材に適している。
【0050】
励起部4は脱臭フィルタ3を両面から照射するように冷陰極管が複数配置されており、光触媒を効率よく励起することができる。励起部としてはブラックライト、殺菌灯、LEDなどのUVランプやプラズマによる励起など光触媒を励起することができればいかなる手段を用いてもよいが、冷陰極管は比較的低コストであり、耐久寿命も長いことから励起部として好ましい。除湿部5は、脱臭装置1の上流側に回転機構を設けたデシカントロータ6に、デシカントロータ6と一定範囲の角度で近接するように配置され、回転するデシカントロータ6の一部を加熱することで再生を行うヒータ部7を備えて成る。デシカントロータ6はガラス繊維が混抄された基材紙をコルゲート加工したものをロール状に積層して基材を形成し、これに吸湿材(ゼオライト)を担持して焼成後、スライスカットしたものである。また、回転機構は別途設けたモータの回転と連動してデシカントロータ6が一定速度で回転するものであり、一回転する間に吸着部、再生部、冷却部を経て、再び吸着部に戻る仕組みになっている。吸着部はデシカントロータ6の円形部分の半分を占めており、ここを通過することで被処理空気9の除湿を行う。次に再生部ではヒータ部7で加熱され、吸着部で吸着した水分を放出し、再生される。
【0051】
最後に冷却部では外気によって自然冷却され、再び吸着できるようになる。こうすることでデシカントロータ6は回転しながら吸放出を繰り返し、連続して被処理空気9の除湿を行うことができる。また、ヒータ部7は縁面のみが断熱材で覆われており、両端面は開放された構造になっているため、デシカントロータ6を加熱すると同時に逆面からも放熱することで処理風路8を流れる被処理空気9を加熱することができる。また、処理風路8はデシカントロータ6の前記吸着部のみから脱臭部を通って室内に放出する風路構成となっており、再生部および冷却部とは風路壁面によって隔離されている。
【0052】
こうすることで、前記再生部で放出される高湿空気が処理風路に流入することを防ぐことができる。また、処理風路8は除湿部の下流側で直角に屈折しており、ヒータ部7を沿うように形成されているので、風路壁面を挟んでヒータ部の熱が伝わるようになっている。こうすることで被処理空気9は除湿部5で除湿された後、ヒータ部7から発生する輻射熱10によって加熱され、低湿、高温となり、光触媒によって効率よく脱臭できる。
【0053】
(実施の形態2)
本発明による脱臭装置の別の形態を図2に示す。実施の形態1と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図2に示すように、脱臭装置1は、光触媒と吸着剤とを基材に担持した脱臭フィルタ3と、光触媒を励起させるための励起部4からなる脱臭部2と、脱臭装置1の上流側に回転機構(図示なし)を設けたデシカントロータ6と、デシカントロータ6の一部を加熱し、再生を行うヒータ部7と、再生空気13と被処理空気9の間で熱交換を行う熱交換器11と、デシカントロータ6の再生部から熱交換器11を通過して脱臭フィルタ3の上流へ導入する再生風路12からなる除湿部5を備えている。
【0054】
尚、実施の形態2における脱臭部2は実施の形態1と同じ構成であり、ここでは脱臭部2以外の部分を中心に説明する。除湿部5は、脱臭装置1の上流側に回転機構を設けたデシカントロータ6に、デシカントロータ6と一定範囲の角度で近接するように配置され、回転するデシカントロータ6の一部を加熱することで再生を行うヒータ部7と、再生空気13と被処理空気9の間で熱交換を行う熱交換器11と、デシカントロータ6の再生部から熱交換器11を通過して脱臭フィルタ3の上流へ導入する再生風路12からなる。デシカントロータ6はガラス繊維が混抄された基材紙をコルゲート加工したものをロール状に積層して基材を形成し、これに吸湿材(ゼオライト)を担持して焼成後、スライスカットしたものである。
【0055】
また、回転機構は別途設けたモータの回転と連動してデシカントロータ6が一定速度で回転するものであり、一回転する間に吸着部、再生部、冷却部を経て、再び吸着部に戻る仕組みになっている。吸着部はデシカントロータの円形部分の半分を占めており、ここを通過することで被処理空気9の除湿を行う。次に再生部ではヒータ部7で加熱され、吸着部で吸着した水分を放出し、再生される。最後に冷却部では外気によって自然冷却され、再び吸着できるようになる。こうすることでデシカントロータ6は回転しながら吸放出を繰り返し、連続して被処理空気9の除湿を行うことができる。また、熱交換器11は二つの風路にそれぞれ温度の異なる空気を流し、熱エネルギーのみを交換することで、低温の空気を加熱し、高温の空気を冷却するものである。
【0056】
このとき高温側の空気が高湿であれば、冷却により飽和蒸気圧が下がり、露点を下回ることで風路壁面に水分が結露し、空気中の絶対湿度を下げることができる。また、熱交換器11はデシカントロータ6の上流側に備え、且つ前記吸着部とは重ならないように配置されている。こうすることで除湿前の被処理空気9が熱交換器11によって加熱されることを防ぐことができる。また、再生風路12は風路内に小型ファン14を備えており、前記再生部で放出した再生空気13を熱交換器11を通して脱臭フィルタ3の上流部に導入する風路構成となっている。すなわち、前記再生部でヒータ部7によって加熱され放出したデシカントロータ6からの高湿、高温空気は熱交換器11を通過する際に除湿され、それでも尚高い温度を保ったまま再生風路12を通って脱臭フィルタ3の上流へ導入される。また、処理風路8はデシカントロータ6の前記吸着部のみから脱臭部を通って室内に放出する風路構成となっており、再生部および冷却部とは風路壁面によって隔離されている。
【0057】
こうすることで前記再生部で放出される高湿空気が処理風路に流入することを防ぐことができる。また、処理風路8は脱臭フィルタ3の上流で再生風路12と合流し、除湿後の被処理空気の温度を上げることができる。こうすることで被処理空気9は除湿部5で除湿された後、再生風路12から導入される再生空気13によって加熱され、低湿、高温となり、光触媒によって効率よく脱臭できる。
【0058】
(実施の形態3)
本発明による脱臭装置の別の形態を図3に示す。実施の形態1、2と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図3に示すように、脱臭装置1は、光触媒と吸着剤とを基材に担持した脱臭フィルタ3と、光触媒を励起させるための励起部4からなる脱臭部2と、脱臭装置1の上流側に回転機構(図示なし)を設けたデシカントロータ6と、デシカントロータ6の一部を加熱し、再生を行うヒータ部7と、再生空気13と被処理空気9の間で熱交換を行う熱交換器11からなる除湿部5を備えている。
【0059】
尚、実施の形態3における脱臭部2は実施の形態1と同じ構成であり、ここでは脱臭部2以外の部分を中心に説明する。除湿部5は、脱臭装置1の上流側に回転機構を設けたデシカントロータ6に、デシカントロータ6と一定範囲の角度で近接するように配置され、回転するデシカントロータ6の一部を加熱することで再生を行うヒータ部7と、再生空気13と被処理空気9の間で熱交換を行う熱交換器11からなる。
【0060】
デシカントロータ6はガラス繊維が混抄された基材紙をコルゲート加工したものをロール状に積層して基材を形成し、これに吸湿材(ゼオライト)を担持して焼成後、スライスカットしたものである。また、回転機構は別途設けたモータの回転と連動してデシカントロータ6が一定速度で回転するものであり、一回転する間に吸着部、再生部、冷却部を経て、再び吸着部に戻る仕組みになっている。
【0061】
吸着部はデシカントロータの円形部分の半分を占めており、ここを通過することで被処理空気9の除湿を行う。次に再生部ではヒータ部7で加熱され、吸着部で吸着した水分を放出し、再生される。最後に冷却部では外気によって自然冷却され、再び吸着できるようになる。こうすることでデシカントロータ6は回転しながら吸放出を繰り返し、連続して被処理空気9の除湿を行うことができる。また、熱交換器11は二つの風路にそれぞれ温度の異なる空気を流し、熱エネルギーのみを交換することで、低温の空気を加熱し、高温の空気を冷却するものである。このとき高温側の空気が高湿であれば、冷却により飽和蒸気圧が下がり、露点を下回ることで風路壁面に水分が結露し、空気中の絶対湿度を下げることができる。さらに本実施の形態では、デシカントロータ6と脱臭フィルタ3の間の風路を熱交換器11で形成されており、除湿後の被処理空気9とヒータ部7で加熱された再生空気13がそれぞれ壁面で隔てられた熱交換器11内で交差する処理風路8と再生風路12を通過することにより被処理空気9を加熱することができる。
【0062】
こうすることで除湿後の被処理空気9が脱臭フィルタ3へと通じる処理風路8全てを熱交換部として利用することができ、熱交換される風路長が長くなるため、被処理空気9は再生空気13の熱エネルギーを効率よく吸収して低湿、高温となり、光触媒によって効率よく脱臭できる。
【0063】
(実施の形態4)
本発明による脱臭装置を備えた脱臭機を図4に示す。実施の形態1乃至3と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図4に示すように脱臭機15は、光触媒と吸着剤とをセラミックハニカム基材に担持した脱臭フィルタ3と、光触媒を励起させるための冷陰極管16とを備えた脱臭部2と、脱臭フィルタ3の上流側に回転機構(図示なし)を設けたデシカントロータ6と、デシカントロータ6の一部を加熱し、再生を行うヒータ部7と、再生空気13と被処理空気9の間で熱交換を行う熱交換器11と、デシカントロータ6の再生部と熱交換器11を循環する再生風路12とを備えた除湿部5からなる脱臭装置1の下流側に送風機17を備えてなり、吸い込み口18から導入した被処理空気9を除湿した後に脱臭フィルタ3で分解し、吹き出し口19から清浄空気を供給する仕組みになっている。
【0064】
脱臭フィルタ3は、光触媒と吸着剤とを円盤形状のセラミックハニカム基材に担持し、且つ回転機構を設けたものであり、脱臭フィルタ3とデシカントロータ6は両者でヒータ部7を挟み込むように配置し、ヒータ部7でデシカントロータ6を再生するのと同時に脱臭フィルタ3の一部を加熱する仕組みになっている。すなわち、脱臭フィルタ3はフィルタの一部がヒータ部7で加熱されながら回転するため、フィルタ表面を常に高温状態に保つことができる。こうすることで、被処理空気9が脱臭フィルタ3を通過する際により低湿、高温になり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。
【0065】
尚、脱臭フィルタ3の径は、一定の脱臭能力を確保できる範囲であればいかなる大きさでもよいが、デシカントロータ6と脱臭フィルタ3を同径にすることで風路を均一化し、コンパクト化できるという作用を有する。また、本実施の形態において、励起部には冷陰極管16を用いており、脱臭フィルタ3の前後から照射するようにしている。尚、冷陰極管16の本数や配置は一定の脱臭性能を確保できるのであればいかなるようにしてもよいが、本実施の形態のように円の中心部から放射状に等間隔で配置することで、照射面積を均一化することができるという作用を有する。
【0066】
尚、本実施の形態では、脱臭フィルタ3の基材にセラミックハニカムを用いているが、グラスファイバークロスを円形に形成したものを複数枚重ねたものを用いてもよく、厚みのないグラスファイバークロスならば冷陰極管16を脱臭フィルタで挟み込むことで照射効率を上げることができるという作用を有する。また、本実施の形態における脱臭機15は熱交換器11の出口側には湿度センサ20を備え、再生風路12内の相対湿度が高湿度時は再生風路12を循環させ、低湿度の時は再生風路12から処理風路8に再生空気13を取り入れるように制御している。 こうすることで、低湿度時の再生空気13を再生風路12からの処理風路8に導入することができ、デシカントロータ6で除湿された被処理空気9は再生風路12から導入された再生空気13と混合し、低湿、高温となり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。
【0067】
また、本実施の形態における脱臭機15は、熱交換器11の下部から脱臭フィルタ3へと配管された水管21を備え、熱交換器11で凝集した水を回転する脱臭フィルタ3の一部に滴下する仕組みになっている。この水管21は、回転する脱臭フィルタ3がヒータ部7にさしかかる手前の部分に滴下され、滴下された水は後段のヒータ部7で加熱されるため、被処理空気9を脱臭する処理風路8に差し掛かる前に水分を全て放出し、脱臭性能に影響することはない。こうすることで、室内空間を過度に除湿することを抑制し、且つ気化熱によって廃熱温度を下げることで室内に快適な清浄空気を供給することができるという作用を有する。
【0068】
また、本実施の形態4における脱臭機15は、デシカントロータ6に触媒を担持してもよく、触媒はPtやPdなどの貴金属触媒や、MnO2やZnOなどの金属酸化物を添加することができる。これらの触媒は常温でも脱臭効果を発揮することができるが、ヒータ部7によって加熱することでより高い触媒活性を発揮し、優れた脱臭効果を得ることができる。こうすることで、被処理空気9がデシカントロータ6を通過する際に除湿するのと同時に脱臭することができ、より脱臭性能の高い脱臭機を提供することができる。
【0069】
(実施の形態5)
本発明による脱臭装置1を備えた除湿機22を図5に示す。実施の形態1乃至4と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図5に示すように除湿機22は、光触媒と吸着剤とをセラミックハニカム基材に担持した脱臭フィルタ3と、光触媒を励起させるための冷陰極管16を備えた脱臭部2と、脱臭フィルタの上流側に回転機構(図示なし)を設けたデシカントロータ6と、デシカントロータ6の一部を加熱し、再生を行うヒータ部7と、再生空気13と被処理空気9の間で熱交換を行う熱交換器11と、熱交換器11によって凝集した水分を回収するための貯水タンク23と、デシカントロータ6の再生部と熱交換器11を循環する再生風路12とを備えた除湿部5からなる脱臭装置1の下流側に送風機17を備え、吸い込み口18から導入した被処理空気9を除湿した後に脱臭フィルタ3で分解し、吹き出し口19から清浄空気を供給する一方で、デシカントロータ6で吸着した水分をヒータ部7で加熱して放出し、熱交換器11で凝集して貯水タンク23に回収する仕組みになっている。
【0070】
脱臭フィルタ3は、光触媒と吸着剤とを円盤形状のセラミックハニカムに担持し、且つ回転機構を設けたものであり、脱臭フィルタ3とデシカントロータ6は両者でヒータ部を挟み込むように配置し、ヒータ部7でデシカントロータ6を再生するのと同時に脱臭フィルタ3の一部を加熱する仕組みになっている。すなわち、脱臭フィルタ3はフィルタの一部がヒータ部7で加熱されながら回転するため、フィルタ表面を常に高温状態に保つことができる。こうすることで、被処理空気9が脱臭フィルタ3を通過する際により低湿、高温になり、光触媒で効率よく分解できるという作用を有する。尚、脱臭フィルタ3の径は、一定の脱臭能力を確保できる範囲であればいかなる大きさでもよいが、デシカントロータ6と脱臭フィルタ3を同径にすることで風路を均一化し、コンパクト化できるという作用を有する。
【0071】
また、本実施の形態において、励起部には冷陰極管16を用いており、脱臭フィルタ3の前後から照射するようにしている。尚、冷陰極管16の本数や配置は一定の脱臭性能を確保できるのであればいかなるようにしてもよいが、本実施の形態のように円の中心部から放射状に等間隔で配置することで、照射面積を均一化することができるという作用を有する。尚、本実施の形態では、脱臭フィルタ3の基材にセラミックハニカムを用いているが、グラスファイバークロスを円形に形成したものを複数枚重ねたものを用いてもよく、厚みのないグラスファイバークロスならば冷陰極管16を脱臭フィルタ3で挟み込むことで照射効率を上げることができるという作用を有する。また、本実施の形態における除湿機22は熱交換器11の下部に貯水タンク23を備え、熱交換器11で凝集した水が水管21を通して貯水タンク23に溜まる仕組みになっている。
【0072】
こうすることで高湿条件下であっても脱臭フィルタ3を通過する被処理空気9を低湿に保つことができ、光触媒で効率よく分解して、高い脱臭性能を併せ持った除湿機を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の脱臭装置を用いることにより、住居内や車内などの室内空間等にも使用でき、温湿度環境に影響を受けることなく優れた脱臭性能を満たす脱臭装置などの空気清浄機などの用途にも適用でき、また、本発明の脱臭装置を搭載することにより、比較的低コストで、メンテナンスも容易であり、様々な悪臭を除去することのできる脱臭機および、除湿機などの空気調和機などの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施の形態1の脱臭装置の概略断面図
【図2】実施の形態2の脱臭装置の概略断面図
【図3】実施の形態3の脱臭装置の概略断面図
【図4】実施の形態4の脱臭機の概略断面図
【図5】実施の形態5の除湿機の概略断面図
【符号の説明】
【0075】
1 脱臭装置
2 脱臭部
3 脱臭フィルタ
4 励起部
5 除湿部
6 デシカントロータ
7 ヒータ部
8 処理風路
9 被処理空気
10 輻射熱
11 熱交換器
12 再生風路
13 再生空気
14 小型ファン
15 脱臭機
16 冷陰極管
17 送風機
18 吸い込み口
19 吹き出し口
20 湿度センサ
21 水管
22 除湿機
23 貯水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒と吸着剤とを基材に担持した脱臭フィルタと前記光触媒を励起させるための励起部を備えた脱臭部と、前記脱臭部の上流側に回転機構を設けたデシカントロータと前記デシカントロータの一部を加熱して再生を行うヒータ部からなる除湿部を備え、前記除湿部で除湿した被処理空気をヒータ部の輻射熱によって加熱した後、前記脱臭部に送風することを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】
光触媒と吸着剤とを基材に担持した脱臭フィルタと前記光触媒を励起させるための励起部を備えた脱臭部と、前記脱臭部の上流側に回転機構を設けたデシカントロータと前記デシカントロータの一部を加熱して再生を行うヒータ部と前記ヒータ部による加熱によってデシカントロータから脱離した水分を含む再生空気と被処理空気間で熱交換を行う熱交換器と前記ヒータ部から前記熱交換器を通って脱臭フィルタの上流側へ再生空気を導入する再生風路を備えた除湿部を備え、前記除湿部で除湿した被処理空気と前記再生風路から導入された再生空気を混合し、前記脱臭部に送風することを特徴とする脱臭装置。
【請求項3】
光触媒と吸着剤とを基材に担持した脱臭フィルタと前記光触媒を励起させるための励起部を備えた脱臭部と、前記脱臭部の上流側に回転機構を設けたデシカントロータと前記デシカントロータの一部を加熱して再生を行うヒータ部と前記ヒータ部による加熱によってデシカントロータから脱離した水分を含む再生空気と被処理空気間で熱交換を行う熱交換器を備えた除湿部を備え、前記除湿部で除湿した被処理空気と前記デシカントロータから脱離した水分を含む再生空気が、それぞれ壁面で隔てられた前記熱交換器内で交差する処理風路と再生風路を通過することにより、被処理空気を加熱した後、前記脱臭部に送風することを特徴とする脱臭装置。
【請求項4】
デシカントロータと脱臭フィルタの間の風路を熱交換器で形成することを特徴とする請求項3記載の脱臭装置。
【請求項5】
脱臭フィルタが、光触媒と吸着剤とを円盤形状の基材に担持し、且つ回転機構を設けたものであり、脱臭フィルタとデシカントロータを両者でヒータ部を挟み込むように配置し、ヒータ部でデシカントロータと脱臭フィルタの一部を加熱することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の脱臭装置。
【請求項6】
円盤形状の基材がグラスファイバークロスであることを特徴とする請求項5記載の脱臭装置。
【請求項7】
円盤形状の基材がセラミックハニカムであることを特徴とする請求項5記載の脱臭装置。
【請求項8】
ヒータ部から熱交換器へ通じる再生風路において、熱交換器出口側に湿度センサを備え、再生風路内の相対湿度が高湿度の時は熱交換器から再びヒータ部へ戻るように再生風路を循環させ、低湿度の時は再生風路から脱臭フィルタの上流側へ再生空気を導入するように風路を制御することを特徴とする請求項2乃至7いずれかに記載の脱臭装置。
【請求項9】
熱交換器で凝集した水を、ヒータ部によって加熱された回転する脱臭フィルタに滴下して気化させ、室内に放出することを特徴とする請求項5乃至7いずれかに記載の脱臭装置。
【請求項10】
脱臭フィルタに水を滴下する場所が、回転する脱臭フィルタがヒータ部にさしかかる手前の部分であることを特徴とする請求項9記載の脱臭装置。
【請求項11】
熱交換器で凝集した水を回収するためのタンクを備えることを特徴とする請求項2乃至10いずれかに記載の脱臭装置。
【請求項12】
デシカントロータに脱臭剤を添加することを特徴とする請求項1乃至12いずれかに記載の脱臭装置。
【請求項13】
デシカントロータに触媒を添加することを特徴とする請求項1乃至12いずれかに記載の脱臭装置。
【請求項14】
請求項1乃至14記載の脱臭装置を備えることを特徴とする脱臭機。
【請求項15】
請求項1乃至14記載の脱臭装置を備えることを特徴とする除湿機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−224111(P2008−224111A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61488(P2007−61488)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】